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オヴニー・パリの新聞

LE JOURNAL FRANCO-JAPONAIS MENSUEL GRATUIT tél: +33(0)1 4700 1133 e-mail: monovni@ovninavi.com ovninavi.com ovninavi ovni_navi

A table ! Expo

オレンジ風味でさわやかに、鴨のカルパッチョ。

04

フランスに54番めのユネスコ世界文化遺産! Actualité 06 伝説の女王の真実を探る「クレオパトラの謎」展。

暮らしに便利・掲示板。

毎月1日発行

Gratuit / 無料

菊さん』『氷島の漁夫』などの著作で日本

でも知られるピエール ロティ(1850-1923)

は、海軍士官として世界を旅した。船旅をするように

なった頃に始めた日記を生涯つづり、それをもとに小

説や紀行文を書いた。幼い頃から芝居好き。作家に

なる前は挿絵画家だった。仮装も好んだ。一見、エ

キセントリックなダンディーはまた、数々の港町で恋

をし、それを著作として発表した。

そんなロティの家は旅のアルバムのようだ。大西洋

に近いシャラント川沿 いの町ロシュフォールの生家に、 訪れた国を 彷彿させる部屋を次々と造る。トルコ風 サロン、「日本 のパゴダ」、中国の間。作家として 名声を得、41歳で当時最年少 のアカデミー フラン セーズ会員に選出された頃から装飾は豪華さを増し、 ルネサンス期の 城さながらの大広間、尖塔ミナレッ トのあるモスクまで家のなかに作ってしまう。

ロティが 生まれ育ったロシュフォールは、ルイ14世 が海軍工廠として開いた町。米独立運動を支援した 帆船エルミオーヌ号もここで造られ 、ラファイエット将 軍を乗 せ出航した。そんな町で幼いころから旅 への 夢 をふくらませたロティだが、旅 が 終 わるとロシュ フォールの 家に戻った。複雑な大改修に12年を要し たその家が 6月に一般公開を再開した。その家を訪れ 、 ロティとともに、世界の旅に出かけよう。(六)

ロシュフォールの ピエール・ロティの 家。

ピエール・ロティは、生まれ故郷のことを、「モノ トーン、画一的」、「ユグノーの厳格さの 匂いが漂 う町」などと表現している。たしかにロシュフォー ルは直線と直角で構成されている。ロティの家も、 外 は何もない白い壁で、 うっかりすると見逃しそ うだ。 これが 家に入ると、 みっちり異国情緒が詰 まった部屋から部屋へと案内される。

ロティの客はまず、赤いサロンへ通される。 ロ

ティが幼い頃、家族が集っていた部屋だ。今はボ ルドー 色のビロードの 壁に、 ロティの姉が 描いた 家族の肖像画が並ぶ。次は青のサロン。妻ブラン シュのために、 ルイ16世スタイルの水色の 家具で あつらえたサロンだ。カーテンをくぐると、タピス リーが壁を覆い、人が 何人も入れるような暖炉が ある。これ見よがしに豪華な「 ルネサンスの大広 間」だ。大階段を上るとそこはモスク。ロティは客 を 通 す 時、使用人 たちにサクラで 礼拝 をさせ、 あっと驚 かせたという。 ロティの 部屋はというと、 僧院 の 独房 のようにシンプルだ。物は少ないが、 テーブルの上にはヒゲをカールするためのコテが ふたつ置いてあった。

ジュリアン・ヴィオ( ピエール・ロティの本名)は 1850年、 ロシュフォール 市の 会計主任だった 父 親とボルドーの良家出身の 母 のもと三男として生 まれた。祖母たちや叔母たちも同居する家で、ジュ リアンは女に囲まれて育った。19歳上で画家の姉 マリーから絵 の手ほどきを受け、後に旅をしなが ら描いた絵 は週刊誌リリュストラシオンに掲載さ れるほどのレベルになる。14歳離れた兄ギュスター ヴは海軍の 外科医としてハイチやベトナムに赴任 していた。 ジュリアンが海軍に入ったのはこの兄 の影響が大きいが、その兄は、28歳の若さで船上 で病死。 そして同年、父親 が横領の嫌疑をかけ

「ルネサンス の大広間」では 250人もの人を招いて 仮装パーティー〈中国の 宴〉を催したんですよ。

られ 投獄された。後に無罪 が 確定するが、金 の

返済 で 家 は 貧しくなる。社会的な成功を 得たロ

ティが 家を豪奢に飾ったのは、社会 への 復讐も あったとロティの 家の主任学芸員ステファニ氏は

考える。

ジュリアンは17歳でブレストの海軍学校に入学、

1870年から世界を航海する。26歳のとき、トルコ

でムスリムの 若 い女性 ハキジェと不倫 の 恋をし、

現地に残るか 悩んだ末、再び 船 に乗る。 そのラ ブストーリーをもとに初の小説『アジヤデ』(1879) を匿名で出版した。次なる小説はタヒチが舞台の 『ロティの結婚』(1880)。これは現地女性との契 約結婚を軸に物語が展開する。主人公 は熱帯の 花の名「ロティ」の洗礼名をタヒチ女王ポマレ4世 から授かるが、現実世界でもジュリアン ヴィオは 作家名ピエール・ロティを名乗るようになる。この 小説をもとにレオ ドリーブは3幕のオペラ『 ラク メ』(Lakmé) を作曲した。今日でも公演され、

甘美な「花 の二重唱」のアリアはCMや映画などに も使われている。セネガルでの女性との出会いを モチーフにした『 アフリカ騎兵』(1881)も、フラ ンスの植民地活動を背景に、西洋と非西洋、異

文化への 興味と不理解 などがからみ 合う自伝的

小説だ。1886年の『氷島 の漁夫』の成功で、80年 代は印税で家の 借金も返せるようになり結婚もし

た( アヴァンチュールは続いたが)。

出版された 著書 は61冊、訪 れた 国 は28ヵ国。

未知のもの・人に並々ならぬ好奇心をもち向かって

行く人だった。1923年6月10日、ロティはバスク地

方アンダーユで没した(妻 との家庭と並行してバス

クの女性と息子を3人授かっていた)。ロシュフォー

ルと、祖母の家があるオレロン島で国葬が執りわ

れ、オレロン島の家の庭に埋葬された。

トルコ人女性ハキジェと 恋に落ちたロティは、ト ルコ語を習い、トルコ人 に帰化して現地に残るこ とも考えたという。 彼女の墓を訪れ、墓碑の レプリカを作り、肖像画 とともにこのモスクに置 いて思い出にひたったと いう。また「魂の半分は イスラム」というほどイス ラムに傾倒していた。

▲︎「中国の間」。こちらはすべて、ロティの時代の写真 をもとにアンジェの職人さんが造ったもの。

▲「中国の間」。こちらはすべて、ロティの時代の写真 をもとにアンジェの職人さんが造ったもの。

◀︎「ゴシックの間」では、「ルイ11世の饗宴」を開催。

ロティ(左から3人目)はルイ11世、妻ブランシュ(右隣) は王妃に扮した。食卓には白鳥やクジャクのロティ (ロースト)が並んだという。

◀︎「ゴシックの間」では、「ルイ11世の饗宴」を開催。 ロティ(左から3人目)はルイ11世、妻ブランシュ(右隣) は王妃に扮した。食卓には白鳥やクジャクのロティ (ロースト)が並んだという。

◀︎1885年、ラ・トリオンファント号に同乗していた 水平たちを描いた。

◉ Maison de Pierre Loti 137 rue Pierre Loti 17300 Rochefort Tél 05.4682.9160 https://maisondepierreloti.fr ※全予約制。ガイド付き見学のみ(90 分)。一回定員10人。 16.50 € /12.50 € 。月休、4月~ 9月は火~日:9h45–19h 。 見学の集合場所は家から1分のMusée Hèbreロビー (下記)。 ※残念ながら夏期の予約はいっぱい。10-12月、2-3月は 9h45-12h30/13h45-18h 。

◉ Musée Hèbre ロティが日本から持ち帰ったもの、ロティの船内キャビン、 デッサンなども展示されている。

63 Av. Charles de Gaulle 17300 Rochefort 火~土:10h-12h30 / 14h-18 h ロティの家+エブル美術館ペアチケットも ロティの家の主任学芸員クロード・ステファニさん。

ハキジェの肖像画。

ロティの 見 た日本。

▲ ロティは小さい頃からものを集め、「プチ・ミュゼ」を形成した。キュレーター のステファニさん「15歳で親友と兄を失ったことで死を恐れるようになり、石、 花、虫など日常的なものでもお守りのように、机のなかに保管した」のだそう。

◀︎ 1886年、ロティは600kgの荷物とともにアジアから帰国。かつて食堂だっ たスペースを日光東照宮をイメージして改装し、日本の物を置いて「日本のパゴ ダ」を作った。 ロティの没後、息子が多くを売ってしまい、数少なくなった日本 のものをディスプレイしてある。(写真2枚とも©︎Julie Limont)

戦艦ラ・トリオンファント号に乗って、ロティ は1885年、初めて日本を訪れた。長崎で現地 妻としておカネさんを紹介され、共に暮らした経 験を小説にしたのが『お菊さんMadame Chrysanthème』(1887)だ。お菊さんとは 心通わずロティは退屈してしまったが、小説の評 価は上々。オリエントや日本趣味が欧州を席巻 したこの時代、ゴッホがこの本を読んで「自分の 日本」を求めて南仏へ赴いたり、アンドレ・メサ ジェがオペラ化して1893年に初演、それがプッ チーニの『蝶々夫人』(初演1904年)のベースと なったりもした。ロティはその後も日本を訪れ、 『日本秋景 が三度目の春 La Troisième jeunesse de Madame Prune』などを書いている。

戦艦ラ・トリオンファント号に乗って、ロティ は1885年、初めて日本を訪れた。長崎で現地 妻としておカネさんを紹介され、共に暮らした経 験を小説にしたのが『お菊さんMadame Chrysanthème』(1887)だ。お菊さんとは 心通わずロティは退屈してしまったが、小説の評 価は上々。オリエントや日本趣味が欧州を席巻 したこの時代、ゴッホがこの本を読んで「自分の 日本」を求めて南仏へ赴いたり、アンドレ・メサ ジェがオペラ化して1893年に初演、それがプッ チーニの『蝶々夫人』(初演1904年)のベースと なったりもした。ロティはその後も日本を訪れ、 『日本秋景 Japoneries d’automne』、『お梅 が三度目の春 La Troisième jeunesse de Madame Prune』などを書いている。

京都、横浜、鎌倉、東京、日光などを訪れる 紀行文『日本秋景』には、鹿鳴館での晩を描い た『江戸の舞踏会』が収められている。1886年 の明治天皇の誕生日を祝う舞踏会に招待された。 完成してほどない鹿鳴館を見て「あぁ、なんと美 しくないことか!...そこらの(フランスの)温泉都 市のカジノのようだ」、ルイ15世時代のドレスに 身をまとう女性は、「日本とフランス18世紀の混 合は想定外のインパクトだ。極東の顔とトリアノ ンのようなパニエ入りドレスにコルセット。マダ ムたちよ、すばらしい仮装です!」と辛辣だ。芥 川龍之介の『鹿鳴館』にはこの晩のロティが登場 するが、ジェントルマン的に描写されるのみで、 日本人への意地悪な視線など、みじんも感じさ せない。とはいえ、当時の日本が、ロティの目を

通して描写されているのは興味深い。  そんなロティも、11月の静けさのなかで訪れた 日光には感銘を受け、ロシュフォールに戻るとす ぐに東照宮をイメージした「日本のパゴダ」を自 宅内につくった。また、幼いころ読んだ赤穂浪士 の墓を訪れ、「驚くべき英雄譚!超越した忠誠心!」 と熱く賞賛。「しかし、今日のなよなよと退化し た日本人たちを知るだけに、大きな謎である。こ れまで私は、近代日本をけなし続けてきたが、 彼らにもこのような高貴で騎士道的な歴史が あったのかもしれないと、尊敬の念がよぎるの だ」。ロティはイヤミの天才かもしれない。手向 ける花を持参しなかったが、菊の花を一輪フラ ンスまで持ち帰ることで彼らに敬意を表した、と 記している。

1666年ルイ14世が造らせた海軍工廠の町、ロシュフォール。

1666年ルイ14世が造らせた海軍工廠の町、ロシュフォール。

戦艦が不足していたため、ルイ14世と海軍大臣コ ルベールは、短期間で多くの船を造れる施設を造ろう と大西洋岸側に場所を探していた。ロシュフォールは 大西洋までは川沿いに25km、内陸にあることで守 られ、英・西の国境から遠く、シャラント川のおかげ で物資の豊富な内陸部へのアクセスが便利なことな どから工廠が置かれることに。造船ドック、製鉄所、 製材所、動力供給の風車、倉庫、造船所で働く囚人 の刑務所、病院などを備えた、両岸にまたがる巨大 な産業都市が誕生。碁盤の目状の住宅地に、教会、 花街などが造られ町が発展した*。1666年の開設時 から1927年の閉鎖までに550隻の戦艦が造られた。

戦艦が不足していたため、ルイ14世と海軍大臣コ ルベールは、短期間で多くの船を造れる施設を造ろう と大西洋岸側に場所を探していた。ロシュフォールは 大西洋までは川沿いに25km、内陸にあることで守 られ、英・西の国境から遠く、シャラント川のおかげ で物資の豊富な内陸部へのアクセスが便利なことな どから工廠が置かれることに。造船ドック、製鉄所、 製材所、動力供給の風車、倉庫、造船所で働く囚人 の刑務所、病院などを備えた、両岸にまたがる巨大 な産業都市が誕生。碁盤の目状の住宅地に、教会、 花街などが造られ町が発展した*。1666年の開設時 から1927年の閉鎖までに550隻の戦艦が造られた。

その活発な造船活動の名残を残すのが王立製綱 所だ。大きな帆船には丈夫な長いロープが必要だか ら、建物も長い350m。当時は欧州最長の建物だっ た。今は製鋼について学んだり、ロープの様々な結び 方教室に参加できるミュージアムになっている。

*エーブル美術館の1階の、街の立体模型や簡単な歴史の展 示室はおすすめ(この部分は無料)。

◉ Corderie Royal Rue Jean-Baptiste Audebert 17303 Rochefort Tél : 05.4687.0190 8/30までは毎日10h-19h 。(その他の時期はサイト参照)。 11 € /8.5 € /6 € www.corderie-royale.com

オヴニー公式サイト OVNINAVI.COMには町情報も掲載!

ピエール・ロティ書店のおふたり。

【シネマ】『 Merlusse 』など修復作6作品公開 マルセル・パニョルの再評価は続く。

『 La Femme du boulanger( パン 屋 の 女房)』や「マルセイユ 3 部作」といった映画 作品で知られる国民的作家マルセル パニョ ル(1895–1974)。

ジャン コクトーのように小説家・劇作家・

映画監督と、各分野で成功をおさめた稀有 な存在だ。日本ではヒット作『プロヴァンス 物語』や『愛と宿命の泉』の原作者としても 知られる。

昨年 2024 年はパ

ニョル 没後 50 年。

これに合わせ修復が

急ピッチで進 み、特

集上映や関連イベン トが開催された。代

劇場公開に。この再評価の

流れは今年も続く。

この夏は、新たに修復が

終わった 6 作品『 Merlusse』 『 Cigalon 』『 Naïs 』 『 Manon des sources 』

『 Ugolin 』『 Les Lettres de mon moulin 』が、「マ

ルセル パニョル、レトロス

ペクティブパート 2」として公

開に。

その中の一本『 Merlusse』

(1935 年)は、パニョルにとっ

て自身の脚本で撮った初めての作品。今年

のカンヌ クラシック部門に登場した。クリス

マスの寄宿学校で居残りになった訳アリ生徒

たちの前に、いかつい外見の教師が現れると

いう少々ジャン・ヴィゴの『新学期・操行ゼロ』

風ドラマ。アレクサンダー ペイン監督のお

気に入り作品で、『ホールドオーバーズ 置いて

けぼりのホリディ』の参考にした映画だとか。

去る 7 月 22 日にはシネマテークで本作の

先行上映会があり、パニョル作品の保護と振

concert

Classique au vert

今年の夏も、ヴァンセンヌ城近くのParc Floral でクラシックのコンサートが9月初めまでつづく。

8月17日16hは、Smoking Joséphineという ユニークな名前のグループが登場する。将来が期 待されている女性弦楽器奏者5人からなるグルー プで、プロコフィエフの『ロメオとジュリエット』や バーンスタインの『ウエストサイドストーリー』から の抜粋、ショパンの『バラード第1番』などを演奏 するのだが、このグループならではの溌剌(はつら つ)とした編曲がたのしみ。

restaurant

ガンゲット風ビストロで夏を味わう。 le petit bal perdu

興に努める孫のニコラ・パニョル氏が登壇。

「祖父の作品が時間の中に留まり、新しい観

Cinéma

表作を 含 む 10 本 が

客を生み続けるようにすることが私の挑戦」

と語った。10 月にはパニョルをモデルとした シルヴァン・ショメ監督のアニメ『 Marcel et Monsieur Pagnol 』も公開予定だ。(瑞)

【展覧会】クレオパトラという謎。Le mystère Cléopâtre

古代エジプト最後の女王クレオパトラ7世(紀元 前69 ~紀元前30)については、歴史的事実だけ でなく、作り話も流布している。それらを洗いざら

い見せて、鑑賞者にクレオパトラ像の再構築を促 す展覧会だ。

カエサルの養子オクタウィアヌスは、

紀元前31年のアクティウムの海戦でクレ オパトラとマルクス アントニウスの連合

軍に勝ち、プトレマイオス朝を滅ぼした。

勝った側のローマがクレオパトラについて

「性的変質者」といった否定的なイメー

ジを流し続け、著述家たちもそれに倣っ

たので、逆に現地エジプトや中世のアラ

ブ世界で、聡明な統治者として信頼され

ていたことはほとんど知られていない。そ

の後西洋では長い間顧みられなかったが、 ルネサンス期以降、文学や美術を通して

注目を浴びるようになった。しかし、ロー マ時代に植え付けられたイメージは強く、有名な

自殺の場面は、作者の妄想を伴い性的に表現さ れた。本展のコミッショナーによれば、実際は蛇 に腕を噛まれて死んだそうだが、絵や彫刻では蛇 を手にして全裸で横たわっていたり、蛇に乳房を

8月23日15hは、2015年ベルリンで結成され、 昨年リリースされたブラームス弦楽四重奏曲集が 高く評価されたアガット弦楽四重奏団(写真)が演 奏する。モーツァルトの最晩年の作品、弦楽四重 奏曲第21番は演奏されることが少ないが、明るく 晴れやかな第1楽章、優しい旋律の第2楽章…野 外で聴くのにふさわしい。リゲッティの弦楽四重 奏曲第1番は、バルトークを思わせる緊迫したリズ ムが圧倒的だ。

入園料2.7€を払えばコンサートは無料という のも例年どおり。帽子と水を忘れずに!(真)

Parc Floral : Entrée Nymphéas, 118 Rte de la Pyramide 12e M °Château de Vincennes festivalsduparcfloral.paris/

噛まれて恍惚の表情をしていたりする。20世紀の フェミニズムの時代になると、男性優位社会のロー マ帝国が作った偏見に満ちたイメージから解き放 し、クレオパトラを評価する動きが出てきた。現 代の女性美術家によるクレオパトラを題材にした 作品は、植民地時代のオリエンタリズムの影響を 受けた、エキゾチックで性的なクレオパトラ像とは 大きく違う。会場後半では映画でクレオパトラ役 の俳優が身につけた衣装が展示され、映画の 部がビデオで見られる。(羽)2026/1/11まで。

Institut du monde arabe: 1 rue des Fossés-SaintBernard 5e

8月 : 月休。火木金 11h-19h 水 11h-21h30 土日祭日 11h-20h。

9月以降:月休。火~金 10h-18h 土日祝 10h-19h 。 10 € /26歳未満無料。 屋上のテラスはアクセス無料。

、ア コーデオンをバックに3拍子のリズムにのせて優しく歌う、 ブールヴィルのシャンソンを思い起こさせる店名といい、 雰囲気づくりは抜群だ。 まず試したいのは、日替わりのランチメニュー。前菜 とメイン、またはメインとデザートで18.50€。本日前菜は、 オゼイユ( スイバ)風 味のウフ・パルフェ (温 泉卵 の 一種)。燻製 ベーコンも添えられて いて、軽くてバランス がいい。店 の 雰囲気 に合わせて選んだプロ ヴァンス地方のロゼ( グ ラス5€)とも相性がいい。 メインはウサギのモモ肉のトマト煮という選択もあっ たが、プロヴァンス風野菜のポワレを添えたサバを選ん で正解だった。サバの半身のフィレにたっぷり粒マスター ドのソースが掛かっていて食欲をそそる。野菜のポワレは、 絹さや、グリンピースと小さめのアーティチョークの芯と いう、普段あまり食べる機会の少ない野菜で気分も上 がる。

本日のデザートはフルーツのクランブルだったが、も う満腹 だったのでパス。 ただし、隣のテーブルでは、 食べたいだけよそってくれるというムースオショコラを皿 に山盛りもらって盛り上がっていたので、 これは次回に 挑戦するつもり。(里)

32 rue Tournefort 5e 01.4707.7247

ガンゲットとは、ルノワールの絵画に見られるような、 ワインを飲んだり、 ダンスを踊 休日を楽しむ 川沿いのバーレストランのこと。店内に入るとすぐ目に止 まるカウンター横のジャック タチ監督の映画『Jour de fête( のんき大将脱線の巻)』 の特大ポスター、他にも 古いポスターが壁一面に掲げられた部屋があったり、ア コーデオンをバックに 拍子のリズムにのせて優しく歌う、 ブールヴィルのシャンソンを思い起こさせる店名といい、 雰囲気づくりは抜群だ。 まず試したいのは、日替わりのランチメニュー。前菜 とメイン、またはメインとデザートで18.50€。本日前菜は、 オゼイユ( スイバ)風 味のウフ・パルフェ 温 泉卵 の 一種)。燻製 ベーコンも添えられて いて、軽くてバランス がいい。店 の 雰囲気 に合わせて選んだプロ ヴァンス地方のロゼ( グ ラス5€)とも相性がいい。 メインはウサギのモモ肉のトマト煮という選択もあっ たが、プロヴァンス風野菜のポワレを添えたサバを選ん で正解だった。サバの半身のフィレにたっぷり粒マスター ドのソースが掛かっていて をそそる。野菜のポワレは、 絹さや、グリンピースと小さめのアーティチョークの芯と いう、普段あまり食べる機会の少ない野菜で気分も上 がる。  本日のデザートはフルーツのクランブルだったが、も う満腹 だったのでパス。 ただし、隣のテーブルでは、 食べたいだけよそってくれるというムースオショコラを皿 に山盛りもらって盛り上がっていたので、 これは次回に 挑戦するつもり。(里)

毎日 8h-02h (cuisine : 12h-15h30 /19h-23h30) 無休。8月も営業。 M °Censier-Daubenton / Place Monge

32 rue Tournefort 5e 01.4707.7247 毎日 8h-02h (cuisine : 12h-15h30 /19h-23h30) 無休。8月も営業。 M °Censier-Daubenton / Place Monge Filet

Œuf parfait à l’oseille, poitrine fumée
Jean-André Rixens La mort de Cléopâtre 1874 Huile sur toile 198 x 289 cm Toulouse, musée des Augustins

Carpaccio de magret de canard

Carpaccio de magret de canard

オレンジ風味がさわやかな、カモの胸肉のカルパッチョ。

オレンジ風味がさわやかな、カモの胸肉のカルパッチョ。

4人分:カモの胸肉1枚、オレンジ1個半+飾り用半個、ハ チミツ少々、レモンのしぼり汁少々、オリーブ油大さじ3杯、 塩、コショウ

フライパンにオリーブ油をとって強火にかけ、熱く

料理でも、さっぱりとしていて香り高いものを食べたい

なあ、そうだ、カモの胸肉magret de canardのカル パッチョをつくることにしよう。カモ肉特有の風味には甘酸っぱい ソースが合うから、オレンジ風味はどうだろう。

カモの胸肉は皮つきで一枚380グラム前後ある。4人分のアン トレでも1枚で足りるだろう。胸肉のかたまりの表面に薄い膜が 残っていたら、ペティナイフを膜と肉の間にさし入れ、すっと切り とる。このレシピには皮をつかわないので、皮と身の間にやはり ペティナイフを入れつつ引っぱるようにして、皮と身を切り離す。

料理でも、さっぱりとしていて香り高いものを食べたい なあ、そうだ、カモの胸肉magret de canardのカル パッチョをつくることにしよう。カモ の風味には甘酸っぱい ソースが合うから、オレンジ風味はどうだろう。 カモの胸肉は皮つきで一枚380グラム前後ある。4人分のアン トレでも1枚で足りるだろう。胸肉のかたまりの表面に薄い膜が 残っていたら、ペティナイフを膜と肉の間にさし入れ、すっと切り とる。このレシピには皮をつかわないので、皮と身の間にやはり ペティナイフを入れつつ引っぱるようにして、皮と身を切り離す。

Magret de canard

なったら胸肉を入れ、さっと両面にきれいな焼き色 をつけてから皿にとり出しておく。牛肉のカルパッ チョもしかりだが、肉をできるだけ薄く切ることがお いしさにつながるので、胸肉が冷めたらホイルに包み、 冷凍庫に1時間ちょっと入れておくといい。 その間にオレンジ風味のソースをつくる。1個半を しぼって小鍋にとり、中火で煮詰めていき、量が大 さじ2、3杯分くらいになったところで火からおろす。 最後の方は、とろりとなったオレンジ汁が鍋にくっつ きやすいので、弱火にして絶えず混ぜ合わせていく ことが大切だ。甘みと酸みを強くするために、ハチ ミツ少々、レモンのしぼり汁少々を足すといいだろう。 塩二つまみ、オリーブ油を加えて混ぜ合わせればで き上がり。

冷凍庫からカモ肉をとり出せば、少し固くなっているだろう。よ く切れる包丁をつかってできるだけ薄く切り、大きな皿にきれいに 並べ、ソースをはけでまんべんなくぬりつける。コショウを多めに ひきかけ、塩の華を振り、オレンジの輪切りでかざる。ヴィネグレッ トソース少々で和えたルッコラやクレソンを添えると、その軽い苦 みがいいアクセントになる。メインにするならフリットが付け合わ せだ。ワインは赤よりは、フルーティーなアルザス産の白、リース リングが合いそうだ。(真)

カモの胸肉は、ほとんどの肉屋にあるし、 スーパーでも真空パックのものが置いてある。

カモの胸肉は、ほとんどの肉屋にあるし、 スーパーでも真空パックのものが置いてある。

皮つきでキロ28ユーロ前後はするが、肉が 密なので、メインでも二人で1枚で十分。皮 に小さな格子状に切れめを入れ、ごく弱火 で皮の側からフライパンで焼いていく。皮に きれいな焼き色がついてほとんどの脂がとけ 出たらひっくり返す。もう5分くらい焼けば、 真ん中がまだ赤みがかった、ロゼと呼ばれる 最適な焼き具合。薄く切り分け、塩、コショ ウを振りかけて味わう。

皮つきでキロ28ユーロ前後はするが、肉が 密なので、メインでも二人で1枚で十分。皮 に小さな格子状に切れめを入れ、ごく弱火 で皮の側からフライパンで焼いていく。皮に きれいな焼き色がついてほとんどの脂がとけ 出たらひっくり返す。もう5分くらい焼けば、 真ん中がまだ赤みがかった、ロゼと呼ばれる 最適な焼き具合。薄く切り分け、塩、コショ ウを振りかけて味わう。

カモの胸肉の厚い皮下脂肪が焼いている ととけ出てくる。これをガラス製タッパーに入 れて冷蔵庫で保存しておけば、いろいろと 利用できる。ジャガイモやバスク風に赤ピー マンをいためるときにもおすすめ。チャーハ ンにつかえば、独特のうまみになる。今回の レシピで胸肉から切りはずした皮も、小さく 切ってフライパンでいため、とけ出てきた脂 を大切に保存したい。この脂は不飽和脂肪 酸が豊富で、悪玉コレステロールを下げてく れる。

カモの砂肝を脂漬けにしたgésiers confitsは常備しておくと便利。脂肪ごと鍋 にとってゆっくりと温め直したら、(脂は捨て ないでジャガイモのソテーなどに使う)砂肝を とりだして食べやすい大きさにそぎ切りにし、 フライパンでソテー。ジュジュッーといってき たら、シェリー酒のビネガーvinaigre de xerèsを振りかけ、コショウをきかせ、レタ スサラダにのせる。カモ胸肉の燻製をちらせ ば、ペリゴール風サラダに。マディラン、ボ ルドーなどのコクのある赤ワインで。

Graisse de canard Salade Perigourdine

農業支援法案、可決成立するも、環境面

7/21付リベラシオン紙

「デュプロン法に100万人反対。どうする?」

農業活動への規制を少なくして農業をやりや すくすることを目指す法案が7月8日に国民議会 で可決・成立したが、とりわけ農薬アセタミプリ ドを例外的に使用できる条項に反対する署名が 28日に200万筆を超えた。

この法案は、2024年初頭の農業従事者の大

規模な抗議運動を受けて、ロラン・デュプロン 上院議員(共和党)が農業分野の環境保護規

制の緩和を目指して提出したもの。「デュプロン

法案」と呼ばれ、2日に上院で可決され、8日 には国民議会で共和党、極右の国民連合(RN)

と中道の一部の賛成で可決した(316票対223

票)。法案の内容のなかで最も問題視されたの は、EUでは2033年まで許可されているが 仏で は2020年から使用が禁止されているアセタミプ リド(ネオニコチノイド系)を代替手段がない

場合に期限を設けず例外的に使用できるという

条文。この農薬は主に砂糖用甜菜の栽培農家が、

使用できる欧州他国に対して非常に不利である

ことを理由に使用再開を求めている。他には、

「重要な公益」にかなうとされる農業用巨大貯

水池の建設許可を取りやすくする、鶏や豚の畜

産規模拡大の際、環境への影響評価が義務と

なる基準を現行の4万羽から8.5万羽に、豚は

2000頭から3000頭に引き上げることなど。

カルナック列石群が世界遺産に。 初産の平均年齢29歳。

ブルターニュ地方の「カルナックとモルビアン海 岸の列石群」が7月12日、ユネスコの世界遺産に 登録された。仏の世界遺産は54ヵ所目。この列 石群は欧州新石器時代の紀元前4500年頃から 2000年の間に造られたとされ、最大のもので高 さ6mの約3000のメンヒル(ブルトン語で「長い石」 の意味)が約1000㎡におよぶ557ヵ所に並ぶ。 その意味や働きは、天文学的装置、戦士の墓、 種族の記念碑など諸説あるが、よくわかっていない。 ある市民団体によると、557ヵ所の7割はメンヒ ルの保存状態が悪く、2023年にはDIY店建設の ために39のメンヒルが撤去された。一方、例えば カルナック町では4215人の住民に対してバカンス 客5万人、列石群の観光客が年間70万人。今後、 博物館、ホテルなどの建設が予定されており、オー バーツーリズムを懸念する声もある。

仏国立統計経済研究所(INSEE)によると、仏 女性の初産の平均年齢は2023年に29.1歳となり、 2013年よりほぼ1歳、1974年より5歳上がった(ち なみに第2子は31.6歳)。だが、EU全体の平均 29.8歳よりは低い。初産年齢の上昇は世界的傾 向で、1995-2014年の20年間で世界の平均初産 年齢は26.1歳から28.7歳に上昇。仏では出生数 も2010年の82.8万人から2023年は66.3万人に 減り、2022年比でも5万人減となっている。一人 の女性が一生に産む子の数を表す合計特殊出生 率も欧州の優等生と言われた2010年前後の2.0 人から2024年は1.59人にまで下がり、少子化傾 向にある。社会学者は、気候不安や経済的な不 安などの原因を上げている。

の後退に反対署名200万筆以上。

この法案に対し、左派諸党は環境保護政策 が後退するとして国民議会審議の際に約3500 の修正案を提出した。しかし、多数の修正案 の審議を避けて法案の成立を急ぐ右派や中道 右派は、審議前にわざと法案を却下する採決 を可決させ、その結果、両院合同委員会で法 案の折衷案が策定され、上院可決後、国民議 会で可決成立した。本来の審議を避けるこの右 派のやり方は「民主主義の否定」と左派から激 しく批判を浴びた。「服従しないフランス」党議 員が、がんに侵された農業従事者や近隣住民 の名前を書いたプラカードを議場で掲げて抗議 する場面もあった。 こうして成立したデュプロン法案に対し、23 歳の学生が7月10日に国民議会のウェブサイトか ら法案反対の署名運動を開始し*、わずか9日

間で異例の50万筆を突破**。21日に150万筆を

超えた時点でジュヌヴァール農業相は政府は議

論に前向きと表明したが、その議論が実現した としても、国会が休みに入るため臨時国会が始

南仏の大学に米研究者31人受け入れ。

1930年代に欧州の学者がナチスやファシズムを 逃れて米国に渡ったのと同じことが逆方向で起き るのか?南仏のエックス=マルセイユ大学(AMU) は7月18日、米国の研究者31人を9月の新学年か ら迎えると発表した。AMUは、トランプ米政権の 研究職・研究費削減策のために国外移住を希望す る研究者を受け入れることに積極的で「Safe Place for Science」計画を発足。約300人の米 研究者の応募があった。受け入れの決まった31人 は人文科学、生物学、伝染病・免疫学、宇宙など 多分野の教授クラスかシニア研究員。仏ではマク ロン大統領が1億€の受け入れ予算を提示したほか、 EUも米研究者受け入れのために今後2年間で5億 €の予算を組んだ。AMUのほか、トゥールーズ、 パリ=サクレー大学も受け入れに前向きだ。しかし、 仏の研究予算は過去2年で15億€削減されており、 今春も学生や研究者が抗議運動を展開したばかり。

まる9月16日以降になる。2つの自然保護団体は 22日、憲法第10条に基づいて法案を公布せず、 再審議を命ずるようマクロン大統領に求めた。 しかし、大統領は国会議員が 提訴した憲法評 議会の8月上旬の判断を待ちたいようだ。また、 パニエ=リュナシェ=エコロジー移行相と法案 賛成派のアタル元首相はアセタミプリドの使用 に関してANSESに諮問したい意向だ。しかし、 ANSESは2018年と2020年の2度にわたって環 境への影響が少ない代替農薬を提案しており、 再度のANSES諮問は無駄との声もある。法案 反対派の左派や中道の議員は秋にアセタミプリ ドの例外的使用の条文を破棄する法案を提出 する意向で、この問題の決着は秋以降に持ち越 されそうだ。(し)

* https://petitions.assemblee-nationale.fr/initiatives/i-3014 **署名が10万筆を超え受諾できると判断されると、国民議会 の該当する委員会が署名を吟味し、報告書を作成するか否か を判断する。30県以上から集まった50万筆を超えると、国 民議会の会派議長会議が、議場で議論を行なうか否かを決 定する。

[ ことば ] mot

「masculinisme」

最近マスコミで目にする機会が増えたコト バで、最新版Petit Robertにも登場した。 男性は犠牲者になって差別を受けていると し、男性優位を回復しようとする、フェミニ ズム運動の対極にある考え方や発言のこと。 SNS上の「女性は子供とおんなじさ。こちら がいくら努力しても見返りがない」などのイン フルエンサーによる差別発言にアクセスする 若い男性が急増中。

[ 数字 ] chiffre

3700人

昨年フランスで、猛暑が原因で亡くなっ た人は約3700人。2022年の10420人、 2023年の5167人よりは少なめだった。 今年の8月も暑さがきびしそう。日中は、外 出を避けること、ブラインドをおろして窓を閉 めること、水を頻繁に飲むこと…。

ÉLÉGANCE ET MODERNITÉ – L’ART DÉCO A 100 ANS エレガンスと現代性、アール・デコは100歳!展 ART DECO 1925-2025 今年はアール・デコ

GASTON SUISSE (1896-1988) DE NATURE ET D’OR ガストン・スイス 自然と黄金

1925年、パリで現代産業装飾芸術国際博覧会が開催された。通称〈アール デコ万博〉。1910~30年代にかけてフ ランスを中心に、建築、家具、モード、グラフィック、彫刻などの分野で装飾デザインを一新し、世界に伝播した装飾様 式「アール デコ」の名の由来となった博覧会だ。今年は「アール デコ」誕生100周年にちなんで、全国で展覧会が開催 される。先陣を切ってふたつの展覧会が始まった北フランスの街、サン・カンタンへ行ってみよう。 ガストン スイスは、ジャン デュナン、アイリーン グレイらと並ぶヨーロッパを代表す る漆工芸作家。幼いころから父親が蒐集していた日本と中国の美術書を見て育ち、パリ植 物園に通って動物や草花をスケッチし、のちに動物画家として大成した。本展では、植物 とサギ、白イタチ、金魚などを、漆とは思えない質感と緻密さで表した装飾パネルや、アー ル デコ調の幾何学モチーフの家具、屏風などを見ることができる。 ヨーロッパでは17世紀から漆器が賞賛されたが、当初はオランダがアジア漆器の通商を 独占していた。早くも1680年にはベ ルギーで、1730年にはフランスで漆 をまねた塗料が開発されるほど関心 が高かった。スイスはパリ装飾美術

「サン・カンタンはフランス最初のアール・デコ都市」と、本展 キュレーターのエマニュエル ブレオン氏。第一次世界大戦後、 ランスと同時に国内でいち早くアール・デコ様式で再建が進めら れた町だからだ。「エレガンスと現代性」展の会場も、戦後再 建されたかつての百貨店。今は「 アール・デコ宮」と呼ばれる

展示スペースだが、大きな吹き抜けのホールは金色に輝くヤシ の葉の装飾が贅沢で華やか。この展覧会に、これ以上ふさわし い場所はないだろう。

展示 は、1925年 の 万博に設けられたパビ リオンと、そこに出展さ

れたものを見ながら100 年前の万博会場を訪れ るという設定 だ。万博 地図を見ると、 セーヌ 左岸アンヴァリッドか ら右岸のグラン・パレ とプチ パレ周辺一帯が会場になっている。アンヴァリッド 前 の「 フランス大使館パビリオン」は、当時随一の装飾家や建築 家が、想像の大使館をアール デコ様式で創った。ロベール マレ=ステヴァンスの入口ホール、ピエール・シャロー作の書斎、 ジャン デュナン作の漆塗りの喫煙室、東京・目黒の庭園美術 館を手がけたアンリ・ラパンによる食堂…。そこを出るとセーヴル 製陶所館、高さ15mのガラスの噴水があるガラス作家のラリック 館。アンリ・ソヴァージュ設計によるプランタン百貨店の「 プリマ

A G E N D A

EVENEMENTS

● 8月17日(日)まで Cinéma en plein air à La Villette

毎夏恒例、ラ・ヴィレット公園・夜の屋外シネ マ。今年のテーマは音楽とダンス。8月17日まで の、月火をのぞく毎晩。今年は子ども向け上映 séance jeune publicを毎晩18hから。通常上映 を21hからと開始時間を例年より早めにしメトロ で帰れるように。予約不要、無料。

Parc de la Villette : 211 av. Jean Jaurès 19e M°Porte de Pantin下車すぐ。

上映プログラム☞ www.lavillette.com

● 8月7日(木)、14日(木) Nocturnes au Zoo de Vincennes 8月7日と14日は、夜(18h-22h)のヴァンセンヌ 動物園を楽しめる。温室でコウモリの給餌を見る チャンスも。通常入園22€のところ一律15€。ネ ットで「Nocturnes」チケットを購入。 チケット☞www.parczoologiquedeparis.fr/ Parc zoologique de Paris : Av. Daumesnilと Route de la Ceinture du Lacの角。12e。16歳 未満は大人の付添い要。動物園は夏休暇中は 9h30-19h30。

①靴のバックル 1913-1936 Romans-sur-Isère Musée de la Chaussure

②小ヤギの皮の靴 1922年 Romans-sur-Isère Musée de la Chaussure ③時計 アルベール・シュレ置き時計 Albert CHEURET Pendule vers 1925,  個人コレクション

ヴェーラ館」。ボン マルシェやギャラリー ラファイエットのパビ リオンもある。アレクサンドル3世橋の上にはブティックが立ち並 び、ファッション、アクセサリー、香水、斬新な家具などが人々 を驚かせた。クチュリエのポール・ポワレはセーヌに船を三艘浮 かべてパビリオンに( じきに破産してしまうのだが)。革新を競い 合う会場にはル・コルビュジエの「 エスプリ・ヌーヴォー館」もあっ たが、日本館は伝統的な数寄屋造りの和風建築だったから、逆 に人々は驚いたかもしれない。100年前の狂乱の時代気分に浸っ た後は、この町のアール デコ散策*に出かけよう。 Palais de l ’Art déco: 14 rue de la Sellerie, Saint-Quentin チケット購入はMonoprixの隣、Espace SaintJacques内。展示入口は2 階のMusée des papillonsの奥左。9/21まで 8 € /5 € /18 歳未満無料。月休、火~日 14h-18h

*オヴニー「サン・カンタンの アール・デコ散策」特集 ( 2023年947号)もご覧ください。 ovninavi.com/saint-quentin _balade-artdeco/

Musée des Beaux-Arts Antoine Lécuyer : アントワーヌ・レキュイエ美術館

28 rue Antoine Lécuyer 02100 Saint-Quentin 5 € /2.5 € 。当館+アール・デコ宮+蝶博物館=10 € 。月休、火~日 14h-18h 。

水と土は午前中開館 10h30-12h30。アール・デコ宮まで徒歩15分。 展覧会場となっているアントワーヌ・レキュイエ美術館は、サン・カンタン出身の画家モーリス・カンタ ン・ド・ラ・トゥール(1704-88)のコレクションで有名。ヴォルテールやルソー、ポンパドゥール夫人、 自画像などパステルを使った軽やかで柔らかな色彩の肖像画が常設展で見られる。

● 9月10日( 水)まで Cinéma sur le toit

ムーラン・ルージュの赤い水車が立つ屋根の上の バー「Bar à Bulles」で毎水曜、映画上映。席数 が少ないので行きたい上映日のチケットは、前週 の木曜正午に予約!☞ https://shotgun.live/fr/ venues/la-machine-du-moulin-rouge(ネットで 満席でも当日入れる可能性も)。ヘッドホンで映画 を観るのでデポジット用ID必要。開場20h15、最 終入場21h15、22h10上映開始。映画は無料、で もドリンクを買いましょう。

Bar à Bulles (La Machine du Moulin Rouge) 4, Cité Véron 18e M°Blanche/Place Clichy

● 8月31日(日)まで David Hockney 25 デイヴィッド・ホックニーの1955年から今年まで 400作品が一堂に会する大展覧会。初期の代表作 も堪能できるが、88歳の巨匠がこだわったのは、こ こ25年間の作品を見せること。90年代後半から描 いた故郷ヨークシャーの風景、2000年頃からの肖 像画や花。ノルマンディー生活で描いた風景、月シ リーズまで勢揃い。

Fondation Louis Vuitton : 8 av. du Mahatma

Gandhi, Bois de Boulogne 16e M°Les sablonsから徒歩15分。凱旋門近く(44 av. de Friedland 8e)から無料シャトルバスが約 20分毎に往復。www.fondationlouisvuitton.fr 月-金11h-21h(木 -23h)、土日10-20h。 16€ /10€(26歳未満、学生)/ 5€(18歳未満)/ 家族割32€(大人2人まで+18歳未満4人まで)。

● 9月28日(日)まで L e Mur de Berlin. Un Monde Divisé 〈ベルリンの壁・分断された世界〉

広島・長崎の原爆投下で核の脅威を知ったにもか かわらず世界は核開発競争へと舵をきった。1961 年にベルリンの街に有刺鉄線が敷かれたが、これ が堅牢な壁になり監視技術も進歩。展示前半では 壁の設計図ほか、時代を象徴するモノと証言が当

時の緊張感を伝える。「冷戦」では直接の戦闘は なかったいっぽうで、ベトナム、朝鮮、アフガニスタ ンなどでは血で血を洗う代理戦争に。旧植民地の 独立への戦いでも多大な犠牲者...不条理すぎる世 界を俯瞰する展示後半。その後、東欧革命、そして ベルリンの壁崩壊へとたどり着く。入場料は高め で、見学は3時間ほどかかるが、必見の展覧会。 Cité de l’architecture:1pl.du Trocadéro 16e  M°Trocadéro火休。水金日11h-19h(最終入場 17h30)、月木土11h-21h(最終入場19h30) 19.50€/17.50€/月曜は一律14.50€。

● 2026年1月4日(日)まで Hiroshima, fragments de vie 1944年6月のノルマンディー上陸作戦の後、激し い戦闘が繰り広げられたカーンの町には、第二次 世界大戦から冷戦までの記憶を継承する記念館 「メモリアル」がある。原爆投下から80年の今年 は、広島平和記念資料館所蔵の写真を展示。広 島に住んでいた鈴木家のアルバムから原爆前の 平和な生活を見せつつ、それを一瞬で地獄に変え た原爆について考えさせる展覧会。

Le Mémorial de Caen:Esplanade Général Eisenhower 14050 Caen カーン中心街からはバスn°2 Caen Mémorial 行き。国鉄カーン駅からはligne circulaire Ellips 6aか6b。Tél : 02.3106.0645

毎日9-19h。20.80€ /18.50€ (10-18歳と65 歳以上)/家族割53€(大人2人と10-18歳2人以 上可)/6€(学生)オーディオガイドは+3€。

EXPO
© Photo by Rokuro Suzuki / Courtesy of Tsuneaki Suzuki
©Aigrettes Laque polychrome gravé, sur fond de laque noire, 1938. Aigrettes réalisées à la poudre

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