
Singapore white
Black Tip Research 2
⽇本で
シンガポール・ホワイトを ブラックティップに ならないように育てる研究と 咲かせるための 10 の⼼得
シンガポール・ホワイト/ブラックティップの調査 2
Singapore white Black Tip Research 2
【前回のレポートの概要】
シンガポール・ホワイトのブラックティップの特徴
・ほかのプルメリアと⽐べてとてもブラックティップになりやすい。
・いったんブラックティップになると復活が難しい。
・回復してもリセットされてその枝は花芽が付きにくくなる。
・春から初夏になりやすい。真夏でもなる。

実験した内容は、軟腐病の可能性についての確認として成⻑が早いと細胞が軟弱成⻑することが原因 で痛みやすくなっている仮説から、成⻑を遅くするのと窒素肥料を与えないという意味で肥料を与え ない⽅法でした。
シンガポール・ホワイトの原種のオブツサ種は肥料の少ない⼟地で⾃⽣しているのでしょうか? 実は原種オブツサは葉が⼩さく花も⼩さいようでブラックティップになりやすいということは無いよ うで検索してもそのことについてのことが⾒当たりません。また、シンガポール・ホワイト以外のオ ブツサ種を⾎筋とする品種はブラックティップになりにくいもののほうが多く感じています。少なくと も私が育てているメレパボウマン、ホンコン、ドワーフ・シンガポール・ピンク、ドワーフ・デシダス はむしろ滅多にブラック・ティップになることはありません。
ではなぜシンガポール・ホワイトはブラックティップになりやすいのでしょうか。
これは私の想像となりますが、多くのプルメリアは品種間の⼈⼯交配により⽣まれたハイブリットです が、それに対してシンガポール・ホワイトの場合は⾃然界でおきた突然変異により花が⼤きくなるも のが選抜されてそれをくりかえすことで⽣まれた品種でなないかと思っています。花が⼤きくなるのは 良いことですが、ブラックティップになりやすい特徴が付随して困ったオマケが付いてきてしまいま した。これは南国ではそれほど問題ではなかったのですが、⽇本のような四季がはっきりしている地 域では⼤きな問題となりました。
無肥料の実験は次の⼿順で⾏っています。
肥料を与えないのは最初の⼀年でした。無肥料にす るのは、それまでに与えていた⼟に蓄積されている 肥料を完全に使い切るためです。⼆年目はかなり薄 めた液肥で2週間に1回程度の必要最低限で肥料を 与えていました。
そして実験の結果は予想通りブラックティップにな らなくなり、それが⻑期間ならなくなったことで、
実験が成功しました。⼆年目の秋の現在、ちょうど 花が咲き始めたところです。
【今回のレポートの概要】
今回は、同時進⾏で試していたことを含めた実験結 果による考察と後半に私の経験を含めたブラック ティップになりやすいシンガポール・ホワイトを上 ⼿に育てて咲かせるための「 10 の⼼得」としてまと めます。

【考察と結論】
シンガポールはなぜ簡単にブラックティップになるのか、どうするとなりにくくなるのか。その要因 はひとつだけではありませんでした。その中でも根元とも⾔える原因は成⻑点の細胞が非常に脆(もろ) いこと。
春になりやすい原因は、寒さに弱い印象があるために家のなかでの管理が⼀般的ですが、暖かく⽇当 たりが良くないために徒⻑しやすく、なおさら細胞がひ弱になりやすいため。また、⾬に当たらない ために害⾍(主にダニ類)が付きやすく針状の尖った⼝を差し込んで吸汁するために傷から細菌が侵 ⼊してブラックティップになること。目につく害⾍が居なくても繁殖する前の段階でブラックティップ になっていると推測します。
また、急激な徒⻑の後に冷え込むなど成⻑が⽌まるとなりやすく、これも何らかの原因でとても薄い 表⽪細胞の破壊が原因と思われる。例えば表⽪膜が油のようなもので保護されていたものが成⻑が⽌ まり、供給が⽌まることで乾いてしまう。特に⾬が降った後になりやすいのは、⻑く⾬が降ると表⽪ の油が溶け出して流れ落ちてしまい、潤いを失った表⽪は⾬の後の乾燥に耐えきれず破壊してしまう。 ちなみに、表⽪の油分は乳化状態であり、油と⽔が混ざっていますが、⽔分が乾燥していると半固形状 で⽔分をはじく。しかし⻑時間の⾬が降ると⽔に溶け出し、流亡してしまいます。短い⾬では問題とな りません。むしろ害⾍予防効果がある。
これ等のパターンに共通することは成⻑点の細胞が脆いことで共通していて、枝の中間ではなく、形 成段階のため柔らかくまだ硬化する前の段階でなることから決定的な原因と判断しています。
また、プルメリア全般的にある冬場の休眠期は病原菌が付いた状態で取り込んだことで、傷が付いてい た場合になりやすく、⽔を与えすぎて根が傷んだ場合もなる場合もある。これはシンガポールホワイト 固有の症状ではないため切り離して考えますが、ちなみに根腐れでブラックティップになる場合は腐 敗菌が根から上がってきている場合が多く、症状が出たときはかなり重症化している可能性が⾼いこと も知っておくべきことです。
【対処⽅法:成⻑点の細胞を強くすることで、思い付いた「10 の⼼得」】
1,徒⻑を抑えるために強い光のもとで育てる。
2,窒素やリン酸肥料など成⻑を促進する肥料は抑える。細胞を強くするカリ肥料を与える。最初は鉢の 中や樹体内に肥料分が残るため肥料を与えないで様⼦を⾒ることも有効。
3,時には⽔を与えすぎない、または断⽔することも対策として必要になることがある。これはブラック ティップになりかけたとき軟弱徒⻑させないために⾏う⽅法。
4,害⾍や細菌に同時に効果のある農薬を使⽤するといい。ダニ類は耐性が付きやすいため同じ農薬を連 続使⽤しないように別の農薬と交互使⽤する。これらのこと改善してひとまとめにした農薬が理想的。 また風通しのよい場所に置くようにしたり⾬に当たる場所に置くことで害⾍の予防策になる。
5,徒⻑を抑える意味で根詰まりの状態が有効。必要以上に⼤きな鉢に植え替えたり、植え替え時に根鉢 の⼟を⼤きく取り除くことは徒⻑を促進するのでやらないようにする。根詰まりしている場合は肥料 制限する必要性が軽減する。
6,⽔捌けのいい⼟にして肥料が蓄積しにくくすることで肥効をコントロールしやすくする。それとこれ はシンガポールホワイトだけのことではないが⼟の中の通気性が良くなるため寒い時期の根腐れ予防 にもなる。
7, 樹⾼が⾼くなるほど徒⻑が遅くなるため⾼ 接ぎが有効。(右画像) また置場所が広く、⼤きく育てたい場合は枝 数を増やして徒⻑を抑える⽅法も対処法のひ とつ。成⻑が⽌まる場合は枝数を増やす分だ け鉢も⼤きくするか、剪定してコントロール する。
接ぎ⽊せずに⼩さな苗の状態で肥料の制限を した場合は成⻑が遅くなるために開花までに は⻑い年⽉が必要となるため、樹⾼が 1 メー トルを超えた台⽊に接ぎ⽊すると良い。⼤き な株はそれだけ咲かせる⼒が強い。

⼤きく育った台⽊に⾼いとこ ろで接ぎ⽊することで成⻑が 穏やかになる。また、花芽も 付きやすくなる傾向がある。

肥料が抜けるにつれて成⻑が 遅くなっているのが、葉痕が 狭くなっていることでわかり ます。

8,初夏に⾼温で急激な徒⻑を抑える意味で、室内管理で⾼温にさらすくらいなら屋外に早く移動した⽅ が予防効果がある。芽吹く前から⾼温をなるべく避ける。
9,急激な冷え込みを避けるのは難しいが、その⼿前の上記の項目の予防策が効果的。
10,春の急成⻑を抑えるひとつの⽅法として、落葉させないことも有効。これは難しいことかもしれ ないが葉が茂っていることが急激な徒⻑を抑えている。南国ではブラックティップに滅多にならないこ とが不思議に感じるが、落葉しないことが⼤きいと思います。
以上、シンガポール・ホワイトのブラックティップにさせないで咲かせるための研究レポートでした。
本⽂の無断転載及び複製・改変などの⼆次利⽤は禁⽌です。
2024 年 11 ⽉ Plumeria University Member ID:196 ⼭⼝