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越智 誠 | Makoto OCHI 1995.10 奈良県生まれ 2014.03 大阪教育大学附属高等学校天王寺校舎 卒業 2014.04 神戸大学工学部建築学科 入学 2018.03 神戸大学工学部建築学科 卒業 2018.04 神戸大学大学院工学研究科建築学専攻 入学 現 在   建 築 設 計・ 環 境 デ ザ イ ン 遠 藤 秀 平 研 究 室 ochimakoto_japan@yahoo.co.jp


近代システムのもと推し進められたニュータウン開発によって、街から取り残されたぶどう園。 高 齢 化・ 後 継 ぎ 不 足 や 宅 地 開 発 に よ る 閉 園 は 、 地 域 の ア イ デ ン テ ィ テ ィ 喪 失 に も な り か ね な い 。 一 方 、「 一 家 族 」=「 一 住 宅 」 の 図 式 が 崩 壊 し 、 家 族 形 態 が 多 様 に 細 分 化 さ れ た 現 代 社 会 に お い て は 、 ニュータウンという国家運営システムは最早空転している。 無縁社会、孤独死、育児の困難といった諸問題は、家族の多様化に対する受け皿の不足といえるだろう。 今後 AIが台頭し、SOHOの普及によって仕事形態や農業が激変していく中で、 か つ て の 生 活 シ ス テ ム で あ っ た「 ぶ ど う 」 を 別 の 方 法 で 利 用 し 、 様々な関係性や仕事形態を受け入れる居住システムを作り出せないだろうか。 コミュニティやシェアが叫ばれる時代だからこそ、 「ぶどう」という環境を介して、適度な距離感で集まって住む可能性を提案する。


敷地のこと

北 葛 城 郡 河 合 町( 西 大 和 ニ ュ ー タ ウ ン )

1961~1964年

1979~1983年

奈良県

奈良県北西部に位置する河合町 丘陵部に点在するぶどう園を敷地とする 総人口約18000人 人口密度2150人 /㎢ 現在

町域一帯に広がる馬見丘陵は、1960年代後半よりニュータウン化がすすめられた 大 阪 へ 通 勤 す る「 奈 良 府 民 」 の ベ ッ ド タ ウ ン と し て 順 調 に 人 口 は 増 加 し た が 、 半 世 紀 後 の 現 在 は オ ー ル ド タ ウ ン 化 が 始 ま り 、 人 口 減 少・ 少 子 高 齢 化 が 著 し い 行 政 は「 北 葛 城 移 住 プ ロ ジ ェ ク ト 」 を 開 始 し た が 、 具 体 的 な 施 策 は 決 ま っ て い な い 町の中心部には開発以前よりぶどう園が点在し、現在は住宅に取り残されている

ぶどう園のこと

来年度以降のぶどう園の開園状況

宅地開発計画の概要

閉園 開園

高齢化や後継者不足により、多くのぶどう園が閉園の危機にある 来年度以降営業を続けるぶどう園はわずか一軒のみとなる 一方で、閉園に合わせて跡地に分譲宅地開発が計画された しかし町の人口は減少しており、平均世帯人員も低下している ( 1 9 6 7 年: 3 . 5 人 → 2 0 1 7 年: 2 . 5 年 ) か つ て の 標 準 家 族( 核 家 族 ) が 最 早 崩 壊 し て い る 中 で の 、 「 一 家 族 」=「 一 住 宅 」 の 宅 地 開 発 は 時 代 錯 誤 と い え る ニュータウン開発という綻び始めている近代システムに代わる、 新たな居住システムの提案は急務であるだろう

配置図 1:1000

ぶどう園という地域のアイデンティティが失われるという問題 減少社会において従来式の宅地開発が行われることへの疑問


小学校 研修施設

商業施設群

ぶどう荘

西大和ニュータウン

ニュータウンに取り残された敷地に、約90000㎡の垣根仕立てのぶどう畑とぶどう荘が佇む

血縁関係の希薄化

血縁関係以外の家族の可能性

家父長制 子沢山

親族

核家族

核家族

家 族 の「 ほ ど け 」

独居老人 生涯未婚

シングルマザー

国家

国家

大家族 家族 家族

家族の枠組みの変容に対応した居住システムが必要というジェネラルな問題

ぶどう畑という軒下空間のようなバッファー要素を利用した、

少子化

「ほどけた家族」に対応できる次世代の集住体を提案する

国家 1987年

ムラ 家族

家族

個人

家族

個人

「ほどけた」家族

個人

棚仕立て

ぶどう荘 親子

「ほどけた」家族

家族

大家族 家族

「ぶどう」という地域のアイデンティティが喪失するというローカルな問題

3

親族

親世帯の単独世帯化

SOHO型の集住体

ぶどう荘

大家族

未来

近代化による都市への流出

強固な血縁関係

ぶどう畑

近 代 化 以 後( 主 に 終 戦 後 か ら 加 速 )

情報化社会による人の孤立化

これからの家族のこと

近代化以前

共働き家族

通常

ワイン家族

携帯電話の登場

個人

30 才 フリーランス(デザイナー)

60 才 マルシェ経営

根域制限栽培

同性カップル

35 才 在宅勤務(IT)

ワープロによる作業

「ほどけた」家族

垣根仕立て

IT 家族 マルシェ家族

パソコンは未普及

5 才 幼稚園児

25 才 在宅勤務(IT)

30 才 在宅勤務(広告)

共働き家族

30 才 在宅勤務(デザイナー)

デザイン家族 5 才 幼稚園児(養子) 45 才 独身(マルシェ経営)

共働き家庭

既婚無子

独身

事実婚

独居老人

趣味仲間

45 才 マルシェ経営

30 年後のわたし

15 才 中学生

35 才 独身(会社員)

70 才 独身

週休二日制導入

単独親世帯

18 才 高校生

50 才 独身(設計事務所主宰)

30 才 保育士

80 才 父

30 才 海外インターン

姉妹

シングルペアレント

75 才 母

ケンチク家族(設計事務所)

英会話教室家族

地価高騰

単独親世帯

LGBTカップル シングルペアレント

50 才 在宅勤務(IT)

ガーデニング家族

バブル最盛期

里 親・ 里 子

25 才 独身(会社員)

25 才 独身(設計事務所員)

25 才 独身(設計事務所員)

シングルペアレント

仕事仲間

2017年

兄 弟 姉 妹・ い と こ

いとこ

既婚無子

45 才 主婦

60 才 独身(マルシェ経営)

45 才 在宅勤務(ライター)

40 才 設計事務所員

10 才 小学生

35 才 独身(設計事務所員)

親子

パソコンが衰退(?) 60 才 マルシェ経営

10 才 小学生

30 才 フリーランス(デザイナー)

20 才 大学生

40 才 ぶどう農家

生食用

ワイン用

住 人 が 栽 培・ 管 理

農 家・ ワ イ ナ リ ー が 栽 培・ 管 理

空間効果

軒 下 空 間・ バ ッ フ ァ ー ゾ ー ン

風 景・ ア プ ロ ー チ・ 目 隠 し

環境効果

日除け

廃棄物はバイオ発電へ転用

25 才 独身(在宅勤務)

同性カップル

35 才 在宅勤務(IT)

IT 家族

働き方改革

マルシェ家族

5 才 幼稚園児

25 才 在宅勤務(IT)

5 才 幼稚園児(養子) 45 才 独身(マルシェ経営)

25 才 独身(会社員)

50 才 在宅勤務(IT)

2047年

ほ ど け た 家 族 の も と で は「 個 」 は 複 数 の 家 族 に 属 し 、 緩 や か な 関 係 性 を 持 つ

SOHO

70 才 独身

15 才 中学生

35 才 独身(会社員)

単独親世帯

75 才 ガーデナー

45 才 マルシェ経営

18 才 高校生

シングルペアレント

30 才 保育士

80 才 ガーデナー

60 才 独身(マルシェ経営)

シンギュラリティ 単純業務の消失

45 才 主婦

45 才 在宅勤務(ライター)

10 才 小学生

ケンチク家族

30 才 海外インターン

25 才 独身(所員)

25 才 独身(所員)

いとこ

40 才 所員

35 才 独身(所員)

ぶどう農家

50 才 ぶどう農家

55 才 ぶどう農家

ワイン家族

習字教室家族 婚姻・親子関係

0~9 歳

4人

親族関係

10~19 歳

8人

仕事による関係

20~29 歳

12 人

30~39 歳

16 人

40~49 歳

12 人

50~59 歳

8人

60~69 歳

4人

70~79 歳

4人

80~89 歳

2人

習い事関係

平均年齢 36 歳

マルシェ家族

姉妹

シングルペアレント

趣味による関係

AI の台頭

50 才 独身(デザイン事務所主宰)

既婚無子

フリーランス クリエイター

仕事家族(デザイン事務所)

英会話教室家族

ガーデニング家族

こ の 過 程 を 、 家 族 の 枠 組 み が「 ほ ど け る 」 と 定 義 す る

管理人

30 才 在宅勤務(デザイナー)

デザイン家族

フレックスタイム制

血縁関係による家族の枠組みは薄まり、それ以外の縁による他人との関係性へ領域が拡張する

30 才 在宅勤務(広告)

共働き家族

女性の社会進出

「ほどけた」家族の受け皿となる新たな居住システムが必要

ぶどう畑を分有し、軒下空間をシェアする 用途

共働き家族

家 族 の 枠 組 み が「 ほ ど け る 」

家 族 は「 ほ ど け 」、 関 係 性 の 枠 組 み は 複 数 化 し 緩 や か に な る

55 才 ぶどう農家

スポーツ家族

VR・AR の普及

今 後 数 十 年 後 、 家 族 形 態 は よ り 多 様 化・ 細 分 化 さ れ て い く と 予 想 さ れ る

50 才 ぶどう農家

習字教室家族

iPhoneX 発売

様 々 な「 個 」 の 関 係 性 =「 ラ イ フ ユ ニ ッ ト 」 を 受 け 入 れ る 住 戸 形 態 の 必 要 性

ぶどう農家

10 才 小学生

40 才 ぶどう農家

20 才 大学生

デザイン家族

25 才 独身(在宅勤務)

利用人数

居住者70人 +昼間勤務者30人

運営方法

ぶどう農家、設計事務所、SOHO サテライトがコアとなり、賃貸として運営する 入 居 者 は 複 数 の「 家 族 」 に 属 し 、 自 由 に 栽 培 活 動 を 行 っ た り マ ル シ ェ 、 教 室 な ど を 開 く こ と が で き る


屋上テラス

4

発電塔型住戸

A

温室

軒下空間

棚 仕 立 て( 根 域 制 限 栽 培 )

デザイン事務所

図書スペース マルシェ型住戸

バスケットコート

更衣室

ワイナリーラボ

ワインセラー

廃棄物搬入口

バイオ発電設備

積み込み口


屋上ガーデン

発電塔型住戸

棚 仕 立 て( 根 域 制 限 栽 培 )

集落型住戸 棚仕立て

MWC

WWC 棚仕立て

ガレージ&ガーデン

バイオ発電設備

垣根仕立て

A-Aʼ 断面図 1:100

5


6


7

2つの発電塔型住戸から垂れ下がる ETFE膜によって、高層部は温室空間、低層部は棚仕立てのぶどう畑となる 膜 と 住 戸 の 間 に 生 ま れ る バ ッ フ ァ ー 空 間 に 生 活 が 飛 び 出 し 、「 ほ ど け た 」 家 族 を 包 摂 す る 軒下空間を SOHOの場所とし、食堂や事務所を起点としながら他業種間の様々な交流を誘発させる


8

ガレージ&ギャラリーから発電塔型住居をのぞむ


ぶどう畑のもとで暮らす こ の「 ぶ ど う 荘 」 の 中 で 働 き 、 育 て 、 開 き 生 き て い く 「ほどけた」家族の新しいライフスタイルがここにある


+7000

+5000 +6000

+3000

+1000

+4000

+2000

-1000 ±0

-2000

Bʼ Cʼ

パーキング

パーキング

WC

ワインバー

WC

集落型住戸

オフィス

棚仕立て マルシェ型住戸 広場

A

更衣室

マルシェ型住戸

ラボ

積み込み口 更衣室

醸造スペース

バスケットコート

集落型住戸

ワインセラー

集落型住戸 棚 仕 立 て( 根 域 制 限 栽 培 )

シェア型住戸

倉庫

発電塔型住戸

菜園

C

B 垣根仕立て

GL+8000 1:200


パーキング 集落型住戸

交流スペース

建築設計事務所

図書スペース

シェア型住戸 ラウンジ MWC

集落型住戸 デザイン事務所

WWC

マルシェ型住戸

交流スペース

詳細平面図 高層部 GL+12000 1:100

広場

食堂

ワインバー

オフィス WWC

広場

MWC

ギャラリー

厨房

女子更衣室 ラボ

集落型住戸

シェア型住戸

積み込み口

棚 仕 立 て( 根 域 制 限 栽 培 )

醸造スペース

男子更衣室 ワインセラー

発電塔型住戸

倉庫

詳細平面図 低層部 1:100

倉庫

詳細平面図 高層部 GL+8000 1:100


GL+12000 1:250

Plan.2 シェア型住戸

居住人数

4 戸・ 2 0 人

対象者

フ リ ー ラ ン ス・ 単 身 者

居住タイプ

「個」の最小居住単位 空間への 変換

屋上緑化によって環境的負担を軽減

「膜 -住戸群 -垣根仕立てのぶどう畑」 といった幻想的な風景を楽しめる 屋上庭園で植物を育てる

蔀戸によってぶどう畑とシームレスにつながる

建物内は一人分の寝室が基本

連 続 す る 壁 と 床・ テ

住戸間 カーテンで領域を区切る

谷のような空間がコモンスペースとなる

家 族 の 枠 組 み が「 ほ ど け る 」

「個」の最小居住単位=コアへ解体された生活空間が 多 数 の 家 族 の「 ほ ど け 」 に よ っ て 絡 ま る

Plan.1 マルシェ型住戸

居住人数

3 戸・ 1 0 人

対象者

リタイア者、 フリーランス

キッチンやダイニングが配される Plan.3 集落型住戸

居住人数

1 7 戸・ 4 5 人

対象者

親 子・ 兄 弟 姉


GL+1000 1:250

GL+4000 1:250

居住人数

2 0 戸・ 2 5 人

対象者

単 身 者・ 通 勤 労 働 者

日中の在宅時間が短い人を対象とした最小限の住まい

見晴らしのいい屋上にはガーデンテラスがある ぶどう棚を共に育て交流する

環 境・ 構 造・ 構 成

Plan.4 発電塔型住戸

カテナリー状のワイヤーにテンションのかかった ETFE膜が覆う

ぶ ど う 農 家・ ワ イ ナ リ ー ぶどう荘の住人

低層部では鉛直下向きにワイヤーで引っ張り、

温室による根域制限栽培

ばたつきを抑えるとともにぶどうの枝を絡める支柱になる

バイオ燃料発電

枝や葉

搾りかす

棚の下は SOHOの空間となる 標準的な住戸形態

風の通り抜け

排気口からの冷気 棚仕立て

テラスと縁側の交差によって

間の境界がゆらぐ

まとわりつく多数の階段やテラスはプライベート性が高いが、 同じ膜のもとで他の気配を感じ取れる一体空間にも変化する

レンガによる遠赤外線効果 生食用

膜に挟まれた曖昧なバッファー空間

加工食品

ワイン

排熱

居住者が自由に使える図書スペース

ワ イ ナ リ ー・ カ フ ェ・ 食 堂

ワインセラーの排気口からの冷気と

ワインセラー 妹・ シ ン グ ル ペ ア レ ン ト・ L G B T カ ッ プ ル な ど

垣根仕立て

排気口からの冷気によって上部の温熱環境をコントロール

バイオ燃料発電の排熱を調整して上部の温熱環境に利用 地域住民

出荷


B

C

屋上テラス

発電塔型住戸

屋上ガーデン

14

集落型住戸 温室

発電塔型住戸

棚 仕 立 て( 根 域 制 限 栽 培 )

デッキ 交流スペース

ラウンジ

交流スペース

棚 仕 立 て( 根 域 制 限 栽 培 )

ワインバー

パーキング

ワイン セラー

デッキ

交流スペース 厨房

ガレージ &ガーデン

廃棄物搬入口

廃棄物搬入口

バイオ発電設備

バイオ発電設備

B-Bʼ 断面図 1:100


15

食堂

棚仕立て

交流スペース

C-Cʼ 断面図 1:100

東側立面図 1:100


春:   高 層 で は 二 期 作 の う ち 一 作 目 の ぶ ど う が 早 く も 成 熟 し 始 め る

夏:   大 規 模 な 垣 根 仕 立 て の ぶ ど う 畑 で 収 穫 が 行 わ れ る


秋:   一 部 の 品 種 の ぶ ど う は 葉 の 色 を 赤 色 や 黄 色 に 染 め る

冬:   ス プ リ ン ク ラ ー で 撒 か れ た 水 が 、 無 数 の つ ら ら と な っ て 幻 想 的 な 風 景 を 作 り 出 す


Diploma Project "ぶどう荘 / BUDOU-SOU" / MAKOTO OCHI  

Architectural Diploma Project by Makoto Ochi "ぶどう荘 / BUDOU-SOU"  卒業設計「ぶどう荘」

Diploma Project "ぶどう荘 / BUDOU-SOU" / MAKOTO OCHI  

Architectural Diploma Project by Makoto Ochi "ぶどう荘 / BUDOU-SOU"  卒業設計「ぶどう荘」

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