どんな形へも自在に変化できる鋳造からインスパイアされどんなモノや人も受け入れられる世を体現
2025-2026 Autumn Winter
Season Theme:鋳造
従来と異なる視点を持ったモノ作りで新たなる価値を生み出す
15.鋳造
どんな形へも 自在に変化できる受け入れられる世を体現鋳造からインスパイアされどんなモノや人も 従来と異なる 視点を持ったモノ作りで新たなる価値を生み出す
ビッグなトレンドに対して人々がこぞって模倣する時代は影を潜め、
如何にして各々の個性・価値観を体現するファッションを見つけるか? という時代に新しくシフトしているように思う。この流れを紐解いて いくとインクルーシビティの実現が根源にあるのではないかという考 えに行き着いた。
人類の歴史を覗いてみれば、戦争により命を奪い合う社会が長年続い
たが、革命と過ちを繰り返すことで、人々の命が守られる仕組みが作 り上げられた。
命が保証されるようになれば、公平に人々が過ごせるよう、差別や偏 見を無くし、人権を守る運動が繰り返された。まだ尾を引く根強い問 題ではあるが、体系的には、人権侵害が起き無いよう法律やルールが 設定され、倫理観も形成されてきている。
命と人権の保障がされることでやっと見えてきた、人類が次に目指す べき社会とは?
他者に危害を加えない限り、どんな文化、価値観、外見も否定されず、
お互いを高め合うことで共存する、インクルーシブな社会ではないだ ろうか?ここまでのベースとなる社会の上に生きる現代人にとっては、
次なる社会である、インクルーシブな社会実現に向けて尽力し、発展 させていくことが、果たすべき大きな役割だと強く思う。
そこで、我々としては、いくつかのシーズンのコレクションを通して、
インクルーシビティへアプローチしていこうと乗り出した。
だが、ここで一つ大きな壁にぶち当たる。
ファッションにおいては、インクルーシビティと対比するエクスクルー シブなモノやサービスにラグジュアリー感や希少性を見出し、そこが 価値として売り出されてきた。
そうすると、従来のファッションにおける価値と、インクルーシビティ の考えが相容れない要素となり得てしまう。そもそもファッションで インクルーシビティを表現出来るのか?ということである。この相反 する関係が、ファッションの第一線では、取り上げられづらかった理 由ではないかと思う。
では、この未知なる挑戦である、ファッションとインクルーシビティ を両立した表現を行うには?第一弾のアプローチとしては、どんな形 へも自在に変化出来る”鋳造”からインスピレーションを受けることで、 どんなモノや人も受け入れられる世を体現しつつ、新たなるクリエー ションとクラフトマンシップを生み出そうとした。
既に形成されている物体が溶け出し、新たに形作られる鋳造のように、 扱う商材は同じでも、従来と異なる視点を持ってモノ作りを行うこと で、新たなる価値を生み出そうとしたコレクション、それこそが MONTELUCE 2025-2026 AWである。
YARN STORY
The begining of our hidden story
モノが溢れる世の中、何でも当たり前に手に入ってしまうと
錯覚してしまいがちだけれど、ふと一つ一つのモノづくりの 動作に目を向けると、色々な要素が詰め込まれていることに 気付く。それは、手に触れた人の想いも含めて。
そう考えると、原料から糸が仕上がり、その糸が編み込まれ て、編み地ができ、さらには衣服に形作られる様は、途方も ない道のりだと実感できる。だからこそ、その過程を思うと、 どこか神秘的でさえないだろうか?
ある意味、どんな形へも自在に形づくることができる、究極 の状態である糸。パッと見ただけではただの1本の糸に過ぎ ないかもしれないけれど、隠されているストーリーを紐解い ていきたい。
BALLOON
NM 2/42.000 NM2/27.000 NM3.400
NM2.700 NM1.400
FINE WOOL 70% BULKY ACRYLIC 30%
ニットといえばウールの素材を思い浮かべる人が多いのでは ないだろうか?そんなニットの定番素材であるウールを MONTELUCEなりにアップグレードした素材がバルーンで ある。
ウールに求める素材感で、もこもことした肉厚感やケーブル の柄などがしっかりと表現できる立体感が上げられると思う
が、そうしたセーターはどうしても重量が重くなってしまう。
だが、バルーンでは嵩高性の高いバルキーアクリルをブレン ドすることで、より膨らみを持たせながら、他のウール素材 よりも軽量化することに成功している。ウールの特徴をさら に飛躍させるため、独自に素材開発をしたものの一つだ。
SPUGNA
NM 2/16.000 NM3/16.000 NM4.000
FRENCH WOOL 100%
原料の出所はいつもどこか不透明になりがちで、把握するの が難しいとされてきた部分ではあるが、どんな風に採取され、 どんな工程を得てから自分たちの手元に届くのか?分からな
いのは一抹の不安を与えるものだと思う。そんな不安を取り 除けるよう、スプーニャでは糸ができあがるまでに関わる工
程全てをこちらで把握できるように準備し、透明性を追求す ることで、安心して使える糸にアップグレード。
気温が低い標高1500~3000mに位置する南フランス・アル ル地方の大自然の中で放牧されて飼育されたフランスメリノ は、傷付けられることなく育ったノンミュールジング・ウール。
気候の影響により、従来のメリノウールよりも保温性が高い のは、バルキー性とクリンプ性に富み、空気を含むことで軽 くも温かさが保たれるが故。
“NEW”
TONE WOOL
NM 2/14.000
WOOL 100%
紡毛糸は一般的に、風合いを損なわないためにTOP染での 展開が多く、糸染めの時よりも膨大なミニマム数量が求めら れる。そうなると、オリジナルカラーの染色はハードルが高 いという難点を持ち合わせていたが、紡毛糸で糸染めをして も風合いを保てるように改良されたのがこのTONE WOOL。
役割の異なる複数の原料をブレンドし、太番手の甘撚りにす ることで、糸染めの場合でも膨らみと風合いの良さを保つこ とに成功。
“NEW”
CAPELLA
NM7.400 WOOL 98% GLASS 2%
ファッションでは、アクセントになる装飾もかかせない。新 素材のカペラは、キラリと光るビーズが散りばれられたアク セントヤーン。ビーズ自体は華やかな光沢を持ちながらも、 ごく小さなサイズになっていることで、まるで空に散りばめ られた星々の様。あくまでもさりげない華やかさを表現する ことで、エレガントな装飾に仕上がった。
SWATCH STORY
Heart of our Creation Story
糸の掛け合わせ方、本数、編み方、柄の組み方により、創造の 可能性が無限に広がるのが、糸を駆使したことで表現できるス ワッチデザイン。
長年培った知識に経験とフレッシュな発想、どちらも混ざり合 わせて、新たなる見せ方を生み出そうとした。
新規素材の活かし方、見慣れた従来の素材が華麗に生まれ変わ るシーン、それぞれご覧いただきたい。
光を反射してきらめきながら透明感を放つMIERUは、 シックでモードな表現をするのにぴったり。
さらにワイドリブによる凹凸感で、立体感から成る表現 のバリエーションが加わり、柄やカラーの組み合わせで はない、新たなる手法が新鮮な印象を与える。
また、凹凸が重なることで、レイヤーが演出する異なっ た見え方も可能に。
SABRICH × CAPELLA
NM2/16.000
CASHMERE 80%
SABLE 20%
NM7.400
WOOL 98%
GLASS 2%
カシミヤよりもさらに繊維が細く柔らかいセーブルの毛 にカシミヤの毛をブレンドして贅沢に仕上げたセーブ リッチ。ミンク加工により、ファーのように滑らかでふ わっとした手触りが生まれるセーブリッチに、ビーズ糸 カペラを掛け合わせた。上質な手触りに上品で華やかな ビーズが散りばれられ、これまでにない要素のかけ合わ せでフレッシュなアイディアを提案。
さらには、編んでいるコースを切り替えながらカペラを 入れ込むことで、無駄な重量感を無くし、軽やかな仕上 がりに。
NM2/27.000
編み方を変化させることで、バルーンの新しい見せ方を 追及したのが、この編み地。
ゴムスムースの編み方を変えることで、糸がスラブのよ うに波打った形状に見えるように設計した。
糸自体に加工を加えなくても、編み方の変化だけでここ までの表現を実現。
PRODUCT STORY
Closing our finale
製品事業も展開する我々だからこそできる、 MONTELUCEの糸を活かしながら、ディティールまで こだわったニットウェア。
従来の素材でも、シルエットや縫製の仕方でガラッと新 しい見せ方に。
豊富な生産背景により、様々な技術を終結させて、華麗 に仕上がったニットウェアを見せていく。
ミラノリブの組織で伸び過ぎを防ぎ、本
数取りをコース毎に変えることで、密度 が変化し、メッシュのような見た目に。
本来、ハイゲージで目面をキレイに編む ような細い糸だが、あえて7Gで編み目 をゆるっとさせながら、本数が変わるこ とで、本数の多い編み目が大きく、少な い方が小さく変化することで、編み目の 大きい部分から透け感が生まれた。
今回は、この編み方をPATIOと
BUMPY WOOLでトライ。
PATIOは、アルパカの毛が使用されて いることで、ふわりとした毛足が特徴的。
BUMPY WOOLは、ウールとポリエス
テルから成るさらっとした肌ざわり。
LOOSE NECKLINE SWEATER
ネックラインの仕様はテイストを変えて提案
WATER-REPELLING VEST
ニットで撥水機能を備えたベストを用意。従来の布帛生
地による撥水機能付きの衣服は、どうしても重量感と硬 さが伴うが、ニットであれば加工を施しても、比較的軽 量で柔らかさを保てるのが特徴。その秘訣は、糸自体へ の加工で撥水機能を備えて編むことで、ニット特有の編 みによる伸縮性を保てること。
Proof Plus Eco Alphaを使用してしっかりとしたゴムス ムースで編んだ上に、ローラー圧縮を加えて、ニットの
編み目をより詰まらせることで、撥水の効果をバージョ ンアップさせている。
また、機能性だけではなく、見た目にもこだわりを注い だ。ダウンシートを使用することで、ダウンの中身をス ティッチで押さえる必要が無くなり、スッキリとスタイ リッシュな仕上がりに。