スタートアップ講座教材

これから社会人となり、 先生として働くみなさんへ

2022 年２月 1４日 相模女子大学 教職センター 『

社会人としての常識ある行動が求められます

』

学校には、学校文化の中で生まれたルールがあります。しかし、学校といえ ども、社会組織の一部であり、まず「良識ある社会人」であることが第一に求 められることを意識してください。 そのうえでここでは、学校という組織のルールと思われるものをとりあげて 具体的に記述しました。新任の先生は「学校にはこんなルールがあるのか。」 と考えながら読んでもらい、学校を理解する手がかりとなれば、幸いです。

目次

１

あいさつ

２

服装

３

先生の「はきもの」

４

話し言葉

５

勤務校への通勤方法や地域を

６

勤務校の習慣を早く覚えよう

知ろう ７

職員室の机上は整理整頓

８

コピー機等の使用ルール

９

会議は大切に

１０

校内をすすんで見てまわろう

１１ クラスは意識的に組織しよう

１２

黄金の三日間

１３ わかりやすく話しをしよう

１４

話のスピード、声の大きさ

１５ 児童生徒との約束は守る

１６

授業中に挽回させよう

１７ 間違いは誠意をもって訂正す

１８

先生と児童生徒は友だちでは ない

１９ 学校は社会教育の場でもあり ます

２０

授業参観日の対策

２１ 研究会には身銭を切る気持ち で、学び続ける教師を！！

２２

掲示から誤字をなくそう

２４

退勤時刻

２５ 校内の飲酒・喫煙

２６

学年初めに多い提出書類

２７ 休暇・欠勤

２８

日直の仕事

２９ 週案の書き方

３０

年間指導計画

３１ 守秘義務

３２

出張のルール

３３ 児童生徒を残留させるとき

３４

体罰は絶対禁止

る

２３ 出勤時刻

３５ わからなくて当然、職場では

1

１

あいさつ あいさつは、人間関係づくりの第一歩です。あいさつには『4か条』があると

言われて、次の頭文字の「あ」「い」「さ」「つ」で始まります。 「あ」：「明るく温かい」は、周りの人に安心感や信頼感を与えます。その ことが、協調性の向上や人間関係の構築にもつながり、物事がス ムーズに進みます。 「い」：「いつでも、誰にでも」は、わたしたちはつい、知っている人だけ にあいさつをしがちですが、思いがけないつながりを持つために も、いつでも、誰にでも、積極的にあいさつをしておきたいもの です。学校には、知らない様々なお客様が来校されます。 「さ」：「先に、すすんで」は、人より先に行うことが大切とされていま す。先にあいさつをするということは、相手よりも早く好意を示 すことです。それが、相手の好意を引き出すことにつながりま す。 ですから、学校では、児童生徒から声がかかるのを待つのではな く、教師自らが進んで明るく声をかけることが大切です。 「つ」：「続けて、次の言葉を」は、一つは、「挨拶という行為を続ける」 ということです。 もう一つは、「あいさつに次の言葉を加える」です。「次の言 葉」とは、相手との会話を続けるための言葉です。「おはよう、 今日は暑いね～」として、相手とのコミュニケーションをより活 発にします。 このようにして、毎日会うのが楽しみになるような先生が理想です。慣れる まで、毎日意識してみましょう。

２

服装 それぞれの仕事には、適した服装があります。乗客の命を預かる交通機関の

運転士は乗客に制服で安心感を与えています。一般企業の新入社員には、「相 手を不快にさせず、清潔感を意識したコーディネート」が必要と言われていま す。教師も同様です。授業という職務の重要さを子どもにもよくわかるよう 2

に、服装で表します。まさにTPOを大切にする必要があります。授業には、男性 はスーツで臨みます。色は地味な色がよいでしょう。またネクタイを着用しま す。女性も落ちついた色のスーツで、膝下の長さのスカート、またはスラック スです。小学校の体育の授業には、授業前の休憩時間にジャージーに着替えま す。シャツの裾はジャージーの中に入れます。児童生徒の範となる振る舞いが できないと、相手の心の中に「信頼や尊敬の心」は育ちません。 思春期の児童生徒は敏感です。肌が多く見える短いシャツ、下着が透けて見 える素材のブラウスやミニスカートも避けるべきです。 男女とも髪、爪を清潔に、化粧も清潔第一にします。 「個人の生活」と「学校での仕事」は、意識をしてしっかりけじめをつけま しょう。

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先生の「はきもの」 教師の履き物も重要です。教師は、学校で非常緊急事態(火災、地震、津波、

不審者侵入等)が発生したとき、教室から児童生徒全員を避難させる大きな責任 があります。火災・地震・津波・不審者侵入等の時はすぐに、対応しなければ なりません。 割れたガラスの上を歩くかもしれません。走ることもあるかもしれません。 ですから、スリッパや脱げやすい靴では、児童生徒を守る行動がとれないばか りか、教師自身にも危険が及ぶのです。もちろん、かかとを踏みつぶして履い ているのも論外です。非常事態に備えて、軽くて丈夫で、紐で結んで脱げにく い上靴（スポーツシューズなど)を、教師は常に履いていましょう。

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話し言葉 職員室や保護者、地域の方々には「言葉の気配り」が必要です。常に相手に

敬意を表して、敬語をしっかりと使えるようにしましょう。 そして、わからないことは、しっかりと教わることが大切です。次のような ことはないかな？ 3

（1）聞いたときはわかったつもりだったが、あとで考えるとわかっていなか った。 （2）理解できなかったが、あとで調べればわかるだろうと思い、その場では わかったと返事をしておいた。 （3）前に同じことを教わっていたので、もう一度尋ねるのが申し訳なく感じ られ、わかったふりをしたけれども本当はわかっていなかった。 （4）相手から「そんなこともわからないのか」といわれたくなくて、わかっ たふりをする。

5 勤務校への通勤方法や地域を知ろう 勤務校が決まったら、通勤の方法を確認しましょう。公共交通機関を使って 通うことが原則です。学校に慣れるまでは通勤途中の事故も起こしやすいもの です。自身の安全対策にも十分配慮しましょう。 また、あわせて学区の様子や特徴も調べてみましょう。学区域は市や区のホ ームベージで調べることができます。 学区域が住宅街か、田畑の多い地区か、 工場が近くにあるのかなどをよく調べて、児童生徒理解の基礎とします。 交通 量の多い道や、人通りの少ない道を知ることも安全対策に役立ちます。 また、校歌は学校行事で必ず歌うので、勤務校が決まったらすぐに覚えまし ょう。新しい先生がしっかり歌っている姿は、児童生徒からの信頼を呼びま す。

6 勤務校の習慣を早く覚えよう 学校ごとに、長い歴史や伝統の中で培われたルールがあります。学校生活の きまりごとも、学校ごとにずいぶん違います。先輩教師から、勤務校の特色等 をお聞きし早く慣れましょう。 4月1日は、「辞令」をもらう大切な日です。事前に配られている指示に従い ます。その後、出勤したら副校長 (教頭) 先生にあいさつをして所定の場所で 待機をします。その後、その日の予定や着任教職員向けにオリエンテーション

4

があります。正門の開け方、校舎への入り方、出勤の手続き、 出勤札の有無、 上履きと下履きの区別、ロッカーと職員室の鍵の置き場所、校務用パソコンの 運用方法、ゴミの区別、印刷室での紙の使用法等を教えてもらいます。 4月の最初の職員会議で、年間計画等の重要資料が一挙に示されます。一枚ず つ丁寧に読んで理解しましょう。とにかく４月は挨拶をする場面が多くありま す。教職員向け、児童生徒向け、PTA向け、クラス向け、担当教科のクラス向け など、相手の印象に残るよう工夫しておきましょう。

7 職員室の机上は整頓第一 教師は職員室でも教室でも、自分の所持品を常に整理・整頓しておきます。 必要な書類はすぐに使えるようにしておくことが、重要な仕事になります。ま た、コンピュータ業務が増える中ですが、児童の個人情報の取扱いには、最新 の注意が必要です。データの持ち出しは、自治体の規定以外の方法では持ち出 せません。たとえ教員間でも情報のやり取りには最新の注意が必要です。 日常的な書類の整理・整頓が大切です。児童生徒の提出物は「お預かり品」 です。確実に返却をします。 そして、毎目の退勤時には、机の上に書類、文房具等を放置せず、書類は提 出期日などを確認して、必ず全部、机の中にしまいます。学校全体で役目を決 めて運営する行事の書類は、行事ごとにクリアファイルなどに入れて見出しが 見えるようにしておき、自分の分担を常に確認しておきます。書類を使った ら、戻すときに前と同じ場所に戻します。 机の中、机上の棚は場所を決めて書類、文房具を置き、時々確認します。教 室の書棚には、教室で使用するものだけに限定して入れて置きます。児童生徒 が学習するときに、気が散るようなコーナーを作ってはいけません。

8 コピー機等の使用ルール 共有物は、大切に使用しましょう。あなたの後を待っている人がいないか、 周りへの配慮が必要です。コピー機使用後は、リセットボタンを押しておくこ とも大切です。学校によっては10枚以上のコピーには、紙単価の安い印刷機を 5

使うルールもあります。また、印刷室も整理整頓、清掃が大切です。誰かに任 せるのでなく、気の付いたあなたができることが大切です。 放送機器を使うときは、注意が必要です。流す範囲と音量に注意しましょ う。周辺の住宅にも聞こえていることを意識しましょう。また「一斉」 は非常 通報用ですから、火災、避難の告知だけに使い、一般の放送に使ってはいけま せん。児童生徒の呼び出し等、安易に放送を使用してはいけません。 放送室の出入りには厳格なルールを作ります。放送室の鍵の保管は面倒でも 教員が全責任を持ち、児童生徒が鍵を持ち歩かないように、ルールを決めてお きましょう。

9 会議中の私語 学校には、職員会議・校内研修全体会のように全教員職員が参加する会議 や、学年会・教科部会のように少人数に分かれて行う会議があります。どんな に忙しくても自分が出る会議には、遅刻せずに出席しましょう。 会議中にテストの丸つけなどの内職をする人、きまって居眠りする人、会議に 必ず遅刻する人がいます。 こういう先輩を見習ってはいけません。多くの先生 はこれらの人たちをよく知っていて、信用していません。 会議中は、発表される話の内容を黙ってよく聞き、必要な事柄をメモしま す。わからないことがあったら印をつけておき、会議の後で先輩の先生に聞き ます。自分の仕事分担があったら、蛍光ペンなどで印をつけて目立たせておく ことも良いと思います。

10 校内をすすんで見てまわろう 学校ではなるべく職員室を出て、校内を見てまわりましょう。それぞれの時 間帯で、学校の様子が変わって見えます。全体構造、危険箇所の有無、屋上へ の通路と屋上の形状、特別教室の位置、連絡通路の位置、各種用具の置き場、 体育館の構造、学校敷地内の危険物設置場所、防災備蓄庫、トイレの設置場所 などを見てまわりましょう。これらを見ておくと、来賓、保護者、迷っている

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児童生徒などに、すぐに対応できます。 また地震、 火災、津波等の非常事態にも対応できます。 放課後に児童生徒 が危険な場所で遊んでいることがあります。発見したときには、すぐに声をか けてやめさせます。 教室やトイレで体調の悪い児童生徒や様子のおかしい児童生徒がいたら、養 護教論や関係の先生に連絡します。トイレのドアの壊れ、たばこの吸殻が見つ かったら職員室に戻って、担当の先生に連絡します。 「けんか」や「いじめ」を発見したら、副校長（教頭）や他の教職員に連絡 をとり、応援を求めます。一人で無理をせず、学校全体での組織対応で丁寧な 初期対応をして、早期解決を図る必要があります。

11 クラスは意識的に組織しよう 担任が発表されてから始業式までの数日で、学級の基本的な組織作りをしま す。要点は次の通りです。チェックしながら仕事を進めましょう。 □ 教室内を整頓する。環境整備 □ クラスの児童生徒名簿を作成し、読み間違えないようにふりがなをつけ、読 む練習をくり返しておく。 □ 掃除・当番などの分担・仕事表、日直の分担・仕事表、朝の会・帰りの会の 進行表を作って掲示する。 □ 座席・靴箱・ロッカー等の場所を決め、使用者名等をシールで明示してお く。（学校のルールに従う） 準備は大変ですが、一年間の順調なクラス経営のためにがんばりましょう。 児童生徒の名前を読み違えると児童生徒が教師に不信感を持つだけでなく 、 その児童生徒が周囲の児童生徒からいじめを受ける原因にもなります。

12. 「黄金の三日間」 始業式から三日間は 「黄金の三日間」と言われ、一年間のクラス経営の基礎 を固める大事な期間です。

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始業式の日 (第1日目)はあまり時間がありません。しかし、最初の出会いは とても重要ですので、落ち着いたスタートが切れるよう準備をしましょう。教 科書を始め、たくさんの配布物や回収物があるので、配布物一覧表を作ってお きましょう。二日目、三日目に何をどのように取り組ませるか、先輩のアドバ イスを受けならが、進めましょう。時間があればレクなどを取り入れても良い かもしれません。

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わかりやすく話をしよう

教師が話す言業は、易しい語句を使って、簡潔に話すことです。長い話は、 伝える内容が多岐にわたり、児童生徒はかえって混乱します。教師の説明、話 は短いほど、児童生徒に通じます。 自分の話し言葉を、改善するためには、自分の授業を録画して見ることも1つ の手立てです。この作業をしてみると、自分の話し方のくせ(間の取り方、語尾 の調子、くり返し、主語と述語の転倒、意味のない接続詞など)がわかるばかり でなく、無駄な言葉をたくさんしゃべっていることがわかります。

14 話のスピード、声の大きさ 授業で話す教師のスピードは、児童生徒の反応をみながらゆっくり話しま す。声の大きさは、学級の人数に合わせて調節しましょう。聞き取りやすい話 し方は、声の大きさだけでなく発音 、顔の向き、表情、立ち位置も重要です。 15 児童生徒との約束は守る 児童生徒との約束は、必ず守らなければいけません。児童生徒との約束は、 教師がいったん口にしたら職務上の責任が生じたと考えましょう。児童生徒は 先生を信頼しています。その教師が、約束を忘れたり、破ったり、ごまかした りすれば、児童生徒は心の中で疑います。この場合教師も間違ったときは児童 生徒に素直に謝りましょう。優しい子どもたちは、きっと勇気あるあなたを許 してくれます。 8

16 授業中に挽回させよう 小学校高学年から中学生くらいの年齢になると、授業中の間違いをひどく気 にする児童生徒が増えます。そのため、授業中に間違った答えを言ってしまっ た児童生徒は自信をなくします。児童生徒が答えを間違えた場合、時間があれ ば、その時間のうちに「名誉挽回」できるよう別な課題を与えることも自信を 取り戻すきっかけとなります。

17

間違いは、誠意をもって訂正する 一日に数時間も授業すると、多くの話をします。板書もします。話をしてい

るとき、板書をしているときに、白分の話の内容の間違いに気がつくことは、 まずありません。ところが、帰宅の道を一人で歩いているときなどに、間違い にふと気がつくものです。 間違い、勘違いはだれにもありますが、訂正の仕方が大事です。間違いに気 がついたら必ず誠意をもって訂正します。気がついたのが二日後でも、一週間 後でもかまいません。同じ教科の授業の最初に「この前の時間の訂正がありま す」と、誠意をもって言います。そして、ゆっくりと教科書、ノート等の訂正 箇所を確認させてから、訂正の文章や語句を元の文章の脇に記入させます。児 童生徒全員が記入し終わるのをゆっくり待ちます。15でも触れましたが、誠実 に謝罪をすることです。児童生徒は、あなたの「ごまかさない姿勢」をみて、 あなたと同じように育っていくのです。

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先生と児童生徒は友だちではない 学園ドラマを見て教師を志した人は多いでしょう。学園ドラマには、児童生

徒の側から見た教師の理想像が描かれています。「わたしは (学校側の人間で はなく) 君たちの味方だ」 というセリフがその象徴です。 では、学園ドラマのような理想の教師は、実在するのでしょうか。答は「実 在しません」です。その理由は、ドラマは１時間で問題が解決しますが、実際 には問題は解決しないばかりか、複雑化します。 9

教師は、あくまでも「大人」であり「児童生徒を良い方向に導く指導者」で す。時に毅然として「ダメなものは、ダメ」と言わなければならないのです。

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学校は社会教育の場でもあります 学校は、社会の教育機関として「社会のルール」を、学ぶ場でもあります。

集団生活や様々な体験を通して児童生徒に「社会のルール」を身につけさせる 場所です。 そのため、児童生徒には、社会生活を意識して考えさせる教育が大切です。 また、高学年になってより社会性を厳しく身に付ける必要があるときは、 「社会で許されないことは、学校でも許されない」として、非違行為等につい ては、関係機関と連携を図りながら、児童生徒の健全育成に努める必要があり ます。

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授業参観日の対策 授業参観は、 保護者の信頼を獲得する最大のチャンスです。 保護者は、子

どもから聞いている先生の話をもとに、担任の先生が自分の子どもにどうかか わっているのかを、観察しています。一方、児童生徒は多くの親の前で、恥を かきたくないと緊張しています。授業計画を入念に立てて、一人ひとりの児童 生徒の活躍する姿を観てもらえるように努めましょう。なぜなら、多くの親の 望みは、まずわが子の活躍する姿を見たいのです。そしてクラス全ての児童生 徒が安心して過ごし、元気に、楽しく発表できる授業をみたいと思っているか らです。 □ 年間計画が多様な教科の授業参観になっているか。 (同じ教科だけに偏って いないか) □ クラス全員の児童生徒が発言し、板書活動ができる、ゆとりある授業計画に なっているか。 □ 教材教具を忘れた児童生徒のために、予備の準備ができているか。 □ 机、いす、電灯、掲示物、カーテン等の教室環境が整っているか。 □ 教師の服装がフォーマルなものになっているか。 10

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研究には身銭を切る気持ちで、学び続ける教師を！！ 学校で開く研修会だけで教員研修は十分だ、教科書会社の『指導書』を読む

だけで授業ができると考えるのは間違いです。授業で先生はたくさんの言葉を 使って話をしますから、先生の人格、教養、実力が丸ごと児童生徒の眼に映り ます。大学までの勉強ではとても足りません。毎日研究を続けて、十年でやっ と一人前です。研究とは教科書会社の『指導書』を読むことではなく、教育研 究会に熱心に参加したり、読書をしたりすることです。

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掲示から誤字をなくそう ひらがな、 カタカナ、 漢字の正しい書き方を教えることは、学校の最も基

礎的な指導です。授業中に正しい筆順、正確な字形(門構えなど)で板書しまし ょう。翌日に板書する予定の文字を調べ、辞書、インターネット等で筆順を確 認する習慣をつけましょう。児童生徒一人ひとりがノートに正しい字形と筆順 で文字を書いているか、 机間指導で常に注意し指摘しましょう。一年中、多く の児童生徒、保護者、外来の人々が目にする掲示物に誤字、誤記がないか、学 級通信に誤字、脱字がないか、細心の注意を払いましょう。 23

出勤時刻 出勤時刻は学校ごとに異なります。それを決めるのは学校長です、多くは午

前８時１５分です。初任の時は７時３０分前には学校に到着するのがよいでし ょう。副校長（教頭）は一番早く出勤して、校内を見回り、廊下の窓を開け、 各教室の様子(水漏れ・破損等)を確かめています。他の教員は出勤したら、ま ず私物を更衣室に置き、教科書や教材研究ノート、プリント、児童生徒への返 却物等を持って教室に行きます。 教室に着いたらまず窓を開けます。次に机、いす、掲示物を整え、授業の練 習(板書・発問・指示・声のかけ方等)、理科の実験・観察の準備等をします。 準備が終わったら、職員室に戻り、机の周囲を整頓します。朝早くの時間帯は 副校長（教頭）、教務主任は時間にゆとりがあり、入目も少ないので、困って いることを相談するのに最適です。朝の１時間は、放課後の２時間分の価値が あります。 11

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退勤時刻 小中学校の退勤時刻は学校長が決めます。学校ごとに違いますが、午後4時

30分～午後5時がふつうです。小学生の下校時刻は４時前後、中学校では部活 動が６時～７時までなので、小中学校教師にとって5時以後は無給の自己研 修、ボランティアの時間です。退勤時刻以後の仕事の量と質は、日中の勤務時 間内の仕事の進め方で決まります。 先輩教師の日常をよく観察し、日々の仕事や雑用は能率よく済ませましょ う。退勤時間が遅いと就寝時間の遅れとなり、生活のリズムが崩れます。 しかし、必要な事務処理や児童生徒指導が終わらないのに帰宅するのは、直 接同僚に迷惑がかかります。

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校内の喫煙、飲酒

校内での喫煙、飲酒は地方公務員法に触れるために、厳禁です。勤務時間内 はもちろんのこと、時間外でも校内での喫煙、飲酒は厳禁です。宿泊行事で校 外に出た時は、夜も不測の事態に備えて禁止されています。 保健体育の授業では、たばこの害を指導します。「受動喫煙は肺がん・心疾 患の原因になる」と教える教師が喫煙者では、児童生徒に対して説得力があり ません。 「校内禁煙」とは、学校の敷地全体の中で禁煙ということです。正門付近、 最寄り駅、学区域内でも児童生徒の目があるので、やはり禁煙です。喫煙の習 慣がある人は、教師になると決めた瞬間から、たばこをやめるのが最善です。 4月は会合が多く、飲酒の機会が多いので、交通事故、セクハラ事件などが 多発します。とくに飲酒による交通事故は、懲戒免職等の厳しい処分の対象に なります。教師になったらまず第一に、禁煙と節度ある飲酒を覚悟しましょ う。

26 学年初めに多い提出書類 学校では授業のほかに、提出書類を書く仕事がたくさんあります。職員会議 の提案、校務分掌、各省庁からの調査・アンケート等です。これらは提出期限 12

が決められていて、しかもその日時が切迫しているものが多いものです。この 期限を守らないと、他の教職員に多大な迷惑がかかります。 提出書類につい ては、まず提出期限を確認しましょう。 書類の提出は、期限の３日前に必ず済ませます。このためにはふだんからの 準備が大切です。準備としては、提出書類の書類名、提出期日、提出先の一覧 表等を作り、見やすい場所に貼っておきます。提出した書類名は線を引いて消 します。こうすると、仕事の進み方が一目でわかります。 ほとんどの書類がはじめて見るものです、提出書類の書き方がわからないと きは、副校長（教頭）、教務主任、事務や周囲の先輩に質問すると、すぐに教 えてくれます。

27 休暇・欠動 年次有給休暇 (年休)は初任時、年間20日程度あります。(地方公共団体によ って異なる) 一日を８時間で計算し、時間単位でもとることもできる市町村も あります。 一般に年休は、決まった時点で速やかに管理職に申し出て、承認を得ておく 必要があります。そうすれば管理職は事前に校内の体制を整えておくことがで きます。無断の欠席は「欠勤」となります。そして、懲戒処分の対象となりま す。 また、急な病気やけがの場合、 当日の朝、勤務時間前に電話で管理職に年 休を申請します。その場合自分が担当する授業が自習となるため、その内容を 電話等で同学年の先生に伝えましょう。後日、補欠をお願いしたら、お礼を言 うことも礼儀の１つです。このような理由から、日頃の体調の管理、健康維持 に十分に心がける必要があります。

28 日直の仕事 日直は、全教員の輸番です。夏・冬・春の長期休暇中に朝、校舎の鍵を開 け、退勤時刻に施錠をし、日中に校舎内外を巡回します。勤務中の待機場所は 職員室です。一日中、電話を受け、来客・業者の応対や、学割の発行、転出入 13

の事務処理も行います。 退勤時刻になると、日誌を書いて押印し、副校長（教頭）に提出します。日 直の仕事内容は学校の事情によって様々ですから、周囲の先生に積極的にお聞 きして、理解しましょう。

29 週案の書き方 週案を書く目的は、一週間の授業を効率的に進めるためです。前の週の金曜 日に、次週の指導計画(週案)を校長に必ず提出します。一か月くらい先までの 週案をつくっておくと、授業全体を見通すことができ、余裕をもって授業の準 備をすることができます。 週案の作り方としては、次のように進めます。 ① 行事予定を一年分書き入れます。 ② 一か月間で行事と重なる教科を時間表で確認し、実施予定授業時数が年間 予定時数を下回らないように時間表全体を修正します。 ③ 教科名の下に年間指導計画にそって単元名を記入します。 ④ 単元全体を見通して教材研究ができるように、その単元の一時間目から最 後の時間までの指導計画を一度に書き込みます。教科ごとに書く日をずらせ ば、時間に余裕をもって教材研究ができます。 ⑤ 「本時」が単元の何時間目になるかは大切な目印になるので、本時の時数と ともに「2/6」のように書きます。 ⑤ 単元名の下には「授業のねらい」を一文で書きます。 ⑦ 「主な指導内容」は2～3語のキーワードで書きます。使用する教材は、自分 の決めたマークで記入します。 ⑧ 授業後には、授業がうまくいったかどうかを、◎○△の簡単な記号で記録し ます。 ⑨ 予定通りできず、次時に補足する内容は赤線で囲みます。指導内容の中で、 うまくいかなかった事項に波線を引き、その反省を次時に生かします。

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例

小学六年生担任の週案の一部

時

1

2

3

国 語

理 科

体 育

宇宙時代を生きる ２/５_

３日

体のつくりとはたらき ２/１１

ハー ドル走

１/５

○インターバル決定

○宇宙という視点を読 ○心臓が押し出す血液量 ①リズム跳び み取る。

を体感する。

②2台ハードル足挙げ

(火) ①音読、ノートに書く ①ペットボトルで実験。 ③課題練習 くく。 ②交流し、深める。

②結果と考察。

算 数

社 会

4

分数のかけ算 ４/９

大陸に学んだ国づくり

日

○帯分数の乗法計算法

(水)

２/6 ○聖武天皇の業績

国語 宇宙時代を生きる3/5 ○自分の主張をはっき り

30 年間指導計画 年間指導計画は一年間で指導する教科書の単元、教材を配列した計画書で す。その内容は各単元の配当時数、指導内容、評価規準が一覧でわかるように なっています。 教科指導は、年間指導計画によってカリキュラム(教育課程) が決められてい ます。自分の思いつきや興味関心に任せて、自分勝手に教科指導をしてはいけ ません。常に年間指導計画で授業の時数や進度を確認し、適切な速さで授業を 進めていくことが大事です。そのためには学年の先生と教科指導のコツをたず ねたり、進度の情報交換を行ったりしながら、遅れないように意識して、授業 を進めましょう。新任は進度が遅くなる場合があるので、常にチェックしまし ょう。

15

31

守秘義務

地方公務員法第34条にある守秘義務は、公立小中学校の教師にも課せられて います。児童生徒の家庭の事情、成績、健康状態などは個人名を挙げて話すこ とはできません。 違反すると懲戒処分の対象になります。 職員室で児童生徒の悪口をしゃべっている先輩の先生を見かけることがあり ます。「片親だから」 「○○住宅に住んでいる」 「○○地域に住んでいる」 などという言葉はすべて差別語です。 こういう先輩を見習ってはいけませ ん。 個人名の入ったペーパーテスト、同ノート、同プリントなどは散逸しないよ うに、保存に留意します。通知表、指導要録、成績一覧表は学校のパソコンで 処理し、 データを入力したUSBメモリーは学校の鍵のかかる場所に入れ、家庭 には絶対に持ち帰ってはいけません。データの紛失は学校ばかりでなく、その 保護者・地域からの信頼を失います。USBメモリーの使用が禁止されている学 校（自治体）が多くあります。

32 出張のルール 出張(出張費が支給されるもの)には、次の三種があります。 ① 行く義務がある悉皆(しっかい)研修(初任者研修など)。 ② 学校代表としての出張(図書館主任会など)。 ③ 希望して出る出張(承認研修。教科の専門性を高めるために希望して出る出 張)。出張旅費の予算は限られているので、旅費の必要な出張には校長の許 可が必要です。 事前準備としては、副校長（教頭）への確認、出張命令簿(事務に依頼する学 校もある)、補習授業の計画等の作成があります。 これらを袒当者、教務主任に相談し、出張日の前の週までに作成します。同 時に、児童生徒が一時間かけて自習する学習教材を準備します。連絡帳、下校 指導書類、連絡書類などをまとめて、伝言をつけて、当日、補習（補欠）授業 に入る教員に渡しておきます。 出張(業務)が済んだ時点で、即、学校に電話報告します。そして翌日、お世 話になった先生方に会って、お礼を言います。 16

33 児童生徒を居残りさせるとき 特別に指導する必要から、児童生徒を居残りさせる処置を「残留」と言いま す。児童生徒を「残留」させる時には、次の2つの手続きが必要です。 ① 管理職または学年主任の許可を得ること。 ② 家庭に事情を説明して了解を得ること。 ③ その他、不安を与えない環境づくりに留意すること。 残留させた児童生徒には、残留を命じた教師が常に付き添い、必要最小限の 指導を行って、遅くとも退勤時刻前に帰宅させます。自宅までの道に不安があ れば、教師が一緒に下校します。複数の児童生徒に「残留」させて作業させる には、事故によるケガをさせないために細心の注意が必要です。児童生徒は数 人集まると落ち着きなくふざけたりするのがふつうですから、教師は作業の配 分に目配りをして、遊ぶ児童生徒がいないようにします。必要最小限の作業が 済んだら、全員そろっているのを確認してから、グループをつくって帰宅させ ます。

34 体罰の禁止 体罰は学校教育法第十一条で禁止されています。体罰とは次の行為を指しま す。 ① 児童生徒に対する暴力行為(殴る、たたく、ける、倒す等) ② 身体的、 精神的に苦痛を与える行為 (正座させる、教室内で一時間中起立 させる、手を縛る等) ② 教育を受ける権利を奪う行為 (廊下、教室等で黒板を背にして立たせる等) 体罰を児童生徒に与えると、児童生徒の精神的、肉体的苦痛はもちろん、保 護者や社会に与える影響は大きく、体罰を与えた教師は懲戒処分の対象とな り、さらに暴行罪などの刑事罰、損害賠償の民事罰の起訴の対象になります。 体罰に頼らなければ指導、教育ができない人は、指導能力・指導技術が未熟 だと認定されてしまいます。ですから、教師は自分の話し方や児童生徒への接 し方に欠点がないか、教師同士で話し合って常に研修や研究を重ねることが必 要です。児童生徒への暴言も精神的苦痛をあたえれば体罰にあたります。 日頃から、言葉遣いは相手への思いやりを込めて丁寧にしましょう。 17

35 わからなくて当然、だから職場では・・・ 「４ 話し言葉」でも触れましたが、ここまで学んできて「よーし、わかっ た」といえる人は危険です。ここで書かせていただいた内容は、学校で何十年 も経験をした先生方が沢山の思いをもって書いたものです。ですから、ものに よっては、本来大変だったり、辛かったりした経験をもって知るべきものあり ます。知識は、所詮知識です。 学校現場では、いつも「謙虚」で先輩教師に確認をしながら、経験を通して 学び続けて下さい。 ①

「わからないこと」は、すぐにお聞きしましょう。

②

己の未熟さを知りながらも、児童生徒は日々あなたを頼りに過ごしてい ます。児童生徒への愛情は、誰よりも深く！

③

悩んでいるのは、あなただけではありません。どんなに自信を持ってい るようにみえる先生も、実は悩みながら過ごしているものです。辛いこと があったら、誰かに話を聞いてもらいましょう。

④

「何か、お手伝いしましょうか」が言えたらば、更に素晴らしい。 先輩教員、学年主任が忙しそうにしていたら、是非声をかけてみて下さ い。自分が困っている時に助けてくれる人は、とてもいい人に見えます。 相手は、あなたに好印象です。

⑤

「誠実」「謙虚」は、あなたを生涯支えてくれる言葉です。是非、日々 この言葉を忘れずに、誰からも愛される「素敵な先生」でいて下さい。

令和４年２月１４改訂

参考文献 帝京平成大学編「新任先生のための学校ルール早わかり４０」 18