<master report >デザインを通じた新しい学びの提案

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第2章 発達段階に応じた題材の設定方法について

Ⅰ.「デザイン」の表現手法の多様さと共通要素

こどもに与えるべき題材について次のように述べ ている。

「デザインする」行為を教育現場に応用する、

例えば初等教育においては、『まず第一にこど

といっても「デザイン」の種類には様々な分野が

も自身の最も身近なもの、家庭生活および近隣の

ある。例えば、情報を効果的に届けるための「デ

生活状況の中にあるようなものなのである。それ

ザイン」、快適な空間をつくり出すための「デザ

から、こどもの身辺から離れたところにあるもの、

イン」、生活を豊かに便利にするための「デザイ

つまり社会的な仕事へと進んでいって、さらにま

ン」、身にまとうものをつくる「デザイン」等、

た典型的な仕事や、その仕事と結びついている社

その分野は多岐に渡る。

会的形態の歴史的な進化へと拡がっていくのであ

先ほどの図(図 54)に元に考えてみると、「デ

る』*41

ザイン」にかかわる一連のプロセスは、答えを具

「デザイン」を題材に設定した場合のことを考

現化していくために扱う素材や手段は異なるが、

えると、「デザイン」は私たちの生活の身近なと

与えられた課題についての理解を深め、視覚的に

ころにあり、様々な問題解決に役立っていると言

表すべきアイディアを考え、アイディアをブラッ

える。個人の生活レベルの問題から、地域社会で

シュアップする、というところまでは共通してい

抱える問題、環境問題や開発途上国での問題等、

るものと見なすことができる。

国際的な問題までデザインの担当する分野は広

第2章では、素材や手段等によって差異が生ま

い。したがってこどもの発達段階や関心を持ちそ

れる部分̶つまり題材設定(何をどうやってつ

うな分野に応じて、課題を選択することが可能で

くるか、どんな素材を用意するか等)に着目し、

ある。したがって、こどもたちが感じる身近さの

課題の与え方について考察する。

レベルや、親和性に応じて課題を設定できるよう に、成長にともなって自己、他者、社会へと外部

Ⅱ. 発達段階に応じた題材の設定について

へ向けられる視点が徐々に発展していくことを考 慮に入れ、「デザイン」の種類を例示してマッピ

各対象者に対して適切な課題というのはどのよ

ングしたものが次の図である。

うに設定していけばよいのだろうか。一般的には、 子どもは成長するにともない、視野を広げ、認識 力を高め、自己探求や他者との関わりを深めてい くことが知られており、そのためには、発達段階 にふさわしい生活や活動を十分に経験する *40 こ とが重要視されている。  前述のデューイは著書「学校と社会」の中で、

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