病気と治療の選択肢についての簡潔なレビュー

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多発性骨髄腫 | 骨髄のがん

簡潔な 総括

再発・難治性骨髄腫

2023年9月版ᅠ|ᅠBrian G.M.Durie, MD監修

国際骨髄腫財団発行


1990年に設立されたInternational Myeloma Foundation(IMF、 国際 骨髄腫財団)は、 骨髄腫に特化した最初で最大の組織です。 国際骨髄腫財団 (IMF)は140か国から52万5千人を超える会員を擁しています。国際骨髄 腫財団(IMF)は骨髄腫の患者さんの生活の質を向上させることに専念し、 研究、教育、支援、 アドボカシーの4つの基本的原則を通じて予防と治療に 向けて取り組んでいます。

研究 国際骨髄腫財団(IMF)は骨髄腫の治療法を見つけることに専念しており、 これを実現するためにさまざまな取り組みを行っています。International Myeloma Working Group(国際骨髄腫ワーキンググループ)は、1995年に設立された国際骨髄 腫財団(IMF)の科学諮問委員会から誕生した最も権威ある組織で、300名近くの骨髄 腫研究者が所属し、世界中で遵守される批判的に評価されたコンセンサスガイドライ ンを提供しながら、患者さんの転帰を改善するための共同研究を行っています。 Black Swan Research Initiative®(ブラックスワンリサーチイニシアチブR)は、長期的な寛解か ら治癒までの橋渡しをしています。 毎年恒例のBrian D. Novis(ブライアン D. ノビス)研 究助成プログラムは、若手およびシニア研究員による最も有望なプロジェクトを支援 しています。主要な骨髄腫治療センターの看護師で構成される看護師会執行部は、 骨髄腫の患者さんの看護ケアに関する推奨事項を作成しています。 教育 国際骨髄腫財団(IMF)のウェビナー、セミナー、そしてワークショップでは、一流 の骨髄腫専門家や臨床医が発表する最新情報が、患者さんとそのご家族に直接提供 されます。 患者さん、介護者の方、医療専門職向けの100冊を超える出版物のライブラ リがあります。国際骨髄腫財団(IMF)の出版物は常に無料で、英語で利用でき、他の 言語も選択できます。 支援 国際骨髄腫財団(IMF)InfoLine(インフォライン)は骨髄腫関連の質問や懸念に

電話とメールで対応し、最も正確な情報を思いやりのある方法で提供します。 また、骨 髄腫支援グループのネットワークを維持しており、地域社会でこれらのグループを率 いる何百人もの献身的な患者さん、介護者の方、ボランティア看護師のトレーニング を行っています。

アドボカシー 骨髄腫コミュニティにとって重要な問題について毎年ポジティブな

影響を与える何千人もの個人に力を与えています。 米国では、連邦レベルと州レベル の両方で骨髄腫コミュニティの利益を代表する連合を主導しています。米国外では、 国際骨髄腫財団(IMF)のグローバル骨髄腫活動ネットワークが、患者さんが治療を受 けられるよう支援しています。

国際骨髄腫財団(IMF)が予防と治療に向けて取り組みながら、 骨髄腫患者 さんの生活の質の向上を支援している方法についての詳細をご覧ください。 1-818-487-7455またはまでお電話いただく か、 myeloma.orgをご覧ください。


内容 あなただけではありません この小冊子で学べること

疫学

骨髄腫の臨床兆候

病態生理

奏効または寛解

再発性難治性骨髄腫

骨髄腫に使用されている薬物 臨床試験

支持療法 最後に

用語と定義

4 4 5 7 12 16 18 28 31 31 33 33


あなただけではありません

国際骨髄腫財団がお手伝いします。 国際骨髄腫財団(IMF)は、多発性骨髄 腫(以下、 単に 「骨髄腫」 と呼びます)の患者さんとその介護者の方、 ご友人、 ご家族への情報提供と支援に努めています。 ウェブサイトmyeloma.org、 国際骨髄腫財団(IMF)インフォライン、セミナー、 ウェビナー、 ワークショッ プの他のプログラムやサービスで利用できる幅広いリソースを通じてこれ を実現しています。

この小冊子で学べること

骨髄腫は、診断時にほとんどの患者さんが知らないがんです。 ご自身の医 療に積極的に関わり、医師とともに治療について適切な決定を行うため に、 この病気だけでなく、 その治療の選択肢と支持療法について学ぶこと が重要であり、役に立ちます。

この小冊子の情報は、医師との話し合いの指針になります。 本書は医学的 アドバイスに代わるものではありません。医師は、あなたの健康管理プラ ンに関する質問に最も的確に答えてくれます。

国際骨髄腫財団(IMF)の再発・難治性骨髄腫の簡潔な総括 は、再発性難 治性疾患の患者さんのための骨髄腫の概要です。本書には、米国内で現 在骨髄腫に用いられている疫学、臨床兆候、病態生理、薬物、奏効や寛解、 再発性難治性疾患、支持療法に関する考察が記載されています。

新たに骨髄腫と診断された場合は、最初に国際骨髄腫財団(IMF)の出版 物 「Patient Handbook for the Newly Diagnosed(新たに診断された方の ための患者ハンドブック)」をお読みになることをお勧めします。 これは、 こ の複雑な病気、その原因や誘因と考えられるもの、診断基準、病期診断、 骨髄腫の種類、骨髄内外への作用、新たに診断された骨髄腫のための治 療、 そして支持療法について深く理解するのに役に立ちます。 無症候性の前駆病態と診断された場合や活動性骨髄腫ではないと診断 された場合は、国際骨髄腫財団(IMF)の出版物 「Understanding MGUS and Smoldering Multiple Myeloma(MGUSとくすぶり型多発性骨髄腫の 理解)」をお読みください。

米国在住の骨髄腫の患者さんで、全体的な治療戦略の一環として自家幹 細胞移植(ASCT)を受ける可能性について主治医と話し合っている場合 は、国際骨髄腫財団(IMF)の出版物 「Understanding Stem Cell Transplant in Myeloma(骨髄腫における幹細胞移植を理解する)」をお読みください。

太字の青で書かれた言葉の説明は、 この小冊子の最後にある 「用語と定 義」セクションにあります。骨髄腫関連の完全版である国際骨髄腫財団の 骨髄腫用語集と定義 はglossary.myeloma.orgにあります。


この小冊子を電子書籍版でお読みの場合は、水色のリンクから対応する リソースにアクセスできます。国際骨髄腫財団の出版物はすべて無料で、 publications.myeloma.orgからダウンロードしたり、印刷版をリクエストし たりすることができます。

疫学

米国では、National Cancer Institute(NCI、国立がん研究所)のSurveillance, Epidemiology, and End Results (SEER)プログラム(seer.cancer.gov)から 得られた最新のデータによると、2023年の骨髄腫の新規症例数は35,730 例と推定され、全新規がん症例の 図1. 骨髄中の骨髄腫細胞 1.8%に相当します。2020年、米国で は、骨髄腫の患者さんが170,405人 いると推定されています。

2020年にジャーナルOncologist に 発表されたように、骨髄腫の全世 界での発生率には大きな差があ り、世界の多くの地域で過小評価 され、最適な治療が行われていな いことを示しています。この記 事 は、世界中の骨髄腫の患者さんの 診断と生存率を向上させるための 経済資源、医療へのアクセスと質、 患者教育の重要性を強く訴えてい ます。

骨髄腫は65~74歳の人で最も頻 繁に診断されますが、50歳未満の人でも診断されています。40歳未満の 骨髄腫の患者さんは5%~10%しかいません。 小児の骨髄腫は非常にまれ です。

男性は女性よりも骨髄腫を発症する可能性が高くなっています。 この病気 はアフリカ系の人に2倍見られます。 骨髄腫の発生率は、世界のいくつかの 地域、特にアジアで増加しているようです。

骨髄腫の診断の約5%~7%は、意義不明の単クローン性ガンマグロブ リン血症(MGUS)、 くすぶり型多発性骨髄腫(SMM)、 または骨髄腫と診 断された近親者がいる人で発生します。MGUS、SMM、あるいは骨髄腫を 患っている場合は、 その診断を近親者の病歴に含めるよう、 その方のかか りつけ医に伝えてもらってください。近親者にそのような診断を受けた人 がいる場合は、 この情報を医療記録に含めるようかかりつけ医に伝えてく ださい。


図2. 病期

M蛋白(g/dL)

無症候期 活動性 骨髄腫 MGUSまた はくすぶり型 骨髄腫

治療

疾患

症候期

再発

プラトー 寛解

再発性 難治性

期間

表1. 国際骨髄腫ワーキンググループ(IMWG)診断基準 定義

意義不明の 単クローン 性ガンマグ ロブリン血症 (MGUS)

すべての基準を満たすこと 1.血清M蛋白<3g/dL 2.骨髄中の単クローン性形質細胞<10% 3.CRABを認めないこと – C(高カルシウム血症)、R(腎障害)、A(貧血)、B(骨病変)

くすぶり型(無 症候性)多 発性骨髄腫 (SMM)

両方の基準を満たすこと 1.血清M蛋白(IgGまたはIgA)≧3g/dL、または尿M蛋白≧500mg/24時間、骨髄中の 単クローン性形質細胞10%~60% 2.骨髄腫診断事象(MDE)またはアミロイドーシスを認めないこと

軽鎖 MGUS

骨髄腫

すべての基準を満たすこと 1.異常遊離軽鎖(FLC)比<0.26または>1.65 2. 局所性病変が関与した軽鎖値(比率>1.65の患者さんではκFLCが増加し、比率 <0.26の患者さんではλFLCが増加) 3.免疫固定における免疫グロブリン(Ig)重鎖の発現を認めないこと 4.CRABを認めないこと 5.骨髄中の単クローン性形質細胞<10% 6.尿Mプロテイン<500mg/24時間

両方の基準を満たすこと 1.骨髄中の単クローン性形質細胞≧10%、または生検により確定診断された骨 の形質細胞腫または髄外性形質細胞腫 2.以下の骨髄腫診断事象(MDE)が1つ以上認められること  CRABを認める  骨髄中の単クローン性形質細胞≧60%  局所性病変が関与した/関与しない血清FLC比≧100(局所性病変が関与し たFLC値≧100mg/L、かつ尿中M蛋白値はUPEPで最低200mg/24時間)  MRI検査で1つ以上の局所性病変(最低5mm)  骨格X線写真、CT、またはPET-CTで1つ以上の溶骨性病変

Rajkumar SV, Dimopoulos MA, Palumbo A, et al. International Myeloma Working Group updated criteria for the diagnosis of multiple myeloma. Lancet Oncology 2014 . より改変 6

1-818-487-7455


図3. 免疫グロブリンの構造

IgG、IgE、IgD

IgA

IgM

骨髄腫の臨床兆候

骨髄腫は、免疫グロブリン(Ig)とも呼ばれる抗体を作る白血球(WBC)で ある骨髄形質細胞のがんです。健康な形質細胞は、免疫系の重要な部分で す。 骨髄腫細胞は悪性(がん化した)形質細胞で、機能する抗体を作らず、代 わりに異常な単クローン性蛋白(骨髄腫蛋白、M蛋白)を作ります。

骨髄腫は古代から認識されてきました。1844年、Dr. Samuel Solly(サミュエ ル・ソリー博士)が、骨髄腫の症例についての説明の中で 「柔らかくて壊れや すい骨」について言及しました。1845年、詳しい記録が残っている最初の患 者であるThomas Alexander McBean(トーマス・アレクサンダー・マクビーン) 氏が、Dr. William Macintyre(ウィリアム・マッキンタイア博士)によって診断さ れました。1846年、Dr. John Dalrymple(ジョン・ダリンプル博士)が、病気に なった骨には細胞が含まれていることを突き止め、 その後、 これが形質細胞 であることが判明しました。 マッキンタイア博士によって発見された異常な 尿の問題を、Dr. Henry Bence Jones(ヘンリー・ベンス・ジョーンズ博士)が調 査し、1848年にその発見を発表しました。 図4. 免疫グロブリンの分子構造

可変領域

定常領域

抗原 結合部

CL

Fab部 CH1

生物活性 調整部 Fc部

myeloma.org

ヒンジ領域

軽鎖

CL

鎖間ジ スルフィド 結合

重鎖

CH1

CH2

補体結合領域

CH3

Fc受容体に結合

7


1873年、Johann von Rustizky(ヨハン・フォン・ルスティスキー)は、骨に複数 の形質細胞病変が存在することを指す「多発性骨髄腫」という用語を発表 しました。 1889年、Otto Kahler(オットー・カーラー)が「ケーラー病」 (多発性 骨髄腫)の詳細な臨床記述を発表 図5. 健康な骨と骨髄腫で損傷した骨の しました。 骨髄腫の日常的な診断 比較 は、1930年代に骨髄穿刺がより大 健康な骨 規模に使用されるまで、困難なまま でした。

骨髄腫の主な特徴は、骨髄内の悪 性(がん化した)形質細胞の異常 な蓄積によるものです。 「 CRAB(高 カル シウム 血 症 、腎 障 害 、貧 血 、 骨病変)基準」として知られ、血中 カルシウム濃度の上昇、腎障害、 貧血または赤血球数の低下、骨損 傷を含むこれらの特徴は、 「骨髄腫 診断事象(MDE)」とともに骨髄腫 の診断に使用される基準です。

多発性骨髄腫

+

-

溶骨性 病変

骨髄腫 細胞 © 2017 Slaybaugh Studios

図6. 骨髄穿刺

生検部位

¡ 骨および骨髄浸潤周囲部の浸潤 および破壊。

¡ 骨髄腫細胞から血流や尿への単 クローン性蛋白の産生および分泌 (放出)。

¡ 正常な免疫グロブリン濃度の低 下がもたらす正常な免疫機能の 低下が引き起こす反復性感染お よび頻発する感染症。

皮膚 骨 骨髄

© 2015 Slaybaugh Studios

8

¡ 貧血、白血球(WBC)数の低下、 血小板数の低下(血小板減少症) によって示される正常な骨髄機能 の破壊。

形質細胞腫は、形質細胞からなる 限局性腫瘍で、骨内(髄内)または 骨外の軟部組織(髄外)で増殖しま す。形質細胞腫が多発する場合、 こ の状態も骨髄腫と呼びます。 1-818-487-7455


M蛋白の産生と放出

骨髄腫細胞が産生するM蛋白量は、患者さんごとに異なります。患者さん

の骨髄腫細胞は、M蛋白産生量が多いのか少ないのか(低分泌型骨髄腫

またはオリゴ分泌型骨髄腫)、あるいは非分泌型なのかを判定すること が非常に重要です。骨髄腫の患者さんの約1%には、血液中や尿中に検 出可能なM蛋白がありません。 これらの患者さんの一部は、血清遊離軽鎖

(FLC)測定を使用して正常に観察することができますが、他の患者さん は、骨髄生検やPET-CT検査で観察することがあります。 非分泌型骨髄腫の

患者さんに用いられる骨髄腫治療法は、検出可能な量のM蛋白を分泌す

る患者さんに用いられるものと同じです。

M蛋白量と骨髄内の骨髄腫の量との関係が分かれば、特定の蛋白量と全 身の腫瘍量との関係を解釈し理解するこ

とが可能になります。蛋白電気泳動臨床 検査で見られるMスパイクは、骨髄腫細胞

の活性のマーカーです。

M蛋白は、免疫グロブリンまたは免疫グロ

ブリンの断片です。骨髄腫細胞では、免疫

グロブリン産生を担う遺伝子に突然変異 が生じ、M蛋白のアミノ酸配列と蛋白構造

が異常になります。通常、免疫グロブリン

の正常な抗体機能が失われ、分子の三次 元構造が異常になることがあります。 異常

な免疫グロブリンの産生が増加すると、次

のような結果になります。

¡ 過剰なM蛋白が血流中に蓄積したり、 尿中に排泄されたりして、Mスパイク

で測定できます。

¡ 異常なモノクローナル抗体分子は、互

いに付着したり、他の組織(例:血球、 血管壁、その他の血液成分)に付着し

たりすることがあります。 これにより、 血流と血液循環が減少し、過粘稠度 症候群(HVS)の原因となります。HVS myeloma.org

表2. M蛋白の種類(%) % 1. 血清 IgG

52

IgA

21

IgD

2

IgE

< 0.01

2. IgM(骨髄腫ではまれで、 ワルデンストレームマ クログロブリン血症に 典型的) 3. 尿κ型およびλ型(ベン ス・ジョーンズ蛋白また は軽鎖のみ) 4. 2つ以上のM 蛋白

重鎖(Gまたは A)のみ M蛋白なし

総計

75%

12%

11%

<1 <1

2%

1 総計

100%

* 本表には、さまざまな種類の骨 髄腫、MGUS、 ワルデンストレームマ クログロブリン血症が含まれます (W PruzanskiとMA Ogryzloが1970年に 収集・分析したデータによる)。 9


表3. 骨髄腫に関連した医学的な問題

骨髄中で増加した骨髄 腫細胞による影響 CRAB 基準

C – 血中カルシウム

濃度の上昇

R – 腎障害– 腎障害

A – 貧血

患者さんに及ぼす影響

損傷した骨から血流中へ • 精神錯乱 • 脱水 のカルシウム放出 • 便秘 • 倦怠感 • 脱力感 • 腎障害

骨髄腫細胞により産生さ • 血流障害 れた異常なM蛋白は、血流 • 倦怠感 中に放出され、尿中に排 • 精神錯乱 泄され、腎臓損傷を引き 起こします。高カルシウム 血症、感染症、 その他の因 子も腎臓損傷の原因とな り、重症度を決める要因と なります。 骨髄中の赤血球産生細胞 • 倦怠感 の減少と活性低下 • 脱力感

B – 骨損傷

骨髄腫細胞が破骨細胞を • 骨の痛み 活性化し、骨を破壊し、通 • 骨折や骨の崩壊 常は損傷した骨を修復す • 骨腫脹 る骨芽細胞を抑制します。 • 神経や脊髄の損傷

他の臓器障害の 種類

CRABの症候以外の骨髄腫 • ニューロパチー による局所的または全身 • 反復性感染 的な影響 • 出血障害 • その他の個々の障害

• 椎骨の薄化(骨 粗しょう症)ま たは • より重度の損 傷領域(溶骨性 病変という)、骨 折、 または崩壊

免疫機能の異常

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原因

骨髄腫細胞は、感染に対 • 感染症への感受性 する抗体を産生する正常 • 感染症からの回復の 形質細胞の数と活性を抑 遅れ 制します。 1-818-487-7455


は 骨 髄 腫の血 液 検 査サンプ

ルの結果を変える可能性があ

り、特別な処理が必要になる

図7. 血清蛋白電気泳動(SPEP)の検査 結果 albumin

場合があることに注意するこ

とが重要です。

¡ 免疫グロブリン分子全体を形

成するために、重鎖と結合する のに必要な量以上の軽鎖が産 生されます。 このような過剰な 軽鎖は、 ベンス・ジョーンズ蛋白 albumin と呼ばれます。 遊離したベンス・ ジョーンズ蛋白は、分子量が22 キロダルトンで尿中に排泄され ます。

alpha-1 alpha-2 beta-1 beta-2 gamma

正常なSPEPの結果 albumin beta-2

¡ 異常なM蛋白は、次のような

他 の 特 性 を持 つことが あり ます。

alpha-1 alpha-2 beta-1 beta-2 gamma

 正常な血液凝固因子に結

albumin

合し、出血傾向の増加、血 液凝固の亢進、 または静 beta-2 脈炎(静脈の炎症)を引き 起こします。

alpha-1 alpha-2 beta-1

gamma

骨髄腫細胞がM蛋白を産生し、β2領域にMスパ イクを形成している異常な結果 albumin

gamma

 神 経 に 結 合して ニュー

ロパチーを引き起こした gamma り、循環ホルモンに結合し て代謝機能不全を引き起 こしたりします。

alpha-1 alpha-2 beta-1

alpha-1 alpha-2 beta-1 beta-2

骨髄腫細胞がM蛋白を産生し、γ領域にMスパイ ク を形成している異常な結果

¡ 遊離したベンス・ジョーンズ蛋白は、免疫グロブリン分子と同様に、互

いに付着したり、他の組織に付着したりすることがあり、次のいずれか を引き起こすことがあります。  アミロイド軽鎖(AL)アミロイドーシス

ALアミロイドーシスは、軽鎖蛋白が腎臓から排泄されない形質細 胞疾患ですが、互いに結合し、 これらのアミロイド線維が組織や臓 器に沈着します。

myeloma.org

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 単クローン性免疫グロブリン沈着症(MIDD) MIDDは、臓器内の重鎖、軽鎖、 またはその両方の沈着によって引 き起こされます。 MIDDは通常、腎臓に影響を与えますが、他の臓器 にも影響を与えることがあり、MIDDの治療目標は、臓器の損傷を 遅らせることです。

 軽鎖沈着症(LCDD)はMIDDの一種で、臓器における完全または 部分的な単クローン性軽鎖の沈着を特徴とします。

 重鎖沈着症(HCDD)はMIDDの一種で、臓器における単クローン 性重鎖の沈着を特徴とします。

病態生理

骨髄腫細胞の制御不能な増殖は、骨格の破壊、血漿量と粘稠度の増加、 正常な免疫グロブリン産生の抑制、腎(腎臓)機能不全など、多くの結果を 伴います。 それにもかかわらず、骨髄腫は何年にもわたって無症候性であ る場合があります。症候性骨髄腫での最も一般的な訴えは骨の痛みと倦 怠感です。 血清や尿中のM蛋白は増加し、通常、診断時に上昇します。

高カルシウム血症

カルシウムは、主に骨基質の硬い部分に含まれるミネラル(ハイドロキシ アパタイト)です。過剰に産生または放出されると、血流中に蓄積すること があります。高カルシウム血症は、血中のカルシウム濃度が正常値を超え ていることです。 これは通常、骨の破壊によってカルシウムが血流中に放出 されるために起こります。骨髄腫では、高カルシウム血症が最も頻繫に起 こる代謝性合併症であり、広範な骨浸潤がより一般的です。

高カルシウム血症は、食欲低下、吐き気、のどの乾き、倦怠感、筋力低下、 不安、錯乱などを含むさまざまな状態を引き起こすことがあります。骨髄 腫による高カルシウム血症の患者さんでは、腎(腎臓)機能が低下している ことが多く、腎損傷からの回復が困難になることがあります。

腎不全

腎機能障害は、骨髄腫の患者さんによく見られる合併症です。ただし、 すべての患 者さんがこの問 題を抱えることになるわけではありませ ん。一部の患者さんでは、M蛋白(特にベンス・ジョーンズ蛋白)が尿 細管障害(沈殿した軽鎖の大量蓄積に起因)から選択的尿細管障害 (ファンコーニ症候群の代謝作用を引き起こす)およびアミロイドとして 沈着したM蛋白に至るまで、 さまざまなメカニズムで腎損傷を引き起こし 12

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ます。 カルシウム値や尿酸値の上昇や感染症は、腎機能障害を引き起こす 可能性があります。

腎不全に関連するその他の重要な考慮事項には、水分補給の状態の他、 腎毒性抗生物質、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)、または画像検査に 使用される造影剤や色素などの薬物の作用などがあります。 MRIで使用さ れるガドリニウムベースの造影剤には潜在的な毒性作用があるため、腎 臓に問題がある患者さんはまずその使用について医師と相談する必要が あります。 骨髄腫患者にとって、 これらのさまざまな要因による損傷効果を 回避するには、潜在的な腎障害を認識し、十分な水分摂取を維持すること が特に重要です。

貧血

貧血は、骨髄腫に特徴的な特性です。赤血球(RBC)には体組織や臓器に 酸素を運ぶ蛋白であるヘモグロビンが含まれています。貧血は通常、ヘモ グロビンが10g/dL未満に減少、 または個人の正常値から2g/dL以上減少し た状態と定義されます。13~14g/dLを超えると正常値とみなされます。体 内の酸素レベルが低下すると、息切れや疲労感を引き起こすことがありま す。 新たに骨髄腫と診断された患者さんの多くは貧血を患っています。 骨 髄 R B C 前 駆 細 胞 の 物 理 的 移 動 が 一 因では ありますが、微 小 環 境 サイトカインや接着分子によるRBC産生の特異的阻害は、 より機能的な説 明です。 骨髄腫の治療が成功すると、貧血は改善します。 エポエチンとがん の患者さんの腫瘍増殖の増加と生存率の低下との関連、および骨髄腫細 胞上のエポエチン受容体の同定が報告されているため、遺伝子組換えエ ポエチンアルファの使用には注意が必要です。

骨病変

1844年に初めて骨髄腫が確認されて以降、 その特異な種類の骨病変につ いては知られていました。 つい最近まで関係するメカニズムは解明されて いませんでした。 最初の手がかりは、骨髄腫細胞と増加した破骨細胞の両 方が骨破壊部位に存在することでした。 現在、骨髄腫における骨病変のメ カニズムについて、以下のような多くの詳細が解明されています。

¡ 骨髄腫細胞は、破骨細胞活性化因子(OAF)を産生し、骨芽細胞を阻害 します。 破骨細胞と骨芽細胞の機能間の「共役」は、正常な骨再形成と 修復に関与します。 Velcade®(ボルテゾミブ)とRevlimid®(レナリドミド) は、強力な抗骨髄腫活性を発揮することに加え、骨の治癒を促進する ことが示されています。

myeloma.org

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¡ サイトカイン(つまり、インターロイキン-1β、インターロイキン-6、 腫瘍壊死因子-α、腫瘍壊死因子-β)、MIP-αなどのケモカイン、β3イン テグリンが関与する細胞間接着プロセスはすべて、破骨細胞の数と活 性の増加に関与しています。

¡ 破骨細胞活性化の重要なメディエーターとしてRANKリガンド (RANKL) と呼ばれる物質が特定されました。

詳 細については、国際骨髄腫財団(IMF) の出 版 物「Understanding Treatment of Myeloma Bone Disease(骨髄腫の骨病変治療の理解)」をお 読みください。

その他の機能障害

骨髄腫細胞は、骨髄内または組織内に蓄積し、次のような多くの潜在的な 合併症を引き起こすことがあります。

¡ 感染症 骨病変に加えて、感染症の素因は、おそらく骨髄腫の最も特徴的な特 性です。骨髄腫の患者さんは、 さまざまな日和見感染症に感染しやす い状態にあります。骨髄腫の患者さんにおける感染症の危険因子は、 活動性疾患や治療の影響による免疫力の低下と白血球数の低下で す。 感染症の感受性の原因となるメカニズムは完全には解明されてい ません。骨髄に活動性骨髄腫が存在すると、低ガンマグロブリン血症 に反映される正常な抗体産生の阻害、T細胞(Tリンパ球)機能障害、 活性化されているものの異常な単球またはマクロファージの機能な ど、正常な免疫機能の障害が生じます。 活性化されたマクロファージに起因する因子が骨髄腫細胞の活性を 高め、正常なIg産生とT細胞の機能を阻害することを示す研究もあり ます。感染症は生命を脅かす可能性があるため、速やかに対処する必 要があります。抗菌薬や抗ウイルス薬による治療など、早急な支持療 法が必要な場合もあれば、入院が必要な場合もあります。 好中球減少症も低ガンマグロブリン血症も、感染症の可能性を高め ます。

¡ 神経学的作用 骨髄腫の患者さんは、神経組織のウイルス感染、特に水痘帯状疱疹 (「帯状疱疹」)、帯状疱疹(「ペルペス」)、エプスタイン・バーウイルス (単核球症)、サイトメガロウイルス(ベル麻痺と呼ばれる部分的な顔 面麻痺)、 またはその他の合併症に感染しやすい状態にあります。

骨髄腫の患者さんでは、神経(例:髄鞘)に対するM蛋白の直接的な抗 体作用、または神経上のアミロイド原線維の沈着のいずれかにより、 神経組織が影響を受け、 その結果、機能が損なわれることがよくありま

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す。 これらの作用は、末梢神経障害を引き起こし、 ニューロパチーの他 の原因(例:糖尿病、多発性硬化症、パーキンソン病)と区別する必要 があります。

骨髄腫における神経学的問題は、影響を受けた神経の位置によって 異なります。 たとえば、脊髄圧迫と髄膜炎は、形質細胞腫瘍の形成また は浸潤の結果であり、手根管症候群は通常ベンス・ジョーンズ蛋白の 沈着によって生じます。

¡ 形質細胞腫 骨および軟部組織の両方にある形質細胞腫は、神経、脊髄、あるいは 脳組織でさえ圧迫したり置き換わったりすることがあります。 これらの 圧迫作用は、医療上の緊急事態を意味することが多く、放射線療法、 神経外科手術や高用量ステロイド療法などの薬物療法による迅速な 治療を必要とします。 骨格所見

表4. 病態生理のスキーマ

• 多発性または孤立性溶骨性病変

• びまん性骨粗しょう症(骨減少症)

• 血清カルシウムの上昇 • 骨折

• 高カルシウム尿症(尿中カルシウム増加) • 身長低下(椎体圧潰)

骨破壊関連事象

髄外(骨外)骨髄腫

軟部組織浸潤(頭頸部(例:鼻咽頭)に多い、肝臓、腎臓、皮膚を含む他の軟部組織部位)

末梢血

• 貧血 • 異常凝固 • 白血球減少症

血漿蛋白の変化

• 血小板減少症 • 形質細胞性白血病 • 循環形質細胞

• 高蛋白血症(蛋白上昇) • 循環血漿量過多(量の増加) • 単クローン性免疫グロブリン (IgG、IgA、IgD、IgE、IgMまたは軽鎖のみ)

腎異常

• 蛋白尿、白血球や赤血球を認めない円 柱類 • アシドーシスを伴う尿細管機能不全(ファ ンコーニ症候群)

myeloma.org

• 循環単クローン性Bリンパ球 (骨髄腫前駆細胞)

• アニオンギャップの縮小(血清ナトリウムの 低下) • 血清β2ミクログロブリン上昇 • 血清アルブミンの低下 • 血清IL-6およびC反応性蛋白(CRP) • 尿毒症(腎不全) • アミロイドーシスまたは軽鎖沈着症および腎 機能障害

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¡ 過粘稠 高濃度のM蛋白によって生じる過粘稠は、 あざ、鼻血、 かすみ目、頭痛、 消化管出血、眠気、神経組織への血液と酸素の供給減少によるさまざ まな虚血性神経症状などの問題を引き起こすことがあります。過粘稠 は骨髄腫の患者さんの10%未満に起こり、ワルデンストレームマクロ グロブリン血症(WM)の患者さんの約50%に起こります。出血の増加 は、血小板減少症によるだけでなく、凝固因子や血小板へのM蛋白の 結合によっても増悪することがよくあります。

奏効または寛解

奏効または寛解は、骨髄腫の兆候や症状が完全または部分的に消失する ことを表す、互換性のある用語です。 寛解は、一般的に少なくとも部分奏効 (PR、≧50%改善)が少なくとも6か月持続することと考えられています。 こ れらは、以下の治療に対する奏効の深さを分類するために使用される用 語です。 ¡ 厳格な完全奏効(sCR) sCRはCR(以下に定義)に正常なFLC比を加えたもので、免疫組織化学 または免疫蛍光法で骨髄中のクローン細胞がない状態です。

¡ 完全奏効(CR) 骨髄腫の場合、CRは血清(血液)および尿に対する免疫固定が陰性で あり、軟部組織、形質細胞腫、骨髄中の5%以下の血漿細胞が消失して います。 CRは治療法と同じではありません。

¡ 最良部分奏効(VGPR) VGPRはCR未満です。VGPRは、免疫固定により検出できるが電気泳動 では検出できない血清M蛋白および尿M蛋白、または血清M蛋白の 90%以上の減少、 および24時間あたり100mg未満の尿中M蛋白です。

¡ 部分奏効(PR) 部分奏効は、M蛋白が最低50%減少し、24時間尿中M蛋白が少なくと も90%(または200mg未満まで)減少するレベルの奏効です。

治療法が改善すると、治療に対する奏効をできるだけ正確に評価すること が、 より重要になってきます。 奏効の深さに加えて、 より深い奏効だけでなく 奏効期間さえも考慮する必要があります。 新規の併用療法の有効性が高ま るにつれて、微小残存病変(MRD)とMRD陰性の状態に関して奏効が評価 されるようになりました。 以前は達成できず、骨髄腫の測定も不可能であっ た概念であるMRD値が、骨髄検査で検証できるようになりました。 FDAに承 認された場合、MRD検査は臨床試験の新たなエンドポイント、 つまり、米国 の骨髄腫の臨床試験で奏効の深さを測定する標準的な手段になります。 16

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Ⅰ Ⅱ Ⅲ IV

表5. 臨床試験のフェーズ

患者さんの投与量、忍容性、毒性を評価するための初期段階の 試験

選択された投与量とスケジュールによる治療が効果的かどうかを 評価するための次段階の試験

新規治療が優位かどうかを判定するために行われる新規治療と 既存治療の比較試験

費用対効果、生活の質への影響、 その他の相対的問題を評価する ために、通常、FDAの承認後に実施される試験

M蛋白の改善は、骨の痛みの軽減やRBC数の改善など、臨床的改善の証 拠と関連している必要があります。病気の退行率が高くても、自動的に生 存期間が長くなるわけではないことに留意することが重要です。残存病 変がある場合、残存する薬剤耐性の骨髄腫細胞の性質が、転帰を決定し ます。 これらの残存している骨髄腫細胞は、即時に再増殖する傾向を有し ている場合も、そうでない場合もあります。再増殖が見られない場合、 こ れは「プラトー期」や「残存病変を有するものの安定した状態」と呼ばれ ます。 耐性骨髄腫細胞の割合は主に、個々の骨髄腫の固有の分子的特徴と、治 療前の全身の腫瘍量または段階によって異なります。奏効した患者さん は、理想的には骨髄腫の兆候が残らなくなるか、測定可能な残存病変が 残るものの安定したプラトー期に到達するまで、高リスク状態から低リス ク状態に移行します。 プラトー期に到達するまでに必要な期間はさまざま で、3~6か月の早期奏効から12~18か月の晩期奏効まであります。 奏効の評価で重要な用語は以下のとおりです。 ¡ 無増悪期間(TTP) 治療開始から再発するまでの期間です。

¡ 無増悪生存期間(PFS) 骨髄腫の治療中および治療後に、患者さんが病気を抱えながらも骨 髄腫が悪化しない期間のことです。 PFSは、臨床試験において治療効果 がどの程度あるかを測定する1つの方法です。  PFS1 – 治療開始から1回目の再発までの期間。

 PFS2 – 治療開始から2回目の再発までの期間で、1回目と2回目の 両方の寛解期間を含みます。 myeloma.org

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¡ 進行性疾患 進行性疾患検査によって確認された悪化または再発している骨髄腫 です。骨髄腫蛋白濃度や疾患の新たな証拠における確認済みの奏効 の最低値から25%以上の増加として定義されます。

詳細については、疾患経過を通じて骨髄腫の状態を観察し、評価するため に使用される検査と、どの検査が奏効と再発を検出するために使用され るかについて説明した国際骨髄腫財団(IMF)の小冊子「Understanding Your Test Results(検査結果の理解)」をお読みください。

再発性難治性骨髄腫 再発性疾患

再発とは、 再発改善から一定期間後に骨髄腫の兆候や症状が再び現れるこ とです。 再発した患者さんは、治療を受けた後、治療終了から少なくとも60 日で骨髄腫の兆候や症状が発現しました。 骨髄腫では、寛解後に病気が再 発することは珍しいことではありません。 実際、 連続した治療ラインによる治 療後には、 複数の奏効期間と寛解期間が存在することがあります。 幸いなこ とに、再発性疾患に対してFDAが承認した有効な治療プロトコルの数は増 えており、 治療の選択肢は過去数年に比べて大幅に広がっています。

各再発時の治療目的は、最小限の毒性で最適な奏効を得ることです。 これ こそが、骨髄腫の患者さんそれぞれにとって可能な限り最良の長期転帰に つながるのです。 再発性疾患に対する治療法は、基礎となる疾患の生物学 と患者さんの特性に基づくべきです。患者さんが新たに診断され、最初の 治療が選択された際に危険因子が特定された場合、 この知識は骨髄腫が 再発した時の治療選択に影響を与えることになります。再発時に、 さらな る危険因子が明らかになることもあります。 これらの因子は個々に評価さ 検査

表6. 予後因子

意義

血清β2ミクログロブリン (S β2M) 数値が高いほど病期が進行 血清アルブミン (S ALB)

数値が低いほど病期が進行

乳酸脱水素酵素(LDH)

活動性疾患で増加

C反応性蛋白(CRP)

活動性疾患で増加

骨髄細胞遺伝学的検査と蛍光 いくつかの染色体欠失や転座が高リス in situハイブリダイゼーション (FISH) クであると見なされ、寛解期間が短くな 検査における染色体異常 ることに関係 18

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れ、まとめると、 これらの難治性骨髄腫の治療プロトコルを選択する際に 役割を果たします。

¡ 持続期間と早期治療の深さ 骨髄腫の患者さんは、1回目の寛解を得た後、 さまざまな間隔で1回目 の再発を経験します。初期治療に対する患者さんの奏効の持続期間 と深さは次の治療選択の指針となり、骨髄腫の管理における長期的 有効性を予測することがよくあります。 いくつかの第Ⅲ相臨床試験で、 MRD陰性状態になった患者さんは、PFSが良好であることが示されて います。

¡ フロントラインレジメンの再利用 少なくとも6か月の寛解後に1回目の再発が起こった場合、再発性疾 患の管理のための最初の戦略は、最初に寛解を得た患者さんのフロ ントライン治療の再利用を検討することです。骨髄腫治療のための 表7. MRDの基準を含む奏効評価のためのIMWG基準

IMWG MRD基準(以下に定義されている完全奏効が必要) 持続的なMRD陰性

骨髄でMRD(微小残存病変)陰性 - NGF(次世代フローサイトメトリー)、 またはNGS (次世代シーケンス)、またはその両方 - および以下に定義されている画像検 査によって少なくとも1年の間隔が確認されていることその後の評価により、陰 性期間をさらに特定可能(例:5年MRD陰性) フローMRD陰性

多発性骨髄腫におけるMRD検出のためのEuroFlow標準操作手順(または検証済 みのこれに準ずる方法)を用いて、骨髄穿刺液のNGFによる表現型が異常なク ローン形質細胞が不検出であること。 さらに、最小感度が有核細胞105個に1個 以上であること

シーケンスMRD陰性

骨髄穿刺液のNGSによるクローン形質細胞の不検出。クローンの存在は、 LymphoSIGHTプラットフォーム(または検証済みのこれに準ずる方法)を用いて、骨 髄穿刺液のDNAシーケンスを行った後に得られた同一のシーケンスリードが2つ 未満であり、最小感度が有核細胞105個に1個以上であること

画像検査陽性、MRD陰性

NGFまたはNGSで定義されるMRD陰性に加え、ベースラインまたはその前のPET/CT で認められたトレーサー取り込み増加領域がすべて消失しているか、 または縦 隔血液プールのSUV(最大標準化取り込み値)未満に減少しているか、 または周 囲の正常組織のSUV未満に減少していること。

(表7は次のページへ続く)

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表7. MRDの基準を含む奏効評価のためのIMWG基準

標準IMWG奏効基準

(前ページからの続き)

厳格な完全奏効

以下に定義する完全奏効に加え、免疫組織化学的検査により、FLC比が正常で、 骨髄生検でクローン細胞が検出されないこと (κ/λ比4:1以下、 またはκ患者とλ 患者でそれぞれ1:2以上、100個以上の形質細胞の集計後) 完全奏効

血清および尿の免疫固定法が陰性で、軟部組織の形質細胞腫が消失し、骨髄 穿刺液中の形質細胞が5%未満であること 最良部分奏効

免疫固定法により血清M蛋白および尿中M蛋白を検出できるが電気泳動法で は検出できない、 または血清M蛋白および尿中M蛋白、 または血清M蛋白の90% 以上の減少に加え、24時間尿中M蛋白が100mg未満であること 部分奏効

• 血清M蛋白の50%以上の減少に加え、24時間尿中M蛋白が90%以上減少、 または 200mg未満まで減少

• 血清M蛋白および尿中M蛋白が測定不能な場合、M蛋白の基準の代わりに、局 所性病変が関与したFLC値と関与しないFLC値の差が50%以上減少していること

• 血清M蛋白および尿中M蛋白が測定不能、 かつ血清遊離軽鎖測定も測定不能 な場合、ベースラインの骨髄形質細胞の割合が30%以上であれば、M蛋白の代 わりに形質細胞が50%以上減少していること

• これらの基準に加え、ベースライン時に存在する場合は、軟部組織の形質細 胞腫のSPD(測定された病変の最大垂直径の積の合計)が50%以上減少してい ること

最小奏効

• 血清M蛋白が25%以上49%以下の減少、かつ24時間尿中M蛋白が50%~89%減少 していること

• 上記の基準に加え、ベースライン時に存在する場合は、軟部組織の形質細胞 腫の大きさ (SPD)が50%以上減少していること 安定

奏効の指標としての使用を推奨しない。疾患の安定は、無増悪期間の推定値 を算出することによって最もよく示される。完全奏効、最良部分奏効、部分奏 効、最小奏効、進行性疾患の基準を満たさないこと

(表7は次のページへ続く)

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表7. MRDの基準を含む奏効評価のためのIMWG基準

標準IMWG奏効基準(続き)

(前ページからの続き)

進行性疾患

以下の基準のいずれか1つ以上において、確認された最も低い奏効値から25%増加している こと • 血清M蛋白(絶対的増加が0.5g/dL以上であること) • 血清M蛋白が1g/dL以上増加(M成分の最低値が 5g/dL以上だった場合) • 24時間尿中M蛋白(絶対的増加が200mg以上であること) • 測定可能な血清M蛋白および尿中M蛋白の値がない患者で、局所性病変が関与したFLC値 と関与しないFLC値の差(絶対的増加が10mg/dLを超えていること) • 測定可能な血清M蛋白および尿中M蛋白の値がなく、かつ測定可能な局所性病変が関与 したFLC値がない患者における骨髄形質細胞の割合(ベースラインの状態を問わず、絶対 的増加が10%以上であること) • 新しい病変が出現し、1個以上の病変のSPDの最下点から50%以上増加しており、または以 前の病変の最長径が50%以上増加しており、短軸が1cmを超えていること • これが疾患の唯一の指標である場合、循環形質細胞が50%以上増加していること (最低200 個/μL) 臨床的再発

臨床的再発とするには、以下の基準のうち1つ以上に該当すること • 基礎疾患であるクローン形質細胞の増殖性疾患に関連した疾患や末端臓器不全の増加の 直接的指標(CRABの特徴)。 これは、 無増悪生存期間や無増悪生存期間の計算には使用され ませんが、 任意に報告できるもの、 または臨床で使用できるものとして記載されています。 • 新しい軟部組織の形質細胞腫または骨病変の発生(骨粗しょう症性骨折は進行性では ない) • 既存の形質細胞腫または骨病変の大きさの明らかな増大。明らかな増加は測定可能な 病変のSPDによって順次測定される50%(かつ1cm以上)の増加と定義されます。 • 高カルシウム血症(>11mg/dL) • 治療または他の非骨髄腫関連疾患に関連しないヘモグロビンの2g/dL以上の減少 • 治療開始時から血清クレアチニンが2mg/dL以上上昇し、骨髄腫に起因するもの • 血清パラプロテインに関連する過粘稠 完全奏効からの再発(エンドポイントが無病生存期間である場合にのみ使用)

以下の基準のうち1つ以上に該当すること • 免疫固定法または電気泳動法による血清M蛋白または尿中M蛋白の再出現 • 骨髄中に5%以上の形質細胞が発生 • その他の進行の兆候の出現(すなわち、新たな形質細胞腫、溶解性骨病変、 または高カル シウム血症など、上記を参照) MRD陰性からの再発(エンドポイントが無病生存期間である場合にのみ使用)

以下の基準のうち1つ以上に該当すること • MRD陰性状態の消失(NGFまたはNGSでクローン形質細胞の証拠、 または骨髄腫再発の画像 検査で陽性) • 免疫固定法または電気泳動法による血清M蛋白または尿中M蛋白の再出現 • 骨髄中に5%以上のクローン形質細胞が発生 • その他の進行の兆候の出現(すなわち、新たな形質細胞腫、溶解性骨病変、 または高カル シウム血症など)

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NCCNガイドラインには、 「最初の初期治療完了後6か月を超えて再発 した場合、患者さんは初期治療と同じ レジメンで再治療してもよい」 と記載されています。

約50%の患者さんが、1回目の寛解を得たのと同じ治療法で2回目の 寛解を得ることができます。 これは特に初期治療後、1年を超える寛解 を維持できた患者さんにおいて明らかです。

¡ 生化学的再発と臨床的再発 考慮すべき要因の1つは、再発の種類です。 それは生化学的再発か、 そ れとも臨床的再発か?

生化学的再発とは、M蛋白濃度の上昇による疾患進行があるものの、 骨髄腫に関連する臓器不全の症状がないことを意味します。 それでも なお、生化学的再発は患者さんの生活の質に悪影響を及ぼすことが あります。生化学的再発には、疾患の進行を把握するためにM蛋白濃 度の観察が必要です。高リスク骨髄腫では、症候性疾患へと進行する のを防ぐために、生化学的再発の診断後、早期に治療を開始すべきで

血液検査

表8. 治療に対する反応を観察するために必要な検査

• 血液一般検査 • 生化学検査 • 肝機能検査 • 血清β2ミクログロブリン • C反応性蛋白 • 血清エリスロポエチン値

• 骨髄腫蛋白測定 (血清蛋白電気泳動 + 定量免疫 グロブリン) • 血清遊離軽鎖測定(Freelite®) • 重/軽鎖測定(Hevylite®) • 末梢血ラベリングインデックス (LI)

尿検査

• 尿一般検査 • 総蛋白量、電気泳動、免疫電気泳動測定用24時間蓄尿 • クレアチニンクリアランス測定用24時間蓄尿(血清クレアチニン上昇の場合) 骨評価

• 全身骨X線撮影 • 特別な問題に対するMRI/CT検査 骨髄

• 全身FDG/PET検査(病状が不明な場合) • 骨密度測定(DEXA検査) (ベースラインとして、 およ びビスホスホネートの有用性評価のため)

• 診断および定期観察のための吸引および生検 • 複数の潜在的な核型異常およびFISH異常(染色体数、転座、欠失 – 例: FISH 13q-、t[4;14]、1q21な ど)を調べる予後評価のための特別検査 他の検査(特殊事情) • アミロイドーシス

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• ニューロパチー

• 腎合併症または感染合併症

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す。以下のものが検出された場合、生化学的再発の治療が適応となり ます。  血清M蛋白が倍増  血清M蛋白が1 g/dL以上増加

 24時間尿中M蛋白が500 mg以上増加

 局所性病変が関与した血清遊離軽鎖(FLC)濃度が20mg/dL以上 増加  2か月間隔で行われた2回の測定による異常比

臨床的再発時の治療介入は、存在する因子によってさまざまです。 たと えば、新しい軟部組織の形質細胞腫や骨病変がある場合、医師は再発 を管理するための満足できそうな方法として放射線治療を提案するこ とがあります。以下のものが検出された場合、臨床的再発の治療が適 応となります。  既存の形質細胞腫または骨病変の大きさが50%以上増大

 高カルシウム血症

 ヘモグロビンが2g/dL以上減少(骨髄腫のため)

 血清クレアチニンが2mg/dL以上増加(骨髄腫のため)

 治療介入を必要とする過粘稠

¡ 腎障害を伴う再発 腎障害を有する骨髄腫の患者さんの再発は、既存のものであれ、 新たに特定されたものであれ、どの治療プロトコルが最も適切で あるかを慎重に検討する必要があります。免疫調節薬、 プロテア ソーム阻害剤、抗CD38モノクローナル抗体など、安全に使用でき る効果的な治療法はいくつかあります。 実際、ICARIA-MM臨床試験 の患者サブグループから得られたデータは、抗CD38モノクローナ ル抗体とプロテアソーム阻害剤の組み合わせにより完全腎反応 が得られることを示しています。他の臨床試験でも同様の結果が 示されていますが、もっと小規模な患者群で実施されたものです。

¡ 髄外疾患による再発 髄外骨髄腫の患者さんの再発は、染色体異常を伴う高リスク疾患の 管理と同じ原則に従って対処されます。 髄外疾患の患者さんが参加し た臨床試験が少ないため、そのような患者さんの再発に関するデー タは限られています。 しかし、免疫調節薬やプロテアソーム阻害剤によ る治療は有効であることが示されています。 局所性疾患の管理と疼痛 緩和のための局所放射線照射、および外科的介入を検討すべきです。 PET/CT診断は、髄外骨髄腫の評価と観察の鍵となります。

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図8. ヒト染色体核型分析

図9. 骨髄腫細胞の蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)

図10. 高リスク骨髄腫における染色体異常

欠失

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転座

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¡ 移植後の再発 骨髄腫の多くの症例で、移植後の再発は移植以外の治療法後の再発 と類似したパターンを示します。1回目の移植後少なくとも2年間の持 続的寛解を得られた患者さんは、再発時に2回目の移植を受けること が、次の寛解を得るための戦略として推奨されるかどうか、医師と相 談すべきです。

¡ 治療レジメンの順序 再発した患者さんの治療レジメンの順序は、主に、患者さんが不応と なった薬物に基づいて検討されます。

再発性骨髄腫に現在使用されている標準治療(SOC) レジメンには以下の ものがあります。

1.DPd – ダラザレックス®(ダラツムマブ)+ ポマリスト®(ポマリドミド)+ デ キサメタゾン 2.DVd – ダラザレックス + Velcade®(ボルテゾミブ)+ デキサメタゾン

3.IRd – ニンラーロ®(イキサゾミブ)+ Revlimid®(レナリドミド)+ デキサメ タゾン

4.Kd – Kyprolis®(カルフィルゾミブ)+ デキサメタゾン

5.EPd – エムプリシティ®(エロツズマブ)+ ポマリスト + デキサメタゾン

再発は、 あなたとあなたの骨髄腫に最も適した全体的な戦略について、診 断時に医師と話し合ったであろうことを振り返る重要な時期です。 また、骨 髄腫専門医の診察を受ける重要な時期でもあります。

難治性疾患

骨髄腫は、治療中または治療後60日以内に進行性疾患を患った患者さん において難治性と見なされます。寛解期間が短い患者さんは転帰不良の 傾向があり、高リスク骨髄腫と見なされます。

残念なことに、骨髄腫の患者さんの一部は、標準治療に反応しなくなる難 治性疾患を発症することがあります。 ただし、ある薬物クラスの薬剤に不 応となった骨髄腫が、同じ薬物クラスの別の薬剤または別の薬物クラスの 薬剤に反応することがあります。治療プロトコルの有効性は、患者さんが 過去に、特定の骨髄腫治療薬や同クラスの他の治療薬に曝露しているか どうかに左右されます。

難治性骨髄腫の患者さんは、FDAが承認した有効な治療選択肢の狭い範 囲から選択しなければなりません。患者さんが受けたレジメンの数と、 レ ジメンの有効性が失われるまでの期間は、治療結果の予測因子です。 薬剤 耐性は時間の経過とともに発現することがあります。 初期治療に不応の患 者さんは転帰不良の傾向があり、高リスク骨髄腫と見なされます。

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図11. 一度目に再発した時の骨髄腫治療の選択肢1 Revlimidに不応でない²

Revlimid不応²

抗CD38 moAB³ 不応でない

抗CD38 moAB³投与 中に不応または 再発

抗CD38 moAB³ 不応でない

抗CD38 moAB³ 投与中に不応ま たは再発

DRd

プロテアソーム 阻害剤5+ Rd6

抗CD38 moAB³ +プロテアソーム阻害 剤5+ デキサメタゾン または 抗CD38 moAB³ + Pd8

プロテアソーム阻害剤5 +Cd7 または プロテアソーム阻害剤5 +Pd8

許可を得て翻案 ©Dingli et al.Mayo Clin Proc、 2017年4月(2023年2月に見直し)

1.臨床試験以外の治療 2. 移植を受けていない移植対象の患者さんでサルベージ ASCTを検討します 3. モノクローナル抗体 4. ダラザレックス®(ダラツムマブ)+ Revlimid® (レナリドミド)+ デキサメタゾン 5. 好ましいプロテアソーム阻害剤はVelcade®(ボル テゾミブ) またはKyprolis®(カルフィルゾミブ) です 6. Revlimid®(レナリドミド)+ デキサメ タゾン 7. シクロホスファミド + デキサメタゾン 8. ポマリスト®(ポマリドミド)+ デキ サメタゾン Adapted with permission ©Dingli et al. Mayo Clin Proc, April 2017 (reviewed February 2023)

図12. 2回目以降に再発した時の骨髄腫治療の選択肢1

タイプ1:以下に不応 • Velcade®(ボルテゾミブ)

• Revlimid®(レナリドミド) • 抗CD38 moAB2 以下により治療

• KPd • KCd • ベネトクラクスを用いた治療5

タイプ2:以下に不応 • Velcade®(ボルテゾミブ) • Kyprolis®(カルフィルゾミブ) • Revlimid®(レナリドミド) • 抗CD38 moAB2 以下により治療 • PCd • EPd

• ベネトクラクスを用いた治療5

タイプ3:以下に不応 • VVelcade®(ボルテゾミブ)

• Kyprolis®(カルフィルゾミブ)

• Revlimid®(レナリドミド) • ポマリスト®(ポマリドミド) • 抗CD38 moAB2 以下により治療 • 抗BCMA CAR T細胞療法 • 二重特異性抗体

• ベネトクラクスを用いた治療5

許可を得て翻案 ©Dingli et al.Mayo Clin Proc、 2017年4月(2023年2月に見直し)

1.臨床試験以外の治療。 移植を受けていない患者さんはASCTを検討できます 2. モノ クローナル抗体 3. Kyprolis®(カルフィルゾミブ)+ ポマリスト®(ポマリドミド)+ デキサ メタゾン 4. Kyprolis®(カルフィルゾミブ)+ シクロホスファミド + デキサメタゾン 5. 患 者さんに染色体転座がある場合、 t(11;14) 6. ポマリスト®(ポマリドミド)+ シクロホス ファミド + デキサメタゾン 7. エムプリシティ®(エロツズマブ)+ ポマリスト®(ポマリド ミド)+ デキサメタゾン Adapted with permission ©Dingli et al. Mayo Clin Proc, April 2017 (reviewed February 2023)

染色体異常や変異を有する患者さんでは、骨髄腫は治療後すぐに再発し たり、治療に不応となる可能性が高くなります。高リスク骨髄腫は、染色体 異常t(4;14)、t(14;16)、t(14;20)、17p欠失、 および1qの増幅、改訂国際病期分 類(R-ISS)のステージIII疾患や高リスク遺伝子発現プロファイル(GEP)シグ ネチャで定義されます。 あなたの骨髄腫にこの説明が当てはまる場合は、 特定のどの薬物と組み合わせが最も有効であるかを医師に尋ねてくださ い。 現在、 この患者群の標準治療法はなく、臨床試験が進行中です。 26

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併用療法の使用を考慮すると、 「トリプレット」 (3剤)や「クアドラプレット」 (4剤)の治療プロトコルのどの薬剤に、患者さんが不応であるかを特定す るのは困難なことがあり、また、 すでに2種類以上の前治療歴のある患者 さんに対しては、初期治療時および1回目の再発時にすべてのFDA承認薬 剤を使用した可能性があるため、有効な治療プロトコルを見つけるのは 困難な場合があります。一度に4剤を超える薬を組み合わせるのは、毒性 の問題により困難です。 これは、臨床試験への参加によって得られる可能 性のある利益について、医師と相談する時期なのかもしれません。

研究によると、がんと闘うための身体の自然な防御力を強化する免疫療 法による治療は、骨髄腫の治療アプローチにおける進歩の新しい波です。 モノクローナル抗体、二重特異性抗体、抗体薬物複合体(ADC)、および キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法は、難治性骨髄腫の患者さんの転帰 を改善することが示されています。 再発末期や難治性疾患では、安定を獲得することが患者さんにとって臨床 的利益をもたらします。 治療の種類 目的 例

表9. 治療目標とタイムリーな意思決定 安定化

体内化学と免疫系の生命を 脅かす混乱に対抗すること

目的 例

不快感を和らげ、患者さんの機 能する能力を高めること

• 血液を薄めて脳卒中を防ぐ • 骨破壊を止める放射線療法 • 貧血を軽減する赤血球輸血 血漿交換法 • 腎機能が低下した場合の血 • 骨を修復・強化する整形外科 手術 液透析 • 高カルシウム血症を軽減す る薬物(化学療法を含む場 合もあります)

決定までの期間 数時間~数日 治療の種類

緩和

寛解導入

数日~数か月

治癒的

症状の改善、病気の経過を遅 永続的寛解* らせたり止めたりすること

• 全身の悪性細胞を死滅させ • 大量化学療法を実施する手段 としての幹細胞移植 る治療法 • 腫瘍部位の悪性細胞を死滅 させる放射線療法

決定までの期間 数週間~数か月

数週間~数か月

「機能的治癒」 とは、診断 *治療とは、病気を恒久的に根絶することを意味します。 から長年にわたって患者さんが安定した寛解状態にありますが、骨髄腫が完全 には根絶されていない場合に、治療に対する優れた奏効を表すために使用され てきた用語です。 myeloma.org

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骨髄腫に使用されている薬物

1962年にアルキル化剤であるメルファランが導入されて以来、 さまざまな 併用療法レジメンが骨髄腫の治療に使用されてきました。1980年代から 1990年代にかけて、 メルファランによる大量化学療法(HDT)に続く幹細胞 救助は、骨髄腫の患者さんの全身の腫瘍量を減少させ、 より良好な転帰を 得るために利用できる数少ない治療法の1つでした。 メルファランは、自家 幹細胞移植で選択される移植前処置です。

サリドマイドは、少なくとも1950年代から研究されてきた経口免疫調節薬 で、1997年の臨床試験で骨髄腫の治療に初めて使用され、骨髄腫における 「新規治療」の時代になりました。2006年、新たに骨髄腫と診断された患 者さん向けにFDAがサリドマイドを承認しました。 サリドマイドは現在、米 国ではほとんど使用されていませんが、世界中にいる多くの骨髄腫の患者 さんがこの治療法の恩恵を受けています。 また、サリドマイドは、有効性を 高め副作用を軽減した次世代の免疫調節薬である、 レブリミド®(レナリド ミド)とポマリスト®(ポマリドミド)につながりました。

以下は、新規薬剤の時代に、FDAが骨髄腫に対する使用を承認した薬物リ ストです。 このリストは、 この小冊子の印刷時点のものであり、 アルファベッ ト順に並んでいます。

1. アベクマ®(イデカブタゲンビクルユーセルまたは「ide-cel」)は、4 種類以上の前治療後の再発性難治性骨髄腫を適応症として、FDA が(2021年3月に)承認したファーストインクラスのB細胞成熟抗原 (BCMA)指向性CAR T細胞免疫療法です。Abecmaは、 より早期の疾 患に対して研究されています。 Abecmaは、血流から 「採取」 され、骨髄 腫細胞を識別して破壊するよう操作された患者さん自身のT細胞を、 1回限りの点滴として投与する個別化免疫療法です。 2. アレディア®(パミドロネート)は、 骨髄腫の骨病変治療薬としてFDAが (1998年9月に)承認したビスホスホネート製剤です。

3. カービクティ®(シルタカブタゲンオートルユーセルまたは「ciltacel」 )は、4種類以上の前治療後の再発性難治性骨髄腫を適応症とし て、FDAが(2022年2月に)承認した2つ目のBCMA指向性CAR T細胞療 法です。 より早期の疾患に対する臨床試験で得られたデータは、1回 目の再発時に素晴らしい結果を示しています。 カービクティは、患者 さん自身のT細胞を用いて患者さんごとに製造され、1回限りの点滴 として投与されます。

4. ダラザレックス®(ダラツムマブ)は、骨髄腫細胞上のCD38蛋白を標 的とするファーストインクラスのモノクローナル抗体です。静脈内点 滴として(2015年11月に)FDAが承認しました。ダラザレックスファス 28

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プロ®(ダラツムマブとヒアルロ二ダーゼの合剤)は、皮下(SQ)注射 としてFDAが(2020年5月に)承認した新規製剤です。 ダラザレックス のいずれの製剤も、新たに骨髄腫と診断された骨髄腫とその経過全 体で使用できます。

5. デキサメタゾンは、 ステロイドの一般名で、いくつかの商品名でも知 られています。骨髄腫の併用療法で最も頻繁に使用される薬物の1 つです。

6. Elrexfio™(エルラナタマブ(遺伝子組換え))は、 プロテアソーム阻害 剤、免疫調節剤、抗CD38モノクローナル抗体を含む4種類以上の前 治療歴のある再発または難治性の骨髄腫の成人患者を適応症とし て、FDAが(2023年8月に)承認した初の「市販の」BCMA指向性固定 用量による皮下注射剤です。 7. エムプリシティ®(エロツズマブ)は、1~3種類の前治療後の骨髄腫治 療を適応症として、FDAが(2015年11月に)承認した初の免疫刺激モ ノクローナル抗体です。

8. Kyprolis®(カルフィルゾミブ)は、骨髄腫に対してFDAが(2012年7月 に)承認した2つ目のプロテアソーム阻害剤です。Kyprolisは、元々、 2種類以上の前治療後の骨髄腫治療に対して承認されており、現在 は、1回目の再発時に使用することができます。 これは、静脈内(IV)点 滴で投与されます。

9. ニンラーロ®(イキサゾミブ)は、FDAが(2015年11月に)承認した3つ 目のプロテアソーム阻害剤で、経口(口から)服用する初のプロテア ソーム阻害剤です。 ニンラーロは、1種類以上の前治療後の再発また は難治性骨髄腫に対して使用することができます。

10. ポマリスト®(ポマリドミド)は、骨髄腫での使用に対してFDAが(2013 年2月に)承認した3つ目の免疫調節薬です。 これは経口で服用する もので、2種類以上の前治療後の再発または難治性骨髄腫に対して 使用することができます。

11. Revlimid®(レナリドミド)は免疫調節薬であり、骨髄腫に対してFDA が(2006年6月に)承認した最初の経口薬です。 Revlimidは、元々、1種 類以上の前治療歴のある患者さんへの使用に対して承認されてい ました。2015年2月、FDAはこの適応症を、診断から再発までの骨髄 腫疾患の経過全体にわたる使用を幅広く承認しました。2017年2月、 Revlimidは、ASCT後の維持療法として承認されました。Revlimidは、 標準治療(SOC) レジメンの一部です。

12. サークリサ®(イサツキシマブ(遺伝子組換え))は、1種類以上の前 治療歴のある再発または難治性骨髄腫患者を適応症として、FDA myeloma.org

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が(2020年3月に)承認した抗CD38モノクローナル抗体の1つです。 サークリサは、IV点滴として投与されます。

13. Talvey™(タルケタマブ)は、 プロテアソーム阻害剤、免疫調節剤、抗 CD38モノクローナル抗体を含む4種類以上の前治療歴のある再発ま たは難治性の骨髄腫成人患者の治療を適応症として、FDAが(2023 年8月に)承認したファーストインクラスの二重特異性抗体です。

14. Tecvayli™(テクリスタマブ)は、FDAが(2022年10月に)承認した ファーストインクラスの二重特異性BCMA指向性CD3 T細胞エンゲー ジャーです。 この 「市販の」免疫療法は注射で投与します。

15. Velcade®(ボルテゾミブ)は、FDAが(2003年5月に)承認したファース トインクラスのプロテアソーム阻害剤です。VelcadeはIV注入または SQ皮下注射による投与が可能です。 Velcadeは、診断から再発まで骨 髄腫の疾患経過全体で使用され、SOCレジメンTの一部です。 16. ザイゲバ®(デノスマブ)は、骨髄腫の患者の骨関連事象の予防を適応 症として、 FDAが(2018年1月に)承認したRANKリガンド阻害剤です。

17. エクポビオ®(セリネクソール)は、4種類以上の前治療歴のある再発 または難治性骨髄腫患者の治療を適応症として、FDAが(2019年7月 に)承認したファーストインクラスの選択的核外輸送阻害薬(SINE) 化合物です。 2020年12月、FDAは1種類以上の前治療後にエクスポビ オの使用を承認しました。 エクポビオは錠剤で服用します。

18. ゾメタ®(ゾレドロン酸)は、骨髄腫の骨病変治療とその他の種類の がんの治療を適応症として、FDAが(2002年2月に)承認したビスホス ホネート製剤です。

骨髄腫の患者さんは、自分にとって最も適切な治療法の選択について、医 師と慎重かつ詳細に相談しなければなりません。各選択肢の長所と短所 を話し合うオープンな対話が重要です。 骨髄腫の治療薬に多くの新しい薬 剤が追加されたことで、医師は各患者さんにとって最適な組み合わせと最 適な治療の順序を決定するという課題に直面しています。

明らかになったことは、 すべての骨髄腫の患者さんに有効な単独療法はな く、単剤だけで治癒を達成できるものもないということです。むしろ、複数 の経路を通じて複数の薬物で骨髄腫細胞を攻撃する併用療法が、 これま でのところ、優れた有効性を示しています。

現在利用できる 「最も有効な」治療の選択肢という質問に対する簡単な答 えはありません。 幸いなことに、寛解が2年以上持続し、全生存期間(OS)が 改善するような、非常に深く持続する奏効をもたらすことのできるレジメン が数多くあります。患者さんそれぞれにとっての最良の選択は、年齢、骨髄

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腫の病期、遺伝的特徴、腎臓の状態、併存疾患、費用、 そしてもちろん個人 の好みなど、個々の因子によって決まります。

放射線療法

局所放射線照射は非常に効果的な場合があります。 これは、骨破壊、痛 み、神経や脊髄への圧迫など、重度の局所的問題を抱える骨髄腫の患者 さんにとって重要な治療法です。 しかし、主な欠点は、放射線療法が治療 部位の正常な骨髄幹細胞に恒久的な損傷を与えてしまうことです。 正常な 骨髄が多く含まれるような広いX線照射野を設定することは避けるべきで す。 一般的な治療戦略は、局所放射線照射の使用を、問題がある部位に限 定して、全体的な疾病管理を達成するために全身療法に頼ることです。

臨床試験

世界中の骨髄腫の研究者は、患者さんの生存と生活の質の向上に取り組 んでいます。 治療法の探索には目に見える進歩があり、機能的治癒に近づ きつつあります。 この機能的治癒という用語は、骨髄腫がまだ少量検出さ れるものの、再発や疾患の進行がない、長期寛解状態にある患者さんを表 すために使用されます。

骨髄腫の新規の治療法開発は急速に進んでおり、既存の薬剤と新興の薬 剤の新しい組み合わせの研究も行われているため、臨床試験は再発また は難治性の骨髄腫の患者さんにとって適切な選択肢となる可能性があり ます。一部の臨床試験は、再発後期の患者さんにとって有益な選択肢とな る場合があります。他の臨床試験は、1種類か2種類の治療後に早期再発 を経験した患者さんに適している場合があります。

臨床試験の詳細を知り、臨床試験への登録がご自身にとって正しい決定で あるかどうかを判断するために、骨髄腫治療を担当する医師と具体的な 「Understanding 選択肢について話し合い、国際骨髄腫財団(IMF)の出版物 Clinical Trials(臨床試験の理解)」を読むことをお勧めします。

支持療法

あらゆる範囲の支持療法の手段は、疾患の管理と骨髄腫とともに生きる ことによる身体的精神的影響を軽減するために不可欠です。次の国際骨 髄腫財団(IMF)の出版物が参考になります。 ¡ Understanding Treatment of Myeloma Bone Disease(骨髄腫の骨病 変治療の理解) ¡ Understanding Fatigue(倦怠感の理解) ¡ Understanding Peripheral Neuropathy in Myeloma(骨髄腫における 末梢神経障害の理解) ¡ Understanding Treatment of Myeloma-Induced Vertebral Compression Fractures(骨髄腫による脊椎圧迫骨折の治療の理解) myeloma.org

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特定の症状の管理だけでなく、次のような他の支援策も重要です。

¡ 抗生物質と抗ウイルス薬 感染症は骨髄腫の患者さんによく見られる再発性の問題であり、感 染症管理の戦略を持つことが不可欠です。活動性感染が疑われる場 合は抗生物質療法について、 また予防的抗ウイルス療法やシングリッ クス®ワクチンを検討すべきかどうかについて医師に尋ねてください。 骨髄腫の患者さん向けのCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)ウイ ルス、 ワクチン、 ブースター接種、治療法などの最新情報やその他の情 報については、myeloma.org/covid19 myeloma-patientsをご覧くだ さい。

¡ 身体活動 すべての身体活動が可能かどうか、 または骨病変や骨損傷のために調 整が必要であるかどうかを確認するために、医師に相談してください。 通常、 ウォーキングや水泳、柔軟体操や筋力トレーニング、 また、個人に 合わせたヨガプログラムなどの身体活動を計画することができます。

¡ 食事 骨髄腫の患者さんのための特別な食事法は開発されていませんが、 研究では肥満と骨髄腫との関連性が明確に実証されています。果物、 野菜、魚、 その他の脂肪の少ない動物性タンパク質、全粒穀物、未加工 の「本物の」食品を重視した健康的な地中海食をお勧めします。加工 糖や人工トランス脂肪を含む食品は避けてください。 次の2点に注意し てください。

 ハーブやビタミンのサプリメント – 骨髄腫の治療を受けている方 は、 サプリメントを服用する前に 医師・薬剤師に相談してください。 薬やサプリメントの相互作用によっては、骨髄腫治療の効果的な 作用が妨げられたり、深刻な医学的問題が生じたりすることがあ ります。薬局には、相互作用の可能性を特定できる参照用の情報 資源があります。  ビタミンC – 1000 mg/日を超える服用は、骨髄腫には逆効果とな り、腎障害のリスクが高まる可能性があります。

¡ 心の健康 計画どおりに治療を受けるために、心の健康は重要です。治療計画に 対して安心していることを確かめてください。不安やうつ状態にある ことを感じた場合や、他の人が自分をうつ病ではないかと心配してい る場合は、 メンタルヘルスの専門家に面談の予約を入れてください。 これはがんに対する正常な反応であり、がん患者さんのほとんどが一 度は何らかの助けを必要とします。 現時点では仲間同士のサポートが 不可欠であり、 この状況では骨髄腫支援グループが役に立ちます。骨 32

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髄腫支援グループへの紹介については、support.myeloma.orgにアク セスし、国際骨髄腫財団(IMF)インフォライン(1-818-487-7455または InfoLine@myeloma.org)までご連絡ください。

¡ 規則正しい睡眠 これは免疫系にとって非常に重要です。

¡ 調整する 可能であれば、仕事、家族、社会的状況におけるストレスを減らし、人ご みや学童期の子どもとの密接な接触を避けてください。手洗いを頻繁 にしましょう。病気と治療の両方によって免疫系の機能が低下してしま います。骨髄腫が寛解状態に入るまで、または安定した状態になるま では、骨髄腫の管理は最も重要なことです。

最後に

この小冊子は、 あなたの健康管理プランに関する質問に最も的確に答えてく れる医師や看護師のアドバイスに代わるものではありません。 国際骨髄腫財 団(IMF)は、 あなたが医療チームと話し合う際の指針となる情報を提供する ことのみを目的としています。 効果的な治療と良好なQOL(生活の質)を確保 するには、 あなた自身が医療に積極的に参加する必要があります。

骨髄腫の詳細についてはmyeloma.orgにアクセスしてください。骨髄腫関 連の質問や懸念がある場合は、国際骨髄腫財団(IMF)インフォラインに問 い合わせることをお勧めします。国際骨髄腫財団(IMF)インフォラインは、 骨髄腫に関する最新かつ正確な情報を思いやりのある方法で一貫して提 供しています。 国際骨髄腫財団(IMF) インフォライン (1-818-487-7455または InfoLine@myeloma.org)までお問い合わせください。

用語と定義

この小冊子では以下の選択された用語が使用されていますが、骨髄腫関 連の語彙のより完全な概要は、glossary.myeloma.orgにある国際骨髄腫 財団(IMF)の骨髄腫用語集 を参照してください。

貧血:赤血球には体組織や臓器に酸素を運ぶ蛋白であるヘモグロビンが 含まれています。貧血は通常、ヘモグロビンが10g/dL未満に減少、または 個人の正常値から2g/dL以上減少した状態と定義されます。13~14g/dLを 超えると正常値とみなされます。体内の酸素レベルが低下すると、息切れ や疲労感を引き起こすことがあります。新たに骨髄腫と診断された患者さ んの多くは貧血を患っています。

抗体:体内に侵入した抗原に反応し、形質細胞によって産生される蛋白の ことです。 「免疫グロブリン(Ig)」を参照してください。 myeloma.org

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抗体薬物複合体(ADC) :がん細胞に対するモノクローナル抗体を癌細胞 に対して毒性のある薬剤と結び付ける抗がん治療のことです。

抗原:免疫系に自然抗体の産生を引き起こすあらゆる異物のことです。抗 原の例として、細菌、 ウイルス、寄生生物、真菌、毒素があります。

B細胞成熟抗原(BCMA) :骨髄腫細胞の増殖や生存に関与する蛋白です。 BCMAは骨髄腫のすべての患者さんの細胞表面に見られます。 「腫瘍壊死 因子受容体スーパーファミリーメンバー17(TNFRSF17)」 とも呼ばれます。

ベンス・ジョーンズ骨髄腫:遊離κ軽鎖または遊離λ軽鎖から成る尿中の 異常蛋白であるベンス・ジョーンズ蛋白の存在を特徴とする骨髄腫です。 「ベンス・ジョーンズ蛋白」を参照してください。 ベンス・ジョーンズ蛋白:骨髄腫の単クローン性蛋白です。 この蛋白は、 遊離κ軽鎖または遊離λ軽鎖のいずれかで構成されます。ベンス・ジョー ンズ軽鎖はサイズが小さいため、腎臓でろ過され尿中に排泄されること があります。尿中のベンス・ジョーンズ蛋白量は、24時間あたりのグラム 数で表されます。通常、尿中には非常に少量の蛋白(<0.1g/24時間)が存 在することがありますが、 これはベンス・ジョーンズ蛋白ではなくアルブミ ンです。尿中にベンス・ジョーンズ蛋白が存在すれば異常であるといえま す。 骨髄腫蛋白の重鎖はサイズが大きすぎるため、腎臓でろ過できません。 「ベンス・ジョーンズ骨髄腫」を参照してください。 生検:診断に役立つよう顕微鏡検査のために組織を採取することです。 二重特異性抗体:2つの( 「bi」 )標的細胞に結合する人工抗体です。

ビスホスホネート:破骨細胞の活動(骨の破壊)から保護し、吸収または破 壊されている骨の表面に結合する薬物の一種です。 骨髄:骨の中心にある柔らかい海綿状の組織のことで、白血球、赤血球、血 小板を産生します。 骨髄腫が増殖すると、骨髄腫が骨髄中に蓄積します。

骨髄穿刺:顕微鏡検査を行うために、骨髄から体液と細胞のサンプルを針 で採取することです。

カルシウム:主に骨基質の硬い部分に含まれるミネラル(ハイドロキシア パタイト)です。過剰に産生または放出されると、血流中に蓄積することが あります。 「高カルシウム血症」を参照してください。

がん:悪性細胞が無制御に分裂する病気を表す用語です。 がん細胞は周辺 の組織に浸潤し、血流およびリンパ系に乗って身体の他の部分へ広がるこ とがあります。 ケモカイン:サイトカインファミリーの分泌蛋白の一種で、 その機能は細胞

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遊走を誘導することです。 「サイトカイン」を参照してください。

キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法:骨髄腫におけるこの免疫療法では、 患者さんのT細胞を集め、患者さん自身のがん細胞を攻撃するよう操作し ます。 染色体:細胞核の中にあるDNA鎖と蛋白のことです。染色体には遺伝子が 含まれており、遺伝子情報を伝達する機能があります。通常、 ヒトの細胞に は46本の染色体(23対)が含まれています。 • 染色体欠失 – DNA複製中に染色体の一部または全体が失われる遺 伝子変異です。骨髄腫で起こる染色体欠失には、13番染色体長腕欠失 (13q-と表記)または17番染色体短腕欠失(17p-と表記)が含まれます。

• 染色体転座 – 異なる染色体の一部が再配置される遺伝子変異です。小 文字の「t」の後に、転座した遺伝物質を含む染色体の番号が続きます。 骨髄腫で起こる転座には、t(4;14)、t(11;14)、t(14;16)、t(14;20)があります。

移植前処置:幹細胞移植に先立ち、がん細胞を破壊するために患者さんに 施される治療です。骨髄腫の患者さんが受ける最も一般的な移植前処置 は、体重1平方メートルあたり200mgのメルファランです。

CRAB(高カルシウム血症、腎障害、貧血、骨病変)基準:血中のカルシウム 濃度の上昇、腎障害、貧血または赤血球数の低下、および骨損傷は、 「骨髄 腫定義事象(MDE)」 とともに骨髄腫の診断に使用される基準です。

サイトカイン:通常、感染に反応して血流中を循環する蛋白です。 サイトカイ ンは、他の細胞の増殖や活性を刺激したり阻害したりすることがあります。

電気泳動:M診断とモニタリングの両方に使用される臨床検査で、患者さ んの血清(血液)または尿蛋白がそのサイズと電荷に応じて分離されるこ とがあります。血清または尿の電気泳動(SPEPまたはUPEP)により、患者さ んごとの骨髄腫蛋白の定量とMスパイクの種類の特定の両方が可能にな ります。

髄外性形質細胞腫:骨髄の外側の骨から離れた軟部組織に見られる単ク ローン性形質細胞の腫瘍です。

ファンコーニ症候群:腎尿細管の選択的損傷の一種で、腎臓が特定の必須 物質を再吸収する方法に影響があります。 アミノ酸とリン酸塩が尿中に漏 れ、尿として体外に出ると、代謝性骨疾患を引き起こすことがあります。

遊離軽鎖(FLC) :免疫グロブリン軽鎖は、抗体を構成する2つの単位のうち 小さい方です。κ軽鎖とλ軽鎖の2種類があります。軽鎖は重鎖に結合してい ることもあれば、結合していない(遊離している) こともあります。遊離軽鎖 は、血中を循環し、腎臓に排泄できるほど小さく、 ろ過されて尿中に排泄さ myeloma.org

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れたり互いに付着して尿細管を遮断したりすることがあります。

重鎖:形質細胞によって産生される免疫グロブリン蛋白は、2つの重鎖と2 つの軽鎖からなり、重鎖は2つのユニットのうち大きい方です。 5種類の重鎖 (G、A、D、E、またはM)は、骨髄腫細胞によって産生される免疫グロブリン のクラス (アイソタイプ)に基づいています。 「免疫グロブリン(Ig)」を参照し てください。

高カルシウム血症:血中のカルシウム濃度が正常値を超えていることで す。 骨髄腫の患者さんでは、通常、骨の破壊によってカルシウムが骨から血 流中に放出されます。 この状態は、食欲低下、吐き気、 のどの乾き、倦怠感、 筋力低下、不安、錯乱などを含むさまざまな症状を引き起こすことがあり ます。 「カルシウム」を参照してください。 過粘稠度症候群(HVS) :血液が濃くなり過ぎて、細い血管の血流が悪くな ると合併症を引き起こし、生命を脅かすことがあります。治療と管理には、 静脈内輸液や血漿交換法があります。

低ガンマグロブリン血症:免疫系が血液中に十分な免疫グロブリンG (IgG)を産生していない場合に臨床診断が行われます。

免疫系:細胞、組織、臓器、およびそれらが作る物質の複雑なネットワーク です。免疫系は、健康な細胞を保護しながら、感染した細胞や病気の細胞 を破壊し、細胞の破片を除去することで、身体が自分自身を守るのを助け ます。

免疫グロブリン(Ig) :形質細胞から産生される蛋白で、身体の免疫系に 必須です。免疫グロブリンは外来物質(抗原)に付着し、それを破壊する のを助けます。免疫グロブリンのクラス(アイソタイプ)は、IgG、IgA、IgD、 IgE、IgMです。 各種の免疫グロブリンには体内での異なる機能があります。 「抗体」 および 「抗原」を参照してください。 GとAは、骨髄腫細胞から • IgG、IgA – 最も一般的な種類の骨髄腫です。 産生される免疫グロブリン重鎖を指します。 • IgD、IgE – これらの種類の骨髄腫は発生頻度が低いです。

• IgM – 骨髄腫の種類ではまれです。 IgM型骨髄腫はワルデンストレーム マクログロブリン血症と同じではありません。

インターロイキン:体内で自然に産生される化学物質、 または生物学的療 法に使用される物質です。 インターロイキンは、特定の種類の白血球の増 殖と活動を刺激します。 インターロイキン-2(IL-2)は生物学的反応修飾物 質の一種で、ある種のがんと闘う免疫系の特定の血球の増殖を刺激しま す。 インターロイキン-6(IL-6)はサイトカインの一種で、破骨細胞と形質細 胞の増殖を強力に刺激します。 36

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病変部:異常な組織の領域で、がんなどの損傷や病気によって生じること のあるしこりや膿瘍のことです。骨髄腫において、 「病変部」は形質細胞腫 または骨の抜けた部分(穴)のことを指します。 • びまん性病変 – 骨領域に骨髄腫病変が広がっている状態です。

• 局所性病変 – MRIやPET-CT検査で骨髄に見られる異常な範囲のことで す。 「骨髄腫診断事象」と見なされるには、5mm以上の局所性病変が2 か所以上にあることが必要です。

• 溶骨性病変 – 各領域の健康な骨の最低30%が侵食された場合に、X線 写真上で暗い点として現れる骨の損傷領域です。 溶骨性病変は骨に開 いた穴のように見え、骨が弱くなっている証拠です。 「溶骨性(溶解)」を 参照してください。

軽鎖:免疫グロブリン軽鎖は、抗体からなる2つの単位のうち小さい方で す。軽鎖は化学結合によって重鎖の末端に結合していますが、血流に入る 余分な軽鎖が作られます。 これらは「遊離軽鎖」と呼ばれます。軽鎖には カッパとラムダの2種類があります。 溶骨性(溶解) :細胞や組織の溶解や破壊です。

Mスパイク:単クローン性スパイク(蛋白電気泳動検査で生じる鋭い パターン)は、骨髄腫細胞の活性マーカーです。 「 単クローン性」および 「単クローン性蛋白」を参照してください。

マクロファージ:免疫系細胞で、表面に健康な体細胞であることを示す蛋 白を持たないあらゆる細胞(がん細胞を含む)を飲み込んで貪食すること が任務です。 代謝:ある化合物が別の化合物に変換されることで、生物の生命を維持す る化学プロセスで起こります。 「代謝産物」を参照してください。

代謝産物:代謝中に産生される物質、または代謝に必要な物質です。 「代謝」を参照してください。 微小残存病変(MRD) :治療が完了し、完全奏効(CR)に達した後に存在す る残存腫瘍細胞です。厳格なCR(sCR)を達成した患者さんでも、MRDがあ る場合があります。感度の高い検査方法により、血液または骨髄から採取 された百万個の細胞の中から1個の骨髄腫細胞を検出することができま す。 「微小残存病変(MRD)陰性」を参照してください。 分子:物質のすべての特性を保持する最小の粒子です。分子は、化学結合 によって結合された2つ以上の原子からなる電気的に中性な集合です。

単クローン性:単クローンは、単細胞に由来するコピーです。骨髄腫細胞 は単クローン性で、骨髄内の単一の悪性形質細胞に由来します。 産生され

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る骨髄腫蛋白の種類も単クローン性であり、多くの形態(ポリクローン性) ではなく単一の形態です。 単クローン性蛋白の重要な実利的側面は、蛋白 電気泳動検査で鋭いスパイクとして現れることです。 「Mスパイク」を参照 してください。 モノクローナル抗体:人体内で産生される抗体ではなく、研究室で製造さ れる抗体です。 モノクローナル抗体は、診断または治療目的でがん細胞や 免疫系細胞を見つけて結合するよう特別に設計されています。 モノクロー ナル抗体は、単独で使用することも、薬物、毒素、 または放射性物質を腫瘍 細胞に直接送り込むために使用することもできます。

意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS) :血液中や 尿 中の単クローン性 蛋 白 濃 度 が比 較 的 低いことを特 徴とする形 質 細胞疾患です。骨髄形質細胞濃度は10%未満です。SLiM-CRAB(高カ ルシウム血 症 、腎 障 害 、貧 血 、骨 病 変)基 準の特 徴 は 見られません。 「SLiM-CRAB(高カルシウム血症、腎障害、貧血、骨病変)基準」を参照して ください。

単クローン性蛋白(骨髄腫蛋白、M蛋白) :骨髄腫細胞によって産生され る異常な蛋白で、骨や骨髄に蓄積して損傷します。骨髄腫の患者さんの 血液中や尿中には異常に大量に検出されます。 「 単クローン性」および 「Mスパイク」を参照してください。

単球:循環血液中に見られる白血球の一種です。 組織内にある場合はマク ロファージとも呼ばれます。

MRD陰性:微小残存病変陰性のことです。検査にもよりますが、十万個ま たは百万個の骨髄形質細胞のサンプルから骨髄腫細胞が1個も見つかり ません。 「微小残存病変(MRD)」を参照してください。 多発性骨髄腫:骨髄形質細胞(抗体を作る白血球)のがんです。 がん化した 形質細胞は骨髄腫細胞と呼ばれます。

ニューロパチー:神経損傷によって引き起こされる、 しびれ、 うずき、灼熱 感、 および/または痛みの感覚がある状態です。 「末梢神経障害」を参照して ください。

好中球減少:細菌感染と戦うために必要な白血球の一種である好中球の 濃度が低下している状態です。 好中球が少なすぎると感染症を引き起こす ことがあります。発熱は好中球減少の最も一般的な兆候です。発熱がある 場合は、直ちに医師の治療を受ける必要があります。 非分泌性骨髄腫:骨髄腫の患者さんの約1%は、血液(血清)中や尿中に検 出できるM蛋白を持っていません。 これらの患者さんの一部は、無血清軽

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鎖アッセイを使用して正常に観察することができますが、他の患者さんは、 骨髄生検やPET-CT検査で観察することがあります。非分泌性骨髄腫の患 者さんは、M蛋白を産生する患者さんと同じ方法で治療を受けます。

骨芽細胞:骨組織の生成に関わる骨細胞です。 骨芽細胞は類骨を産生し、 カルシウムで石灰化され、新しい硬い骨を形成します。

破骨細胞:骨髄と骨の間の接合部に見られる細胞です。 古い骨組織の破壊 または再形成の役割を担っています。 骨髄腫では、破骨細胞が過剰に刺激 される一方で、骨芽細胞の活性が阻害されます。 骨吸収の促進と新骨形成 の阻害の組み合わせにより、溶骨性病変が生じます。

末梢神経障害(PN) :末梢神経障害は、手、足、下肢、腕の神経に影響を及 ぼす重篤な状態です。患者さんは、骨髄腫自体の影響や骨髄腫の治療に よって末梢神経障害をきたすことがあります。症状には、 しびれ、 うずき、灼 熱感、痛みなどがあります。

形質細胞:抗体を産生する白血球です。骨髄腫細胞はがん性形質細胞で あり、臓器や組織の損傷(貧血、腎臓損傷、骨の病気、神経損傷)を引き起 こすことがある単クローン性蛋白(M蛋白)を産生します。

形質細胞腫: 「髄外性形質細胞腫」および 「孤立性骨形質細胞腫(SPB)」を 参照してください。

血漿交換法:血液から特定の蛋白を除去するプロセスです。血漿交換法 は、骨髄腫の患者さんの血液から高濃度のM蛋白を除去するために使用 できます。

血小板:3大血球の1つで、他には赤血球と白血球があります。血小板は血 管壁の破綻部分をふさぎ、血栓の形成を刺激する物質を放出します。血小 板は出血に対する主要な防御機能です。 血小板とも呼ばれます。

プロテアソーム:正常細胞とがん細胞の両方で損傷した蛋白または不要 な蛋白をより小さな成分に分解する酵素( 「プロテアーゼ」 )の結合グルー プ( 「複合体」 )です。 また、 プロテアソームは細胞内損傷のない蛋白の制御 された分解も行っており、 これは多くの重要な細胞機能の制御に必要なプ ロセスです。 これらの小さな蛋白成分は、細胞に必要な新しい蛋白を産生 するために使用されます。 これは細胞内のバランスを維持し、細胞の増殖 を制御するために重要です。

プロテアソーム阻害剤:プロテアソームの正常な機能を阻害する薬物です。 「プロテアソーム」を参照してください。 放射線療法:X線、ガンマ線、 または電子を使用して悪性細胞を損傷または 死滅させる治療法です。放射線を体外から照射する方法や腫瘍の中に直

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接放射性物質を埋め込んで照射する方法があります。

赤血球(RBC) :赤血球とも呼ばれ、血中のこれらの細胞にはヘモグロビン が含まれており、身体のあらゆる部分に酸素を届け、二酸化炭素を取り除 きます。赤血球の産生は、腎臓によって産生されるホルモン (エリスロポエ チン)の刺激によって生じます。腎臓損傷を有する骨髄腫の患者さんは十 分なエリスロポエチンを産生せず、貧血になることがあります。骨髄腫の 患者さんは、骨髄が新しい赤血球を作る能力に骨髄腫細胞の影響がある ため、貧血になることもあります。

再発:改善から一定期間後に骨髄腫の兆候や症状が再び現れることです。 再発した患者さんは、治療を受けた後、治療終了から少なくとも60日で骨 髄腫の兆候や症状が発現しました。 進行性骨髄腫の臨床試験の多くは、再 発性難治性疾患を持つ患者さんを対象としています。 選択的核外輸送阻害薬(SINE) :細胞をがんから守るのに役立つ腫瘍抑制 蛋白を細胞が排出しないようにする化合物です。 腫瘍抑制因子が骨髄腫細 胞に蓄積すると、がん細胞の増殖と分裂を可能にする経路に対抗して、骨 髄腫細胞死に至ることがあります。 XPO1阻害剤としても知られています。

SLiM-CRAB(高カルシウム血症、腎障害、貧血、骨病変)基準:この頭字語 は、患者さんの形質細胞が10%以上であることに加え、次のいずれかの特 徴を有する骨髄腫診断事象(MDE)を説明しています。 • S – 60%の形質細胞

• Li – 関与しない軽鎖に対する関与した軽鎖の比が100以上

• M – MRI診断で骨髄内に2つ以上の局所性病変が存在 • C – 骨髄腫によるカルシウムの上昇

• R – 骨髄腫による腎機能不全

• A – 骨髄腫による貧血(赤血球数の減少)

• B – 骨髄腫に起因する骨疾患

くすぶり型多発性骨髄腫(SMM) :SMMは、意義不明の単クローンガ ンマグロブリン血症(MGUS)よりも発症率の高い疾患です。SMMの患 者さんは、骨髄内に10%以上のクローン形質細胞を有していますが、 SLiM-CRAB基準の特徴を有していません。SMMの患者さんは、定期的 に血液専門医や腫瘍専門医、できれ ば骨髄腫専門医の診察を受ける べきです。標準リスクSMMは治療を必要としませんが、高リスクSMM の患者さんは治療が有益かどうか医師によく相談する必要があります。 「SLiM-CRAB(高カルシウム血症、腎障害、貧血、骨病変)基準」を参照して ください。 40

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孤立性骨形質細胞腫(SPB) :骨中の個々の単クローン性形質細胞の単一 の塊のことです。 SPBの診断には、孤立性骨病変、 すなわち形質細胞の浸潤 が生検で確認されること、他の骨病変の画像診断結果は陰性を示すこと、 骨髄の無作為サンプルにクローン形質細胞が認められないこと、全身性 骨髄腫を示唆する貧血、高カルシウム血症、または腎臓への浸潤の証拠 が認められないことが必要です。

幹細胞(造血幹細胞) :すべての血球を生み出す未熟細胞です。正常な幹 細胞は、赤血球、白血球、血小板などの正常な血液成分を生み出します。 幹細胞は通常、骨髄に存在し、移植のために採取することができます。

ステロイド:ホルモンの一種です。 ステロイドホルモンは体内で作られます。 一部のステロイドの合成類似化合物(同等物)は検査室で製造できます。 デ キサメタゾン、 プレドニゾン、 およびメチルプレドニゾロンは、複数の効果を 持つ合成ステロイドであり、 骨髄腫などの多くの疾患に使用されます。

T細胞(Tリンパ球) :白血球の一種で、免疫系の中心的役割を果たします。 T細胞は、細胞表面にT細胞受容体(TCR)が存在することで、B細胞やナチュ ラルキラー(NK)細胞などの他のリンパ球と区別されます。T細胞は胸腺 (thymus)で成熟するためT細胞と呼ばれますが、一部は扁桃腺でも成熟 します。 血小板減少症:血液中の血小板の数が少ない状態です。 血小板は、血液の 凝固を助けます。血小板が少ないと、あざができやすくなり、出血し、治癒 が遅くなることがあります。血小板の「正常」値は検査室によって異なりま す。 たとえば、 メイヨークリニックの血小板の「正常」値は、循環血液1マイ クロリットルあたり15万個以上です。 血小板数が5万個未満の場合、出血の 問題が生じることがあります。大出血は通常、血小板が1万個未満に減少 することと関連しています。

腫瘍:過剰な細胞分裂によってできた組織の異常な塊です。骨髄腫では、 腫瘍は形質細胞腫と呼ばれます。

腫瘍壊死因子(TNF) :全身性炎症および骨吸収に関与する細胞シグナル 伝達蛋白(サイトカイン)です。 TNFアルファ (TNF-α)は骨髄腫の患者さんで 上昇します。

ワルデンストレームマクログロブリン血症(WM) :形質細胞に影響を及ぼ すまれな種類の非ホジキンリンパ腫(NHL)です。IgM蛋白が過剰に産生さ れます。 WMは骨髄腫の一種ではありません。

白血球(WBC) :侵入した細菌、感染症、 アレルギー原因物質と戦う役割を 担うさまざまな白血球の総称です。 これらの細胞は骨髄でつくられ、その 後、身体の他の部分に移行します。 特定の白血球には、好中球、好塩基球、 好酸球、 リンパ球、単球があります。

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メモ

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