The Neighborhood Way
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Editor in chief : Shigeyuki Inoue
Director : Masami Kurosawa
発行 / 株式会社KURUMAG. 東京都中央区築地1-5-1
制作 / 株式会社クロモ・コミュニケーションズ
協力 / Travel Portland(ポートランド観光協会)、マツダ株式会社
広告掲載に関するお問い合わせ / 株式会社KURUMAG plusroadtrip@kurumag. net
本誌掲載の記事・写真・イラスト等の無断転載および複写を禁じます 本誌掲載の情報は取材を行った2025年時点での情報です(2025年4月発行) page. 06 Neighborhoods of Portland page. 08 North Portland page. 12 North West Portland page. 18 North East Portland page. 24 South & South West Portland + Downtown page. 32 South East Portland Portland Edition
The Neighborhood Way Portland text=Shigeyuki Inoue
photo=Shigeyuki Inoue, Travel Portland, Travel Oregon, Brand USA
CASCADA Thermal Springs + Hotel, Porsche, Portland Inte rnational Airport
Oregon Museum of Science and Industry, University of Po rtland
オレゴン州最大の都市・ポートランドは、この地を訪れる誰もが魅了される場所である。北海道・札幌 市とほぼ同じ緯度に位置し、約375㎢の面積を持つこの都市は、豊かな自然と都市が見事に調和し ていることでも知られている。都市の北側にはオレゴン州とワシントン州を隔てるコロンビア川が流 れ、中心にはウィラメット川がゆったりと蛇行する。その川にはそれぞれの都市と文化をつなぐ12もの 橋が架かることから「ブリッジ・シティ」とも称されている。
また、市内には大小さまざまな公園や緑地が点在し、なかでも西部に位置するワシントン公園は約 410エーカー(東京ドーム35個分以上)の広さを誇る。都市にいながらにして、自然との距離が驚く ほど近いというのがポートランドという都市の魅力のひとつになっている。
ポートランドのもうひとつの魅力は、ネイバーフッド(近隣地域)ごとに異なるカルチャーが息づい ていることだ。アート、音楽、コーヒー、ビール、工芸といったさまざまな地元文化が自然に根付き、 それぞれのエリアが個性を競いあうように進化し続けている。移住者やクリエイターを惹きつける 自由でフレンドリーな空気、多様性を受け入れる懐の深さと新しいものを歓迎する柔軟さは、初め て訪れる旅行者にとっても心地のよいものだ。
本誌では多くの魅力を持つポートランドを5つのエリアに分け、それぞれのネイバーフッドを巡る旅 を提案したい。文化と歴史がにじむスポット、自然に癒される空間、個性溢れるショップやカフェな ど、どれもこの都市を語るうえで欠かせない場所ばかり。クルマでのアクセスもよく、オレゴン州で ロードトリップの拠点としても最適なポートランドを、ぜひ新しい視点で楽しんでほしい。
Portland
Neighborhoods of Portland ポートランドは大きく5つのエリアに分かれており、それぞれの地域に独自のカルチャーや風景が息 づいている。緑豊かな住宅街、クラフト文化が根付くアート地区、川沿いのマーケットや歴史ある建 物、そして多国籍な食や音楽が楽しめるストリートなど、歩くエリアによってまったく異なる表情を見 せてくれるのが、この都市の魅力だ。ポートランドを訪れたら、それぞれのエリアをめぐりながら、ネイ バーフッドごとの文化や個性に直接触れてみる。これこそこの都市を楽しむ醍醐味といえるだろう。
North Portland
ポートランドの北部、コロンビア川とウィラメット川に囲まれたエリア。インダストリアルな風景と自 然が同居し、セント・ジョンズなど個性的な町が点在している。広大な湿地帯、静かな住宅街、港湾 施設、レーシングサーキットなど、多様な表情が共存。橋を渡ればワシントン州にも近く、ローカル な暮らしの息遣いとともに、町外れならではの魅力に出会うことができる。
North West Portland
歴史ある邸宅が建つ高台エリアから、広大な自然が広がるフォレストパーク、洗練されたノブヒル のブティック街、そしてブックラバーの聖地といわれるパウエルズ書店まで、都市と自然、クラフトと カルチャーが心地よく融合し、ポートランドらしさを体感できる。観光の拠点としても最適で、街歩 きを楽しみながらポートランドならではの文化に触れることができるエリア。
North East Portland
アートと音楽、フードカルチャーが融合したクリエイティブなエリア。アルバータ・アーツ・ディストリ クトを中心に、地元アーティストや個人商店が立ち並び、この地を散策すれば町から多くの刺激を 受けることができる。ウィラメット川沿いにはスタジアムやイベント施設も多く、スポーツ観戦やフェ ス参加にも最適。また北部にはポートランド国際空港もあり町の入り口としての顔も持っている。
South & South West Portland + Downtown
行政機関や歴史的建造物、文化施設が集まるポートランドの中心街。ウォーターフロントやローズ ガーデン、コンサートホールに個性派カフェ、週末のマーケットまで、町の賑わいと静かな自然風景 が交差する。路面電車やバスのほかレンタルeBikeなども充実しており、観光客でもポートランドの 表情が最も濃縮されたエリアを気軽に楽しめるようになっているのも魅力。
East & South East Portland クリエイティブな空気に満ちたローカル感溢れるエリア。フードカート文化の中心地としても知ら れ、個性派ショップやアートウォール、ヴィンテージ雑貨店などが点在する。さらに郊外に足を延ば せば、マウント・テーバーやクリスタルスプリングス・ロードデンドロン・ガーデンなど自然も豊富。町 の奥行きを感じながら、暮らすように旅を楽しめる地域だ。
University of Portland
45°34'23.5"N 122°43'39.2"W
ウィラメット川を望む高台にキャンパス を構えるポートランド大学。1901年創 立の私立大学で、レンガ造りの建物が立 ち並ぶ静かなキャンパス周辺は、散歩す るのにも心地よい場所として知られてい る。全米屈指の教育水準を誇る小規模大 学として知られるポートランド大学の周 辺には、学生向けのベーカリーやブック カフェ、学生や地元住民に愛されるダイ ナーなども点在している。大学のある都 市特有の落ち着いた空気が流れ、観光と はまた異なる日常のポートランドに触れ られる場所でもある。
University of Portland
5000 N Willamette Blvd, Portland, OR 97203 https://www.up.edu/
Peninsula Park
45°34'05.7"N 122°40'25.0"W
ノース・ポートランドの住宅街にひっそ りと佇むペニンシュラ・パークは、1913 年に開園した歴史ある公園である。最大 の見どころは、バラが幾何学的に配置さ れた美しいサンケン・ローズガーデンだ。 噴水と左右対称の花壇がクラシカルな雰 囲気を漂わせ、春から夏にかけては色と りどりのバラが園内を彩る。芝生広場や 遊具、ピクニックテーブルも整備されて おり、地元の家族連れにとっては毎日の 生活の中にある憩いの場だ。観光客には あまり知られていない、隠れた名所なの でぜひチェックしてほしい。
Peninsula Park
700 N Rosa Parks Way, Portland, OR 97217 https://www.portland.gov/parks/peninsula-park
Mississippi Ave
45°33'06.1"N 122°40'32.0"W
ミシシッピ・アベニューはローカルカル チャーの発信地として知られるストリー トだ。古い木造家屋を改装したショップ やカフェ、レコード店、ギャラリー、そ して飲食店が通りに沿って立ち並び、歩 くだけで創造力が刺激されるエリアであ る。週末には地元のマーケットやイベン トも多く開催されており、音楽と人の賑 わいに包まれる。クラフトビールとビー ガン料理、DIYとアートが共存する独自 の空気感は他のエリアにはない独自のも の。ポートランドの「今」を肌で感じる ことができる場所だ。
Mississippi Ave N Mississippi Ave, Portland, OR
ミシシッピ・アベニューの東側を平行に走るウィリアムス・アベニューは、ノース・ポー トランドの東端に位置し、再開発と地域文化が共存するエリア。もともとはアフリカン・ アメリカン・コミュニティが多く暮らす場所として栄えた歴史を持ち、現在もその文化の 名残が町並みに息づいている。通り沿いにはコーヒーショップやレストラン、ポートラン ドの自転車文化を感じさせる店舗が並び、古さと新しさが交差する。大通りでありながら 歩行者にもやさしく、気取らない雰囲気の中を散策しながら地元の暮らしを垣間見ること ができる。ミシシッピ・アベニューとは異なる成熟した文化とその奥行きが感じられる。
North Portland
Portland International Raceway
45°35'48.1"N 122°41'12.3"W
住宅地のすぐそばに位置するというユニークな立地を持つ、 ポートランド・インターナショナル・レースウェイ。1960 年に開設されて以来、インディカーやドラッグレースなど 幅広いモータースポーツが開催されてきたサーキットだ。 近年では、電動フォーミュラーカーによる世界最高峰のレー ス「Formula E」の開催地にも選ばれ、世界中から注目を集 めている。レースのない一般開放日には自転車やランニン グでコースを楽しむこともでき、スピードと静けさが交差 するポートランドならではのユニークな空間である。
Portland International Raceway 1940 N Victory Blvd, Portland, OR 97217 https://portlandraceway.com/
City Guide: Portland
North West Portland Forest Park 45°31'37.2"N 122°43'35.2"W
Nob Hill
45°31'45.3"N 122°41'54.8"W
市街地からわずか数分でアクセスできる 広大な自然、それがフォレストパークで ある。総面積はおよそ5100エーカーに もおよび、全米でも最大級の都市近郊原 生林のひとつとして知られている。公 園内のトレイルの総延長は130kmを超 え、ハイキングやトレイルラン、バード ウォッチングを楽しむ人々で賑わってい る。市街地のすぐそばにこれだけの原生 林が保たれていること自体が、ポートラ ンドという都市の価値を高めている。日 常の延長で出会える非日常の風景は、ま さにこの地のもうひとつの顔である。 アウトドア・フットウェア・ブランドと して世界的に知られるKEENの本社があ るのも、ここノース・ウエスト・ポート ランドだ。築100年を超える古い倉庫を リノベーションした建物には、オフィス だけでなく直営のフラッグシップストア が併設されており、最新モデルから限定 アイテムまで幅広く揃う。サステナビリ ティを重視するブランド哲学はこの空間 にも反映されており、再生資材を使った 什器やローカルアートとも共存。KEEN の製品を通して、ポートランドならでは の価値観に触れることができる。
Forest Park
Wildwood Trail, Portland, OR 97210
https://www.portland.gov/parks/forest-park
ダウンタウン北西に広がるノブヒルは、 住宅地と商業エリアが美しく融合する 町である。路面電車の走るトラム路線 や、並木道に沿った整然とした区画に よって不安なく心地よい散策が楽しめ るのも魅力。トレンドの発信地として 知られる町の中心となるNW 23rd ア ヴェニュー周辺は、滞在中の拠点とし て選ぶのにもおすすめ。歴史ある建物 がそのまま暮らしに溶け込み、ゆった りと時間が流れるこのエリアは、利便 性と小さな町の親しみやすさ、その両 方を楽しむことができる。
Nob Hill NW 23rd Ave, Portland, OR
KEEN 515 NW 13th Ave, Portland, OR 97209
https://www.keenfootwear.com/
ノブヒルの中心、NW 23rd Aveは店先から漂う香り、ショーウィンドウに並ぶクラフト作品、 角を曲がるたびに現れる新しい景色など、歩いてこそ楽しめる通りだ。クラフトアイスク リームの名店「Salt & Straw」では、季節限定フレーバーを片手に散歩するのが定番スタイ ル。地元の素材とセンスを味わうなら、ファーム・トゥ・テーブル料理が評判の「Fireside」 へ。アクセサリーショップ「Betsy & Iya」では、橋の造形美にインスパイアされたジュエリー が並び、音楽と雑貨の融合空間「Tender Loving Empire」では、ローカル文化そのものを持 ち帰ることができる。ノブヒルは、見て・味わって・感じる"お気に入り"が見つかる場所だ。
North West Portland Powell's City of Books 45°31'23.3"N 122°40'52.5"W
”世界最大の独立系書店”として知られ るパウエルズ・シティ・オブ・ブックス は、ポートランドを語る上で外せないラ ンドマークのひとつ。パール・ディスト リクトに位置する本店は1ブロック全体 を占め、100万冊以上の書籍を所蔵。新 刊と古書がジャンルごとに並び、まるで 図書館のような空間になっている。9つ の色分けされたルームに迷い込む感覚も この書店ならではの楽しみのひとつ。読 書家だけでなく、旅人にとっても偶然の 出会いが生まれる。旅の思い出になるオ リジナルグッズも充実している。
Powell's City of Books
1005 W Burnside St, Portland, OR 97209 https://www.powells.com/
Lan Su Chinese Garden ダウンタウンの一角に突如として現れ る、本格的な中国式庭園が蘭蘇園(ラ ン・スー・チャイニーズ・ガーデン)だ。 2000年に開園したこの庭園は、中国・蘇 州の伝統的な園林建築を忠実に再現して おり、池や橋、東屋、回廊が静かな空間 を織りなす。約400種類の植物が四季を 彩り、町の喧騒から一歩離れたような穏 やかな時間が流れている場所だ。園内に は中国茶が楽しめるティーハウスも併設 され、異国の文化と静けさに浸ることが できる。ポートランドの多様性を象徴す るスポットのひとつである。
Lan Su Chinese Garden
239 NW Everett St, Portland, OR 97209 https://lansugarden.org/
Nike生誕の地であるオレゴン州。その空気を肌で感じられる場所のひとつが、ダウンタウ ンにあるデッド・ストック・コーヒーだ。オーナーは元Nikeのデザイナー。自身のルーツ でもあるスニーカー・カルチャーやバスケットボールへの愛情を、空間全体で表現している。
店内にはレアなスニーカーやヴィンテージポスター、NBA関連のグッズが並び、ここがた だのコーヒーショップではないことがすぐに伝わる。Nikeファンにとっては聖地のような 場所であり、何気なく立ち寄った人にとってもこの町の文化を知るきっかけになるだろう。 カルチャーと会話が自然に混じり合う、ポートランドらしいカフェである。
Deadstock Coffee 元Nikeデザイナーによるストリートの 感性が息づく異色のカフェとして人気を 集めるデッドストック・コーヒー。提供 されるコーヒーは一杯ずつ丁寧に抽出さ れ、豆のセレクトや焙煎にも強いこだわ りが感じられ、フルーティーな浅煎りか ら重厚なダークローストまで、味の幅も 広く、どの一杯にも鮮烈な個性を感じら れる。観光地の喧騒から少し外れた路地 にありながら、朝からローカルとツーリ ストで賑わう人気店で、真のコーヒー好 きにこそ訪れてほしい、ポートランドの 良心のような存在である。
Deadstock Coffee
408 NW Couch St Suite 408, Portland, OR 97209 https://deadstockcoffee.com/
City Guide: Portland
ポートランドのランドマークとして、数多 くの写真や映像に登場するホワイト・スタッ グ・サイン。レンガ造りのビルの屋上に立 つこのネオンサインは、レトロで愛らしい トナカイのシルエットとともに「Portland Oregon」の文字が輝く。1957年の設置以来、 何度か文言の変更を経ながらもポートラン ドの象徴として受け継がれてきたもので、 特に冬季にはトナカイの鼻が赤く点灯する 演出も行われ、ホリデーシーズンの風物詩 となっている。サインはオールドタウンと パール・ディストリクトを繋ぐダウンタウ ン東端のバーンサイド橋近くにある。
Portland Oregon White Stag Sign 70 NW Couch St, Portland, OR 97209 https://www.oregonencyclopedia.org/articles/ white_stag_manufacturing/
Portland Oregon White Stag Sign
Elegant Crossings Over the Willamette: Bridge City Twelve Bridges Connecting Portland’s Neighborhoods 橋とともに暮らすポートランド 12の橋がつなぐネイバーフッド
ウィラメット川とコロンビア川、ふたつの川にまたがって広がる ポートランドの地形は、この都市のあらゆる場所に橋を必要とし、 やがて橋そのものが風景をつくり、この都市のネイバーフッド文 化を育ててきた歴史がある。市内には構造も用途も異なる、機能 性と美しさを兼ね備えた12の主要な橋が架かっており、現在では "ブリッジ・シティ"という愛称も与えられるまでになっている。
12の橋のなかには、スティール・ブリッジのような鉄橋もあれ ば、モダンでミニマルなデザインが光るティリカム・クロッシング・ ブリッジのような橋もある。100年以上に渡ってポートランド市民 の暮らしを支え続けているスティール・ブリッジを始め、ホーソー ン・ブリッジやセルトウッド・ブリッジのような橋は、レトロな可動 構造や鋼材によるディテールが今も残されており、この都市の歴 史を今に伝えている。一方で、ティリカム・クロッシング・ブリッジ は歩行者、自転車、公共交通機関専用の橋で、自動車を通さない
構造は環境都市としてのポートランドの理念を象徴している。 それぞれの橋に異なる機能や個性があるため、橋めぐりをして みるのもポートランドの楽しみかたのひとつだ。自転車ならモリソ ン・ブリッジからイーストバンク・エスプラネード経由でホーソー ン・ブリッジを渡り、ウォーターフロントトレイルへと周遊するのも 気持ちのよいルート。歩いて渡るなら、ホワイト・スタッグ・サイン を眺めながらバーンサイド・ブリッジを散策するのもおすすめだ。
橋の上からは川面に映る街灯の光、遠くに見えるマウント・フッド のシルエット、MAXライトレールや貨物列車など、都市と自然が 溶け合うポートランドの輪郭を望むことができるだろう。
夏には橋の上やその周辺ではイベントが開かれ、川沿いの空間 と橋が一体となって賑わいをつくっており、マラソン大会のコー スに組み込まれたり、車両通行を制限して市民がピクニックを楽 しんだりと、橋が"暮らしの舞台"としても活用されているのが面白 い。ポートランドの橋は、単なる交通インフラではなく、文化の記 憶を刻み、人と人、町と町、時代と時代をつなぎ続ける象徴にな っている。川を渡るたびに、"ブリッジ・シティ"ポートランドのこと がますます好きになっていくはずだ。
Moda Center
ポートランド・トレイルブレイザーズの 本拠地として知られる屋内アリーナがモ ダ・センターだ。最大約2万人を収容す るこの会場では、NBAの試合だけでな く、コンサートやライブイベント、アイ スショーなど多彩な催しが行われてい る。広大な敷地内には周辺施設も充実し ており、イベント当日は大勢の観客で賑 わう。アクセスもよく、MAXライトレー ルの駅からは徒歩圏内。スポーツとエン ターテインメントが交差するこの空間 は、ポートランドの熱量を肌で感じるに は絶好の場所である。
Moda Center
1 N Center Ct St, Portland, OR 97227
https://www.modaportland.com/
North East Portland Lloyd Center
1960年に開業したロイド・センターは、 ポートランド東側を代表するショッピン グ&エンターテインメント複合施設であ る。かつては全米最大級のショッピング モールとして知られたが、現在は地元に 根付いた商業空間として機能している。 館内には映画館やスケートリンクなども あり、ショッピングだけでなく、時間を 過ごす場所としての魅力も兼ね備えてい る。都市再開発の波に呼応しながら形を 変え続けているこの施設は、ポートラン ドの過去と現在を映し出す、象徴的なス ポットのひとつである。
Lloyd Center 2201 Lloyd Center, Portland, OR 97232 https://www.lloydcenter.com/
Alberta Arts District
ノース・イースト・ポートランドを代表 するカルチャー発信地のひとつがアル バータ・アーツ・ディストリクト。通り 沿いにはギャラリーやブティック、カ フェ、壁画アートが並び、歩くだけで町 全体がキャンバスのように感じられる ほど刺激的。特に毎月開催される「Last Thursday」では、アーティストやパフォー マーが通りを埋め尽くし、町の賑わいは 最高潮になる。DIY精神と表現の自由が 息づくこの通りは、ポートランドの創造 性と多様性を象徴。アートを"観る"の ではなく、"出会える"場所である。
Alberta Arts District 1036 NE Alberta St, Portland, OR 97211 https://www.travelportland.com/ neighborhoods/alberta-arts-district/
アルバータ・ストリート・パブは、30年以上にわたりノース・イースト・ポートランドの カルチャーを支えてきた存在。かつては「Love Train」「Alberta Street Public House」として 親しまれ、今も地元の人々が集う場所として変わらぬ人気を誇る。店内ではジャズやフォー ク、ブルーグラスなど、ジャンルを超えたライブミュージックが鳴り響く。21のタップが 並ぶクラフトビール、地元食材を使った料理、広々としたパティオ空間も魅力だ。気取らず、 どこか懐かしい空気が流れ、音楽と会話が自然に交差する、そんな空気感がこの店の魅力 である。特別な何かがなくても、ここにはいつものポートランドがある。
North East Portland Laurelhurst Theater
45°31'23.6"N 122°38'15.0"W
ローレルハースト・シアターは1923年 に建てられたアール・デコ様式の映画館。 ポートランドのカルチャーとクラシック 映画への愛を体現するこの劇場は、独立 系やアート系の作品から話題のメインス トリーム映画まで、多彩なラインナップ を上映している。リーズナブルな料金設 定に加え、クラフトビールやワインを片 手に観賞できるところも人気を集めてい る。ローレルハースト・シアターで地元 のファンに混ざって映画を楽しむひとと きは、この町の一部になった気分まで味 わうことができるはずだ。
Laurelhurst Theater 2735 E Burnside St, Portland, OR 97214 https://www.laurelhursttheater.com/
Danner Factory Store ポートランド国際空港のすぐ近くにある ダナーの直営ファクトリーストア。1932 年に創業したポートランド発のブーツは タフで美しい作りに定評があり、アウト ドア愛好家やワークウェアファンから長 く支持されてきた。この店舗では定番モ デルや限定アイテムのほか、アウトレッ ト商品も取り扱っており、掘り出し物に 出会えることもしばしば。店内には製造 過程の展示や職人の手仕事によるリペア サービスも行われている。機能と美意識 を兼ね備えた、ポートランドらしい"道 具としての靴"に出会える場所。
Danner Factory Store 12021 NE Airport Way B, Portland, OR 97220 https://www.danner.com/
ポートランド国際空港(PDX)は、市内中心部までわずか38分でつなぐMAXライトレール・ レッドラインが乗り入れている。運賃も2.8ドルと手頃で、早朝から深夜まで運行し、移 動のストレスが少ないのも特長だ。また到着ロビーには地元観光局による観光案内所が設 置され、各種パンフレット(日本語のものもある)や交通情報のほか、スタッフによる旅 のアドバイスも行っている。さらに、空港内では州法により価格の上乗せが禁止されており、 町なかと変わらない価格で買い物が楽しめるのも嬉しいポイント。旅の出発点としてだけ でなく、ポートランドという都市のホスピタリティを体感できる。
Portland International Airport
45°35'07.4"N 122°35'30.2"W
ポートランドの空の玄関口、ポートラン ド国際空港(PDX)は、国内外18の航 空会社が乗り入れ、毎日約500便が発着 する、オレゴン州最大の空港である。館 内には地元ブランドのショップや人気レ ストランが並び、到着した瞬間からポー トランドらしさが感じられる空間になっ ている。オレゴン州の玄関口としての役 割を果たすと同時に、観光の始まりを演 出する場所でもあることから、近年はさ らなる快適性と空港自体の魅力を増すた め大規模なターミナルのリニューアル工 事を行っている。
Portland International Airport 7000 NE Airport Way, Portland, OR 97218 https://www.flypdx.com/
City Guide: Portland
Airport: Portland International Airport Portland
オレゴン州の玄関口であり同州最大の国際空港 森の中の空港をコンセプトに大規模リニューアル
オレゴン州最大の空港であるポートランド国際空港(PDX)は、2020年から始まった5年間 のリニューアルプロジェクトが進行中だ。この大規模な改修は、空港の機能性向上とともに、 ポートランドらしい自然との調和をテーマに掲げており、新しいターミナルの設計では、地元 オレゴン産の木材を使用した波打つような木製の天井や、自然光をたっぷりと取り入れた開 放的な空間によって、「森の中の空港」というコンセプトを体現。訪れる人々に温もりと安らぎ を感じさせる空間を提供している。また、再生可能エネルギーの活用や廃材のリユースといっ た環境への配慮も徹底され、持続可能な空港運営のモデルとしても注目を集めている。
さらに、リニューアルに伴い新たな飲食店やローカルショップの導入も進められ、オレゴン の魅力を発信する場としての機能も強化。ポートランド国際空港(PDX)は到着した瞬間から ポートランドらしさを感じられる場所として、機能性・デザイン性・環境配慮を兼ね備えた空 港へと進化を続けている。
Portland International Airport 45°35'07.4"N 122°35'30.2"W
Portland International Airport 7000 NE Airport Way, Portland, OR 97218 https://www.flypdx.com/
City Guide: Portland
自然と都市機能が共存する中心地 徒歩圏内に美術館やマーケットが凝縮
ポートランドの都市的側面がもっとも色濃く表れるのが、ダウンタウ ンを含むサウス&サウス・ウエスト・ポートランドである。ウィラメット 川西岸に広がるこのエリアには、歴史的建造物や官公庁、アートミ ュージアム、劇場、スタジアムといった都市機能が集積し、文化と政 治、日常と観光が交差する場としての賑わいがある。その一方で、イ ンターナショナル・ローズ・テスト・ガーデンやワシントン・パークと いった自然スポットも豊富にあり、高台から望む町の景色とともに、 四季折々の花々を楽しむことができる。ダウンタウンの中心には個 性派のカフェやレストラン、マーケットが点在し、ストリートカルチャ ーとローカルの生活が交じり合う雰囲気も魅力のひとつだ。このエ リアの特長は「歩いて楽しめる都市」という点にもある。トラムや路 面電車が整備され、川沿いの遊歩道や歴史ある広場を巡るだけで もこの町の多様性と奥行きが感じられるはずだ。都市としての密度 と自然のやさしさ、その両方を体感できるエリアである。
Voodoo Doughnut Voodoo Doughnut 45°31'22.8"N 122°40'22.8"W
52°51'36.0"N 4°06'32.1"W
Mill Ends Park
45°30'58.5"N 122°40'23.6"W
Tom McCall Waterfront Park 45°31'22.1"N 122°40'12.0"W
South & South West Portland + Downtown ウィラメット川沿いに広がる全長約 2.4kmの緑地帯、トム・マッコール・ ウォーターフロント・パークは、都市 の中心にありながら自然と開放感に包 まれる場所。もともと高速道路があっ た場所を市民の声で転用し、1978年に 完成したものだ。春の桜並木、夏の音 楽フェス、秋のマラソン大会など、季 節ごとのイベントも多く、市民と観光 客との交流の場、また憩いの場になっ ている。水辺の風と町のざわめきが心 地よく交差する、ポートランドの象徴 的な公共空間である。 ピンクの箱に入った奇抜なドーナツで 一世を風靡したブードゥー・ドーナツ (Voodoo Doughnut)は、ポートランドを 代表するポップカルチャー的存在だ。バ バ・オ・ラム味やベーコン×メープルな ど、ユニークで大胆な組み合わせが並ぶ ショーケースは、まるでお菓子の実験室 のよう。24時間営業の本店前には観光客 の行列が絶えず、インスタ映えする"映 える名物"としても定番となっている。 ブードゥー・ドーナツはその味だけでな く体験そのものを楽しむ場所として、世 界中から注目を集めている。
Voodoo Doughnut
22 SW 3rd Ave, Portland, OR 97204
https://www.voodoodoughnut.com/
"世界一小さな公園"としてギネスにも 登録されていたミル・エンズ・パーク。 その直径はわずか60cm、面積は約0.3 ㎡というミニチュアサイズながら、れっ きとした市公園として管理されている。 1950年代、地元 新聞のコラムニストが 「小人たちのための公園」として始めた ユーモアに富んだ試みが、今ではダウン タウンの名物になった。季節ごとに装飾 が変わうことでも知られ、ポートランド の遊び心と市民文化の懐の深さを感じさ せる。ポートランドの住民は、町の中に ある小さな"余白"まで楽しんでしまう。
Mill Ends Park
56 SW Taylor St, Portland, OR 97204
https://www.portland.gov/parks/mill-ends-park
Tom McCall Waterfront Park
98 SW Naito Pkwy, Portland, OR 97204
https://www.portland.gov/parks/governortom-mccall-waterfront-park
毎週土曜と日曜、ダウンタウンのウィラメット川沿いに姿を現すポートランド・サタデー・ マーケットは、全米でも最大級の屋外アート&クラフトマーケット。1974年に始まり、現 在では毎回200を超える屋台が並ぶことで知られている。出店の条件は自ら制作したもの であること。つまりここには、大量生産とは無縁の一点ものが溢れている。ジュエリー、 陶芸、木工、絵画、手作り石けんやローカルフードまで、見て歩くだけでも楽しい時間を 過ごすことができる。通りには音楽も流れ、人の熱気と創造性が溢れるこの空間は、まさ にポートランドの精神そのもの。週末だけ現れる、もうひとつの姿である。
A Green Gateway to Adventure: Oregon Road Trip Hub Eco-Friendly Hub for Your Oregon Journey オレゴン各地への移動に最適な拠点 自然と都市を結ぶロードトリップの起点
ポートランドは、オレゴン州最大の都市であると同時に、この州 の魅力を体験するための玄関口でもある。ここから始まるロードト リップは、都市と豊かな自然が交差するオレゴンの個性を余すこと なく味わえる旅へとつながっている。
ポートランドを拠点とすれば、1時間圏内で多彩な目的地へアク セスできる。たとえば、火山と氷河の絶景が広がるマウントフッド、 歴史あるセイラム、ノスタルジックな港町アストリアへは、いずれ も車で約1時間。ユージーンやベンドといったカルチャーと自然が 融合する町へも、1時間半から2時間程度で到着できる。数日かけ てオレゴンを周遊する旅もいいが、ポートランドを固定の拠点にし て、毎日異なる自然をめざす旅のスタイルもおすすめだ。午前中に 出発して、午後には海岸や山岳地帯の絶景と出会い、夜にはまた ポートランドのホテルに戻って町のグルメや音楽を楽しむ——そ んな旅の組み立て方ができてしまうのが、この都市の強みである。 また、環境への意識が高いことでも知られるオレゴン州やポー トランドでは、EV(電気自動車)による旅も現実的な選択肢とな
っている。市内はもちろん、郊外の主要道路や観光ルート沿いに も公共のEVチャージャーが充実しており、シーニック・バイウェイ を走る途中でも安心して給電できる。再生可能エネルギーやサス テナビリティを意識した社会づくりが進むこの州では、旅そのも のにも環境配慮という価値観が自然に織り込まれている。
South East Portland Hawthorne Blvd
45°30'43.5"N 122°37'32.7"W
サウス・イースト・ポートランドの中心 に位置するホーソーン通りは、ポートラ ンドの自由な精神が色濃く残るストリー ト。ヴィンテージショップやレコード 店、独立系ブックストア、地元のカフェ やジュースバーが並び、歩くだけでカル チャーの厚みを感じられる場所。なか でも自転車発電でスムージーをつくる 「Moberi」は、ユニークな体験ができる スポットとして人気。大型チェーンが少 ないこの通りでは、"その人らしい選択 "が自然とできる。ポートランドならで はの日常と出会える通りである。
Hawthorne Blvd SE Hawthorne Blvd, Portland, OR
Bollywood Theater 45°30'16.8"N 122°38'03.8"W
ボリウッド・シアターは、インドのス トリートフード文化を独自のセンスで 再解釈した人気レストランだ。スパイ スの効いた香りとカラフルな店内装飾、 壁に映し出されるインド映画など、五 感を通じて異国を感じさせる空間が広 がっている。定番のカティロールやパ ニプリに加え、地元食材を取り入れた アレンジメニューも豊富に揃えている。 カジュアルながらもしっかりと特別な 体験ができるレストランで、異文化を 楽しむことに前向きなポートランドら しさが詰まっている。
Bollywood Theater 3010 SE Division St, Portland, OR 97202 https://www.bollywoodtheaterpdx.com/
ホーソーン通り沿いにありながら、カートピア・フードカートとは異なる世界観をもつの がホーソーン・アシュラム(Hawthorne Asylum)だ。名前はこの地にかつて存在した精神 病院に由来し、場内は廃墟を思わせるインダストリアルな装飾や奇妙なアートオブジェで 統一されている。グラフィティ風の看板に囲まれた空間に30軒以上のカートが並び、地元 のクラフトバーガーやベトナム料理、ビーガンメニュー、スイーツなど多彩な選択肢を提供。 夜にはライトアップされ、昼間とはまったく違う妖しげな表情を見せる。フードだけでな く空間演出も楽しめる"攻める"フード・カート・ポッドだ。
Cartopia Food Carts 45°30'44.9"N 122°39'12.2"W
ポートランドのフードカート文化を象徴 する存在のひとつ、カートピア・フー ドカート。ホーソーン通り近くの空き地 に常設されており、夜遅くまで営業する 店舗も多く、地元の若者や観光客で賑わ う人気のスポットである。ウッドファイ ヤーのピザやエスニック料理、スイーツ までバリエーションは豊富で、各店舗の 個性的な外観も見どころのひとつ。屋根 付きの共有スペースもあり、雨の日でも 安心して食事が楽しめる。手軽に"ポー トランドの味"と出会える屋外フード ホールのような存在である。
Cartopia Food Carts 1207 SE Hawthorne Blvd, Portland, OR 97214 https://cartopiafoodcarts.com/
City
Central Eastside Mural District
45°30'18.7"N 122°39'22.8"W
産業とアートが交差するセントラル・ イーストサイド地区は、ポートランド有 数のストリートアート密集エリアでもあ る。倉庫街の壁面をキャンバスに、国内 外のアーティストによる大規模なミュー ラルが描かれており、その多くは数年ご とに塗り替えられている。自由で即興的 な表現が、この町の創造性を象徴してい る。地図にない美術館のように、歩くた びに新しい作品と出会えるのが魅力。レ ンタカーでこのエリアをめぐり、お気に 入りのアート探しのドライブに出かけて みるのもおすすめだ。
Central Eastside Mural District
2455 SE 10th Ave, Portland, OR 97202
https://www.pdxstreetart.org/cemd
South East Portland City Liquidators 45°31'00.5"N 122°39'48.7"W
外観からして異様な存在感を放つ大型倉 庫型ショップ、シティ・リクイデーター ズ(City Liquidators)。オフィス家具、ア ンティーク、アウトレット品、雑貨、子 ども向けおもちゃまで、ありとあらゆる アイテムが所狭しと並ぶ、まさにカオス の宝庫といえるショップ。陳列という概 念すら超えた圧巻のボリュームは、もは やアートに近いほど。観光地らしからぬ ローカル色も魅力で、偶然の出会いを楽 しむ感覚で歩くのが正解。買い物という より"発掘"を目的に訪れても楽しめる 場所である。
City Liquidators
823 SE 3rd Ave, Portland, OR 97214
https://www.cityliqs.com/
45°30'30.7"N 122°39'57.7"W
OMSI(Oregon Museum of Science and Industry)は、科学とものづくりの楽 しさを体感できる体験型博物館。宇宙、 地球、人体、テクノロジーなど多彩な テーマの展示が揃い、実際に触れて学 べるインタラクティブな仕掛けが魅力。 巨大な骨格模型や光のトンネルなど、 没入感ある演出も多く、子どもだけで なく大人も自然と夢中になれる。映画 館やプラネタリウムに加え、実物の潜 水艦「USS Blueback」の見学ツアーも 人気だ。ポートランドを代表する知的 スポットである。
OMSI
1945 SE Water Ave, Portland, OR 97214
https://omsi.edu/ OMSI
セントラル・イーストサイド地区に広がる「Distillery Row」は、クラフトスピリッツの文 化を牽引するポートランドのもう一つの顔である。わずか1.5マイルの範囲に複数の蒸留 所が集まり、ウイスキー、ジン、ウォッカ、ラム、リキュールなど多彩なスピリッツを手 がけている。なかでもウエストワード・ウイスキー(Westward Whiskey)は、ビール発酵 の技術を応用した"ポートランドらしい"ウイスキーとして世界的にも注目を集める存在。 多くの蒸留所ではテイスティングルームが併設され、職人との会話や製造工程を間近で楽 しむこともできる。蒸留酒の世界にもこの都市の自由な精神と探究心が息づいている。
Small Carts, Big Flavors: Food Cart A Culinary Journey on Wheels 街角に根付いた独自の"屋台文化" 味覚から体感するポートランドの多様性
ポートランドを語るうえで欠かせない存在がFood Cart(フードカ ート)である。町を歩けばすぐに見つかる屋台形式の飲食店は、ポー トランドの食文化の象徴であり、生活に根ざした風景でもある。
フードカートは文字通り「車輪のついた移動式の飲食店」だ が、ポートランドでは単なる屋台の枠を超えた進化を遂げてい る。ひとつの空き地に複数のカートが常設され、共有スペースで 自由に食べられるスタイル――通称"ポッド"と呼ばれるこの営業 形態は、全米の中でも特に独自の発展を遂げてきた。ポートラン ド市内には現在、大小あわせて数十のフードカートポッドが存在 しており、冷暖房完備の屋根付きエリアやアルコールを提供する バーを併設した場所もある。もはや屋外型フードホールと呼べそ うな空間も少なくない。
これほどまでにポートランドでフードカートが根付いた背景に は、この地ならではのDIY精神や、小資本での起業を支える柔軟 な制度設計がある。市がフードカート向けに明確なガイドライン
を設けてきたことも、カルチャーの定着を後押しした要因のひと つ。キッチンひとつから始まるビジネスモデルは、移民や若手シェ フたちが自らのルーツやアイデアを表現する場としても機能して おり、国籍もスタイルも異なるメニューが肩を並べる姿は、ポート ランドの多様性そのもの。決まりきった"店舗"とは異なる、自由な 発想と背景をもった食が体験できる場所になっているのだ。
数あるフードカートなかでも地元の若者や観光客で賑わうク ラフト感満載の「Cartopia」、廃病院跡地に広がる異世界の屋台 街に迷い込んだかのような体験ができる「Hawthorne Asylum」、 ラテン文化をテーマにした「Portland Mercado」、そしてビール と多国籍料理のペアリングを町のど真ん中で楽しめる「Midtown Beer Garden」などは、特に注目を集める存在となっている。
地元住民だけでなく、誰もが気軽に訪れることができ、隣の人 とベンチで食べながら言葉を交わせば、それだけで旅先の記憶に なる。そして料理だけでなく、その背景にある文化や人々のストー リーを垣間見ることができるのも、フードカートの大きな魅力だ。 下調べせず、匂いや行列に導かれて選ぶ一皿こそが、この地らし い楽しみかた。ガイドブックには載っていない"本当のポートラン ド"へと案内してくれる入口が、フードカートにはある。
City Guide: Portland