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子どもにとっての建築素材の研究 - 建築室内に触れる行動と心理 Research of the building material for childrenA viewpoint from their touching action and mentality-


はじめに  建築と人との距離を近くしたい。卒業論文のテーマを考えだした頃から、身近なものと しての建築に興味があった。卒業論文では、経年変化の中でも使う人による変化、触れる ことによる摩耗から、改修までを取り扱いフィールドワークを行った。街を歩いてみると、 見た目はあまり良くないながらも、住人が思い思いに変えたり、直したりしながら使って いる姿を微笑ましく感じた。私がこのようなことに特に関心を持ったのは、自分がこれま で引っ越しが多く、故郷と自信を持っていえる場所がないことに少なからず起因している と思う。建築に触れていると、それが自分のものになったように感じると同時に、なぜか とても安心した。  建築は人間に比べると大きく、多くのものが組合わさることでつくられるが、天井・梁・ 屋根・配管・基礎…目にも見えない縁の下の力持ちの部材もあれば、目には見えても一笑 されることはない遠くに見える部材もある。私はその中で、建築空間にいる中で、直接触 れることのできるものにどんなふうに気を使えばよいのだろうかと考えた。  子どもの行動に関心を持ったきっかけは、教育関連の企業と共同で学習空間の研究を 行った時であった。本当に子どもは我々大人には思いもよらない行動をとる。それが時に は危険につながることもあるだろうが、大人になった私たちはその自由奔放な姿をうらや ましくも感じる。しかし一方で子どもは元気、悩みもない、と思い込んでいるが本当にそ うであろうか?知人の園長先生から「子どもも最近はストレスたまりまくりなんだよネ」 と聞いた。そのような子どもたちに建築が出来ることの一つとしてこの研究を位置づけら れればと思う。

子どもにとっての建築素材の研究 ̶ 建築室内に触れる行動と心理 ̶

003

はじめに


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目次 Index

子どもにとっての建築素材の研究 ̶ 建築室内に触れる行動と心理 ̶


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第一部:本編 第

1 章  序論

008

1 語句の定義

009

2 研究背景

010

3 既往研究

020

4 研究目的

021

5 研究の流れ

2 章  子どもが触れる場所についての現状調査

022

1 ヒアリング調査  1-1 調査概要

023

 1-2 結果

024

 1-3 分析

037

2-2.LD 空間で触れる場所ーアンケート調査ー

 2-2-1.アンケート概要

039

 2-2-2.結果

043

 2-2-3.分析

058

3 章  子どもの触れる行動実験

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3-1.実験概要

060

3-2.結果

064

3-3.分析

068

071

子どもにとっての建築素材の研究 ̶ 建築室内に触れる行動と心理 ̶


006

4 章  子どもが触れる建築素材の実験

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4-1.実験概要

077

4-2.結果

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4-3.分析

082

5 章  まとめ

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まとめ

087

参考文献

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第二部:資料編

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第 1 章

序論

Chapter 1

Introduction 1-1.語句の定義 1-2.研究背景 1-3.既往研究 1-3.研究目的 1-3.研究フロー

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1 語句の定義 ・子ども:本研究では、幼児と小学生を含む 3 ∼ 12 歳の子どもを指す。 ・建築素材:建築のもとになっている材料、原料のことで、本研究では子どもが手を触れ られる内装の仕上げ材に着目する。 ・触れる:手の平で対象物に触れることを指す。特に本研究では、ドアノブなど機能に関 わらない触れ方に着目する。

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第 1 章 研究背景


2 研究背景 2-1 子どもの問題  近年小 1 プロブレムと呼ばれる、小学校に入った子どもが授業中に席に着けず動き回っ てしまう問題や ADHD(注意欠陥・多動性障害)の子どもが増加している。ADHD の子どもの数は、日本においても注目が高まっており、2002 年 2 月に発表された厚生労 働省の ADHD に関する全国規模の初めての調査では、500 校以上の小学校を対象とし、 低学年では 1000 人あたり 4.7 人との結果が出された。一方で、 「過去 3 年間に患者が増 えた」という小児科医は 28.9%、精神科では 45.1% にものぼり、少子化が進みつつある のにも関わらず「減った」という回答はゼロであった。同年の文部科学省の調査では、小・ 中学校を対象とした調査結果として、高機能自閉症もあわせて子どもの 6.3% が該当する との結果も出している。  子どもにストレスがたまる、精神科にかかると聞くと、多くの人が驚くと思うが、これ は現代特有の問題の一つであろう。教育・心理の分野などでその原因と解決方法が探られ ており、リラックス玩具も開発されているが、頭打ちとなってしまっているのが現状であ る。この問題の原因の一つとして、五感力の衰えが指摘されている。五感力の中でも触覚 は基礎となる機能で大変重要である。 では、このような問題に対して、建築は何かでき ないだろうか。 

図 2-1-1 ADHD に関する医学系論文数の推移(医学中央誌)

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第 1 章 研究背景


2-2 スキンシップ・アタッチメントの重要性  子どものことを考えるにあたって、まず何より重要なのは母親や周囲の人との触れ合い であろう。スキンシップを取ることで、母子ともに情緒が安定し、子どもが安心を得るこ とが出来るといわれている。このスキンシップの効果を検証するような実験が、心理学者 のルネ・スピッツによって行われた。スピッツは第二次世界大戦後に孤児になった乳児 55 人を施設にいれ、設備的には最高レベルに整っているが、人工乳の保育でいっさいの 皮膚接触をさせずに育てた。その結果、27 人が 2 年以内に死亡し、17 人が成人前に死亡、 成人後も生きた 11 人にもその多くに知的障害や情調障害が見られる結果になった。戦後 の混乱期の過激な実験であるが、このことはスキンシップの重要性を如実に示している。  乳児は母親の温かく柔らかい肌の感触に、安らぎと信頼感を得る。これは副交感神経を 刺激し、インシュリンなど成長に関わるホルモンを分泌させ、食物吸収が増加、成長を促す。 このスキンシップが乳児に存在感(自分が安心して外界と関わっているという生きた実感) を構築し、成長して社会に出て他者と快い人間関係を築いていける土台となるのである。 このようなスキンシップは乳幼児だけではなく、何歳になっても子どもに重要な行為とな る。成長するにつれ、頻度は減少し、安心毛布と呼ばれる移行対象を経て、自立する。

■自分に触れるー自己親密行為  また、これと関連するものとして、無意識に自分の体に触る行為を心理学で自己親密行 為という。普段よりも頻繁に腕を組んだり、髪をいじる、手を頭に持っていくなどの行動 がこれにあたる。デズモンド・モリスの研究によると、この自己親密行為を行う場合は、 緊張やストレスがたまり、その不安を和らげたいときに行われるものである。その行為の 原理の詳細はまだ不明であるが、それはあたかも誰か他の人間に触れられるのを無意識に まねし、安らぎを得るかのようだとの考察がされている。

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第 1 章 研究背景


2-3 子どもと触覚 ■触覚とはなにか  五感のうち触覚以外の四つはそれぞれ目や耳、舌、鼻といった特殊な器官で知覚してい るのに対し、触覚はそのような受容器は持たず、体の末梢(神経端末)に散在している無 数の受容器から伝わる体性感覚と呼ばれるものである。  全身にある触覚であるが、その中でも手は識別感覚の機能が非常に優れている。その主 な機能は四つあり、第一にアリが皮膚の上を歩いているのを感じるような微細刺激の検出 で、振幅 1μm 以下の刺激でも感じることが可能である。第二に微細テクスチャーを識別 する機能で、視覚よりもはるかに優れ、粒子の大きさが 3μm 程度の違いまで識別できる ことが分かっている。第三に二点弁別閾と呼ばれるもので、二つの刺激が与えられたとき にそれを別々の刺激として知覚できる感覚の最小値を言う。その能力は体の部位によって 異なり、脳の体性感覚野で広いエリアを持つ部位ほど感度が良い。  これらの図を見ると、皮膚における触覚の中でも、手というものが感覚が鋭敏というこ とが分かる。手や指を動かす能動的動作があると、その認識はさらに高まる。この皮膚か ら入ってきた刺激は、電気信号として脳へ伝わり、時には心理的に大きな影響をもたらす こともある。

図 2-2-1 大脳皮質の体性感覚野

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第 1 章 研究背景


■教育現場での触覚への着目 □モンテッソーリ・メソッドの感覚教育  イタリア初の女性医学博士となったマリア・モンテッソーリ(1870-1952)は、 モンテッ ソーリ・メソッドという教育法を開発した。このモンテッソーリ・メソッドは発達遅滞児 に施し、成果をあげた感覚教育を体系化したもので、日本では 1968 年に日本モンテッソー リ協会が設立されて以来、幼児教育に大きな影響を及ぼし、今なお多くの保育園・幼稚園 で行われている。モンテッソーリ教育の特徴は、その感覚教育にあり、中でも頭脳の道具 と言われる手を使った活動にある。子どもの活動の観察を通して着目された、人間の発達 の段階で獲得しなければならない能力(生理的機能及び精神的な知力)を子どもに意識的 に与えるための手段として、モンテッソーリ教具は考案され、視覚・触覚・聴覚・味覚・ 嗅覚それぞれのものが存在する。この教具の持つ諸要素には、 1)対にする、 2)段階づける、 3)類別する、という三つがあり、この要素を満たすよう教具はつくられている。モンテッ ソーリ教育では、感覚の敏感期として、感覚の探求、溜め込みを行う 0 ∼ 3 歳、感覚印 象の整理、分類、秩序化を行う 3 ∼ 6 歳について特に注目している。感覚教具はこの後 半である 3 ∼ 6 歳を主に対象としたものである。  ここで、この教具の中の「触覚」を見ると、触覚教育ではものに手で触ることによって 近くできる皮膚覚(触覚)、温度感覚、 実体認識覚や、 てでささえたり、 持ち上げることによっ て知覚できる圧覚(重さの感覚)の教育を目的としてつくられている。ここのように、モ ンテッソーリ教育では、触覚の認識を高めるための教育方法があり、多くの人々に求めら れていることが分かる。

図 2-2-2 モンテッソーリの触覚教具の例(触覚板)

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第 1 章 研究背景


□裸足・裸教育  また、保育園・幼稚園の中では裸足教育を取り入れている所もある。下図は、浦和めぐ み幼稚園での裸教育の一例で、男女関わらず一年を通して上半身裸・裸足になることを推 奨している。皮膚を露出させ感覚刺激が与えられることにより、この幼稚園ではアトピー 性皮膚炎の園児の減少成果が得られているそうである。それ以外にも季節の変化を肌で感 じる、スキンシップを図りやすいなどの利点が挙げられている。  また、裸足教育と呼ばれるものは、足の裏への刺激を与えることにより運動能力の発達 や脳の活性化がもたらされるとの研究がある。賛否両論ある教育方法ではあるが、皮膚感 覚に着目して子どもの健康につなげようとする動きである。これらの中では、建築の床素 材に着目され、一般的とされるフローリングやコンクリートに限らず、芝や土、凹凸のあ る床など、足の裏により刺激を与えられるよう工夫がされていることも多い。

図 2-2-3 幼稚園での裸教育

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第 1 章 研究背景


■スヌーズレン空間  触覚がもたらす感覚を利用した例として「スヌーズレン空間」というものがある。語源 は2つのオランダ語、スニッフレン<クンクンとあたりを探索する>、ドゥースレン<ウ トウトくつろぐ>から造られた造語であり、「 自由に探索したり、くつろぐ 」 様子を表し ている。1970 年代後半にオランダのアド・フェル・フールによってはじめられたこの試 みは、知的障害者のある人々の住む施設で生まれた。 「安心して、その人のペースで楽しみ、 人生のひとときを楽しみ、介護者はその大切な感覚を共有する」という理念に基づき、知 的障害者と介護者にリラクゼーションの空間を提供することを目的とする。  スヌーズレンルームでは、多重刺激(感覚)空間がつくられ、光、音、におい、振動、 温度と、触覚の素材が効果をもたらす。当初のターゲットであった知的障害者以外に、認 知症の人や高齢者、子どもの発達支援にも用いられるようになってきている。スヌーズ連 の効果として、感覚の満足・統合・認知の促進が挙げられ、これによって興奮がおさまり、 自傷行為が激減、記憶の早期の促進がみられた。建築自体ではないが、室内のものによっ て、リラックスをさせることができるという例である。

図 2-2-4 スヌーズレン空間の例

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第 1 章 研究背景


2-4 子どもと建築材料 ■建築材料の現状  ここ近年の建築内装材の統計を見てみると、  ビニール系で汚れが落ちやすいものが注 目されている。内装材の壁クロス市場を見ると、2010 年は全体のうち、面積にして 94% が塩化ビニル樹脂となっており、その他紙系などと比較すると圧倒的に多い。  このような内装素材については、低価格で施工性に優れていることが理由としてあげら れているが、その他に人との接触をふまえて近年注目が高まっている機能として、汚れに くいということがある。水拭きできるなどの利点がこのビニール系にはあり、そのことも この需要を押し上げる原因となっているだろう。

■建築材料にに触れるということ  建築材料に触れると聞いて、多くの人が考えることとして、やはり多く考えられるのが 汚れである。建築材料の研究として、内装材について考えると、このような防汚の研究が 多くなされており、注目度も高い。また、手で触る場所に限らず言えば、床はもちろん、 建築室内で見られる幅木や腰壁も建築を使う人に触れられることを前提とし、発達したも のである。これらは見た目、清潔面、安全性などに重きが置かれている。

図 2-3-1 住宅の壁で汚れる場所

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第 1 章 研究背景


■建築材料と安心  建築の中で触れる場所について考えると、一番頻度が高いのがドアノブや手すりといっ たものであるが、建築家も設計の際に、このような一般的に手が触れる場所について、様々 な工夫を凝らしてきた。  村野藤吾もその一人で、自信の作品の中で階段の手すりについて、見た目だけでなく素 材から細かなディテールに気を配り、滑らかに連続した手すりを多く生み出した。村野は 『村野藤吾先生特別講演記録』(横森製作所編)の中で、手すりについて以下のように述べ ている。 「手すりは自分の体を支えるために必要であると同時に、もう一つは触っただけで安心感 を得られるという面がある。この二つの面はテクニックであって、私はさわる方の手すり を非常に大事にいたします。」  ここで特に注目したいのは、「安心感」というキーワードである。体を支えるという機 能面に加え、「触る」ということが安心感をもたらす可能性について村野は述べているの である。このような安心感については、吉村順三も関心を持っており、例えば吉村の設計 したビラージュ目黒では、楕円のスチールパイプにビロードを巻き、その柔らかな手触り を楽しませた。

図 2-3-3 村野藤吾のスケッチ

図 2-3-2 ビラージュ目黒の手すり

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第 1 章 研究背景


■見るモノとして建築素材から、触るモノとしての建築素材へ  これまでの建築素材は、視覚に大きく偏っていたと言わざるを得ない。しかし、特に子 どものための建築素材を考えた時、視覚だけではなく、触覚をふまえ、その在り方を考え 直す必要があるだろう。それを明らかにすることで、今後その場所の素材を変えて汚れに くくしたり、逆に触れやすい場所を増やすことで子供の情緒安定が図るなど、両面から素 材を含めた設計が可能になると考える。  デザインの分野では、いろいろと触覚的に楽しめる遊具が考えられている。このような 視点を特別のものとは考えないで一般にも広めていくことが出来ないだろうか。

図 2-3-4 佐藤可士和デザインの「みえる空気の遊具」

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第 1 章 研究背景


3 既往研究 □建築分野  建築素材を扱った論文として著名なのが、岡島達雄らのものである。岡島は、視覚的な 素材の研究の後に、触覚についての研究も行っている。例えば『建築仕上げ材料の感覚的 評価に関する研究」(その 1、その 2、その 3)では温冷感、硬軟感、粗滑感それぞれにつ いて、実際に触ったときの心理量と物理量を比較し、定量化した。これらの研究の目的は、 触覚の感覚的評価を数量的に把握し、嗜好感を含め建築仕上げ材料をとらえることである。 しかしこれらは素材の評価だけで終わっているため、この結果の使用方法は各設計者にゆ だねられており、心理と結びつけた決定的なものではない。 □繊維分野  触覚と快適性の関係は、繊維分野で多く研究されている。その一つである宮沢清・丹下 明子『紙おむつ製品の快適性評価』では、繊維を変えた 2 種類の紙おむつを乳幼児に試 着させ、唾液の成分からリラックス量を明らかにした。柔らかな風合いの繊維をつかった おむつが、乳幼児にとってリラックスをもたらすことが明らかになった。  

■渡辺研究室における子どもの研究  渡辺研究室では、これまで建築における心理的な研究、子どもの行動研究の双方を扱っ てきたが、まだそれらを統合したものはない。 ・「人と車」を考慮した施設計画の方法に関する研究 : 子供の行動特性からみたイベントの 施設配置計画 ,1987 ・遊園地による子供の行動特性と施設配置に関する研究 ,1988 ・子どもの外遊びにおける基本動作から見た遊具空間に関する研究 ,2006 ・子供に必要な基本動作に基づいた生活環境評価に関する研究 ,2008 ・発話を生み出す保育室における幼児の密度 ,2009 ・動作評価からみた学習机の集中力に関する研究 : こどもの学習机における囲み空間の検 証 2010

■心理的研究 スヌーズレン空間

■子どもの行動研究 本研究

ストレス空間 etc.

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基本動作 学習空間 etc.

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第 1 章 研究背景


4 目的  子どもが建築室内において建築仕上げ材などに手で触れる行動と心理の特性について明 らかにすることで、子どものメンタルヘルスの改善に寄与することを目的とする。

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第 1 章 研究背景


5 研究フロー

子どもが触れる場所についての現状調査

調査1/ ヒアリング調査 □ □ ■

子どもが建築室内にどのように触れているのか? 実際の現場を見て、要素を抽出する。

どのような空間で触れる行動が多いか □ ■

多くの人数を対象に定量的に見る

調査2/LD 空間で触れる場所:アンケート □ □ ■

子どもの属性と触れる行動にどのような関係があるのか

2

□ □ □ □ ■

実験1/ 子どもの触れる行動実験 □ □ ■

子どもの触れる行動を時間を追ってみていく

□ □ ■

実験2/ 子どもが触れる建築素材の実験 □ □ ■

子どもの「触れる」モデルの作成

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第 1 章 研究背景


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第 2 章

子どもが触れる場所の現状調査

Chapter 2

Basic survey of children's touching area

1 ヒアリング調査  1-1 調査概要  1-2 結果  1-3 分析 2  LD 空間で触れる場所ーアンケート調査ー  2-2-1.アンケート概要  2-2-2.結果  2-2-3.分析

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1 ヒアリング調査 □目的 子どもが建築室内でどのような所に触っているのかを、子どものいる家庭で実際に見せて もらうことによって、次項のアンケート調査をするための指針となる要素を抽出する。

1-1 調査概要 子どものいる家庭に出向き、母親と子どもがいる中で、子どもが普段どのようなところを 触っているかについてヒアリング調査を行った。 ■調査日程:2010 年 8 月 16 日・21 日 ■調査対象:一般の子ども 10 名とその母親       (子どもの学年別の内訳:幼児2名、小学 1 年生2名、3年生 4 名、5年       生1名、中学2年生1名) ■調査場所:東京都と埼玉県の住宅(被験者の自宅)5 件       (うち戸建て住宅 4 件、集合住宅 1 件) ■使用機材:デジタルカメラ OLYMPUSμ-9010、調査用紙、筆記用具 ■調査時間:各家庭 30 分程度 ■調査方法: 質問項目 <属性と意識> ・子どもの属性 ・住宅環境 ・意識調査 <具体的に触れる場所について> ・子どもが普段触れる場所それぞれについて  それぞれの家庭の子どもが普段どのような所を触っているかについて、母 親に聞きながら、触れるという回答が得られた場所について、それぞれ写真 を撮った。調査中は子どももそばにも一緒にいてもらい、分かりにくい場所 や行動の場合はその動きを再現してもらった。  できるだけ多くの場所を思い出してもらえるよう、一緒に家の中の部屋を 回りながら調査を行った。

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第 2 章 子どもが触れる場所の現状調査


1-2 結果 (1) 家庭(ア) < 属性と意識 > ■子供 ・姉 5 歳 : 幼稚園年長 ・弟 3 歳 ■住宅環境 ・場所 : 越谷 ・形態 : 賃貸マンション (5 年目 ) ■意識調査 □触ることへの抵抗 : あまりない。 ・穴まで開けるとなると注意するだろうが、トイレ、テレビもずっとではないし、まだ小 さいのでそこまで激しく遊ばない。 ・公園に行くのにも親が付き添って、帰ったら手を洗うところまで見ている。 ・大きくなって子供たちだけで遊び出すと、泥や虫も気になってくるかもしれない。 ・壁の落書きなどは多少気になるが、触ることのマイナス面はあまり感じない。 ■具体的に触る場所について(図 2-1-2-1a・b) □補足説明 ・トイレ 便器と壁の隙間に入りこむ。 ・テーブルの下 食卓テーブルの下に入り込み、椅子の足置 きを利用してお店屋さんごっ こをする。フローリングに座ってテーブルや椅子の足 をつかむなど。椅子に上る時にテー ブルに手を つきながら上る。 ・ソファー 背もたれから座面にかけて逆立ちで滑り下 りるような行為をする。ソファー の位置は テレビの前で、テレビを見るときはここに 座る。 →起毛でなく、ツルツルすべ すべしている のが冷たくて気持ちがいいかもしれないそ うである。 ・ カウンターの少し出っ張った部分にぶら下がる。マンションなので高低差のある遊びは あまりない。 ・ 遊び道具のおいてある、入っている場所の近くを触れる。

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第 2 章 子どもが触れる場所の現状調査


1 リビング 戸棚のガラス戸

9 洗面所 子ども椅子

2 リビング 戸棚の木製部分

10 洗面所 鏡

3 ダイニング カウンター

11 リビング 床

4 リビング じゅうたん

12 トイレ 便器と壁の隙間

5 リビング ソファー

13 子ども部屋 床

6 リビング 戸棚の上

14 キッチン 棚の横面

7 ダイニング 椅子

15 キッチン 冷蔵庫の表面

8 洗面所 カウンター

16 和室 ふすま

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図 2-1-2-1a 触れる場所:家庭(ア)

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第 2 章 子どもが触れる場所の現状調査


17 リビング ソファーの背 18 リビング ドアのガラス

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図 2-1-2-1b 触れる場所:家庭(ア)

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第 2 章 子どもが触れる場所の現状調査


(2) 家庭(イ) < 属性と意識 > ■子供 ・姉:中学校 2 年生、活発 ・妹:小学校 3 年生、やや内気 ■住宅環境 ・場所:東大宮 ・形態:戸建て購入住宅(8 年目) ■意識調査 □触ることへの抵抗:なし ・気になるのはガラスくらいで、白い壁紙なので汚れたら分かる。気になることはあまり ない。 ■具体的に触る場所について(図 2-1-2-2a・b) □補足説明 ・ドアのドアノブを触った後にその周りや、窓ガラスにべたべた触る。 ・窓の近くも桟やその周りの壁、ガラス面などいろいろ触っている。 ・プリンターも使った後にその周りの壁を触る。

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第 2 章 子どもが触れる場所の現状調査


1 外構 門ノブの上

9 リビング 柱

2 外構 郵便受けの横面

10 リビング 壁

3 玄関 ドアノブのまわり

11 リビング プリンタ横壁

4 玄関 靴棚の縁

12 リビング ソファーの背

5 廊下 壁

13 リビング 椅子のてすり

6 リビング ドアのガラス面

14 リビング 棚の上面

7 リビング ドアノブの下

15 リビング 椅子の背

8 リビング ドアの横縁

16 リビング 机の横面

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図 2-1-2-2a 触れる場所:家庭(イ)

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第 2 章 子どもが触れる場所の現状調査


17 キッチン 冷蔵庫

25 子供部屋 棚上面

18 ダイニング 窓ガラス

26 子供部屋 戸棚表面

19 ダイニング 机上面

27 子供部屋 カーテン周り

20 ダイニング 椅子の座面

28 子供部屋 壁

21 ダイニング ドアノブ周り

29 子供部屋 窓周り

22 洗面所 カウンター

30 子供部屋 ドアノブ周り

23 階段 横壁

31 階段 踏み面

24 廊下 スイッチ周り

32 リビング 床

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図 2-1-2-2b 触れる場所:家庭(イ)

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第 2 章 子どもが触れる場所の現状調査


(3) 家庭(ウ) < 属性と意識 > ■子供 ・兄:小学校 5 年生、体操を習う、活発な性格 ・弟:小学校 3 年生、水泳を習っている、活発な性格 ・妹:小学校 1 年生、習字を習っている、やや活発 ■住宅環境 ・場所 : 東大宮 ・形態 : 購入住宅 (3 年目 ) ■意識調査 □触ることへの抵抗 : あり ・壁紙は水拭きできるものにした。 ・裸足ではフローリングに足跡がペタペタと付いてしまうので、フローリングの色は薄め が正解だと思う。 ・床が本物の木だとすぐでこぼこになってしまう。しかし絨毯を全面は不衛生なのでやり たくない。 ・妹が習字から帰ってくると、手や顔が真っ黒なので気をつけている。 ■具体的に触る場所について(図 2-1-2-3a・b) □補足説明 ・階段の手すりで遊ぶ ・リビング・ダイニングの壁は、いろいろな所を触っている。エアコンの下のように、気 になるものの周りや、遊びのついでに触る。 ・住宅に触る行為は小さいうちも多い。階段を下りれなくてバランスをとるなど。 ・大きくなると家にいる時間も少なくなる。手をついてしまうというよりは、ふざけて触 る。 ・兄は体操を習っているため、よく床で倒立したりもする。

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第 2 章 子どもが触れる場所の現状調査


1 玄関 突き当たりの壁

9 リビング スイッチ周り

2 玄関 窓の下

10 リビング 吊りロープ

3 階段 てすり横面

11 リビング 壁

4 階段 手すり上面

12 ダイニング カウンター

5 階段 横壁

13 ダイニング 机

6 階段 曲がり角

14 ダイニング 椅子後ろ壁

7 廊下 ドアガラス面

15 ダイニング エアコン下

8 リビング ドアノブ周り

16 ダイニング 壁

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図 2-1-2-3a 触れる場所:家庭(ウ)

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第 2 章 子どもが触れる場所の現状調査


17 リビング 柱

25 リビング ハンモック背

18 ダイニング 長椅子座面

26 リビング 壁

19 キッチン ガラス棚

27 洗面所 手すり周り

20 ダイニング カウンタ角

28 リビング ドアノブ下

21 リビング 窓面

19 リビング ドアの横縁

22 リビング フローリング

30 階段 手すり

23 リビング 壁下

31 階段 ふみ面

24 リビング じゅうたん

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21

22

23

24

25

26

27

28

29

30

31

32

図 2-1-2-3b 触れる場所:家庭(ウ)

子どもにとっての建築素材の研究 ̶ 建築室内に触れる行動と心理 ̶

032

第 2 章 子どもが触れる場所の現状調査


(4) 家庭(エ) < 属性と意識 > ■子供 ・兄:高校 1 年生 ・妹:小学校 3 年生、やや内気 ■住宅環境 ・場所 : 東大宮 ・形態 : 購入戸建て住宅 (3 年目 ) ■意識調査 □触ることへの抵抗 : なし ・妹は兄をまねして触れるようになった。 ・兄は中学校に上がった頃からあまり触れなくなった。 ■具体的に触る場所について(図 2-1-2-3a・b) □補足説明 ・少し高い場所(机やソファーの背など)にはとにかく上って遊びたがる。

子どもにとっての建築素材の研究 ̶ 建築室内に触れる行動と心理 ̶

033

第 2 章 子どもが触れる場所の現状調査


1 玄関 壁、床

9 和室 出窓のカウンター

2 リビング 机の上

10 和室 布団置きの上

3 リビング 窓ガラス

11 階段 手すりと壁

4 外構 テラス手すり

12 階段 横壁

5 リビング ソファーの背

13 リビング 壁

6 廊下 曲がり角の壁

14 リビング 棚の横面

7 子供部屋 机の上 8 子供部屋ベッド

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

11

12

13

14

15

16

図 2-1-2-4 触れる場所:家庭(エ)

子どもにとっての建築素材の研究 ̶ 建築室内に触れる行動と心理 ̶

034

第 2 章 子どもが触れる場所の現状調査


(5) 家庭(オ) < 属性と意識 > ■子供 ・兄:小学校 3 年生、やや内気 ・妹:小学校 1 年生、やや内気 ■住宅環境 ・場所 : 東大宮 ・形態 : 購入戸建て住宅 (8 年目 ) ■意識調査 □触ることへの抵抗 : なし ■具体的に触る場所について(図 2-1-2-3a・b) □補足説明 ・勢いをつけて階段を登った正面の壁にぶつかるようにして遊ぶ ・両側の壁に手を突っ張って上り下りする ・ソファーの背に上る ・机に座る

子どもにとっての建築素材の研究 ̶ 建築室内に触れる行動と心理 ̶

035

第 2 章 子どもが触れる場所の現状調査


1 階段 横壁

9 ダイニング 机の上面

2 階段 手すり周り

10 階段 曲がり角

3 廊下 突き当たりの壁

11 玄関 横の壁

4 廊下 壁 5 リビング 壁 6 廊下 壁の両側 7 リビング ベランダ窓の縁 8 リビング ソダーの背

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

11

12

13

14

15

16

図 2-1-2-5 触れる場所:家庭(オ)

子どもにとっての建築素材の研究 ̶ 建築室内に触れる行動と心理 ̶

036

第 2 章 子どもが触れる場所の現状調査


1-3 分析・考察  まず、調査したすべての家庭も子どもが大人と比べて多くの場所に触れているというこ とが明らかになった。その触れる場所は、大人がドアノブや手すりなど、機能として必要 な最低限の場所にしか触れないことに対して、子どもは遊びながら、または無意識にそれ 以外の様々な場所に触れているということが分かった。  年齢での差については、小学生は触れる場所が多いが、中学校に上がると触れる機会が 少なくなってくる傾向が見られた。また、幼稚園児は触れる場所は多いが、その目的は小 学生とは異なり体を支えるという意味合いが強く、多くの場合母親が目を離さないように 注意している。  特に今回多くを占めた小学生についてみると、建築室内に触れる要因は「必然的に触れ る」・「触れた勢いで触れる」・「遊びで触れる」・「無意識に触れる」というように分類でき る。(図 2-1-3-1)このうち、必然は、部屋の出入りの際にドアノブに触れるなどの機能 が目的のものと階段で手すりを普通に持つような体を支える目的のものがある。この必然 的な行動については、大人も同様に見られるため、今回の研究からは外し、それ以外の 3 つの要因について着目する。  また、年齢と建築室内に触れる要因の相関関係を、線の太さで表すと図 2-1-3-2 のよう になる。心理については、今回の調査からは明らかになっていないので、より深く調査す る必要がある。

* 色が付けられているものが、本研究において着目する触れる行動の要因

図 2-1-3-1 触れる行動の要因について

体を支える

幼児

機能

児童

大人

高齢者

? 遊び

勢い

心理

図 2-1-3-2 年齢と要因の相関関係

子どもにとっての建築素材の研究 ̶ 建築室内に触れる行動と心理 ̶

037

第 2 章 子どもが触れる場所の現状調査


また、触れる対象物が挙げられた空間は、リビングが 102 カ所中 55 カ所と、最も多かっ た。これは、母親が見えやすいということもあるが、リビングでは、食事や遊び、勉強な どの様々な行為が行われる場所であり、調査対象の小学生の子どもが一日の中で睡眠を除 き、もっとも多くの時間を過ごしていると思われる場所のため、このような結果になった のではないかと推測される。  以下は、図面を手に入れることが出来た(イ)の家庭について、触る場所に色づけをし たものである。この平面図からも、リビング空間に触る場所が集中していることが分かる。  そこで次項では、リビング・ダイニング空間にしぼって調査を行うこととした。

ダイニング

リビング

子供部屋

図 2-1-3-3 家庭(イ)の平面図と触れた場所

子どもにとっての建築素材の研究 ̶ 建築室内に触れる行動と心理 ̶

038

第 2 章 子どもが触れる場所の現状調査


059

第 3 章

子どもの触れる行動実験

Chapter 3

Behaviour Experiment of children's Touching

1 実験概要 2 結果 3 分析

子どもにとっての建築素材の研究 ̶ 建築室内に触れる行動と心理 ̶


1 実験概要 □目的 リビングダイニング= LD 空間での子どもの建築室内に触れる行動の中でも、2 章のアン ケート内で多くを占めた「遊び」の中での建築室内に触れる行動について、観察実験を行 い、実態を明らかにする。

□実験概要 ■調査日程:2011 年 12 月 14・15 日 ■調査場所:13 日:早稲田大学西早稲田キャンパス 55-407       14 日:さいたま市公民館 ■調査時間:13 日:10:00-18:00 の間で、各 30 分程度       14 日:11:00-18:00 の間で、各 30 分程度 ■調査対象:3 ∼ 11 歳の子ども       13 日:6 名(うち 3 歳 1 名、5 歳 2 名、6 歳 1 名、7 歳 1 名)       14 日:10 名(うち 6・7・8 歳が 1 名ずつ計 3 名、9 歳 2 名、11 歳 5 名) ■使用機材:ビデオカメラ 2 台、サーモメーター、赤外線温度計、遊び道具各種 ■調査方法: 室内にリビングを再現した部屋をつくり、その中で被験者に自由に遊んで もらう。室内環境は、1時間前からサーモメーターを用い、室温 24±1 度、 湿度 50±2% を維持した。 *次ページに平面図を示す。

子どもにとっての建築素材の研究 ̶ 建築室内に触れる行動と心理 ̶

060

第 3 章 子どもの触れる行動実験


■ 13 日の実験の詳細

7100

3600

カメラ 1

8450

遊んでもらったスペース

ちゃぶ台 カメラ 2

2000

図 3-1-1 13 日実験室の平面図

 大学構内会議室の一角を、リビングを模してフローリングマットを敷き、遊び道具等 を置いて、子どもが遊べるような環境を作った。遊ぶ道具として、レゴ、iPad ゲーム等、 比較的落ち着いて遊べるものを配置した。  被験者が遊んでいる様子は 2 台のビデオカメラで撮影された。実験時間は約 30 分で、 被験者と同じスペース内に女子学生が入り、相手をしながら一緒ずつ遊ぶようにした。  

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061

第 3 章 子どもの触れる行動実験


■ 14 日の実験の詳細

3800

3200

ちゃぶ台

カメラ 1

( 準備室 )

遊んでもらった部屋

パーテーション

カメラ 2(ロフト上)

N

図 3-1-2 14 日実験室の平面図

 さいたま市公民館を部屋を借り、リビングを模し遊び道具等を置いて、子どもが遊べる ような環境を作った。遊ぶ道具として、比較的落ち着いて遊ぶものとして、スケッチブッ ク、ボードゲーム、活動的に遊ぶものとして風船、コマ、輪投げ等を配置した。  実験時間は 11:00 ∼ 18:00 の間だが、時間はあまり区切らず、複数の子どもが出入り しながら遊んでもらうようにした。被験者と同じスペース内には、顔見知りである被験者 の友人の保護者 1 名と、遊び相手として学生が 1 名以上常にいるようにした。  

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062

第 3 章 子どもの触れる行動実験


□北側率面 □西側率面 □南側率面

←準備室側

3200

6300

3200

準備室側→

1300

1000

( 腰壁 )

図 3-1-3 14 日実験室の立面図

 14 日の部屋の内装は、床がフローリング、壁が 130cm の高さまでプラスチック系の 腰壁で、その上が壁紙となっている。被験者の身長は 110 ∼ 130cm であるので、手をつ くのは腰壁部分になる。

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063

第 3 章 子どもの触れる行動実験


2 実験結果 2-1 実験結果について  2 日にわたる実験のうち、被験者の遊び方は大きく分けて 2 種類 ・非活動的な遊び(例:お絵描き、iPad ゲーム) ・活動的な遊び(例:風船パレー) に分けることが出来る。以下の実験結果では、この 2 種類で分けて示すこととする。

■実験結果を出すにあたって  実験で撮影した、ビデオカメラの映像を QuickTime Player で表示し、被験者が触り行 動を行った瞬間の画像をそれぞれ、画像として保存した。 「触る」の判断は、床にあるも のを取るときなどに生じる手の甲や指が触れるものを除き、手のひらで床と壁に触れたも のをカウントする。人やものでかげになって見えない場合は、2 台目のカメラの映像も確 認しながら行った。

子どもにとっての建築素材の研究 ̶ 建築室内に触れる行動と心理 ̶

064

第 3 章 子どもの触れる行動実験


2-2 実験結果 ■被験者の属性  実験の被験者の属性を以下に示す。被験者番号は前半の A が 13 日、B が 14 日に実験 を行った被験者ということを示す。

図 3-2-1 被験者属性

子どもにとっての建築素材の研究 ̶ 建築室内に触れる行動と心理 ̶

065

第 3 章 子どもの触れる行動実験


■触れる行動データ   抽出した各被験者の触れる行動のデータを、それぞれの触れた回数についてまとめた。 また、「最初に触れるまで」の時間は、前室に入り、部屋の温度に慣れた被験者が、実験 室に入って遊び始めてから、最初に床または壁に触れるまでの時間を指すこととする。  結果として、すべての被験者が遊び中に床または壁に触れたことが分かった。以下に非 活発な遊び、活発内な遊びにおける実験結果の集計をそれぞれ示す。

5 4 0 2 0 7 256 0.60

16

15

A5

A6

9

3

16 10 2 5 2 19 56 1.75

0

15 A4

28

9 2 5 2 7 84 0.93

0

16

14

5 4 2 0 7 392 0.56

2

A3

9

5 4 2 1 7 243 0.90 9 10 A2

それ以上 2∼5秒

14 6 14 1 7 129 1.47 22 15 A1

床(回)

被験者番号

遊び時間(分) 全触れた回数 触れた回数/分最初に触れるまで(秒)

押す

横・縦に

静かに

一瞬

触れている時間(回)

*触れる行動の各データ画像については資料編を参照。

子どもにとっての建築素材の研究 ̶ 建築室内に触れる行動と心理 ̶

図 3-2-2 非活発な遊びの結果

066

第 3 章 子どもの触れる行動実験


子どもにとっての建築素材の研究 ̶ 建築室内に触れる行動と心理 ̶

10

20

20

20

16

9

20

13

B4

B5

B6

B7

B8

B9

B10

7

24

13

14

41

78

56

25

0.54

1.20

1.44

0.88

2.05

3.90

2.80

2.50

470

256

23

33

175

56

187

104

遊び時間(分) 全触れた回数 触れた回数/分最初に触れるまで(秒)

B3

被験者番号

図 3-2-2 活発な遊びの結果

4

11

0

0

5

19

39

1

押す

壁(回)

0

0

0

0

0

0

0

0

横・縦に

0

6

5

1

2

4

11

0

静かに

2

7

6

9

20

34

6

18

押す

床(回)

0

0

0

0

4

12

0

3

横・縦に

1

1

2

4

10

10

1

5

静かに

3

17

5

9

22

44

40

19

一瞬

4

7

7

5

16

32

14

6

2∼5秒

0

0

1

0

3

2

2

0

それ以上

触れている時間(回)

067

第 3 章 子どもの触れる行動実験


3 分析 3-1 非活発な遊びのとき □属性別の分析  結果から、それぞれ属性別に結果を分析する。活発な遊びのとき、それぞれの属性を平 均した。まず、床・壁合わせた 1 分あたりの触れた回数をみると、男より女が、内向的 より外交的が高い数値を示していることが分かる。そこで、床、壁それぞれの集計結果を 比べると、多くの属性で床を触る回数が明らかに壁を上回っていることに対して、男子は 壁を触る回数が多く、若干ではあるが床の回数を上回っていることが分かった。

2.50 2.00 1.50 触れた回数/分

1.00 0.50 0.00 全

内向的

外交的

図 3-3-2-1 各属性別の 1 分あたりに床・壁に触れた回数 3.50 3.00 2.50 2.00 壁(回)/分

1.50

床(回)/分

1.00 0.50 0.00 全

内向的

外交的

図 3-3-2-2 各属性別の 1 分あたりに床・壁に触れた各回数

子どもにとっての建築素材の研究 ̶ 建築室内に触れる行動と心理 ̶

068

第 3 章 子どもの触れる行動実験


また、図 3-3-2-3 からは、壁の触り方の属性別回数が分かる。全体として押す動きが多 いことが分かる。図 3-3-2-4 からは同様に床の場合の属性別回数が示されたが、3 つの触 り方の関係に大きな差は見いだせなかった。

0.80 0.70 0.60 0.50 0.40

壁(押す)

0.30

壁(静かに)

壁(横・縦に)

0.20 0.10 0.00 全

内向的

外交的

図 3-3-2-3 壁における各属性別の触れ方 1.40 1.20 1.00 0.80

床(押す) 床(横・縦に)

0.60

床(静かに)

0.40 0.20 0.00 全

内向的

図 3-3-2-4 床における各属性別の触れ方

子どもにとっての建築素材の研究 ̶ 建築室内に触れる行動と心理 ̶

外交的

069

第 3 章 子どもの触れる行動実験


また、図 3-3-2-4 では、属性別の触れる時間を比較している。全体として「一瞬」が多く、 「2 5 秒」が次ぐ。各属性を比較すると、全体の量以外は大きな差は見られない。  図 3-3-2-5 では、遊び始めてから最初に床または壁に触れるまでの経過時間を示す。こ れを見ると、男女別、性格別どちらにも大きな違いがあることが分かる。男子より女子、 外交的より内向的な被験者の方が触れるまでに時間がかかったことが分かる。特に、内向 的な被験者では平均して遊び始めてから 4 分以上もかかっており、差が顕著である。  このことは、被験者のリラックス度に関わっているのではないかと考察できる。次ペー ジにその詳細な考察内容を示す。

1.60 1.40 1.20 1.00 0.80

一瞬

0.60

それ以上

2∼5秒

0.40 0.20 0.00 全

内向的

外交的

図 3-3-2-5 各属性別の触れる時間 300.00 250.00 200.00 150.00

最初に触れるまで(秒)

100.00 50.00 0.00 全

内向的 外交的

図 3-3-2-6 各属性別の最初に触れるまでの時間

子どもにとっての建築素材の研究 ̶ 建築室内に触れる行動と心理 ̶

070

第 3 章 子どもの触れる行動実験


3-2 活発な遊びのとき □属性別の分析  結果から、それぞれ属性別に結果を分析する。活発な遊びのとき、それぞれの属性を平 均した。まず、床・壁合わせた 1 分あたりの触れた回数をみると、男より女が、内向的 より外交的が高い数値を示していることが分かる。そこで、床、壁それぞれの集計結果を 比べると、多くの属性で床を触る回数が明らかに壁を上回っていることに対して、男子は 壁を触る回数が多く、若干ではあるが床の回数を上回っていることが分かった。

2.50 2.00 1.50 触れた回数/分

1.00 0.50 0.00 全

内向的

外交的

図 3-3-2-1 各属性別の 1 分あたりに床・壁に触れた回数 3.50 3.00 2.50 2.00 壁(回)/分

1.50

床(回)/分

1.00 0.50 0.00 全

内向的

外交的

図 3-3-2-2 各属性別の 1 分あたりに床・壁に触れた各回数

子どもにとっての建築素材の研究 ̶ 建築室内に触れる行動と心理 ̶

071

第 3 章 子どもの触れる行動実験


また、図 3-3-2-3 からは、壁の触り方の属性別回数が分かる。全体として押す動きが多 いことが分かる。図 3-3-2-4 からは同様に床の場合の属性別回数が示されたが、3 つの触 り方の関係に大きな差は見いだせなかった。

0.80 0.70 0.60 0.50 0.40

壁(押す)

0.30

壁(静かに)

壁(横・縦に)

0.20 0.10 0.00 全

内向的

外交的

図 3-3-2-3 壁における各属性別の触れ方 1.40 1.20 1.00 0.80

床(押す) 床(横・縦に)

0.60

床(静かに)

0.40 0.20 0.00 全

内向的

図 3-3-2-4 床における各属性別の触れ方

子どもにとっての建築素材の研究 ̶ 建築室内に触れる行動と心理 ̶

外交的

072

第 3 章 子どもの触れる行動実験


また、図 3-3-2-4 では、属性別の触れる時間を比較している。全体として「一瞬」が多く、 「2 5 秒」が次ぐ。各属性を比較すると、全体の量以外は大きな差は見られない。  図 3-3-2-5 では、遊び始めてから最初に床または壁に触れるまでの経過時間を示す。こ れを見ると、男女別、性格別どちらにも大きな違いがあることが分かる。男子より女子、 外交的より内向的な被験者の方が触れるまでに時間がかかったことが分かる。特に、内向 的な被験者では平均して遊び始めてから 4 分以上もかかっており、差が顕著である。  このことは、被験者のリラックス度に関わっているのではないかと考察できる。次ペー ジにその詳細な考察内容を示す。

1.60 1.40 1.20 1.00 0.80

一瞬

0.60

それ以上

2∼5秒

0.40 0.20 0.00 全

内向的

外交的

図 3-3-2-5 各属性別の触れる時間 300.00 250.00 200.00 150.00

最初に触れるまで(秒)

100.00 50.00 0.00 全

内向的 外交的

図 3-3-2-6 各属性別の最初に触れるまでの時間

子どもにとっての建築素材の研究 ̶ 建築室内に触れる行動と心理 ̶

073

第 3 章 子どもの触れる行動実験


□内向的性格の被験者に関する考察  前ページのように、内向的被験者は外交的被験者と比べ、全体として触れる回数が少な く、また遊び始めてから最初に触れるまでの時間も長い。これに関するものとして、第 1 章 2-2 でも挙げた、自己親密行為があるのではないかと思われる。  以下の写真は今回の実験被験者が、実験のはじめの方で示した行動の一例である。被験 者は内向的な性格で、手をポケットに入れたり、組んだりして、なかなか外に手が伸びて いない。十分体は暖まっているため、寒いのではなく、無意識にこのような行動が現れて いると思われる。  では、手が出てれば良いのかというとそれだけではなく、図 3-3-2-8 のように、手が出 ていて壁の近くを通るときでも、壁との接触をさけるような行動を観察することが出来た。

図 3-3-2-7 実験中の自己親密行動の例

図 3-3-2-8 壁をよけるような動き

子どもにとっての建築素材の研究 ̶ 建築室内に触れる行動と心理 ̶

074

第 3 章 子どもの触れる行動実験


076

第 4 章

子どもの触れる素材実験

Chapter 4

Material Experiment of children's Touching

1 実験概要 2 結果 3 分析

子どもにとっての建築素材の研究 ̶ 建築室内に触れる行動と心理 ̶


1 実験概要 □目的 子どもに建築でよく使われる素材に触れてもらい、心地よさの順位をつけてもらった

□実験概要 ■調査日程:2011 年 12 月 14・15 日 ■調査場所:13 日:早稲田大学西早稲田キャンパス 55-407       14 日:さいたま市公民館 ■調査時間:13 日:10:00-18:00 の間で、各 5 分程度       14 日:11:00-18:00 の間で、各 5 分程度 ■調査対象:3 ∼ 11 歳の子ども       13 日:6 名(うち 3 歳 1 名、5 歳 2 名、6 歳 1 名、7 歳 1 名)       14 日:10 名(うち 6・7・8 歳が 1 名ずつ計 3 名、9 歳 2 名、11 歳 5 名) ■使用機材:ビデオカメラ 1 台、サーモメーター、赤外線温度計       素材 5 種類 * 詳細は次ページに示す。 ■調査方法:  室内環境は、室温 24±1 度、湿度 50±2% とし、1時間前からサーモメー ターを用い、これを維持した。また、各素材も室温に慣れさせ、赤外線温度 計で確認した。被験者についても、十分に室温に慣れたところで実験を開始 した。  被験者には 5 種類の素材を一つずつ呈示し、表面を好きに触れてもらい、 約 1 分経った所で、次の素材へ映るという手順を踏んだ。呈示する素材の 順番は被験者ごとにランダムに入れ替え、偏りのないようにした。素材に触 れる際は被験者の利き手を主に用い、被験者の望んだ場合はその後両手でも 触ることを許可した。  5 種類すべての素材に触れ終わった後で、触れていて心地よかったものに ついて 1 ∼ 5 の順位をつけてもらった。

子どもにとっての建築素材の研究 ̶ 建築室内に触れる行動と心理 ̶

077

第 4 章 子どもが触れる素材実験


■素材の選定について  本実験で用いた素材は、どれも建築室内で多く用いられているもので、かつ物理的特性 が偏らないものとした。そのために用いた知見として、建築素材の表面触覚の次元に関す る岡島らの研究を用いた。

図 1-1 熱・硬さ・粗さの心理量と物質量の対応

子どもにとっての建築素材の研究 ̶ 建築室内に触れる行動と心理 ̶

078

第 4 章 子どもが触れる素材実験


■実験で用いた素材  本実験で用いた素材の詳細を以下に示す。素材の寸法は 300mm×200mm に統一し、 実験時は各素材の下にスタイロフォームと滑り止めのゴムシートを配置し、実験室の机の 硬さに影響を受けず、自由に触れるようにした。

アルミニウム

ガラス

ビニーール

じゅうたん 図 1-2 実験で用いた素材

子どもにとっての建築素材の研究 ̶ 建築室内に触れる行動と心理 ̶

079

第 4 章 子どもが触れる素材実験


2 実験結果 ■被験者の属性  実験の被験者の属性を以下に示す。

被験者番号

年齢

性別

性格

1

6

外交的

2

5

外交的

3

5

内向的

4

11

内向的

5

11

内向的

6

11

内向的

7

11

外交的

8

9

外交的

9

8

内向的

10

7

外交的

11

6

外交的

12

11

内向的

13

9

内向的

図 2-1-1 被験者属性

子どもにとっての建築素材の研究 ̶ 建築室内に触れる行動と心理 ̶

080

第 4 章 子どもが触れる素材実験


■素材の順位  各素材の心地よさの順位は以下のようになった。

被験者番号

アルミ

ガラス

ビニール

カーペット

1

4

2

5

3

1

2

2

1

5

4

3

3

3

2

4

5

1

4

4

2

5

1

3

5

2

4

5

1

3

6

4

5

3

2

1

7

4

2

5

1

3

8

5

4

2

3

1

9

5

3

4

2

1

10

5

4

3

2

1

11

5

3

4

2

1

12

2

3

4

5

1

13

2

1

3

4

5

図 2-1-2 各素材の順位

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第 4 章 子どもが触れる素材実験


2 分析 2-1 点数付けによる分析  各被験者が素材に付けた 1 ∼ 5 位までの順位について、1 位を 5 点、2 位を 4 点、3 位 を 3 点、4 位を 2 点、5 位を 1 点というように点数を付けて分析を行った。以下が被験者 全体の順位を点数化した結果のグラフである。  これを見ると、カーペットが一番心地よさの度合いが高く、ビニールが 2 倍以上の差 をつけて低い。現状の内装用建材の市場では、ビニールが多くなっていることを序論の中 で述べたが、その経済性や清掃のしやすさだけで選ぶことの危惧が伺えるだろう。

53

カーペット 43

木 26

ビニール

42

ガラス 31

アルミ 0

10

20

30

図 3-1-1 各素材の順位の点数化(単位:点)

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40

50

60

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第 4 章 子どもが触れる素材実験


以下と次ページでは、被験者の属性別に平均点数示す。素材によって、属性ごとの差が 大きく出るものとでないものがあることが分かる。  年齢別では 6 歳でガラスの点数が伸び、アルミと木で同じくらいになった。7 11 歳で は木の点数がのびていることが分かる。  男女別では、明らかな差ではないものの、男子はカーペットと木という温かいもので点 数が伸び、女子はガラスとアルミという硬いもので点数がのびた。  性格別では、アルミニウムが内向的で外交的の 1.5 倍程度の点数となった。 このように、明らかな差ではないものの、被験者の属性によって心地よく感じる素材が異 なってくる可能性が示された。

カーペット

7∼11歳

ビニール

∼6歳 全体

ガラス

アルミ

0

1

2

3

4

図 3-1-2 年齢別の各素材の順位の点数化(単位:点)

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第 4 章 子どもが触れる素材実験


カーペット

ビニール

男 全体

ガラス

アルミ

0

1

2

3

4

5

図 3-1-3 男女別の各素材の順位の点数化(単位:点)

カーペット

木 内向的

ビニール

外交的 全体

ガラス

アルミ 0

1

2

3

4

図 3-1-3 性格別の各素材の順位の点数化(単位:点)

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5

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第 4 章 子どもが触れる素材実験


2-2 多重比較検定  次に、得られた順位に対して、多重比較検定を行う。今回のデータは母集団が正規分布 とは仮定できないため、ノンパラ滅トリック検定を行うこととする。  まずデータに対してフリードマン検定を行い、データの偏りがないという帰無仮説が可 逆されたので、有意な差があると分かった。さらに、シェッフェ法により 2 つの素材ず つの差の検定を行うと、カーペットとビニールの間に有意な差があることが分かった。  また、以下に連結順位のグラフを示す。円周に近づくほど一致度が高いことを意味する。

3

4

2

アルミ ガラス ビニール 木 カーペット

2

0

図 2-2 素材の心地よさの連結グラフ

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1

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第 4 章 子どもが触れる素材実験


第 5 章

まとめ

Chapter 5

Conclusion

まとめと展望 参考文献

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第 5 章 まとめ

 まとめと展望  今回の研究により、子どもが生活の中の行動で触る場所について、属性別にモデルを考 えることが出来た。これまで素材についての知見は、画一的なものであったが、子どもの 属性と行動別に見ていくことで、個人に対応した設計が出来るようになる。  研究結果から分かった触りやすい場所には、今後子どもが触れるということを前提にさ らなる改良が必要だと思われる。また、子どもの属性別に見た場合、他と比べて触れない ということにも注目できた。特に、内向的子どもに対しては、内装材を工夫することで、 初めて来た場所の緊張感を和らげることが示唆された。このことから、子どもが日常的に 生活する家庭や学校等での素材のあり方について現在とは異なった観点から考えることが 出来るだろう。  素材に触れる実験では、現在の市場に多いビニールではなく、カーペットのような繊維 のものが心地よさを生み出しやすいということが分かった。しかし、触り方や場所もふま えると必ずしもいつもこれが当てはまるとは限らない。さらにこの研究を進めていくこと で、場所ごとに素材をどのように扱っていけば良いのか、その触り心地が子どもの心理に 良い影響をもたらすために、新たな視点での建築材料を考えることが出来るだろう。

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第 5 章 まとめ

参考文献一覧 ・ 港千尋『考える皮膚 ─ 触覚文化論』青土社、1993 ・ 山口創『子どもの「脳」は肌にある』光文社、204 ・ 山口創『皮膚感覚の不思議』講談社、2006 ・ 東山篤規『触覚と痛み』ブレーン出版 , 2000 ・ 傳田光洋『皮膚は考える』岩波書店、2005 ・ 傳田光洋『第三の脳 ─ 皮膚から考える命、こころ、世界』朝日出版社、2007 ・ デズモント・モリス『Intimate Behavior』Kodansha Globe、1997 ・ 杉本助男・佐藤方哉・河嶋孝『行動・心理ハンドブック』培風館、1989 ・ 大山正『感覚・知覚心理学ハンドブック (part1,2)』誠信書房 、1994・2007 ・東 洋、繁多 進、田島 信元『発達心理学ハンドブック』福村出版、1992 ・松浦公輝『モンテッソーリ教育が見守る子どもの学び』学習研究社、2004 ・ 岩田陽子『モンテッソーリ教育 第 3 巻感覚教育』学習研究社 ,1986 ・ エドワード・S・リード『アフォーダンスの心理学』新曜社、2000 ・ 佐々木正人『レイアウトの法則』春秋社、2003 ・ 稲賀繁美『「日本の美学」:その陥穽と可能性と』 、 『思想』5 月号、岩波書店、2008 ・ 渡辺英俊、岩沢昭彦、小原二郎(監修) 『インテリアの人間工学』産調出版、2008 ・ 中島義明、大野隆造『すまう : 住行動の心理学』 、朝倉書店、1996 ・ 小原二郎『建築・室内・人間工学』鹿島出版会、1969 ・『手すり大全』日経 BP 社、2008 ・『建材・住宅設備統計要覧〈2011/2012 版〉 』日本建材・住宅設備産業協会 、2011/10 ・『2011 年度版 住宅建材マーケティング便覧』富士経済、2011/02

 参考論文 ・ 佐々木洋子『日本における ADHD の制度化』2009 ・ 幼児の裸足教育に関する幼稚園保育所の意識とその検討【幼児教育】 ・ 市村加代子 田邉くるみ『子供にとってのアフォーダンス』2008 ・ 近藤清美『愛着理論の臨床適用について』小平記念日立教育振興財団、2007 ・ 宮沢清・丹下明子『紙おむつ製品の快適性評価』 「繊維と工業」vol.67、2011 ・槙究・赤松摩耶『素材表面感の次元について』日本建築学会環境系論文集、2007 ・ 岡島達雄『触覚による建築仕上げ材料の快・不快感の定量化』材料 40(456)、1991 ・ 岡島達雄『体温近辺における建築仕上げ材の触覚的特性』 ・『触覚 (Touch) 感より検討した食・美味しさに関する一考察 - テクスチャーの可能性』 ・『皮膚振動の検出によるヒト触感の推定と評価』 ・ 松倉優貴『素材に接触する際の生理心理反応に及ぼす気温の影響』千葉大学人間生活工 学研究室修士論文、2003

 電子参考文献 ・http://sfc.jp/information/news/2011/2011-07-15.html ・ http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/018/toushin/030301i.htm ・ http://skinship.org/、国際スキンシップ協会

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子どもにとっての建築素材の研究 - 建築室内に触れる行動と心理-  

2011年度,修士論文,道垣内まゆ