愛してますか!子どもたちを

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りへと進めます。このような事例も児童養護施設の現場では、希ではありますが、あるこ とも事実です。 児童養護施設から社会に出て行く子どもたちは、不利な状況にあります。まず、保護者 の庇護がないため、社員寮のある会社を選択しなければいけないので就職戦線においての 選択肢が狭まってしまいます。社会で起きる様々な困難に対して、一人で乗り切っていか なければなりません。そのような現実的な話を高校生にあえてします。それは、社会に旅 立ったとき、自分の人生を自ら切り開いてほしいとの期待があるからです。劣等感や喪失 感などの(ー)要因を(+)思考へと転換するきっかけを施設職員は、提供する必要があ るのです。 制 度 が 未 成 熟 だ か ら 、子 ど も た ち は 、不 幸 な 目 に あ っ て い る の で は と の 短 絡 的 な 見 方 は 、 非常に危険です。子どもたちは、今、そこに生きているのです。要は、その子供たちを育 んでいる環境に、子供たちを愛している大人たちがどれだけいて、どれだけ愛を与えてい るかに架かっています。

児童養護施設で働くあなたへ、子どもたちにとって一番必要なことは「愛」です。大人 たちがどれだけ子どもたちを愛し、愛を注げるかが大切なのです。その事を通して、子ど もたちは大人たちを信じることができ、心や情緒の安定へと繋がっていくのです。 支援者の意識の持ち方として、英語のラブからギリシャ語のアガペーへと昇華できれば 最 高 で す 。 ち な み に ア ガ ペ ー と は 、「 無 条 件 の 無 私 の 愛 」「 与 え つ づ け る 愛 」「 見 返 り を 求 めない愛」などと解釈できると思います。これは、仏教で言う「慈愛」と共通するものが あります。自分の意志や思いを発言する力を育むことは、とても大切なことです。受動的 ではなく能動的に自分の立場や生き方を構築していくことが求められます。それが、可能 となるようチャンスを与えていくことが大人たちの役割でしょう。

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幼児との信頼関係

乳 児 院 か ら の 措 置 変 更 で 児 童 養 護 施 設 に 入 所 し た 児 童 は 、愛 着 の 持 っ て 行 き 場 に 混 乱 し 、 様々な行動パターンを表すことが多く、それは、大人との信頼関係や新しい場面への耐性 が、まだ未成熟であるが故の混乱です。

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