風ゼミ 安風

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風ゼミ

風ゼミ

ちくわぶから安風を探る ちくわぶから安風を探る

東京都市大学 工学部 建築学科 東京都市大学 工学部 建築学科 福島研究室 藤塚雅大 福島研究室 藤塚雅大





目次 安

1. 安さの誕生 p .8 2. 代用品 p .10 3. 安風とは p .16

ちくわぶ建築 4. 安風を探る p .20 5. ちくわぶ建築のまとめ p .28 6. 安風建築との違い p .32

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安風

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安っぽいな

違いは ¥1000

物質的

¥10000

感覚

実質的な安さと安っぽさでは何が違うのであろうか ~風は感覚的な部分が主に働いていると考えられる。 何 故 そ う 思 っ て し ま う の か 、そ れ は 何 が 原 因 な の か 紐 解 い て い く

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安さの誕生 ー大量生産ー

歴 史 を 遡 れ ば 1 8 5 0 年 代 、銃 の 部 品 を 素 早 く つ く る た め に 生 み 出 さ れ た『 部 品

交 換 性 』が 始 ま り で あ る 。

部 品 交 換 を よ り 早 く 、手 軽 に す る た め に 同じ形状をいくつも作ることによって それぞれ違うパーツを組みあわせても 同じものができるようにたしのである。 のちに同じものが世の中に溢れ物の価 値 は 下 が っ て い き 、作 り づ ら い も の の 価 値は相 対 的 に上がっていった。

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部品交換性

寸法・精度が同じ

交換が可能

寸法・精度の違い

完成品の違い

手作り

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代用品

ー安風の手掛かりー

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代用品

型がある

核が違う、装う

違う何か

元のもの

大量生産が生まれたのも元をたどれば交換のできる代 用 品 を多 くつくれないかというものである。

現 在 で も 多 く の 代 用 品 が み の ま わ り に あ る 。そ の い く つ か を 比 較 す る こ と に よ っ て 現 れ る 共 通 点 か ら『 安 風 』を 見 つ け 出 す ヒ ン ト を探す。

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代用品の

かにかま

共通

繊維状で細長い

繊維状で細長い

筒状 突起

少し潮のしょっぱさ

蟹に寄せた味

魚のすり身に似た

魚のすり身

×

素材

魚のすり身

素材

かに身

ちくわ

形、味、素材の 3 種類に分けたとき元のものと

しかし形に関してはどれもそろっ

形状の 12


の比較

ちくわぶ

共通

バター

マーガリン

共通

筒状 ギザギザ

形状なし

形状なし

無味

×

食材のコクを増す

バターに似た

小麦粉

×

素材

牛乳の脂肪分

植物性油

×

と代用品では共通点が異なった結果となった。

って似たような形を保っている。

の一致 13


ちくわぶ ちくわ

素材 すり身

形 中が筒状 味 魚肉系 戦後魚のすり身を使うちくわは高級品として扱われていた。

ちくわぶ

素材 小麦粉 ×

原型 味 なし ×

ちくわ 形 ちくわ

安価で手に入りやすい小麦粉をちくわの形で売ることで 少しでも幸福感を得られるようにした。

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まとめ 食べ物の代用品では味覚よりも視覚的要素を重要視するこ とがわかった。 古 く か ら の 遊 び で あ る 、闇 鍋 は 視 覚 を 奪 う こ と で 何 を 食 べ て い る の か 予 測 す る も の で あ る が 、そ う い っ た 物 か ら も 人 の感覚にとって最も重要なものは視覚からの認識であり、 視覚から得られる形が物を判断するうえで重要であること がわかった。

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安風とは

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価値の高い形

似た形の量産化

安い 様 々 な も の の 形 に は 意 味 が あ る 。し か し 形 式 だ け を ま ね し 大 量 に 作り出すことによって本来持っていた物の価値と世の中に溢れ る数にズレが生じ形に対する印象を変えていくことで生まれる 感覚である。

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ちくわぶ建築

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ーちくわぶ構造を物差しとして使うー 代用品を調べることで人の感覚について知ること が で き た 。ち く わ - ち く わ ぶ の 関 係 を 用 い る こ と で 建築に対する新たな規範を作り出し建築の見方を 変えることができるのではないかと考える。

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安風を探る

構造を建築に落とし込む

ちくわぶの要素である 「

」・「

」・「

要素の 「

素材

」・「

素材

」・「

機能

考察する。

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」を そ れ ぞ れ 建 築

」と お き か え て


ちくわぶ

素材 小麦粉 ×

原型 味 なし ×

ちくわ 形 ちくわ

香川県庁舎

素材 RC 造 ×

原型

機能 なし ×

垂木 形 垂木

垂木としての形態は残しつつあくまで構造などとは切り離す。

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和の建築 浅草文化観光センター 隈研吾

屋根

その場所の気候、風土によって形はまちまち

機能

屋根の機能をはたしている 形態のみ機能なし 切妻、片流れ

気候、風土とは無関係に切妻、 片流れという形態を抽出 外観に現れるような建築にし、 形を強調

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香川県庁舎 丹下健三

垂木

構造材としての役割

構造

形態のみ、軒下空間の再現 垂木の形態のみ抽出 屋根の形を出さずに和風的中間領域を軒下に再現

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直喩的建築 静岡県富士世界遺産センター 坂 茂

富士山 逆さ富士

富士と逆さ富士の関係

実像

虚像 逆転

虚像

実像

逆さ富士 富士山

虚像と実像の反転により逆さ富士の形を印象付ける

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出雲大社庁の舎 菊竹清訓

歩掛け

稲を掛ける形状

掛ける

周辺で見られる稲かけの形を再現することで周囲との調和を図る

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暗喩建築 KAIT 工房 石上純也

木と木の間で人々が空間をつくっていくイメージ

木の下で囲まれているかのような安心感

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物質建築 ドミナス・ワイナリー

ヘルツォーク&ド・ムーロン

土木的要素

蛇籠

・フレームが構造体としての役割をに担う

構造 機能

柱、スラブの構造体

表層的蛇籠要素

蛇籠のフレーム + 石という形態を抽出 石の隙間間隔を広げたりすることで新たに風通し、採光といった機能を追加

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ちくわぶ建築まとめ 浅草文化観光センター

香川県庁舎

富士山世界遺産センター

屋根

垂木

逆さ富士

和風積層

和の空間

情景

形状と情景

ちくわぶ建築にはそれぞれ形が作り出す空間や情景など のものがあることがわかる。 垂 木 の 形 が 連 な れ ば 和 の 軒 下 空 間 に 繋 が り 、富 士 山 の 形 を 逆さにすることで逆さ富士を強調し富士山の美しい眺め を思い出させる。 ちくわぶの構造を知ることで建築の見方を変えることが できる。

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富士山世界遺産センター

出雲大社庁の舎

出雲大社庁の舎

KAIT 工房

逆さ富士

稲掛の形 森の中

稲掛の形

周辺との調和

情景

暗喩

周辺との調和

KAIT 工房

ドミナスワイナリー

ドミナスワイナリー

森の中

蛇籠

蛇籠

暗喩

物質に着目

物質に着目

情景 ・ 思い 情景 ・ 思い 周辺 デザイン 環境

周辺 デザイン 環境 構造

構造

様々な要素が形づくる。

形だけを抽出し強調すること で形に関連した思いも同時に 形と情景は繋がっている。

抽出することができる。

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香川県庁舎

平田晃久

安風建築

・物質と結びついた建築 ・マテリアル

・離散的タイポロジー

暗喩

空間の装飾

暗喩

藤本壮介

自然的、 植物的構造

物質に着目

物質と結びついた装飾

蛇籠

安風建築

中銀カプセルホテル

・和の空間の再構築

何もなし

装飾の折衷

装飾の折衷

ドミナスワイナリー

脱構築主義

20 08

・和の高層化

新 陳代謝

装飾あり 都庁

19 97

何もなし

稲掛の形

建物自体が装飾

装飾

ポストモダン建築

安風建築

何もなし

富士山世界遺産センター

ダイアグラム化

和風積層

20 12

和の空間

装飾なし

19 91

M2

メタボリズム

30

19 68

出雲大社庁の舎

モダニズム建築

20 17

愛知県庁舎

19 38

19 72 19 70

19 58

後の影響 着目点 建築思想

KAIT 工房

浅草文化観光センター


安風建築

ちくわぶ建築から見えてくる建築様式には後に影響を与え る も の と 無 い も の が 出 て く る 。ち く わ ぶ 建 築 の ま ま 発 展 し なければ大量生産で生まれたものと大して変わらない安風 になってしまう。

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安風建築との違い

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昇華

ちくわぶ

オリジナル

真似からできたものがまねされる 原型の形へと変化する

流行に沿った形を反復し続けることによって 形が持つ価値が低下する。

安風の形はその時代の流行と次の時代に受け継がれるかで決まる

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安風でない連続パターン

同 じ も の の 連 続 で あ る「 パ タ ー ン 化 」は 安風に見られやすい。

安っぽくみられてしまうものにもまた 規 則 が あ る の で は な い か と 考 え る 。反 対 に連続であっても安風に感じないもの 可能ではないだろうか。 安風でないパターンを考察していく。

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真似

妙な余白がパターンを意識させる

パターンとわかってしまうと途端に安く感じてしまう

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真似の仕方…モリスの参考事例

ひとつのパターン

ベルベット

形をまねる 対角線を意識し余白を生める

対角線構造

同様のパターンによる様々な素材 全体像

全体の形を形成

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や色合いが制作された。

ちくわぶ建築のようだがそのデザインは 高く評価され現代でも様々な商品に リメイクされるほど実用的


幾何学的模様

一例

組み合わせる

ドーハ ・ ハイライズ ・ オフィス ・ ビルディング

アラビックなパターンを構成 繰り返すこと = 工場的である中でひとつのパターンを作り出す ことで反復しながらもそれ自体で大きなデザインを形づくる 37


風ゼミ

ちくわぶから安風を探さす

発行年月日:9 月 25 日 著書:藤塚雅大 発行者:藤塚雅大 印刷所:福島研究室



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