平接ぎ ステンアダプター法

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FLAT GRAFTING STAINLESS NEEDLE ADAPTER METHOD

アロハミーティング2023 in 品川 令和 5 年 2 月 4 日
平接ぎ ステンアダプター法
磯谷 季志(Hideshi SHU Isogai)

自身のインスタフォロワーさん始めイベントでお会いした方々に接ぎ木のイメージを問うと、

・難しいイメージで、不安しかない。

・外科手術の跡のようで、見た目が悪く、あまりコレクションしたく無い。

・プルメリアが可哀そう

・低価格の粗悪なプルメリア苗木のイメージがする。

・テープの巻き方が難しく、失敗して台木さえも腐らせてしまった。

・成長点が動き出し、経過を見定めテープを外してみたら、奇妙な形状で定着してショックを受けた。 このように様々な意見を聞く事が出来ました。

自身は現在、苗木の救済や発根が難しいとされる品種において接ぎ木を行っています。

その方法は、10 年以上前に山ちゃんが考案した、最も美しい仕上がりの

「平接ぎ:FLAT GRAFTING」を採用しています。

一番の理由は、見た目の良さがストレス最小限で、この「平接ぎ」に魅せられました。

しかしながら、当初はテープの巻き方においてテンションのかけ方に戸惑い、安定するVカット法等と 比較すると「平接ぎ」は、着面のズレで、ぐらつきが出やすくテープを巻く時間に手間取り、その際には 苗木を抑えていて欲しいと家族にサポートをお願いするなど、当時は試行錯誤していました。

そんな折にネットで、「フランケンシュタイン」「ブラックジャック」のように、苗木の外側に直接ホッチキス止め をされた接ぎ木画像を見て、見かけの悪さよりもプルメリアのたくましさに驚き、ヒントを思いつきました。

プルメリア愛好家が、身近に美しい仕上がりの「平接ぎ」を失敗無く、気軽に仕上げられる方法として

カットした台木に、ステンレスの針(ステンレス針金を 3cmカット)を差し込み、 支針(ステンアダプター)とする至ってシンプルな技法です。

はじめに
「ステンアダプター法」
を発案し検証をしてみました。
「ステンアダプター法」 とは・・・

ステンアダプター法 (プロト①) 傾きが有り、定着の際にズレが出やすい箇所での平接ぎ 形成層の外側に 3 本のステンレス支針(消毒済)を入れ、平接ぎを行いました。(令和 4 年 7 月 10 日)

密着後、テープで処置。

経過観察後、テープを取り除く。(令和 4 年 11 月 10 日)

ステンアダプター法 (プロト②) 傾きが強く、定着の際にズレがかなり出やすい箇所での平接ぎ 形成層の内側(スポンジ部分)に 3 本の支針を入れ、平接ぎを行いました。(令和 4 年 7 月 10 日)

密着後、テープで処置。

経過観察後、テープを取り除く。(令和 4 年 11 月 10 日)

今回、テープの取り除き が早かった事と、縦へのテ ンションが不足気味の為、 若干の隙間が出来てしま いました。

ステンアダプター法 (プロト③) 穏やかな傾きで比較的ズレにくい箇所での平接ぎ

形成層の外側(2 本)および内側(2 本) 計 4 本の支針を入れ、平接ぎを行いました。(令和 4 年 7 月 10 日)

密着後、テープで処置を行わず、ステンアダプターだけで経過を観察しました。

試験的にテープ無しの状態なの で、安定の為に接ぎ木する苗は 短めとしました(5.5cm)。

テープの圧力が無い為、接ぎ 木部分の仕上りは予想が出来 ていました。その隙間からは 外側に配置したステンアダプ ターが見えています。それに 伴うダメージは現状見受けら れません。

経過観察。(令和 4 年 11 月 10 日)

ステンアダプター法 完了(令和 4 年 11 月 10 日)

プロト①~③を検証し、全て定着しました。

結果を見ると、傾きが有る箇所もステンアダプター法の効果で、ズレ無くテープが巻きやすく定着しました。

また、上部と下部が垂直に近い関係であれば、ステンアダプター法はかなりの確率で容易に定着すると考えます。 定着部分を剥がしステンアダプターの状況を確認 (令和 5 年 1 月 10 日)

ステンアダプター本体には、内部細胞(樹液等含む)での科学反応(溶解や曲がり等)は確認出来ず、自身の思惑 通りに、腐りや変色は見られませんでした。材料の支針を選ぶ際に、スチール(鉄を主成分とした合金)を使用し なかった事が、良い結果に繋がったと考えます。

結果を見ると、ステンアダプターは全ての箇所において定着しており、埋め込む場所の定義は無いと考えます。 しかし、あまり外寄りでの埋め込みは、定着後の伸縮でステンアダプターが見えてしまう可能性があるので 注意したい。またその箇所から細菌などが侵入し、腐りが誘発されると思います。

① ② ③

検証期間わずか 4 か月ですが、しっかりと固定されており、ステンアダプターを平ペンチで抜き取る際に負荷が かかり、多少曲がってしまいました。

ステンレスは、表面に酸化皮膜(保護膜)をまとった錆びにくい金属であるが、酸性やアルカリ性のものが長時間 接触していると、保護膜が形成されにくくなり錆びることがあることから、内部の樹液による影響を見届けて いきたいです。

ステンアダプター法による、デリケート(難しいとされる接ぎ木部位)

な接ぎ木箇所の実例

下部(台木 4 号鉢:実生 2 年)が短く、上部(ジャマイカファイアー)は約 3 倍以上の長さ。

従来こういった上下逆転のサイズは、テープ巻きが難しく、長さから安定感がとても悪く定着しにくいが ステンアダプター法により美しい平接ぎの仕上がりとなった。

飛行機の機内へ、手荷物でステンアダプターを用いた鉢植えを持ち込む際は、 X 線検査通過前に申告した方が良いと思います。

そして最後に・・・・

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