PSE お役立ち情報 Vol.13
モバイルバッテリーにおける PSE 対応について ~~モバイルバッテリーも電安法の対象になりました。~~
今回は、近年のスマホ等、モバイル端末の普及と共に事故が多発している、リチウムイオン 蓄電池が組み込まれたポータブルリチウムイオン蓄電池(いわゆるモバイルバッテリー)に ついてのお話です。 ◆モバイルバッテリーとは? 一般的にリチウムイオン蓄電池と充電装置・昇圧装置等と共に、同一筐体に組み込まれたもので、外部 電源から内部のリチウムイオン蓄電池を充電し、それに蓄えられた電荷を、他の機器(スマホやタブレット 等)の充電や駆動に使用するものを言います。海外などでは Power Bank(パワーバンク)と称される ことも多いようです。 (改正の経緯) そもそもリチウムイオン畜電池は直流(DC)製品であり、本来、交流(AC)製品を主とした電気用品 安全法の対象品目ではありませんでしたが、近年のスマホやタブレットなどのモバイル端末の普及と共に、リ チウムイオン畜電池の事故が多発したため、平成 20 年より先ずはリチウムイオン蓄電池のみ電気用品と して規制対象となり、現在に至るまで何度かの改正を行ってきた経緯があります。 今まで電気用品の範囲の解釈では、一般的に充電装置、昇圧装置等とともに同一筺体に組み込まれ、 容易に取り外すことができないもの(いわゆるモバイルバッテリー)の場合、リチウムイオン蓄電池は機器の 一部と見なされるため、この状態での輸入・販売は、電安法上リチウムイオン蓄電池の輸入・販売行為と は解さず、対象外として取り扱われてきました。しかしながら、近年モバイルバッテリーにおける事故も多いた め、今回(平成 30 年 2 月 1 日)の改正により、これらの製品についても規制の対象となりました。 (今後のスケジュール) 改正:平成30年2月1日。ただし、この通達による改正後の規定のうち、Ⅲ(9)※の適用につい ては、改正の日から1年間は、なお従前の例によることができる事となっておりますが、平成 31 年 2 月 1 日以降は ※
の表示の無い製品の製造、販売は出来ませんので、今から対応が必要です。
ポータブルリチウムイオン蓄電池(いわゆるモバイルバッテリー)等の主として電子機器類の外付け電源として用いられ
るものは、充電装置や昇圧装置等とともに同一筐体に組み込まれていても機器ではなくリチウムイオン蓄電池と解釈し、 対象として取り扱う。
以下、配信中の PSE お役立ち情報(Vol.7)と重複する内容もありますが、併せてご覧ください。
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それでは、どのような製品が対象となるのでしょうか? (1)PSE 法におけるリチウムイオン蓄電池の用品の範囲 (電気用品安全法施行令)
単電池一個当たりの体積エネルギー密度が四〇〇ワット時毎リットル以上のものに限り、 自動車用、原動機付自転車用、医療用機械器具用及び産業用機械器具用のものを除く。
体積エネルギー密度ってなんだ❓
では、単電池一個当たりの体積エネルギー密度が四〇〇ワット時毎リットル以上って?
(2)単電池の「体積エネルギー密度」の算出方法
体積エネルギー密度(Wh/l)=(定格容量(Ah×定格電圧(V))/ 体積
つまり、モバイルバッテリーの場合、内部に使用されている単電池 (円筒形、角形等)の一個当たりの体積エネルギー密度を把握する必要がありますので、 一概に組電池等の外観からだけでは判断できません。
原則として、これらは電池製造事業者(電池メーカー)からの仕様書において 提示される、公称値(寸法や体積エネルギー密度)を採用し判断する事に なっています。
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◆円筒形(18650 バッテリー)の事例 ※円の直径 18mm、高さ 65mm、定格容量 2Ah、定格電圧 3.7V の場合 体積エネルギー密度≒447(Wh/l)
・・・対象となる
◆角形バッテリーの事例 ※高さ 52mm、幅 34.5mm、厚み 9.8mm、定格容量 2Ah、定格電圧 3.7V の場合 体積エネルギー密度≒421(Wh/l)
・・・対象となる
(3)基準適合確認
上記の判断により対象となったリチウムイオン蓄電池は、電気用品の技術基準の解釈(通達) 別表第九 リチウムイオン蓄電池
または、別表第十二(J62133(H28):JIS C 8712:2015/
ポータブル機器用二次電池(密閉型小型二次電池)の安全性)による基準適合確認が必要で あり、当該規格には単電池(セル)及び組電池(パック)双方の要求が網羅されています。 なお、平成 30 年 2 月現在、日本のデビエーション(JP デビ)はありませんので、 IEC62133(2012)によるレポートは活用できません。 ※但し、採用可能な規格、版などは随時更新されますので、都度確認が必要です。
特に海外から輸入する場合、その製造元等から、 「海外規格(IEC 規格等)による評価が行われている。」 「CE マーキングもあり安全」等と説明され、これらを 基準適合確認のエビデンスとして販売できると理解されている事業者様もおられますが、 注意が必要です。このような状態で
を付けたり、販売する事は出来ません。
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特に近年、市場での需要も多く、比較的小型、安価である為、特に多くの輸入事業者の方が 輸入販売の検討をされる事が多いようです。しかしながら実際には発熱、発煙、発火等の事 故が多いのも事実であり、その責任は全て輸入、製造事業者に求められます。 粗悪品は
リチウムイオン蓄電池は特定以外の電気用品
であるため、その基準適合確認の方法は
事業者に委ねられますが、是非、信頼のおける検査機関等で確認を行う事をお勧めいたしま す。勿論、基準適合確認のみならず、事業の届け出、自主検査、および表示にいたるまで、 電安法における適切な対応が必要です。また、仮に電安法で非対象となる電池であっても、 最低限の電池の安全確保、確認は必要と考えますので、事業者の責任として適切な対応を行 うことが望まれます。
■参考情報
東京消防庁や NITE(独立行政法人製品評価技術基盤機構)等のサイトでも、リチウムイオン蓄電池の発火 事故、実験などの情報、映像を公開しております。 モバイルバッテリーはとても便利なものですが、その反面、誰でもその取り扱いを誤ると、重大な事故 に繋がる非常に危険な製品でもあります。 注)本情報は平成 30 年 2 月時点の情報をもとに作成されたものです。
弊社では設計段階から製造、輸入、試験、届出及び、計測器の販売並びに校正にいたるまで、PSE(電安法)に 関するサービスをワンストップでご利用頂けますので、お困りの方はご相談ください。
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