
を利用したつながりの創出に期待がかかっている。しかし、地域社会の コミュニティの連帯に関わる問題と

の登場によって起きた変化について論考を深めた結果、
ICT はつながりのきっかけや場として優秀であるが、同じ趣味趣向に沿ってつながる指向性に 傾倒しているため、物理的な距離によって課題を共有する地域のつながりを強め、社会の相互 支援を生む機能は不十分であると捉えた。それゆえ、その他の方法で地域におけるつながりを 補完する必要があると考察した。そこで本研究ではそうした、物理的課題を共有する地域住民
の相互支援を生む方法の一つとして、雑誌が本来持つ地域性と物質性、制作のプロセスに着目し、 雑誌が地域社会の問題解決に寄与する可能性を提案した。雑誌の中でも特にミニコミ誌やタウ ン誌などの地域誌は、1960 年代から 1970 年代において地域のつながりを創出し、コミュニティ の形成に貢献してきた。1960 年代から 1970 年代における地域のつながりを創出する役割に立 ち返ることで、ICT によるつながりを補完する媒体として、雑誌が地域のつながりを創出する 新たな役割を担えると考える。その効果を確かめる方法として、筆者の学内における雑誌制作 活動を振り返り、インタビュー調査を行なった。インタビューの結果として、雑誌制作を行う ことは、親密なコミュニティの形成を促すことが明らかになった。そうした効果を地域に反映 させるために重要なことは、雑誌制作のきっかけづくりや、人を中心に制作を行うこと、精神的、 身体的に開かれた場所を確保すること、小規模な主体で行うことであり、こうした点に留意す ることで、雑誌が地域の相互支援を行うコミュニティ形成を促す方法の一つとして利用可能で あると考えた。

現代の舞台表現は日本・西洋問わず 1960 年代末からの文化的変革の中で、言葉ではなく身 体中心の表現へ変化を遂げている。失うことを想定されていない「当たり前」という考え方に 問題意識を持ち、私にとっての「当たり前」について考えるきっかけとなった言葉の魅力を伝 えるために、口述で伝えられない言葉の魅力に焦点を当て、記述される言葉と身体所作によっ て派生される音を組み合わせた「身体を排除した舞台」の制作をする。柴田隆子によると、舞 台における身体の動きの役割は、空間の造形と人間の存在の 2 点に集約される。また、演技者 から観客に身体によって伝達される要素は、感情と物語性の 2 点に焦点化して捉えた。そこで、 物理的な身体を排除し、身体から発せられる音に注目し、空間を作り出すことによって、人間 の存在感を示すことで、より感情や物語性を想起させる表現を考案し作品制作を行った。感情 や物語を伝えるプロットとして、記述される言葉で伝える作品にするため「手紙」を題材とした。 そうした言葉に身体的な触覚性を加味することで、より存在感やリアリティーを高めたい。そ こで、スピーカー、プロジェクターライトを使用した小舞台を構成した。作品は、物語を目で 見える文字に加えて、書く音の表現、空間の音、その他の身体所作から派生される音も加える ことで文字から失われた身体を想起させる構成とした。スピーカーからの手紙を書く音や机の 上にある紙にプロジェクターを用いて投影した記述される言葉によって物語を伝える。また、 足音や衣擦れの音を用いて空間を演出する。さらに、呼吸音や嗚咽など身体所作から派生され る音を用いることで、感情や物語性を想起させると同時に物理的な身体を排除することで、空 間の造形や人の存在感を高める作品となった。


1907 年、イタリアの医学博士であり幼児教育者でもある、マリア・モンテッソーリは、幼 児たちが自ら、遊びの中から知識を身に付けることを可能にする教具を作りだした。彼女が作っ た教具では、子どもの自主性を誘うための様々な工夫が施されている。本研究では、モンテッ ソーリ教具が幼児にどのような影響を与えるのか実験によって明らかする。さらにその結果を もとに、幼児期の読み聞かせに有用な教具を作成することで、幼児教育における感覚教育に資 する絵本の作成を行うことを本研究の目的とする。
そこで板野東児童館の園児、約 4 0名に協力を依頼し実験を行った。その結果、3~4 歳の 幼児は「なぞる」行為が特徴で、なぞる感覚を取り入れた教具を用いることで、五感が含まれ る具体的なコミュニケーションに展開することが明らかとなった。この特性を活用し、ウクラ イナ民謡「てぶくろ」を基に仕掛け絵本を制作することとした。和紙とコルクシートを使用し、 絵本の制作を行う。幼児が自分でも読みやすく、また読み聞かせの際 にも使用しやすいよう

に A4 サイズで制作する。和紙特有の柔らかな質感を取り入れ、何度もなぞりたくなるような 仕掛けを取り入れた。絵本に出てくる「ね」「ぎ」などのひらがなを刻む。そのうえから和紙 を張り、上からなぞると、絵本を楽しみながらひらがなを学ぶことができると考える。また板 野町東児童館で実験を行った際に描いてもらった絵を組み合わせて絵本を制作した。

スマートデバイスの普及により、電子書籍が急速に広まった。それに伴い、電子コミックに 特化した表現を用いた漫画作品も登場した。しかし、紙媒体の漫画作品を電子書籍化したもの が主流であり、電子コミックに特化した表現を用いた作品は少ないのが現状である。そこで、 電子コミックに特化した漫画表現を研究することで、紙媒体の漫画とは違った驚きや面白さ、 電子コミックならではの新たな価値を生み出すことを本研究の目的とした。 電子コミックに特化した表現である、モーションや音を用いた作品の分析を進めた。これに は、(1) 読者に内在する触覚性を強調 (2) 時間軸にそった一瞬の雰囲気の演出 (3) 読者を物語 に引き込む演出ができるというメリットがある。一方で、モーション・音の再生が終わるまで 次のコマに進めないといった制約がみられ、「読者の積極的な関与」という観点を欠いている と考えた。以上のことから、電子コミックに特化した表現を効果的に用いると同時に、「鑑賞 者が能動的に読めること」「インタラクティブな仕掛けを作ること」を課題に設定し、実際に 作品制作を行った。制作では「鑑賞者が能動的に読めること」に留意し、繰り返しモーション が見られるようにした。これにより、一瞬の表現を読者の受け取り方によって長いようにも短 いようにも読ませることができる。また、タップした際にモーションと音によって表現された 質感が鑑賞できるといったインタラクティブな仕掛けを組み込んだ。こちらは、モーションを 付けていない静止画像とモーションを付けたアニメーション GIF の二つを用意し、静止画像が タップされた際にアニメーション GIF に置き替えられるようにコーディングした。さらに、 Java Script を用い、タップの際にサウンドが再生されるようコーディングした。


版画は長い歴史の中で多様な技法が開発されてきた。1980 年代以降のコンピューター技術 や印刷技術の発展、デジタルメディアの隆盛と、現代の印刷業界はめまぐるしい変化を遂げて いる。近年ではデジタルメディアと紙の両者の長所を組み合わせた版画表現も活発に行われて いる。そこで従来の紙とインクによる表現とデジタルメディアの技術・手法を融合し、版画表 現の幅を広げることを目的とした。本研究では低価格化や使用できる施設の増加により、幅広 い層からの使用が見込まれるレーザー加工機を版木の彫刻に使用する。レーザー加工機は版木 へのイラストや画像データの正確な彫刻が可能である。また写真製版は一般的に銅版画で使用 されてきた技法である。しかし銅版画の製作の際にプレス機や特別な機材を使用する必要があ り、写真製版の版画制作は難しいとされてきた。そこでレーザー加工機を使用することで、比 較的作業が容易な木版画での写真製版が可能になる。よって本研究では、写真製版に適したレー ザー加工について分析するために、原盤となる画像の加工、レーザー照射の出力速度・出力強 度、版木の種類について実験しまとめた。本研究の実験では、CO2 レーザーによる最大出力が 40W の株式会社 smartDIYs「FABOOL Laser CO2」を使用した。出力速度 3000mm/min・出 力強度 45%と設定することで、高い解像度を維持した写真製版が可能となった。また版にな る画像データに網点処理を施すことで、明暗の差をつけた版画を紙刷りすることができた。版 木については木版画に一般的に使用されるシナベニヤ材と、レーザー加工に適している MDF を使用した。どちらも版木として使用し、紙刷りを行うことはできたが、シナベニヤ材は想定 の範囲外まで燃え広がること、MDF は水性インクを吸収してしまうことなど、それぞれに課 題があることがわかった。


楽器は古くから人間が豊かで文化的な生活を送るために発達してきた。そして音は振動から なり,それを発する楽器というデバイスは一種の振動発生装置であると言える。楽器によるコ ミュニケーションにおける課題として挙げられるのは,視覚や聴覚にはたらきかけるものと比 較して触覚的体験の獲得を目的とした技術の研究が遅れていることである。多くの楽器の電子 化により,もともと楽器から感知することのできた振動を損失するケースが多く見られる。こ の流れを受け,筑波大学の金箱淳一らは音を振動として体感するデバイス [KIKIVIBE] を開発し た。しかしながらこのデバイスは聴覚障害者の音楽鑑賞参入を可能とするためのアイテムとし て開発されたため,純粋な楽器としての機能を持たない。よって本研究では,楽器のありかた を再考察するとともに,楽器から失われた振動を再び楽器本体に獲得することを目的とし,触 覚を現実の拡張としてフィードバックする新たな楽器を制作する。そこで,Roland 社の EDIROL PCR-500 を開発の基盤とし,電磁石の原理を応用した独自の振動機構を開発するとと もに,DAW 上で振動増幅を行うシステムを構築した。その結果,楽器演奏においてこれまでで は体験することができなかった振動を体感することが可能となり,音楽表現に新たな選択肢と 可能性を生み出すことができた。

映像デザイン研究室
藤原
多様化する社会において「生きる力」として自ら学び考える力を応用していく力の育成を公 立学校では行なっているが、高校や大学などの入試制度において主体的に学ぶ機会が奪われて おり、画一的な教育になっている点は否めない。
そうした環境の中で、日本国において近年フリースクールへの通学が認められ、その利用者も 増加している。しかし日本国におけるフリースクールの主な目的は、不登校児童への対応が大 半を占めており、自由選択可能なオルタナティブ教育にはなり得ていない。そこで数少ない新 しい能力・学力感を育成するという徳島県にあるフリースクール「NPO 法人 自然スクール TOEC」を取り上げ、社会が求める能力・学力感との乖離からどのような人間育成が求められ、 また選択可能なのかを明らかにする。TOEC はカウンセリングの理念に基づいた無認可の小学 校「自由な学校」を運営している。本研究では筆者が自由な学校の卒業生であることから、卒 業生から見た TOEC を主催する教育者と親、子ども、TOEC の卒業生への取材を通して、ドキュ メンタリー映像を制作し、地域社会における教育の意義や価値について明らかにすることを目 的とした。

制作を終え、TOEC では強制されることなく自由な環境の中で起きる自らの学びの意欲や自 他共に認めることを大切にしているが、自由な学校の卒業生が TOEC 以外の学校教育の場へ進 学した場合、自己の内面を伝え合う機会が減少することなどに戸惑いを覚えているという現状 から、TOEC が目指している教育や理想を実現するためには、トエックのみならず地域や公立 学校などの場でも受け入れられ、能力を発揮できるよう思慮される必要がある。また TOEC 側 は自らそういった環境を打開できるような能力の育成に対して継続的に支援する必要性も見出 された。
一方で TOEC という環境があることで、自らの意思や判断に責任を持つ能力が育成されてい ることもわかった。また自由な学校に通う子供達は自由を与えられている楽しさや 1 日を自分 でデザインする楽しさを謳歌している。
子供達が生きる力を自由自在に使いこなしていくためには、個人が社会や環境にあわせて自 由な選択をすることができる教育が求められるのではないだろうか。そして多様な能力を受け 入れる社会を形成する必要があると考える。
戦後 72 年が経過した 2018 年現在、成人として太平洋戦争を体験した人々に話を聞くこと
ができる機会も年々減少しつつあり、戦争体験者へ接することができるのも残り数年の段階に 達している。その時代を体験した個人の思いや世相を後世に残すことは重要である。これまで
国家や集団に関する事項はパブリックメディアが記録し、ある程度はアーカイブされてきた。
しかし、個人が記録してきたパーソナルメディアは、その個人の身辺整理とともに廃棄される
リーは多分にそうしたメディアと連関している。そのため、特に戦中・戦後を生きた方々のパー ソナルメディアとパーソナルストーリーを保存していくことは急務の課題である。
そこで、本研究では、個人が持つ記憶を記述し記録していくオーラルヒストリーの手法を援 用しながら、パーソナルストーリーを効果的に引き出すために、写真のカラー化による記憶の 蘇生を試みるという手法で歴史のアーカイビングを行いその効果を検証した。調査においては、 沖縄県にある対馬丸記念館をフィールドに指定し、写真提供者である S.K さんへ写真のカラー 化を加味したオーラルヒストリーによる調査を行った。その結果、オーラルヒストリーによる 調査にカラー化した写真を見せるプロセスを加えることで、白黒写真を見た状態での調査と比 較すると、写真の背景にある今まで話されることのなかった個人の体験とパーソナルストーリー をより多い割合で語る効果が得られた。

ジャパンブルーと呼ばれる藍が世界から注目されている。これまで藍染は我々の生活の一部 として身近なものとして存在してきてきたが、藍染の原料となる の生産者の減少や藍染の技 術の継承の難しさから藍染の産業の衰退という問題が顕著になってきている。一方で、写真は デジタル化が進み、膨大な写真のデータが氾濫する中で、これまで人々の人生の起点を記録し てきた写真が、未整理のまま的確に保存されておらず、我々の生活の中で手元において振り返 る機会が減少していることは大きな課題である。普段の生活にあった藍染が身近でなくったこ とを、本来身近なところにあり記録を振り返る機会が作り出す写真に結びつけることで双方の
問題を解決することを本研究の目的とした。
藍染に写真を焼き付ける方法として、サイアノタイプを用いた。ネガ作成には OHP シートを 使用し、密着焼き付けを行った。その後、藍で染色することでサイアノタイプを併用した藍染 の新たな表現技法として追求することができた。しかし、サイアノタイプでプリントされた部 分に藍染を行うと、脱色が起こる場合や、黄色になる現象が見受けられた。この課題を解決す るために、感光液の配合調整や酸化を促すことによりこうした現象に対処することが可能であ ると考える。
今回の制作を受け、藍染とサイアノタイプを併用した技法を用いて写真を焼き付けることで、 ハレの日の思い出を効果的に残していくことが可能になった。こうした新たな技法が写真の価 値の再興に寄与するとともに、藍染の衰退の回復の一助となることに期待したい。

近年、日本人の睡眠の質の低下が社会問題となっている。リラクゼーションや生体活性手 法の研究開発、良質な睡眠のための寝室環境整備などの研究に取り組む、松下電工株式会社の 北堂は、睡眠に影響を及ぼす因子は二つあると述べる。一方は寝室環境に関する因子であり、 温熱、騒音、光・照明、空気成分、寝具などがその要素としてあげられる。他方は生体に関す る因子であり、要素として生体リズム、日中の過ごし方、精神的ストレス、筋肉疲労、病気な どがあげられる。そこで本研究では寝室環境に関する因子、生体に関する因子に焦点を当て、 主に就寝前における住宅照明のあり方を再考した。JIS 日本工業規格で推奨されている寝室の照
度は 10~30lx とされているが、寝室の明るさはそれ以上の人が多い。積水化学工業株式会社住
宅カンパニー(プレジデント:関口俊一)の調査研究機関である株式会社住環境研究所が行なっ
た就寝 2 時間前から 50lx 以下で過ごすことによる睡眠に対する効果をはかる実験では 50lx では 暗いと感じる意見が多く、多灯分散照明をする必要性が見られた。適時適照、多灯分散照明を 行うことで入眠誘導を図ることは可能だが、そもそも寝室環境に関する因子、生体に関する因 子を組み合わせ、睡眠誘導を目的とした照明は前例が少ない。そこで本研究では寝室環境に関 する因子からは睡眠に大きな影響を及ぼすと考えられる照明と、生体に関する因子からは北堂 の述べる中でも外因的に影響を及ぼすことのできると考える生体リズムに焦点を当て、これら を組み合わせた照明を 5 つ制作した。ターゲットは就寝直前までスマートフォンを使用するな ど明るい環境に慣れてしまっている若年層とし、若年層に就寝前にあかりの使い分けをする習 慣をとってもらうことを目的とした。持ち運び性や若者や現代の住宅に受け入れられやすいデ ザイン性の面から、手軽に取り入れやすいものとした。また、1/f ゆらぎ効果の第一人者とも呼 ばれ、株式会社ゆらぎ研究所を設立、国際会議も開催している武者利光によると、ろうそくの 炎や焚き火などの明るさのゆらぎ、クラシック音楽、そよ風や鳥のさえずりなどの音の強弱と 音色のゆらぎなどに含まれる 1/f ゆらぎは、人を心地よくする効果をもつとされている。この理 論を援用し、使用者の心拍と焚き火の映像を連動させた明滅を照明の光に転用することで、よ り高い睡眠効果をはかった。加えて調光機能を取り入れ、適時適照、多灯分散照明などあかり の使い分けを可能とした。

近年、戦後に植林された森林の多くが木材として利用可能な時期を迎えており、国産材の 利用拡大とともに間伐材の利用促進についてもたびたび議論されてきた。こうした中、徳島県

でも平成 17 年度の「林業再生プロジェクト」や平成 19 年度の「林業飛躍プロジェクト」の施
行によって間伐材の利用促進が取り組まれている。しかし、間伐は林業従事者の高齢化や安価 で大量に入手可能となった外国産材の影響によって進んでいない。また、間伐がなされたとし ても集材・搬出費用等のコストと勘案した収益性の低さから、加工・利用されずに林内に放置 されるケースもあるのが現状である。実際、徳島県神山町では搬出される間伐材の中で建材と
して利用できない小径間伐材の活用が課題とされている。そこで、小径間伐材の活用を図るた めにデジタルファブリケーションを用いたサーフボードを制作し、間伐材利用の新たな価値や 効果を明らかにすることを本研究の目的とした。制作ではレーザーカッターを用いてカットし 組み上げる方法で制作したため、建材として用いることができない小径間伐材でも活用できる ことが確認できた。そして、制作後に行ったプロサーファーの武知実波さんへのインタビュー 調査では、これまで間伐材とサーフィンの間には接点がなかったものの、林業従事者もサー ファーも徳島県の過疎化の問題を改善したいという思いは同じであり、本制作がその両者のつ ながりを作り上げた点において間伐材利用の価値や効果を見出すことができた。今後、そういっ た林業従事者とサーファーの関わりが大きな枠組みの中で、間伐材の利用促進だけでなく徳島 県内の人口減少といった諸問題を解決する一助になるのではないだろうか。
現在日本は、総人口の減少・少子高齢化が進行し続けており、このままでは経済成長を阻む問
題と なりうる。今後の日本市場を維持していくためには労働力確保が必要であり、それに伴い
これまで以 上に女性の社会進出が求められている。また出生数低下を食い止め、次世代育成の
ために、社会進出 と同時に子育てをしていく必要もある。しかし、現状は様々な対策が講じら
れているにも関わらず子育 てと働くことの共存は女性にとって簡単なものではない。これらの 共存は今後の日本社会が豊かに発 展していくことを維持するための課題である。そこで、本研 究では、現在子育てのネガティブなイメー ジを作っている原因の一つとして古い固定概念の存
在に着目した。これまで子育て雑誌で取り上げられ てきたトピックスおよび表紙のビジュアル 行は徐々に行われていることがわかったが、ビジュアルイメージの変化 は見受けられなかった。 人々のイメージに大きな影響を与えるビジュアルイメージが固定的であること は、固定概念の 定着に結び付いていると考えられる。さらに現在子育て中の人々へインタビュー調査を 行い、 現状を実感する人々からの質的実感を確認し、それを踏まえてこれから出産や子育てを選択し て いく人々に向け、古い固定概念を払拭し新たなポジティブなイメージ抱かせるための広告制 作を行った。
● 作品説明 Life」sWomenʼ子育て推進広告「New1
< 素材 > 高発色防炎クロス
< 大きさ > 長さ 252.7cm × 幅 84.1cm 等身大に近いサイズで出力をし、リアルな人物像の印象を持たせた。モデルへのインタビュー を行い、個人個人のストーリーを反映させたコピーを記載し、子育てに関する新たな価値観の 提供を目指した。
2 子育て雑誌表紙 既存の子育て雑誌「月刊赤ちゃんとママ」のビジュアルイメージを新たに した表紙制作を行った。表紙に登場する多様的な母親のスタイルを提案し、母親の家庭的な固 定イメージの払拭を目指した。

2015 年 9 月の国連サミットで「持続可能な開発目標 (SDGs)」が採択され、現在世 界中で廃棄物の削減へ向けた取り組みが行われている。日本では、資源のリサイクル 方法が法 律で定められている家電や容器包装などにおいては、いずれも高いリサイク ル率が実現されて
いる。一方、小型電子機器などに含まれる部品のような複数の材料 が混ざって作られたものは、 リサイクルが困難で資源の含有量に回収コストが見合わ ず、埋め立て処理されることが多い。 そこで、そういった電子部品を再利用できる別 の方法として、アップサイクルという考え方に 注目した。アップサイクルとはリサイ クルとは異なり、回収した資源をいったん工場で加工し 再び同じようなものを作るの ではなく、廃品のもとの形や素材を活かして全く別のものを作り、 より価値のあるも のへと生まれ変わらせようとする考え方である。アップサイクル製品を扱う ブランド はいくつか事例があり、世界中から注目を集めているものも多い。しかし、電子機器 を再利用するアップサイクル製品はまだ主流ではなく、電子機器のリサイクル問題に アプロー チする手段としては注目されていない。よって本研究では、廃電子機器の部 品を用いてアクセ サリーを制作した。その結果、埋め立てられるしかなかった電子機 器や部品に新たな価値と用 途を生み出すことができた。
作品説明
1. 廃品を再利用して制作したアクセサリー 壊れたり使われなくなったりした電子機器を分解し、そこから取り出した部品を 使用して制作した。
2. オンラインショップ 制作した作品を商品として販売するウェブサイト。廃電子機器と割引クーポンを 交換するサービスも提供する。
3. ショップカード オンラインショップの URL と QR コード、Instagram のアカウント( 後日開始予 定) を記載 したカード。

近年、ASMR という言葉をよく耳にする。ASMR とは「Autonomous Sensory Meridian Response」の略称のことで、日本語では自律感覚絶頂反応と訳される。私たちは生活する中 で非常に多くの音に囲まれている。新聞や本を読むときの紙をめくる音、冷蔵庫のモーター音 や車が走る時のエンジン音、誰かと誰かが話している声や、鳥の鳴き声、自分が歩くときに出 る足音などだ。こういった音に囲まれているが、普段はひとつひとつを気にして生活すること はないだろう。そういった特に気に留めないような些細な音に着目して、その音から得た刺激 によって体がゾワゾワしたり、心身ともに心地よくなったりすることをアメリカ人女性ジェニ ファー・アレンが 2010 年に「ASMR」と名付け、現在もなお使用されている。Google での検 索数が上昇していること、「ASMR 特集」などとテレビで組まれる特集を見かける機会が増え てきたことなどもあり、ASMR というジャンルは急成長を遂げているように見える。しかし、 いまだ企業のコマーシャルに起用される、動画投稿サイトに ASMR の効果を利用した動画が投 稿される、といった活用方法がひろく一般化されているとは言い難い。
ASMR にはストレスを軽減する効果があるといわれ、動画投稿サイトではリラックスのために ASMR の動画を見たり聞いたりする人がいるほどだ。しかし、科学的な検証は未だ少ないため 本研究では実際に実験を行い、ストレス軽減効果があることを明らかにした。そこでこの効果 を生かし、さらに普及させるためのコンテンツ制作を行った。
1.作品の概要
ただ音を繋げるだけでなく ASMR にはじめて触れる人でも聴きやすいようストーリー仕立てに
し、5 分程度の音声ドラマを制作した。
2.使用した機器
Scenes Lifelike のイヤホンマイク、同メーカーのマイクホルダー、iPhone

3.制作の手順
①テーマ決め ストーリー仕立てにすること、5 分程度の作品にすること以外に実験の際に評
判だった水の音を複数使用することを方針とした。
②ストーリー制作 2,000 字程度の短い小説を書いてどう録音するのかを決定した。
③録音 決めたことをもとにしてできるだけ雑音が入らない場所で録音した。
④編集 フリーソフト「Audacity」を使用し、不要な部分のカットなどを行った。
デザインはイギリスの産業革命をきっかけに生まれた。ウィリアム・モリスは機械化による大 量生産に異議を唱え、手工業の美しさや作る喜びを復興させるために「アーツ・アンド・クラ フツ運動」を展開したが、時代の変化とともに一つひとつ丁寧に作り上げていく職人は減少し、 機械で大量に生産された商品の中から消費者が選択して購入するという流れが一般的となっ
た。文房具においても、機能やブランドにこだわらずに立ち寄った店先で購入する「最寄品」 であると多くの消費者に認識されている。
しかし、株式会社キングジムは綿密な市場調査や他社製品の物真似はやらず、自分が欲しい
と思ったものを徹底的にこだわって作り込むことによって、「ビズレージ」や「ロルト」など
個人に焦点を当てつつ作り手の思いを乗せた商品を次々にヒットさせた。また、立教大学の尾 上祐美によって個人の思い入れ=こだわりに基づいて商品を選択する消費者が増加していると いう研究結果が得られ、かつての中世の手工業のようにパーソナライズされたこだわりのある 商品を求める流れが近年息を吹き返しつつある。
そこで本研究では文房具のこだわりに着目し、思い入れのあるものに作り替えることで暮ら しをより豊かにすることを目的に文房具のパーソナライズ化を提案する。工業用品から文具雑 貨に派生して以来グッドデザイン賞や文房具屋さん大賞などを数々受賞し、デザインの豊富さ や安価を理由に特に女性に人気を博しているマスキングテープを取り上げ「一人ひとりの好み やストーリーを反映した世界に一つだけのマスキングテープ」を 20 点制作・展示した。その結果、 制作のモデルとなったユーザーから「市販のものよりもこだわりを感じる」「オリジナル性や 実用性があってギフトにふさわしい」などのフィードバックが得られ、一人ひとりの思いを軸 にした持続的な商品開発の一モデルを展開することができたといえる。

1. マスキングテープ <大きさ>幅 15mm , 長さ 10m , 直径 40mm
一人ひとりの好みなどを反映しながら 20 点制作し、印刷通販グラフィックに発注した。
2. 卓上パネル <大きさ>300mm×150mm 何本もテープを配置することでデザインが一目で分かるパネルを制作・展示した。
3.「MASTORY( マストーリ )」ロゴマークパネル <大きさ>150mm×250mm
ユーザーのイメージや好みを「ストーリー」と位置づけ、それをマスキングテープで表現
することから。梱包用の箱には手作りの消しゴムはんこでロゴマークを捺印している。
近年、国連をはじめとする各国際機関でスポーツを、持続可能な開発目標(SDGs)の目標達 成に貢献しうる平和と開発のための柔軟なツールとして活用していこうという潮流がある。こ
のような状況下で、スポーツは途上国への開発援助のツールとしても、多く利用されてきた。
例えば、JICA は 1965 年の青年海外協力隊派遣開始当初から、スポーツによる国際協力をスター
トさせていて、世界 91 カ国にのべ 4,000 人以上を派遣してきた。ここではスポーツは、開発 途上国が抱える問題を解決に導く可能性を秘めているとされ、支援活動は先進国から途上国に スポーツを通じて、貧困問題や地域活性化、人と人の繋がりの強化、健康意識の向上など、社 会問題を解決するための糸口となりうる機会を提供するという姿勢で行われる。しかしながら、 そこには先進国から途上国へのスポーツを通した支援活動が先進国から途上国に一方的に何か を提供するものであるという前提があるように考えられる。先進国と途上国の間で、支援する 側と支援される側という二元論的なものの見方を変え、活動の中で相互にどのような価値を見 いだせるのかという視座を持つことで、共に発展していくための展望がより広がるのではない だろうか。また、そうした活動は個人や民間レベルも行われている。2019 年4月、阿南市サー フィン連盟が、日本政府によって東京五輪が開催される 2020 年までに、官民連携のもと、開 発途上国を中心とした 100 カ国・1000 万人以上を対象に推進されるスポーツ国際貢献事業で あるスポーツフォートゥモローの認定事業として、バヌアツ共和国に 100 本のサーフボードを 寄贈するプロジェクトを行なった。本研究では上記のプロジェクトへの取材を通して、ドキュ メンタリー映像を制作し、バヌアツ共和国の地域社会においてサーフィンというスポーツを通 じた支援活動が与えうる影響を考察することと、活動を通して我々がバヌアツ共和国から学ん だ彼らの哲学や生活の中にある持続可能社会実現のためのヒントを明らかにした。本作品は YouTube など動画配信媒体において配信を行うほか、第 8 回横乗日本映画祭での上映〈四国(徳
ブランド、パタゴニアと徳島大学が共同で開催した環境問題の啓発を目的としたイベント Worn wear project にて映像コンテンツとして公開をおこなった。

映像デザイン研究室
立畑
糖尿病は、徳島県が抱える地域課題の 1 つである。また、世界的にも糖尿病患者は増加傾向 にある。世界糖尿病連合(IDF)によると、2019 年の世界の糖尿病患者数は4 億 6300 万人で あり、2045 年までに 7 億人になると予測されている。しかし、糖尿病の約 80%は健康的な食 事と定期的な運動により予防できるとされている。徳島県でも、様々な糖尿病対策が行われて いるが、未だ糖尿病による死亡率は全国平均より高い状態が続いている。そこで、本研究では、 既存資料に基づき徳島県における高糖尿病死亡率の原因について考察した吉田・多田(2009) より、徳島県での糖尿病予防対策において、運動習慣を身につけることが重要であると考えた。 そして、先述した糖尿病予防において重要な要素より定期的な運動に着目し、生活様式の変化 と運動機会の関係から効果的な糖尿病対策を探った。すると、テクノロジー発達や働き方の変 化に伴い日常生活の中で運動機会が減少しており、十分な運動量の確保には運動機会を別で設 ける必要があることが分かった。またその結果、時間に余裕のない働く世代で特に運動不足が 顕著になっていることが分かった。この結果をもとに、働く世代に向けた運動啓発ツールとし て、現代の生活様式に運動を取り入れた場合を仮想した映像の制作を行った。また、普通に生 活した場合と映像の運動を取り入れた場合で 1 日のエクササイズ時間を比較すると、後者が前 者の約 8.8 倍となり日常生活の中の動作に運動を取り入れることで生活スケジュールを変える ことなく運動量を増加させることが可能になることが検証できた。


食品ロスの低減への取り組みは、国連持続可能な開発サミットで採択された 17 の目標の一 つである。農林水産省 食料産業局の調査「食品ロス量の推移(平成 24~29 年度)」によると、 日本の食品ロス量は平成 24 年から平成 29 年にかけてほぼ横ばいの状況にある。また、おおよ

そどの年も 1 年にでる食品ロスのうち約半分が一般家庭から出されている。このことから飲食 店から出る食品ロスに対してだけでなく一般家庭においてもさらなる食品ロスを低減させる取 り組みが必要とされる。オレンジページ社による読者調査「オレンジページくらし予報」によ ると、消費期限、賞味期限を過ぎて捨てたことのある食品は何かという問いに対し、牛乳・乳 製品が最もポイントを獲得した。そこで、その牛乳に着目してみると、牛乳の食品ロスに対す る現在の取り組みは牛乳そのものへのアプローチがほとんどである。そこで、本研究では牛乳 の食品ロスを低減するためのパッケージの可能性を追求する。一般家庭の消費者が牛乳を最後 まで使いきれるパッケージを提案することを本研究の目的とした。牛乳の賞味期限を切らす理 由についてアンケートしたところ「一人暮らしだが使いきれる以上の量を買ってしまう」とい う回答が最も多かった。これらのことを踏まえ、使いきれない量という課題解決を可能とする パッケージを作成した。さらに一人暮らしについても、多様な人が存在するためペルソナを設 定しユーザー視点を取り入れたデザインにした。最終的に「家に連れて帰って飼える牛乳」を コンセプトとした牛型のパッケージをデザインし提案した。

2019 年の一般社団法人ペットフード協会の全国犬猫飼育実態調査結果による と、日本の犬 の飼育頭数は 879万 7 千頭に及んだ。日本では、1950 年代に番犬とし てペットブームが起こり、 その後高度経済成長期の 60 年代以降では小型室内犬の 人気によりペットブームが確認され、

2020 年の世界中で流行した新型コロナウイ ルスの影響でも、犬を飼う家庭が増えペットブー ムが起こったと言われている。このペットブームによる大きな弊害の 1 つとして、飼い犬のふ んを処理しない悪 質な飼い主が増えることが挙げられる。ふん害はあらゆる問題に発展する危 険性 がある為、ふん害の回避は飼い主の責務である。しかし、現状を鑑みると十分に その責 務が果たされている状況にはない。この問題に対して、諸外国や日本で は、罰則を課したり、 法律や条例を規定したり、独自の解決策を考案したりと飼 い犬のふん放置問題に対して様々な 解決策が実行されている。しかし、どれも罰 則規定を定めるものが多く、監視社会化しており、 飼い犬のふん放置問題に対し て抑圧的である。よって、本研究では、散歩時に使うスコップに 着目し、飼い犬 のふんを回収する際のネガティブ要素を払拭する工夫を取り込むことで、散歩 を 誰もが楽しめ、且つ自発的に飼い犬のふん放置問題に取り組めるツールの提案を 目的とし た。そこで飼い犬のふん放置問題の課題解決を可能とするスコップを制 作し飼い主の意識改善
