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U8707 早稲 田大学 理 工 学 部建築学 手}卒 業論文 指導教 1受 渡 辺仁 史

建築用映像 ソフ トウエアの研究 前 田健成

Dcparttnent <lf Architecture,Sclrool of Scicncc and Engineering, Waseda University


麒菫 62110131

ト ウ

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昭和 62年 度卒業論文 早稲田大学建築学科 指導 :渡 辺仁史教授

G4D147-1

前田

健成

の 研


目次

:

。は じめ に

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I.研 究 目的

    1

Ⅱ .研 究 概 要 Ⅲ .研 究 結 果

1.映 像 メ デ ィアの 評 値 と考 察

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2.映 像 ソ フ トウ エ アの 理 念

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3.映 像 ソ フ トウエ アの 構 成

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① 映 像 の デ ー タ構 成

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a)一 本 線

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b)樹 系 図

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C)地 下 茎 系 図 ② 映 像 に よ る建 築 の 体 系

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・ シス テ ム 概 要

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・ 参 考文 献

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・ は じめ に あ らゆ る現 象 を広 義 の 言語 活 動 と して と らえ る方 法 論 は 今 で は も うあ りふ れ た もの にな つ て い る 。 しか し建 築 と映 像 と い うよ うに 異 な つ た ジャ ンル を 結 付 け て 合 成 され た 言 語活 動 を形 成 す る 試 みは まだ 成 され て い な い 。 ニ ュー メ デ ィア にお け る建 築 は 映 像 を通 して建 築 の 専 門 家 と接触 す る 。だ か ら そ の 映 像 自体 も建 築 的思 考 に 即 した 設 計 が成 され て い な け れ ば な らな い 。

I.研 究 目的 本研究の目的は 、建築的にニ ューメデ ィア、映像メデ ィアをと らえ、建築的な映像ソ フ トウエ アの設計思想 を探 りつつ 、映像 ソフ トウェ アの実例 を製作 し、建築的なニ ユーメ デ イア、映像 メデ ィアの システムの在 り方について、独 自の見解 を提示する事にある。

Ⅱ .研 究 概 要

:

研 究 は 二 つ の 同 時 進 行 的 プ ロ セ ス に 分 け られ る 。 ① 設 計 思 想 の 模索

a)見 る … 映 画 、写 真 、テ レ ビ 、 ビ デ ォ 、光 デ ィス クな ど様 々 な 媒 体 の なか で 、映 像 に よ っ て 建 築 が どの よ うに 写 され て い るか を見 る 。デ ー タベ ー ス を含 む 全 ての 映 像 媒 体 は映 像 情 報 の 集 積 に よ っ て成 立 っ て お り、 一 つ の 映像 と別 の 映 像 をつ な げ た と き に新 た な 意 味 関 係 が生 ず る 。 この 考 え方 をモ ン ター ジ ュ理 論 と 言 い 、反 対 に一 つ の 映 像 の な か で の 被 写 体 の 位 置 関 係 の 設

計をミ

サ ンセ ヌ と言 う。以 上 の二 つ の 観 点 が 映像 論 の 基 本 で あ り、これ に基 づ い て 建 築 の 映 像 を分 析 して み る 。


b)考 え る … 映像 ソ フ トウエ ア にお け る 、デ ー タ構 造 の 種 別 を三 つ の モ デル で 分 類 、 体系 化 す る ◆

①一直線 ②樹系図

③地下茎系図

② 映 像 ソ フ トウ エ アの 作 製

a)撮 る … 8日 、写 真 、 ス ライ ド、 ビ デ オ 、等 の メ デ ィア で 実 際 に建 物 を撮 影 す る 。 対 象 にな る建 築 物 を設 定 して 様 々 な撮 影 方 式 を試 み 、映 像 を体 系 的 に 蓄 積 じ て い く。

b)フ

ァイル 化 … 撮 つ た 画像 を フ ァイル 化 す る .こ の 時 に 、① で考 えた設 計 思 想 を適 用 し作 業 を通 して 向上 させ る 。

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Ⅲ 。研 究 結 果

1.映 像 メ デ ィア の 評 価 と考 察 ① 技 術 的側 面

ニ ュー メ デ ィア ゃ 新 しい 映 像 メ デ ィアが もた らす の は具 体 に どの 的 よ うな 世 界 な の か 。 ニ ュー メ デ ィア 自体 も種 々 の 情 報 源 との イ ン タ ー フ ェイス で あ るが ニ ュー メ 、 デ ィア と 人 間 との イ ン タ ー フ ェイ ス は 、事 実 上 全 て プ ラ ウ ン管 の 上 で行 われ る 。 ニ ュー メ デ ィアの 一 つ 一 つ の 試 み は様 々 な 方 向 に 向 け られ て い て も 、究 極 的 に は ニ ュー メ デ ィア とは全 てを

20イ

ン チ足 らず の モ ニ タ ー 画 面 に集 約 させ る技 術 で あ る と言 うこ とが で き る 。例 えば建 築 に お い て は 次 の よ うな 作 業 で あ る :机 の 上 に 図 面 を広 げ て 検 討 す る 、郵 送 で 建 具 メ ー カ ー に資 料 を請 求 す る 、図 面 の 細 か い 手 直 しをす る 、図書 室 に 出 向 い て 必 要 な 資 料 を コ ピー す る 、契 約 図書 の 書 式 を揃 え る 、施 主 と連 絡 を と り意 見 を交 換 す る 、等 々 。 これ らを皆 、 プ ラ ウ ン管 、 また は それ に類 す る電 子 的 ス ク リー ンの 上 で 解 決 で き る仕 事 と して しま うの が ニ ュー メ デ ィアの もた らす 恩 恵 で あ る 。 モ ニ タ ー 画 面 上 で伝 達 で き る情 報 形 式 には :文 字 情 報 の テ クス ト、表 、グ ラ フ 、図 面、 表 現 的 グ ラ フ ィ ック 、写 真 、 ビ デ ォ 、映 画 、 の よ うな 区別 が あ る 。 しか しモ ニ タ ー ・ ス ク リー ン上 では文 字 情 報 も含 め て 、 どの よ うな 情 報 も映像 情 報 の一 つ に は変 わ りが な く 、同 等 な 扱 い を受 け るべ きで あ る 。文 字 情 報 の み の オ ン ライ ンネ ッ トヮ ー クで は ニ ュー メ デ ィ アの 可 能 性 を半 分 も有 効 利 用 して い な い 。全 て が 共 通 して一 定 の 大 き さの プ ラ ウ ン にお 管 さ ま ら な くて は な らな い こ との 方 が 、文 字 か 画 像 と い う区 別 よ りも遥 か に 決 定 的 な条 件 で あ り、 同 一 の 枠 を背 景 に 映 像 と文 字 の サ イ ズ が 規 格 化 され る 。従 つ て フ レー ム の 持 つ 意 味 は大 き い 。解 像 度 の 問 題 もあ るが 、 プ ラウ ン管 の サ イ ズ に よ っ て映 像 の 自由度 に 制約 が 加 え られ 、特 に建 築 で は 図 面 等 に 影 響 が で るの で 軽 々 しく決 定 す る こ とは避 け な けれ ば な ら な い 。 そ の よ うな 考 慮 が な され て か ら初 め て 「 映 像 」統 轄 的 に扱 う 、総 合 的 な 「 映 像 ソ フ トウ エ ア 」 と い うもの に つ い て考 えて み る こ と もで き る 。 ニ ュー メ デ ィア に お い て情 報 は 渾 然 一 体 とな つ た形 で 提 示 され 、 よ り総 合 的 な 性 格 を帯 び る 。 まだ 現 在 の 所 、情 報 内容 には デ ジ タル 情 報 とア ナ ロ グ 情 報 と い う、三 種 類 の 分 割 が 存 在 す る 。後 者 は直 接 電 子 的 な メ デ ィア で 発 生 した 情 報 で は な <、 デ ー タ と して の 意 味付 けが 困 難 で あ る 。一 方 前 者 に お い て も、 記 号 や 絵 柄 か ら直 接 デ ー タベ ー ス に フ ィー ドバ ック す る まで には な か な か 至 らな い 。出 力形 式 の 異 な る 両 者 の 混 在 は 常 に 多 くの 混 乱 を招 く。

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②表現 的側 面 契 約 図 書 の 内容 の 多彩 さ を と っ て み て も 、建 築 に と っ て 妥 当な 情 報 形 式 は 総 合 的 な もの だ と い うこ とが わ か る 。仕 事 の な か で も図 像 や イ メ ー ジ との結 び つ きが 欠 か せ な い 建 築 家 に は 画 像 表 現 は 最 も根 源 的 な 体験 で あ る 。 しか し映像 情 報 は本 当に 一 つ の プ ラウ ン 管 の な か に押 込 め て しま え るほ ど一 様 な もの で あ ろ うか 。建 築 家 が これ まで 接 して慣 れ 親 しん で きた 「 映 像 」は 高 度 に 洗 練 され た ア ナ ロ グ映 像 で あ る 。確 か に実 務 的 な設 計 図 とな つ た 図 面 は厳 格 な規 格 が な けれ ば そ の 役 割 を果 た す こ とが で きな い 。情 報 を正 確 に 伝 え るの が 図 面 の 第 一 義 的 な機 能 な の で あ る 。 しか し建 築 には 純 粋 に技 術 的 機 械 的 な側 面 とは 別 に 表 現 の 美 的 な 可 能 性 を追 及 で き る 自由が あ る 。そ の 可 能 性 を コ ン ピ ュー タ を通 して どの よ うに 発 揮 で き るか と い う問題 は ニ ュー メ デ ィアで も異 な つた 分 野 に 属 す る 。 ニ ュー メ デ ィアや 映像 メ デ ィアの 高 度 な テ ク ノ ロ ジー に よ っ て 建 築 の プ レゼ ン テ ー シ ョ ンに 新 た な表 現 の 可 能 性 が 開 けた 。 そ の 最 も端 的 な 例 が コ ン ピ ュー タ・ グ ラ フ ィックス に よ る映 像 で あ る 。単 な る絵 を超 えて 、現 実 空 間 の 質 感 や 運 動 まで もプ レゼ ン テ ー シ ョンの 中 に科 学 的 に持 込 む こ とが で きる 。 しか しハ ー ドウ エ アの 急 激 な 進 歩 に つ れ て表 現 の 可 能 性 ば か りが 広 が り、 ソ フ トウ エ アに は 人 間 的原 理 を踏 ま えた統 一 規 格 が伴 わ な い と い う状 況 が生 れ るに至 っ た 。 こ こで も映 像 へ の 認 識 が 一 つ の基 準 とな る 。 コ ン ピュー タ・ グ ラ フ ィックス 、 モ デ ル ス コー プ 、ハ イ ビ ジ ョン 、 ビ デ オ デ ィス ク 、ホ ロ グ ラ フ ィ、 3D等 の ハ イテ ク/ニ ュー メ デ ィアの 映 像 に も、建 築 的 用 途 に使 わ れ る場 合 の 共 通 の き ま りご とが 見 えて くる 。そ こか ら 建 築 の プ レゼ ン テ ー シ ョン には い か な る映 像 が必 要 な の か を探 り当て る こ とが 、 これ か ら の 映 像 ソ フ トウ エ アの 開 発 に欠 かせ な い 研 究 な の で あ る 。

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2.映 像 ソ フ トウ エ アの 理 念 ニ ュー メ デ ィア 映 像 メ デ ィア の 技 術 面 と表 現 面 は どの よ うにつ な が るの か 。種 々 の ニ ュ ー メ デ ィア を成 立 た せ る 映像 に つ い て 、そ して そ の 映 像 と建 築 の 関 係 に つ い て 考 察 を加 え たい。 ニ ュー メ デ ィア を語 る に あた っ て「 技 術 」 と「 表 現 」の 二 つ の 側 面 に分 けた 。情 とは 報 一 般 に そ の 客 観 性 が 貴 ばれ るが 、建 築 物 の 発 す る情 報 で は (ま た 建 築 だ け には 限 らず )表 現 の 芸 術 性 と い う主 観 的 な要 素 が 入 込 ん で くる 。 この 二 つ の 価 値 判 断 を単 純 に 分 割 し、別 々 に考 え るの な らば 問 題 は な くな るが 、実 際 の 建 物 に は 安 易 な分 割 を阻 む 一 体 感 が る あ 。 例 えば それ を形 式 と 内容 と い う 、文 学 論 にお い て よ く用 い られ た 二 元 論 に置 換 えて み て も よ い 。形 式 とは 、建 築 で は建 物 の 意 匠 、デザ イ ン 、視 角 的感 覚 的 な美 学 で あ る 。 そ して 内容 は 、そ の 建 物 の 機 能 、使 い 勝 手 等 の 実 用 面 に 相 当す る 。文 学 的 概念 と して の 形 式 ― ― 内容 二 元 論 は 、 50年 代 以 降 の 構 造 主 義 思 想 に よ っ て メ ス を入 れ られ た 。 しか し建 築 い に お て は そ の よ うな 分 割 自体 が 不 毛 で あ り、妥 当で は な い事 が 自明 で あ る 。建 築 に お け る形 式 と内 容 の 不 可 分 性 は 、た だ の 心 理 的 事 実 で あ る に止 ま らず 、そ こには 全 く現 実 的視 点 が 介 在 して い る 。 「 機 能 の 純 粋 さイ コー ル 無 条 件 の 美 」 と い う見 方 こ そ今 で は も う古 い が 、 そ こに あ る種 の 真 理 が 含 まれ て い る こ とは 誰 も否 定 で きな い 。交 雑 物 を剥 ぎ と っ て い

く美 、む きだ しの 構造 の 美 、 ミー スの “Less

is more."そ

内容 の 混 合 が 有 る 。情 報 は 論理 と い うク ッシ ョン を通 して 美 と繋 が る 。

こで 既 に形 式 と また それ と対 照

的 な 付 加 物 に よ る過 剰 性 の 美 も 、建 築 の 「 内容 」 と無 関 係 で は い られ な い 。我 々 は と もす る と 「 機 能 」の 第 一 義 的 な定 義 を重 く見 過 ぎて しま うが 、行 動心 理 学 や 環 境 デ ザ イ ンの よ うな 学 問 が 既 に 科 学 の 中 に 取 込 まれ て しま っ た今 の 世 の 中 で は 、「 美 」の 客 観 性 、「 機 能 」の 主 観 性 と い った ク ロス ォ ー バ ー が 往 々 に して 見 られ るの で あ る 。 構造主 義思 想 が 、

形 式 ―― 内容

二 元 論 の 幻 想 を看 破 して くれ た とす れ ば 、それ に代 わ る新 た な 視 点 を具 体 的 に提 供 して くれ るの が ニ ュー メ デ ィアだ と言 うこ とが で き る 。だ が ニ ュー メ デ ィアの 社 会 的 基 盤 は まだ 浅 く 、社 会 組 織 と して の ニ ュー メ デ ィアの 概 念 もま だ 十 分 普 及 して い る とは 言 い が た い 。 ニ ュー メ デ ィア は 我 々 に素 材 と機 会 を与 えて くれ て い るに過 ぎな い 。そ こ に見 えて い る可 能 性 は まだ 断 片 で しか な い 。 ニ ュー メ デ ィアが 情 報 を よ り総 合 的 な 、一 般 化 した 形 に 持 つて い く方 向 に あ る こ とは 述 べ た 。 これ か らは ニ ュ ー メ デ ィア が 、お よそ 情 報 に関 す る全 て の き ま りご と を分 割 /再 統 合 して くれ る こ とに 期 待 した い 。 旧 メ デ ィアが課 した 枠 は恣 意 的 、任意 的 な 分 類 で あ り、 ニ ュー メ デ ィア を用 い る時 には それ らが 全 て 取 払 わ れ た 状 態 で考 え るのが 望 ま しい 。図 面 い い を用 た 設 計 と う 、建 築 にお い て は 全 く不 可 欠 の プ ロ セ ス で あ る よ うに見 えて い た 「 制 度 」 もニ ュー メ デ ィア の 台頭 に よ つ て そ の 恣 意 性 を露 呈 し始め て い る 。菊 竹 清 順 氏 も言 つ て い る通 り、デ ィス プ レ イ上 で立 体 を そ の ま ま扱 え る よ うな設 計 ソ フ トウ エ アが 生 れ て く れ ば 、図 面 す ら も二 次 的 な媒 体 で あ る こ とに 人 は気 付 くで あ ろ う。 ニ ュー メ デ ィア は コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョン を豊 か にす る 。 同 時 に それ を よ り直 接 的 にす る 。 そ して この よ うな ニ ュー メ デ ィアの 性 格 は 、 「 映 像 」 と い うもの の 性 格 自体 に 負 うとこ ろが 大 きい 。

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記 号 論 で は 「 映 像 は 短 絡 的 な 記 号 で あ る 」 と い うこ とが 言 われ る 。言 語 に 見 られ る記 号 表 現 と記 号 内容 との 恣 意 的 な関 係 が 、普 通 映 像 に は な い か らで あ る 。映 像 が 記 録 し再 生 し た もの は 、映像 の 中 で もその もの 自身 で あ り、 そ の もの を抽 象 化 した 代 替 物 た る記 号 では な い 。映 像 に よ る コ ミュ ニ ケ ー シ ョン 、 そ して それ を容 易 にす る ニ ュー メ デ ィアは 、直 接 的 な 「 そ の もの 」 をや りと り して い るた め 「 記 号 」 と い う中間 媒 体 を経 な い で 済 むの で あ る 。 この よ うな 映 像 の 特 質 が 、 ニ ュー メ デ ィア 、 そ して世 界 的 な 映 像 文 化 の 隆盛 の 根 底 に はあ る。 ハ イ ビ ジ ョン 、大 型 映 像 、 レー ザ ー 、 そ して マ ル チ イメ ー ジ 等 は

映 像 を 映 しだ し投 映 す ハ る ー ドウ エ アの 技 術 に 関係 して い る 。 ビ デ ォ デ ィス クは 映 像 の 記 憶 。 3-Dと ホ ロ グ ラ フ ィは これ まで二 次 元 で しか な か つ た 映 像 を三 次 元 に まで 拡 張 す る こ とで 、現 実 の ミニ チ ュア を映 像 に よ っ て 出現 させ る 。 これ らは い ず れ も映 像 本 来 の 記 号 的短 絡 を 助 長 す る仕 掛 けであ る。 コ ン ピ ュー タグ ラ フ ィックス とモ デ ル ス コー プ に つ い て は も うす こ し突 つ 込 ん で

考 えて み な くて は な らな い 。映像 が短 格 的 記 号 で あ る と理 論 的 に は 理 解 で きて も 、 コ ン ピ ュー タ グ ラ フ ィ ックスや モ デ ル ス コー プ に よ っ て 作 り出 され る映 像 は 、建 築 物 そ の もの を表 す の で は な く、や は りそ の 「 記号 」に 過 ぎな い とい うこ とが 、簡 単 に見 て とれ るか らで あ る 。 これ は お よそ 「 特 撮 」 と名 が つ く もの に対 して の 我 々の 共 通 の 意 識 で あ ろ う。 奇 妙 な 事 に こ こで 我 々 は 「 短 絡 的 な記号 た る映 像 」 と い う観 念 を もち あ わ せ た ま ま 、映 像 を記 号 と し て と らえ直 さな くて は な らな くな る 。同様 に 、映 像 の 中 に文 字 情 報 を混 入 させ る時 に も、 同 じよ うな一 種 ぎ ご ち な い 瞬間 が あ る 。 そん な と き我 々 は 、内容 ―― 形 式 二 元 論 に再 び 立 返 つ て しま う。 そ の よ うな不 連 続 点 を学 ん で い な が ら も ニ ュー メ デ ィア が 機 能 して い く し、 また 逆 に コ ン ピ ュー タグ ラ フ ィ ックス の 高 度 な 発達 が 、記 号 と記 号 で な い もの の 間 の 隔 た りを縮 め て も い る と い う事 実 を認 識 す る事 が 重 要 で あ る 。そ こに 映 像 の 強 さそ して わ か りや す さが あ る 。 ニ ュー メ デ ィア を語 る ときの 一 番 の 問 題 は 、次 の よ うな 一 連 の 間 に 置 換 え て られ る 。何 の ため の 映 像 か 。建 築 の ため の 映 像 か 。映 像 の た め の 建 築 か 。なぜ 映 像 な の か 。 しか るに こ こで 映 像 論 の 側 に立 っ て考 えて きた 事 は 、建 築 の 体系 と も通 ず る もの を有 して い る 。映 像 で も建 築 で も、 そ の 形 式 と内容 の 不 可 分 性 は 自明 で あ る 。映 像 に つ い て 「 短 絡 的 な 記 号 で あ る 」 と言 え るな ら 、建築 に つ い て は「 記 号 内容 を持 た な い 記 号 表 現 で あ る 」 と い うふ うに 言 え る 。建 築 の 記 号 内容 は 、建 築 の 記 号 表 現 に 自己言 及 して しま う事 で 、そ の 存 在 を 稀 薄 化 させ 、消 滅 して しま う。 それ が ピー タ ー ・ ア イゼ ンマ ンの 言 う「 不 在 」で あ る 。 と い うこ とは つ ま り、言 語 な どの 正 統 派 の 記 号 体 系 と比 べ て 、映 像 と建 築 は 両 者 と も「 倒 錯 した 」記 号 を持 つ 点 で 共 通 して い る と言 え るだ ろ う 。 これ を両 者 の 関 係 に ど う生 か せ るか 。 あ る い は 生 かす こ とが で き るの か 否 か 。 しか しそ の 問題 は 、 よ り具 体 的 な 形 に な ら な い と解 決 の 緒 も見 えて こ な い 。 こ こ に 再 び ニ ュー メ デ ィアの 問 題 が 内包 され て い る 。つ ま リニ ュー メ デ ィアの 建 築 的 用 途 は 技 術 が 発 達 して どん な こ とが で き るの か わ か っ てか らで な い とは っ き り定 め られ な い し、逆 に用 途 が は っ き り わ か つ て い な い と どの よ うに 技 術 開 発 を進 め て 良 いの か 決 定 しが た い と い う 自家 撞 着 が 生 れ る。

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片 や 短 絡 的 、片 や 不 在 。 しか しそれ で も映 像 と建 築 に理 論 的 な 類 似 点 を見 出 だ す の は さ ほ ど困 難 な こ とで は な い 。建 築 も映 像 も 、設 計 者 に よ る換 輸 的 な 思 考 法 を要 求 す る ◆ さ ら に両 者 には 、重 要 な構 造 的 共 通 項 が あ る 。作 品 で細 部 同士 の 連 関 が 積 重 な つ て 全 体 が 立 ち 現 わ れ る と い う構 成 が それ で あ る 。映 像 に あ って は 一 つ 一 つ の 構 成 要 素 が 同 じフ ォー マ ッ トを守 つ て い るの に対 し、建 築 で は 細 部 は 柱 で あ つ た り窓 で あ つ た り、そ の つ ど形 や 大 き さ を変 え る と い う違 い は あ るが 、 「 構 成 」の 概 念 自体 には か な り近 い もの が あ る 。建 築 は 静 的 な 施 設 で あ り、空 間 に部分 が 固 定 され 、複雑 に組 合 わ さ つ て そ の 総 体 が で きあ が る 。 そ の よ うな建 築 の 「 構 成 」を映像 に お い て 積 極 的 に模 倣 し、取 込 も うとす る試 み が 、建 築 の 映 像 ソフ トウ エ ア とな つ て 現 わ れ て 良 い 。 建 築 用 映像 ソ フ トウ エ ア にお い て は 、情 報 は建 築 的 に構 成 され る 。建 築 の 任 意 の 詳 細 を 単 位 と見 な し、 一 枚 の 映 像 と等 価 とな る よ うにす る こ とで まず 建 築 的 な観 念 との 可 能 な 限 りの 互 換 性 を 目指 す 。次 に 「 構成 」で あ る 。映像 と建 築 の 「 構 成 」の 内容 には 基 本 的 な相 違 が あ る こ とは 何 度 で も確 認 して お くべ きで あ る 。映 像 が 構 成 の 主 体 にな るの だ か ら 、そ の 線 形 性 か らは ど う して も逃 れ られ な い ◆記 号学 者 ウ ンベ ル ト・ エ ー コ は 、線 形 的 な る構 成 と して 次 の 三 種 類 を挙 げ て い る ①一 本 線 ②樹 系 図 ③ 地 下 茎 系 図 (リ ゾ ー ム

)

これ は迷 路 の 種 類 で もあ る 。分 岐 点 あ る い は節 が それ ぞれ 一 つ の 情 報 単 位 を意 味 す る も の に な る 。エ ー コ は また 、迷 路 が 推 察 性 の 抽 象 的 な モ デ ル で あ る と も言 つ て い る 。 これ は 一 般 的 な 映像 デ ー タベ ー ス に つ い て の 考 え方 とは少 し離れ て い る 。既 に知 りか け て い る こ と を教 えて くれ るデ ー タ ベ ー ス とな るか らで あ る 。 この よ うな ソ フ トウエ アは 、そ の 用 途 及 び 実 益 を規 定 す る前 に 、建 築 的 に お け る映像 の 在 り方 の モ デ ル とな つ て い る 。

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3.映 像 ソ フ トウ エ アの 構 成 ① 映像 の デ ー タ構 成 分 類 に 従 つ て次 に 三 種 類 の 映 像 ソ フ トウ エ ア の 様 式 を提 案 した い 。

a)一 直 線

一 直 線 に つ な が つた構 成 を持 つ 映 像 ソ フ トウ エ ア は 、ひ とつ ひ とつ の 映 像 単 位 が 両 隣 の それ と連 続 的な 関 係 を有 して い な けれ ば な らな い 。 また 次 の二 つ の 原 則 の うち の どち らか に従 う。 ① ひ と つ の 統合 観 念 に しば られ て 勾 配 を もつ ② ふ た つ の 極 の 間 を行 つ た り来 た りす る 一 直 線 型 の 映 像 ソ フ トウ エ アは 連 辞 本 位 の 映 像 で あ る 。範 列 は 映像 の 連 な りの 中で 自ず と限 定 され て く る 。ひ とつ ひ とつ の 映 像 単 位 に 、直 線 的 な ヒエ ラル ヒー に基 づ い て順 番 が 決 め られ 、そ の 順 番 が デ ー タ ベ ー ス にお い て は検 索 、 プ レゼ ン テ ー シ ョンに お い ては 提 示 の 手 段 とな る 。 デ ー タベ ー ス 的 に考 え る と 、 この 形 の ソ フ トウ エ アは 、前 後 二 種 類 の 運 動 が 選 択 可 能 で あ る 。検 索 の 最 終 目的 に至 るに は 、一 般 の 辞 書 同様 修正

検 索 ―― 判 断 一

の 試行 錯 誤 の 過程 を通 過 しな くて は な らず 手 動 操 作 が 主 体 とな る 。

プ レゼ ンテ ー シ ョンに用 い る場 合 で は 映像 を 一 定 周 期 で順 番 に映 しだ す 形 式 に 適 して い る 。周 期 と順番 に 関 して は 恣 意 的 に操 作 す る こ とが 可 能 で あ る 。す な わ ち周 期 の 変 化 に よ って 映 像 の 連 な りの 中 に速 度 の 概 念 が加 わ り、順 番 の ス テ ップ も同様 。順 番 の 操 作 に よ っ て逆 方 向 の 映 像 連 鎖 を提 示 で きる 。 一 直 線型 の 映 像 ソフ トウ エ アの 典 型 例 と して 、チ ャ ール ズ ・ イ ー ム ズ の 映 像 作 品 「 パ ワー ズ 。ォ ブ・ テ ン 」 (「 宇 宙全 体 の 姿 を極 大 、極 小 の ズ ー ミング イ メ ー ジで 表 現 した もの 」 )が あ げ られ る 。 イ ー ム ズ の 作 る映像 に は 「 情 報 フ ィル ム 」 と「 玩 具 フ ィル ム 」の二 種 類 あ り、 「 パ ワー ズ 。オ ブ ・ テ ン 」は そ の うち の 前 者 に属 す る 。一 種 の プ レゼ ン テ ー シ ョンで あ るが 、 同 時 に映像 情 報 をカ タ ロ グ 的 に 配 列 して あ り、 この よ うな 統 合 的 ア プ ロー チ は これ か らます ます 研 究 され な くて は な らな い 。 極 大 ←→ 極 小 の 概念 に は 必 ず しも沿 う必 要 は な い 。 それ に 代 わ り得 る別 の 原 則 を用 い た 、別 の ソ フ トウ エ アが で き る 。外 ← → 内 、上 ← → 下 、左 ← → 右 な ど 。原 則 は建 築 空 間 に お け る位 置 関 係 と一 致 す る こ とが 望 ま しい 。建 築 的 な意 識 に お い て ソ フ トウ エ ア を利用 す る こ と を容 易 にす るか らで あ る ◆ 映 像 を総 合 的 に扱 う立 場 か ら、撮 影 され た 映 像 だ け で な く、電 子 的 な 映 像 に も 映 像 的 な思 想 を と り入れ る試 み が な され て よ い 。例 えば 一 直 線 型 の 映像 構 成 を C ADに 応 用 し、 概 念 図 とデ ィテ ー ル を二 つ の 極 と して 、そ の 間 にお さ ま る全 て の 図 面 を ス ケ ール 順 に並 べ た 形 で記 憶 させ る 。建 築 に お け る「 パ ワー ズ 。ォ ブ ・ テ ン 」の よ うな極 大 か ら極 小 まで の 映 像 の 集 積 が そ こ に は で き る 。


b)樹 系図

例 に あ げ た 図 は ご く簡単 な もの で あ る 。樹 系 図 型 の 映 像 構 成 を もつ ソ フ トウ エ アは 一 直 線 型 の ソ フ トウエ ア が そ の 単 純 さ故 に保 持 しきれ な か つ た情 報 も含め て よ り総 括 的 な デ ー タ管理 が 可 能 にな る 。こ の 形 にお い て も、構 造 自体 に ピ ラ ミ ッ ド状 の ヒエ ラル ヒー を有 して い る 。各 レベ ル に お け るデ ー タは 等 価 で な けれ ば な らな い 。 また レベ ル 間 に も連 続 的 な 関 係 が必 要 で あ る 。一 直 線 の 時 に持 出 した ヒ エ ラル ヒー を何 種 類 も東 ね た ソ フ トウ エ アの よ うな もの が 可 能 にな る 。 しか し一 回 の 探 索 で とれ る道 は 一 本 で あ る 。 そ の 到 達 地 もまた一 つ の 映 像 単 位 で あ る 。従 つ て等 価 の デ ー タ を並 べ て 横 断 検 索 す る作 業 に は 適 して い な い 。デ ー タ ベ ー ス と して考 えれ ば 最 後 の 映像 に意 味 が必 要 にな り、 プ レゼ ン テ ー シ ョン と して 見 た 場 合 そ の 探 索 の 過 程 に意 味 を求 め る事 に な る 。 樹 系 図 的 デ ー タ ベ ー スの ソ フ トウ エ アの 例 と して 「 ARCHI―

FILE」

あ げ られ る 。 この 形 式 の ソ フ トウエ ア で は検 索 時 に 分 岐点 で の 選 択 を成 しな が ら 次 々 と レ ベ ル を下 つ て い く と い う操 作 手順 を辿 る 。そ の 選 択 は 当然 一 直 線 の デ ー タ構 造 を有 す る もの よ りも複 雑 化 す るの で 、手 動 で の 操 作 に加 えて コ ン ピ ュ ー タ の 支 援 を得 る こ と に よ り検 索 能 力 は 向上 す る 。 プ レゼ ン テ ー シ ョンにお い て も選 択 の基 準 を あ らか しめ 決 め て お け ば 一 直 線 の ソ フ トウ エ ア を内 包 した ソ フ トウ エ ア に もな り うるが 、む しろ構 造 の 中 に組 込 ま れ て い る選 択 性 は プ レゼ ン テ ー シ ョンにお い て も見 る者 の 参 加 を促 す 形 を示 して いる。

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c)地 下茎系図

図 の よ うに二 次 元 的な 格 子 に と ど ま っ て い る必 要 は な い 。隣 合 つ た 映像 単 位 は 連 続 的 な 関 係 が な けれ ば な らな い が 、地 下 茎 系 図 (リ ゾ ーム )型 の 構 造 を持 つ 映 像 ソ フ トウ エ アで は 、構 造 自体 の な か に明確 な 指 向性 の あ る ヒエ ラル ヒー を持 た な い 点 で 一 直線 型 と も樹 系 図 型 と も異 な る 。 自然 な ヒエ ラル ヒー を持 た な い ため に 、 これ を人 工 的 に付与 しな けれ ば 、容 易 に デ ー タ を処 理 す る こ とが で きな い 。 デ ー タは 配 列 に よ つ て扱 わ れ 、数 式 化 が容 易 にな る と共 に コ ン ピ ュー タで の 処 理 に 結 び つ く。デ ー タ量 も膨 大 にな リ コ ン ピ ュー タ を用 い て 、初 め て 満 足 な 制 御 が 可 能 に な る 。枠 は 完 全 に恣 意 的 な もの で あ り、 自由度 が 大 き い 。デ ー タの 配 列 に 任 意 に持 た せ た規 則 性 が 、デ ー タ構 成 の 枠 組 み とな る c 検 索 を行 う時 も 、 ます ます 選 択 枝 が 増 え るが 、樹 系 図 の 場 合 と異 な り、近 い 位 置 にあ るデ ー タは 全 て連 関 が 成 立 っ て い る 。 そ の上 で 広 範 な デ ー タ を収 め る には 漸 近 的 構 造 をデ ー タの あ らゆ る部 分 で 採 用 しな けれ ば な らな い 。基 本 的 に は デ ー タ に課 せ られ る恣 意 的 な論 理 構 造 が 、そ の ソ フ トウ エ アの性 能 を決 定 す る ◆例 え ば 建 築 的 構 造 を忠 実 にな ぞ つ た デ ー タの 配列 も可 能 で あ り、建 築 用 ソ フ トウ エ ア と して は 望 ま しい もの で あ る :

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② 映 像 に よ る建 築 の 体 系 特 に地 下 茎 系 図型 の ソ フ トウ エ ア にお い て どの よ うに デ ー タ を ま とめ た ら よ い か と い う問題 で あ る 。連 続 的 な 関 係 を維 持 しな が らいか に して建 築 の 異 な る分 野 を総 合 的 に 提 示 し うるの か 。本 論 文 で は科 学 的 な 方 法 は と らず 意 味論 的 な 考 察 を通 して 映像 も建 築 も と らえて きた の で 、構 成 の 概 念 に つ い て も同 様 にす る 。実 際 に映 像 ソ フ トウ エ ア 製 作 に あた っ て 用 い た 簡 単 な モ デ ル を記 してお く 。

i)外 部 ― 外 表 面 ― 内表 面 一 内部 空 間 il)水 平 要 素 一垂 直 要 素 a)水 平 :床 ―は リー天 丼 ― 階 段 b)垂 直 :構 造 (柱 )― 壁 一 開 口 iii)n層

(昇 降 機 、 ス ロー プ )一 吹 抜 け (ド ア 、窓

)

1■

1■


シス テ ム 概 要

<構 成 > デ ー タは三 次 元 の 座 標 軸 に そ つ て 組 あげ られ る 。 一 階 の二 次 元 の 座 標 に お け る建 物 の ほ ぼ 中心 部 を原 点 とす る 。 そ こが 高 さの 座 標 の 原 点 に もな る 。座 標 は 位 置 を示 し、視 線 の 方 向 (東 西 南 北 の 四種 類 )と 併 せ て 各 デ ー タ を規 定 す る 。 一 様 な 座 標 に よ っ て デ ー タ を組 ん で い るの で 、意 味 関 係 の 構 造 的 な モ デ ル は 内 部 に埋 もれ て い る 。 しか しその概 要 は 次 の よ うな 形 に な る 。

座標軸 ↑

面 全 体 一部 分

百轟 詐 =萬

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→座標軸


<操 作 > キ ー 操 作 に よ つ て 、使 用 者 は 建 物 をその 場 で 歩 い て い る よ うに 任 意 に 眺 め る こ とが 出来 る 。 "K","」

","I","M"に

よ る移 動 は それ ぞれ 東 西 南 北 の 絶 対 方 向 と対 応 し

て い る 。建 物 に近 付 くと映 像 は 拡 大 され 細 か くな る 。

<キ

ー操作

線の方向

<位 置 の 移 動 >

→ □

←□

→ □

□ □

□←

→□

□←

←回

>

→□

<視

>

一 回 押 さ れ る と 画 像 を記 憶 し二 回 日 で そ の 画 像 に 戻 る 。

視 点 の 向 い て い る 方 向 と 垂 直 な 軸 に 対 して 対 称 的 な 座 標 の 画 像 に とぶ

︱   ︲

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.


(

建築用映像ソフトウェアの研究  

1987年度,卒業論文,前田健成