JAFスポーツ 2024年 春号(第58巻 第2号 2024年5月1日発行)

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2024 SPRING JAF MOTOR SPORTS

イチバン速い男

宮田莉朋選手、2023年最高峰Wタイトル獲得への道程

第1戦バーレーンGPでの角田裕毅選手 (ビザ・キャッシュアップRB)は序盤で10 番手につけたが、タイヤ交換で下がった 順位を挽回できず14位に終わった。

Headline モータースポーツ話題のニュース速攻Check!

F1で4年目を迎えた角田裕毅選手。開幕2連戦で奮闘し課題もみえる 斬新なデザインのRB20を駆る王者レッドブルは2戦連続1-2フィニッシュの好スタート!

PHOTO/Red.Bull.Media.House REPORT/吉田知弘[Tomohiro.YOSHITA]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

024年FIAフォーミュラ1世界 選手権(F1)が2月29日~3月 2日に開催されたバーレーン GPで開幕した。今年も日本人ドライバー として唯一フル参戦する角田裕毅選手は、 第1戦から奮闘を見せている。

2023年の角田選手は序盤戦から車両の パフォーマンスが今ひとつ上がらず苦戦を 強いられたが、毎戦持てる力を存分に発揮 して上位を目指した。最終第23戦アブダ ビGPでは初めてラップリーダーを経験し て8位入賞を果たす。同じく8位を獲得し た第19戦アメリカGPではファステスト ラップも記録するなど、後半戦での挽回度 合は目覚ましいものがあった。

今年もチームは変わらないのだが、その 名称が“アルファタウリ”から「ビザ・キャッ シュアップRB(RB)」に変更となり、車両の カラーリングも一新。2023年に続き、心臓 部にはホンダとレッドブル・パワートレイン ズのコラボレーション(ホンダRBPT)によ るパワーユニットが搭載される。

開幕前のテストでは順調に周回を重ね、 最終日には5番手タイムを記録。一時は中 団グループの中から頭ひとつ抜け出るよう な速さも披露した。とはいえ、ライバルチ ームも手強いことに変わりはなく、角田選 手は今年もポイント圏内の争いはシビアに なりそうだが、少なくとも昨年よりは期待

が持てる状態で、開幕を迎えた。

今年はシリーズ史上最多となる24戦で争 われるF1。久しぶりに2月末に開幕を迎え るスケジュールとなったほか、これまで秋に 開催されてきた鈴鹿サーキットでの日本GP が4月の第4戦に移動となった。さまざまな 変化がある中での開幕戦で、角田選手はい きなり気迫溢れる走りを見せた。

予選での好位置を決勝で失う ポイント獲得への課題が露呈

角田選手はフリー走行1回目で4番手タ イムを記録し、上々な週末のスタートを切 るも、続くフリー走行2回目ではペースア ップに苦戦して15番手に終わった。

しかし、「僕たちが望んだ結果にはなり ませんでしたが、初日のプラクティスを終 えた段階では普通のことなので、心配する 必要はないです」と語るように翌日に挽回 してみせる。フリー走行3回目で13番手 につけると、日没後のナイトセッションで 行われた予選、Q1では1分30秒481をマ ークして、11番手でQ2進出を果たす。 続くQ2でも果敢に各コーナーを攻めて いく角田選手。Q3進出を目指したが、突 破ラインとなった10番手のマクラーレン のオスカー・ピアストリ選手に0.007秒 及ばず11番手タイムとなり、惜しくも Q3進出とはならなかった。

僅差のノックアウトで悔しい部分もある が、確実に昨年の開幕戦よりは良いスター トを切っていると言える。本人も「わずか の差でQ3進出を逃したのは残念ですが、 自分のパフォーマンスには満足していま す。チームが素晴らしい仕事をしてくれ て、一夜で状況を変えてくれました」と自 信を持ったコメントを残した。

迎えた57周の決勝のスタートで、角田 選手はひとつ順位を上げて、10番手でレー スを進めた。序盤はメルセデスのルイス・ ハミルトン選手やアストンマーティンのフ ェルナンド・アロンソ選手という、チャン ピオン経験者の背後で上位進出のチャンス をうかがったが、1回目のタイヤ交換以降 は順位を下げていく展開となった。

2回目のハードタイヤへの交換でも順位 を下げて、後半は13番手を走行していた 角田選手。新しいソフトタイヤを履いたチ ームメイトのダニエル・リカルド選手が追 い上げて背後につけていたこともあり、RB はリカルド選手がポイント圏内まで順位を 上げことに期待し、52周目に順位を入れ替 えるよう角田選手に指示した。

12番手争い真っ只中だった角田選手は 抗議するも、最終的には指示を受け入れて リカルド選手を前に出し、14位で今年の初 戦を終えた。なお、リカルド選手も順位を 上げることはできず、13位のままだった。 「レース中盤くらいまでは順調だったと思 いますが、その後はポイントから遠ざかっ ていく感じでした。(最後の方は)ポイント 争いをしていなかったので、しっかりと分 析して今後のために見直す必要があると思 います。(チームオーダーについては)正直、 チームが何を考えていたのか理解できませ んでした。まずは彼らの考えを理解する必 要があります」と角田選手は決勝を振り返っ た。開幕戦バーレーンGPは、少し後味の 悪い終わり方となってしまったものの、パ フォーマンス面ではポイント圏内を目指せ る可能性が十分あることが分かったことが、 ひとつの収穫だったと言えるだろう。

続く第2戦サウジアラビアGPでも、角 田選手は予選で力強い走りを見せる。Q1 から10番手につけるタイムを記録する

と、Q2では1分28秒564を叩き出し、8 番手で今年初のQ3進出を果たした。そし て最終的に9番グリッドを手に入れ、「と てもハッピーです! チームが素晴らしい 仕事をしてくれて、良いクルマを用意して くれました」と喜んだ。

第2戦サウジアラビアGPの予選は9番 手を獲得した角田選手。しかし、決勝は 15位でポイント獲得ならず、決勝での ペース改善が課題となった。

e中東での開幕2連戦を終え、現状での位 置関係と課題が明確になった感のある角田 選手とRB。決勝ペースが改善されれば、 昨年終盤に見せた活躍を再び見せることが できるかもしれない。彼らが改善し、巻き 返しを見せてくれることに期待したい。

ホンダRBPTのパワーユニットで レッドブルが盤石の開幕2連勝

今年も開幕から圧倒的な強さを見せてい るのが、RBと同じホンダRBPTのパワー ユニットで戦うレッドブル・レーシング だ。マックス・フェルスタッペン選手は第 1戦で2位以下に22秒以上もの差をつけ て圧勝すると、続く第2戦でも、レース展 開の影響で一時はトップの座を明け渡す も、冷静にトップを奪い返して開幕2連続 でポール・トゥ・ウィンを果たした。

2戦とも、チームメイトのセルジオ・ペ レス選手が2位につけて2連続1-2フィニ ッシュで他を圧倒したレッドブル・レーシ ング。フェルスタッペン選手の4年連続ド ライバーズチャンピオン、5年連続コンス トラクターズチャンピオン獲得に向けて順 調なスタートを切っている。

バーレーンGPでは達成できなかったポ イント獲得に向けて決勝のスタートを切っ た角田選手。しかし、このGPもペースが 伸び悩み徐々に順位を落とす展開となった。 「難しいレースでした。前のクルマをオー バーテイクしようとした時に、逆に後ろの クルマに抜かれました。そこは僕の責任で す。決勝ではペースとグリップに苦労し、 運転するのが難しかった。予選が好調だっ たことはポジティブなので、あとはレース ペースを分析して、なぜ苦戦したのかの原 因を解明したいです。自分自身も改善でき る点があるので、それを見直して、学んだ ことを今後に活かしていきます」というよ うに、失意の15位で終えた角田選手だっ たが、一方で前を向く姿勢を表した。

第1戦、第2戦ともにマックス・フェルスタッペン選手(レッドブル・レーシング)がポール・トゥ・ウィンを達成。 僚友のセルジオ・ペレス選手が2戦とも2位で続き、タイトル獲得に向けて好スタートを切った。

ワークスドライバー昇格の勝田貴元選手、第2戦は優勝争いを展開! 新体制となったTGR-WRTはエルフィン・エバンス選手が連続2位獲得で善戦する PHOTO/TOYOTA.GAZOO.Racing REPORT/廣本泉[Izumi.HIROMOTO]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

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024年のFIA世界ラリー選手権 (WRC)は1月25~28日、モ ナコおよびフランスを舞台にし た第1戦「ラリー・モンテカルロ」で開幕。 「2015年からドライバー育成の枠で活動 を行ってきましたが、2024年は育成枠を 抜けてTOYOTA GAZOO Racing World Rally Team(TGR-WRT)のドライバーと して参戦することになりました」と語るの は、日本人ドライバーの勝田貴元選手。

さらに「体制としては大きく変わってい ませんが、ワークスチームのドライバーと して戦うので、僕のキャリアにとってもチ ームにとっても重要なシーズンだと思って います」と、TGR-WRTのマニュファクチャ ラー登録ドライバーとして、コ・ドライバ ーのアーロン・ジョンストン選手とともに、 GR YARIS Rally1 HYBRIDで参戦する。 「長いラリーなのでトップ5につけなが ら、表彰台に届くところにいたいと思って

勝田貴元選手は第2戦「ラリー・スウェーデ ン」では、序盤から好タイムを連発し、一時 は総合トップに立ち優勝争いを繰り広げる が、コースアウトでデイリタイアしてしまう。

いました」と戦略を語っていた勝田貴元選 手だが、24日のシェイクダウンでトラブル が発生。5番手タイムをマークしたものの、 不安要素を抱える中でのスタートを強いら れた。その影響により、25日の夜に行われ たデイ1でもSS1は6番手タイム、SS2は 5番手タイムに伸び悩み、勝田貴元選手は 総合6番手でデイ1を終えた。

翌26日のデイ2でも勝田貴元選手の苦 戦は続いた。「金曜日の朝の1本目のSSが 最もアイスの多いステージだったので、多 少リスクを背負いながらプッシュしていま した。分厚いアイスのあるコーナーがあっ て、レッキ時には石が撒かれて滑り止めを されていたのでグリップしていたんですけ ど、競技当日はその石にアイスが乗ってい てツルツルの状態で、フロントが抜けてし まいました」と、この日のオープニングス テージとなるSS3でコースアウト。幸い ラリーには復帰できたものの5分以上ロス

してしまい、総合19番手まで後退するこ ととなった。

こうして勝田貴元選手は総合優勝争いか ら脱落することになったが、「3台目とし てポイントを獲得できるように、完走ペー スで走り切ることにしました」とのこと。 同時に「セッティングを変更する中でクル マのフィーリングが良くなってきたので、 パワーステージではいいパフォーマンスが 発揮できるんじゃないかと思っていまし た」と語る。事実、勝田貴元選手は総合12 番手まで追い上げてデイ2を終えると、27 日のデイ3ではSS10とSS11で3番タイ ムをマークし、総合7番手でデイ3を終え た。そして、28日のデイ4でも素晴らしい 走りを披露することになった。

2024年のWRCは最終SSのパワース テージに加えて、日曜日のデイリザルトに 対して最大7ポイントを付与する“スーパ ーサンデー”が導入され、ポイントシステ

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ムが変更されている。そのため、勝田貴元 選手は「これまで日曜日はパワーステージ だけを意識してタイヤを温存していたんで すけど、2024年は日曜日としてのポイン トが獲れるので、しっかり獲得したいと思 いました」と振り返る。

そして、「かなりブラックアイスが出てい たので、ドライのセクションだけプッシュ するようにしました」と語る勝田貴元選手。 デイ4のオープニングステージ、SS15は9 番手タイムにとどまったが、続くSS16で 5番手タイムをマークすると、パワーステ ージでは3番手タイムをマークした。「クル マの合わせ込みという部分でスタートから コケましたが、それを修正できたことはポ ジティブです」とのことで、勝田貴元選手 は総合7位に入賞したほか、ボーナスポイ ントを3ポイント獲得した。

第2戦では一時は総合首位に立つも ミスで念願のWRC初優勝は果たせず

苦しい立ち上がりを強いられながらも開 幕戦で挽回をみせた勝田貴元選手は、2月 15~18日に第2戦の「ラリー・スウェー デン」を迎えた。シーズン唯一のフルスノ

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ーラリーとなるこの大会は勝田貴元選手が 得意とするイベントで、2022年は4位に 入賞している。しかし、2023年はリタイ アし、「昨年はアンダーステアがすごくて フロントタイヤを痛めていました」と語る ように、車両の調整不足が露呈していた。

そのため、TGR-WRT勢はジオメトリー や前後のバランスなど車両のセッティング を一新。「最初は戸惑うぐらいセッティン グがガラリと変わったんですけど、確実に 進化していて、事前テストから調子が良か ったです」と言うとおり、勝田貴元選手は ラリー序盤から速さを見せた。

15日の夜に行われたデイ1のSS1で2 番手タイムをマークすると、16日のデイ2 でもSS2で4番手タイム、SS3で3番手タ イム、そしてSS4でベストタイムをマー クし、総合トップを奪取した。

セカンドループでは積雪量が増えて、雪 かき役に苦戦して総合トップを明け渡すこ ととなったが、それでも勝田貴元選手は、 首位を走るHYUNDAI SHELL MOBIS WORLD RALLY TEAM(ヒョンデ)でi20 N Rally1 HYBRIDを駆るエサペッカ・ラ ッピ/ヨンネ・フェルム組と3.2秒差の総 合2番手でデイ2をあがった。

第1戦「ラリー・モンテカルロ」での勝田貴元選手は、デイ2オープニングのSS3でコースアウトしてしまう。それで総 合19番手に後退したが、3度の3番手タイムなどの猛追で総合7位まで挽回した。

総合3番手以降が1分20秒以上、引き 離されていたことから、優勝争いはラッピ 選手と勝田貴元選手の一騎討ちとなる中、 勝田貴元選手は17日のデイ3でもSS9で 4番手タイムをマークし、ラッピ選手との 差を0.9秒差まで縮めた。

それだけに勝田貴元選手のWRC初優勝 が視野に入りつつあったのだが、続く SS10で予想外のハプニングが発生。「中 高速の右コーナーをオーバースピードで進 入してリアをスノーバンクに当ててしまっ て…… その慣性でフロントがスノーバン クに当たって、スタックしてしまいまし た」と語るように、勝田貴元選手はデイリ タイアを決断することになった。 「リスクを負って走っていた中、ミスをして しまいました。いい結果を得られるチャン スを失ったのでものすごく残念です」と、悔 しい結果となった。それでも18日のデイ4 で再出走を果たすと、「日曜日はポイントを 獲れるチャンスがあったので、自分にでき ることをやっていきたいと思っていました」

て戦える状況にあるので、それを安定して出 せるようにミスを減らして、仮にミスをして しまっても対応できるようにしていきたい」と 今後の課題を語った、新たな挑戦に挑む勝 田貴元選手の動向に注目を続けたい。

世界王者2人がスポット参戦する中 TGR-WRCはエバンス選手が善戦 2024年のTGR-WRTは2023年のチャ ンピオン、カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ ハルットゥネン組が、WRC7冠のセバスチ ャン・オジエ選手とヴァンサン・ランデ選 手のクルーとシートをシェアすることに。

開幕2戦はヒョンデ勢が躍進し、第1戦は ティエリー・ヌービル/マーティン・ヴィー デガ組が優勝、第2戦は前述のラッピ/フェ ルム組が久しぶりの勝利を挙げた。その中 でもTGR-WRT勢は2023年のランキング 2位、エルフィン・エバンス/スコット・マ ーティン組が連続で総合2位を獲得、ドライ バー/コ・ドライバーとマニュファクチャラ ーランキングでも2番手につけている。

ギアボックスにトラブルを 抱えながらもSS16で3番手 タイムをマークすると、パワ ーステージでも5番手タイ ムをマーク。総合45位に終 わったが、スーパーサンデ ーで6位に入ったこともあ り、合計3ポイントのボーナ スポイントを獲得した。 「ペース自体は自信を持っ

2023年は3勝を挙げ、ドライバー/コ・ドライバーランキング2位を獲得し た、TGR-WRTのエルフィン・エバンス/スコット・マーティン組。今季も シーズン登録クルーとして参戦し、第1戦と第2戦で総合2位を獲得した。 と語るように、気持ちを切 り替えたという。

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2024シーズンの国内四輪モータースポーツが続々と開幕!

“4つ目の世界選手権”フォーミュラEが東京・有明に初上陸!

F1日本GP鈴鹿は4月開催に!!

PHOTO/遠藤樹弥[Tatsuya.ENDOU]、大野洋介[Yousuke.OHNO]、佐藤靖彦[Yasuhiko.SATOU]、吉見幸夫[Yukio.YOSHIMI]、 JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS] REPORT/JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

内四輪モータースポーツの 2024シーズン。全日本選手権 競技会は、愛知県蒲郡市を舞台 とした全日本ラリー選手権が、3月1~3日 にいち早く開幕を迎えることになった。

この大会は、中部地区での新たな全日本 選手権競技会として開催され、ヘッドクォ ーターは蒲郡市に設置、開催地域も岡崎市 や豊川市、幸田町を含めた4市町へと拡大 された。TOYOTA GAZOO Racingが今季 から導入した「MORIZO Challenge Cup」 の開幕もあり、当日は多くのメディアと観 客が詰めかけ、WRCラリージャパンを彷彿 とさせる華々しい大会となった。

そして、翌週には全日本スーパーフォー ミュラ選手権が鈴鹿サーキットで開幕した。

こちらは、昨年末のルーキーテスト時から 注目を浴びていた「Juju」こと野田樹潤選手 が初めて本番に挑む大会でもあり、多くの

メディアと観客が集結した週末となった。

一方、国内競技を統轄するJAFにおい ても、3月下旬に第1回モータースポーツ 審議会が開催されたことで、2024シーズ ンが動き出している。今年はモータースポ ーツ振興に係る組織に変更があり、昨年ま での「オートテスト・ドリフト振興活性化 作業部会」が「オートテスト・ドリフト振興 活性化分科会」へと生まれ変わり、2月中旬 に第1回の会議が行われた。また、3月下 旬には今年から鈴木亜久里氏が座長に就任 した「モータースポーツ未来委員会振興小 委員会」の第1回会議も開催。国内競技の 振興と発展に係る施策検討に入っている。

また今年は、FIAフォーミュラE世界選 手権が3月30日に日本初上陸を果たす。1 月にはフォーミュラEオペレーションズの ジェフ・ドッズCEOが来日して、東京都 の小池百合子知事と大会のPR等を実施。

FEOジェフ・ドッズCEOと小池百合子東京都知事。

東京・有明で行われる日本初の本格的な四 輪公道レースへの期待は大きく高まった。

その翌週には、開催時期が秋から4月に 移動したFIAフォーミュラ1世界選手権 (F1)日本グランプリが鈴鹿サーキットで開 催される。2025年から2029年に及ぶF1日 本GPの鈴鹿開催契約合意も2月上旬に発 表されており、国内モータースポーツ関係 者にとって2024年は、シーズン開幕直前 から注目のニュースが目白押しとなった。

業界の識者により国内モータースポーツの振興策を検討する 「モータースポーツ未来委員会振興小委員会」は、今年から鈴木 亜久里氏が座長に就任し、3月下旬に第1回会議が行われた。

全日本ラリー開幕戦、ラリー三河湾の会場では、AG.MSC北海 道の指導による参加選手と競技役員を対象とした救出訓練が 行われ、座学講習ではJAF四宮慶太郎副会長が臨席した。

開会式典ではJAF島雅之専務理事が挨拶 し、小池百合子東京都知事や近藤真彦MSJ スーパーバイザーによるビデオメッセージ も公開された。JAFブースでは鈴木亜久里 氏によるトークセッションも行われた。

「JAFモータースポーツジャパンinお台場」2月24~25日に5万2,000人を集めて開催  全日本選手権大会の2024シーズン開幕を前にした2月24~ 25日、JAF主催による「JAFモータースポーツジャパン in お 台場」が東京都江東区の青海地区NOP街区で開催された。

この“MSJ”はNPO法人日本モータースポーツ推進機構が企 画運営する毎年恒例のイベントで、前回は2022年11月に同所 で開催され、1年4か月ぶりにお台場へ帰ってきた。

e今回は「親子で『見て』『聞いて』『触って』『体感する』モー タースポーツ」をテーマとして、自動車メーカーやインポー ター、アフターパーツメーカー、サーキット、レーシングチー ムや選手会などの協力を得てブース出展やデモ走行、各種体 験コンテンツが提供され、土日を合わせて約5万2,000人の来 場者を数えて2024年のイベントは無事閉幕した。

練講習会が行われた。JAF坂口正芳会長が見守る中、今大会で競技長を務

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F1で4年目を迎えた角田裕毅選手。開幕2連戦で奮闘し課題もみえる

6 ワークスドライバー昇格の勝田貴元選手、第2戦は優勝争いを展開!

8 2024シーズンの国内四輪モータースポーツが続々と開幕!

SPECIAL ISSUE

12 イチバン速い男。

スーパーフォーミュラとスーパーGTを制した“日本最速”の称号 宮田莉朋選手、2023年最高峰レースWタイトル獲得への道程

18 初栄冠の誉れ

全日本ラリー選手権・スピード競技全日本選手権 2023年“初”チャンピオンインタビュー

37 JAFレース地方選手権2023年総まくり FIA-F4/FRJ/F-Be/S-FJ/ツーリングカー

46 JAFカート地方選手権/ジュニア選手権 2023年総まくり

地方選手権(もてぎシリーズ/新潟シリーズ/鈴鹿選手権シリーズ) ジュニア選手権(もてぎシリーズ/鈴鹿選手権シリーズ/琵琶湖・石野・神戸シリーズ)

54 JAF地方選手権2023チャンピオン

RALLY/GYMKHANA/DIRT TRIAL/CIRCUIT TRIAL TOPICS

59 スピード競技“二刀流”

ジムカーナとダートトライアル競技で全日本の栄光を同時に掴む孤高の挑戦

64 オートテスト倶楽部

自衛隊教習所でオートテスト初開催! 善通寺市の中心部で新たな試みが実現

INFORMATION

30 2024年JAFモータースポーツ委員会名簿 2024年全日本選手権審査委員名簿 36 INFORMATION from JAF

モータースポーツ公示・JAFからのお知らせ(WEB)一覧(2023年12月22日~2024年3月22日)

本誌の記事内容は2024年3月28日までの情報を基にしております。

JAF MOTOR SPORTS JAFスポーツ[モータースポーツ情報] 監修/一般社団法人 日本自動車連盟 〒105-0012 東京都港区芝大門1-1-30 ☎0570-00-2811(ナビダイヤル) 発行所/株式会社JAFメディアワークス  〒105-0012 東京都港区芝大門1-9-9 野村不動産芝大門ビル10F  ☎03-5470-1711(代) 発行人/日野眞吾 振替(東京)00100-88320 印刷所/凸版印刷株式会社 編集長/佐藤 均[Hitoshi SATOU, editor-in-chief]、 清水健史[Kenji SHIMIZU]、伊東真一[Shinichi ITOU]、 大司一輝[Kazuki TAISHI] デザイン/鎌田僚デザイン室 編集/株式会社JAFメディアワークス JAFモータースポーツチーム(JAFスポーツ) ☎03-5470-1712

また、社会情勢等によって、掲載した情報内容に変更が生じる可能性がございます。予めご了承ください。 広告出稿のお問い合わせは☎03-5470-1711(営業部) COVER/左:2023 SUPER GT Round8 右:2023年JAF全日本スーパーフォーミュラ選手権 第9戦  PHOTO/遠藤樹弥[Tatsuya ENDOU]

イチバン速い男

スーパーフォーミュラとスーパーGTを制した“日本最速”の称号 宮田莉朋選手、2023年最高峰レースWタイトル獲得への道程

速い男。

全日本スーパーフォーミュラ選手権 ドライバーチャンピオン/

宮田莉朋

「イチバン速いです!」。これは、鈴鹿サーキットで行われた全日本スーパーフォーミュラ選 手権最終戦の決勝レース終了後に、宮田莉朋選手がチャンピオン確定への思いを雄叫びと して発した言葉。後のスーパーGT最終戦でGT500クラスのドライバータイトルを確定させ た宮田選手は、国内二冠の偉業を成し遂げて、2023年の”日本最速男”となった。

Ritomo MIYATA

内トップフォーミュラ50周年という節目 を迎えた2023年シーズンの全日本スーパ ーフォーミュラ選手権。この年は国内トッ プフォーミュラに大きな変革が施され、史上稀に見る ハイレベルな戦いが繰り広げられたシーズンだった。

スーパーフォーミュラでは、2021年秋に“これからの 50年”を見据えた中長期プロジェクト「SF NEXT50」 が始動した。この計画では、新たな空力パッケージを 導入した「SF23」の開発が行われ、サスティナブル素材 を一部使用した新タイヤも導入された。オーバーテイ クシステム(OTS)の運用方法も見直され、バトルが起 きやすい環境創出なども図られている。

スーパーフォーミュラを運営する日本レースプロモ ーション(JRP)自体にも推進力を増す人事が行われ、 KONDO RACINGの近藤真彦監督がJRP会長に就任。

各大会前には開催地の自治体を近藤会長自らが訪問し て開催をPRするなど、認知度向上に大きく貢献した。

さらに、2023年からはネット配信サービス「Abe ma」において決勝レース全戦を無料で生配信。より多 くのファンに国内トップフォーミュラの迫力が伝わる こととなり、鈴鹿サーキットの最終大会には延べ4万 3000人もの観客が訪れ、大きな盛り上がりを見せた。

注目は“絶対王者”の3連覇なるか

その盛り上がりの原動力は、2023年のチャンピオン 争いにあったと言えるだろう。開幕前から注目された のは、2021年から2年連続で王座に輝いた野尻智紀選 手(TEAM MUGEN)が3連覇なるか、という点だ。

しかし、その“絶対王者”を開幕戦で打ち負かした のがFIAフォーミュラ1世界選手権(F1)のオラクル・ レッドブル・レーシングでリザーブドライバーを務め るリアム・ローソン選手(TEAM MUGEN)だった。 彼は2022年のFIA F2でシリーズ3位を獲得してお り、スーパーフォーミュラで結果を残し、F1ステップ アップの足掛かりにするべく来日することになった。

開幕戦の舞台となった富士スピードウェイは、同所 での事前テストが行われず、しかも、金曜のフリー走 行は悪天候でキャンセル。新車SF23を土曜朝の予選 で初めて走らせるというぶっつけ本番状態となった。

にも関わらず、ローソン選手は予選で3番グリッド を獲得し、決勝でも序盤から力強いペースで周回。中 盤には首位・野尻選手より先にピットストップを済ま せてアンダーカットを成功させる。ローソン選手はス ーパーフォーミュラ初参戦とは思えない安定した戦い

4月には鈴鹿サーキットで悲願のスーパーフォーミュラ初優勝を飾り、5月には WECチャレンジプログラム選出の発表、9月にはFIA世界耐久選手権・富士大会で WEC初参戦、10月のスーパーフォーミュラ最終戦、そして11月のスーパーGT最終 戦でドライバータイトルを確定させるなど、宮田選手はこれまで磨き続けたセン スとスキルを存分に発揮して、激動の1年を駆け抜けた。

シーズン前のテストでは周りを驚かせるような速さ を見せていなかっただけに、彼の快挙は国内のみなら ず、世界のモータースポーツメディアで報じられた。

開幕戦から一夜明けた富士の第2戦では、野尻選手 が予選から他を圧倒してポールポジションを獲得する。

決勝スタートでは順位を落とすものの、途中のピット ストップで逆転。貫禄ある走りで1勝目を飾った。

彼らが所属するチームMUGENは、ここ数年で圧倒 的な強さを誇り、開幕大会から「今年もMUGENのシ ーズンになるのか」という雰囲気が漂っていた。しか し、その悔しさを噛み締めながら、密かに第3戦での リベンジを誓っているドライバーがいた。それがVAN TELIN TEAM TOM’Sの宮田莉朋選手だった。

ターニングポイントは第3戦、鈴鹿

第1戦と第2戦の宮田選手は、予選では野尻選手に 肉薄し、決勝でもトップを脅かす走りを見せていたが、 途中のピット作業に手間取り順位を落としていた。

幕大会の翌週に行われたFIAインターナショナルシリ ーズ スーパーGTの開幕戦・岡山国際サーキットで もミスが発生。ピット作業で、タイヤが固定される前 にジャッキが降ろされ、ゴーサインが出されてしまっ たのだ。それまで首位争いをしていただけに、マシン を降りた宮田選手は悔しさを爆発させていた。

レース再開時点のOTS残量はトップ4の中で一番 少なく、宮田選手の逆転は難しいと思われていた。そ れだけに、残り7周での逆転優勝には会場も大盛り上 がりとなった。パルクフェルメで何度もガッツポーズ ぶりを見せつけて、デビューウィンを成し遂げた。

前年も似た展開で表彰台争いを逃すことがあり、開

「スーパーフォーミュラ第3戦の鈴鹿大会に向けたミ ーティングで、タイヤ交換についても話し合いました。 チームとは同じ失敗をしない気持ちが共有されてい て、改善策も見つけていました。なので、次戦以降は チームを信頼して臨むことができました」とは宮田選 手。この第3戦鈴鹿では、早速、その効果が現れた。

予選では、Q2でトラックリミット違反により5番 手タイムが抹消され、12番手スタートとなった宮田選 手。それでも序盤から前走車を次々と追い抜く力強い 走りを見せた。レースペースも良く、終盤までコース 上に留まる作戦を採ったが、20周目にセーフティカー 導入がありピットイン。これで3番手に浮上した。再 開後の残り7周では、ローソン選手と坪井翔選手 (P.MU/CERUMO・INGING)を抜き去り、宮田選手 がついにスーパーフォーミュラ初優勝を獲得した。

2023年FIAインターナショナルシリーズ スーパーGT Driver Ranking GT500

1位 坪井 翔/宮田莉朋組

2位 千代勝正/高星明誠組

3位 松田次生/ロニー・クインタレッリ組

4位 福住仁嶺/大津弘樹組

5位 平峰一貴/ベルトラン・バゲット組

6位 塚越広大/松下信治組 4

そこからの宮田選手は毎戦のように表彰台争いに加 わった。第4戦オートポリスではピットストップを終 盤とする作戦で2位表彰台を獲得。第5戦スポーツラ ンドSUGOでは、序盤でトップを奪うとレースの主 導権を掌握し、2番手以下に20秒以上もの大差をつけ て2勝目を飾る。この結果、宮田選手がスーパーフォ ーミュラのポイントリーダーに浮上した。

続く第6戦富士では、ホンダ/HRC勢がレース展 開を優位に進めるも、宮田選手は粘りの走りで3位を 獲得。タイトル争いはローソン選手に1ポイント差へ 詰め寄られてしまうが、首位は宮田選手が堅守した。

鈴鹿サーキットで迎えたスーパーフォーミュラ最終 大会は2レース制で行われた。1レース目の第8戦では、 を見せた宮田選手。劇的な勝利の嬉しさはもちろんだ が、SF23のベースセッティングが見つかったことも 喜びに拍車をかけたようだ。「残りのレース、このセ ッティングなら戦える」という大きな自信を持つこと ができたのが、この第3戦鈴鹿大会だったのだ。

普段の取材では「ライバル陣営の方が速くて強いか ら、チャンピオンのことは特に考えていない」といっ たコメントが常であったが、チームとの無線交信で は、「(レース中に)ホンダと競って、どこが遅いとい うのが明確に分かったので、(それを)しっかりフィー ドバックしたい。TRDさんをはじめ、皆さんご協力を お願いします。シリーズチャンピオン獲りに行きたい です」と、熱い気持ちを語っていた。

何度も口に出し続けた「世界に行きたい」

レーシングカートで実績を積み、2015年から四輪 のキャリアを始めた宮田選手。2016年から2年連続 でFIA-F4チャンピオンを獲得し、全日本フォーミュ ラ3選手権、全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選 手権にステップアップしてからは、さらなる高みを目 指してタイトル争いを繰り広げるも、あと一歩のとこ ろで悔し涙を飲み込むシーズンが続いた。

対照的に、山下健太選手や坪井翔選手など、同じ

TOYOTA GAZOO Racing育成メンバーの先輩たち は、順調にステップアップして結果を残していく状 況。「どうして自分だけ……」と歯痒い思いをする日も

少なくなかった。それでも、宮田選手がトップを目指 すために挑み続けることを諦めなかった原動力が、 「世界の舞台に行きたい」という彼の夢だった。

2021年からはスーパーフォーミュラでフル参戦を 開始するが、表彰台に手が届かない日々が続く。それ でも諦めずにコツコツと力をつけていき、2023年は ランキングをリードするまでに成長を遂げた。

こうした彼の頑張りと、語り続けた夢が報われる時 が訪れる。2023シーズン中盤にTOYOTA GAZOO Racing WECチャレンジプログラムのドライバーに 選出されたのだ。WECチームへの帯同やシミュレータ ーでのテストなどにも参加することになり、国内での 活躍が評価され、彼の夢に一歩近づくことになった。

チャンピオンを手繰り寄せた“攻めの姿勢”

第7戦モビリティリゾートもてぎでは、宮田選手は スタートに失敗するも、2コーナー立ち上がりで起き た多重クラッシュでレースは赤旗中断。再開後は17 番手からの出走となったが、宮田選手は何と13台抜 きの巻き返しを見せ、4位でフィニッシュした。

スーパーフォーミュラ最 終戦のポディウムで チャンピオンの証を 高々と掲げる宮田選手。 この日ばかりは大きな笑 顔で国内最高峰フォー ミュラでの王座確定を 喜んでいたようだ。

序盤で大きなアクシデントが発生。コース修復が必要 となり、赤旗の後にレース終了となってしまう。第8 戦にはハーフポイントが与えられ、宮田選手は6.5ポ イントをリードして2レース目となる最終戦を迎えた。

この第9戦の予選では、ランキング3番手のローソ ン選手がポールポジションを奪い、野尻選手が3番グ リッドを獲得。ライバル2台が一歩リードした。対す る宮田選手は、スプーンコーナー2つ目でリアが流れ てしまいタイムロス。4番手に終わり、予選ポイント を獲得できなかった。宮田選手は、第3戦鈴鹿の予選 Q2でトラックリミット違反を取られていたが、その 場所が今回と同じスプーン2つ目だった。しかし、コ ースから帰ってきた当の本人は前向きだった。

「Q1では『これ以上はアクセルを踏み込んで曲がれ ない』ところまで攻めて、今あるパフォーマンスの 100%を出せた状態でした。それでもトップとは差が ある状況なので。そこをさらに詰めるには、ミスを恐 れず、アクセルを踏むしかない。守りに入らないよう アタックしたら、スプーン2つ目で少しリアが滑りま した。ミスというよりは、攻めた結果です」。

宮田選手がこう語る”攻めの姿勢”が、これまで「苦 手意識が強かった」というスタートでも発揮された。

第9戦の決勝。宮田選手が獲得した4番グリッドは 日陰になることから不利かと思われたが、最終戦の大 一番で、シーズン一番とも言えるスタートダッシュを 決めた。2コーナーでは野尻選手をアウトから逆転し、 さらにローソン選手も2番手に下がり、順位として は、宮田選手が有利な状況となった。

ミングを割り出し、レースをさらに優位に進めた。

チーム総力のサポートを受けてポジションを守り切 った宮田選手は3位でフィニッシュ。9戦すべてでト ップ5以上のリザルトを残した宮田選手が、自身初の スーパーフォーミュラチャンピオンに輝いた。

TOYOTA GAZOO Raci ngの体制発表会では、 宮田選手のWECチーム ・リザーブドライバー就 任と、FIA F2選手権そ してELMSへの参戦が 明らかにされた。

そんな彼をチームもサポートする。第8戦でチーム メイトの笹原右京選手がアクシデントに見舞われて、 第9戦は欠場となっていた。これにより、笹原選手の 36号車担当のエンジニアとメカニック全員で、宮田 選手が駆る37号車のバックアップに入ったのだ。

エンジニア陣は36号車担当の大立健太氏を中心に、 スーパーフォーミュラ公式アプリ「SFgo」を駆使して ライバルの状況を分析。的確なピットストップのタイ 11月20日に行われた

「正直、チャンピオンを獲れるとは思っていませんで した。でも、僕は『世界に行きたい』という想いでレー スを始めて今に至ります。それが原動力として結果に も繋がったと思います。スーパーフォーミュラに参戦 してから、優勝とポールポジションを獲れていなかっ たので、まずはそれを獲るために何をすべきかをチー ムと一緒に考えてきました。第3戦の鈴鹿で優勝でき て、クルマにも自信がつきましたし、第5戦SUGO で後続に大差をつけて優勝できたことで、僕のドライ ビングやメンタルの部分に自信がつきました。TGRを はじめトムスチーム、スポンサーの皆さん、応援して 下さるファンの皆さんに本当に感謝しています」。 スーパーGTとの二冠達成、そして世界へ 宮田選手の活躍はスーパーフォーミュラだけに留ま らなかった。坪井選手と組んで36号車「au TOM’S GR Supra」で参戦したスーパーGTでは、最終戦での 逆転勝利を含んで3勝し、GT500クラスチャンピオン に輝いた。これにより宮田選手は史上5人目、そして 最年少となる国内トップカテゴリーのダブルタイトル 獲得を達成。まさに2023年の国内四輪モータースポ ーツは“宮田莉朋の年”と言っても良い内容だった。 この大活躍が、思わぬ展開を呼ぶ。ダブルタイトル 獲得の約1週間後にFIA F2への選手権参戦のオファ ーが舞い込んだのだ。宮田選手の2024年は、この時 点では、スーパーフォーミュラの継続参戦に加えて、 ヨーロピアン・ル・マン・シリーズ(ELMS)に挑戦す る予定となっていた。しかし、“世界”を夢見ていた宮 田選手はFIA F2への挑戦を決断。「ロダン・モータ ースポーツ(カーリン)」からのフル参戦が決まった。

2月に行われたバーレーンでのテストを経て、2月 29日~3月2日の日程で、2024年のFIA F2選手権が バーレーンで開幕した。宮田選手は、他のカテゴリー との兼ね合いで事前テストにも十分に参加できなかっ たが、それでも開幕戦の予選では5番手に入る走りを 披露。3月1日のスプリントレースでは、スタートで出 遅れて18番手に下がるも、着実に挽回して9位フィ ニッシュ。3月2日のフィーチャーレースでは展開に恵 まれず劣勢になるかと思われたが、粘り強く走って9 位でポイント獲得を果たした。しかし、翌週の第2戦 サウジアラビアでは両レースとも後方に沈んでいる。 彼にとってFIA F2デビューイヤーは、思うように 進んではいないようだが、チーム、そして宮田選手も 「今は経験して学ぶとき」と理解しており、良い結果を 掴むべく日々奮闘している。“世界の舞台で戦う”とい う自身の夢を叶える、その瞬間のために……。

久々の全日本ラリーに初めてのコンビで挑戦 最終戦はコンマ差の大接戦で王者を決めた!

日本ラリー選手権JN4クラス の2023シーズン最終戦は、最 終ステージまで激しいタイトル 争いが展開された。2年連続チャンピオン の西川真太郎/本橋貴司組を破り新たな王 者に輝いたのが、内藤学武選手と、内藤選 手のコ・ドライバー大高徹也選手だった。

全日本ラリーには2014年のモントレー でデビューした内藤選手と、2000年の二 輪駆動部門・荘川でナビゲーターとしてデ

ビューした大高選手。内藤選手は2018年 の嬬恋で初優勝を飾り、大高選手は2017 年のハイランドマスターズで初優勝してい る実力者だが、大高選手は2020年より全 日本での活動を休止しており、内藤選手も 2022年シーズンの活動を休止していた。 しかし、そんな両者が2023年にコンビ を組んで全日本ラリーに復帰。初のコンビ ネーションで全日本に挑むこととなった。 2023年は第2戦新城から参戦。内藤選 ようやく平常を取り戻した感がある 2023シーズン。Bライセンス競技の 最高峰に位置するそれぞれの全日 本選手権では最終戦まで戦いが白 熱し、新たな王者が続々と誕生し た。ここでは、2023年に初めて全日 本チャンピオンを獲得した選手た ちに、栄光を掴んだ道程を聞いた。

Manabu NAITOU

手は「事前に読み合わせた時に、大高選手 は僕のクセをすぐに把握してくれて、阿吽 の呼吸でリーディングしてくれました」と語 れば、「リーティングのタイミングは手探 りで、何とか走れたという状況でしたが、 内藤選手のスキルが高くて、レグ1から好 調でした」と大高選手が語るように、緒戦 の新城ラリーでは好タイムを連発した。 「これだけ走れるとは思っていなかったの で嬉しかった。出来過ぎのリザルトです」 と内藤選手が語るように、内藤/大高組は 全ステージでトップタイムを記録して、全 日本ラリー復帰戦を最高の形で締めくくり、 シリーズで幸先のいいスタートが切れた。

しかし、2戦目となった第4戦久万高原 は予想外の事態が発生。「レッキ終了段階 では手応えがありましたが、SS2でミッシ ョンがブローしました」とリタイアを喫し、 この負の流れは、第5戦丹後でも続いた。

内藤選手は「レグ1は調子が出なくて3 番手で終えました。足のセットを変えた り、雨が降ったこともあったりで、レグ2 では盛り返せましたがトップには届きませ んでした」と振り返り、大高選手も「舗装は 勝ちたかったし、タイム差もなかっただけ に悔しかったですね」と、2位に惜敗する。

内藤選手は「2023年は“カン”を取り戻 すために4戦だけ出るつもりで、タイトル 争いは意識してませんでした。でも、新城 の勝利で、丹後の結果次第ではイケるか も、と思っていただけに悔しかったです。 それに、2020年もタイトル争いをしたんで すが、北海道のグラベル戦をスキップした ことで王座を逃したことが心残りでしたか ら、2023年は予定外だったカムイにも出る ことにしたんです」と語る。そして、この第 6戦カムイが内藤/大高組にとって2023 年のターニングポイントとなった。

Tetsuya OOTAKA

グラベルラリーへの不安 「2021年にSS1でクラッシュしたので、 カムイへのトラウマがあったし、そもそも グラベルに対する自信もなくて。でも、ス テージを重ねる内に良くなっていきまし た」とは内藤選手。そして大高選手は「本人 はグラベル経験が少ないことに不安があっ たようですが、コントロール技術が高い し、高い車速への感覚も良いので、実はグ ラベルの方が向いてるなと思ってました。 実際、レグ1は探りながらのドライビング でしたが、レグ2にはペースアップしてベ ストタイムを獲れるようになりました」と 評価。カムイの結果は2位入賞を果たす。 「入賞できればいいと思っていたので、2 位でグラベル初の表彰台を獲れたので嬉し かったですね」と内藤選手が語れば、大高 選手も「カムイの結果が次のラリーへの自 信に繋がりましたね」と手応えを語る。

グラベル連戦の初戦で好感触を掴んだ内 藤/大高組は第7戦ラリー北海道にも参戦。 そして、シーズン2勝目を獲得したのだ。

内藤選手が「インターバルでセッティン グを煮詰められたこともあり、レグ1から 順調に走れました。タイトル争いを考える とフルポイントを獲りたかったので、レグ 2もデイポイント獲得を意識してプッシュ しました。グラベルで勝てたので嬉しかっ たし、十分に戦えることが分かったので自

信を持てましたね」と語れば、大高選手は 「レグ1からトップタイムを出せていまし た。ラリー北海道はいつか勝ちたいと思っ ていたので、勝った瞬間は格別で、嬉しか ったですね。そして、この結果で何とかタ イトル争いを次に繋げることができたので ホッとしました」と成長ぶりを語る。

とはいえ、ランキング首位につけていた のは2022年チャンピオンである西川/本 橋組で、それをシリーズ2番手で追う内藤 /大高組の逆転は厳しいものがあった。内 藤選手も「僕たちは優勝が必須で、かつデ イポイントも2点以上は獲らないといけな い状況でした」と苦境を振り返っている。 しかし「日曜が僕の誕生日だったことも あって、勝つしかないと思ってました」と 内藤選手が語れば、大高選手も「フルポイ ントで勝ってチャンピオン獲りたかったん です」とのことで、気持ちを新たに最終戦 のハイランドマスターズに挑んだ。

ハイランドマスターズの激戦

最終戦では、SS1で西川/本橋組がベス トを奪取すると、SS2では内藤/大高組が ベスト計測で応戦。SS3とSS4では西川/ 本橋組が連続ベスト、SS5とSS6では内藤 /大高組がベストを奪うという激戦で、レ グ1は内藤/大高組がトップ、西川/本橋 組は約9秒差の2番手で折り返した。

最終戦のレグ2は、あいにくの雨となっ

全日本ラリー選手権最終戦のサービスパークで内藤選手と大高選手のタイトル確定を祝う支援者たち。大高選 手は名門ネコステラリーチームに所属し、同クラブ初の全日本チャンピオン誕生にわいた。

たが、JN4の首位争いは熾烈を極めた。西 川/本橋組は王者の意地を見せ、オープニ ングのSS7では総合5番手に入る驚愕のタ イムを叩き出してクラス首位に浮上する。 しかし、SS9では内藤/大高組が総合でも 9番手に入るベストタイムを刻んで首位を 奪還。SS10ではコンマ1秒差、SS11はコ ンマ5秒差の戦いとなり、チャンピオンを 賭けた2台の戦いは最終局面を迎える。

天候も晴れと雨を繰り返す厳しい状況の 中で、内藤/大高組がクラス首位、西川/ 本橋組が2番手で、最終ステージのSS12 を迎える。2台の差はわずか1.6秒だった。

最終SSでベストタイムをマークしたの は内藤/大高組だった。対する西川/本橋 組はエンジントラブルに見舞われ、クラス 6番手に終わっていた。この結果、約30秒 の差を付けた内藤/大高組がJN4クラスを 制し、同時に全日本ラリー初王者に輝いた。

「最終SSのストップで西川さんたちを待 ったんですが、なかなか来なくて。彼らに トラブルが出たことを知り、自分たちが勝 ってチャンピオンを獲ったんだということ を知りました。うちのチームは父がメカニ ックで母がケータリング担当なんです。両 親に良い報告ができました。それに、丹後 では西川さんに競り負けていただけに、最 後に勝てたので達成感がありました」と、激 戦だったチャンピオン獲得劇を振り返る。

一方、コ・ドライバー部門で初の王座に 輝いた大高選手も「優勝してチャンピオン を獲れましたし、内容的にも走り勝てたの で嬉しかったですね」と語り、最終戦のポ ディウムで歓喜の瞬間を分かち合った。

家族やチームの支援と共に

こうして全日本ラリー選手権で初めての チャンピオンに輝いた内藤選手と大高選手 だが、デビューから9年目にしてドライバ ー部門でチャンピオンに輝いた内藤選手 は、「いつかチャンピオンを獲りたいと思 っていたし、若い頃は早くチャンピオンに なって、4WDクラスにステップアップした いと考えてました。タイトルを獲得するま で長く掛かったなぁとも思いましたが、こ の9年間の積み重ねがあったからこそチャ ンピオンが獲れたとも感じています」とし た上で、王座獲得を次のように分析した。 「運転もそうですが、ラリーの準備や遠征 を含めたマネジメントなどに、これまで失 敗を積み重ねてきたことが大きかったと思 います。あとはタイミングも良かったです かね。周囲の変化に合わせて、タイミング を見誤らずに勝負できたことが、今回のタ イトル獲得に繋がったと思います」。

そして、デビュー23年目にしてコ・ドラ イバーチャンピオンに輝いた大高選手は、 「これまで長くラリーをやってきましたが、 実はチャンピオンについては、あまり意識 したことはなかったんです。もともと2023 年の活動はラリー北海道で終了する予定で したし、そこで勝てたから、チャンピオン 争いをするためにハイランドマスターズに 出てみようか、という流れでしたし……」と 前置きした上で、二人のタイトル獲得の要 因を大高選手はこう振り返った。「内藤選手 のグラベルでの進化が大きかったですね。 ペースノートのリーディングは割と早い段 階で合わせることができたので、やはり内 藤選手のグラベルでのスピードがタイトル 獲得に結びついたと思います」。

活動休止を経て全日本ラリーに復帰した 内藤選手と大高選手。初めてのコンビなが ら、復帰初年度でいきなりタイトルを獲得 した二人は、まだまだ今後の大きな可能性 を秘めたクルーであると言えるだろう。 「2024年はディフェンディングチャンピ オンを目指してJN4クラスへの参戦を考え ています。ですが、2023年はチャンピオン 争いのために、参戦コストと時間にかなり の無理をしましたので、今後は持続可能な 活動スタイルを見つけたいと思います。 4WDでJN2クラスに挑戦したいとも考え ていますので、効率的なマネジメント方法 を確立させていきたいと思います」とは内 藤選手。そして「2024年も内藤選手と6戦 に参戦予定で、JN4クラスでディフェンデ ィングチャンピオン獲得に挑みたい」と語 る大高選手。家族や所属クラブの後押しを 受けて全日本選手権の高みを目指す最強プ ライベーターとも言えるJN4クラスの内藤 /大高組。彼らの新たなチャレンジに大き な注目が集まっている。

内藤学武選手が立川市役所を訪問 酒井大史市長に王座獲得を報告!

2024年2月、内藤選手は居住地である東京・立川市の酒井大史市長を訪問し、立川市役所でラリー競技 における全日本選手権の獲得を報告した。内藤選手はサービス隊長としてシリーズ参戦を支えた父・輝 夫さんを交えて、ラリー競技の概要説明や2023シーズンの活動報告などを行い、クルマ好きとして知ら れる酒井市長は、自らのカーライフ体験を織り交ぜながら懇談。予定の時間ギリギリまでクルマ談義に

奴田原文雄選手を支える若き獅子 約束された勝利へのプレッシャー

日本ラリー選手権のJN2クラ スで6勝を挙げてドライバー部 門を制した奴田原文雄選手。そ

の快進撃を支えたのが東駿吾選手だ。

東選手は2019年の第7戦横手で全日本 デビューを果たした若手コ・ドライバー で、2020年の第3戦唐津では小濱勇希選 手とコンビを組んでJN5を戦い、全日本 初優勝を獲得している。

その実力は高く評価され、2021年には奴 田原選手のコドラとしてJN1に挑戦した。

しかし、車両のマイナートラブルに泣かさ れ、翌年はヘイキ・コバライネン選手が躍 進しており、数度の入賞を果たしながら も、タイトル争いからは遠ざかっていた。

東選手にとって、奴田原選手のJN2ク ラス移行が転機になったという。しかもそ れは彼のプレッシャーにもなっていた。

「奴田原選手とは3年目ですし、勝たなき ゃいけない状況は、自分のミスで優勝を逃 すことは絶対できないということです。

JN1ではミスを意識する余裕がないほど 必死でしたが、JN2に移ることになって初 めて『ミスすることの怖さ』を感じました。 JN1はリーディング次第でステージタイ ムが変わるので、ペースノートにシビアな

面があります。ですが、JN2で毎回優勝を 目指すとなると、TCでの早着や競技規則 面でのミスができないので、違う部分にも プレッシャーを感じました」と、“常勝”を 期待されることの意味を噛み締めていた。

2023年はラリー嬬恋で開幕した。奴田 原/東組は競技用スタッドレスタイヤを持 たない環境に苦戦するも、2位で終えた。

続く第2戦新城は下馬評通り、奴田原/ 東組が圧倒的な速さでシーズン初優勝を挙 げる。東選手によれば「JN1のタイムもチ ェックしていました」とのことで、戦い方 としてはオーバーオールを意識することに なったという。第3戦唐津でも、「ターマ ック用に新車両を投入したので、JN1を意 識しながらクルマやタイヤのチェックをし ていました」とのことで、落ち着かない状 況ながらも、シーズン2連勝を挙げた。 続く第4戦久万高原ではハプニングが発 生。レグ1を首位で終えた奴田原/東組の 車両にレグ2でオイル漏れが発生したの だ。「ガードを打ったか何かでオイル漏れ が発生して。リエゾンの繋ぎがきつくて余 裕がなく、ステージが終わるまでそれに気 付けませんでした。それでも、サービスで 修復してもらい2位に入れたので、チーム

の結束は高まったと思います」と振り返る。

第5戦丹後では「タイヤ幅の広さが活き る道で、路面のギャップも少ないので、 JN1クラスとも戦えると思っていました」 ということで3勝目を獲得。そして、グラ ベル戦の第6戦カムイでも圧倒的な強さで 4勝目をマーク。この結果により、奴田原 選手よりひと足早く、東選手がJN2のコ・ ドライバーチャンピオンを確定させた。 「勝って決められたし、総合でもいい順位 に入れたので嬉しかったんですが、同時に ホッとしました。重圧の中でのタイトル獲 得には達成感がありました」と振り返る。

2戦を残してタイトルを獲得した東選手 は、天王山の第7戦ラリー北海道を迎えた。 「エントリーリストが出た時点で奴田原選 手のドライバーチャンピオンが確定しまし た。それもあって、ここでもJN1のタイ ム、特にヤリ-マティ・ラトバラ選手を意 識していました」と東選手。SS10でのパイ ロン接触で1分のペナルティを受けたもの の、奴田原/東組は5勝目を獲得した。

最終戦ハイランドマスターズでも「2023 年の集大成という気持ちで臨みました」とい うことで、天候に翻弄されながらも6勝目 を重ねて2023シーズンを締めくくった。 「ドライバーのスキルとチームの力が大き かったです。自分も2021年から奴田原選 手と組めたおかげでスキルアップできたと 思います。事前の準備や競技後のレポート も充実してきましたが、まだまだ成長しな ければいけない部分も多いです」とのこと。

2024年の東選手は奴田原選手と共に GRヤリスRally2でJN1に参戦する。「再 び最上位クラスで戦えるのが楽しみです が、クルマも新しく、速度も高くなり、ラ イバルとの戦いもシビアになるので、勉強 することが増えそうです」と語る東選手。若 手コ・ドライバーのさらなる飛躍に期待だ。

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本悠太選手と共に、2023年の全 日本ラリー選手権JN3クラスで シーズン5勝を挙げたコ・ドラ イバー立久井和子選手。長い参戦歴で、初 めての全日本チャンピオンに輝いた。

「心の底では『いつかはチャンピオン』とい う思いはありましたが、同時にプライベー ターという体制では難しいだろうという諦 めもありました。自分は目立たなくていい し、ドライバーを勝たせたいという気持ち で戦ってきましたが、ラリーに復帰してか らは上手くいかないことが多く、辛い思い をしてきました。でも、みんなに祝福して もらえたことがすごく幸せでした」。

が、舗装で勝てたのが大きかったです」と まず1勝を挙げる。第3戦唐津では「山本選 手が肉離れを起こして片手が動かず、痛み 止めを飲んでテーピングを巻いていました。 SS1は何とか走れてタイムも出ましたが、 リエゾンは私が運転する状態で。リタイア かと思ってましたが、何とか勝つことがで きましたね」と、2勝目を獲得した。

持ち越しでした」という状況において、山本 /立久井組は得意なグラベルロードを席 巻。曽根選手が2番手につけていたため、 山本選手の王座確定はお預けかと思われた が、曽根選手が何と最終SSでリタイア。 この結果、4勝目を獲得した山本/立久井組 がJN3チャンピオンを確定させた。

「山本選手にタイトルを、という気持ちが 強かったので、山本選手と一緒に勝って決 められたのが良かったですね。チャンピオ ンボードを持って記念撮影したときは、嬉 しかったです」と振り返る立久井選手。

王座獲得の思いをこう語る立久井選手は、 2003年の第7戦モントレーで全日本ラリー にデビュー。翌年の第5戦赤井川では原口 真選手と共に初優勝を獲得し、その後も 2012年まで上位クラスで活躍した。以降 はしばらく活動を休止したが、2020年に高 橋悟志選手と全日本に復帰。2勝を挙げた。

そして、2021年には山本悠太選手とJN1 クラスに挑戦することになったが、山本選 手は初の4WDターボに苦戦。翌年は山本 選手とJN3クラスへ変更し、終盤のグラベ ル連戦を制してタイトル争いに加わるもの の、シリーズは2位で終えている。 「仕事の関係もあってラリーをやめていま したが、高橋選手に誘われて復帰したら、 やはり楽しかったんですよね。2021年は山 本選手と4WDに苦労して、2022年は後輪 駆動に戻ったことでタイトルを狙いました が、舗装で勝てなくて逃しました。2023年 も同じ体制で参戦できることになりました が、もし、山本選手がタイトルを獲れなか ったらコドラを替えてもらおうと思ってい ました」と、立久井選手は背水の陣で2023 年シーズンに取り組んでいたのだ。

緒戦の第2戦新城では山本選手が快走 し、「ライバルの脱落にも助けられました

第4戦久万高原は、まだ肉離れの影響が 残るなか、山本選手は激しいバトルを展開。 立久井選手が「曽根崇仁選手や長﨑雅志選 手、山口清司選手たちと一進一退で、勝つ か5位かという僅差の戦いでした」と語るよ うにスリリングな展開となったが、終盤で 大きく引き離して、3勝目を獲得した。

第5戦丹後では、スポット参戦の竹内源 樹/木村悟士組との激戦に。「2022年の最 終戦ハイランドマスターズでは大差をつけ られたので、負けたくなかったですね。約 9秒差で敗れましたが、それでも、山本選 手の成長を感じることができました」と、タ ーマック戦での手応えを掴んだという。

そして、第6戦カムイを迎えた。「優勝す れば私は無条件でタイトル獲得でしたが、 山本選手は曽根選手が2位に入ると次戦に

第7戦ラリー北海道は「チャンピオンを決 めた次のラリーは難しいと言われていまし たが、本当にギリギリで勝てました」と5勝 目をマーク。最終戦ハイランドマスターズ では、WRCラリージャパン参戦を見据えて 車両の仕様変更を行っていたが、最終的に は2位と惜敗することになった。

「運に恵まれた所もありますが、山本選手 が望むリーディングなど、息が合ってきた 部分もあります。まだ改善の余地があるの で、山本選手と一緒に煮詰めて、連覇でき るように頑張ります」と思いを新たにする立 久井選手。二人の躍進に期待したい。

倉拓郎選手は、2023年の全日本 ラリー選手権JN5クラスでヤリ スを駆り、大倉聡選手との激闘 の末、初の全日本チャンピオンに輝いた。

全日本ラリー選手権

北海道出身の松倉選手は、2012年のラ リー洞爺で全日本デビューを果たす。その 後も地元のグラベル戦にスポット参戦を続 け、CJ4Aミラージュで林道を所狭しと振 り回す激走で多くのファンを魅了した。

本州の大会には2022年の第8戦ハイラ ンドマスターズから挑戦しており、2023 年には、「車両を貸してもらえることにな ったので、2022年はテスト兼ねて最終戦 に出ました。このパッケージでどこまで通 用するのかを知りたくて、2023年は参戦 イベントを増やしました」とのことで、全 日本ラリーへの本格的な参戦が始まった。

当初、松倉選手はシリーズに対する執着 がなかったそうで、「本州への遠征は2年 計画の予定で、2023年は体制固めだと思 っていました。参戦数もグラベル2戦とタ ーマックの3戦で、有効にも1戦足りない ので、表彰台争いができれば、という感覚 でスタートしました」と語っている。

ところが、いざ出場するとすべての大会 で高得点を獲得。松倉選手は全日本のフィ ールドで実力を開花させることになった。

2023シーズン緒戦は第3戦唐津だったが、 「北海道の関根正人さんから『唐津は走り やすいと思うよ』とアドバイスを受けて九 州遠征を決めました。初めての唐津は、確 かにクセがなくて走りやすかったです」と、 SS1からベストタイムを刻んでみせた。 「ウェット路面のタイヤ選択が当たってス タートダッシュを決められました。リズム を掴めて好調を維持できたので、予想以上 にいい結果を得られました。遠征して良か ったです」と語るように2位を獲得する。

2戦目となった第5戦丹後では、「前年 の地方選手権でゼロカーのドライバーを経

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Takurou MATSUKURA

験できたので、走りのイメージは掴みやす かった」と語る。マシンは駆動系等がアッ プデートされており、「丹後ではターマッ クで圧倒的に速い大倉聡選手を倒して、勝 ちを狙うつもりでした」と意気込んだが、 レグ1での出遅れが響いて初優勝はお預 け。それでも丹後では2位に入っている。

そして、松倉選手は借り物のヤリスから 愛車デミオに乗り換えて、北海道のグラベ ルラリー2連戦に臨んだ。第6戦カムイで は、勝手知ったる地元でJN5を支配し、松 倉選手は待望の全日本初優勝を獲得した。 「前回のカムイはレグ2でリタイアしたの で、とにかく勝ちたかったんです。今回の カムイで勝てたことで、チャンピオンの可 能性を意識するようになりました」とは松 倉選手。続く第7戦ラリー北海道でも躍進 した松倉選手は、レグ1でリードを築いて レグ2も支配。グラベルラリー連戦で2連 勝を果たした。そして、ラリー北海道の優 勝で、松倉選手は2023年のJN5クラス のタイトルを確定させることになった。

「次のハイランドで大倉選手が優勝、僕が リタイアしても有効は同点で、一番大きい ポイントを獲得した方がチャンピオンとい

う状況だったので、どうやら第7戦の結果 で僕のチャンピオンが決まってたようなん です。でも、それに気付いてなくて。表彰 式でも『チャンピオンおめでとう』ではなか ったんですよね」と苦笑する。

最終戦ではコ・ドライバーの山田真記子 選手のチャンピオン争いが残されており、 「僕がタイトルを獲れたのは“まき姉”のお かげなので、一緒に勝って決めたかった」 と意気込んでいた。しかし、ハイランドマ スターズではレグ2序盤まで首位を維持し たものの、終盤で逆転され2位に留まり、 山田選手もシリーズ2位に惜敗した。

松倉選手は「北海道のドライバーにとっ てシリーズ参戦できる機会はあまりないの で、結果が出て嬉しかったです。シリーズ を追う覚悟を決めたこと、冷静に取り組め たこと、そして、多くの方々から手厚いサ ポートを頂けたこと、この三つがあってタ イトルが獲れたと思っています」と振り返 る。2024年についても「まずはターマック で勝ちたい。そして今度こそ自分の2連覇 と同時に“まき姉”のチャンピンも獲りた いです」と意気込む松倉選手。2023年の忘 れ物を取り返す二人の戦いに注目だ。

PHOTO/小竹充[Mitsuru KOTAKE]、TOYOTA GAZOO Racing  REPORT/JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

2期生の小暮ひかる 選手(左)と山本雄紀 選手のプログラム継 続が決まり、話題の 新型GRヤリスRally2 による実戦トレーニ ングが始まった。

勝田貴元選手の後に続く、WRCで活躍できる日本人ドラ イバーの発掘・育成を目指すTOYOTA GAZOO Raci ngの取り組み「TGR WRCチャレンジプログラム」は、2024年 に第三世代となる新たなプログラムがスタートする。

同プログラムの2期生としては、国内ラリーで実績を積んだ 大竹直生選手と小暮ひかる選手、山本雄紀選手が選出され、 2022年からRally4車両による欧州の選手権ラリーに参戦。 2024年からは小暮選手と山本選手のプログラム継続が決ま り、車両はGRヤリスRally2に変更され、地域選手権と世界ラ リー選手権でのステップアップシーズンに挑むことになった。  そして、昨年12月には3期生の最終選考が行われ、新たに 後藤正太郎選手と松下拓未選手が選出された。後藤選手は慶 応義塾体育会自動車部、松下選手は大阪大学体育会自動車部 の出身。これまでの経験値はスピード競技主体となることか ら、3期生はラリー競技について、欧州でイチから学ぶという、 従来とは異なる新たなトレーニング内容になるという。

2024年全日本ラリー選手権で TGRの若手育成企画が始動!

3期生に選出された 松下拓未選手(左)と 後藤正太郎選手。プ ログラムでは、ミッコ ・ヒルボネン氏やヨ ウニ・アンプヤ氏ら が講師を担当する。

また、TGRから昨年9月に発表された全日本ラリー選手権 JN2クラスに対する若手育成企画が、ついに全日本ラリー開 幕戦・三河湾から始動した。これにより、世界の道で人間と道 具を鍛える試みが、国内ラリーにもその門戸が開かれること になった。全日本選手権が、日本のナショナルチャンピオン シップとしてのプレゼンスを高める可能性も秘めているだけ に、今後の展開には要注目のトライアルだと言えるだろう。

全日本ラリー選手権JN2クラスに設けられたサブカテゴリー「MO RIZO Challenge Cup」は、世界のラリーシーンで活躍できるスター の発掘と、全日本ラリーのさらなるファンづくりを目的としている。

ラリー三河湾にはまず8組のクルーが参加し、勝田貴元選手も自身 のチームからドライバーを擁して直接指導にあたっていた。この緒 戦では山田啓介/藤井俊樹組がJN2クラスを制している。

験豊富な猛者たちが2023年の 全日本ジムカーナ選手権でタイ トルを獲得する中で、BC1クラ スでは野原博司選手が初栄冠を獲得した。

全日本ジムカーナ選手権には2013年の 第3戦名阪でデビューした野原選手は、関 東のチャンピオン戦と並行して全日本への 挑戦を重ね、2014年からは全日本への本 格的なシリーズ参戦を開始。2015年には SA1からSCクラスへ移行したものの、当 時のSCは四輪駆動車との混走で、二輪駆 動の野原選手は苦しい戦いを強いられた。 「2022年まで私が戦っていたクラスは 4WDや後輪駆動との混走でしたが、2023 年のBC1クラスは前輪駆動車のみになりま した。もちろん、新たにB車両を持ち込む ライバルも予想しましたが、自分のSC車両 は熟成されているので、勝てるチャンスは あると思っていました」と野原選手は語る。

2023年の新クラスで全日本を制するべ く、野原選手は開幕戦もてぎ南に向けて入 念なテストを行った。「4回ほど練習しま したし、公開練習でも後続を引き離せたの で、これならイケると思っていました」と 語るものの、決勝は雨に祟られ、低温のウ ェット路面に苦戦を強いられてしまう。

「車両重量が軽いので、雨だと厳しいんで すよね。勝つつもりが5位に終わったの で、かなり凹みました」と肩を落とす。第 2戦タマダでは「3回しか走ったことがない コースですが相性は悪くなく、公開練習で はトップ、1本目も2番手でした。でも、2 本目の前に雨が降ってそのまま2位。勝て なかったのはガッカリでした」と振り返る。

第3戦の名阪でも「公開練習でトップで したが、細木智矢選手が速かった。2本目 でタイムを上げたんですが届かず、またし ても2位でした」と惜敗が続いていた。

そして、土日の2大会連続開催となった 第4/5戦のスナガワでは、第4戦は3位、 第5戦では6位に終わる。「スナガワは難 しい路面だし、あまり相性が良くないコー スでした。それに今回はダブルヘッダーだ ったので、メンタル面とフィジカル面で疲 れてしまい、走りを合わせ切れませんでし た」と振り返る。

しかし、第6戦では歓喜の瞬間が訪れた。 「パイロンコースは自信があって、ハイラ ンドパークみかわはクルマとの相性も良い んです。過去には四駆を相手に3位に入れ

ましたから、優勝するならみかわだろうと 思っていました」と野原選手。その言葉通 り、金曜の練習会と土曜の公開練習ではト ップタイムを計測する。決勝第1ヒートは ペナルティで10番手に沈んだものの“生タ イム”ではベストで、第2ヒートでは野原選 手がクラス唯一の1分11秒台を計測して、 ついに全日本ジムカーナ初優勝を獲得した。 「皆さんの協力をいただいて作ってきたク ルマだったので、感慨深いものがありまし た。ゴール直後はみんなが祝福に来てくれ て、ホントに嬉しかったですね」と語る。 しかし、第7戦SUGO西では再び苦境 に陥ることに。「金曜に車両トラブルがあ って、土曜に修復したんですが、日曜の1 本目まで完調しなくて。2本目に調子は戻 ったんですが、路面温度も上がっていて、 メンタル的にもボロボロでした」とのこと で8位に惨敗。しかし、不幸中の幸いだっ たのが、ライバル西井将宏選手が12位に 敗退したことで、これが後にBC1のタイ トル争いを左右することになったのだ。

最終戦の鈴鹿南では「大学の自動車部時 代に走り込んでいたので、金曜から順調で した」と語るように、決勝の第1ヒートで トップタイムをマーク。セミウェットの第 2ヒートではタイムアップを果たせなかっ たものの、第1ヒートのタイムで2勝目を 獲得。初の全日本タイトルを獲得した。 「西井選手より上の順位でゴールすればチ ャンピオン確定という状況でしたが、勝っ て決めたいと思っていました。なので、み かわでの初優勝の方が嬉しかったですね (笑)、もちろん、チャンピオンを決められ たことは純粋に嬉しかったです」と笑う。

全日本ジムカーナ10年目にして王座に 輝いた野原選手は、今後について「後輪駆 動でBC2クラスに参戦したいと思います。 後輪駆動での競技経験は少ないですが、心 機一転、チャレンジしたい」と語る。新天 地に挑む野原選手の動向に注目したい。

初優勝で確かな手応えを掴み 全日本4シーズン目の初栄冠

ナガワの初優勝で戦えるという 手応えは掴めましたし、キャリ アも積んできたので、2023年 はチャンピオンを目指していました」。

こう語るのは、2020年の第4戦スナガ ワで全日本ダートトライアル選手権にデビ ューした徳山優斗選手。2023年はPN1ク ラスでヤリスを駆り、第3戦丸和で1勝を 挙げ、初の全日本チャンピオンに輝いた。

徳山選手の2023年は、開幕戦の京都コ スモスで5位という成績から始まった。

「2本目にタイヤ選択をミスして、それで 無理に勝負したら電子制御が介入するとい う、ボロボロの状態でした」と緒戦を振り 返った。第3戦丸和は「地元は北海道です が、丸和はホームコースと言えるぐらい走 り込んでいます。第2戦恋の浦が中止にな ったために丸和で事前テストを行うことが できて、そこでいい感触を得られたので、 第3戦には自信がありました」と語る。

「1本目は散水でウェットながら路面がキ レイだったので、ドライタイヤで勝負して 2番手。2本目は雨が止んだけど路面が軟質 だったので、ウェットタイヤを選びまし た。その選択で後続を大きく引き離すこと

ができたんです。“本土”の丸和で勝つこと ができたのは嬉しかったですね」と、2戦目 の丸和でシーズン初勝利を挙げた。

第4戦スナガワは「普段より路面がキレ イで、うまくまとめて走ったつもりが、タ イムは出ませんでした。連勝すればチャン ピオンに近付けると思っていただけに、落 ち込みました」と地元大会を3位で終える。

第5戦は初挑戦の門前だったが、「予習 はできましたが、テストはできなくて。土 曜はボロボロで、日曜にセッティングをガ ラッと変えたら、それがうまくハマりまし た。2位は上出来でしたね」と振り返る。

第6戦の切谷内は「好きなコースなので 勝ちを狙いました。タイヤ選択もバッチリ で、2本目にベストを出して『これは勝て る』と思えたんですが、地元の工藤清美選 手にコンマ1秒逆転されて……、本当に悔 しかったですね」と2位に惜敗する。

この流れを変えて、2勝目を飾るために、 徳山選手はサマーブレイクを利用して事前 テストを行った。ところが第7戦今庄で は、「好きなコースで、テストもして、本 番も気合いが空回りしないよう自信を持っ て走れました。でも、ちょっと抑えすぎた

ようで……」と、4位に終わってしまう。こ の悔しい状況について徳山選手は、「シリ ーズは首位でしたが、2位と3位が追い付 いてきて、夜も眠れない状態でした」と振 り返る。PN1のタイトル争いは、若手の奈 良勇希選手とベテラン工藤清美選手、徳山 選手による三つ巴で最終戦を迎えた。

最終戦は屈指の高速コースであるテクニ ックステージタカタだったが、徳山選手は 「人間もクルマも苦手なコースなので、と にかくライバルより上の順位でフィニッシ ュすることを考えていました。正直、勝て る気がしませんでした……」と語る。さら に「僕の前で出走した奈良選手は、タイト ル獲得には優勝が条件でしたが、奈良選手 がベストを獲れなかったことを出走前に知 り、僕自身、舞い上がったんだと思いま す。路面が良かったのでスーパードライを 履きましたが、オーバーステアを出してし まい、2本目は終わりました」と下位に沈む。

意気消沈でパドックに戻った徳山選手だ が、「工藤選手も優勝が条件でしたが、タ カタは地元の太田智喜選手が速いので ……」という予想が当たり、太田選手がシー ズン初優勝を獲得。工藤選手は3位に留ま ったため、今回8位だった徳山選手に、PN1 チャンピオンが転がり込むことになった。 「納得のいかないシーズンでしたが、気温 と路温の低い大会が多かったので、タイヤ が環境に合っていたことが高得点につなが ったと考えています。だいぶコースをイメ ージできるようになったし、メンタル的に も強くなれたと思います。慣熟歩行を大切 にすることで、2本目もうまくまとめられる ようになりましたからね」と成長も感じて いるという徳山選手。「2024年はGR86 でPN3に参戦できる機会を得られました。 後輪駆動はFFより得意だと思っているの で、PN3でもチャンピオンを獲りに行きた いと思います!」と、気合を入れた。

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日本ダートトライアル選手権の SA2クラスといえば、北村和 浩選手や荒井信介選手といった 大ベテランや、黒木陽介選手など気鋭の強 豪が揃う花形クラス。その激戦区で2023 シリーズを制したのが浜孝佳選手だった。 2004年に全日本デビューを果たした浜 選手は、その後もスポット参戦を続け、 2009年と2010年には全日本ラリー選手権 にも参戦した異色のキャリアを持つ。2007 年と2009年のJAFカップダートラでは優 勝するも、2011年の京都ラウンドでクラッ シュを喫して、一時活動を休止したが、 2018年に全日本ダートラへ復帰。2021年 の第8戦タカタで全日本初優勝を獲得した。

ました。初のフル参戦だったのでタイトル は意識してませんでしたが、門前の勝利で 見えてきた。そういう意味ではコスモスの 優勝よりも嬉しかったですね」と振り返る。 しかし、第6戦の切谷内では苦境に陥る。 「切谷内は楽しいコースなんですが、ドライ タイヤがウェット路面でもグリップを得ら れるので、初参加だったこともあり、その 感覚を掴むのが難しかったんです。オマケ にクレスト後のターンで失敗して9位。ど ん底に叩き落とされました」と語る。

「できることは全部やろう……ということ で、次の今庄までのインターバルを使って 練習に行きましたし、神社にお参りにも行 きました(笑)」というように必勝体勢を敷 いたものの、第7戦今庄でも惜敗する。 「北村選手より上にいないとタイトルは獲 れないので優勝を狙いました。1本目は後 続を大きく引き離したベストを出せました が、そこで集中力が切れて、2本目はミス を連発しました」と語る浜選手は3位に終 わる。しかし、今庄の北村選手は5位に沈 み、北村選手との差は開いたが、黒木選手 がシーズン初勝利を掴んでシリーズ2位に 浮上することになった。そのため、SA2の

タイトル争いはポイント差の少ない三つ巴 で、最終戦タカタを迎えることになった。 天王山の最終戦は、黒木選手が3位、浜 選手が2位、北村選手がシーズン2勝目を 獲得というオーダー。そして、この順位で、 浜選手が全日本デビューから19年目にし て、ついに全日本チャンピオンに輝いた。 「タカタは地元ですし、自信もあったの で、勝って決めたかったですね。地元で競 り負けた悔しさはありましたが、それ以上 にチャンピオンは嬉しかったです。タイト ルを獲得するために支援してくれた人がい たので、そのチャンスをモノにできたとい う気持ちも強かったです。今までは感覚と タイムで走りを判断していましたが、2023 年からはメカニックがGPSロガーで走行 データを分析してくれたんです。おかげで ミスが減ったし、アクセル操作などの運転 方法も効率的に変えられました。フル参戦 1年目はタイトルを意識せずにスタートで きましたが、これからは追われる立場のプ レッシャーがあります。集中力を切らさず に戦いたいと思います」と語る浜選手。新 たな戦い方を武器に、2024年のSA2クラ スも大いに席巻してくれるに違いない。

全日本ダートトライアル選手権

そんな浜選手は、2023年に初めてシリー ズフル参戦を開始し、開幕戦の京都コスモ スパークで幸先のいいスタートを決めた。 「土曜の公開練習と決勝の1本目は情報収 集として、2本目で勝負しました。何とか 走り切れたという状況で、勝てるとは思っ ておらず、それだけに嬉しかったですね」。  シーズン2戦目は第3戦丸和となった が、浜選手は「コスモスは地元のタカタの 次に走り込んでいるコースですが、丸和に ついては、2006年に一度走った程度で、 現在のミックス路面は初めてだったんで す」ということで4位に、第4戦スナガワ も経験値の少なさから5位に終わる。しか し、「2022年のスナガワでは最後の最後 でミスをしたので、今回はミスをしないよ う心がけました。結果は5位でしたが、イ メージ通りに走れたし、トップとのタイム 差も少なかったので、リザルト以上に得る ものがありました」と手応えを掴んでいた。 続く第5戦の門前ではシーズン2勝目を マーク。浜選手は「練習会を含めて何度か 走っているので、ドライ路面なら自信があ りました。2本目も壁のギリギリまで攻め られたので、ゴール後に勝てた感触もあり

初のフル参戦で得た初のタイトル

全日本ダートトライアル選手権

れまで自分が参戦してきたクラ スは強豪が多く、勝つことさえ も難しい状況だったので、チャ ンピオン争いなんて、諦めていた部分があ ったんです」と語るのは、2023年の全日本 ダートトライアル選手権SC2クラスで初 の王者に輝いた上村智也選手だ。

2007年の第1戦丸和で全日本デビュー を果たした上村選手は、2014年には当初の SA2クラスからSC2クラスへステップアッ プ。2018年の第4戦スナガワで全日本初優 勝を挙げたが、ダートラ界のベテランや気 鋭の若手を相手に苦戦を強いられてきた。

そんな上村選手の2023シーズンは、開 幕戦の京都コスモスパークから始まった。 「実は、2023年はチャンスがあると感じ ていました。前年のチャンピオン、目黒亮 選手が新車にスイッチしたので、序盤をう まく戦えればタイトルの可能性があるな と。コスモスはよく知ってるだけに、欲が 出ることが多いんですが、今回は2本目の 1コーナーを曲がった時点で『イケる』感触 がありました」という言葉通りに上村選手 がまず1勝を挙げる。その勢いは第3戦丸 和でも健在で、「表彰台に乗れれば」という 思いとは裏腹に、2勝目を奪取してみせた。

ポイントリーダーとして第4戦スナガワ に臨んだ上村選手だが、車両に異変が生じ てしまい、原因が判らないまま本番を迎え、 8位で遠征を終えることになる。続く第5 戦門前では、スナガワでの異変を対策した ものの、本番では攻めすぎもあって3位と いう結果に。門前では坂田一也選手に大差 を付けられたことから、走らせ方の改善を 検討したそうだが、一連の異変の要因はド ライビングではなくマシンにあったようで、 第6戦切谷内ではそれが露呈してしまう。

切谷内は雨が降るウェット路面での戦い となる。「ラインが狭くてアクセルを踏め ないし、踏んでもアンダーステアでした」

A F

“想定外”にも諦めずに取り組んで 自力で引き寄せた初チャンピオン

とのことで9位に敗退。「周りからも『クル マがおかしい』と指摘されるようになりま した」とのことで、終盤2戦を前に、再び セットアップを見直すことになった。

「どうやら駆動系が原因だったようで、フ ロントのデフを交換、リアデフもオーバー ホール」して第7戦今庄に臨んだ。ところ が、「センターデフにも問題があったよう で、今庄ではオーバーステア状態。まるで タイムは出ませんでした」と、今庄でも9位 に留まってしまう。しかも、吉村修選手が 優勝し、坂田選手が2位に入ったことで、 SC2クラスは亀田幸弘選手を首位として、 上村選手はシリーズ4番手に転落する。 「チャンピオン争いは“相手次第”となった ので、半ば諦めました。それでも、タカタ は好きなコースだし、今庄の後にクルマを 完璧な状態にできたので、最終戦は気持ち よく走って、勝って終わりたいと思ってい ました」と、最終戦の準備は万端だった。 ところが本番では「タカタに新設されたコ ーナーは失敗の連続で、決勝2本目もダメ でした。でも、ここで諦めるわけにはいか なかったので、アタックを続けました。ギ ャラリーコーナーはオーバースピードかと

思うぐらい攻められましたが、それが良か ったのか、次のS字も速く抜けられたんで す」と語る上村選手は、ベストタイムを更 新してパルクフェルメに帰ってきた。

第2ヒートの吉村選手は6位、坂田選手 は2位、シリーズ首位の亀田選手は車両ト ラブルによりダブルエントリーでの参戦で 6位に終わる。この結果により、上村選手 の3勝目が決まり、自身初の全日本チャン ピオンを確定させることになった。

「勝てたことも、チャンピオンになれたこ とにも驚きました。色々な人が祝福してく れたことで、実感が湧いた感じです。最後 まで諦めないこと、ですね。クルマを良く するために試行錯誤したし、2本目も諦め ずに走り切った結果ですから。自分のクル マは仕事の合間にしかメンテナンスできな くて、色々な人が手伝ってくれたことでこ の結果に繋がったと思っています」と感謝 の意を語る。全日本デビューから16年目 にして頂点に上り詰めた上村選手は、「タ イトルが転がり込んで来たような状態なの で、2024年はもう一度しっかり戦ってチ ャンピオンを獲りたい」と、SC2クラス連 覇への思いを新たにした。

INFORMATION from JAF

モータースポーツ公示・JAFからのお知らせ(WEB)一覧(2023年12月22日~2024年3月22日) 公示

日付 公示No. タイトル

2023年12月26日 2023-WEB103

2024年1月5日 2024-WEB001

2024年1月16日 2024-WEB002

2024年JAF地方ラリー選手権クラス区分等について

2024年全日本レース選手権日程変更について

令和6年能登半島地震に伴うモータースポーツ関係災害支援策について 2024年1月17日 2024-WEB003

メディカル部会開催日程および障がいのある方のJAF国内競技運転者許可証/ カートドライバーライセンス取得のための適性審査申請について

2024年1月19日 2024-WEB004 ロールケージ公認申請一覧表

2024年1月30日 2024-WEB005

2024年1月30日 2024-WEB006

2024年全日本スーパーフォーミュラ選手権統一規則の制定について

2024年全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権統一規則の制定について

2024年2月2日 2024-WEB007 【JAF登録四輪クラブ・団体向け】ライセンス推薦申請に関するお知らせ

2024年2月7日 2024-WEB008

2024年2月7日 2024-WEB009

2024年日本ダートトライアル/サーキットトライアル選手権競技会の名称変更 および開催日程について

2024年全日本ジムカーナ/ダートトライアル選手権統一規則の制定(第29条追記) 2024年2月13日 2024-WEB010 2024年JAFカップオールジャパンジムカーナのオーガナイザー変更について

2024年2月16日 2024-WEB011

2024年2月19日 2024-WEB012

2024年JAF地方ラリー選手権競技会の開催名称の変更について

2024年JAF国内競技車両規則 第1編レース車両規定  第4章公認車両および登録車両に関する安全規定について(抜粋) 2024年2月22日 2024-WEB013

2024年2月27日 2024-WEB014

2024年2月29日 2024-WEB015

2024年3月4日 2024-WEB016

2024年JAF地方ラリー選手権競技会の開催日程の変更について

2024年ジュニアカート選手権競技会の開催取り下げについて

2024年全日本/ジュニアカート選手権カレンダー(2月29日修正)

2024年JAF国内競技車両規則の一部改正について 2024年3月5日 2024-WEB017

2024年3月5日 2024-WEB018

2024年3月5日 2024-WEB019

2024年3月12日 2024-WEB020

2024年ジュニアカート選手権統一規則の改正

2024年全日本/ジュニアカート/地方カート選手権カレンダー追加について

2024年日本ドリフト選手権カレンダー

【JAF登録四輪クラブ・団体向け】ライセンス推薦申請に関するお知らせ(2024年3月12日追記) 2024年3月12日 2024-WEB021 2024年日本ダートトライアル選手権の中止について

2024年3月14日 2024-WEB022

2024年3月18日 2024-WEB023

2024年日本ダートトライアル選手権の開催日程変更について

国内競技規則2-11「国内競技」の取扱いについて

2024年3月22日 2024-WEB024 ロールケージ公認申請一覧表

2024年3月22日 2024-WEB025 2024年日本サーキットトライアル選手権の開催日程変更について

2024年3月22日 2024-WEB026

2024年全日本ジムカーナ/ダートトライアル選手権統一規則冊子の誤記について JAFからのお知らせ 日付 タイトル

2024年1月4日 モータースポーツ公示・JAFからのお知らせ一覧(2023年12月1日~12月31日) 2024年2月1日 モータースポーツ公示・JAFからのお知らせ一覧(2024年1月1日~1月31日) 2024年2月1日 Virtual Motorsports Lab主催「VML自動運転レース中高生大会」JAF後援にて開催中 2024年2月2日 JAF公認eモータースポーツリーグ「UNIZONE」のイベント概要が発表 2024年2月9日 JAF公認eモータースポーツ競技会 「UNIZONE EX Match ~ Powered by SUPER FORMULA ~」が2月25日に開催決定! 2024年3月1日 モータースポーツ公示・JAFからのお知らせ一覧(2024年2月1日~2月29日) 2024年3月5日 神奈川エリア最速決定戦!「WEINS GT CUP 2024」がJAF認定eモータースポーツイベントとして開催! 2024年3月18日 「FIA ガールズ・オン・トラック」参加者募集について 2024年3月22日 自動車販売店チーム対抗戦!JAF認定eモータースポーツイベント 「WEINS GT JAPAN CUP PROLOGUE」が開催されます。

※上記公示・お知らせ(WEB)一覧の詳細は、JAFモータースポーツサイト(https://motorsports.jaf.or.jp/)内の「>公示・JAFからのお知らせ」で閲覧することができます。

特集 地方選手権/REGIONAL CHAMPIONSHIPS 勝利を目指し全力疾走で戴冠を果たした王者たちの戦いをプレイバック!

2023年総まくり JAFレース地方選手権

FIA-F4/FRJ/F-Be/S-FJ/ツーリングカー

新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行し、感染拡大への対策の緩和なども相まって、 2023年、日本各地のJAF公認サーキットでのレースは、盛時の活気を取り戻した。

熾烈な戦いを勝ち抜いたJAF地方選手権チャンピオンに輝いた10名の、軌跡を辿ってみよう。

PHOTO/石原康[Yasushi ISHIHARA]、遠藤樹弥[Tatsuya ENDOU]、鈴木あつし[Atsushi SUZUKI]、 服部眞哉[Shinya HATTORI]、皆越和也[Kazuya MINAKOSHI]、森山良雄[Yoshio MORIYAMA]、吉見幸夫[Yukio YOSHIMI] REPORT/はた☆なおゆき[Naoyuki HATA]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

023年のレース地方選手権は、 フォーミュラカーが4カテゴリ ー・7シリーズ、ツーリングカー が2カテゴリー・3シリーズ開催された。

その中でも活況だったのがFIA-F4だ。 絶えず40台を超えるエントリーを集め、 最多で47台。富士スピードウェイでの第1 戦と第2戦では、基準タイムをクリアでき なかったからではなく、参加台数による予 選落ちがついに出たほどだった。2022年は 40台を切ることもあったのに対し、この盛

況ぶりはやはりコロナ禍の落ち着きが影響 しているのだろう。

5月には新型コロナウイルス感染症が 「5類」に移行し、現在も完全に収束したわ けではないが生活の制限も解除されてい き、レースに参戦しやすくなったようだ。 ことジェントルマンドライバーを対象とし たインディペンデントカップに関しては、 地方選手権対象外ではあるが平均参戦台数 が16台を超えたのは、生業の安定や世間 の変化も影響しているのではないか。

FIA-フォーミュラ4

地方選手権(FIA-F4) 前年ランキング上位勢の王座争い 小林利徠斗選手が5勝で制す! ともあれ台数が増えれば、それだけ激戦 になるのが常。FIA-F4では、すべてのレー

Champion’s Voice

当に長いシーズンでした。ずっとうま くいっていたわけではないし、すごい接 戦でしたから。FIA-F4は2シーズン戦ってき ましたけど、本当にレベルが高くて、四輪の経 験もない中で、たくさんの貴重なことを学べ ました。最後はもう疲れて、そんなにウルっと する気力もなかったですが、全身全霊を尽く した結果チャンピオンが獲れて良かったで す。これからもさらに強く、速いレースができ るように、もっと成長したいと思います。

スで見応えのあるバトルが繰り広げられた。

ただし、2022年のトップ6のうち卒業した のは、チャンピオンの小出峻選手と5位の 岩澤優吾選手だけとあって、「そうなるだろ う」的な争いとなったのも、また事実だ。 さらにセーフティカー(SC)が入らなかった レースは、一度もなかった。

例年どおり富士から幕を開け、全7大 会・14戦の初戦でフロントロウを分け合っ たのは、2戦とも2022年のランキング6位 だった小林利徠斗選手と同2位の三井優介 選手で、ここまでは順当な結果。しかし、 決勝では対照的な結果になってしまう。小 林選手が第1戦を制したのに対し、三井選 手は1周目の接触でリタイア。第2戦では 三井選手がトップでゴールするも、SC後再 スタート時の違反によってペナルティを課 せられノーポイントに終わり、2022年のラ ンキング4位だった中村仁選手が繰り上が り優勝、小林選手は3位となった。

鈴鹿サーキットでの第2大会は、Honda フォーミュラ・ドリーム・プロジェクト (HFDP)のドライバーである三井選手と森 山冬星選手、野村勇斗選手が、2戦とも予 選上位を独占。第3戦は三井選手がポー ル・トゥ・ウィンを飾るも、予選4番手か

ら小林選手が2位に。第4戦は三井選手が 2連勝を飾って、予選順位のままHFDP勢 が表彰台を独占。小林選手は4位だった。

再び舞台を富士に戻した第3大会は、2 戦とも小林選手と三井選手、中村選手を従 え、野村選手がポールポジション(PP)を 獲得。2022年はフランスF4を戦っていた 野村選手は、そのまま逃げることを許され ず。いずれも序盤のうちに小林選手の逆転 を許し、2位と3位という結果に。野村選 手と順位を入れ替える格好となったのが中 村選手で、三井選手は2戦とも4位で表彰 台には上がれなかった。

だが、次の鈴鹿での第4大会で、三井選 手は流れを取り戻す。2戦ともにポール・ トゥ・ウィンだったのに対し、第7戦は小 林選手が中盤の接触でリタイア、第8戦も 5位に甘んじたからだ。一方で、中村選手 は2位、3位で表彰台に上がり続け、じわり じわりと上昇していく。

スポーツランドSUGOが舞台の第5大 会では、第9戦のPPを野村選手が奪い、 これに三井選手が続くも、中村選手が8番 手に、そして小林選手が10番手に沈む波 乱。決勝でも野村選手が三井選手の猛攻を 最後まで凌いでシリーズ初優勝を飾り、中 村選手は4位、小林選手も6位ま で追い上げるのが精いっぱいだっ

PPだけで言うと9割ぐらい獲れて、 速さという面では満足していま すが、逆にレースでの強さは満足していな いですね。それでもチャンピオンが獲れ たことをポジティブに考えると、安定した 速さがあったからなんじゃないかと思っ てもいます。いちばん印象的だったのは、 今まで苦手だった雨のレースでも結果を 残せたこと。雨のレースでの速さは、すご く良かったと思っています。ドライでの速 さは、1年目から自信がありましたからね。

た。そして第10戦では、ルーキーの卜部 和久選手が大躍進。PPを獲得し、決勝で も三井選手との激戦を制してシリーズ初優 勝。中村選手は4位でゴールするも、小林 選手はまたもリタイアに追い込まれた。

第6大会のオートポリスでは、第11戦 を小林選手が、第12戦を中村選手が、そ れぞれポール・トゥ・ウィンとした一方 で、三井選手は第11戦こそ5番手から3 位でゴールするも、第12戦は予選中のコ ースアウトで29番手からのスタートを余 儀なくされる。三井選手は10位まで追い 上げたが、ランキングでは2ポイント差な がら小林選手の逆転を許すことになった。

最終大会が行われたモビリティリゾート もてぎでは、小林選手が2戦ともPPを獲 得したのに対して、三井選手は予選に向け たセッティング変更が裏目に出て14番手 と15番手と、もはや絶体絶命の状態に。 第13戦は2番手だった中村選手がスター トで小林選手の前に出て、2023年3勝目 をマーク。これで小林選手に5ポイント差 まで迫ったのに対し、三井選手は10位ま で上がるのがやっと。第14戦を3番手か らスタートした中村選手だったが、ひとつ 順位を上げるにとどまり、2023年5勝目 を挙げた小林選手の戴冠が確定。最終的な ランキングは中村選手が2位で、三井選手

フォーミュラ・リージョナル地方選手権 2023年チャンピオン 小川颯太選手(Bionic Jack Racing F111/3)

Champion’s Voice

Champion’s Voice

2022年に出させてもらって、すごく面白 かったのと、すごく勉強になるなぁと。で も、チャンピオンにはなれなかったので絶対 に獲るぞっていうのと、ファーストガレージと いうチームの進化と強さを見せたいというの もありました。序盤ちょっと苦しんだ部分も ありましたが、強敵の卜部君が出てくれてな んとか勝てて、最終的にチャンピオンが獲れ たので、僕にとってもチームとっても、すごく いいシーズンになりましたね!

フォーミュラ・リージョナル

地方選手権(FRJ)

外国人ドライバーも参戦 2季目の小川颯太選手が戴冠!

FRJは2022年同様、全6大会・14戦 で争われた。シーズンを通じて24名のド ライバーが挑んだが、その一方で14戦す べてに出場したのはわずか2名だけで大半 がスポット参戦と、寂しさは隠せず。だ が、その中には外国人ドライバーも含ま れ、ようやく国際交流が図れるシリーズに なったのはうれしいトピックスと言えるだ ろう。今後、この流れが加速することを望 まずにはいられない。

もちろんチャンピオンは、フル参戦のド ライバー同士で競われた。FRJは2季目と なる小川颯太選手と、母国ニュージーラン ドでノースアイランド・フォーミュラ・フ ォードを戦っていた、リアム・シーツ選手 が激しく火花を散らした。

フォーミュラ・ビート地方選手権 2023年チャンピオン 佐々木孝太選手

(ファーストガレージ& ISP)

11回もPPを奪っていたからだ。第1大会 の富士、第3大会の岡山国際サーキット、 そして第4大会のもてぎでは3戦ともPP を獲得している。しかし、優勝が4回だけ というのが、やや物足りなく映ってしまう だろう。とはいえ、これは小川選手に強さ が欠けていたというより、不運が相次いだ と言った方が正解だ。

たとえば富士での第1戦。スタートで平 木湧也選手の先行を許すも、間もなく逆 転。なおも続いたバトルの最中に、バック マーカーが現れたことでアクセルを戻さざ るを得ず、それで再逆転を許してしまった のだ。ちなみに平木選手は第1大会を優 勝、3位、3位という結果で終えるも、あら かじめスポット参戦と決めていたため、ラ ンキングは9位にとどまった。小川選手は 第2戦で澤龍之介選手の優勝を許し2位だ ったものの、第3戦では澤選手を約3秒も 引き離して、まず1勝を挙げている。

第2大会の鈴鹿は決勝が激しい雨で、ま ともにレースができない状況でSC先導の スタートとなり、第4戦は2周で、第5戦 は5周で、赤旗が出されて終了となった。 ここで小川選手は予選結果のまま、2位と優 勝という結果を得る。第4戦の優勝は大木 一輝選手が獲得した。

逃げ切った小川選手だが、第7戦にウェッ トタイヤで臨むも間もなく雨が止んでしま うと、果敢にもドライタイヤを履いていた 金丸ユウ選手を抑え続けることはできず逆 転を許し、2位。そして第8戦は好スタート を切ったシーツ選手がシリーズ初優勝。小 川選手は連続2位になった。

第4大会のもてぎでは、第9戦で小川選 手はトップを快走しながら、シフトダウン できなくなるトラブルで無念のリタイアを 喫し、優勝はスポット参戦したチームメイ トの奥住慈英選手が獲得。小川選手は第 10戦で2023年4勝目を飾るも、第11戦 はトップ争いを繰り広げる中で押し出され てしまい、無念の2位。シーツ選手が2勝 目を挙げている。

再び舞台を富士に戻した第5大会では、 小川選手が第12戦で予選2番手ながら好 スタートを切ってトップに立つも、バトル を繰り広げる澤選手の際どい攻めから接触 を避けるため、あえて小川選手は一歩引い たが再逆転の機会は訪れず。第13戦では ポール・トゥ・ウィンを狙ったが、今度は エンジントラブルが発生。2023年2度目 のリタイアを喫した。

ただし、当然と言うべきか、速さに関し て完全に圧していたのは小川選手。実に

続く第3大会の岡山国際も、第6戦と第 7戦が雨に見舞われた。第6戦はトップで が3位、野村選手が4位となった。2024年 はランキング上位陣の大量卒業が見込まれ るため、顔触れが一新された、フレッシュ な戦いが繰り広げられるだろう。

小川選手にとって、チャンピオンに王手 をかけて臨んだ最終大会SUGOは、まさ に不運の極みでもあった。練習中は絶好調 だったが、11月も下旬で、しかも東北での

開催とあって超低温というトラップに捕わ れてしまい、予選では5番手と6番手、4 番手という結果となったのだ。決勝はフォ ーメーションラップ3周という異例の状況 の中、第14戦で3位まで上がり、第15戦 では4位。最後の第16戦ではあえて手堅 い走りに徹し4位でレースを終え、無事チ ャンピオンを獲得することとなった。

SUGO大会のウィナーは、第4大会と は別チームから参戦となった奥住選手が第 14戦と第15戦で連勝、最後の1戦は小川 選手の新チームメイトとなったミハエル・ サウター選手がシリーズ初優勝。奥住選手 は9戦の参戦ながら、3勝を挙げてランキ ング3位に入った。

Formula Beat

地方選手権(F-Be)

新シリーズ名称で新たな船出

勝負の年をベテランが制す! フォーミュラ4、またはF4(通称JAF -F4)からFormula Beat(F-Be)にシリー ズ名称を改め、初年度を迎えた2023年 は、第1戦の鈴鹿が2月の開催にもかかわ らず、日本F4協会とエントラントが、「一

緒に盛り上げていこうぜ!」と手を携えあ ったこともあり、いきなり14台がエント リー。続く富士での第2戦は20台、第3 戦のもてぎでは19台が参戦、立ち上がり としては上々である。続く第4戦・第5戦 の岡山国際は16台で競った。

だが、シリーズ前半に本州でのレースを 続けてしまったのは、「いちばんの反省点」 だと日本F4協会の福永亜希子会長は語る。 後半に十勝インターナショナルスピードウ ェイとオートポリスがわずか1か月のスパ ンで続き、最後もSUGOで、いずれもダ ブルヘッダーだったこと、さらに昨今の物 価高騰も拍車をかけたようだと、福永会長 は分析する。オートポリスではエントリー が6台にとどまったが、2024年のスケジ ュールはしっかり対応済だ。

何はともあれ、2023年のF-Beにおける 最大の立役者は、間違いなく佐々木孝太選 手だった。全12戦に参戦したベテランが シリーズのレベルを向上させ、さらに他の ドライバーにとってのベンチマークともな ったからだ。チャンピオンを獲ったF4時 代の1998年以来の参戦を2022年に果た すも、シーズン後半に車両トラブルが相次 ぎ、ランキングでは2位に甘んじたからこ そ、2023年シーズンを佐々木 選手は“マジ”で臨むことに なったのだ。

Champion’s Voice

開幕戦で飛んじゃったのがもったいなく て、あれがなければ、たぶん最終戦を残 してチャンピオンは決まっていたと思うので、 かなり厳しい感じはありました。なっちゃっ たことはしょうがないので、それからは自分の レースをしようと。バトルに強いという自信 があったので、なんとかチャンピオンを獲るこ とができました。2022年は勝つことができま したが、2023年の最終戦は勝つことよりチャ ンピオンを意識して、さすがに抑えましたね。

その恩恵を誰よりも享受していたのが、 FIA-F4にも参戦していた卜部選手だった はずだ。第2戦の富士でF-Beデビューウ ィンを果たし、その後ももてぎ、そして岡 山国際のダブルヘッダーまで4連勝。佐々 木選手が開幕からの2戦こそリタイアを喫 していたが、第3戦からは本領を発揮して 直接対決した上での優勝なので、この結果 は大いに自信となったに違いない。

一方で、卜部選手の活躍は佐々木選手を 発奮させ、「僕ぐらいはやっつけておかな いと、この先ステップアップしていく意味 でも簡単じゃないと思うんです」と語りつ つ、より緻密なセッティングが必要と判断。 セットアップが決まった第6戦のSUGOで ようやく卜部選手を下し、そこからは十勝、 オートポリスまで5連勝。後半戦には卜部 選手が出られなかったため、第6戦で最後 の直接対決を制していなかったら、チャン ピオンが獲れても、どこかに「心残り」があ ったに違いない。

ラストのSUGOでのダブルヘッダーで 金井亮忠選手の逆襲を食らうも、佐々木選 手は2位と3位でゴールし、王座返り咲き を果たすこととなった。ランキング2位は 5戦のみの出場だったものの卜部選手が獲 得し、徳升広平選手が同ポイントを稼ぐも 優勝回数で3位に。4位はハンマー伊澤選手 で、5位はジェントルマンクラスで参戦した

もてぎ・菅生スーパーFJ選手権 2023年チャンピオン 内田涼風選手(群馬トヨペットRiNoA ED)

Champion’s Voice

達成感としては、個人的な目標としていた 全勝が果たせていないので、70%ぐら い。でも、チャンピオンという確固たる目標は 達成できているので、少し高めにしました。公 式戦は5年ぶりなんですが、感覚的にはブラ ンクを感じず乗れたかなと。さすがに開幕戦 は雨だったので、かなりドキドキしましたけど ね。そんな中でもしっかりアジャストできたの で、そこからは自信を持って走れたことが、結 果につながったのかなと思っています。

レースすべてでクラス優勝を飾った河野靖 喜選手、そして6位は金井選手となった。

スーパーFJ地方選手権(S-FJ)

岡山国際が鈴鹿と連携で復活 SUGOで最年少優勝が更新!

S-FJは7サーキットを舞台に、4シリー ズが開催された。2023年のトピックスのひ とつが、2022年は選手権から外れていた岡

筑波/富士スーパーFJ選手権 2023年チャンピオン 小村明生選手(Fガレージwith HC GALLERY)

山国際が鈴鹿シリーズと共に、新たな鈴 鹿・岡山シリーズとしてスタートを切った ことだ。激戦区である鈴鹿は言うまでもな く、岡山国際もかつて平川亮選手や松井孝 允選手らを輩出してきた、育成にはうって つけのサーキットである。アベレージスピ ードで鈴鹿と違いがあるから こそ、“学びの場”として、シリ ーズがより活用されることが 期待される。

まずはもてぎ・菅生シリーズ

鈴鹿・岡山スーパーFJ選手権 2023年チャンピオン 白崎稜選手(TAKE FIRSTスタッフリソース)

から2023シーズンを振り返ってみよう。単 独開催ではいずれもエントリーの少なさが 目立っていたものの、今は毎戦二桁のエン トリーを集めるまでとなり、最終戦のもてぎ は、2023年の日本一決定戦の舞台というこ ともあって、実に26台が集まった。

鹿の最終戦が、自分の中では成長を感 じました。岡山で自分が失敗して逃し た優勝もありますが、いちばん記憶に残って いるのは鈴鹿の最終戦で、忘れられないです。 2023年は2年目、全部の集大成として、鈴鹿 で発揮したい。それでチームを移って、練習 しながらノウハウを聞いて、自分の中で変え ていきました。開幕戦はあんまりいい成績 じゃなかったんですが、2戦目の岡山から少し ずつアジャストできるようになりましたね。

Champion’s Voice

タイトル争いは、まさに大混戦の様相を 呈していた。もてぎでの開幕2連戦を池田 拓馬選手が連勝すると、続くSUGOでの 2連戦では豊島里空斗選手が連勝。特に豊 島選手は、限定Aライセンスの規定変更 により、15歳でのデビューウィンとあっ て、大いに話題を集めた。しかし、このふ たりは勢いそのままに……というわけには いかなかった。第5戦のもてぎは中澤凌選 手がシリーズ初優勝。そしてSUGOでの 第6戦は渡会太一選手が、最終戦もてぎは 白崎稜選手と、いずれも遠征ドライバーが 制している。

その中で、コンスタントにポイントを積 み重ねてきたのが、内田涼風選手と椎橋祐 介選手だ。ともに未勝利だったが、池田選 手と最後までタイトルを争い、最終戦で確 実にチャンピオンを獲るべく、手堅いレー ス運びから5位でチェッカーフラッグを受 けた内田選手に栄冠が輝いた。

筑波/富士シリーズは、小村明生選手の 独壇場だった。2016年に筑波シリーズを 制している小村選手は、雨の筑波での第1 戦で久々の勝利を挙げた勢いを、最後まで 保った感が強い。第4戦の富士は欠場した ものの、その前後で4連勝を飾っているか らだ。筑波での第6戦で角間光起選手のシ リーズ初優勝により連勝は止まったとはい え、第7戦の富士での3位と合わせて一度 も表彰台を逃すことなく、最終戦を待たず して王座獲得に成功した。

JAFレース地方選手権

小村選手は最終戦の筑波を欠場し、その レースで2勝目を挙げたのが角間選手。わ ずか4戦の出場だったにもかかわらず、第 4戦を制した武者利仁選手と中澤選手に次 ぐランキング4位は、大いに可能性を感じ させもした。

筑波でのレースは、常にエントリー10数 台といったところだが、興味深いのは2戦 行われた富士のレースで第4戦がわずか9 台だったにもかかわらず、第7戦は20台 ものエントリーを集めたことだ。これは、 FJ協会が設けている全国転戦シリーズ、 「ジャパンリーグ」との併催だったことが大 きいのだろう。その傾向は他のサーキ ッ トにも見られ、学べるシリーズとして、よ り認知されたからに違いない。

スポット参戦のドライバーを含めると、 年間通じて47名が参戦した鈴鹿・岡山シ リーズ。まさに活況と言うに相応しいシリ ーズだが、全戦参戦のドライバーが4名に 留まったのは、全8戦という多さゆえか。 一方で、ライセンスを取得して間もない途 中参戦のドライバーたちがしっかり結果を 残しているあたりは、先々を考えると喜ば しいことでもある。

開幕戦を制したのは岡本大地選手。 2023年も“超えねばならぬ存在” として君臨するかと思われたもの の、第2戦以降のレースはチーム 事情により、第7戦と第8戦以外 は欠場。まさに“鬼の居ぬ間”に

躍進を遂げたのが、白崎選手だった。

2022年は筑波/富士シリーズでランキ ング4位だった白崎選手は、関西での就職 に伴いチームと参戦シリーズを変更。岡山 国際での第2戦で優勝を飾ると、豪雨で赤 旗終了にはなったが鈴鹿での第3戦で連勝 を飾り、岡山国際でダブルヘッダーとなっ た第5戦と第6戦はいずれもトップでチェ ッカーを受けた。しかし、第3戦がハーフ ポイントになり、第5戦はスタート手順違 反のペナルティで10秒加算されて4位に 降格。この降格がなければ、もっと楽にシ リーズを戦えたはずと、後に白崎選手は振 り返った。

一方、その第5戦で繰り上がって優勝と なったのが田中風輝選手だ。第4戦の鈴鹿 でデビュー2戦目にして優勝を飾っており、 その後も開幕2戦は出場できなかったハン ディを、白崎選手に対して詰めていく。

そんな白崎選手がラストの鈴鹿2連戦で いったんは絶望の淵に叩き落とされなが ら、這い上がってきた。第8戦のスターテ ィンググリッドは、第7戦決勝の結果とそ のトップ6のリバースグリッドという状況 の中、第7戦をリタイアしたのだ。そのた め最後列から第8戦に臨まざるを得なくな

Champion’s Voice

今年の目標は、JAFのチャンピオンを獲る ことだったので、オートポリスで戦うこ とにしました。1戦目と3戦目に勝てて、4戦 目もベストを尽くして冷静に走ろうと。そこ で3位になれて、チャンピオン確定となった んですが、誰にも気づかれず(苦笑)、自分でも 本当に獲ったのかな~って、最初は実感が湧 かなかったんですけど、しばらくするとみんな に「おめでとう」と言ってもらえたので、今は 良かったと、心の底から思っています。

ツーリングカー地方選手権ロードスター・パーティレースⅢ

るも、なんと18台抜きを果たし、2位入賞 でチャンピオン獲得となったのだ。また、 この2連戦で勝った、迫隆眞選手と堂園鷲 選手はいずれもシーズン後半からの参戦ド ライバーで、将来有望な存在だ。

オートポリスシリーズは、長くレースを 楽しみたいジェントルマンドライバーに支 えられてきた。それでも近年は若手ドライ バーの台頭もあり、最終戦を制した永原蒼 翔選手、未勝利だったが東慎之介選手は、 それぞれランキング2位、3位となっている。

そして、このふたりを抑えてチャンピオン を獲得したのが宇髙希選手だ。S-FJ7年目 で、これまで各地のシリーズを渡り歩いて きたが、チャンピオンを獲得してラストシー ズンとすべく臨んでいた。その思いは開幕 戦の勝利から実を結び、第3戦の2勝目を 含み、参戦したレースはすべて表彰台に立 つ安定感を武器とし、最終戦を待たずに戴 冠となった。また第2戦では、ベテランの KOUKI SAKU選手が希少なウエスト19Jを 駆って優勝。そしてジャパンリーグと併催 の第4戦では、渡会選手が優勝している。

ツーリングカー地方選手権

FIT1.5が選手権の最終年も 新たな選手権が盛況を博す!

ツーリングカーでは、2023年よりロー ドスター・パーティレースⅢのジャパンツ

Champion’s Voice

アーシリーズに、地方選手権が冠せられ た。ジャパンツアーシリーズは全国転戦で 2季目を迎えたシリーズで、特筆すべき は、地方選手権レースとしては初めてナン バープレート付き車両によって争われるこ とだ。かつてはN2車両を、そして近年は N1車両を対象としてきただけに、隔世の 感を覚える人も少なくないと思われる。チ ャンピオンを獲得したのは箕輪卓也選手 だ。地方選手権シリーズとしては初代とな るが、ジャパンツアーシリーズとしては2 連覇となる。

ともあれ全7戦中、十勝で行われた第4 戦はスキップしているだけに、事実上の4 連勝を飾った箕輪選手。そのことだけをピ ックアップすると、圧倒的な強さが目立っ たと映るも、決して楽な戦いではなかった という。実際、SUGOでの開幕戦では、ト ップでチェッカーを受けていない。激しい バトルの末に敗れるも、トップの車両に規 定違反があり、繰り上がっての勝利だった からだ。また、チャンピオンを決めた第5 戦の富士も4位と表彰台に上がれていない。 これは、レース中に接触するとポイントが 剥奪されるという同シリーズの特別規則を 考慮したからだ。リスクを避けたレース展 開を残念がりはしていたが、チャンピオン 獲得が目的とされたドライバーとあっては、 やむを得まい。

そんな箕輪選手不在の第4戦を制したの

くも悪くも印象に残るレースはふたつ あって、本当に結果だけの優勝だった 開幕戦のSUGOと、第6戦の富士。勝ちたい ところではあったんですが、まず前提として チャンピオンを決めるというのがあったので、 あまり無理ができなかったんです。決まりま したが表彰台には乗れなかったので、しばら くはモヤモヤしていましたが、シーズン終わっ てみれば、やっぱりあの場で決められて、結果 的には良かったのかなと思っています。

は瀧口智弘選手で、最終戦の岡山国際は原 山玲選手が優勝。このふたりはスポット参 戦だったため、コンスタントに入賞を重ね た野村充選手、そして惠木勇哉選手がラン キング2位、3位となった。

N1車両によるFIT1.5チャレンジカッ プは、もてぎ・菅生シリーズと鈴鹿シリー ズが開催された。いずれもチャンピオンの 独壇場、という感があった。

まず、もてぎ・菅生では、オオタユウヤ 選手が開幕3連勝。第4戦はタイヤトラブ ルによってリタイアを喫したものの、第5 戦で4勝目を挙げて、最終戦を待たずにチ ャンピオンを獲得した。20年以上のレース キャリアを持つオオタ選手ながら、地方選 手権のタイトルは意外にも初めて。

余談ながら、同シリーズには太田侑弥選 手も出場しているが、彼はオオタ選手の息 子である。オオタ選手自身、併せて参戦す るスーパー耐久では「太田侑弥」選手で出 ているから紛らわしくもあり、親子同時参 戦の時はアナウンサー泣かせでもある! ランキング2位はオオタ選手が敗れた2 戦をしっかり制した尾藤成選手が獲得。そ して2021年のチャンピオン、中村義彦選 手が3位となった。

Champion’s Voice

1

回パンクでリタイアしちゃって、もうダメ かなと思っていたけど、次のSUGOで巻 き返せたから良かったです。チャンピオンを 獲れた理由は、クルマが調子良かったことで す。とくに足が良かった。出たり出なかったり したシーズンもあったので、選手権のチャン ピオンは初めてなんです。チームのみんなの おかげで、毎回クルマをよく仕上げてくれる ので。今後はまだ何も決まってません。ナン バー付きはちょっと苦手なので(苦笑)。

JAFレース地方選手権 2023年

もてぎ・菅生ツーリングカー選手権 2023年チャンピオン オオタユウヤ選手(ワコーズ太ニルズ制動屋FIT

鈴鹿では、2021年のチャンピオンであ る西尾和早選手が、王座返り咲きを果たす とともに、4戦4勝の快挙も成し遂げた。

PPを逃したのも第4戦だけとあって、速 さだけでなく、強さも兼ね備えていたのは 間違いない。

もっとも西尾選手自身は、かつてレース を盛り立てたレジェンドドライバーたちが

出場していないことで、“勝っ て当たり前”というプレッシ ャーとの戦いでもあったよう で、また最終戦で狙ったコー スレコード更新が、練習不足 で果たせなかったことに若干の不満も覚え ているようだった。

ランキング2位は開幕戦でこそリタイア 西茂希選手だった。

を喫しているものの、以降の3戦は すべて2位だった清水悠祐選手。西 尾選手が逃した唯一のPPを奪った 存在でもある。ランキング3位も、 第2戦から3戦連続で3位だった中

このFIT1.5チャレンジカップは2023 年を限りに、地方選手権のタイトルが外さ れることとなった。これでN1車両による 地方選手権がなくなるのは寂しくもある が、これも時代の流れか。それでも長くレ ースが愛され続けることを、望まずにはい られない。

Champion’s Voice

2

022年は最終戦で4速がなくなってチャ ンピオンを逃しちゃったんですけど、復 帰して楽だったなんてことはなかったです ね。むしろ、みんな速くなっていて。ただ、レ ジェンドたちがいないってことで、勝って当た り前と思われていたのが一番プレッシャーで したから、うまくいって良かった。2024年は VITAをやろうと思っています。チームも、 2022年にチャンピオンを獲った山内剛志君 も、また勝負だね!って言っています。

特集 カート/KART

全国の若獅子たちがチャンピオンシップの頂点を目指す!

地方選手権

もてぎシリーズ/新潟シリーズ/鈴鹿選手権シリーズ

ジュニア選手権 もてぎシリーズ/鈴鹿選手権シリーズ/琵琶湖・石野・神戸シリーズ 全日本選手権へとつながるレーシングカートのチャンピオンシップ、地方選手権とジュニア選手権。

2023年も日本各地でレースが開催され、熱戦の末に9名の新たなチャンピオンが誕生した。

栄冠をつかみ取ったドライバーたちの戦いの軌跡を追い、その喜びの声を聞いてみよう。

PHOTO/今村壮希[Souki IMAMURA]、関根健司[Kenji SEKINE]、谷内壽隆[Hisataka TANIUCHI]、長谷川拓司[Takuji HASEGAWA]、JAPANKART、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]  REPORT/水谷一夫[Kazuo MIZUTANI]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

もてぎシリーズと鈴鹿選手権シリーズは 水冷125ccエンジンを使用するFS-125 部門、新潟シリーズは空冷100ccエンジ ンを使用するFP-3部門での開催だった。

地方選手権はその名のとおり、各地方の 最強ドライバーを決する選手権だ。2023 年は栃木県茂木町のモビリティリゾートも てぎ北ショートコースを舞台とするもてぎ シリーズ(全6戦)、新潟県胎内市のスピー ドパーク新潟を舞台とする新潟シリーズ (全2大会・4戦)、三重県鈴鹿市の鈴鹿サ ーキット南コースを舞台とする鈴鹿選手権 シリーズ(全5戦)の3つのシリーズ戦が行 われた。このうち新潟シリーズは、2023 年にスタートした真新しいシリーズ戦だ。

ジュニア選手権は、当該年11歳以上15 歳未満が対象のジュニア部門と、同8歳以 上13歳未満が対象のジュニアカデット部門 から成る選手権だ。2023年は各部門の名称 が一新(旧称はFP-Jr部門/FP-JrCadets 部門)され、有効得点が全レース数の50% での集計に変わっている。

全日本と同時開催で日程が組まれた1大 会2レース制のジュニア選手権では、ジュ ニア部門が全10戦でカレンダーどおり実 施された。一方、ジュニアカデット部門は 1大会が不成立となり、全8戦でシリーズ が行われることとなった。

加えて2023年は、ひとつまたは複数の カートコースにおいてひとつのシリーズを 構成する“コースシリーズ”のジュニア選 手権が実現。もてぎ北ショートコースでの もてぎシリーズが全6戦(うち1戦は不成 立)で、鈴鹿南コースでの鈴鹿選手権シリ ーズが全5戦で、滋賀県大津市の琵琶湖ス ポーツランドと愛知県豊田市の石野サーキ ット、兵庫県神戸市の神戸スポーツサーキ ットを転戦する琵琶湖・石野・神戸シリー ズが全3戦で実施された。

新たな才能の躍進、実力者のシリーズ独 走、女性初のジュニアチャンピオンの誕生 ……と話題豊富だった2023シリーズの熱 戦符を、王者の声とともに振り返ろう。 地方選手権では新潟シリーズが初開催 ジュニアはコースシリーズが活性化 JAFが制定する日本カート選手権は、 全日本選手権/地方選手権/ジュニア選手 権という3つの選手権で構成される。

開幕5連勝で圧巻のチャンプ獲得 2023年は“斗輝哉イヤー”の趣きに 2021年には全日本カート選手権OK部 門で2勝を挙げてシリーズランキング4位 に。実績から言えば、鈴木斗輝哉選手の地 方選手権参戦は“勝って当然”と見られて もおかしくないものだった。それでも威勢 のいい後輩ドライバーたちを相手にしての 開幕5連勝は、想像以上の強さと言える。

鈴木選手は最終戦を待たずしてチャンピオ ンを確定させた。ただし、戴冠レースとな った第5戦はチームメイトである後輩にい ささか手を焼く一戦となった。

「序盤に抜かれてからも結構余裕を持って 走れたんですが、思ったより自分のペース がなくて、なかなか仕掛けることができま せんでした。バトルの最中も年下には負け られないので、冷や汗をかいて、勝てて安 心したって気持ちが一番でした」。

鈴木選手に2023シリーズを振り返って もらうと、まず出てきたのは後輩が強敵へ と成長したことを喜ぶ言葉。その様子は、 弟たちの成長を見守る兄のようだった。

「うちの(チームの)若いドライバーは開幕 戦からレースを重ねていくうちにどんどん 進歩しているっていうか、一緒にレースし ていて成長が感じられました。でも、彼ら には最後の詰めの甘さやトップに出たとき の焦りがあったのかな、とは思います。第 5戦ではバトルを楽しめて、久しぶりに面 白いレースができたって思います」。

では、そんな鈴木選手は自身の強さをど う分析しているのだろうか。

「やっぱり流れに乗ったら、その流れを崩 さないっていうのが自分の一番の強みです かね。レースの運び方も含めて。あとはバ トルも自分の強みだと思っています」。

ただし、鈴木選手はまだ16歳。完成さ れた存在ではなく、今もなお成長 の真っ只中だ。

戴冠確定後の最終戦ではスポット参戦してきた先輩の元全日本 ドライバーに勝利をさらわれ、シリーズ全勝はならず。それでも、 このシリーズにおける鈴木選手の存在感は圧倒的だった。

「2023年は焦りが減ったという か、落ち着いてレースすることが できました。(成長したのは)メン タル的な部分ですよね。自分でも ひと皮むけたと思います」。

最上級カテゴリーのOK部門に

ついては、全日本への参戦こそなかったも のの、GPRカーティングシリーズとOKチ ャンプで両方のタイトルを獲得。2023年の カート界は“鈴木斗輝哉選手の年”となっ た感がある。充実期を迎えた鈴木選手は 2024年、次の道へと舵を切る。 「TGR-DCレーシングスクールに参加し て、今はそのスカラシップの結果待ちなん ですけれども、もし受かれば2024年はFI A-F4に出たいですね。やっぱりカートが 好きなんで、チャンスがあったらカートレ ースにも出てみたいとは思うけれど、基本 的にはもう四輪に切り替える予定です」。

2023年は3メーカーのカートを乗り継いで大活躍し た。「簡単に乗れるカートは自分の好みじゃない」との 発言は、鈴木選手らしいひと言だ。

JAF地方カート選手権 もてぎシリーズ

FS-125/X30部門 2023年チャンピオン

遅咲きの17歳が最終戦で逆転 新潟シリーズの初代チャンピオンに 2023年に産声を上げた地方選手権・新 潟シリーズ。その最終戦(第4戦)でのタイ トル争いは、先の読めないスリリングな展 開となった。まずポールシッターの齋藤瑠 哉選手が、ローリング中にスピンを喫して 最後尾スタートに。代わって先頭からレー スを開始することになった小林留魁選手 を、齋藤選手が後方から怒涛の追い上げで 逆転。それを小林選手が抜き返し、齋藤選 手の猛攻に耐え抜いた小林選手が初優勝を 遂げ、同シリーズの初代チャンピオンに輝 いた。そんな熱闘を勝ち抜いた小林選手 は、感慨深げな表情でこう語る。

「2番手に下がってからは、もう気持ちで 抜きにいこうっていう感じでしたね。齋藤 さんの2連勝を阻止すべく、無我夢中で1 位を目指していました。実はレース中にシ リーズタイトルのことは全く意識していま せんでした。自分がチャンピオンになった ことも、レースが終わってしばらくしてか ら知ったくらいだったので。チャンピオン になれてめちゃくちゃうれしいんですけ ど、まだあまり実感がありません」。

17歳、高校2年生の小林選手のカート 歴は2年と少ない。乗り始めたのは高校に

入ってからのことだった。4 ~ 5歳でカー トに乗り始めるドライバーも多い現在で は、遅いデビューと言えるだろう。それで もレースにかける気持ちは強い。

「元々はお兄ちゃんがF1のゲームをやっ ていて、興味があったのでちょっとやらせ てもらったんです。それでだんだん腕が上 がるにつれて、本物のクルマでレースをや ってみようと思うようになって、スピード パーク新潟にレースを学べる環境があると 知って新潟に出てきました。将来はF1ド ライバーとして活動していきたいです」。

目下、スプリントレースを経験している のはこのサーキットのみ。それでもカート 経験の意義は実感しているという。

「カートに乗ってみて気づかされたんです が、クルマに対して乗りながらちゃんと考 えるっていうことがすごく勉強になると思い ました。考えないで乗っていると、どうして も成長しないと思うんで」。

2024年、小林選手は夢 に向かって新たな一歩を踏 み出すこととなる。

「2024年はスーパーFJに デビューするので、その練 習を頑張りたいです。カー トのレースもやりつつ、遠

所属するアルビレックス・レーシング・チーム・ユース の活動カリキュラムに従って、タイトルを意識すること なくこの新潟シリーズに出場。無欲の走りがホーム コースとなった新潟での初代王座獲得につながった。

征でスーパーFJに出ることになると思い ます。将来は、どんなクルマに乗っても速 くて強いドライバーになりたいです」。

出身は静岡県。そこからレースに打ち込める環境を求めて新潟の 学校に進学した行動力が凄い。憧れのドライバーは「マックス・ フェルスタッペン選手です」と目を輝かせて言う。

若きライジングスターが 得意の鈴鹿南でタイトルを奪取 地方選手権の最激戦区たる鈴鹿選手権シ リーズを制したのは14歳の中学生ドライ バー、箕浦稜己選手だった。タイトル争い の最終決戦となった第5戦。5位以内の入 賞で戴冠確定だった箕浦選手は、決勝をポ ールからスタートすると、トップ争いを制 し、勝利で王座を射止めてみせた。

「いつもスタート前は緊張するんですが、 この日は少しだけマシな方でした。トップ に出てからちょっと差が開いたのは見えた けれど、風があってスリップが効く状況だ ったので、結構必死に走りました。終盤に 後ろが追いついてきたのはびっくりしまし たが、冷静に走り切ることができて良かっ たです。シリーズ最後のレースで優勝でき てチャンピオンも獲れて、しかもポール・ トゥ・ウィンだったので、ゴールのときは

本当にすごくいい気分でした」。

2022年にこの鈴鹿選手権シリーズへの 参戦を始めると、最終戦で初優勝を遂げ る。2シーズン目の2023年は開幕戦こそ リタイアに終わったものの、そこから無敵 の4連勝を飾り、得意とするホームコース のチャンピオンとなった。加えてこの年は 全日本FS-125CIK部門でも2勝を獲得。 カートで飛躍の一年を過ごした箕浦選手 は、自身の成長をこう語る。

「ブレーキのテクニックとかマシンのコン トロールとかレースの組み立て方とか、全 体的に1年前より結構良くなったと思いま す。全日本では走ったことのないサーキッ トのレースで金曜日に会場に入って戦うの に苦戦したけれど、その経験を鈴鹿のレー スに活かすことができたので、苦労も無駄 じゃなかったと思います」。

そんな箕浦選手は、自分の走りや戦い方 についてこう評している。

「レースはできればブッちぎって勝ちたいけれど、バトルして勝つ 方が達成感はあります」と言う箕浦選手。チームの方針もあって マシンは何もいじらずノーマルで乗っているそうだ。

「抜くべきときに躊躇しないで 抜けるのは、自分が優れている 点だと思います。駆け引きにも 慣れているので、バトルは結構 イケます。課題は、まだタイム トライアルがうまくこなせない ことですね……」。

自身のポテンシャルの高さを結果で証明 して見せた箕浦選手は、2024年に新たな ステップへと進むことを明かした。

「スペインでカートの国際レースに出る予 定があるんですが、カートはそれで基本的 に卒業です。2024年はホンダ・レーシン グ・スクール・鈴鹿のフォーミュラクラス に入って、フォーミュラや四輪レースを中 心に活動していく予定です。どんどんレベ ルアップしていってプロドライバーになれ たらいいなと思うし、最後はやっぱりF1 ドライバーになりたいです」。

憧れの角田裕毅選手の背中を追ってF1ドライバーを 目指すチャレンジを開始する箕浦選手。「角田選手は 速いしすごく攻めるところが好きです」と語る。

開幕2連勝の後の不振は、シャシーのトラブルにも原因 があったという。未経験のSUGOでの最終大会では3番 グリッドからの逆転もあり、終盤で4連勝を挙げた。

迎えたシリーズ最後の大会は、兵庫県の自 宅からもっとも遠い宮城県村田町のスポーツ ランドSUGOが舞台。ここでも中西選手は

後進たちのチャレンジを一蹴し 無敵の開幕6連勝で文句なしの王座獲得 2022年は同じシリーズでランキング4 位。そして上位ランカー3名が先にこのレ ースを卒業して、ライバルが後輩ばかりに なった2023年は、元田心絆選手にとって 負けるわけにいかないシーズンとなった。 そんな状況で元田選手は、圧勝を重ねて開 幕6連勝でチャンピオンを確定させ、2戦 を残して上位クラスに羽ばたいていった。 アウェーの地で6勝目を達成 シリーズ中盤の不調を脱して王座に 地元の神戸スポーツサーキットでの開幕 大会を2連勝で終えた中西凜音選手だった が、続く新東京、本庄の関東2連戦ではま さかの失速。だが、中西選手は西日本に戻 った中山大会での2連勝で復調する。 「最初に優勝できて、そのまま行けると思 ったんですけど……。ただ、新東京と本庄 では西と違ういろんなコースを走れて、か なり身につくことがあったと思います」。

初めて走るコースを攻略して2連勝を果た し、10戦6勝で堂々のチャンピオンに輝いた。 「決勝では自分の走りがちゃんとできて、 昨日の好調をそのまま維持できました。チ ャンピオンになれたのは、チームの人たち も同じチームじゃない人たちも、みなさん がいろいろ教えてくれたり応援してくれた りしたおかげだと思います。2024年のこ とはまだ決まってないけれど、この最終戦 のような形で優勝していきたいです」。

JAFジュニアカート選手権 ジュニアカデット部門 2023年チャンピオン

「5戦目でチャンピオンが確定して、狙っ ていた6連勝も達成できて良かったです。

2023年は(上位に位置する)X30Jrのレー スにも出ていて、カデットは勝って当たり 前だと思っていました。チャンピオンを獲 らないと(最終戦と日程が重なる)ジュニア MAXのレースに出られないってチームの 人と約束していたので、どうしてもチャン ピオンを獲りたかったんです」。

「2024年はFIAカーティングアカデミー

12歳の誕生日から約1か月後に新チャンピオン確定。 「ホームコース以外ではあまり勝ったことがないの で、うれしいです」と東地域での勝利も喜んだ。

「チームは速いエンジンを用意してくれるし、『負けても 大丈夫』って励ましてくれて、最高のチームでした」。元 田選手とチームとの強い絆でつかんだ王座だ。

(の参加資格)を取って、ヨーロッパのレー スにも、MAXの世界大会にも出て、もっ とバトルに強くなって、みんなに凄いって 言われるドライバーになりたいです」。

将来の夢はF1レーサー。尊敬するのは「考えられない 距離から抜きに行くし、凄い選手だと思う」というル イス・ハミルトン選手の名前を挙げた。

「CRGのフレームが自分にもこのカテゴリーにも合って いたことが、速さのいちばんの理由だったと思います」 と松尾選手は戴冠の要因を語る。

JAFジュニアカート選手権 ジュニア部門(コースシリーズ)   もてぎシリーズ 2023年チャンピオン 松尾柊磨

して、海外に戦いの場を求める。 「イタリアでOKジュニアのレースに出て、 活躍できるよう頑張ります。最終目標はF1。 すごく速いドライバーになりたいです」。 激戦区の最終戦を勝利で終えて 4人による王座争奪戦を突破 2023年の鈴鹿選手権シリーズ(ジュニ ア部門コースシリーズ)は、開幕戦からの4 戦までで4人のウィナーが乱立する大混。 そのウィナー4人のいずれかが“勝てばチ ャンピオン”の状態で臨んだ最終戦で、 堂々のポール・トゥ・ウィンを果たして新 王座に就いたのが遠藤新太選手だった。 「僕はアウトラップが遅いので、そこを速 アンタッチャブルな速さを見せつけ 怒涛の4連勝でシリーズを席巻 全6戦のうち1戦が不成立となった2023 年のもてぎシリーズ(ジュニア部門)は、松 尾柊磨選手の独壇場となった。開幕戦こそ アクシデントでリタイアに終わったものの、 そこから連勝で最終戦を待たずしてチャン ピオンを確定。残る最終戦も制して戴冠に 花を添えた。タイムトライアルで5戦中4 度のトップタイムというのも見逃せない。 「第5戦は予選のリタイアで最後尾から追 い上げるレースになったけれど、台数が少 ないのでいけると思っていました。周回数 も多いのでゆっくりいこうと思っていたん

JAFジュニアカート選手権 ジュニア部門(コースシリーズ)  鈴鹿選手権シリーズ 2023年チャンピオン

くしようと思って必死に頑張りました。で も、後ろにいる3人が速かったので、逃げ 切るのは難しかったです。とにかく必死に 走っていて、後ろの状況は把握していませ んでした。第3戦では横並びでゴールする 接戦での優勝だったけれど、最終戦はちょ っと引き離して勝つことができたので、う れしかったです。タイトルがひとつでも獲 れて、ホッとしました」。

2024年の遠藤選手はさらなる上を目指 ですが、走り始めたらペースが良かったの で、早めに追い上げを始めました。4連勝 (第4戦は選手権対象外)できたので、気持 ち良くこの週を終われました」。 「チーム監督や支援してくださっている皆 さん、メカニックをやってくれたお父さん とお兄ちゃん、応援してくださった方々 に、今までありがとう、これからもよろし くお願いしますと伝えたいです。次はGPR でジュニアチャンピオンを目指します」。

「カートを自分が納得するまでやって、四輪に上がり たい。関口雄飛選手や小高一斗選手のような有名な 選手になりたいです」と目標を明かしてくれた。

大混戦のシリーズで唯一2勝を挙げて王者に。「それまで タイムトライアルがうまくいかなかったけれど、最終戦 では2番手になれて良かったです」とコメント。

活動の場は国内だけに留まらず、海外のレースにも 積極的に参加している遠藤選手。その才能がさらに 大きな花を咲かせることに期待したい。

「2021年に2戦スポット参戦したジュニア選手権では、 ぜんぜん歯が立たなかった」という梶尾選手。3戦全勝 での戴冠は、確かな成長の証しだ。

JAFジュニアカート選手権 ジュニア部門(コースシリーズ) 琵琶湖・石野・神戸シリーズ 2023年チャンピオン 梶尾義朝

られるようなレースができたことも良かっ たです。チャンピオンになれたのは、どの コースでも安定して、速さも強さもあった ところが一番の要因だと思います」。 「対応力というか、コースのコンディショ ンに合わせた走り方には自信があります。 急に雨が降ってきたときでも、その一瞬一 瞬に応じて攻め切るのは得意です。将来は スーパーGTで活躍できるドライバーにな りたいと思っています」。

JAFジュニアカート選手権 ジュニアカデット部門(コースシリーズ) 琵琶湖・石野・神戸シリーズ 2023年チャンピオン

11歳の小学生ドライバーが ジュニア選手権初の女性王者に 全日本でも女性ドライバーの活躍が目を 引いた2023年。ジュニア選手権でも史上 初の女性チャンピオンが誕生した。小学6 年生の島津舞央選手が、開幕戦から2連勝 を遂げると最終戦でも2位に入り、見事チ ャンピオンに輝いたのだ。

「最終戦もトップでゴールしたかったんで すけど、チャンピオンになれないよりはマ コースシリーズ唯一の転戦シリーズ で 3戦全勝を果たして栄冠をゲット 2023年のジュニア選手権コースシリー ズの中で唯一、複数のコースを転戦したの が琵琶湖・石野・神戸シリーズだ。そのジ ュニア部門の最終戦では、最後尾からの追 い上げでトップゴールを果たした選手がペ ナルティを受け、代わってウィナーとなっ た梶尾義朝選手が3戦全勝することにな り、チャンピオンの座も手に入れた。 「最終戦は結果こそ優勝なんですが、僕の 中では2位でした。それでも飛ばずに生き 残れて、チャンピオンが獲れたので良かっ たと思います。見ている人をワクワクさせ

シだったんで、良かったと思います。チャ ンピオンになれたのは、お父さんやメカニ ックさんたちがいろいろ助けてくれたから だと思います。初めて参加したジュニア選 手権は、周回数が多い分たくさん走れて練 習にもなって、楽しかったです」。

4歳のとき、父親に連れられてカートに 乗りに行ったことが、島津選手のカートラ イフの始まりのきっかけとなった。 「今の私にとって、カートは人生の一部で

「尊敬するのはロニー・クインタレッリ選手。バトル もアグレッシブでかっこいいです」と梶尾選手。スー パーGTに上り詰める日を楽しみに待ちたい。

チャンピオン確定後も「最初の方のペースが上がってな かったので、そこを直したいです」と反省を口にする島 津選手。貪欲な姿勢も好印象だ。

す。将来の目標は、F1レーサーになってチ ャンピオンを獲ること。アイルトン・セナ 選手みたいにすごく速くてカリスマ性のあ るドライバーに、私もなりたいです」。

カート以外の趣味はピアノ。最終戦の後に行われる ピアノの発表会では、「F1中継のテーマソングを弾く ことになっています」と教えてくれた。

特集 地方選手権 ラリー・スピード競技/REGIONAL CHAMPIONSHIPS

JAF 地方選手権 2023 チャンピオン

ラリーとスピード競技の 地方選手権タイトルホルダーを一挙紹介!

RALLY / GYMKHANA / DIRT TRIAL / CIRCUIT TRIAL

徐々にコロナ禍前の生活が戻りつつあるとともに、

競技会場では新たな変化の兆しも見られた2023年。

ラリーと3つのスピード競技のJAF地方選手権は、

154もの競技会が関係者や選手たちの尽力で開催された。

ここでは、各地域の争いに勝利した王者たちを紹介する。

PHOTO/加藤和由[Kazuyoshi KATOU]、小坂和生[Kazuo KOSAKA]、鈴木あつし[Atsushi SUZUKI]、田代康[Kou TASHIRO]、 友田宏之[Hiroyuki TOMODA]、服部眞哉[Shinya HATTORI]、森山良雄[Yoshio MORIYAMA]、山口貴利[Takatoshi YAMAGUCHI] REPORT/JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

RALLY ラリー地方選手権

1戦が中止となったものの5地区合わせて2022年より3戦加わり増加傾向に 全国5シリーズで開催された2023年のラリー地方選手権は、2022 年より3戦多い29戦を開催、序々にコロナ禍前の活気が戻りつつあ ることが、開催数からもうかがえるシーズンとなった。スノーが2 戦、グラベルが3戦、ミックスが1戦とバラエティーに富んだ北海道 は、久しぶりに東胆振地域でグラベルラリーを開催。東日本は、長 野県での一戦を中止したが東北と関東で3戦ずつが開催された。2022 年はグラベル1戦だった東北でのラリーが、スノーとターマックで1

JAFラリー地方選手権2023年チャンピオン

北海道

RA-1ドライバー 和氣嵩暁選手

RA-1コ・ドライバー 髙橋芙悠選手

RA-2ドライバー 近藤太樹選手

RA-2コ・ドライバー 中村真一選手

RA-3ドライバー 藤田幸弘選手

RA-3コ・ドライバー 藤田彩子選手

東日本

BC-1ドライバー 渡辺謙太郎選手

BC-1コ・ドライバー 伊藤克己選手

BC-2ドライバー 沼尾秀公選手

BC-2コ・ドライバー 沼尾千恵美選手

BC-3ドライバー 細谷裕一選手

BC-3コ・ドライバー 蔭山恵選手

中部・近畿 DE-1ドライバー 金岡義樹選手

DE-1コ・ドライバー 関本貴史選手

DE-2ドライバー 貝原聖也選手

DE-2コ・ドライバー 西﨑佳代子選手

DE-5ドライバー 島根剛選手

DE-5コ・ドライバー 藤沢繁利選手

DE-6ドライバー 洪銘蔚選手

DE-6コ・ドライバー 坂井智幸選手

2023年JAF北海道ラリー選手権 (6戦開催)

2023年JAF中部・近畿ラリー選手権 (中部3戦+近畿3戦開催)

2023年JAF東日本ラリー選手権 (東北3戦+関東3戦開催)

2023年JAF中四国ラリー選手権 (中国1戦+四国3戦開催)

戦ずつ増。中部・近畿は2022年同様に中部と近畿で3戦ずつ、計6 戦が開催された。路面も2022年と変わらず全戦ターマックラリーと なった。一方、全てグラベルラリーで競われたのが中国・四国だ。こ ちらは四国で3戦が行われ、中国での一戦が最終戦という前年と同じ カレンダーだった。九州は2023年も5シリーズ最多の7戦でシリー ズを開催。全てターマックだったが、最終第7戦はナイトラリーで開 催された。

中四国

FG-1ドライバー 長江修平選手

FG-1コ・ドライバー 中岡和好選手

FG-2ドライバー 山口貴利選手

FG-2コ・ドライバー 山田真記子選手

FG-3ドライバー 松原久選手

FG-3コ・ドライバー 和田善明選手

FG-4ドライバー 松岡竜也選手

FG-4コ・ドライバー 縄田幸裕選手

九州

RH-1ドライバー 松尾薫選手

RH-1コ・ドライバー 平原慎太郎選手

RH-2ドライバー 林大河選手

RH-2コ・ドライバー 門田実来選手

RH-3ドライバー 後藤章文選手

RH-3コ・ドライバー 山本祐介選手

RH-4ドライバー 山下公章選手

RH-4コ・ドライバー 鹿田裕太選手

RH-5ドライバー 白��辰美選手

RH-5コ・ドライバー 糸永敦選手

RH-6ドライバー 納富瑠衣選手

RH-6コ・ドライバー 出雲正朗選手

2023年JAF東日本ラリー選手権 (東北3戦+関東3戦開催)

2023年JAF中四国ラリー選手権 (中国1戦+四国3戦開催)

2023年JAF中部・近畿ラリー選手権 (中部3戦+近畿3戦開催)

2023年JAF九州ラリー選手権 (7戦開催)

GYMKHANA

ジムカーナ地方選手権

関東地区では10戦が開催された一方、九州地区では恋の浦閉鎖で2戦が中止に

2021年に比べて10戦増加した2022年よりさらに開催数を増やし、 61戦が全国各地で開催されるカレンダーが発表された2023年のジム カーナ地方選手権だったが、最終的には前年と同数の59戦が開催さ れた。北海道地区と東北地区、近畿地区と四国地区は前年と同じく7 戦で王座争いを展開。中部地区は1戦減り、中国地区は1戦増え、前 述の4地区と同じ7戦のシリーズで熱戦が繰り広げられた。関東地区

JAFジムカーナ地方選手権2023年チャンピオン

北海道

東北

PN1クラス 金内佑也選手

BC1クラス 成瀬悠人選手

SATW-2クラス 阿部崇治選手

SATW-4クラス 佐柄英人選手

PN3クラス 巻口洋平選手

BSC-2クラス 上野健司選手

関東 PN/AE1クラス 大橋政哉選手

PN2クラス 橋本恵太選手

PN3クラス 奥井優介選手

PN4クラス 大脇理選手

PN5クラス 大江光輝選手

PN6クラス 中村光範選手

B・SC1クラス 清水翔太選手

B・SC2クラス 飯野哲平選手

B SC3クラス 大澤勝紀選手

Dクラス 関谷光弘選手

中部 ATクラス 妖怪 J 清本選手

PN2クラス 古田公保選手

PN3クラス 鈴木勇一郎選手

PN4クラス 安仲慶祐選手

PN5クラス 高木健司選手

SA1クラス 小武拓矢選手

SA2クラス 榎本利弘選手

SA3クラス 小澤忠司選手

B・SC1クラス 藤井やしろ選手

B・SC2クラス 鳥居孝成選手

Dクラス 佐藤宗嗣選手

近畿 2PDクラス 段上泰之選手

BR1クラス 太田雅喜選手

BR2クラス 張靖遠選手

BR3クラス 間瀬戸勇樹選手

2023年JAF東北ジムカーナ選手権 (7戦開催)

2023年JAF中国ジムカーナ選手権 (7戦開催)

は1戦増加し、8地区最多の10戦のシリーズを、やはり8地区最多と なる9か所のコースで競われた。2022年末でスピードパーク恋の浦が 閉鎖、という激震が襲った九州地区。あえなく2戦が中止となってし まったものの、JMRC九州ジムカーナ部会を中心に関係者方の不断の 努力により、カレンダー変更などの対処を施して7戦が成立。全戦 HSR九州ドリームコースへと舞台を移し、王座を争った。

近畿

BR4クラス 大田健太郎選手

Lクラス 辰巳知佳選手

PN1クラス 奥浩明選手

PN2クラス 鎌尾邦彦選手

PN3クラス 福永隆一選手

PN4クラス 西川佳廣選手

SB1クラス 大原秀樹選手

SB3クラス 中嶋敏博選手

SB4クラス 石田忠義選手

T28クラス 武内靖佳選手

RCクラス KAZUYA 選手

R2クラス 石井拓選手

R4クラス 川上智久選手

PN2クラス 柏昇吾選手

PN3クラス 内田敦選手

BC2クラス 藤井雅裕選手

BC3クラス 佃真治選手 四国

PNクラス 徳永秀典選手

R1クラス 乃一智久選手

R2クラス 土居清明選手

R3クラス 仙波秀剛選手

R4クラス 山下和実選手

BSC1クラス 窪田竜三選手 九州

B1クラス 池武俊選手

B2クラス 松本博文選手

B3クラス 松尾裕佐選手

PN1クラス 奥薗圭介選手

PN2クラス 児玉淳一選手

PN3クラス JYUICHI 選手

PN4+クラス 藤本伸選手

BC1クラス 井上洋選手

(10戦開催)

2023年JAF四国ジムカーナ選手権 (7戦開催)

2023年JAF中部ジムカーナ選手権 (7戦開催)

2023年JAF九州ジムカーナ選手権 (7戦開催)

DIRT TRIAL

ダートトライアル地方選手権

2023年の開催数は前年と変わらずも、コースをめぐる環境に変化の兆しが 2022年はジムカーナと同じく開催数が増加傾向を見せていたダー トトライアル地方選手権。2023年は前年と同じ57戦の開催が予定さ れていたが、九州地区はジムカーナ以上に恋の浦閉鎖の影響を受けた シーズンとなった。HSR九州があるジムカーナとは異なり、九州唯一 のJAF公認ダートトライアルコースを失った影響は大きく、8戦が予定 されていたうち4戦が中止に追い込まれてしまった。しかし、関係者 方の尽力と中国地区の協力により、広島県のテクニックステージタカ タを舞台に、中国地区との併催で4戦を開催して、シリーズを成立さ

JAFダートトライアル地方選手権2023年チャンピオン

北海道

FF-1クラス 竹花豪起選手

FF-2/4WD-1クラス 内藤修一選手

RWDクラス 古谷欣竹選手

4WD-2クラス 笠原陸玖選手

東北 FRクラス 寺田みつき選手

2WD-1クラス いりえもん選手

2WD-2クラス 武蔵真生人選手

4WD-1クラス 伊藤久選手

4WD-2クラス 加藤琢選手

関東 N1500&PN1クラス 佐藤羽琉妃選手

N1&PN2クラス 杉谷永伍選手

PN3クラス 森戸亮生選手

N2クラス 影山浩一郎選手

S1クラス 小山健一選手

S2クラス 宮地雅弘選手

Dクラス 森正選手

中部 2Pクラス 村瀬秋男選手

RWDクラス 寺田伸選手

PN1・S1500クラス 天野佳則選手

Nクラス 角皆昭久選手

S1クラス 森大士選手

S2クラス 松原実選手

近畿 AE PNクラス 執行信児選手

せることができた。他地区に目を向けると、北海道地区と関東地区、 中部地区が8地区最多の8戦でシリーズを展開、東北と中国は前年と 同じ7戦、近畿地区も前年と変わらず6戦で王座を争った。四国地区 は1戦増えて5戦、全戦香川スポーツランドで熱戦が繰り広げられた。 新型コロナウイルス感染症の感染が拡大する以前の活気が競技会場 に戻りつつある一方で、中部地区のオートパーク今庄が2024年1月6 日で閉鎖されるなど、ダートトライアルコースをとりまく環境にも変 化が見られ、今後の動向に注目したい。

Nクラス 藤嶋義孝選手

S1クラス 北野匡佑選手

S2クラス 藤本隆選手

Dクラス 金井宏文選手

中国

四国

九州

RWDクラス 須川裕二選手 近畿

2023年JAF北海道ダートトライアル 選手権(8戦開催)

2023年JAF近畿ダートトライアル 選手権(6戦開催)

2023年JAF東北ダートトライアル 選手権(7戦開催)

2023年JAF中国ダートトライアル 選手権(7戦開催)

ATクラス 行友優太選手

PN1+クラス 南優希選手

NPSAクラス 萩原豪選手

SA1クラス 北野壱歩選手

RWDクラス 畑窪琢巳選手

NS1クラス 川戸惟寛選手

SCD1クラス 重松良輔選手

SCD2クラス 西元直行選手

PNクラス 萩原豪選手

Nクラス 竹下俊博選手

SD1クラス 谷芳紀選手

SD2クラス 梶田昌弘選手

AT1クラス 田口和久選手

PN1+クラス 水野喜文選手

RWDクラス 良本海選手

S1クラス 濱口雅昭選手

S2クラス 岡本泰成選手

Cクラス 岩下幸広選手

Dクラス 五味直樹選手

2023年JAF関東ダートトライアル 選手権(8戦開催)

2023年JAF四国ダートトライアル 選手権(5戦開催)

2023年JAF中部ダートトライアル 選手権(8戦開催)

2023年JAF九州ダートトライアル 選手権(4戦開催)

CIRCUIT TRIAL

サーキットトライアル地方選手権

共通の規則も相まってシリーズ間交流も盛ん 全シリーズに参戦し、二冠達成の猛者も誕生 2023年も2022年と変わらず、北からスポーツランドSUGO、筑 波サーキットコース2000、岡山国際サーキットと、3つのJAF公認 サーキットを舞台とした3シリーズが開催されたJAFサーキットトラ イアル地方選手権。開催数も前年と同じく、SUGOと岡山国際で4 戦、筑波では5戦で王座争いを繰り広げた。前年、筑波でデビュー したCT4クラスの松橋豊悦選手は3サーキット全てのシリーズに挑 戦、そのうちSUGOと岡山国際で初チャンピオンに輝いた。3シリー ズ共通の規則を採用していることで他のシリーズへの遠征もしやす く、シリーズ間の交流が盛んなところも特徴のひとつ。さらに交流を 深め、サーキットトライアルが盛り上がっていくことに期待したい。

2023年JAF菅生サーキットトライアル 選手権(4戦開催)

JAFサーキットトライアル地方選手権2023年チャンピオン 菅生

CT1クラス 芦名英樹選手

CT4クラス 松橋豊悦選手

CT6クラス 吉崎久善選手

筑波

岡山国際

2023年JAF筑波サーキットトライアル 選手権(5戦開催)

CUSCO & WinmaX & DUNLOP

「2024年Bライセンス競技若手育成支援プログラム」 サポート選手を発表!

国内Bライセンスモータースポーツ競技の老舗サプライヤーとして知ら れる“CUSCO”こと株式会社キャロッセと、“WinmaX”ブランドのエムケー カシヤマ株式会社、“DUNLOP”の住友ゴム工業株式会社が毎年共同で実施 している「CUSCO & WinmaX & DUNLOP Bライセンス競技若手育 成支援プログラム」の2024年度サ ポート選手が発表された。

このプログラムはBライ競技に 参戦する若手ドライバーの支援・育 成を通して、Bライ競技の活性化と モータースポーツの振興に貢献す る、という施策で、サポート選手は ブレーキパッドやタイヤの貸与、エ ントリー費の一部負担などの支援 を受けることができる。

2023年は全日本ジムカーナ選手 権で小野圭一選手が、全日本ダート トライアル選手権では奈良勇希選 手と鶴岡義広選手が優勝し、近畿 ジムカーナでは張靖遠選手が、南 優希選手は中国ダートラでチャン ピオンを獲得するなどの活躍を見 せた。2024年に選ばれた選手たち の走りにも、大いに注目したい。

CT1クラス 中嶋貴秀選手

CT2クラス 森田正穂選手

CT4クラス 上原和音選手

CT5クラス 石井均選手

CT6クラス 安本悠人選手

CT7クラス 日向孝之選手

CT2クラス 赤石憲俊選手

CT3クラス 木村芳次選手

CT4クラス 松橋豊悦選手

CT5クラス 山下猛選手

2023年JAF岡山国際サーキットトライアル 選手権(4戦開催)

2024年サポート選手

氏名 参戦予定クラス 参戦車両

全日本ラリー選手権

塙将司選手 JN-2クラス GR ヤリス(GXPA16)

兼松由奈選手 JN-4クラス スイフトスポーツ(ZC33S)

河本拓哉選手 JN-5クラス デミオ(DJLFS)

全日本ジムカーナ選手権

小野圭一選手 PN2クラス ロードスター(ND5RC)

中田匠選手 PN2クラス ロードスター(ND5RC)

飯野哲平選手 BC2クラス RX-7(FD3S)

全日本ダートトライアル選手権

南優希選手 PN1クラス スイフトスポーツ(ZC32S)

張間健太選手 PN2クラス スイフトスポーツ(ZC33S)

三枝聖博選手 PN3クラス GR86(ZN8)

ラリー地方選手権

田部井翔大選手 東日本 BC-2クラス BRZ(ZC6)

松原周勢選手 中部・近畿 DE-6クラス アクア(NHP10)

林大河選手 九州 RH-2クラス 86(ZN6)

ジムカーナ地方選手権

金粕雅史選手 関東 PN2クラス ロードスター(ND5RC)

大寳ゆかり選手 中部 SA1クラス シビックタイプR (EK9)

藤井啓太選手 中部 PN2クラス ロードスター(ND5RC)

ダートトライアル地方選手権

城越明日香選手 北海道 FF-1クラス スイフトスポーツ(ZC31S)

渡邉知成選手 関東 SA1クラス シビックタイプR (EK9)

山﨑裕汰選手 中部 RWDクラス GR86(ZN8)

ジムカーナ地方選手権特別枠

林紘平選手 九州 PN1クラス ロードスター(ND5RC)

まるで違う!

装路面を走るジムカーナと、未舗装路を走 るダートトライアルは、JAF公認競技では、

共に「各車が定められたコース上を個別に 走行し、個々の記録を順位判定の要素とする競技=ス ピード競技」と分類されている。レースとは異なり、1 台ずつ出走して走行タイムを計測し、多くの競技会で は2本の走行機会で勝負が決まり、少ないチャンスに 賭ける強い思いと、正確無比なドライビングが要求さ れるという意味では、共通する要素は多い。

しかし、それぞれの路面状況は異なるため、装着タ イヤや車両特性、改造の方向性といった物理的な要素 に加え、勝利への戦略や運転手のメンタリティなどに

SUGO西コースの大会でBC1クラスを制している。

まさに細木選手と志村選手は、スピード競技のクロ スオーバーで著しい飛躍を果たしているのだが、両選 手はどのように二つのカテゴリーに対応していたのだ ろうか? 全日本スピード競技の“二刀流”に挑む両 選手に攻略のアプローチを聞いてみると、そこにはス キルアップにつながるヒントが隠されていた。

ジムカーナとダートラをクロスオーバー

そんな状況において、2023シーズンには、ジムカ ーナとダートトライアルの全日本選手権に並行して参 戦し、しかも、それぞれで優勝争いを演じた二人のド ライバーが登場した。それがダートトライアル出身の 細木智矢選手と、ジムカーナ出身の志村雅紀選手だ。

細木選手は、全日本ダートトライアル選手権の開幕 戦・京都コスモスパークと第5戦・輪島市門前モータ ースポーツ公園、最終戦・テ クニックステージタカタの大 会を制して合計3勝をマー ク。SA1クラスでチャンピオ ンに輝いている。そして、全 日本ジムカーナ選手権では BC1クラスに参戦して、第3

2022年から全日本ジムカーナへの挑戦を開始した細木選手。第3戦タマダと第6戦岡山国際には今村 宏臣選手とダブルエントリーで参戦しており、タマダ大会には志村雅紀選手も応援に駆けつけた。

戦・名阪スポーツランドCコースでの大会では待望 の初優勝を獲得している。

一方、志村選手はかつてのジムカーナ活動からダー トトライアルに転向し、参戦5年目となる2023年全 日本ダートトライアル選手権では、SA1クラスで開幕 戦京都は2位、第6戦サーキットパーク切谷内の大会 では3位と二度の表彰台を獲得。5年ぶりに参戦した 全日本ジムカーナ選手権では、第7戦スポーツランド

ダートラ王者が挑んだジムカーナへの道 2010年に全日本ダートトライアル選手権への参戦 を始めた細木選手は、彼をサポートするスズキワーク ス久留米の商品開発の一環として、2022年から全日 本ジムカーナ選手権へのチャレンジも開始した。2023 年には全日本ジムカーナ参戦を主軸としながら、全日 本ダートトライアル参戦も継続したが、同じシーズン で異なるカテゴリーに挑戦するにあたり、最も苦労し たことが、ドライビングの切り替えだったという。 「ジムカーナとダートトライアルでは走らせ方が違う ので、切り替えが難しかったです。特に僕の走りはダ ートラがデフォルトなので、ジムカーナへの対応が課 題でした。それでも2023年序盤はジムカーナを主体 にしたので、走り方が定着して名阪で勝つことができ ました。でも、後半はダートラとジムカーナを交互に やっていたので、戸惑いがありました」と細木選手。 メンタル的にも苦労したようで、「ジムカーナとダ ートラではドライビングだけでなく、各ヒートに対す る姿勢も違います。ダート ラは2本目のタイムで決着 することが多いので、1本目 にデータを収集して、間違 っていた部分を2本目に修 正することができますが、 ジムカーナの場合は1本目 で勝負か決まることも多い ので、メンタル的にアプロ ーチの仕方が難しいんです よね」と細木選手は分析し ている。

加えて細木選手は、タイ ヤ特性にも悩んだようで、 「そもそもタイヤのグリッ プの仕方がまったく違いま すからね。ダートラの場合 は、慣熟歩行をしていると『ここの路面はグリップす る』なんてことが判るんですが、ジムカーナでは、横 Gをかけて走った方がいいのか、タイヤを転がして縦 方向で走った方がいいのかといった感じなので、ダー トラでの考え方が通用しないんです。ダートラは、ア クセルコントロールで絶えずトラクションをかけてい るんですが、ジムカーナはアクセルを踏まずにタイヤ を転がすように走らせないといけない状況がありま は違いも多い。ジムカーナ競技は各ヒートの路面状況 は安定しており、タイヤのデグラデーションはあるも のの、次なるヒートでも前走の再現性があると言える。 一方のダートトライアルは、走行するたびに路面状況 が変化し、次のヒートでは前ヒートとは比べものにな らない路面になる。それらの状況に適応し、攻略する ためには特化したセッティングやドライビングアプロ ーチが求められ、運転手にもそれぞれに最適化された 技能が蓄積されていく。それ故に、両競技を渡り歩く ようなドライバーは極めて少ないのが現状でもある。

す。ジムカーナはタイヤのグリップ力が高くてマシン をコントロール下に置けるので、ダートラのような恐 怖感はないんですが、その結果としてジムカーナでは やりすぎることがあるので、アクセルを我慢すること が大変でした」と語る。

速度域が高いダートラ走行で抱いた恐怖感

一方の志村選手は、2003年に全日本ジムカーナ選 手権への参戦を開始したジムカーナのベテランで、支 援を受けるレイルモータースポーツの商品開発の役割 を担って、2019年から全日本ダートトライアル選手 権への参戦を開始した。当然、志村選手も両カテゴリ ーの違いに苦戦したようで、「ジムカーナはグリップ の範囲内に置いて、それを破綻させるかどうか、とい う領域で走るものだと考えています。実際、タイヤが 接地した方が速いので、基本的にグリップありきの競 技だと思っていますが、ダートラはジムカーナのよう なグリップがないだけではなく、速度域も高いんで す。ギヤで言えばジムカーナより1速は高いので、最 初は怖くて仕方がありませんでした(笑)」と語る。

さらに、ダートトライアルにおける各ヒートの戦い 方にも戸惑いを感じていたようで、「ダートラでは初 めて走るコースが多かった、ということもありますが、 ダートラは1本目と2本目で路面状況が違いますよね。

硬質ダートの部分がイン側にしかなかったり、土が載 ってフカフカした部分とかがあり、路面状況が一定で はないので、その違いに悩みました」とのことだ。

志村選手は、2023年にはダートトライアルと並行 して、5年ぶりにジムカーナにも参戦したのだが、細 木選手と同様にその切り替えにも悩んたという。

全日本ダートトライアル選手権SA1クラス MJT DL SWKレイルスイフト[ZC33S]

全日本ジムカーナ選手権BC1クラス MJT DL SWKスイフト[ZC33S]

「レイルさんが筑波サーキットのタイムアタック用に スイフトスポーツを所有していて、夏場はクルマが空 いているので、ジムカーナに出てみようとなりまし た。シーズン後半はダートラと並行してジムカーナに も参戦したので、最初のヒートはこんがらがりました ね(笑)。全日本ジムカーナのSUGO大会の後にオー トパーク今庄での全日本ダートラがあって、今庄の後 には鈴鹿サーキット国際南コースでの全日本ジムカー ナ最終戦がありましたが、今庄でも鈴鹿南でも、突っ 込み過ぎたり、ターンのアクセルの踏み方もおかしか ったりして、切り替えが難しかったですね」と語る。

細木智矢選手

Tomoya HOSOGI 志村雅紀選手

全日本ダートラで3年連続チャン ピオンを獲得し、合計5度の王座に 輝く細木選手。2022年から全日本 ジムカーナへの挑戦も開始した。

Masanori SHIMURA

長きに渡りEK9シビックで全日本ジム カーナを戦ってきた志村選手は、2019 年から全日本ダートラに転向しSA1ク ラスを戦う。2023年はスポット参戦し た全日本ジムカーナSUGO西大会で 2018年以来の優勝を飾り、年末のJAF カップダートラでも優勝している。

両競技の特性に合わせて考え方と走らせ方を切り替 えることの難しさに加えて、二人とも苦労したのが、 やはり参戦コストだそう。細木選手は、「車両やパー ツはチームにサポートしてもらっていますが、遠征費 は自己負担なので、両カテゴリーの参戦は金銭的に厳 しいですね。それに競技車両の移送や現地でのサービ スは、手伝ってもらっているのでラクにはなっていま すが、それでも移動距離が長いので体力的には疲れま す。自分はサラリーマンなので、限界のチャレンジだ と考えています」と語れば、志村選手も「僕はレイルさ んとの共同企画として参戦していますが、車両やタイ ヤ、参加費、遠征費をすべて自己負担となると、二つ のカテゴリーを同時に追うことは、プライベーターに とっては厳しいですよね」とのことだ。

固定観念を崩す、ベテランからのアドバイス

全日本ジムカーナと全日本ダートトライアルの両シ リーズへの同時参戦に挑戦した細木選手と志村選手だ が、二人はそれぞれのフィールドでシーズン内で実績 を残し、新たな試みを成功させつつある。そこが、二

ダートラ転向後の志村選手は、細木選手と同じ全日本ダートラSA1クラスに参戦し、開幕戦京都コ スモスでは細木選手に次ぐ2位、第6戦切谷内では3位入賞を果たし、初勝利の日も近い。

志村選手は、支援を受ける神奈川LAILE謹製のサーキットアタック用車両で全日本ジムカーナ第7 戦SUGO西にスポット参戦。BC1クラスの第2ヒートで逆転し5年ぶりの参戦で優勝をさらった。

人の活動における特筆すべき点なのだ。

成功のヒントを挙げるとするならば、細木選手のジ ムカーナでのスキルアップに関しては、ベテランドラ イバー松本敏選手の存在がクローズアップされる。 2023年の全日本ジムカーナでは、細木選手の「メン ター」として松本選手が支援してくれたという。

細木選手は「ジムカーナは低速でも、走りや操作には 色々なワザが詰め込まれているので、単純化はできな いなと感じてました。でも、松本選手のアドバイスで、 それがイメージできるようになりました。名阪で勝て たのは2本目にタイムが上がる路面状況にアジャスト できたことが大きいと思っていますが、松本選手のア ドバイス通り、リアを抑えてフロントを意識するよう な走りができたことも勝因の一つです」と語る。

細木選手にアドバイスを送っていた松本選手は、 「細木選手が初めて全日本ジムカーナに出たときに、 タイヤの限界を超えた走りをしていたので、“ダート ドライバーらしいな”と感じていました。その頃に比 べると確実に進化していて、タイヤの使い方やクルマ の詰め方も解ってきたんだと思います」とのこと。

さらに松本選手は「当初はダートラとジムカーナの 考え方の違いに悩んでいたけど、細木選手はもともと 潜在能力が高いし、センスもいいので、『待つこと』と 『転がすこと』ができれば、タイムが出るようになる と思っていました。それが上手くいったのが名阪の2 本目で、我慢するところは我慢しながら、一筆書きの ような走りをしていました」と細木選手を分析する。

また、細木選手のメカニックとして“二刀流”の活 動をサポートする今村宏臣氏は、「細木選手はもとも とコントロールの幅が広いし、路面に対する順応性も 高いドライバーです。ジムカーナではドライビングも セッティングも、フロントタイヤのグリップのさせ方 という部分で悩んでいましたが、松本選手のアドバイ スで走らせ方のイメージが変わってきたようで、いい 方向に来ていると思います」と評価する。

ジムカーナ出身であることのメリットとは 一方の志村選手は、ジムカーナとダートトライアル を戦うことによる相乗効果が大きく影響しているよう で、「速度域とグリップの仕方が違うので、ジムカー ナとダートラは突き詰めると違う所はありますが、同 じ四輪のカテゴリーなので、荷重をかけないと曲がら ないといった基本操作は同じです。それに、両カテゴ

志村選手の全日本ダートラ参戦は神奈川のLAILEとの共同企画。エンジ ニアの渋谷幸司氏が帯同し、二人三脚でダートラ攻略に臨んでいる。

細木選手のダートラ&ジムカーナ活動をメカニックとして支えるのは 2012年全日本ダートラPNチャンピオンの今村宏臣選手。ジムカーナの 大ベテランである松本敏選手もメンター役として見守っている。

リーを同時にやったことでドライバーとしての伸びが あった実感があります。5年ぶりにジムカーナに出た 時に『ダートラを経験したおかげで上手くなったね』と 言われたことがありましたが、速度域の違いやグリッ プさせるという点において、少し引いてジムカーナを 走れるようになったと感じています」と志村選手。

さらに「久々にジムカーナを経験したおかげで、苦

手だったテクニックステージタカタを走れるようにな ったんです。タカタのダートコースは速度域が高くて 怖かったんですが、その恐怖心は減ってきました。自 分の何がどう変わったかは具体的には言えませんが、 相乗効果があったんだと捉えています」と分析する。

志村選手の“二刀流”活動で、エンジニアとして車 両製作や現地サポートを担当するレイルの渋谷幸司氏 も、「志村選手はダートラの経験がなかったですし、 レイルとしてもダートラ用のクルマを作ったことがな かったので、志村選手はかなり苦労したと思います。 それでも志村選手は器用にドライビングしてくれるし、 クルマの評価もきちんとしてくれる。ジムカーナもダ ートラも日曜の本番までに走れる時間は少ないです が、志村選手はクルマの動きに対するフィードバック が的確なので、セットアップを進めることができまし た」とした上で、次のように志村選手を評価している。

「2023年は全日本ダートラに参戦しながら、レイル の企画で全日本ジムカーナにも参戦することになりま したが、志村選手はタイヤの使い方が違うことに苦労 していたようです。それでも両カテゴリーに参戦した ことで走りに余裕が出てきましたし、ドライビングの 懐の深さも増えたと思います。ダートラを始めたばか りの頃と現在のドライビングは明らかに違います。だ いぶダートラドライバーの乗り方になってきました が、それでもタイヤのグリップに対して繊細な走り方 ができるので、そこはジムカーナ出身であることのメ リットだと思います。切谷内で表彰台を獲得すること ができたのは、それらの影響だと思っています」。

“1本”で決まる勝負を貪欲に学ぶ姿勢 このように、細木選手と志村選手は、あらゆる犠牲 を払って両カテゴリーに挑戦し、全日本選手権という

高みにおいて、しっかりと実績を残している。

細木選手は、「自分にとってダートラはキャリアも 長く、いい時のフィーリングが身体に染み付いている

2023年の全日本ジムカーナ第3戦は、BC1クラス先頭で出走した細木選手がベストタイムを計測。 後続の26台を待ち続けて得られたのは、何と参戦5大会目での全日本ジムカーナ初優勝だった。

細木選手の2023年の全日本ダートラ活動は、SA1タイトル獲得に必要最小限の参戦数となった。第 6戦切谷内と第7戦今庄では勝利を逃すも、最終戦タカタは僅差ながらも勝って王座を決めた。

スピード競技 “ 二刀流 ”

ので、イメージしやすいんですが、ジムカーナは壁に ぶちあたっている状態です。全日本の名阪で勝てたと はいえ、ダートラのようにステアリングを一気に動か すクセがまだ出てしまうので、そこを克服したいです ね。ジムカーナとダートラに共通点があるとするな ら、どちらも上達のポイントは『どこまで貪欲に学べ るか』という部分にあると思います。頂点に立つため のアプローチはどちらも同じだと思うので、貪欲に学 んでいきたいですね」と語る。そして、志村選手も、 「最終的には1本目もしくは2本目のベストタイムで 成績が決まるので、どちらも“1本の勝負”なんです よ。なので、各ヒートに挑む集中力は同じです。た だ、ジムカーナの方が細かくシビアな積み重ねがいる ので、ダートラ出身の細木選手がジムカーナで勝った ことはすごいと思います。今度は僕が細木選手を抑え て全日本ダートラで勝ちたいですね」と語っている。

苦しみながらも前向きに取り組む二人の挑戦は、ド ライビングスキルや勝利へのアプローチに対して、実 り多きトライアルになっていると言えるだろう。

「オートテスト in 善通寺自衛隊駐屯地教習所」 開催日:2024年2月11日(日) 開催地:善通寺自衛隊駐屯地教習所 (香川県善通寺市) 主催:OWL  協力:JMRC四国オートテスト部会

オート テスト 倶楽部

AUTO TEST CLUB

川県善通寺市にある善通寺自衛隊 駐屯地教習所において、同地では 初となるオートテストが2月11日に開催 された。この大会はJMRC四国に誕生し たオートテスト部会の支援で開催されてい るシリーズの一戦で、今大会は「善通寺市 ×JAF四国 モビリティファンイベント」の 一環として行われた。

当日は隣接する善通寺市役所広場で行わ れた「市民ふれあいフェスティバル」とのコ ラボレーションも果たし、教習所では自衛 隊車両や警察車両の展示、次世代モビリテ ィの乗車体験コーナーも併設され、衆目を 集めるイベントとなっていた。

今回のオートテストは、保安基準に適合 した登録番号標付き四輪自動車を対象に、 軽自動車と普通車(それぞれMT、ATミッ ション混合)、チャレンジ(初参加および数 回出ているが自信がない人向け)、エキス パート(国内Bライセンス所持者もしくは 参加経験が豊富で入賞経験がある人向け)

自衛隊教習所でオートテスト初開催! 善通寺市の中心部で新たな試みが実現

マイカーで気軽に参加できる競技「オートテスト」が善通寺市に初上陸! 今大会は「善通寺市×JAF四国 モビリティファンイベント」の一環で行われ、 なんと自衛隊駐屯地の教習所におけるオートテスト開催が実現した。 ここでは、多くの観客が詰めかけた、意欲的な新たな試みの模様をお届け!

といった合計4クラスが設定された。

大会には上限50台を上回る53台の事前 申し込みがあり、軽自動車クラスに8台、 普通車クラスには16台、チャレンジクラ スは10台、そしてエキスパートクラスに は18台が集まった。エキスパートクラス には、日紫喜俊夫選手や篠原賢爾選手、浜 屋雅一選手や藤塚伊織選手など、黎明期か ら全国的に活躍する選手も揃っていた。

コースレイアウトは教習所を活かした設 定で、幅広な十字の交差点付近でのパイロ ンスラロームやターンを軸に、狭路通過や 縦列駐車のセクションも設けられた。この 2箇所については、大型トラック向けに幅 が広くなっており、慎重かつ正確な運転操 作があればクリアできる設定となっていた。

競技内容は、計測タイムを1秒1ポイン トとして計算し、2ヒートの走行で少ない 方の得点を採用して順位が決まる方式を採 用。パイロン移動や転倒、ガレージの入庫 不足は5ポイント、ミスコースには10ポ イント、サイドターンやドリフト走行等に は15ポイントのペナルティが加算される。

当日の会場は晴天に恵まれて、大会の応

会場となった教習所は、市役所が隣接す る善通寺市のほぼ中心地にある。このよう 広い敷地と広いコース幅を持つ善通寺自衛隊駐屯地 教習所。善通寺市の辻��村修市長がスタートフラッグ と表彰式のプレゼンターを担当してくれた。

援に駆けつけた善通寺市の辻��村修市長のス タートフラッグにより競技が始まった。香 川県警察の協力で警察車両がコースクリア を務め、ドライバーは2022年全日本ジム カーナ選手権JG4チャンピオンの田中康 一選手が担当した。その後、軽自動車クラ スの1号車からスタート。練習走行と第1 ヒート、第2ヒートという計3本の走行が 行われ、市長がプレゼンターを務めた表彰 式・閉会式を経て大会は無事終了した。 今後の可能性を感じる好立地

惣路明奈選手@普通車クラス 根っからのホンダ党という惣路選手。「オートテス トには5年くらい出ています。これまでずっとミニ バンに乗ってたので、思い切って、オートテスト 向きなこのシビックに乗り換えました。オートテス トで腕を磨いて、今後はジムカーナにも挑戦した いです♪」。

唐渡一馬選手@普通車クラス NBロードスターを駆る唐渡選手。「ジムカーナも やってるんですが、手軽さに興味があって今回初め てオートテストに出てみました。安全を重視するコ ンセプトはジムカーナとは違った楽しみがあると 思ってます。クルマをいかにコントロールするかを 勉強中です!」。

主催は藤澤繁美氏率いる「モータースポーツアウル」。

実況は板東慎太郎氏が担当し、正岡秀康コース委員長 とコースクリアを担当した田中選手が見守った。

な衆目を集めやすい立地でのオートテスト 開催は、JAF香川支部の協力で実現したと いう。JAF香川支部によれば、「善通寺市 とJAF香川支部が包括連携協定を結んで おりまして、善通寺市役所を通じて自衛隊 の皆さんと交渉を重ねることになりまし た。昨年は善通寺市が市政70周年を迎 え、総本山善通寺の弘法大師誕生1250年 という記念の年でもありましたから、市長 にも市のPRや地域振興についてご理解を いただくことができ、自動車やモータース ポーツを新たな集客の手段とする試みが、 このたび実現できました」とのことだ。

そして、JMRC四国の運営委員長であり

教習所らしい コース設定

教習所を活かしたレ イアウト。クランク の狭路通過と、後退 で入る縦列駐車が 攻略のカギとなり、 縁石やバーへの接 触にも気をつけなが ら、教習さながらの アタックとなった。

広大な教習所の敷地には、オートテストの走行コース とパドックに加え、「善通寺市×JAF四国 モビリティ ファンイベント」の乗車体験コーナーが同居した。

JMRC四国オートテスト部会長を務める金 井宣夫氏が、初の試みをこう締めくくった。 「施設が広いので、今後の可能性がある場 所だと考えています。今回は日常の交通ル ールの徹底を、モータースポーツを活用し て周知する試みも実践していて、教習所と いうことで、施設にある一時停止の標識と 停止線を活用して、オートテストのゴール 後の完全停止を表現しました。その一方 で、教習所ならではの”縁石”への対応が 課題ではありました。当日はエキスパート クラスの皆さんから指摘がありましたし、 一般の参加者にも若干の不安があったよう です。もし、この会場の使用が許されるな

若山 香選手@チャレンジクラス

昨年11月からオートテストを始めて3回目の参 戦となったNDロードスターの若山選手。「上手い 人の無駄のない走りを目指してますが、前回も 前々回もタイムが伸びず……でした。今回はミス コースをしないよう心がけました」と臥薪嘗胆の クラス2位を獲得。

岩崎貴英選手@エキスパートクラス コンフォート教習車を愛知から持ち込んだ岩崎選 手。「走る・曲がる・止まるを極限まで追求する オートテストに魅力を感じています。オートテス ト用にオートマのコンフォート教習車をもう一台 買って、今回シェイクダウンなんですよ!」とマ ニアぶりを披露する。

善通寺市役所広場での「市民ふれあいフェスティバル」 のシャトルバスを兼ねて、ヤマハ「グリーンスローモ ビリティ」の乗車体験も行われた。

教習所内の一時停止標識と停止線を活用して、ゴール 後の完全停止を表現し、実際の交通ルールの徹底を、 オートテストで周知する試みが行われた。

ら、これらの課題を改善しながら、年1回 の大きなイベントとして継続していけるの ではないかと手応えを感じています」。 オートテストの新名所の今後に注目だ。

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