サステナ第30号

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の利用も結構大事なのだそうです。薪 としての利用を誰が担うのかというと、 障害をもった人たちの就労支援の場と して活用すると、コストが低くて流通 にのるようになって、結果として障害 者の支援としても効果があるというこ とが紹介されていました。 多次元的政策論議には国際関係も重 要です。討論型世論調査で必ずしも議 論できなかったアメリカとの関係の問 題があります。アメリカのアーミテー ジ報告というのがあって、通常は安全 保障の分野で引かれる報告書ですが、 そこに日本は本当に原子力から撤退す るのか、抜けたら二流国になるぞと、 かなり脅しに近い言葉で書いてありま す。アメリカからすると、民生用の原 子炉は、東芝とウェスティングハウス にしても、日米で連携して進めている ものですから、日本が抜けて製造能力 が失われて、中国と韓国とフランスの アルバだけになるのは避けたいという 考慮があると思います。また、核燃料 サイクル上で日本に特殊な立場を認め ているということとの関係もあろうか と思います。あるいは、中国は原子力 を使い続けるでしょうから、地域の防 災のようなことを考えたときに、原子 力の知識をどうやって維持するのかと いう問題もあろうと思います。 いずれにしろ、エネルギーの話とい うのは多次元的な議論をする必要があ ると同時に、これはある種矛盾するの ですが、選択、クロージング・ダウン も必要です。つまりどこかでいろいろ な目的を共存させるということです。 「同床異夢」と書きましたが、これが 可能な場合もあります。討論型世論調 査の実験は、そのようなことをサポー トする一つのツールとして使おうとし たのだろうと思います。私自身のバッ クグラウンドは政治学で、リアリステ ィックにみると、議論を本当に正面か らやるべきだという部分と、本当にや

れるのだろうかという部分もあります。 原発についての意思決定は、正面から の議論で決定するのはある種回避する ということで、安全規制がしかるべき レベルで必要だということを議論し、 結果としてコストが高くなっていくこ とで、原発の依存度のレベルが決まっ てくるという部分がおそらくあるのだ ろうと思います。つまり、正面からの 決定をむしろ回避する意思決定プロセ スのような側面も現実にはありうるの だと思います。 最後に三点目として、エネルギー政 策の幅を広げた議論をどのように閉じ て、 意思決定をするのかということは、 なかなか難しいチャレンジだと思いま す。そのためには議論を広げることも するけれども、広げすぎもせず、狭す ぎもしないフレーミングが必要なので しょう。答えになっていないような言 い方をしていますが、たぶん両面が必 要なのだろうと思います。広げないと

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