会報_vol.20

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ご挨拶

文/代表理事 小林雅彦

この半年間での出来事は正に筆舌に尽くしがたいほど・・・(正確には自分はお話なら説明出来ると思 いますが)・・・文章にするのが難しい内容となりました。前号(vol.19)でお知らせしたテキサス州太 平洋戦争国立博物館との交渉が無事にまとまり、九七式中戦車改新砲塔チハ(以下新砲塔チハ)の所有 権は、交換収蔵品なる九五式軽戦車撮影用プロップの引き渡しと共に我々NPOへ譲渡される運びとな りました。これを受けて引き渡しのための整備と再塗装を実施、7月初旬に横浜港よりヒューストン港 へ向けて送り出し、8月23日に太平洋戦争博物館へ3名のスタッフと米国現地協力者と共に到着しまし た。準備から輸送実務、引き渡し時の操作説明から整備要領の指導と限られた文字数に起こせない苦労 の連続でした。

そして本来なら9月にも日本へ向けて新砲塔チハと送り出す予定が、またしても銃刀法の壁により延 期、さらに11月の送り出しも輸送経路の変更に伴うスケジュールの遅延が原因で2025年1月以降にずれ 込むことになりました。先ごろ税関当局から英国から里帰りした九五式軽戦車4335号車と同様の内容 で今回の新砲塔チハにも輸入許可が出せるという回答も頂きましたので、あとは輸送上の問題さえ解決 できれば里帰りは叶います。

この間、国内に目を向けると5月の「(仮称)防技博の設置を実現する国会議員連盟」の第5回総会 を衆議院第二議員会館で開催。代表中谷元先生、代表代行石破茂先生を始めとする国会議員、防衛省大 臣官房長出席の下で勝又正美御殿場市長が施設の規模や建設時期の構想を発表、我々NPOも世界標準 の防衛技術博物館の設置と自衛隊装備車両の保存、保管を訴えました。地元選出の国会議員細野豪志先 生からも、御殿場市が全国に先駆けて取り組みをスタートした自衛官サポートセンターの開設について 訴えがありました。

そして10月の自民党総裁選を経て、石破茂内閣が誕生。議連代表の中谷元先生が二度目の防衛大臣、

議連事務局長の城内実先生が経済安全保障大臣として初入閣となり、博物館設置向けて大きな追い風と なりました。しかし、現在の自公政権の置かれた状況は国民からの厳しい意見を突き付けられておりま す。我々NPOはあくまで政治的に中立であり、防技博設置という目的に向けて議連や防衛省、御殿場 市などの関係団体と是々非々で議論を進めている最中です。年明け早々には第二回「(仮称)防技博建 設推進連絡協議会」(会長は勝又正美御殿場市長、事務局は我々NPO)の開催も予定しております。

こうした大激流に飲み込まれることなく、果敢に舵を取り、一日でも早い博物館設置実現へ向けて歩 みを進めて参ります。テキサス州からの新砲塔チハの輸送に関しては前述のとおり困難な問題に直面し ておりますが、解決の方向性は見えております。あとは輸送費用に関するクラウドファンディングの実 施と成功(みなさまのご支援が頼りです・・・)を待つばかりです。

来年2025年はゴールデンウィークにハ号ブルの修復完成お披露目会、前後しての新砲塔チハのweb内 見会を計画しております。2024年に実施できなかった活動報告会も実施の方向で調整中です。支援者 のみなさまとお会いできる日を楽しみにしております。

今年のはじめに実施したハ号ブルドーザーのクラウドファンディングに引き続き、再度のご支援 をお願い致します。

【クラウドファンディングプロジェクト概要】

・運営会社:READYFOR ・プロジェクトタイトル: 九七式中戦車改、里帰り直前の急展開!?輸送費用のご支援を!!

・募集期間︰2024年12月25日(水)~2025年2月20日(木) 30日間

・目標金額:1200万円

・プロジェクト形式:All or Nothing・通常型

・URL:https://readyfor.jp/projects/Chi-Ha/ ・資金使途 :「太平洋戦争国立博物館」から御殿場市内の保管場所への搬入完了するための輸送費 用と、法規対応のための一式。47mm戦車砲の精密複製品の製作費。

・リターン例(一部):新砲塔チハの里帰りを一緒にお祝いするコース 【クラウドファンディングとは】

インターネット上で支援金を募る仕組み。All or Nothingというルールで、目標金額に達成しなければ集 まった支援金は全て返金になる。支援者は支援額に応じたリターンを受け取ることができる。

クラウドファンディング ご支援はこちらから

総会実施

5月21日。衆議院第二議員会館にて、第5回議員連 盟総会を開催しました。今回は、地元静岡5区から選出さ れた細野豪志衆議院議員よりメッセージをいただきまし たので、ご紹介させていただきます。

代表理事の小林雅彦さんの情熱で立ち上げられた「NPO法人防衛技術博物館を創る会」は、 御殿場市を中心とする地元の関係者や地方議員の方々の参加を得て、機運の醸成に努めてこ られました。小林さんをはじめとする関係者のたゆまぬ努力に心より敬意を表します。

「(仮称)防衛技術博物館」は、防衛技術の歴史や平和教育の拠点として非常に大きな意義 を持つ施設です。日本の防衛装備品を産業遺産として後世に遺し、防衛装備品を通じた学び の場を提供することで、訪れる方々の理解と交流をさらに深めることが期待されます。また、

防衛技術の継承と平和の重要性を次世代に伝えることで、安全保障意識の向上にも寄与する でしょう。

近年、我が国の安全保障環境はより厳しさを増しています。近年、自衛官の採用者数は計 画を大きく下回っています。「事に臨んでは危険を顧みず、責務の完遂」に努める自衛官の 皆様の処遇や勤務環境の改善、新たな生涯設計の確立が急務です。「防衛技術博物館を設置 する議員連盟」で会長代理を務める石破茂先生が自民党新総裁に選出され、10月には「自衛 官の処遇改善に関する関係閣僚会議」が開催されました。今後は、石破総理を中心に国を挙 げて自衛官の処遇改善を実現していきます。

御殿場市には3つの駐屯地があり、自衛官やその家族を支える「自衛官サポートセンター」 の設置が進められています。本施設は隊員や家族が抱える生活面の課題に対応する重要な役 割を担います。自衛官の皆様は日々の任務に加え、災害派遣などの過酷な任務に従事し、頻 繁な異動も重なり、家族の負担が大きくなりがちです。御殿場市の取り組みをモデルケース とし、全国的な支援枠組みを広げることで、自衛官とその家族が安心して暮らせる基盤を国 政の責任として整備して参ります。

国民の防衛技術への関心が高まる中、博物館建設の好機を逃さず、地元の国会議員として 「構想から実現」に進むべく全力を尽くして参ります。

☝自衛隊レンジャー教官時代のバディ同士の 固い握手。国会議員連盟会長の中谷元防 衛大臣と、御殿場市議会議員連盟会長の 神野義孝市議。

毎号お届けしている『市議会議員だより』

☜ 御殿場市議会6月 定例会の川上議員の質 疑の様子はこちらからご 覧いただけます。

今回は、6月の市議会定例会で防衛技術をはじめとした「科学技術博物館」の構想につい て質問をした、議連メンバーの川上秀範議員からメッセージをいただきました。

防衛技術をはじめとした「科学技術博物館」の構想について

御殿場市議会議員 川上ひでのり

御殿場市議会6月定例会にて、“『防衛技術をはじめとした「科学技術博物館」の構 想について”、一般質問を大きく4つに章立てて実施しました。内容詳細については、 御殿場市議会YouTubeをご視聴ください。

本施設建設に向けたロードマップについては「国や県からの補助金又は交付金による 財源確保は勿論、様々な課題解決が前提となるが令和11年度から造成工事や建築工事に 取り掛かり、令和15年度の開館を目標に、現在、検討を進めている」と答弁があり、本 施設建設については前向きに進んでおります。

市長からは、「今回、建設を目指す施設は御殿場唯一のメッセ型展示施設」とありま した。展示機能だけではなく、様々な用途に対応でき、多くの人々が様々なイベントな どを通じた交流の場、また、防災の拠点として十分な収容能力を確保できる施設を構想 しております。

今回の一般質問において、市の目指す施設の「姿」を確認することができました。 本施設がまちづくりや、観光、文化、教育、防災の拠点となり、御殿場をはじめとする 北駿地区の発展に繋がり、主旨目的に沿い建設が進んでいくことを期待します。

設立に向けて大きく動き始めた「防衛技術博物館」について、その目指すべき方向性を少 し明確にしておくべきでしょう。優れた博物館、人が集まる博物館には、明確な設立目的が 不可欠だからです。

それでは「防衛技術博物館」は何を目指すのか。それは明治維新以来、今日まで、連綿と 続く日本の防衛技術、より正確には軍事技術の展示場です。

似たものに軍事博物館というのがあります。世界各国、国の大小に関係なく、たいていは 国立の軍事博物館が存在します。好むと好まざるとに関わらず、人類の歴史とは戦争の歴史 であり、国の成り立ちや歴史は戦争と不可分です。だから戦争や軍事という側面からも、国 の記録をしっかり残そうという目的で重視されている施設なのです。いわばその国の、国民 のアイデンティティーの柱として必要不可欠と理解されているのです。

ところが我が国、日本には、そうした軍事博物館が存在しません。その理由を説明する場 ではありませんが、戦争や軍事を忌避するあまり、そこに深く関連する技術の意味や価値を 見落とすのは、大きな間違いです。近代と呼ばれる過去2世紀の世界史の中で、中世の仕組 みから脱して先進国になれたのは日本だけです。その日本を先進国に押し上げたのは、軍事 分野が牽引し、民間に引き継がれた「技術」でした。始まりは外国の先進技術の習得と模倣 であっても、日本ではそこに留まらず、間もなく国産技術として根付きました。

敗戦後、技術立国として立ち上がった我が国の力の源泉は、防衛技術から始まっています。 その象徴の一つが「戦車」です。内燃機関や変速機を作る精密機械工業、高度な冶金技術と 工作技術

戦車は幅広く高いレベルの工業力がなければ形にならない、最新技術の結晶で す。そして第二次世界大戦の時代、エンジンから火砲、その砲弾まで、戦車に必要なパーツ を全て国産できたのは、イギリス、アメリカ、ドイツ、イタリア、ソビエト連邦、スウェー デン、そして日本だけでした。

技術という側面であれば、例えば海軍の技術は、広島県呉の「大和ミュージアム」があり、 軍用機の技術は岐阜県の「岐阜かかみがはら航空宇宙博物館」があります。しかし陸軍の、 それこそ戦後の日本を牽引した内燃機関の技術の結晶である軍用車両の歴史を説明する博物 館は存在しません。これは他国から見ると、かなりおかしな状況です。

ちょんまげ帯刀の封建時代から、たった三世代で世界水準の戦車を国産できた日本人の営 みを、多角的に展示して未来に残る。それが私たちの理想とする「防衛技術博物館」の姿な のです。

2024年2月27日㈫~4月26日㈮までの59日間、目標金額1,500万円で実施した前 回のクラウドファンディングは、皆様からのあたたかいご支援のおかげで無事目 標金額を大きく上回る結果を出すことができました。ありがとうございました。

皆様から頂いた支援金は、ハ号ブルドーザー修復の費用として活用させていた だきます。プロジェクトのページでもご報告させていただいたように、現在修復 作業テントにて順調にレストア作業が進んでいます。

また、リターンの特別編集記念DVD等は修復作業を収録して作成しますので今 しばらくお待ちください。

今後ともNPO法人防衛技術博物館を創る会をよろしくお願い致します。

クラウドファン ディングの様 子は☜のQR コードから振り 返りができま す。

九五式エンジン

顛末記

「神懸かっている」。特定の神様を信じているわけではありませんが、NPO活動を始めて10年

以上が経過して「戦車の神様」の存在を感じさせるような奇縁に何度も遭遇しました。今年も九 五式軽戦車改造ブルドーザー通称「ハ号ブル」と九五式軽戦車用オリジナルエンジンの縁です。

九五式軽戦車改造ブルドーザー(以下ハ号ブル)のレストアにクラウドファンディング募集期 間中4月7日に実車見学会が実施されました。ハ号ブルは走行装置や足回りがオリジナルという点 では、里帰りした九五式軽戦車よりも貴重とも言えます。しかも世界には1台しかない個体です。 見学会には約200名のご来場を頂きました。会場には数組の親子連れもいらっしゃいました。お子 さんは「大きなお友達」が多い会場では気おくれしそうですが、ハ号ブルのエンジンがかかった 時、前のめりになって目を輝かせます。五感の全てが目の前の動く機械に集中しています。

「くろがね四起」のレストアでも感じたことですが、個体の貴重さもさることながらレストア 前に姿を見られるのはもっと貴重な機会です。レストアされてしまったらもう二度と見られない のは当たり前です。どこまでオリジナルを残してレストアするのかというのは議論になるところ ですが、当会は持続的な動態保存を基本とし「動く機械」であること最優先します。

☝ 小林代表の「ハ号ブ ル物語」に耳を傾ける 参加者の皆様。4月の 見学会も7月の見学会 も多くの方に足をお運 び頂き、ハ号ブルのレス トアにご理解いただくこ とができたのではない かと嬉しく思います。

この見学会でもう一つの目玉が九五式軽戦車のエンジンです。正に技術博物館実現を目指す当会の 神髄ともいえる品ですが当会にやって来たのも「神懸かっている」のです。九州大学内燃機関研究室 に「シンコウディーゼル」という旧陸軍戦車エンジンがあり、年度末の備品整理で処分されるので引 き取らないかという打診が福岡県の太刀洗平和記念館様に入ります。しかし記念館様の展示趣旨やス ペースの問題で扱いに苦慮していた所に大戦機修復家の中村泰三様経由で当会が紹介されます。 「シンコウディーゼル」?とは聞かない名称です。大学側でも持ち込まれた時期や経緯の資料もなく 正体不明でした。でも3月6日にはスクラップ業者が引き取りにくるということから、2月29日とにか く現物確認して回収すべしとのことで小林代表とスタッフが片道1000kmの道のりを突っ走ります。果 たして謎の戦車用エンジンの正体は三菱A6120VD、そう九五式軽戦車用の空冷直列6気筒ディーゼル エンジンだったのです。シンコウとは神戸製鋼のことでした。教材用でしたので状態も良好で、資料 としても、里帰りした九五式軽戦車エンジンのバックアップとしても非常に大きな収穫となりました。

「シンコウディーゼル」としか呼ばれていませんでしたので、ネット検索にも引っ掛からない幻の如 きエンジンでしたが、歴史の中に消え去る直前に人との繋がりで出会うことができたのはまさに「神 懸かる」といってよいでしょう。「神の恩寵」は受け身で待っていてもダメです。「天は自ら助くる 者を助く。」とはよく言ったものだと思います。

☝☞

九五式軽戦車用の空冷直列6気筒 ディーゼルエンジン。近代化産業遺産に 登録できるのではないかと期待している。

☝ 7月の見学会では富士山も美しい姿を見せてくれて、最高のロケー ションで開催することができました。ハ号ブルのエンジンの音やにおい、 履帯やドーザが動くところもお見せすることができ、博物館が開館した 際のデモンストレーションにもなったと思います。撮影いただいた動画や 写真は、ぜひSNSにアップしていただき、感動を共有させてください。

☟ これからのハ号ブルは、マンス リーサポーターの活動報告でもお 伝えしてありますように、解体・整 備をして、来年夏ぐらいに生まれ 変わった姿をお見せできる予定で す。レストアの進捗報告はマンス リーサポーターの活動報告で実 施しておりますので、この機会に ぜひ登録をお願いします。

太平洋戦争国立博物館

8月。テキサス州フレデリックスバーグにあるア メリカ太平洋戦争国立博物館に ハ号戦車のプロップが到着しました。

引き渡し作業に携わったNPOのスタッフ岡部さ んによるテキサスリポートをお送りします。

正装姿の岡部さん(左)。NPOが所蔵する車 輛のレストア、メンテナンスを一手に引き受 けてくれる頼もしい存在です。

ヒューストン港に到着した九五式軽戦車プロッ プ。横浜港から約1か月半の船旅にもかかわら ず、エンジンは1発で作動したそうです。

8月18

日からの訪米につきまして、整備担当て派遣された岡部 がご報告させていただきます。珍道中の様子は、代表がネットに て配信済みですのでそちらをご覧いただくとして、24日25日の フレデリックスバーグでの様子をご報告させて頂きます。

朝8時より業務を開始し、まず行ったのが日本に帰還する新砲 塔チハに対する安全祈願です。略式ながら、日本より持参した清 酒により車両のお清めを参列者一同にて執り行わせていただき、 日本に帰れるんですよ!という声かけと、道中の安全を祈願させ ていただきました。その後、博物館の車両管理スタッフに対し、 ハ号プロップの取り扱い要領を、保守管理要領について岡部が、 操縦操作要領について木下が担当して、説明を行いました。博物 館スタッフは、日頃から実車のM3軽戦車を運用しているだけあ り、飲み込みも早く、1日の予定が僅か半日で、もう何も教える 事が無い状態となりました。

午後からは、新砲塔チハの状態確認の時間に充てます。この車 両につきましては、米海軍の所有物件という事で今まで車両内部 に手を触れる事は固く禁止されていたそうで、それが日本帰還に 向けた整備のため解禁されたため、博物館関係者の積年の鬱憤を 一気に晴らすべ嬉々として作業にあたっていてくれている空気感 が、全て全開にされたハッチからも感じ取れます。検分した印象 では、さすが元標的だけあり、各所に命中弾を受けており、戦闘 室内は欠損部品が多く、かなりダメージを受けているのに対し、 エンジン室は、致命傷となる弾痕は無く、何とかなる。との印象 を持ちました。

翌25日は、そのままでは日本に持ち込む事が出来ない47mm戦車砲の取り外し作業に取り掛かります。 事前の見積りでは、固定ピンを1本抜けば後方にスルスルと外せる筈だったのですが、標的時代の砲 身への被弾の衝撃による歪みで砲の仰角 がついたまま動かせない状態である事が判明、砲取り付け基 部全体を丸ごとそっくり取り外す事となりました。そのような状況は、博物館側でも把握済みで、事 前に作業を進めていてくれて、25日の砲取り外しの瞬間に立ち会う事ができました。取り外した砲 アッセンブリーは、整備工場で、砲身部と揺架部に分離して砲身部を安全素材のレプリカで作成後、

交換の上再組立てをして日本に向けて発送の段取りとなります。博物館スタッフも、我々が米国にい るうちに何とか分離すべく手を尽くしてくれたのですが、80年に及ぶ強靭な固着には敵わず、後事を 託して帰国の徒につきました。

今回の訪米での収穫は、帰還する新砲塔チハの現況を把握出来た事はもちろんですが、2日間現地ス タッフと作業を共にして、作業中に、米「おい、砲架のここの色を見てくれ!オリジナル ペイント じゃないか?」日「おお!間違いないね。」米「オリジナルカラーは、シルバーなのか?」日「その 通りだと思うね!」等の、他人から見たら意味不明な会話を繰り返すうちに、「コイッら相当バカだ な!(褒め言葉)」と思ってくれ、信頼関係が築けたのが、最大の収穫だったと思っています。 ~完~

太平洋戦争記念博物館のスタッフに乗り回されている 九五式軽戦車プロップ。きっと今頃テキサスの地で 悠々と走り回っていることだろう。アメリカで大切に してもらって余生を過ごしてもらいたい。

九五色軽戦車プロップの代わりに日本に帰ってく る九七式中戦車改。現在は日本に向けて旅支度を している。年内にテキサスを出発し、年明けに日 本に到着する予定でしたが予定は未定…

M3スチュアート軽戦車のツーショット。奇跡の1枚。

アルケット地雷処理車の内部撮影 写真・文/武宮

モスクワのクビンカ戦車博物館には何度か行ったが、1992年度の訪問だけは破格のものだった。「好 きな車両に貼りついて、そのディテールまで調べてもよい、内部撮影も可」と言われたのである。その 時に撮ったアルケット地雷処理車の内部写真を、ここに御紹介する。

この車両は極めて特殊な構造を持つ。今までその内部写真は、ソビエトの審査部局による報告をス ヴィリンが解説した冊子(ポーランドのロッサグラフ社発行)に僅か3枚が掲載されているだけである。 それ以外のどの資料にも、またロシアの写真投稿サイトDishmodels.ru(2005~ )の膨大なコレクショ ンの中にも、一切見当たらない。それ故、ここに掲載された15枚の写真は少なくとも資料としての価値 を持つ、と考えられる。

一方、近年ではフルインテリアキットが多くなってきた。そのファンの方々にとっても、上記スヴィ リン著の冊子に次いで、これらの写真は興味ある資料の一つになりそうである。

☝②Ⅰ号戦車の砲塔の内部には、左 手で操作する7.92mm MG 34機銃 俯仰装置が残っている。その下部にある 把手に、左側の機銃のトリガーが付いて いる。

☝③右手で操作する砲塔旋回装 置。その下面にある把手に、右側の 機銃のトリガーが付いている。

☝⑦覗視孔の直下で、装甲板の下面に 小さなギアボックスがある。そこから出たハン ドルの軸は後下方を向く。この構成は旧ド イツ装甲車に共通している。

☝➉画面中央に在る装置はブレーキング バンドのアンカーのブラケットではないだろう か。両側にある。

☝⑬前方H形鋼(画面右下)越しに、 トランスミッションケーシングの左半分を見 る。画面右側に、補強された戦闘室の左 側壁。左上に後方H形鋼。その下方に主 車輪のギアボックス。画面左下に操縦手 席ギアボックスから来た複数のロッド。

☞⑮横置きされたマイバッハ HL120。 V12、12リットル、265~292馬力。Ⅲ、 Ⅳ号戦車に使われたものと同系列。最上 部のロッカーカバーが外されて内部のメカが 見える。

☝⑧ステアリングシャフトはギア箱を出 て右に横走したのち、車長兼機銃手 の右脇で方向を90度変えて戦闘室 の中を後方に進み、最後に、尾輪を 操舵する鎖に繋がるのだ。

☝⑪ギアボックス

☟⑭トランスミッションケーシングの右半分の 前面。

☝⑨操縦手席付近は雑然としている が、右からアクセルペダル、その左がメイ ンクラッチ、手前が操縦手席の左側に あるブレーキレバー。

☝⑫前方H形鋼の前縁は、主 車輪軸の被覆の後縁上部に位 置する。ステアリングシャフトがそれ を貫く。

☟⑯後方、右側のラジエターと シュラウド。其処のハッチは閉ざさ れていた。

連載第2回目。

学芸員資格取得に付随 する社会教育のテキスト を紹介します。

学芸員資格を取得する 予定のない方も、博物館 の役割がよくわかる本に なっていますので、お時 間ある方はぜひご一読く ださい。

早いもので、大学編入からおよそ1年。学芸 員関連の科目はひと通り取得して、残るところ は博物館で実際に業務に携わる「博物館実習」 の科目のみとなりました。もっとも大学卒業要 件を満たすためにその他科目をもう少し取得す る必要がありますが。と同時に19単位で取得で きる国家資格とは如何ほどの価値があるのであ ろうか、と疑問に思うところでもあります。

さて、今年9月2日から27日にかけて、御殿 場市は令和7年度任用職員として学芸員を募集 していました。(https://www.city.gotemba.lg.j p/recruit/cat-001/488.html)

慌てないでください。これは「防衛技術博物 館」に伴うものではなく、市内の「民俗資料収 蔵庫の管理や収蔵資料の整理、現在建設中の新 図書館内に併設される郷土資料館機能の整備」 といった業務を担うことを期待されての募集で す。

挑戦する博物館 今、博物館がオモシロイ!!

小川義和・五月女賢司 編著

四六版320ページ

定価:本体2,000円+税 出版社:ジダイ社

ISBN-10: 4909124179

ISBN-13: 978-4909124173

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この学芸員に求められる専門分野は「有史以 前の富士山の火山活動から直近40~50年の 現代史は当然のことながら、先祖探し、お盆や 七五三等の年中行事、地名や名字の由来、気象 など様々な問い合わせ」に対応できることとい う縦にも横にも広い領域の専門性が求められて います。

先行研究の殆ど行われていない領域も多く、 郷土史教育を振興しているわけでもない一自治 体に、条件を満たすような若者(年齢制限があ り平成元年以降の生まれ)が応募してくるのか。 御殿場市には市政70年の間、郷土資料館がな かったことを考えると難しいのではないかと考 えます。

ちなみに初任給は207,972円、とのことで、 一般行政職(大学卒)185,200円(令和5年)に 比べると多少は良い待遇になるようです。

(小高周一郎)

昨年4月からはじまったマンスリーサポーター制度。現在340名を超える支援者様によって、NPOの 活動を支えて頂いております。本当にありがとうございます。

マンスリーサポーター限定メールマガジンには、賛助会員にもまだ発表していない情報を掲載して いるほか、月イチ配信のため紙の会報よりも新鮮な情報をお届けできます。

支援は、月額500円、1,000円、2,000円、5,000円の4コースからお選びいただけるほか、1カ月支援 後に解約など、通常の寄付のようにもご利用いただけます。

様々なかたちでのご支援に対応できるマンスリーサポーター制度。この機会に是非ご登録をお願い 致します。

マンスリーサポーターについての詳しい説明等は、ReadyForのサイトからご確認ください。

支援申し込みサイトは右下のQRコードからお願い致します。皆様からのご支援お待ちしております。

READYFORの登録に必要です

★メールアカウント ★クレジットカード

右のQRコードから

サポーター申込ページをご利用頂けます。

NPO法人

防衛技術博物館を創る会 事務局からのお知らせです

編集後記

防技博通信

会員の皆様におかれましては、日頃より当会へのご理解・ご協力を 頂き、誠にありがとうございます。

今回の会報では、7月に旅立った九五式軽戦車のプロップのお別れ 会についてのページを割けなかったため、少し触れさせていただこうと思 います。6月8日、9日の2日間、SHOW CASE OARAI様のご 厚意により、大洗シーサイドステーションにて開催いたしました。戦車 トークショーに足をお運び頂きありがとうございました。お別れ会の詳細 は、マンスリーサポーターの活動報告でもお伝えしておりますのでそちらを ご覧ください。

前回の会報発行から半年過ぎましたが、この半年間に訪れた博物 館的施設をご紹介したいと思います。

5月は高知旅行中に、来年御殿場にもできる「おもちゃ美術館」と 同じ系列の『佐川おもちゃ美術館』に行きました。郷土の自然や文化 と遊びが融合した交流型ミュージアムを謳う全国のおもちゃ美術館は、 公民問わず様々な組織が設立・運営をしています。整理券で入館制 限をするほど大人気の観光スポットでした。

室戸市にある『むろと廃校水族館』にも足を運びました。名前の通り、

室戸市の小学校を改修してできた水族館で、懐かしい机や椅子や黒 板、プールなど学校設備がそのまま残っていました。運営管理はNPO 法人日本ウミガメ協議会。博物館法改正によってNPO法人でも水族 館の管理ができるようになり登録博物館になったようです。

沼津には『キン肉マンミュージアム』ができました。ミュージアムと名乗っ ているものの施設としてはショップがメインで、グッズはかなり充実していま す。プロレスラーのミノワマンZさんが館長を務めていて、館長出勤日に は超人体操体験会が開催されます。フードのメニューもたくさんあって、 いつ行っても楽しく過ごせます。原作者の嶋田先生のトークショーなどが あったり、話題には事欠かないミュージアムです。

最後に、茨城県筑西市のザ・ヒロサワ・シティ内にオープンした『ユメノ バ』にもやっと行くことができました。国立科学博物館を共同で運営管 理している科博廣澤航空博物館に展示してあるYS-11は量産初号 機でかなりのレア機体。日本航空宇宙学会から「航空宇宙技術遺 産」にも認定され、YS-11以外にも様々な展示物があり、1日いても 時間が足りないくらいでした。

日本全国様々な博物館の展示物にはきちんとした来歴があり、解 説文がついています。博物館を訪れての満足度はその内容の充実度 に比例すると思います。きちんとした物語のある博物館は訪れる人の QOLも上げてくれる場所になるのではないでしょか。本来博物館は学 術研究施設で、そこで得る知識や経験はお金に換えられない価値が あるものだと思います。御殿場に開館予定の施設もいつ来ても新しい 発見がある場所にしていければと考えています。 (編集長:小高)

世界中に当たり前にある、防衛装備品を展示する博物館を日本 にも創りたい!そんな思いから活動しています。

我が国が誇る技術産業力の結晶である戦車をはじめとした機械 は兵器という観点からしか語られず、それを研究、ましてや保存 しようという考えは皆無です。このままでは産業大国日本の将来 を背負う子供たちに、先人たちの偉大な努力や成果を伝えること は出来ません。

そんな中、使命を終えた機械が次々と溶鉱炉へ送られる現状。

これを一台でも救い出し保存保管していくことで我々の活動の一 部が達成できるのだと考えます。並行して海外に置き去りにされ ている旧日本軍の車両里帰り計画も活動における重要な事業だと 考えます。

そのためにまず安全な保管場所の確保が急務となり、それには 地元自治体との連携が不可欠です。大型車両を多数保管する博物 館ですから多くの費用が必要となり、ここでみなさまにご協力を お願いする次第です。一人でも多くの方に我々の活動を知ってい ただき、その思いを具体化させるためのご賛同とご援助をお願い いたします。

法人防衛技術博物館を創る会 会報 第20号 Vol.20 2024年12月発行

発行人 発行所 事務局 :小林 雅彦 :NPO法人防衛技術博物館を創る会 :〒4122-0039 静岡県御殿場市竈717-6(㈱カマド

TEL:0550-82-2854 FAX:0550-84-0917 E-mail:tank@k-m-d.co.jp

法人防衛技術博物館を創る会 無断転載を禁ず

賛助会員について

一般賛助会員 :年会費3,000円 入会金2,000円

団体賛助会員 :年会費一口~ 30,000円

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会の活動や進捗情報などをお届けします。 みなさまからの貴重な情報も掲載。

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法人防衛技術博物館を創る会

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