JAFスポーツ 2024年 夏号(第58巻 第3号 2024年8月1日発行)

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2024 SUMMER JAF MOTOR SPORTS

世紀の立役者

3月30日、FIAフォーミュラE世界選手権がついに日本初開催! 老舗レース主催者集団が連携して、初めてづくめをやり遂げた

2024 FIA Formula1 World Champioship Round4

Formula 1 MSC CRUISES JAPANESE GRAND PRIX 2024

2024 FIA F1世界選手権シリーズ MSC CRUISES 日本グランプリレース 開催日:2024 年 4 月 4 ~ 7 日 開催地:鈴鹿サーキット 主催:SMSC

Headline モータースポーツ話題のニュース速攻Check!

春開催となり、晴天にも恵まれた第 4 戦日本グランプリ。鈴鹿サー キットには 10 万 2,000 人が詰めかけた。1 周目にいきなりクラッシュ が発生して赤旗となるも、ポールスタートのマックス・フェルス タッペン選手は首位を堅守。大差を付けて鈴鹿 3 連覇を果たした。

桜咲く4月開催のF1日本GP、フェルスタッペン選手が鈴鹿3連覇! ペレス選手が2位獲得!レッドブル勢ワンツーフィニッシュで10万2,000人を魅了した

れまで、FIAフォーミュラ1世界 選手権(F1)の日本ラウンドは、 9月〜10月に鈴鹿サーキット において30回以上開催されてきたが、34 回目となる2024年大会は、史上初めて春 (4月)に開催されることになったのだ。

シリーズは第4戦での開催ということ で、以前のようにチャンピオン争いが決ま る可能性は失われたが、勢力図が定まって いない中でのレースということで、今まで とは違った見どころに注目が集まった。ま た、今年は桜の開花が遅かったことと、週 末の天候が良かったこともあり、4月6日 の予選日と7日の決勝日はコースサイドに ある桜が咲き乱れ、今回の日本グランプリ は昨年までとは違った景色が広がった。

PHOTO/吉見幸夫[Yukio.YOSHIMI]、ホンダモビリティランド[Honda.Mobilityland] REPORT/吉田知弘[Tomohiro.YOSHITA]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS] ログラムも順調に進められたと思います し、自分が想定していたラップタイムより 良かったので、すごく自信になりました。 チームからも良い評価をもらえたようなの で、一つ良いステップが踏めたかなと思い ます」とは岩佐選手。今季の開幕前から「来 季以降のF1ステップアップを最大目標」 と明言している岩佐選手。実際に2025年 にレギュラーシートを掴めるかどうかは現 状では未知数だが、一歩近付くセッション になったことは間違いないだろう。

そんなレースウィークが始まる直前に嬉 しいニュースが飛び込んできた。今季は全 日本スーパーフォーミュラ選手権で戦う岩 佐歩夢選手がプラクティス1にダニエル・ リカルド選手の車両で出走することになっ たのだ。レギュラードライバーの角田裕毅

選手は予定通り全セッションに乗るため、 久々に二名の日本人ドライバーが同じF1 公式セッションに臨むこととなった。

事前の準備期間が少なかったものの岩佐 選手は順調にテストプログラムをこなし、 トップから2.047秒差の16番手でセッシ ョンを終えた。「すごく楽しめました。プ

たのはHonda RBPT製パワーユニットを 搭載するレッドブルのマックス・フェルス タッペン選手。午後のセッションはハーフ ウェットの路面で水を差されたが、それ以 外ではトップタイムを計測。予選は1分 28秒197を叩き出して、開幕4戦連続と なるポールポジションを獲得した。2番手 には僚友のセルジオ・ペレス選手が0.066 秒差でグリッド最前列を確保。3番手には 昨年の日本グランプリでも好調だったラン ド・ノリス選手(マクラーレン)が入った。

いきなりS字で赤旗が出たものの フェルスタッペン選手が独走

今大会もプラクティス1から速さを見せ

晴天の中で始まった決勝レース。フェル スタッペン選手が先頭で1コーナーに飛び 込んだが、直後のASURA S字コーナーで リカルド選手とアレックス・アルボン選手 (ウィリアムズ)が接触。コントロールを失 った2台はそのままタイヤバリアに突っ込 んだ。ドライバーに怪我はなかったが、バ リア修復が必要となり、いきなり赤旗が出 る展開となった。コースマーシャルの迅速 な対応により30分ほどで再開。再び各車 グリッドから再スタートが切られた。

マックス・フェルスタッペン選手が圧勝。

セルジオ・ペレス選手は調子を取り戻す2位。

3位はフェラーリのカルロス・サインツ選手。

ここでもフェルスタッペン選手がトップ を守ると、1分37秒台のペースで後続を引 き離し、11周目には3.7秒のリードを築 く。早めに1回目のピットストップを済ま せたライバルに対し、フェルスタッペン選 手は16周目まで引っ張ってピットイン。 そこから追い上げて21周目に再びトップ に立ち、ファステストラップも記録した。

レッドブル勢がワンツーを獲得 角田裕毅選手も鈴鹿で初の入賞 チームメイトのペレス選手も終始力強い 走りを披露し、レッドブルのワンツー体制 が崩れることなくレースは終盤に突入。結 局、最後まで危なげない走りを見せたフェ ルスタッペン選手が50周目に1分33秒 706のファステストラップを叩き出し、後 続に12秒もの大差をつけて今季3勝目をマ ーク。2位にペレス選手が続いて、Honda RBPT製パワーユニットを搭載する2台が 表彰台を独占した。3位には後半で順位を 上げたカルロス・サインツ選手(フェラー リ)が入った。

「とても良い勝利だった。今週はクルマの 合わせ込みに少し時間がかかったが、予選 終了までにいくつか良い方向に変更でき、 それが決勝レースにつながったと思う。最

マックス・フェルスタッペン選手がポール・トゥ・ウィン、セルジオ・ペレス選手が2位で、Honda.RBPT製パ ワーユニットを搭載するレッドブルが今季3度目のワンツーを獲得。フェラーリの僚友シャルル・ルクレール選手 とは異なる戦略を採ったカルロス・サインツ選手が3位表彰台を獲得した。

初のスティント後にも小さな調整が加えら れ、それでさらに快適に走ることができ た。もっとペースを上げられたが、タイヤ の状況を見ながら走った。非常に満足して いる」とフェルスタッペン選手は語った。 そして日本期待の角田選手は、昨年に続 いて母国グランプリで予選Q3進出を果た している。最初のスタートで順位を落とし たものの、赤旗中断の間にタイヤを交換し て2回目のスタートで挽回。コース上でも オーバーテイクを決め、見どころの多いレ ースを披露した。一番のハイライトとなっ たのは22周目。ポジションを争うライバ ルと角田選手を含めた5台が同時にピット

eインしたのだ。ここでビザ・キャッシュア ップRBのメカニックが素晴らしい仕事を 見せ、ポジションを大幅に上げてポイント 圏内の10番手に進出することができた。

後半は戦略を変えたライバルを警戒しな がらの走行となったが、ハードタイヤを見 事にコントロールして10位でフィニッシ ュ。日本人ドライバーが12年ぶりに母国 グランプリで入賞する快挙を成し遂げた。 初めての春開催となった鈴鹿サーキット でのF1日本グランプリは、学生の春休み 時期ということもあり、予想以上の盛況ぶ りを見せた。3日間の合計来場者数も、前 年を上回る22万9,000人を数えている。

サポートレースは、恒例のポルシェカレラカップジャパン(PCCJ)第1戦と、初開催となったフェラーリ・チャレ ンジ・トロフェオ・ピレリ・ジャパン(FCJ)第1戦。PCCJ第1戦は伊東黎明選手が優勝。FCJ第1戦は古谷悠河 選手がレース1とレース2ともに制した。

今大会には三笠宮彬子女王殿下がお成りになり、スタートセレモニーにもご参列なされた。また、表彰式の冒頭

ついに初開催! FIAフォーミュラE世界選手権第5戦「東京E-Prix」

日産フォーミュラEチームのローランド選手の追撃を最終周で退けたギュンター選手が優勝! PHOTO/石原康[Yasushi.ISHIHARA]、遠藤樹弥[Tatsuya.ENDOU]、成田颯一[Souichi.NARITA]、FIA.Formula.E、Formula.E.PR事務局、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]  REPORT/吉田知弘[Tomohiro.YOSHITA]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

本初上陸を果たしたFIAフォー ミュラE世界選手権の第5戦「東 京E-Prix」が、3月29〜30日に 東京都江東区有明の東京ビッグサイト周辺 で開催された。予選と決勝を1日で開催する フォーマットで、東京E-Prixも29日(金)に シェイクダウンとフリープラクティス1、30 日(土)には予選と決勝が行われた。

金曜の午前は暴風雨に見舞われて全セッ ションを中止したものの午後には晴れ上が り、土曜の朝8時にはドライ路面でFP2が 行われた。10時20分からは予選だが、フォ ーミュラEは、前戦までのランキングで2グ ループに分けて実質的なQ1セッションを行 い、各グループ上位4台が予選「デュエル」 に進出する方式を採用している。

デュエルは2台が出走する1対1の勝ち抜 き戦で、クォーターファイナルとセミファイ ナルを経て、最後のファイナルでの勝者が

ポールポジションを獲得する仕組みだ。

まず予選グループAでは、ランキングトッ プのニック・キャシディ選手(ジャガーTCS レーシング)が出走。好調ぶりを発揮して3 番時計を刻むも、技術面での違反によりベ ストタイム抹消となってしまった。

続く予選グループBでは、サッシャ・フェ ネストラズ選手(日産フォーミュラEチーム) が出走。日本で4シーズン活躍した彼だが、 今大会ではなかなか噛み合わなかった。前 日のFP1では濡れた路面の影響で他車に突 っ込まれて左手を負傷しており、グループ予 選ではターン2で壁にヒット。車両に僅かな ダメージが及んでしまい、グループBを10 番手で終えることになった。

日産・ローランド選手が大逆転!

日本に縁のある選手が苦戦した一方、大 きな見せ場を作ったのが、日産フォーミュラ

2024.FIAフォーミュラE世界選手権シリーズ(第5戦)東京E-Prix ABB.FIA.Formula.E.World.Championship.Season10.Round.5.Tokyo.E-Prix 開催日:2024年3月29日(金)~30日(土) 開催地:東京ビッグサイト周辺(東京都江東区) 主催:VICIC

Eチームのオリバー・ローランド選手だ。予 選グループAでトップ通過を果たすと、デュ エルを勝ち上がりファイナルに臨んだ。

ローランド選手はライバルとなったマキシ ミリアン・ギュンター選手(マセラティMSG レーシング)に若干遅れたが、セクター2で 逆転してコンマ3秒近いリードを築いた。し かし、ギュンター選手も後半で挽回して1分 19秒044を計測した。ローランド選手は、 ターン19手前ではコンマ099秒逆転されて いたが、最終シケインで挽回し1分19秒 023を計測。ローランド選手はこの僅かコン マ021秒で逆転し、第1回東京E-Prixのポ ールポジションを獲得した。

これにはグランドスタンドの日産応援団も 歓喜に沸いた。凱旋レースで優勝を狙える 位置からのスタートということで、東京ビッ グサイトは大盛り上がりとなった。

白熱の予選デュエルから約3時間後、14時

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33分にスタート進行が始まった。決勝レー スは33周。15時03分にバーンナウトのグリ ッドポジショニングが行われ、15時04分、 スタートフラッグが振られた。

22台のマシンは、有明のメインストレー トからターン1へと一斉に突入。ローランド 選手がトップを守ると、3番手スタートのエド ワルド・モルタラ選手(マヒンドラ・レーシ ング)が2番手に浮上した。

3周目には後方集団がアタックモードを使 い始めた。アクティベーションゾーンはター ン4の進入アウト側に置かれ、今大会では8 分間の使用が義務付けられていた。

10周を過ぎるとローランド選手がトップ 独走となりつつあった。11周目にはローラン ド選手と2番手のモルタラ選手がアタックモ ードを使い、その隙に3番手のギュンター選 手が2番手に浮上。昨年王者のジェイク・ デニス選手(アンドレッティ・フォーミュラ E)は4番手に続き、上位争いはこれら4台に よる接近戦となった。

レース中盤に“駆け引き”が始まる

18周目には、接触などの影響で複数台が スロー走行となった。コースの各所にはデブ リが飛散しており、それらの回収のため20 周目の後半で今大会初のセーフティカーが 導入された。レースは23周目から再開。そ して、上位の2台については、レース終盤に

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ポールポジションを獲得したのは日産フォーミュ ラEチームのオリバー・ローランド選手。ジュリア ス・ベア社のアジア統括責任者のジミー・リー氏か らトロフィーが授与された。

FIAガールズ・オン・トラック活動を推進している フォーミュラE。東京大会では、シティサーキット 東京ベイにサプライズゲスト角田裕毅選手を招聘 したミート&グリートイベントを開催した。

優勝はマセラティMSGレーシングのマキシミリアン・ギュンター選手、2位は日産フォーミュラEチームのオリバー・ ローランド選手、3位はアンドレッティ・フォーミュラEのジェイク・デニス選手。ニック・キャシディ選手は8位まで 挽回してシリーズ首位を堅守。日産フォーミュラEチームのサッシャ・フェネストラズ選手は惜しくも11位に終わった。

向けた駆け引きが始まった。

ギュンター選手は、25周目のターン9立ち 上がりでローランド選手をパスした。その際 にローランド選手は抑えるそぶりを見せず、 ラインを譲るような形でギュンター選手の後 ろに付けた。つまり、ローランド選手には、 一度バッテリーをセーブして、終盤に逆転す る狙いがあったのだ。

一方のギュンター選手はトップに立つと一 気にペースを上げた。28周目までに後続を約 1.7秒引き離して4分残る2回目のアタック モードを発動。対するローランド選手は“電 費”を意識した走りを余儀なくされ、後続に

迫られながら2番手を堅守していた。

31周目には「2周」のアディショナルラップ が発表された。ここで3番手に上がっていた アントニオ・フェリックス・ダ・コスタ選手 は、ローランド選手の攻略にかかったものの ターン15の立ち上がりで失速。その隙を突 いたデニス選手が、3番手を奪い取った。そ して、ファイナルラップに入るとローランド 選手が仕掛けた。

セクター1からギュンター選手を追い立

て、高速セクションでは並びかけ、ターン 14ではアウトに並んだ。後に「最後の数周は プレッシャーが厳しかった」と語るギュンタ ー選手だが、並びかけたローランド選手をタ ーン15で冷静に対処。2台は最終コーナーま で接戦となったが、結局、順位は入れ替わ ることなくチェッカー。ギュンター選手が東 京E-Prixの初代勝者に輝いた。

公道レースのFIA世界選手権、そして電 気自動車だけの公道レースは日本初開催とな った今大会。約2万人の観客動員を記録し た東京E-Prixは成功裏に幕を閉じた。

中盤に“電費”セーブの戦略を採ったローランド選 手。最終周で仕掛けたが2位に惜敗した。

昨年の王者・デニス選手は、僅かなチャンスを逃さ ない戦いぶりで3位表彰台を獲得した。

表彰式のプレゼンターは東京都の小池百合子知事 やJAF坂口正芳会長を始め、ABBジャパンの中島秀 一郎代表、そして、FIAガールズ・オン・トラック 参加者の中から選ばれた西村京夏さんが務めた。

観客席はセクター1と最終コーナー周辺に設けら れ、ストレート脇の日産応援団の専用スタンドで は、予選デュエルから決勝のファイナルラップま で、手に汗握る好勝負を目の当たりにできた。

勝田貴元選手が今季初表彰台! スーパーサンデーも初制覇!!

TGR-WRT勢は第3戦から第6戦で3勝、各ランキングでヒョンデ勢と王座争いを展開中 PHOTO/TOYOTA GAZOO Racing、Red Bull Media House REPORT/廣本泉[Izumi HIROMOTO]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

024年FIA世界ラリー選手権 (WRC)は3月28〜31日、ケニ アを舞台に第3戦「サファリ・ラ リー・ケニア」を開催。このアフリカでのラ リーに日本人ドライバーの勝田貴元選手が TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team(TGR-WRT)のマニュファクチャラ ー登録ドライバーとしてコ・ドライバーの アーロン・ジョンストン選手とGR YARIS Rally1 HYBRIDを駆って参戦した。

シェイクダウンで7番手タイムをマーク した勝田貴元選手だったが、「ステアリング 関連のトラブルがあって、それが解消され ませんでした」とのこと。それでもデイ1の SS1で4番手タイムをマークすると、デイ2 でもSS5とSS6で2番手タイムを出す走り を見せた。「トラブルは金曜日の午後には解 消されていました。抑えすぎたところもあ るけれど、悪くない位置で終えることがで きました」と語るように、勝田貴元選手は総 合3番手でデイ2を終えた。

さらにデイ3ではSS8でベストタイムを マークしたほか、チームメイトのエルフィ ン・エバンス/スコット・マーティン組が タイヤトラブルで後退したことから、勝田 貴元選手は総合2番手に浮上。しかし、続 くSS10で「茂みのなかに隠れていた岩に当 たって右フロントと右リアのタイヤをパン クしました」とのことで総合3番手に後退。

だが、SS11で再びベストタイムをマーク、 さらにヒョンデi20 N Rally1 HYBRIDを武 器に総合2番手につけていたHYUNDAI SHELL MOBIS WORLD RALLY TEAM (ヒョンデ)のティエリー・ヌービル/マー ティン・ヴィーデガ組がトラブルで後退し たことから、勝田貴元選手は総合2番手を 取り返してデイ3を走破した。

そして、最終日のデイ4ではSS14でタ イヤトラブルを喫し、スーパーサンデーの ポイントは獲得できなかったが、勝田貴元 選手は総合2位入賞を果たし、2024シーズ ン初の表彰台に登壇。さらに、優勝はチー

勝田貴元選手(TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team)は、コ・ド ライバーのアーロン・ジョンストン選手と挑んだ2024年FIA世界ラリー 選手権の第3戦サファリで奮闘を見せ、2位で今季初表彰台に上がった。

ムメイトのカッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ ハルットゥネン組が獲得、TGR-WRT勢の 今季初優勝を1-2フィニッシュで達成した。 「表彰台に立てたので、うれしさがないわ けではないんですけど、“もっとこうすべき だった”など自分の足りない部分が分かる ので悔しさもあります。もちろん、シーズ ン初の表彰台ですし、カッレとは仲がいい ので彼と一緒に表彰台に立てたことはうれ しいけれど、足りてない部分もあったので

第3戦サファリの表彰台では、シャンパンファイトで勝田貴 元選手(TGR-WRT)が、優勝したチームメイトのカッレ・ロ バンペラ選手と喜びを爆発させた。

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第3戦サファリに続く第4戦クロアチアでは、5位入賞とともにスーパーサンデーを制し た勝田貴元選手(TGR-WRT)だったが、第5戦ポルトガルと第6戦サルディニアではデ イリタイアを喫した。

がっかりした気持ちもあります」と、勝田貴 元選手は複雑な心境を吐露した。

しかし、同時に「優勝するためのアプロー チの仕方が勉強になりました」とも語った勝 田貴元選手にとって、今季のサファリは結果 以上に多くのことを吸収した1戦となった。

3戦ぶりのターマックラリーで入賞も グラベルラリーのポルトガルで苦戦

4月18〜21日には第4戦「クロアチア・ ラリー」が開催された。第1戦「ラリー・モン テカルロ」以来のターマックラリーとなった が、勝田貴元選手はシェイクダウンで再びス

テアリング関連のトラブルに見舞われ、予想 外のハプニングで幕を開けることになった。

勝田貴元選手のチームメイト、セバスチャン・オジエ/ヴァンサン・ランデ組は第4戦 クロアチアと第5戦ポルトガルを制して2連勝。2024シーズンもスポット参戦ながら、 TGR-WRTを牽引している。

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幸い翌日のデイ1ではトラブルを修復して いたが、「インカットで路面が汚れていたの で、出走順的にも上位3台に付いていくこと は厳しい状況。なんとか食らいついていき たかったんですけど、タイムを伸ばせずに 離されてしまいました」と語る状況で、勝田 貴元選手は総合6番手とデイ1で出遅れた。

さらに「天気予報で雨が降る確率が高かっ たのでウェットのセッティングに変更した んですけど、結果的に雨が降らなかったの で詰め切ることができませんでした」とのこ とで、勝田貴元選手は変わらず総合6番手 でデイ2を終えた。

それでも勝田貴元選手はデイ3のSS17 とSS19でベストタイムをマークして、総 合5位で入賞。さらに「なんとか復調して日 曜日をトップでフィニッシュできました。 チームに貢献できたので良かったです」と語 るように、今季から始まったスーパーサン デーを初めて制し、合計15ポイントを獲得 したのである。

第5戦は「ラリー・ポルトガル」、5月9〜 12日に開催された。このラリーに勝田貴元 選手は、マニュファクチャラー選手権のポ

イント対象外でエントリーした。 「何が起きても影響が少ないことから、プ ッシュして挑むプランになっていました」と 語るように、勝田選貴元手はデイ1のSS1 で4番手タイムをマークしたほか、デイ2 はSS2でベストタイムをマークし、総合3 番手でこの日を終えた。

しかし、デイ3のSS12で「高速セクショ ンの複合コーナーでラインを外してしまっ て……。アーム類やブレーキを破損したの でマシンを止めることにしました」とのこと で、勝田貴元選手はデイリタイアを強いら れてしまった。

なんとかデイ4で再出走を果たすものの、 今度はハイブリッドのトラブルが発生。「自分 のスピードを示すことはできたと思いますが、 結果につなげられなかったことで、そこを改 善していきたいです」と、反省しきりの勝田 貴元選手は総合29位でフィニッシュした。

勝田貴元選手は2戦連続で苦難の中 TGR-WRT勢は王座争いを展開

ポルトガルでの負の連鎖は、5月31日〜 6月2日にイタリアのサルディニア島で開催 された第6戦「ラリー・イタリア・サルディ ニア」でも続いた。「クルマをアジャストし ながらやっていたんですけど、ドライビン グもクルマも合わせ込むことができずに苦 戦していました」と語るように、勝田貴元選 手はデイ1で総合トップから34.5秒遅れの 総合4番手に留まった。

デイ2ではヌービル/ヴィーデガ組が脱 落したことにより、勝田貴元選手は総合3 番手に浮上したが、SS8で予想外のトラブ ルが発生。「ギヤボックスに亀裂が入ってい て、そこからオイルが漏れてオーバーヒー トしていました。ケミカルメタルで塞いで オイルを足したんですけど、走っているう ちにオイルが漏れてしまって走れなくなり

ました」とのことで、応急処置も虚しくSS9 でデイリタイアを決断することになったの である。

勝田貴元選手はデイ3で再出走を果たし たものの、「ダストが多くて思うようにプッ シュすることができませんでした」と苦戦。 それでも、スーパーサンデーを6位でフィ ニッシュ、5番手タイムだったパワーステー ジと併せて3ポイントを獲得した。

「結果を持ち帰れなかったのは残念でした が、ギアボックスにトラブルが発生するま では表彰台を狙える位置にいたので安定し ていました」と手応えを語り、さらに「次戦 のポーランド以降は高速のグラベル戦が続 くので、マインドも切り替えていきたいで す」と、前を向く勝田貴元選手。後半戦での 復調なるか、注目だ。

なお、第4戦のクロアチアではセバスチ ャン・オジエ/ヴァンサン・ランデ組が今 季初優勝を獲得し、エバンス/マーティン 組が2位に入りTGR-WRTは2戦連続で 1-2フィニッシュを達成。さらに第5戦ポル トガルではオジエ/ランデ組が2連勝を果 たした。そして、ドライバーとコ・ドライバ ーランキングではエバンス/マーティン組 が3番手、TGR-WRTはマニュファクチャラ ーランキング2番手の位置。各ランキング でトップに立つヒョンデ勢を追っている。

TGRの「WRCチャレンジプログラム」二期生、山本雄紀選手 (左)と小暮ひかる選手(右)はGR YARIS Rally2を駆って第4 戦クロアチアから第6戦サルディニアまで参戦。ポイント獲得 ならずも貴重な経験を積んだ。

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新種競技も早30年に! 歴史を紡いだJAF公認サーキットトライアルに新たな目標が生まれる

PHOTO/宇留野潤[Jun.URUNO]、大野洋介[Yousuke.OHNO]、鈴木あつし[Atsushi.SUZUKI]、関根健司[Kenji.SEKINE]、 吉見幸夫[Yukio.YOSHIMI] REPORT/JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

ーキットトライアル競技は、ス ピード競技開催規定では「JAF 公認レーシングコースにおける タイムトライアル競技」と定義される。

レースのような同時スタートは行わず、 ピットレーンから1台ずつ間隔を空けてコ ースインする方式で、主に2回(2ヒート) の走行におけるラップタイムの優劣で順位 が認定される形式で行われている。

その多くは1ヒート当たり15分程度の セッションが用意され、時間内であれば何 度でもタイムアタックできる。そのため、 巷では「レース競技の予選だけを単独開催 したようなイベント」とも言われている。

ムスケジュール内に組み込まれている。

このサーキットトライアルがJAFの新種 競技として開催要項が制定されたのは 1997年。それ以降、順次全国で競技会が 開催されることになったが、当時はいわゆ るミニサーキット走行が流行した時期で、 彼らのステップアップ先としても期待さ れ、JAF公認レーシングコースを思い切り 走れる貴重な機会としても注目された。

参加者には新設当時から参加し続ける 「サートラ職人」も多く、レースや他のBラ イ競技では見かけない車種が活躍している こともある。また、“Nゼロ”と呼ばれるナ ンバー付きレース開催が普及してからは、 併催レースのAライセンスボルダーが練習 のために参加する例も少なくない。

サーキットトライアルは、ジムカーナや ダートトライアル競技と同じくBライセン スで参加できるスピード競技で、スピード B車両を主軸としたナンバー付き車両で出 られる。しかし、大会自体は何らかのレー スと併催されることが多く、レースのタイ

これら3サーキットのシリーズは、JAF 公認クラブB-Sportsの提唱による統一レ ギュレーションで運営されており、同じ車 両、同じクラス区分で出られることから、 気軽に遠征できる絶好の機会となった。

そして今年の3月22日、サーキットト ライアル競技に対して「JAFカップオール ジャパンサーキットトライアル規定」が制 定され、2025年1月1日から施行される。

この規定は、地方サーキットトライアル 選手権の上位入賞者を対象として開催され る競技会に「JAFカップ」のタイトルを付与 するというもので、関係者の要請に基づ き、JAFスピード競技ターマック部会によ る審議を経て承認され新設が決定した。

2020年には「日本サーキットトライアル 選手権規定」が制定された。JAF地方選手権 の付与も規定されており、開催初年度に は、スポーツランドSUGOと筑波サーキ ット、岡山国際サーキットのシリーズに地 方選手権タイトルが与えられている。

この「JAFカップ」競技会は、ジムカーナ では1992年に「JAFカップジムカーナ・ 淀ハイスピードジムカーナ」が鈴鹿サーキ 2025年からサーキットトライアル競技に「JAFカップ」が付与される!

”サーキットトライアルの聖地”と呼ばれる茨城県の筑波サーキットでは、複数のオーガナイザーによりサーキットトライアルの競技会シリーズが開催されている。また、独 自シリーズとして開催される「マツダファン・サーキットトライアル」は、車型や年式で細分化されたクラス区分などが好評で、2023年で開催20周年を迎えている。

「JAFカップ」のタイトル付与は4カテゴリー目に  JAFが制定する国内最高峰のタイトルは、FIAフォーミュラ1 世界選手権に認定される「日本グランプリ」であり、それに次 ぐ「JAFグランプリ」はJAF全日本スーパーフォーミュラ選手権 の最終戦が認定されている。対する「JAFカップ」は、各地域

ット南コースで初めて開催され、ダートト ライアルでは1996年に「JAF CUPオール スターダートトライアル・オールスターin 九州」として、今は無き三井三池オートス ポーツランドで初開催されている。

JAFカップは、全日本選手権と地方選手 権参加者による年に一度の交流戦であった り、シーズンオフの日本一決定戦であった りと、歴史の中で意味合いが変化していっ たが、近年では年末に開催されるJAFモー タースポーツ表彰式に各クラス優勝者が招 待され、全日本選手権タイトル保持者と同 じ舞台で、“JAFカップ”が授与されるとい う名誉あるタイトルへと昇華している。

2023年には、11月12日に東京・お台場 で開催されたD1グランプリシリーズの競 技会に、初めてJAFカップタイトルが付与 された。この「JAFカップオールジャパン・ 2023 D1グランプリシリーズ第10戦 お台 場大会」では単走部門優勝の藤野秀之選手、 追走部門優勝の松山北斗選手にJAFカップ が贈られている。

のモータースポーツの健全な発展および振興を図ることを目的 とされており、これまでのジムカーナとダートトライアル、D1 グランプリシリーズに次いで、「JAFカップオールジャパンサー キットトライアル規定」が制定されることになった。

e今季からGT300にスーパーライセンスポイント付与

F1車両の乗車に必要なスーパーライ センス発給の基準となるポイントテー ブル(スーパーライセンスポイント) が、FIA国際モータースポーツ競技規 則付則L項に掲載されているが、そこに 今シーズンからスーパーGTのGT300 クラスも加わった。これまでGT500ク ラス、スーパーフォーミュラ、スーパー フォーミュラ・ライツ、フォーミュラ リージョナル、FIA F4が対象だったが、 今季からは計6シリーズとなる。

JAF公認/認定eモータースポーツのカレンダー掲載

第1回「JAFカップオールジャパンサー キットトライアル」の開催が気になるとこ ろだが、2025年のカレンダー申請の後に日 程や会場が明らかになりそうだ。

JAFは新たに仮想、電子自動車競技の管 理統轄を開始しており、いわゆるeモー タースポーツの世界においてJAF公認/ 認定競技やJAF公認国内リーグ競技の 整備や振興を行っている。この度、それ らの大会のカレンダーページがJAF モータースポーツサイトに新設された。 同ページではリザルトも併せて確認で きるようになっている。

https://motorsports.jaf.or.jp/enjoy/ begin/esports/results

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桜咲く4月開催のF1日本GP、フェルスタッペン選手が鈴鹿3連覇!

6 ついに初開催! FIAフォーミュラE世界選手権第5戦「東京E-Prix」

8 勝田貴元選手が今季初表彰台! スーパーサンデーも初制覇!!

10 2025年からサーキットトライアル競技に「JAFカップ」が付与される! SPECIAL ISSUE

14 高まる存在。

凱旋レースでの初ポイントを獲得! 新境地に至る角田裕毅選手の進化

18 世紀の立役者

3月30日、FIAフォーミュラE世界選手権がついに日本初開催! 老舗レース主催者集団が連携して、初めてづくめをやり遂げた

25 群雄割拠

開幕2戦で異なる6選手が表彰台に並ぶ! 激戦必至のスーパーフォーミュラ序盤戦

37 2024日本カート選手権Review

選手権規定がアップデート!カートの“イマ”を読み解く

44 走りをつなぐ

ニッポン随一の24時間耐久レースを戦い抜く生き残るための技術、そしてココロの構え

51 タイヤ選びとリカバリー

路面に合ったタイヤチョイスをしたはずが!? 想定外でも諦めないダートトライアル対応術

56 いまどきドリフトのマシンメイク術

“日本ドリフト選手権”として開幕! D1グランプリの最新トレンドを探る

NEWS & TOPICS

28 目指すは国内ラリーの健全な発展と振興、社会への普及 新組織「一般社団法人日本ラリー振興協会(JGR)」設立

29 TOYOTA GAZOO Racing WRC育成ドライバー四期生募集 2024年からは日本人コ・ドライバーの育成も始まる

30 スーパー GTとコラボして、レースの世界を知る・学ぶ 日産・自動車大学校の施設視察会にJAF地方本部も協力

31 「TIGP台北国際ジムカーナ・プライズ」が4年ぶりに開催 16のASNチームが参加し、新たな日本選手団3名が挑戦

31 HFDPの加藤大翔選手がフランスF4選手権で初優勝! イタリアF4選手権では山越陽悠選手が席巻中!!

62 新種競技「ドリフトテスト」発進! 新たなJAF公認競技種目の誕生! 第1回大会は栃木・ドライビングパレット那須で開催 66 ドライバー・オブ・ザ・イヤー2024

INFORMATION from JAF

32 2023年度 事業報告ならびに収支報告(2023年4月1日より2024年3月31日まで)

36 モータースポーツ公示・JAFからのお知らせ(WEB)一覧(2024年3月23日~2024年6月27日)

COVER/左:2024 FIA F1世界選手権シリーズ MSC CRUISES 日本グランプリレース

PHOTO/吉見幸夫[Yukio YOSHIMI]   右:2024 FIAフォーミュラE世界選手権シリーズ東京E-Prix

PHOTO/石原康[Yasushi ISHIHARA]

本誌の記事内容は2024年6月28日までの情報を基にしております。 また、社会情勢等によって、掲載した情報内容に変更が生じる可能性がございます。予めご了承ください。

「JAFモータースポーツサイト」も要チェック!

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凱旋レースでの初ポイントを獲得! 新境地に至る角田裕毅選手の進化

F1グランプリに挑む唯一の日本人ドライバー角田裕毅選手。

凱旋レースの鈴鹿では三度目にして初の10位入賞を果たした。

存在感を高めつつある角田選手の2024年序盤戦を振り返る。

一の日本人ドライバーとして、2024年も FIAフォーミュラ1世界選手権(F1)にフル 参戦中の角田裕毅選手(ビザ・キャッシュア ップRB)。第3戦オーストラリアGPで7位入賞を果た し、良い流れで母国グランプリにやってきた。

鈴鹿サーキットの本番前週にあたる3月末には、東 京・有明で行われたFIAフォーミュラE世界選手権東 京E-Prixに来場したほか、空いた時間に家族や友人と の再会を果たすなど、束の間の日本での時間を満喫し たという。そして、鈴鹿入りを果たした角田選手の目 に真っ先に飛び込んできたのは、咲き乱れる桜だった。 「まさか本当に桜が咲く中を走れるとは思っていなか ったので、また違った鈴鹿の景色が見られて嬉しいで す」と角田選手。今回の日本グランプリに向けては「今 のところは良い感じできていますし、オーストラリア GPでも大きいポイントを獲ることができました。ポ イントを獲ってから日本グランプリに来ることは今ま でなかったので、今回も期待に沿えるような走りをし たいです。ただ、そこまで期待値を上げずに、ポイン トを獲ることを最優先にしていきたいと思います」と、 母国レースでの初めての入賞を誓った。

曇り空で始まった金曜のプラクティス1。角田選手 は9番手タイムを記録して上々のスタートを切った。

続く2回目のセッションは、直前に雨がパラついたこ とで路面がハーフウェットとなり、一部のドライバー は出走せずに終わったが、角田選手はウェットタイヤ で様々な確認をして、手応えを掴んだ初日を終えた。

「日本グランプリを走るのは3回目ですが、いつもと 変わらず、日本の皆さんの前で走れるのは特別だなと 感じています。鈴鹿は走っていてすごく楽しいなとい う印象です。プラクティス1ではトップ10に入れま したし、(手応えは)そこまで悪くないのかなと思いま す。明日になって皆がプッシュしてくれば、正確な位 置関係がわかると思いますが、現状では中盤勢とも (タイム差が)少し離れているので、そこまで悪くはな いかなと思っています」と語る角田選手。過去2回と は違って、初日の仕上がりは良く、控えめなコメント ながらも手応えを掴んでいる表情がうかがえた。

昨年に続いて母国・鈴鹿でQ3に進出! スタートで後退するも、意外な展開に

迎えた土曜の予選。マックス・フェルスタッペン選 手(レッドブル)がQ1から1分28秒台を記録するハイ ペースな展開となったが、角田選手も負けじとアタッ クを続け、1分29秒775で11番手通過を果たした。

続くQ2では、トップ10圏内進出に期待がかかっ たが、1回目のタイムアタックでミスがあり1分30秒 399で11番手となる。このままだとQ2敗退となる こともあり、鈴鹿に詰めかけた多くのファンも固唾を 吞んで見守っていたが、角田選手は冷静に2回目のア タックを披露した。最終的に1分29秒417までタイ ムを伸ばして、10番手でQ3進出を果たしてみせた。

昨年と同様に、母国のヒーローがQ2突破を果たす と、サーキット中が大歓声に包まれた。そして、最終 のQ3では1分29秒413をマークして10番グリッド を獲得してみせる。今年こそ母国グランプリでの初ポ イント獲得を果たすべく、その第一歩を刻んだ。

注目の決勝レース。鈴鹿サーキットには前年を上回 る10万2,000人の観客が決勝日に駆けつけて大盛況 となった。角田選手はたくさんの応援を背に10番グ リッドについたが、スタートダッシュが思うようにい かず、ポジションを落としてしまう。いきなり後手の 展開になるかと思われたが、直後のASURA S字コー ナーでダニエル・リカルド選手(ビザ・キャッシュア ップRB)とアレックス・アルボン選手(ウィリアム ズ)が交錯してコースオフ。タイヤバリア修復のため にレースはいきなり赤旗中断となった。

ることになるが、ピットアウト後も着実に追い上げ、 13周目にはピエール・ガスリー選手(アルピーヌ)を 逆バンク外側からオーバーテイクする力強い走りを見 せた。そして17周目にはエステバン・オコン選手 (アルピーヌ)もかわして13番手に浮上した。

序盤から良いペースの走りを見せる 鮮やかなピットストップに観客も沸く

この時点で角田選手は17番手まで後退する。入賞 圏内からかなり遠ざかってしまったが、中断中にソフ トタイヤに交換して、再スタートでグリップを稼げる ように対策した。これが功を奏し、再スタートでは 11番手にまで浮上。さらにソフトタイヤを選択した ことで、序盤から良いペースで周回した。

7周目に1回目のピットストップを行い、角田選手 はハードタイヤに交換。もちろん、これで順位を下げ

FIAフォーミュラ1世界選手権(F1)日本GP・角田裕毅選手の成績 年 開催日 戦数 予選 決勝 参加車両

2021 10/8-10 Rd.17

2022 10/7-9 Rd.18 13位 13位 Alphatauri RBPT 2023 9/22-24 Rd.17 9位 12位 Alphatauri Honda RBPT

2024 4/5-7 Rd.4 10位 10位 RB Honda RBPT ※2020~2021年は新型コロナウイルス感染症等の影響により開催中止

この角田選手の走りにチームも応える。ケビン・マ グヌッセン選手(ハース)を先頭とする10番手争いの 集団で戦っていた角田選手は、22周目に2回目のピッ トインを決断する。しかし、周囲も同じことを考えて いたのか、マグヌッセン選手と角田選手を含む5台が 同時にピットインすることになった。ここでRBのメ カニックが迅速にタイヤ交換を済ませて、角田選手を 5台の先頭でコースへ復帰させることに成功。角田選 手も「トップジョブ!」と無線でチームを讃えた。

これで入賞圏内に進出したものの、 安心できる材料は少ない。34周目に ランス・ストロール選手(アストンマ ーティン)がソフトタイヤに履き替え て逆転を狙う作戦に出たのだ。これ に対してハードタイヤで最後まで走 り切る作戦を採った角田選手は、終 盤のバトルに備えてタイヤをセーブ しながらも安定したラップを刻んで ポジションを守っていく。その過程 でストロール選手が追いつけないことが分かると、角 田選手は1分36秒台までペースを上げてフィニッシ ュ。2012年に小林可夢偉選手が果たして以来、12年 ぶりに日本人ドライバーが母国グランプリでポイント を獲得した。

レース後には「本当にチームがかなり良い仕事をし てくれて、ピットストップの後にポジションを守るこ とができました。その後は日本のファンの皆さんの応 援を感じながら毎ラップを走れたので、本当に良いレ ースでした」と角田選手は語った。

年FIAフォーミュラ1世界選手権(F1)角田裕毅選手の成績(決勝)

Rd.1 2/29-3/2

S660ワンメイクで行われた今年 のドライバーズパレード。角田裕 毅選手が見せた予選と決勝での活 躍は、駆け付けた約10万2,000人 の観客を大いに沸かせてくれた。

チェッカー直後、多く のファンの声援を受け「皆 さんの期待に応えられた というのが日本人として 嬉しいですし、ここまで 待っていてくれた日本の ファンの皆さんの想いに 応えられて、最後は感謝を伝えながら一周できまし た。これからも僕をサポートしてくれると嬉しいです し、今回来た新しいファンの皆さんがもしいたら、こ のレースをきっかけに好きになってくれたら嬉しいで す」と感慨深い表情を見せていた。

日本グランプリで初のポイント獲得 そのモーメンタムは、次戦以降にも!

この第4戦日本グランプリでの入賞を機に、角田選 手はさらに自信を持った走りを見せるようになる。

続く第5戦中国GPでは流れを掴むことができず、 スプリントレースは16位。決勝レースは中盤に他車 と接触してリタイアとなったが、続く第6戦マイアミ GPではスプリントレースでも活躍し8位でポイント を獲得。その後の予選でもQ3に進出して10番手ス タートを手にした。決勝でも序盤から力強い走りを見 せて7番手に浮上。後半はバトルをしながらの展開で 順位変動はあったが、最終的に7番手を取り戻して、

今季ベストタイのポジションでチェッカーを受けた。

チームのホームグランプリでもある第7戦エミリ ア・ロマーニャGPでは、今季ベストとなる7番グリ ッドを獲得した。決勝では1周目にポジションを下げ たことが響いて10位フィニッシュとなったが、すっ かりポイント圏内の常連メンバーとなっていた。

中でも圧巻だったのが第8戦のモナコGPだ。プラ クティスからトップ5に入りそうな勢いで予選Q3進 出を果たし、8番グリッドを獲得。決勝ではポジショ ンを守り、難攻不落と言われるモナコのレースで8位 入賞を果たした。結果を出すのがとても難しいモナコ で予選・決勝ともにトップ10圏内に入ったことは、 F1パイロットとしての今後の評価につながる大きな 収穫となったことは間違いない。

この活躍を受けたチームは、早くも2025年の角田 選手の継続起用を発表。日本での人気上昇はもちろ ん、世界的にも彼に対する評価が上がっている。

さらなる好結果が期待された第9戦カナダGPでも 予選Q3に進出した角田選手は、決勝でもポイント圏 内を争う位置でレースを進めていた。しかし、終盤の 攻めすぎによりミスを誘発。この影響でポジションを 大きく落として14位で終わってしまった。

シーズン序盤の流れの良さを結果に結びつけられな かった部分はあるものの、引き続き、ポイントを獲得 できるパフォーマンスを十分に発揮した角田選手。良 い流れに乗っていて、角田選手の存在感は大きく高ま っている。しかし、カナダGPのように僅かなミスが 結果に直結してしまうため、勢いを大切にしながらも 浮き足立つことなく中盤戦も戦ってもらいたい。

世紀の立役者

3月30日、FIAフォーミュラE世界選手権がついに日本初開催! 老舗レース主催者集団が連携して、初めてづくめをやり遂げた

公道を使ったFIA世界選手権レース、そして全電動車による市街地レース…… すべての国内競技関係者にとって、FIAフォーミュラE世界選手権の日本開催は、 未知の領域がいくつも積み重なる、史上初のエポックメイキングな試みだった レース運営を取り仕切ったのは、JAF公認クラブの「ビクトリーサークルクラブ」 ここでは同クラブの中心人物にお話を伺い、歴史的な出来事の裏側を振り返る

世紀の立役者

ビクトリーサークルクラブ 今宮

眞会長 ビクトリーサークルクラブ 藤井穂高事務局長

京都江東区の東京ビッグサイト周辺で、3 月29日(金)から30日(土)にかけて、FIAフ ォーミュラE世界選手権第5戦「東京E-Pr ix」が開催された。今大会は東京ビッグサイトの敷地と 公道を組み合わたストリートサーキットが舞台。日本 初の公道レースFIA世界選手権、日本初の全車電動車 による公道レースという、これまで経験のない競技会 が、日本の首都・東京で初開催されるとあって、国内各 界だけでなく世界からも大きな注目を浴びた。

スタート前のセレモニーには、岸田文雄首相と小池 百合子東京都知事が挨拶したことも話題となったが、 この大会は売り出されたチケットがあっという間にソ ールドアウト。用意されたスタンドが満席となっただ けでなく、無料開放された「ファンゾーン」にも多くの 観客が訪れた。中には、これまで自動車レースを目に したことがないであろう親子連れなども多く、大成功 のうちに幕を閉じたと言っていいだろう。

今年で10周年を迎えるこのシリーズは、フォーミ ュラEオペレーションズ(FEO)が用意したパッケー ジで世界各国を巡るサーカス方式で開催されている。 もちろん、開催国ではオーガナイザーがASNに申請 を行い、FEOと協調して競技運営を司ることになる。

フォーミュラE 東京E-PrixのJAF国際格式競技会 としてのオーガナイザーは、東京のJAF公認クラブ 「ビクトリーサークルクラブ(VICIC)」が担当した。

2023年6月20日、FIA WMSC決議で確定!

前例のないフォーミュラE開催ということで、VICIC はレースウィークに至るまで、多くの高いハードルを 乗り越えてきた。1980年代、グループCで行われてい たスポーツカーの最高峰であるFIA世界耐久選手権 を、日本初のFIA世界選手権として1982年に富士ス ピードウェイで主催したのがVICICだった。今大会は その当時以来となるFIA世界選手権の主催だったが、 亡き初代代表・本田耕介氏の夢が「公道レースの主催」 だったことから、今大会で組織委員長を務めた現代表 の今宮眞氏が、その夢を叶えたことになる。

フォーミュラEのシリーズが始まったのは2014年。 実はその当時から、国内では日本開催の機運は高まっ ていたという。今大会は、2022年3月頃に、FEOから 日本のASNであるJAFに日本開催の相談があったこ とに端を発しており、以来、両者によるメールやオン

フォーミュラE東京大会開催に至る発表および行事

2019年2月21日 東京都が都議会平成31年第1回定例会でフォーミュラEによるZEV普及啓発の検討を公表 2022年3月 フォーミュラEオペレーションズ(FEO)からJAFに対して日本開催計画への協力要請 2022年9月20日 東京都が都議会令和4年第3回定例会で2024年フォーミュラE 東京開催を目指す方針を示す 2022年10月4日 東京都がフォーミュラEに係る開催協定をFEOと締結(FEOジェイミー・ライグルCEO来日) 2022年11月19-20日 東京都「ZEV-Tokyo Festival」開催。都庁前にてフォーミュラE Gen2車両をデモ走行 2022年11月20日 お台場「JAFモータースポーツジャパン2022」でフォーミュラE Gen2車両をデモ走行 2023年2月-4月 フォーミュラE東京大会(国際格式競技会)のオーガナイザー選定。 3クラブが候補に 2023年6月20日 第2回FIA世界モータースポーツ評議会で2024年カレンダーと東京大会の3月30日開催が確定 2023年6月21日 東京都「2024年FIAフォーミュラE世界選手権大会 東京開催決定に関する知事コメント」発表 2023年8月3日 JAF公示(2024年FIA国際スポーツカレンダー登録申請一覧)でオーガナイザーがVICICに確定 2023年11月8日 JMRC関東レース部会のウェブサイトにてフォーミュラE 東京大会のオフィシャル募集開始 2023年11月16-19日 フォーミュラE東京大会の競技団がFIA世界ラリー選手権第13戦ラリージャパンを視察 2023年11月22日 JAFモータースポーツYouTubeにて開催概要と進捗状況を生配信(今宮眞会長、津山覚氏出演) 2023年12月23日 JAF関東本部にて「FIAフォーミュラE 東京E-Prixキーマーシャルミーティング」を開催 2024年1月11-13日 東京大会の競技団がFIAフォーミュラE世界選手権第1戦メキシコシティE-Prixを視察 2024年1月18日 東京都「TOKYO ZEV ACTION×フォーミュラE東京大会PRイベント」開催 2024年2月24-25日 「JAFモータースポーツジャパン2024インお台場」でJAF「東京E-Prix救出訓練講習会」実施 2024年3月29-30日 FIAフォーミュラE東京E-Prixと併催で、東京都が「E-Tokyo Festival 2024」を開催

2022年10月、東京都庁にてフォーミュラ E開催に係る開催協定締結。

2022年11月、ZEV-Tokyo Festivalを東京 都庁前で開催。フォーミュラE車両が走行。

ライン、対面などでの密接な打ち合わせが始まった。

東京都は2019年辺りからフォーミュラEへの言及 を始め、東京オリンピック・パラリンピックを経た 2022年には、JAFとFEO、そして関係団体との調整 が進み、「2024年開催」が現実味を増していった。

世紀の立役者

東京都とFEOとの間で開催協定が締結されたのは 2022年10月初旬のこと。翌2023年4月からはFEO が水面下で日本のオーガナイザー選定作業を始めてお り、その約2か月後となる6月20日には、FIA世界モ ータースポーツ評議会(WMSC)の決議によってフォ ーミュラEシーズン10カレンダーが確定。ここでつ いに、3月30日の東京大会開催が確定的になったのだ。

オーガナイザーがVICICであることをJAFが公示 したのは2023年8月3日。その過程について今宮氏 は、「FEOから、JAFのリストに記載された公認クラ ブに対して、主催に関する打診のメールがあったんで す。ウチを含めて3つのクラブが立候補したそうで、 その後は、JAFを介してFEOとのプレゼンテーション の機会が用意され、クラブの歴史や経歴、どんなノウ ハウを持っているか、約350人のオフィシャルを揃え られるかといったヒアリングもありました」と語った。 レースウィークまで問題山積の7か月 東京大会はいわゆるローカルプロモーターが存在せ ず、イベント運営は津山覚氏が日本側の窓口を担当。 対するVICICは、競技運営にまつわるすべての準備 を任された。しかし、オーガナイザー決定からレース 本番まで残りわずか7か月。VICICの藤井穂高事務局 長は、その短期間でFEOとの交渉を重ね、FEOの要 求に応えるという重責を引き受けることになった。

「公道レースのオーガナイザーは、日本ではまず、管

2024年2月、JAF MSJ 2024 インお台場にて東京E-Prix救 出訓練講習会を開催。

2023年12月、JAF東京支部 で東京E-Prixキーマーシャ ルミーティングを開催。

轄の警察に道路の占用許可をいただかなければなら ず、そのために何度も足を運びました。また、FEOか らは消防車と、車両を撤去するクレーン車を用意する よう言われました。JAFと相談しながら関係各所と交 渉しましたが、これがかなり難航したんです。消防車 は最終的に東京消防庁の協力を得られましたが、それ までは払い下げの消防車を借りたり、消防服を購入し て対応するしかないような状況でしたからね」。

藤井氏は、警視庁や東京消防庁に対するレースへの 安全管理対策などは、医師団長を務めた西田広一郎先 生が先頭に立って仕切ってくれたおかげだと語る。 「また、クレーンについては、FEOからメーカーを指 定されましたが、日本の法規では用途が限られるた め、なかなか所有者が見つかりませんでした。それで も何とかオペレーターごとお借りすることができまし た。FEOの窓口はスポーティングディレクターのクラ ウディア(・デニ氏)でしたが、彼女は『世界中にある メーカーなんだから、日本にもあるだろう』と一歩も 引かない。メールやオンラインで、何度もケンカみた いになりました(笑)。今年の1月にクラウディアと直 接会えて、それから仲良くなってスムーズに話を進め られるようになりましたけどね。その1月には、開幕 大会のメキシコシティE-Prixへ視察に行くことがで きました。この大会では、現地のオーガナイザーが細 かい所までアドバイスをくれました。『僕たちも初開 催のときは何も分からず、色々な人たちにアドバイス をもらったんだ。だから今度は、僕たちが受けた恩を 君たちに渡す番なんだ』と言われ、とても親切にして くれたんです。サーキットなら普通にある“ホウキ一 本”から用意を始めなければならなかったので、彼ら のアドバイスは、とてもありがたかったですね」。

日本側の医師団長は西田広一郎氏が務め、副医師団長は宮澤健太郎氏が 担当した。西田氏は今大会の安全管理対策の調整等にも尽力した。

大切なのは“気心が知れた”組織作り

VICICは、300名以上もの競技役員を集めなければ ならなかったが、こちらはスムーズに進んだという。

その理由は、すでに地固めができていたからだ。

VICIC内部では以前からフォーミュラE開催に向 けて動いていた。今宮氏は所属するJMRC関東レー ス部会に参加する度に、各クラブ代表者に対して将来 の開催時に協力してくれるよう声をかけていたのだ。

「臨時のコースでやる時には、クラブに所属する人た ちが持つ“現場の組織力”が必要です。今回もクラブ 同士の横のつながりが基盤になりました。個人で参加 してくれた方、そして各クラブの協力体制で組織図が できあがったような状態です。今回ほど、JMRCが活 きたことはないと感じています。JMRC関東のつなが りのおかけです。今どきのビッグレースは、一つのク ラブだけで開催できるものではないですからね」。

VICICはその音頭をとっただけだと語る今宮氏。 「フォーミュラEでは、各部署のトップに国際レース 経験者が必要だったので、ウチとコミュニケーション をとれる方々から競技長や副競技長などの“長”を探 しました。そして、経験豊富な“キーマーシャル”を 30名ほど決めて、その皆さんがそれぞれ意思の疎通 を図れる人材を集めたという形です。一周が短いコー スだと、意思の疎通が大切だと感じていましたから、 気心が知れた組織作りを心がけました」とのことだ。

並行して、JMRC関東レース部会のウェブサイトで オフィシャル募集を開始したのは11月8日。すでにキ ーマーシャルから話が伝わっていたこともあり、この 募集にはキャンセル待ちが出るほどの応募があった。

中には未経験者もいたそうだが、各ポスト長や各部署 のキーマーシャルたちが丁寧に指導を行ったという。

このキーマーシャルに対しては、12月23日にJAF 関東本部でミーティングが行われた。それぞれ多忙な 立場であることから、全員で顔を合わせる機会はこれ が最初で最後となった。この会議では、FEOから出さ れた多くの資料を元に、東京大会の進捗状況や現状の 課題などの情報共有がなされ、その後はコース委員や ピット・パドック委員、救急委員、医師団など、それ ぞれの部署で個別ミーティングを重ねることになった。

競技長はVICICの朝倉敬一氏。水野雅男氏と関根基司氏が組織委員として支援した。

副競技長はスーパーGTでもおなじみ村上敦氏。

ASN派遣の審査委員は鈴木亜久里氏が務めた。

技術委員長の米森博氏を 中心に山田幸輝氏と林田 浩二氏が副技術委員長を 務めた。

決勝コースレイアウトは直前でT16付近が変更に

ヘルマン・ティルケがデザインした東京大会のコースレイアウト。 ターン7からターン15までが公道を使用するセクションとなった。 ターン16については大会直前にシケインが追加され、ターン17、ター ン18が新設。それに伴い、ポストも増設されることになった。

デジタルフラッグと信号旗の併用 年が明けた2月24〜25日には、東京都内で行われ たJAFモータースポーツジャパン インお台場2024 で、JAFが救出訓練講習会を実施。2日間で130名が 参加し、FIAのE-Safety手順に則り、絶縁シートや絶 縁グローブを用いた救出訓練などを体験した。

このE-Safetyに関しては、2023年のWRCラリー・ ジャパンでもハイブリッドシステムを持つRALLY1車 両による救出訓練が行われており、今宮氏を始め、競 技長や医師団長、技術委員長らが視察している。

こうした準備を経て、いよいよ本番のレースウィー クに入ると、キーマーシャルは水曜から現地入りして 備品のチェックなどを行った。走行開始前日の木曜

木曜にはコースマーシャルなどを対象とした、実際のフォー ミュラE車両を使った車両排除のレクチャーが行われた。

金曜の朝にはFIA E-Safetyデリゲートのコンラッド・エッセン 氏による電気自動車の扱いに関する講習が実施された。

走行音量が低いためピットレーンマーシャルはホイッスルと指差しで車両通過を注意喚起する。トラックマー シャルは、万一の多重クラッシュ対応などに備えて絶縁手袋を着用。この手袋は破れやすかったため、絶縁体 の軍手を被せて使用することで対応した。

熟練の経験者も未経験者も一丸となり、フォーミュラE初開催を支えた

会場周辺では3月24日から4月3日まで10 日間の交通規制が敷かれ、コンクリート ウォールやデブリフェンスの敷設を実施。

フォーミュラEの大会運営には、英国に本 社を置くアグレコ社のディーゼル発電機 がシリーズを通して採用されている。

東京消防庁の協力を得て、東京ビッグサイ ト施設内には水槽付ポンプ車などの消防 車両が待機することになった。

場内のケータリングブースの電力供給に は水素エンジン発電機を使用。これは東京 大会独自の取り組みとして注目された。

災害医療活動にも取り組む東京曳舟病院 からは、災害医療車両を始めとした救急車 両の派遣協力を得られることになった。

ランオフエリアが少ない市街地コースと いうことで、フォーミュラEではFIA公認の TECPROバリアを各所に設置する。

1階にキーマーシャル、2階は審査委員が 詰めるレースコントロール。フォーミュラ Eは欧州でも同様の規模で運営する。

レイアウトに沿ってコース両側に可搬式 のデブリフェンスが敷設される。その背後 でマーシャルが役務にあたっている。

は、朝からはすべての競技役員が集合。競技車両を使 った車両排除のデモンストレーションや、無線による コミュニケーションのチェック、実際にフラッグを振 る練習やFCY、SCボードの掲示練習などを行った。

フォーミュラEで使われるフラッグやボード類は、 国内の物よりもサイズが小さいため、FEOが持ち込ん だ器材を使用している。それらを可搬式デブリフェン スに空いた1.5×1.3mほどの開口部から掲示するわ

けで、しかもランオフエリアがない場所も多く、マシ ンはポストの直近を走る。国内サーキットとは大きく 状況が異なることから、入念な練習が行われた。 金曜は午前中の暴風雨によりすべての活動が中止さ れたが、午後には晴天に恵まれ、シェイクダウン、そ してフリープラクティスと、走行行事が始まった。

レースコントロールでは、FIAレースディレクター のスコット・エルキンス氏ら二名が最前列に座り、

世紀の立役者

熟練の経験者も未経験者も一丸となり、フォーミュラE初開催を支えた

ルに点付け溶接を施して対応した。

ビッグサイト展示棟内に各マーシャルの詰 所が用意され、そこから徒歩またはシャトル バス輸送にて各ポストに移動した。

詰所には“マーシャルの心得六箇条”を掲 示。また、ゼッケンが極めて視認しにくいた め、各車両の特徴リストも掲示された。

各役務のキーマーシャルが伝達事項を現場 に展開し、各ポストでは経験値の少ないメン バーに対する丁寧な教育もなされていた。

東京大会では、ライトパネルによるデジタルフラッグと、ポストマーシャルが振動させる信 号旗を併用する運営がなされた。ラップタイムが短い今大会ではデジタルフラッグによる 速やかな情報伝達が重視され、その協調も最終的には成功していた。

レースコントロールでは、FIAレースディレクターのスコット・エルキンス氏が最前列に座り、その判断を元に 競技長の朝倉敬一氏が各所に情報伝達を行った。後方で見守るのは、VICIC藤井事務局長との事前折衝を担当 したフォーミュラEスポーティングディレクターのクラウディア・デニ氏。また、技術面に関しては、FIAテク ニカルデリゲートのローレン・アルノー氏やビンセント・ガイヤルド氏らが監督した。

ースコントロールの判断の早さは、フォーミュラEが 一番だと感じました。でも、朝倉競技長は英語もかな りできますし、そのやり方にもすぐ慣れたので、うま くポストに指示が飛ぶようになりました」。

ただ、無線の運用に思わぬ課題が生じたという。フ ォーミュラEは走行音が静かなので、無線機本体のス ピーカーで聞き取れるだろうと考えたものの、複数の ポスト付近には場内実況用のスピーカーがあり、実際 には指示が聞き取れない場面もあったそうだ。「やは りヘッドセットやイヤホンは必要ですね。これは次回 への改善点としています」と藤井氏は振り返る。

新たな可能性を秘めた東京大会の大成功

一方、想定外は技術委員にも及んだという。メンバ ーは米森博氏を技術委員長として各地の経験豊富なメ ンバーで固められたが、事前の予想とは違い、FEOか ら車検の役務をほぼすべて任されたのだ。そのため車 検場はてんてこ舞いとなり、今宮氏は「ピットやパド ックのマーシャルをもう少し技術委員に振り分ければ 良かった」と、解決すべき課題として振り返った。

フォーミュラ

ASNサイドの朝倉敬一競技長や松岡直コース委員長 がその後方を固める。FIAは指示を出すと同時に「デジ タルフラッグ」のスイッチをオン。コースサイドのラ イトパネルには赤旗や黄旗、SC、FCYなどがLED表 示される。フォーミュラEでは、ライトパネルを使っ たデジタルフラッグと信号旗を併用しており、この指 示はドライバーのコクピットにも同時に伝わる。

一方のASNサイドは、レースディレクターの指示 を、競技長がすぐさま各ポストに無線で連絡して、ポ ストマーシャルにフラッグやボードを掲示させる必要 がある。しかし、初日はその指示が若干遅れ、コース サイドのライトパネル表示とポストから信号旗が出る タイミングにズレが生じる場面も見られた。レースコ ントロール後方で詰めていた藤井氏によると、

私もこれまで色々な国際レースを見てきましたが、レ レース運営とは別に、東京大会の興行面でのイベント運営を日本側で取り仕切ったのは津山覚氏。フォーミュ ラE側の統括者であるジェンマ・ロウラ氏と協調して、VIP来場という事態にも冷静に対処していた。

22台がほぼ連なって周回して いた東京大会では、トラック 上に車両がいない時間が極め て短かった。そのためレース コントロールの指示には迅速 に対応する必要があった。

「事前の打ち合わせでは、セーフティカー出動時など はFIAから秒数をカウントダウンする話でしたが、コ ースが短くて、現実的にはそんな時間がなかったんで すね。通訳をはさんでいる余裕もありませんでした。

走行セッションが晴天かつドライ路面に恵まれたこ ともあり、重大インシデントの発生もなく、セーフテ ィカー出動はデブリ回収のための一回だけだった。

日本の競技役員たちは、初めてづくめの現場で最善 を尽くし、決勝まで大きなミスなく役務を完遂した。 FEO側からは「いいマーシャルだった」と、今宮氏や 藤井氏に、感謝の言葉をもらったそうだ。

決勝レースを終えたメンバーたちにも「やり遂げた」 という笑顔が溢れていた。屋内での表彰セレモニーと 前後して、ホームストレートには役務を終えたトラッ クマーシャルが自然と集まってきた。そして、藤井氏 の声がけにより、急きょ記念撮影が行われることに。 全員集合とはならなかったが、一度撮影が終了する と、そこに遅れた朝倉競技長が満面の笑顔で駆けつけ て、撮り直すという一幕もあったそうだ。

東京大会に参加したメンバーを対象に、大会終了後 にVICICが行ったアンケートによれば、約85%が 「フォーミュラEを好きになった」と回答し、90%以上 が「来年も参加する」と意気込んでいる。

今宮氏によると、「今回初めてだったという人の中 に、これからさらに続けてみたいという意見もあった ので、新たな競技役員の育成にもつながるのではない かと感じています。フォーミュラEに関しては、今後 もクラブの枠を超えた"東京連合"みたいな感じでや っていこうと提案しています」とのことだ。

2025年の東京大会は、5月17〜18日に2レース制 で行われる予定であることが、すでに発表されている。 VICICでは、来年に向けて役務のマニュアルやガイド の制作も検討しているそうなので、来る東京大会の競 技運営は、さらにパワーアップするものと思われる。 そして次回までは、もう1年を切っているのだ。

界選手権の日本ラウンドが3月 末から4月にかけて開催された ことに伴い、2024年のJAF全 日本スーパーフォーミュラ選手権のレース カレンダーは大きく変更されている。

2 戦の結果を受けて 早くも混戦模様を呈している。

5月の段階では、全9戦中2戦を終えた ところだが、そこでランキングトップに立 ったのは牧野任祐選手で、野尻智紀選手が 同ポイントで並んでいる。第3戦スポーツ ランドSUGO・東北大会からは夏のラウ ンドに入るが、この2人がさらにポイント を伸ばしていくのか。あるいは彼らを追う 強力なライバルが現れるのか。まだタイト ル争いを語るには早いが、まずは序盤戦こ こまでのレースを振り返っていこう。

宮田選手と平川選手の渡欧により 4人のルーキーがシリーズに参戦 今季の開幕戦は、1992年の全日本F3000 選手権以来、実に32年ぶりに3月初頭の鈴 鹿サーキットで開幕した。それに先立って 合同テストが行われたのは2月下旬。例年 よりは寒い時期での走行となったが、各チ ーム、各ドライバーは開幕に向けた準備を 進めてきた。そして、ドライバーの顔ぶれ も、今季はかなり大きく変わっている。

昨年、スーパーGTとのダブルタイトル を獲得した宮田莉朋選手と、WECフル参 戦に加えて、マクラーレンF1のリザーブ ドライバーにも抜擢された平川亮選手は、 ともに欧州へと戦いの場を移すことになっ た。最終戦まで宮田選手とタイトル争いを 演じたリアム・ローソン選手もビザ・キャ ッシュアップRB F1チームのリザーブド ライバーに集中するため離日した。

4 人のルーキーを迎えて スタートした今シーズンは

全 9 戦が組まれたスーパーフォーミュラ。

3 月上旬の鈴鹿サーキットでの 開幕戦を皮切りに

代わってシリーズ参戦を開始したのは、 昨年のFIA F2チャンピオンであるテオ・ プルシェール選手と、同じくFIA F2で好 成績を挙げた岩佐歩夢選手だ。そして、 JAF全日本スーパーフォーミュラ・ライツ 選手権の王者である木村偉織選手がステッ プアップ、現役女子高校生(現在は大学生) として注目を浴びたJuju選手もルーキー としてシリーズ参戦を果たした。

また、福住仁嶺選手や大湯都史樹選手 ら、ホンダのスカラシップドライバーとし て育ってきた両名が今季はトヨタ陣営入 り。この動きに伴い、坪井翔選手がVANT ELIN TEAM TOM'S、国本雄資選手がIT OCHU ENEX TEAM IMPUL、松下信治 選手がTGM Grand Prixに移籍する動き もあった。

FIA F2王者のテオ・プルシェール選手が初参戦。だが、第2戦 を前にINDYCARへの参戦を表明する。

プルシェール選手の代役としてスポット参戦したのは、IMSA での実績を持つベン・バーニコート選手。

開幕戦は王者・野尻選手が勝利 山本選手も復活の狼煙を挙げる

合同テストから僅か2週間後に行われた 開幕戦。この鈴鹿サーキットで会心のアタ ックを見せたのは阪口晴南選手だった。ス ーパーフォーミュラでは初となるポールポ ジションを奪った阪口選手に続いたのは、 昨年の最終戦で初優勝を果たした太田格之 進選手で、野尻選手が3番手につけた。

鈴鹿の決勝では、スタートで野尻選手が トップを奪い1コーナーに入っていく。佐 藤蓮選手が2番手につけ、ポールの阪口選 手は3番手にドロップ。太田選手もスター トで出遅れてポジションを落としている。

今回は多くのドライバーが早めにタイヤ 交換する作戦に出た。真っ先にピットに滑 り込んだのは山本尚貴選手と牧野選手ら。 呼応して山下健太選手と福住選手、太田選 手らが翌周にピットイン。その後は、タイ ヤ交換前後のドライバーがバトルを演じた。

その集団とのタイム差を計り、13周終了 時と、やはり早目にピットに入ったのはス タートでトップに立った野尻選手。TEAM MUGENは素早い作業で、事実上トップ のまま野尻選手をコースに戻した。そこか らの野尻選手は危なげない走りを見せ、幸 先のいい開幕戦での優勝を飾った。

2021年から2連覇を果たした野尻選手 は、中嶋悟氏以来となる3連覇は果たせな かった。今季は仕切り直しのシーズンとな るため、早くもその意地を見せた形だ。

2位に山下選手、3位には山本選手が入 った。怪我からの復帰戦となった山本選手 は、完全復活を印象付ける結果となった。

テストでは好調ぶりを見せていた牧野選 手だが、開幕戦の決勝では僅か1ポイント に留まった。また、「一年でタイトルを獲 ってF1に行く」と公言する岩佐選手にとっ ても、少しほろ苦いデビュー戦となった。

そして、鳴り物入りのプルシェール選手も 18位完走という結果に終わっている。

プルシェール選手が突如渡米! 九州大会のポールは岩佐選手

そのプルシェール選手は、5月に入ると北 米のINDYCAR参戦を電撃発表し、第2戦 のオートポリス・九州大会には姿を見せな かった。代わってスポット参戦したのは、 同じく北米のIMSAを主戦場とするベン・ バーニコート選手だった。阪口選手や福住 選手とは旧知の仲で、昨年のオフには合同 テスト&ルーキーテストにも参戦したもの の、オートポリスはぶっつけ本番というこ とで、かなり慌ただしい参戦となった。

その他のルーキードライバーたちも、事 前テストがないオートポリスはほぼ初走行。 その中で、自身初のポールを獲得したの は、開幕戦を9位で終えた岩佐選手だった。

岩佐選手は、オートポリスで他を圧倒す る走りで欧州仕込みの実力を見せつけた。 これに続いたのは牧野選手で、山本選手が 3番手につけて勝利を狙うことに。

決勝スタートでトップに立ったのは、牧 野選手だった。この大会の牧野選手は、土 曜、そして決勝前のウォームアップ走行で

3月開催で路面温度が低かった鈴鹿サーキットでの 開幕戦。スーパーフォーミュラでは自身初となるポー ルポジション獲得となったのは阪口晴南選手だ。 そして、決勝レースで王者の貫禄を見せつけて幸先の 良い開幕戦勝利をモノにした野尻智紀選手。チーム の対応も含め、完璧といえる勝利を見せた。

特集 スーパーフォーミュラ/SUPER

牧野任祐選手が臥薪嘗胆の初勝利 Rd.2

オートポリス

外国人ドライバーとの相性がいいと言われるオート ポリスでポールポジションを獲得したのは、欧州帰り の岩佐歩夢選手。決勝は「悔しい」2位に終わる。

スーパーフォーミュラで待望の初勝利をあげたのは 牧野任祐選手。村岡潔総監督は「この、牧野くんの一 勝は本当にうれしい」と喜びを分かち合った。

もスタート練習を繰り返し、クラッチのバ イトポイントやアクセル開度の確認に集中 していたという。今回の牧野選手は、スタ ートで前に出られさえすれば、その後は引 き離していけるだけの仕上がりだった。

逆に、ポールの岩佐選手は、スタート後 の加速が鈍って3番手にダウン。2番手は 山本選手が奪った。トップに立った牧野選 手は後続との差を広げていく。タイヤ交換 のウインドーが開くと、2番手の山本選手 が今回も真っ先にピットイン。コースに戻 ると自己ベストを連発して、牧野選手との 見えない差を削り取っていく。

牧野陣営も、その差を確認しながらスト

JAF全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権の王者を獲 得した木村偉織選手がステップアップ。

ラテジーを立てて応戦する。まだタイヤ交 換を行っていない後方集団に山本選手が追 いつき、牧野選手との差が再び開いた24 周。このタイミングでチームは牧野選手を ピットに入れ、山本選手の鼻先でコースに 戻すことに成功した。そのアウトラップで は、牧野選手が山本選手の追撃を3コーナ ーまで抑え、トップの座を譲らなかった。

牧野選手と同時期にピットへ入った岩佐 選手は、山本選手の後方でコースに復帰。 タイヤの状態は岩佐選手の方がいいが、ス トレートスピードが伸びている山本選手を、 なかなか攻略することができなかった。

不運と隣り合わせだった牧野選手 オートポリスで会心の初勝利!

その間に大きなマージンを稼いだ牧野選 手は独走状態で、戦う相手はコースに吹く 強い風だけとなった。ときおり風向きが変

これまで海外での参戦実績を重ねてきた「Juju」こと野田樹 潤選手がスーパーフォーミュラに初挑戦。

わる中、牧野選手はタイヤを温存しながら 集中する。終盤は2番手の岩佐選手と3番 手の坪井選手が詰めてきたが、動じなかっ た牧野選手がトップチェッカーを受けた。

FIA F2参戦中には怪我を負い、帰国後 も体調不良による発熱で入院。昨年のモビ リティリゾートもてぎ大会では負傷して最 終大会を欠場するなど、牧野選手のキャリ アはこれまで不運と隣り合わせだった。

幼馴染や後輩たちが次々と優勝していく 中で、牧野選手は勝つことができずにい た。ウィニングランの無線では「もうオレ、 勝てないんじゃないかと思っていた」と心情 を吐露。牧野選手を担当して3年目、自ら を"初優勝請負人"と称する杉崎公俊エンジ ニアも「これまでも、話の端々に不安や自信 のなさのようなものが垣間見えることはあ った」と語る。しかし、杉崎氏はこの初優 勝で牧野選手は変わったとも語る。「予選 や決勝のセットアップに対しても好みが変 わってきて、懐が深くなりました。やっと スタートラインに立ったところですが、や はり自信がついたと思いますし、プレッシ ャーをかけることなく確実にポイントを重 ねていきたいですね」と展望を語った。

2戦を終えて、各表彰台に上がったドラ イバーの顔ぶれはすべて異なっている。ポ ールポジション獲得者も違う顔ぶれだ。ス ーパーフォーミュラは、序盤戦の段階で、 今季も群雄割拠の様相を呈している。

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目指すは国内ラリーの健全な発展と振興、社会への普及 新組織「一般社団法人日本ラリー振興協会(JGR)」設立

PHOTO/遠藤樹弥[Tatsuya ENDOU]、大野洋介[Yousuke OHNO]、中島正義[Tadayoshi NAKAJIMA]、山口貴利[Takatoshi YAMAGUCHI]、 JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS] REPORT/JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

記者発表会で設立の経緯を語る代表理事の田畑邦博氏。

日本ラリー選手権第4戦「ラリー丹 後」の期間中である5月11日に「一 般社団法人日本ラリー振興協会(Japan Or ganization Group of Developing Ral ly)」の設立記者発表が行われた。

新たに設立された「一般社団法人日本ラ リー振興協会(略称:JGR)」は、国内ラリ ー競技の健全な発展と振興、モータースポ ーツとしてラリーの社会への普及を目指す 団体で、発起人として以下の6名がメンバ ーとして名を連ねている。代表理事は AG.メンバーズスポーツクラブ北海道(AG. MSC北海道)の田畑邦博会長が務め、監事 は全日本ラリーで活躍するチームLUCKの 代表で、モンテカルロオートスポーツクラ ブ(MASC)の勝田照夫会長が担当する。

また、JAF加盟団体ジェイアールシーエー 代表であるプロフェッショナルドライバー の新井敏弘氏と、NPO法人M.O.S.C.O.の 高桑春雄代表、JAF加盟団体で、コンストラ クターとしても知られている株式会社キャ ロッセの長瀬努代表、モータースポーツク ラブ.シンフォニー.オブ.京都(SYMPHO NY)の船越潤代表が理事を務める。

記者発表には、代表理事の田畑氏と監事 の勝田氏、理事の高桑氏と船越氏が出席 し、同協会が「モータースポーツとしてのラ

リーを社会に普及し、健全な発展と振興を 図る」ことを目的とし、ラリーの振興および 発展を促すため、そしてラリーの安全な運 営および運営改善に関する諸活動を行うこ と、その他、当法人の目的を達成するため に必要な事業を行うことなど、今後予定さ れる活動・事業内容が明らかにされた。

田畑代表理事は、まず4月11日の発足 を伝え「発起人は選手やチーム運営、コン ストラクター、そしてオーガナイザーとし て長年ラリー業界で活動してきたメンバー です。これまで各自の立場で、交わること がありませんでしたが、それぞれ長年培っ た専門的な知見を活かしながら、進めて参 りたいと思っております」と挨拶した。

勝田監事は「長年ラリー活動を進める中 で、日本におけるラリー活動がこのままで いいものかどうか、色々と自問自答してき ました。今回、発起人メンバーと話をする

JAF加盟クラブMASCの勝田照夫氏が監事を担当。

中で、やはりこれからは、日本のラリー業 界が一つになって、横断的な人の流れとい うものがないと、オーガナイズは難しいと 考えております。そして、プロモーターと しての役割といったものもまとめていくこ とが、今後のラリーの発展に繋がると考 え、話が進みました」と、思いを語った。 また、同協会では、5月10日付けでJAF モータースポーツ部の村田浩一部長が顧問 に就任、6月24日にはJAF加盟団体に登録 されたことを新たにリリースしている。

NPO法人M.O.S.C.O.代表の高桑春雄氏が理事に。

SYMPHONY会長の船越潤氏も理事に名を連ねる。

全日本ラリー選手権第5戦は、国道18 号線旧碓氷峠を占用したスペシャルス テージ設定で話題となった「モント レー2024」。群馬県安中市を中心に開 催され、隣接の甘楽町にはパッセージ コントロールを設置。多くのギャラ リーが詰めかけた。

愛知県新城市を舞台とした「新城ラリー」を開催してきたMASCは、今季から蒲郡市と岡崎市、豊川市、幸 田町をまたぐ「Rally三河湾」を全日本ラリー開幕戦として開催。多くの観客を集めて成功に導いた。

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「ラリー丹後」は、京都府京丹後市周辺で開催される関西を代 表する大会として知られている。今季の全日本ラリー第4戦 「YUHO RALLY TANGO supported by Nissin Mfg」では、京 丹後森林公園スイス村にギャラリーステージが設定された。

TOYOTA GAZOO Racing WRC育成ドライバー四期生募集 2024年からは日本人コ・ドライバーの育成も始まる

PHOTO/TOYOTA GAZOO Racing REPORT/JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

本人若手ドライバーを発掘し、FIA 世界ラリー選手権(WRC)で活躍で きるよう育成するTOYOTA GAZOO Rac ingの「WRCチャレンジプログラム」。

WRCワークスドライバーとして活躍す る勝田貴元選手を一期生とするこのプログ ラムは、現在、二期生の小暮ひかる選手と 山本雄紀選手、三期生の後藤正太郎選手と 松下拓未選手が、フィンランドを拠点とし て、欧州で行われるラリー等において実戦

修業を重ねている。そして今年の6月12 日に、WRC育成ドライバー四期生の募集 がアナウンスされ、新たにコ・ドライバー も募集することが発表された。

今年のドライバーセレクションは2024

年7月1日から募集を開始し、上限100名 に対して10月下旬に富士スピードウェイ にて一次選考が行われる予定。コ・ドライ バーについては、書類選考を通過した候補 者にオンライン面接を実施して、通過者に は10月下旬に日本で最終選考が行われる。

最終選考で選ばれたドライバーとコ・ド ライバーは2025年1月から育成プログラ ムが始まる。TGR-WRTの講師陣により、 運転技術やペースノート作りのほか、フィ ジカル&メンタルトレーニングが提供され、 Rally4車両でのラリー参戦も予定する。現 地生活や現地での勉学サポートも用意され ており、濃密なトレーニングを集中して得 られる環境が整備されるという。

詳細については、TOYOTA GAZOO Ra cingのウェブサイトを参照してほしい。

2024 TGR WRCチャレンジプログラム応募・選考日程

-- 応募期間:7月1日(月)13時~8月16日(金)17時 ※上限到達時点で終了

-- ドライバー一次選考:10月22日~24日の1日、二次選考:10月25日 -- コ・ドライバー一次選考(書類):8月下旬予定、二次選考(オンライン):9月予定

スーパーGTとコラボして、レースの世界を知る・学ぶ 日産・自動車大学校の施設視察会にJAF地方本部も協力 3

PHOTO/遠藤樹弥[Tatsuya

ENDOU] REPORT/JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

スーパーGTシリーズでは、KONDO

Racing Teamを運営するエムケイ カンパニーにより、横浜ゴムとGTアソシ エイション、スポーツランドSUGOや富 士スピードウェイ、岡山国際サーキット、 ホンダモビリティランド、オートポリスら 各サーキット運営会社の協力を得て、日産 ・自動車大学校の学生を対象とした施設視 察会が行われている。

視察会には、日産栃木自動車大学校と日 産横浜自動車大学校、日産愛知自動車大学 校、日産京都自動車大学校、日産愛媛自動 車大学校の在校生から参加者が選抜されて おり、スーパーGTシリーズにおいてレー スウィーク始めに実施されている。

横浜ゴムのタイヤガレージでのタイヤ組 み換え作業などの視察に始まり、サーキッ トの管制室や計時室、ポディウム、放送 席、メディアセンター、車検場、メディカ ルセンターなどの視察に加え、レース運営

方法に関する座学、セーフティ カーを絡めたストレートでの記 念撮影や、実際のレーシングコ ースの同乗走行体験など、かな り盛りだくさんの内容となって いる。そして今年は、スーパー GT開催エリアのJAF地方本部 の協力による、JAFのモーター スポーツ統轄業務の解説や自動車 販売店との関わり等に関する座学講習も視 察会のプログラムに追加されている。

写真は富士スピードウェイで開催されたスーパー GT第2戦で実施された施設視察会の様子。レースコ ントロールのすべてを司る富士スピードウェイの管 制室は、競技役員の上層部そして、限られた関係者し か立ち入れない、いわばレースの聖域だ。

モータースポーツの世界は自動車業界の 中でも特殊な知識やノウハウが必要とされ る。その根幹となるビッグレースの運営方 法やサーキット施設の詳細を間近で視察で きるこれらの機会は、関係者から見てもか なり貴重であり、とても有意義なものだ。

この取り組みが今後も継続され、参加者 から将来のモータスポーツ業界を支える人 材が輩出されてくることに期待したい。

スーパーGT第2戦富士大会ではJAF静岡支部、第3戦鈴鹿大会ではJAF愛知支部が講義を担当。講習内容は、ロー ドサービス以外のJAFの業務を知り、モータースポーツに興味を持ってもらうことを目的としていた。

レース全体を見回したアナウンスをする必要がある 場内実況アナウンサーの仕事場も視察した。

入賞者しか上がれないポディウム。サーキットオリ ジナルのトロフィーを持ち記念撮影が行われた。

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「TIGP台北国際ジムカーナ・プライズ」が4年ぶりに開催 16のASNチームが参加し、新たな日本選手団3名が挑戦 4

PHOTO/TIGP/CMSA(Taipei International Gymkhana Prize/Chinese Taipei Motor Sports Association)  REPORT/JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

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今大会には16の国と地域の ASNから48名のドライバーが 参加し、男子ソロと女子ソロ、 男子ダブル、混合ダブルの4部 門で争われた。トヨタのカロー ラ アルティスを使ったノーマ ル車のワンメイクジムカーナ だが、連続するタイトターンの 処理と、ダブルでの二台が連 なって走行する方式には慣れ が必要で、多くの選手がその対 応に手を焼いたという。

が主催する「台北国際ジムカーナ・ プライズ(TIGP)」が4年ぶりに復活した。

2019年に大陸横断型のジムカーナとし て始まったこの大会は、CTMSの代表を務 めるクォン・ウィン・イェン博士によれば 「世界最高のジムカーナドライバーが競い 合うグラスルーツ競技の世界的な象徴とな り得るプラットフォームを提供し、誰もが 参加できる、安全で楽しいこの競技への幅 広い参加を促す」ことが目的だという。

日本代表は、これまでアジアでも絶大な 人気を誇る西原正樹選手と山野哲也選手ら が務めたが、このたび新たに川北忠選手と 西野洋平選手、伊藤なつき選手が日本選手 団として大会に臨んでいる。大会終了後に は「アジア・パシフィック ジムカーナワー キンググループ」と題した、ジムカーナの 将来に向けた意見交換会議も行われた。

HFDPの加藤大翔選手がフランスF4選手権で初優勝! イタリアF4選手権では山越陽悠選手が席巻中!!

PHOTO/FFSA ACADEMY、ACI REPORT/JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS] フランスF4選手権に参戦している加

イタリアF4選手権・山越陽悠選手

山越選手は全日本カートFS-125部門から OK部門へのステップアップを経て、2023 年はフランスF4選手権を戦い、今季はイタ リアF4選手権にシリーズ参戦中。

フランスF4選手権・加藤大翔選手

加藤選手は全日本カートFS-125部門でシ リーズ2位を獲得し、OK部門にステップ アップ。2023年にはホンダ・レーシングス クール鈴鹿を首席で卒業している。

藤大翔選手は、Hondaフォーミュ ラ・ドリーム・プロジェクト(HFDP)の育 成ドライバーとして、フランスのFFSAア カデミーとの協業で実戦修業を重ねてい る。そんな加藤選手が5月に開催された第 2戦レース3で初勝利を挙げ、シリーズ首 位に立つことになった。

また、同じ日本人ドライバーとしてイタ リアF4選手権には山越陽悠選手が参戦し ており、5月末に開催された第2大会では レース1とレース2で2戦連続ポール・ト ゥ・ウィンを達成。レース3でもポールを 獲得している。このイタリアF4には中村 紀庵ベルタ選手も参戦しており、中村選手 はF4 UAEでも好成績を残している。

今季の欧州ジュニア・フォーミュラでは 日本勢が世界から注目を浴びている。角田 裕毅選手を筆頭に、海外で孤軍奮闘する彼 らがさらに飛躍することを祈るばかりだ。

2023年度 事業報告ならびに収支報告 (2023年4月1日より2024年3月31日まで)

2023年5月、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が5 類感染症に移行したことにより、3年余り続いた国のコロナ 対策が大きな節目を迎えた状況下において、主要統計とし ての競技会公認件数及びライセンス発給件数は、前年と比 較していずれも僅かに減少した。

しかしながら、競技開催や振興施策における新たな取り 組みとしては、東京の公道を利用した初めてのFIA世界選 手権競技会開催や、「仮想・電子自動車競技」、いわゆるeモ

(1)競技会の公認

① 合計784件*の公認競技会が開催された。うち国際 格式は18件*であった。

② 入門者向け競技「オートテスト」を93回*開催し、の べ4,293名*が参加した。

【競技会公認件数*】

(2)選手権競技会の認定

全日本選手権および地方選手権競技会として、303件* の公認競技会を認定した。

【選手権競技会等認定件数*】 種 別 内 訳 件 数

ータースポーツを初めて統轄団体として公認したり、あるい はスポーツ庁が進めるビジネスモデルとのコラボレーショ ン等、さまざまな新しい方策に取り組むことができた1年で あった。

詳細は以下の通り。

注)以下のデータのうち、*印は2023年1月~12月までの1 年間の実績である。

(4)モータースポーツライセンスの発給

四輪各種ライセンス66,688件*、カート各種ライセン ス4,874件*を発給した。

【ライセンス発給件数 四輪*】

【ライセンス発給件数 カート*】

地方選手権 FIA-F4 7 Formula Beat 12 スーパーFJ 25 フォーミュラリージョナル 6 ツーリングカー 12 ラリー 全日本ラリー選手権 8 地方ラリー選手権 29 ジムカーナ 全日本ジムカーナ選手権 8 地方ジムカーナ選手権 61 ダートトライアル

全日本ダートトライアル選手権 8

地方ダートトライアル選手権 57 サーキットトライアル 地方サーキットトライアル選手権 13

カート

全日本カート選手権 9

地方カート選手権 15 ジュニアカート選手権 20

合 計 303

※レースおよびカートについては、大会数を件数として記載しています。

(3)車両公認

国内車両公認申請31件*を承認した。

(5)登録クラブの活性化への寄与

① 合計934件*のJAF登録クラブ・団体の登録を行った。

② 全国8地域のJAF登録クラブ地域協議会との連絡 会議を、4月、7月、11月に開催した。

【JAF登録クラブ・団体の登録件数*】

分 類

四輪

特別団体

(8)新型コロナウイルス感染症対策  新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が5月8日よ り5類感染症に移行した事により、基本的な感染対策の 方針を、それまでのJAFからの指針に基づくものから、 参加者個人・オーガナイザー・クラブ・団体・関係者の状 況に応じた自主的な判断と取組を基本とすることへと 転換した。

特別団体

加盟団体

(6)各種委員会・専門部会の開催

モータースポーツ委員会、専門部会および各部会に属 する作業部会を合計99回開催した。

【委員会開催件数*】

※全日本選手権審査委員グループはレース、ラリー、ジムカーナ/ダートトライアル、 全日本/ジュニアカート、ラリーオブザーバーの5カテゴリー合計。

(7)競技会審査委員の派遣

全日本選手権競技会に対し、44競技会に審査委員を派 遣した。

【競技会審査委員の派遣*】

※派遣競技会数で記載しています。

(9)オートテストの促進  モータースポーツ入門者向け競技「オートテスト」は、 競技会が93回(前年同期112回)開催され、参加者数は 4,293名(同3,085名)であった。

(10)D1グランプリシリーズへのJAFカップ付与/新た に「日本ドリフト選手権規定」を制定  11月に開催された公認ドリフト競技「D1グランプリ シリーズ第10戦」(東京都江東区)に、初めて「JAFカ ップ」のタイトルを付与した。また同競技の更なる振興を 図る目的から「日本ドリフト選手権規定」を制定し、2024 年の同シリーズを初めて「選手権」として認定した。

(11)日本で4つのFIA世界選手権競技会を開催  2024年3月30日にFIAフォーミュラE世界選手権 が、東京ビッグサイト・有明エリアで一般道路や駐車場 (東京ビッグサイト敷地内)を利用した特設サーキットに おいて日本で初めて開催され、2023年に開催されたW EC(9月・富士スピードウェイ)、F1(9月・鈴鹿サーキッ ト)、WRC(11月・愛知/岐阜)と合わせて、年度として は4つのFIA世界選手権競技会を開催した。

(12)「第22回JAF鈴鹿グランプリ」の開催  「JAFグランプリ」のタイトルが全日本スーパーフォ ーミュラ選手権の最終戦にかかり、10月27~29日に鈴 鹿サーキットで「第22回JAF鈴鹿グランプリ」として 開催された。本大会の大会名誉会長には坂口正芳JAF 会長が就任した。

(13)環境対応車両によるモータースポーツ競技の普及促進  2022年に新設したカーボンニュートラル分科会にお ける、2030年二酸化炭素排出量半減、2050年カーボン ニュートラル状態を目標とした環境対応ロードマップ の公表への準備対応として、主要競技会参加車両へのロ ーカーボンフューエル供給および需要に関する各部会 の意見とりまとめや、全日本選手権などの主要競技会に おける二酸化炭素排出量の測定(算定)にかかる調査を 実施した。

(14)JAFが公認する唯一のeモータースポーツ競技会を 初めて開催

2022年8月に実施した「国内eモータースポーツリー グ開催に係るパートナー企業の公募」を経て、2023年 12月、一般社団法人日本eモータースポーツ機構(Ja pan e-Motorsport Organizati on=略称JeMO)により、初めて、そして唯一のJA F公認のeモータースポーツ国内リーグが立ち上がっ た。12月16日にはリーグとして目指すコンセプトを披露

するイベントが、事業共創パートナー企業、参戦チーム、 後援団体・企業、メディア等の関係者向けに実施され、事 業プレゼンテーションを始め、eモータースポーツのシ ョーケースとして、リアルとバーチャルのドライバーを 融合させてのエキシビションレースも行われた。

(15)モータースポーツにおける安全性向上への取り組み

FIA開発基金の助成を活用し、全日本ラリー選手権 第3戦において、オフィシャルおよび選手を対象とした 救急救出訓練を開催し、約120名が参加した。また全日 本カート選手権SUGO大会においては、カート競技にお ける事故発生時の応急処置や救助技術に関する講習会 を開催し、約20名が参加した。

FIA世界ラリー選手権(WRC)ラリージャパン会場 では、ハイブリッド車両における救助技術や車両の取り 扱いならびに応急処置に関する講習会を実施し約100 名が参加、2024年2月のJAFモータースポーツジャパ ン in お台場2024会場では、約1か月後に開催を控え たFIAフォーミュラE世界選手権東京大会のボラン ティアオフィシャルを対象に、日本初の本格的な公道レ ースに備えて映像を利用しながら講習会を開催した。

(16)「FIA ハラスメント防止および差別禁止の方針」日本 語訳の公開  日本のASN(モータースポーツ統轄団体)としてFI A(国際自動車連盟)のハラスメント防止および差別禁 止の方針を尊重し、モータースポーツに関わるすべての 従事者と関係者に対して、公正で尊重される環境を提供 することを目指して日本語訳を公開した。

(17)ウィメン・イン・モータースポーツ活動  9月に開催されたFIA世界耐久選手権(WEC)競技 会場(静岡県・富士スピードウェイ)において、同選手権 に参加する女性ドライバーチームメンバーと、日本の女 性レーシングドライバーらによる交流イベント「Mee t and Greet」が開かれ、フィジカル面、メンタ ル面を含めた現役ドライバーならではの活発な意見交 換が成された。

(18)ドライバー・オブ・ザ・イヤー2023の実施  モータースポーツの認知向上を目的として、その年最 も輝いたモータースポーツ競技運転者を決定するドラ イバー・オブ・ザ・イヤー2023を実施した。ファン及び マスコミの投票により、山野哲也選手が3代目の受賞者 に選出された。

(19)スポーツ庁・オープンイノベーション推進プログラム に参画

7月、スポーツ庁が推進するスポーツ産業における新 たなアイデアと技術の発展を促進することを目的とし た、オープンイノベーション推進プログラムのコラボレ ーションパートナーとして、JAFモータースポーツが エントリーされた。オープンイノベーションは、スポーツ 領域に限らない、最先端のテクノロジーやサービス・プ ロダクトと、スポーツ協会/団体が持つ課題やアセット

を掛け合わせることで新たなビジネスを創出し、スポー ツ産業の拡張を目指している。

(20)大規模イベント「JAFモータースポーツジャパン in お台場2024」の主催

JAF主催によるモータースポーツ振興の大規模イ ベント「JAF モータースポーツジャパン in お台場 2024」を、2024年2月24~25日に東京都内で開催し た。全日本ジムカーナ選手権出場選手やD1グランプリ 出場選手のデモンストレーション走行、競技車両展示な どのイベントをはじめ、JAFブースでは元F1ドライバ ーやジャーナリストのトークショー、写真展などさまざ まなコンテンツを実施した。来場者は2日間でのべ 52,000人に及んだ。

(21)JAFモータースポーツ表彰式の開催

2023年に国内トップカテゴリーで優秀な成績を収め た選手およびチーム等の栄誉を称え、11月24日に「JA Fモータースポーツ表彰式」を東京都内のホテルで開催 し、各カテゴリーのチャンピオンおよび上位入賞者等 271名を招待した。プレゼンターとして、室伏広治スポ ーツ庁長官が登壇した。

(22)JAF創立60周年記念ヘルメットの製作  2023年に日本国内で開催されたF1、WEC、WRC の3つのFIA世界選手権競技会に出場した、各選手の 直筆サイン入りヘルメットを製作し、JAF創立60周 年記念として各種イベント等で展示した。

(23)収支報告

2023年度におけるモータースポーツ業務に直接係わ る収入は約3.89億円(事業収入(ライセンス所有者の会 費を除く):クラブ・団体登録料、ライセンス発給料、競技 会組織許可料、車両公認料等)、支出は約8.32億円(事業 費:委員への謝金・出張費、選手権管理用器具の購入・管 理費、JAFスポーツ誌製作費、WEB製作費等)であり、 収支差額約4.43億円の赤字となった。

(24)罰金等の金額について

公認競技会で納められた罰金および没収された抗議 料または控訴料の2023年度末の残高は以下のとおりで ある。

なお、罰金および没収された抗議料または控訴料は、 国内競技規則11-8(罰金収入の措置)に従ったJAFの 特別基金に繰り入れ、モータースポーツの振興および福 祉目的のために使用している。2023年度はFIAの基 金助成を受けた安全講習会を4回開催し、その費用の一 部として支出した。

2023年度末罰金残高 7,099,628円 <内訳> 2022年度罰金等残高 7,275,270円 2023年度罰金等総額 3,206,804円 2023年度の措置等(支出)総額 3,382,446円

INFORMATION from JAF

モータースポーツ公示・JAFからのお知らせ(WEB)一覧(2024年3月23日~2024年6月27日)

公示

日付 公示No. タイトル

2024年4月1日 [2024-WEB027]

2024年JAF国内競技車両規則の一部改正について 2024年4月1日 [2024-WEB028] 国内スポーツカレンダー登録規定の一部改正について 2024年4月5日 [2024-WEB029]

2024年4月11日 [2024-WEB030]

2025年JAFカップオールジャパンサーキットトライアル規定

2024年JAFモータースポーツ賞典規定の制定について 2024年4月11日 [2024-WEB031] ラリー競技におけるスペシャルステージ等の一般交通を遮断するコースの安全対策の徹底についてのお願い

2024年4月12日 [2024-WEB032]

2024年4月15日 [2024-WEB033]

2024年4月15日 [2024-WEB034]

2024年4月17日 [2024-WEB035]

2024年地方レース選手権カレンダー【4月現在】

2024年JAF地方カート選手権新潟シリーズ第3戦及び第4戦の開催日程の変更について

2024年JAFジュニアカート選手権SUGOシリーズ第2戦から第6戦の開催日程の変更について

2024年JAF地方ラリー選手権競技会の開催名称の変更について

2024年4月22日 [2024-WEB036] スクーデリア・フェラーリ・ドライバー・アカデミー(FDA)アジア太平洋・オセアニア選抜プログラムのご案内

2024年4月26日 [2024-WEB037] 2024年全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権もてぎ大会延期について

2024年4月30日 [2024-WEB038]

2024年日本ダートトライアル選手権の競技会名称変更について 2024年5月1日 [2024-WEB039]

2024年JAF全日本/ジュニアカート選手権開催日程の変更について

2024年5月1日 [2024-WEB040] 2024年JAF地方ラリー選手権開催取り下げについて 2024年5月16日 [2024-WEB041] 2025年日本ジムカーナ/ダートトライアル選手権規定の制定 2024年5月16日 [2024-WEB042] 2024年全日本/ジュニアカート選手権統一規則「ヒート」についての解釈 2024年5月16日 [2024-WEB043] 2025年日本ジムカーナ/ダートトライアル選手権規定の誤記訂正について 2024年5月17日 [2024-WEB044] 2025年JAFカップオールジャパンジムカーナ/ダートトライアル規定の制定 2024年5月17日 [2024-WEB045] 登録車両・ロールケージ公認申請一覧 2024年5月20日 [2024-WEB046] 2024年日本ジムカーナ選手権の共催オーガナイザー追加について 2024年5月20日 [2024-WEB047] 2024年地方レース選手権カレンダー追加について 2024年5月28日 [2024-WEB048] 全日本カート選手権EV部門における変更について 2024年5月28日 [2024-WEB049] スピード競技開催規定の改正およびスピード競技開催規定細則:ドリフトテスト開催要項の制定について 2024年5月31日 [2024-WEB050] 2025年日本ジムカーナ/ダートトライアル選手権規定の訂正について 2024年6月7日 [2024-WEB051] JAF認定eモータースポーツイベント開催ガイドラインの改定について 2024年6月10日 [2024-WEB052] モータースポーツ審査委員会裁定について(2024年4月21日開催競技会) 2024年6月17日 [2024-WEB053] ラリー競技におけるスペシャルステージ等での火災等の安全対策の徹底について 2024年6月24日 [2024-WEB054] ドリフトテストオーガナイザーガイドラインについて 2024年6月25日 [2024-WEB055]

2025年国際競技カレンダー申請締切日の特別措置について 2024年6月25日 [2024-WEB056]

2024年6月26日 [2024-WEB057]

2024年6月26日 [2024-WEB058]

2024年全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権もてぎ大会日程について

2024年モータースポーツ賞典規定の訂正とお詫び

2024年日本ジムカーナ選手権の開催場所変更について 2024年6月27日 [2024-WEB059] FIA Motorsport Games 2024の応募について JAFからのお知らせ 日付 タイトル

2024年4月1日 モータースポーツ公示・JAFからのお知らせ一覧(2024年3月1日~3月31日)

2024年4月12日 2024 Taipei International Gymkhana Prizeの開催について

2024年4月15日 モーターファンフェスタ2024にて竹岡圭氏による日本ドリフト選手権PRトークショーを開催! 2024年5月1日 モータースポーツ公示・JAFからのお知らせ一覧(2024年4月1日~4月30日) 2024年5月1日 ライセンス更新はがきの利用期限の誤りについて

2024年5月10日 ライセンス更新はがきの再発送について

2024年5月15日 自動車技術会フォーラム開催について

2024年5月31日 ドリフトテストin那須 開催決定! 2024年6月3日 モータースポーツ公示・JAFからのお知らせ一覧(2024年5月1日~5月31日) ※上記公示・お知らせ(WEB)一覧の詳細は、JAFモータースポーツサイト(https://motorsports.jaf.or.jp/)内の「>公示・JAFからのお知らせ」で閲覧することができます。

2024年JAFモータースポーツ表彰式のご案内 【日時】2024年11月29日(金) 【場所】グランドニッコー東京 台場 〒135-8701 東京都港区台場2-6-1 【ご招待者】

1. JAFモータースポーツ名誉委員

2. JAFモータースポーツ特別賞受賞者

3.ドライバー・オブ・ザ・イヤー2024受賞者 ー2024年JAFモータースポーツ賞典規定に基づき授与ー

4. FIA-F4選手権 1位~6位ドライバー・チームチャンピオン

5. FORMULA REGIONAL選手権 1位~6位ドライバー・チームチャンピオン

6. JAFカップオールジャパンジムカーナ チャンピオン

7. JAFカップオールジャパンダートトライアル チャンピオン

8. 全日本ジムカーナ選手権 1位~6位ドライバー

9. 全日本ダートトライアル選手権 1位~6位ドライバー 10. 日本ドリフト選手権 単走1位ドライバー・追走1位ドライバー・総合1位~6位ドライバー 11. 全日本ラリー選手権 1位~6位ドライバーおよびコ・ドライバー 12. 全日本カート選手権 1位~6位ドライバー 13. 全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権  1位~6位ドライバー・チームチャンピオン

14. FIAインターナショナルシリーズ スーパーGT GT300

1位~3位ドライバー・チームチャンピオン

15. FIAインターナショナルシリーズ スーパーGT GT500

1位~3位ドライバー・チームチャンピオン

16. 全日本スーパーフォーミュラ選手権  1位~6位ドライバー・チームチャンピオン・メカニック

※日程により当表彰式以外での授与となる場合がございます。

※JAFから招待状をお送りした方のみご入場いただけます。上記は変更となる場合もございます。 ※詳細はJAFモータースポーツサイト「2024年JAFモータースポーツ表彰式」にてご確認ください。

だ運転免許を取れない年齢から 本物のレースに触れられる、才 能のゆりかご。もっとも手軽に ローコストで楽しめる、モータースポーツ の入り口。走りの面でもエンジニアリング の面でも探求するほど深みが見えてくる、 高度なコンペティションの世界……。この ようにレーシングカートはさまざまな顔を 持っている。日本カート選手権は、そんな カートレースの頂点に位置するものだ。

この日本カート選手権は、日本一のカー トドライバーの座を競い合う全日本カート 選手権(OK部門/FS-125部門/FP-3部 門/EV部門)、国内各エリアで最強ドライ バーを選び出す地方カート選手権(FS-125 部門/FP-3部門)、ジュニア世代のナンバ ーワンを決めるジュニアカート選手権(ジュ ニア部門/ジュニアカデット部門)という3 つの選手権を制定している。

地元のアマチュアドライバーやモーター スポーツ初心者が主な参加者となるローカ ルレースが、基本的にひとつのサーキット でシリーズ戦を行うものであるのに対して、 日本カート選手権の3つの選手権では、全 国各地のサーキットを転戦しながらチャン ピオン争いが繰り広げられる。

そんな日本カート選手権では今季、それ ぞれの選手権に大きな変更が加えられた。

ある部門ではレースフォーマットが一変し、 ある部門では新たなワンメイクエンジンが 採用され、ある部門ではシリーズの基本ス

選手権規定がアップデート! カートの“イマ”を読み解く

日本カート選手権 Review

PHOTO/今村壮希[Souki IMAMURA]、長谷川拓司[Takuji HASEGAWA]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS] REPORT/水谷一夫[Kazuo MIZUTANI]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

タイルがガラリと変わり……。そうしてス タートした2024シリーズは、いずれの部 門でも活気のあるレースが繰り広げられて カテゴリーの再編、レースフォーマットの大幅変更と、 2024年の日本カート選手権は大きなアップデートを受けて幕を開けた。 その結果、各地の大会は活況を呈し、熱い戦いが繰り広げられている。 重大な転換点ともいえそうな今シーズンのそれぞれの選手権が、 どう変わったのか最新事情を改めて紹介していこう。 2024

いる。そんな日本カート選手権の“ニュー スタイル”を、各部門の2024シリーズ開 幕戦の様子を元に紐解いていこう。

特集 カート/KART

全日本カート選手権 OK部門

部門はFIA世界カート選手権な どでもレースが実施されてい る、国際カテゴリーの最高峰。

水冷125ccリードバルブ吸気のエンジン は、公認を受けたものの中から各自が選ぶ ことができる“マルチメイク”規定で、チュ ーニングも可能な、まさにスプリントカー トレースの頂点だ。

そのOK部門は今季、大きな変貌を遂げ た。変化の根幹は、AUTOBACS GPR KA RTING SERIES(通称GPR)のOKシリー ズに全日本選手権のタイトルがかけられた ことにある。2023年にスタートしたGPR は、OKを含む4つのクラスで日本各地のサ ーキットを転戦する、上級ドライバー向け のシリーズ戦だ。

この変更に伴い、レースフォーマットはほ ぼGPRの規定に沿った形に。1大会の流れ は、公式練習→タイムトライアル→スーパ ーポール→第1レース決勝ヒート→第2レー ス決勝ヒートというもの。2023シリーズと 比較すると、1大会2レース制は変わってい ないが、予選ヒートとスーパーヒートがなく なり、1大会のセッション数はスーパーポー ルを含めて8から5に減少した。また、予選 /スーパーヒートがなくなったことで、その 合計ポイント順(最大10位まで)に与えられ ていたシリーズポイントもなくなっている。

全日本として目新しいのはスーパーポー ルだ。これは出走台数が20台を超え、タ イムトライアルがドライタイヤ装着の条件 下で実施された場合に行われるもの。タイ ムトライアルの上位8名(タイムトライアル

が2グループで行われた場合は各グループ の上位4名ずつ)が、単独走行で2周のタイ ムアタックを行い、その結果によって第1 レース決勝ヒートのスターティンググリッ ドのポールポジションから8番手までが決 まる。なおスーパーポールで各車が装着す るのは、このセッション専用に1セットず つ支給される新品のドライタイヤだ。

また第2レース決勝ヒートのスターティ ンググリッドの決定方法も刷新され、第1 レース決勝ヒートのベストタイム順で決ま ることになった。これにより第1レース決 勝ヒートを走るドライバーたちは、レース のポジション争いが落ち着いても、第2レ ース決勝ヒートに向けてスピードを緩める ことが難しくなった。

その一方で、2023シリーズではタイムト ライアル〜第1レース決勝ヒートと、第2 レースの予選ヒート〜決勝ヒートで、それ ぞれ1セットの新品タイヤを使うことがで

きたのだが、2024シリーズでは1大会(公 式練習を除く)を1セットの新品タイヤで戦 うことになった。ゆえにタイヤマネジメン トの重要性も非常に高まっている。

新シリーズでは全戦のプロモーションを GPRが担い、すべての大会を通じてレース 全体を運営。公式セッションはレースウィ ーク最終日の日曜日のみだが、金曜日から GPR公式のタイミングシステムが稼働して 各者のタイムを公開。パドックにはゲスト とレース参加者の休憩場所になる大きなホ スピタリティテントが設けられている。表 彰台のバックボードは四輪レースのビッグ イベントさながらのデジタルサイネージが 設置され、これはセッション中には大型タ イミングモニターとして機能している。

各大会にはシリーズを通じて同一のレー スディレクターとテクニカルディレクター がGPRから派遣され、レースの判定や車 両検査基準などの平準化が図られる。これ

競技の格式 国内格式 参加資格 国際E、国際F、国内A(要実績) ※1 出場できるシリーズの重複可 年齢 当該年度14歳以上

シャシー CIK-FIA公認またはJAF公認を取得している製造 者によって製造されたもの 1台

エンジン 「JAF国内カート競技車両規則」および当該年の 全日本選手権OK部門適用車両規定に合致した CIK-FIAまたはJAF公認エンジン

2基

タイヤ 住友ゴム工業株式会社 <ドライ>DHM CIK(PRIME) <ウェット>KT14 W15 CIK 1セット/1大会

競技の方式 公式練習→タイムトライアル(予選)→スーパー ポール→第1レース決勝ヒート→第2レース決勝 ヒート ※2

レース数 1大会2レース制(年間5大会/10戦)

最低重量 150kg

※1 ①当該年の前年の全日本選手権のOK部門に出場。②過去の全 日本選手権Super KF部門、KF1部門あるいはKF部門で、年間 総合順位が10位以内。③当該年の前年の全日本選手権FS-125 部門で、年間総合順位が 10 位以内、または前年の全日本選手 権 FP-3 部門で、年間総合順位が 3 位以内。④JAF によって特 に認められた者(海外での実績等)。

※2 第2レース決勝ヒートのグリッドポジションは第1レース決勝 ヒート中のベストタイム順。

パドックでひと際目を引く大きなデジタルサイネー ジは、国内最高峰のカートレースにふさわしい華や かさをサーキットにもたらしている。

表彰式で上位3名に授与されるトロフィーは、GPR代 表・松浦佑亮氏のこだわりで、シリーズ10戦すべて で異なるデザインになっている。

「ゲストがサーキットで快適に過ごせるように」と設 けられたホスピタリティテント。決勝前日にはドライ バーズブリーフィングの会場にも使われる。

もてぎで大会ではベテランとルーキーがそれぞれに輝きを放ち、熱い新旧対決にサー キットが沸いた。決勝中には、最年少の酒井龍太郎選手(手前)と最年長の三村壮太郎 選手(奥)が互いの意地を見せながらポジション争いを繰り広げた。

マシンの面で目新しいのは、国際規定に準じて採用されたCIK-FIA公認マフラーだろ う。チャンバーの先端から上に向かって湾曲したパイプが設けられ、そこから消音装 置へとつながっていく形となった。

は参加者やエントラントのシリーズに対す る裁定の信頼感を向上させるものと言える だろう。ちなみに2024年のレースディレ クターは、カート出身でプロドライバーの 塚越広大氏が務めている。

これらの改変を受けて、全5大会/10 戦の2024シリーズがスタートした。する と、レースの光景も大きな様変わりを見せ るように。4月20〜21日に栃木県茂木町 のモビリティリゾートもてぎ北ショートコ ースで行われた2024シリーズ最初の大会 には、大量31台が出走、パドックは活気 とにぎわいに満ちていた。その大きな特色 は新鋭の多さで、実に21名が全日本OK 部門初参戦のドライバーだった。

この大会でスーパーポールのトップタイ ムを叩き出し、決勝でも開幕2連勝を飾っ たのは2018年OK部門デビューの23歳、

皆木駿輔選手だった。また、最年長33歳 の三村壮太郎選手もスーパーポール3番手 と速さを見せ、ベテラン勢の元気の良さが 目立つ大会ともなった。

一方で、ルーキーたちも鮮烈なスピード を披露。ふたつの決勝で皆木選手と接戦を 繰り広げて勝利にあと一歩と迫ったのは、 最年少13歳の酒井龍太郎選手だった。

続いて6月8〜9日、岐阜県瑞浪市のフ ェスティカサーキット瑞浪での第2大会で は、出走29台の中、スポット参戦のプロ ドライバー佐藤蓮選手が第3戦を快勝、そ して今季デビューの酒井涼選手が第4戦で 初優勝を飾っている。

各世代がそれぞれに実力を発揮し、バラエ ティ豊かな顔ぶれが輝きを放っている新生・ 全日本OK部門。シリーズは最終戦まで先の 読めない熱い戦いが繰り広げられそうだ。

重い責任に応えて、より良いレースを 2023年はGPR初年度で手探りの部分もあったんです が、参加者の方々は我々が提案するものをほぼ受け入れ てくださったのかな、と感じています。2024年はOKな ど3つの部門が日本選手権になって、我々としてはより 大きな責任を感じています。今までやってきたスタイル を維持しつつ、細部を調整して、さらにいいレースをつ くっていきたいと思っています。

GPR代表 松浦佑亮氏

全日本カート選手権

部門と同じ水冷125ccリードバ ルブ吸気ながら、ワンメイク無 改造のエンジンを使用するFS125クラス。2023年はFS-125CIK部門と FS-125JAF部門の、エンジンパワーに差 を設けたふたつの部門で全日本選手権が行 われていた。今季はそれが改編され、2022 年までと同様にFS-125部門としてひとつ の選手権が行われることになった。

シリーズ戦はOK部門とは別建てのスケ ジュールが組まれており、1大会2レース制 にて全3大会/6戦が実施される。なお 2022年まで同部門で実施されていた東西 2地域制は今シーズンも採られていない。

2024シリーズの開催コースは千葉県市 原市の新東京サーキット、宮城県村田町の スポーツランドSUGO西コース、岡山県和

方カート選手権は、日本全国 を北海道地方/東北地方/関東 地方/中部地方/近畿地方/中 国地方/四国地方/九州地方と8つの地域 に区分して、各地域でひとつまたは複数の サーキットでシリーズを構成する選手権 (複数のサーキットでシリーズを行う場合 はいくつかの地域にまたがることも可能)。

言わば、各地の最強ドライバーの座を競い 合うシリーズ戦と位置づけられている。

2024年は3つのサーキットでそれぞれ

気町の中山カートウェイ。今季の日本カー ト選手権でもっとも東に位置するSUGO西 ともっとも西に位置する中山を含む、非常 に広い範囲を転戦するシリーズだ。ポイン トランキング集計の規定は2023年と同じ で有効50%。つまり、より大きな3戦分の ポイントの合計で順位が決まる。

レースフォーマットは、2023年のFS125CIK部門で行われていたスーパーヒー トがなくなり、公式練習→タイムトライア ル→予選ヒート1→決勝ヒート1→予選ヒ ート2→決勝ヒート2という形になった。 各戦に予選ヒートがあり、そこにシリーズ ポイントが与えられるのは、OK部門と異な るところだ。

5月18〜19日に開催された今季開幕の 新東京大会には、2023年のFS-125CIK部 のシリーズ戦が組まれ、栃木県茂木町のツ インリンクもてぎ北ショートコースで全6 戦の「もてぎシリーズ」が、新潟県胎内市の スピードパーク新潟で全4戦の「新潟シリ ーズ」が、三重県鈴鹿市の鈴鹿サーキット 南コースで全5戦の「鈴鹿シリーズ」が繰り 広げられている。開催されるレースは、も てぎシリーズと鈴鹿シリーズがFS-125部 門、新潟シリーズがFP-3部門だ。

近年の地方選手権は、以前の「全日本へ の参戦を目指すドライバーたちのステップ

競技の格式 国内格式 参加資格 国内A以上、国際F 他部門への重複出場可 年齢 当該年度14歳以上 シャシー CIK-FIA公認またはJAF公認を取得 している製造者によって製造された もの 1台 エンジン 「JAF国内カート競技車両規則」およ び当該年の全日本選手権FS-125部 門適用車両規定に合致したJAF登録 エンジンで、JAFが指定したIAME PARILLA X30エンジン 1基 タイヤ 住友ゴム工業株式会社 <ドライ>SL6 <ウェット>SLW2 1セット/1戦 競技の方式 公式練習→タイムトライアル→予選 ヒート1→決勝ヒート1→予選ヒート 2→決勝ヒート2 レース数 1大会2レース制 (年間3大会/6戦) 最低重量 155kg

門/FS-125JAF部門のどの大会よりも多 い25台がエントリーして、サーキットは終 日にぎやかな歓声に包まれた。

それに続く6月15〜16日のSUGO西大 会では、OK部門にも参戦中の酒井龍太郎選 手が第3戦と第4戦を連勝。開幕戦から土 つかずの4戦連続ポール・トゥ・ウィンを 達成して、何と早くもチャンピオンを確定 させている。残る中山大会(第5戦/第6 戦)は9月21〜22日の開催だ。

冷100ccピストンバルブ吸気のヤマハKT 100SECエンジンをワンメイク 無改造で使用するFP-3部門は、

パワーの面でも予算の面でも、 全日本カート選手権の中でもっとも手軽に 参加できるものだ。

地方選手権としてこの部門が始まった当 初は、当該年18歳以上のドライバーを対 象としたホビー色の濃いレースだった。そ れが現在は出場年齢の下限が引き下げられ て、ジュニアドライバーらが全日本デビュ ーの場として参戦してくるステップアップ カテゴリーとしての色合いが強まり、それ につれてプロドライバーを目指す選手の姿 も年々増えている。

その一方で、ヤマハKT100SECが日本 各地のローカルレースで長年にわたって多 数のドライバーに愛用されているエンジン ということもあって、大会ごとに地元のド ボード」という色合いから変わってきてお り、腕磨きのために多くのレースをこなし たいというドライバーの参加が増加してい る。特にもてぎシリーズと鈴鹿シリーズで は現役の全日本ドライバーの姿が多く見ら れるようになり、中にはOK部門の優勝経 験者が参戦してくる例もあった。

一方、始まって2年目の新潟シリーズに はステップアップ志向のドライバーとホビ ー志向のドライバーが混在しているのが特 徴だ。以前からの地方選手権の“ローカル レース以上、全日本未満”というような空 気感が残っている。

競技の格式 国内格式 参加資格 国内A以上、国際F、国際G ※1 他部門への重複出場可 年齢 当該年度13歳以上

シャシー CIK-FIA公認またはJAF公認を取得 している製造者によって製造された もの 1台

ライバーが多くスポット参戦してくるのは、 以前から変わらないこの部門の特色だ。

2024年のレギュレーションは、技術的 な面でも競技の面でも大きな変更はない。

大会はすべてFS-125部門と同日開催で行 われ、全3大会/6戦で選手権が競われ る。ポイントシステムもFS-125部門と同 一で、有効3戦の集計によって最終ランキ ングが決定する。

2024シリーズはここまで新東京サーキ ットでの大会(第1戦/第2戦)とスポーツ ランドSUGO西コースでの大会(第3戦/ 第4戦)が終了している。新東京大会には 22台が、SUGO西大会には13台が参加し た。大会ごとに参加台数が大きく変化する のは、スポット参戦が多くなる部門ならで はのことと言えよう。

2023年から同一大会で他部門への重複 出場が認められるようになり、今季はいよ

エンジン 「JAF国内カート競技車両規則」およ び当該年の全日本選手権FP-3部門 適用車両規定に合致したピストンバ ルブ方式のJAF公認エンジンで、開 催場所別にJAFが指定したヤマハ KT100SECエンジン 1基 タイヤ 住友ゴム工業株式会社 <ドライ>SL22 <ウェット>SLW2 1セット/1戦

日本カート選手権

2024

競技の方式 公式練習→タイムトライアル→予選 ヒート1→決勝ヒート1→予選ヒート 2→決勝ヒート2

レース数 1大会2レース制 (年間3大会/6戦)

最低重量 150kg

※1 当該年の前年のジュニア選手権ジュニア部門で 夫々のシリーズ毎に年間総合順位が1位で、当該年度13 歳の者。

いよFS-125部門とFP-3部門の両方に参 加するドライバーが出現。両部門の走行ス ケジュールが連続している場合、先の部門 を走り終えたドライバーが、重量チェック を終えるとあわただしく次の部門のスター ティンググリッドへと駆けだしていく姿も 見られるようになった。

もてぎシリーズと鈴鹿シリーズには全国の強豪たちが集結して 切磋琢磨している。そんな中、2023年の鈴鹿シリーズでは新鋭の 箕浦稜己選手が戴冠を果たした。

ローカルのホビーレースでも定番のヤマハKT100 SECエンジンを使う新潟シリーズは、今もっとも 敷居の低い地方選手権と言えそうだ。

全日本カート選手権

本のレース史上で初めて、内燃 機関以外のパワーユニットを使 う全日本選手権として2022年 に注目のスタートを切った全日本カート選 手権EV部門は、3年目のシリーズを迎え、 その姿を大きく変えることとなった。

最大の変更点は“チーム制”の導入だろ う。今季の全日本EV部門は、四輪レース のトップカテゴリーで活躍するレーシング チームや、モータースポーツを積極的に支 援する企業がオーナーとなった6つのチー ムがシリーズに参戦している。各チーム2 名、計12名のドライバーで選手権が繰り 広げられることになった。

そのドライバーは、書類審査を経て2回 のオーディションに参加した19名を対象 に、各チームによる公開ドラフト会議を行 って、シリーズの参加者と各々の所属チー ムが決定された。ドラフト会議で選出され たのは8名。他の4名は前もってチームが

第2戦以降の舞台は都市型サーキットのCCTB。プラス チックバリアで形成されたタイトなコースだ。

ノミネートした“選抜ドライバー” で、そこには佐藤蓮選手、小高一斗 選手、イゴール・フラガ選手とプロ ドライバーたちの名前が並んでい る。参加者の中に4名の女性ドライ バーが含まれていることも、大きな 注目ポイントだった。

競技の格式 国内格式 参加資格 国内A以上、国際E、国際F ※1 他部門への重複出場可 年齢 当該年度14歳以上

シャシー 株式会社トムスが用意したものを使用 1台 パワーユニット 株式会社トムスが用意したものを使用 1基 モーター・ バッテリー 株式会社トムスが用意したものを使用 モーター1個、バッテリー2個 ※2 タイヤ 主催者が管理、配布するものを使用 1セット/1戦

競技の方式 公式練習→タイムトライアル(1周計 測)→予選ヒート(4グループ総当たり 戦)→決勝ヒート(予選上位6名) ※3 レース数 1大会1レース制 ※4 (年間4大会/5戦)

最低重量 198kg

※1 大会総合事務局が適格と認めるドライバーについて は、特別にエントリーを認めることとする。

※2 毎レース抽選により決定。

※3 SUGO西大会のみ公式練習→タイムトライアル(2周 計測)→第1戦決勝(全車出走)→第2戦決勝(全車出 走)。第2戦決勝スターティンググリッドはタイムトラ イアルのセカンドタイム順位結果を採用。

※4 第1戦/第2戦のみ1競技会2レース制。

シリーズは全4大会/5戦。そのキックオ フとなるスポーツランドSUGO西コースで の大会のみ2レース制で、以降は東京都江 東区のシティサーキット東京ベイ(CCTB) にて1レース制の3つの大会が実施される。 有効4戦のポイント集計で最終ランキング が決定することとなった。

6月15〜16日にSUGO西コースで行わ れた開幕大会。パドックに並べられたトム ス製のワンメイクマシン『EVK22』は、2台 ずつ美しいチームカラーでラッピングされ、 これまでのカートレースにない華やかな空 気をサーキットに放っていた。シャシーの セッティングが一部可能になったことも、 2024シリーズのレギュレーションの重要

ドラフト会議に集まった6チームのオーナーたち。会議 の模様はライブ配信された。

な変更点と言えよう。

SUGO西大会は予選ヒートがなく、公式 練習→タイムトライアル→第1戦決勝→第 2戦決勝のフォーマットでレースが行われ、 最年長の三村壮太郎選手と、佐藤選手の代 役として出場した松下信治選手がウィナー となって熱戦の幕を閉じた。

第3戦〜第5戦が行われるCCTBでの大 会では、コンパクトなコースでの安全性を 考慮して、予選をグループ分け+総当たり 制で行うことが予定されているという。ま た、観客が楽しめるさまざまな企画も計画 されているそうだ。斬新な手法でカートレ ースの新時代を切り拓く全日本EV部門か ら、しばらく目が離せそうにない。

開幕戦に登場したチームカラーをまとうマシン群。今 後レーシングスーツもチームカラーに変わるようだ。

ジュニアカート選手権 ジュニア部門/ジュニアカデット部門(ラウンドシリーズ1)

024年のジュニアカート選手権 (ジュニア部門/ジュニアカデ ット部門)は、ラウンドシリーズ 1/ラウンドシリーズ2というふたつのシリ ーズによって展開されることになった。その うちラウンドシリーズ1は、全日本OK部門 と同様に、GPRのシリーズ戦に選手権がか けられる形で開催されるものだ。

レースフォーマットも、公式練習→タイ ムトライアル→第1レース決勝ヒート→第 2レース決勝ヒートと、OK部門と共通の流

れを採用。ジュニア部門で出走が20台を 超え、タイムトライアルがドライタイヤで 行われた場合には、タイムトライアルの上 位8名による単独走行2周アタックのスー パーポールも行われることとなっている。

マシンの面では、ジュニア部門のワンメイ クエンジンが、全日本や地方選手権のFS125部門と共通のIAME PARILLA X30(排 気規制によりパワーを抑えた“X30Jr”仕 様)になったことが、2023年のジュニア選 手権からの大きな変更点だ。

日本カート選手権

ラウンドシリーズ1のジュニア部門のワンメイクエ ンジンは、水冷125ccのIAME PARILLA X30。ラジ エター搭載のマシンは、従来のジュニア選手権には なかった迫力を醸し出している。

ジュニアカート選手権 ジュニア部門/ジュニアカデット部門(ラウンドシリーズ2)

ニアカート選手権のラウンドシ リーズ2は、全日本FS-125部 門/FP-3部門と同日開催で行 われるシリーズ戦で、全3大会/6戦(有効 3戦)の選手権だ。

レースフォーマットは2023年のジュニ ア選手権を引き継いでおり、公式練習→タ イムトライアル→予選ヒート→決勝ヒート 1→決勝ヒート2の流れで大会が進行する。

決勝ヒート1/決勝ヒート2のスターティ ンググリッドは、どちらも予選ヒートの結

果によって決定される。

ジュニア部門のエンジンはラウンドシリ ーズ1とは異なり、2023シリーズから継続 のヤマハKT100SECがワンメイク指定さ れている。そしてジュニアカデット部門も やはりヤマハKT100SECのワンメイクな のだが、こちらはジュニア部門より年齢層 が低いドライバーたちに合せて、内径の小 さいジョイントキャブレターによる吸気制 限でパワーが抑制されている仕様でレース が行われている。

ラウンドシリーズ2のジュニア部門は、昨年と同じ空 冷100ccのヤマハKT100SECのワンメイク。ローカ ルの初心者クラスでも定番のエンジンとあって予算 面では参加者に優しい設定と言える。

つなぐ

富士スピードウェイを舞台とした「富士SUPER TEC 24時間レース」は 2018年に復活を果たして以来、国内唯一の24時間レースとして定着している。 しかし、ロングスティントや夜間走行など、この大会だけに必要な、 他では得られにくい独特なスキルが必要で、特殊な一戦ともされている。

ここでは、参加選手たちに富士24時間を攻略するためのノウハウを聞いた。

士スピードウェイに国内最長 レースとして復活した「富士 SUPER TEC24時間レース」 は、ドライバーにとって特殊な一戦だ。

一昼夜をかけて走行する24時間レー スは、天候や気温が刻々と変化し、タイ ヤやブレーキなどの消耗とともにマシン の状況も悪化の一途をたどる。さらに、 車両をシェアする耐久レースでは、自分 専用には最適化されていない車両と対話 しながら、時にはバトルを演じなければ ならない。もちろん、夜間走行への対応 も、なかなか経験値を積み上げにくいだ けに難しさが増す。

テント宿泊で夜を明かす観客たち。焼けるブレーキローターが織りな すコース上の景色は、富士24時間レースを象徴するシーンだ。

こういった要素が「24時間レースは過酷だ」と評さ れる所以であり、ドライバーはコクピットの中で長時 間に渡って孤独な闘いを続けている。そんな彼らは、 何を考えながら周回を重ねているのだろうか? ここでは、富士24時間レースの参加選手を対象に、 セッション中のドライバー心理をクローズアップ。耐 久レースの心得を聞いてみると、スプリントレースと は違う耐久レースならではの魅力が見えてきた。 コミュニケーションの“密度”が影響する 「僕らのクルマはミニマムで1時間15分ぐらいのステ ィントになりますが、リアタイヤは継続することがで きるので、まずはタイヤマネジメントを考えながら走 っています。同時に24時間レースはいろんな方々が走 っているので、通常のレースより周囲に気を配ってい ますね。後は、ブレーキメーカーが母体のチームなの で、ブレーキのフィーリングの変化がどのように訪れ るのか、そういった部分をチェックしています」。

花里祐弥選手

こう語るのは花里祐弥選手。ENDLESS SPORTSの 13号車「ENDLESS GRヤリス」でST-2クラスに参戦 した。花里選手によれば「チームからは“コンスタント ラップ”を意識して走ってくださいと言われています が、そこにプラスして、燃費にも気を使っています。 燃費良く走ることができれば、次の給油時間を短くす ることができる。24時間レースの場合は、ピットスト ップ回数も多いので、そこを詰められると大きいんで すよね。燃費を気にしながら、タイヤの状況を見て、 さらにタイムも求められるところがスプリントレース にはない部分です。クルマにストレスをかけないため にも縁石に乗らないといったところも、24時間レース ならではのポイントだと思います」とのことだ。

セッション中にレース以外のことを考える瞬間もあ るそうで、「夕方になると皆さんが観客席でバーベキュ ーをするので、いい匂いだなぁとか、お腹が空いたな ぁ、なんて思うことはありますね」と笑う。

「耐久レースはドライバーの数も多いし、ピットクル ーの人数も増えるので、スプリントレース以上にチー ムの団結力が重要になってくると思います。自分の勝 手にはできないですし、チーム内でのコミュニケーシ ョンの密度がリザルトに影響してくると思っています。 そこが耐久レースの魅力ですね」と花里選手は強調す

る。さらに「日本でナイトセッションを観戦できるのは 富士24時間レースだけ。幻想的ですし、ブレーキロー ターも真っ赤に焼けるので、非日常を楽しめると思い ます」と、観る楽しみについても教えてくれた。

スプリントレース以上に“アタマ”を使う

花里選手と同じENDLESS SPORTSで、3号車「EN DLESS GR86」のステアリング握りST-4クラスを戦う 小河諒選手。富士24時間レースでは、やはりタイヤマ ネジメントを気にしているようで「僕たちのスティント は最大で1時間半で、ダブルスティントをこなす場合 は3時間の走行になるので、セッション中はタイヤの 使い方を考えながら走っています」と語る。

マネジメントすべき要素は広範で、「ブレーキやミッ ションも労わりながらの走行になるので、スプリント レース以上に“アタマ”を使います。そこが耐久レース の難しいところでもあり、面白いところでもあります ね」と付け加える。同時に、小河選手が考える富士24 時間レースならではの心構えもあるという。

「このチームでは僕が年長なんですけど、チームメイ トには相手をリスペクトするように心がけてもらって います。耐久レースではクルマを壊したり、ぶつけた りすることは厳禁ですから、速いクルマが来たら無理 せず、気持ちよく行かせてあげる。そうすればヒヤッ とするシーンを減らせます。スプリントレースは情熱 的な“アツさ”が求められますが、耐久レースではアツ さよりも“冷静さ”が求められると思います」と語る。

ちなみに、小河選手が勧める富士24時間レースの 見どころは「明け方」だという。「明け方までに体力を残 しているチームが、終盤に強い傾向があると考えてい ます。2日目の朝を各チームがどのような状況で迎えて いるかをチェックすると、トップ争いの流れが予想で きると思っています」とのことだ。

さまざまなマネジメントが必須

車両の状態を常に把握することは、最高峰のST-Xクラ スも例外ではない。このクラスにCraft-Bamboo Racing の33号車「Craft-Bamboo Racing Mercedes-AMG GT3」で参戦した太田格之進選手は、今大会は外国人ド ライバーの中で孤軍奮闘する状況となったが、これまで 学んだ基本を忠実に守っているようだ。

「基本的なアプローチはスーパーGTと変わらなくて、 自分のスティントをいかに速く走るか、という部分に なると思っています。でも、縁石はあまり使わないよ うにして、クルマに負担をかけないような走らせ方を 心がけています。後はタイヤですね。スーパーGTで 使われるスペシャルタイヤとは違って、スーパー耐久 はワンメイクタイヤですが、タイヤに気を使って、マ ネジメントをしながら走行しています」と語る。

そして、ハコ車やフォーミュラのスプリントレース 経験を積みながら、24時間レースに挑戦して奮闘する

Craft-Bamboo Racing/ Craft-Bamboo Racing Mercedes-AMG GT3

ST-Xクラス

太田格之進選手

Birth Racing Project/ BRP★FUNDINNO PORSCHE 718 GT4 RS

ST-Zクラス 猪爪杏奈選手

猪爪杏奈選手は、Birth Racing Project【BRP】の19 号車「BRP★FUNDINNO PORSCHE 718 GT4 RS」 でST-Zクラスに参戦する。

「コースアウトや接触をしないこと、後は平均ラップを 意識してますね。これを実践するために、全体的に丁 寧に走るようにしていて、コース幅をギリギリまで攻め

たりしないといった感じですね。スプリ ントレースが100%でプッシュするなら、 耐久レースは90%ぐらい。タイヤが減っ てきたらスプリントの80%ぐらいしか出 せない感じです。それにポルシェは燃料 が115リットルぐらい入るんですよ。 100kgぐらいの重量が徐々に減っていく わけなので、それに合わせてドライビン グも変えています」と猪爪選手は語る。 またペナルティの回避も耐久レースに おける心得の一つと考えているそうで 「四輪脱輪は、ドライバーではなく車両 ごとにカウントされますからね。最終的 には、ペナルティを受けていない車両が上位でチェッ カーを受けているので、ドライバー全員で意識をして います」と語る。加えて、いかに集中力をキープさせる かも重要だという。「私たちは90分ぐらいのスティン トですが、ドリンクを飲んだりしていますね。息を止 めてしまうと脳に酸素がいかなくなっちゃうので、ス トレートで深呼吸したり、手をグーパーしたりして、

半分が夜間走行ということで、天候の急変も含めてあらゆるインシデ ントが発生しやすい。これらの対応にもノウハウが活かされる。

血液を巡らせるようにしています」とのことで、自分自 身のマネジメントも必要になってくるのだ。

うまく抜く方法と、抜いてもらう方法

TEAM G/MOTION’/全薬工業GR86[ZN8]

以上、若手ドライバーのコメントを中心にまとめて きたが、経験豊富なベテランドライバーはどのように 富士24時間レースに臨んでいるのだろうか? まず、KTM X-BOW GTXを投入する、Ksフロンテ ィアKTMカーズの2号車「シンティアム アップル KTM」でST-1クラスに挑む加藤寛規選手だ。

「最も気を付けているのは、路面の“タイヤカス”を拾 わないようにすることです。そのために、どこで遅い クルマを抜いていくか、どこで速いクルマを先に行か せるかを考えますね。オーバーテイクで無理をすると タイヤカスを拾いがちです。そうなると、すぐにペー スが落ちてしまうんですよ。その辺りは耐久レースな らではの、走らせ方のポイントですね」と語る。

さらに加藤選手は「シフトチェンジについても、スプ リントレースもシビアでしょうが、耐久レースではク ルマを壊さないように丁寧にシフトチェンジをしてい ます。接触したりクルマを壊したりすると、その状態 で次のドライバーに渡すことになるわけですよね。な ので、ぶつけないようにするためにも、周囲からマー ジンを取って走るようにしています」と、耐久レースな らではの心構えを付け加えてくれた。

そして、TEAM G/MOTION’の代表であり、プライ ベーターの星としてスーパー耐久に参戦し続けている 塩谷烈州選手。多くの苦難を乗り越えて、今年も60号 車「全薬工業GR86」でST-4クラスに参戦する。

塩谷選手も「一周のタイムより“効率の良さ”を意識 しています。例えば、燃費の良いドライビングですね。 具体的にはストレートで引っ張ってもタイムは変わら ないので、あまり引っ張らないとか、そういった走り 方や、速いクルマを先行させる場合、どこで速いクル マに行かせるとタイムロスを少なくできるか、といっ

た部分を重視しています。そういうことを常に気にし ながら走っているので、意外と集中力も途切れません よ」とのことで、加藤選手と同様に他車とポジションを 入れ替わる際のラインを意識しているようだ。 「うちのチームの若いドライバーが速いので、自分の スティントでは、低速のギヤでクラッチを離すタイミ ングに気を遣ったり、クルマに負担をかけないように しています」と語る塩谷選手。さらに「富士24時間はキ ャンプをしながらみんなで夜通し楽しめる国内唯一の レースです。コースの上でも、自分も周りのドライバ ーも、無理をせず譲り合って走っていますから、自分 としては、その光景がすごく美しいと感じてます。ス プリントレースではあまり見られないシーンですから ね」と、富士24時間レースの魅力を付け加えた。

次の仲間につなげるための優しい走り

HCM UCHINO RACINGの36号車「HCM内野製 作所FL5」でST-2クラスに参戦した阿久津敏寿選手。

2023年にN-ONE OWNER'S CUPで念願のタイト ルを獲得した阿久津選手は、台数が多くレベル差も激 しい同レースにおいて、生き残りながらも勝負する術 を熟知する。今大会にはN-ONEの仲間たちと共に、 シビック・タイプRを仕立てて参戦することになった。

「スプリントレースはタイヤを使い切りますし、燃費 も気にしませんが、耐久レースは次のドライバーにバ トンタッチしますからね。ステアリングもブレーキも アクセルも大切にして、優しい走りを心がけています。

接触しないように、ラインもイン側は1台分を空けま すし、状況的に危ないと感じたらアウト・アウトで走 ることもあります」と耐久レースの留意点を語る。

「クルマに乗ること自体は好きなので、2スティント を走っても飽きることはないんですが、クルマから降

HCM UCHINO RACING/HCM内野製作所FL5[FL5]

阿久津敏寿選手

りるとさすがに疲れを感じます(笑)」と語る阿久津選 手。その一方で、独自のリラックス方法があるという。

「次のスティントまで休めばいいんですが、ケータリ ング担当でもあるので(笑)、料理を作っていることが 多いです。料理を作るのも好きですし、みんなでワイ ワイやっていることもすごく楽しいんですよね」とのこ とで、阿久津選手も富士24時間レースを年に一度のお 祭りとして満喫しているようだ。

このように、ドライバーは長いスティントの中で、 あらゆる状況に対応するべく車内で格闘している。エ ンジニアやメカニック、スタッフが送り出してくれた マシンを、駅伝でタスキをつなぐように、次のドライ バーへ託していく。自分やチームと向き合い、そして ライバルとも向き合いながら走り続けた24時間の栄光 は、リザルト以上の尊いものがあると言えるだろう。

2024年6月から、スーパー耐久機構(STO)が 一般社団法人スーパー耐久未来機構(STMO)へ 1991年に設立したスーパー耐久機構(桑山晴美代表)は、2024年6月 から新法人である「一般社団法人スーパー耐久未来機構(STMO)」への 事業継承を4月20日に発表した。新法人では、モータースポーツの健 全な育成・発展・振興を図るため、自ら企画・運営するイベントや派生 する事業を行い、モータースポーツ、自動車産業、モビリティ社会に寄与 することを目的としている。社員数は14名(設立時)で、代表理事は豊 田章男氏、理事は桑山晴美氏が務める。そ して加藤俊行氏が理事、阿部修平氏が監 事として参画する。

日本最大級の“参加型レース” と評されるスーパー耐久。その 理念は今後も引き継がれる。

ST-2クラス

タイヤ選びとリ カ

路面に合ったタイヤチョイスをしたはずが!? 想定外でも諦めないダートトライアル対応術

ダートトライアル競技では未舗装路面に適した専用タイヤが使われており 路面状況に応じた、適切な使い分けが勝負を大きく左右している。

ドライバーはどんな思いでタイヤを選び、本番に臨んでいるのだろうか? ここでは、全日本ドライバーに選択基準とそのリカバリー方法を聞いた。

PHOTO/大野洋介[Yousuke OHNO]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]  REPORT/廣本泉[Izumi HIROMOTO]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

舗装路でベストタイムを競うダ ートトライアル競技では、現 在、各タイヤメーカーからグラ ベル向けの専用タイヤが供給されている。

そのバリエーションは大きく分けて、超 硬質ドライ路面用、硬質ダート路面用、軟 質ダート・泥ねい路面用の3種類で、選手 の間では、スーパードライ、ドライタイヤ、 ウェットタイヤなどと呼ばれている。

メーカーによっては、より細分化した路 面状況に合わせたトレッドパターンを持つ タイヤも販売されているため、路面に合っ た選択が勝負を左右することがうかがえる。

ダートラドライバーは、自身の経験に基 づいて、自分の出走タイミングにおける路 面状況を予測してタイヤ選択を行っている が、いざ走ってみると「合わないな」とか「失 敗したな」と感じることも多いという。

そこでここでは、経験豊富な全日本ドラ イバーたちに、自身が考える最適なタイヤ 選択術を伺いながら、タイヤ選びをミスし たと感じた際のリカバリー方法を聞いた。 ウェット路面とドライ路面 ”タテ方向”を活かせるか!? 「ヨコハマはドライタイヤの範囲が広いの で、あまりウェットタイヤは使わないです ね。ホントのヘビーウェットや、元の路面 が軟質だった場合を除いて、下層が硬質な ら、雨が降ってもドライで走ります。2本目 で砂利が掃けてフラットな路面になったら、 超硬質ドライタイヤを選びます」。

こう語るのは、名門オクヤマ謹製の GR86に乗り換えて今年からPN3クラスに 挑戦する、2023年PN1チャンピオン徳山

優斗選手だ。徳山選手 もタイヤ選びに失敗し た経験があるそうで、 「舵を入れた瞬間に分 かりますが、そこで諦 めちゃいけないと考え ています。自分だけで はなく周りも失敗して いる可能性があるの

いわゆるスーパードライは、トレッドからショルダーにかけてラウンドしている。

で、気を取り直して冷静にアタックします」 と語る。

「ウェットでもドライでも、失敗したな〜 と思うのは、横方向のグリップが足りない と感じたときですね。その際にはタテ方向

それでリカバリーに成功した経験もある ダートトライアル競技用としては大きく3種類の構造・トレッドパターンを持 つタイヤが入手できる。一つは軟質ダート・泥ねい路向けの通称「ウェットタ イヤ」、舗装路から超硬質ダート路面向けの通称「スーパードライ」、そして、 それ以外の硬質・一般ダート路面をカバーする通称「ドライタイヤ」がある。

に転がすことを意識して走ります。それは うまくタイヤを選べたときも同じですが、 ブレーキについてもタテ方向を意識して走 るようにしています」と徳山選手。

参加選手は出走前の「慣熟歩行」で路面の状態や感触を確認する。硬く締まっているように見えても、いざ走ると ザクザクになることも多いため、その下地がどのような路面になっているのかを意識する必要がある。

JAF全日本ダートトライアル選手権PN3クラス 徳山優斗選手

ADVANオクヤマFTGR86[ZN8]

そうで「昨年のスナガワでは、実際はドライ タイヤの方が合ってましたが、ウェットタ イヤで諦めずに”タテ方向”の走りをした ら、2本目にタイムアップして3位に入れた んです。諦めない気持ちが大切で、タイム アップすることもできる。それがダートラ の面白いところだと思います」とのことで、 諦めないことの大切さを強調した。

九州から全日本のSA2クラスにランサー で参戦している岡本泰成選手は、ジムカー ナにも参戦する気鋭の若手ドライバーだ。 「ダンロップのウェットタイヤは許容範囲が 広いんです。オートパーク今庄ではドライ 路面でも1本目ならウェットタイヤで速い タイムが出たことがあります。でも、下層 がコンクリートのように硬い路面や、路面 温度が高い場合はドライタイヤを選びます。 超硬質ドライ用タイヤは、昨年から使い始 めたのでまだ慣れていませんが、砂利が掃 けた路面では、やはり超硬質ドライ用がか なりグリップしましたね」と、全日本選手権 でのタイヤ選択の基準を説明する。

岡本選手はドライタイヤとウェットタイ ヤの2種類を使い分けているそうで、「ウェ ットタイヤは横方向に弱くて、急な曲がり 方ができない印象があります。そのため自 分は他の選手がサイドを引く場所でも、あ えてそのラインを外して、手前でクルマの 向きを変えるようにしてます。でも、ドラ

JAF全日本ダートトライアル選手権SA2クラス 岡本泰成選手

DLアルテックおかつねランサー[CT9A]

イタイヤの場合は違って、アンダーステア を出してでも、慣性を重視して荷重をかけ た状態で曲げるようにしています」と、タイ ヤ特性に合わせたドライビングを解説して くれた。もちろん、岡本選手もタイヤ選択 を失敗した経験を持つが、「僕は、走行中 に思ったよりグリップしないな……と思う ことはありますが、ゴールして他の選手の タイヤとタイムを比較して、結果的にタイ ヤの選択が良くなかったことを初めて知る ような状況です(笑)」とのことだ。

それでも、無意識に対応しているようで、 「ドライタイヤを選んで思ったよりグリップ しなかったら、ウェットタイヤのようにな るべく手前で向きを変えて、あまり舵を入 れないように走ります。ウェットタイヤは、 どちらにしても掻き回さないと前に出ない ので、できるだけ車速を上げるように走っ ています」と岡本選手は語る。

割と些細なアジャスト方法に見えるが、 この対応は効果てきめんだそうで、「昨年の 丸和オートランド那須では、1本目はウェッ トタイヤでトップに立ち、2本目はドライタ イヤに換えたんです。でも、途中の水溜り を通過した瞬間にグリップ感がなくなって (苦笑)。ただ、コース後半の乾いた路面で 丁寧な走りに徹したところ、5位でポイント を獲れました」とのことで、最後の足掻きが 成績を左右する好例となった。

最後は自分のウデで調整する!? ベテラン選手たちの”引き出し”

これら二人の若手ドライバーの見解に対 して、ベテランはどうしているのだろうか。 スイフトスポーツでSA1クラスに挑む二輪 駆動の巧者、河石潤選手はこう語る。 「現在のウェットタイヤのFF車向けサイズ については、自分がテスト担当を務めてい て、当時は『散水したドライ路面でタイムが 出るタイヤを作ろう』というコンセプトでし た。開発・評価の結果、ウェット路面はも ちろん、ドライ路面でも走れるタイヤに仕 上がっています。ウェットタイヤなので、 縦方向に引っ掻いて走るのは基本ですけど ね。なので、走行ラインの砂利が掃けると ドライタイヤが持つ横方向のグリップが活 きてきます。ドライタイヤはゴムで食わせ て走る感じなので、表面の砂利がなくなっ てきたらドライタイヤに換えます。砂利が 完全に掃けて路面にブラックマークが付く ようになり、かつリアタイヤが通るライン にも砂利がないような路面状況になると超 硬質ドライ用タイヤを選びます。その辺り はコースの特性や路面温度によって変わり ますけどね」と、タイヤの特徴およびタイヤ 選択のポイントを解説してくれた。

さらに河石選手は「タイヤ選択の結果は1 コーナーの感触ですぐに分かりますが、や

っぱり諦められないので運転でアジャスト します」として、以下のように説明した。 「まず、ドライタイヤを履いたけどグリッ プを感じられなくて、フロントが入らない とかリアが滑るという時は、ウェット路面 のようにグリップに頼らず、最初から滑ら せながら走り、サイドブレーキで修正して います。次に、ウェットタイヤでスタート したけど、予想以上に路面がドライだった 時。たいていアンダーステアになりますが、 舵角を増やしてでも曲げるようにしていま す。これはアクセルを抜かないことが重要 だと考えているからです。まあ、本番で慌 てないためにも、ドライ路面でウェットタ イヤを履くとか、路面が濡れているけどド ライタイヤで走るといった練習を普段から しておくことも重要ですね」と語る。

さらに「タイヤ選択をミスすると、正直、 なかなかリカバーできませんし、取り返す ことも難しいとは思います。でも『優勝は難 しいけど、表彰台には立てる』とか『表彰台 は難しいけど、6位以内のポイントを穫れ る』というように、足掻き続けないとダメだ と思っています。1ポイントの差がタイトル やシード争いに影響しますから、メンタル 面も大切です」と付け加えた。

勝負は天気予報から始まる…… 改造車組はドライタイヤが主軸

一方、SC車両のランサーでSC2クラス の2023年チャンピオンを獲得した上村智 也選手は、タイヤ選択についてこう語る。 「ヨコハマの場合、ウェットタイヤはヘビ ーウェット路面で使います。改造車という こともあり、天気予報で雨マークがなけれ ば、そもそも持っていきません。逆に、ヨ コハマのドライタイヤは少々のウェット路 面なら十分にタイムが出せるので、ウェッ ト路面でもドライタイヤを履くことが多い ですね。超硬質ドライ用タイヤは、路面が ドライで硬くて、砂利が掃けた時に履きま す。コースで言えば、京都コスモスパーク や今庄、丸和、サーキットパーク切谷内、 テクニックステージタカタで、主に2本目 で使うことが多くなっていますね」。

さらに上村選手はタイヤに合わせたドラ イビングについて「ドライタイヤはまったく 気を使いませんが、ウェットタイヤは横方 向に滑り出すと止まらないので、縦方向を 意識します。超硬質ドライ用タイヤもトラ クションを稼ぎたいので、タテ方向を意識 して走っています」と語ってくれた。

「ハンドルを切って横方向がダメだと感じ た時は、縦方向を意識するよう切り替えま す。でも、超硬質ドライ用タイヤで、縦方 向にもホイールスピンが多かったりしたら、 ちょっと厳しいと思っています。それでも アクセルは丁寧にして、ブレーキも手前で

JAF全日本ダートトライアル選手権SA1クラス 河石 潤選手 モンスタースポーツDLスイフト[ZC33S]

スピードを落とすように運転を修正します。 アンダーステアが強かったら、サイドブレ ーキを使って積極的に曲げるようにする感 じですね」と上村選手。「タイヤ選択を失敗 しても表彰台を穫れる可能性はあるので、 最後まで諦めたらダメですね」と、昨年の 最終戦タカタでの2本目のチャンピオン確 定劇を彷彿とさせる金言を付け加えた。 全日本戦特有の超硬質ダート エッジなのか、ゴムなのか?

今回、話を聞いた中で多くの選手が悩ん でいたのが、超硬質ドライ用タイヤの選択 だった。多くの大会が散水路面から始まる ことを考えると、超硬質ドライ用タイヤを 活かせるのは後半出走のクラスに限られ、 そもそも参加台数が少ない大会では、超硬 質ドライ路面にまで至らない場合もある。 これらの路面状況は、台数が多い大会でも コースや天候に影響されるため、全日本ド ライバーの中でもあまり使い慣れていない 選手も少なくないのだ。そこで、全日本ダ ートラの最終出走クラスであるDクラスを、 4駆ターボに改造したD車両のBRZで戦う 鎌田卓麻選手にポイントを聞いてみた。 「ルーズグラベルがどれだけあるのか、そ して、路面の地盤に対してタイヤのエッジ を使うのかゴムを使うのか、という点を基 準にしています。エッジを使いたい時、つ

JAF全日本ダートトライアル選手権SC2クラス 上村智也選手

ナナハ itzz YHランサー[CZ4A]

JAF全日本ダートトライアル選手権Dクラス 鎌田卓麻選手 itzz オクヤマDL栗原BRZ[ZD8]

まりタイヤの角で掻いた方がいい時は、ル ーズさに合わせてウェットタイヤかドライ タイヤを選びます。そして、タイヤが硬い 地面に至る量が多ければ、ゴムに仕事をさ せたいので、そこで超硬質ドライ用タイヤ を選択することになります。それは慣熟歩 行の時点で意識しておく必要があります」。

さらに鎌田選手は「タテ方向が得意だっ たり、ヨコ方向が得意なタイヤがあります よね。ダンロップで言えば、イメージ的に は、ウェットタイヤはタテ方向が7割、ヨ コ方向が3割、ドライタイヤはタテ方向が 6割、ヨコ方向が4割、そして、超硬質ド ライ用タイヤはタテ方向とヨコ方向が5割 ずつといった感じですね」と解説する。

鎌田選手は全日本ラリー選手権JN1 クラスも戦うマルチドライバー。

路面温度も重要なファクター 美味しいところで勝負する!

また、多くの選手が悩んでいた超硬質ド ライ用タイヤに応じた運転については、「超 硬質ドライ用タイヤは横方向のグリップが 高いので、ドリフトアングルを大きくアク セル全開にするような運転には適してない んですよね。とはいえ、超硬質ドライ用だ から絶対にグリップ重視だ、とは自分は思 っていませんし、流しながらもタイムを出 してくるドライバーもいますからね。僕の 場合は、コーナー進入まではドライタイヤ と同じアプローチですが、その後は『ヨコ方 向でグリップして曲がってくれたらいいな

……』と思いながら運転して います」と鎌田選手は解説し てくれた。

ップ”が足りていないということ。なので、 コーナーでは、突っ込みすぎず立ち上がり 重視にするか、進入でアングルをつけて、 たくさん掻くような走らせ方にシフトしま す」とのことだ。

経験豊富な鎌田選手といえどもタイヤ選 択を誤ることもあるそうだが、「タイヤの発 熱の仕方にもよりますが、天候が曇りだと、 最初のコーナーはグリップを感じないなん てコトもあります。その場合は、合うとこ ろを探しながら走ってグリップするところ で勝負します。1コーナーでダメだったとし ても諦めず、美味しいところで勝負するっ て考え方ですね」とのことだ。

タイヤ特性の捉え方やそれに応じたドラ イビングに加え、万が一のリカバリー方法 も選手によって千差万別。ドライビングス タイルや車両セッティングでも異なるだけ に、ダートトライアル競技はいかに自分の スタイルを確立させ、諦めず最後まで走り 切れるかが重要なのだと言えるだろう。

そして、「超硬質ドライ用 タイヤを履いた時に、ルーズ グラベルが多くて横方向が使 えないなんて時は、アクセル を踏みすぎないようにアプロ ーチしています。ドライタイ ヤを履いてグリップを感じら れなかった場合は、”ゴムグリ 自分の出走タイミングでどんな路面に 変化するのかを見極めることが的確な タイヤ選びに繋がり、勝負を有利にす る。その確認のために、仲間から情報収 集をしたり、出走ギリギリまで路面状況 を観察する選手も多く見られる。

特集 ドリフト/DRIFTING “日本ドリフト選手権”として開幕

D1グランプリの最新トレンドを探る

ドリフトのマシンメイク術 1000 over

D1グランプリ2024の開幕ラウンドとなる奥伊吹大会で は、昨年までのGRスープラからGRカローラに乗り換え たばかりの松山北斗選手が第2戦の単走部門で優勝を果 たし、早速JAFメダルが授与された。

「横に滑らす」から 「前に進ませる」の トラクション至上主義へ

D1グランプリの参加車両のレギュレー ションは、他のモータースポーツと大きく 異なる。安全性の確保は大前提ながら、パ ワーアップの手法やサスペンション関係な どの自由度が高く、タイヤの選択肢も豊富 だ。しかし、シリーズ設立から18年を超 えるあたりから、環境への配慮やマシンの 負担、そしてサーキット路面の保護を踏ま えてタイヤに関するルール改定が進み、今 も方向性を探りながらの開催となっている。

このタイヤの消耗は想像以上で、1台1戦 に消費するのは前日の練習走行、予選、本 戦で40本(リアのみ交換で20セット)は必 要と言われている。18、19インチの265幅 から285幅がメインなので、その金額は年 間で考えたら大きな負担となるのは言うま でもない。ゆえに現在のD1グランプリは 「タイヤのサポートがなければ年間で参戦 し続けるすることは無理」と言われている。

一方でドリフト競技は市販スポーツカー への訴求力が高く、タイヤメーカーとして はプロモーションの良い機会。そうなると 激化するのは「勝つためのタイヤづくり」 が、必然となるわけだ。

単走でDOSS(D1オリジナルスコアリン グシステム=測定機による審査)、追走で は1000馬力を超える車両での接近戦を戦 う現在のD1グランプリにおいて、タイヤ

というのも、エントラントにとって最も 負担となるタイヤ費用をサポートするタイ ヤメーカーが1社2社と現れたのが約10年 前で、エントラントはその権利獲得のため に成績を競い、そこにアジアメーカーの参 入が増え、今やほとんどのエントラントが 何らかのサポート(フルorスカラシップ)を 受けるようになってきた。

マシンメイク術

JAF公認競技として開催されてきたD1グランプリシリーズに 2024年から「日本選手権」のタイトルが与えられることになった。

単なるパフォーマンスから始まったドリフトが、日本を代表する 本格的モータースポーツの1カテゴリーとしてさらなる一歩を踏み出したのだ。 そこでD1グランプリに今年から導入された新しいレギュレーションを含め、 いまどきのマシンメイクの方向性をあらためて解説していこう。

PHOTO/SKILLD、小竹充[Mitsuru KOTAKE] REPORT/SKILLD、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS] のグリップはあればあるほど有利になる。

もはやドリフトは“滑る”ではなく“ホイー ルスピンをキープしたまま、いかにコーナ リングスピードを上げるか”なのだ。

メーカーきってのスポーツラジアルを宣 伝するため、または注ぎ込まれた技術力を 知らしめるために始まったドリフト競技へ のサポートは、いつしかドリフトに特化し た製品の開発合戦となっていった。

そんな状況下で表面化してきたのが、先 に挙げた諸問題。特にハイレベルなドリフ ト競技における問題点のひとつが路面への ダメージだ。常にホイールスピンを伴う走 行であり、空転させながらもトラクション を生み出さなくてはならない競技特性から、 溶けたタイヤが路面にへばりつく。これが アスファルトの目を詰まらせ、グリップ低 下を引き起こすのだ。二輪のタイムアタッ クをするコースだとしたら危険極まりない。 降雨時はスリップを誘発するだろう。

この問題はタイヤがハイグリップになる ほど顕著になる。審査指定ラインをタイム アタックのベストラインにならないように 配慮をしても、それが最善とは言えず、主 催者はイベント終了後にかかるコース清掃 の請求に頭を悩ますこととなる。

さらにハイグリップタイヤは駆動系への 負担も大きく、本番でリタイアが続出する 可能性も考えられる。観客を動員するイベ ントとしてはランキング上位選手や人気選 手の欠場は由々しき問題だ。

そこで生み出されたルールがタイヤのグ リップ制限。パワー制限やワンメイクタイ ヤとは違うこの独特なルールに、タイヤメ ーカーばかりかエントラントも試行錯誤す ることになったのである。

D1グランプリに使用されるタイヤは独自の規定をク リアした製品。トーヨータイヤ、ダンロップ、ヨコハマ タイヤを始め、シバタイヤ、ヴァリノタイヤなどドリ フトに特化する海外製造のブランドも台頭している。 それぞれサポートドライバーを擁して結束を固め、ド リフト競技でもタイヤ開発競争が激化している。

激しく空転させながらトラクションも追求する 近代ドリフトの現状とは?

パワーアップは 切れ角アップを増長させるが 駆動系の強化を余儀なくさせる

トラクションなどは度外視で、カウンタ ーを当ててコーナーに飛び込んでいたのは 15年以上前の話。今のドリフトは“いかに 激しくタイヤスモークをあげながら速くコ ーナリングするか”が主流だ。これはもう 曲がるドラッグレースと言っても過言では ない。滑っているけど速さも求める、とい う矛盾がドリフトの美学なのだ。

ドリフト競技車がハイグリップタイヤを 履くようになったのは、タイヤメーカーが スポンサーにつき始めたことから。その当 時は、フラッグシップスポーツラジアルを 提供されたエントラントは、グリップが良 すぎてドリフトに持ち込めなかったり、角 度をキープできなかったため、エア圧力を 異常に高めていた時代もあったくらいだ。

しかしハイグリップタイヤの性能を発揮 すれば、今まで以上に高い速度から思い切

ったドリフトアングルをつけてもコースア ウトせず、追走になれば意のままに先行を 追い詰めるグリップ(トラクション)も確保 できる。そこでエントラントはそれに見合 ったパワーを追求するようになった。

そしてパワーがあれば深いカウンターアン グルでもクルマを前に押し出せるため、切 れ角をさらに増やして異次元のアングルで コーナリングすることが可能になる。アッカ ーマンアングルを故意に崩すことでカウンタ ーを切っても失速の原因とならないセットア ップが発見されてからは、現在のような“転 がってナナメに進む”という方向性が追求さ れるようになった。

だがハンドルの切れ角を追求すると、パ ワーステアリングへの負担が増えていく。 ステアリングラックやそれを動かすポンプ の選定は、勝つためのドリフトマシンメイ キングには重要。事実、これが原因で本来 のパフォーマンスが発揮できず、クラッシ ュに陥るケースも少なくない。

切れすぎればそれが戻るときのセルフス

テアリングのトルクやレスポンスにも影響 するし、ナックルアームの角度がマイナス 方向になり戻ってこなくなる現象(“逆関 節”と呼ばれる)にも陥る。

例えすべてが強化対策されていても、勝 つためにさらなる角度と速さを追求すれ ば、次はパワーアップを余儀なくされ、続 いて駆動系が負けるようになる……。ゆえ に現状のD1グランプリ車両のほとんどは 強化策としてシーケンシャルドグミッショ ンを始め、クイックチェンジデフを導入し ているのである。

ちなみに油圧サイドブレーキの導入もタ イヤのハイグリップ化に起因している。285 幅のハイグリップタイヤを後輪ブレーキ1 発で横に向ける場合、純正のワイヤー式で は制動力が足りないからだ。

ドリフト競技を見ていて本来のパフォー マンスを発揮できていない走りがあった場 合、それはドライバーのミスではなく、ス テアリング系統にトラブルを抱えているケ ースも想像した方が良いだろう。

1000 over いまどき

2024シリーズD1グランプリのタイヤにまつわるルール

■使用可能なタイヤ基準

◎トレッドパターンのシー・ランド比(溝部÷トレッド面積)は未使用状態で22%以上 ◎UN/ECEレギュレーションナンバー117-02のステージ2である「S2WR2」の認証を取得 ◎転がり係数10.5N/kN以下であることの試験データを提出 ◎以上を踏まえて出される毎年の「D1グランプリシリーズ登録タイヤ一覧」に記載されていること ■競技車両重量とタイヤの幅

◎1275kg未満 265幅まで ◎1275kg以上 285幅まで ※重量はドライバー装備品を含む

1ラウンドに使えるタイヤは4セットまで!

認定を受けたタイヤ以外での走行をなくすため、レース前に主催者が 使用タイヤにマーキングする。通常では4セット8本がマーキングされ (追走決勝では1セット追加される)、単走決勝では主催者が事前に告 知した番号を装着しなければならない。今年はさらに練習走行時間の タイヤを2セット4本に制限するルールも追加された。これは参加者の 費用負担増を考慮したものだと思われる。

エア圧の低すぎはビード落ち→失格に 特集 ドリフト/DRIFTING

路面への付着が問題に!?

昨年のオートポリス戦では最終コーナーの路面にタ イヤの溶けたゴムが付着し、アスファルトの目を詰 まらせていた。D1事務局はその清掃費用を負担して おり、運営上の課題となっていたようだ。逆走レイア ウトなどもダメージを最小限にする対策と言える。

昨今のD1GPではそもそもスタート時のエ ア圧はタイヤメーカーの推奨値とはほど 遠いペッタンコな状態だ。しかしこれは諸 刃の剣で、低くしすぎるとホイールからタ イヤが脱落寸前になる現象“ビード落ち” の可能性がある。そうなると車両はコント ロール不能になるし、ドライバーや対戦相 手はもちろん観客にも危険がある。それを 回避するためD1GPのルールでは「競技中 に衝突などとは無関係にビード落ちと判 断されたら理由の如何にかかわらず得点 を無効とする」というルールが2022年に 決まった。

エンジンは2JZ改3.4Lで1000馬力オーバー!

強度に優れる2JZ-GTEエンジンを縦置きに搭載し、HKSのGT75100BBタービンを組み合わ せる。勝つためには1000馬力は最低ラインで、WRCマシン同様にアンチラグ制御も導入。

ロングホイールベースが生み出す 「異次元」のドリフト

2024年の東京オートサロンで発表があ ったとおり、2020年からGRスープラで参 戦していた松山北斗選手が今年からトヨ タ・GRカローラを投入した。D1グランプ リ本格フル参戦5年目、昨年はランキング 2位で今年こそシリーズチャンピオンを狙 う男の“ファイナルアンサー”とも言うべき マシンメイキングを紹介しよう。

2020年から4シーズン、単走優勝こそ0 回だが、追走優勝2回を記録し、D1グラン プリにおけるGRスープラ乗りナンバー1の 成績を収めてきた松山選手。フォーミュラ ドリフト・ジャパンでは2022年にGR86 でタイトルを獲得。勤務先がトヨタ自動車 だけに“ミスターGR”と言っていい存在だ。

ドリフト競技において、テクニックと同 じくらいマシンメイキングのパイオニアを 目指すという松山選手。彼の考えが反映さ れて製作されたGRカローラは、4WD車を FR化したものだ。定評ある2JZ改3.4Lエ ンジンを搭載し、足回りにはクスコ製のア ングルキットを導入している。

ドリフトでGRカローラと言えばWRC チャンピオンのカッレ・ロバンペラ選手の 活躍が記憶に新しいが、松山選手はそのつ

くりを参考にしつつ、さらに手を加えた。

目指すのは最速、最深角の両立。ストレ ートスピードを誰よりも高め、振り出しは “ケツ進入”と呼ばれる異常な角度でアウト ラインギリギリをトレース、ほとんどアク セルを抜くことなく立ち上がるのが狙い だ。それを可能とするために、トラクショ ン性能だけではなく、振り出しモーション を起こす際のクイックな動きと深いアング ルをキープしたまま長い距離をアプローチ する“ストレート区間でのパフォーマンス” を重視したセットアップを進めてきた。

というのも、フォーミュラ・ドリフト (USA)を始めヨーロッパのドリフト競技で は「いかに深いアングルのまま指定ライン を通過して左右にコーナリングするか」が 高得点となっていて、これが欧米基準にな りつつある。しかしドリフト発祥の日本で は「ストレートからいかにドリフトに持ち込 むか」が重視されてきており、D1本来の迫 力となっている。近年ではそのD1グラン プリの方向性も欧米基準の方向性も採り入 れているが、松山選手はそのどちらも大切 に考えているわけだ。

「GRスープラは動きはいいけどコントロ ールがすごくシビア。いつも綱渡りです ね」と語っていた松山選手が期待したのは、 GRカローラのホイールベースだ。GRスー プラが2470mmなのに対し、GRカローラ は2640mm。なおGR86は2575mmな ので安定性においてはアドバンテージがあ る。これまで以上の角度をプラスすること も可能となった。そこでステアリングラッ クを前引きに改造した足回りを組み合わ せ、異次元のドリフトコーナリングを狙お うとしている。

Team TOYO TIRES DRIFT 2 松山北斗選手 GRカローラ(GZEA14H)

開幕戦の練習走行でエンジンブローを喫したが、すぐに 載せ換えて対応。第1戦では単走部門8位、追走部門6位。 翌日の雨の第2戦では単走部門1位、追走部門ではドラ イブシャフトブローで敗退して9位の成績。駆動系の弱 点はあったが順調なスタートと言えるだろう。 2015年からD1グランプリに参戦し、以降3シー ズンをチェイサー/マークⅡと4ドアセダンを駆 り、2018、2019年は活動休止。2020年からGR スープラで復帰し、シリーズランキングは10位、8 位、8位、2位と好調にアップ。今年は体制を一新 し、Team TOYO TIRES DRIFTからの参戦だ。

最新D1GPマシンチェック

さらに深いアングルを求めて鮮烈デビュー!

ラック位置変更で切れ角追求

GRカローラのタイロッドは通常、車軸の後ろ にある「後ろ引き」だが、松山車は車軸より前 に位置するいわゆる「前引き」に変更。最大切 れ角時の逆関節状態になりにくくし、バンプ時 のアライメント変化など後引きにはないメ リットを狙っていると思われる。パワーステア リングは電動化されていた。

4WD改でFR化

クスコ製作のサスペンションメンバーに同ド リフトアングルキットの組み合わせでFR化。サ ムソナスのシーケンシャルドグミッションに SIKKYのクイックチェンジデフは1000馬力を 超えるD1マシンなら常識と言える強化策だ。

油圧サイドは常識

後ろに下げられたシートポジション、ほとんど 水平なステアリングシャフト、オルガンペダル 化されて実現したまっすぐ伸びる足などレー シングマシンのようだ。油圧サイド化はハイグ リップタイヤで120km/hを超える速度域から 一気にボディを横に向けるために重要な装備 となっている。

タイヤは19インチ285幅

車重は1200kg台の中盤。ロケットバニーレーシングフルキット を装着する。19インチのR888RDは昨年まで認可されていなかっ たが、トーヨータイヤはこのGRカローラのためにコンパウンドの 変更でクリア。おかげでTeam TOYO TIRES DRIFTの藤野秀之 選手&川畑昌人選手のGR86も昨年の20インチから19インチ化 でき、ドリフト性能が向上したそうだ。

JAFドリフトテストin那須 開催日:2024年6月23日(日) 開催地:ドライビングパレット那須(栃木県那須塩原市) 競技種目:ドリフトテスト 競技の格式:JAF公認クローズド競技 主催:360-Racing

新種競技「ドリフトテスト」発進!

オートテストに次ぐ新たなJAF公認競技種目の誕生! 第1回大会は栃木・ドライビングパレット那須で開催

かつて新種競技と呼ばれたオートテス トも、2015年に導入されてから来年 で10年を迎える。そんな2024年の5月 28日、JAFは「スピード競技開催規定の改 正およびスピード競技開催規定細則:ドリ フトテスト開催要項の制定」を公示した。

このスピード競技開催規定に、新たな10 項目めとして追加されたのは「ドリフトテ スト」という新種目だ。

ドリフトテストは「一定区画内に任意に 設定された180度ターン(または円旋回、 8の字など)の区間を滑走状態で正確に走 行し、滑走状態で停止枠内に正確に帰結す るコンテスト」と定義されている。

ドリフト業界では「ドリフト駐車」と呼ば れる、クルマをスライドさせながら指定枠 内に入れる基礎練習の方法がある。ドリフ トテストは、ドリフト走行と、このドリフ ト駐車を組み合わせて明瞭な判定基準を設 けた、新しいJAF公認スピード競技として

誕生したのだ。

ドリフトテスト開催要項には「2015年よ り開催されているオートテストのドリフト 版」という表現がある。オートテストは「ヘ ルメットやグローブもいらず、マイカーで 参加できる」といった触れ込みだが、ドリ フトテストの場合は、タイヤを空転させ て、車両の姿勢を大きく変化させることを 目的としているため、万一の衝突や転倒な どに備えて、グローブの装着や、耳が隠れ るヘルメット着用が推奨とされている。

ただし、参加車両は「保安基準に適合し たナンバー付き車両」と規定されているた め、改造なしのマイカーで参戦できるとい う点ではオートテストとの同一性がある。

この新種競技の制定にあたっては、数年 来、グラスルーツ競技の振興策を検討して きた「オートテスト・ドリフト振興活性化 作業部会」が新種目の創出や実施、規則制 定に向けた議論を重ねてきた。昨年12月

ウェット路面で思い切り愛車の挙動を試せる新種競技 「ドリフトテスト」は今後、全国展開を予定している。

2日には、奈良県の名阪スポーツランドD コースで、これまでの検討の有効性を実戦 確認するパイロットイベントが行われた。

この作業部会は今年から「オートテスト・ ドリフト振興活性化分科会」へと改組。名 阪のパイロットイベントが概ね成功したこ とを受けて、この方式を下地とした開催規 定やガイドラインの策定が進められ、JAF モータースポーツ審議会での承認を受けた

記念すべき第1回の主催は「360-Racing」。ドライビング パレット那須の坂本光弘氏が競技長を務めた。

“専属MC”就任を自称する鈴木学氏と、俺だっ!レーシ ングの時田雅義氏が当日の競技運営をサポートした。

後に、晴れて今年の5月28日に開催要項 等の公示へとこぎつけたのだ。

D1グランプリを戦う山中真生選手と久保川澄花選手が 練習走行では講師、コンテストでは審査員を務めた。

ドリフトテスト競技の判定方法(開催要項による基準)

判定項目 タイヤの本数 パイロン移動 ドリフトポイント 判定要素 1本20点 1本-5点 主観審査 最大得点 80点 20点

コースレイアウト スタート後に90度右折して 右旋回のドリフト区間へ。そ の立ち上がりからまっすぐガ レージへ向かいドリフト走行 で四輪を入庫させる。ガレー ジ周辺の審査区間では、今回 は時田氏がガレージ脇で入 庫状況を審判して、審査席に その結果を伝えていた。

ドリフトコンテストでは山中選手と久保川選手が入庫時などのドリフト 状態を主観審査した。鈴木氏は場内実況と計時の補佐を担当した。 \ 1本! /

練習走行で講師からコツを学び 最後のコンテストで成果を試す

特別規則書に初めて「種目:ドリフトテ スト」と記載された記念すべき第1回大会 は、栃木県那須塩原市にある舗装のコース 「ドライビングパレット那須」で6月23日 に行われ、「JAFドリフトテスト in 那須」 という競技会名称で開催された。

オーガナイザーはJAF加盟クラブの360Racingが担当し、施設を管理する坂本光弘 氏が競技長とコース委員長を兼任した。

そして昨年の名阪で競技運営に携わった 陰地哲雄氏と事務局長の吉川直美氏が審査 委員長と審査委員を務め、那須での第1回 大会をサポートすることになった。

ドリフトテストの競技会は、ゲートオー プンから参加受付、競技車検、開会式・ド ライバーズブリーフィングという流れは他 の競技会と同様だが、その後は「練習走行」 が用意され、最後にドリフト駐車の優劣を 決める「コンテスト」が行われる。

ちなみに、ドリフト業界でよく見る”練 習会”では、練習走行の後に、その成果を 図るドリフトコンテストが行われることが 多い。これらドリフト練習会のスタイルを

採り入れつつ、コンテストに 明瞭な判定基準を定めたイベ ントが、ドリフトテスト競技 会であるとも言えるだろう。

この練習走行では主催者が認めた講師が 同乗指導することができる。これをうまく 利用すれば、初心者であっても、運転操作 について何らかの気付きや一定のスキルを 習得できるため、従来の競技会とは一線を 画す、意欲的なイベントとなっている。

ドリフトテストはコンテストの成績がリ ザルトに反映される。コンテストでは統一 した判定事項として、①反則スタート、② 停止枠内ライン通過/不通過、③パイロン 移動・転倒、④主観審査によるドリフトポ イント、の4種類を規定している。この④ については「設定コース上の滑走状態を発

生させることができる区間走行時および任 意に設定された枠内への駐車時の姿勢」を 判定することが推奨されている。

これはつまり、指定のコース上にドリフ ト走行するセクションと、ドリフト駐車す るセクションの審査区間を設定することを 推しており、名阪のパイロットイベントも 那須大会も、1本パイロンを軸としたドリフ ト走行とガレージでのドリフト駐車セクシ ョンを配したレイアウトを採用した。ま た、一つ目のドリフト走行は、続くドリフ ト駐車と同じ方向に旋回するよう設定さ れ、ドリフト駐車のウォームアップとして 使えるようになっているのもポイントだ。

60名の申し込みがあり関東周辺から30名が参加した今 大会。参加車両は8割を後輪駆動車が占めた。

午後には雨が上がったため、隣接する丸和オートランド 那須からダートラ競技ではおなじみの散水車が出動。

雨予報への配慮から、屋根付きガレージで開会式とドラ イバーズブリーフィング、表彰式が行われた。

山中選手と久保川選手から、最も目立った走りを魅せた 選手に「ベストパフォーマンス賞」が贈られた。

初代ウィナーは古河原大成選手!

記念すべき第1回大会の優勝はBRZの古河原大 成選手。2位はレクサスIS-Fの小堀秀彰選手、3 位はGR86の長谷川葉月選手、4位はRC Fの高 木涼平選手、5位はBRZの上園健選手、6位は BRZの中村明弘選手。

審判員は現役D1ドライバー 栄えある初代王者は……!?

コンテストでの判定は、前述した①〜③ についてはコースマーシャルが担当するが、 ④についてはドリフト走行の有無や状態の 優劣を判定する審査員が別途必要になる。

昨年の名阪では、この企画にオブザーバ ーとして参画するD1グランプリシリーズ のMCでおなじみの鈴木学氏と、JAF分科 会の委員である時田雅義氏が審査員を務め た。そして、この度の那須大会では、その 役目を現役D1ドライバーである「ウエイン ズトヨタ神奈川×俺だっ!レーシング」に 所属する山中真生選手と「ハイチュウ イン ターナショナル」に所属する久保川澄花選 手が担当することになった。

30名のうち3割を女性が占めた今大会。最後には久保川 選手を中心に記念撮影が行われ、次の再会を誓った。

練習走行では山中選手と久保川選手が参加者の走行を つぶさに観察。傾向と対策をフィードバックした。

今回はウエインズトヨタ神奈川の全面協力で開催され、 ミルウォーキーツール・ジャパンの出展もあった。

山中選手と久保川選手は、練習走行で参 加者の走りを観察して、各人の特性やスキ ルをメモ。次の走行に活かせるよう、すぐ さま参加者にアドバイスを提供していた。

練習走行で走りのイメージを掴んだ参加 者はその成果を試すコンテストに臨む。今 大会は30名の参加者が3グループに分かれ て出走し、1本目と2本目の走行を行った。 グループの間にはドリフトテストの大きな 特長でもある路面への散水が行われた。

名阪のパイロットイベントでは、前輪駆 動や四輪駆動車の比率が高めだったため、 パーキングブレーキを使ったターンのよう な走行アプローチになっていた。しかし、 今大会は参加者に後輪駆動車の比率が高く、 腕に覚えのある選手も少なくなかったこと から、走行としては本来の趣旨であるドリ フト走行でのアプローチが多く見られた。

走行を終えて、2本目の走行で181点と いう高得点を叩き出したのはBRZを駆る 古河原大成選手。表彰式では陰地審査委員 長から「JAFドリフトテスト in 那須ドリフ トコンテスト優勝」の文字が刻まれた盾が、 山中選手からはJAFメダルが贈られた。

古河原選手は「普段はモータースポーツ 的なことはあまりやっていませんが、シミ ュレーターでやっていることを実車でステ ップアップできる機会になりました。また 出たいと思います」と優勝の喜びを語った。 ドリフトテストは、運転技術を修練でき る新たな機会として今年から全国展開が予 定されている。終了時には参加者の多くの 笑顔を見ることができた今大会。今後のさ らなる整備・成長に期待したい。

オートテスト2024 in イオンモール大和郡山

開催日:2024年4月27日(土)

開催地:イオンモール大和郡山(奈良県大和郡山市)

主催:RC NARA 協力:JAF関西本部、奈良支部

盛りだくさんの行事に満腹! 関西で人気のオートテストが イオンモール大和郡山で開催

PHOTO/遠藤樹弥[Tatsuya ENDOU]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]  REPORT/JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

良県の老舗クラブRC NARAが主催する関西で話題の オートテストが、今回はイオンモール大和郡山のC駐 車場に会場を移して賑やかに開催された。今大会には60名 が参加し、車型で分類した軽自動車/普通自動車/ミニバ ンSUVクラス、女性限定のレディースクラス、熟練者対象の エキスパートクラスが設定された。このエキスパートクラス はコースの一部を2周する設定となっていて、初心者も経験 者もしっかり走りを楽しめる点が好評を博している。

オートテスト会場には協賛各社のブースが多数並び、お 昼には約4,100台を収容する駐車場がすっかり埋まる賑い を見せた。たっぷり走れて、見どころ満載の今大会は、途 中で若干の降雨に見舞われたものの、無事閉幕している。

パドック脇にはブースが並び、奈良県の自動車ディーラーを始め、奈良県警察 郡山警察署や陸上自衛隊奈良地方協力本部が出展。郡山警察署は、見通しの 悪い交差点での横断方法をテーマとした交通安全講習を開催してくれた。

JAF奈良支部の声がけで見学に訪れた中学生グループ。山野哲也選手とも交流 し、お土産いっぱいで大会を堪能した。また、チアダンスチーム「STYLEY」 による演舞もあり、表彰式ではメンバー総出で祝福してくれる一幕も。

狭いスペースながらも、1本や3本パ イロンターンとミニスラローム、ガ レージなどが凝縮されていた。

大会のゲスト講師はドライバー・オブ・ザ・イヤー2023に輝いた山野哲也選 手と全日本ジムカーナの久保真吾選手が登場。大会のコース委員長でもある川 脇一晃氏と共に慣熟歩行では参加者に攻略ポイントを解説してくれた。

今大会はトヨタユナイテッド奈良の全面協力で実現した。イオンモール大和郡 山内に「TOYOTA CHAUPY STATION」を展開する同社は、店内とオートテ スト会場を繋ぐスタンプラリーを実施して大会の周知にも尽力した。

初の試み!JAF地方本部 オートテスト実務者研修

前日の金曜にはJAF奈 良支部において、JAF 地方本部のモーター スポーツ担当者を集 めたオートテスト実務 者研修も行われた。

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