日本リサーチ| 2024年8月
サステナビリティ マーケットサマリー
2024年秋


環境 健康
WELL
(前期比+6.5%)
CASBEE-建築 431件 (前期比+7.2%)
CASBEE-不動産
1,836件
(前期比+8.0%)
※CASBEEはB+以上を対象とする。
Fitwel
CASBEEウェルネスオフィス
57件
(前期比+11.8%)
5件
(前期比±0.0%)
160件
(前期比+6.0%)
※CASBEEはB+以上を対象とする。

認証取得件数が上半期で前年通年に迫る
LEED
第 2 四半期の認証取得件数は 17 件で、 2009 年からの累計件数は 279 件 ( 前期比 +6.5% ) となった 。 上半期だけで 2023 年通 年の取得件数に迫る勢いだ 。 当期にプラチ ナを取得した事例はみられなかった。
ランク別 レーティングシステム別
プラチナ 0件 BD+C 7件
ゴールド 12件 ID+C 8件
シルバー 4件 O+M 2件
標準認証 1件 ND 0件
CASBEE-建築
第 2 四半期の認証取得件数は 32 件で 、 当期 末時点で有効な認証を有する物件は 431 件 ( 前期比 +7 2% ) となった 。 物流施設で CASBEE- 建築の取得が安定的に増加してい る。
ランク別 セクター別
S 7件 オフィス 8件
A 23件 リテール 0件
B+ 2件
CASBEE-不動産
物流施設 12件 ホテル 2件 レジデンシャル 5件
その他 5件
第 2 四半期の認証取得件数は 133 件で 、 当期 末時点で有効な認証を有する物件は1,836件 ( 前期比 +8 0% ) となった 。 当期の取得件 数は前期比で -55%と減少したが、前年同期 比では+68%に増加している。
ランク別 セクター別
S 52件 オフィス 48件
A 80件 リテール 11件
B+ 1件
物流施設 12件 レジデンシャル 62件
LEED 認証件数
出所: USGBC公開データをもとにJLL作成
CASBEE-建築 認証件数
※ 有効期限:新築・改修 3年 / 既存 5年 ※ 有効期限:5年
出所: IBECs公開データをもとにJLL作成
CASBEE-不動産 認証件数
出所: IBECs公開データをもとにJLL作成

WELLのプラチナ認証をオフィス5物件が取得
WELL
第 2 四半期の認証取得件数は 6 件で 、 当期末 時点で有効な認証を有する物件は 57 件 ( 前 期比 +11.8%)となった。当期にプラチナを 取得した事例として、 Azabudai Hills Mori JP Tower Office & Retail(WELL v2 Pilot: Office Spaces)が挙げられる。
ランク別 セクター別
プラチナ 5件 オフィス 6件
ゴールド 1件 リテール 0件
シルバー 0件
物流施設 0件
ブロンズ 0件 レジデンシャル 0件
その他 0件
Fitwel
第 2 四半期の認証取得件数は 0 件で 、 当期末 時点で有効な認証を有する物件は 5 件 ( 前 期比 ±0.0% ) となった 。 Fitwel が v2.1 から v 3 に移行する時期のためか、当期は世界的 にも取得件数が少なかった。
ランク別 エリア別
3つ星 0件
東京都心5区 0件
2つ星 0件 大阪市 0件
1つ星 0件 福岡市 0件
その他 0件
CASBEE-ウェルネスオフィス
第 2 四半期の認証取得件数は 9 件で 、 当期末 時点で有効な認証を有する物件は 160 件 ( 前期比 +6 0% ) となった 。 当期の取得件 数は前期比で -53%と減少したが、前年同期 比では±0%にとどまった。
ランク別 エリア別
S 8件
A 1件
B+ 0件
東京都心5区 3件
大阪市 1件
福岡市 0件
その他 5件
WELL 認証件数
Fitwel 認証件数
出所: IWBI 公開データをもとにJLL作成
出所: fitwel公開データをもとにJLL作成
CASBEE-ウェルネスオフィス 認証件数



LEED v5 における変更ポイント
脱炭素、生活の質、生態系保全・回復への影響を重視
気候変動をはじめとする環境危機が迫り 、 建築物等の環境性能の向上に向けて各国で 法整備が進むなか 、 世界で最も普及してい るグリーンビルディング認証である LEED 認証の進化が続いている 。 LEED 認証は 1998 年の v1 の運用開始後 、 2000 年に v2 、 2007年にv3、2009年にv3の最終アップデー ト版である v2009 、 2012 年に v4 が公開され 、 2016 年には v2009 の登録が不可となった 。 最新版は v4 1 で 、 BD+C ( 建物設計と建 設 ) 、 ID+C ( インテリア設計と建設 ) 、 ND ( 近隣開発 ) は 2019 年に 、 O+M ( 既存 建物の運用 - 保守 ) は 2018 年に公開されて いる 。 2024 年3月には 、 建物運用時の脱炭 素化を一刻も早く実現することが不可欠で あるとして 、 エネルギー効率の向上と GHG 排出量の削減に焦点を当てたLEED v4/v4.1 Energy Update版が運用された*。現在開発 中の v5 は今後も修正が加えられながら 2025 年に運用開始予定で 、 その後は 5 年毎に更 新、2030年にv6が公開される予定である。
* 詳細は JLL 「 サステナブル不動産の道:エネルギー編 」 。
LEED v5 開発スケジュール
2023年9月 O+Mの ドラフト公表
2024年4月 第1回パブリックコメント開始 パブリックコメント期間
2024年中 O+M ベータ版 BD+C ID+C (ベータ版なしで進める)


LEED v5では、Impact Areaとして「脱炭素 (Decarbonization) 」 、「生活の質 (Quality of Life) 」 、 「 生態系保全 ・ 回復 (Ecological Conservation & Restoration)」 の 3 分野が掲げられており 、 各評価項目が このいずれに影響を与えるものか明示され ている。BD+C (New Construction)の場合、 評価は ① 統合プロセス ・ 計画 ・ 評価 、 ② 立 地と交通手段 、 ③ 持続可能な敷地 、 ④ 水の 効率的利用 、 ⑤ エネルギーと大気 、 ⑥ 材料 と資源 、 ⑦ 室内環境品質 、 ⑧ プロジェクト の重要事項と革新性** の8カテゴリーで行わ れるが 、 このうち 、 たとえば ② 立地と交通 手段の評価項目は、LT1: センシティブな土 地の保護、LT2: 公平な開発、LT3:コンパク トでつながりのある開発 、 LT4: アクティブ な交通のための施設、LT5: 交通需要管理、 LT6: 電気自動車 の6項目から成り、「脱炭 素 」 に影響するのは LT3 、 LT4 、 LT5 、 LT6 、 「 生活の質 」 に影響するのは LT2 、 LT3 、 LT4、LT5、「生態系保全・回復」に影響す るのはLT1、LT3という具合である。
**v4の地域における重要項目と革新性が一体化された。
2025年初頭 登録開始
投票・承認 改良
V5では、v4で大幅に増えたRating Systemの種類が①BD+C: New Construction、②BD+C: Core and Shell、③D+C: Commercial Interiors、④O+M: Existing Buildingsの4つにまとめられた。
出所: USGBC資料をもとにJLL作成



脱炭素などに関する必須項目を新たに追加
LEED v5 BD+CおよびID+Cでは、新たな必 須項目 ( 下表 ) が加わったほか 、 v4 で加点 項目だったものが v5 では必須項目に組み込 まれているものもある。
統合プロセス・計画・評価
Climate Resilience Assessment
計画地において現在および将来起こるべき災害 を調査する。特にクリアすべき閾値などはなし。
Social Equity Assessment
主要ステークホルダーやコミュニティメンバー と共に社会的公正チェックリストにて評価する。
Carbon Assessment
関連する項目を用い、竣工後25年までのカー ボン分析を行う。
持続可能な敷地
Minimized Site Disturbance
敷地内の特定種を保護、外来種を除外、開発に よる浸食・堆積を防止し、健全な生息環境をつ くる。
Resilient Site Design
重要設備を洪水による被害から守る。
エネルギーと大気
Operational Carbon Projection and Decarbonization Plan
省エネ・ピーク負荷削減・脱炭素の施策を設計 の初期段階から講じる。
材料と資源
Assess Embodied Carbon LCA(ライフサイクルアセスメント)を行い、 構造・外皮・舗装のエンボディドカーボンを評 価する。削減の閾値はなし。
室内環境品質
Building Accessibility バリアフリーデザインとする。


LEED v5 O+M では 、 新たな必須項目 ( 下 表 ) が加わったほか 、 v4.1 で必須だった交 通や廃棄物の削減量 、 空気質は加点のみと なった。
統合プロセス・計画・評価
Operations Assessment: Climate Action, Quality of Life and Ecological Conservation and Restoration
脱酸素、生活の質、生態系保全・回復のチェッ クリストを完成させる。
また、 v4.1 ではArc による実績値や測定値で の評価が 100 点満点中 90 点を占めていたが 、 v5 では BD+C や ID+C など他のレーティング システムと同じ 110 点満点に戻った 。 さら に 、 築古の建築物の認証を促進するため 、 実績値ではなく各項目のパフォーマンス向 上ストラテジーによる加点が可能となり 、 スコアカード上は合計 110 点以上からユー ザーが選択できるようフレキシビリティが 生まれている 。 なお 、 現在 、 実績値を測る ツールは Arc ではなく 、 Energy Star** を使 用することとなっているが、今後、Arcも再 度使用可能になるか注目される。
*エネルギー、水、廃棄物、交通、人間の体験という5つの KPI について世界中から収集するデータベースと行動パ ターンとの相対比較によりパフォーマンススコアを求める システム。
** * EPA ( 米国環境保護庁 )が1992 年に開始した省エネル ギー型電気製品のための環境ラベリング制度。

出所: USGBC資料をもとにJLL作成



プラチナ認証取得の要件を厳格化
LEED v4 1 までは各加点項目の合計得点が 80 点以上でプラチナ認証を取得することが できたが、LEED v5 では、これに加えて下 表の要件も満たすことが求められている。
BD+C (NC)
エネルギーと大気:
エネルギーと大気:
材料と資源: REDUCE EMBODIED CARBON
BD+C (CS)
エネルギーと大気: ENHANCED ENERGY EFFICIENCY 7
エネルギーと大気: RENEWABLE ENERGY 4
材料と資源: REDUCE EMBODIED CARBON 選択項目


LEED v5 O+Mでは、LEEDの評価項目のほ か、Energy Star* に関する要件もある。
*EPA ( 米国環境保護庁 ) が 1992 年に開始した省エネル ギー型電気製品のための環境ラベリング制度。
エネルギーと大気: ENHANCED ENERGY EFFICIENCY 12
エネルギーと大気: RENEWABLE ENERGY 5
材料と資源: ASSESS & REDUCE EMBODIED CARBON 2
Energy Star* 80点以上
Energy Star* NextGen の直接排出量の目標達成
エネルギーと大気: GHG Emissions Reductions
および Renewable Energy (選択項目2) 2 以上
エネルギーと大気: Decarbonization and Efficiency Plans 5




アグレッシブすぎず先進性あるアップデートに期待
2016 年 11 月の v4 の完全移行後 、 LEED に登 録するプロジェクト数は著しく減少した 。 これを受け、USGBCはv4完全移行後まもな く v4.1 をリリースし 、 特に難しいとされる 項目の難易度を下げるなどの対応に踏み切 らざるを得なかった。
しかしながら、パリ協定*の目標達成に向け て世界的な議論および科学的な検証の深化 が進み 、 各国の規制や自主的な取り組みも 進んできた。 たとえば、 EU taxonomy によ るサステナビリティ規制や SFDR による開 示基準策定 ** 、 CRREM pathway を使用し た建物の脱炭素ロードマップ策定 *** など枚 挙に暇がない。
*2015年の国連気候変動枠組条約締約国会議( COP21)で 採択され 2016 年に発効した 2020 年以降の温室効果ガス排 出削減等のための国際枠組み。世界の平均気温上昇を産業 革命前と比べて2 ℃ より十分低く抑え 、1 5C に抑える努力 を追求することなどが目標として掲げられている。
** 詳細は JLL 「 欧米の環境規制が促す日本不動産市場の変 革」。
***詳細はJLL「サステナブル不動産の道:エネルギー編」。


2024 年 3 月の v4/v4 1 の Energy Update は 、 v5 への全体的なアップデートを待たず行わ れたが 、 LEED の先進性を守るための USGBCの苦肉の策であったのかもしれない。 v4 の発表から 12 年が経ち 、 バージョンアッ プは必至であるが 、 意欲的すぎて市場がつ いていけなかった v4 の失敗を回避し 、 かつ 先進性を失わないバランスが求められる。
なお、LEED v5のImpact Areaの1つに「生 態系保全 ・ 回復 」 が掲げられているが 、 近 年は気候変動に加え 、 気候変動とも密接に 関連する生物多様性や自然資本に対する注 目も高まりつつある 。 2022 年の生物多様性 条約締約国会議 ( COP15 ) で採択された 2021 年以降の生物多様性に関する世界目標 である 「 昆明 ・ モントリオール生物多様性 枠組 」 を受けて 、 英国およびフランスが自 然保護資金ロードマップ発表するなど各国 で主導権を握るための動きも出てきており 注視が必要だ。
2024年6月末時点でLEED認証取得済みプロジェクトの登録年別推移 0 2,000
出所: USGBC公開データをもとにJLL作成



サステナビリティ関連トピック
国際動向
国連責任投資原則 ( PRI ) が投資家向けの 生物多様性ガイド An introduction to responsible investment: Biodiversity for asset ownersを発行。
EU 理事会が改正建築物エネルギー性能指令 (EPBD: Energy Performance of Buildings Directive)を採択。
国連環境計画 ・ 金融イニシアティブ ( UNEP FI ) が投資家向けのフレームワー ク Adaptation & Resilience Impact: A measurement framework for investors を 発表。
欧州委員会が 所有物件 23 棟をベルギー政府 系ファンドBelgian Sovereign Wealth Fund に売却することで最終合意。
Fitwelがfitwel 認証 v3の正式版を発表。
自然関連財務情報開示タスクフォース ( TNFD ) らが欧州サステナビリティ報告 基準 ( ESRS ) と TNFD の指標等の対応表 TNFD-ESRS correspondence mapping を 公表。
民間企業の取り組み
住友林業
鹿島建設
大林組


世界経済フォーラム ( WEF ) が建築分野の レポート Towards Green Building Value Chains: China and Beyondを発表。
科学的根拠に基づく削減目標イニシアチブ ( SBTi ) が進捗レポート SBTi Monitoring Report 2023を発表。
国内動向
日本政府が 改正建築物省エネ法 ・ 建築基準 法等の施行期日を 2025 年 4 月 1 日と定める政 令 等 、 第六次環境基本計画 、 土地基本法に 基づく 「 土地基本方針 」 の変更 を閣議決定 。
GPIF が 第 9 回機関投資家のスチュワード シップ活動に関する上場企業向けアンケー ト集計結果を公表。
日本政策投資銀行グループ ( DBJ ) と日建 設計が 「 ゼノベ ( ゼロエネルギーリノベー ション)プロジェクト」の始動を発表。
東急不動産 オフィス・商業施設・ホテルなど全204施設の再エネ利用実績について正式な審査を受け、 国内事業会社で初となる「RE100」を達成したことを発表。
茨城県つくば市で木造部分の構造材はすべて国産材を採用した木造混構造6階建ての社宅 を着工し、OneClickLCAを用いて設計時からエンボディドカーボンを見える化することに より建てるときのCO2排出量を削減すると発表。
建物の計画初期段階からのZEB設計アシスト、施工や運用時のCO2排出量の見える化、建 物運用データのフィードバックによりライフサイクル全体で建物の脱炭素化を支援するシ ステム「K-ZeXTM」を構築したことを発表。
建物解体後の鉄骨およびコンクリート製の構造部材を新築建物にリユースする国内初の取 り組みに実験棟オープンラボ3新築工事で着手したことを発表。
出所: JLL, 各機関・各社ウェブサイト
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