生研ニュース No.177

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■編集・発行 東京大学生産技術研究所 / 広報室

IIS NEWS

No.177 2019.4

●基礎系部門 教授

羽田野 直道

IIS TODAY

今回の表紙は基礎系部門 ( 千葉実験所 ) の羽田野直道教 授です。羽田野先生は熱力学・統計力学や量子力学の基 礎的な研究を行っておられます。多岐にわたる研究から、 熱力学・統計力学の分野では量子熱機関の研究を挙げて いただきました。近年、量子力学的な熱機関を構築する 可能性が出てきましたが、その熱効率を正しく定義する 理論はまだないそうです。先生は熱機関のダイナミクス を量子力学的に正しく扱うことによって、熱効率を正し く与え、それにより微視的な熱機関設計の指導原理を与 えることを目指しておられます。一方、量子力学の分野 では「開放量子系」の研究を展開しておられます。多く の研究では注目している系を極力乱さないように、外界 との結合が弱い極限を考えますが、実際に系を測定する には、系と測定装置が強く結合する場合がほとんどであ るそうです。そこで、羽田野先生は、むしろ、このような、 注目する系と外界が強く結合している系「開放量子系」

を研究されています。このような系では、非エルミート 性や非マルコフ性のような、我々が大学で学ぶ量子力学 とは全く異なる性質が現れるとのことです。羽田野先生 は研究において、 「鶏口となるも牛後となるなかれ」とい うことを心掛けておられます。これは、 ”既にある分野の 新しい研究ではなく、新しい研究分野を作る”という先 生ご自身の目標や、 ”自分が面白いと感じるオリジナルな テーマを研究することで他の人も面白いと思ってくれる はずだ”という信念を言い表しているのだと伺いました。 学生の方々も、そのような指導のもと、自然に、先生と は異なるテーマを研究することになり、バラエティに富 んだ研究室になったということです。新しい分野を作る 研究に付随する苦しみこそが、研究の醍醐味であると、 自らも学生も励ましながら、日々、研究に取り組まれる というお話に大変感銘を受けました。 (広報室 古川 亮)


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