GENTA SATO Architecture Portfolio

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Portfolio GENTA SATO

2017-2021


佐藤 玄太

経歴 愛知県名古屋市出身

Sato Genta

愛知県立鳴海高等学校 ラグビー部 豊橋技術科学大学 工学部 建築都市システム学課程 建築サークル TYACC 代表 Software ArchiCAD/Rhinoceros/Grasshopper/Twinmotion/ AdobeIllustrator/AdobePhotoshop/AdobeInDesign

1

2


Contents 1.靴下の少ない家

滲みわたる建築

5

木の家設計グランプリ 株式会社はなおか賞 2019 住宅

2.ナツメ別館改修計画

物理的な観点での建築は、まちからみれば小さな一つの粒にすぎないかもしれませ ん。しかもその粒は、その場から動かず、自ら姿を変えることもありません。 しかし、建築の持つ本質的な力はそうでうはありません。まちという水面に落とさ

2020 ホテル

れた一粒のしずくは瞬く間に広がっていき、まちの色を変える程の力を持っている

3.Dialogue

と私は考えています。

-道路工事によって失われた

小さな一粒が、美しい波紋を描きながらまちを鮮やかに染めていってほしい。私は そんなことを意識しながら建築に向き合っています。

13

4.人と霞

東京大学・豊橋技術科学大学 復興デザインスタジオ

27

2021 「公共・商業・学習」複合施設

水が作り出す人と自然の対話の場- 卒業設計

5.Who am I.

中部卒業設計展 70 選 2020

57

木の家設計グランプリ 銀賞

学習施設

2021

住宅

6.Others

3

41

4

71


靴下の少ない家 現在の住宅は清潔すぎである。 清潔を意識していった結果、 外と内が断絶され、虐待や 孤独死が問題となっている。

家の中に靴下は必要か? 「汚れ」 は生活にとって悪であるのか? そんな疑問を持ちつつ生活を見直すと、 靴下や靴をはくことで現れる 「壁」 に気が付く。 足や床の汚れを気にせず裸足で生活することができれば 内と外の境界は小さなものになっていくのではないだろうか。 また「 、汚れ」 は隠されるものであるという性質を持つ。 そんな 「汚れ」 を共有することでより親密さが生まれるのではないか。 このように 「汚れ」 への固定概念を見なおすことで生まれる豊かさを 見つけ出せる住宅を裸足を通じて提案する。

共同設計者 安元春香 佐藤海 川村美紅


背景

建具で仕切られた境界だけでなく、 クツを脱ぐ、履くという動作の壁が存在する

ハダシが動作のバリアを無くし、 ウチとソトが混じり合う

床の素材 どんどん自然に近くなる、素材のグラデーションをハダシが繋いでいく。 足が汚れていくほど、より家族のウチに入り込み親密さが増す。

無垢材

ウッドデッキ

土間

ハダシの

5 つの素材が組みわさり、 家の内部でウチとソトが 混在していく。

7


足を汚しながら家と密接にかかわ 家の奥に進むにつれ足を汚してい 玄関をはじめの地点とし、リビン 寝室

浴室、

浴室

始点が 私的な

ダイニング

寝室と

リビング

最も私

玄関

ある。

キッチン

リビング 中庭

キッチン外のエンガワ空間。

土間玄関

近所の人が立ち寄りやすいように、

トップライトから光が差し込む 一階奥の書斎。ハダシで床から芝生へ

エントランスゾーン

棚で透けさせたサッシを配することで 人の気配をにじませる。

の変化を感じると同時に格子でワンク

駐車場 書斎

地域との交流の場としての 機能も併せ持つ。

ッションおくことでエントランスの騒が しさから一段静かな空間に。吹き抜け 空間の高さを生かし、 植栽を配置。

主寝室

和室

1 階平面兼配置図 S=1:100

9

10


土のダイニ

ごろごろゾーン

よりくつろ 芝生のごろ ハダシで感 より家族の 空間である

2 階の子供部屋と和室。 子供部屋はカーテンを用いて

浴室

ゆるく仕切る。 吹き抜けとトップライトで 家の中で一番開放感のある場。 和室は洗濯物をたたむスペースと 家族が就寝前にくつろぐ場としての 二つの顔をもつ。

1.5 階平面図 S=1:100

汚れた足ときれいな足で歩く 導線が交差しないため、 サーフィンをした後の家族は 玄関から直接浴室に行くことができ、 室内でも思い切りハダシを 楽しむことができる。

子供部屋 1

11

子供部屋 2

和室

2 階平面図 S=1:100


共同設計者 川村美紅 菅智子 櫻井拓太

ナツメ別館改修計画案

社会の流れとナツメ別館の変遷 団体客の減少

社会の流れ 大規模な宴会

“飲みニケーション”の

高齢化の進行

衰 退。個 人 客 が 主 流 に

働き方の多様化

with コロナ

新型コロナウイルス感染症拡大 密閉・密接・密集の 3

オフィス利用が少なくな

通勤をしない人が増加。仕事場が選択で

密を避けるようになる

り、テ レ ワ ー ク が 増 加

きるようになる。家族との時間の両立。

過去

ナツメ別館の変遷 宴会場の拡張

客室に価値を高める

宴会場の利用減少

宴会場にテーブル 個人客の食事会場として、宴 と椅子の導入

宴会場の需要低下

会場を利用する よ う に な る

に拍車がかかる

13

屋外活用 屋外テラスの利 用 で 3 密 回 避

提案

テレワーク対応・ワークスペースの提供

カフェスペースを拡張。個人作業が捗る空間づくり

14


ナツメ別館は、愛知県豊橋市石巻町にある石巻山の山頂近くに 位置する森林に囲まれた自然豊かな宿泊施設である。現在のナツ メ別館は、通常の宿泊営業に加えて土日は当館自慢の石巻山の鉱

既存建築

水を使用した温泉を活かし、日帰り入浴もおこなっている。エン トランスでお客様を迎えるオーナーは気さくな方で、宿泊施設自 体もカジュアルでアットホームな雰囲気がある。しかし、施設内 の廊下や階段は狭い・急である等の問題点を抱えている。そこで 昨今の宿泊施設の喫緊の課題でもある with コロナ、after コロナ を踏まえ、今後のナツメ別館の運営形態とともに、館全体のリ ニューアルを提案する。

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外観的特徴 石巻山のシンボル「マイマイ」 石巻山は陸貝の生息地としてもよく知られ、オモイガケナイマイマイをはじ

森を呼ぶ南面

めとした多くの貴重な種が生息している。そのカタツムリをシンボルにする

斜面側で木々に近い南面に多くの開口を設け、現在のナツメ別館よりももっ

ことで、新たな豊橋のアイコンになる。ただの飾りではなく、屋上の客室露 天風呂を渦巻状のシェルで囲み、周囲から視線をさえぎり、空へ視線を向け。

と森を取り込む計画とした。ナツメ別館の魅力として。屋上や二階から見 える豊橋市街の風景、 1 階や西側端から南を見たときの緑豊かな自然がある。 新しいナツメ別館では、西側のカフェテラスや宴会場、中央のロビー、2

赤い大きな三角屋根

階の客室露天風呂、地階の露天風呂とナツメ別館から見られる風景全てを

ナツメ別館の顔でもあるエントランス上部の三角形の屋根を南側まで繋げ、

切 り 取 り、余 す こ と な く 観 賞 で き る よ う に し て い る。

地面まで伸ばした。南側にできた 1 階から 2 階までひと繋がりの巨大な開 口の手前を吹き抜けにすることで、エントランスは明るくなり、より森と の繋がりを感じられるようになる。螺旋階段で 1 階に降りるとテラスへ出 ることができ、森の香りや風を感じながら豊橋の街の景色を眺めたり、湯 上 り の ま っ た り と し た 時 間 を 過 ご せ る 空 間 に な っ て い る。

17

18

南側立面図 S=1:200


5646.8 11646.8

a

3000

3000

16

8

7

9

19

1

8

6

1

f

8

e

d

c

d

20

b

c

a

b


UP

メゾネット型の採用 客室はメゾネット型 4 室とフラット型 2 室の合計 6 室となる。メゾネッ ト型の客室では、一室で多様に過ごすことができる。そして、全ての客 室に個室露天風呂を設けた。それぞれの客室で、森を近くに感じながら 室内で過ごすことができる。アクセスの方法が分かりづらく、利用され ていなかった屋上は客室の露天風呂へ変わる。屋上は夜景と夜空を眺望 しながら入浴ができる、絶好の場となる。

a

c

b

d f

客室部 2 階平面図

b

4605

d

c

3620

4570

5555

e

4075

客室部 1 階平面図 S=1:300

e. 夏木立 -NATSUKODACHI

f. 春光 -SHUNKOU a. 弄月 ROUGETSU

b. 花月 KAGETSU

c. 佳夕 KASEKI

d. 紫翠 -SHISUI


1

5

0m

10m

N

S=1:200 配置図兼 2 階平面図

A

吹抜

17

B

EV

2 8 16

8

1

8

f c

フロント

b

d 玄関

18 a

23

24


宴会場

現在のナツメ別館にはなかった湯上り処を 1 階吹き抜けの北側に配 置した。この位置は宿泊者や宴会場利用者が通る場所であるので目 隠しに木製のルーバーを設置した。このルーバーによって人目を気 にせずのんびりと休憩できる。また、南側のテラスからは桜やモミ ジ が 見 え て、湯 上 り 処 と は ま た 違 っ た 癒 し 空 間 と な っ て い る。

現在のナツメ別館には、大きな宴会場が 4 つある が、以前と比べて稼働率は減少傾向にある。大き な宴会場を 1 つにし、個別の会食スペースを設け ることによって、宴会場としての利用だけでなく、 小規模な会議等にも用いられるスペースとした。 2

2

1. ロビー

3

EV

吹抜

2. テラス

4

3. 宴会場「月」

5

e

1

8

6. 湯上り処「明」

6

7. 厨房 8. トイレ

18

非常口

1 階平面図

S=1:200

9. 従業員休憩室 10. 脱衣所 11. 女湯内風呂 12. 女湯露天風呂 13. 男湯内風呂

露天風呂へのアクセス

14. 男湯露天風呂

脱衣所を通して露天風呂へ行 くという動線を無くし、内風 呂から直接露天風呂へ行くこ とができるように計画した。

12 11

13

16. カフェロールストーン 17. カウンター 18. リネン室

10 8

EV

男湯と比べて狭かった女 湯は東側に拡張し、以前 より広々とした空間に。

15. ボイラー室

14

10 8

女湯の拡張

15

a. 弄月 -ROUGETSU b. 花月 -KAGETSU

1

地下 1 階平面図

5

S=1:200

c. 佳夕 -KASEKI d. 紫翠 -SHISUI

0m

e. 春光 -SHUNKOU

10m N

25

4. 宴会場「風」 5. 宴会場「清」

8

7

9

b

c

d

f. 夏木立 -NATSUKODACHI

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Dialogue ―道路建設によって失われた水がつくりだす人と自然の対話の場― 27

人の美的感性や自然への敬愛の心を用いた文化的な共生の形をこの建築で示し、知能 を持った人間が自然の支配者となるのではなく、 指導者となって、 人と自然の両者が心 地の良い環境をつくりあげていくことを期待する。

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シェ ルタ ー構 造

橋梁部

弥富相生山線 橋梁

相生山緑地の中心に開通すること

なく放置され続けている道路がある。

擁壁

これは弥富相生山線という道路で、

1957 年に計画されたものだ。 この道

擁壁部

路は渋滞緩和などを目的に計画され、 1993 年に着工した。

その後、 近隣住

民や専門家からの反対により、 2010 年 に全体の 8 割の工事を終えた段階で工

着工済み

事は中断された。

未施工 75m

150m

2014 年に正式に計

画の廃止が決定され、

300m

緑地内には土砂

をせき止める擁壁やトンネル、 高架を支

600m

えるための橋脚が役割を果たすことなく 放置されている。

シェルター構造部入口

シェルター構造部内部

擁壁部

擁壁に木陰が投影される

擁壁部側面

橋脚


提案 緑地にとってネガティヴな印象を持つ道路遺構を、 人を自然の中へと安全に運び、 利己的に進む開発 を中止させ、 人が自然のために歩みだした象徴とと らえる。 その道路遺構を建築へと変換し、 道路工事 によって失われた森の保水力と、 人が離れてしまった ことにより認識されなくなった里山の魅力を可視化する。 それらの周辺で構築される様々な空間は、 緑地の自然 や歴史についての展示を行うことで学習施設としての 役割を持つ。また、 都市部の喧騒から切り離された緑 地公園の中心施設として近隣住民から観光客まで、多 くの人々の憩いの場となる。

31

失われた水を可視化するビオトープ

里山の魅力を可視化する温室

道路工事のコンクリート舗装や、 木々の

道路遺構と里山の自然を建築で覆う

伐採によって失われた森の保水力の低下

ことで温室とする。 漠然と広がっていた

に着眼し、 その水を可視化するビオトープ

自然を取り込み、 人が監理することで身

を計画する。 このビオトープは様々な生物

近に魅力を感じる。 遺構部分は減築し、

を呼び、 水飲み場となり、 繁殖の場となる

人のための空間とする。 取り込んだ自然

ことで命の輪をつないでいくことで人が自然

は研究観察に用い、 ヒメボタルの保護を

との共生の意志を示す場となる。

目指す。

32


土壌内の微生物が アンモニアを硝酸塩 に分解。

貯水

硝酸塩は養分となっ て植物や土に吸収さ れることで水はろ過

ビオトープ

アンモニアの発生

南立面図

ろ過された水

トンネル B

C

される。

温室

A

25m

0m

雲の空間

川の空間

ビオトープ

50m

温室 100m

半透明のガラスを用いたやわらかい光が入る展示空間。

温室とビオトープをつなぐ屋外空間。

段状に流れる水と

温室で浄化された水が川を伝って流れ込むビオトープ。

既存の自然をガラスで覆った温室。 人と自然が近づく場

足元を流れる水はビオトープからくみ上げられ、

それに接したスラブが1つのユニットとなってパーソナルス

里山の土によってろ過された水はここで命を生み出す場

で、 里山の理想の環境を作り出す。 遺構を掘って作られ

ペースを構成する。

となる。 ここから命の輪が広がり、 里山全体における海

た空間は下を流れる地下水に冷やされ、 温室内でも快適

のような場となる。

な洞窟のような空間となる。

って森に放出されるまさに雲の性質を持っている。

雨とな


1.通路兼展示室 2.展示場1 3.展示場2 4.展示場3 5.屋外テラス 6.温室

1

N

7.屋外広場 8.休憩スペース 9. カフェ 10.展示場4 11.温室 12.ホール 13.配水・温室機械室 14.給水機械室

2

A-A’平面図 S=1/600

3 6

4

5

7 14

13 8

15

B-B’平面図 S=1/600

12 11

10

16 17

20

22

21

18 19

C-C’平面図 S=1/600

0m

35

30m

60m

36

15.展示室 16.屋外広場2 17.給水設備室 18. トイレ 19.ホール 20.貯水池 21.排水路 22.ビオトープ

120m


37

38


温室断面パース S=1/150 39

40


人と霞 年に放水路が建設され、周辺 住民の豊川の特性や恐ろしさへの感 心が希薄となっていった。川と住民 の生活や意識が切り離されること は、河川の大規模氾濫時に大きな被 害をもたらすことが懸念されおり、 豊川周辺も例にもれず危うい環境へ の道をたどっている。  そこで、新たな形で豊川との繋が りを形成することで、豊川と周辺住 民が共存し災害に対し柔軟に対応す ることができる事前復興計画を考え る。 「霞堤」と呼ばれる河川氾濫に 柔軟に対応する治水システムを用い ることで地域で激甚化する災害に対 応し、人命・文化・豊かな農地など、 豊川と共存することを目的とする。

共同設計者 建築設計班 田中甫 三井寛子 避難計画班他 7名

41

42


霞堤とは

河流が最も激しく衝突するカーブ付近に差し口 (開口部)を設け、上流側の堤防と下流側の堤 防が、二重になるようにした不連続な堤防のこ とであり、洪水時には差し口から水が逆流して 遊水地に湛水し、下流に流れる洪水の流量を減 少させる効果がある。洪水が終わると、堤内地 に湛水した水を排水する。急流河川の治水方策 として、非常に合理的な機能と言われている。

タイムライン

施設の店舗利用・ 宿泊施設利用

災害記録・記憶の収集と発信 復旧支援

復興支援

家屋の補修・建替 , 生垣・土盛りの整備 堤防・田んぼダム整備

機能計画

でシナリオを設定した。2021 年~ 2023 年に提

提案施設を核とした水害と生きるまちづくりを目指し、

案施設の建設を行い、それを災害発生までの間、

避難施設の提供と運営 提案施設 の建設

想定最大規模の災害が 2030 年に発生する想定

店舗、宿泊施設として利用する、また、川と共 存しているという意識を浸透させるために川に ちなんだレクリエーション利用を行い、豊川と 住民・市外の人々とのつながりを形成していく。 加えてこの期間では現在も行政が行っている堤

堤防・田んぼダムの補修・整備

防整備進める。災害発生後、提案施設を拠点に 避難施設の提供と運営によって被災者を受け入 れる等の復旧・復興支援を行い、同時に、災害

2021 年 活動開始

2023 年 建設終了

2030 年

災害発生

2040 年 復興目標

の記録や記憶を収集、発信することで 2040 年 を目標に災害の経験から強固なコミュニティを 備えた地域を目指す。

地域の住民が川を意識できるような施設を目指した。施 設の機能としては、住民が日常的に利用できるような、 スーパーやレストランをはじめ、川にちなんだアクティ ビティ施設や、農業が盛んな地域としての特徴を活かし た農業体験施設、BBQ 施設も併設した。災害時には避難 施設となる宿泊施設は、小中学生の宿泊学習の場として の利用も可能である。他にも、教室や体育館といった施 設も併設されている。また、宿泊施設に伴い、大浴場も 設置した。この大浴場も一般開放されており、宿泊者の みならず、体育館利用者や農業体験利用者などの利用可 とする。さらに、霞堤についての理解を深めることので きる施設も併設されている。


建築計画 ○全体計画 霞堤の遊水池内の住宅は、河川氾濫時に家屋が水にさらされ ることが前提に建てられていた。そのため、石垣を高く積み 上げ、一階の床は畳ではなく板張りで浸水後も手入れしやす いようにしている。また、生け垣を設けることで家財の流出 ・土砂の流入を防ぐなど、生きるための工夫が見られた。加 えて、浸水によって山間部から流下する肥沃な土を農業に取 り込むなど、集落全体を構成する各要素が豊川とともに生き る意思を示していた。 そして、この提案施設においても生け垣の代わりに、軽快な 曲面のフェンス、石垣を立ち上げる代わりに、ピロティで建 物を持ち上げるなど、これまでに培われてきた遊水池内なら ではの建築要素を再評価・解釈することで空間を構成し、肥 沃な堆積土を活かす農業文化の発信を目的として設計される。

2mほどの石垣

家屋を守る生垣

○断面計画 想定される浸水高さよりも 2F のスラブを高く持ち上げることで、

断面図

浸水被害から建物を回避させつつ、避難施設としての機能を確立 させる。浴場は、避難所生活を要られた際、水資源を確保する水 宿泊室 ホワイエ

瓶として機能するように計画される。2F スラブが高く持ち上げら

備蓄庫

れた分生まれる様々なセクションには、中 2 階を設けることで、

備蓄庫

スキップフロアとしてそれぞれの空間を繋いでいる。 建物に垂れかけるようになだらかな曲線を持つフェンスは、ルー バー状の断面とすることで建物に光を取り込みつつ土砂の流入を 軽減させるよう計画される。 屋根には膜を設けることで屋上空間に光を取り込みつつ、北側に

S=1/500

0m

5

10

20

45

50

雨水を集めて流すように計画される。集めた雨水は壁に沿って 1F まで流下し、雨が降るたびに雨水が貯まるように計画する。 46


平面計画 1F の歩行空間は雨水の貯まる窪みの上に浮遊するようにスロープをかけ ることで、施設利用者の動線を確保する。晴れの日には窪みの空間が集 いの場となり、雨の日には窪みに雨水が貯まることで水遊び場として空間 を利用する。機能としては近隣農家や敷地内の畑から収穫された作物を売 り出すマーケットやレストラン、コミュニティを作り出す体育館を収容す る。中 2 階は堤防と同じ高さにスラブを設置し、建物と豊川が連続するよ うに霞堤資料館・アクティビティ機能を配置することで、親水施設として 豊川とのつながりを持つように計画する。2F、3F には自然学習施設、宿泊 施設を収容し、林間学習等を通して近隣の児童に向けて豊かな河川空間を 提供する。避難生活時には宿泊施設の客室が避難者を収容する空間として 機能する。

S=1/500

0m

5

10

20

南立面図

47

48

50


ファーマーズ マーケット 体育館

倉庫

トイレ

更衣室

EV

厨房

レストラン

更衣室

農機倉庫 1F 平面図 S=1/500

0m

5

10

49

20

50

50


資料室

ロッカー

倉庫

浴場 体育館

BBQ テラス EV

1.5F 平面図 S=1/500

0m

5

10

20

51

50

52


機械室

備蓄庫 トイレ 教室 2

多目的ホール

エントランス

教室 1

EV 教室 3

食堂

厨房

事務室

EV 展望テラス

2F 平面図 S=1/500

0m

5

10

20

53

50

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宿泊室

備蓄庫

備蓄庫

宿泊室

トイレ

宿泊室 宿泊室

備蓄庫

EV

3F 平面図 S=1/500

0m

5

10

20

55

50

56


Who am I 私は一人の人間ではない。 社会の中で働く私、 家族とともに生活する私、 誰にも見せない私、 地球の一部である生物としての私 どの私も自分である。 職が身を寄せることによって住宅は社会を受け入れる。 そんな新たな空間では住むだけでは現れなった私が姿を見せる。 出会い、 ぶつかりあい、 許しあい、 理解しあった私同士は、 自然、 社会、 家族など様々な関わりの 中で生じる 「私は何者か」 という問いに対してどんな解答を出すのだろうか。 人との出会いが制限されるこの時代に、 まだ出会ったことない私と出会う住宅を提案する。

57

58


1.

背景

職住の間に生まれる異なる私

新型コロナウイルスの発生により、 リモートワークや遠隔授業など、 これまでと異なる概念が生まれた。 そこでは、 職という外的な要素 私A

と住という内的な要素が混ざることに対する違和感の声が上がった。

さっきまで部屋着で寝ていた部屋が一時間後には職場になるのであ れば、

違和感を感じるのは無理もない。 そう考えてみると、

地域

私たち

は、 外に出るために着替え、 靴を履き、 会社に向かう電車に乗る

社会

私B 職

ことで普段とは異なる私を作り上げてきたように感じる。

2. 提案

職住のつながりとともに出会う異なる私

家が職を受け入れることによって、 職をとりまく周辺環境をも家に引き込 むこととなる。

そこはこれまでの閉じられた住宅の概念とは異なり、地

や社会を受け入れる余地を有した空間となる。 を持った私」

そして、

「外とのつながり

が姿を現す。

住×

職住一体の家は、 異った私が共存し、 互いを意識しあうことができる場

地域

私A 職 私B

である。 住むことと働くこと。

これら二つの活動が空間的な違いを持つことを前提と

しつつ、 それでも互いが途切れることなく、

社会

意識しあうことで新たな自分が

発見できるような住宅を提案する

59

60


Step1. 配置する 住居

事務所

Step2. 浮かす

Step3. 開く

Step4. 加える

Step5. 覆い、 つながる


445

WC キッチン

1820

オリーブ 4m

GL+500

ヨソゴ 3m

GL+1600

リビング

△ Aʼ

エゴノキ 5m

シラカシ 2m

1820

GL+300

キンモクセイ 5m

オリーブ 2m

シマトネリコ 8m

1820

土間

1820

ダイニング

キンモクセイ 5m

A△

図面集

風呂

1820

up

GL+1700

事務所2

脱衣所

up

up

事務所1

駐車場

3640

WC

GL+500

N 3640

1820

1820

1820

1820

1820

1820

2730

配置図兼 1 階平面図 1/100

63

64


3230

▽最高高さ

3000

6730

▽2FL

500

1100

▽事務所2FL ▽1FL ▽GL

A‑A� 断面図 1/100

南東側立面図 1/100

65

66


WC

445

収納棚

収納

1820 1820

子ども部屋

主寝室

1820

1820

1820

1820

1820

2730

2 階平面図 1/100

南西側立面図 1/100

67


模型写真集

69

70


Others

71

72


73

74


75

76



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