10_Overview Of The Swiss Tax System_JP (02-02-2016)

スイスにおける 税制の概要 10.1 10.2 10.3 10.4 10.5 10.6 10.7 10.8 10.9

法人への課税.. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 109 税負担の国際比較. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 112 個人への課税.. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 113 源泉税.. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 116 付加価値税 (VAT). . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 117 その他の税目.. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 120 租税条約. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 121 法人税制改正（CTR III） . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 121 移転価格税制.. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 121

10

画像 納税申告、 スタジオ撮影

スイスの税制は、国の連邦構造を反映しています。スイスは主権を有 する26のカントン（州）から成っており、およそ2,352のゲマインデ（市 町村）があります。連邦憲法は、連邦政府によって独占的に留保されて いる税目を除き、すべてのカントンは課税権を有していると規定して います。結果、スイスの税金は、連邦レベルおよびカントンまたはゲマ

10.1 法人への課税 10.1.1 法人税:連邦レベル 連邦レベルでは、 株式会社および協同組合の税引後利益に対して、 一 律8.5％の法人税が課されます。 協会、 財団などその他の法人、 および 投資信託については、 一律4.25％の法人税が課されます。 連邦レベル においては、 資産税は課されません。

インデレベルの二段階で徴収されます。 ここ数年の企業税制改革により、課税所得の決定、控除項目、課税期 間、課税方法など、形式的な面でカントンの税法が調和されました。 しかしカントンおよびゲマインデは、適用税率の決定という点につい て、依然として自由裁量権を有しています。 このためカントンやゲマ インデによって、税負担に違いが見られます。

納税義務者 課税対象となる組織はスイスに居住する法人、 すなわち株式会社、 有 限責任会社、 合名会社、 協同組合、 財団、 不動産を直接保有する投資信 託などです。 パートナーシップのパートナーは個人レベルで課税され ます。 登記上の本社がスイスに置かれている場合、 また、 スイス国内 で経営の意思決定が実質的に行われている場合、 これらの法人はス イスに居住しているとみなされます。 課税所得 スイス国内に居住する法人については、 法人の世界中の所得がスイ ス法人税の課税対象となります。 ただし、 スイス国外の恒久的施設ま たは不動産に帰属する所得は除外されます。 これらの所得は通常、 課 税所得の計算には含まれず、 累進課税方式を適用しているカントンに おいてのみ考慮されます。 国内に居住しない法人については、 スイス国内源泉所得、 すなわちス イス国内における事業、 恒久的施設、 および不動産を源泉とする所得 やキャピタルゲインのみ課税されます。 不動産を源泉とする所得に は、 不動産取引による利益も含まれます。 原則として、 スイス国内法人の商務貸借対照表上の利益、 また国外法 人のスイス国内支店の商務貸借対照表上の利益が課税所得の計算 のベースとなります。 重要な調整項目として配当収益およびキャピタ ルゲインの資本参加免税、 税務貸借対照表上の調整、 繰越欠損金の 利用 （繰越期間は7年） が挙げられます。 以上の調整項目を除けば、 商 務貸借対照表上の利益と課税所得はほぼ同額となります。 一般的に 損金算入できるのは、 減価償却費、 税金、 支払利息、 管理・サービス手 数料およびロイヤリティなどです。 管理・サービス手数料とロイヤリテ ィに関しては、 独立企業価格であれば控除できます。

スイスにおける税制の概要

109

「スイスは、 経済ニーズに見合った最 新の税制を提供します。 」

過小資本税制 スイス連邦税務は、 過小資本認定基準を定めており、 関連会社からの 借入金に適用され、 第三者からの借入金には適用され ません。 つまり、 資本金に基づく独自のテストで資金が適切に調達さ れているかを見極めているのです。 過小資本税制では、 資本 （通常は 時価ですが、 低簿価も可） は一定の自己資本比率を保っていなければ ならないと規定しています。 税務当局が規定する率に従って算出された、 一定の基準額を超える 関連会社からの借入金は、 自己資本に再分類および課税資本に足さ れ、 カントンまたはゲマインデの資本税が徴収されます。 しかしなが ら、 特例として、 借入・資本比率が適切であると証明される場合は除き ます。 加えて、 借入金の利息の損金算入性は、 基準額内の関連会社借 入金に過小資本認定基準の金利を掛けて決められます。 基準額を超 える関連会社借入金に対する利息の支払いは損金不算入および「隠 れた利益配分」 として扱われます。 （35％の源泉課税） 連結納税制度 法人税目的での連結納税は認められておらず、 導入される予定もあり ません。 グループ組織再編 グループ組織再編は、 該当する税法の付則として機能する税務基準 および法務基準をも含有するスイス合併法に準拠します。 一定の条件を満たすことを前提に、 資産および債務の簿価が変動せ ず資産がスイス国内に留まるのであれば、 非課税で組織再編を行う ことが可能です。

10.1.2 法人税： カントンおよびゲマインデレベル カントンおよびゲマインデレベルの税制が調和された結果、 大抵の税 法は連邦レベルの法人税法と一致、 もしくは極めて類似しています。 （ 例： 資本参加を源泉とする所得の税免除、 繰越欠損金、 過小資本税制） 特別税制 連邦税法と異なりすべてのカントン税法は特別税制を定めており、 税 制調和法に規定されている条件を満たしている場合に適用すること ができます。 ビジネス拠点としてのスイスの魅力を持続的に強化する ため、 以下に挙げる特別な税制は、 法人税制改正(CTR III)を機に、 新た な措置に置き換えられることになっています （10.8章参照） 。 法人税制改正(CTR III)の最新情報は、 当社のウェブサイトでご覧いた だけます。 www.s-ge.com/corporate-taxation スイスの法人税制改正(CTR III)についての詳細 言語:ドイツ語、 英語、 フランス語、 イタリア語、 スペイン語、 ポルトガル語、 ロシア語、 中国語、 日本語

A) 持株会社 国内法人 （または外国法人の恒久的施設） の持株会社は、 施行法規に よると、 グループ会社の株式を長期的に保有および管理することで す。 さらに、 持株会社は資産または所得において次の条件を満たす必 要があります。 持株会社の資産の3分の2が株式保有または資本参加 であるか、 全所得の3分の2がこのような保有株式や資本参加による 所得 （配当所得またはキャピタルゲイン） でなければなりません。 上記条件のいずれかを満たす持株会社は、 すべてのカントンおよび ゲマインデの法人税が免除されますが、 スイスの不動産を源泉とす る所得は例外となります。 原則として、 持株会社の実効税率は7.83％ （ 連邦法人税率） で、 これは配当金およびキャピタルゲインの優遇税制 を考慮する前の税率です。 また、 カントンおよびゲマインデレベルで は、 資本税の軽減税率が適用されます。

B) ミックスカンパニー（混合会社） カントンによって名称は異なりますが、 国際的には通常「ミックスカン パニー」 と呼ばれています。 ミックスカンパニーは国内で小規模の営業活動を行うことが許され ており、 原則として、 営業活動からの所得の少なくとも80％がスイス国 外源泉所得でなければなりません。 すなわち、 営業活動からの所得の 20％を上限にスイス国内源泉所得が認められます。 加えて、 多くのカ ントンでは、 費用の少なくとも80％が国外の営業活動に関連していな ければならないと定めています。 上記の条件を満たしていれば、 次の規定に沿った税務上の扱いを受 けることができます。 –– 資本参加から得られる適格所得 （配当金、 キャピタルゲインおよび 再評価益を含む） は、 カントンおよび自治体の租税を免除されます。 –– その他の国内源泉所得は、 通常の税率で課税されます。 –– 国外源泉所得の一部は、 スイスで行われている事業活動の程度に 応じて、 カントン／ゲマインデの所得税が課されます。 –– 事業目的として認められ、 経済的に特定の所得および収益に関連 する費用は控除が認められます。 特に、 資本参加による損失は、 資本 参加を源泉とする課税所得 （つまり、 非課税とならない所得） のみ相 殺されます。 –– 資本税については軽減税率が適用されます。

10.1.4 優遇措置 カントンおよびゲマインデの両レベルにおいて税制上の優遇措置が 設けられていますが、 連邦レベルでの適用は、 要件を満たす10年間の 新たな投資に関するもので適用地域も明確に決められています。 連邦レベル 連邦政府は、 企業の集中度が低いまたは経済力が弱い地域に優遇措 置を設けており、 このような地域では、 10年を上限に法人税の一部ま たは全額免除が可能です。 （第14.2.2章を参照） 製造に関連する雇用の創出、 既存のビジネスと競合しないなど、 一定 の条件を満たす投資プロジェクトにも、 優遇措置が適用されます。 カントンおよびゲマインデレベル ほとんどのカントンは、 ケースバイケースですが、 10年間を上限に、 カ ントンおよびゲマインデの課税の一部または全額を免除しています。 特に、 新たな事業の創出や、 そのカントンにとって明確な経済的重要 性があるとされる拡大事業について優遇措置がとられる可能性があ ります。 最も重要な点は、 現地の新規雇用の創出に関連して優遇措置 がとられることで、 大抵のカントンにおいては最低10～20件の新規雇 用が求められています。

10.1.3 資本税 年ベースの資本税は、 カントンおよびゲマインデレベルでのみ課され ます。 原則として、 資本税算定のベースとなるのは、 会社の純資本 （資 本金、 資本剰余金、 法定準備金、 その他の積立金、 繰越利益剰余金） で す。 課税ベースには、 税務上損金不算入の引当金、 その他未開示の積 立金、 スイスの過小資本税制において資本の特徴を有するとされる 借入金、 が含まれます。 一部のカントンでは、 カントンの法人税を資本 税から控除することができます。 税率はカントンおよび法人の税務上の取扱いによって異なりま す。 2014年度は、 通常の課税方法で課税される会社に対しては 0.0010％~0.5250％、 特別税制が適用される会社に対しては0.0010 ％~0.4010％でした。

スイスにおける税制の概要

111

10.2 税負担の国際比較

全体的な税負担 2012/2013

総合的公的負担率 （TTR, Total Tax Rate） を他の先進主要国と比較す ると、 スイスの税制は常に国際的に非常に有利な制度となっていま す。 TTRは、 会社の税負担合計額と強制的拠出の合計を企業収益で割 った比率をパーセントで表したものです。 税負担合計額は、 控除項目 を差し引いた後の全税金および未払いの拠出の合計です。 2014年お よび2015年発表の最新のビジネスレポートは、 2012年度および2013 年度 （2012年および2013年1月1日～12月31日)のTTRを反映していま す。

(図48)

アイルランド

TTRの計算に用いられる税金および拠出は以下のように分類されます。

フィンランド

–– 所得税または法人税 –– 雇用主が納付した社会保険料および雇用税 （年金基金などの民間 団体に支払われた場合でも、 すべての強制的拠出が含まれます） –– 富裕税 –– 取引税 （連鎖的な売上税、 その他の回収不能な付加価値税 （VAT） な どの消費税） –– その他の税金 （地方税、 自動車税、 燃料税など）

0

20

ルクセンブルグ

スイス 英国 オランダ

米国 ハンガリー チェコ ドイツ ロシア スェーデン

スイスの税制は法人のみでなく個人にとっても国際的に大変有利な 制度になっており、 個人納税者の場合も、 国際比較での税負担は相対 的に低くなっています。

日本

www.s-ge.com/taxtool 国際税比較 (BAK Basel との協力) 言語： 英語

スペイン

オーストリア ベルギー

インド 中国 イタリア フランス

ブラジル 総税率 （利益に対する比率） , 2013年 総税率 （利益に対する比率） , 2012年 出典:プライスウォーターハウスクーパース、 2015年

40

60

80

100

10.3 個人への課税 10.3.1 個人所得税 課税対象の個人 スイス国内に長期または一時居住する個人には、 連邦とカントンおよ びゲマインデレベルで納税義務があります。 一時居住とは、 該当期間 中連続か断続かを問わず、 スイス国内でa)最低30日間就業、 また は、 b)就業せずに90日間以上滞在することを指します。 スイスの税制 では、 パートナーシップはパートナー個人に納税義務があります。 夫婦の所得は合算し、 家族課税の原則に従って課税され、 この制度は 役所に届出が受理されている同性夫婦も同様に適用されます。 扶養 未成年者の所得は成人の所得に加算されますが、 未成年でも就業し ている場合、 所得は別途課税されます。 連邦、 カントンおよびゲマインデの所得税は、 カントンの税務当局が、 納税者が暦年ごとに提出した所得税申告書をベースに査定を行い、 課税・徴収します。 スイスに住居を構えない個人は、 スイスでの収入に課かる税金のみ 納付義務があります。 課税所得 スイスに居住する個人は、 係る個人の全世界所得に納税義務があり ます。 しかしながら、 国外で行っている事業の所得、 国外にある恒久的 施設および不動産を源泉とする所得は非課税であり、 適用税率を決 定する際にのみ考慮されます （累進課税留保） 。 全世界所得には、 給与 所得、 個人事業所得、 失業手当、 年金、 その他補助金、 動産および不動 産を源泉とする所得が含まれます。 国内にある賃借人のいる物件か らの家賃収入も課税所得に入ります。

相続、 贈与、 夫婦財産権、 民間または公共の財源からの補助金など、 あ る特定の種類の所得は非課税です。 また、 通勤交通費、 社会保険料、 グ ロス所得から特定の貯蓄プランに預金した額などを必要経費として 控除することができます。 加えて、 子女、 保険料、 共働き夫婦に対する 追加控除を請求することもできますが、 控除の上限はカントンによっ て異なります。 借入金、 住宅ローンなどの支払利息は、 事業目的であ れば全額控除が可能です。 私的目的の場合、 個人資産の支払利息は、 動産および不動産を源泉とした所得に50,000スイスフランを足した 額を上限に控除が可能です。 さらに、 不動産価値の現状維持にかかる 費用は控除が可能で、 代わりに全込控除を適用することも可能です。 税率は累進課税ですが、 連邦レベルでの最高税率は11.5％です。 カ ントンの最高税負担は、 各カントンによってかなりの差があります （カ ントンの州は12％～30％） 。 2011年度、 連邦レベルで特別家族向け 課税表が導入されました。 この課税は、 既婚夫婦向けの制度に基い ていますが、 加えて子供1人当たりの税控除があります。 キャピタルゲイン 私有目的、 事業目的の動産、 不動産のいずれを源泉としたキャピタル ゲインかによって課税方法が異なります。 私有動産の売却に伴うキャ ピタルゲインは非課税である一方、 事業目的の動産の売却に伴うキ ャピタルゲインは通常の所得とみなされます。 不動産に対する課税に ついては 第10章第3節第2項を参照。 損失 個人の損失とは異なり、 事業目的の動産・不動産のキャピタルロスは 損金算入することができ、 7年間繰越が可能です。 出資資金の分配 2011年1月1日以降、 要件を満たす出資金は非課税となり、 源泉徴 収税 （第10章4節） の対象にも所得税の対象にもなりません。 2011年 1月1日以前の株式資本払い戻しには既に適用されています が、 1996年12月31日より後の投資、 保険料および株式会社譲渡の 払い戻しにも非課税分配として現在は適用されています。

スイスにおける税制の概要

113

源泉徴収 滞在許可証を保持しない外国人従業員は、 所得に対し源泉徴収で課 税されます。 源泉課税対象所得が年間12万スイスフラン （ジュネーブ では年間50万スイスフラン） を超える場合、 納税申告が必要です。 そ れ以外の場合は源泉徴収税のみですが、 別手続きでの特別控除を従 業員が願い出ることもできます。

10.3.3 海外駐在員の特例 海外駐在員とは、 スイスに一時的に出向している国外からの管理職、 および特定分野の専門家 （ITスペシャリストなど） のことを指し、 駐在期 間は契約上、 最長5年に限定されている必要があります。 駐在員は、 ス イス国内での滞在によって生じた経費について、 税金控除を申請する ことができます。

外国に住居を保有する従業員は、 国籍に関係なく源泉徴収で課税さ れ、 一般的に納税申告は提出できません。

駐在員が負担する費用で、 控除可能なものは以下のとおりです。 i) スイスとの間の往復旅費を含む引越費用、 ii) 国外に住居を有してい る場合のスイスにおける居住費、 iii) 公立学校がふさわしい教育条件 を備えていない場合、 未成年の子女が通う私立学校の学費。 引越や 住居の実費を証明するかわりに、 納税者は毎月一括控除を求めるこ とができますが、 その額はカントンによって異なります。 雇用主が駐在 員の職業関連費用をかたがわりする場合、 駐在員の給与明細にその 額面が記載される必要があります。

現在、 源泉徴収税に関する法律が改定されつつあります。 予定されて いるのは、 納税申告を行う課税最低所得の引下げです。 このほか、 特 にスイス国内に住居を有しないが収入源がほぼスイスのみにある 者に関する手続の問題も議論されています。

10.3.2 富裕税 富裕税は、 カントン税制とその税率に従い、 カントンおよびゲマインデ 一時雇用から長期雇用に変更した場合は、 海外駐在員としての税務 レベルでのみ課されます。 課税所得は不動産・動産を含めた総資産 上の恩恵を受ける資格を喪失します。 で、 証券、 銀行預金、 生命保険の償還額、 自動車、 非分配相続分なども 含みます。 所得を生み出していない資産も課税対象となります。 外国 連邦政府では、 現在、 海外駐在員の特例を見直しています。 有資格者 企業の株式や外国の不動産は、 富裕税の対象ではありません。 しかし、 の制限と控除の請求要件の厳格化が変更案です。 該当する資産税率が累進課税 （累進免税） の場合、 税率計算の際には 考慮されます。 負債がある場合、 総資産から差し引くことができ、 免税 10.3.4 越境通勤者 額からも差し引けますが、 免税に関してはカントンごとに異なり、 また 越境通勤者とは、 スイス国外 （オーストリア、 フランス、 ドイツ、 イタリア、 婚姻状態および当人の子供の有無によっても変わります。 リヒテンシュタインなど） に居住し、 スイス国内で勤務し、 毎日、 居住地 から通勤する人を指します。 カントンは独自に税率を決められますが、 富裕税はほとんどのカント ンにおいて累進課税方式です。 そのため税負担にはかなりの差があ 越境通勤者に対するスイスでの課税は、 勤務国や居住国 （スイスおよ り、 負担幅も0.0010％から1％と差が開きます。 連邦政府は富裕税は び居住国） によって異なります。 例えば、 スイス・ ドイツ租税条約は、 課 課税しません。 税権を二国間で共有することを定めており、 勤務国では、 越境通勤者 のグロス給与の一律4.5％が源泉徴収されます。 しかしながら、 勤務国 で源泉徴収されても、 居住国での課税が減免されるわけではありませ ん （外国税額控除） 。 また、 越境通勤者が仕事が理由で国外の居住地に 戻れない日が年間60営業日を超えた場合、 越境通勤者としての税務 上の資格を喪失します。 フランスからの通勤者には、 カントンにより異 なる協定があります。

10.3.5 一括税（ランプサム税） 連邦税法およびほとんどのカントン税法は、 一括税と呼ばれる特別な 納税方法を規定しています。 国内に居住する一括税の対象納税者は、 全世界所得や資産をベースとした課税ではなく、 国内の支出や生活 費に基づいて課税されます。 一括税の適用申請資格を有する納税者とは、 初めて、 または10年以上 不在後に一時的または長期で国内に居住するが国内で就業してい ない人を指します。 一括税の適用期間は、 スイス国民には適用できま せんが、 外国人は条件を満たしていれば無期限に適用可能です。 一 括税は、 スイスで働く意思のない、 十分な経済力をもった個人を対象 としています。 スイスに移住した夫婦の場合、 両人共、 一括税の適用資格条件を満 たしていなければなりません。 原則として、 夫婦のどちらかを一括税 による課税とし、 もう一人を標準課税とすることはできません。 課税ベースは国内外で納税者が負担した費用をもとに年ベースで算 出されますが、 納税者自身の費用のみならずスイスに居住している 配偶者、 扶養未成年者の費用も考慮に入れます。 原則として、 費用とみ なされるのは食料、 衣服、 住居、 教育、 娯楽、 その他生活に必要となる費 用です。 算出方法は、 居住を希望するカントンの管轄税務署によって 決定されますが、 いかなる場合でも、 最低ベースは、 a)賃貸の場合は 家賃の5倍以上、 持ち家の場合は帰属家賃収入の5倍以上 （2016年1 月1日からの直接連邦税については7倍） またはb)納税者がホテル等 の宿泊施設に滞在している場合は年間宿泊費の2倍 （2016年1月1日 からの直接連邦税については3倍） でなければなりません。 納税者が 複数の物件を保有または賃借している場合には、 最高額のものを基 準とします。 直接連邦税には、 2016年1月1日以降、 400,000スイスフラ ンの所得税の最低課税ベースが適用されます。

原則として、 一括税を申請する納税者は国内居住者とみなされ、 国外源 泉所得については租税条約の減免措置を申請することができません。 しかしながら、 源泉国からの全所得がスイスで通常課税される場合に 限って、 租税条約の優遇措置を許可している租税条約もあります。 2009年チューリヒ州では、 カントンおよびゲマインデでの一括税の廃 止を求める投票が行われました。 チューリヒ州の住民は一括税廃止に 賛成し、 2010年1月1日以降、 一括税が廃止されました。 シャフハウゼ ン、 アッペンツェル・アウサーローデン、 バーゼルラント、 バーゼルシュ タットの各カントンでも、 既に一括税は廃止されています。 他のカント ンも追随するとみられます。 10.3.6 相続税および贈与税 相続税と贈与税はカントン間で調和されていないため、 各カントンは 自由に課税することができ、 両税法は各カントンで大きく異なります。 シュヴィーツ州を除く全てのカントンが、 一部の資産譲渡に関し相続 税および贈与税を課しており、 原則として、 被相続人または贈与者が 居住者であったカントン、 不動産の場合は不動産所在地のカントンに 課税権があります。 相続税、 贈与税のほとんどは累進税率で、 原則として、 被相続人または 贈与者と受領者の関係、 および受領額をベースに決まります。 全カン トンは夫婦間の相続と贈与を非課税にしており、 多くのカントンは親 子間の相続も非課税としています。

スイスにおける税制の概要

115

10.4 源泉税 連邦レベルでの源泉税は、 スイス法人の配当金のグロス額、 スイスが 発行した債券および類似の債務を源泉とする所得、 スイスの投資ファ ンドによる特定の収益分配、 ならびにスイスの銀行預金の受取利子、 宝くじの賞金、 保険給付金が課税対象となります。 出資指針が2011年1月1日に施行されて以来、 1996年12月31日より後 に株主が出資し、 申告および計上が正しく行われた出資分の払い戻し が、 現在、 通常資本の払い戻しと同様に扱われています。 源泉税に関し ては、 通常このような払い戻しは非課税です。 個人の出資払い戻し （株 が私的財産として保持されている場合） は、 現在は課税対象所得ではあ りません （第10章3節1項を参照） 。 また、 宝くじ当選金および保険配当金も源泉税の対象です （2013年か ら、 1,000スイスフラン以上を受けとる場合） 。 通常は、 利益分配を行ったスイス法人 （債務者） に納税義務があり、 受 領者に源泉税の全額または一部が還付されるかにかかわらず、 源泉 徴収が義務付けられています。 源泉税は納税者が所得税申告で所得 を適正に申告した場合に限り還付され、 これは脱税を防止する機能を もっています。 納税者がスイス法人の場合、 源泉税は還付されますが、 納税者が個人の場合は、 所得税申告書の査定を通じて、 源泉税が納税 額から控除されます。

納税者がスイス非居住者の場合、 源泉税は最終的に負担するコストと なりますが、 受領者の居住国とスイスの租税条約や二国間協定に基 づき、 一部または全額が還付される場合もあります。 特定の配当金については、 還付手続きを行う代わりに届出手続きで済 ませることができます。 10.4.1 国内税率 配当には35％の源泉税が課されます。 配当金にはみなし配当、 債券お よび債券型貸付金の支払利子、 および銀行や類似の金融機関からノ ンバンクへの支払利子をも含みますが、 通常の法人貸付契約に関連 する支払利子は、 条件を満たせば源泉税の対象外となります。 また、 国 内の個人または法人が支払うロイヤリティ、 ライセンス料、 サービス 料、 および類似する手数料は独立企業価格であれば、 源泉税の対象 外とされます。 10.4.2 租税条約に基づく税率 大抵の租税条約は、 配当に課される税率35％の軽減税率を定めてい ます。 通常、 ポートフォリオ投資家への配当には15％、 会社の所有者へ の配当には0％、 5％、 または10％の軽減税率が適用されます。 一部の 租税条約は、 スイスで生じた所得を受領者の居住国で課税するよう 定めていますが、 スイス国外で課税されない場合、 軽減税率は適用さ れません。 利子についても、 大半の租税条約は軽減税率 （通常10％） を 規定しており、 一部の租税条約は全額還付を規定しています。 租税条約に基づく税の軽減は、 申請者が実際に条約適用の資格を有 することが前提です。

「多数の二重課税防止条約と二国間条 約により、 スイス国外に居住の納税義務 者は、 源泉税の一部または全額の還付 を受けられます。 」

10.4.3 スイス–EU協定 スイスと欧州連合 （EU） は、 7項目から成るこれまでの協定 （2002年6月 1日施行の第1次スイス-EU協定） に次いで、 2004年5月に8項目から 成る第2次スイス-EU協定を締結しました。 この協定の1項目が貯蓄課税協定であり、 EU貯蓄課税指令と同様の 取扱を規定しています。 スイスの同意を得るため、 この協定には、 当時 施行されていたEU親子会社指令およびEU利子・ロイヤリティ指令と ほぼ同じ条文が盛り込まれました。 このため、 スイスは、 2005年7月1 日以降、 事実上、 各EU指令を適用していると言えますが、 今後のEU指 令の改正項目が自動的にスイスに適用されるわけではありません。 この貯蓄課税協定によると、 最低保有株式、 保有期間などの諸条件を 満たす場合、 スイスとEU加盟諸国間における配当所得、 ロイヤリティ、 および利子は源泉税の対象外となります。 原則として、 貯蓄課税協定を含めた二国間協定は、 2005年7月1日以降 のEU新規加盟国 （ブルガリア、 ルーマニアなど） にも適用されますが、 一部の新規加盟国については、 移行協定を考慮する必要があります。 他方、 不正行為または虚偽行為があった場合、 上記のEU貯蓄課税指 令と同様の取扱、 つまり源泉税非課税の適用が却下されることがあり ます。 虚偽行為や不正行為の防止のため、 国内規定および協定規定 の適用において、 スイスと各EU加盟国双方より、 貯蓄課税協定の留保 が明示されているためです。 配当金、 利子、 およびロイヤリティの支払いに関するより有利なスイス 乚EU加盟国の租税条約の規定は影響を受けません。

10.5 付加価値税 (VAT) スイスはEU加盟国ではありませんが、 スイスの付加価値税 （VAT） 制度 は、 第6次 EU VAT 指令 （ 「売上税に関する加盟国間の法令の調和に関 する第6次理事会指令」 ） にならい、 前段階税 （input VAT） の控除を認め る、 非累積的かつ段階的に徴収される税として設計されました。 した がって、 スイスのVATは、 連邦間接税として、 大半の物品および役務に 課税され、 生産から販売までの各段階で徴収されます。 物品および役 務の提供者に納税義務があり、 物品および役務の受領者が支払った 対価に基づいて納税額が計算されます。 10.5.1 納税義務者 法人、 組織、 パートナーシップ、 法的能力を持たない協会、 機関等で、 事 業を運営し （利益を上げる意図があるか否かに関係なく、 長期間、 事業 または専門的活動を通して売上がある） 、 スイスにおける課税売上が 年間100,000スイスフラン以上の場合、 付加価値税の納税義務が生じ ます。 スイス企業が親会社であるスイス国内の全恒久的施設は、 親会 社とともに、 1つの納税主体を構成します。 外国企業が親会社であるス イス国内の全恒久的施設も課税対象機関ですが、 スイス国内の全恒 久的施設は親会社とはそれぞれ別の課税法人としてみなされます。 課税法人の年間売上 （物品・役務の供給による課税売上） が100,000ス イスフラン未満 （スポーツクラブおよび非営利団体の場合は150,000 スイスフラン未満） の場合、 納税義務は生じません。 ただし、 納税義務 の免除を放棄することもできます。 スイス連邦財務省税務局での登 録時に、 納税義務者は、 原則的に企業ID番号を基にしたVAT番号を取 得します。 VAT番号を企業ID番号に加えた （例： CHE-123.456.789 MWST） ものですが、 2014年1月31日以降は、 企業ID番号に基づいた VAT番号のみが有効となっています。 持株会社には特別な規定があります。 一般的に、 株の取得、 保有、 売却 はスイスVAT法の範囲内における商業行為です。 会社の株の持分が 10％を超えるものはシェアホールディングとされ、 長期投資の意思 および相当の影響力を有するとみなされます。 商業行為としての株保 有と認められることは、 持株会社が免税放棄のために任意で登録でき るということを意味します。 株の売却は基本的には免税収入 （ただし、 通常は利益収入のため、 税引前修正が必要） ですが、 登録の利点は、 株 保有行為の範囲内で支払うべき税引前利益を申請できることです。

スイスにおける税制の概要

117

10.5.2 課税対象となる物品 付加価値税は以下の取引に課されます。 1. スイス （リヒテンシュタイン を含む） における納品、 2. スイス （リヒテンシュタインを含む） における サービスの提供、 3. 外国に法人住所を有する企業による年間 10,000スイスフランを超える価値のサービスの購入 （および特定の 国内配送） 、 4. 物品の輸入。 国外の受領者に提供される特定の役務 （ならびに物品の輸出および 国外への輸送） にはVATは課税されないか、 または、 税率0％が課せら れ前段階税 （inputVAT） が全額還付されます。 付加価値税上の物品の 輸送は、 スイス商法で物品の輸送とみなされるものに限られていませ ん。 付加価値税法は、 機械のメンテナンス、 物品の賃貸またはリース、 電力取引など、 VAT税務上、 物品の供給とみなされる多数の事業取引 を規定しています。 10.5.3 課税対象額 物品および役務の提供に関する課税ベースは、 合意または回収され た対価 （現金または現物） の総額で、 前段階税 (input VAT)、 すなわち物 品・役務の購入時に支払った税額を控除できます。 このため、 付加価 値分のみが課税されることになります （全段階相殺の原則） 。 10.5.4 税率 課税対象である物品・役務の提供に適用される標準税率は、 2011年1 月1日現在8％です。 宿泊サービスの場合、 軽減税率3.8％が適用され ます。 必需品である一部の物品・役務、 すなわち水、 食品、 ノン・アルコ ール飲料、 食肉、 魚、 穀物、 書籍、 新聞、 および非営利目的のテレビ・ラジ オ放送などには、 軽減税率2.5％が適用されます。 スイス連邦税務局は、 売上が502万スイスフラン未満 （VAT含む） 、 かつ 年間納税額が109,000スイスフラン以下 （該当する純税率に従って算 出） の小企業に対しては、 簡略化されたVATの申告手続を提案してい ます。 該当する小企業は、 標準税率8％よりも低い軽減税率を適用し てVATを申告することができ、 通常のVAT申告手続 （売上に課税される VATから前段階税 （input VAT） を控除する） に代えることができます。 こ の簡略化した申告手続は最低1年間継続して使用する必要があり、 年 2回の申告で済みます （通常のVAT申告では四半期に1回） 。

10.5.5 免税 付加価値税法では、 非課税売上と課税免除売上とを区別しています。 いずれの売上にもVATは課税されませんが、 前段階税(input VAT)の控 除の可否という点において区別されます。 VAT非課税売上の場合、 非課税売上を生み出す際に課される税金か ら前段階税 （input VAT） の控除はできません。 VAT非課税の対象となる 事業には、 ヘルスケア・セクター、 教育、 文化、 スポーツ、 社会保障、 大半 の銀行および保険事業、 不動産の賃貸および売却、 賭博、 宝くじが含ま れます。 しかしこうした非課税売上については、 任意の納税を選択す ることができます。 ただし、 銀行および保険業の売上および居住目的 の不動産の賃貸については、 このような選択をすることはできませ ん。 一方、 VAT課税免除売上は、 売上を生み出す際に課される税金から 前段階税 （input VAT） を控除することができます （正規免除） 。 例えば、 物品の輸出はVAT課税免除の対象となります （第10章5節7項参照） 。 スイス国外での取引はスイス付加価値税の対象外です。 VAT課税免除 売上は、 一般的には、 国境をまたぐクロスボーダー取引による売上で す。 典型的な例が、 国外の製造会社から製品を仕入れて第三国の顧客 に販売するスイスの商社です （製品は国外の製造会社から直接顧客に 宛てて出荷されます） 。 国外での物品・役務の供給に関わる事業活動に おいては、 売上がVAT免税でない場合に限り、 納税者は前段階税 （input Tax） を控除することができます。

10.5.6 前段階税の控除 付加価値税の登録を行った会社は、 課税対象となる物品・役務の提供 時に課されるVAT （売上税output tax） と、 課税対象となる物品・役務の 購入時に課されるVAT （前段階税 input tax） を納税する義務がありま す。 大抵は、 売上税(output tax)から前段階税(input tax)を控除できる ため、 会社にとってVATは追加の税負担にはなりません。 前段階税を控 除できない事業 （非課税売上を生み出している銀行および保険事業な ど） 、 または最終消費者にかかるVATに限り税負担がコストとなります。

10.5.7 輸出 輸出品のみならず、 スイス国外に居住する受領者に提供された特定 の役務はVATが免除されます。 スイスの付加価値税法は、 役務供給者の居住地で課税される役務、 お よび特別規定が適用される役務を規定しています （例： 不動産・ホテ ル・レストランに関連するサービス、 文化・スポーツ・芸術に関連するサ ービス、 旅客輸送など） 。 国外の受領者に提供されるが、 付加価値税法 に規定されていないその他の役務については、 スイス付加価値税の 課税対象外となります （ 「供給地は受領者の居住地」 という包括条項が 適用されます） 。 こうした役務の提供による売上がVAT課税免除売上として取り扱われ るためには、 請求書や契約等の証憑 （しょうひょう） が必要です。 特に、 スイスの付加価値税法が規定している形式的要件に沿った証憑を準 備しておくことが非常に重要です。 同様の条件が輸出にも当てはまり、 課税免除のためには税関の輸出許可証 （customs export certificate） が必要となります。 10.5.8 国境をまたがる事業活動 スイスの商社が、 スイス国外の製造会社から製品を購入し、 第三国の 顧客に販売する場合 （製品は製造会社から顧客に直接出荷されます） 、 上記の基本的な付加価値税の規定が次のような影響を及ぼします。

国境をまたがる事業活動 (図49)

第3国

A

*

*

*

第3国

B

請求書 物品の引渡し スイスの付加価値税が課されない国外の売上

出典: 著者編集

スイスにおける税制の概要

119

10.5.9 非居住者企業 外国の事業者が、 スイスへまたはスイス国内で物品および役務の提 供をし、 付加価値税納税義務の免除を放棄することを望むか、 または 該当する課税売上が第10章第5節第1項で言及した基準を超える場 合、 スイスに拠点を構える税務代理人を選任しなければなりません。 このような事業者は、 前段階税 （input VAT） の還付を直接請求できま す。 取得税の課税対象となる役務を納税義務者に提供している外国 企業は付加価値税納付義務を免除されます。 例えば、 こうした役務に は、 輸入税の対象とならないスイス国内における納品や、 も荷受地原 則に役務があります （非納税義務者への通信サービスおよび電子サー ビスを除く） 。 スイスでVATの課税対象となる事業活動を行っていない非居住者企 業は、 スイス国外の売上がスイス付加価値税法上で課税対象となる 場合、 当該企業の居住国がスイスの事業者に同様の付加価値税還付 を認めている場合に限り、 スイスの付加価値税還付を請求することが できます （VATリファンド） 。

10.6 その他の税目 10.6.1 印紙税 通常、 株式発行 （印紙税は資本税としても知られています） または有価 証券取引 （有価証券譲渡印紙税） など、 特殊な法的取引を行った場合、 印紙税の納税義務が発生します。 国内企業が株式発行および増資を行う場合、 発行・増資の時期を問 わず100万スイスフランを超える額 （時価） に１％課税されます。 スイスの証券会社が取引契約当事者または仲介業者としてスイス 国内外の有価証券を取引する場合、 有価証券取引印紙税 （ 「有価証 券取引高税」 とも呼ばれます） が課税されます。 発行者の居住国 （ス イスもしくはその他の国） により、 税率は0.15％もしくは0.3％で、 税額 は取引された有価証券の対価に基づいて算定されます。 スイスの証券会社は、 自己勘定またはスイスの銀行や他の金融機関 などの他者に代わって、 有価証券の取引に専門的に従事する者、 と定 義されます。 加えて、 課税対象となる有価証券を1,000万スイスフラン 以上 （簿価） 保有する会社、 およびスイスの証券を扱うスイス証券取引 所の遠隔地会員で、 同取引所に上場している会社は、 スイスの証券会 社とみなされます。 10.6.2 不動産税 スイスの不動産を源泉とするキャピタルゲインには、 不動産が所在 するカントンの税制に応じて、 カントン税である特別不動産譲渡益 税、 もしくは通常の法人所得税のどちらかが課されます。 キャピタル ゲインの課税権は、 カントンおよびゲマインデに留保されます。

「スイスの付加価値税8％は欧州で最 も低率です。 」

不動産の譲渡は、 連邦レベルでは課税されない一方で、 大半のカント ンでは地方譲渡税が課されます。 原則として、 譲渡税は不動産の取得 価格または課税額に基づいて徴収され、 通常は、 不動産取得者が納税 します。 カントンによって税率は異なり、 1％～3％となります。 さらに、 一般富裕税に加えて、 約半数のカントンは不動産に対して特 別富裕税を年ベースで徴収しています。 特別富裕税は不動産の所 在地で課税され、 債務控除は考慮せず、 不動産の時価または課税額 に基づいて徴収されます。 適用税率は0.035％～0.3％ です。

10.7 租税条約

10.8 法人税制改正（CTR III）

スイス国内外における二重課税を最小限に抑えるため、 スイスは、 先 進国を含め多数の国との間に、 直接所得税に関する租税条約を締結 しています。 これら租税条約の大半は、 所得または資産に課税する場 合の定義および二重課税の排除を示すOECDモデル条約の原則に則 っています。 スイスは免税方式を採用し、 国外に分配される所得は国 内の課税が免除されます。 このような所得および純資産は、 適用税率 の算定に限って考慮されます。 （累進税率留保） 特定の所得 （配当金、 利 子、 ライセンス料） については、 所得源泉国と受領者の居住国の両国 に課税権がありますが、 租税条約により所得源泉国の課税権が制限さ れ、 所得源泉国で支払った税額を受領者の居住国で支払った税額か ら控除することができます （外国税額控除制度） 。 現在までに80以上 の租税条約が施行されており、 加えてEUとの協定も2005年7月1日よ り施行されています。 スイスの租税条約は国際条約として扱われるた め、 連邦、 カントン、 ゲマインデの課税規定より優先されます。

スイスは今まさに企業税制を化しようとしているところです。 目的 は、 国際的に受容されているEUとOECDの規則に適合する魅力的 な法人税制を創出することです。

スイスの租税条約は、 条約締結国の一方または双方に居住する人 （個 人または法人） に適用されます。 既に第10章第3節第5項で述べたよう に、 ランプサム税 （一括税） の納税を申請するスイス居住者は、 通常、 租 税条約の減免措置の条件を満たしています。 ただし一部の租税条約 は、 租税条約の優遇措置を適用するためには特別な条件を満たさな ければならないとしています。 スイスは、 直接所得税に関する租税条約の他に、 相続税・遺産税にお いても数ヶ国/地域と租税条約を締結していますが、 贈与税において は、 これまで租税条約の交渉を行っていません。 また、 越境通勤者、 国 際航空運送税、 国際団体およびその人員への課税に関する特別条約 も複数締結しています。

この目的に適うように、 持株会社、 管理会社およびミックスカンパニー に対するカントンの税制ならびにプリンシパル会社およびスイス金 融支店に対する連邦の税制を、 例えばライセンスボックス制度など の措置によって置き換えることが予定されています。 CTR IIIは、 ビジネス拠点としてのスイスの税制上の魅力を強化する ものです。 法人税制改正 （CTR III） の最新情報は、 当社のウェブサイトでご覧い ただけます。 www.s-ge.com/corporate-taxation スイスの法人税についての詳細 言語:ドイツ語、 英語、 フランス語、 イタリア語、 スペイン語、 ポルトガル語、 ロシア語、 中国語、 日本語

10.9 移転価格税制 スイス税法は、 グループ会社間取引は独立企業原則に沿っていなけ ればならないと規定しています。 スイスは移転価格税制を別途定め ておらず、 近い将来に制定する予定もありません。 その代わり、 スイス 税務当局は移転価格の設定に関するOECDの指針に沿って、 関連者 間取引が独立企業原則に沿って行われたか否かを判断します。 スイ スでは、 移転価格を設定するにあたり記録文書を作成する必要はあり ませんが、 スイスで事業を行う会社は、 関連者間の取引が独立企業価 格でおこなわれていることの証憑を保存していなければなりません。 www.efd.admin.ch 連邦財務省 (EFD) 言語： ドイツ語、 英語、 フランス語、 イタリア語

スイスにおける税制の概要

121