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2017 年 5 月 12 日号

アメリカ教育の良さ

自由でも、やるべきことは きっちりやっている 高場政晃(マサ)先生 日本の現役高校教師が、マカティオ市のカミアック高校に 1 年間在 籍した。兵庫県とワシントン州による教員派遣制度により、学校レベ ルの国際交流をはかることが目的だ。日本語クラスの授業をしながら、 他教科や他校の授業見学、マカティオ学区の教育委員会参加など、幅広 く活動しアメリカの教育事情にどっぷり浸かった。「とにかく学校が 大好き」と言うマサ先生が、アメリカ式教育の良さを語ってくれた。                        取材・文:渡辺菜穂子

学校システムについて

い面白い発想がどんどん出てきます。新しい語彙に関しても

をコロッと変え、 「先生」 「先生」と慕ってくるようになりまし

成績や出席管理などをそれぞれの専門職員が行っているた

の定義を作らせるなどして考えさせます。このようなクリエ

と言うのは万国共通で、そこは自然体でいこうと思いました。

員で多大な業務をカバーしなければならないため、教師が授

きたいです。

にしっかりお金をかけて、必要なところに適切に投資できて

生徒の達成度

日本でアメリカ式の教育を取り入れるには

いうシステムがありません。これで毎時間学んだことが頭に

前で発表することを恥ずかしがらないようなクラスにしたい

アメリカの学校では、学習・進路カウンセリング、生徒指導、

め、教師が授業に集中できます。日本の学校では限られた人 業にかけられる時間が限られてしまいます。アメリカは教育 いる環境だと思います。

また、IT 機器が整っていて、先生たちがそれを有効活用し

ていました。例えば、社会のクラスで生徒たちが回答ボタ

ンを使って 4 択問題に答え、その動向がスクリーンに反映さ れたり、グループワークで各自ノートパソコンを操作して

「Google ドキュメント」などの共有ソフトで同時編集したり

します。日本では指導要領に「コンピュータを使った授業を 推進」とあっても、実際は設備が追いついていません。コン

ピュータ室に行けば生徒各自のコンピュータがありますが、 各教室に揃っているわけではありません。私は以前日本での

授業でコンピュータを使おうと試みた時期があるのですが、 ノートパソコンとプロジェクターを各教室に持ち込み、接続 し、授業後に外してまた次の教室へ移動するといった手間が かかりすぎて、続けられませんでした。

日本だったら「ここを覚えなさい」で済ませるところを、言葉

イティブなクラス活動は、ぜひ日本の授業でも取り入れてい

アメリカでは、日本のように授業の内容をノートにとると

残っていくのかと最初は疑問に思いました。 しかし、アメリ

カの授業は何かを覚えることが目的ではなく、例えば国語の

日本で最近よく話題になる「アクティブ・ラーニング(生徒

主導の学習法)」が、アメリカでは全ての授業で実践されてい

ます。例えば日本語クラスでは、漢字を書いて覚えるのでは なく、漢字にストーリーをつけて発表します。感心するぐら

ただ、それ以降は怒鳴っていません。私自身の度量も大きく なり、冗談を言いながら注意するという技も覚えました。

まずは雰囲気作りです。生徒が積極的に授業に参加し、人

です。

日本では「黙って座っていればよろしい」という雰囲気があ

授業で「物語に対する批評を書く」など、各生徒が独創的に何

り、授業を聞いていなくても聞いているフリができれば良し、

思い至りました。

ないというプレッシャーがあります。ですから、授業中も態

かをすることが目的なので、ノートをとる必要がないのだと

そのため、授業中の規則は日本と比べてかなり自由。それ

教師側も聞いているフリをしない生徒を注意しなければなら 度の悪い生徒が目につき、それをえんま帳に書き込んでいく

でも生徒たちはやるべきことを案外きちっとやっています。 「減点方式」となります。でも減点法では生徒が萎縮してしま いろんな授業を見学しましたが、生徒たちには常に積極性が 求められているので、みんな真剣です。

います。

アメリカでは基本的に頑張った生徒を褒め、そこに注目し

ます。生徒の授業態度に関しても、許容量に幅があります。

印象に残った出来事

派遣されて間もない頃、授業中に生徒を怒鳴ったことをよ

く覚えています。クラス活動に参加しない生徒を注意しても 聞き流されるということが続いて、ある日スイッチが入って

授業スタイル

た。結果的には、怒って良かったというか、ダメなことをダメ

「何しとんじゃ、コラー。何回も言うとるやんか、お前」と怒 鳴ったのです。

つい日本の学校のような怒り方をしてしまったのですが、

こちらにはこちらのやり方があると反省し、翌日大きい声を

そうすると、どんな生徒も居場所があり認められていると感 じます。井上先生の日本語クラスでは(注:マサ先生は、井上

先生の日本語クラスで第 2 教師としてチームティーチングを

行っていた)、SAD(社会不安障害)と診断されている生徒た ちも、伸び伸びと授業に参加していました。一時的な授業態 度などにこだわるのでなく、長い目で見て学習達成すれば大 丈夫だという考え方にしていきたいと思っています。

出したことを謝りました。そうしたら、その生徒たちが態度

たかば まさあき

高場政晃先生

 幼少時は親の転勤のため各 地を転々として過ごす。1996 年高知大学教育学部(小学校 教員養成課程)卒。中学校教 諭を 5 年、翻訳会社勤務 6 年

日本文化紹介として英語で落語を披露。 「普

を経て、2010 年から神戸北 高校教諭。担当教科は英語。  「大学を卒業してから中学教師になったのですが、しんどくて一度

段全く勉強しない生徒が『おもしろかった』と わざわざ言いにきてくれました」

カミアック高校

辞めました。でも、生徒から手紙が来て辞めたことを後悔しました。

マカティオ学区の教育委員会最高責任者

それで再度教員採用試験に挑戦し、毎年受け続け、7 年目に採用さ

(右) と

れました」  兵庫県教育委員会とワシントン州教育省が教育交流の一つとして 行っている 1 年間の相互教員派遣制度により、2016 年 4 月から 1 年間マカティオ市にあるカミアック高校に赴任。本教員の井上善誉 (いのうえよしたか)先生について、日本語クラスを担当。  「この教員派遣制度に参加したおかげで、多くのことを学びました。 唯一残念なのが 1 年で終了してしまうこと。1 年目に多くの人と会っ て人間関係を築いたので、2 年目があったら色々なイベントを企画 したりなどもっと貢献することができるのにと思います」

高場ファミリー。 「アメリカは家族との時間

WAFLT(ワシントン州外国語教育会)で、

がたっぷり取れるから素晴らしいです」

外国語教授法について発表

 2 人 の 娘 の 父 親 で も あ り、「 フ ァ ザ ー リ ン グ・ ジ ャ パ ン 関 西 (fjkansai.jp) 」のメンバーとして、父と子がもっとワクワクするた めに活動中。趣味の落語では「猿山亭もん吉」の名で高座に上がる。

カミアック高校本教諭日本語担当の井上善 誉先生 (左) と

Ss 2017 05 12  

日本とアメリカ、国が変われば教育スタイルも違います。今回は日米の教育システムの内側を知る2人の先生からお話を聞きました。シアトルで受けられる日本語の教育機関もあわせてご紹介します。(10〜13ページ) 取材・文:渡辺菜穂子、小村侑子

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