The HR Agenda Magazine - Jan-Mar 2014 Issue (日本語版)

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LEGAL CLINIC

"Ignorance of the Law is no excuse."

2014年1−3月号

有期労働契約従業員への年次有給休暇の付与 質問 私どもは1年後に復帰する予定のフルタイムの従業員の休暇の穴を埋めるために従業員を1人、有期契約で6か月間雇いました。 この6か 月の期間中、5日の有給休暇を彼女に与えました。 ところで、 この従業員の雇用期間を6か月間延長する必要が生じたため、 もう5日間、有給 休暇を与えようと考えています。 これで1年間に全部で10日間の有休を与えることになります。法の定めは6か月間勤務した労働者に10日の 有給休暇を与えるとしていることは承知しています。 この定めに照らして私どもの扱いは法的に問題ないでしょうか。それとも、彼女に与えた 初めの5日は無視し、新たに10日を与えなければならないでしょうか。

回答

ただ、本件については、本人と話して解決すれば大きな問題は生

日本語原文による寄稿

じないでしょう。 少なくとも、今後の制度設計にあたっては、法律違反の疑いが生

本件は、最初の契約書がどういうものだったかによって回答が違

じないように十分に注意する必要があると思います。

ってきます。ポイントは、労働基準法の定めよりも有利な労働契約な らOK、不利ならダメということです。 最初に締結した労働契約は半年の有期契約だということですの で、回答は非常に簡単です。半年の期間が終わったところでもう一 度、半年の有期契約を締結すれば済む話です。そのときに、5日間 の有給休暇を与えればよいのです。

ポイントは、労働基準法の定めよりも 有利な労働契約ならOK、不利ならダメと いうことです。 有休の定めについて、当初から有期契約がもう一度締結される場 合を想定し、半年後に10日生じるかわりにそのうちの5日は最初か ら生じるという内容であったのならば、半年後に追加の5日の有給 が生じることで問題ありません。労働基準法で定める半年後に10日 生じるよりも従業員に有利な規定だからです。 ところが、最初の契約 で、 もともと雇用から半年間で5日の有休を与えるとだけ定めていた となると、少し話が違ってきます。従業員としては、半年たったところ

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で10日の有休をもらえると期待していた可能性もあるからです。そ の意味で、最初の契約によって労働基準法の規定よりも不利になっ たと考えることもできそうです。

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ビッキー・ベイヤー

大山滋郎弁護士 東京大学法学部とワシント ン大学セントルイスのロースクール卒。 アル パイン株式会社の特許法務部門と米国シドリ ー・オースティン法律事務所の東京オフィスで 16年間勤務した後、横浜パートナー法律事務 所を開設し、 クライアントに対して労働法を始 めとした法的サポートを提供している。 日本と 米国ニューヨーク州の弁護士資格を持つ。

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会社法、知財権法

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お断り:筆者がここで述べているアドバイスや意見は一般的な情報を提供するのが目的で、専門的な法 律アドバイスではありません。法律的なアドバイスが必要な方は資格を持った専門家に個別に相談して ください。


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