フレキシブル・オフィス


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エグゼクティブ・サマリー
名古屋中心部のフレキシブル・オフィス市場1は、ハイブリッド・ワーク2の普及によって 拡大している(図1)。コロナ禍前に比べて、名古屋でもオフィスワーカーの働き方は多様 化しており、テレワーク実施率は上昇している。仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バ ランス)と生産性向上を図るため、より柔軟なワークスペースへのニーズが成長を後押し している。
需要は多岐にわたり、中小企業やスタートアップ企業の本社設立から、大企業の支社、サ テライト・オフィス、プロジェクト・スペースと幅広い。これらのトレンドを背景にフレ キシブル・オフィス事業者は、名古屋中心部で新拠点を積極的に開設している。
2024年第4四半期時点での市場規模は総貸床面積が20,623㎡に達し、昨年末に比べて19%成 長しており、大阪中心部の13%、東京都心5区の2%成長を大幅に上回る。
コワーキング・オフィス事業者であるウィーワークが2024年にJRセントラルタワーズに中
京圏の旗艦店を開設したことで、コミュニティ重視型のシェアオフィスが完全個室型の サービス・オフィスに迫る規模となりつつある。
1フレキシブル・オフィスはサービス・オフィス(完全個室が主となるシェアオフィス)とコワーキング・オフィス(ラウンジなど 共有スペースが豊富に設けられているコラボレーション重視のシェアオフィス)から構成される
2ハイブリッド・ワークは出社とリモートワークの双方を利用する働き方と定義する

図1
三大都市圏のフレキシブル・オフィス市場の比較 (2024年第4四半期時点)
出所: JLL、オックスフォード・エコノミクス、内閣府、総務省
3名古屋中心部は中区、東区、中村区、西区
4大阪中心部は北区、中央区、浪速区、西区、淀川区
5東京都5区は千代田区、東京都心5区は千代田区、港区、中央区、渋谷区、新宿区


名古屋中心部のフレキシブル・オフィス市場は急速 な成長を遂げている。2024年第4四半期時点での総 貸床面積は20,623㎡と、コロナ禍前の2019年末水準 から倍増している(図2)。大阪中心部と比較する と、名古屋の市場参入は遅く事業者の進出は少ない。
しかし、近年、名古屋グレードAオフィス市場の空 室率がひっ迫し、柔軟な条件で利用できるワークス ペースの需要が増加することで、フレキシブルな働 き方の普及が市場拡大を後押ししている。
名古屋中心部のフレキシブル・オフィス市場の推移 図2 (総貸床面積(㎡)、2024年第4半期時点)
激化する 事業者間競争
2005年以降、名古屋中心部のフレキシブル・オフィ ス市場は、企業のより柔軟なワークスペース需要の 増加に応じて拡大している。当初、サービス・オ フィス事業者のリージャスとサーブコープが先行し て事業を展開。その後、2019 年にコワーキング事業 者のウィーワーク、2020年に東京建物が自社ブラン ドで展開するエキスパート・オフィス、2021年に三
図3

井不動産が運営するワークスタイリングが新規参入 している。
2024年第3四半期時点での同市場は、総貸床面積の 半分以上をサービス・オフィスのオペレーターであ るリージャスが占めている。しかし、この状況はコ ワーキング事業者にとって大きな参入余地が残され ていることを示唆している(図3)。
主要フレキシブル・オフィス事業者
(総貸床面積(㎡)、拠点数、2024年第4四半期時点)

出所:JLLにより各拠点の面積を算出 ※リージャスはスペーシズとオープンオフィスを含む
大企業利用の普及
これまでフレキシブル・オフィスは、スタート アップ企業や個人事業主が利用の大半であったが、 名古屋中心部におけるフレキシブル・オフィスで は大企業の利用が普及していることも特徴がみら れる。特にコロナ禍以降は大企業を中心に働き方 が多様化しており、サードプレイスとなるサテラ イト・オフィス6だけではなく、支店や支社とし ての利用も増加している。さらにプロジェクト・ スペースとしての利用も見られるようになってお り、大企業のニーズに合わせた柔軟な活用が進ん でいる。
また利用場所の多様化も進んでおり、名古屋中心 部や勤務先近くに限らず、自宅近くのサテライ ト・オフィスで働くオフィスワーカーも増加して いる。同時に、出張や外出先のワークスペースと しての需要も高まっており、これら多様なニーズ に応えることで、名古屋中心部のフレキシブル・ オフィス市場は拡大している。
6 サテライト・オフィスとは従業員の生産性を向上するために使用 できる本社以外の事務所とする




中京圏における
柔軟な働き方の定着
国土交通省が2024年3月に公表した「テレワーク人口実態調査」 によれば、中京圏の雇用型テレワーカーの割合は令和5年に22% を占めている。これは近畿圏の24%や首都圏の38%と比べると低 い水準である(図4)。しかし、令和5年度においては、中京圏の
雇用型テレワーカー比率はほとんど低下しておらず、中京圏にお ける柔軟な働き方が根付いていると考えられる。
全国の雇用型テレワーカー割合の推移 令和5年度

グレードAオフィス 市場の拡大で期待される
フレキシブル・オフィス市場
名古屋中心部におけるフレキシブル・オフィス市場は、今
後5年間で大型オフィスを中心に拡大が見込まれており、こ れにより競争力の高い立地条件へのテナント入居機会が増
加すると予想される(図
5)。フレキシブル・オフィス事業
者は、すでにアクセスが良好で、競争力の高いワークス ペースに対するテナント需要に注目しており、特に名古屋
駅周辺の一等地への出店を積極的に進めている。
さらに多くのデベロッパーが再開発に取り組んでおり、名古屋中
心部のオフィス市場の活性化は当面続く見通しである。

名古屋中心部におけるグレードA



2024年第3四半期時点で、名古屋中心部における フレキシブル・オフィスの総貸床面積は大規模ビ ルの1.4%を占め、総賃貸面積では名古屋中心部 のフレキシブル・オフィスは東京都心5区の約 10分の1、大阪中心部の約3分の1の規模に過ぎな い(図6)。また、名古屋中心部の同市場規模は、 ニューヨークやロンドンなどの世界主要都市と比 較しても小さく、大規模ビルへの浸透率も低い。
しかしながら、今後の成長可能性は高いと考えら れる。グローバルに遅れをとっているAI(人工知 能)をはじめとしたテクノロジーをより積極的に 取り込み、イノベーション創出のニーズや可能性 に注目し、名古屋中心部へのフレキシブル・オ フィス出店を前向きに検討している有力な事業者
も存在する。今後、名古屋中心部におけるフレキ シブル・オフィス市場の拡大が見込まれ、市場の 成長と発展が期待される。
世界主要都市のフレキシブル・オフィスのストックと オフィスストックに対する浸透率(%) * 図6
第3四半期時点

出所:JLL *アジア太平洋都市のストックとオフィスストックに対する浸透率はグレードAのみ
今後の見通し
名古屋中心部のフレキシブル・オフィス市場は、ハイブ リッド・ワークの定着により、ますます注目が高まり、拡 大が続くと見込まれる。多様で生産性が高い働き方の重要 性が高まっており、柔軟なワークスタイルを可能とするフ レキシブル・オフィスの利用は国内と外資系企業の双方で 広がっている。

現在、名古屋中心部におけるフレキシブル・オフィスの新 規出店の大半は既存オフィスへの入居が占めているが、グ レードAオフィスの新規竣工に伴い、フレキシブル・オフィ ス事業者の進出機会は増加すると期待される。特に、競争 力が高い大型ビルへの出店が予想され、名古屋中心部にお けるフレキシブル・オフィスは今後も成長を続け、柔軟な 働き方に対応したオフィス環境を提供していくだろう。


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