都市のカルチュラル・ナラティヴ '19 レポート/Cultural Narrative of a City '19 Report

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都市の カルチュラル・ ナラティヴ 2019



都市の カルチュラル・ ナラティヴ

02

はじめに

04

PROJECT 01

カルナラ! イベントシリーズ ポスト・トーク 港画:都市と文化のビデオノート 05

Report 01 Report 02

国際コンファレンス&ツアー UMAC東京セミナー 09

Report 03

特別講義・見学ツアー

「国際文化会館と3人の建築家たち」 13 東京湾再発見・アート×サイエンス講演会

Report 04

「江戸前の海と文化」 17

活 動 情 報 22

23

PROJECT 02

コミュニティをつなぐ・情報を伝える(連携と発信) 「留学生×カルナラ!」 ウェブサイト評価セッション 24

Report

港区の地域資源をめぐる活動の調査

Column

文・山根千明 26

活 動 情 報 29

30

PROJECT 03

文化を可視化する(コンテンツ制作) Report

カルナラ! ドキュメンタリー映像

「港画」 とテキストの翻訳 31

活 動 情 報 33

34

PROJECT 04

カルチュラル・コミュニケーターを育てる(人材育成) Report

文化発信のための新たなアプローチ

Column

六本木アートナイト2019

人材育成プログラム開発WGレポート 35 「夜の旅、昼の夢」を語る 文・市川佳世子 37

活 動 情 報 41

42

PROJECT 05

プロジェクトを育てる(プロジェクト運営とモデル構築) Report

Summary

「都市のカルチュラル・ナラティヴ」 プロジェクト

第3回 全体会レポート 43

The University Museum as a

Cultural Communication Hub

Connecting Local Sectors 45

活 動 情 報 48

49

Introduction PROJECT 01: CulNarra! Event Series PROJECT 02: Connect Communities and Promote Communication PROJECT 03: Visualise Culture PROJECT 04: Produce Cultural Communicators PROJECT 05: Develop the Project


区は過去から現在にいたる 豊かな文化資源が蓄積され

を擁する都市と考えることができる。

美 術・ 文 化 ア ー カ イ ヴ ] 、泉 岳 寺

「都市のカルチュラル・ナラティヴ」

[禅] 、 増上寺[江戸の寺院] 、草月

ている都市だ。

プロジェクトは、過去と現在を往還

会[いけばなと前衛芸術] 、東京海

過去に目を向ければ、江戸と京都

するダイナミックな都市文化を多様

洋大学マリンサイエンスミュージア

を繋ぐ東海道は国道 1 号線としてい

なコミュニティが享受する環境の実

ム[海洋]、 慶應義塾大学アート・

まも町を走り、高輪では高輪大木戸

現を目指して、 「学術成果を活用し、

センター[現代芸術]の10 機関で、

を見ることができる。またこの地域

都市文化の過去と現在をつなぐ物語

展覧会など様々なイベントの背後に

は、大名屋敷と寺院の町としても知

(ナラティヴ)を提示する」 「多様なコ

ある研究・教育的な蓄積、つまりア

られていた。江戸時代からの寺院が

ミュニティと連携する」 「活動を担う

ーカイヴを巡る活動を前景化し、文

現在でも多く活動する一方、かつて

人材を育成する」という 3 つの課題

化資源への関心と理解を深化させる

の大名屋敷は、徳川家の屋敷跡に立

に取り組んでいる。このように書く

という目的を共有している。

つ迎賓館など新たな役割と機能を担

と非常に理解しづらいが、プロジェ

本報告書では、今年度実施した5

って人々を迎え入れている。

クトの 標 語はシンプルだ。 Disclose

事業(都市文化を紹介するイベント

このように豊かな史跡を有する港

Culture and Research、 つまり、文化

の開催、国際的な情報発信のための

区には、同時に現代の文化芸術が集

と学術を社会に対して開いてゆく活

プラットフォーム構築、コンテンツ

積している。僅か 20㎢ほどのエリ

動が都市のカルチュラル・ナラティ

制作、人材育成プログラムの開発、

アに、12,000ヵ所を超えるアート・

ヴだ。

プロジェクトの運営とモデル化)を

スペースが集まり、日々あたらしい

2020 年 3 月 現 在 の メ ン バ ー は、

レポートしている。プロジェクトが

創造を試みている。つまり港区は、

NHK 放送博物館/放送文化研究所

制作したコンテンツは、ウェブサイ

歴史や伝統文化に関心がある人々と、

(公財)味の素食の文化センタ [放送]、

トや SNS といったオンラインメデ

現代の芸術文化に関心がある人々の

ー [食] 、虎屋文庫[和菓子]、Japan

ィアでも積極的に公開している。是

双方を惹きつける、幅広い文化資源

Cultural Research Institute[現代

非ご覧いただきたい。

2



カルナラ! イベント シリーズ 「都市のカルチュラル・ナラティ

ドキュメンタリー映像上映会「港

隈氏、国際文化会館スタッフがガイ

ヴ」は、学術成果の前景化を軸に今

画:都市と文化のビデオノート」で

ドするツアーで実際の建築と庭園を

昔の文化資源を相互につなぎ、文化

は、2018 年度に製作した地域文化

見学した。また、慶應義塾大学では、

の物語(カルチュラル・ナラティヴ)

資源ドキュメンタリー映像を上映し、

重要文化財を含む建築を一般公開す

を結像することを目指している。こ

監督を招いたポストトークで製作の

る「慶應義塾三田キャンパス 建築

のコンセプトを具体的に表現し社会

意図や背景を共有した。

プロムナード—建築特別公開日」を

に届けるための一つの装置がカルナ

国際的なオーディエンスを対象と

開催。あわせて、今日の東京の建築

ラ! イベントシリーズだ。プロジ

する2日間のコンファレンス「UMAC

について、都市計画の観点から考え

ェクトメンバーの多様性を活かし、

東京セミナー:文化コモンズとして

るトークイベ ント「ArchitecTalk !」

現代美術・寺院・建築・放送・いけ

の大学ミュージアム」では、文化ハ

を英語で開催した。

ばな・食・和菓子・海洋文化といっ

ブとしての大学ミュージアムの役割

「江戸前の海と文化」は、英語字幕

た幅広い主題をフィールドに、港区

と地域との関係について、基調講演、

を伴うバイリンガル講演会として開

で展開する都市文化をその歴史的・

口頭発表などを通じて意見を交わし

催。江戸前の海とその文化をめぐり、

文化的文脈とともに紹介する講演会、

た。2 日目には、地域の文化機関や

沿岸域政策や漁業の歴史、地域と協

展覧会、ガイドツアー、ワークショ

東京の大学ミュージアムを訪れるガ

働したサイエンス・カフェ、江戸の

ップなどの開催を計画している。

イドツアーを企画した。

写生画や浮世絵の魚介図など、領域

本年度は、上映会、国際コンファ

「国際文化会館と 3 人の建築家たち」

横断的に話題が提供された。

レンスとガイドツアー、近代建築の

では、近代建築の重要な作品である

それぞれのイベントの内容につい

講義と見学会、そして東京湾の今昔

国際文化会館を取り上げた。松隈洋

て詳しくは、本セクションにレポー

をテーマにした講演会と、盛りだく

氏(京都工芸繊維大学)による建築

トとしてまとめているのでご参照い

さんな実施内容となった。

の共同設計をめぐる講義のあと、松

ただきたい。

01 PROJECT


Report 01

Post-screening Talk: Minato-e: Notebook on Cities and Cultures

ポスト・ トーク

港画:都市と文化の ビデオノート 日時│ 2019 年 5 月 26 日 場所│慶應義塾大学 三田キャンパス 北館ホール レポート│千葉夏彦

2019 年 5 月 26 日、 慶應義塾大学三 田キャンパスにて「都市のカルチュラ ル・ナラティヴ」ドキュメンタリー映 像上映会として、 「港画:都市と文化 のビデオノート」が開催された。  3本のドキュメンタリー映像を上映 したのち、各監督を壇上に迎え、慶應 義塾大学アート・センター所員の久保 仁志をディスカッサントに、ポスト・ トークを行った。

「港画」フライヤー

│ 印象的なファーストショット

藤川 横田茂さんが、がらんどうにな

久保 皆さんのファーストショットが

たのですが、ファーストカットはその

とても印象的だった。阿部さんは霜紅

旧ギャラリーに向かう途中なんです。

梅というお菓子のクローズアップから、

あのエレベーターは、ビルの外側から

藤川さんはエレベーターのシャッター

の搬入用のもの。演じてもらうわけで

った旧ギャラリーに写真を撮りに行っ

が開く所、大川さんは最初何が映って

もないので、エレベーターに乗るとき

いるか分からないような暗い中で、泉

は満足いくものが出来なくて、降りる

岳寺の外形が浮かび上がってくる。そ

ところは距離感とか空間とかを上手く

れぞれなぜあれをファーストショット

捉えたいと考えた。僕自身あそこが初

に選んだのか。

めてだったので、すごく緊張しながら 撮影しました。

阿部 江戸時代からのお菓子の見本帳 に描かれた絵図、その中でも最も古く

大川 泉岳寺はいろんなレイヤーが重

人気のあるものだという霜紅梅の美し

なっている場所だなと感じていて。よ

さが、観ている人たちにインパクトを

く知っていくと、1641 年に移ってか

残せるのかな、と。映像的にも、実際

ら、関東大震災や第二次世界大戦で本

に食べてみても良いというのが和菓子

堂や記念館が燃えたりしながらも、ず

の楽しみ方としてあると思うので、そ

っといまの場所ににあって。ああ、泉

こを象徴的に撮りたいというのがあり

岳寺はずっとあの場所にあるから、層

ました。

が重なってきているんだなと感じなが

ポ スト ・トーク 港 画 : 都 市 と 文 化 のビ デ オノート

Report 01

PROJECT 01

5


藤川史人「横田茂ギャラリー」より

大川景子「泉岳寺」より

ら撮っていたんです。最後の編集がま

ものだけじゃないものが、沢山重なっ

とまってきたときに、ずっとあそこに

てる感じがしたので。制約のない中で、

いる、誰かわからないけど視点みたい

いつも自分が試せないことを試してみ

なものが、境内を行ったり来たり、浮

ようというワクワク感が出てきて。主

遊しているような作品になったな、と

人公を決めないで、自分から無理に物

初めて実感したんですね。だから、冒

語を紡ごうとしないで、そこの場で向

頭は誰もいないところで、ただ泉岳寺

き合ってひたすら撮ってみて、何が見

を見ているような視点から始めたいと

えてくるかということをやってみよう

思いました。

と思いました。

│アプローチ

藤川 僕は、引っ越しと新しいギャラ リーでのオープニングがもう決まって

久保 ドキュメンタリーはおそらく一

いたので、そこを追っかけながら何が

般的に、監督の強いパースペクティヴ

撮れるだろうと考えました。横田茂さ

を設定して対象を追っていくやり方と、

んがなんでも撮っていいよとおっしゃ

もうひとつは、対象がモチーフ・テー

ったので、名前を冠しているとおり、

マを語ってくれるというようなやり方

横田茂さんに密着させていただこうと。

があると思うんです。皆さんはどちら

6

かというと、後者に近かったというか、

久保 なるほど、横田さんを主人公に

対象の持っているものに寄り添うよう

設定されたという。横田さんがお仕事

な印象を受けたのですけど、この企画

されている場面はいっぱいあったんで

に参加するときに、どのようなアプロ

すけど、オフのショットというか、プ

ーチでやっていこうと考えられました

ライベートみたいなものがなかったの

か?

は、選択的なものだったのでしょうか。

大川 泉岳寺を撮りたいと思った理由

藤川 そうですね、横田さんが主人公

は、あの場所についての直観というか、

といいながらも、ギャラリーも主人公。

興味があったんですよね。見えている

新しいギャラリーの床や壁もよく映し


ていたんですけど、あそこは元々バブ

│アーカイヴとの関係性

ルの頃はロシアのダンサーが躍るよう な中々激しいクラブだったらしくて、

久保 とても印象的だったのは、虎屋

あの場所にもいろんなもの、先ほどの

文庫さんでインタビューに答えられて

大川さんじゃないですけど、レイヤー

いたお一人の方が、ものすごく細い糸

が重なっていて、それも感じながら撮

のようなものを編んでいるような仕事 だとおっしゃっていた所。あの言葉を

りたいなと。

ちゃんと拾われているのは、僕自身ア

上映会

阿部 私は、虎屋さんにどういう歴史

ーカイヴを作る人間なので、すごいな

があって今のデザインを展開している

と思ったんですよね。

のか、最初から興味があって。このプ

横田茂さんは、作家と一緒に展覧会

ロジェクトを進めるにあたり、大川さ

などを長い間やっていくと、その人の

ん、藤川さんは割と撮りながら考える

人生そのものと付き合っていくように

という感じだったと思うんですけど、

なる、展覧会や作品は表に出てくるも

私は最初にどういう企画をやりたいか、

のだけれども、人生で重要なものはそ

虎屋文庫さんにプレゼンさせていただ

の背景にあるものなんじゃないかと、

いて。最終的には、虎屋文庫のみなさ

そういうことを考えられてアーカイヴ

んに、どういう仕事をしているのか、

活動をやりたいとおっしゃっていた。

アーカイヴはどんな仕事なのかって、

大川さんは、まさに今目に見えるよ

普通に暮らしていたらわからないとこ

うな何かではなくて、目に見えない、

ろを、聞くことで伝えられればいいな、

背後に蠢いているような何かを表現し

という形になりました。

たいとお話されていました。  意図してかは分からないけども、皆 さん三者三様に非常にアーカイヴ的な アプローチをされたのかな、と思いま す。アーカイヴというような問題は、 意識的かどうかは別として、撮ったり 編集したりするプロセスの中で、絶対 向き合ってきたものだと思うんですが、 自分の作品との関係性はどう意識され ましたか? 藤川 横田さんが話されるときに、鉛 筆と紙を必ず持っているんです。図を 描きながら説明していて、それがすご く印象的で。横田さんの中では全てが 繋がっていて、それをビジュアル化す る力があって、それでアーカイヴなん

ポ スト ・トーク 港 画 : 都 市 と 文 化 のビ デ オノート

Report 01

PROJECT 01

7


だなと。映像で撮って、この繋がりを伝

てみたりしたんですけど、それで理解

えるにはどうしたらいいんだろうとずっ

してもしょうがないだろう、と。平面

と考えていました。

的な解決ではなく映像でそういったも のを感じ取れるか、いろいろ編集でや

阿部 アーカイヴって昔のものを大切に

ってみたんですけど、それは出来たと

しているという意識があったんですけど、

は思えてなくて。ずっとあの場所を見

今虎屋が何をやっているか、現在の資料

続けている得体の知れない視点が主人

も大切に集めて、今をちゃんと記録する

公、そういう切り口があるのかもとい

ということが大事なんだなと気付かされ

うことは、後半に見えてきました。

ました。あと、好きな資料を皆さんに紹 介してもらったんですけど、すごく良い 顔で説明してくれるんです。資料とか物

終始気さくな雰囲気で行われたポス

とかは動かないですけど、その間に人が

ト・トーク。どういったアプローチに

入ることによって、愛着だったり大事に

よって作品が出来上がっていったのか、

したりっていう気持ちがあって、アーカ

さらにはそれぞれの作品から垣間見え

イヴが生きてくる。普段収蔵庫にあって、

る、取材対象の方や制作者のアーカイ

誰の目にも触れないような資料を人に見

ヴ観にも話題は発展していった。これ

せたときに、すごく生き生きされていて

らの議論は、アーカイヴに馴染みのな

素敵だな、 って。

い人にとっても、アーカイヴというも のが決して単なるコレクションではな

大川 泉岳寺で、資料的な、記録的なと

く、それを構築する物と人との繋がり

ころも最初は撮ったりしていました。歴

の先に息づくものであるということを、

史的経緯や人の流れ、用途の変化といっ

肌で感じる助けとなったのではないだ

たものを映像に合わせてテロップで入れ

ろうか。

ポスト・トーク 左より: 本間・久保・阿部・藤川・大川

8


Report 02

International Conference and Guided Tours: UMAC Tokyo Seminar ʼ19

国際コンファレンス&ツアー

UMAC 東京セミナー

ョンなどを通じて、大学ミュージアム の今日的な課題を共有し議論した。  開催初日は台風の影響で交通状況が 悪い中にもかかわらず、14 の国と地域 から、多くの大学ミュージアム関係者 が参加した。また、学芸員資格の取得

日時│ 2019 年 9 月9・10日 場所│慶應義塾大学 三田キャンパス・ 都内各所 レポート│千葉夏彦

2019 年 9 月 9 日、10 日の 2 日間、 慶

を目指す慶應義塾大学の学生約 60 名

應義塾大学三田キャンパスにて、大学

も参加し、多様な文化的背景を持つ参

博物館をめぐる国際コンファレンス

加者の交流の場となった。セミナーを

「UMAC 東京セミナー: 文化コモン

通して、講演やディスカッションは英

ズとしての大学ミュージアム―ミュー

語で行われた。以下に議論の概要をレ

ジアムにおける領域横断型研究・教育」

ポートするが、各プログラムの詳細に

が開催された[*1 ]。

ついては、UMAC 東京セミナーアブ

大学博物館・コレクション国際委員

ストラクト集も併せて参照いただきた

会(UMAC)は、国際博物館会議(IC

い (https://kemco.keio.ac.jp/all-posts/umac

OM)の国際委員会の一つで、大学ミ

2019-book-of-abstract/)。

ュージアムとコレクションを主題とす る最も大きな国際的フォーラムである。

基 調 講 演

東京初の UMAC コンファレンスとな

オブジェクトの力

る UMAC 東京セミナーは、慶應義塾

オブジェクト・ベースド・ラーニングの 実践と展開

大学アート・センターと、大学内のコ レクションや展示活動をつなぐ役割を

[* 1 ] UMAC 東京セミナー 参加者

担う慶應義塾ミュージアム・コモンズ

基調講演は、渡部葉子(慶應義塾大

が共同で企画し、 「異なる文化に根ざ

学アート・センター/慶應義塾ミュー

した知識や人々の交流をうみだす大学

ジアム・コモンズ) 、アンドリュー・シ

ミュージアムの力」をテーマとした。

ンプソン氏(UMAC /マッコリー大

基調講演や口頭発表、ポスターセッシ

学) 、ジュディ・ウィルコックス氏(セ

国 際 コンファレン ス&ツ ア ー U M A C 東 京 セミナ ー

Report 02

PROJECT 01

9


ントラル・セント・マーチンズ、ロンド ン芸術大学) 、キャサリン・エクルス氏 (オックスフォード・インターネット研 究所、オックスフォード大学)によっ

[* 2 ]基調講演

て行われた[*2 ]。  日本において、大学をはじめとする

ージアム・コモンズ主催の特別パネル

教育機関では、ミュージアムの資料を

が行われた。慶應義塾ミュージアム・

活用した授業はまださほど多くない。

コモンズとは何か、文化財の多様性、

また、授業の一環としてミュージアム

デジタルとアナログの融合、大学にお

を訪れることも頻繁ではない。OBL

ける Cultural Hub の必要性、といっ

はこの状況において、新しい可能性を

たテーマを軸に、塚本由晴氏(東京工

開くと期待される。それは例えば、日

業大学/アトリエ・ワン) 、松田隆美

本の学生に欠けがちな、オープン・ク

(慶應義塾ミュージアム・コモンズ/

エスチョンによる教育的機会の獲得で

慶應義塾大学 文学部) 、重野寛(慶

あり、そして、実物資料がもつ二面性

應義塾大学 理工学部) 、渡部葉子と

は、意味や解釈をめぐる教育に新しい

いった様々な専門領域を持つ研究者が

手法をもたらす。資料は、固定的にみ

登壇し、領域横断的な議論を展開した。

えて流動的で、絶えず変化する知識シ セ ッ シ ョ ン 1

ステムとの関わりにおいて可変的な価 値をもち、好奇心を呼び覚まし、理解

ケース・スタディ(ポスターセッション)

を深め、知識の定着を助ける。  OBL の実践は教育だけでなく、大

東館の 5 階では、パドヴァ大学にお

学における領域横断的な研究にも有効

ける MSA プロジェクト、名勝江戸百

だと言える。I CT の発展により博物館

景などといった様々なテーマのもとに

資料のデジタルアーカイヴ化が進む一

ポスター発表が行われた。壁際にずら

方で、直接資料に触れて学ぶ機会は相

りと並べられた等身大に近いサイズの

対的に減少している。しかし資料に触

ポスターには、図表や写真が分かりや

れることは、観察する力を養い、新た

すく配置され、参加者の興味を惹いて

な知識を獲得し、対象との繋がりを能

いた。

動的に見出すことを促すポテンシャル を秘めている。こうした OBL の可能 性や実践の方法について、参加者から

セ ッ シ ョ ン 2

市民と大学ミュージアム

の質問も交えて活発に議論された。  2016 年 10 月から 2017 年 2 月にかけ 特 別 パ ネ ル

ミュージアムとコモンズ

てパドヴァで行われた恐竜展における、 パドヴァ大学地質・古生物ミュージア ムとパドヴァ市民とのコラボレーショ

1 日目の午後からは、慶應義塾ミュ

10

ン、また北欧諸国における大学ミュー


ジアムと市民との協力の歴史などが紹

ン大学での取り組みを交えてセッショ

介された。

ンが行われた。ミレニアル世代の学生 が求める経験はどのようなものか、た

セ ッ シ ョ ン 3 [* 3 ]セッションでの ディスカッション

領域横断的アプローチ

とえばそれは、社交イベント、アート ワークショップ、映画やコンサート、 政治討論といった教室の外で行われる

テルアビブ大学ミュージアムで行わ

ものであったりする。学生が実際に望

れたテーブルマナーをテーマにした展

むサービスに応えるための様々なアプ

示では、ギャラリーは展示スペースで

ローチが検討された。

あるとともに、シアターや、あるいは 一時的なレストランとしても機能した という。こうした領域横断的なアプロ

セ ッ シ ョ ン 6

大学ミュージアムの未来

ーチの実例が紹介された他、アカディ ア大学ミュージアムにおける創造的で

ポーランドの大学ミュージアムにお

学際的環境の提供の試みなどについて

ける科学コレクションの現在と今後に

議論された。

ついて、科学的資料の選択方法や、科 学的、歴史的、芸術的価値の評価法な

セ ッ シ ョ ン 4

大学ミュージアムと倫理

どの視点から語られた。また、ロシア の最も歴史ある大学のひとつであるト ムスク工科大学のミュージアムを、新

アメリカの博物館における人種問題、

しく生まれ変わらせるプロジェクトや、

植民地時代から残る負の遺産といった

大学ミュージアムの今後の活動の多様

問題について、マイアミ大学ミュージ

な可能性などについても、幅広く話題

アムやグラスゴー大学ミュージアムで

となった。

倫理的な対応がどうなされているのか、 実例が紹介された。また、誰もが訪ね ることが出来るヴァーチャルミュージ

セ ッ シ ョ ン 7

オブジェクト、展示と教育ツール

アムについて、コロンビアのデル・ロ サリオ大学ミュージアムの肖像画コレ クションなどを例にとって様々な意見 が交わされた[*3 ]。

フィリップスエクセターアカデミー のラモントギャラリーで開催された 「Open House:A Portrait」 のケー ススタディをもとに、オブジェクトが

セ ッ シ ョ ン 5

学生との関係構築

どのように複数の観客に触媒作用を及 ぼし、コミュニティーの繋がりをもた らすのかという考察が行われた。セン

大学ミュージアムにおける学生との

トラル・オクラホマ大学図書館で行わ

関係構築について、オレゴン大学、リ

れた「Americas」での実験的な展示

ンチバーグ大学、ジョージ・ワシント

法や、教育ツールとしての展示を利用

国 際 コンファレン ス&ツ ア ー U M A C 東 京 セミナ ー

Report 02

PROJECT 01

11


する実用的なアプローチなどについて

学できるように気遣ってくれた」 、 「よ

も議論が行われた。

い体験だった、また来たい」などと、 多くが好意的な意見であった。

ガ イ ド ツ ア ー

東京都内の大学ミュージアム、 地域の文化機関へのガイ ドツアー

[* 4 ] 上・大石化石ギャラリー 下・泉岳寺

レ セ プ シ ョ ン

SHIBAURA HOUSE

ガイドツアーは 3 つのコースで行わ

レセプションが行われたSHIBAURA

れた。A コースでは大学ミュージアム

HOUSE は、デザイン会社の社屋であ

として、明治学院歴史資料館、早稲田

るとともに、コミュニティースペースと

大学會津八一記念博物館、明治大学博

しても利用される、ガラス張りで透明性

物館を、B コースではサイエンスミュ

のある大胆なデザインが印象的な、妹島

ージアムとして、城西大学水田記念博

和世氏が手掛けた建築である。参加者

物館大石化石ギャラリー、インターメ

の感想にも「Amazing!」 「Excellent!」

ディアテク、東京海洋大学マリンサイ

などと興奮を隠せないものが見られ、

エンスミュージアムを、C コースでは

好評であった[*5 ]。

港区の文化機関をテーマに、泉岳寺、

[* 5 ] Shibaura House での レセプション

味の素食の文化センター、NHK 放送

なお、本セミナーの様子は、藤川史

博物館を選び、コンファレンス参加者

人監督のドキュメンタリー映像「UMA

とともに巡った[*4 ]。

19 Documentary C Tokyo Seminar ’

参加者のアンケートによると、開催

Film by Keio Museum Commons /

日の厳しい残暑の中、 「蒸し暑さに辟

19 ドキュメンタ UMAC 東京セミナー ’

易した」あるいは「非常に良かったが、

リー」として公開されている。参加者

やや忙しなかった」といった感想もあ

の一人はインタビューで「プレゼンテ

ったが、ツアーの内容については「非

ーションは非常によく構成されていた。

常に興味深い」 、 「ガイドがとてもフレ

セッションにはテーマがあり、誰もが

ンドリーで、参加者全員がしっかり見

問題を議論することができた」との印 象を語ってくれた。アンケートには、 「馴染みやすい雰囲気がよかった」 「パ ネル・トークやちょっとした冗談も交 えたコミュニケーションに満足した」 といったセミナーの空気感が伝わるも のも多く、本セミナーがコミュニケー ションの場としても非常に良い成果を 残せたことをうかがわせる。学術的成 果のみならず、様々な刺激に恵まれた

2 日間であったのではないだろうか。


Report 03

Lecture and Guided Tour: Three Architects and International House of Japan

特別講義・見学ツアー

国際文化会館と 3人の建築家たち 日時│ 2019 年 10 月3日 場所│国際文化会館 レポート│千葉夏彦

国際文化会館と3人の建築家たち 坂倉準三、前川國男、吉村順三による 共同設計の妙 松隈 洋/京都工芸繊維大学 教授

2019 年 10 月3日、 国際文化会館に

松隈洋氏による講義では、国際文化

て建築公開イベント「国際文化会館と

会館を共同設計した3人の建築家たち

3人の建築家たち」が開催された。モ

の遍歴と代表作が紹介され、国際文化

ダニズム建築の領域で数多くの著作を

会館建築の背景にある彼らの建築観や

もち、様々な建築展の企画に携わる松

それに影響を与えた人間関係などにつ

隈洋氏による特別講義の後、建築およ

いても詳らかに解説された。

び庭園の見学ツアーが行われた。

│ 前川國男

│ 国際文化会館とは

前川國男は 1905 年に新潟市に生ま

国際文化会館は日本建築界の巨匠、

れ、1928 年に東京帝国大学工学部建

前川國男、坂倉準三、吉村順三の共同

築学科を卒業、渡仏し、モダニズム建

設計により 1955 年に現在の旧館部分

築の巨匠ル・コルビュジエに師事した。

が完成した。京都の名造園家「植治」

前川はル・コルビュジエに惹かれた

こと7代目小川治兵衛が作庭した近代

理由について「彼の著書は建築の設計

庭園の傑作と調和した近代建築の重要

とはどうやってやるものか五里霧中で

な作品である。1976 年の前川國男に

迷っていた学生の私にとって文字通り

よる旧館の改修と新館の増築、2005

闇夜の灯であった」と語っている。恩

年の耐震工事を経た現在もなお、1955

師、岸田日出刀が 1926 年にパリで購

年当時の外観と佇まいを保持している

入したものだ。前川は卒業論文で「大

[*1 ]。 [* 1] 庭園側から国際文化会館を見る

講 義

戦後の近代建築 ル・コルビュジエ論」 を書き上げると、 「矢も楯もたまらな くなって 1928 年の卒業式の夜、東京 を発ってシベリヤの荒野をパリにはし った」という。  パリのセーヴル通りにあるル・コル ビュジエの事務所に入った前川は、シ ャルロット・ペリアンらとの親交を得 ながら、 「最小限住宅案」 (1929) な どを担当し、 実績を上げ、1930 年に 帰国する。同年、レーモンド事務所に 入所。レーモンドは日本家屋と欧米の 生活様式を融合させたモダニズム建築

特 別 講 義 ・ 見 学 ツアー 「 国 際 文 化 会 館と 3 人 の 建 築 家 たち」

Report 03

PROJECT 01

13


を数多く残しており、彼の元で学んだ

ル・コルビュジエ事務所時代に坂倉

経験は前川の建築観に大いに影響を及

が関わったプロジェクトに、 「農村の

ぼした。

再編計画案」 (1934) 、 「マートの家」

翌年、東京帝室博物館(現・東京国

[* 2 ] 講義の様子

14

(1935)などがある。ル・コルビュジ

立博物館)のコンペに参加する。前川

エは建築の感動について分析している。

曰く、駄目で元々で参加し、予定通り

部屋に入る動線、通った扉、部屋のプ

落選する。 その後、1932 年に木村産

ロポーションや天井の高さ、窓の種類

業研究所を設計、これが前川の実作第

やその窓から見えるもの。そういうこ

一号であった。この建物の写真はポス

とによって私たちは建築を体験し、リ

トカードとして販売され、前川はそれ

ズムを感じ取るのであり、その感動は

が嬉しくて方々に送り付けたという微

自然物では作り出せないものだ、と。

笑ましいエピソードが残っている。

これは今でも通用する考えであるとと

その後、 「在盤谷(バンコク)日本文

もに、当時の坂倉と前川の建築観の根

化会館」 (1943) 、 「木造組立住宅 プレ

底に根付いていたと考えられる。

モス」 (1946) 、 「紀伊国屋書店」 (1947)

坂倉は 1937 年、 「パリ万国博覧会日

などの木造建築を設計、1952 年には

本館」によって建築家としてデビュー

コンクリート建築として「日本相互銀

する。日中戦争のさなかだった当時、

行本店」を手掛ける。関東大震災以降、

日本からは日本的ではないという批判

耐震性が重視されたことで、日本のコ

も受けたものの、ヨーロッパでは絶賛

ンクリート造りの建築は、中仕切りを

され、博覧会の建築競技審査で一等を

がちがちに固める作りが主流となって

受賞した。

いた。ここで前川は、耐震性を確保し

東京等々力にあった「旧飯箸邸」

ながら、どれだけの自由な設計ができ

(1941)は後に歯医者として利用され

るか、という課題を意識した。これは

た時期などを経て、現在は軽井沢に一

1954 年の「神奈川県立図書館・ 音楽

部移築復元され、 「ドメイヌ・ドゥ・

堂」に見られる、外壁がくり取られて

ミクニ」として活用されている。邸宅

柱だけで支えられ、中と外が一体とな

の扉や家具は非常にユニークなもので、

っているような設計などに反映された。

坂倉のデザイン。パリで親交のあった

前川が国際文化会館の設計に携わった

シャルロット・ペリアンの影響を受け

のはこのころであり、やはりそこには

ている。人間の体と建築とを繋げる家

同様の課題が意識されていたと言える。

具というものがデザインできなければ

│ 坂倉準三

建築設計は出来ない、という強い思い

坂倉準三は 1901 年岐阜県羽島市に

ル・ コルビュジエは 1955 年 11 月 8

があったといわれる。

生まれ、1927 年に東京帝国大学美術

日に来日した際、 「神奈川県立近代美

史学科を卒業、兵役に就いた後、1929

術館」 (1951)に立ち寄っている。ル・

年パリに渡り、前川國男の紹介でル・

コルビュジエは美術館建築の意欲が高

コルビュジエ事務所に入所した[*2 ]。

かったものの、プロジェクトとしては


実現していなかったのだが、坂倉は彼

とは困難であったから、こういった写

に先駆けて完成させた。そこには坂倉

真で触れるのが主たる機会であった。

がかつてル・コルビュジエ事務所時代

23 歳のレーモンド事務所時代、 「トレ

に関わった「農村の再編計画案」を土

ッドソン別荘」 (1931) 、 「赤星四郎週末

台にしたアイデアが数多く組み込まれ

別荘」 (1931)にはすでに吉村の名前

ていた。

が載っている。レーモンドもまた、吉

│ 吉村順三

村を道先案内人とすることで、日本建 築を深く知ることができたと言われて

1908 年 9 月 7 日、東京市の呉服商の

いる。

家に生まれた吉村順三は、建築家とし

日本の対外関係悪化を受けてフィラ

て 非 常 に 早 熟 で あ っ た。16 歳 の 時、

デルフィアに引き上げていたレーモン

「住宅」 (1924 年 11 月号)の小住宅設

ド は、1940 年 に 吉 村 を 呼 び 寄 せ た。

計懸賞に応募し、入選した。この審査

吉村はペンシルバニアのニューホープ

員をしていたのが、住宅設計施工会社

の街を、東京のようだと評した。コロ

「あめりか屋」 に勤めていた建築家、

ニアル建築に魅せられ、 「よい建築に

山本拙郎だった。吉村は後に語ってい

は人間的なスケールがあるということ

る。 「山本拙郎は私を建築に導いてく

を知りました」という言葉を残してい

れた人である。彼はロマンチックな小

る。当時彼が撮ったスライド写真は全

住宅への夢を語りかけてくれた。私は

く退色しておらず、当時の様子が鮮明

それに魅せられて、建築の道へ足を踏

に保存されている。

み入れることになった」

国際文化会館の設計に携わる少し前

東京美術学校卒業後、アントニン・

に建てられた「三里塚教会」 (1954)

レーモンドに師事。 「L’ ARCHITEC

は、外目に鐘楼が無ければ民家のよう

TURE VIVANT」1925 年秋冬号に掲

な佇まいの木造建築だが、内部は光を

載されたレーモンド自邸に魅せられた

取り入れる工夫に満ちており、十字架

ことがきっかけだという。当時の建築

の後ろに後光が集まるような設計で、

家にとって、海外に実際に足を運ぶこ

全体としてレーモンドよりも力が抜け

[* 3] 坂倉の特長が見える手すり

特 別 講 義 ・ 見 学 ツアー 「 国 際 文 化 会 館と 3 人 の 建 築 家 たち」

Report 03

PROJECT 01

15


た印象を受ける。

トコンクリートを使った手法や透明性

国際文化会館の竣工後のことだが、

のある構造は前川に特徴的なもの、と

吉村が同志社大学の一角にある「アー

いうように、それぞれの魅力が見事に

モスト館」を手掛けたときのコメント

融合している[*3 ]。

は、彼の建築観をよく表している。 「美

1955 年 11 月 4 日にル・ コルビュジ

しい京都の街も次第にコンクリートの

エが来日した時の様子は「国際文化会

建物によって近代化されていく運命に

館とル・コルビュジエ、坂倉準三、前

ありますが、われわれは京都の建物が

川國男」の写真や彼自身のメモで確認

持っている人間的な尺度や、デリケー

できる。メモには、国際文化会館の芝

トな美しさを近代の建築の中に再生し

生への興味が記されおり、彼の後の作

ていかなければならないと思っていま

品に大いに影響を与えたと思われる。

す。 」

│ 見学ツアー

│ 国際文化会館の共同設計

講義終了後、国際文化会館内の見学

国際文化会館の設計にあたって前川

が始まった。まずは別館 4 階の屋上か

國男、坂倉準三、吉村順三でコンペが

ら外壁と庭を一望し本館へ移動する。

行われた。提出案を見ると、前川案は

車寄せから続くスロープで、岩崎小弥

やや武骨な感じ、坂倉案はそれよりも

太邸時代の遺構についての解説を受け

自由な感じ、吉村案は自然を活かした

た。旧階段ホールを経て講堂を見学後、

感じと、それぞれの特徴がよく表われ

エントランスへ。こちらには会館の全

ている。

体模型が設置されている。港区の名勝

建築中の様子は、佐伯泰英や平山忠

にも指定されている小川治兵衛の手に

治の写真、記念撮影「ワルター・グロ

なる庭園を堪能した後、最後に教室で

ビウスの建築現場視察 松元重治、坂

アンケート記入をしてもらい、解散と

倉準三、前川國男と共に」 (1954)に

なった[*4 ]。

よって残されている。

[* 4] 見学ツアーの様子

1955 年 6 月 11 日、 国際文化会館竣

国際文化会館というひとつの近代建

工。手すりは坂倉の神奈川県立近代美

築の傑作の背景には、設計に直接関わ

術館ものによく似ている、プレキャス

った前川國男、坂倉準三、吉村順三の 3人はもとより、彼らに多大な影響を 与えたル・ コルビュジエ、 アントニ ン・レーモンドらの作品群と建築観の 存在、そしてそれぞれの出会いと融合 があった。この建物の歴史を紐解いて 現れるのは、幾つもの物語の折り重な りでもあり、その物語そのものが「都 市のカルチュラル・ナラティヴ」を紡 ぐ糸ともいえるのではないだろうか。

16


Report 04

Lecture & Discussion: Rediscovering Tokyo Bay: Maritime Culture of Edomae

[* 1 ]講演会の様子

東京湾再発見・ アート×サイエンス講演会

江戸前の海と文化

日時│ 2019 年 12 月 8 日 場所│東京海洋大学 品川キャンパス 白鷹館 レポート│千葉夏彦

2019 年 12 月 8 日、 東京海洋大学品

うかがえる[背景図]。

川キャンパスにて、東京湾再発見・ア

この干潟や浅場は近代化の過程で埋

ート×サイエンス講演会「江戸前の海

め立てられ、そのほとんどが失われて

と文化」が開催された[*1 ]。

しまった。高度経済成長期の水質汚濁

「江戸前」とは、東京湾内湾の江戸

問題は 1970 年に可決された公害防止

時代からの呼称である。本講演会では、

14 法案や、日本の産業構造の変化に

古くから豊かな文化と資源を育んでき

より鎮静化していったが、異常繁殖し

た江戸前の海、あるいは江戸前の魚に

たプランクトンの有機物による汚濁は

関する、東京海洋大学と慶應義塾大学

慢性化していた。

アート・センターそれぞれの研究やプ

1992 年リオデジャネイロでの国連

ロジェクトを紹介し、その成果と今後

環境開発会議で「持続可能な開発」を

の展望・課題について共有した。

実現するための行動計画「アジェンダ

21」 が採択されると東京湾について 講 義 1

「江戸前の海 学びの環づく り」 持続可能な東京湾を考える、 東京海洋大学のアクション・リサーチ 川辺みどり(東京海洋大学 海洋政策文化 学部門 教授、江戸前 ESD 協議会)

も水環境の保全が主流な施策のひとつ となり、沿岸域の自治体や関連省庁、 関連団体、企業などの活動が推進され ていった。  しかし、現在の東京湾の水際線は都 市中心部から遠く、江戸前の魚介類が

[ 背景写真]東京湾漁場図

日常的に食卓にのぼることも無くなっ

│ 東京湾の今昔

てきている。 「東京湾の環境再生に意

東京湾の魚という本講演会のテーマ

欲を持つ多様な人々」を見つけ出すの

の前段として、東京湾の昔と今の様子

はなかなか難しくなっているというの

についての解説がなされた。

が現状だという。

1908 年の「東京湾漁場図」 による と東京湾の湾奥部には干潟と浅い海が

│ 東京海洋大学江戸前ESD協議会

広がっており、随所で様々な魚介類を

次に、東京海洋大学の「江戸前の海

対象として漁業が営まれていたことが

学びの環づくり」 、 通 称「 江 戸 前

東 京 湾 再 発 見 ・ ア ート×サ イエン ス 講 演 会 「 江 戸 前 の 海 と 文 化 」

Report 04

PROJECT 01

17


ESD」についての紹介がされた。江

びのデザイン」では、東京湾の資源・

戸前 ESD は、環境省の「国連 持続可

環境とその利用についての概要を共有

能な開発のための教育の 10 年」に事

するための講義と、テーマとプログラ

業採択されたことを契機に、東京湾を

ムを考えるためのグループワークが行

持続的に利用していくための仕組み作

われ、最後に全員による投票で第2部

りに向けて、みんなで学んで考えよう、

で実施するプログラムを選んだ。

という趣旨で 2006 年秋に発足した。

「第2部 学びのアクション」は「江

ESDとは 「Education for Sustainable

戸前漁業の世界を知ろう」と名付けら

Development」の略で、日本では「持

れた。全4回の日程で、浮世絵パズル

続可能な開発のための教育」と訳され、

や東京湾クルーズでのグループワーク、

学校で行われるような教育ではなく、

アナゴの調理と試食など、様々な参加

地域の人々が互いに教え合い、学び合

型のプログラムが実施され、最後に江

うという期待が込められている。

戸前みなと塾としての提言をまとめた。

ESD の方法としては「参加型アク ション・リサーチ」が推奨される。地

│ 課題と展望

域の人々が主体的に参加して地域の問

これらのプログラムを通して二つの

題を特定し、分析し、解決策を考え、

課題が浮上したという。第一に、当初

それを実施し、評価・反省した上で、

プログラム作りには期待したほどの人

また計画を練り直すというプロジェク

数が集まらず、地域の課題を見つけて

ト・サイクルに則った参加型調査手法

学びのプログラムをつくるということ

のことだ。肝心なのは、地域の課題を

のイメージや意義の伝達段階を別に設

専門家や行政機関ではなく、地域共同

ける必要があったのでは、ということ。

体から提起することだという。

第二に、第1部で作成したプログラ

│ 江戸前みなと塾

ム案をそのまま第2部で運用すること

江戸前 ESD の実践例として、2011

型アクション・リサーチは地域の方々

年 4 月から 11 月にかけて開催された、

との協働の途上にあるという。現在は

港区民との協働プロジェクト「江戸前

原点回帰しながら、東京海洋大学マリ

みなと塾」について紹介された[*3 ]。

ンサイエンスミュージアムを拠点に活

区民からの、話を聞くだけでなく自

動を進めている。

の難しさだった。  江戸前 ESD の参加

分たちで何かをしたい、人材を育成し たいという要望と、 江戸前 ESD の、 東京湾管理に関する意見を政策提案に 繋げるための方法の模索、地域活動を リードし広げ得る人材の発見といった 課題をもとに話し合い、リサーチのテ ーマを「海や魚を学ぶ」に設定した。  構成は2部からなり、 「第1部 学 [* 3 ]江戸前みなと塾

18


講 義 2

「江戸前の魚たち その横顔と漁猟について」 河野博(東京海洋大学 海洋環境科学部門 教授、江戸前 ESD 協議会代表)

在来型漁村は御菜八ヶ浦(本芝浦、 芝金杉浦、品川浦、大井浦、羽田浦、 生麦浦、新宿浦、神奈川浦)と白魚役 に代表される。  移住型漁民の多くは摂津国西成郡の 佃村と大和田村の出身者だった。彼ら

[* 4 ]歌川広重 「名所江戸百景 永代橋 佃しま」

江戸前の魚や、魚をとりまく人々や

は幕府から拝領した鉄砲洲干潟の土地

私たちとの関わりについて、現代から

を造成し、故郷の村にちなんで佃島と

縄文時代まで遡りながら、 様々な資

名付けた[*4 ]。

料・史料を交えた講義が行われた。

彼らによって漁業生産は飛躍的に向 上したが、17 世紀後半から 18 世紀に

江戸前ではどんな魚が 獲られてきたのか

かけては猟師町同士などでの紛争が多

縄文時代と現在で、江戸前で獲られ

題となる。それを受けて武蔵、相模、

てきた魚類はほとんど同じだという。

上総の沿岸 44 浦の代表が集まる「神

縄文時代に獲れた魚を調べる方法は、

奈川浦会合」が開催され、 「議定一札

主に貝塚に拠る。骨の形状に基づいた

之事」という覚え書きが交わされた。

魚類の特定は難しいが、クロダイやス

38 職とよばれる漁具漁法を規定、

ズキなど少なくとも 50 種類以上が江

取締法を決め、会合を開くことを申し

戸前産として知られているそうだ。

合わせた。この措置によって東京湾の

対して江戸時代に獲られていた魚に

漁業は成熟期を迎え、この先に明治時

ついては、考古学的資料はほとんどな

代から現代にかけての漁業法が成立し

い代わりに、数々の史料が存在する。

てゆく。

たとえば「白魚役」という特権を与え

│ 流通と魚介図

られた漁師たちは、毎年 11 月から翌

発し、漁業資源の獲り過ぎや衰退が問

3月まで毎日シラウオを献上すること

江戸時代の流通システムの発達は、

が義務付けられていたようだ。

葛飾北斎「富嶽三十六景」の「神奈川

江戸前の魚類に関する本格的な科学

沖浪裏」に描かれた「鮮魚快速運搬船」

的 調 査 は、1898 ∼ 1901 年 に 行 わ れ、

に見て取れる。こうした押送船の普及

その報告書「東京湾漁場調査報告」に

や利根川などの流通路の整備によって、

は、95 種類の魚類がとりあげられた。

より多くの鮮魚が江戸の食卓に届けら

れるようになった。

江戸前の漁業を支えてきたのは どんな人たちか

日本橋市場の様子は多くの絵師によ って描かれている。歌川国安「日本橋

江戸時代初期の漁業を振興するにあ

魚市繁栄図」 、長谷川雪旦「江戸名所

たって幕府が特権を与えたのは、在来

図会」 の「日本橋魚市」 などが有名

型漁村の漁民と、大坂湾周辺にルーツ

[ 背景図]。日本橋市場や、関東大震災後

を持つ移住型漁民に分けられる。

に移転した築地魚市場は、魚類学者に

[ 背景図]菱川師宣「江戸雀 日本ばし」

東 京 湾 再 発 見 ・ ア ート×サ イエン ス 講 演 会 「 江 戸 前 の 海 と 文 化 」

Report 04

PROJECT 01

19


左[* 6 ]歌川広重「魚尽くし」 右[* 7 ]葛飾北斎 「東海道 五十三次 はら」

とっても標本収集の場として貴重であ

かれており、これは兼葭堂が物珍しい

った。明治から昭和にかけて活躍した

文物の蒐集家であったおかげではない

博物絵師伊藤熊太郎の原画のメモには

かという。

「東京魚市場」という記述が多く出て

若冲が活躍した江戸中期は、享保の 改革により洋書の解禁政策がとられた

くるという。

時代だった。日本の画家が洋書の口絵 講 義 3

「江戸前の魚介図 食卓にのぼる食材としての魚」 内藤正人(慶應義塾大学 文学部 教授/ アート・センター所長)

や挿絵、西洋絵画の技法書に触れるこ とで美術史的にも大きな変化が生じ、 これまでにない写生的な絵画が誕生し た。若冲の描いた魚も写実性を具えて おり、実物の色や形状を正しく伝えよ うとしていることがわかる。

江戸の人々が観賞した魚介図、ある

20

いは食材としての魚介図という視点か

│ 浮世絵のジャンルと魚介図

ら、江戸の美術、具体的には絵画や版

浮世絵はもともと、美人や役者を絵

画に描かれた作品が紹介された。

画化する人物本位の絵だが、幕末期に

│ 江戸時代の写生的絵画

なると浮世絵の購買層である庶民の嗜

伊藤若冲(1716∼1800)は「奇想派」

たカテゴリーが誕生し、魚介図も浮世

好が多様化し、武者絵、風景画といっ

と呼ばれた花鳥画の名手。 「動植綵絵」

絵の主題として相当数描かれるように

は若冲が深く帰依した仏教における浄

なった。

土を絵画化したものという考え方があ

北斎も広重も花鳥画として魚や貝を

り、大小様々な種類の魚が向かって左

描いていたが、両者の描いた鯉の絵を

方向に進んでいる姿を、西方浄土に向

比較してみると面白い。北斎の絵は、

かっていると考えると面白い。

長崎派と呼ばれる漢画系の画風をベー

京生まれの若冲の知人には木村兼葭

スに独自にアレンジして、一緒に潜っ

堂という豪商かつ文化人がいた。若冲

てみたかのような、造型的に面白く、

の「動植綵絵」には日本に無い貝も描

刺激的で奇抜なものとなっている。一


を実際に見下ろしているような、写生

的で穏やかな表現に落ち着いている。

本講演会では、参加者の方々に配布

また、表現として興味深いのは、広重

したポストイットに、疑問や気が付いた

の花鳥版画集「魚尽くし」である[*6 ]。

ことを書いて欲しいとお願いした[*8 ]。

魚屋の店頭のような印象を受けるこの

記入された付箋は休憩時間などに会場

方、広重の描く鯉は、水上からその姿

参加者とのコミュニケーション: ポストイットによる意見収集

絵は、おそらく食材としての魚介図と

内の模造紙に貼り付けられる。 「お台

いう視点で描かれており、購入者もま

場の海を綺麗にするためには何が必要

た、とれたての海の美味を、絵で楽し

か?」 「今以上に東京湾の環境に人々

んでいたと思われる。その点において、

の関心を向けるには?」 「調理された

この時期の魚介図は美味しそうに描く、

魚介の絵はどのくらいあるのか」など、

ということが大事だったといえる。

意欲的な意見や質問が寄せられた。

北斎は広重に先行して幾つかの東海

この意見収集の方法は江戸前 ESD

道の版画シリーズを発表している。風

プロジェクトで実践されてきたものだ

景画集というより街道風俗の画集とい

ということで、今回実施することにな

う感があり、街道の宿場の名産として

った。事後にアンケート用紙を記入す

魚介も描かれている[*7 ]。この点から

る方法などと比べて、視認性が高く、

もやはり、魚や貝は食べ物として描か

意見の共有が円滑に行われる手法であ

れているということが裏付けられる。

ると感じられた。

│ 江戸時代の生活と魚

アートあるいはヒューマニティを研

往時、魚介はどのように販売されて

と、サイエンスを専門とする東京海洋

いたのか。 「神奈川沖浪裏」では、快

大学とで、それぞれの学術成果に焦点

速艇で魚介が江戸に運ばれる様子が描

を当て、文化資源を相互に繋ぎ「都市

かれている。船で運ばれてきた魚介類

の文化の物語(カルチュラル・ナラテ

は江戸の魚河岸に運ばれ、商人たちに

ィヴ) 」として結像させたいという目

買われていく。元浮世絵師ながら津山

標を掲げた今回の講演会。より多くの

藩松平家の御用絵師に転身した鍬形蕙

人に新たな興味や前向きな参加意識を

斎は、当時の老中だった松平定信の命

持ってもらうという成果が得られたの

で、 同時代の風俗を記録するために

ではと感じている。

究する慶應義塾大学アート・センター

数々の実録風の作品を描いた。  江戸っ子は初物好きとして知られて いるが、わけても初鰹は縁起物として 異様に値が上がることで有名である。 魚河岸から仕入れた初鰹を売る行商人 が担いでいるのは棒手振りと呼ばれる 天秤棒。なるべく早く、傷む前に売ら

[* 8 ]ポストイット─収集とディスカッションの様子

なければならないと張り切っている。

東 京 湾 再 発 見 ・ ア ート×サ イエン ス 講 演 会 「 江 戸 前 の 海 と 文 化 」

Report 04

PROJECT 01

21


01 PROJECT

活動記録

カルナラ! イベントシリーズ

01

2019年 5月26日

ドキュメンタリー映像上映会「港画 : 都市と文化のビデオノート」 参加者:44 名  場所:慶應義塾大学三田キャンパス 登壇者:阿部

02

北館ホール

理沙、藤川 史人、大川 景子  ディスカッサント:久保 仁志(慶應義塾大学アート・センター)

2019年 9月9・10日

UMAC東京セミナー 文化コモンズとしての大学ミュージアム

—ミュージアムにおける領域横断型研究・教育 参加者:72 名(カンファレンス)、31 名(ガイドツアー)  場所:慶應義塾大学三田キャンパス 基調講演:渡部

北館・東館

葉子(慶應義塾大学アート・センター/慶應義塾ミュージアム・コモンズ)

Andrew Simpson (UMAC/Department of Ancient History, Macquarie University, AUS) Judy Willcocks (Central Saint Martins, London University of the Arts, UK) Kathryn Eccles (Oxford Internet Institute, University of Oxford, UK) ツアー概要 コースA 大学ミュージアムを訪ねる 明治学院大学の歴史的建造物と明治学院歴史資料館/早稲田大学 會津八一記念博物館/明治大学 博物館 コースB 大学のサイエンス・ミュージアムを訪ねる 城西大学 水田記念博物館 大石化石ギャラリー/インターメディアテク (東京大学総合研究博物 館)/東京海洋大学マリンサイエンスミュージアム コースC 港区の文化機関を訪ねる 泉岳寺/(公財) 味の素食の文化センター/ NHK放送博物館

03

2019年 10月3日

特別講義・見学会「国際文化会館と3人の建築家たち」 参加者:34 名  場所:国際文化会館  講師:松隈

洋(京都工芸繊維大学 教授)

アーキテクトーク! “Whose Tokyo? The City as a Collective Project” 参加者:18 名  場所:慶應義塾大学三田キャンパス 旧ノグチ・ルーム 講師:ホルヘ・アルマザン(慶應義塾大学理工学部 准教授)

04

2019年 10月3・5日

慶應義塾三田キャンパス 建築プロムナード— 建築特別公開日 参加者:旧ノグチ・ルーム 278 名  演説館:480 名  場所:慶應義塾大学三田キャンパス 建築ガイドツアー 2019年10月3日 (木) ・5日 (土)10:30–12:00 参加者:合計93名 講師:森山 緑 (慶應義塾大学アート・センター)

05

2019年 12月8日

東京湾再発見・アート×サイエンス講演会「江戸前の海と文化」 参加者:73 名  場所:東京海洋大学 講師:川辺

22

品川キャンパス 白鷹館

みどり(東京海洋大学 教授)、河野 博(東京海洋大学 教授)、内藤 正人(慶應義塾大学 教授)


コミュニティを つなぐ・ 情報を伝える

[ 連 携と発 信 ]

地域の多様な文化資源を顕在化さ

のヒアリングも継続している。地域

な「オープンテラス」活動を行う光

せ、さまざまなコミュニティにその

の文化と、大使館が文化事業などを

明寺へのヒアリングを行っている。

情報を伝えていくために、本年度は

通じてもたらす多様な文化とを接続

さらに、今後の連携の拡大のため、

とくに、ウェブサイトを通じた情報

してゆくことを念頭に、本年度はフ

港区内で地域資源をめぐるアウトリ

発信、地域の文化機関とのコミュニ

ランス大使館、マラウィ大使館、ア

ーチ活動を実施する主体とその活動

ケーションの強化、類似する活動に

ルメニア大使館の担当者にヒアリン

事例について予備調査を行った。調

ついてのリサーチに取り組んだ。

グやインタビューを行った。特にフ

査の概要については、p.26 のレポ

ウェブサイトを通じた情報発信に

ランス大使館については、日本にお

ートを参照のこと。

ついては、ウェブサイト正式版の構

けるフランス祭「La Saison」の開

本活動に類似した目的をもつ他地

築に向けて、区内在住外国人や留学

催を2021年に準備しており、現代ア

域のプロジェクトについても、プロ

生、地域の文化団体を対象に、昨年

ートを軸に据えた連携が期待される。

グラムに参加するなどの方法で情報

度制作したプロトタイプ版の評価セ

また、地域内のつながりを拡大す

を収集している。台東区と東京大学

ッションを実施し、フィードバック

るため、地域の文化機関と積極的に

を中心とした「しのばず文化情報活

を得た。留学生を対象としたセッシ

コミュニケーションをとった。港区

用プロジェクト」 、法政大学江戸東

ョンについては、p.24 で詳しく報

内の文化芸術団体をメンバーとする

京研究センターのプロジェクトなど、

告している。また、SNS アカウント

会議「港区文化芸術ネットワーク会

先行する事例に学ぶことは多い。今

(Instagram, Facebook, Twitter.

議」 (港区主催) の機会を活用し、

後、ヒアリングなどを通じて、プロ

アカウント名:@culnarra)の記事

区内に新たに開館する港区立科学館

ジェクト間の連携の可能性について

作成を留学生に依頼し、若年層の関

(虎ノ門)の担当者と開館後の連携

心のあり方を探った。

の可能性について意見を交わしたほ

港区の特性を活かして、大使館へ

か、境内を地域に開放し、ユニーク

も検討していきたい。

02 PROJECT


Report

Website Evaluation Session with Overseas Students

留学生×カルナラ!

ウェブサイト評価セッション 開催日│ 2020 年 2 月 24 日 参加者│リリス・アイヴァジャン、ベネデッタ・パチーニ

モデレーター│本間友(慶應義塾大学アート・センター) [* 1 ] Tokyo Cheapo

「都市のカルチュラル・ナラティヴ」

ter、Instagram といった周知のメデ

プロジェクトでは、昨年度プロトタイ

ィアに加え、アート専門の情報サイト

プ版を構築したウェブサイトや各種

Tokyo Art Beat(TAB へのヒアリング

SNS をプラットフォームに、主催す

は 2018 年度報告書に記載)や Tokyo

るイベントや地域文化資源に関わる情

Cheapo(https://tokyocheapo.com/) 等、

報、地域で展開する様々な文化的活動

英字による東京ガイドの名も挙がった

の情報を提供してきた。言うまでも無

[*1 ]。なかでも Facebook は、日本で

いことだが、情報はそれを必要とする

のユーザー層が中高年中心とされてい

人に届き、活用されてこそ意義がある。

るのに比較して、留学生や外国人のコ

本年度はウェブサイト正式版の公開に

ミュニティでは若年層にも強いメディ

あたって、プロジェクトのターゲット

アと認識されていることは新鮮だった。

層の一つである海外及び日本に在住す

他にも在日外国人、留学生のコミュニ

る外国人の視点から、地域の/特定領

ティや大学の留学生センター等での口

域の文化や文化資源に関する情報を探

コミも、大きな比重を占めていること

す目的において、開発したウェブサイ

が指摘された。

トがニーズに適っているのか評価する

海外からのゲストを案内する際に有効

セッションを行った。

なウェブサイトとしては、訪日外国人向

今回のセッションでは、若年層への

け情報サイトである Time Out Tokyo

普及という観点から留学生を評価グル

Japanive (https://www.timeout.com/tokyo)、

ープとして設定した。なかでも日本滞

rse(http://www.japaniverse.com/)などの

在が長く、また友人や知人から依頼を

ページが共有された[*2 ]。このような

受けて日本の観光案内を行った経験が

ウェブサイトに改善策として期待する

多い学生の中から 2 名を選定した。

のは移動時間や滞在時間の目安などで、

│ 情報を入手するチャネルは?

観光モデルコースを提案するようなウ

セッションではまず、文化に関する

なるのでは、というアイデアもあった。

情報を入手するチャネルとして、現状 広く使用されているメディアについて ヒアリングを行った。Google や Twit

ェブサイトも少し領域は違うが参考に


[* 2 ] Time Out Tokyo

│ 使いやすいメディアとは?

の関心に応じてカードを組み合わせて 使用できる点が評価を受けた。またユ

次に「使いやすさ」を感じるメディ

ーザーインターフェイスも、サマリー、

アに共通する要素を確認した。一般的

ビジュアルとして分かりやすい画像が

な日本語サイトは、情報が多すぎてど

用意され、また著作権情報がクリエイ

こに集中するべきかが分かりづらいが、

ティブ・コモンズにのっとって明記さ

一方で海外のウェブサイトは簡潔にま

れていることが、実際の活用に繋がる

とめられているため分かりやすいとの

ポイントとなっている。加えてカルナ

ことだ。400 字程度( 200ワード)の

ラ自身がどのようなカードの組み合わ

概要を、インパクトのある写真とあわ

せによって企画をプランニングしたの

せて分かりやすく提示することの重要

か、ケーススタディが提供されている

性が語られた。

ことから、ユーザーがウェブサイトの

│カルナラ! ウェブサイトの評価

情報を活用して、自分なりのツアーを

これらの観点を踏まえ、カルナラの

際の手助けとなるのではないか、とい

ウェブサイト(プロトタイプ版)につ

うコメントがあった[*4 ]。

いて意見を求めた[*3 ]。カルナラのウ

今後の展開として、ウェブサイトの

ェブサイトは、テーマごとに情報をコ

内容を実際のコミュニティと繋げる方

ンパクトにまとめられる情報カード

法を検討することが提案された。ウェ

(いわゆる京大式カード)に着想を得

ブサイトの役割や具体的な使用方法に

て設計されている。文化機関、人物、

考えたり、エッセイを執筆したりする

ついて、ユーザーからの率直な意見を

場所、史跡、作品といった対象の「種

取り入れることができる有意義な機会

類」 、読む、訪ねる、聞く、議論する

となった。

といった「文化の学び方」 、美術、建 築、海といった「主題」など、ユーザ ー側からの興味に応じて、カードを絞 り込んで情報を引き出すことができる。  評価者からは、カードに属性を与え ることによって必要な情報を引き出し やすくしていること、ユーザーが自分 [* 3 ] カルナラウェブサイト プロトタイプ版

[* 4 ] プロトタイプ版を評価する留学生

「 留 学 生×カ ル ナラ!」 ウェブ サ イト 評 価 セッション

Report

PROJECT 02

25


column

「都市のカルチュラル・ナラティヴ」は、地域資源にま つわる情報を、文化機関の研究成果と連結して発信し、理 解や関心の深化をめざすプロジェクトである。地域資源の

東京都庭園美術館 「港区ゆかりの人物 データベース」

発信およびアウトリーチを目的とする活動がさまざまに展 開する港区で活動するプロジェクトとして、今後はアウト リーチ活動間の連携を検討したいと考えている。そこで今 年度は、港区における地域資源(歴史・芸術・自然科学・

D. 「伝統工芸等の記録による保存と継

承手法の検討」

文化)のアウトリーチ活動の予備調査を行った。

E.「文化財保護意識の醸成」

本報告では、アウトリーチ活動を、専門家またはこれに

F.「学校教育・生涯学習との連携強化」 :

準ずる人材と市民との対話による、都市の多様な「ナラテ

「出張講座、学校の郷土歴史館見学等」

産業・地域振興支援部 観光制作担当 各種印刷物

ィヴ(物語)」の共有手段と考え、まず、組織的に活動し、 また他活動を支援する団体とその作業内容を確認する。次 に、地域資源の教育普及活動のうち、展覧会・所蔵資料・

1-2

史跡を活用した、対話にもとづく具体的な活動例を、分野

(歴史・芸術・自然科学・文化)別に整理する(したがっ

『港区歴史観光ガイドブック』(A5 版 64 頁、2019 年 7 月発行) 『港区商店街まちあるき MAP』 (A3 版 1 枚折り畳み、2019 年 1 月発行) 白金・高輪エリア/麻布エリア/六本木エリア/青山エリア/赤坂エリア

て一方向的な「展示」「講演会」「レクチャー」等は含まな い)。以上の手続きをつうじ、港区という地域におけるナ ラティヴのアウトリーチ活動の概要を把握したい。

産業・地域振興支援部観光政策担当

A. 印刷物

/新橋・虎ノ門エリア/芝・三田エリア/芝浦港南・台場エリア

『港区観光マップ』(折り畳み、2018 年 12 月 第 9 版発行)

日本語版/英語版/中国語版/韓国語版

1・組織

B. メールマガジン「WELCOME 港区」(毎週木曜配信)

港区における地域資源アウトリーチ活動に対する公的な アプローチは、港区役所や関連する公共団体により、多様 な形式で行われている。たとえば「図書文化財課」は、地

同部署の企画にかんする特集、「港区観光大使」や担当 者による施設・商店街の紹介。 C. 港区産業推進課ホームページ「MINATO あらかると」 :

域資源の収集・データベース化を行い、「産業・地域振興

エリア・分野別に地域資源を検索可能なデータベースの

支援部観光政策担当」という部署では、ガイドブックやエ

公開。

リアマップの編集・発行、イベントの開催に取り組んでい る。区に関連する団体には「一般社団法人港区観光協会」 「港区観光ボランティアの会」等があり、前者は主にイン ターネットをつうじた情報発信、後者は区民によるガイド

1-3

『るるぶ特別編集 今日、どこ行く? 港区』

サービスを提供する。加えて「公益財団法人港区スポーツ ふれあい文化健康財団(Kiss ポート財団) 事業課」は、ホーム

(全 35 頁、2019 年 5 月発行)

『るるぶ Special Edition Minato City Tokyo』

ページ「みなとアートナビ」を運営し、芸術に特化した情 報を包括的に発信している。以下に、具体的な活動内容を

一般社団法人港区観光協会

A. 印刷物

(英語、全 15 頁、2019 年 5 月発行)

『港区まち歩きコースマップ』(折り畳み 1 枚、2018 年 5 月発行)

記す。

Aエリア/Bエリア/Cエリア 麻布・六本木/Dエリア/Eエリア 芝浦・台場

『バリアフリーまち歩き MAP in 港区』

1-1

図書文化財課

A 芝コース/B 新橋コース/C 麻布コース/D 六本木コース/E 赤坂コー ス/F 青山コース/G 外苑コース/H 高輪コース/I 白金コース/J 港南 コース/K 芝浦・台場コース

A.「港区ゆかりの人物データベース」 B.「自然・歴史文化資源のデジタル形式の保存と公開」 C.「郷土資料の調査・研究・収集活動の推進」

港区の 地域資源をめぐる 活動の調査 山根千明 (慶應義塾大学 文学部 非常勤講師)

26

B. ホームページ(https://visit-minato-city.tokyo/) :日英2カ国語

によるエリアガイド、展覧会・催事、ボランティアガイ ドツアー等観光情報を網羅。 C. Facebook 「港区観光情報 Visit

Minato City ─ The best

of Tokyo ─」 :日に 2 回程度、観光拠点の最新情報を掲載。 港区観光協会 ホームページ


1-4

港区観光ボランティアの会

「えどまえピクニック」「江戸型紙活用ものづくり PJ」 等の企画・運営。

A. 区民によるガイドサービス(「参加者募集ツアー」「ガイド派遣サー ビス」 「英語対応ツアー」 ) の企画・提供。参加者募集は港区観

光協会ホームページ上で行い、ガイド育成は産業・地域

C. 民間

「赤坂街歩きの会」 :「赤坂街歩きの会 14 回、15 回セミ

支援部観光政策担当が実施する。

ナー」(「港区文化芸術活動サポート事業」2019 年度助成対象)

(日本語を解し、観光案内に生かせる特技を有する 18 歳以上の約 40 名を対 象に「港区観光ボランティア育成講座」全 15 回および「港区観光ボランテ ィアスキルアップ講座」5 種)

1-5

公益財団法人港区スポーツふれあい文化健康財団 (Kiss ポート財団)事業課

(https://www.minato-artnavi. A. ホームページ「みなとアートナビ」

2-2

芸術

A. 自治体 ●

産業・地域振興支援部国際化・文化芸術担当:

「文化芸術のちから集中プログラム(ミナコレ)」

jp) :区内の芸術活動について情報を包括的に発信すると

(区内の美術館・博物館等と連携した夏休みのスタンプラリー)

ともに、活動主体と活動施設からの登録も募集し、両者

図書文化財課:「ミュージアムセミナー」(三田図書館)

B. 非営利法人

の連結を促す。

公益財団法人港区スポーツふれあい文化健康財団(Kiss ポート財団) :「港区 & サントリー Enjoy!

Music プロジェ

クト」(区立小学校 4 年生対象に、事前授業とコンサート鑑賞) C. ミュージアム ●

2・個別の活動

の実施。 ●

以下、展覧会・所蔵資料・史跡を活用した教育普及活動 のうち、対話にもとづく活動について、分野(歴史・芸術・自

アドミュージアム東京:一般向けの「見学会」(日・英)、 希望する内容にかんする専門的な「見学会」(日本語のみ)

「みなと アートナビ」

NHK 放送博物館:「NHK ほうそうはくぶつかん た んけんシート」(小学生向け)

然科学・文化) 、主催者(自治体・非営利法人・民間)別に整理する。

慶應義塾大学アート・センター:無料ガイドアプリ「ポ ケット学芸員」を用い構 内の芸術作品を見学する

2-1

歴史

「アート・プロムナード」

A. 自治体 ●

「建築プロムナード」(キャ

麻布地区総合支所協働推進課:

ンパスツアー)の開発・実施。

「麻布の魅力探訪事業∼あざぶ達人ラボ∼」 ●

芝地区総合支所協働推進課:

を通じた鑑賞を提案する

「芝の語り部とのまち歩きツアー」 ●

サントリー美術館:会話

「おしゃべり鑑賞」、「玄 鳥庵」での点茶の実施。

芝浦港南地区総合支所:「いきいきお散歩ツアー」

(高齢者対象)

東京都庭園美術館:スマ

高輪地区総合支所管理課:「迎賓館ウォーキング」

図書文化財課:「郷土歴史館子ども学習会」

術館公式アプリ」(日・英・

港区観光ボランティアの会:ガイドサービス

中・韓・仏)、ワークショッ

港区立郷土資料館(旧公衆衛生院) :「建物ガイドツアー」

プ(「あーととあそぶにわ」「五感

B. 非営利法人

ホアプリ「東京都庭園美

と 想 像 力 で 歩 く 建 築 ツ ア ー」 ) 、

「NPO 法人あざ六プラス」 :区内の坂を題材としたカル

タ「港区坂カルタ」(港区政 70 周年記念事業) 制作・ 販売、 多様なテーマでの「街歩き」の企画・運営。

ラーニングプログラム 「みんなで作るギャラリ ー・カンバセーション」、

「特定非営利活動法人 江戸前 21」 :地域連携ネットワ

ークの構築、「見て、歩いて、味わう楽しいまち巡り」

現代芸術家と参加者の共 同制作「ここクリエイシ

上・慶應義塾大学アート・センター 「建築プロムナード」 /中・東京都庭 園美術館 ラーニングプログラム/下・森美術館「耳でみるアート」

港 区 の 地 域 資 源 を めぐる 活 動 の 調 査

column

PROJECT 02

27


column

ョン」、重要文化財「光華」での茶会の実施、来場者 の対話の場「さわる小さな庭園美術館」の設置。

世物寺」妙善寺の縁日を、現代芸術家の出展により現代化) ●

芝浦工業大学附属中学高等学校内 しばうら鉄道工学

根津美術館:美術館庭園内茶室での呈茶・茶会の実施。

ギャラリー:大学の「公開講座」のうち鉄道を主題と

森美術館:視覚障がい者を対象の、対話による「耳で

する「オープンテクノカレ

みるアート」の実施。

ッジ」(2017 年、2018 年) 「まちはだれのもの」(「港区

2-3

自然科学

文化芸術活動サポート事業」2019 年

A. 自治体 ●

度助成対象) :湾岸地区埋め立

芝浦港南地区総合支所協働推進課: ち

て百周年を記念し、芝浦地

区を題材に、現代芸術家な

「知生き人養成プロジェクト(「水辺等の地域資源が豊富なまちで

どのワークショップを 10 代

ある芝浦港南地区に関する講座やワークショップ」 )

を対象に開催。 ち い

「知生き人」 養成プロジェクト

株式会社 SHIBAURA HO

USE:社屋の一部をコミュ ニティスペース「SHIBAU

RA HOUSE」 として開放 するとともに、街歩きと討 ●

図書文化財課:「子ども向け海洋講座」

B. 非営利法人 今回は未確認。

上・ 「オル★テラ」 下・ 「まちはだれのもの」

論による「Minato Unkno

wn ─あなたの知らない港区─」等も実施。

C. ミュージアム・大学 ●

国立科学博物館附属自然教育園:「日曜観察会」「子ど

3・結

も自然教室」 「自然史セミナー」 「緑陰サイエンスカフェ」

上記にまとめた情報を概観すると、歴史資源については

東京海洋大学江戸前 ESD 協議会:「国連 持続可能な

ガイドツアーの形式が定着しており、ガイド養成・多様な

開発のための教育(ESD)の 10 年」の一環として、東京

テーマにもとづく地図の作成・配布による自治体の支援体

湾を題材に「江戸前 ESD」 「江戸前みなと塾」等を実施。

制も整っている。芸術資源については、従来の講座形式が

東京海洋大学マリンサイエンスミュージアム:展覧会

多数ではあったが、館によっては新たな形式での活動が積

に連携したイベントの実施。

極的に企画され、もっとも多様なアプローチが認められた。 文化資源との共同活用の事例もあり、ともに今後のさらな

2-4

文化

産業・地域振興支援部観光政策担当(港区国際交流協会・港

り探し当てることができなかったが、90 年代後半のヨー

区観光協会と共催) :「港区大使館等周遊スタンプラリー」「港

ロッパで生みだされた、対話による「サイエンスカフェ」

区商店街ワールドスタンプラリー」

の形式が浸透し始めている印象を受けた。また、一貫して、

B. 非営利法人 ●

る展開が期待される。自然科学資源については、資源の特 性上、展示や資料を活用した対話的な教育普及活動をあま

A. 自治体

子ども・家族を対象とした活動はおのずと対話にもとづい

一般社団法人東京文化センター:「OPEN! FURNITU

ている。

RE」(「港区文化芸術活動サポート事業」2019 年度助成対象、公共空間

本報告は予備調査として、活動の概観をまとめるにとど

に家具を設置しパブリックスペースを創出)を企画・運営。

まるが、このうち重要な活動についてヒアリング等を行い、

公益財団法人港区スポーツふれあい文化健康財団:「芝

今後の連携活動に繋げてゆきたい。

公園梅まつり」(「芝公園歴史ガイド」「芝公園歴史遺産クイズ」) C. 民間 (「港区文化芸術活動サポート事業」2019 年度助成対象) 「オル★ テラ」 :

「アート×寺×展覧会× 33」「六本木縁日」(江戸時代の「見

28

区の取り組みについては、港区産業・地域振興支援部国際化・文化芸術担当編『港 区文化芸術振興プラン 平成 30 年度~平成 35 年度』港区、2018 年 3 月、みな とアートナビ(https://www.minato-artnavi.jp)および「令和元年度港区文化 芸術活動サポート事業助成団体」 (https://www.city.minato.tokyo.jp/bungeis hinkou/bunkageijyutsukatsudojyosei/r1nendo/kettei.html)を参照した。


02 PROJECT

01

2019年 7月20日

ウェブサイト・コンテンツの評価 地域在住の外国人 港区国際交流協会主催講演会「Let’s Rediscover Japan」での発表にあわせて、

2018 年度に構築したウェブサイトのプロトタイプ版を紹介し、設計や掲載コン テンツについてフィードバックを得た。

02

活動記録

コミュニティ をつなぐ・ 情報を伝える (連携と発信)

2019年 8月30日

連携にむけたヒアリング フランス大使館

03

2019年 10月1日

ウェブサイト・コンテンツの評価 地域の文化団体 (Shibaura House) SHIBAURA HOUSE 代表の伊東勝氏に、イベント情報を必要な人に届ける方法という観点から、 ウェブサイトへのコメントを求めた。

04

2019年 10月29日

連携にむけたヒアリング マラウィ大使館

05

2019年 11月

地域文化資源を巡るアウトリーチ活動に関する調査 開始 さまざまな団体・個人によって行われている街歩きやレクチャーなど、地域文化資源のアウトリー チ活動についての調査を開始。本年度は予備調査としての位置づけで、アウトリーチの範疇を大 きくとり、地域での活動の大まかな把握を行うこととした。

06

2019年 11月2日

ウェブサイト正式版 開発開始

07

2019年 11月22日

連携にむけたヒアリング アルメニア大使館

08

2020年 2月24日

ウェブサイト・コンテンツの評価 留学生 日本滞在が長く、また友人や知人から依頼を受けて日本の観光案内を行った経験が多い留学生2 名を対象に、地域文化資源活用のために必要な情報についてヒアリングを行った。

09

2020年 2月27日

地域文化資源を巡るアウトリーチ活動に関する調査 報告会

活動記録

PROJECT 02

29


文化を可視化する

[ コン テン ツ 制 作 ]

既存の学術成果を活用しながら地

地域の寺院文化に関するテキストの

するなど、大画面で公開される機会

域の文化資源を多様なコミュニティ

バイリンガル化にあたっては、人材

が多かった。そこで本年度は当初か

に伝えるためには、どのようなコン

育成の観点から、翻訳・校正などの

ら大画面での上映も視野にいれた製

テンツを準備するべきか。本年度の

過程に留学生が関わっている。また

作内容とし、昨年度は10 分から40

プロジェクトでは昨年度に引き続き、

Project 04 で扱う「六本木アートナ

分までとばらつきのあった作品の長

テキストの翻訳、ドキュメンタリー

イトを語る─ My Night Cruising」ワ

さも、それぞれ 40 分前後を目標に揃

映像の製作、学生と共同したコンテ

ークショップに参加した学生 14 名

えることを試みた。

ンツ制作を実施した。

によるブログ記事も、オンラインで

加えて地域の建築に関する講演会

テキスト翻訳における今年のテー

公開されている。人材育成プログラ

「国際文化会館と3人の建築家たち」

マは「来場者が実際に手に取り、目

ムと連携した制作は、コンテンツ制

とアート×サイエンス講演会「江戸

にとめる情報」。増上寺の三門(重

作の継続性を担保し、また若年層の

前の海と文化」について、オンライ

要文化財)や経蔵などのガイドツア

関心を喚起するためにも重要であり、

ンで映像を公開した。それぞれのレ

ーに使用するテキストや、 展覧会

来年度以降も続けて取り組みたい企

ポートは、Project 01 の報告を参照

画である。

のこと。イベントの成果をより長く、

内解説の翻訳などを実施した。メン

ドキュメンタリー映像では、食文

より広く活用するために映像記録の

バーからは外国人来場者が増加した

化、海洋文化、伝統工芸を取り上げ

公開は重要である。イベントのサス

という手応えが報告されており、イ

る。昨年度は主たる公開先をウェブ

ティナビリティをいかに向上させる

ベントに直接関わるテキストを翻訳

サイトと想定していた。しかし実際

か、という試みの一環として、今後、

する効果の高さを感じた。

に映像が完成してみると、上映会で

字幕の付与なども視野にいれていき

の公開や各機関がイベント内で使用

たい。

「虎屋文庫の羊羹・YOKAN」の会場

「江戸前の海と文化」講演抄録と

03 PROJECT


Report

Documentary Films and Articles on Local Cultural Resources

カルナラ! ドキュメンタリー映像

「港画」とテキストの翻訳

「都市のカルチュラル・ナラティヴ」

日常を捉えた。阿部理沙の作品では、

は、港区という都市に息づく文化を多

人間国宝(重要無形文化財「蒔絵 」

様な視点から物語り、つないでゆくプ

の保持者)である室瀬和美氏に取材し、

ロジェクトだ。ここで紹介する「港画」

1つの漆作品ができるまでを追った。

は、ドキュメンタリー映画監督たちと

味の素食の文化センター食の文化ライ

ともに都市文化の物語を映像で捉えよ

ブラリーでは、大川景子が、一般には

うとする試みである。

まだ馴染みの薄い専門図書館の役割を、

昨年度に引き続き、本年度も3本の

利用者の関心を切り口に浮かび上がら

地域文化資源を紹介する短編ドキュメ

せている。3監督の作品は、上映会の

ンタリーの制作が行われた。藤川史人

後にウェブサイト[*]で公開される。

は東京海洋大学マリンサイエンスミュ ージアムにて、収蔵作品、学芸員の業 務や訪れる人々の様子など、博物館の [*]ウェブサイト

藤川 史人 武蔵野美術大学映像学科卒。映像作家。気に入った土地に一定期 間暮らしそこで生活する人々と映画制作を行う。監督作に、多良間 島の伝統的な結婚式を取り上 げた「Caminando Muchas Lunas」 ( ’10)、広島県三次市で地域住民と交流しながら完成させた「い さなとり」(’15)、アンデスで暮らす人々の記録「Supa Layme」 (’19) 、ほか過日来(’12) 、彼の地(’15)など。 藤川史人「うみの博物館」

阿部 理沙 日本大学芸術学部映画学科監督コース卒。映画・テレビ・CM な ど幅広い映像演出を手掛けている。近年の監督作品として、短篇 映画「山村てれび氏」 (’15)は、ぴあフィルムフェスティバル入選、 Fresh Wave 国際短編映画祭(香港)などで上映。2017 年秋よ りTOKYO MXにて放送されたドラマ「Club SLAZY Extra invitation ~Malachite~」の監督をつとめた。http://www.abefilm.info 阿部 理沙「漆と人」

阿部理沙作品より

カ ル ナラ! ドキュメンタリー 映 像 「 港 画 」 とテキストの 翻 訳

Report

PROJECT 03

31


大川 景子 東京芸術大学大学院映像研究科 編集領域卒。諏訪敦彦監督「ユ 東京海洋大学での取材

キとニナ」 (’09)に編集助手として携わる。その後、筒井武文監 督「自由なファンシィ」 (’14) 、 杉田協士監督「ひかりの歌」 (’19) 、井手洋子監督「ゆうやけ子どもクラブ!」 (’19)等に編 集スタッフとして参加。監督作にインドネシアから来た技能実習 生の日常を描いた「高浪アパート」 (’06)、米国生まれの日本文 学作家 リービ英雄を描いた「異境の中の故郷」 (’13) 。

大川 景子「食の探求、本の旅」

左・三田寺町の寺院への取材 右上・味の素食の文化センターでの取材 右下・増上寺 境内

翻 訳テキスト一 覧 (カッコ内は担当した プロジェクトメンバー)

三門・経蔵ガイドツアー用テキスト(増上寺) 、 「虎屋文庫の羊羹・YOKAN」展会場内解説及びキャプション(虎 屋文庫) 、現代美術作家及び作品に関するテキスト(Japan Cultural Research Institute) 、モダニスム建築 /メディアアート/三田寺町に関するテキスト(慶應義塾大学アート・センター)、食文化に関する石毛直道 のエッセイ(味の素食の文化センター)、ミュージアム紹介用リーフレットテキスト(東京海洋大学マリンサ イエンスミュージアム)

32


03 PROJECT

活動記録

文化を可視化する(コンテンツ制作)

01

2019年 7月22日

文化資源ドキュメンタリー映像 キックオフミーティング(慶應義塾大学) 短編ドキュメンタリー映像を担当する監督が一同に会するミーティングを開催。参加者:大川景 子、阿部理沙、藤川史人。2018 年度に製作した作品や、5 月の上映会でのフィードバックを元に 今年度の企画を改めて検討。ウェブだけではなく大画面での上映を視野にいれた内容とすること とし、映像のテーマ、取材対象の文化機関の検討を行った。

02

2019年 8月5日

文化資源ドキュメンタリー映像 テーマ決定 本年度のテーマとして、 「海洋文化」「伝統工芸」「食文化と専門図書館」を設定。それぞれ、東 京海洋大学マリンサイエンスミュージアム、室瀬和美氏、(公財)味の素食の文化センター食の文 化ライブラリーに協力を依頼することとした。

03

2019年 9月

文化資源紹介テキスト作成・翻訳検討 地域の文化資源を紹介するためのコンテンツについて、プロジェクトメンバーと検討。来場者の 目に触れたり、来場者が実際に手に取ったりする情報を中心に据え、一部のテキストの執筆には、 人材育成の観点から学生を参加させることとした。

04

2019年 9月24日

文化資源ドキュメンタリー映像製作開始 取材対象の文化機関、作家への予備調査を経て、ドキュメンタリー映像の製作を開始。

05

2020年 1月16日

文化資源ドキュメンタリー映像 ラッシュの共有とディスカッション(慶應義塾大学) 監督が、それぞれに撮影した映像や編集途中のラッシュを持ち寄り共有、編集の方向性、課題な どをディスカッション。

06

2020年 3月

文化資源ドキュメンタリー映像、 文化資源紹介テキスト翻訳完成

活動記録

PROJECT 03

33


カルチュラル・ コミュニケーター を育てる

[人材育成]

地域の文化を多様なコミュニティ

本年度は、昨年度の実践を下敷き

て検討を深められたことなど、地域

に伝えるためには、言うまでもない

として、フィールドワークの対象を

の文化団体と大学が共同するこのプ

ことだがその活動を担うための人材

現代アートに拡大すること、参加者

ロジェクトの強みが発揮されたプロ

が必要だ。現在は、美術館・博物館

によるアート・フェスティバルのア

グラムとなった。

といったコンテンツホールダーとし

ーカイヴ化という観点を導入するこ

CCWS の開催と平行して、実践

ての文化機関、出版社などの企業、

とを目指して、六本木アートナイト

から得た知見をプログラムの開発に

アート NPO などのコミュニティが

との共同企画としてプログラムを構

繋げてゆくための検討を、ワーキン

それを担っている。これらの主体に

築した。CCWS ’19「アートナイト

ググループにて行った(p.35)。WG

よる発信を支えていくために、 「都

を語る—My Night Cruising」の詳

では、CCWS の対象を社会人に拡

市のカルチュラル・ナラティヴ」プ

細については、市川佳世子によるコ

大した場合に、どのようなプログラ

ロジェクトでは、プロジェクトメン

ラム(p.37)に詳しい。

ムを構築すべきかを中心に検討を行

バーに総合大学が含まれていること

「アートナイトを語る—My Night

い、システム×デザイン思考のフレ

を活かした人材育成プログラムの開

Cruising」からプロジェクトが得た

ームワークに「地域の文化資源の魅

発を試みている。

ものは大きい。学生と六本木アート

力を広める」という CCWS の目的

2018 年度には、慶應義塾大学の

ナイト事務局など、文化に関わる人

を重ねあわせ、プログラムを再構成

学生・留学生を主な参加者として

材がクラスタをこえて交流したこと、

することを試みた。WG での検討内

プロトタイプ・プログラム「カルチ

大学と文化団体が主催するインター

容は、港区と共同した社会人向け講

ュラル・コミュニケーター・ワーク

ンシップという新たな枠組みで実験

座「カルナラ・コレッジ」にてその

ショップ(Cultural Communicator

的な教育を展開したこと、学生が作

一部を試験的に実施している。

Workshop / CCWS) 」を実施した。

成したコンテンツの社会発信につい

04 PROJECT


Report

A New Approach to Communicating Culture: Human Resource Development Programme

文化発信のための新たなアプローチ

人材育成プログラム 開発WGレポート

らは、ワーク自体の説明を充分に行う だけではなく、 「なぜ集合知が必要か」 についてもあらためて確認したほうが よいという意見があった。ひとりでは 得られない視点や切り口を得て思考の 枠を広げることが集合知の利点である

日 時│ 2019 年 6 月~8 月 「都市のカルチュラル・ナラティヴ」 場 所│オンライン、 プロジェクトでは 2018 年度、身近な 慶應義塾大学アート・ センター 地域の文化を知り、国際的な視野のも 参加者│鳥谷真佐子、 市川佳世子、 と自らの言葉で発信する方法を学ぶ 本間友、松谷芙美、 「カルチュラル・コミュニケーター・ 高比良明子

ワークショップ」を実施した。昨年度 はプロトタイプ・プログラムとして、 主たる対象を慶應義塾の学生・留学生

が、まだ日本の教育プログラムにおい て広く知られているとは言えない。ワ ークの効果を引き出すためにも、思考 の前提部分に関して丁寧な解説が必要 だろう。

ソリューションを生み出すための プログラム設計

とした。本年度はワークショップの対

システム×デザイン思考においては、

象を一般に拡大し、生涯学習的な観点

ある目的に対するソリューションを生

を導入した場合に、どのようなプログ

み出す際に、プロトタイピングとアー

ラムを構築すべきか検討を行った。  昨年度のワークショップでファシリ

キテクティングというステップを踏む [*2]。今回の

WG ではシステム×デ

テーターをつとめ、社会人学生の指導

ザイン思考のフレームワークに、 「地

や企業研修の経験も豊富な慶應義塾大

域の文化資源の魅力を広める」という

学大学院システムデザイン・マネジメ

ワークショップの目的を重ねあわせ、

ント研究科鳥谷真佐子氏にメンバーに

プログラムの再構成を試みた。カルナ

加わっていただき、数回のオンライン

ラの人材育成プログラムでは、まずは

セッションを経て、プログラムを構成

プロトタイピング部分をカバーするこ

するワークを試行するセッションを開

とにし、以下のワークを設定した。

催した(8 月 8 日、慶應義塾大学アー ト・センター)[*1 ]。本レポートでは、

[ *1 ] ワーク試行セッション

プログラム開発を巡るディスカッショ ンの概要を紹介する。

│ 前提の共有  昨年度学生から寄せられたフィード バックに「ワークが実際の活動にどう

[ *2 ] システム×デザイン 思考の一例

反映するのか」 「何のためのワークな のか」といった、ワークの役割や位置 づけをより明確にしてほしいというコ メントがあった。WG のメンバーか

文 化 発 信 の た め の 新 た な ア プ ロ ー チ 人 材 育 成 プ ログ ラム 開 発 W G レ ポ ート

Report

PROJECT 04

35


問題定義:因果ループ図

[ *3 ] カルナラ・コレッジでの ディスカッション

│ 課題と今後の展開

自らの関心をリフレーミングし、自分

「カルナラ・コレッジ」でのプログラ

がどのような観点から文化資源の魅力

ム試行からは、重要なフィードバック

を広めたいのか考える

を得ることができた。システム×デザ

提供価値:バリュー・プロポジション

イン思考のワークは文化芸術の領域で はまだ馴染みが薄いため、解説に充分

自らの活動が、社会に対してどのよう

に時間をとったほうがよいこと、社会

な価値を提供するのか考える

人を対象に実施する際には、学生とは

ソリューション・コンセプト: アカデミック・スキルズ

異なる講座の開講回数やチューターシ

文化資源の魅力を伝えるため、具体的

またアカデミック・スキルズの既存講

な企画を考える

義は、大学の情報環境をベースにして

│プログラムの試行

いるため、一般の方でも利用できる公

8月にメンバーでワークを試行した

索チャネルを前提として新たに講義内

あと、港区共催の社会人向け講座「カ

容を考えてゆく必要がある。

ルナラ・コレッジ」にて一部のワーク

システム×デザイン思考を活用した

を試験的に実施した[*3]。カルナラ・

人材育成プログラムには、まだまだ解

コレッジは全 4 回の講座で、初回は因

決すべき課題が多くある。しかし、カ

果ループ図のグループワークを、2 回

ルナラ・コレッジの参加者からは、文

目にアカデミック・スキルズのレクチ

化芸術の領域としては他にないユニー

ャーを行った。カルナラコレッジにつ

クな講座であり、今後の充実に期待す

ステムが必要であることなどである。

共図書館やデータベースなどの情報探

いて詳しくは、プロジェクト・マガジ

るという声も寄せられ、人材育成プロ

ン『Artefact』で紹介している。

グラムへの新たなアプローチ方法とし

因果ループ図をやや単純化して述べ

て一定の評価を得たと考えている。今

るなら、活動の構成要素間の因果関係

後は既存の課題を解決するとともに、

をループとして視覚化することによっ

「都市のカルチュラル・ナラティヴ」

て、活動が抱える問題を解決するレバ

プロジェクトの多様な専門領域を活か

レッジ・ポイントを見出す手法だ[ *4]。

したフィールド・ワークとの組み合わ

このワークを行うことにより、自らが

せなども検討してゆきたい。

関心を持っている対象を取り巻く要素 を知り、その関心を俯瞰的に捉えるこ とができる。アカデミック・スキルズ に関しては、慶應義塾大学教養研究セ ンターの大学生向け講座を下敷きに、 情報探索の手法に焦点をあてた講義を 行った。 [ *4 ] 因果ループ図(SDM 研究科 スライドより)

36


column

地域の歴史や文化を体験し、その価値を広い視野で捉え、

絡や配布資料は日英バイリンガルで提供し、日本語でのレ

国際的に発信する。そのような人材を育てるために、慶應

クチャーには英語通訳アシスタントが入った。オリエンテ

義塾大学アート・センター(KUAC)の「都市のカルチュ

ーションでは、ワークショップ概要説明の後に、RAN の

ラル・ナラティヴ(通称カルナラ)」プロジェクトが 2018

概要を事務局担当者から映像資料を交えてお話しいただい

年度より始めたのが「カルチュラル・コミュニケーター・

た。参加者には次回のワークショップに備えて、現代アー

ワークショップ」である。今年度は六本木アートナイト

トの展覧会や芸術祭への関心を増やすための既存の発信方

(RAN)2019 との共同企画「アートナイトを語る─ My Nig

法を調べる課題を出した。

ht Cruising」ワークショップが実現した。昨年度の修了 生を対象に、この一夜限りのアートの祭典をフィールドと

既存の枠組みを超えた情報発信のアイディア

して、現代アート文化体験の価値を共有する効果的な発信

昨年度に引き続き、慶應義塾大学システムデザイン・マ

方法を実践的に学ぶ機会を提供し、六本木エリアにある美

ネジメント研究科の鳥谷真佐子氏にご協力いただき、「ア

術館等の文化施設や現代アートへの幅広い学生層の関心を

ート・イベントへの学生の

増すことを目的とした。本稿の前半ではワークショップの

参加・関心を増やすにはど

内容を詳しく振り返り、後半では今回の連携の意義を大学

うしたらいいか?」をテー

側の視点から報告する。

マとして、システム×デザ

RAN担当者と学生がフラットに議論する

イン思考の手法の一つであ ワークショップ概要

る2×2マトリックスを用

2019 年 4 月から 6 月にかけて開催されたワークショップ

いたグループ・ディスカッ

は、昨年度の三部構成(思考編・取材編・発信編)にアー カイヴ編を加えた四部構成をとった。10 回目の節目を迎 えた RAN がアーカイヴに高い関心を寄せていることに加 え、カルナラのプロジェクト・メンバーをつなぐアーカイ ヴ活動(巻頭言参照)について理解を深める機会にもなる からだ。第1部(今年度は理論編とした)では、アート・ イベントの効果的な発信方法を探るシステム×デザイン思 考ワークショップと、現代アートとアーカイヴをテーマと したトーク・セッションを開催した。第2部の取材編では、

RAN 事務局長に運営に関するお話を伺い、事前にプラン を練ってから RAN 本番に参加した。第3部の発信編では、 それぞれの取材記録をもとにブログ記事を執筆し、編集を 重ねた後に公開した。第4部のアーカイヴ編では、活動全 体をアーカイヴという視点で振り返り、ブログ記事を効果

グループで2×2マトリックスを作成

的に発信する方法について話し合った。最後に、RAN 実

ションを行った。RAN 事務局の皆さんにもご参加いただき、

行委員会と KUAC 連名の修了証を授与した。

既存の発信方法を書き出して、面白い二軸を設定して分類 し、今まで誰も気がつかなかったことを見出し、問題を定

オリエンテーション

義し直す。ユニークな問いを立て直すことで、より創造的

今年度もあらゆる学部(文・法・商・経済・環境情報学

かつ革新的な解決法を導き出す方法だ。その結果、「情報

部)から幅広い学年(学部 2 年生から博士課程まで)の学

を共有する心理的ハードルを下げるには」「捨てたくなく

生たちが各国(インドネシア、カナダ、韓 国、中国、日本、フランス、ポーランド、 モロッコ)から 14 名集まった。参加者に 了承を得て基本の進行は英語としたが、連

六 本 木 ア ー ト ナ イト 2 0 1 9

「 の旅、 の夢」 を語る 文・市川佳世子

(慶應義塾大学アート・センター プロジェクト・マネージャー)

六 本 木 ア ートナイト 2 0 1 9 「 夜 の 旅 、 昼 の 夢 」 を 語 る

column

PROJECT 04

37


column

なるチラシを作るには」「既存の宣伝方法はビジュアルに

慮してイベント企画を実行

偏りすぎているのでオーディオをもっと使ってはどうか」

に移していく運営のプロセ

といった新たな発想が生まれてきた。

スを知ることで、学生たちの

RAN へのイメージも変わ 夜のアーカイブ、芸術のドライブ

ったようだ。

RAN のような一過性のイベントをどのように記録して 残していくのか。現代アートとアーカイヴについて理解を

My Night Cruising

深めるため、場所や歴史を丁寧にリサーチし、独自の関係

プランを練る

性を導き出し再構築する作品を発表しているアーティスト

現代アートとアーカイヴ、

Google Classroom を利用してプラン提出、 ワークの振り返りなどを行い、ポートフォリ オを作ってゆく

の田村友一郎氏と KUAC のアーキヴィストの久保仁志に

そして芸術祭の運営に関して理解が深まったところで、学

よるトーク・セッションを開催した。アーカイヴには断片

生たちは刷りたての当日プログラムを熟読して RAN を巡

的な記録や情報が写真、文字、映像など様々な形で集めら

る計画を立てた。事前に提出してもらったプランには、見

れている。それらを編集して残していくアーカイヴの役割

たい作品を詳細かつ網羅的に記したものもあれば、パフォ

の大切さや、作品の中で記録がつなぎ直され、新たに意味

ーマンスを中心に参加するもの、インクルーシブツアーに

づけられていく面白さが学生の印象に残ったようだ。現代

注目したもの、偶然の出会いに期待して最低限の作品や場

アートを文章や写真で伝えることの難しさ、どのような情

所のみをメモしたもの、さらには「わらしべアートの旅」

報を集め、そこから何を切り取って誰に向けて発信するの

を掲げ、当日他の参加者におすすめの作品をきいて回ると

かという問題を考えるきっかけともなった。また、トーク

いうユニークなものまであった。

は日本語で行われたが、内容を随時英語で要約して Goog

le docs で共有する実験的な英語サポートを提供した。

「道連れ」をともなって六本木アートナイトを巡る  参加者にはそれぞれ友達や家族など「道連れ」をともな

六本木アートナイト運営の裏側を知る

って、自分のプランを語りながら RAN を巡ることを推奨

RAN 本番に参加する前に、事務局長の三戸和仁氏に運

した。そして随時、写真やメモ、あるいは追跡アプリやハ

営に関するお話を伺い、事前に学生から寄せられた多岐に

ッシュタグ #iamatran (I am at RAN) 付き SNS 投稿を活

渡る質問に網羅的にお答えいただく機会を設けた。六本木

用して網羅的な記録を取ってもらうことにした。RAN に

はアートを中心に据えた街づくりを進め、文化都市として

携わるの皆さんは、学生がどのよ

の東京をアピールすることに貢献しようとしているが、な

うな作品やイベントに興味を持っ

かでも RAN は「誰にでも親しめるアート」を意識し、た

たかということはもちろん、合間

くさんの人との関わりを大切にしていること、そして運営

にどこで休憩して何を食べて過ご

者自身が新たなアートや人との出会いを楽しんでいること

したのかも含め、彼らの総合的な

を実感し、アートによる街づくりの仕事に魅力を感じた学

体験に関心を示していた。当日は

生も多かった。 一夜限りの「大人の文化祭」 のような

チューターも会場を巡回しながら、

RAN は、美大出身者の同窓会のような場にもなっている

ハッシュタグ付きの投稿をモニタ

そうで、主催者の意図とは別に自然に変化している部分も

ーしつつ取りまとめるなどしてい

ある。大々的な

たが、それぞれが思い思いに過ご

広報は行わず口

した当日の様子は後日明らかにな

コミを中心に広

った。

がってきたとい

事務局長へのインタビュー

うのも興味深か

ブログ記事の執筆、編集、

った。様々な人

そして発信

とビジョンを共

記憶が新鮮なうちにアートナイ

有し、 安全、費

ト・クルージングの体験を共有す

用、行政面に配

るために、RAN の次の週早々に

六 本 木 ア ー ト ナ イト 2 0 1 9

「 の旅、 の夢」 を語る 38

Medium に掲載された記事 (https://medium.com/@culnarra.interns)


それぞれの写真やメモなどの記録を持参 して教室に集まった。それぞれの体験を 写真やビデオを交えて共有していくと、 ばらばらのピースが繋がり RAN の全体 像が浮かび上がるようだった。その後、 3週に渡ってライティング・セッション を行い、ブログ記事の草稿提出、チュー ターのフィードバックを参考にした原稿 の編集、そしてブログ・プラットフォー ム Medium への原稿アップロードを行 った。RAN 事務局や広報チームの皆さ んも目を通してくださり、いただいたフ ィードバックをもとに最終的な修正と編 集を行い、いざ配信を始めた。 アートナイトを語り続けるための アーカイヴ  総括として、RAN 事務局の皆さんに もご参加いただき、今回の活動をアーカ イヴの視点で振り返るディスカッション の場を設けた。学生の最終成果物である ブログ記事が SNS などを通じて共有さ れ、繰り返し参照されていくことの意義 について話し合った。技術的な観点から は、現代アートを扱う際に気をつけるべ きイメージの著作権の問題を取り上げた。 例えば、イメージの適正な再利用を促進 するクリエイティブ・コモンズのライセ

学生・チューターによって撮影された RAN 当日の様子

ンスを表記することで、情報の拡散がし やすくなる。また、コンテンツのプロモーションに効果的

方々と直接対話する貴重な機会となった。学生・教員・社

なデジタル・ツールの活用も検討した。デジタル発信した

会人がフラットに話し合う場が生み出されたことが連携の

情報は、それぞれのプラットフォーム上でアーカイヴを構

大きな意義であったと思う。これは、まさに 2019 年9月に

築していく。一つ一つの素材が検証され、再度組み合わさ

京都にて開催された日本初の国際博物館会議(ICOM)大

れ、新たな物語を再構築していく。アーカイヴは物語を語

会の、「様々なコミュニティをつなぐ文化的なハブとして

り続けるための仕組みであるのだ。

のミュージアム」というテーマにも合致し、今回の連携の

今回の六本木アートナイトとの連携の意義を、大学側の

成果を大学ミュージアムの国際委員会(UMAC)での報

視点から振り返ると次の5点にまとめることができる。

告に繋げることができた。

人的交流の拡大

現代アートとアーカイヴへの関心を深める

第一に、今回のワークショップは、学内外での人的交流

第二に、KUAC が専門とする現代アートとアーカイヴ

を拡大させるまたとない機会となった。学生にとっては、

への関心を深める機会を創出することができた。特に今回

普段の授業やサークル活動とは異なる場で、アートを通じ

の連携から実現したトーク・セッションは、ワークショッ

た新たな交流ができただけではなく、RAN の運営を担う

プ受講生だけではなく一般の方にもご参加いただき、アー

六 本 木 ア ートナイト 2 0 1 9 「 夜 の 旅 、 昼 の 夢 」 を 語 る

column

PROJECT 04

39


は、「大学提供の」「文化と国際 コミュニケーションを組み合わ せたインターンシップ」が珍し いという理由で多くの学生の関 心を捉えている。RAN に関わ るプロフェッショナルと広報に ついて話し合い、学びを深め、 共に新たな発信方法の可能性を 模索し、自分の書いた文章をブ

ICOM Kyoto での発表

友人と RAN に参加する学生

カイヴの活動とアーティストの活動・関心の重なり合いを

というプログラムは、大学の授業の枠を出て、社会に一歩

より広く伝えることができた。そもそも現代アートに馴染

踏み出すものである。複数言語による進行も、通常の語学

みのない学生も多いようで、 身近な地域で開催される

の授業とは異なり、言語障壁を乗り越えての対話を試みる

RAN をきっかけに、もっと現代アートについて知りたい、

より実践的な機会となり、様々な困難を実践の中で克服す

普段はアートに関心のない友達や家族を誘って出かけよう、

ることが学生の自信につながっている。学生が社会に出た

ログ記事として社会に発信する

と思った学生もいたようだ。また、留学生にとっては、自

ときに実際に必要となるスキルとは何か、大学は社会にど

分の国や海外で行われている現代アートのイベントと比較

のような教養やスキルを備えた人材を送り出すことができ

しながら RAN を体験し、地域の特色や活動についても考

るのか、大学での教育のあり方を見直すきっかけとなった。

えるきっかけになったようだ。RAN をフィールドとする ことで、一過性のイベントであるがゆえにアーカイヴが持

学生コンテンツの社会発信

ち得る重要性について具体的に考えることもできた。

第五に、学生が作成したブログ記事というコンテンツを、 自信をもって社会へ発信することができた。RAN の皆さ

実験的な教育実践の場

んが学生の視点に関心を寄せ、学生による新たな発信のあ

第三に、大学の通常の授業とは異なる、実験的な教育を

り方の可能性を信じてくださったことで、多様なテーマの

実践することができた。第 1 部のワークショップに取り入

ブログ記事が仕上がった。中には小説のような創作ライテ

れたシステム×デザイン思考は、そもそも革新的な解決策

ィングもある。公開できる文章に仕上げるため、学生とチ

を模索するための手法で、多様なバックグラウンドの人々

ューターの間で何度もやりとりを重ね、RAN からも的確

がフラットに話し合うことに価値を見出す。これは講義を

なフィードバックをいただいたことで、学生もチューター

中心とする授業や、学部や学年ごとの縦割りの授業ではな

も自信をもって発信できるコンテンツを作り出すことがで

かなか実現できない。さらに、学生と教職員のみならず、

きた。学生にとっては、社会に発信するためには時間をか

社会人も交えて垣根無く話し合う機会のある授業というの

けた編集過程が必要だということを、体験から学ぶ機会に

は非常に限られたケースだろう。ワークショップと見学・

なったようだ。

取材を組み合わせたプログラムを通じて、学生が積極的に

このように、RAN との連携には、大学での学びを社会

ディスカッションに参加し、実体験を通じて知識や思考を

と接続できたことに大きな意義があった。また、今回の活

深めていく過程に立ち合い、サポートすることで、知識の

動を通して、学生は、一つの記事を執筆するにもその背景

伝達を主とする従来の講義形式の教育方法から抜け出し、

には無数のやりとりや記録が存在し、最終的に表に出るの

主体的な学びを促すアクティブ・ラーニングを実践するこ

はほんの一部の情報に過ぎないのだということを、実感も

とができた。

って学ぶことができた。アーカイヴの重要性に気がつき、 メディア・リテラシーを養うことができたのも今回のワー

大学による人材育成インターンシップの機会提供

クショップの成果で、KUAC の研究アーカイヴとしての

第四に、RAN と連携することで、大学という枠組みの

専門性も活かされた。近い将来、このワークショップが提

中で人材育成インターンシップの機会を提供することがで

供するモデルが、新たな人文系の産学官連携授業として大

きた。カルチュラル・コミュニケーター・ワークショップ

学カリキュラムに組み込まれていくことを期待する。

六 本 木 ア ー ト ナ イト 2 0 1 9

「 の旅、 の夢」 を語る 40


04 PROJECT

活動記録

カルチュラル・コミュニケーターを育てる(人材育成)

01

2019年 4月-6月

六本木アートナイト2019との共同企画 「アートナイトを語る―My Night Cruising」ワークショップ 4月5日

オリエンテーション(慶應義塾大学 三田キャンパス)

4月15日

システム×デザイン思考ワークショップ(慶應義塾大学 三田キャンパス)

5月12日

田村友一郎×久保仁志 トークセッション: 「夜のアーカイブ、芸術のドライブ」 (六本木区民協働スペース1・2)

5月15日

六本木アートナイト 事務局長レクチャー・インタビュー(森美術館)

5月25日・26日

六本木アートナイト2019 参加取材

5月下旬〜 6月上旬

成果物の提出、 執筆、編集

6月26日

ディスカッション「アートナイトを語り続けるためのアーカイヴ」 (慶應義塾大学 三田キャンパス)

02

2019年 6月〜7月

人材育成プログラム開発WG オンラインセッション

03

2019年 8月8日

人材育成プログラム開発WG ワーク試行セッション (慶應義塾大学アート・センター)

04

2019年 8月〜2020年 1月 (慶應義塾大学 三田キャンパス) 社会人向けワークショップ 「カルナラ・コレッジ」 8月23日

#1: 物語の軸を作る

10月31日

#2: 物語を組み立てる

11月29日

#3: アイデア・ノートを作る(中間報告)

2020年1月24日

#4: 物語を語る(プレゼンテーション)

活動記録

PROJECT 04

41


プロジェク トを 育てる

[ プ ロ ジェクト 運 営 と モ デ ル 構 築 ]

「都市のカルチュラル・ナラティ

海外のコミュニティに対する発信

ることによって、イベントに参加し

ヴ」プロジェクトでは、学術情報を

としては、2019 年 9 月に開催され

なかった人々にも広く文化資源の魅

軸に、組織の大小や運営母体を問わ

た国際博物館会議京都大会の大学博

力を伝えることができる。これらの

ない柔軟で多様な文化機関の連携を

物館国際委員会(UMAC)において、

記録はまた、観光ボランティアなど、

実現する連携モデルを構築し、将来

人材育成プログラム 「カルチュラル・

地域で文化資源のアウトリーチに取

的には、地域や担い手となる組織の

コミュニケーター・ワークショップ」

り組む人々の教材ともなりうる。自

種類や規模が異なっても共有・実践

について口頭発表を行った。発表内

治体とのディスカッションでは、今

可能なミニマム・セットを定義する

容は、本報告書 p.45 に再録するが、

後の活動を通して、地域文化資源を

ことを目指している。

各国の大学ミュージアムの実務者を

活用し広めてゆく担い手を育成し、

本年度は、プロジェクトの実践や

中心とする参加者からは、公益財団

文化の発信力を面的に向上させるこ

構築しようとしているモデルを国際

法人、企業、寺院などさまざまな組

とへの期待が語られた。

的なコミュニティに紹介し、海外で

織形態をもつ文化機関と、自治体、

プロジェクト運営については、昨

の取り組みを踏まえた意見交換を行

大学が連携する人材育成プログラム

年度に引き続き、中核館における定

うことに注力した。

は、非常にユニークで先進的な取り

例企画会議、プロジェクトメンバー

地域の国際的なコミュニティに対

組みであるとの意見が寄せられ、実

全員が出席する全体会議とメーリン

する働きかけとしては、港区国際交

現にあたっての課題や工夫など、実

グリストによって、企画の検討や情

流 協 会 主 催 の イ ベ ン ト「Let’s

務面での質問も寄せられた。

報共有が行われている。課題となっ

Rediscover Japan(LRJ) 」に協力

また本年度は、プロジェクトの今

ている、よりカジュアルなコミュニ

し、プロジェクトの活動を紹介する

後の展開や実施形式をめぐり、自治

ケーションを生み出しアイデアやノ

とともに、文化資源の学習や活用に

体(港区)と積極的に意見交換を行

ウハウを共有する仕組みについては、

おける課題についてディスカッショ

った。プロジェクトのイベントを記

継続的に検討している。

ンを行った。

録し、テキストや映像として公開す

05 PROJECT


Report

The 3rd All Member Meeting “CulNarra Summer ʼ19 Meetup”

「都市のカルチュラル・ナラティヴ」 プロジェクト

第3回 全体会レポート

報告に引き続き、メンバーによるデ ィスカッションが行われた。翻訳プロ ジェクトに関しては、オリンピック・ パラリンピックにむけ、展覧会やガイ ドツアーに関連したテキストの翻訳を

日時│ 2019年8月5日 15:00-17:00 場所│ 慶應義塾大学 三田キャンパス インフォメーション プラザ2階会議室

「都市のカルチュラル・ナラティヴ」

進めてゆきたいという希望が多かっ

プロジェクトは今年度、新たに東京海

た。ただしコンテンツによっては高度

洋大学をプロジェクト・メンバーに迎

な専門的知識が必要であり、また日本

えた。実行委員長の内藤正人からの挨

語のニュアンスをどれくらい保存する

拶に続いて、新規メンバーの紹介と出

かなど、翻訳者の選定や翻訳手法につ

席メンバーの自己紹介が行われた。

いてじっくりと検討する必要があると

2018 年の活動を簡単に振り返った

の指摘もあった。

後、続いて 2019 年度の活動計画が確

さらにウェブサイトでの情報提供に

認された。既に終了したイベント、進

ついては、各館における取り組みをめ

行中・準備中のイベントや調査計画に

ぐり意見が交換された。ウェブサイト

ついて説明が行われた(各活動の詳細

では、コンテンツ更新のために CMS

については、本報告書の該当セクショ

( Contents Management System )

ンを参照のこと) 「 。江戸前の海と文化」

が導入されていることが多い。しかし

「国際文化会館と三人の建築家たち」

文化機関でそれぞれどのようなシステ

といった講演会や、ドキュメンタリー

ムを使っているか、情報が共有される

映像企画の方向性、ウェブサイト制作

ことは少ないため、技術的な情報共有

の進捗状況などが共有されたほか、1

ができる場があるとよい、という意見

ヶ月後に控えた ICOM UMAC 国際

があった。

コンファレンスと文化機関ツアーにつ

プロジェクトの目的や活動について

いて、各メンバーが協力するプログラ

も、改めて議論された。 「都市のカル

ムが改めて確認された。

チュラル・ナラティヴ」は、様々な文

またアウトリーチの取り組みとし

化機関のアーカイヴ的な活動を、広く

て、港区国際交流協会主催の在住外国

一般に開いてゆくことを目的の一つと

人 向 け 講 演 会「Let’ s Rediscover

している。展示やイベントには人が集

Japan」の中で、英語にてプロジェク

まり注目されやすいが、その背後にあ

トの紹介を行ったことが報告された。

る日常的な活動の積み重ねを伝えるこ

加えて港区の依頼を受けて、プロジェ

とによって、アーカイヴ活動を前景化

クトにこれまでご協力いただいた区内

することの重要性が再度確認された。

の文化施設やカルナラの活動を一般の

本プロジェクトのもうひとつの大き

方にもわかりやすく紹介する「カルナ

な役割に、 連携を促進する機能がある。

ラ・ビギナーズガイド」を制作してい

異なる領域のメンバーが集まることに

ることが紹介された。

より、単独では解決できない問題に共

「 都 市 の カ ル チュラ ル ・ ナラティヴ 」 プ ロ ジェクト 第3回 全 体 会 レ ポ ート

Report

PROJECT 05

43


同して取り組むことができる。同じ関

「一緒にやりませんか」 「一緒に考えま

心目的を持つ施設が長期的に協力し合

せんか」という呼びかけを気軽にする

って活動を続けながら、本質を探って

ことができる環境作りははなかなか難

ゆくことが必要だろう。

しい。全体会や共同企画を通じてディ

最後に、各館の活動や現在取り組ん

スカッションを重ね、実践的な連携プ

でいる事案などが忌憚なく共有され

ラットフォームとしてプロジェクトを

た。やはりオリンピック関係の話題が

機能させることの重要性を確認した全

多く、訪日観光客等に対応するための

体会であった。

多様なアイデアが紹介された。花火と いけばなの文化プログラムを検討す る、錦絵や和食を紹介するテキストの 翻訳を進める、展示のリニューアル、 施設や文化財を地域や観光の拠点とし て更に開いてゆく計画など、それぞれ の特長を活かした活動が企画されてい ることが分かり、お互いに刺激を受け

出席者│ 小 林 顕彦(味の素食の文化センター) 、 村上 聖一(NHK 放送文化研究所)、 横 田 茂(Japan Cultural Research Inst itute) 、牟田 賢明(泉岳寺) 、磯部 昌子 (草月会)、 松永 博超(増上寺)、 丸山 良(虎屋文庫)、河野 博・川辺 みどり (東京海洋大学) 、内藤 正人・渡部 葉子・ 後藤 文子・本間 友・松谷 芙美(慶應義 塾大学アート・センター) 司 会│渡部 葉子

るだけでなく、協働に向けた糸口をつ かむこともできた。  それぞれの活動の課題や取り組みを カジュアルに共有することは、専門的 な経験や知識に基づいたノウハウを交 換し、共同企画のアイデアを得る貴重 な機会となる。 しかし更に一歩進んで、

全体会での活動報告より:泉岳寺へのガイドツアー

44

昨年度の活動報告より:ギャラリーと公共性


The University Museum as a Cultural Communication Hub Connecting Local Sectors Yu Homma and Kayoko Ichikawa

Introduction

launched a collaborative project

many institutions seem to share

In this presentation, we would like

with local cultural sectors, the

similar concerns, it is often difficult

to introduce the recent practices

Cultural Narrative of a City.

for them to communicate with each other directly due to several

of our project, the Cultural Narrative of a City, focusing on

What We Do in Our Project

reasons. For example, their field

the role of university museum as

The local area of Minato City, whe

of expertise might differ too

a hub connecting local cultural

re Keio University’s Mita Campus

much, and they might have to

sectors and as an experimental

is situated, is a very interesting spa

ask, “why collaborate with this

space for innovative teaching

ce mixed with traditional and conte

institution, and not the other?” Or

and learning. Keio University Art

mporary cultures. Ten member

some institutions cannot easily

Center functions as an art research

institutions of our project reflect

collaborate with religious bodies,

centre, museum, and archive at

the diverse nature of the city: Zojo

such as temples and shrines.

Keio University in Tokyo. In

ji and Sengakuji temples; Toraya Ar

addition to organising art-related

chives and Ajinomoto Foundation

Universities with their universal

events such as exhibitions, we

For Dietary Culture; NHK Museum

nature and neutral position can

have been engaged in the creation

of Broadcasting/NHK Broadcasting

bridge the institutions with

and management of archives of

Culture Research Institute; Sogetsu

different backgrounds and

Japanese contemporary art since

Foundation; Japan Cultural Resear

cultures, help them collaborate,

1998.

ch Institute (JCRI); and Museum of

and most importantly, share the

Marine Science, Tokyo University

idea that the research and creative

The Aim of Our Project: The Cultural Narrative of a City

of Marine Science and Technology.

activities should be distributed

Needless to say, every cultural

In line with the project’s motto

Narrative of a City project has now

object is supported by creative

“Disclose Culture and Research,”

successfully started connecting

activities and research. Documents

the members work together

various institutions. Our next

of such activities are stored in

on events, publications, and

concern is how to make this project

archives and libraries. However,

public relations utilising social

sustainable.

not many people know how to

networks. Last year we also

access these resources related to

experimented with the production

cultural objects. As an art archive

of video documentaries. In the

Cultural Communicator Workshop 2018: Think, Research, and Write

and museum in a university, we

course of this project, we have

The sustainability of the project

have been hoping to make such

rediscovered the important role

depends on the number of

resources more visible to the

of university museums in local

individuals who proactively visit

public. Therefore in 2016, we

cultural communities. Although

the local cultural institutions,

widely to the public. The Cultural

T h e U n i ver si ty M u s e u m a s a Cu lt u ra l Com m u n i ca t i on Hub Con n ec ti n g Loc a l Sec tor s

Summary

PROJECT 05

45


discover the value of the resources,

importance and richness of

sent their questions to the staff at

and to communicate to wider

exchanging opinions by making

the institutions. Each institution

audiences. As a university museum,

effort to overcome language

generously organised a special visit

we came up with the idea to

barriers. The workshop was divided

programme tailored to students’

design a workshop to develop

into three parts.

interests, including an exceptional

such individuals, whom we call

opportunity to take a close look

“Cultural Communicators,” and

In Part One, we collaborated with

at some of the materials that are

naturally we started working with

Dr. Masako Toriya from Keio

usually not freely accessible. The

our own students. Keio University

Graduate School of System Design

interviews with experts in each

is designated as one of the top

and Management and organised a

cultural field provided further

global universities in Japan and

workshop for group discussions

insights to deepen the students’

welcomes students from various

using methods of system and design

research interests.

countries. Our workshop entitled

thinking. The Value Graph allowed

the Cultural Communicator

us to visualise the higher purpose

Finally, in Part Three, the students

Workshop, which ran from October

of international communication: to

shared their research results based

2018 to March 2019, brought

embrace diversity to achieve world

on their visits and wrote up articles

together around 40 international

peace. The Customer Value Chain

for our project magazine, blog

and home students.

Analysis was useful to identify

or SNS platforms. Based on the

many stakeholders involved in

feedback they received from the

The workshop was quite unique for

cultural activities and to analyse

tutors and research staff at the

being a university-based internship

various values circulating among

cultural institutions, they rewrote

combining cultural experience

them. Through this group work,

and edited their texts several times.

and international communication.

the students gained a broader

We felt that this academic approach

It attracted students from a wide

perspective and learnt the

towards writing is increasingly

range of grades, from various

importance of visualising and

important because nowadays people

faculties, and from eleven different

sharing ideas.

can easily publish their opinions

countries. The tutors provided

through social media. At the same

language support to facilitate

In Part Two, the students were

time, the tutors also learnt from

multilingual communication in

divided into three groups and

students some fresh points of view

Japanese and English. We also

visited the Ajinomoto Foundation

and effective ways to communicate

encouraged each student to speak

For Dietary Culture; the NHK

through these new media.

in the language he/she speaks more

Museum of Broadcasting; and the

comfortable. Despite the challenge,

Toraya Archives. Prior to the visits,

Our professional development

the students soon realised the

they did their own research and

workshop encouraged students’

46


active participation and provided

Two, they had an interview with

religious, historical, and business

opportunities to deepen their

the management team and had a

sectors in the local area; and to

knowledge and learning through

valuable opportunity to directly ask

provide an experimental space

experience. Through this student-

questions about the management

for innovative teaching and

centred learning model, the students

of such a big cultural event. In Part

learning. The workshop created a

developed creative thinking and

Three, each student wrote a blog

co-learning environment for both

intercultural communication skills,

article draft, which was rewritten

students and professionals. In

which are increasingly required

and edited several times. Thanks

this way, university museum can

in the complex society of the

to the close collaboration with

truly become a communication

globalising twenty-first century.

the organisers of Roppongi Art

hub where mutual learning occurs

Night, the articles became good

connecting people inside and

Collaboration with Roppongi Art Night 2019

quality contents. The tutors at

outside diverse cultural sectors.

the university could be confident

The important role of university

As a sequel to the Cultural

with the materials produced by

museums is to involve citizens

Communicator Workshop 2018,

the students because they were

and to make cultural activities

we ran another workshop this year

meticulously checked by the

sustainable by providing the

from April to June in collaboration

Roppongi Art Night staff who are

citizens with opportunities to gain

with Roppongi Art Night 2019, a

specialised in public relations.

necessary skills to discover and

one-night contemporary art festival

Careful editing of the writing and

communicate cultural values. To

running annually in the past eleven

feedback from professionals outside

widen participation, we have also

years.

the university also gave students

started a new workshop for citizens

great confidence too. In Part Four,

entitled Culnarra College 2019.

It took the same three-part structure

we concluded by thinking about

with an additional part focusing

how these materials could be

on archiving. In Part One, once

archived and utilised in the society

again with Dr Toriya, we organised

as records of an ephemeral event.

( This article is based on the presentation at UMAC 2019 Kyoto on 4 September 2019.)

a system and design thinking workshop. This time, the Roppongi

Conclusion

Art Night staff also joined the

To conclude, through our

students to discuss creative ways to

project and workshops, we have

promote contemporary art events.

demonstrated that a university

The students joined a talk event to

museum can take advantage of

start thinking about contemporary

its universal nature and neutral

art and creating a narrative. In Part

position to connect various

T h e U n i ver si ty M u s e u m a s a Cu lt u ra l Com m u n i ca t i on Hub Con n ec ti n g Loc a l Sec tor s

Summary

PROJECT 05

47


05 PROJECT

活動記録

プロジェクトを育てる(プロジェクト運営とモデル構築)

01

2019年 5月10日

プロジェクト企画会議

02

2019年 7月20日

Let’s Rediscover Japanでの発表(三田NNホール) 港区国際交流協会主催の在住外国人向け講演会「Let’s Rediscover Japan」の中で、英語にて プロジェクトの紹介を行った。

03

2019年 8月5日

第3回全体会議(慶應義塾大学) 本年度事業のキックオフミーティング。プロジェクトメンバーの出席のもと、本年度の事業計画、 各メンバーの役割分担について確認。あわせて、各メンバーの個別の活動予定やプロジェクトの 目的についても議論した。

04

2019年 8月20日

港区文化芸術ネットワーク会議におけるプロジェクト紹介(港区役所) 港区内で、文化芸術に関わる活動を行っている多種多様な主体をメンバーとする「港区文化芸術 ネットワーク会議」に出席。出席者と情報共有をするとともに、プロジェクトの紹介を行った。

05

2020年 9月4日

UMAC 2019 Kyoto(ICOM Kyoto)での発表(稲森記念会館) “The university museum as a cultural communication hub connecting local sectors”と題 して、プロジェクトの 2018 年の活動の中から、カルチュラル・コミュニケーター・ワークショッ プを紹介。

06

2019年 10月24日

プロジェクト企画会議

07

2020年 2月7日

自治体との打ち合わせ:港区(港区役所) 2020 年度のプロジェクト計画と、その後の展開について港区の文化芸術担当者と打ち合わせを行った。

08

2020年 2月21日

第4回全体会議(慶應義塾大学)

48


Introduction

Minato city is a place where

an environment where a variety of

Cultural Research Institute

abundant local resources from past

communities can enjoy the dynamic

[contemporary art and cultural

to present are accumulated.

city culture that goes back and

archive], Sengaku-ji [zen culture],

When looking back into the past,

forth between the future and the

Zojo-ji [Edo temple culture],

Tokai Street, which connected

present. Under such aims, there are

the Sogetsu Foundation [flower

Edo and Kyoto still runs through

three themes:

arrangement and avant-garde art],

the city as National Route 1. At

- Presentation of the ‘Narrative’

the TUMSAT Museum of Marine

Takanawa, the Takanawa gateway

connecting the past and present

Science, [maritime culture] and

is still visible. This area was also

of the urban culture, based on

the Keio University Art Center

known as a city of temples and

scholarly research.

[contemporary art].

daimyo residences. Many of the

- Collaboration with diverse

We share research and educational

temples from the Edo era are

communities, especially with

resources through various events,

still active and former daimyo

different members of the

such as exhibitions, and promote

residences have taken on a new

international community.

furthering people’s understanding

role and function. For example,

- Developing proactive talents.

of and interest in cultural resources

Akasaka palace was built after the

This may sound like a lot but the

by foregrounding activities related

Tokugawa House. Like this, Minato

project’s motto is in fact simple:

to the archives.

city is rich with historical sites and

disclose culture and research. Our

In this report, five activities that

also accumulates contemporary

interpretation of ‘the Cultural

have implemented this year will

art at the same time. Within just

Narrative of a City’ is about

be described: 1. hosting events

20 square kilometres, there are

making culture and research

introducing city culture; 2.

over 12,000 art spaces and people

accessible to everyone.

creating a platform to transmit

are trying to make new creations

As of March 2020, the members

information internationally; 3.

every day. Thus, Minato city

consist of following ten

producing content; 4. developing

can be considered a city where

organizations: the NHK Museum

a programme for human resource

a wide variety of local resources

of Broadcasting and the NHK

development and 5. modelling

are embraced, by attracting both

Broadcasting Culture Research

and management the project. The

those who are interested in history

Institute [broadcasting culture],

contents produced through the

and traditional culture and those

Ajinomoto Foundation for

project are actively released on

who are interested in modern art

Dietary Culture (Public Interest

online media, such as our website

culture.

Incorporated Foundation) [dietary

and SNS accounts. Please have a

The ‘Cultural Narrative of a City’

culture], Toraya Bunko [Japanese

look at them.

project aims for the realization of

confectionery culture], the Japan

Cultural Narrative of a City 49


Project 01

01

Report

[2019]

26th May ̏ Documentary Film Screening "Minato-e: Notebooks on Cities and Culture˝ Participants: 44 Location: Keio University Mita Campus North Building Conference Hall Speakers: Risa Abe, Fumito Fujikawa, Keiko Okawa Discussant: Hitoshi Kubo (Keio University Art Center)

02

The aims of the ‘Cultural Narrative

and the relationships with local cultural

of the City’ project are to connect

sectors through keynote speeches and

past and present cultural resources,

oral presentations. On the second day,

through the foregrounding of academic

we organized a guided tour, visiting

achievements, and to form a cultural

university museums in Tokyo and local

narrative. The CulNarra! event series is

cultural organizations.

one method for specifically expressing

In ‘Three Architects and International

and delivering this concept to society.

House of Japan’, we focused on the

A series of events (e.g. lectures,

International House of Japan, which

exhibitions, guided tours and workshops

is an important piece of modern

in a wide range of subjects) is being

architecture. Following a lecture by

held that draws upon the diversity of

Professor Hiroshi Matsukuma about

the project members. For example, the

the three architects’ collaboration, we

events cover contemporary art, temples,

viewed the actual architecture and the

architecture, broadcasting, ikebana

garden with Professor Matsukuma and

(Japanese flower arrangement), food and

the International House of Japan staff

Japanese confectionery. The goal is to

as our guides. At Keio University, we

introduce the urban culture developed

held ‘Keio University Mita Campus

in Minato City and its historical and

Architecture Open Day’, which opened

cultural context.

the architecture, including Important

This year, a variety of events including

cultural property, to the public. On

a video screening, an international

the same day we held an English talk

conference, a guided tour and a tour of

event called ‘ArchitecTalk’ to examine

and lecture on modern architecture were

today’s architecture in Tokyo from the

held. The screening of the documentary,

perspective of city planning.

‘Minato-e: Notebook on Cities and

In ‘Rediscovering Tokyo Bay:Maritime

Cultures’, showcased local cultural

Culture of Edomae’, we held a bilingual

resources, which were filmed in 2018.

lecture with English subtitles. A cross-

At the post-talk with the director, we

disciplinary discussion regarding the

shared the background and intentions

Edomae sea and its culture covered the

behind the scenes.

topics such as: the history of fisheries,

In the two-day ‘UMAC Tokyo Seminar:

coastal policy, ‘science café’ cooperated

University museum as cultural

with local residents, Ukiyo-e and

commons’, a conference targeted

realistic paintings in the Edo period.

towards an international audience, we

We have compiled a report regarding

exchanged opinions about the role of

each event in this magazine (Japanese).

university museums as a cultural hub

Please have a look if you are interested in these events.

CulNarra! Event Series 50

9th, 10th September ̏ UMAC Tokyo Seminar: University Museums as a Cultural Commons: Cross-disciplinary Research and Education in Museums˝ Participants: 72 (Conference), 31 (Guided tour) Location: Keio University Mita Campus North and East Buildings Keynote speakers: Yohko Watanabe (Keio University Art Center/Keio Museum Commons), Andrew Simpson ( UMAC/Department of Ancient History, Macquarie University, AUS), Judy Willcocks (Central Saint Martins, London University of the Arts, UK), Kathryn Eccles (Oxford Internet Institute, University of Oxford, UK) Tour Overview Course A: Visiting University Museums Historic Buildings of Meiji Gakuin University and Meiji Gakuin Historical Museum / Waseda University Aizu Museum / Meiji University Museum Course B: Visiting Science Museums of Universities Josai University, Oishi Fossils Gallery of Mizuta Memorial Museum / Intermediatheque (The University Museum of The University of Tokyo) / Museum of Marine Science, Tokyo University of Marine Science and Technology Course C: Visiting Cultural Institutions in Minato Area Sengakuji Temple / Ajinomoto Foundation For Dietary Culture / NHK Museum of Broadcasting

03

3rd October Special Lecture and Guided Tour: Three Architects and International House of Japan Participants: 34 Location: International House of Japan Lecturer: Hiroshi Matsukuma (Professor, Kyoto Institute of Technology)

ArchitecTalk! ̏ Whose Tokyo? The City as a Collective Project˝ Participants: 18 Location: Keio University Mita Campus Ex Noguchi Room Lecturer: Jorge Almazan (Associate Professor, Keio University Faculty of Science and Technology) 04

3rd and 5th October Keio University Mita Campus Architecture Open Day Participants: Ex Noguchi Room (278 people) / The Mita Enzetsu-kan (Mita Public Speaking Hall) (480 people) Location: Keio University Mita Campus Architectural Guided Tour

3rd (Thur.) and 5th (Sat.) October 2019 10: 30–12: 00 Participants: 93 ( 34 on 3rd and 59 on 5th) Lecturer: Midori Moriyama (Keio University Art Center) 05

8th December Art and Science Lecture‘Rediscovering Tokyo Bay:Maritime Culture of Edomae’ Participants: 73 Location: Tokyo University of Marine Science and Technology, Shinagawa Campus Hakuyo Hall Lecturers: Midori Kawabe (Professor, Tokyo University of Marine Science and Technology), Hiroshi Kohno (Professor, Tokyo University of Marine Science and Technology), Masato Naito (Professor, Keio University)


Connect Communities and Promote Communication

Project 02

This year, we focused on delivering

with local cultural organizations. We

information through the website,

took advantage of an event called ‘A

enhancing communication with

Cultural Art Network Meeting in Minato

local organisations and researching

City’, whose members consisted of

activities similar to our project with the

cultural art organisations within Minato

purpose of engaging a variety of local

city. We exchanged opinions with

cultural resources and transmitting the

the person in charge of Minato city’s

information to various communities.

science museum, which is set to open

To construct a production website for

in April 2020, about the possibility

information transmission, we held

of cooperating after the opening. In

evaluative sessions regarding the

addition to this, we interviewed the

prototype that we had made the year

Komyoji Temple, which performs

before with foreign residents in the

a unique ‘open terrace’ project, by

Minato city, overseas students and

opening the grounds to the locals.

local cultural groups. The session with

Furthermore, to expand cooperation in

overseas students has been reported in

the future, we conducted preliminary

detail on p.24. We also asked overseas

research on organisations that

students to write posts for our SNS

implement outreach activities pertaining

accounts (Instagram, Facebook Twitter

to cultural resources within Minato city

under the account name @culnarra) and

and on the examples of their activities. A

looked into the what interested young

summary of this research is provided in

generations and how.

a report on p.26.

We also continued to conduct interviews

Finally, we gathered information

with embassies, taking advantage

about the projects in other districts

of the fact that many embassies are

that had similar aims to our activities

located in Minato city. With the aim of

by participating in the programmes

connecting with the local culture and a

that they hosted. Much can be learned

variety of other cultures, this year, we

from preceding cases, such as from

conducted interviews with officers at the

the Shinobazu Cultural Resource

Embassy of France, Embassy of Malawi

Project, conducted by Taito city and

and Embassy of Armenia. We were

the University of Tokyo, and Hosei

especially keen on cooperating with the

University Edo-Tokyo Research

Embassy of France in the contemporary

Centre’s projects on culture and

art field, since they have been preparing

architecture. Through dialogues and

for ‘La Saison’, the French cultural

event participation, we hope to sustain

festival to be held in 2021 in Japan.

a working relationship with these

Also, to expand the connection within

districts, keeping open the possibility of

local groups, we actively communicated

cooperation in such projects in future.

(Collaboration and Transmission)

01

Report

[2019-2020]

20th July Evaluation of website contents: foreign residents in the community Along with the lecture for “Let’s RediscoverJapan”hosted by the Minato International Association, we introduced a prototype version of the website built in FY2018 and obtained feedback on the web design and posted contents.

02

03

30th August Interview for the collaboration: Embassy of France

1st October Evalation of website contents: local cultural organizations (Shibaura House) We requested Mr. Masaru Ito, the representative of SHIBAURA HOUSE to share his opinion on the website on how to provide event information to those who need it.

04

05

29th October Interview for the collaboration: Embassy of Malawi

November Survey on outreach activities related to local cultural resources began. Surveys on outreach activities related to cultural resources such as city walks and lectures conducted by various groups and individuals in the area began. In this fiscal year, we conducted preliminary surveys over wider areas to roughly grasp the contents of regional outreach activities.

06

07

08

10th November Development of the production website began.

22nd November Interview for the collaboration: Embassy of Armenia

24th February 2020 Evaluation of website contents: international students Interviews on the information necessary to utilize local cultural resources were held with two international students who have been staying in Japan for a long time and have much experience as tour guides for their friends and acquaintances.

09

27th February Regional cultural resources outreach survey report session

[ Project 01 ] Cu lN a rra ! Eve n t S e ri e s [ Project 02 ] Con n ec t Commun i ti es a n d Pr omote Commun i c a ti on

51


Project 03

What kind of contents should we

and the human resources development

prepare in order to deliver local cultural

programme is important to secure the

resources to a variety of communities

continuity of content production and

by using existing academic resources?

to evoke interest in young generations.

In this year’s project, we worked on

This is something we would like to

text translation, documentary video

continue in future.

production and co-producing content

In the documentary film production,

with students, based on our activities

we focused on food culture, marine

from last year.

culture and traditional crafts. Last year,

This year’s focus for the text translation

we planned to show the videos mainly

was ‘information that visitors actually

on the website. However, after the

see and pick up with their hands’.

completion of the documentaries, there

We translated texts, such as the scripts

were many opportunities to show them

for guided tours of Sangedatsumon

on large screens (i.e. video screenings

(Sanmon) in Zojo-ji Temple (a piece

and use of the documentary at events

of Important Cultural Property) and

held by member organisations).

Kyozo (a building that stores Buddhist

Therefore, starting this year, we also

treasures), as well as descriptions inside

took large-screen viewing into account

the YOKAN Exhibition by Toraya

when producing our documentaries.

Bunko (Toraya Archives).

Last year, the length of the videos varied

The project members reported an

from 10 to 40 minutes, but this year

increase in numbers of foreign visitors,

we tried to make the average length

so we felt that translations of texts that

approximately 40 minutes.

were directly relevant to the event would

Furthermore, we released recordings of

be highly effective.

the ‘Three Architects and International

As a part of human resources

House of Japan’ lecture, which

development, Keio University’s

discussed the local architecture, as well

overseas students were involved in the

as ‘Rediscovering Tokyo Bay: Maritime

process of proofreading excerpts from

Culture of Edomae’, an art and science

the lecture, ‘Rediscovering Tokyo Bay:

lecture. Please see the Project 01 report

Maritime Culture of Edomae’, and the

for details on each event. Sharing

translation of a text related to local

recordings offers important potentials

temple culture. The blog articles, written

for making use of the lectures and events

by fourteen students who participated

in a broader scope. This is one of our

in the ‘Talk About Roppongi Art Night:

trials for improving the sustainability of

My Night Cruising’ workshop are

our events. In the future, we would also

also published online. Cooperation

like to consider adding subtitles.

01

(Content Production) 52

[2019-2020]

Directors of short documentary films met together at this meeting. Participants: Keiko Okawa, Risa Abe, Fumito Fujikawa. Based on the works produced in F Y2018 and the feedback from the screening in May, we reviewed this year’s shooting plan. We decided to make films not only for online platforms but also for larger screens, and examined the themes and subjects of cultural institutions to be filmed. 02

5th August Documentary films on cultural resources : Themes were decided. The subjects for this fiscal year are “marine culture”, “traditional crafts”, “food culture and special library”. We requested the cooperation of the Tokyo Marine University Marine Science Museum, Living National Treasure Kazumi Murose, and Ajinomoto Dietary Culture Library of the Ajinomoto Foundation For Dietary Culture

03

September Creation and translation of texts on cultural resources. An introductory discussion with the project members on the contents of local cultural resources. While focusing on information that visitors could see and touch, students received job training while involved in writing some texts for the displays.

04

24th September Production of documentary films on cultural resources began. After preliminary interviews of the targeted cultural institutions and artists, the filming of the documentaries began.

05

between the content production team

Visualise Culture

Report

22nd July Documentary film on local cultural resources: Kickoff meeting (Keio University)

16th January 2020 Documentary films on cultural resources: Rush film sharing and discussion (Keio University) Directors brought and shared their own footages and rush prints and discussed editing and its issues.

06

March Completion of documentary films on cultural resources and translation of texts on cultural resources .


Produce Cultural Communicators

Project 04

To deliver our local culture to a variety

Night Cruising’. People involved in

of communities, we need human

culture, the students and the members

resources to carry out the activities. At

of the Roppongi Art Night office, were

the moment, communities including

all able to interact beyond each group.

the cultural institutions serving as

We were able to develop ‘experimental

content holders (e.g. art galleries/

education’ as the new internship

museums), companies such as

scheme for the students and the cultural

publishing companies and art NPOs

organisation. We were thereby able to

are taking on this role. At the ‘Cultural

consider the transmission of the contents

Narrative of a City’ project, to support

produced by students via social media in

such transmissions, we aim to create a

more depth. Such successes demonstrate

professional development programme

how this programme was able to show

that utilises the fact that a university is

the strengths joint projects between local

one of the project members.

cultural organisations and the university.

In 2018, we implemented the ‘Cultural

Concurrently to holding CCWS, we

Communicator Workshop/CCWS’,

also organised a working group to

a prototype programme. The main

consider how we could make use of the

participants were domestic and overseas

knowledge gained from the practice of

students from Keio University. This

CCWS (p.35). In the working group,

year, with last year’s implementation

we considered what kind of programme

experience to reference, we have

should be constructed if we expanded

constructed the programme as a joint

the target of CCWS to workers. We

workshop with Roppongi Art Night. In

tried reconstructing the programme

this programme, we aimed to expand

by superimposing a framework based

the target of fieldwork to contemporary

on system and design thinking and

art and introduce the concept of having

the purpose of CCWS (to spread

participants archive the art festival.

the attractiveness of local cultural

Please refer to the column written by

resources). Part of what we considered

Kayoko Ichikawa (p.37) for details on

in the working group was implemented

the CCWS ‘19 ‘Talk About Roppongi

experimentally at ‘CulNarra College’,

Art Night: My Night Cruising’.

lectures targeted for working people,

The project gained a great deal from

which were held jointly with Minato

‘Talk About Roppongi Art Night: My

city.

(Professional Development)

01

Report

[2019-2020]

April - June A collaborative workshop with Roppongi Art Night 2019, ̏ Talk about the Roppongi Art Night-My Night Cruising ̋ 5th April: Orientation (Keio University Mita Campus) 15th April: System Thinking x Design Thinking Workshop (Keio University Mita Campus) 12th May: Yuichiro Tamura x Hitoshi Kubo Talk Session: Night Archive, Art's Drive (Roppongi Residents Collaboration Space 1-2) 15th May: Roppongi Art Night Executive Director Lecture and Interview (Mori Art Museum) 25th and 26th May 25: Roppongi Art Night 2019 Late May to early June: Submit, write, and edit articles 26th June: Discussion “Archive to Keep Talking at the Roppongi Art Night” (Keio University Mita Campus)

02

03

04

June-July Human Resource Development Program Planning WG Online Session

8th August Trial session for Human Resource Development Program Planning WG (Keio University Art Center) August to January 2020 Workshop for citizens, CulNarra College (Keio University Mita Campus) 23rd August: #1 Finding the focus of your narrative 29th November: #2 Constructing your narrative 29th November: #3 Creating idea notes (Interim Report) 24th January 2020: #4 Telling your narrative (Presentation)

[ Project 03 ] Vi s u a l i s e Cu ltur e [ Project 04 ] Pr oduc e Cultur a l Commun i c a tor s

53


In the ‘Cultural Narrative of the City’

such as temples, companies and public

project, we will build a model for

interest incorporated foundations, is a

collaboration that enables flexible

very unique and advanced initiative.’

and diverse collaboration between

They also asked questions on practical

cultural institutions based on academic

issues, such as problems that we had

information. It aims in the future to

faced while planning and executing the

define a core model that can be shared

workshop, as well as what advice we

and implemented even if the type or

had about realisation.

size of the community or organisation in

Also this year, we actively exchanged

charge is different.

opinions with the local authorities

This year, we focused on introducing our

(Minato city) about how the project

project and model to the international

should be conducted in future and what

community and exchanging opinions

kind of plans they expect.

based on overseas initiatives.

By recording the events of the project

As for the international community

and releasing them as articles and

within the local district, by joining

videos, we were able to advertise

the ‘Let’s Rediscover Japan (LRJ)’

the local cultural resources to a

event, held by the Minato International

wide audience of people who did

Association, we introduced our project

not participate in the events. Such

activities and discussed educational

recordings could be used as teaching

opportunities for understanding cultural

materials for people who are involved

resources and tasks for making use of

in outreach activities for local cultural

this knowledge.

resources, such as sightseeing

For delivering information overseas,

volunteers. Through the discussion, we,

we offered oral presentations regarding

along with the local authorities, expect

our human resources development

that the activities involved in this project

program, the ‘Cultural Communicator

can develop human resources who will

Workshop’, at the University Museums

make use of local cultural resources and

and Collections meeting of International

spread them, improving the power of

Council of Museums General

transmission of culture in the area.

Conference, held in Kyoto in September

Regarding the management of the

2019. The content of the presentation

project, as a continuation from last year,

is recorded in this magazine (p. 45).

regular planning meetings by the core

Some of our participants, associated

members, general meetings with all

with university museums in various

project members and communication

countries, have given comments such as,

via emailing list are organised.

‘the joint human resources development

We are continuously considering new

programme between a university, a local

methods of sharing our knowledge

government and local organizations

and ideas through more casual

with various organizational structures,

communication as well.

01

02

03

04

5th August 3rd All Member Meeting (Keio University)

20th August Project introduction at the Minato City Cultural Arts Network Meeting (Minato City Office) Members engaged in a variety of activities related to culture and art in Minato City and attended the Minato City Cultural Arts Network Meeting. The attendees shared information with other attendees and introduced their projects.

05

4th September Presentation at UMAC 2019 Kyoto (ICOM Kyoto) (Inamori Memorial Hall) Under the theme of “The University Museum as a Cultural Communication Hub Connecting Local Sectors”, cultural communicator workshops among the activities in the fiscal 2018 were introduced.

Project 05

54

20th July Lecture and presentation at ̏ Let's Rediscover Japan˝ (Mita NN Hall)

This was the kickoff meeting for this fiscal year's projects. Project members attended the meeting and confirmed the project plans and the roles of each member for the current fiscal year. At the same time, each member’s individual activity plan was shared and the project goal was discussed.

07

(Project Management and Model Construction)

[2019-2020]

The project was introduced in English during the lecture "Let's Rediscover Japan" for foreign residents, hosted by the Minato International Association.

06

Develop the Project

Report 10th May Project Planning Meeting

24th October Project Planning Meeting

7th February 2020 Meeting with the local government: Minato City (Minato City Office) We had a meeting with the staff of the Cultural Arts Division in Minato City regarding project planning for the fiscal year 2020 and the future developments.

08

21st February 4th All Member Meeting (Keio University)



都市のカルチュラル・ナラティヴ ’ 19

CULTURAL NARRATIVE OF A CITY ’19

執  筆

石本華江、市川佳世子、千葉夏彦、

Written by Kae Ishimoto, Kayoko Ichikawa, Natsuhiko Chiba,

本間 友、山根千明

Yu Homma and Chiaki Yamane

編  集

「都市のカルチュラル・ナラティヴ」

Edited by the Cultural Narrative of a City project

プロジェクト(本間 友・新倉慎右)

(Yu Homma and Shinsuke Niikura) and Keio University Art Center

デザイン

福田敬子(ボンフエゴデザイン)

Designed by Keiko Fukuda (Bonfuego Design)

協  力

篠 律子、長谷川紫穂

Assisted by Ritsuko Shino and Shiho Hasegawa

発  行

「都市のカルチュラル・ナラティヴ」 プロジェクト実行委員会 慶應義塾大学アート・センター 108-8345 東京都港区三田 2-15-45

助  成

Published by the Cultural Narrative of a City project and Keio University Art Center 2-15-45, Mita, Minato-ku, Tokyo, 108-8345, Japan +81-3-5427-1621

Tel. 03-5427-1621 Fax. 03-5427-1620 http://art-c.keio.ac.jp/-/artefact

http://art-c.keio.ac.jp/-/artefact

平成 31 年度 文化庁 地域の博物館を中

Supported by the Agency for Cultural Affairs,

核としたクラスター形成事業

Government of Japan in the fiscal 2019

(地域と協働した博物館創造活動支援事業)

“Cultural Narrative of a City in Minato:

「都市のカルチュラル・ナラティヴ in

Activation of Local Cultural Resources through

港区:大学ミュージアムを核とする地

University Museum Initiative”

域文化資源の連携・国際発信・人材育 成事業」 発 行 日

2020 年3月 31 日

31 March 2020

表紙:六本木1丁目付近(撮影:高橋秀人)、歌川広重(二代) 「江戸名所四十八景 愛宕山雪中」

Cover:Roppongi 1-chōme (photo by Hideto Takahashi), Hiroshige Utagawa II, Mount Atago in Snow from the series Forty-Eight Famous Views of Edo.



都市の カルチュラル・ ナラティヴ 2019


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