ニッケル・2024年39巻3号

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ニッケルとその用途に関する専門誌

ニッケル 2024 年 39 巻 3 号

戦略的ニッケル

ニッケル・ラテライト鉱の 高圧浸出

戦略的かつ 不可欠な原材料

未来を動かす: ニッケルベース電池の進歩

ケーススタディ32

ハンプトン・ローズ橋梁トンネル

長寿命と低メンテナンスを実現するた めに、18,000 ショートトン(16,329 ト ン)のステンレス鋼の鉄筋が二相合金 2304(UNS S32304)で指定され、重 要な部分のコンクリートを補強してい ます。合金 2304 は、優れた強度と延 性、そして厳しい海洋環境に対する優 れた耐性を兼ね備えたコスト効果の高 い材料です。ハンプトン・ローズ・ブリ ッジ・トンネルでは、700 ショートトン (635 トン) をはるかに超えるニッケル が使用される予定です。

これは米国ヴァージニア州の史上最大の輸送インフラプロジェクトです。ハ ンプトン・ローズ橋梁トンネル(HRBT)は現在 39 億米ドル規模の拡張工 事を推進中です、そしてニッケル含有ステンレス鋼はこの複雑かつ革新的な プロジェクトにおいて、水面下及び陸上施設の両方で重要な役割を担ってい ます。橋梁、橋脚、人工島およびトンネルからなる HRBT は長さが 3.5 マイル (5.6キロ)あります。

1957年に沈埋トンネル法を採用 して最初のトンネルが設置された 時、HRBT は驚嘆の目で見られまし た。

この拡張事業は交通量拡大と渋滞緩 和のため新たに二つのトンネルを設 置して 4 レーンを増やし,合計 8 レー ンとするものです。100 年の設計寿命 を満たすためステンレス鋼など高耐久 性素材が選ばれました。

このデザイン・ビルド(設計施工一括 発注方式)案件は、ドラガドス USA、 フラットアイアン・コンストラクターズ、 ヴィンチ・コンストラクション、ドディン・ カンペロン・ベルナールの共同事業と

して行われ、HDR とモット・マクドナル ドが主導設計を担当しています。

事業計画は 2014 年に開始されました が、道路拡張、27 か所の橋梁取り換 えと拡幅、地質工学的検討、環境適 合性などが含まれていました。

2023 年にトンネル掘削機(TBM) が既存の 7500 フィート(2.3 km)の 鋼製沈埋トンネルより約50フィート (15.2 m)の深部に新たに直径 46フィー ト(14 m)のトンネルを掘削し始めまし た。Mary(メリー)と呼ばれる 4,700 ショートトン(4,264トン)の TBM は重 要な一里塚である最初のトンネル掘 削を今年完了しました。

論説:

未来の戦略的金属

世界は気候変動についての対処として懸命に脱炭素に注力していますが、ニッケ ルは持続可能な経済にとっての要として浮上してきました。各国が徐々に化石燃 料から脱却を図る上で、ほとんどすべての再生可能エネルギータイプに役に立つ 成分であるニッケルは各国政府からエネルギー・経済政策にとり極めて重要と 見なされています。この認識は単なる一時的なものではなく、ニッケルを21世紀 の戦略的資産として位置づける、より広範な地政学的および経済的な変化を反 映しています。各国はニッケルを必要としています。この号の「ニッケル」誌では、 ニッケルが戦略的および重要な原材料の議論の中でどのような位置にあるかに ついて分析しています。

戦略的(せんりゃく・てき):形容詞 特定の目的達成または優位性の 確保のための計画の一部

ハリタニッケル(NCKL)社の高圧酸 浸出(HPAL)精錬所

ラテライト鉱を使用する新世代の HPAL 工場は、輸送システムの急速 な電化のみならず、再生可能エネル ギー生産用のステンレス鋼の需要 増加に応じるのに不可欠なニッケル を供給しています。(6ページ参照)

A地点からB地点に人と物を効率的に運び渋滞を緩和する効率的な輸送システム ほど戦略的なものがあるでしょうか。さらに、排出量削減のため効率的な電気自 動車(EV)への転換を促すことも戦略的です。ここでもニッケルが戦略的な役割 を果たします。米国の主要な幹線道路-ハンプトン・ローズ橋梁トンネルの拡張 工事では 700 ショートトン(635 トン)をはるかに超える量のニッケルがステンレス 鉄筋として使用され今後何十年もの運用を可能としています。そしてニッケルは 今後の電気自動車を動かすバッテリーにとって不可欠です。最近の進展について は、10 ページをご覧ください。

したがって、産業、政府、そして各国が持続可能な未来に向けての戦略を練るに あたり一つ確実なことは:ニッケルは不可欠な戦略物資であり、以前にも増して 輝いているということです。本誌の裏表紙の主役、スワンナプーム国際空港の素 晴らしい象のように。

クレア・リチャードソン ニッケル誌 編集長

02 ケーススタディ32

ハンプトン・ローズ橋梁トンネル

03 論説

戦略的ニッケル

04 ニッケルの注目話題

06 ニッケルの処理 高圧酸浸出

08 戦略的及び不可欠 ニッケルの位置づけは?

10 未来を動かす ニッケルベース電池の進歩

12 輝くニッケル 高温で

13 ニッケル合金 高エントロピー合金

14 技術に関する Q&A

15 なぜニッケル?

15 UNS詳細

16 スワンナプーム国際空港の象

Nickel magazine はニッケル協会が発行しています www.nickelinstitute.org

ハドソン・ベイツ博士(社長) クレア・リチャードソン(編集長) communications@nickelinstitute.org

寄稿者:Parvin Adeli, Gary Coates, Richard Matheson, Mark Mistry, Geir Moe, Kim Oakes, Pablo Rodríguez Domínguez, Frank Smith, Lyle Trytten, Odette Ziezold デザイン:コンストラクティヴ・コミュニケーションズ

記載事項は読者に対する一般情報としてまとめられたもので、 これに基づく具体的適用もしくは判断根拠とすることにつきま しては専門的意見を聞いてください。記載事項は技術的に正 確であるとされていますが、ニッケル協会、その会員、職員及び コンサルタントはこれら事項の一般的あるいは特定目的の適 用についての適合性について保証するものではなく、記載に関 するあらゆる責任・責務を負うものではありません。

ISSN 0829-8351

Hayes Print Groupによりカナダで再生紙に印刷 ストック写真クレジット

表紙:iStock©Henrik5000, 4㌻iStock©borzaya, 5㌻ iStock©Hispanolistic, iStock©Zocha_K,

NICKEL NOTABLES

ニッケル・ニュース

迅速な医薬品開発

オハイオ州立大学の研究者たちは、医薬品業界がより迅速に効果的な医薬品 を開発できる新しいニッケル錯体を開発しました。アルキル結合形成を簡略化 することで、この新しいツールは、これまで実現不可能だった有機化学プロセス を可能にします。本研究の主任研究員であるクリスト・セヴォフ氏は、「有機合 成、金属化学、バッテリー科学をこれまでにないやり方で結合させることで、そ の驚くべき特性を引き出すことができました」と述べています。単一の化学反応 から新しい分子を作り出すことで、今まで一つの医薬品を開発するのに要して いた時間で最大96種類の新薬バージョンを創出することが可能になります。最 終的には開発コストと市場投入までの時間を減らし、薬効を高め、副作用のリ スクも低減しながら、命を救う医薬品の提供を可能にします。この研究成果は 『Nature』誌に掲載されました。

高まった整形外科的強度 中国・長春の吉林大学の研究者たちは、 より優れた引張強度を持つ新しい SLM-NiTi 合金を開発しました。その結 果、より個別化されたカスタマイズ可能 な整形外科用インプラントが実現し、タ イムリーで高額な再手術の必要性が減 ると期待されています。ニッケル-チタン (NiTi)合金は、その独自の特性により 医療業界で広く使用されています。Hao 氏たちのチームは、選択的レーザー溶 融(SLM)技術を用いて斬新な NiTi 合 金を製造しました。彼らは「レーザーの スキャン長さとスキャン方向を変更する ことで、材料内の一方向性の柱状結晶 の生成を排除しその結果、SLM-NiTi の引張ひずみを 15.6% まで改善するこ とができる」ということを発見しました。これは医師と患者の双方にとりさらな る前進となります。

た単結晶超 合金

環境に優しいセメント

インドネシアのマカッサル州立大学(UNM)との共同研究により、スーボ・ス トラテジック・ミネラルズ社(SSM)はニッケルスラグを高強度で低コスト、低 炭素のセメントに変換することに成功しました。セメントの脱炭素化に向け た取り組みは重要な試みです。なぜなら、セメント業界は世界最大の温室効 果ガス(GHG)排出者の一つであり需要は引き続き増加しているからです。ニ ッケルスラグ生産者である PT フア ディ・バンタエング・インダストリア ル・パーク社と協力し、スーボ社 の子会社であるクライメート・テッ ク・セメント社は、従来のクリン カーベースのセメントの代替とし て、環境に優しいジオポリマーセメ ントの製造を目指しました。SSM 社の取締役会長であるアーロン・ バンクス氏は「わずか7日で最大 37.5 MPa(5.4 ksi)を達成したの は、初回試験としては素晴らしい 結果です」と説明しています。彼は 「セメント産業における排出削減は EVが内燃機関(エンジン)に取っ て代わる役割に似ています」とも付 け加えています。

米国のエネルギー省が、産業用ガスタ ービン(IGT)に使用される単結晶超合 金の鋳造歩留まりの向上を目指した 際に、イリノイ州に拠点を置くケステッ ク・イノベーションズ社がその課題に 取り組みました。優れたクリープ耐性 を持っているためニッケル基超合金は ガスタービンの高温ガス流路部品に 使用されています。機械的能力を最大 限に発揮させるためには、これらの材 料を単結晶として鋳造する必要があり ます。この業界では通常、従来型の鋳 造または方向性凝固ブレードを使用し ています。統合計算材料工学技術分野 のリーダーであるケステック社は、1 % のレニウム(次世代の高性能IGTブレー ド合金よりも低い割合)を含む鋳造可 能な新しい単結晶ニッケル超合金の 開発に成功しました。これにより、高 い鋳造歩留まり率と優れた用途特化 型性能が実現し、効率性も新たなレ ベルにまで上がりました。これは、より コスト効率の高い解決策でもあります。 目標達成です。

ニッケル産業-その3

ニッケル・ラテライト鉱の高圧酸浸出 処理

このシリーズの第3弾では、電池市場 に混合水酸化物(hydroxide)やニッ ケル・コバルト混合硫化物(mixed sulphideprecipitates)などのニッケ ル中間製品を供給するためその生 産能力を増強している高圧酸浸出 法(HPAL)を見て行きます。この中間 製品は電池生産に必要な純硫酸ニ ッケルを製造するのに使われます。

HPAL の起源は70年ほど前にさかのぼりますが、この技術はニッケルベース電 池の需要に応えるためますます広く普及しています。

HPAL の概念はシンプルです:硫酸を 加え、温度を上げて鉱石全体を溶かし ます。余分な硫酸を中和し、不要な金 属を除去し、目的とする金属を回収し ます。

浸出工程

浸出は約 250℃ の高圧の下で行われ、 鉱石中の鉄及びアルミのほとんどは残 渣中に残り、一方有価金属は溶液中に 溶け出します。この浸出工程は高温で 酸性が強く、極めて激しいものであり、 例えばチタンと炭素鋼を爆着(この方 法により、腐食に対する耐性を持つ高 価なチタンの薄い層と、強度を確保す るために比較的安価な炭素鋼の厚い層 が組み合わさります)したような高性能 な素材が必要とされます。

湿ったラテライト鉱は水と混ぜられ 粗い物質を除去するスクリーンにか けられた後、粘性はありながらもまだ ポンプ輸送可能な流体になるように 濃縮されます。それからこのスラリー は反応温度まで加熱されます(加 熱エネルギーの90%以上はスラリー 中の固形物ではなく水分に使われ ます)。加熱のコスト削減のため排 出されるスラリーは大気圧まで徐

々に減圧され、発生するフラッシュ 蒸気(再蒸発蒸気)はこの工程の予熱 源として再利用されます。

余剰酸の中和

金属回収の前に余分な酸は粉砕石灰石 を添加して中和し石膏残渣とします。残 渣の混合物は通常向流デカンテーショ ン(CCD)により洗浄し尾鉱として堆積さ れます。標準の操業基準では、尾鉱は 加工工場の隣接地にある技術的管理さ れた尾鉱管理設備に濃縮スラリーとし て堆積され、固形物の沈殿により分離さ れた流体がリサイクルされます。

金属の回収

酸が中和された溶液にはニッケルとコ バルトが主に含まれ、亜鉛及び銅が少 量、またかなりの量の鉄、アルミ及びマ ンガン、さらに高濃度のマグネシウムが 含まれます。銅及び亜鉛は経済価値は それほどない(通常総価格の2%以下) ため除去され、廃棄物または副産物と して処理されます。ニッケル及びコバル トはいくつかの方法で回収可能です。

最初の HPAL プラントは 1950 年代後 半にキューバのモア・ベイに設置されま した。そのプラントとその後に続くいく つかの施設では、水素硫化物を使用し

湿った鉱石 (リモナイト)

硫酸 HPAL

蒸気 蒸気リサイクル

水酸化マグネシ ウム/苛性ソー ダまたは硫化 水素 ≈ 250°C

石灰石

中和 残渣分離

尾鉱

なる金属は許容レベルまで除去する必 要があります。

HPAL の新世代

石灰石

金属除去

金属除去

廃水

ニッケル・ コバルト 混合水酸 化物また はニッケ ル・コバ ルト混合 硫化物 中間体

この 10 年でニッケル・コバルト混合水 酸化物(MHP)の人気が非常に高まりま したが、このプロセスは苛性ソーダまた は水酸化マグネシウムを使用して低品 位中間体を沈殿させます。この中間体 はニッケルとコバルトを約40%含みます が含水率が非常に高く(重量で約 50%)、 そのため出荷製品のニッケルとコバルト の重量は約 20% に過ぎません。

廃水の処理

有価金属すなわちニッケル・コバルトが 回収された後は、かなりの廃水が残り ますが、これには多量のマグネシウムと 一定量のマンガンが硫酸塩として含ま れます。節水のため一部はリサイクルさ れますがこれによりマグネシウムのレベ ルは上昇し、最終的にはマグネシウムを 生産工程から除去するために排出する 必要があります。

乾燥した気候ではこの廃水は蒸発し、 蒸発池で金属硫酸塩は結晶化されま すが、一方熱帯気候では廃水は海に放 出されます。放出前に、クロム、マンガン、 ニッケル及びコバルトなど規制の対象と

HPAL 設備は操業開始時期にかなりの 問題に直面することがあり、その多くは チタンのライニングされたHPALオート クレーブや、ゴムやレンガのライニング の容器といった多層構造材料を必要と する過酷な条件や、複数の工程がすべて の段階で同じ速度で作用する必要があ るなどに起因しています。新世代のこれ ら設備がインドネシアで始まっています が、今まで一連の設備の建設を通して 得られた各社の経験が、ついに初日か らうまく稼働することに繋がったように 見えます。

HPAL 設備に係る環境問題はロータリ ーキルン電気炉(RKEF)とは大幅に異な ります:即ちHPALは、特に現場で硫酸 が製造される場合には温室効果ガスの 排出が比較的少なくなります。しかし恒 久的な貯蔵を必要とするかなりの量の 処理工程の残渣が生じるのは事実です。 貯蔵はリスクを最小限にとどめる方法 でできますが、HPAL の残渣の影響を 完全に無くすには処理工程に対しサー キュラーアプローチ(循環手法)を採用 し残渣を鉄鉱石や骨材など異なる材料 に再加工することしかありません。これ は既に検討されていますが化学反応が 複雑なためなかなか困難です。

向流デカンテーション(CCD)洗浄とは 複数の連続するシックナーでの洗浄 により残渣から有価物を含む溶液を 洗い流します。各々の段階で前のシッ クナーから来るスラリーは次のシック ナーの洗浄液と混合され,濃縮されて 次に送られます。

最終段階では水または貧液で洗浄さ れ溶液は工程をさかのぼり固形物は さらに下工程に行きます。

このプロセスでは有価物の濃度が各 段階で約 50% ずつ減少するため、6 または7回の洗浄が終了した時点では 97%以上の有価物が回収されます。 て混合硫化物中間生成物(MSP)を沈 殿させ、これを精製してクラス1ニッケル にする方法を採用しました。MSP は約 50〜55% のニッケルとコバルトを含む 湿った粉末として、そして、非常に純度 が高く、密度が大きく、沈降性にも優れ ているため、輸送するのに適しています。

CCDの洗浄プロセス

中和されたろ過スラリー  固形物 35%

第1シック ナー

洗浄水

第2シック ナー

製品溶液

第3シック ナー

尾鉱スラリー …固形物 ・45%

戦略的かつ極めて重要な原材料

ニッケルの位置づけは?

特定の原材料を「極めて重要な」あ るいは「戦略的」と指定することがあ ります。それはこれらの原材料が主要 産業、経済の安定、国家安全保障、 そして技術革新に不可欠であるため です。こうした材料の安定した供給が なければ、防衛、エネルギー、 通信、電子機器などの産業が大き な混乱に直面する可能性がありま す。

ニッケルは、そのような原材料の一 つであり、世界中の政府から注目を 集めています。

原材料は、自動車製造や機械工学から電子機器に至るまで、ほとんどすべての 主要な産業のバリューチェーンの基盤を成しており、これらのバリューチェーンは、 経済、産業、そして市民社会にとって欠かせないものです。

しかし、これらの原材料の重要性は様 々な理由により不足するまでしばしば 見過ごされがちです。供給と需要の不 均衡、地政学的要因、リサイクルの限 界など不足する理由は多岐に渡ります。

過去数十年間、鉄鉱石、原料炭、レアアー ス、マグネサイト、シリコンの不足が産 業バリューチェーンを混乱させ経済全 体に影響を及ぼしてきました。

これに対応して 2000 年代初頭には、 特に米国やEUをはじめとするいくつか の地域で、原材料の「重要性評価」が 開始されました。これらの評価は、供 給リスクを予測し、必要不可欠な原材 料の安定的な供給を確保することを目 的として行われました。現在、25 か国 以上がこのような評価を実施しており、 自国の経済や産業にとって重要な原材 料を特定するとともに、供給リスクを 軽減するための対策を定めています。

原材料の重要性の定義

では、原材料の重要性はどのように定 義されるのでしょうか?「極めて重 要」な原材料を判定する基準は地 域によって多少異なりますが、その 基本的な原則は概ね一貫していま す。供給リスクと経済的重要性とい う二つの主要な要素によりほとんど の評価は決まります。原材料が極め て重要であると判断されるのは、必 要不可欠な産業バリューチェー

ンにおいて、重要な役割を果たしてい るにもかかわらず、供給が途絶える可 能性がある場合です。こうした供給リス クは、生産が地理的に少数の国や企業 に集中していること、貿易関係が不安 定であること、リサイクル・インフラが 不十分であること、または有効な代替 品がないことに起因することが多いの です。

極めて重要か戦略的か

こうした中で次第に注目を集めてい る第二の用語が「戦略的」原材料で す。EU では「戦略的」は、重要ではある が現在のところ供給リスクがないため 「極めて重要」とはみなされない原材料 を表現するのに使われています。

ニッケルは、多くの地域で「極めて重 要」な原材料と広く認識されており、特 に米国、カナダ、中国、日本がその代 表的な例として挙げられます。でも何 故でしょうか?ニッケルが極めて重要 であると位置づけされるのは、エネル ギー転換とデジタルへの移行という面 において極めて重要な役割を担ってい ることに起因しており、特に電気自動車 (EV)用バッテリーや低炭素発電技術 の重要な構成要素となっているからで す。これらの技術への需要が拡大する につれ、ニッケルの重要性も同様に高 まっています。EUでは、ニッケルは「戦 略的」かつ「極めて重要」な原材料と みなされています。このことはニッケル が現在、経済的に重要であるだけでな

く、今後も、中心的な役割を果たすとの 期待を反映しています。

極めて重要または戦略的な状況の意 味

しかし、ニッケル産業にとって、自社製 品が「極めて重要」または「戦略的」と みなされることには何かメリットがある のでしょうか?ニッケルの必要性がより 強く認識されるようになったことで、安 定供給を確保するためのさまざまな 対策がとられるようになりました。各 国政府は、国内生産を促進するため に、許認可プロセスを簡素化し、リサイ クル技術に投資し、そしてニッケルの豊 富な地域へのアクセスを確保するため 外交努力を始めています。ニッケル産 業にとってこのような政策措置は、採 掘、加工、リサイクルの取り組みに対す る支援の強化や、研究開発資金の増額 につながります。

極めて重要かつ戦略的 耐腐食性や高温強度といった卓越した 特性を持つ金属であるニッケルは、現 代社会において欠かすことのできない 役割を果たしています。インフラから、 最先端技術に至るまで、あらゆる分野 で使用されているニッケルは、世界経 済の中核における地位を確固たるもの にしています。そういうわけで、ニッケ ルは現在も将来も不可欠な役割を果 たす、極めて重要で戦略的な原材料な のです。.

クリティカル・マテリアルズ・アセス メント(CMA)

極めて重要 戦略的

未来を動かす:

ニッケルベース電池の進歩

ニッケルは、この数カ月の間に発表 されたEVや電力用電池分野におけ る多くの重要な進展の一翼を担っ ています。

電気自動車(EVs)の急速な普及に伴い、その電池の性能、安全性そしてコスト 効率の向上が注目されています。この技術革新の核となるのはニッケルで、多く のEV電池の化学物質において極めて重要な材料となっています。

ニッケルはリチウムイオン電池のさま ざまな配合に使用されており、エネル ギー密度の向上に寄与することで、車 両の走行距離を伸ばす役割を果たし ています。そして EVs で広く使用されて いる NMC(ニッケル・マンガン・コバル ト)電池に不可欠な構成要素となってい ます。これらの電池は、エネルギー密 度、熱安定性そしてコストのバランス が取れているのが特長です。自動車メ ーカーが走行距離の延長を目指す中 で、 NMC 正極におけるニッケル含有量 を増やす傾向が見られます。

テスラ

例えばテスラは電池の設計を従来

の NMC 811組成(ニッケル 80%)か ら、NMC  955 組成(ニッケル 90%、マン ガン5%、コバルト 5%) に移行すると発 表しました。この調整によりバッテリー セルのエネルギー密度がさらに向上す るとともに、コバルトへの依存度がわ ずかながら低減すると期待されていま す。さらに、テスラは NMC 973 組成(ニッ ケル90%、マンガン 7%、コバルト 3%) の実験も行っています。これらの化学 物質におけるニッケル含有量の増加は、 電池容量の向上や走行距離の拡大を可 能にしますが、一方でセルの安全性と 寿命のバランスをとることは依然として 技術的な課題となっています。

より効率的な正極

ニッケルベース電池における重要な技 術的進展のひとつは、最先端の正極材 料とより効率的な製造プロセスの進歩 です。電池材料のリーダーであるノボニ クス社は、ニッケルベースの正極を合成 するための完全乾式で、廃棄物ゼロの 方法を導入しました。この革新的なプロ セスは溶剤が不要で廃棄物を出さない ため、電池製造における環境負荷を大 幅に削減します。さらに、この技術は正 極材料の性能を向上させ、より効率的 で持続可能なものにしています。

高エネルギー密度と安定性の両立 LG エナジー・ソリューション(LGES)社 も、2025 年までに高電圧・中ニッケル 電池を量産する計画を立てており、進 歩に貢献しています。これらの電池 は、EVに不可欠な高エネルギー密度と 安定性が両立するよう設計されていま す。

EV 用電池分野におけるもう一つの重要 な進展は、パナソニックによる 4680 型 円筒形リチウムイオン電池の量産です。

このバッテリーフォーマットは容量が従 来の 2170 型セルの 5 倍となり、車両の 走行距離が延び、バッテリーパックに必 要なセルの総数が減るため EV 業界に 革命をもたらすと期待されています。

パナソニックの和歌山工場が 4680 型 電池の主要生産拠点となります。同社は、 この施設に先進的な生産方式を統合し ていますが、さらにこの施設は世界的な 製造の実証拠点としても機能する予定 です。4680 型セルは EV の生産コストを 大幅に削減すると期待されており、これ により電気自動車がより広範な市場に 普及することになるでしょう。

ニッケル・亜鉛電池 ニッケルは依然として高性能 EV 電池の 重要な材料ですが、代替となる化学物 質も研究されています。ニッケル・亜鉛 (NiZn)バッテリーソリューションのリー ダーであるジンクファイブ社は即時電力

用途の電池を生産するため、米国での 事業を拡大しています。NiZn電池はリチ ウムイオン電池に比べて出力が高く、安 全性にも優れていることから注目を集 めています。これらの電池は、データセ ンターやグリッドストレージなど、迅速 な電力供給が求められる用途に特に有 用です。

NiZn 電池は、リチウムイオン電池に比 べてエネルギー密度が低いため、大規 模な EV への導入にはまだ適していませ んが、その安全性に加え、環境面でも優 れているため、特定の用途では魅力的 な選択肢となります。

全固体電池

将来を見据えると、今までのリチウムイ オン電池の液体電解質を固体電解質 に置き換えた全固体電池は、より高い エネルギー密度と安全性の向上を実 現する可能性を秘めています。メルセデ ス・ベンツ社はファクトリアル社と共同 で、”ソルスティス”プロジェクトのもとで 全固体電池を開発しています。これらの 電池は、ニッケルを多く含む正極材料の 進歩もあり、現在のリチウムイオン技術 と比べてエネルギー密度が 80% 向上す ると期待されています。

ニッケルを核として 電気自動車産業が成長を続ける中、バ ッテリー技術におけるニッケルの役割 はますます顕著になっています。テス ラが採用している高ニッケル正極から LGES の高電圧中ニッケル正極に至るま で、ニッケルは走行距離の延長、性能の 向上、コストの削減を実現する技術革 新の中核を担っています。同時に安全 添加剤や NiZn などの代替化学物質、そ して全固体電池の進展が、より安全で 効率的な EV 電池の未来を垣間見せてく れます。

全固体電池は、ニッケルを多く含む 正極材料の進歩もあり、現在のリチ ウムイオン技術と比べてエネルギー 密度が 80% 向上すると期待されて います。

高温で 輝くニッケル

これらのトレイは、925°C(1700°F) で浸炭熱処理を施した 後、845°C(1550°F)で中性硬化 処理を受ける歯車などを積み重ねる ために使用されます。縦方向に均等 な間隔でトレイを配置した柱は押出 し鍛造合金 RA330® で作られてい ます。従来、低い延性により真っ直ぐ に修正できず、寿命が短かった鋳造 合金の柱に代わるものとして採用さ れています。

自動車、航空宇宙、エネルギーなどの産業において、部品の特性を最適化 するための多様な熱処理技術は、重要な役割を担っています。特に現在では、 電気自動車においてその重要性が一層増しており、熱処理を施した部品は、 軽量化による走行距離の延長や、全体的な性能向上の実現において欠かせ ない要素となっています。

300 シリーズのニッケル含有ステン レス鋼およびニッケル基合金は、熱 処理炉の治具に最適な材料です。こ

れらの合金は、浸炭(炭素を金属表 面に拡散させる処理)や窒化処理 (窒素を使用した同様の処理)により、 硬く耐摩耗性のある表面を保持しつ つ、強度と延性に優れたコアを維持 します。トレイやベルト、その他の治 具に使用されるニッケル含有合金は、 多数のサイクルを経ても高い耐久性 を発揮します。

これらの材料は、高温下でも優れた 強度と延性を保ち、酸化雰囲気でも 優れた性能を発揮します。さらに、様 々な形状で供給され、加工や溶接が 容易です。高温用途に特化したニッケ ル基合金は、300 シリーズを基にし、 過酷な条件下で必要となるより優れ た特性を持ちます。

これらの合金の鋳物及び展伸材は 共に高温用途に使用されます。鋳物 は最終形状に近く、クリープ強度を 高めるために炭素含有量が多い場 合があります。例えば、合金 HK 40 (UNS J94204)は 0.35〜0.45% の 炭素を含み、タイプ310S(S31008) は 0.08% の炭素を含んでいます。い

ずれも 25% の Cr と 20% のNiを含み、 その他の特性は類似しています。鋳 物は展伸材よりも壁厚が大きく、多く の用途で有利ですが、重さが問題と なる場合があります。さらに、鋳物は 結晶粒が大きいため、溶接性に問題 が生じることがありますが、適切に 管理すれば解決できます。

高温合金は、砂型鋳造、インベスト メント鋳造(ロストワックス鋳造等)、 遠心鋳造などの方法で製造できます。 一方、展伸材(プレート、シート、パイ プ、棒など)は、溶接や部品加工を目 的として設計されています。これらの 材料は低炭素であるため、溶接性が 増し、特に修理時には有効です。すべ ての設計には、高温での金属膨張を 考慮し、歪みを避けるための配慮が 必要です。合金 330(N08330)は熱 処理でよく使用され、耐酸化性や延 性、浸炭環境でのシリコン付与特性 を持ちます。展伸材には、クリープ強 度や耐酸化性、金属組織の安定性を 高めるために、セリウムや窒素などの 元素が添加されることがあります。

一般的に、ニッケル含有合金はほぼす べての高温用途において優れた性能 を発揮します。

高エントロピー合金

従来の合金設計では、鉄、銅、アルミニウムなどの主要元素がその特性に基づ いて選ばれ、その後、特性を向上・強化させるために少量の他の元素が加えられ ます。最もシンプルな例としては鋼があり、これは鉄(約99%)と炭素(最大約 1 %)の合金です。炭素は鋼の強度を大幅に向上させます。より複雑な合金の一例 としては、タイプ 304L ステンレス鋼(UNSS30403)があり、その組成はおおよ そFe72%、Cr18%、Ni8%です。CrとNiは、加工性の高い耐食鋼合金を製造する ために不可欠な元素です。

2003 年、研究者たちは現在「高エント ロピー合金(HEA)」として知られる新 しいタイプの合金を発見しました。こ の合金は、5 種類以上の元素が等しい 原子量で構成されています。初期の研 究では、CoCrFeMnNi からなる合金 が使用され、優れた低温機械的特性と 高い破壊靭性を持つことが確認され ました。試験温度を室温から -196°C (-321°F)に下げると、延性と降伏強度 の両方が向上しました。

この合金は、低温用途の構造材料や、 高い靭性を活かしたエネルギー吸収 材料としての応用が期待されます。

さらに、少量のアルミニウムを加えた Al 0.5 CoCrCuFeNi 合金は、高い疲労寿 命と耐久限界を持ち、従来の鋼やチタ ン合金を凌駕する可能性があることが 示されました。しかしながら、結果には 大きなばらつきがあり、さらなる詳細 な調査が求められます。

アシュビーチャート:降伏強度と破壊靭性の関係

ニッケル合金 \ ステンレス鋼 \ CrMnFeCoNi \ ニッケル基 超合金 / CrCoNi / 金属および合金 ——チタン合金 高エントロピー合金 \

高エントロピー合金(HEA)は、優 れた機械的特性と耐腐食性を兼ね 備えた先進的な材料として注目され ています。特にニッケルを含むHEA は、その卓越した強度、延性、酸化 耐性において際立っています。しか し、これらの合金に使用される金属 は高価であるため、応用範囲に制約 をもたらす可能性があります。それ にもかかわらず、これらの合金が持 つ潜在的な優れた特性は、高温強 度や熱安定性が求められるジェット エンジンや極超音速機のような用 途において、また高い強度と靭性が 要求される自動車分野や優れた靭 性が必要な極低温環境での用途に おいて、大きな利点をもたらす可能 性を秘めています。

花こう岩

降伏強度と破壊靭性の関係を 示すアシュビー・プロットにおい て、CoCrNi ベースの高エントロピー 合金は、記録上、最も損傷に耐える 材料の一つであることが示されてい ます(ベアンド・グルドヴァッツ)。 プロットの軸は対数軸であるた め、102 は 100 の 100 倍に相当し、こ れにより高エントロピー合金(HEA) が他の既知のエンジニアリング材料 と比較して、降伏強度および破壊靭 性において顕著な向上を示している ことが明らかになります。

Geir Moe は専門技術士であり、ニッ ケル協会の技術サポート・サービス の責任者です。同氏は世界各地に 配属された素材の専門家らと共に、 技術的アドバイスを求めるニッケル 含有材料のエンドユーザーや仕様 を設定する方々のサポートをしてい ます。同氏の専門家チームは、ステ ンレス鋼、ニッケル合金、ニッケルメ ッキなどの幅広い用途に関する技 術的なアドバイスを無料で提供し、 ニッケルを安心してご利用いただけ るよう努めています。

専門家に聞く

技術サポートに寄せられる 【よくある質問】

Q:海から約 2km 離れたビルの屋上にソーラーパネルを設置してお り、取り付けブラケットはアルミニウム製で、中央のボルトはタイプ304 (UNS 30400)ステンレス鋼製です(ワッシャーを使用せず、ステンレス鋼が 直接アルミニウムと接触しています)。このような構造において、アルミニウ ムとステンレス鋼の異種金属接触による腐食のリスクについて懸念するべき でしょうか?

A: このような大気に曝露される環境で は、結合部の電解腐食を避けるために、 アルミニウム合金にはステンレス鋼製 の結合材が推奨されます。アルミニウ ム合金は、ステンレス鋼をガルバニック 腐食から保護しますが、これは両者が 湿った状態であり、かつアルミ合金と ステンレス鋼の接触部でのみ効果があ ります。さらに、大気に対して本質的に 耐性のあるアルミニウムおよびステン レスの合金の選定も重要です。

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海から 2 km(1.24vマイル)の距離では、 塩分(塩化ナトリウム)が雨水や結露 水とともに堆積し、一部の合金に孔食 や隙間腐食を引き起こす可能性があり ます。この距離で塩分がどの程度蓄積 するかは、温度、卓越風の強さや方向、 降雨頻度、湿度など、いくつかの要因 によって異なります。

理想的には、海洋環境では Al-Mg(5000シリーズ)や Al-Mg-Si(6000シリーズ)が最も適して います。ステンレス鋼の場合、304 は海 洋大気中で隙間腐食に悩まされること があり、316(S31600)がより適切な選 択です。ガルバニック腐食に関しては、 すべてのステンレス鋼の電気化学的電 位は似ており、304 と 316 の間に大き な差はありません。ガルバニック腐食 に影響を与える主な要因は、二つの金 属の面積比と、より貴(正の電位)な 金属のカソードとしての効率です。

大気中の腐食では面積比はほぼ1:1で あり、ステンレス鋼は湿った大気中で は効率的なカソードとして機能しませ ん。これが、ステンレス鋼がアルミニウ ム合金の結合材として使用できる理由 です。もし 304 を使用する場合は、毎 年結合部の点検を行い、腐食の有無 や進行状況を確認することが重要です。

腐食が進行しすぎている場合は、影 響を受けた結合部材の交換が必要で す。

ニッケルはナノワイヤからステンレス鋼合金まで様々な形で存在します。しかし如何な る特性がニッケルを日常品においても不可欠な要素としているのでしょうか?

なぜニッケル?

クロム仕上げでのニッケル

ニッケルメッキは一見贅沢に思えるかもしれませんが、実際には日常的に使用する製品を長持ちさ せ、光沢を保ち、魅力的に見せるための優れた方法です。

では、なぜニッケルを使用するのでしょうか?ニッケルは、物質を強化し、錆を防止するととも に、表面を滑らかで輝かせます。そのため、お気に入りの機器や自転車、さらには車の部品などが、 輝きと強度を長期間保ちます。まるで鎧のように防護として機能しながら、同時にその素晴らしさ を引き立ててくれるのです!

ニッケルメッキが施されるものは多岐にわたります。自 転車や車、さらには蛇口やシャワーヘッドの輝く仕上げ を思い浮かべてください。これらは通常、ニッケルが下 地となり、その上にクロムや金などの別の金属の薄い層 が施されています。

UNS番号別詳細

さらに、エレクトロフォーミング(電 鋳法)という技術もあります。これ は、物体の精密なコピーを作成 する方法で、形状やサイズが正 確であることが求められる場 面で非常に便利です。ニッケ ルは、物質の機能性を向上さ せ、耐久性を高める役割を果 たします!

本誌に記載されたニッケル含有合金およびステンレス鋼の化学的組成 (重量パーセント)

このステンレス鋼で織り成されたペ アの象は、2019 年11月に設置され、

世界で唯一無二の存在として際立っ ています。

材料:

厚さ 1.2 mm タイプ 304-2B

製作業者:

象の彫刻:ヴィジョン・イン・フォ ームズ株式会社

彫刻の基盤プレート:

タパニン株式会社

アーティスト:ソムサック・コンナパク ディー、ヴィジョン・イン・フォームズ

株式会社

スワンナプーム国際空港の 象たち

タイの伝統と現代性を象徴する二体の壮麗なステンレススチール製の象の彫刻が、 バンコクの国際的な玄関口であるスワンナプーム空港に華を添えています。これ らの等身大の彫刻は、著名なタイのアーティスト、ソムサック・コンナパクディーに よってデザインされました。

ステンレス鋼は、その優れた耐久性 と芸術的魅力を兼ね備えているため、 大規模な公共芸術作品に最適な素 材として選ばれました。高度に磨かれ た仕上げはモダンな印象を与え、象を 題材にすることで、タイ社会における 象の伝統的な役割…力強さ、保護、そ して王室の象徴…と深く結びついてい ます。

ステンレス鋼で作られた大きい方の象 は、高さ3メートル(9.8フィート)、重 さ約5トン(5.5ショートトン)という圧 倒的な存在感を誇ります。この二つの

彫刻は、滑らかで反射する表面が空 港を明るく照らし、世界中から訪れる 人々の称賛を集めています。

空港の装飾を超えたこれらの彫刻 は、象徴的なシンボルとして旅行者に 立ち止まり、思いを馳せ、タイの精緻 な芸術と深い文化に触れるよう促して います。サテライトターミナル1に展示 されており、これらの彫刻は公共空間 にアートを統合するという広範な取り 組みの一環として位置づけられていま す。

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