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市場動向
R290に突き進む 中国の空調メーカー
近年アジアでは、プロパン(R290)をベースとした家 庭用空調機器(RAC)が大きく勢力を伸ばしている。そ して中国でもまた、大手 RAC 企業が 2019 年に向けて
R290 の技術開発・販路拡大に意欲を燃やすことがうか がえる、興味深い宣言がなされた。 文 : デビン・ヨシモト、陶 贏瑋
大手メーカー 8 社による誓約
アジアで高まる R290 の機運
中国家電製品協会(CHEAA)によると、中国の大手家庭用空調
中国に先行する形で、インドを拠点とする大手 RAC メーカー
メーカー 8 社は 2019 年 7 月 31 日までに、中国市場でスプリッ
Godrej(注 1) も、大きな飛躍を遂げている。同社は 2018 年 9 月
ト型 R290 採用 RAC システムを 22 万台以上販売することを宣言
4 日にシンガポールで開催された自然冷媒国際会議「ATMOsphere
した。その 8 社とは、Gree(格力)、Midea(美的)、Haier(海
Asia 2018」のセッション内にて、インド国内を中心とした R290
爾) 、Hisense(海信)、Changhong(長虹)、TCL、AUX(奥克
スプリット型 RAC システムの販売台数が、60 万台を突破したこ
斯 )、Yair(揚子)である。CHEAA よって動員された 8 社は、中
とを発表。その販売先も、インド国内から東南アジアへと拡大し
国の RAC 業界でモントリオール議定書を履行するという大きな
ている。「我々が備える R290 スプリット型 RAC システムの生産
目的の一環として、中国市場で同システムの普及と販売を拡大す
能力は、年間 18 万台です。納品された約 60 万台の機器は、現
るという今回の宣言を掲げたのである。この宣言は中国環境保護
時点で炭化水素冷媒に関係した事故も一切起こしておらず、現場
局対外経済協力室(MEP/FECO)と国連工業開発機関(UNIDO)、
で十分に稼働しています」と、Godrej の R&D 担当ゼネラルマ
国連環境計画(UNEP)、ドイツ国際協力公社(GIZ)、そして中
ネージャー、アブヒジット・アカリカー氏は「ATMOsphere Asia
CHEAA が共同開催し、中国・浙江省寧波で開催された「家庭用
2018」の「アジア向け冷媒ソリューション」セッションで語った。
空調における HCFC-22(R-22)の代替テクノロジーに関するワー
アジアにおいて R290 空調機の機運が高まり続ける中、2019 年
クショップおよび空調技術セッション」にて行われた。
の自然冷媒市場は、炭化水素技術を取り巻く議論がどのような展 開を見せるのかが、大きな転換点となるに違いない。
着々と進む R290 への生産ライン更新 UNIDO などの国際組織による支援と、多数国間基金からの資金
中国市場で R290 およびその他の自然冷媒がどのように活用され ているのか。その動向は、中国業界の主要ステークホルダーが集
援助により、中国はすでに国内 18 カ所の RAC 生産ラインを、年
まり業界の将来について論議する「ATMOsphere China 2019」
間 450 万台の生産能力を持つ R290 ラインへと変更した。さらに
にて、話題の中心となることだろう。 DY,TY
は国内にある 3 カ所の RAC コンプレッサー生産ラインも、年間
540 万台を生産する R290 ラインへと切り替えている。こうした 生産ラインの更新は、中国の HCFC 段階的削減管理計画(HPMP) の第一ステージ期間中(2013 年 ~2015 年)に完了した。現在中 国は HPMP 第二ステージ(2015 年 ~2020 年)の施策として、 さらに 20 カ所の RAC 生産ラインと 4 カ所の RAC コンプレッサー
注 1:Godrej の最新記事は本誌 19 号を参照
https://issuu.com/shecco/docs/aj_19/54
生産ラインを、R290 に切り替える計画を進めている。
Accelerate Japan // March - April 2019