Free coffee 屋台建築

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~約五ヵ月間のストリート活動の洞察と考察~ ストリート・風景・匿名性・ゲリラ・日曜趣工・寄り道経済圏

まえがき

街中で屋台を展開して無料でコーヒーを振る舞う『フリーコーヒー』

”ただタダコーヒーを振る舞う屋台”と名乗って2025年1月から関西を中心に 各地で稼働してきた。

きっかけは友人に誘われて2024年夏に初めて行った「ラオス」という国

元々ストリートには関心があり、路上空間をもっと活用するという目線から建築 を考える機会も多かった。

そんな中で訪れたラオスはまさに”まちにはみ出して使うプロ” 寄り道や偶然性に溢れてた私にとって魅力的な風景だった。

こんな風景を日本にどうやってローカライズし、落とし込めるかを模索したくな

り、屋台を用いた『フリーコーヒー』という超個人的社会実験をスタートするきっ かけとなる。

そんな稼働記録と現段階で実働から得た”洞察”と”考察”を整理する作業とし てこのポートフォリオを作成している。

あくまで”私自身”が感じたこと考えたことをまとめていることだけであり、 感想文程度に読んで頂けるとありがたい。

ずっと作りたかったパーソナル屋台

当日は友人が手伝いにきてくれて、一日かけて組み立てた 私にとっては超スケールは小さいけど初めての実作ができた日

最後には手伝ってくれて友人達とコーヒーを淹れてみる

この屋台は組み立て可能で、どこへでも運べる 畳めば棚板一枚まで戻り、スノーボードケースに収まる 実際、屋台を持って40分近く歩いて移動する日もある 無料でコーヒー配るから、

歩いて移動しないと経費かかりすぎるし けど、車で移動してしまうときもある、、、

大阪府豊中市庄内というまちでフリーコーヒーをやってみる

怪しまれるかなと思ったけど、

案外すぐにコーヒーをもらいに来てくれた

歯医者に行く途中の人、まちをパトロールしてる人 なんならお礼に飴ちゃんもらった

意外と怒られないものだなと思っていた矢先 警察がきて通報があったと、、、、

「無料でやってるならええかぁ」と許してもらえた 結果は5時間で10人くらいきた

大阪だからなのか庄内だからなのかはわからないが

警察にも許しをなんとなく得て、

初めてにしてはそれなりに上手くいったのかな

私には師匠がいる

今回の屋台やイスづくりにおいて

師匠の存在はとても大きい

師匠は町工場を営まれていて、 ものづくりに関するノウハウや道具は桁違い

私の壊れたトンカチすらその場で直してくれる

師匠は私にものづくりの基礎を教えてくれるし

何よりも屋台づくりを同じ温度感で楽しんでくれる 私にとって初めての師匠であり、師匠と呼びたくなる人

私には師匠がいる

イスを置けば座ってもらえる 屋台があればなにが起こるのだろう

屋台があれば人が集まるはイコールではない気がする この頃から少しずつ屋台が風景にどんな影響を与えているのか

考えていたような

ただ確実に感じていたのは、私も来てくれた人も ”いつもよりちょっと有意義な休日”になっているような感覚 があった

サラリーマンから老後を一人で暮らすおばあちゃん 割と色んな人が来てくれるし、

みんな面白いエピソードを持っている

庄内の昔話やISSEY MIYAKEと仕事でコラボした話 庄内の安い居酒屋の話とか

相変わらず5時間やって10人くらいのままではあるけど

毎回、変わり種エピソードが聞けるのも楽しみの一つ

この日からちゃんとPOPを作り、

フリーコーヒーであることをわかりやすくした

「おいくらですか??って」聞かれること多いし POP貼ってても聞かれる

そして、この時からいわゆる「常連さん」という存在が現れる 別に告知しているわけでもないんだけど

今日はいるかなって覗いてはいてくれてるらしい ちなみに左ページの上も写真は私の個人的に一番好きな写真 場の緩さとみんな勝手にしてるだけなのになんか集まってる感 じが良いなと

2025.02.03 フリーコーヒー 庄内

フリーコーヒーの稼働を始めて約3か月 フリーコーヒーの協力なサポーター

奈良で障がい者福祉施設を運営しながら 就労支援の一環でコーヒー豆の焙煎所を併設しており

利用者さんと一緒にコーヒー豆を焙煎している

そんなコーヒー豆をフリーコーヒーで活用し 皆さんに振る舞い、そのレビューを施設へお返ししている

フリーコーヒーの裏側には

コーヒー豆の商品開発にも寄与している一面も

今回から新しい拠点となる

淀川の加島にある24時間体制の訪問介護事業所の事務所 オーナーさんの事務所に留まらない複合的な建物にしたい そんな意向からここを拠点にフリーコーヒーを開催 建物の駐輪場に屋台を広げ、道行く人に声をかける

加島というエリアは生まれも育ちも加島の人が多く

地域の郷土話をしてくれる人がたくさん ザ・大阪の人間って人がいっぱいいる 今までのエリアとはまた違った

まちの刺激を感じることができそう

フリーコーヒー出張企画第二弾 奈良東吉野 今回の初日に東吉野観光

二日目にフリーコーヒー

地域の郵便配達員さんが仕事中にバイクを止めて飲んでくれた

役場の人がお昼休みにきてくれた

良い地域への入り方ができているな~と実感 それと同時に、まだ地域の賑やかし程度にしかなっていない

もう一歩、二歩踏み込んでいった先に まちの仕組みづくりに参加できるような可能性を感じた

継続的に今後も東吉野に関わり続けたい

この日は近くに住んでいる人から帽子のプレゼントがあった

けど、帽子をくれた人はコーヒーは飲まないって もはや、私たちはなにもプレゼントしてないのに 帽子くれた人はコーヒーは飲まないけど いつもニコニコで話しかけてくれる

そんな帽子を被って今日は稼働

地域のおばちゃん達はコーヒー一杯で何時間でもいてくれる

しかも話が途切れないし、なんなら友達をどんどん連れてくる 過去一賑やかだった日かもしれない

素直にまた来て欲しいなぁ

出張企画第三弾

二回目の丹波

二日連続で丹波市・丹波篠山市でフリーコーヒー

この日は風船を貸してもらってバルーンアート

そしたら、コーヒー飲めない子供達とも交流の接点 屋台の前面には物販ブースも追加

あくまでコーヒーはツールにすぎない

屋台を起点に色んなアクティビティが増えつつある バルーンアートや手芸や中国ゴマ、、、

地域の人から趣味を教わり、習得していきたい

洞察 ”振る舞い”であるということ

”振る舞われる”という経験

地域に向けた物販ブース

コーヒー粕で土づくり そして、路上園芸へ

考察 都市にはみ出すための三つのキーワード    まちに””はみ出して生きる”仕組み

匿名性とゲリラ

屋台を作りたい、自分の屋台が欲しいと思い、友人を集めて作ってみた いざ作ったなら、なにかやってみるかってことでフリーコーヒーをはじめた ここまで約五か月、週一回ペースで稼働を続け得た、

個人的な洞察と創ってきた風景や仕組みを改めて考察しこの章でまとめる

”振る舞い”であるということ

”振る舞い”という態度が損得勘定のない関係性をつくる

だから、フリーコーヒーはゲストもキャストも お互い肩肘張らない素直な関係性でいれる すると、コーヒーに呼ばれた”人の振る舞い”が始まる コーヒーを飲んだ人も素直に笑顔でコーヒーに助言をくれる

私たちは趣味でコーヒーを振る舞っているから

来てくれるだけで嬉しい

そうやって成り立つお互いにとっての”振る舞い”である 個人的フリーコーヒーのコンセプトは

洞察と考察

「良い場所を見つけて屋台広げて、コーヒー淹れてのんびりし てたら、通りすがりの人も楽しそうで参加してきた」である

洞察 ”振る舞いであるということ”

田中 元子

株式会社グランドレベル代表取締役。

主な作品

けんちく体操(日本建築学会教育賞〈教育貢献〉) 建築タブロイドマガジン『awesome!』創刊 『アーバンキャンプ』

またおいで、って本当に素直に言えた。気持ちよかった。

わたしはこの、相手にも自分にも負荷のない関係が、とても気に入った。相手 も代金分の期待をしないし、わたしだって代金分の責任を負わない。それに、 少しでもおかねを取っていたら、また来てわたしに儲けさせてね、ってニュア ンスが残るような気がした。そんなこと相手がたとえきにしていなくても、自 分の気持ちにそれを感じる気がした。

田中元子著『マイパブリックとグランドレベル』より

洞察と考察

洞察 ”振る舞いであるということ”

”振る舞われる”という経験 フリーコーヒーをやっていると

正直フリーコーヒーではお返し出来ないほど”振る舞われる”

地域の人に案内してもらって、家に泊めてもらったり

その地域のゲストハウスでBBQをしたり 七輪で遊んでみたり

これはお互いにとっての”振る舞い”だと思う

だから、”振る舞われる”時は素直に受け取ろう そして、全力で楽しむ

これもまた受け取る側の”振る舞い”

洞察と考察

洞察 ”振る舞われる”という経験

地域に向けた物販ブース 屋台を稼働していく中で、

屋台の前面で物販ブースを開きたくなった

上の棚には運営メンバーで選書した本を置く 会話のきっかけにでもなればと

下の段には地域のママさんが趣味で作っている手芸品を販売 これからフリーコーヒーであった地域の人の物販ブースへと仕 上げていって

いつかは『動くミニマルシェ』みたいになればいいなぁ こうやって色々更新できるのも 屋台というハードがあるから

洞察と考察

洞察 地域に向けた物販ブース

洞察 コーヒー粕で土づくり そして、路上園芸へ

路上

テナントの一階

広場

公園

駐車場

空地

家と道路との間 など

大工道具

コーヒーセット

物販グッズ

土 など

大工技術 コーヒーも淹れ方

協力者の募り方

花の育て方 など

都市にはみ出すための三つのキーワード

実際に路上活動を進めてきた中で次の三つが揃わないと上手く いかないこともわかってきた

・場所

屋台とイスを広げるなど活動にはちょっとした空間が必要 ・道具

路上活動には屋台や風船、植木など道具は必須である 人だけではどうも味気ない。

・ノウハウ

屋台の作り方、コーヒーの淹れ方などノウハウがないとできな いことが多い ノウハウを蓄積するのが一番大変かもしれない 全てを自分達でよういできなくても大丈夫 私たちの課題は場所の確保である

逆に場所を貸してもらえることで繋がりが増えていく

洞察と考察

考察 都市にはみ出すための三つのキーワード

まちに”はみ出して生きる”ための仕組み 【想定ストーリー】

もし仮に私たちが行うフリーコーヒーをキャストとする そして、来てくれる人をゲストとしよう コーヒー飲んでくれたゲストAがいるとする ゲストAのフリーコーヒーを始め、キャストAとしてまちには み出していく

このようにキャストとゲストは相互作用の関係が理想的 個人が発信する趣味はなんでもいい

その助けをするのが屋台だと感じている

そして趣味もまた個人を発信するツールに過ぎない 私の目標もまた

フリーコーヒーをマネしてくれたキャストから 私がゲストとなってフリーコーヒーに呼ばれる社会である こんな事が日常として起こることが大切だと考察する

考察 まちに”はみ出して生きる”ための仕組み

まちの文化なのか日常なのか 恒久的な仕組みが必要

『匿名性とゲリラ』

ここで止まると一時的な賑やかし程度 この先にどうやって踏み込んでいけるか

展望 恒久的なまちの風景として『日曜趣工』

風が吹けば桶屋儲かるような『寄り道経済圏』

屋台400台のプラットフォームで倫理を変える

先ほどの章ではここまでの路上活動を分析し、自分なりに解読してみた そしてそこから路上やまちで実現したい景色をイメージした この章では前章の目標を達成できるかもしれない個人的な仕組みをまとめる

恒久的なまちの風景としての『日曜趣工』 フリーコーヒーをやっているといつも仲間と共感するのが 「良い日曜日だなーー」って

確かに超有意義な休日を過ごしている感じがするし ちょっと良い趣味で時間を費やしてる感覚が気持ちいい

フリーコーヒーという行為の周りにはこんな『良い休日の風景』 で溢れている。そん行為を『日曜大工』に因んで 『日曜趣工』と名づけることにした。

『日曜趣工』…休日に個人的な趣味の醍醐味をまちや路上を使っ

てその技工を共有すること。

*実は『日曜趣工』まだピンと来てません、、、上記の意味で名前のアイデア募集中

こんな『日曜趣工』な風景を大衆化させたい まちの人が気軽に趣味を公開している景色を作りたい

展望 恒久的なまちの風景としての『日曜趣工』

恒久的なまちの風景としての『日曜趣工』

山崎 亮

studio-L代表。関西学院大学建築学部教授。

コミュニティデザイナー。社会福祉士。

著書に『コミュニティデザインの源流(太田出版)』

『縮充する日本(PHP新書)』

『地域ごはん日記:おかわり(建築ジャーナル)』

『ケアするまちのデザイン(医学書院)』

『面識経済(光文社)』 など

むしろそのまちに僕たちと同じような感覚を持った人たちを見つけ、その人た ちと活動の醍醐味を共有し、持続的に活動する主体を新たに形成することが大 切である。その活動は、スキーやテニスを楽しむのと同じであり、「まちのた めに活動してあげている」のではなく「まちを使って楽しませてもらっている」

と思えるようなものであるが理想的だ。自分たちが少しずつお金を出し合って でも楽しみたいと思えるような活動であり、結果的にまちの人からも感謝され てさらに楽しくなるような活動。

山崎亮著『コミュニティデザイン』より

展望 恒久的なまちの風景としての『日曜趣工』

風が吹けば桶屋が儲かるような『寄り道経済圏』 『風が吹けば桶屋が儲かる』

そんな副次的な効果をフリーコーヒーでは狙っている 寄り道が大衆化すればできるかもしれない 【理想的なストーリー】

仕事の帰り道にふといつもは通らない道で帰ってみる 寄り道した先でフリーコーヒーをやっている屋台と出会う 不定期で場所も決めずにやっているらしい コーヒーを一杯もらってちょっと得した気分 その先でケーキ屋さんを発見 さっき得したし、家族のためにケーキ買ってかえるかぁ こんなストーリーを夢見ながら、もし商店街で実現すれば 商店街の広告塔として一店舗あたり月一万円運営費もらって 五店舗集まれば五万円 もう充分、非営利な趣味としてフリーコーヒーができる

展望 風が吹けば桶屋が儲かるような『寄り道経済圏』

将来的に非営利な趣味としてのフリーコーヒーの話をした ここで確認しておきたいのはフリーコーヒーが素晴らしいとい うわけではなく

まちに『日曜趣工』という

趣味としてまちをはみ出して使っていく行為が 寄り道の大衆化引き起こし、『寄り道経済圏』ができ、

結果的に非営利な趣味にできるのではないだろうか 個人としては『日曜趣工』が商売になる必要はない気がする

あくまで、休みの日の趣味として

家にいても、出かけても、生きることにコストがかかるなら プラマイゼロにして

まちにはみ出してみませんかという趣味の提案 そんな『日曜趣工』の一つにフリーコーヒーという行為は含ま れていると考えている

展望 風が吹けば桶屋が儲かるような『寄り道経済圏』

考察 屋台400台のネットワークで路上活用の倫理を変える

寄り道経済圏

就労支援との コーヒー豆開発

屋台づくり ワークショップ

屋台運営 メンバーづくり

非営利の趣味

日曜趣工

フリーコーヒー

動くミニマルシェ

貸し棚による 地域物販

コーヒー粕から 土づくり

全国に 400台の屋台

屋台活動に 関わる人の ネットワーク形成

路上園芸

路上活動の ルール緩和

就労支援との コーヒー豆販売

展望フローチャート

おわりに

短くまとめようと思っていたが、案外まとめてみると長くなってしまいました。

まだまだフリーコーヒー活動は今後も継続するので 今回のポートフォリオはvol.1とし

これからもどんどん追記していきます。

また数か月後くらいにvol.2を作ろうかなと

最後にもしこのポートフォリオを読んでフリーコーヒーに興味が湧いた方

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(最後はただの宣伝です笑)

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