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データセンター不動産市場における機会

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データセンター 不動産市場における機会

次世代不動産セクターがステークホルダーのDX・GX同時実現を支える

データセンター不動産市場における機会

エグゼクティブサマリー

米国に次ぐ先進国第2位の市場規模を有する日本の データセンター市場は、現在デベロッパー、事業者、 投資家が最も注目する不動産セクターのひとつであ る。地理的優位性や強固なインフラを背景に、世界 有数のデータセンター適地としての地位を確立し、 デジタルトランスフォーメーション(DX)とグリー ントランスフォーメーション(GX)を推進する重要 な産業となっている。

データセンターは東京圏・大阪圏に90%が集中して いることから、政府は「地方創生」「デジタルイン フラ整備計画2030」等で地方分散等を推進する とともに、脱炭素に向けた対応を進めている。AI需 要の急拡大により電力需要が見込まれるなか、ワッ ト・ビット連携による分散型データセンターの実現 に向けて、革新的技術の開発が進んでいる。

供給予定では、東京圏・大阪圏とも既存集積地での 拡大が続く。一方で、新たなエリアの開発も進む。

開発用地では、電力確保済みの用地ではプレミアム がつくなど、データセンターの付加価値が単価を押 し上げている。

金融庁によるデータセンターのREIT組入れ促進の対

応は、セクターの投資拡大・透明度向上の好循環に 資すると期待される。経済産業省による新エネル ギー効率基準導入は、技術の実装による脱炭素化を 一層加速させるだろう。

データセンター事業の戦略的な価値実現には、外部 の専門家との協働が不可欠である。専門知見は、事 業の質とスピードを向上させ、最適な意思決定を支 援する。

近年クラウドとAIが急速に普 及し日常生活の一部となっ た。これらを支えるデータ センターは社会の持続的成 長に不可欠な基盤インフラ である。

浅木 文規 データセンタービジネス

推進室長 キャピタルマーケット

データセンター不動産市場における機会

日本は米国に次いで先進国第2 位のデータセンター市場であり、 堅調な成長が見込まれている

日本は、米国に次ぐ先進国第2位のデータセンター 市場としての地位を確立している。 2023年に日本 のデータセンター市場規模(売上高)は187億米ド ルとなった。予測期間の2024年から2029年までは、

年平均成長率3.3%で成長し、2029年に295億米ドル に達する見通しである(出所:Statista)。

この成長の背景には、国内のインターネット通信 量の増加やAI利用の拡大を含む需要要因に加え、

以下の基礎的な優位性が挙げられる:

• 北米とアジア太平洋地域を結ぶ接続拠点と しての地理的優位性

• 政治的安定性(出所:世界銀行)、

• 低い停電発生率(出所:電力広域的運営推 進機関)

• 高い光ファイバー整備率(出所:総務省)

• 豊富な高度人材(出所:OECD)

MSCI World Index 先進国のデータセンター市場規模の推移及び予測 2017 ~ 2029年(予)

10億米ドル

注釈1: 先進国はMSCI World Index構成国のうち、Statistaがデータを提供する22か国(香港はデータ未対応のため除外)

出所:Statista, December 2024, 世界銀行, 電力広域的運営推進機関, JLLリサーチ事業部, 2025

東京圏と大阪圏は国土面積では

10 %に過ぎないが、データ

90 %が集中しており、災害時等の脆弱性に懸念 データセンター不動産市場における機会

センターの

一方で、課題も抱えている。

東京圏・大阪圏の合計が全国に占める割合は、面 積が10%、人口が40%、GDPが50%程度であるが、 データセンターの立地状況をみると90%を占めて いる(出所:総務省、国土交通省)。斯様な地理 的集中は、災害時等における脆弱性を高めている。

日本は自然災害が発生しやすい環境にあり、今後、 首都直下地震等の大規模災害リスクが想定されて いる。

この課題に対応するため、政府はデータセンター の地方分散を推進している。2021年度より、政府 は企業が東京圏以外にデータセンター等を整備す る場合に、初期投資支援を行ってきた。整備にあ

たっては、レジリエンス強化、通信等の効率化等 を勘案することとし、二圏域を補完・代替する第 三・第四の中核拠点を、北海道と九州のようなエ リアにおいて整備促進する方針が示された。

加えて、地域におけるAI活用を含めたDXの推 進も喫緊の課題となっている。

伝統的集積地

戦略的集積地

注釈1:東京圏は埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県の合計

注釈2:大阪圏は京都府、大阪府、兵庫県、奈良県の合計

注釈3:九州は福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島 県の合計

注釈4:数値は四捨五入している

注釈5:関東地方を参照し、東京圏の都県と茨城県、栃木県、群馬県の合計

注釈6:関西地方を参照し、大阪圏の府県と滋賀県、和歌山県の合計

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生成AI の利用急増により、電力不足への懸念も高まっている

また、ワット・ビット連携による分散型データセ ンターの実現に向けた技術の導入が進んでいるが、 前提となる課題として、生成AI利用拡大に伴う電 力消費の急増により電力不足への懸念が高まって いることが挙げられる。

日本のAIシステム市場は、2028年までに年平均成

長率 29.7%で 2.5兆円に達し(Statista)、これに伴 いデータセンター・半導体工場の電力需要も2034

年までに715万kWに達すると予測されている

(OCCTO)。データセンターは2025-2034年に年平

均成長率32.4%、2025-2029年には同65.1%という急 激な成長が見込まれている。

データセンターの電力消費はGPU搭載サーバーと 冷却装置が大半を占めており、従来技術では電力 効率の限界が顕在化しているため、新たな技術へ

の変遷が求められる。また、AI学習用データセン ターは従来のデータセンターや推論用に比べて低 遅延性の要求が緩和されるという特性があり、こ の特性を活用したアプローチが求められている。

出所:Statista, IDC; IDC Japan 2023, 電力広域的運営推進機関, JLLリサーチ事業部 2025

2023-2028

データセンター・半導体工場の新増設に伴う 個別計上最大需要電力の予測 2025-2034年(予) 万

データセンター不動産市場における機会

AI 時代の新たなデータセンター等整備の政府目標

こうした課題を解決するため、政府は、「地方創 生」「デジタルインフラ整備計画2030」等で データセンターの地方分散と脱炭素化を推進して いる。枢要と目される政策として、次の3つが挙げ られる:

ワット・ビット連携によるデータセンター整備: 電力と通信の効果的な連携によりデータセンター の地方分散を進める

データセンターのワークロードシフト:2030年頃 までにオール光ネットワーク(APN)技術を活用 したデータセンター間の低遅延接続等を実現し、 遅くとも2035年頃には、電力需給状況等を踏まえ

たデータセンターの高度な計算資源の電力負荷の 制御を実現する

GX産業立地におけるデータセンター拠点創出:大 規模なデータセンターの適地等において、GXに不 可欠な企業等を呼び込むためのデータセンター拠 点を5か所以上創出すること目指す

ワット・ビット連携による データセンター整備 データセンターの ワークロード

出所:内閣官房「地方創生2.0」総務省「デジタルインフラ整備計画2030」, JLLリサーチ事業部, 2025

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省電力化・脱炭素推進技術の研究開発事例:IOWN

こうした電力需要急増という課題に際し、ワット・ ビット連携を実現する最先端技術として、IOWN ( Innovative Optical and Wireless Network )光電融合 技術が注目されている。

IOWN(アイオン)構想とは、2019年にNTTが提唱し た、端末を含むネットワーク・情報処理基盤の構想 である。IOWN構想における光電融合技術は、電気信 号と光信号を扱う回路を融合することにより、従来 比100倍の電力効率改善を実現する技術である。低消 費電力・大容量・低遅延を同時に達成し、AI時代の データセンター効率化を可能にする。

IOWNの技術を活用したデータセンターの分散立地に 向けた取り組みとしては、データセンター間接続や ボード間接続に技術を適用することによる、2025年 度からの消費電力量削減が挙げられる。

IOWNのグローバルフォーラムには、発起人のNTT、 インテル、ソニーに加え、楽天モバイル、KDDI等の 国内外団体が参加し、オールジャパンとしての取組 となっている。 出所:総務省「令和6年版

供給予定は、既存のデータセンターが集積しているエリアで 進展していくが、新たなエリアでの開発も進んでいく データセンター不動産市場における機会

データセンターの地方分散が推進されているもの の、現時点では、供給予定は特定のエリアで進展 している。一方で、新たなエリアでの開発も進む。

東京圏では、多摩や印西などを中心とする既存の クラスターがストックの拡大を牽引している。背 景には、強固な地盤や電力供給等のインフラ環境 が整備されていることが挙げられる。印西につい ては、変電所新設計画が進むものの、 2030年に向 けて電力供給は逼迫状況にある。埼玉は用地が豊 富であるが、供給力確保・系統整備に一定の期間 を要する場合がある。また、昨今、地域共生の観 点から、近隣住民の理解を得る重要性が指摘され ている。

大阪圏では、ベイエリアはAIデータセンター需要 の恩恵を受ける新たなエリアのひとつである。堺 市の工場跡地では既存の電力供給を利用し、大規 模AIデータセンターが構築されている。京阪奈も 西日本で最も開発の進むエリアの一つとして、今 後もストックが増加する予定である。

注釈:供給予定とは建設中・計画中DC。今後変更等が行われる場合がある。

出所:JLLリサーチ事業部 2025 東京圏の供給予定, 2025年以降

電力供給等のインフラの利用可能性、売主の属性を反映 データセンター不動産市場における機会

用地の単価は、データセンターの付加価値、立地、

開発用地(再開発目的の物件取得を含む)の売買 事例をみると、価格はデータセンターの付加価値 に加え、立地、電力供給等のインフラ環境、売主 属性等の影響を受けている状況がうかがえる。

東京圏では、開発用地の単価が取引年の地価公示 比最大770%のプレミアムを示した。既存データセ ンターが集積する多摩地区・相模原エリアにおけ る既存物件の所在する売買であった。電力供給が 確保されている用地に対する投資家、デベロッ パーの旺盛な意欲を反映した。

大阪圏では、2020年以降の取引において、単価は 同最大110%のプレミアムを示した。ベイエリアに おける、用途変更を目的として工場が取得された 事例であった。電力供給に要する期間は、東京圏 の8-10年と比較して大阪圏は 3-5年と短期であるも

のの、投資家、デベロッパーは開発期間の長期化 を回避しつつ用地不足に対処している。

地方公共団体からの取得では、単価は地価公示水 準となっており、コスト抑制の手段となっている。

データセンター不動産市場における機会

今後は、投資拡大と不動産透明度改善の好循環と 技術実装による脱炭素化が進む見通し

金融庁は、不動産投資信託(REIT)において、データ センターの一定の設備が不動産に該当すると明確化し た。REITは法令上、不動産等の特定資産に50%超を投 資する必要がある。これまで、データセンターのうち 高い割合を占める設備が特定資産に該当するかが不明 確であったため、国内におけるREIT組成の阻害要因と

なっていた。データセンターのREIT組み入れが促進さ れることで、投資機会の拡大と不動産透明度の改善の 好循環が期待される。

経済産業省は、データセンターに対してより厳格なエ ネルギー効率基準を導入する。既存制度の2030年度事 業者平均PUE≦1.4の努力義務から、新規制度では2029 年度以降の新設データセンター(一定規模以上)につ いてPUE≦1.3の遵守義務(稼働後2年経過以降)に強 化される。データセンターの電力消費の大半はGPU搭 載サーバーと冷却装置が占める。冷却装置については、 従来の水・空冷から液冷への変遷により電力効率の向 上が進む。一層の省エネを求める制度は、技術の研究 開発と実装を推進し、脱炭素化の加速が期待される。

出所:金融庁, 経済産業省 JLLリサーチ事業部, 2025

戦略的価値の実現

データセンターは、デベロッパー、事業者、テナン ト、投資家を含むすべてのステークホルダーがデジ タルトランスフォーメーション(DX)とグリーント ランスフォーメーション(GX)を同時に実現する重

要なプラットフォームとして機能し、各主体の競争 力強化と持続的成長への道筋を示す。

このような価値を戦略的に実現するためには、信頼 できる外部の専門家との協働が不可欠である。市場 分析、開発、管理・運営・サステナビリティ推進、 賃貸、投資を含む不動産のライフサイクルのすべて のフェーズにおいて、外部の専門知見は、事業の質 とスピードを向上させ、最適な意思決定を支援する 役割を果たす。

著者

Research authors

赤城 威志 事業部長 リサーチ事業部 takeshi.akagi@jll.com

岩永 直子 シニアディレクター リサーチ事業部 naoko.iwanaga@jll.com

お問い合わせ先

浅木 文規

データセンタービジネス推進室長

キャピタルマーケット事業部 fuminori.asaki@jll.com

金山 ポール

シニアディレクター

キャピタルマーケット事業部 paul.kaneyama@jll.com

松本 仁

事業部長

エナジー&サステナビリティ サービス事業部 jin matsumoto@jll com

片桐 修

シニアディレクター

不動産運用サービス事業部 osamu.katagiri@jll.com

相川 正敏

事業部長 ストラテジックコンサルティング事業部 masatoshi aikawa@jll com

マルケジニス オディセウス

事業部長

法人事業部 ody.markezinis@jll.com

宮本 淳

執行役員

事業部長

プロジェクト・開発マネジメント事業部 jun.miyamoto@jll.com

山田 剛

シニアディレクター リーシングアドバイザリー事業部 tsuyoshi yamada@jll com

JLL リサーチについて

JLLリサーチは、世界のあらゆる市場、あらゆるセクターにおける最新の不動産動向 並びに将来予測を提供します。全世界550名超のリサーチエキスパートが、60ヵ国を 超える国々の経済及び不動産のトレンドを日々調査・分析し、世界のリアルタイム 情報と革新的考察を発信しています。グローバル、リージョン、そしてローカルの 不動産市場におけるエキスパートが集結する精鋭リサーチチームは、今日の課題、 さらに将来の好機をも特定し、競争上の優位性、成功のための戦略、不動産に関す る最適な意思決定へとお客様を導きます。JLLリサーチは、適正な市場メカニズムが 機能する公正・透明な不動産市場の形成に寄与することを使命とし、より良い社会 の実現に貢献します。

JLL について

JLL( ニューヨーク証券取引所: JLL) は、 不動産に関わるすべてのサービスをグ ローバルに提供する総合不動産サービス会社です。オフィス、リテール、インダス トリアル、ホテル、レジデンシャルなど様々な不動産の賃貸借、売買、投資、建設、 管理などのサービスを提供しています。

フォーチュン500®に選出されているJLLは、世界80ヵ国で展開、従業員約112 000名を 擁し、2024年の売上高は234億米ドルです。企業目標(Purpose)「Shape the future of real estate for a better world(不動産の未来を拓き、より良い世界へ)」のもと、お客 様、従業員、地域社会、そして世界を「明るい未来へ」導くことがJLLの使命です。

JLLは、ジョーンズ ラング ラサール インコーポレイテッドの企業呼称及び登録商標 です。

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神山 繁一

JLL森井鑑定 執行役員

国際本部長 shigekazu.kamiyama@jll.com

This report has been prepared solely for information purposes and does not necessarily purport to be a complete analysis of the topics discussed, which are inherently unpredictable. It has been based on sources we believe to be reliable, but we have not independently verified those sources and we do not guarantee that the information in the report is accurate or complete. Any views expressed in the report reflect our judgment at this date and are subject to change without notice. Statements that are forward-looking involve known and unknown risks and uncertainties that may cause future realities to be materially different from those implied by such forward-looking statements. Advice we give to clients in particular situations may differ from the views expressed in this report. No investment or other business decisions should be made based solely on the views expressed in this report.

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