日本リサーチ| 2024年5月
サステナビリティ マーケットサマリー
2024年夏


環境 健康
(前期比+4.0%) CASBEE-建築
件
+9.5%) CASBEE-不動産 1,700件 (前期比+16.2%)
※CASBEEはB+以上を対象とする。
WELL 51件
(前期比+21.4%)
Fitwel
CASBEEウェルネスオフィス
5件
(前期比+25.0%)
150件
(前期比+14.5%)
※CASBEEはB+以上を対象とする。

東京のイノベーション施設がLEEDプラチナを取得
LEED
第1四半期の認証取得件数は10件で、 2009 年からの累計件数は 262 件 ( 前期比 +4.0%)となった。当期にプラチナを取得 した事例として 、 SMART INNOVATION ECOSYSTEM NOVARE(LEED v4 BD+C: NC)が挙げられる。プラチナは1年ぶり。
ランク別 レーティングシステム別
プラチナ 1件 BD+C 3件
ゴールド 7件 ID+C 6件
シルバー 2件 O+M 1件
標準認証 0件 ND 0件
CASBEE-建築
第1四半期の認証取得件数は42件で、当期 末時点で有効な認証を有する物件は402件 (前期比+9 5%)となった 。オフィスで CASBEE-建築の取得が増加した一方、物流 施設で取得が減少した。
ランク別 セクター別
S 10件 オフィス 19件
A 25件 リテール 1件
B+ 7件
CASBEE-不動産
物流施設 12件 ホテル 5件 レジデンシャル 4件
その他 1件
第1四半期の認証取得件数は264件で、当期 末時点で有効な認証を有する物件は1,700件 (前期比+16 2%)となった。全セクターで CASBEE-不動産の取得が増加しており、レ ジデンシャルは前期比+50 6%となった。
ランク別 セクター別
S 75件
オフィス 75件
A 183件 リテール 21件
B+ 6件
物流施設 40件 レジデンシャル 128件
LEED 認証件数
出所: USGBC公開データをもとにJLL作成
CASBEE-建築 認証件数
※ 有効期限:新築・改修 3年 / 既存 5年 ※ 有効期限:5年
出所: IBECs公開データをもとにJLL作成
CASBEE-不動産 認証件数
出所: IBECs公開データをもとにJLL作成

東京都心5区でWELLやCASBEE-WOの取得が増加
WELL
第1四半期の認証取得件数は9件で、当期末 時点で有効な認証を有する物件は51件(前 期比+21.4%)となった。当期にプラチナを 取得した事例として、OKAMURA Shibuya Office ( WELL v2 Certification: Office Spaces)が挙げられる。
ランク別 セクター別
プラチナ 3件 オフィス 8件
ゴールド 5件 リテール 0件
シルバー 1件
物流施設 0件
ブロンズ 0件 レジデンシャル 0件
その他 1件
Fitwel
第1四半期の認証取得件数は1件で、当期末 時点で有効な認証を有する物件は5件(前 期比 +25.0% ) となった 。 当期は Metlife
Nagasaki Building ( Multi-Tenant Base Building v2.1)が1つ星を取得した。
ランク別 エリア別
3つ星 0件
2つ星 0件
1つ星 1件
東京都心5区 0件
大阪市 0件
福岡市 0件
その他 1件
CASBEE-ウェルネスオフィス
第1四半期の認証取得件数は18件で、当期 末時点で有効な認証を有する物件は150件 (前期比+14 5%)となった。東京都心5区 内の賃貸オフィスでCASBEE-ウェルネスオ フィスの取得が倍層した。
ランク別 エリア別
S 8件
A 10件
B+ 0件
東京都心5区 11件
大阪市 1件
福岡市 0件
その他 6件
WELL 認証件数
Fitwel 認証件数
出所: IWBI 公開データをもとにJLL作成
出所: fitwel公開データをもとにJLL作成
CASBEE-ウェルネスオフィス 認証件数



ISSBのサステナビリティ開示基準とは
アルファベットスープから国際統一基準策定まで
サステナビリティ情報の開示に関しては、 アルファベットスープと比喩されるほど数 多くの基準やフレームワークが作られてき たが、相互比較が難しく統一感がないこと が課題だった。投資家の意思決定の判断材 料として、比較可能で国際的に統一された 開示基準の制定が求められるなか、IFRS ( International Financial Reporting Standards: 国際財務報告基準)の傘下に設 置された ISSB ( International Sustainability Standards Board: 国際サス テナビリティ基準審議会)は、VRFおよび
CDSBの統合やGRIとの協働を通じ、サステ ナビリティ報告環境との調和を促進してき た。


ISSBは2023年6月にTCFD提言の構造を採 用した新たな非財務情報開示基準である IFRS S1「サステナビリティ関連財務情報 の開示に関する全般的要求事項」および IFRS S2「気候関連開示」を公表した。同 年12月4日の国連気候変動枠組条約第28回 締約国会議(COP28)では、ISSBの気候関 連基準の採用または利用を推進することに ついて64カ国・地域の400近い組織から賛 同表明を得たことを発表。IFRS S2は、投 資家、企業、国家、地域、都市等の気候変 動・森林・水問題への取り組みを評価する CDP(Carbon Disclosure Project: カーボ ンディスクロージャープロジェクト)のプ ラットフォームにも反映されている。

※ IFRS S3以降は未発表だが、次のフェーズでは生物多様性・エコシステム、 人的資本、および人権等についてのプロジェクト案が示されている。





ISSB基準と日本版SSBJ基準
ISSBのIFRS S1では、一般目的財務報告書 の利用者が企業への資源提供に関する意思 決定を行うにあたり有用な、サステナビリ ティ関連のリスクおよび機会に関する情報 を企業が開示するという全般的な (overarching)要求事項が示されている。 具体的には、ガバナンス、戦略、リスク管 理、指標および目標を開示する必要がある。
IFRS S2には気候変動のリスクおよび機会 に関する情報を開示する際の基準が示され ている。ある気候関連のリスクまたは機会 が企業の見通しに影響を与える(affect) と合理的に見込み得ると企業が判断する場 合、当該企業はその気候関連のリスクまた は機会に関する開示を作成するにあたり、
IFRS S2を適用することを要求される。
日本においては FASF ( Financial Accounting Standards Foundation: 財務会 計基準機構)傘下のSSBJ(Sustainability Standards Board of Japan: サステナビリ ティ基準委員会)がISSBサステナビリティ 開示基準と整合性のある基準の開発を進め ており、2024年3月に基準の草案を公表し た。2025年3月には日本版S1基準、S2基準 が最終化し、2027年には金融庁により法定 開示への取込みが検討される予定である。
不動産分野への影響
ISSBのIFRS S2においては、不動産金融、 エンジニアリングおよび工事サービス(設 計・施工)、住宅建築業、不動産など産業 別に指標が示されており、Energy Starや EPC 等のエネルギー証書 、 BREEAM や LEED等の建築環境認証が参照されている 場合もある。
この点ついて、SSBJではCASBEEやBELS に読み替えられるのか、あるいは別の評価 指標が検討されるのか、注目されている。
また、不動産カテゴリーにおいては、不動 産物件セクター別の(1)エネルギー格付を有 する適格ポートフォリオの割合および(2) Energy Starの認証を受けた適格ポートフォ リオの割合が求められているが、現状日本 では同等のエネルギー使用量実績値の認証 制度がない(省エネ法のベンチマーク制度 はアセットレベルでもなく、範囲も狭い) ため、今後の制度開発に期待が寄せられる。
上場企業においては2023年3月より有価証 券報告書における企業のサステナビリティ 情報の開示が開始されたが、今後はSSBJの 基準に沿った報告が必要になると想定され る。サステナビリティ情報の信頼性の確保 を望む声が国内でも上がっており、国際的 には保証のあり方に関する議論が進んでい ることから、日本においてもサステナビリ ティ開示基準や保証制度を導入するための 法改正が検討されるものと予想される。




サステナビリティ関連トピック
国際動向
自然関連財務情報開示タスクフォース ( TNFD: Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)は320の企業・金融 機関が自然関連企業報告の開始を約束した と発表。
国際ウェルビルディング研究所 ( IWBI: International WELL Building Institute)が 住宅向けのWELL認証プログラムを開始。
英国が開発工事における生物多様性の改善 を求めるBiodiversity Net Gain legislation を導入。
IFRS財団がIFRS S1「サステナビリティ関 連財務情報の開示に関する全般的要求事 項」およびIFRS S2「気候関連開示」の日 本語訳を公表。
3 月に開催された Buildings and Climate
Global Forumにおいて取りまとめられた シャイヨ宣言を日本など69カ国が承認。
民間企業の取り組み イオン
国内動向


東京都はキャップ&トレード制度対象事業 所の2022年度排出量が基準排出量より32% 削減されたと発表。
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF) がGPIFの運用機関が考える「重大なESG課 題」を公表。
林野庁が令和5年度建築物における木材の 利用の促進に向けた措置の実施状況の取り まとめを決定
国土交通省が不動産分野TCFD対応ガイダ ンスの改訂版を公表。
サステナビリティ基準委員会 ( SSBJ: Sustainability Standards Board of Japan) がIFRS S1およびIFRS S2に相当する日本版 基準の公開草案を公表。
日本政策投資銀行がDBJ Green Building認 証「ホテル版」の運用を開始。
2023年12月までに国内店舗使用電力の約55%を再生可能エネルギーへ切り替えたことを発 表。
東急不動産 国内不動産業で初となる、TNFD最終提言を参照した 「TNFDレポート」を公開したこと を発表。
阪急阪神HD うめきた2期地区開発事業「グラングリーン大阪」に係る資金調達を目的としたグリーン ボンドの発行を発表。
西松建設 アサヒ飲料株式会社の「CO2を食べる自販機」で大気中よりCO2を吸収した材料からカー ボンネガティブコンクリートを製造する実証実験が成功したことを発表。
鹿島建設 従来の吹付けコンクリートと比較してCO2排出量を70%削減した環境配慮型コンクリート ドームの試験施工が完了し大阪・関西万博会場内にドームを建設することを発表。
出所: JLL, 各機関・各社ウェブサイト
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エナジー&サステナビリティ サービス事業部ディレクター maki.watanabe@jll.com
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リサーチ事業部マネージャー tomomi.kemmochi@jll.com
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