plusroadtrip | Catalunya/Catalonia 2025-2026

Barcelona

Montserrat

Penedès

Tarragona

Reus

Priorat

Deltebre

Poblet

Torroja del Priorat

Lleida

Vall de Boí

Vall d’Aran

Arties

La Seu d’Urgell

Ripoll

Figueres

Giron

Catalunya

The Grand Tour of Catalonia

contents Catalonia Edition

page. 06_ What is the Grand Tour of Catalonia? page. 08_ Day 1: Barcelona – Tarragona page. 18_ Day 2: Tarragona - Deltebre page. 26_ Day 3: Deltebre - Poblet

page. 30_ Day 4: Poblet - Torroja del Priorat page. 36_ Day 5: Torroja del Priorat - Vall de Boí

page. 42_ Day 6: Vall de Boí - Artíes page. 48_ Day 7: Artíes - La Seu d’Urgell page. 52_ Day 8: La Seu d’Urgell - Ripoll

page. 56_ Day 9: Ripoll - Figueres page. 62_ Day 10: Figueres - Girona page. 66_ Day 11: Girona - Barcelona

credit

Editor in chief : Shigeyuki Inoue

Director : Masami Kurosawa

発行／株式会社KURUMAG.　（ 東京都中央区築地1-5-1 / plusroadtrip@kurumag.net ） 制作／株式会社クロモ・コミュニケーションズ　 協力／カタルーニャ州政府観光局

With the cooperation of Abadia de Montserrat, Penedès Turisme, Família Torres, Cartoixa d’Escaladei, Parc Natural de la Serra de Montsant, Fundació Mas Miró, Siurana Tour, Gran Hotel Mas d’en Bruno, Ara Lleida, Diputació de Lleida, Ajuntament de Lleida,P allars Sobirà, Vall de Boí, Pallars Jussà – Fes el pas, L’Alt Urgell, La Cerdanya – La Gran Vall del Pirineu, Vall d’Aran, Fundació Gala-Salvador Dalí, Peralada Group, Circuit de Barcelona-Catalunya, La Roca Village, Torre Bellesguard, Turisme de Barcelona, Palau de la Música Catalana –Orfeó Català, FC Barcelona

本誌掲載の記事・写真・イラスト等の無断転載および複写を禁じます。 掲載の情報は取材を行った2025年時点での情報です。 発行:2025年8月

"The

Grand Tour of Catalonia" Catal

text=Shigeyuki Inoue

photo=Shigeyuki Inoue, Gran Hotel Mas d’en Bruno, H10 Hotels, Fundació Joan Miró, La Roca Village, FC Barcelona, Red Bull, Penedès Promotion Office,Visit Val d'Aran, Agència Catalana de Turisme [特集]

世界的観光都市として知られるバルセロナを擁するスペイン北東部カタルーニャ州。年間800万人以上が訪れるバルセロナ は、多くの旅人にとって憧れの目的地であることは間違いない。しかし、カタルーニャの真の魅力は、その外へ足を延ばした先 にある。海と山が織りなす風景、古代から続く歴史遺産、そして地域ごとに異なる食文化。この大都市を離れてこそ、多彩な 景観と文化・歴史が凝縮した本当のカタルーニャに出会える。

そんなカタルーニャの多様な表情に触れる旅を叶えてくれるのが、カタルーニャ州政府観光局によって構築された「カタル ーニャ・グランドツアー（The Grand Tour of Catalonia）」である。ロードトリップによって、地中海沿岸からピレネー山脈の峻 険な峰々まで、カタルーニャの魅力を余すところなく体感できるよう作られたドライブプランだ。

カタルーニャ・グランドツアーは5つのセクションに分けられており、都市の文化や歴史、山岳や海岸線の自然景観、ワイン産地 や港町の食文化など、それぞれ多彩なテーマが設定されている。しかしそのルートは出発地や走る方向も自由。全行程を一気 に巡っても、一部だけを切り取って走ってもよい。このツアーは、移動そのものを旅の中心に据えるロードトリップの精神を体現し たもので、自身の選択でカタルーニャの景色を楽しみ、新たな発見や学び、さまざまなストーリーに出会えるものになっている。

真のカタルーニャの魅力に触れるロードトリップへ出かけてみよう。海辺の村で潮風に包まれ、山岳道路で清冽な空気を吸 い込み、ぶどう畑を抜けて歴史ある町を訪れよう。市場では地元食材を味わい、地産地消のレストランでカタルーニャ料理 に舌鼓を打ち、何千年もの歴史に触れる時間も待っている。文化、自然、食、そして人との出会いが一本の道でつながる「カタ ルーニャ・グランドツアー」。この旅に出かければ、この地の多彩な魅力を存分に楽しめるはずだ。

Grand Tour of Catalonia Grand Tour of Catalonia

Portogal Spain

What is the Grand Tour of Catalonia?

カタルーニャ・グランドツアーとは？ カタルーニャ・グランドツアーは、カタルーニャ州政府観光局が提案する約2,000kmの 周遊ルートだ。17世紀中盤、ヨーロッパの若い貴族や富裕層が教養と見聞を深めるた めに行っていた「グランドツアー」に着想を得て、現代のロードトリップとして再構築さ れたもの。地中海沿岸の都市や港町、ピレネー山脈の峠道、中世の村や修道院、ワイン の産地、手つかずの自然が残る公園まで、この地の魅力をクルマで巡りながら体感でき る。バルセロナからカタルーニャを一周するもよし、テーマの異なる5つのセクションの 一部を選び、短期間で巡るもよし。自由度の高い旅が楽しめるプランになっている。

Figueres

La Seu d'Urgell

Grand Tour of Catalonia in 5 sections

カタルーニャの異なる魅力を映し出す代表的な5つのセクション

Section 1: Barcelona – Tarragona

バルセロナのモダニズム建築を起点に、ローマ遺跡の町タラゴナへの旅を提案するセクション1。途 中、モンセラット山やカルドナ城、ソルソナの歴史地区、ペネデス地方のワイナリー、シッチェスの港 町、音楽家パウ・カザルスゆかりの地として知られるアル・バンドレイなどを巡る。ガラフの断崖やコス タ・ダウラダ北部のビーチでは、美しい地中海からの海風を感じながら爽快なドライブが楽しめる。

Section 2: Tarragona – Lleida

セクション2は、タラゴナからコスタ・ダウラダの海岸線を進み、カンブリルスで海の幸を味わい、豊か な自然に触れられるデルタ・デル・エブロへ。さらに内陸へ進めばエルス・ポルツ自然公園、ピカソが 過ごしたテラ・アルタのワイン大聖堂やプリオーラート、そしてリェイダの荘厳な旧大聖堂が待ってい る。オリーブ畑とぶどう畑が広がる丘陵地帯を駆け抜け、この地域の自然、歴史、食文化を堪能する。

Section 3: Lleida – La Seu d’Urgell

リェイダのラ・セウ・ベリャ旧大聖堂からピレネー山脈へと向かうセクション3。中世の村が点在するア ラン谷、星空の名所モンセック、ボイ渓谷のロマネスク教会群、アイグエストルタス・イ・エスタニ・デ・ サンマウリシ国立公園、そしてノゲラ・パラレーサ川でのアクティビティを経てラ・セウ・ドゥルジェイへ。 平野から山岳へと変化する景色、澄んだ空気と開放感は、この区間ならではのドライブ体験となる。

Section 4:

La Seu d’Urgell – Figueres

カディ＝モイシェロ自然公園を抜け、聖書の彫刻が施されたリポイ修道院を経て、40の火山が点在 するガロッチャ火山地帯自然公園へと向かうセクション4。サンタ・パウやベサルー、バニョラスなど 魅力溢れる町を巡り、ダリの故郷フィゲラスがこの区間の終着点。渓谷や森林、火山の丘など変化 に富んだ自然景観を走り抜け、歴史と芸術の物語にも出会えるのがこのセクションの魅力だ。

Section 5:

Figueres – Barcelona

フィゲラスでダリの世界に浸ったあとは、カダケスやクレウス岬へ。コスタ・ブラバの港町やパラモ ス、中世の村ペラテラーダを経て、モンセニ山脈を越え、コスタ・バルセロナの漁村とビーチを楽し みながらバルセロナへと戻る最終セクション。海岸線と山岳路の両方を走ることで、カタルーニャの 多彩な景色と文化を味わい尽くす、まさにカタルーニャ・グランドツアーを締めくくる区間だ。

Explore Catalonia your way

2,000kmの自由な旅。自分だけのカタルーニャ・ロードトリップへ

カタルーニャ・グランドツアーは、海とワインの香りに包まれる沿岸部に始まり、歴史と食文化を味わう内陸部、そして天に近づくようなワイ ンディングでのドライブ、さらに大地の鼓動を感じる火山と渓谷の自然エリア、芸術と思想が交錯する都市部と、表情の異なる5つのセクシ ョンから構成されており、テーマや季節、旅のスタイルに応じて自在にルートをアレンジできることが最大の魅力だ。

今回 plusroadtrip はこの5つのセクションを11日間をかけて巡るロードトリップを計画した。車窓を流れる海や山の風景を楽しみ、郷土料 理を味わい、この地の歴史に触れる・・・それは五感すべてでカタルーニャを体感できる旅である。本誌は、その旅のハイライトを紹介しなが ら、各地の多彩な魅力を伝えていく。この冊子を手に、自らハンドルを握り、自分だけのカタルーニャを見つける旅へぜひ出かけてほしい。

Day 1: Barcelona – Tarragona

Monistrol de Montserrat, Espiells, Sitges, Tarragona

奇岩の修道院からローマ遺跡へ カタルーニャが持つ多彩な魅力に触れる

カタルーニャの玄関口、バルセロナ国際空港からカタルーニャ・グ ランドツアーは始まる。最初の目的地は、クルマで約1時間のモンセラ ット（Montserrat）だ。切り立った奇岩に抱かれるサンタ・マリア・デ・ モンセラット修道院（Monestir de Santa Maria de Montserrat）は、 黒いマリア像を祀る信仰の地であり、訪れる者を荘厳な空気で包み 込む。館内のモンセラット美術館（Museu de Montserrat）ではエル・ グレコやピカソ、ダリの作品にも出会えることで知られている。さらに サン・ジュアン登山電車（Funicular de Sant Joan）に乗れば、眼下に 修道院と渓谷を見下ろす壮観な眺めを楽しむことができる。

モンセラットを後に、ペネデス地方（Penedès）へ。カヴァの聖地とし て世界的に知られるワイン産地では、ぶどう畑に点在する展望スポッ トを巡り、ワイナリーでランチやノンアルコールワインの試飲を楽しみ たい。そしてクルマは再び海沿いへ。芸術家や作家たちに愛された町 シッチェス（Sitges）は、地中海の光と影が織りなす白壁の町並み、砂 浜や海辺の遊歩道、カフェ文化が訪れる人々を惹きつけている。 　さらにタラゴナ（Tarragona）に向けてクルマを走らせれば、世界遺 産ラス・フォレーラスの水道橋（Pont de les Ferreres）が目の前に現れ る。そしてこの日の最終目的地となるタラゴナへ。ローマ時代の遺跡 が残るこの町は、2,000年以上前の地中海都市の息吹が今なお感じら れる場所。夜は地中海を望むホテル、H10 インペリアル・タラコ（H10 Imperial Tarraco）に宿泊しよう。歴史、景観、そしてワインと、最初の1 日だけでも、カタルーニャの多彩な魅力を余すところなく味わえる。

ROAD TRIP: Catalunya

Monistrol de Montserrat, Espiells, Sitges, Tarragona

Monestir de Montserrat

サンタ・マリア・デ・モンセラット修道院

バルセロナの北西、奇岩が連なる山岳地帯 に建つサンタ・マリア・デ・モンセラット 修道院（Santa Maria de Montserrat）は、 カタルーニャにおける精神的な象徴のひと つ。11世紀にベネディクト会によって創設 され、現在も宗教施設として機能している。

聖堂後方の特別な祭壇に祀られる「黒いマ リア像」は12世紀頃に制作されたとされ、 木製ながら黒く変色した外観が特徴で、信 仰の対象として長い歴史を持つ。

From Barcelona: 54.7 km

To Tarragona: 98.3 km

Monestir de Montserrat

Monestir de Montserrat

08199 Monistrol de Montserrat (Bages), Barcelona

Monistrol de Montserrat, Espiells, Sitges, Tarragona

Espai Audiovisual de Montserrat

エスパイ・オーディオビジュアル

モンセラット修道院の入口近くにあるエ スパイ・オーディオビジュアル（Espai Audiovisual）は、この地の歴史や文化を 紹介する体験型スペース。映像やインタ ラクティブ展示により、山の成り立ちや 修道士の生活、巡礼の伝統を多角的に解 説する。宗教的背景だけでなく、自然や 音楽など多様な視点からモンセラットの 魅力を掘り下げており、小規模ながら内 容は充実。日本語音声ガイドも用意され ており、修道院見学の前に立ち寄れば、 その後の体験がより豊かになるはずだ。

Espai Audiovisual de Montserrat

Plaça del Monestir, s/n 08199 Monistrol de Montserrat (Bages), Barcelona

From Barcelona: 54.7 km To Tarragona: 98.3 km

Funicular de Sant Joan サン・ジョアン登山鉄道

モンセラットを俯瞰で眺めるならサン・ ジョアン登山鉄道（Funicular de Sant Joan）がベスト。山腹に沿って敷かれた このケーブルカーは、全長503m、標高 差約250mを約7分で登る。開通は1918 年だが、幾度もの改修が行われてきた。 現在使われている車両はパノラミック仕 様のガラス張りになっており、視界に広 がる奇岩と谷の絶景は、この山ならでは のダイナミズムを体感させてくれる。終 点のサン・ジョアン展望台からは、モン セラット山塊を一望することができる。

Funicular de Sant Joan Monestir de Montserrat 08293 Monistrol de Montserrat, Barcelona

From Barcelona: 54.7 km To Tarragona: 98.3 km

Aeri de Montserrat

アエリ・デ・モンセラット

モンセラットへのアプローチとして知ら れるロープウェイ、アエリ・デ・モンセ ラット（Aeri de Montserrat）は、1930年 に開業した歴史ある交通機関だ。谷間に 架かるワイヤーを渡って、麓の駅から修 道院の近くまで約5分をかけ移動する。 標高差500m近くを一気に登る車両は開 業当時のデザインを踏襲したレトロなス タイルで、黄色いゴンドラが断崖絶壁を 縫うように進む。その移動体験はまさに 空中散歩と呼ぶにふさわしい。駅から修 道院までは徒歩でアプローチが可能。

Aeri de Montserrat

Ctra. C-55 (Abrera–Manresa), km 11,5 08691 Monistrol de Montserrat (Bages), Barcelona

From Barcelona: 41.1 km To Tarragona: 78.3 km

モンセラット修道院の構内に建つオスタル・アバ・シスネロス(Hostal Abat Cisneros）は、かつて巡礼者 のために用意された宿泊施設。建物は1563年に建てられ、長い年月のなかで増改築を重ねつつ、現在で はホテルとして一般旅行者も受け入れている。石造りのファサードやアーチ状の回廊など、外観は中世 建築の趣を色濃く残している。一方、客室は現代的に整備されており、快適な滞在が可能だ。窓からは 奇岩に囲まれた山岳の景観や修道院のドームを望むことができ、都市では得られない宿泊体験が叶う。

Hostal Abat Cisneros　(https://www.montserratvisita.com/） Monestir de Montserrat, s/n 08199 Monistrol de Montserrat (Bages) – Barcelona

ROAD TRIP:

Catalunya

Activities

Miravinya Ruta de miradors

Font-rubí

Miravinya Ruta de miradors

ミラヴィニャ・ビューポイント・ルート

カヴァの産地ペネデス地方の地形や歴史を 展望所を巡りながら体験するドライブルート

発泡ワイン「カヴァ」の産地として知られるペネデス地方。こ の地域をより深く理解するのに最適なのが、ミラヴィニャ・ビュ ーポイント・ルート（Miravinya, ruta de miradors）と呼ばれる10 箇所の展望所を巡るドライブコースだ。地元の観光プロジェク ト「Penedès 360」が運営し、風景のスケールとテロワールの成 り立ちを立体的に紹介するユニークな取り組みになっている。 　ルートは環状型で、どこからスタートしてもよいがバルコ・デ ル・ペネデスを起点にするのが最も一般的。ヴィラフランカ郊 外のサン・パウでは町と畑の対比を一望でき、ラ・カディラでは ぶどう畑の中に設置された巨大な椅子が視点の変化を楽し ませてくれる。さらに、山を背景に美しいペネデス盆地を望む エル・サーセルなど、10箇所の展望地はそれぞれがとても個性 的。すべての展望所には案内板が設置され、地形や土地の歴 史、ワインづくりとの関係などが解説され、地域全体を“立体 地図”として見せる仕掛けになっている。

またルート周辺には、ワイナリーツアーを行うカヴァの生産 者（Vilarnau、Codorníu、Freixenetなど）も点在しており、ビュ ーポイント・ルート巡りとあわせて訪れれば、土地と味覚の関 係性をより深く理解することができるだろう。

Miravinya Ruta de miradors / Balcó del Penedès Camí de Font-Rubí, 13 08736 Font-rubí (Alt Penedès), Barcelona https://www.miravinya.cat/en

全ルートを通しても走行距離はおよ そ80km。主要な展望地を選んで半 日で巡ることもできるし、ワイナ リーツアーやローカルグルメを組み 合わせて1日かけての周遊するのも よい。アップダウンの少ないなだら かな地形で、初めての訪問でもドラ イブそのものを快適に楽しめる

Food Experiences Caves Vilarnau

Sant Sadurní d’Anoia

サステナビリティとモダニズム 革新と遊び心が息づくカヴァづくり

スペイン産スパークリングワインの95%以上が生産される サン・サドゥルニ・ダノイアで、革新的なカヴァづくりを行って いるワイナリーがヴィラルナウ（Caves Vilarnau）だ。12世紀 からこの地に根を下ろしたヴィラルナウ家をそのルーツに持 ちながら、伝統に固執することなく、ここで生産されるカヴァ はオーガニックにこだわり、水資源の再利用など、いまの 時代に求められるサステナビリティへの取り組みも徹底し ている。また、完全ノンアルコールのスパークリングワイン 「Vilarnau 0.0% Organic Sparkling」も展開している。

このワイナリーのもうひとつの顔が、カタルーニャの文 化・芸術とのつながりだ。特に象徴的なのが、限定カヴァ に採用されている“トレンカディス”スタイルのラベルだ。“ト レンカディス”とはアントニ・ガウディやジュゼップ・マリア・ ジュジョールらが用いた、割れた陶器片などを使ったモザ イク技法で、カタルーニャ・モダニズムを代表する意匠のこ と。ヴィラルナウではこのようなカタルーニャならではの芸 術的エッセンスを、自社製品にも取り入れている。

ヴィラルナウはペネデス地方の美しい風景のなかで、つく り手の哲学、そして芸術的感性に触れられる場所である。

Caves Vilarnau

Carretera d’Espiells, km 1,4 08770 Sant Sadurní d’Anoia (Alt Penedès), Barcelona https://www.vilarnau.es/en

ROAD

TRIP:

Catalunya

Caves Vilarnau

ヴィラルナウ

IN FOCUS

Familia Torres

Família Torres

Finca El Maset, s/n 08796 Pacs del Penedès (Alt Penedès), Barcelona https://www.torres.es/

Wine with Purpose

気候変動に備える持続可能なワインづくりと 時代のニーズに応えるワイン文化の創出 　カタルーニャを代表するワイナリー、ファミリア・トー レス。1870年にミゲル・トーレス家によって創業されて 以来150年以上の歴史を刻んできたワイナリーである。 今日ではスペイン国内に4つの拠点を持ち、さらにチリや カリフォルニアにも畑を展開する国際的生産者として知 られている。とはいえ、その根幹は家族経営により代々 受け継がれてきた哲学を大切にし、単に良いワインをつ くるのではなく、その土地の個性と気候を最大限に表現 することに強いこだわりを持っている。

この理念を支えているのが「自然と共にある」という 考え方だ。ワイナリーの敷地に足を踏み入れると、屋根 に並ぶソーラーパネルや静かに走る電気自動車が目に 入る。また生産工程で使用するボトルはリサイクルガラ スを積極的に採用し、運送時の環境負荷を減らすため に軽量ボトルも開発。カーボンフットプリントを徹底的 に削減する努力は、もはや特別なプロジェクトではなく 日常業務の一部になっている。オーナーのミゲル・A・ト ーレス氏はその姿勢が国際的に高く評価され、TIME誌 「気候変動に影響を与えた世界のリーダー100人」に 選出された人物だ。環境への配慮という言葉が流行的 に消費されがちないまの時代にあって、ここでは未来の 世代へ豊かな土地を引き継ぐための具体的かつ長期 的な行動が積み重ねられている。

こうした意識は畑づくりにも表れている。19世紀末、 フィロキセラによってヨーロッパ中のブドウ畑が壊滅的 被害を受け、多くはフランス系の品種に植え替えられ た。しかしトーレスは近年、忘れられかけたカタルーニャ 固有の土着品種を蘇らせようと、大学との共同研究で 古文献や耕作跡を調べ、その分析を経て自社畑で再び さまざまな品種の栽培を開始している。これは気候変動

が進む時代に、乾燥や高温といった厳しい環境に適応 できる可能性を秘めた品種を探り、未来のワインづくり に備えるという実験でもある。

伝統を重んじつつ、新しい需要に応える柔軟さもトー レスの特徴のひとつだ。その象徴となるのがノンアルコ ールワインの開発である。健康志向の高まりや「飲まな い」ライフスタイルが世界的に広がるなか、トーレスは 既存のワインからアルコール分だけを除去する独自技 術を磨き上げた。香りや味わいを損なわない0.0%ワイン は、代用品ではなく“本物のワイン”としての完成度を誇 る。ワイナリー併設のレストラン「El Celleret」では、地 元産の野菜や乳製品を使った料理とともに、このノンア ルコールワインをセレクトすることができる。前菜からデ ザートまで続く一皿一皿は素材の個性を際立たせ、そ の魅力をさらに増してくれるのがノンアルコールワイン のペアリング。ロードトリップの途中で訪れたドライバー にとっても安心して楽しめるひとときとなる。

施設では、トーレス家の歴史を伝えるミュージアム やセラーが見学できるだけでなく、サステナブルな取り 組みも目の当たりにできる。石造りの歴史ある建物と最 新設備が同居する空間を歩けば、伝統と革新が矛盾す ることなく共存していることが実感できるはずだ。緑豊 かなブドウ畑の向こうにはモンセラットの山並みが広が り、自然と人の営みが織り成す風景そのものがトーレス の理念「自然と共にある」を物語っている。

時代のニーズに応えながらも本質を見失わない姿 勢。地域文化を大切にしつつグローバルに発信する視 野。ファミリア・トーレスを訪れると、その両方を肌で感 じ取ることができるだろう。サステナビリティと革新性を 同時に追求するその姿は、世界のワインシーンを牽引 しながら未来のワイン文化を切り拓く存在として進化 を続けていることがわかる。ファミリア・トーレスが世界 中のワイン愛好家から支持されている理由は、まさにそ の精神にある。

Monistrol de Montserrat, Espiells, Sitges, Tarragona

Sitges

シッチェス

バルセロナの南西約35km、地中海沿いに 位置する小都市シッチェス（Sitges）は、 リゾート地としての魅力と文化都市とし ての側面を併せ持つ。19世紀末にルミニ スム派の画家たちが移り住んだことで芸 術の町としての基盤が築かれ、20世紀に 入ってからは国際映画祭やLGBTQ＋文 化の中心地としても注目を集めるように なった。町の中心には白壁の旧市街と、 その先には17ものビーチが連なる。歴史 的建築とモダニズム様式が混在する建物 群も見どころのひとつである。

Sitges

Plaça de l’Ajuntament, s/n 08870 Sitges (Garraf), Barcelona

From Barcelona: 41.9 km To Tarragona: 62.6 km

Aqüeducte de les Ferreres

ラス・ファレーラス水道橋

ラス・ファレーラス水道橋（Aqüeducte de les Ferreres）は、ローマ時代の土木技 術を現代に伝える貴重な建造物だ。別名 「悪魔の橋」とも呼ばれ、タラゴナ郊外の 森の中にその姿を現す。全長217m、高さ 27mの上下2層アーチ構造を持ち、紀元1 世紀頃の建設とされる。補強や再建を経て はいるものの、オリジナルのアーチの多く が現存し、視覚的にも構造的にも完成度が 高い。ローマ遺跡群の中でも自然との調和 が際立つこの水道橋は、この地の文明の遺 構として重要な存在だ。

Aqüeducte de les Ferreres

N-240 (Valls a Lleida)

43006 Tarragona (Tarragonès)

From Barcelona: 99.6 km To Tarragona: 4.2 km

Amfiteatre romà de Tarragona

古代ローマ円形闘技場

地中海を望む斜面に位置する古代ローマ円 形闘技場（Amfiteatre romà de Tarragona） は、古代ローマの娯楽文化を今に伝える 象徴的な遺跡である。紀元2世紀初頭に 建設され、最大1万4,000人を収容できた この劇場は、古代都市タラコの繁栄ぶり を物語っている。特徴的なのは、半円形 の観客席が岩盤を削って直接造成されて いる点で、当時の建築技術の高さが伺え る。後世にはこの劇場跡の上にキリスト 教の礼拝堂が建てられるなど、時代ごと の重層的な利用の痕跡も見られる。

Amfiteatre romà de Tarragona Parc de l’Amfiteatre Romà, s/n 43003 Tarragona (Tarragonès)

From Barcelona: 99.8 km To Tarragona: 1.2 km

タラゴナ旧市街の地下に埋もれるようにして残るローマ競技場跡（Circ Romà）は、古代都市タラコの娯 楽と儀礼の中核を担った施設。紀元1世紀末に建設され、戦車レースや国家的祭典の舞台となった。長 さ325m、幅115mというスケールは、地中海西岸のローマ遺跡としては最大級。現在は一部が発掘・保 存され、スタンドや観客席の一部を見ることができ、当時の熱狂を想像させる空間が広がっている。ロー マ時代のいわばサーキットの元祖のような遺跡が市街地に溶け込むように現存しているのが面白い。

Circ Romà (https://www.tarragona.cat/patrimoni/museu-historia/monuments/el-circ-roma） Rambla Vella, 2 43003 Tarragona (Tarragonès) – Tarragona

Accommodation

H10 Imperial Tarraco

Tarragona

H10 Imperial Tarraco

H10 インペリアル タラコ

世界遺産タラゴナの中心に佇む 地中海の絶景を一望できるホテル

ユネスコ世界遺産にも登録される古代都市タラゴナ。その歴 史的中心地に位置するH10 インペリアル タラコ（H10 Imperial Tarraco）は、ローマ時代の円形劇場跡のすぐ隣にあり、客室か ら地中海の美しい眺望が楽しめるという抜群の立地にある。

このホテルは1960年代に建設されたが、H10ホテルズによっ て2020年に大規模なリニューアルが行われた。館内は最新の 設備と洗練されたデザインにアップデートされ、ミッドセンチュ リーの美学を取り入れた客室には、シンプルで上質な家具が 配され、すべての部屋にバルコニーを完備する。とくに海側の 客室からは、眼下にローマ時代の円形闘技場、そしてその向 こうに朝焼けや夕暮れの光が波間にきらめく地中海が広がり、 唯一無二の眺望を楽しむことができる。

ホテル内には2つの屋外プール、スパ、フィットネスジム、地 元食材を取り入れたレストランなどがあるほか、ルーフトップ の「Caelum Rooftop Bar」では、地中海の風に吹かれながらカ ヴァやカクテルを味わうことができる。

敷地内には有料駐車場を完備。バルセロナからはクルマで 約1時間15分とアクセスも良好で、ポブレー修道院やペネデス 地方へのロードトリップにも便利な立地にある。

H10 IMPERIAL TARRACO

Rambla Vella, 2 43003 Tarragona (Tarragonès) https://www.h10hotels.com/en/tarragona-hotels/h10-imperial-tarraco

ROAD

TRIP: Catalunya

Tarragona - Deltebre

Reus, Mont-roig del Camp, Deltebre Day 2:

レウスで近代主義とガウディの足跡に触れ カタルーニャの台所、デルタへドライブ

2日目はタラゴナから、カタルーニャ近代主義建築の宝庫として 知られるレウス（Reus）へ。かつて商業都市として栄えたこの町に は、美しい邸宅が数多く残り、モダニズム建築の傑作ともいわれる カサ・ナヴァス（Casa Navàs）もある。1908年にリュイス・ドメネク・ イ・ムンタネーが設計したこの邸宅では、訪問者を圧倒させるほど 美しいステンドグラスや陶板装飾を楽しむことができる。

レウスはまた、ガウディの生誕地としても知られている。ガウデ ィ博物館（Gaudí Centre）では、模型や映像を通じて彼の建築 哲学や作品の背景に触れることができ、すぐ近くにはガウディ生 家（Casa Natal d’Antoni Gaudí）もあり、彼が少年時代を過ごし た町の雰囲気を感じ取れる。またすぐ近くには地元の食文化を 感じられるレウス中央市場（Mercat Central de Reus）もあるの

で、ぜひ立ち寄ってみたい。

午後は、レウスから南西へ約40分のマス・・ミロ（Mas Miró）へ と移動。ここは画家ジョアン・ミロが制作活動を行い、数多くの 名作を生み出した場所で、今も彼が愛した自然の風景が広がっ ている。建物や敷地を歩けば、キャンバスに描かれたミロの世界 へと引き込まれていく。

その後は南へと進路を取り、約1時間半でデルタ・デル・エブロ自 然公園（Parc Natural del Delta de l’Ebre）へと到着する。地中海最 大級の湿地帯であるこの地域は、広大な水田と潟湖が広がり、干 潟ではピンク色のフラミンゴをはじめとする数百種の野鳥に出会え る。四季を通じて異なる景観を見せるこの地域は、バードウォッチ ャーや写真愛好家にとって楽園ともいえる場所。観察小屋や遊歩 道も整備され、自然と共生する地域の姿を感じとれるだろう。

この日の宿は、再生可能エネルギーなど環境配慮型の設備を 備えるエコロッジ・デルタイク（Deltaic allotjaments eco）で地 元食材を用いた食事と快適な滞在を楽しみたい。

Casa Navàs

カサ・ナバス

メルカダル広場に面して建つカサ・ナバス （Casa Navàs）は、20世紀初頭に活躍した 建築家リュイス・ドメネク・イ・ムンタ ネーによるモダニズム建築の傑作である。 1901年から1908年にかけテキスタイル商 人ジョアキム・ナバスの邸宅兼店舗として 建てられた。外観のファサードは石造りの レリーフやモザイクで装飾され、細部まで 華麗に作り込まれている。注目すべきは内 部空間で、家具から照明、ステンドグラ スに至るまでが統一されており当時のモ ダニズム建築様式の粋を今に伝えている。

Casa Navàs

Plaça del Mercadal, 7 43201 Reus (Baix Camp), Tarragona

From Tarragona: 13.5 km To Deltebre: 77.1 km

Reus, Mont-roig del Camp, Deltebre

Gaudí Centre

ガウディ博物館＆観光案内所

レウスはアントニ・ガウディの生誕地と して知られ、市内中心部にあるガウディ 博物館（Gaudí Centre）はその足跡をた どる拠点である。館内にはガウディの設 計思想や、未完成のプロジェクト、模型、 映像資料などが多角的に展示されてい る。建築そのものはモダンだが、インタ ラクティブな展示とリアルな模型再現に より、ガウディの空間感覚や構造へのこ だわりを直感的に理解できる構成になっ ている。なお、この博物館はレウスの観 光案内所も兼ねている。

Gaudí Centre

Plaça del Mercadal, 3 43201 Reus (Baix Camp), Tarragona

From Tarragona: 13.4 km To Deltebre: 77.1 km

Mercat Central de Reus

レウス中央市場

レウスの町の中心にある中央市場 （Mercat Central de Reus）は、地元の食 文化と生活を体感できるスポットだ。こ の建物は1949年に完成し、当時のモダ ニズム建築の流れを汲む構造になってお りアーチ状の屋根から自然光が差し込む 明るい空間が印象的だ。市場内には青果、 鮮魚、精肉、惣菜、ベーカリーなど地元 密着型の店舗が約150軒並ぶ。観光地化 されすぎておらず、地元住人と一緒に ゆっくりとハムやオリーブオイル、パン などを探すことができる。

Mercat Central de Reus

Carrer de Sardà i Cailà, s/n 43201 Reus (Baix Camp), Tarragona

From Tarragona: 13.6 km To Deltebre: 76.9 km

アントニ・ガウディは1852年にレウスで生まれた。ガウディの生家（Casa Natal d’Antoni Gaudí）と して知られる場所は、当時の町並みを残す一角にあり、今も静かに時を刻んでいる。現在の建物は住 居としての機能は残していないが、外観には記念碑的なプレートが掲げられ、ガウディにゆかりのあ る地であることが示されている。周辺には彼の幼少期に関する説明板や案内表示もあるので町歩きの 中でぜひ立ち寄ってみたい。この地で彼の原点を想像する時間は特別なものになるはずだ。

Casa Natal d’Antoni Gaudí (https://www.reus.cat/casa-natal-dantoni-gaudi） Carrer de Sant Vicenç, 8 43201 Reus (Baix Camp), Tarragona

Museum

Mas Miró

Mont-roig del Camp

巨匠ジョアン・ミロの創造の聖域 農村風景に息づく芸術の原点

モンロッチ・デル・カンプの農村風景の中に、20世紀スペイ ン美術の巨匠ジョアン・ミロの創作の原点が今も息づいてい る。彼が幼少期から夏を過ごし、生涯にわたって通い続けた 場所こそ、このマス・ミロ（Mas Miró）である。

“Mas（マス）”とはカタルーニャ語で「農家屋敷」を意味する 言葉で、この家はミロの母方の家系に代々受け継がれてき た。特筆すべきは、この場所が単なる休暇先ではなく、彼の作 品世界に深く影響を与える「創造の聖域」となったことであ る。ミロがここで描いた「農場（La masia）」は、パリで活躍し始 める直前の代表作として知られており、この地の風景、動植 物、農具などが幾何学的かつ幻想的に描かれている。

現在マス・ミロは財団によって管理され、内部の見学が可 能。かつての寝室やアトリエ、そして絵を描いていたパティオ などが保存・再現されており、ミロがこの地で過ごした時間を 自ら体感できる。また、ガイドツアーでは、彼の人生と作品に おけるルーツを紐解くことができ、抽象芸術の裏にある現実 の風景とのつながりを再発見させてくれる。そして何より、ミロ が生み出した芸術の“はじまり”に触れられるこの場所は、ロー ドトリップのハイライトとして記憶に刻まれるはずだ。

マス・ミロはA-7号線をバルセロナからタラゴナ方向に進 み、1138番出口でT-323号線方向に進めば数分で到着する。 A-7号線沿いなのでデルタ・デル・エブロに向かう途中での立 ち寄りスポットとしてもおすすめだ。

Mas Miró

マス・ミロ

https://masmiro.com/

Hours: Tue–Sat: 10:00–14:00 / 15:30–18:00 Sun & Holidays: 10:00–14:00 (Mon: Closed, Nov–Easter weekdays afternoons closed)

Catalunya

Mas Miró

Finca Mas Miró, s/n 43300 Mont-roig del Camp (Baix Camp), Tarragona

Reus, Mont-roig del Camp, Deltebre

Parc Natural del Delta de l’Ebr e デルタ・デル・エブロ自然公園

カタルーニャ南端に位置し、エブロ川が地中海へと注ぎこむ 河口に広がるスペイン最大級の湿地帯が、デルタ・デル・エブロ 自然公園（Parc Natural del Delta de l’Ebre）。その面積は約320 ㎢と広大で、ヨーロッパでも屈指のバードウォッチングスポット としても知られる。季節ごとに渡ってくる鳥たちは実に360種以 上といわれ、淡いピンク色の羽を広げて舞うフラミンゴの群れ は、3〜10月頃まで観察可能だ。

ドライブスポットとして人気なのが、海岸に面した広大なビ ーチ、プラヤ・デル・トラブカドール（Platja del Trabucador)だ。

海と潟に挟まれた細長い砂州の上をクルマで走るという、スペ インでも稀な体験ができる場所であり、夕暮れに訪れれば、水 面に夕日が反射する美しい風景を車窓から楽しめる。

デルタ・デル・エブロ自然公園は近年、観光と環境保全の両 立をめざす「EDEN（European Destinations of Excellence）」 の認定も受け、持続可能な観光モデルとしての注目も集めて いる。なかでも米づくりは、デルタの風景と暮らしを形づくる中 核産業であり、収穫期には一面の稲穂による圧巻の光景に出 会える。デルタ産の米や塩、野菜、魚介など、土地の恵みを“食 べて感じる”体験ができる場所としても人気を集めている。

Parc Natural del Delta de l’Ebre 43870 Amposta (Montsià), Tarragona https://parcsnaturals.gencat.cat/en/delta-de-lebre/ 野鳥と自然が織りなすヨーロッパ屈指の湿地帯 美しい景観と土地の恵みを味わうドライブへ

Natural del

Amposta

ROAD TRIP: Catalunya

Accommodation

Deltaic allotjaments eco

Deltebre

Deltaic allotjaments eco

自然保護区の探索の拠点に最適 暮らすように滞在できるエコロッジ

エコロッジ・デルタイク（Deltaic allotjaments eco）は、エブ ロ川の河口に位置するデルテブレ（Deltebre）の中心に構える アパートメントタイプの宿。スペイン最大の湿地帯として知ら れるデルタ・デル・エブロ自然公園を訪れるロードトリップにお いて、自然と地域社会の両方にアクセスしやすい立地にある。 　客室はいずれも広めの設計で、キッチンやテラスも備えてお り、“暮らすような滞在”が可能。地元産の木材や断熱性能に 優れた素材が各所に使われており、環境負荷の軽減と快適性 が両立されている。長期滞在にも適しており、エブロ川周辺の 自然を数日かけて楽しむような旅程にもぴったりだ。

併設されるスローフード・レストランでは、地元産の米や魚 介、塩、野菜などを使った料理が提供され、味覚を通してエブ ロ・デルタの自然と文化に触れることができる。調理について も土地の素材そのものの魅力を生かしたもので、派手な演出 ではなく、丁寧に地域と向き合う姿勢が感じられる。

町なかにありながら、湿地帯での遊歩道散策やサイクリン グ、カヤックツアー、野鳥観察などに簡単にアクセスすること ができるので、デルタ・デル・エブロ自然公園の自然を堪能する ためのベースとして最適な宿といえるだろう。

Deltaic allotjaments eco Avinguda Generalitat, 75 43580 Deltebre (Baix Ebre), Tarragona https://deltaic.eco/

IN FOCUS

Delta de l'Ebre

Parc Natural del Delta de l’Ebre 43870 Amposta, Tarragona, Spain https://parcsnaturals.gencat.cat/en/delta-de-lebre/

Hours: Open year-round, 24 hours

Delta Delights エブロが育む食の恵み

カタルーニャの食文化を支える台所 海と川、そして大地が育む食材の宝庫

デルタ・デル・エブロ自然公園（Parc Natural del Delta de l’Ebre）は、エブロ川が地中海へと注ぐ広大なデルタ地 帯。湿地や干潟、塩田が広がるこの風景は、単なる自然 公園にとどまらず、カタルーニャの食文化を支える台所 でもある。栄養豊かな淡水と海水が混じり合う環境は、 生物多様性を生むと同時に、多彩な食材を育む土壌を 長い年月を経て築き上げてきた。

この地を代表するのはやはり米だ。広大な水田で育 まれる稲は、カタルーニャを代表する米料理の要とな る。稲作の歴史は古く、中世にアラブ人がこの地に米を もたらしたことに始まるとされ、今日でも収穫期には黄 金色に染まる田園風景が広がる。地元産の米は粒がし っかりとして煮崩れしにくく、魚介の旨味をたっぷり吸い 込む。パエリアやアロス・ア・バンダ（魚介だし炊き込み ご飯）、さらには季節の野菜を合わせたアロス・デ・ベル ドゥレス（野菜の炊き込みご飯）など、バリエーションは 豊かだ。こうした料理は家庭の食卓でも親しまれ、祝祭 や家族の集まりでは欠かせない存在となっている。

海と川がもたらす恵みも見逃せない。ムール貝やカ キ、アサリなどの二枚貝は、エブロ川の清らかな流れと 地中海の塩気を吸い込み、ふくよかな旨味を生み出す。 特にこの地域のカキは甘みが強く、レモンをひと絞りす るだけで驚くほど味が引き立つ。漁港にはエビやボラ、 スズキ、ウナギも並び、グリル、煮込み、燻製と多彩な調 理法で楽しまれている。春から夏にかけては漁の最盛期 を迎え、港町は活気に満ち、旅行者にとってはそのエネ ルギーを体感できる絶好の季節となる。

さらに、デルタ周辺は野菜の宝庫でもある。アーティ チョークやトマト、ピーマンが豊かに育ち、魚介や米と組 み合わされ、季節の一皿として供される。シンプルなが

らも素材そのものの力強さが感じられるのは、この土地 ならではといえるだろう。

この地を訪れる人にとっての醍醐味は、こうした食材を その場で味わえること。海辺のレストランや村のバルでは、 目の前の海や田んぼから届いたばかりの食材が新鮮なま ま皿に並ぶ。デルテブレの人気店カサ・ヌリ（Casa Nuri）で は、地元米のパエリアやアロス・ア・バンダを提供し、潮風 と湿地の香りを感じながら味わうひとときは、ロードトリッ プの途中だからこそ体験できる贅沢だ。また秋には米の収 穫祭やグルメフェアも開催され、炊き立ての米料理や獲 れたてのカキを地元の人々と分け合いながら、食を通じて 地域の暮らしを体験できる。さらにエコロッジ・デルタイク （Deltaic allotjaments eco）のように、デルタの地元食材 を使った食事を提供する宿泊施設もあり、このような宿で は滞在そのものがガストロノミー体験となる。

デルタ・デル・エブロ自然公園を訪れ、自然に触れ、食材を 味わうことで、カタルーニャの食文化の豊かさと厚みを知るこ とができるだろう。

時を超える城壁都市と無形文化を訪ね 世界遺産修道院に泊まる特別な一日

3日目はカタルーニャ内陸部の城壁都市モンブラン （Montblanc）へ。デルテブレから1時間半で到着する中世の面 影を色濃く残すモンブランの旧市街は、石造りの城門や塔が点在 し、散策するだけでタイムスリップしたような気分を味わえる場 所だ。町の中心にそびえるサンタ・マリア教会（Santa Maria de Montblanc）は、14世紀に着工された壮大なゴシック様式教会 で、テラスに上がれば、赤茶色の屋根が広がる旧市街と周囲の丘 陵地帯を一望でき、絵画のように美しい景色が楽しめる。

続いて訪れたいのが、カタルーニャの伝統文化「カステイ（人間の 塔）」の世界を体感できるカタルーニャ・カステリェー博物館（Museu Casteller de Catalunya）だ。映像や体験型展示を通じて、この迫力 ある無形文化遺産の歴史や精神を学ぶことができる。

昼食はモンブラン近郊のレストラン、マシア・フォンツカルデス （Restaurant Masia Fontscaldes）を訪れたい。ここで味わいたいの が、カタルーニャ名物のカルソッツ。冬から初春にかけて登場するネ ギを直火で焼き、外皮を剥いてロメスコ・ソースにつけて食べる豪快 な料理で、地元の人々にとっては季節の風物詩。素朴ながらも香ば しい香りと甘みが、旅の食記憶を豊かにしてくれる。

午後は世界遺産に登録されているポブレー修道院（Reial Monestir de Santa Maria de Poblet）へ。12世紀にシトー会修道士 によって建立されたこの修道院は、アラゴン王国歴代の王族の霊廟 としても知られる場所。広大な回廊や石造礼拝堂、今も修道士たち が生活を営む静寂の空間は、訪れる者に深い感動を与える。

この日は修道院敷地内のポブレー修道院ゲストハウス （Hostatgeria de Poblet）で宿泊。ここに泊まることで、早朝か ら夜まで1日5回行われる修道院のミサにも徒歩で参加できる。

荘厳な聖歌と静寂に包まれる時間は、日常では味わえない特別 な体験となるはずだ。

Montblanc, Valls, Poblet

Santa Maria de Montblanc

サンタ・マリア教会

旧市街の高台に立つサンタ・マリア教会

（Santa Maria de Montblanc）は、14世紀に 建設が始まったゴシック様式の宗教建築。 防衛的な石造りの外観と、精緻な装飾が 施された入り口のファサードが対比的で、 当時の宗教都市としての緊張感が伝わっ てくる。教会の建設は度重なる戦争や資 金難の影響で中断と再開を繰り返し、未 完成のままの部分もある。宗教施設とし ての重要性に加え、周辺は歴史的建造物 が織りなす中世の都市景観が広がり、モ ンブランを象徴する存在になっている。

Santa Maria de Montblanc

Plaça de Santa Maria, 2 43400 Montblanc (Conca de Barberà), Tarragona

From Deltebre: 94.3 km

To Poblet: 10.4 km

Museu Casteller de Catalunya

カタルーニャ・カステリェー博物館

カタルーニャ・カステリェー博物館（Museu Casteller de Catalunya）は、人間の塔＝カ ステイ（Castell）を体感的に学べる施設だ。 2022年に開館した博物館で、カステイの 構造、歴史、技術、地域コミュニティと の関係性を映像や実物展示で伝えている。 館内では、実寸大の塔を模した立体展示 のほか、カステイを支える基礎部分「ピ ニャ」の構造シミュレーションなど、技 術的な視点からの展示も多い。力とバラ ンスの極限を競うカステイの魅力を、内 側から理解できる構成になっている。

Museu Casteller de Catalunya

Plaça del Blat, 5 43800 Valls (Alt Camp), Tarragona

From Deltebre: 78.8 km

To Poblet: 19.2 km

Restaurant Masia Fontscaldes

マシア・フォンツカルデス

タラゴナ近郊の田園地帯に位置するマシ ア・フォンツカルデス（Restaurant Masia Fontscaldes）は、伝統的な石造りの農家 建築を活かしたレストラン。18世紀の農 園邸宅を改装した空間でカタルーニャの 郷土料理が楽しめる。特にカルソッツと 地元ワインのペアリングなど、土地の味 を丁寧に仕上げたメニューが人気。広々 とした庭とテラス席もあり、季節や天気 に応じて開放的な食事体験も可能だ。ロー ドトリップの途中に土地の食文化を五感 で味わう体験は良い思い出になるはずだ。

Restaurant Masia Fontscaldes

Carrer de la Font, 7, Fontscaldes 43813 Valls (Alt Camp), Tarragona

From Deltebre: 83.4 km

To Poblet: 19.5 km

カルソッツはカタルーニャで冬から初春にかけて食される名物料理で、特にタラゴナ県の伝統に根ざし ている。19世紀末、農夫が収穫した長ネギの一種を火にくべ、外皮を剥いて食べたのが始まりとされ、 その素朴な調理法がやがて祭りや家庭の行事に広がった。直火で黒く焼いたネギを甘みが引き立つ内側 だけにして、ロメスコ・ソースにつけて味わう。手を汚しながら食べるこの食文化は「カルソターダ」 と呼ばれる季節行事となり、カタルーニャの味覚を象徴する体験として多くの観光客を魅了している。

The Calçotada https://www.turismealtcamp.cat/en/imprescindibles/la-calcotada/

ROAD

TRIP:

Catalunya

Reial Monestir de Santa Maria de Poblet

Poblet

Reial Monestir de Santa Maria de Poblet

ポブレー修道院

中世から近代への建築史が凝縮 世界遺産に選定される生きた修道院

コンカ・デ・バルベーラ地方の丘陵にひっそりと佇む ポブレー修道院（Reial Monestir de Santa Maria de Poblet）。12世紀にシトー会の修道士たちによって創建さ れ、のちにアラゴン王国歴代の王たちの霊廟として機能し

た歴史的にも宗教的にも特別な場所だ。1991年にはユネ スコ世界遺産に登録されている。

この修道院を特徴づけるのが、異なる時代に増築された 建築様式の重層性である。最古のロマネスク様式、荘厳な ゴシック様式、そして装飾豊かなバロック様式。それぞれが ひとつの建築群のなかに凝縮され、中世から近世にかけて の建築史を体感できる構造になっている。内部も回廊のア ーチや、王の霊廟が置かれた聖堂など、時代を超え訪れた 人々の心を静めてくれるつくりになっている。

現在も修道士たちの生活が続く「生きた修道院」であり、

1日数回行われるミサは一般の来訪者でも参加可能。鐘の 音に導かれるように聖堂に足を踏み入れれば、800年を超 える祈りの時間にそっと触れることができる。

敷地内には宿泊施設もあり世界遺産の敷地内に滞在で きる特別な体験も可能だ。

Reial Monestir de Santa Maria de Poblet Plaça Corona d’Aragó, 11 43448 Poblet (Conca de Barberà), Tarragona https://www.poblet.cat/

Accommodation

Hostatgeria de Poblet

Poblet

Hostatgeria de Poblet

ポブレー修道院ゲストハウス

世界遺産の修道院に滞在できる 歴史と信仰に触れる希少な体験

スペイン屈指のシトー会修道院であり、ユネスコ世界遺産に も登録されているポブレー修道院。その敷地内に一般旅行者 も宿泊できる施設、ポブレー修道院ゲストハウス（Hostatgeria de Poblet）がある。宗教施設に隣接した宿はヨーロッパでも珍 しく、ここでしか得られない特別な体験ができる。

この宿泊棟は13世紀に巡礼者や旅人を迎えるための施設 として建てられた歴史ある建物を活用したもので、2000年代 初頭に現代的な快適性を取り入れて改修が行われている。修 道院の精神性と建築意匠を尊重しながら、一般旅行者が安 心して滞在できるよう設計されており、客室はシンプルながら も快適で、館内にはレストランやラウンジスペースも完備して いる。ポブレー修道院の中庭や回廊を歩いた後、そのまま敷 地内に滞在できるという体験は、他のどの宿泊施設とも異な る価値を提供している。

特に魅力的なのは、修道院と隣接しているため早朝に行わ れる修道士たちのミサに徒歩で参加できること。内部に響くグ レゴリオ聖歌の音色は記憶に残る思い出になるだろう。歴史 的建造物を「見る」だけでなく、「泊まる」「関わる」ことでポブレ ー修道院そのものをより深く体感できるはずだ。

Hostatgeria de Poblet Plaça Corona d’Aragó, 11 43448 Vimbodí i Poblet (Conca de Barberà), Tarragona http://hostatgeriadepoblet.cat/

ROAD

TRIP:

Catalunya

プリオラートのワインづくりの原点に触れ 天空の村を経て DOQプリオラートへ

4日目はポブレー修道院での静かな朝を後にし、プリオラート地 方のエスカラデイ修道院（Cartoixa d’Escaladei）へ。ここは12世紀 に創設されたカルトジア会の修道院で、この地にワインづくりをも たらした原点でもある。石造りの回廊や中庭跡を歩けば、かつての 修道士たちの静寂な暮らしが想像できる。施設には最新のVR体 験も用意されており、当時の修道院を鮮やかに再現した映像を通 し、歴史への没入感を味わうことができる。

続いて山道を進み、断崖の上に佇む小さな村シウラナ（Siurana） へ。切り立った岩壁の上にある村の風景は、空に浮かぶ砦を思わせ る。この小さな村は、中世にはキリスト教勢力とイスラム勢力の攻防の 舞台となった場所で、カタルーニャで最後までイスラム勢力が支配し た地としても知られている。赤茶色の屋根と石畳の小道が続く村にあ

る要塞跡やロマネスク様式の教会からは、プリオラートの風景を一望 することができる。なお、シウラナでは地元ガイドによるSiurana Tour に参加すると、村にまつわる壮絶な歴史や伝説を聞きながら村の散 策ができるのでおすすめだ。

この日の午後は、DOQプリオラートの中心部へとクルマを走らせ る。シウラナから延びるT-702号線の沿道には、急斜面のブドウ畑が 段々畑となって連なり、石垣が形づくる美しい風景が広がる。このエ リアがスペインでわずか2箇所しかない最高格付け“DOQ”に認定さ れる理由は、厳しい自然条件と希少な土壌にある。昼夜の大きな寒 暖差、乾燥した地中海性気候、そして黒い片岩質のリコレッリャ土壌 がブドウの根を深く伸ばさせる、果実味と凝縮感を兼ね備えたプリオ ラートならではの赤ワインを生み出している。

この日の宿は、グラン・ホテル・マス・デン・ブルーノ（Gran Hotel Mas d’en Bruno）を訪れたい。ブドウ畑に囲まれた農園建 物を改装したこのラグジュアリーホテルは、プリオラートの旅の 締めくくりにふさわしい場所だ。

Day 4: Poblet - Torroja del Priorat

Siurana, Escaladei, Torroja del Priorat

Siurana, Escaladei, Torroja del Priorat

Cartoixa d'Escaladei

エスカラデイ修道院

プリオラート地方の山あいに佇むエス カラデイ修道院（Cartoixa d’Escaladei） は、イベリア半島初のカルトジア会の 修道院として12世紀に創建。“Escaladei” は「神への階段」を意味し、修道士た ちが霊的な昇華を求めて暮らした場所 だ。現在は主聖堂跡や修道士の個室な どが復元されている。この修道院は後 のプリオラート地方のワイン文化形成 にも大きな影響を与え、宗教と農業、 歴史と風景が交錯するカタルーニャの 精神的源流に触れることができる。

Cartoixa de d’Escaladeii

Camí de la Cartoixa, s/n 43379 Escaladei, la Morera de Montsant (Priorat), Tarragona

From Poblet: 58.6 km To Torroja del Priorat: 6.7 km

Siuranella Centre

シウラナの岩場群の中核を成すのがシウ ラネッラ・セントレ（Siuranella Centre）。 垂直に切り立った石灰岩の壁に、中級者 から上級者までが挑める多彩なルートが 拓かれ、世界中のクライマーを惹きつけ ている。隣接するシウラネッラ・スッ ドやエストとあわせて登れば、数日間は 飽きることがない。一方で、このエリア に至るワインディングロードはロードト リップそのものの醍醐味を味わえる。渓 谷とブドウ畑が織りなす風景を楽しみな がらドライブできるルートになっている。

Siuranella Centre

RProp de Siurana, Cornudella de Montsant 43362 Cornudella de Montsant (Priorat), Tarragona

From Poblet: 49.2 km To Torroja del Priorat: 11.4 km

DOQ Priorat

DOQプリオラートは、カタルーニャで最 も格式あるワイン生産地のひとつであり、 スペイン国内でわずか2箇所しかない「特 選原産地呼称（DOQ）」の認定を受けた地 域だ。急峻な斜面に広がるリコレーリャ 土壌と、乾燥した気候条件が力強く複雑 な味わいのワインを生み出す。その歴史 は12世紀に始まり、19世紀にはフィロ キセラ禍により衰退するも、1990年代か ら小規模生産者による復興が進み、現在 では国際的に高評価を得るプレミアムワ インの産地として知られている。

DOQ Priorat – Consell Regulador

Carrer Sant Antoni Maria Claret, 2 43730 Falset (Priorat), Tarragona

From Poblet: 45.1 km To Torroja del Priorat: 14.5 km

エスカラデイ修道院に近年導入されたのがバーチャルリアリティ（VR）による没入型体験コンテンツ である。専用のゴーグルを装着すると、中世当時の修道院の姿が360度で再現され、かつての建築空 間や修道士の生活様式をリアルに体感することができるもの。このVR体験は、単なる映像投影にと どまらず、ユーザーの視点移動に応じてストーリーがインタラクティブに展開する構造となっており、 遺構だけでは伝わりにくい空間スケールや生活の流れまでリアルに実感できる。

Experiència VR（https://patrimoni.gencat.cat/ca/article/els-ulls-de-la-historia-arriba-la-cartoixa-descaladei） Camí de la Cartoixa, s/n 43379 Escaladei – La Morera de Montsant (Priorat)

ROAD

TRIP:

Catalunya

Siurana, Escaladei, Torroja del Priorat

プリオラート地方の山間に位置する小さな村、 シウラナ（Siurana）。海抜700m近くの断崖に築 かれたこの村は、まるで天然の城壁であるかのよ うな、要塞的な立地が特徴だ。山道を登りきった 先に現れる石造りの集落からは、眼下に流れる シウラナ川や壮大な渓谷を一望できる。村の中 心には、12世紀に建てられたロマネスク様式の サンタ・マリア教会が静かに佇む。さらにその近く には、かつてムーア人たちが建てたシウラナ城跡 （Castell de Siurana）も残っており、イスラム支 配の終焉を象徴する場所にもなっている。実際、 シウラナは12世紀までイスラム勢力が拠点とした 最後の砦のひとつで、カタルーニャにおけるレコ ンキスタ（キリスト教徒による再征服）の最終局 面を物語る土地として広く知られている。

こうした歴史や文化をより深く理解したいな ら、Siurana Tourが主催するガイド付きツアーに 参加するのがおすすめだ。地元に根ざした知識を 持つガイドが、ムーア人支配時代の背景や遺構 の意味、村にまつわる伝承や教会建築の特徴な どを丁寧に案内してくれる。

From Poblet: 50.4 km

To Torroja del Priorat: 16.2 km

Siurana

Plaça de l’Ajuntament, 2 43362 Siurana, Cornudella de Montsant (Priorat), Tarragona

Siurana

シウラナ

Catalunya

Siurana, Escaladei, Torroja del Priorat

Accommodation Gran Hotel Mas d'en Bruno

Torroja del Priorat

Gran Hotel Mas d'en Bruno

グラン・ホテル・マス・デン・ブルーノ

プリオラートのブドウ畑に囲まれた 静かな贅沢を味わう新たな滞在拠点

スペイン有数の高級ワイン産地、プリオラート地方。その丘 陵地帯に囲まれたブドウ畑の中に建つグラン・ホテル・マス・ デン・ブルーノ（Gran Hotel Mas d’en Bruno）は、2022年にオ ープンしたラグジュアリーホテルだ。かつてこの地に存在した

農家の名を冠し、土地の記憶を継承しながらも、現代的な快 適性と洗練された空間を備えたホテルになっている。

全24室すべてがスイート仕様で、客室ごとに異なる設計が 施されている。多くの部屋にはプライベートテラスがあり、起 伏に富んだワイン畑の景観を望むことができる。テラスの一 角にはファイアーピットも備えられており、ワイングラスを傾 けながら静かに過ごす夕暮れのひとときは、滞在そのものを 特別な体験へと引き上げてくれるはずだ。

レストランやワインセラー、インフィニティプールやスパな ども用意されているが、ホテルとしてのスケールはコンパクト で、その分、隅々までサービスが行き届いており、落ち着いた 雰囲気の中で上質な時間を過ごすことができる。

グラン・ホテル・マス・デン・ブルーノは、プリオラートという 土地の魅力を、五感で味わうための拠点であり、カタルーニャ でのロードトリップに“贅沢な時間”を加えてくれる。

Gran Hotel Mas d'en Bruno Polígon 5, Parcela 71 – Mas d’en Bruno 43737 Torroja del Priorat (Priorat), Tarragona https://www.masdenbruno.com/en/hotel-mas-den-bruno/

2025年、カタルーニャは世界ガストロノミー地域に選定され、ヨーロッパでこの評価 を受けた最初の地域となった。これを受け、グラン・ホテル・マス・デン・ブルーノのメイ ンレストラン「Vinum」では、カタルーニャ語で現存する最古の料理本『Llibre del Sent Soví』（1324年）に着想を得たメニューを通年で提供している。そして、それらの料理と ローカルワインのペアリングにも力を入れている。

また、館内には本格的なワインセラーがあり、宿泊者限定でワインテイスティング体験 （€55）を実施。専属ソムリエの案内のもと、プリオラート地方とモンサン地方のワイン5 種を試飲でき、希望があればワイナリー訪問の手配も可能だ。

そのほか、宿泊者専用のスパ施設も併設されており、温水プール、サウナ、トリートメン トルーム、リラクゼーションスペースなどが整う。スパでは100%天然グレープシードオ イルを用いたボディトリートメントも提供している。元の農家建築の一部を活かしたス パエリアは、この地の過去と現在をつなぐ象徴的な空間となっている。

ROAD TRIP:

Catalunya

先史時代の洞窟と大聖堂を巡り ピレネーの小さな村で世界遺産に出会う

トロージャ・デル・プリオラート（Torroja del Priorat）から 始まる5日目。まずはT-702号線沿いにあるサンタ・リュシア洞窟 （Cova de Santa Llúcia）へ。先史時代からの人々の足跡が残 るこの小さな洞窟は、巡礼地としても知られている場所だ。その 後クルマを進めるとリェイダ県へと入っていく。春にはピンク色の 花で丘陵が染まるアイトナ（Aitona）は、果樹畑が延々と広がる農 業地帯で、季節ごとに異なる風景を見せるこのエリアは“カタル ーニャの果樹園”が持つ美しさを楽しませてくれる。

続いて、セグレ川沿いの都市リェイダへ。市街を見下ろす丘の上 にそびえるラ・セウ・ベリャ旧大聖堂（La Seu Vella）は、13世紀に建 てられた大聖堂で、壮麗な回廊と塔が町のシンボルになっている。リ ェイダでは、クラシックカーや軍用車を展示するローダ・ローダ自動 車博物館（Museu de l’Automoció Roda Roda）も立ち寄りたい。

リェイダを後にし、モンセック山地へと差しかかると、車窓からの 風景は一気にドラマチックになる。エスパイ・ナチュラル・デル・モン セック（Espai Natural del Montsec）に入ると、切り立った石灰岩 の岩壁が道を挟み込むように迫り、川と道路、鉄道が並走するテラ デッツ橋（Pont de Terradets）付近では、山岳道路ならではの自 然と人の営みが作り上げた壮大な景観を目にすることができる。 　さらに北上すると、ボイ渓谷（Vall de Boí）へ辿り着く。ボイ、エ ル・ポン・デ・スエルト、バリェラといったピレネーの谷間に点在す る村々には石造りの家並みやロマネスク教会が残り、美しい景観 をつくり出している。

美しい小さな村を巡り、この日の終着点、サン・クリメン・デ・タウ イ（Església de Sant Climent de Taüll）へと到着する。世界遺産 に登録されたこのロマネスク教会は、中世美術の傑作である壁画 や建築を鑑賞できる。

5日目はタウイの小さな村で宿泊してみよう。この村にはホテル やレストランもあり快適な滞在が可能。日没後は夕暮れの村を散 策してみるのもおすすめだ。

Day 5:

Torroja del Priorat - Vall de Boí

Aitona, Lleida, Cellers, Vall de Boí

Aitona, Lleida, Cellers, Vall de Boí

Cova de Santa Llúcia

サンタ・リュシア洞窟

サンタ・リュシア洞窟（Cova de Santa Llúcia）は、ラ・ビスバル・デ・モンサン ト近郊にある巨大な洞窟だ。この洞窟の 湧水は古くから目の病に効くと信じられ、 視力の聖人ルシア（Santa Llúcia）に捧げ てきた。その後、スペイン内戦中には野 戦病院として利用され、80床以上のベッ ドや手術室が洞窟内に設けられたという。 現在は石造りのテーブルやバーベキュー 施設が整備され、毎年8月の第2日曜日 にはミサや地域行事が行われている。自 然と歴史が重なる特別な場所だ。

Cova de Santa Llúcia Carretera a la Palma d’Ebre, a 1 km de la Bisbal de Montsant 43372 La Bisbal de Montsant (Priorat), Tarragona

From Torroja del Priorat: 54.8 km To Vall de Boí: 180.2 km

Museu de l'Automoció Roda Roda

ローダ・ローダ自動車博物館

アイトナ(Aitona)は、春になると一面ピ ンクに染まる桃の花畑で知られるリェイ ダ県の農村である。例年2月下旬から3 月中旬にかけては約800ヘクタールにお よぶ果樹園の花が一斉に咲き誇り、多く の観光客を魅了している。この時期に はガイド付きツアー、果樹園内をトラク ターで巡るルートや花畑を背景にした フォトスポットも設けられ賑わいを見せ ている。さらに、農産物の直売やカタルー ニャ郷土料理の試食イベントなども開催 され、春の訪れを祝う雰囲気に包まれる。

Aitona Carrer Major, 6 25182 Aitona (Segrià), Lleida

From Torroja del Priorat: 69.9 km To Vall de Boí: 154.6 km

リェイダ市の旧軍用整備工場跡に設けら れたローダ・ローダ自動車博物館(Museu de l’Automoció Roda Roda)は、スペイン のモータリゼーションの歴史を辿ること のできるユニークな施設である。展示車 両はクラシックカーから商用車、バイク、 軍用車両まで多岐にわたり、20世紀初頭 から現代までをカバー。展示方法はシン プルながらも体系的で、スペインにおけ る移動手段の変遷をわかりやすく伝えて いる。クルマ好きはもちろん、家族連れ でも楽しめる構成になっている。

Museu de l’Automoció Roda Roda Carrer de Santa Cecília, 22 25001 Lleida (Segrià), Lleida

From Torroja del Priorat: 99.7 km To Vall de Boí: 127.7 km

ローダ・ローダ自動車博物館ではガイドツアーが実施されている。ツアーでは館内の主要車両や歴史 的背景を、専門知識を持ったスタッフが解説しながら案内してくれ、ツアーによっては展示車の内部 やエンジンルームの構造など、通常の自由見学では見られない部分も紹介してくれる。参加者の関心 に応じて話題が広がる柔軟な進行も魅力で、単なる展示見学とは異なる体験が可能だ。団体だけでなく、 個人でも参加できるツアーも設定されているので公式サイトで事前に確認しておくと安心だ。

Roda Roda - Visita guiada al museu (https://cultura.paeria.cat/ca/equipaments/museu-roda-roda)

Carrer de Santa Cecília, 22 25001 Lleida (Segrià), Lleida

Aitona アイトナ

TRIP: Catalunya

La Seu Vella

Lleida

La Seu Vella

ラ・セウ・ベリャ旧大聖堂

祈りと戦いの時を重ねた大聖堂 リェイダを見下ろす石の要塞

リェイダ旧市街を見下ろす丘にそびえるラ・セウ・ベリャ 旧大聖堂（La Seu Vella）。「古い大聖堂」を意味する名が つけられたこの建物は、後世に新大聖堂が建てられたこと で区別されるようになったもので、1229年に着工されたリ ェイダの宗教的中心であると同時に、18世紀以降は要塞と して利用されたという異例の歴史を刻んでいる。

建築はロマネスクからゴシックへ移行する過渡期を映し 出し、力強い外観に対して内部は光と陰が織りなす繊細な 空間が広がっている。高い身廊や柱の装飾、回廊に差し込 む自然光の美しさはとても印象的だ。

ラ・セウ・ベリャ旧大聖堂では建築史や宗教美術の展示に 加え、コンサートやナイトイベントも開催されている。また日 没後に訪れることができるなら、照明に浮かび上がる鐘楼や 回廊など、昼間とは異なる幻想的な表情を楽しんでほしい。

標高およそ200mの丘の上に立つテラスからは、リェイダ市 街はもちろん、晴れた日にはピレネー山脈までも遠望できる。

周囲には広大な芝生が整備され、建物の外周を歩くだけでも 十分に景観を楽しめる。クルマでのアクセスも良好で、市内観 光と組み合わせて気軽に訪れることができる。 Activities

La Seu Vella

Carrer Turó de la Seu Vella, s/n 25002 Lleida (Segrià), Lleida https://www.turoseuvella.cat/ca

Restaurant del Llac

レストラン・デル・リャック

レストラン・デル・リャック（Restaurant del Llac）は、リェイダ県の自然景観と地 元食材を活かしたダイニングだ。テラデッ ツ湖（Embassament de Terradets）の眺望 が広がるテラス席は、ドライブ途中のラ ンチ休憩にちょうどよく、メニューには 地元産のチーズやハム、近隣で採れた野 菜を使った煮込みなど、土地の風土を反 映した料理が揃う。湖と森に囲まれた立 地にあり、サイクリングやバイクツーリ ングの拠点としても知られており、週末 には地元住民も多く訪れる。

Restaurant del Llac Ctra. C-13 Balaguer–Tremp, km 75 25631 Cellers, Castell de Mur (Pallars Jussà), Lleida

From Torroja del Priorat: 130.8 km

To Vall de Boí: 92.7 km

Aitona, Lleida, Cellers, Vall de Boí

Serra del Montsec

モンセック山脈

モンセック山脈（Serra del Montsec）は、 ピレネー山系の南端に位置する石灰岩の 山脈で、荒々しい断崖と深い渓谷が特徴的 な地形を成している。この地域はヨーロッ パ有数の星空観測スポットとしても知ら れ、スターライト財団によりスターライ ト認証を得ており、モンセック天文公園 （Parc Astronòmic del Montsec）もこの地に ある。ノゲーラ・パリャレサ川に沿って 北上するC-13号線は切り立った崖の間を 走るルートで、他の地域とは異なる力強 い自然の眺望を楽しむことができる。

Serra del Montsec Carretera del Doll, km 58 25615 Àger (La Noguera), Lleida

From Torroja del Priorat: 128.6 km To Vall de Boí: 77.3 km

Hotel El Rantiner

ボイ渓谷のタウイに建つホテル・エル・ ランティネール（Hotel El Rantiner）は、 地元資材を活かした山岳スタイルの宿泊 施設。石造りの外壁と木の梁を活かした 内装は、周囲の自然やロマネスク建築と 調和している。暖炉のあるロビーや手作 りの朝食、地元ワインを揃えたバーなど、 小規模ながら温かみあるサービスを提 供。多くの宿泊者は、ボイ渓谷の教会群 やアイグエストルタス・イ・エスタニ・デ・ サンマウリシ国立公園への拠点として利 用する。夜には美しい星空も堪能できる。

Hotel El Rantiner Carrer de Trestaüll, 5 25528 Taüll, la Vall de Boí (Alta Ribagorça), Lleida

From Torroja del Priorat: 226.4 km To Vall de Boí: 0.4 km

タウイにあるレストラン・エル・ファイ（Restaurant El Fai）は、地元食材を生かしたカタルーニャの 伝統料理を提供する家族経営のレストランである。素朴な店構えながら長年にわたり地域に愛され、 旅行者と住民が一緒に食事を味わうアットホームな雰囲気が魅力だ。人気メニューは季節野菜のグリ ルや自家製ソーセージ、きのこのスープなど派手さはないが、山里ならではの素材を生かした滋味深 い一皿が並ぶ。観光の合間に立ち寄れば、土地の日常に触れるような心温まる食体験となる。

Restaurant El Fai（https://restaurantelfai.com/）

Carrer dels Aiguals, 10 25528 Taüll, Vall de Boí, Lleida

ROAD

TRIP:

Catalunya

Església de Sant Climent de Taüll サン・クリメン・デ・タウイ教会

サン・クリメン・デ・タウイ教会（Església de Sant Climent de Taüll）は、ボイ渓谷に点在するロ マネスク様式の教会群の中でも最も著名な建築で ある。1123年に献堂されたこの教会の最大の特 徴は、内部祭壇背後に描かれた「栄光のキリスト （Pantocràtor）」の壁画だ。現在は保存のためレプ リカが設置されており、オリジナルはカタルー ニャ美術館に収蔵されているが、プロジェクショ ンマッピングによる再現演出も導入され、当時の 空間を追体験できる。高い鐘楼と石造りの質実な 外観は、山岳信仰と建築美の結晶ともいえる存 在で、ロマネスク建築の魅力を凝縮した教会だ。 2000年にボイ渓谷のロマネスク様式の教会群のひ とつとしてユネスコ世界遺産に登録されている。

From Torroja del Priorat: 227.0 km

To Vall de Boí: 1.2 km

Església de Sant Climent de Taüll

Plaça de Santa Maria, s/n 25528 Taüll, la Vall de Boí (Alta Ribagorça), Lleida

Parc Nacional d'Aigüestortes i l'estany de Sant Maurici

Lleida

Parc Nacional d'Aigüestortes i l'estany de Sant Maurici

アイグエストルタス・ イ・エスタニ・デ・サンマウリシ国立公園

カタルーニャ唯一の国立公園 氷河湖と名峰が描くピレネーの絶景

ピレネー山脈の懐に広がるアイグエストルタス・イ・ エスタニ・デ・サンマウリシ国立公園（Parc Nacional

d'Aigüestortes i l'estany de Sant Maurici）は、カタルー ニャにある唯一の国立公園で、希少性と自然の多様さから “ピレネーのハイライト”とも呼ぶべき場所である。

公園名にある「Aigüestortes」とは曲がりくねった水の 流れを意味し、その名の通り、渓流、滝、湿原、そして200以 上の氷河湖が点在する。とりわけ人気が高いのが、サン・マ ウリシ湖（Estany de Sant Maurici）で、湖畔からは双耳峰 「エンカンタッツ」が鋭く聳え立ち、アルプスを思わせるダ イナミックな風景が広がる。

公園には大きく分けて2つの入口がある。ひとつはパリャ ース・スビラーのエスポット（Espot）側、もうひとつはアル タ・リバゴルサのボイ（Boí）側で、それぞれからアクセスで きる登山道や展望ルートは異なる。いずれのルートも日帰 りハイキングから本格的な縦走トレイルまでレベルに応じ た楽しみ方ができる。

四季を通じて楽しめるが、雪解け後の5月〜7月は湖や 高山草原が最も美しく、ベストシーズンとなる。

Parc Nacional d'Aigüestortes i l'estany de Sant Maurici Carrer de les Graieres, 2 25528 Boí, la Vall de Boí (Alta Ribagorça), Lleida https://parcsnaturals.gencat.cat/en/xarxa-de-parcs/aiguestortes/

ROAD TRIP:

Catalunya

Day 6:

Vall de Boí - Artíes

Vielha, Baqueira, Artíes

ピレネーの独自文化が息づくアラン谷 ビエーリャとバケイラを訪ねる山岳ルートへ

サン・クリメン・デ・タウイ教会のあるタウイからクルマを走らせるこ と約1時間、アラン谷（Val d’Aran）の中心都市ビエーリャ（Vielha）が この日最初の立ち寄り地だ。ピレネー山脈の西端、フランス国境にも 近いこの谷は、カタルーニャの中でも独自の文化と歴史を持つ地域。

中心部の広場に掲げられた3本の旗（カタルーニャ旗、スペイン国 旗、アラン谷の旗）は、この地の独自性を象徴している。ここでは今も アラン語が話され、独特のアイデンティティを感じ取れる。

町の中心にあるサン・ミケウ教会（Església de Sant Miquèu de Vielha）では、12世紀のロマネスク像「ミジャランのキリスト像（Crist de Mijaran）」が訪れる人を迎える。また、徒歩圏内のアラン谷博物館

（Museu dera Val d’Aran）では、考古資料や民族衣装、日常道具を 通してこの谷の生活や歴史を学ぶことができる。

冬には、ビエーリャからクルマでわずか14kmのバケイラ・ベレット （Baqueira Beret）がウィンタースポーツの拠点として賑わう。スペイ ン最大級のスキーリゾートは多彩なコースと雪質の良さで知られ、 山岳リゾートらしい洗練されたホテルやレストランも揃っている。ス ケジュールに余裕があるならこの地での滞在を延ばし、スキーやグ ルメをじっくり堪能するのもおすすめだ。

この日の宿泊はパラドール・デ・アルティエス（Parador d’Arties）が おすすめだ。歴史的建造物を改装した落ち着きのある国営宿舎で、 暖炉を囲むラウンジや地元食材を使ったレストランが迎えてくれる。 ビエーリャからアルティエスまではわずか7km。C-28号線を走る区 間はピレネーの山肌を縫うように進み、時間や季節によって変化す る光と影がロードトリップの記憶を鮮やかに彩ってくれる。

Catalunya

Vielha, Baqueira, Artíes

Sant Miquèu de Vielha

スペインとフランスの国境に近い場所に 位置するビエーリャ（Vielha）は、アラン 谷地方の行政・文化の中心地である。標 高974mに広がるこの町は、アラン語を はじめとする多言語文化と山岳の生活文 化が交錯する拠点として知られている。

中心部には中世の町並みが広がり、石造 りの家屋、狭い小路、木造のバルコニー などがピレネー山麓の生活様式を今に伝 える。冬はスキー、夏はトレッキングや マウンテンバイクの拠点としてアクティ ブな旅の玄関口となっている。

Vielha

25530 Vielha

Vielha e Mijaran (Val d’Aran), Lleida

From Vall de Boí: 41.8 km To Artíes: 7.1 km

ビエーリャの旧市街に建つサン・ミケウ 教会（Sant Miquèu de Vielha）は、12世 紀に創建されたロマネスク様式の教会で あり、町の象徴的存在として親しまれて いる。後のゴシック様式の要素も取り入 れられ、歴史的な建築の変遷を体現して いる。石造りの外観に対し、内部は簡素 ながらも荘厳な雰囲気が漂い、静寂のな かに信仰の重みが感じられる。教会内に 安置される「ミジャランのキリスト像」 も見逃せない存在だ。ビエーリャを象徴 する歴史的建築だ。

Sant Miquèu de Vielha Plaça de la Glèisa, s/n 25530 Vielha, Vielha e Mijaran (Val d’Aran), Lleida

From Vall de Boí: 41.9 km To Artíes: 7.0 km

Musèu dera Val d’Aran アラン谷博物館

アラン谷博物館（Museu dera Val d’Aran） は、アラン谷の歴史・文化・民族を体系 的に紹介する施設である。建物自体は17 世紀の邸宅を改装したもので、石と木で 構成された外観は地域の伝統建築そのも の。博物館の展示内容は、先史時代から 現代までの考古資料、宗教美術、山岳民 の生活道具、アラン語に関する資料など 多岐にわたる。特に、地元の葬礼文化や 農耕・牧畜に関する展示は、この地域の 厳しい自然環境に根ざした独自の生活様 式が実感できるものだ。

Musèu dera Val d’Aran

Carrer Major, 26

25530 Vielha, Vielha e Mijaran (Val d’Aran), Lleida

From Vall de Boí: 41.7 km To Artíes: 7.0 km

ミジャランのキリスト像（Crist de Mijaran）は、12世紀に制作された木彫の磔刑像であり、アラン地方 の宗教美術を代表する作品。かつては近郊のミジャラン修道院に祀られていたが、修道院の消失後、現 在はビエーリャのサン・ミケウ教会内に安置されている。像はロマネスク美術の様式に従い、表情は厳 格で象徴的。直線的な身体のラインや、象徴的な目の表現が特徴で、単なる宗教的遺物にとどまらず、 造形美の観点からも高い評価を受けている。宗教と芸術、地域の歴史が交差する貴重な像である。

Crist de Mijaran (https://www.visitvaldaran.com/en/item/sant-miqueu-de-vielha/) Plaça de la Glèisa, s/n 25530 Vielha, Vielha e Mijaran (Val d’Aran), Lleida

Accommodation

Parador d’Artíes

Artíes

Parador d’Artíes パラドール・アルティエス

14〜15世紀の建築様式が息づく国営ホテル アラン谷を旅する拠点として最適な立地

スペイン各地に展開する国営ホテルであるパラドール （Parador）は、歴史的建造物や文化財をリノベーションし、 地域の魅力と伝統を体感できる宿泊体験を提供する独自の ネットワーク。カタルーニャ北部、フランス国境近くに広がる アラン谷にもそのひとつ、パラドール・アルティエス（Parador d’Arties）があり、山岳リゾートの拠点として人気を集めてい る。ホテルが建つのは、ビエーリャとバケイラのちょうど中間地 点。冬季はスキー、夏季はハイキングや渓流釣りなど、季節ご とに異なる魅力を体感できる地域にある。

建物は、14〜15世紀の伝統的なアラネーセ建築様式を今 に伝える石造りの構造で、急勾配の屋根や木組みのファサー ドなどが特徴的。温かな色調の内装と薪ストーブのあるラウ ンジ、木材を多用した客室など、素朴さと快適さが調和した空 間が広がる。館内にはレストランとバー、屋外プール、サウナ、 フィットネスジムなども完備。周囲には中世の面影を残すアル ティエスの町並みや、ロマネスク建築の教会群、ピレネーの大 自然が広がる。地域全体がひとつのリゾートのように機能して おり、ここを拠点に、気ままにアラン谷をクルマで巡る滞在型 ロードトリップを楽しむのもおすすめだ。

Parador d’Artíes Carrer de Sant Joan, 1 25599 Artíes, Naut Aran (Val d’Aran), Lleida https://paradores.es/en/parador-de-arties

Activities Baqueira Beret

Naut Aran

Baqueira Beret

バケイラ・ベレット

滑走・美食・雪上ドライブを堪能 ピレネーが誇る名門スキーリゾートへ

バケイラ・ベレットは、標高1,500mから最大2,610mのエリ アに広がるスペイン屈指の規模とクオリティを誇るスキーリ ゾートである。スキーエリアはバケイラ、ベレット、ボナイグア の3ゾーンに分かれ、それぞれが異なる地形と魅力を持つ。

コース総延長は160km以上で、初級者向けの広く穏やかな バーンから、起伏の激しいオフピステ、森の中を縫うようなツ リーランまで、多彩なスタイルに応える構成だ。降雪量の安 定性や雪質の良さでも定評があり、最長14km超となるロン グコースでは山頂から麓まで一気に滑り降りることができ、 アルプスのリゾートにも匹敵するスケール感を誇る。

ゲレンデ内外には、地元アラン谷の素材を活かしたレス トランが点在しており“スキー＋グルメ”の滞在を求める旅 行者からも高い支持を集めている。さらに、クルマ好きには AudiとのコラボレーションによるDriving Experienceの専 用エリアがあり、雪上ドライビングをプロの指導のもとで学 べるプログラムも用意されている。

バケイラ・ベレットは、滑って、味わって、ドライビングも 楽しめる。冬の魅力すべてに応える、カタルーニャ屈指の “冬の総合リゾート”である。

Baqueira Beret

Carrer Afores, s/n, 25598 Naut Aran (Val d’Aran), Lleida https://www.baqueira.es

Catalunya

Day 7:

Artíes - La Seu d’Urgell

Guils del Cantó, La Seu d’Urgell

ピレネーを越え中世の面影が残る歴史都市へ ロマネスク大聖堂を訪れ、城塞ホテルに泊まる

カタルーニャ・グランドツアーの7日目はアルティエス（Artíes）か らラ・セウ・ドゥルジェイ（La Seu d’Urgell）へと向かう。山々の稜 線を縫うように下る道は変化に富み、谷を見下ろすビューポイン トに立ち寄れば、これから向かうカタルーニャ内陸部への移ろい を実感できる。ミラドール・デ・ラ・クレウ・デ・ギルス・デル・カントー

（Mirador de la Creu de Guils del Cantó）から望む重層的な山 並みは、この日のドライブのハイライトのひとつだ。

目的地のラ・セウ・ドゥルジェイは、城壁に囲まれた小都市。石畳 の路地や歴史的建築が並ぶ旧市街は、中世の面影を色濃く残し、 すこし歩くだけでも歴史に包まれる感覚を覚える。中心に立つサン

タ・マリア大聖堂（Catedral de Santa Maria d’Urgell）は、カタルー ニャに現存する唯一のロマネスク様式の大聖堂で、荘厳なファサー ドと回廊が放つ重厚な空気は、この町の象徴だ。

町の外れには、1992年のバルセロナ五輪でカヌー競技会場 となったパルク・オリンピック・デル・セグレ（Parc Olímpic del Segre）があり、現在はカヌーやラフティングの体験ができるアク ティビティ拠点となっている。またこの地域は酪農が盛んで、山の 恵みを生かしたチーズ文化が息づく土地としても知られている。 フォルマッジャス・デ・ラバデッサ（Formatges de l’Abadessa） のように、地元の牧草で育った牛やヤギのミルクを少量生産で丁 寧に仕上げるチーズは、ぜひとも味わいたい。

この日の宿泊は地元の名家タピエス家が城塞を修復した歴史あ るホテル、エル・カステイ・デ・シウタ（El Castell de Ciutat）へ。静け さと上質さを求める旅人にふさわしい場所だ。

Mirador de la Creu de Guils del Cantó

ギルス・デル・カント展望台

Guils del Cantó, La Seu d’Urgell

Parc Olímpic del Segre

セグレ・オリンピック公園

Catedral de Santa Maria d'Urgell

サンタ・マリア大聖堂

ラ・セウ・ドゥルジェイ旧市街の中心に そびえるサンタ・マリア大聖堂（Catedral de Santa Maria d’Urgell）は、カタルーニャ に現存する唯一のロマネスク様式大聖堂 である。12世紀に完成した荘厳なファ サードと優美な回廊は、中世建築の美を 今に伝えている。内部には祭壇やフレス コ画も保存され、宗教と芸術が融合した 空間を体験できる。また、この大聖堂の 司教はアンドラ公国の共同元首の一人と いう歴史的背景も持ち、カタルーニャと アンドラの関係性を物語る建築でもある。 ギルス・デル・カント展望台（Mirador de la Creu de Guils del Cantó）は、ピレネー 南部の山岳ルートであるカント峠（Coll del Cantó）にある展望スポット。標高 1,720m前後の高さにある道路脇に突き出 すように設けられた小さなデッキからは、 ラ・セウ・ドゥルジェイ周辺の谷やアン ドラ国境の山並みまでを一望できる。朝 霧や夕暮れ時には谷全体がドラマチック に染まり、訪れる時間によって印象が大 きく変わる。四季折々に表情を変えるピ レネーの雄大さを凝縮した場所である。

Mirador de la Creu de Guils del Cantó Carretera C-14, Coll del Cantó, 25717 Montferrer i Castellbò, Alt Urgell, Lleida

From Artíes: 107.9 km

To La Seu d’Urgell: 34.5 km

1992年バルセロナ五輪のカヌー競技会場 として整備されたセグレ・オリンピック 公園（Parc Olímpic del Segre）は、現在 もアクティビティ施設として人気を集め る。セグレ川の自然河川を活かした人工 コースには水流調整システムが備えられ、 スラロームやラフティングを体験できる。 プロ選手のトレーニング拠点でありなが ら、観光客向けのプログラムも充実。ラ・ セウ・ドゥルジェイにおける 五輪のレガ シーを活かしたこの施設はラフティング・ パークとも呼ばれ親しまれている。

Parc Olímpic del Segre

Ctra. de la Seu a Castellciutat, s/n 25700 La Seu d’Urgell (Alt Urgell), Lleida

From Artíes: 141.4 km To La Seu d’Urgell: 0.9 km

Catedral de Santa Maria d’Urgell

Plaça de Santa Maria, s/n 25700 La Seu d’Urgell (Alt Urgell), Lleida

From Artíes: 140.8 km

To La Seu d’Urgell: 0.6 km

アンドラ公国との国境に近いラ・セウ・ドゥルジェイ旧市街に残る石造の門は、中世には要塞都市の 一部として機能していた。かつてアンドラ方面からの旅人がこの門をくぐって町へ入ったことから「ア ンドラ門」と呼ばれている。現在では門の周辺は広場やカフェが立ち並ぶ観光エリアとなっており、 町の歴史を感じさせるランドマークとして親しまれている。門をくぐることで、中世と現代が交差す る瞬間を味わえる。都市の境界がはっきりしていた時代の面影を残す、象徴的な石造建築である。

Portal d’Andorra

Carrer Major, s/n 25700 La Seu d’Urgell (Alt Urgell), Lleida

ROAD TRIP:

Catalunya

Food Experiences

Formatges de l’Abadessa

La Seu d’Urgell

Formatges de l’Abadessa

フォルマッジャス・デ・ラバデッサ

旧市街の路地に佇む小さなチーズ工房 職人が紡ぐアルト・ウルジェイの食文化

ピレネー山脈の麓、ラ・セウ・ドゥルジェイ旧市街に佇 む小さなチーズ工房がフォルマッジャス・デ・ラバデッサ

（Formatges de l’Abadessa）だ。地元の恵みと職人技が凝 縮されたチーズは、ロードトリップの記憶に刻まれる味わい

だ。工房を率いるのはジュディ・カレイラ。20年以上の経験を 持つチーズ職人で、近隣の酪農家から仕入れる牛乳や山羊 乳、羊乳を使い、それぞれの個性を引き出している。

ラインナップは、フレッシュで柔らかな「Blanc」、優しい甘 みの「Tendre de Vaca」、牛乳の旨味を凝縮した「Curat de Vaca」、そしてコクのある「Curat de Cabra」「Curat d’Ovella」 と多彩。さらに「Cabra amb herbes（ハーブ）」「Cabra al pebre vermell（パプリカ）」といった個性派も揃う。これらのチ ーズは国内外の品評会で数々の受賞歴も持っている。

訪問者は熟成庫を見学し、ジュディ本人から直接話を聞 けるのも魅力。試食では地元産の蜂蜜やクルミとのペアリン グが提案され、一片ごとに異なる風味の広がりを体感できる。 山の恵みと多彩な素材それぞれの個性、そして職人の経験 が織りなす味わいは、アルト・ウルジェイの風土そのもの。ロー ドトリップの途中で必ず立ち寄りたい場所だ。

Formatges de l’Abadessa Carrer dels Canonges, 45 25700 La Seu d’Urgell (Alt Urgell), Lleida https://abadessa.cat/

Accommodation

El Castell de Ciutat

La Seu d’Urgell

9世紀の城塞を受け継ぐ丘の上のホテル ピレネーを望むラ・セウ・ドゥルジェイの名宿

ラ・セウ・ドゥルジェイの市街地を見下ろす丘の上に建つ エル・カステイ・デ・シウタ（El Castell de Ciutat）は、家族経 営によるラグジュアリーホテルだ。9世紀に築かれた城塞の 跡地にあるこのホテルは、1969年に地元の名家タピエス一 家によって丹念に再生された。城塞の歴史を受け継ぎつつ 現代的な快適さを備えた特別な滞在先であり、旧市街から カディ山塊までを一望できる絶好のロケーションにある。

客室は木の温もりを生かした落ち着いたデザインで、多 くの部屋にはバルコニーが設けられ、朝の光に照らされる 町並みと山々の稜線を望むことができる。館内のガストロノ ミー・レストラン「Tàpies」では、地中海とカタルーニャの食 文化を基盤とした創造的な料理を提供。650種類以上を 揃えるワインセラーはカタルーニャ屈指の規模を誇り、食 とワインの体験をさらに引き立てる。

屋内プールやサウナ、トリートメントルームを備えたスパ も完備しており、アウトドアの疲れを癒すのに最適だ。カタ ルーニャ・グランドツアーのルート上では、アンドラ越えや ピレネー横断の前後に立ち寄る拠点としても重宝され、静 けさと上質さを求める旅行者にふさわしいホテルだ。

El Castell de Ciutat Ctra. N-260, km 229 25700 La Seu d’Urgell (Alt Urgell), Lleida https://www.hotelelcastell.com/en

El Castell de Ciutat エル・カステイ・デ・シウタ

ROAD

TRIP:

Catalunya

Day

8: La Seu d’Urgell - Ripoll

La Seu d’Urgell, Gósol, Bellver de Cerdanya, La Pobla de Lillet, Ripoll

ピカソの創作を育んだ山間の村を経て ペドラフォルカを望むピレネーの峠道をドライブ

ラ・セウ・ドゥルジェイを後にし、C-462号線からC-563号線へと ハンドルを切る。すると緩やかなカーブと急勾配が交互に現れる ワインディングへと入り、途中の展望所では谷を見下ろす絶景に 思わず息をのむ。なかでもジョーサ峠（Coll de Josa）展望台から は、切り立つペドラフォルカの山塊と、その麓に寄り添うように広 がるゴスル（Gósol）の町並みを一望できる。 　ゴスルは1906年にパブロ・ピカソが滞在した村として知られ、 画風に大きな転機をもたらした地でもある。市街中心のゴスル・ピ カソセンター（Centre Picasso de Gósol）では、この地で描かれ た作品やスケッチを通じて、村の素朴な風景が彼の創作に与えた

影響をたどることができる。また、現在は営業を終えたカル・タンパ ナーダ（Cal Tampanada）も外観だけは残され、ピカソが長期滞 在した当時の面影を伝えている。ここから眺めた村の景色が、ピカ ソの作品に反映されたと伝わる場所だ。

ゴスルの散策を終えたら、ペドラフォルカのふもとを回り込むよ うに走るB-400号線へ。雄大な山容を横目に走るこの区間はロー ドトリップの醍醐味そのもの。その後、C-16号線に合流すると、次 の目的地ベルベール・デ・セルダーニャ（Bellver de Cerdanya）へ 到着する。村の一角にあるレストラン、カ・ラ・ヌリア（Ca la Núria） では地元食材を使った料理を心地良い空間で楽しむことができ、 長時間のドライブの後には格別だ。

ランチのあとは、ダス（Das）やアルプ（Alp）といった小さな村に 立ち寄りながら、N-260号線を東へ。夕刻にはリポル（Ripoll）に到 着し、翌日のジローナ県ドライブに備え、ここで一泊する。

La Seu d’Urgell, Gósol, Bellver de Cerdanya, La Pobla de Lillet, Ripoll

Coll de Josa

ジョーサ峠

セルダーニャ郡とアルト・ウルジェイを 隔てるジョーサ峠（Coll de Josa）は、ピ レネー山脈の中腹に位置する標高1,600m 超の峠道だ。曲がりくねった山道の途中 に開けた風景は、カタルーニャ内陸部で は珍しいほどの開放感を与えてくれる。

ここからはペドラフォルカの絶景、そし てゴスルの村を眺めることができ、風景 写真の撮影スポットとしても知られてい る。沿道には小さな展望所が設置されて いるが、観光地化されていないため静か に美しい風景を楽しめる。

Coll de Josa

Carretera B-400, prop de Gósol 25716 Gósol (Berguedà), Lleida

From La Seu d’Urgell: 34.6 km To Ripoll: 88.1 km

Cal Tampanada

カル・タンパナーダ

ゴスルでピカソが長期滞在した宿がカ ル・タンパナーダ（Cal Tampanada）で ある。現在は営業を終えているが、外観 のみ当時の姿を残し、芸術家が過ごした 時間を偲ぶことができる。白壁の素朴な 建物の窓からは、石造りの家並みとペド ラフォルカの山塊が望め、ピカソはその 景色を眺めながら創作に没頭したと伝わ る。館内に入ることはできないが、外か ら見上げるだけでもピカソのまなざしを 追体験できる。ゴスル散策では必ず立ち 寄りたい歴史的な一角だ。

Cal Tampanada

Carrer de la Font, s/n 25716 Gósol (Berguedà), Lleida

From La Seu d’Urgell: 43.7 km To Ripoll: 78.6 km

Pedraforca ペドラフォルカ

ピレネー山脈の支峰ペドラフォルカ （Pedraforca）は、二股に分かれた独特の 山容でカタルーニャを象徴する名峰であ る。標高2,506mの双峰は遠くからでも 一目でわかり、古くから旅人や芸術家、 登山家たちを惹きつけてきた。山を周回 するように伸びるB-400号線の道路は、 迫りくる岩峰と渓谷の景観を横目に走る 絶景ドライブルート。曲がりくねった山 道を進むごとに角度を変えて現れるシル エットは、まるで山が生きているかのよ うな表情を見せる。

Pedraforca

B-400, 08697 Saldes, Barcelona

From La Seu d’Urgell: 52.2 km To Ripoll: 68.8 km

ROAD

TRIP: Catalunya

Centre Picasso de Gósol

Gósol

Centre Picasso de Gósol ゴスル・ピカソセンター

ピカソが創作の転機を迎えた山村 ゴスルに残る小さな記憶の博物館

ゴスル（Gósol）は、1906年の夏にパブロ・ピカソが滞在し た地として知られ、この村で過ごした数か月は、彼の画風を 大きく変える転機となったといわれている。

ゴスル・ピカソセンター（Centre Picasso de Gósol）は、当 時のピカソの創作の痕跡をたどることができる博物館。館内 には当時のスケッチや、写真、資料が並び、20代半ばのピカソ がこの村でどのように過ごしたかを知ることができる。

ピカソがゴスルを訪れたのは、都市の喧騒から離れ、静か に自分の絵と向き合うためだった。抽象的な静けさと彫刻的 な力強さを併せ持つ石造りの村と二股の岩山ペドラフォルカ に囲まれたこの村の環境はピカソに大きなインスピレーショ ンを与え、色彩を抑え、形を削ぎ落とす表現へと踏み出させ、 後のキュビスムにつながる転機となったとされる。

小さい博物館ながら展示は充実しており、当時の文通や村 人との交流記録も紹介。商業的なピカソ像ではなく、一人の若 き画家が葛藤と向き合う姿に触れられる。展示室で資料や作 品を眺めていると、ピカソがここで過ごした時間がそっと蘇るよ うに感じられる。ピカソを優しく迎え、対話した小さな村の博物 館は、100年を経ても天才画家の気配を静かに伝えている。

Centre Picasso de Gósol

Plaça del Castell, s/n 25716 Gósol (Berguedà), Lleida https://centrepicasso.art/

Museum

Food Experiences

Restaurant Ca la Núria

Bellver de Cerdanya

Restaurant Ca la Núria

レストラン・カ・ラ・ヌリア

美しい山並みに抱かれたアットホームな食卓 実力派シェフが紡ぐサルダーニャの食文化

ピレネー南麓、サルダーニャ地方の高原に位置するベル ベール・デ・サルダーニャ。その町の一角に佇む石造りの建物 が、レストラン・カ・ラ・ヌリア（Restaurant Ca la Núria）だ。

レストランは自宅の1階を改装したアットホームな空間で、 まるで家に招かれたかのような心地よさが漂う。一方でオー ナー兼シェフのヌリア・ボネットは、カタルーニャのガストロノミ ー賞「Revelació（新人賞）」を受賞した実力派。地元の小規模 生産者と直接つながり、旬の素材を仕入れて調理するその姿 勢は、料理一皿一皿に誠実さを宿している。

このレストランで提供される料理は、地元の肉や野菜を 中心にした地産地消の郷土料理。季節ごとに異なる素材が 食卓を彩り、ピレネーの自然の恵みをそのまま味わえる。伝 統的なレシピを守りつつ、盛り付けや調理に現代的な工夫 を加えることで、素朴でありながら洗練された一皿に仕上げ られているのが特徴だ。

サルダーニャ地方に息づく食文化と山の恵みを味わえる レストラン・カ・ラ・ヌリアは、ピレネーを巡るロードトリップ でぜひ立ち寄りたい一軒である。

Restaurant Ca la Núria

Plaça de Sant Roc, 3 25720 Bellver de Cerdanya (Cerdanya), Lleida https://www.restaurantcalanuria.cat/

ROAD

TRIP:

Catalunya

Day 9:

Ripoll - Figueres

Castellfollit de la Roca, Besalú, Banyoles, Figueres

断崖の村と中世の町を巡り ダリの故郷フィゲラスに滞在

ピレネーの山あいを離れ、N-260号線からC-26号線へと進み 南下して向かうのは、断崖の上に細長く伸びる集落カステルフォ リ・デ・ラ・ロカ（Castellfollit de la Roca）。二つの川に挟まれた 高さ50mの玄武岩の絶壁上に家々が並び、まるで空に浮かぶよ うな独特の景観を作り出している。そして次に向かうのは、中世 の趣を色濃く残す町ベサルー（Besalú）だ。町の入口に架かるロ マネスク様式のベサルー橋（Pont de Besalú）は、12世紀の姿を 今に伝えるランドマークだ。旧市街に足を踏み入れれば、石畳の 路地やアーチ型の門、古い商家が軒を連ね、歴史の教科書の中 に迷い込んだような感覚に包まれる。町の散策後は、近郊に広が

る湖畔へ足を延ばすのもいい。なかでもバニョレス湖（Estany de Banyoles）は静かな水辺と緑に囲まれたエリアで、湖を眺めなが らのランチはドライブの合間の心地よい休息となる。 　午後はカタルーニャ北部に位置する町フィゲラス（Figueres）へ。 ここはシュルレアリスムの巨匠サルバドール・ダリの故郷であり、そ の人生と作品を深く知ることができる町だ。まずはサルバドール・ダ リ生家（Casa Natal de Salvador Dalí）で彼の幼少期に触れた後、 町の中心にあるダリ劇場美術館（Teatre-Museu Dalí）へ。かつて の劇場を改装したこの美術館は、建物そのものがダリの世界観を 体現しており、代表作から晩年の作品までが一堂に会する。

観光後は芸術と人々の生活が共存するフィゲラスの町の空気を 感じながら一泊するのがおすすめ。夜にはライトアップされた町並 みが幻想的な表情を見せ、ディナー後の町散策は一日を締めくく る特別な時間を楽しませてくれる。

Carrer Rocafort, 17850 Besalú, Garrotxa, Girona, Catalunya

Castellfollit de la Roca, Besalú, Banyoles, Figueres

Castellfollit de la Roca

カステルフォリ・デ・ラ・ロカ

ヴァル・デン・バス渓谷とフルビア渓谷 の合流地点に位置するカステルフォリ・ デ・ラ・ロカ（Castellfollit de la Roca）は、 玄武岩の断崖の上に築かれた集落だ。幅 はわずか50m、長さ1kmほどの岩壁の上 に家々が立ち並び、その眺望はまるで空 に浮かぶ町のようだ。町の歴史は中世に まで遡り、戦略的な立地から防衛拠点と しての役割を果たしてきた。現在でも石 造りの家並みが残り、教会や時計塔が町 のシルエットを形づくっている。旧市街 は歩いて10分ほどで周れる小ささだ。

Castellfollit de la Roca 17856 Castellfollit de la Roca (La Garrotxa), Girona

From Ripoll: 57.0 km

To Figueres: 54.9 km

Pont de Besalú

ベサルー橋

中世の石橋ベサルー橋（Pont de Besalú） は、ロマネスク期の土木建築の粋を集め た構造物である。12世紀に建設され、度 重なる改修を経て今も現役で使われてい る橋である。全長105m、川の蛇行に沿っ て湾曲した形状が特徴で、防衛のための 塔門も設けられている。橋は旧市街へと 続き、城壁や修道院、石畳の通りが中世 の面影を色濃く残す。この旧市街はドラ マ「ウエストワールド（Westworld）」の シーズン3の撮影が行われた場所として も注目を浴びている。

Pont de Besalú 17850 Besalú (La Garrotxa), Girona

From Ripoll: 47.9 km

To Figueres: 34.5 km

Estany de Banyoles

バニョラス湖

バニョラス湖（Estany de Banyoles）は、 バニョラス近郊の湿地帯に位置する湖で あり、水鳥や淡水魚の生息地として知ら れている。かつての漁業集落の跡も残 り、ペスケラ・デ・マタ（Pesquera de Mata）と呼ばれる船小屋や桟橋が今も残 されている。春から秋にかけては渡り鳥 の飛来も多く見られ、バードウォッチン グスポットとしても人気がある。

湖畔にはカフェを兼ねるレストランも 点在し、ドライブ途中の立ち寄りスポッ トとしても魅力的だ。

Estany de Banyoles Passeig Darder, s/n 17820 Banyoles (Pla de l’Estany), Girona

From Ripoll: 73.2 km

To Figueres: 46.4 km

ベサルーの旧市街はロマネスクの町並みが残る歴史都市だが、散策すると現代アートとの出会いが待っ ている。ロカフォルト通りの壁には椅子を題材にしたユニークなインスタレーションが掛けられ、観 光客も地元の人も思わずカメラを向けてしまう。さらに町の周辺には「平和の椅子」と名付けられた 彫刻も置かれ、古都の風景に現代のアートが溶け込んでいる。石畳を歩きながら、中世の歴史と現代アー トの対話を同時に味わえるのが、ベサルー散策の醍醐味のひとつになっている。

Sillas de la calle Rocafort (https://patrimoni.garrotxa.cat/es/puntos-de-interes/sillas-de-la-calle-rocafort/) Carrer Rocafort, 17850 Besalú, Garrotxa, Girona, Catalunya

ROAD

TRIP:

Catalunya

Museum

Casa Natal Salvador Dalí

Figueres

Casa Natal Salvador Dalí

サルバドール・ダリ生家

生家で幼少期と家族の記憶をたどり ダリの“内的世界”に触れ、体感する

サルバドール・ダリ生家（Casa Natal de Salvador Dalí）は、 20世紀を代表する芸術家が1904年に生まれ、幼少期を過ご した場所である。2023年に全面リニューアルが行われており、 ダリの“内的世界”を追体験する没入型ミュージアムとして新 たに生まれ変わった。

各フロアにはテーマが設けられ、家庭環境や家族との関 係、幼少期の体験がどのように彼の芸術性を形作ったかを映 像や音響で描き出す。訪問者はダリが生まれた寝室、父の書 斎、家族の食卓を再現した空間を巡りながら、伝記を読む以 上の“生きた背景”に触れることができる。壁面に投影される 映像やインタラクティブな装置が随所に配され、まるで彼の 思考に入り込んだかのような感覚を味わえるのが特徴だ。 　とりわけ印象的なのは兄の存在に触れる展示である。ダリ は、誕生の1年前に亡くなった兄と同じ名前を与えられて生ま れており、この事実が彼のアイデンティティに複雑な影響を 与えたとされる。本人も「私は亡き兄の生まれ変わりだと感じ ていた」と語っており、その意識が後の超現実的な表現や“分 裂する自己”の原点につながっていることが示される。

館内は映画的な構成で、順路を進むほどに時系列とともに ダリの内面が明確化していく。最後には来館者自身に問いを 投げかける仕掛けもあり、一人の人間としての存在と向き合 う時間が用意されている。サルバドール・ダリ生家は、ダリと いう人物を“体験する”ための入り口である。

Salvador

Carrer de Monturiol, 6 17600 Figueres (Alt Empordà), Girona https://www.casanataldali.cat/en/

Hours: Jun–Sep: Daily 10 AM–7 PM

Catalunya

Casa Natal

Dalí

Museum

Teatre-Museu Dalí

Figueres

Teatre-Museu Dalí

ダリ劇場美術館

奇抜な建物そのものが芸術作品 ダリの世界に没入する劇場美術館

真っ赤な外壁、巨大な卵、黄金の人形、屋根に浮かぶガラス 球体。強烈なインパクトを与えるこの建物こそダリ劇場美術館 （Teatre-Museu Dalí）である。「自分の作品を展示するならここ しかない」とダリ自身が選び、1974年に誕生したこの美術館は、

彼の生涯最後の大仕事であり、最大の作品そのものである。 　もとは市立劇場だった建物を改装したもので、開館以降、 展示の構成や配置は生前にダリが定めたまま変わっていな い。作品を単に展示するのではなく、空間そのものを演出す ることで、美術館全体がひとつの巨大なインスタレーション として機能しており、ここを訪れる者は知らぬ間に鑑賞では なく体験へと巻き込まれていく。

館内に伝統的な順路は存在せず、中央のガラスドーム、逆さ まの部屋、天井画、視覚トリックを駆使したオブジェなど、あら ゆる場所にダリのこだわりが見える。代表的な「メイ・ウエスト の顔の部屋」では、家具や調度が特定の角度からのみ女優の 顔に見える構造を持ち、芸術と演出の境界を消し去るダリの 発想が凝縮されている。さらに、地下にはダリ本人の墓が設け られ、生涯と死、そして芸術の継続を美術館そのものに結びつ け、彼はいまもここで眠りながら訪問者を迎えている。

展示は初期の写実絵画から幻想的な作品、彫刻やジュエ リーデザインまでが混在し、ダリの多面的な表現力を一度に 体感できる。驚きや戸惑い、笑いすらもすべてがダリの意図し た演出であり、訪れた人の記憶に深く刻み込まれるだろう。

Teatre-Museu Dalí

Plaça Gala i Salvador Dalí, 5 17600 Figueres (Alt Empordà), Girona https://www.salvador-dali.org/en/visit/dali-theatre-museum/

Hours:

Jan–Mar & Oct–Dec: Tue–Sun 10:30 AM–6:00 PM

Apr–May: Tue–Sun 9:30 AM–6:00 PM

Jun: Tue–Sun 10:30 AM–6:00 PM

Jul–Aug: Daily 9:00 AM–8:00 PM

Closed Mondays (select holidays excepted)

Last entry 45 minutes before closing

Figueres, Cadaqués, Girona Day 10:

Figueres - Girona

知性&感性を刺激するペララーダとカダケス そして美食とサイクリストの聖地ジローナへ

10日目のロードトリップは、ペララーダの町にあるペララーダ城ミュ ージアム（Museu del Castell de Peralada）から始まる。中世の城館を 利用したこのミュージアムには、美術品や陶磁器、古書、ガラス工芸 など多彩なコレクションが収蔵され、知的好奇心を刺激してくれる。 なかでも歴史的な宗教美術やヴェネツィアン・グラスの展示は見応 えがあり、静謐な空間の中で文化の厚みを感じ取れる。またクルマ好 きならヒスパノ・スイザの間（Sala Hispano Suiza）もぜひ訪れたい。

その後は東へと走り、地中海沿岸の港町カダケス（Cadaqués）に 向かおう。白壁の家々と紺碧の海が織りなす、カタルーニャでも屈 指の美しさを誇る場所だ。漁船が揺れる小さな入り江プラージャ・

ポルト・ダルゲル（Platja Port d’Alguer）は、サルバドール・ダリが愛 し、作品にも描いた場所で、今も当時のままの景色が目の前に広が る。散策の合間には海沿いのレストランで魚介のパエリアやカタル ーニャ料理を楽しみ、潮風とともにゆったりとした時間を過ごそう。 ここから少し足を延ばせば、ダリが暮らした家を改装したダリの家 博物館（Casa-Museu Salvador Dalí, Portlligat）を訪ねることもで き、芸術と風景の密接な関係を体感できる。

日が傾き始めたらジローナ（Girona）へ。ピレネーの麓を抜け、市 街に近づくとロードバイクで走るサイクリストの姿が増えてくる。ジ ローナは世界中の選手が拠点とする“サイクリストの聖地”であり、 その活気は車窓からも伝わる。到着後は旧市街の石畳を歩き、大 聖堂や中世の城壁を眺めながら散策を楽しみたい。夜は美食の町 ならではのディナーを。地元食材を生かした創作料理やワインと共 に味わう郷土料理が、旅の一日を豊かに締めくくってくれる。

Sant Quirze de Colera

サン・キルセ・デ・コレラ修道院

サン・キルセ・デ・コレラ修道院（Sant

Quirze de Colera）は、山中に静かに佇むベ ネディクト会の修道院跡である。設立は9 世紀末、カロリング朝時代の影響を受けた 建築様式を残す貴重な存在であり、カタ ルーニャにおける初期キリスト教建築の 一例とされている。現在は廃墟に近い姿だ が、ロマネスク様式の三身廊の構造や、厚 みのある石壁、簡素なアーチ構造が往時の 宗教施設の姿を今に伝えている。カタルー ニャの修道院文化に触れたい人にとって はその奥深さを実感できる場所だ。

Sant Quirze de Colera

Carretera de Sant Quirze de Colera, s/n 17732 Rabós (Alt Empordà), Girona

From Figueres: 23.7 km

To Girona: 86.5 km

Figueres, Cadaqués, Girona

Cadaqués

カダケス

地中海に面した漁村カダケス（Cadaqués） は、ダリをはじめとする多くの芸術家た ちに愛された町として知られる。白壁の 家々と青い海、迷路のような石畳の小路 が織りなす風景は、コスタ・ブラバの中 でもひときわ印象的だ。20世紀初頭か ら多くのアーティストがこの町を訪れ、 芸術家村としての名声を築いた。現在も ギャラリーやアトリエが点在し、静かな 海辺の町に創造的な空気が漂っている。 リラックスとインスピレーションが同居 する、特別な海辺の町である。

Cadaqués

17488 Cadaqués (Alt Empordà), Girona

From Figueres: 35.3 km

To Girona: 82.7 km

ピレネーの麓に広がる古都ジローナ （Girona）は、中世の町並みが色濃く残 る歴史都市だ。石畳の旧市街には大聖堂 や城壁、アラブ浴場などが点在し、歩く だけで時を遡るような感覚を味わえる。 町を流れるオニャール川には、エッフェ ル塔を設計したギュスターヴ・エッフェ ルによる鉄橋が架かり、町の象徴的な風 景をつくり出している。近年は「美食の 町」「サイクリストの聖地」としても知 られ、歴史好き、食通、そしてアスリー トと、世界中の人々を惹きつけている。

Girona 17001 Girona (Gironès), Girona

From Figueres: 43.3 km

To Girona: 0.6 km

カダケス郊外のポルリガットにあるこの家は、画家サルバドール・ダリが長年暮らし、創作活動を行っ た住居兼アトリエ。現在は「ダリの家博物館」として公開され、ダリの世界観をそのまま体感できる 空間となっている。入り組んだ構造、奇抜なオブジェ、鏡や動物の剥製など、内部はダリ特有の感覚 に満ちており、彼の芸術が生まれた生活空間として貴重な価値を持つ。カタルーニャに根ざしたダリ の私的空間に触れることで、彼の作品の世界観とは異なる興味深い一面が見えてくる。

Casa-Museu Salvador Dalí (https://www.salvador-dali.org/en/visit/salvador-dali-house-museum/) Portlligat, s/n 17488 Cadaqués (Alt Empordà) – Girona

ROAD

TRIP:

Catalunya

Museum

Museu del Castell de Peralada

Girona

Museu del Castell de Peralada

ペララーダ城ミュージアム

中世の城跡に広がる文化複合施設 芸術からクラシックカーまで揃う知の宝庫

ジローナ県北部の小さな町ペララーダに佇むペララーダ 城（Castell de Peralada）は、13世紀の修道院跡に築かれた 文化複合施設で、図書館、美術館、宗教芸術ギャラリー、ワ インセラー、そしてカジノを兼ね備えている。

なかでも注目すべきはペララーダ城ミュージアム（Museu del Castell de Peralada）だ。芸術、歴史、工芸、ワイン、そし て自動車までもが一堂に集められた、知的好奇心を刺激す る空間になっている。図書館には10万冊を超える蔵書が並 び、1000種以上のドン・キホーテの版や中世写本など貴重な 資料が揃う。宗教美術の展示では、ロマネスク様式の聖像や ゴシック期の装飾品が並び、別フロアにはガラス工芸のコレ クションも。16世紀のヴェネツィアン・グラスからボヘミアの カットガラスまで、展示物の多様性が際立つ。

そしてクルマ好きにとって見逃せないのが、ヒスパノ・スイ ザの間（Sala Hispano Suiza）だ。ここには、20世紀初頭のス ペイン自動車産業を代表するブランド「Hispano Suiza」の希 少な一台が収蔵されている。このブランドは、当時のスペイン 国王アルフォンソ13世の支援を受け、世界初の“スポーツカ ー”を生み出したことで知られる。館内にはそんなブランドの 黄金期を象徴する1930年代製のモデルが展示されている。

文化、ワイン、建築、工芸、そしてクラシックカー。多彩な領 域が一堂に揃い、互いに響き合うことで、この施設は単なる 博物館を超えた“知の宝庫”として訪れる者を魅了している。

Museu del Castell de Peralada Carrer de Sant Joan, s/n 17491 Peralada (Alt Empordà), Girona https://www.visitperalada.cat/en/places-to-visit/castle-museum/

Hours:

Sep–Jun: 10 AM / 11 AM / 12 PM; 3:30 PM / 4:30 PM / 5:30 PM

Jul–Aug: 10 AM / 11 AM / 12 PM; 4:00 PM / 5:00 PM / 6:00 PM / 7:00 PM

Closed Monday and certain holidays

Only guided tours, approx. 55 min

ヒスパノ・スイザの間（Sala Hispano Suiza）は、ペララーダ城ミュージアムの中でも特に 異彩を放つ展示室だ。ここに収められているのは、スペイン自動車史を代表するブランド 「ヒスパノ・スイザ」の1930年代製モデル。クラシックカーでありながら流麗なボディラ インを持ち、工業製品と芸術作品の境界を曖昧にする存在感を放っている。

ヒスパノ・スイザ社は1904年、実業家ダミア・マテウとスイス人技師マルク・ビルキヒトに よって創設された自動車メーカー。国王アルフォンソ13世の支援を受け、世界初のス ポーツカーを世に送り出した同社は、1920年代にレース界で数々の記録を打ち立て、 その名声をヨーロッパからアメリカに広げた。展示車両は、そんな黄金期を象徴する一 台である。当時の顧客にはピカソやアインシュタイン、ココ・シャネル、さらには後年ポー ル・マッカートニーらが名を連ね、自動車が単なる移動手段を超えて文化的ステータ スを示す存在であったことを物語る。芸術と工業製品、双方の美の接点を体感させる この展示は、カタルーニャのロードトリップの途中でこそ立ち寄る意味がある。

Catalunya

Girona, Barcelona Day 11:

Girona - Barcelona

カタルーニャの旅を締めくくる最終日 バルセロナで旅の記憶を完結させる

最終日はモンメロにあるカタルーニャ・サーキット（Circuit de Barcelona-Catalunya）へ。F1やMotoGPの舞台として世界に知 られるこのサーキットはイベント開催時に14万人もの大観衆で 賑わう。オフシーズンでも見学ツアーに参加すれば、ピットや表 彰台を巡りその雰囲気を存分に味わえる。

続いてアウトレット、ラ・ロカ・ビレッジ（La Roca Village）へ。カ タルーニャの芸術的要素を取り入れた町並みを模したつくりが 特徴で、世界的ブランドからスペイン発のデザイナーズブランド まで多彩な店舗が並ぶ。建物や装飾にも地域文化が反映され、 心地よくショッピングが楽しめる場所である。

午後はいよいよバルセロナ市内へ。クルマの機動性を生かし、 文化スポットを効率的に巡ってみよう。まずはガウディが手がけた 邸宅ベリェスグアルド塔（Torre Bellesguard）へ。中世の城跡に 着想を得た造形が特徴で、彼の生まれ育った背景を知ってから訪 れるとさらに深い印象が刻まれる。次に訪れるカタルーニャ音楽 堂（Palau de la Música Catalana）も、レウスでモダニズム建築 を見てきた後なら一層印象的に映るだろう。そしてジョアン・ミロ 美術館（Fundació Joan Miró）、さらにはFCバルセロナの本拠地 Spotify カンプ・ノウも訪れてみよう。

カタルーニャ・グランドツアーの締めくくりとなるバルセロナは、こ こまでカタルーニャの各地で触れてきた歴史や文化、自然の魅力が 凝縮された都市である。ドライブの途中で得た体験や発見、出会い が、この町の文化や芸術を一層豊かに感じさせてくれる。そしてカタ ルーニャの旅を締めくくる素晴らしい滞在になるはずだ。

Circuit de Barcelona-Catalunya

Barcelona

Circuit de Barcelona-Catalunya

バルセロナ-カタルーニャ・サーキット

二輪&四輪の頂点がここに集う 世界が注目するモータースポーツの聖地

バルセロナ郊外のモンメロに位置するバルセロナ-カタ ルーニャ・サーキット（Circuit de Barcelona-Catalunya） は、F1やMotoGPといった、世界最高峰のモータースポー ツが開催されるスペイン屈指のサーキットだ。1991年の開 設以来、30年以上にわたりスペインGPの舞台を担い、世 界中のファンに“聖地”と呼ばれる存在だ。

約120ヘクタールの敷地にレイアウトされる全長4.6km のコースは、高速セクションとテクニカルなコーナーが巧 みに織り交ぜられており、F1チームの公式テスト開催地と しても長年使われてきた。レース開催時は最大14万人も の観客を収容することができる。また、レースが行われてい ない日でも、施設内のガイド付き見学ツアーに参加するこ とで、通常は立ち入れないピットレーンや表彰台、記者会 見室などを巡ることができる。

運営はカタルーニャ州政府とモンメロ市、そしてRACC （ロイヤル・モータースポーツクラブ・カタルーニャ）の共 同体制。さらに、FIAの最高位である環境認証で「3つ星」も 取得しており、持続可能なモータースポーツを牽引する施 設としての姿勢も評価されている。 Activities

Circuit de Barcelona-Catalunya Camí Mas Moreneta, s/n 08160 Montmeló (Vallès Oriental), Barcelona https://www.circuitcat.com/es/

Catalunya

La Roca Village

La Roca Village

ラ・ロカ・ビレッジ

ショッピングと芸術が交差する カタルーニャの文化を纏うアウトレット

バルセロナからクルマで約40分の距離にあるラ・ロカ・ビ レッジ（La Roca Village）は、単なるアウトレットを超えた 存在として注目を集めている。高級ブランドを揃えるオー プンエア型のショッピングモールでありながら、カタルーニ ャの芸術性とおもてなし文化を映した“体験型ショッピン グスポット”として評価されているのだ。

施設にはヨーロッパのプレミアムブランドを中心に100 以上のブティックが並び、幅広い品揃えを誇る。店舗の外 観デザインは統一され、村のように設計された町並みを歩 くだけでも楽しめる。実はこの空間演出にも文化的なこだ わりがあり、建築や町並みにはカタルーニャの伝統やモダ ニズム建築の要素が取り入れられており、まるで屋外美術 館を散策しているような感覚を味わえるようになっている。

また、世界屈指のホスピタリティも特長だ。ゲストラウン ジやスタイリング、手ぶらで楽しめる買い物サービスなど 多彩なサポートを備えている。さらにレストランやカフェも あり、地元食材を使った料理を楽しめる。

利便性と文化性を兼ね備えたラ・ロカ・ビレッジは、旅の 途中に立ち寄る価値のある特別な目的地になっている。

La Roca Village

La Roca Village 08430 La Roca del Vallès (Vallès Oriental), Barcelona https://www.thebicestercollection.com/la-roca-village/en

Barcelona

Girona, Barcelona

Palau de la Música Catalana

カタルーニャ音楽堂

カタルーニャ音楽堂（Palau de la Música Catalana）は、カタルーニャの近代建築 を代表するリュイス・ドメネク・イ・ム ンタネーの設計によって1908年に完成 した。モダニズム建築の最高傑作のひと つとして評価されユネスコ世界遺産にも 登録されており、その装飾美は圧巻。ス テンドグラスの天井やモザイク装飾など、 モダニズム建築の美学が細部に至るまで 貫かれている。独自の音響効果で知られ、 今なおクラシックコンサートや地元アー ティストによる演奏会が行われている。

Palau de la Música Catalana

Carrer del Palau de la Música, 4-6 08003 Barcelona (Barcelonès)

From Girona: 99.4 km

To Barcelona: 1.0 km

Palau Nacional de Montjuïc

モンジュイック国立宮殿

モンジュイックの丘にそびえる国立宮殿 （Palau Nacional de Montjuïc）は、1929 年のバルセロナ万国博覧会のために建設 された壮麗な建築。現在はカタルーニャ 国立美術館（MNAC）として活用され、 ロマネスク美術から近代作品まで幅広い コレクションを誇る。壮大なドームと階 段状の噴水に彩られた外観は、バルセロ ナを代表する景観のひとつ。内部の展示 に加え、テラスからは市街を一望できる 絶好の眺望が広がり、文化と景観の両面 で魅力を持つ場所となっている。

Palau Nacional de Montjuïc

Parc de Montjuïc, s/n 08038 Barcelona (Barcelonès)

From Girona: 109.3 km

To Barcelona: 5.4 km

Sant Pau Recinte Modernista

サン・パウ病院（Sant Pau Recinte Modernista） は、建築家リュイス・ドメネク・イ・ム ンタネーの設計により1902年から1930 年にかけて建てられた医療施設である。 緑豊かな敷地内に点在する建築群は、カ タルーニャ近代建築（モダニズム建築） の粋を集めた傑作で、2014年に修復を経 て一般公開された。ユネスコ世界遺産に も登録されており、ステンドグラスや装 飾タイルで彩られた空間を歩くだけで、 芸術と医療が融合した理想都市の構想を 体感できる。

Sant Pau Recinte Modernista

Carrer de Sant Antoni Maria Claret, 167 08025 Barcelona (Barcelonès)

From Girona: 100.6 km

To Barcelona: 2.8 km

カタルーニャ音楽堂は、モダニズム建築の粋を凝縮した傑作である。レンガやモザイクを組み合わせ た華やかな外観もまた、バルセロナ市街の町並みにあって際立つ存在感を放っている。レウスでモダ ニズム建築やガウディの原点に触れた後、この音楽堂を訪れることで、モダニズム建築がいかに芸術 と社会を融合させたかが実感できるだろう。美しいステンドグラスや豊かな装飾とともに、この様式 の多様性と革新性を確認できるのと同時に、この都市が持つ文化の厚みを改めて感じることができる。

Palau de la Música Catalana（https://www.palaumusica.cat/）

Carrer del Palau de la Música, 4-6 08003 Barcelona (Barcelonès)

ROAD

TRIP:

Catalunya

Girona, Barcelona

Torre Bellesguard

ベリェスグアルド塔

アントニ・ガウディによって設計されたベリェ スグアルド塔（Torre Bellesguard）は、バルセロ ナ市内の丘に建つ住宅建築である。1900年代初 頭に完成し、中世の要塞建築をモチーフにした 直線的なデザインが特徴。この地にはかつてア ラゴン王マルティ1世の宮殿が存在しており、 ガウディはその歴史を建築に取り入れた。彼の 作品の中では比較的控えめな装飾ながらも、随 所にカタルーニャへの愛情を映し出すディテー ルが盛り込まれているのが興味深い。

From Girona: 103.8 km

To Barcelona: 7.1 km

Torre Bellesguard

Carrer de Bellesguard, 20 08022 Barcelona (Barcelonès) https://bellesguardgaudi.com/en/

Museum

Barça Immersive Tour & Museum

Barcelona

Barça Immersive Tour & Museum

バルサ・イマーシブ・ツアー&ミュージアム

バルサの理念と歴史を五感で体感 先進技術を駆使した没入型ミュージアム

現在 改修中のFCバルセロナの本拠地Spotifyカンプ・ノ ウの隣に誕生したのがバルサ・イマーシブ・ツアー&ミュー ジアム（Barça Immersive Tour & Museum）である。

2023年6月にオープンした2,300㎡の展示空間では、歴 代トロフィーやユニフォーム、過去の名勝負の映像に加え、 「More than a Club」というクラブ理念や地域社会への 貢献を多言語で紹介している。

展示に加えて、360°映像やヨハン・クライフ、リオネル・ メッシらを最新技術で再現する没入型コンテンツが用意 され、往年のスターと同じピッチに立つような感覚を体験 できる。さらにVRプログラム「Barça Virtual Dream」では 選手目線でのプレーを疑似体験でき、一部のツアーでは スタジアム内部に設けられた「Spotify Camp Nou Live」 スペースで未来のスタンド風景を360°で味わうことも可 能になっている。

バルサ・イマーシブ・ツアー&ミュージアムは従来の博物 館を超えた、まさに五感でバルサの歴史を味わうインタラ クティブな唯一無二の博物館である。

Barça Immersive Tour & Museum

Accés Principal núm. 15, Carrer d’Arístides Maillol, s/n 08028 Barcelona (Barcelonès) https://www.fcbarcelona.com/en/tickets/camp-nou-experience

ROAD

TRIP:

Catalunya

Museum

Fundació Joan Miró

Barcelona

Fundació Joan Miró

ジョアン・ミロ美術館

都市と自然が交差するモンジュイックで ミロの世界を旅することができる美術館

バルセロナ中心部からクルマで15分、モンジュイックの 丘に佇む白亜の建物がジョアン・ミロ美術館（Fundació Joan Miró）である。20世紀を代表するカタルーニャ出身の 芸術家ジョアン・ミロが、自身の作品を故郷に還元するた め1975年に設立した美術館である。

館内にはミロの初期から晩年までの作品が時系列に縛 られず配置され、訪れる者は順路ではなく空間を自由に歩 きながら偶発的な出会いを楽しめるよう工夫されている。

また、屋外には彫刻作品が点在し、バルセロナの町並みや 地中海を背景に、都市と自然が交差する風景をつくり出 す。白を基調とした建築はジョゼップ・リュイス・セルトによ るもので、直線と曲線、光と影の対比が巧みに計算され、歩 くたびに景色が変わる“旅する建築”として機能する。

財団設立当初からミロは、若手アーティストの支援や芸 術教育の場としてこの施設を機能させることを望んでい た。その意思は今も継承され、展示の一角には現代作家に よるインスタレーションや映像作品が並ぶ空間が設けられ ている。所蔵数は1万点を超え、国内外の研究者や学生の 学びの場としても開かれている。さらに国際的な展覧会や 交流プログラムも積極的に行われ、誰もが自由に芸術に触 れられる開かれた美術館としての役割も果たしている。モ ンジュイックに点在する文化施設とともに、バルセロナを象 徴する芸術拠点として進化を続けている。

Fundació Joan Miró Parc de Montjuïc, s/n 08038 Barcelona (Barcelonès) https://www.fmirobcn.org/en/

Hours: 10 AM – 7 PM (to 8 PM in summer, closed on Mondays)

ROAD TRIP: Catalunya

海外でレンタカーを借り、運転を楽しむ場合、 日本国内でレンタカーを借りるのとはいくつか 異なる点がある。海外でのロードトリップを前 に知っておきたいポイントを紹介しておこう。

利用条件

まずはレンタカー利用国の最低年齢制限を満 たしていること。スペインをはじめとする欧州で は通常21歳以上が条件となり、会社や車種に よっては25歳以上※に限定される場合もある。 また運転免許取得から1年以上経過している ことを求められることが多い。利用にあたって は有効な日本の運転免許証と国際運転免許証 （ジュネーブ条約1949年形式）を所持してい る必要がある。さらに、運転者本人名義の国際 クレジットカード（利用限度額に余裕のあるも の）が必須条件となる。

※ 25歳未満はヤングドライバー追加料金が発生し、借り られる車種に制限が設けられることもある。

国際免許証

国際免許証は、日本が加盟するジュネーブ条 約に基づき、各都道府県の公安委員会が発行 するもので、加盟国間で相互に有効と認められ ている。スペインを含む欧州で運転する際は、 日本の有効な運転免許証に加えて国際免許証 を携行するのが基本となる。ただし一部のレン タカー会社では、翻訳書類を認める場合もある ため、事前に確認しておきたい。なお国際免許 証の有効期限は発行日から1年間となる。

国際免許証の申請

国際免許証は各都道府県の警察署の運転免 許課、運転免許センターおよび運転免許試験 場にて申請する。警察署で申請する場合は、約 1 〜 2週間必要となるが、運転免許センターや 運転免許試験場であれば即日発行が可能※

(1) 国内で有効な運転免許証 (2) 写真一枚(5×4cm) (3) パスポート

(4) 手数料

海外レンタカーを利用するための基礎知識

※ 発行から1年を経過している場合、渡航中に有効期限 を迎える場合などにより、新しい国際免許を発行する場合 は、古い国外運転免許証の返納が必要。免許停止処分を 受ける方や停止中の方は、手続できない。

翻訳フォーム

欧州では基本的に日本の運転免許証と国際 免許証の両方を携行する必要がある。ただし 一部のレンタカー会社では、日本の免許証に 加えて「翻訳証明書（Translation of Japanese Driver’s License）」を認める場合もある。国際 免許証の取得が難しい場合には代替手段とな るが、利用できるかどうかは会社によって異な るため、事前に必ず確認したい。

【翻訳フォームの取得方法】 JAF（日本自動車連盟）で申請でき、手数料は 4,000円程度。申請からおよそ1週間で発行され る。レンタカー会社によっては独自に翻訳証明を 提供しているところもあり、その場合は無料で即 日発行されるケースもある。

レンタカー予約

海外レンタカーは旅行代理店を通して手配す ることもできるが、大手レンタカー会社の公式 サイトから直接予約するのが一般的だ。主要 各社は英語またはスペイン語での予約ページ が中心だが、ハーツやエイビスなど一部は日 本語対応サイトを設けている。

Hertz（ハーツ）

https://www.hertz-japan.com

Avis（エイビス）

https://www.avis-japan.com

Europcar（ユーロップカー）

https://www.europcar.com

SIXT（シクスト） https://www.sixt.com

保険の契約

レンタカーを借りる際には、契約時に保険の内 容をしっかり確認しておくことが大切だ。スペ インを含む欧州では、法律により対人・対物責

任保険（Third Party Liability Insurance）が必 ず付帯している。また多くの場合、車両損害補 償制度（CDW＝Collision Damage Waiver）や 盗難保険（TP＝Theft Protection）も基本料金 に含まれるが、高額な免責額が設定されてい ることが多い。

免責額をゼロに近づける「スーパーCDW （SCDW）」や、万一の怪我を補償する個人傷 害保険（PAI）など、追加オプションに加入すれ ばさらに安心できる。手続きや組み合わせが 複雑に感じる場合は、主要な補償をまとめて カバーできる「フルカバー・パッケージ」を選ぶ のもひとつの方法だ。

カーナビゲーション

海外でのロードトリップにカーナビゲーション は欠かせない。スペインを含む欧州のレンタカ ーでも、最新車両はApple CarPlayやAndroid Autoに対応していることが多く、スマートフォ ンの地図アプリ（Google Mapsなど）を車載モ ニターに表示できる。これにより専用ナビを借 りる必要はほとんどなくなっている。

本誌に掲載されたQRコードを読み込み、 Google Mapに目的地を保存しておけば、現 地でのルート設定もワンタッチで完了する。ス マートフォンを日本語設定にしておけば、音 声案内も日本語で行われるため言語の心配 はない。電波状況が不安な場合には、Google Mapsのオフライン地図を事前にダウンロード しておくとより安心だ。

有料道路

スペインの高速道路（Autopista）はかつて多 くが有料だったが、現在では大部分が無料化 されている。ただし一部区間では料金所が設 けられており、通行料の支払いが必要になる。 料金所では現金やクレジットカードで精算で きるほか、ETCシステムにあたる「VIA-T」を利 用できる場合もある。レンタカー会社によって は、VIA-T機器を搭載した車両オプションを提 供しており、通過記録に基づき後日まとめて請 求される仕組みだ。

ROAD

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