2024 WINTER JAF MOTOR SPORTS 近年の10月上旬から9月下旬開催に変更された 2023年の日本グランプリ。金曜は4万2000人、土曜 は7万9000人、日曜は10万1000人の観客が訪れた。
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F1第17戦日本GPは、マックス・フェルスタッペン選手が完全勝利! 約22万人が見守る晴天の鈴鹿で、レッドブル・レーシングが2年連続タイトル確定!!
PHOTO/吉見幸夫[Yukio.YOSHIMI] REPORT/吉田知弘[Tomohiro.YOSHITA]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]
重県の鈴鹿サーキットで2023 年9月21~24日に開催された FIAフォーミュラ1世界選手権 (F1)第17戦「Lenovo日本グランプリレー ス」。コロナ禍の影響により2020年と2021 年は開催が見送られたが、復帰2回目とな る今回は、諸制限緩和の影響もあり、決勝 日の動員数は10万1000人を記録した。
決勝日の10万人超えは小林可夢偉選手が 3位表彰台を獲得した2012年以来のこと。 また、3日間の延べ来場者数も22万2000人 を数え、鈴鹿サーキットが大規模改修を経 て日本グランプリの開催を再開した2009年 以降では最も多い結果となった。
例年より約2週間早い9月下旬の開催と いうことで、週末は予想外の暑さに見舞わ れ、観戦するファンにとっては厳しい環境 になったものの、それを感じさせないくらい の「熱気」に包まれた週末となった。
世界へ羽ばたく日本人 嬉しいニュースが続々と
集客の多さは国内でのF1人気の高まりを 裏付けるものだが、唯一の日本人F1ドライ バーである角田裕毅選手(アルファタウリ) の凱旋レースという要素に加え、2023シー ズンはスーパーフォーミュラで大活躍したリ アム・ローソン選手が、ダニエル・リカルド 選手の負傷欠場に伴う代役参戦を果たした ことも影響しているだろう。
さらに、金曜に はマクラーレンが 来季のリザーブド ライバーとして、 FIA世界耐久選手 権やスーパーフォ ーミュラで活躍す る平川亮選手の起
Headl 用をサプライズ発表。翌日には本件を後押 ししたモリゾウことトヨタ自動車の豊田章男 会長がマクラーレンチームを訪れた。
そこで平川選手は「この機会を作ってくれ たのは、やはりモリゾウさんの力が大きく、 本当に感謝しきれません。ここから先は自 分でチャンスを掴み獲るものかなと思いま す。まずはF1チームに少しでも慣れて、し っかりチームに貢献できるようになれば、チ ャンスも見えてくると思います」とコメント。
2012年日本グランプリのサポートレースで
3番グリッドから好スタートを決めたランド・ ノリス選手。中盤で順位を上げて2位に。
3位でF1初表彰台のオスカー・ピアストリ選 手。マクラーレン勢がダブル表彰台を獲得。
フェルスタッペン選手が予選も制して今季13勝目 ポール・トゥ・ウィンかつ、1分34秒183のファステストも叩き出して圧勝した マックス・フェルスタッペン選手。マクラーレンのランド・ノリス選手とオス カー・ピアストリ選手が表彰台を獲得し、4位はシャルル・ルクレール選手、5 位はルイス・ハミルトン選手、6位にはカルロス・サインツ選手が入った。
さらに土曜の朝には、アルファタウリ が2024年のドライバーラインナップを 発表。2023年後半戦と同様に角田選手 とリカルド選手の起用が明らかになった。
11時30分からのプラクティス3回目 を前に、角田選手はポディウムに登場し て来季のF1参戦をファンに生報告。こ こでも受けた大きな声援を力に変えた
角田選手は、午後に行われた予選でQ3に進 出。鈴鹿のボルテージは最高潮に達すると 同時に、日本のモータースポーツファンにと って興奮しっぱなしのグランプリとなった。
フェルスタッペン選手が13勝目 レッドブルが6度目の王座に
今大会は、金曜のプラクティス1回目か ら王者マックス・フェルスタッペン選手が絶 好調。前回シンガポールGPでは精彩を欠 いたものの、彼とレッドブルが得意とする鈴 鹿では走り始めから一切の隙を見せず、各 セッションでトップタイムを刻んだ。
クでは、予想通りタイムを上げる走りをみ せ、1分28秒877を叩き出し、2番手以下に コンマ5秒以上の大差をつけてポールポジ ションを獲得した。現行規定の車両で1分 29秒の壁を破ることは驚異的なスピードの 証。計測した瞬間にはグランドスタンドから 大きな歓声が湧き上がった。
「今週末はすごく調子が良い。クルマも良 いし、このコースを楽しく走ることができて いる。もちろん必要なことをしっかり見極め て予選に臨んだ。Q2ではうまくいかないと ころがあったけど、Q3では限界まで攻め切 ることができて、良いラップを刻むことがで きた」と語るフェルスタッペン選手に続く速 さを見せたのが、マクラーレンの2台だっ た。特に今季デビューしたオスカー・ピア ストリ選手は今季一番と言える予選アタッ クを披露して、自身の最上位グリッドである 2番手を獲得。3番手には僚友のランド・ノ リス選手がつけた。期待の角田選手は9番 手タイムをマークして、母国レースでのポ イント獲得を目指す。
日曜の決勝は例年に比べて気温が高いと
いうことで、タイヤをどこまで労わりながら 決勝を走れるかに注目が集まった。
入されたが、5周目に再開されるとフェルス タッペン選手が順調にリードを広げていく。
最終的には後続に19.3秒もの大量リードを 築いてトップチェッカー。全く危なげない走 りで今季13勝目を挙げた。
僚友のセルジオ・ペレス選手が序盤の接 触などの影響で上位争いから脱落したもの の、レッドブルは今回の結果で6度目のコン ストラクターズチャンピオンを獲得した。 「全てがうまくいったレースだった。クルマ は素晴らしくて、タイヤの調子も良かった し、デグラデーションもコントロールでき た。他とは戦略が少し違っていていたとこ ろはあったけど、特に問題はなかった」。
Headl e 土曜の予選でも順当にQ3まで勝ち上が ると、1度目のアタックであわや1分28秒台 に入る1分29秒012を記録。2回目のアタッ あるPCCJとFCJに参戦した平川選 手。「まさか自分がF1チームの一員に なれるとは思ってませんでしたが、夢 を持ってずっとやってきたので、昔の 自分に『こうやって来れたよ』と言いた いです」と感慨深い表情を見せていた。
開始直後の接触でSC導入となった決勝レー ス。コースマーシャルの機敏な対応で再開に。
スタートでは、フェルスタッペン選手とノ リス選手がサイド・バイ・サイドで1コーナ ーに飛び込むが、ここはフェルスタッペン 選手が先頭を死守。後方で起きた接触によ るデブリ飛散でいきなりセーフティカーが導
晴天のGPスクエアは観客で溢れんばかり。約 10年ぶりに決勝日10万人超えを果たした。
こう語るフェルスタッペン選手に次ぐ2位 にはノリス選手、3位はピアストリ選手とマ クラーレン勢が手強いライバルを抑えて表 彰台を獲得。初表彰台となったピアストリ 選手は満面の笑みを見せていた。
9番グリッドからスタートした角田選手 は、序盤のポジション争いで敗れたことが 影響して後半は11番手を走行。ローソン選 手と1ポイントを争ったが逆転ならず、母国 グランプリでの入賞は叶わなかった。
2024年のF1日本グランプリは、F1のロ ジスティクスの影響を受けて、約半年後の4 月5~7日に開催されることが7月にアナウ ンスされている。日本初上陸のフォーミュラ Eの翌週で、史上初となる”春開催”がどの ような戦いを生むのかに注目だ。
鈴鹿の2コーナーではセバスチャン・ベッテル 氏による「Buzzin'.Corner」計画がお披露目。
モハメド・ベン・スレイエムFIA会長が来場。F1 開催1095戦目を示す記念メダルを贈呈した。
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知県と岐阜県を舞台として、12 年ぶりに復活したFIA世界ラリ ー選手権(WRC)日本ラウンド 「ラリージャパン」。2回目となる2023年 大会は、2022年よりも1週間ほど遅い11 月16~19日という日程で開催された。
土曜は路傍の観客対応のためオープニン グのSS9が赤旗で中断となり、出走したテ ィエリー・ヌービル/マーティン・ヴィー デガ組や勝田/ジョンストン組には救済措 置が適用された。天候は曇りベースのドラ イ路面だったが路気温は低く、SS15の新城 ステージでは何と一時的に降雹に見舞われ る。そして日曜は恵那エリアに雪マークと エルフィン・エバンス選手が雪辱を果たしTGR-WRTが表彰台を独占! 変わる天候と過酷な路面に翻弄されたラリージャパン2023、約54万人の観客を集めて閉幕 PHOTO/遠藤樹弥[Tatsuya.ENDOU]、小竹.充[Mitsuru.KOTAKE]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS] REPORT/JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]
今大会はJAF公認クラブ「トヨタ・モー タースポーツ・クラブ(TMSC)」に加え、 JAF加盟団体「豊田市」が主催に参画。太田 稔彦市長が会長を務める実行委員会の事前 広報も奏功して、53万6900人もの来場者 を数えて閉幕している。これはコロナ禍明 けという時期に加え、豊田スタジアムのピ ッチに新設された、2台同時スタートのス ーパーSSの恩恵が大きく、このステージ だけで計7万人もの観客を集めている。
ラリーのフォーマットは、基本的には 2022年大会を踏襲しており、木曜の豊田 スタジアムでのスーパーSSから始まり、 金曜は愛知県豊田市と設楽町で7ステー ジ、土曜は豊田市と岡崎市、新城市で8ス テージ、日曜は豊田市と岐阜県恵那市、中 津川市で6ステージという、2県6市町を 走る合計22ステージで構成された。
前回と比べて、伊勢神トンネルの路面改
修や設楽町エリアの災害に伴うルート変更 等もあり、よりスムーズなターマック路面 が提供されている。また、今季のWRCか ら本格導入された「タイヤフィッティング ゾーン」が岡崎市と中津川市に設定され、 渋滞が発生しやすいサービスパーク往復時 のタイムロス解消にも寄与していた。
木曜のシェイクダウンは晴天に恵まれた ものの、金曜は予報通りの雨模様。特にス テージがある山岳地では強い雨が降り続 き、路面には水たまりや、堆積した落葉や 松葉に覆われ、気温と路面温度の低下も相 まって、かなり滑りやすい状況となった。
この路面に足をすくわれたのは、フォー ドからラリージャパン初参戦を果たしたエ イドリアン・フルモ―/アレクサンドル・ コリア組と、前回はステージ上で全焼する トラブルに巻き込まれたヒョンデのダニ・ ソルド/カンディド・カレーラ組で、金曜 オープニングのSS2でコースオフ。後続の 勝田貴元/アーロン・ジョンストン組も、 先の2台と同じ場所で立木に当たり、車体 を小破させて上位争いから離脱している。
Rally1車両は強い雨量で視界不良に陥る 傾向もあるため、随一の高速区間を得た
SS4はキャンセルとなり、前回同様に日本 らしい過酷なコンディションで幕を開けた。
そんな状況で総合首位に立ったのはエル フィン・エバンス/スコット・マーティン 組で、後続のセバスチャン・オジエ/ヴァ ンサン・ランデ組に2分近い差を付けて、 前回の雪辱を果たすべく快走を続けた。
Headl エルフィン・エバンス/スコット・マーティン組が優勝、セバス チャン・オジエ/ヴァンサン・ランデ組が2位、カッレ・ロバンペ ラ/ヨンネ・ハルットゥネン組が3位に入り、TOYOTA.GAZOO. Racing.WRTが母国ラリーで念願の表彰台独占を果たした。
WRC2チャレンジャー選手権の優勝は、 RC2クラス2位のニコライ・グリアジン/ コンスタンティン・アレクサンドロフ組。
フィエスタRally3を持ち込んだジェイソ ン・ベイリー/シェイン・ピーターソン組 がWRC3選手権を制した。
全日本JN3王者の山本悠太/立久井和子 組がJRCar2クラス優勝。今大会唯一の後 輪駆動車で見事生還した。
WRC中欧大会を経てP2エントラントと して挑んだ福永修/齊田美早子組が WRCマスターズカップ優勝。
RC5クラスにRally5車両のルノー・クリ オRSで挑んだ国沢光宏/木原雅彦組が 総合19位ながらクラス優勝。
軽自動車でWRCに挑むD-SPORT.Raci ng.Team相原泰祐/萩野司組が今年も見 事に完走。JRCar3クラスを制した。
いう予報。中央道には夜間の冬用タイヤ規 制が表示されたが、明けた日曜は晴天に恵 まれ、強い日差しと前夜の凍結防止対策も 相まって、積雪路という事態は免れた。
迎えた最終日。特に恵那、中津川エリア は夜間の降雪により路肩に薄く残雪がある
2022年大会では終盤に苦杯を喫したエルフィン・エバンス/スコット・マーティン組が快走。後 続に大差を付けてラリージャパン初優勝と今季3勝目を挙げ、シリーズ2位を確定させた。
眞貝知志/安藤裕一組がデイ離脱からの 驚異的な追い上げで村田康介/梅本まど か組を逆転しJRCar1クラス優勝。
新井大輝/立久井大輝組が 2WDでWRCポイント獲得
2022年に続いてプジョー208.Rally4で 挑んだ新井大輝選手は、コドラの立久井 大輝選手と共に難しい路面を席巻して総 合10位フィニッシュ。2WD車両でWRC ポイントを獲得する快挙を成し遂げた。
ウェット路面となっ た。エバンス/マー ティン組は安定した
走行で首位を堅守。最終SS22のパワース テージこそヒョンデのヌービル/ヴィーデ ガ組が奪取したものの、エバンス/マーテ ィン組がラリージャパン初優勝を獲得。オ ジエ/ランデ組が2位、カッレ・ロバンペ ラ/ヨンネ・ハルットゥネン組が3位で、
WRC2選手権は ミケルセン選手が 総合7位で圧勝
すでにWRC2選手権を 制しているアンドレアス ・ミケルセン/トシュテ ン・エリクソン組が圧倒 的な速さでRC2クラス を制し、WRC2選手権で も優勝を飾った。
WRC2チャレンジャー選手権を争うカイエタン・カイ エタノビッチ/マチェイ・シュチェパニャク組はRC2 クラス3位、WRC2チャレンジャー選手権では2位に入 り、ラリージャパンでタイトルを決めた。
Headl e TOYOTA GAZOO Racing WRTが表彰 台を独占する結果となった。
勝田/ジョンストン組は、金曜午後から 怒涛の連続ベストを重ねて5番手のオィッ ト・タナック/マルティン・ヤルヴェオヤ 組をパス。4番手を走るエサペッカ・ラッ ピ/ヤンネ・フェルム組には届かなかった ものの、9本のステージでベストを叩き出 す鬼神の追い上げで5位を獲得している。
2023年最後のWMSCおよびFIA
表彰式は、アゼルバイジャン共和国 の首都バクーで開催。会場はバクー ・シティ・サーキットからほど近い バクー・コンベンション・センター で、12月9日の表彰式は世界選手権 とそれ以外のサーキット&ラリー 選手権の二部制で行われた。
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2023年最後のWMSCとFIA表彰式がアゼルバイジャンで開催 世界選手権の新たな方向性も示された今回。表彰式では2023年の王者たちがバクーに集結 PHOTO/FIA、大野洋介[Yousuke.OHNO]、堤.晋一[Shinichi.TSUTSUMI] REPORT/JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]
ゼルバイジャン共和国のバクー 市内において、2023年最後の FIA世界モータースポーツ評議 会(WMSC)が12月6日に開催された。
WMSCでは、FIAフォーミュラ1世界選 手権(F1)の競技規則と技術規則の変更が承 認され、FIA世界ラリー選手権(WRC)では、 今後のラリーの方向性を評価するワーキン ググループ創設の発表を受けて、その進捗 内容が明らかにされた。その内容は、これ までのピレリに代わり2025年からハンコッ クを公式タイヤサプライヤーとすることや、 日曜の競争力を高めるために選手権ポイン トを付与する新たなフォーマットの原則が 承認されるなど、WRCに大きな変更が予想 されるものだった。
3月下旬に日本初上陸を果たすFIAフォー ミュラE世界選手権は、2026年のシーズン 13に向けた議論がなされ、第4世代となる GEN4シャシーのサプライヤーがスパーク・ レーシング・テクノロジーとなり、パワーユ
ニットはポディウム・アドバンスト・テクノ ロジーズが受け持つことが承認された。ま た、フロント部の駆動ユニットはマレリが供 給し、そして何と、タイヤはブリヂストンが 供給することが明らかにされた。これによ り、日本のメーカーが約10年ぶりにFIA世 界選手権へ復帰することになる。
FIAドリフト委員会では、技術作業部会 によって開発された環境への影響を軽減す る騒音測定方法が承認された。また、現在 中断している世界規模のFIA公認ドリフト 競技会の復活についても、諸規則の標準化 やチャンピオンシップ付与を見据えた階層 整備などを含めた議論がなされたようだ。
そして、会期後半の12月9日にはバクー ・コンベンション・センターでFIA表彰式が 開催され、第一部としてFIA世界選手権、 第二部としてFIA選手権のサーキットおよ びラリー競技の賞典授与式が行われた。
マックス・フェルスタッペン選手やレッド ブル・レーシングの圧倒的な速さと強さが
年間19勝を挙げF1の3連覇を果たしたマックス・フェルス タッペン選手とFIAモハメド・ベン・スレイエム会長。
一層際立ったシーズンだったが、一方で、 FIA世界耐久選手権(WEC)とWRC、FIA世 界ラリーレイド選手権(W2RC)では、それ ぞれのドライバータイトルと共にマニュファ クチャラーズでもTOYOTA GAZOO Raci ng勢が3種目を制覇。WEC表彰で登壇した 小林可夢偉監督兼ドライバーと中嶋一貴 TGR-E副会長、そしてドライバータイトル を獲得してF1への道をも掴んだ平川亮選手 からは大きな笑みがこぼれていた。
2023年のTOYOTA.GAZOO.Racing勢は、FIA世界耐久選手権(WEC)とFIA世界ラリー選手権(WRC)、そしてFIA世界ラリーレイド選手権 (W2RC)におけるマニュファクチャラーズタイトル三冠を達成。それぞれドライバータイトルも獲得して、2022年に続いて世界選手権を席巻した。
サーキット&ラリーのFIA選手権表彰式では、 JAF表彰式の翌日に最終戦を終えたフォーミュ ラ・リージョナルのチャンピオン、小川颯太選手 が出席。ロバート・リードFIAスポーツ副会長か ら、FRECAとFRMEを制したキミ・アントネッリ 選手らと共に賞典が授与された。
「JAFカップ」D1グランプリがお台場で初開催! 単走は藤野秀之選手、追走は松山北斗選手が優勝
JAF準国内競技であるD1グランプリシ リーズの2023年最終大会となる第9戦と第 10戦が東京・お台場で開催され、最終戦の 第10戦に「JAFカップ」のタイトルが付与 されることになった。第10戦の単走は、 ウェットからドライ路面に変化する状況に よりグループごとの出走となり、98.46点を 獲得した藤野秀之選手が優勝。シリーズタ イトルも決めた。続く追走では、藤野選手 がベスト8進出でシリーズ王者を確定。そ のままトーナメント決勝まで勝ち上がり、 松山北斗選手との対戦となった。追走では 松山選手が藤野選手を下して優勝。単走優 勝の藤野選手と追走優勝の松山選手に対 してJAFカップが授与された。
e当日の表彰式ではFIA.Drifting.Commissionの村田浩一プレジデントから藤野選手と松山選手に JAFカップを贈呈。この最終戦を制した二人は11月24日のJAF表彰式にも招待された。
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3年目の「ドライバー・オブ・ザ・イヤー」、2023年は山野哲也選手に 11月24日のJAFモータースポーツ表彰式にてスポーツ庁・室伏広治長官が発表! PHOTO/宇留野潤[Jun.URUNO]、遠藤樹弥[Tatsuya.ENDOU]、佐藤靖彦[Yasuhiko.SATOU] REPORT/JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]
ライバー・オブ・ザ・イヤーは、 モータースポーツの認知度向上 のために2021年から設けられ た顕彰で、2021年は、旧JAFモータースポ ーツ振興委員会がノミネートした候補者か ら投票で佐藤琢磨選手が選ばれ、JAFモータ ースポーツ表彰式で授与式典が行われた。2 年目の2022年は野尻智紀選手が選出。東 京オートサロンが開催された幕張メッセに て発表と授与式典が開催されている。
3年目の今回は、JAFモータースポーツ未 来委員会とモータースポーツ振興小委員会、 プロフェッショナルモータースポーツ小委員 会などによる投票が一次選考として行われ、 これら得票数上位選手を対象とした一般投 票で最終選考する方式となった。
この一次選考の結果、勝田貴元選手と角 田裕毅選手、平川亮選手、宮田莉朋選手、
山野哲也選手の5名がノミネートされた。
10月18日からはWEBフォームやX(旧 Twitter)、LINEによる一般投票が始まり、10 月29日のスーパーフォーミュラ最終戦JAF グランプリの会場では中間発表が行われ、 この時点の最多票は角田裕毅選手が獲得し た。一般投票は11月12日で締め切られ、 結果発表は11月24日のJAFモータースポ ーツ表彰式で行われる日程となった。
JAFモータースポーツ表彰式では、冒頭 に発表・授与式典を設定。登壇したスポー ツ庁の室伏広治長官が読み上げたのは山野 哲也選手の名前だった。中間発表後に票を 伸ばした山野選手は合計2万6602票の中 から最多票を獲得して、ドライバー・オブ・ ザ・イヤー2023に輝いた。
Headl 2021年から始まったドライバー・オブ・ザ・イヤー。 2021年の初代受賞者は佐藤琢磨選手で、2022年は 野尻智紀選手が受賞。2022年は東京オートサロン 2023会場にて発表・授与式典が行われた。
「とても信じられなくて、今でも何かの間 違いじゃないかと思っています。選出され た5名のうち、若いドライバーが4人、そし て58歳が一人。世界を戦うドライバーに混 じって自分がノミネートされたことも不思議
だし、同時に光栄で嬉しかったです。一票 一票を投じてくれたファンの皆さんに感謝し ます……という言葉以外に見つかりません。 自分はこれまで『二つのこと』をやろうと決 めて活動してきました。一つは、レースは 環境によって自分が不利になることがありま すが、それでも言い訳せずに、その一瞬一 瞬でクルマの性能を出し切ること。二つ目
2023年の授与式典には、投票者の中から抽選で選ば れた2名がご招待。山野哲也選手からは全日本ジム カーナPE1とスーパー耐久ST-5のチャンピオン獲得 を記念したTシャツが贈呈された。
は、サーキットには必ず誰かを応援しに来 てくれた人がいますから、それが例え一人 でも『今日は来て良かった。また来たい』と 思ってくれるような環境を、自分から作るこ と。この二つです。それがもし今回の投票 結果に現れたとするならば、これからもこ のスタンスで活動に臨みます」。
授賞の喜びをこう語る山野選手。全日本 GT選手権で2度のチャンピオンに輝き、全 日本ジムカーナ選手権では23回目の王座を 獲得する山野選手は、今季はスーパー耐久 ST-5でもタイトルを獲得し、カテゴリーを 問わず高い領域で活躍し続けている。一方 で、インストラクターとして、長きに渡って グラスルーツモータースポーツへの関わり も深いだけに、今回の投票は、観る人だけ ではなく、ともに走ってきた人々からも高い 支持を集めた結果だと言えるだろう。
一般社団法人日本eモータースポーツ機構、新リーグ「UNIZONE」を発表 12月16日、JAF公認eモータースポーツ“公式リーグ構想”がついに動き出した! PHOTO/遠藤樹弥[Tatsuya.ENDOU]、大野洋介[Yousuke.OHNO] REPORT/JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]
ータースポーツを種目とするe スポーツ(以下「eモータースポ ーツ」という)の健全な発展を図 るため、JAFは11月22日に「JAF公認eモ ータースポーツ国内リーグ競技規定」を制定 した。この規定では「eモータースポーツ国 内リーグ」と「リーグ競技」が定義され、国内 リーグとしてはJAFが定める期間において 1団体が選定される内容となっている。
12月16日、東京都内において、一般社団 法人日本eモータースポーツ機構(JeMO)が 設立したeモータースポーツリーグブラン ド「UNIZONE(ユニゾーン)」の発表会が行 われた。このJeMOは、JAF公認eモータ ースポーツ国内リーグに選定された第1号 団体で、「ファン・ドライバー・関係者が一 体となり、クルマ・ゲーム・社会の新しい領 域に挑戦する」という想いを込めたこの新リ ーグを6月に立ち上げている。
ユニゾーンは、eモータースポーツとして のエコシステムやヒエラルキーを構築して 新たなスポーツ文化を創造するだけではな く、従来のファンより幅広い層を魅了・獲 得することで、クルマの素晴らしさや楽し さを伝え、未来のモビリティ発展に向けた
左から日本レースプロモーションの上野禎久氏、日本 eモータースポーツ機構の出井宏明代表理事、日本自 動車連盟の島雅之専務理事。リアルとバーチャルの融 合を目指す。
eプラットフォーム構築を目指している。
コンセプトには「The Game Changer、 Heat on Future、Over the REAL」を掲げ、 デジタルが生み出すパッションにより、モ ビリティと共生する未来社会の実現に向け た課題解決に取り組むことや、国内トップ クラスのリアルプロレーサーとトップeプ レイヤーによるハイレベルな争いを、速さ だけではない新たなプラットフォームを創 造して新たな未来を提供。そして、新たな 観戦方法や楽しみ方など、リアル志向のプ ラットフォームを使用しつつ、リアル観戦 以上の高揚体験の提供を追求することなど、 リアルとバーチャルの融合をテーマとして、 持続可能なモータースポーツの発展に寄与 することを狙いとしている。
発表会では、JeMOの出井宏明代表理事 が概要説明、JAF島雅之専務理事が公認の 経緯を発表。名古屋王者(OJA)の片桐正大 代表、日本レースプロモーションの上野禎
発表会ではプロeスポーツチームを運営する名古屋王者 (OJA)の片桐正大代表とJRP上野禎久代表、オートバック スセブンの幅田智仁氏を招いたトークセッションを実施。
久代表、オートバックスセブンの幅田智仁 氏を招いたトークセッションも行われた。
この新リーグでは、リアルレーサー枠と eレーサー枠、ユニバーサル枠の3枠1名以 上を選出し、1対1のマッチレース、スプリ ントレース、セミ耐久レースで競われる予 定で、競技プラットフォームはレーシング シミュレーターとして馴染みが深いiRaci ng(アイレーシング)、そしてAssetto Corsa(アセットコルサ)を使用する予定だ。
ユニゾーンは、2024年にパートナー企業 や大規模外部イベントとの協業によるエキ シビション大会を年複数回開催する予定で、 その第一弾として、2月25日には「グンマe スポーツアワード」会場においてスーパーフ ォーミュラとコラボレーションしたオフラ インイベントが行われる。そして、公式リ ーグ戦は、1年を2シーズンに分割して各3 ~4戦を展開することとなっており、2025 年のスタートを目指しているという。
リアルレーサー枠とeレーサー枠、ユニバーサル枠で選ば れた3人1組の参加を想定する同リーグ。発表会ではショー ケースとして現役選手によるチーム対抗戦が披露された。
4 F1第17戦日本GPは、マックス・フェルスタッペン選手が完全勝利!
6 エルフィン・エバンス選手が雪辱を果たしTGR-WRTが表彰台を独占!
8 2023年最後のWMSCとFIA表彰式がアゼルバイジャンで開催
10 3年目の「ドライバー・オブ・ザ・イヤー」、2023年は山野哲也選手に
11 一般社団法人日本eモータースポーツ機構、新リーグ「UNIZONE」を発表 SPECIAL ISSUE
14 覇者の栄冠 2023年JAFモータースポーツ表彰式
20 声援を、胸に
地鳴りのような熱い応援が支えた角田裕毅選手の凱旋レース・鈴鹿
24 示した実力 勝田貴元選手が“スピード”で席巻! “強さ”をも手に入れた覚醒の最終戦 Victory Road ~栄光に向かって~
28 Part.1 全日本スーパーフォーミュラ選手権
36 Part.2 全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権
38 Part.3 FIAインターナショナルシリーズ スーパーGT GT500クラス/GT300クラス
44 Part.4 全日本カート選手権 OK部門/FS-125CIK部門/EV部門/FS-125JAF部門/FP-3部門
53 夢を諦めない
FIA世界耐久選手権で活躍する、チャンスを掴んだ女性たち。その臥薪嘗胆な道のりとは? TOPICS
60 “史上初”を見逃すな! 「フォーミュラE東京大会」決勝レースは3月30日(土)!! 着々と進む “日本初の市街地レース世界選手権”の準備状況
62 新イベント「ドリフトテスト」初開催
未経験者も初心者も大歓迎! マイカーで走って学べる競技会
64 競技ベース車の“新常識”!?
進化する“4駆ターボ”の系譜に8速AT車が追加! “MTと同等に戦えるAT”登場で新時代到来か!?
INFORMATION
34 INFORMATION from JAF モータースポーツ公示・JAFからのお知らせ(WEB)一覧(2023年9月27日~2023年12月21日)
52 JAFモータースポーツサイトのススメ
JAF MOTOR SPORTS JAFスポーツ[モータースポーツ情報] 監修/一般社団法人 日本自動車連盟 〒105-0012 東京都港区芝大門1-1-30 ☎0570-00-2811(ナビダイヤル) 発行所/株式会社JAFメディアワークス 〒105-0012 東京都港区芝大門1-9-9 野村不動産芝大門ビル10F ☎03-5470-1711(代) 発行人/日野眞吾 振替(東京)00100-88320 印刷所/凸版印刷株式会社 編集長/佐藤 均[Hitoshi SATOU, editor-in-chief]、 清水健史[Kenji SHIMIZU]、大司一輝[Kazuki TAISHI] デザイン/鎌田僚デザイン室 編集/株式会社JAFメディアワークス JAFモータースポーツチーム(JAFスポーツ) ☎03-5470-1712 本誌の記事内容は2023年12月21日までの情報を基にしております。
また、社会情勢等によって、掲載した情報内容に変更が生じる可能性がございます。予めご了承ください。 広告出稿のお問い合わせは☎03-5470-1711(営業部) COVER/左:2023年FIAフォーミュラ1世界選手権 第17戦 PHOTO/吉見幸夫[Yukio YOSHIMI] 右:2023年FIA世界ラリー選手権 第13戦 PHOTO/小竹 充[Mitsuru KOTAKE]
JAF MOTOR SPORTS AWARD 2023 覇者の栄冠 2023年JAFモータースポーツ表彰式 開催日:2023年11月24日 開催地:グランドニッコー東京 台場 パレロワイヤル(東京都港区) 2023年の国内モータースポーツを締めくくる「JAFモータースポーツ表彰式」が開催された。
全カテゴリー合わせて280名を超える個人および団体の表彰対象者が招待され、 シリーズ成績の認定および各種賞典の贈呈が厳かに行われた。
日本選手権やFIAシリーズなど、 国内四輪モータースポーツで優 秀な成績を収めた選手やチーム を表彰する「2023年JAFモータースポーツ 表彰式」が、一般社団法人日本自動車連盟 の主催で東京都内のグランドニッコー東京 台場にて華々しく執り行われた。
ここ数年はコロナ禍の影響で非対面や参 加人数を制限する措置が採られてきたが、 今回は従来の形式を取り戻し、多数の競技 関係者も招いて盛大に行われた。また、 2023年はJAFが創立60周年を迎えてお り、歴史を振り返る映像の上映も行われた。
JAF坂口正芳会長による挨拶で式典が開 幕すると、ドライバー・オブ・ザ・イヤー 2023、JAFモータースポーツ名誉委員長お よび名誉委員の称号、JAFモータースポー ツ特別賞の贈呈が行われる。続いてJAF蓮 華一己副会長の乾杯の音頭で会食が始ま り、JAFカップオールジャパンドリフト、 JAFカップオールジャパンジムカーナ、JAF カップオールジャパンダートトライアルの 優勝者が表彰された。また全日本学生自動 車連盟による年間総合表彰もあり、JAF全 日本学生モータースポーツ顕彰も贈られた。
そしてFIA F4地方選手権、全日本ジム
カーナ選手権、全日本ダートトライアル選 手権、全日本ラリー選手権、全日本カート 選手権、全日本スーパーフォーミュラ・ラ イツ選手権、FIAインターナショナルシリー ズ スーパーGT、全日本スーパーフォーミ ュラ選手権の表彰では、まず先に2~6位 の選手に賞典が授与され、その後に各部門 のチャンピオンを称える形式を採用。“トッ プを光らせる”演出がなされた。
競技会場で見かけるレーシングスーツと は違う盛装をまとった表彰対象者たちは、1 年間を戦ったライバルたちとともに、とて も晴れやかな表情で式典に臨んでいた。
「JAFモータースポーツ名誉委員長」の称号の贈呈
モータースポーツの発展へ貢献が著しい個人に贈られる「JAF モータースポーツ名誉委員」の称号には、新たに名誉委員長の称号が 新設され、スポーツ委員会委員、ラリー小委員会委員長、モータース ポーツ評議会委員、スピード行事第1種部会長、全日本ラリー選手権 審査委員を歴任し、近年は名誉委員候補者および特別表彰候補者選 考委員会で活躍されている多賀弘明氏が選出された。プレゼンター のJAF坂口正芳会長より称号と賞典が授与された。
「JAFモータースポーツ特別賞」の贈呈
その年のモータースポーツ界に多大な貢献をされた団体や個人に贈ら れる「JAFモータースポーツ特別賞」。2023年FIA世界耐久選手権ハイ パーカー、2023年FIA世界ラリー選手権、2023年世界ラリーレイド選 手権においてマニュファクチャラーズチャンピオンを獲得したTOYOTA. GAZOO.Racingと、2023年FIAフォーミュラE世界選手権第14戦で2 位入賞を果たした日産フォーミュラEチームの2団体に贈られた。
名誉委員の称号は以下の3名に贈呈された。カート部会副部会長 および部会長、モータースポーツ審議会委員、カート部会委員、全日 本/ジュニアカート選手権審査委員およびグループリーダーを歴任 し、近年は名誉委員候補者および特別表彰候補者選考委員会で活躍 されている饗庭喜昭氏。登録小委員会委員、スピード行事第2種部 会委員、スピード行事部会委員、全日本ジムカーナ/ダートトライア ル選手権審査委員およびグループリーダー、スピード行事部会部会 長、モータースポーツ審議会委員、安全部会委員、JMRC全国評議会 の委員長を歴任し、JAF加盟クラブのモータースポーティングクラブ ラスカルの代表としてスピード競技における数々の全日本選手権大 会を主催した故・中村善浩氏。全日本ラリー選手権審査委員グルー プ委員、ラリー部会部会長、 モータースポーツ審議会委 員、全日本ラリー選手権審査 委員グループリーダーを歴任 し、JAF加盟クラブのグラベ ルモータースポーツクラブの 代表として数々のラリー競技 における日本選手権大会を主 催した故・七田定明氏。
個人では2023年FIA世界耐久選手権ハイパーカードライバーチャンピ オンの平川亮選手、2023年FIA世界耐久選手権ハイパーカーの複数大会 で優勝して優秀な成績を収めた小林可夢偉選手、2023年FIA世界ラリー 選手権で優秀な成績を収めた勝田貴元選手、JAF全日本ラリー選手権ドラ イバー部門で10年連続チャンピオンを獲得した天野智之選手の4名に贈 呈。またモータースポーツジャーナリストとして40年に渡りモータース ポーツの振興や広報活動に貢献した高橋二朗氏や、全日本カート選手権 OK部門を始め国内最高峰競技会にチームとして参加してモータースポー ツの振興ならびに若手選手の育成に貢献した高木虎之介氏にも贈られた。
PHOTO/雨田芳明[Yoshiaki.AMADA]、宇留野潤[Jun.URUNO]、遠藤樹弥[Tatsuya.ENDOU]、大野洋介[Yousuke.OHNO]、 関根健司[Kenji.SEKINE]、長谷川拓司[Takuji.HASAGAWA]、森山良雄[Yoshio.MORIYAMA]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS] REPORT/JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]
OK部門 藤井翔大選手
FS-125CIK部門 鈴木恵武選手 (欠席)
全日本カート選手権
EV部門 翁長実希選手
JAFカップオールジャパンドリフト
単走優勝 藤野秀之選手 (代理)
FS-125JAF部門 佐藤佑月樹選手
FP-3部門 酒井龍太郎選手
JAFカップオールジャパンジムカーナ
JAFカップオールジャパンダートトライアル
JAFカップオールジャパンジムカーナ優勝の皆さん。P AE1クラス大 橋政哉選手、PN1クラス福田大輔選手、PN2クラス大江光輝選手、PN3 クラス大多和健人選手、PN4クラス大脇理選手、B・SC1クラス清水 翔太選手、B SC2クラス藤原広紫選手、B SC3クラス佐藤英樹選手。
JAFカップオールジャパンダートトライアル優勝の皆さん。P・PN・AE1クラス葛西キャサリン伸彦 選手、PN1クラス徳山優斗選手、PN2クラス鶴岡義広選手、PN3クラスKANTA選手、Nクラス宝田ケン シロー選手、SA SAX1クラス志村雅紀選手(欠席)、SA SAX2クラス浜孝佳選手、SC1クラス山崎迅 人選手、SC2クラス大西康弘選手、Dクラス田口勝彦選手、クラスWomen葛西芙美恵選手。
表彰式の会場はベイエリアを一望できる グランドニッコー東京 台場だ。
表彰式の冒頭では主催者挨拶としてJAF 坂口正芳会長が祝辞を述べた。
全日本学生自動車連盟の年間総合表彰が行われ、男子団体の部は 慶應義塾大学、女子団体の部は関西学院大学に年間総合杯が授与 された。またJAF全日本学生モータースポーツ顕彰も贈られた。
会場内には競技車両の実車が展示され、 式典を華やかに彩っていた。
2023年は正餐形式で行われ、飲食を楽し みながら表彰式に臨めた。
司会進行はレース実況アナウンサーのピ エール北川氏と稲野一美氏のコンビ。
JAF蓮華一己副会長による乾杯の音頭。 食事が始まり和やかな雰囲気に。
式典最後の挨拶はJAF四宮慶太郎副会 長。賛辞の言葉で表彰式を締めた。
2023年で創立60周年を迎え、JAFのモー タースポーツの歩みの映像を上映。
ドライバー・オブ・ザ・イヤーの表彰 2021年より始まったJAFの新しい顕彰で、 その年にもっとも輝いたモータースポーツド ライバーに贈られる「ドライバー・オブ・ザ・ イヤー」。JAFモータースポーツ未来委員会、 モータースポーツ振興小委員会、プロフェッ ショナルモータースポーツ小委員会、メディ アによる投票で上位獲得票数の候補者を選 出。その候補者の中からさらに一般投票が行 われ、山野哲也選手が最多票を獲得した。今 回の表彰式では、冒頭にドライバー・オブ・ ザ・イヤー2023の発表と授与式典が行われ、 スポーツ庁の室伏広治長官が山野選手の名前 を発表。クリスタルが贈呈された。
クラス6ドライバー 天野智之選手
10年連続15回目
クラス6コ・ドライバー 井上裕紀子選手
14年連続16回目
クラス5ドライバー 松倉拓郎選手 初タイトル
クラス4ドライバー 内藤学武選手 初タイトル
クラス5コ・ドライバー 豊田耕司選手
2019年以来2回目
クラス3ドライバー 山本悠太選手
2019年以来2回目
クラス4コ・ドライバー 大高徹也選手 初タイトル
クラス2ドライバー 奴田原文雄選手
2014年以来11回目
クラス1ドライバー ヘイキ・コバライネン選手
3年連続3回目 (代理)
クラス3コ・ドライバー 立久井和子選手 初タイトル
全日本ジムカーナ選手権
クラス2コ・ドライバー 東駿吾選手 初タイトル
クラス1コ・ドライバー 北川紗衣選手
3年連続4回目
本人唯一のF1ドライバーとして、スクーデ リア・アルファタウリF1チームで活躍する 角田裕毅選手。2023年シーズンは、車両の 性能を最大限引き出し、何度も入賞争いを披露した。中 盤戦では苦しむ場面もあったが、第13戦ベルギーGP では8戦ぶりのポイント獲得を果たした。 しかし、F1はそう簡単に流れが自分には向かない競 技で、角田選手にとって9月は試練の月となった。 シーズン途中からチームメイトとして加わったダニ エル・リカルド選手が、サマーブレイク明けに行われ た第14戦オランダGPのプラクティスでクラッシュに より左手を骨折。しばらくの間、戦線離脱を余儀なく されたのだ。その代役で白羽の矢が立ったのが、今季 スーパーフォーミュラで3勝を挙げ、ルーキー・オブ・ ザ・イヤーを獲得したリアム・ローソン選手だった。
日本のレースでは順応性が高いと言われていた彼 は、F1でもその才能を発揮。参戦2戦目の第15戦イ タリアGPで11位に入ると、第16戦シンガポール GPでは9位でポイントを獲得。瞬く間に「来季はロ ーソンがアルファタウリのシートを獲得するのではな いか」といった噂が飛び交うほどの活躍を見せたのだ。
対する角田選手は、速さを見せるものの結果には繋 がらない状況。イタリアGPでは予選で好位置につけ るも、車両トラブルでスタートできずに戦線離脱。マ シンを大幅アップデートして臨んだシンガポールGP も、ポイント獲得が予想されていた中で、レッドブル のセルジオ・ペレス選手に接触されてリタイアを喫し た。それを横目に成績を残していくローソン選手。来 季の去就に注目が集まる中で、角田選手は2度目とな る鈴鹿サーキットでの母国凱旋レースを迎えた。
2024年の継続参戦をポディウムで報告
2023年の日本グランプリは、水曜に東京都内でプ レイベントが開催されるなど、例年以上の盛り上がり をみせた。木曜には各選手が鈴鹿に入って準備が本格 化する。この日のプレスカンファレンスで角田選手を 待っていたのは、各国メディアからの来季に関する質 問の嵐。いつも以上に言葉を選びながら慎重に回答 し、国内メディア向けの囲み取材でも、いつもよりピ リピリした様子が感じ取れた。角田選手にとって、悩 みの種が多い中でレースウィークが始まっていた。
それでも、角田選手の活躍をナマで観たいと駆けつ けた日本のファンにより、周辺の駅や道路が初日から 混雑する盛況ぶり。天気に恵まれたこともあって、金 曜から4万2000人が来場した。角田選手がコースイ ンするたびに毎回拍手と歓声が沸き起こり、角田選手 への期待と注目度の高さがうかがえた金曜となった。 しかし、ダウンフォースを必要とする鈴鹿ではなか なか速さを見出せず、2回目のプラクティスは18番手 に終わる。セッション後の角田選手も深刻そうな表情 を見せ、今回は苦しい展開になるのでは? という雰
囲気が漂っていた。ただ、去就の件については、走行 2回目を終えて、忙しい夜を迎えることになった。
パドックでは来季のアルファタウリのシートが決ま ったという噂が流れ、角田選手もマネージャーらとミ ーティングを繰り返す姿が目撃された。観客の期待と 不安が入り混じる中で迎えた土曜の朝。日本時間の午 前9時にプレスリリースが出され、角田選手の2024 年の継続参戦が明らかにされた。3回目のプラクティ ス前には角田選手がポディウムに登場し、ファンに対 して生報告するサプライズもあった。そして、金曜の 反省を踏まえて車両には改善が施され、新品タイヤで のアタック中、他車に引っかかり、タイムこそ残らな かったが、取り戻した速さに手応えを掴んでいた。
母国グランプリでQ3進出を果たす
迎えた土曜の予選。角田選手はQ3進出を目指し て、最初のセッションから積極的にソフトタイヤを投 入していく。序盤にウィリアムズのローガン・サージ ェント選手がクラッシュした影響で赤旗中断となった が、角田選手はその前に1回目のアタックを終えてお り、再開後にはそのタイムを更新して1分31秒311 を記録。トップ10圏内につけていた。
最後のアタックでは各車がタイムを塗り替える中 で、一時は16番手まで下がったものの、角田選手は 3回目のアタックを敢行して1分30秒733を記録。8 番手でQ2進出を果たした。
続くQ2でも積極的にアタックを慣行する角田選手。 観客の声援を力に変え、さらにタイムを削っていく。1 回目のアタックでは1分30秒353。一時は3番手につ けたことから、グランドスタンドからはどよめきが起 きた。ただ、今回のQ2はかなり接戦となり、最後の アタックではライバルたちが角田選手のタイムを次々 と塗り替える。角田選手も自己ベストを更新するべく 攻めきって1分30秒204を叩き出した。これで7番 手を確定させ、母国グランプリでQ3への進出を果た す。鈴鹿は、この週末一番の盛り上がりをみせた。
Q1とQ2で新品タイヤを使い込んだ分、Q3では持 ちタイヤがない劣勢だったが、角田選手は一つでも前 のグリッドを獲得するべく渾身のアタックを披露。Q3 では1分30秒303を計測して9番手となった。 「ファンの方々の応援がすごくて、Q3へ進むにつれ て、声援がどんどん大きくなっていったことを感じま
した。特にQ2後のインラップで、お客さんが拍手し てくれたり旗を振ってくれている姿が見えて、すごく 感動しました。鈴鹿は僕の大好きなコースで、最大限 のグリップを出して楽しく走れたのが良かったです」 と予選の走りを振り返った角田選手。やはり予選の前 に契約更新を発表できたことも、予選セッションでの 躍進に繋がった要因の一つだったと言えそうだ。 「気にするべきことがなくなりましたし、日本のファ ンの皆さんの前で発表できたのは初だと思うので、そ こは良かったです。あとはホンダさんとレッドブルに 感謝です。決勝はタイヤ戦略が忙しくなると思います。 コミュニケーションが重要だと思うので、意識しなが らいきたいです。もちろんポイントを目指して走りま すが、今日はものすごく楽しめて走れたので、明日も
楽しむことを忘れずに、ファンの皆さんと楽しむ気持 ちを共有しながら走りたいと思います」とは角田選手。
苦戦を強いられた鈴鹿の決勝レース
決勝レースの日曜日。鈴鹿には10万1000人もの ファンが集まった。例年より気温の高い天候で始まっ た決勝レースは、9番グリッドの角田選手はソフトタ イヤでスタート。1周目にポジションを落とすものの、 序盤は力強い走りでポイント圏内での争いを見せた。
9周目、1回目のピットストップでミディアムタイ ヤに交換した角田選手。ライバルよりも長めの第2ス ティントをとる選択による上位進出を図った形だが、
鈴鹿の週末では、予選の前に2024年の継続参戦が発表 され、レースに集中できる環境が整った角田選手。予選 ではQ3進出で9番グリッドを獲得するも、決勝では苦し い展開を強いられ、母国グランプリを12位で終えた。
ペースが伸びずに苦戦する。それでも30周目にはア ストンマーティンのフェルナンド・アロンソ選手と激 しい9番手争いを展開。最終的に先行を許すが、気合 いの走りにスタンドのファンも自然と力が入っている 様子だった。その直後に2回目のピットストップを終 えた角田選手は12番手で復帰。目の前には僚友のロ ーソン選手がいる状況となった。
何とか彼を抜いてポイント圏内に戻りたいところだ ったが、なかなか突破口を見出せず再び苦戦。残り 10周では常に1秒以内の差でバトルを繰り広げたが、 逆転することはできずにレース終了となった。
結局、角田選手はスタートから3ポジションを落と して12位でフィニッシュ。前回以上に悔しい表情を 見せていたが、2度目の母国グランプリでは、予選で のQ3進出など、存分に見せ場を作ってくれた。
「1スティント目のソフトタイヤはそんなに悪くなか ったんですが、ピットに入らなくちゃいけなかった。
2スティント目のミディアムも引っ張りすぎたなと思 います。その後はハードタイヤでいかなくちゃいけな かったので、メリハリがないストラテジーでした。今 回はハードを2セット持っていなかったことも響きま した。ここまでデグラデーションが大きくなるとは思 っていなかったので、そこは予想ミスでした。それで も、ファンの声援は本当に特別でした。今回は予選や 決勝ではエネルギーをもらいましたし、皆さんの歓声 も、二度と忘れることのない鈴鹿での一戦でした」。 アブダビは集大成とも言えるレースに
鈴鹿では惜敗を喫した角田選手だったが、それ以降 のグランプリでも一進一退の戦いを繰り広げながら、 上位を目指したアツい戦いを展開した。
第18戦カタールGPでは、Q3にあと一歩という11 番グリッドを獲得したものの、スプリント予選ではQ1 でトラックリミットにより後方に沈んでしまう。それ でもスプリント決勝では着々と順位を上げて、最終的
に11位を獲得。日曜の決勝レースは15位に終わる も、続く第19戦アメリカGPでは予選11番手から入 賞圏内に進んで10位でフィニッシュ。その後、2台の 失格があり、最終的に8位に繰り上がった。この大会 ではファステストラップも獲得しており、中嶋悟選手 と小林可夢偉選手に次いで3人目となる快挙を遂げた。 続く南米2連戦も一喜一憂の展開が続く。第20戦 メキシコGPでは、パワーユニットとギヤボックス交 換によるグリッド降格が決まっており、決勝を意識し た週末の組み立てとなった。スタートから順調にポジ ションを上げ、レース後半には8番手に浮上するが、 ピアストリ選手との7番手争いで接触を喫して後退。 最終的に12位でレースを終えた。悔しい結果ではあ るものの、ペースの良さがうかがえた一戦となった。 それが活きたのが第21戦ブラジルGPだ。土曜の スプリントレースで6位に入ると、決勝レースでは16 番グリッドから着実にポジションを上げて9位フィニ ッシュ。「信頼性の問題に対処しており、本来ならも っと良い結果が出せた」と語る角田選手だが、前半戦 に見られなかった力強さがこの大会でも発揮された。
そして、シリーズ最終戦の第22戦アブダビGPで は、これまでの集大成とも言える走りを見せた。
予選で今季ベストの6番手を獲得した角田選手は、 レース序盤から上位争いを展開していく。さらにチー ムと共に1ストップ作戦を試みると、レース中盤には 5周に渡って角田選手がラップリーダーとして走行。 日本人としては久々となる快挙を成し遂げている。
声援を しかし、やはり1ストップということで、ペースコ ントロールをしながらの走りは、グリッド順より後退 したレースになってしまう。それでも終盤にはメルセ デスのルイス・ハミルトン選手を相手に一歩も譲らな い好バトルを披露。8位でチェッカーを受けると共に、 ファン投票によって決まる「ドライバー・オブ・ザ・デ イ」に選出され、存在感のあるレースを見せた。
「一時は6位以内でフィニッシュできると考えていま したが叶いませんでした。ステイアウトして1ストッ プ作戦を試したことに悔いはありません。全力を尽く したので満足しています」と角田選手は前を向いた。
このレースをもって、アルファタウリを長年率いて きたフランツ・トスト氏が勇退したが、「この3年間 を楽しく過ごせた分、彼がいなくなると間違いなく寂 しくなると思います。彼のアドバイスがなかったら、 僕のF1キャリアはこれほど進歩することはできなか ったでしょう。彼に感謝しています」と語った。
こうして角田選手の2023年は17ポイントを獲得 し、ドライバーズランキングは14位で終了した。さ らに最終戦におけるポイント獲得などの活躍もあり、 コンストラクターズ8位にも貢献する闘いぶりを見せ た。FIAが12月15日に公開した2024年のエントリー リストには「スクーデリア・アルファタウリRB」という チーム名が明らかにされている。4年目を迎える角田裕 毅選手は、まさに正念場を迎えることになりそうだ。
金曜の昼、手負いのマシンを豊田スタジアムのサービスに持ち帰った勝田貴元選手。 「ここに遊びに来たわけではないので」と語り、巻き返しを図る強い意志を示した。
大勢の観客が固唾をのむ中 で、SS2でクラッシュしたマシ ンの修復が始まったサービス パーク。そして、ポテンシャル を取り戻したGRヤリスを武器 に、勝田貴元選手は午後の ループから怒涛の連続ベスト を叩き出した。
愛 知県と岐阜県を舞台に11月16~19日、FIA 世界ラリー選手権(WRC)第13戦「フォー ラムエイト・ラリージャパン」が開催され、 2023シーズンを締めくくるこの日本ラウンドに、日 本人ドライバー勝田貴元選手が参戦した。
TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプロ グラムの一期生である勝田貴元選手は、今大会はマニ ュファクチャラー登録を外れ、カッレ・ロバンペラ選 手とエルフィン・エバンス選手、セバスチャン・オジ エ選手に次ぐ4台目のGR YARIS Rally1 HYBRIDに 搭乗した。
12年ぶりに復活した2022年のラリージャパン。 山岳エリアのターマックステージは道幅が狭く、ツイ スティなコーナーが連続する一方で、道幅の広い中高 速コーナーが続くセクションもあることから、スピー ドとリズムの変化が重要となるラリーとしてその名を 世界に広めた。2023年大会は走行ステージこそ前回 を踏襲するも、豊田スタジアムにはスーパーSSを新 設、岡崎市と中津川市には「タイヤフィッティングゾ ーン」を導入してフォーマットも洗練されていた。
ただし、開催時期が前回より1週間遅くなったこと で、本格的な冬を迎えた愛知・岐阜エリアの山岳地で は多くの落葉が路面を覆い、金曜は降雨、土曜と日曜 にかけて降雹、降雪にも見舞われた。そのため、百戦 錬磨の強者にとってもグリップレベルの確保が難しい 路面が次々と訪れる、難易度の高いラリーになった。 持ち込みセットを見直して好感触
2022年の大会は、TOYOTA GAZOO Racing WRTにとってホームイベントでの躍進を目論んでい たが、ワークスメンバーは総崩れ。その一方で、勝田 貴元選手がTGR勢最上位の3位を獲得し、母国ラリー でポディウムフィニッシュを成し遂げたことは記憶に 新しい。そんな勝田貴元選手は、2023年の大会でさら なる飛躍を果たすべく、木曜に行われた鞍ヶ池公園で のシェイクダウンでマシンの最終調整を行っていた。 「同じターマックでも前戦のセントラルヨーロッパと はタイプが異なるので、今回の持ち込みセットアップ は2022年の大会をベースにしていました。でも、最 初は乗り味が悪く、クネクネした道でアンダーステア を消すために、デフをオープンにしていたんですけ ど、グリップ感が得られなかったんですよね」と語る。 しかし「サービスでデフとダンパーを変更したとこ ろ、シェイクダウン2走目から方向性が見えてきまし た。3走目では、ドライでもウェットでも使えそうな デフセッティングを試したらフィーリングも良かった し、タイムも良かったので、ドライならいいパフォー マンスが発揮できそうな感じでした」と語るとおり、3 番手タイムを計測して好感触を掴んでいた。
2023年のラリージャパンは、木曜夜、豊田スタジ アムでのスタートセレモニーを経て、新設されたスー
パーSS「豊田スタジアムSSS」で幕を開けた。
「最初のスーパーSSはグリップ感が足りなくて、曲 がってませんでした。チームも全体的に厳しくて、タ イム差が付いてしまいました」とのことだが、それで も勝田貴元選手は5番手タイムを計測。TGR勢最上位 という好発進となったが、本格的なラリーが始まる金 曜に、予想外のハプニングに見舞われてしまう。
SS2「伊勢神トンネル」でクラッシュ
金曜は朝から大雨で、山岳ステージはハードウェッ トに変貌していた。オープニングのSS2「伊勢神トン ネル」を走り始めた印象について勝田貴元選手は「レッ キとはまったく違い、小さな枯葉も散乱していて、ラ インが見えない中で降った雨だったので、とても難し いコンディションでした」と振り返るが「クルマのフィ ーリングは良くて、行き過ぎたプッシュをせずにコン トロール下で『乗れているな』という感覚がありまし た。このまま行けばトップ3は入れるだろうとも思っ ていました」とも語る。しかし、スタートから約 12kmの地点で足元をすくわれることになった。 「右コーナーのブレーキングでフルロックしました。 コーナーの手前には約30mの直線があるんですが、 そのうち約10mが新しい舗装になっていて、そこだ け水が浮いてました。そこでハイドロプレーニングを 起こして、コースサイドの立木に突っ込んだんです」。
勝田貴元選手がSS2で小破させた地点は、今回の鬼 門となっていたようで、「後から出走したソルド選手 (ダニ・ソルド/HYUNDAI SHELL MOBIS WORLD RALLY TEAM)とフルモー選手(エイドリアン・フル モー/M-SPORT FORD WORLD RALLY TEAM) も同じ場所でコースアウトしていました。僕は運良く コースに留まれましたが、ラジエターを損傷したので、 その後はEVモードでの走行でした」と振り返る。SS2 は走り切れたものの、TC3遅着への1分10秒のペナル ティも相まって、総合33番手にまで後退した。
車両は「ラジエターは何とか応急処置できましたが、 足回りの損傷もあって、まっすぐ走れない状態でし た」という状況。続くSS3「稲武ダム」は、降りしきる 大雨の中、18番手のタイムで終えている。
不幸中の幸い、そして反撃開始
それでも勝田貴元選手にとってラッキーだったのは、 続くSS4「設楽タウン」がキャンセルされたことだった。
この22.53kmをスルーして豊田スタジアムにたどり 着けば40分のサービスを受けられるため、結果的に、 タイムロスを最小限に留めることができたのだ。
まさに波乱の幕開けとなったが、「賭けていたもの に比例して、残念な気持ちが大きかったんですが、自 分ができることを精一杯やろうと思いました。それ に、SS2の区間タイムを見たら、最初の10kmでトッ プタイムより”キロ1秒”以上速かったので、少し抑え てもトップタイムを出せると思いました」と前を向く。
車両修復がかなった後の金曜セカンドループでは、 その言葉どおり、勝田貴元選手の猛追が始まった。
「でも、プッシュはしていましたが、クルマはコント ロール下にあって、マージンが残るような走りでし た。クルマのフィーリングと合っていたと思います」。
午前の再走となるSS5「伊勢神トンネル」がスター ト。3台目に出走したティエリー・ヌービル選手(HY
UNDAI SHELL MOBIS WORLD RALLY TEAM) がファーストスプリットを 最速で通過したが、7台目に 出走した勝田貴元選手はヌ ービル選手より2.2秒速い タイムを叩き出す。その後 のスプリットでもマイナス 表示が続き、SS5はヌービル 選手に3.3秒、オジェ選手 には16.2秒もの差でトップ
“鬼久保”では「濡れた芝で タイヤが冷えるのを避ける ため」に名物のインカットを しなかったという勝田貴元 選手。不確定要素が多い路 面にも、諦めず正面から向き 合い、大胆かつ精緻な対応 で最速タイムを刻み続けた。
2023年FIA.WRC第13戦ラリージャパンにおける勝田貴元選手のステージ順位 リグループで談笑する選手たちを横目に、勝田貴元選 手はアーロン・ジョンストン選手と共に、午後の再走に 向けたペースノートの修正に時間を費やしていた。
タイムを計測した。そのままSS6とSS7も最速タイ ムを刻んで3連続ベストを叩き出した勝田貴元選手。
金曜最終のSS8「豊田スタジアムSSS」でも2番手タ イムを計測したことで、何と半日で総合9番手にまで 順位を戻したのである。
ベストタイム連発で怒涛の追い上げ
土曜は曇りベースで気温は低く、ドライ傾向ではあ ったが、相変わらず滑りやすい状況となった。勝田貴 元選手のデイ3の出走順は、ヌービル選手に続く2番 手に変更。やや難しい出走順ではあったが、勝田貴元 選手による異次元の追い上げは続くことになった。
SS9「額田フォレスト」では序盤から赤旗中断があ り、すでに出走していた4台にはノーショナルタイム
が与えられた。勝田貴元選手が与えられたタイムは、 オジエ選手と同秒で、ベストタイムとなった。
そして、続くSS10「レイク三河湖」とSS13「額田フ ォレスト」では自力でベストタイムを奪取して総合7 番手にアップ。SS14「レイク三河湖」でもベストタイ ムを刻んだことで総合6番手に浮上する。そして、あ る意味ホームと言えるSS15「新城シティ」でもステー ジウィン。土曜は総合6番手でフィニッシュした。
5番手のタナック選手には14.9秒の差がある状況 で迎えた最終日。勝田貴元選手はショートステージの SS17「旭高原」では2.1秒差の2番手でスタートする。
続いて、夜間の降雪の影響で路肩に薄く雪が残る恵那 ・中津川エリアに舞台を移す。勝田貴元選手はSS18 「恵那シティ」では2番手、そしてSS19「根の上高原」 では大会8回目のベストを計測。これでタナック選手 を抜いて、総合5番手に浮上してみせた。
総合4番手エサペッカ・ラッピ選手(HYUNDAI SH ELL MOBIS WORLD RALLY TEAM)との差は16.2 秒ということで「追いつきたいと思っていました」と語 るものの、SS20「恵那シティ」では失速してしまう。
「恵那での感触は1走目から良くなくて、路面の違い が大きく影響しているのかグリップ感がなくて、2走目
はペースを抑えざるを得ませんでした」と語るように、 トップから13.4秒差の4番手に留まり、ラッピ選手 とのギャップは26.6秒に拡大してしまう。それでも SS21「根の上高原」では9回目のステージウィンを獲 得して19.8秒差に詰めてみせた。しかし、最終SS22 「旭高原パワーステージ」ではラッピ選手からコンマ2 秒差の4番手フィニッシュに留まる。この結果、怒涛 の追い上げを随所で披露した勝田貴元選手だったが、 総合5位で2度目の凱旋を終えることになった。 ホームラリーだからできた快進撃
ラリージャパンでは自身の実力を示し、逆境でも前 を向く「強さ」、そして群を抜く「速さ」を見せつけた勝 田貴元選手。母国ラリーをこう振り返った。
「優勝争いをして、次の大会につなげたかったので、 残念な気持ちが大きかった」と、序盤のトラブルに悔 しさをにじませる一方で、観客に謝意を示した。 「前回以上に観客の多さや熱量の大きさを感じられま した。豊田スタジアムもそうですが、リエゾンにも多 くのファンが来てくれました。僕がSS2でラジエタ ーを破損して水を汲んでいる様子がライブ中継に映っ ていたようで、雨のなか、水を入れた大きなタンクを 持つ方々をたくさん見つけました。さすがにルールで 使えませんが、その姿を見て、本当にもう、感動した んです。そういった皆さんのおかげでプッシュできた し、何かを見せようという想いになれました。他のラ リーではそこまでのことはなかったですし、日本の皆 さんのアツさを感じました。本当に感謝です」。 「自分にできることは出し尽くしましたが、結果が重 要なので、もっと違った展開ができたのではとも思い ます。それはSS2だけではなく、例えばスーパーSS でも、ここをロスしなければラッピ選手に追いつけた のではとか、細い部分でモヤモヤ感があります。で も、ラリーを通して速さを示すことができたので、そ の部分はポジティブだったと思います。特にデイ2の 午後は、まだ全車が走っていて、ラリーが始まったば かりのタイミングでトップタイムを獲れたことには大 きな意味があります。ペース的にもコントロールしな がらのタイムだったので自信に繋がりました。これか らエンジニアと今回の走りを分析します。来年に向け て進んでいかないといけないので、モンテカルロでも 同じスピードで走れるようにしたいと思います」。
大会翌日の11月21日、勝田貴元選手はアーロン・ ジョンストン選手と共に、2024年はTOYOTA GAZ OO Racing WRTよりマニュファクチャラー登録の フル参戦を果たすことが発表された。短いシーズンオ フに入るWRCは、2024年1月25~28日に2024 シーズンが幕を開ける。そして、次なるラリージャパ ンは再びシリーズ最終戦を受け持ち、さらに1週間遅 れた、2024年11月21~24日に愛知県と岐阜県で 開催される予定となっている。
JAF全日本スーパーフォーミュラ選手権
022年の開発テストを経て、マ シンの空力パッケージがガラリ と変わった2023年の全日本ス ーパーフォーミュラ選手権。車名がSF23 と改められ、横浜ゴムが開発した新スペッ クのタイヤも投入された。このタイヤは再 生可能材料が30%ほど使用されており、 こちらも2022年の開発テストを通じて仕 上げられたものだ。
その新たな車両によるシーズンは、宮田 莉朋選手が新チャンピオンとなって幕を閉 じたが、開幕前の話題はライバルたちの存 在で、中でも2021年、2022年と2連覇を 達成した野尻智紀選手の“3連覇なるか?” が最大のトピックだった。また、2022年 FIA F2で好成績を残し、F1も視野に入って いるリアム・ローソン選手が野尻選手のチ ームメイトとなり、初めての日本でどんな 活躍を見せるかという点も注目を集めた。
開幕大会の話題をさらったのは ローソン選手と野尻選手のMUGEN勢 その注目に違わず、最初から活躍を見せ たのはローソン選手と野尻選手。開幕大会 の富士スピードウェイは2レース制だった が、4月8日に行われた開幕戦では野尻選手 がポールポジション(PP)を獲得する。決 勝ではアンダーカットを成功させたローソ ン選手がデビューウィンを達成。野尻選手 は2位、平川亮選手は3位。これに山本尚 貴選手が4位、宮田選手が5位と続いた。
翌9日の第2戦では、予選で野尻選手が 2連続PPを獲得した。宮田選手と大湯都 史樹選手がこれに続き、ローソン選手は4 番手だ。決勝は序盤にアクシデントが発生 し、セーフティカー(SC)が導入されたが、 その間にタイヤ交換のウィンドウが開き、 ほぼ全車が同時ピットイン。スタートでポ ジションを落とした野尻選手が、ここで逆 転を果たして今季初優勝を遂げた。2位は 坪井翔選手、3位は山下健太選手、宮田選 手は4位に入賞した。ローソン選手は3番 手でチェッカーを受けたが、5秒加算のペ ナルティを受けて5位。結果、最初の2レ ースを終えて大きくポイントを伸ばしたの は野尻選手だった。
だが様相が一変したのは第3戦の鈴鹿サ ーキット。このレースでは予選で大湯選手
~栄光に向かって~ モータースポーツに情熱を注ぐドライバーなら、 いつかは「頂点を極めたい」と思うもの。
だがそこに至るまでの道のりは果てしなく険しい。常に自らを研鑽しながら、 さまざまな苦難を乗り越えた者だけが手にすることが許される “チャンピオン”という肩書き。
2023シーズンにタイトルを獲得した覇者たちの軌跡を辿っていこう。
が移籍後初、自身2度目のPPを獲得し、 坪井選手と野尻選手が続く。野尻選手は連 続PP記録こそ途切れたが、決勝では充分 に優勝争いできる位置につけた。これに対 してローソン選手は8番手。一方、開幕大 会で2戦ともフロントローにつけていた宮 田選手は、スプーンコーナー立ち上がりで 走路外走行(4輪脱輪)の判定を下されてベ ストタイム抹消、12番手スタートとなる。
ところが、決勝ではその宮田選手が優勝 を果たした。決勝前半、宮田選手は次々に オーバーテイクを見せてポジションアッ プ。そんな中、トップ争いを演じたのは
PPの大湯選手、予選2番手の坪井選手、 予選3番手の野尻選手。これに予選8番手 からスーパースタートを決めたローソン選 手。この中で野尻選手はペースが上がら ず、ローソン選手、山下選手の先行を許し て5番手にポジションを落とす。
タイヤ交換のウィンドウが開くと、アン ダーカットを狙ったローソン選手が真っ先 にピットイン。その翌周には坪井選手と野 尻選手がピットに滑り込む。坪井選手はロ ーソン選手の前でコースに戻り、アウトラ ップでもポジションを死守。これに対して 野尻選手はローソン選手の後ろでコースに
年目で快挙! Road Part.1 Part.1 JAF全日本スーパーフォーミュラ選手権
Part.2 JAF全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権
Part.3 FIAインターナショナルシリーズ スーパーGT GT500クラス/GT300クラス
Part.4 JAF全日本カート選手権
OK部門/FS-125CIK部門/EV部門/FS-125JAF部門/FP-3部門
戻る。その後、19周を終えたところで大湯 選手がピットイン。大湯選手は坪井選手、 ローソン選手の先行を許し、野尻選手の前 でコースに復帰。さらにアウトラップの大 湯選手に野尻選手が迫った。ところが2台 はS字で接触、揃ってコースアウトしてク ラッシュ。これによりSCが導入される。
終盤までタイヤ交換を引っ張る作戦を採 った宮田選手と平川選手は、このチャンス にピットイン。タイヤ交換を終えると宮田 選手が3番手、平川選手が4番手でコース に戻る。そしてSC明けから宮田選手は新 しいタイヤのアドバンテージを活かし、ロ
ーソン選手、坪井選手をオーバーテイクす る。そして11ポジションアップという快 挙を成し遂げ、宮田選手が自身初優勝を飾 った。実はこの大逆転優勝の裏には、宮田 選手がオフの間に担当したフォーミュラE のテレビ解説が関係していたのだと言う。
海外のレースに刺激を受けて 宮田選手は自身のレースに採り入れた 「2月ぐらいにケープタウン戦の解説をし たんです。サッシャ・フェネストラズ選手 がPPを獲ったレースで、毎周トップが変 わる展開でした。ライブ配信では無線が聞
PHOTO/石原康[Yasushi.ISHIHARA]、宇留野潤[Jun.Uruno]、 遠藤樹弥[Tastuya.ENDOU]、鈴木あつし[Atsushi.SUZUKI]、 吉見幸夫[Yukio.YOSHIMI] REPORT/貝島由美子[Yumiko.KAIJIMA]、 JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]
けるんですが、さまざまなチームが他陣営 の情報を無線で入れているんです。ドライ バーはライバルの状況を聞きながら判断し て、隙を突くというレースをしていまし た。それを上手くやっていたアントニオ・ フェリックス・ダ・コスタ選手が10数番 手からのスタートで優勝したんです。F1で もよく無線はライブでやっていますけど、 フォーミュラEはもっと頻繁でした」。 「今年は僕らもSFgoでオーバーテイクシ ステム(OTS)の状況が見られたり、ドラ イバーが欲する情報が豊富なことは分かっ ていました。だから第3戦鈴鹿のとき、無 線で情報を入れて欲しいってチームにお願 いしたんです。前走車のOTSの使用、コ ースの路面温度や風向きとか、何でもいい から全部教えて下さいって。以前まではコ ーナリング中などに無線で話をして欲しく ないってスタンスでした。でもそこで気を 散らさず、同じように速く走れれば、アド バンテージが生まれるわけで、それが自分 の中でできるようになれば、活躍できるか もって思ったんです」。
Victory Road この無線でのやり取りだけでなく、宮田 選手がフォーミュラEで感じたのは、バトル に対する考え方。ヨーロッパのドライバーた ちの流儀や心構えが、日本とは違っていた。 それを宮田選手は実践し始めたそうだ。 「追い抜きに行ったドライバーが、大概 『俺は悪くない』って言っていました。ぶつ かろうが、追い抜き方が荒かろうが、自分 を正当化していたんですよね。相手あって のレースだけど、相手なんか気にしちゃい けないというか。気にするな、くらいの気 構えでコース上を走らないと、これから僕 が世界に行ったとき、自分が潰されるな と。日本人同士だとお互い真面目でフェア
第1戦富士
だし、何か問題があったときにも、外国人 みたいに『そっちのせいだ』、『お前のせい だ』っていう風にはならない。だけどリア ム選手からしたら、そこが相手の弱点だっ ていう感覚だと思うんですよね。自分も同 じようになれば、全員のスキを突ける。そ ういう気持ちになったのが大きいですね」。
動じない心持ちで臨んだ鈴鹿での初優 勝。これは宮田選手の中で揺るぎない自信 になったことだろう。
れた。これに対して、予選でフロントロー を獲得し、決勝では再びアンダーカットを 成功させて2勝目を挙げたのがローソン選 手。予選4番手からスタートした宮田選手 は、鈴鹿に続いてタイヤ交換を引っ張る と、終盤にPPスタートの坪井選手をかわ して2位フィニッシュ。ローソン選手はこ こでポイントリーダーとなった。
しかし、これに続く第5戦スポーツラン ドSUGOでは、宮田選手が2勝目を挙げ て、ポイントでもローソン選手を上回って くる。このレースでPPを獲り、スタート でもトップに立ったのは大湯選手。だが、 フロントローから2番手で大湯選手を追っ た宮田選手は、12周目に大湯選手をかわす とトップを独走。他のドライバーたちの動 きやペースを見ながら17周でピットに入 ると、他を寄せつけないペースで疾走し、 2勝目を挙げた。復帰戦となる野尻選手が アンダーカットを成功させて2位、牧野任 祐選手が3位。このレースでは最後までタ イヤ交換を引っ張る作戦を採った予選6番 手のローソン選手が4位につける。
第2戦富士
1大会2レース制の第2戦は、ディフェンディングチャン ピオンの野尻智紀選手が、ポール・トゥ・ウィンで制す。
野尻選手は2戦連続の表彰台で好スタートを切った。
続く第4戦の舞台はオートポリス。この レースでは野尻選手が突然の肺気胸で欠場 する。前戦でのリタイアに加え、野尻選手 はここでもノーポイントと足踏みを強いら 新型車両のSF23が投入された開幕戦は、この一戦が スーパーフォーミュラデビューで、F1のレッドブル育成 ドライバー、リアム・ローソン選手が勝利する。
第4戦オートポリス
野尻選手が急病で不在となった第4戦は、チームメイト のルーキーがまたも快挙。初めて走るオートポリスを攻 略したローソン選手が2勝目。
第5戦SUGO
シリーズ折り返し点となる第5戦は、2番手スタートの宮 田選手がトップを奪うと独走。大差をつけて勝利をつか み、ポイントリーダーに浮上する。
最終大会が近づくにつれて さまざまな葛藤を胸に秘めていた…… 後半戦に入っても激しい争いは続き、第 6戦富士ではローソン選手が3勝目をマー ク。PPを獲得した牧野選手に対して、ロ ーソン選手はアンダーカットを成功させる
第3戦鈴鹿
第6戦富士
第3戦は波乱続きのレース展開の中、残り2周でトップ に躍り出てトップチェッカーを受けたのが宮田選手。 キャリア初のスーパーフォーミュラ優勝を遂げた。 ここまで6戦が行われ、ローソン選手が早くも3勝目を 挙げる。宮田選手が1ポイント差でタイトル争いをリー ドするが、ローソン選手も食らいつく。
JAF全日本スーパーフォーミュラ選手権 2023年ドライバーチャンピオン 宮田莉朋選手
とそのまま優勝。牧野選手は悔しい2位。 予選5番手から力強いオーバーテイクを見 せた宮田選手が3位表彰台に立つ。ポイン トは宮田選手が1点差でトップを死守し た。野尻選手は、富士では予選/決勝とも 振るわず8位と、3連覇を狙う身としては 苦しい立場に立たされる。
ところが第7戦モビリティリゾートもて ぎでは、その野尻選手が不死鳥のように復 活。2年連続チャンピオンの意地を見せて ポール・トゥ・ウィン。一方、チームメイ トのローソン選手はノーポイント。スター ト直後に至った野尻選手とのバトルで一歩 も引かずにスピンし、それが多重クラッシ
ュの引き金となった。レースは赤旗中断、 その間にガレージでマシンを修復して出走 したことで、ローソン選手にはドライブス ルーペナルティーが課されている。宮田選 手はスタートでアンチストールが入り、ほ ぼ最後尾まで後退。そこからジワジワとポ ジションを上げ、最後は4位まで巻き返し てランキングトップを堅守した。
そこから最終大会までは2か月のインタ ーバル。宮田選手はさまざまな心情の変化 を経験して今季2度目の鈴鹿に向かう。
「もてぎが終わってすぐは、上手くやれば 獲れるかな、くらいの気持ちだったんです けど、時間が経つにつれて“どうやって速 2023 DRIVER STANDINGS
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く走ればいいんだろう”って考えるように なり、ガチガチになっていたんです。鈴鹿 の車載を見たり、過去の自分を振り返った り、寝られない日々が続きました。それが 10月上旬くらいですね」。
「その後、オートポリスでのスーパーGT を直前に控え、TOM'Sのスタッフと食事 に行ったんですよ。GTのレースが近いの に『SFのことしか考えていない』って打ち 明けたら、チームは『別にそれでいいよ』と いう返事でした。目前のレースに集中でき ない状況でしたが、オートポリスで優勝で きたことで、『SFもそれくらいの気持ちで いいのかも』と思うようになりました。プ レッシャーを感じつつも、最終大会はそん な感覚で臨みました。知り合いの方にも最 終戦前に『自然体でやるのがいいよ』とアド バイスをいただきまして。そこでポイント を守ることより、まずはPPが獲りたい し、純粋に優勝したいっていう想いが芽生 えました」。
第9戦鈴鹿 第8戦鈴鹿 第7戦もてぎ
第7戦は1~2コーナーでホイール・トゥ・ホイールのバ トルが展開され、ローソン選手はスピン。野尻選手が大 きなギャップを築いてシーズン2勝目をマークした。
決勝開始早々に赤旗中断、そしてレース終了となった第 8戦。ポールシッターの野尻選手がポジションをキープ してハーフポイントを獲得する。
第8戦で初の表彰台獲得の勢いそのままに、第9戦では 後方からの猛追をしのぎ、自身初めてのスーパーフォー ミュラ優勝を果たした太田格之進選手。
Victory Road 『世界に行きたい』という想いが このタイトル獲得にもつながった 迎えた2レース制の最終鈴鹿大会。第8 戦の予選では野尻選手がPPを獲得、宮田 選手が2番手。Q2最後に赤旗が出たことで 仕切り直しのアタック合戦となったが、こ のときに状態の良いタイヤが残っていなか ったローソン選手は7番手に沈んだ。
決勝はスタートで野尻選手がトップ、宮 田選手は一旦、太田格之進選手の先行を許 すが、すぐに2番手を取り戻す。ローソン 選手はひとつポジションを上げて6番手と なるが、序盤に発生した130Rでの大きな 多重クラッシュによってレースは赤旗終了。 この時点でポイントは宮田選手が103.5、 野尻選手が97、ローソン選手が88.5で、 野尻選手はハーフポイントながら宮田選手 とのギャップを縮めた形に。ローソン選手 はこの時点で自力優勝がなくなった。
3年連続チャンピオンの偉業に期待がかかった野尻選 手だったが、第4戦の欠場も響いてトップにはわずかに 届かず、ランキング3位でシリーズを終えた。
そしてその夜、宮田選手はエンジニアと の長いミーティングを終えてからも、最終 戦のことをずっと考え続けていた。予選で はホンダ勢が速く、どう上位グリッドを得 るか。野尻選手がPPを獲ったら、決勝は 絶対に2位以内に入らなければならない。 でも、自信が持てないでいた。
そのとき、10代のころから悩んだ際に必 ず見ている“落ち込んだ後に見ると心に響 く松岡修造メッセージ”という動画を見返 し、宮田選手は泣きそうになったと言う。 そして『とにかく怖れずやればいい』と開き 直ることに至ったのだ。
いよいよ決戦の日。やはりホンダ勢が予 選で速さを見せ、ローソン選手が望みをつ なぐPPを獲得し、太田選手が2番手、野 尻選手が3番手。コーナー立ち上がりから
最終戦まで宮田選手を脅かす存在だったローソン選手 は、シリーズ3勝を挙げてランキング2位。2023年ルー キー・オブ・ザ・イヤーを獲得した。
ストレートにかけての伸びはホンダ勢に分 があった。宮田選手はフルプッシュしてス プーンで姿勢を崩し、3輪が脱輪するとこ ろまで攻める。その結果は4番手。予選ポ イントは獲れなかったが、決勝に向けては 好位置をキープした。
迎えた決勝、スタートでトップに立った のは太田選手。ローソン選手はスタートで 出遅れ、野尻選手を牽制する。その間に割 って入ったのが宮田選手で、野尻選手は4 番手に後退した。そこからレースは僅差な がら膠着状態が続く。その中でまず宮田選 手がタイヤ交換。これを見てローソン選手 と太田選手も動く。アウトラップではドッ グファイトとなったが、ここでの順位変動 はなし。その後、終盤に入るとトップ2台 の争いは緊迫する。ローソン選手が太田選 手に迫ったが、太田選手が最後までポジシ ョンを守り切って涙の初優勝を果たした。 ローソン選手は2位、宮田選手は3位。野 尻選手はペースが上がらず大きく引き離さ れての4位となった。
この結果、宮田選手はフル参戦3年目に して歓喜の初タイトルを確定させている。 その勢いで、翌週にはスーパーGTのGT 500クラスでも初タイトルを獲得。そし て宮田選手は来季から戦いの舞台を念願の 海外に移すことが決定した。
023シーズン、2年連続チーム タイトルを獲得したのは、野尻 智紀選手とリアム・ローソン選 手を擁して戦ったMUGEN。その強さは、 他のチームを寄せつけないほどだったと言 っても過言ではない。2022年はシーズン 10レース中4勝だったが、2023年は全9 レースのうち6戦で優勝と、勝率は驚異の 66.6%。それに関しては、ドライバーの 力も大きかったようだ。同チームの田中洋 克監督もシーズンタイトル記者会見で次の ように語った。
「今シーズンを振り返ると、新しくリアム (・ローソン)選手が加入し、新たな体制で スタートしたわけですけれども、1年目で ここまで結果を出すとは正直思っていませ んでした。リアム選手は本当にいい走りを してくれましたし、野尻(智紀)選手もチャ ンピオンにふさわしい走りをしてくれたと 思います。野尻選手に関しては、途中欠場 したレースがあり、そこはちょっと“痛か ったな”というのはありますが、本当にふ たりとも頑張っていい走りをしてくれまし た。私たちのひとつの目標でもあったの
で、チームチャンピオンを 獲れたことに関しては本当 にホッとしています。ドラ イバータイトルを獲れなか ったのは残念ですけれど も、そこは宮田選手が速か ったですし、チャンピオン にふさわしい走りだったと 思います。来年はドライバ ーチャンピオンを獲り返せ るよう、またSFを盛り上 げるという意味でも、もっ と強くなって頑張りたいと 思います」。
この言葉にもあるように、ドライバーズ タイトルに関しては3連覇はならなかっ た。もちろん、野尻選手にノーポイントの レースや欠場があったことも事実。その一 方、シーズン終盤戦に入ってからは、第7 戦もてぎでのチームメイト同士のバトルに 起因するローソン選手のクラッシュや、あ るいは鈴鹿の第8戦の予選での意地の張り 合いなどが見られ、そうしたこともドライ バーズタイトル争いには微妙に影響したと
思われる。これは、主にローソン選手の若 さからくるシーンだったが、ひょっとする とドライバーのメンタルをどうチームがコ ントロールするか、という部分がもう少し 必要だったのかも知れない。
2024年、MUGENは野尻選手のチーム メイトにFIA F2帰りの岩佐歩夢選手を迎 えることとなるが、どんな活躍を見せてく れるのだろうか。ダブルタイトル奪還なる かどうか、期待したい。
JAF全日本スーパーフォーミュラ選手権 2023年チームチャンピオン MUGEN
INFORMATION from JAF モータースポーツ公示・JAFからのお知らせ(WEB)一覧(2023年9月27日~2023年12月21日)
公示
日付 公示No. タイトル
2023年10月3日 2023-WEB077
2023年10月10日 2023-WEB078
2024年FIA国際スポーツカレンダー登録申請一覧変更について
2023年日本ダートトライアル選手権の中止について 2023年10月13日 2023-WEB079
2024年日本ラリー選手権規定の改正について 2023年10月13日 2023-WEB080
2024年JAF国内競技車両規則の制定について(第2編ラリー車両規定) 2023年10月26日 2023-WEB081 登録車両申請一覧
2023年10月26日 2023-WEB082
2024年全日本ラリー選手権カレンダー
2023年10月30日 2023-WEB083 ロールケージ公認申請一覧表
2023年11月6日 2023-WEB084 2023 FIA WORLD RALLY CHAMPIONSHIPの名称変更について 2023年11月10日 2023-WEB085
2024年全日本/ジュニアカート選手権カレンダー 2023年11月17日 2023-WEB086
2023年11月17日 2023-WEB087
2023年11月24日 2023-WEB088
2023年11月24日 2023-WEB089
2023年11月28日 2023-WEB090
2023年11月28日 2023-WEB091
2023年11月28日 2023-WEB092
2023年11月28日 2023-WEB093
2023年11月29日 2023-WEB094
2024年JAFカップオールジャパンダートトライアルカレンダー
2024年地方ジムカーナ/サーキットトライアル/ダートトライアル選手権カレンダー
2024年地方ラリー選手権カレンダー
2024年全日本レース選手権カレンダー
2024年全日本/ジュニアカート選手権統一規則並びにJAF国内カート競技車両規則の制定及び地方/ジュニアカー ト選手権カレンダー
2024年全日本/地方/ジュニアカート選手権カレンダー登録申請の再募集について
2024年全日本ラリー選手権統一規則及び全日本ラリー選手権適用車両規定JAF公認車両「JP4」に関する規定の制 定について
2024年JAF国内競技車両規則 第2編および第4編の一部改正について
JAF公認eモータースポーツ国内リーグ競技規定の制定
2023年12月1日 2023-WEB095 ラリー競技開催規定 細則:スペシャルステージラリー開催規定の制定について
2023年12月4日 2023-WEB096
2023年12月6日 2023-WEB097
2024年日本ドリフト選手権規定の制定
2023年JAF地方選手権表彰式 開催一覧表(開催日順) 2023年12月12日 2023-WEB098 登録車両申請一覧
2023年12月13日 2023-WEB099
2023年12月21日 2023-WEB100
2023年12月21日 2023-WEB101
2024 FIA KARTING ACADEMY TROPHYへのJAF推薦参加者の募集について
2024年JAF国内カート競技規則の制定
2024年全日本ジムカーナ/ダートトライアル選手権統一規則の制定 2023年12月21日 2023-WEB102
2024年JAF地方ジムカーナ/ダートトライアル/サーキットトライアル選手権クラス区分等について
JAFからのお知らせ 日付 タイトル
2023年10月2日 モータースポーツ公示・JAFからのお知らせ一覧(2023年9月1日~9月30日) 2023年10月31日 JAF鈴鹿グランプリ ドライバー・オブ・ザ・イヤー2023 トークイベント実施!
2023年11月1日 モータースポーツ公示・JAFからのお知らせ一覧(2023年10月1日~10月31日) 2023年11月16日 2023年JAFモータースポーツ表彰式に関するお詫び 2023年11月20日 FIA eスポーツコミュニティ調査(アンケート)について 2023年12月1日 モータースポーツ公示・JAFからのお知らせ一覧(2023年11月1日~11月30日) ※上記公示・お知らせ(WEB)一覧の詳細は、JAFモータースポーツサイト(https://motorsports.jaf.or.jp/)内の「>公示・JAFからのお知らせ」で閲覧することができます。
今回は東京・お台場での開催となった2023年JAFモー タースポーツ表彰式の模様が、JAFモータースポーツサイト で公開中。各カテゴリーのチャンピオンをはじめ、上位入賞 した表彰対象者たちを称える式典の一部始終を、余すとこ ろなく視聴できる。賞典を受け取った選手たちの、喜びの表 情をお見逃しなく! https://motorsports.jaf.or.jp/results/award/2023
Victory Road ~栄光に向かって~ Part.2 JAF全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権
る小出峻選手。そしてRn-sportsからは、 これまでハコのレースでキャリアを重ねて きた堤優威選手がエントリーした。
木村選手が破竹の3連勝! 開幕大会で上々な滑り出しを見せる オートポリスは木村選手が3連勝。しか も3戦すべてポールポジション(PP)を獲
得し、ファステストラップ(FL)を記録す る。ポイントフルマークを果たして上々の 滑り出しとした。第1戦はスタートでフラ ガ選手をかわした平良選手が2位で、3位 は古谷選手。第2戦はスタートで小出選手 が木村選手に迫ったものの、逆転には至ら ず。第3戦は小出選手が2位で、3位は3戦 とも古谷選手が獲得している。
スポーツランドSUGOに舞台を移した 第2大会では、平良選手が主役の座を射止 めた。第4戦、第5戦をポール・トゥ・ウ ィンで飾り、3連勝も夢ではないかと思わ れたが、第6戦ではトップ快走中に4速ギ ヤがスタックするトラブルが発生。完走を 果たすに留まったが、木村選手もノーポイ ントに終わっている。それでも第4戦で3 位、第5戦は2位だったことで、平良選手 の接近を10ポイントに留めていた。第6 戦で初優勝を飾ったフラガ選手は第4戦で も2位。そして第5戦からは2戦連続で小 出選手が3位表彰台に立っていた。
鈴鹿サーキットで行われた第3大会は、 第7戦のPPを平良選手、第8戦のPPを木 023年の全日本スーパーフォー ミュラ・ライツ選手権(SFL)は 6大会・全18戦で競われ、第1 大会には12名のドライバーがエントリー した。前年の覇者・小高一斗選手に続く王 者輩出を目指すTOM'Sは4台体制を築き、 平良響選手と野中誠太選手、古谷悠河選手 が継続参戦。そして新たにエンツォ・トゥ ルーリ選手を加えた。元F1ドライバーの ヤルノ・トゥルーリ氏を父に持つイタリア 出身の17歳は、2022年にFIA F3選手権を 戦った経験を持つ。
B-MAX RACINGからは木村偉織選手が 2シーズン目に挑み、デビッド・ビダーレス 選手、イゴール・オオムラ・フラガ選手と、 ふたりのルーキーを加えての参戦。ビダー レス選手も2022年はFIA F3を戦い、フラ ガ選手も2020年にその経験を持つが、FIA グランツーリスモ選手権で初代チャンピオ ンに輝いたeスポーツ出身ドライバーとし てのキャリアの方で名高いドライバーだ。
TODA RACINGから臨むのは、2022年 のFIA F4地方選手権のチャンピオンであ
幸先の良いスタートを切ったのは木 村偉織選手。ポールポジション& ファステストのフルマークで3連勝。
第4大会富士
ルーキーたちの活躍が目覚ましく、 ヤルノ・トゥルーリ選手と小出峻選 手がそれぞれ優勝を果たす。
第2大会SUGO
平良響選手が2勝を挙げ、イゴール・ オオムラ・フラガ選手が初勝利。木 村選手とのポイント差を縮める。
第3大会鈴鹿
代役参戦の菅波冬悟選手がSFL初 優勝を遂げた。そして木村選手と平 良選手が1勝ずつ分け合う形に。
第6大会もてぎ
第5大会岡山国際
小出選手が岡山国際で3連勝と大 きく躍進。平良選手、木村選手の チャンピオン争いに割って入る。
第18戦まで混迷を極めたタイトル 争いは、木村選手が2位入賞で逆転 チャンピオンという結末に。
村選手が獲得。しかし第7戦の決勝では、 主役はこのふたりではなかった。スタート 直前の降雨に大半のドライバーがドライタ イヤで挑むも、にわかに雨は強くなり、足 を取られた木村選手とフラガ選手が接触す る。これによりセーフティカー(SC)が入 り、そのタイミングで菅波冬悟選手がピッ トに戻ってウェットタイヤに交換。リスタ ートも決めた平良選手だったが、やがてそ の背後にはあらかじめウェットタイヤを履 いていた堤選手が現れる。予選10番手か ら5周目にはトップに立つも、間もなくペ ースアップが難しくなった。代わって9周 目にトップに立ったのは菅波選手。その 後、雨は弱くなり、平良選手の接近を許す も、逃げ切って初優勝を挙げた。欠場した 今田選手の代役としてつかんだチャンス を、完璧にものにした格好だ。
ドライに転じた第8戦は木村選手がポー ル・トゥ・ウィンで4勝目をマーク。2位は 最終ラップのシケインで野中選手を抜いて いた平良選手だった。続く第9戦ではPP の菅波選手をスタートで抜いた平良選手が、 そのまま逃げて3勝目をマーク。その結果、 ついに木村選手を抜いてランキングのトッ プを奪取する。2位は野中選手の猛攻を最後 まで凌ぎ抜いた菅波選手だった。
平良選手が優位に立つ状況の中、 木村選手が最終大会で逆転に成功 富士スピードウェイで行われた第4大会 では、トゥルーリ選手がついに覚醒する。 第10戦でポール・トゥ・ウィンを飾って
JAF全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権 2023年ドライバーチャンピオン
木村偉織選手
初優勝を遂げた。同じくPP からスタートした第12戦も、 平良選手を寄せつけずに2勝 目を挙げる。第11戦では平 良選手がPPながら、10周目 のヘアピンで木村選手が前 に出る。木村選手と平良選手、トゥルーリ 選手の順でゴールするも、なんとトゥルー リ選手が車両重量不足で失格。さらに木村 選手が2回以上の進路変更、平選手も複数 回の走路外走行のペナルティで5秒加算さ れて降格となった。4位でゴールの小出選 手が繰り上がって初優勝という結果に。
岡山国際サーキットが舞台の第5大会 は、チームの地元で小出選手の独壇場とな った。第14戦こそフラガ選手にPPを奪 われるも、3戦ともスタートでトップに立 って、最後までその座を譲らず。一方、木 村選手は第13戦でギヤトラブルを喫し、 第14戦こそ3位ながら第15戦は6位留ま り。平良選手も5位、4位、4位で、一度も 表彰台に立てずに終わっている。
そして迎えたモビリティリゾートもてぎ での最終大会には、平良選手が一歩リード で臨むも、第16戦は木村選手がポール・ トゥ・ウィンで5勝目を挙げたのに対し、 平良選手は4位に。これでポイントは同点 で並ぶこととなった。2位は再びB-MAX RACINGから参戦機会を与えられた菅波 選手が獲得。勢いに乗る木村選手は、第 17戦でもポール・トゥ・ウィンを達成。 平選手は4位でゴールするも、複数回の走 路外走行のペナルティで5秒加算され、ひ
JAF全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権 2023年チームチャンピオン
とつ順位を落とす羽目に。これで木村選手 が単独トップに躍り出た。そして第18戦 では2番手につけた菅波選手が、しっかり スタートを決めてトップに浮上。後方で競 い合う木村選手と平良選手を尻目に、逃げ 切って2勝目をマークした。
年間6勝を挙げ、チャンピオン確定とな った木村選手は、「ここまでサポートして いただいたHondaさん、B-MAX RACI NG TEAMさん、スポンサーさん、ファ ンの皆さんのおかげで獲れたチャンピオン だと思っています。自分ひとりだけでは、 この場には来られなかったでしょう。来シ ーズンに向けての希望は正直いろいろあり ますが、用意していただいたシートの中 で、最高の結果を残すだけだと思っていま す」と、実直に感謝の気持ちを述べていた。
2023年の全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権において、18戦中6勝を挙げた木村偉 織選手をドライバーチャンピオンに、またマスタークラスでも今田信宏選手をチャンピオンへ と導いたB-MAX RACING TEAM。自身もマスタークラスのドライバーである組田龍司チーム 総代表がチームを牽引し、チームチャンピオンを見事獲得した。
2023年は木村選手を始め、イゴール・オオムラ・フラガ選手、デビッド・ビダーレス選手、そ してマスタークラスでは今田信宏選手、DRAGON選手、畑享志選手を擁した6台体制。オオムラ・ フラガ選手が1勝、さらにスポット参戦の菅波冬悟選手が2勝をマーク。マスタークラスでは18戦 中11勝を挙げて3連覇を達成した今田選手を筆頭に、すべてのレースで優勝を飾ってもいる。 B-MAXとしての活動開始は2010年からだが、その母体だった屏風浦工業としてもレース活 動の実績を持ち、当時はツーリングカーレースを戦っていた。チーム設立以降はフォーミュラ カーでの活動を主とし、2011年からは全日本F3選手権へ、2017年からはスーパーフォーミュラ にも参戦。活動の場を広げるとともに、国内トップチームとして進化し続けている。 なお、ドライバーチャンピオンとチームチャンピオンの2冠獲得は、2019年以来2回目となった。
Victory Road ~栄光に向かって~ Part.3
FIA インターナショナルシリーズ スーパー GT GT500 クラス GT500クラスはトヨタGR Supraが6 台、ホンダNSX-GTが5台、そして日産 Zが4台、計15台での争いは従来どおり。 それぞれのラインアップは、例年より変化 が少なかったという印象が強い。
悔やまれる開幕戦のリタイア 苦しい戦いを強いられることに 開幕戦岡山国際サーキットの予選は雨に 見舞われる中、ウェット性能に定評のある ミシュランタイヤを履く、MOTUL AUTE CH Z(松田次生/ロニー・クインタレッ リ組)がポールポジション(PP)を獲得し、 2番手もNiterra MOTUL Z(千代勝正/ 高星明誠組)でフロントローを独占する。
決勝はマシンがグリッドに並べられたとき こそドライコンディションが保たれていた ものの、フォーメーションラップが始まる ころにポツリポツリと降雨。この雨が降っ たり止んだりが繰り返されたため、3回も セーフティカー(SC)が導入されたが、2回 目に至っては近隣で落雷があったことか ら、赤旗が出されてレースは中断された。 そんな目まぐるしく変化する天気に対 し、その都度、的確なタイミングでタイヤ を交換していたのもまたMOTUL AUTE CH Zだった。惜しまれるのは、追いかけ ていたau TOM'S GR Supra(坪井翔/宮 田莉朋組)がピットの作業ミスで左フロン トタイヤが脱落し、コース脇でストップし たこと。後に坪井選手は、「このリタイア がなければもっと楽に最終戦を戦えたは ず」と振り返っている。これでNiterra MOTUL Zが2番手に返り咲き、決勝でも ミシュランを履くZ勢が上位を独占した。
450kmレースが8戦中5戦に増やされ たのも2023年のトピックスのひとつで、
その最初のレースとなったのが富士スピー ドウェイでの第2戦だ。PPを獲得したのは STANLEY NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐 組)で、決勝でも序盤をリードする。ここ に迫ってきたのがau TOM'S GR Supra で、予選は6番手ながらハイペースな追い 上げで順位を上げていた。
1回目のピットストップを素早く済ませ てトップに立ったau TOM'S GR Supra は、2回目のピットストップ後もスピード を維持。そのまま逃げ切り、坪井選手と宮 田選手はコンビ初の優勝を飾っている。2 位はSTANLEY NSX-GTが獲得。
鈴鹿サーキットでの第3戦も450kmで競 われた。連勝を目指してau TOM'S GR SupraがPPを獲得し、決勝でも序盤をリー ドするが、8周目に発生したGT300車両の アクシデントによってマージンを失ったば かりか、最初のピットストップ後に順位を 落とす。代わってWedsSport ADVAN GR Supra(国本雄資/阪口晴南組)がトップに 立つも、58周目に3番手を争っていたMOT ーパーGTは2023年も全8戦 で争われ、岡山国際サーキット で幕を開けた。新型コロナウイ ルス感染症も5類に移行したことで、どの サーキットも以前の賑わいをほぼ取り戻し たと言える。それでも海外戦は行われず、 引き続き国内6サーキットが舞台となった。
FIAインターナショナルシリーズ スーパーGT 2023年GT500クラスドライバーチャンピオン
宮田選手は初チャンピオンに輝く! UL AUTECH ZがGT300車両を抜こうと してクラッシュ。マシンは大破し、ガードフ ェンスなどの損傷が著しいことから、レー スは赤旗で終了。その時点で先頭を走って いた車両は、規定で定められた2回目のピ ットストップを実施していなかったため、ペ ナルティが課せられた。結果、WedsSport ADVAN GR Supraの優勝となった。2位は au TOM'S GR Supraが獲得する。
第4戦富士もまた450kmでの争いに。
PPはリアライズコーポレーションADVAN Z(佐々木大樹/平手晃平組)が獲得。決勝 は雨に見舞われたためSCスタートとなっ た。3周目にSCが退去すると、猛烈な勢い を見せたのがNiterra MOTUL Z。その周 のうちに4番手からふたつポジションを上 げたばかりか、4周目にはトップに躍り出る。
だが、雨が止んで早めのタイヤ交換を行 ったチームにNiterra MOTUL Zは抜かれ、 一旦は4番手に後退。その後、GT300車両 の火災が二度もあり、そのたびSCが入り、 2回目は赤旗中断となる。そして雨が再び 強く降ってきたことから、ウェットタイヤ への交換が認められた。再開後はNiterra MOTUL Zが勢いを取り戻し、優勝を果た すとともにランキングでもトップに浮上。au
TOM'S GR Supraは4位だった。
第5戦の鈴鹿も450kmレースとして競 われた。ここでポール・トゥ・ウィンを達
坪井選手は 回目のタイトル、 2023 GT500 DRIVER STANDINGS
Rank No. Driver Machine
1位 36 坪井翔選手/宮田莉朋選手 au TOM'S GR Supra
2位 3 千代勝正選手/高星明誠選手 Niterra MOTUL Z
3位 23
4位 16
松田次生選手/ロニー・クインタレッリ選手 MOTUL AUTECH Z
福住仁嶺選手/大津弘樹選手 ARTA MUGEN NSX-GT
5位 1 平峰一貴選手/ベルトラン・バゲット選手 MARELLI IMPUL Z
6位 17 塚越広大選手/松下信治選手 Astemo NSX-GT
逆転チャンピオンを狙うべく、最終戦で は好走を見せてポールポジションを獲 得するも、2022年に続きシリーズ2位と なった千代勝正/高星明誠組。
モノコック交換に至る大クラッシュや、 トップチェッカー後に車検不合格など、 波乱の1年となった松田次生/ロニー・ クインタレッリ組がシリーズ3位。
最初のピットストップを行ってロスを最小 限にできたことが一番の勝因となった。 一方、2位でゴールしたのはMOTUL AUTECH Zだったが、スキッドブロック 成したのは、16号車ARTA MUGEN NSXGT(福住仁嶺/大津弘樹組)。序盤に発生 したGT300車両のアクシデントに素早く反 応し、フルコースイエロー(FCY)提示前に、
Victory Road の規定違反があり、失格となったことで、 DENSO KOBELCO SARD GR Supra (関口雄飛/中山雄一組)が繰り上がって2 位を得た。au TOM'S GR Supraも10位 となり、貴重な1ポイントを積み重ねる。
スポーツランドSUGOが舞台の第6戦 は、300kmレースとして開催された。8号 車ARTA MUGEN NSX-GT(野尻智紀/ 大湯都史樹組)がPPからトップを走るも、 中盤のピットストップが素早かったAste mo NSX-GTにトップを奪われる。そのま ま逃げ切ったAstemo NSX-GTながら、 スキッドブロックの規定違反で失格に。繰 り上がって8号車ARTA MUGEN NSXGTの優勝となった。au TOM'S GR Supra は7位となり、9位だったNiterra MOTUL Zがランキングトップのままながら、その 差を2ポイントにまで詰めている。
このレースはまた、中盤にGT300車両 と接触したSTANLEY NSX-GTがホーム ストレートでクラッシュし、赤旗中断とな る。山本選手が大事に至らなかったのは不 幸中の幸いだったが、その後のレースには 出場がかなわなかった。
第7戦はオートポリス初の450kmレース として開催された。PPを獲得した16号車
ARTA MUGEN NSXGTは2回目のピット ストップを終えてもト ップをキープしてい た。しかし、終盤にな ってもペースを落とす ことなく、激しく迫っ てきたのがau TOM'S GR Supraだった。ゴ ールまであと10周と いうところでトップ浮 上に成功して、予選 12番手からの大逆転優勝となった。2位は 16号車 ARTA MUGEN NSX-GTで、3位 はNiterra MOTUL Zが獲得。その結果、 au TOM'S GR Supraが再びランキングの トップに立って、タイトル獲得の権利はこ の3台だけに絞られた。
ランキングトップで迎えた最終戦で 3勝目をつかみチャンピオンへ
全車ノーハンデで臨んだモビリティリゾ ートもてぎの最終戦は、再び300kmレー スとなった。PPをNittera MOTUL Zが 奪い、トップとの差を6ポイントにまで詰 めるも、当のau TOM'S GR Supraは予 選3番手とあって、このままのポジション であれば逃げ切られてしまうことは必至だ った。Nittra MOTUL Zはスタートから逃 げ続けるも、23周目にはau TOM'S GR Supraも2番手に躍り出る。
全車ピットストップを終えた直後から、 それまでも幾度か路面を濡らしていた雨が 唐突に勢いを増す。59周目にNiterra MOT UL Zがまさかのコースオフ。これにより、 au TOM'S GR Supraがトップに立ち、3勝 目をマークするとともに、坪井選手にとっ ては2021年以来2回目、そして宮田選手に
とっては初のチャンピオン確定となった。
坪井選手は「最高の結果を得られたと思 います。2年前にチャンピオンを獲ったと きは、ライバルの結果次第という形で、他 力本願での優勝でした。今回はシリーズリ ーダーとして挑んで、プレッシャーもある 中で、しっかり勝って決められたというの はすごく良かったと思います。いろいろあ るのがスーパーGTなので、最終戦は僕ら に不利益な方向に進まないといいなとは思 っていましたが、案の定、雨が降ったりと か、いろいろ展開も変わって、改めてスー パーGTの難しさを感じましたが、自力で 獲り切ったのでこれ以上言うことはないで すね」と語る。
「実はもてぎに対して苦手意識というか、 不安要素が多くて……」と吐露したのは宮 田選手。「とは言え、先週末に僕としては スーパーフォーミュラで、同じTOM'Sで タイトルを獲っていて。チームとしても士 気が高かったですし、全体的に流れがいい というか、同じメンバーでやっているから こそ、あとはGTでチャンピオンを獲ろう という気持ちが高かったので、そういう部 分では全体的にシーズンを通していい流れ があったのかなと思っています。力強いレ ースができました」とスーパーフォーミュ ラとのダブルチャンピオンが確定。
また、この最終戦には、三つのラストマ ッチがあった。ひとつはZENT CERUMO GR Supraをドライブする、三度のGT500 チャンピオン経験を持つ立川祐路選手の引 退。そしてホンダが使用車両を、2023年を 最後にNSXからシビックタイプRに改め ること。そしてミシュランのGT500クラ スからの撤退だ。同社はGT300クラスで の活動は継続するが、いずれも惜しまれつ つ、檜舞台から去っていった。
FIAインターナショナルシリーズ スーパーGT 2023年GT500クラスチームチャンピオン TGR TEAM au TOM'S
..坪井翔選手と宮田莉朋選手を擁し、au.TOM'S.GR.Supraで2023年はGT500クラスのドラ イバー、そしてチームのダブルチャンピオンに輝いたTGR.TEAM.au.TOM'S。シリーズ3勝を 挙げただけでなく、リタイアも開幕戦の一度のみと高い安定感を誇った。
TOM'Sはトヨタ車一筋にレース活動を続ける古豪チームで、チーム設立は1974年。トヨタ がオイルショックによってワークス活動を休止したことから設けられ、それ以来はル・マン24 時間を含め、国内外のさまざまなレースに挑んできた。スーパーGTには、前身である全日本 GT選手権時代の1995年から参戦しており、1997年に初タイトルを獲得。その後も2006年か ら2023年まで、実に8回ものシリーズ制覇の実績を持つ。2台体制を敷くチームでもあり、も う1台のDeloitte.TOM'S.GR.Supraは、笹原右京/ジュリアーノ・アレジ組に託されていた。 2023年はスーパーフォーミュラ(SF)、スーパーフォーミュラ・ライツ(SFL)にも併せて参 戦。熾烈な戦いを繰り広げたが、チームチャンピオンの座は惜しくも逃している。
FIAインターナショナルシリーズ スーパーGT 2023年GT300クラスドライバーチャンピオン 吉田広樹選手/ 川合孝汰選手
FIA インターナショナルシリーズ スーパー GT 300クラスの第1戦の岡山国際 サーキットは、LEON PYRAM ID AMG(蒲生尚弥/篠原拓朗 組)がPPを獲得。レースでも序盤をリー ドするが、目まぐるしい天候の変化に翻弄 される。それに伴うSCや赤旗等に最も的 確に対応していたUPGARAGE NSX GT3(小林崇志/小出峻組)が中盤に逆転。
小林選手にとってはスーパーGT100戦 目の勝利となり、小出選手にとってはデビ ューウィンとなった。2位はLEON PYRA MID AMGで、埼玉トヨペットGB GR Supra GT(吉田広樹/川合孝汰組)は5位 での発進に。
第2戦富士スピードウェイは、ディフェ ンディングチャンピオンのリアライズ日産 メカニックチャレンジGT-R(ジョアオ・ パオロ・デ・オリベイラ/名取鉄平組)が、 ポール・トゥ・ウィンを達成する。
最初のピットストップ後はトップを明け 渡すも、2回目のピットストップ後には先 行していたmuta Racing GR86 GT(堤優 威/平良響/加藤寛規組)を81周目にコ
ース上で逆転。その後はゴールまで激しい トップ争いが続いたが、辛くも逃げ切りを 果たすこととなった。3位は埼玉トヨペッ トGB GR Supra GTが獲得する。
第3戦の鈴鹿サーキットのPPはSUBA RU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内 英輝組)だ。山内選手にとって、高木真一 選手と並ぶ13回目のPP獲得にもなった。 決勝でも最初のピットストップまでトップ を走っていたが、セオリーどおりの展開は このレースに関しては当てはまらなかった ようだ。終盤になってトップを争っていた のは、いずれも義務づけられた2回のピッ トストップのうち1回を、スタートから1 周後に済ませていたチームだったからだ。 トップに立っていたのはStudie BMW M4(荒聖治/柳田真孝組)で、これを追っ ていたのはmuta Racing GR86 GTと、 埼玉トヨペットGB GR Supra GTだっ た。3台が連なって争い合うも、その最中 にGT500車両の大クラッシュが発生す る。赤旗終了によりStudie BMW M4の 優勝となった。
GT300 クラス 第4戦富士スピードウェイではグッドス マイル初音ミクAMG(谷口信輝/片岡龍 也組)が、実に7年ぶりとなるPPを獲得 する。決勝では多発したSCランや赤旗、 そして天候変化にも対応しつつ、レースの 大半を支配していた。そして、徐々に乾い ていく路面に対して素早くタイヤ交換を行 うも、谷口選手がアウトラップに痛恨のス ピンを喫する。
やはりいち早くタイヤ交換を行っていた GAINER TANAX GT-R(富田竜一郎/石 川京侍/塩津佑介組)が他を圧するスピー ドで順位を上げて、ラスト3周でトップに 浮上。2位はStudie BMW M4、3位がDO BOT Audi R8 LMS(片山義章/ロベル ト・メリ・ムンタン/神晴也組)で、サク セスウェイトに苦しんだ埼玉トヨペット GB GR Supra GTは9位に入るのが精い っぱいだった。
第5戦の鈴鹿サーキットはSUBARU BRZ R&D SPORTがPPを獲得。これで 山内選手はPP最多記録の更新に成功し た。決勝では最初のピットストップを5周
Victory Road そのまま逃げ切れるかと思われたが、な んと最終ラップにガス欠が発生。大幅にス ローダウンしたストレートで、脇を駆け抜け ていったUPGARAGE NSX GT3の大逆転 ディーラーチームのチャレンジは GT300クラス参戦7年目にして成就!
勝利、となったはずだった。しかし、再車 検で最低地上高違反が発覚。UPGARAGE NSX GT3が失格になり、埼玉トヨペット GB GR Supra GTに優勝が戻ってきた。2 目以降と定められるも、それでも早めに行 うチームが出現する。その戦法を採った muta Racing GR86 GTが中盤でトップ に立つ。だが、最大の勝因となったのは2 回目のフルコースイエロー(FCY)提示直 前のアクションだった。
Bamboo AirwaysランボルギーニGT3
(松浦孝亮/坂口夏月組)とUPGARAGE NSX GT3が、ロスを最小限としてトップ を争うように素早くピットに入った。迅速 なピット作業で先にコースに戻ったUPG ARAGE NSX GT3が、最後までBamb oo AirwaysランボルギーニGT3の猛攻を 凌いで2勝目をマーク。一方、埼玉トヨペ ットGB GR Supra GTは、足回りのトラ ブルでリタイアを喫していた。
トップ快走もまさかのガス欠…… しかし大どんでん返しの結末!
第6戦スポーツランドSUGOでは、K-t unes RC F GT3(新田守男/高木組)が PPを獲得する。高木選手は山内選手に奪 われた最多PPをわずか1戦でタイに戻 す。決勝でも序盤をリードするが、20周目 にシェイドレーシングGR86 GT(平中克 幸/清水英志郎組)の先行を許してしまっ た。その後はピットストップのたびにトッ プが入れ替わる展開が続いていたが、終盤 になってその座を射止めていたのが埼玉ト ヨペットGB GR Supra GTだった。
2023 GT300 DRIVER STANDINGS
Rank No. Driver Machine
1位 52
吉田広樹選手/川合孝汰選手 埼玉トヨペット GB GR Supra GT
2位 2 堤優威選手/平良響選手 muta Racing GR86 GT
3位 56 ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手/名取鉄平選手 リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R
4位 65 蒲生尚弥選手/篠原拓朗選手 LEON PYRAMID AMG
5位 18 小林崇志選手/小出峻選手 UPGARAGE NSX GT3
6位 7 荒聖治選手
Studie BMW M4
加藤寛規監督率いるmuta.Racing.GR86. GTを駆った堤優威/平良響組がシリー ズ2位獲得。優勝はないが、若手ドライ バー2人の活躍が光った。
ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手 が名取鉄平選手とタッグを組んだ2023 シーズン、第2戦の優勝もあってシリー ズ3位の成績に。
位はシェイドレーシングGR86 GTが獲得。
相性の良いオートポリスでは しっかり2勝目獲得となり王手 第7戦のオートポリスは、2022年も埼玉 トヨペットGB GR Supra GTが勝ってい る、チームにとって聖地のようなコース。
しかしPPを奪ったのはmuta Racing GR86 GTで、決勝でもスタートから逃げ 続ける。そこに迫ってきたのが、やはり埼 玉トヨペットGB GR Supra GTだった。
18周目に逆転を果たし、しかも最初のピッ トストップではタイヤ無交換を敢行。タイ ヤに厳しいコースでは困難とされた戦略を 無事クリアして2勝目をマークする。2位は muta Racing GR86ながら、最終戦を前 に20ポイントもの差をつけられてしまう。
muta Racing GR86 GTは最終戦でポ ール・トゥ・ウィンを果たしてもなお、埼 玉トヨペットGB GR Supra GTがノーポ イントに終わることだけが、逆転タイトル の条件だった。そんなmuta Racing GR86 GTながら、モビリティリゾートもてぎの予 選では第1関門のポール獲得をクリア。決 勝でもスタートからトップを快走する。
しかし、そこに忖度なく迫ってきたのが JLOCランボルギーニGT3(小暮卓史/元 嶋佑弥組)だった。15周目にトップに立ち、 全車がピットストップを終えると、再びト ップに立つ。そんな中、それまでも何度か 路面をうっすら濡らしていた雨が終盤にな って強く降り始めた。ここで大勝負に討っ て出たのがmuta Racing GR86 GTで、 ウェットタイヤに交換したのだ。しかし、 無常にも雨は間もなく止んでしまう。
これでJLOCランボルギーニGT3の小暮 選手と元嶋選手がコンビを組んで初優勝。
FIAインターナショナルシリーズ スーパーGT 2023年GT300クラスチームチャンピオン
チームにとっても結成30年目のメモリアル ウィンとなった。そして7位でゴールした 埼玉トヨペットGB GR Supra GTが、悲 願の王座を獲得した。ビッグイベントでの 戴冠は、吉田選手、川合選手とも初めてだ。 「素直にまずはうれしいです」とは吉田選 手のコメント。「自分はこのチームに移っ て5年目で、何度かチャンピオン争いはで きたんですけど、ツメが甘い部分がありま した。だから今年は同じようなミスをせ ず、自分たちのベストを尽くすことを心が けてきまして、どのレースも紙一重でした が、レースごとに拾えてきたかなと思って います。その結果がシリーズチャンピオン なんですが、どのレースも苦しくて、ドラ イバーとしてプレッシャーをすごく感じて いました。一番の王座獲得の要因は、やは りSUGOだったと思います。もし、18号 車(UPGARAGE NSX GT3)が失格にな Green Brave
っていなければ、2号車(muta Racing GR86)がリタイアしていなければ、こう いう状況にはならなかったでしょう。その 次のオートポリスで連勝できたことが、今 シーズンのターニングポイントだったか な、と思います」と振り返る。
川合選手も「本当にうれしいの一言です ね。僕もこのチームに入れてもらって4年 目、一緒に組んでいる吉田選手やチームの 皆さんに、いろいろ教えていただいたり、 助けていただいたりということが非常に多か ったです。だから、しっかり結果として返し ていきたいと思っていながら、なかなか一 歩届かずというのが過去3年間続いていた ので、それが今回このようなチャンピオンと いう形で残せたことが非常にうれしいです。 シーズンを通して考えると、安定して常に ポイント圏内で走れていたのが、非常に大 きかったと思っています」と喜んだ。
緑色のカラーリングが特長の埼玉トヨペットGreen Braveは、その名が示すとおり自動車ディー ラーが母体のチームとして、初めてスーパーGTでタイトルを獲得したチームとなった。チーム設 立は2013年で、レース活動はスーパー耐久シリーズから開始する。初戴冠は2015年のST-4クラ スで、翌年からST-3クラスに移行し、トヨタ・マークXやトヨタ・クラウンRSを走らせた。 スーパーGTには2017年から参戦し、GT300クラスでマザーシャシーのトヨタ・マークXを走 らせた後、2020年にはトヨタ・GRスープラにスイッチ。現在も所属する吉田広樹選手と川合孝 汰選手によってデビューウィンが飾られ、最終戦も制してランキング2位を獲得。
そして2023年はシリーズ2勝を挙げて、悲願の初タイトルを獲得した。また、スーパー耐久に おいてもGR Supra GT4でST-Zクラスを制して2冠達成ともなった。他にもTOYOTA GAZOO Racing GR86/BRZ CupやYaris Cupにも積極的に出場しており、すべてのカテゴリーでディー ラー各店舗の社員メカニックがマシンのメンテナンスを担当する。
Road ~栄光に向かって~
またレースフォーマットにも大きな改変 があった。予選と決勝の間にスーパーヒー ト(SH)が新たに設けられ、決勝グリッド は予選とSHの結果をポイントに換算して 集計したランキングによって決定されるこ とになり、それに伴って1レースの走行セ ッション数は増加した。
パリラX30の無改造ワンメイクで2022 年まで行われてきたFS-125部門は、新た にFS-125CIK部門 とFS-125JAF部門の ふたつに分かれ、それぞれに選手権が冠さ れることになった。FS-125CIK部門は、 前年のFS-125部門の車両規定をほぼ継 承。その一方で、レースフォーマットに関 してはOK部門と同様にSHが採用されて いる。一方のFS-125JAF部門は、エンジ ンの機種こそFS-125CIK部門と同じなの だが、そこに排気リストリクターを装着し てパワーを抑えた仕様。また、最終ポイン トランキングがシリーズ全戦の50%を有 効(2022年のFS-125部門では75%が有 効)とする方式に変わったのも、チャンピ オン争いの様相に大きな影響を与えるもの 023年の全日本カート選手権は、 レギュレーションの改訂のみな らず、カートレースを取り巻く 環境の激変もあって、大きな様変わりを見 せた。2023シーズンはOK、FS-125CIK、 EV、FS-125JAF、FP-3という5つの部門 に全日本選手権がかかり、これまでFS125部門とFP-3部門で採用された東西2 地域制は廃止。各部門ごとにひとつの全日 本シリーズが組まれて実施された 最高峰のOK部門は、国際レースのトッ プカテゴリーと共通の車両規定を採用。水 冷125ccエンジンは公認されたものの中 から機種を選ぶことができ、チューニング も許されている。
そして水冷125ccエンジンのイアメ・
その2023シリーズにもっとも大きな影 響を及ぼしたのがタイヤだった。これまで OK部門にはタイヤメーカー3社が参入し て熾烈な開発競争を繰り広げてきたのだ が、そのうちブリヂストンと横浜ゴムがカ ートタイヤ事業から撤退。その結果、スペ シャルタイヤが特色だった最高峰部門は、 ダンロップ製市販ハイグリップタイヤのワ ンメイクで行われることになったのだ。
JAF全日本カート選手権 PHOTO/今村壮希[Souki IMAMURA]、長谷川拓司[Takuji HASEGAWA]、 JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS] REPORT/水谷一夫[Kazuo MIZUTANI]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]
空冷100ccエンジンのヤマハKT100S ECを無改造ワンメイクで使用するFP-3 部門は、FS-125JAF部門と同様に、有効 50%で最終ポイントランキングが集計さ れることとなった。
史上初めて電気モーターとバッテリーで 駆動するマシンによって行われる全日本選 手権として、大きな注目を浴びたEV部門 は、事前オーディションにより選抜された 10名のドライバー(最終戦のみ11名)で2 年目のシリーズが戦われた。
各々のレースは、OK部門、FS-125CIK 部門、FS-125JAF部門、FP-3部門が1大 会2レース制、EV部門が1大会1レース制 によって行われた。2022年のOK部門は2 デイで全大会が行われたのだが、2023年 はすべて1デイで大会を実施。新たにSH が設けられたOK部門とFS-125CIK部門 では、公式練習とタイムトライアルを含 め、1日で実に8つのセッションを走るこ とになった。
各々の大会はすべての日程で、OK部門 とFS-125CIK部門、FS-125JAF部門と だった。
FP-3部門をそれぞれ同時開催。OK部門と FS-125CIK部門は4大会8戦で、FS-125 JAF部門とFP-3部門は5大会10戦でシ リーズの日程が組まれた。EV部門は全3戦 で、すべてOK部門とFS-125CIK部門の 大会に併催されている。
ただし、OK部門とFS-125JAF部門は シリーズ最後の大会が不成立となり、結果 的にOK部門は全6戦(有効5戦)、FS125JAF部門は全8戦(有効4戦)でチャン ピオンシップが決着。こうして新たに生ま れた5人の王者たちの声を聞いてみよう。
Victory Road 台超のエントリーを集めていた 2022年までのOK部門だが、 タイヤメーカーのサポートによ って活動していたドライバーたちが姿を消 したこともあり、2023シリーズの幕を開 けるもてぎ北大会はエントリー8台(うち 1台は負傷欠場)で行われることになった。
その寂しさを吹き飛ばしたのが、新たな ヒーローたちの台頭だ。雨に濡れたコース
で第1戦のウィナーとなったのは、OK部 門初参戦、そして2年半ぶりのカートレー ス復帰戦という吉田馨選手。続く第2戦で は、43歳の綿谷浩明選手が見事な逆転劇を 演じ、全日本の最高峰部門15年目で初優 勝を果たした。
このとき、2023年の覇者はまだその陰 に隠れていた。第1戦3位、第2戦ノーポ イントでこの大会を終えたOK部門2年目 の藤井翔大選手だ。
「吉田選手は今年から同じチームに入った 選手で、年齢こそ吉田選手が上だけれど、 OK部門2年目の自分が1年目の選手に負け て、やっぱり悔しさは大きかったですね」。
2022シリーズのランキングは26位、最 上位は13位。とはいえ藤井選手は、この 年の最後に確実な手応えをつかんでいた。
「昨年までは一発のタイムが先輩たちと同 じか、やや劣るくらいまで行けるんだけれ ど、レースの運び方やタイヤの持たせ方で 負けていたんです。それが、年末に行われ たOK部門最後のレースで、やっとスペシャ ルタイヤの感覚をつかむことができました。
今年のもてぎの開幕戦でも、前日のドライ の練習ではマシンと体がすごく同調して、 動いてくれている感覚がありました」。
その手応えが実ったのが次のSUGO西 大会。藤井選手は速さで勝る後輩ドライバ ーを巧みなタイヤマネジメントで追い上げ て逆転、堂々の2連勝を飾った。
「やっと、やっと勝てたって思いました。 ずっと応援してくれた家族や、カートから 離れようと思っていた僕を引き留めて励ま してくれたDragoCORSEの代表、ずっ といいエンジンを提供してくださったチー ム代表にも、ようやく恩返しできたかなっ て思いました」。
藤井選手は続く本庄大会でも2連勝を果 たし、6戦4勝で王者に輝いた。そして2024 年、藤井選手は新たな一歩を踏み出す。 「今年でカートは卒業して、来年は四輪の 方に、おそらくスーパーFJに進む予定で す。将来はレースで食べていけるドライバ ーになりたい。『これは藤井じゃなければ できない』って言われるドライバーになり たいです」。
021年にジュニアカート選手権 FP-Jr部門を制した鈴木恵武選 手は、2022年に全日本FP-3部 門に挑んだのだが、未勝利でこの年を終 了、固い決意で2023年に臨んだ。
「カートで速いのは “鈴木恵武”って言われるのが目標」
「ジュニア選手権から全日本選手権に参戦 してきて、やっぱり全日本でチャンピオン を獲るのは自分のキャリアの上でも重要な ことだと分かっているので、今年こそ絶対 にチャンピオンになろうと思っていました」。
もてぎ北での開幕戦で鈴木選手は圧勝を 遂げ、最高の形でシリーズをスタートした。
「FP-3部門では初めて走るコースが多か ったけれど、今年の開幕戦のもてぎは小さ いころから走り慣れたコースで、気持ち良 く走って優勝することができました。昨年 は慣れないコースでのレースを経験してき たことが、今の自分の役に立っていたんだ と思います」。
結果的に2023年の優勝はこの1回だけ だったのだが、鈴木選手はその後も上位入 賞を続け、着実にシリーズポイントを積み 重ねてタイトル争いをリードしていった。 「勝てないことの焦りはありませんでし 2
た。レースが終わった後には『もっとああ していたら』と思うこともあったけれど、 今振り返ってみると、上位をキープできた ことはシリーズを考えてみても良かったと 思います」。
迎えたシリーズ最後の大会。佐藤佑月樹 選手と一騎討ちの形でチャンピオン争いに 臨んだ鈴木選手は、2レース目のSHが終わ った時点で戴冠を確定させた。全8戦で表 彰台5回。予選やSHでも大きく崩れるこ とはまずなかった。
「今までのシリーズでは開幕戦で出遅れて ポイントをリードされて、そこから追い上 げていくような展開が多かったけれど、今 年は開幕戦で優勝できたことでうまく歯車 が噛み合って、いいシーズンにできたと思 います。1年前は焦りなどがあって順位を 落とすことが多かったけれど、今年は開幕 戦で勝てたこともあって、落ち着いて周り を見ながらレースすることができたと思い ます。メンタル面では成長できたと思って います」。
限定Aライセンスを取得できる年齢を間 近に控え、2024年は鈴木選手にとって大切
2023年全日本カート選手権FS-125CIK部門ポイントランキング Rank.
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な年になるはずだ。
「来年のことはまだ何も決まっていないん ですが、自分の希望としてはOK部門に参 加しながら四輪の準備を進めていく年にし たいです。安定した速さを見せつけて、今 カートで速いのは誰?ってなったときに 『鈴木恵武だよね』って言われるようになり たいです」。
日本カート選手権で初めて女性 のチャンピオンとなったのが、 EV部門で1年目の翁長実希選 手。カートを経て四輪レースに上がり、現 在はKYOJO CUPやGR86/BRZ Cup で活躍する翁長選手とEVカートとの出会 いは、運命的と言いたくなるものだった。
「私は昨年、沖縄から御殿場に出てきたん ですが、たまたまオートパラダイス御殿場 に出かけたときにTOM'SさんがEVカー トのテストをしていたんです。そのカート にすごく興味を持ち、『これはどうやった ら乗れるんですか』ってテストのスタッフ の方に尋ねたら、全日本のドライバーオー ディションがあると教えていただいて、そ のオーディションを経てシリーズに参戦で きる運びとなりました。もう本当に、すご い出会いですよね」。
久々のカートレース、初めてのEVカー ト。それでも翁長選手は第1戦5位、第2 戦4位と着実にシリーズポイントを獲得 し、ランキング2番手で最終戦に臨んだ。 「女性初の全日本チャンピオンはすごく狙 っていました。自力ではチャンピオンにな れない状況だったけれど、その中でもしっ かり自分のベストを尽くして、シーズンの 集大成にしようと思っていました」。
そして翁長選手は、決勝でふたつ順位を
2023年全日本カート選手権EV
5位 浅見謙心選手
上げて自己最上位の2位でフィニッシュ、 見事チャンピオンに輝いた。
「初めての鈴鹿南コースでのレースで、周 りに比べてまだヘタクソなところもあった んですけど、そこをしっかり見極めて、ち ゃんと一発で抜くこともできたのは良かっ たと思います。与えられたチャンスの中で ベストは尽くせたと思います。全日本カー ト初の女性チャンピオンという称号は非常 に光栄です」。
EV部門はマシンもセッティングもワン メイクのシリーズ。そんなレースに、翁長 選手は他にない価値を見出していた。 「マシンは重いけれど加速は爽快ですし、 フロントブレーキがあることでコントロー ルの幅がすごくあって、ドライバーのウデ の差が非常に出やすいマシンだと思いま す。乗っていて、とても楽しかったです。
今年のEV部門は、最小限の費用でプロに 近い環境でレースができて、若い子たちが プロとしての振る舞いなどを学べるシリー ズだと感じましたね」。
2024年、翁長選手の意欲はさら に高まっている。
「四輪レースの日程との兼ね合いも あるけれど、EV部門には何とかま た出たいです。もしチャンスをいた だけるなら、2年連続のチャンピオ ンを目指して頑張りたいです」。
EV部門 2023年チャンピオン 翁長実希選手
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UGO西での2023シリーズ最 後の大会が不成立となり、佐藤 佑月樹選手は戦うことなくチャ ンピオン確定のときを迎えた。
「SUGOでレースをやってほしかったな って思います。SUGOで2連勝して、走っ ている姿で自分がチャンピオンだぞって示 したかったですね。ただ、不成立になって 早くチャンピオンが確定してほしい気持ち もあって、複雑な気分でした。チャンピオ ンになれたことは本当うれしいけれど、 FS-125CIK部門とのダブルチャンピオン を獲れなかったのがちょっと残念です」。
「自分自身が一番だと、 思っていなければダメ」
の速さが結果に結びつくようになったのに は、2022年末にポルトガルで開催された ROTAX MAX CHALLENGE GRAND FI NALSへの参戦が影響しているという。 「グランドファイナルでは、タイムトライ アルは良かったんですけど、予選落ちして 悔しくて……。タイトラが速いだけではダ メで、レースに強くなるためにはどうした らいいんだろうって、日本に帰ってきてか らずっと考えていました。いい経験になる レースでした」。
シリーズ開幕の神戸大会を欠場した佐藤 選手は、第3戦から参戦を始めると、その 初戦から優勝争いに加わり、6戦で4回の トップゴール(うち1回はペナルティで降 格)を果たし、残る2レースも表彰台に立 ってみせた。
「今年の最初のころのレースではぶつかっ たりミスしてばかりで、表彰台にも全然乗 れなかったんですけど、夏ぐらいからだん だん表彰台に乗れるようになってきまし た」。
その経験から佐藤選手が実行したことの ひとつが、ステアリングホイールの持ち方 の修正だった。これは効果があったという。 「脇を締めるような持ち方に変えて、ハン ドルを抑えられるようになりました。海外 の選手たちがそういう持ち方をしていたの で、試してみようと思ってチームの代表に 相談したら、イン側の腕を引くようにすれ ばハンドルを抑えられるよって教えてもら えたんです」。
小学6年生までを過ごした北海道から、 レースがしやすい環境を求めて栃木県に引 っ越してきた佐藤選手。2024年はいよい よ全日本OK部門への参加を予定してい
ジュニア時代から定評のあった佐藤選手 2023年全日本カート選手権FS-125JAF部門ポイントランキング
Rank.
る。そして、その目はさらなる未来に向け られていた。
「将来の目標は、ヨーロッパでGT選手権 やル・マンの選手権に出ること。あと、F1 にも乗りたい。憧れのドライバーはとくに いません。憧れたら自分がその選手に負け てる感じがして、嫌なんですよ。やっぱり 自分自身が一番だと思ってなければダメだ と思います」。
ュニアカート選手権のFP-Jr部 門を2022年に制し、特例によ って12歳で全日本FP-3部門 に参戦することとなった酒井龍太郎選手。
次の大会をFIAカーティング・アカデミ
その最初の大会を2位+優勝で終えると、 次の大会をFIAカーティング・アカデミ ー・トロフィー参戦に伴う海外遠征で欠場 し、続く本庄での第5戦/第6戦に臨ん だ。ところが、その第5戦でアクシデント に遭い左腕を骨折し、第6戦は欠場に。こ こから酒井選手の苦闘が始まった。
「骨折してから結構長いこと腕に力が入ら
部門制覇!
ない状態が続いていまして、第7戦/第8 戦の中山大会ではまだ完全じゃなくて、も う右手一本とそれを支える左手、みたいな 状態でした」。
それでも酒井選手は、中山大会で厳しい バトルを勝ち抜き2連勝を果たして見せた。 「中山大会はレースに復帰して3週間くら いで、決勝30周っていう長いレースで体 力が持つのか不安がありました。とくに中 山は右回りのコースなので、本来は左腕を 使っていくんですけれど、右手でほとんど の力を使っていく感じでした。あとは、普 通だったら考えられないようなブレーキで タイヤをロックさせて向きを変えたり、ア クセルを早く踏んでマシンを動かしたりし て、もうイレギュラーな乗り方をしていた 状態でした」。
シリーズ最後のSUGO西大会でも、酒 井選手は骨折の影響が残る中でふたつのレ ースをトップでゴール(第10戦はペナル ティで3位に降格)し、チャンピオンを確 定させた。
「SUGOではクルマの速さがあって、第
2023年全日本カート選手権FP-3部門ポイントランキング
10戦では降格になったけれどぶっちぎる ことができました。もう本当にクルマやチ ームの力に救われたレースでした」。
2023年は骨折がなければ60戦以上に参 加予定だった。まさにレース漬けの毎日な のだが、それが楽しいと酒井選手は言う。 「サーキットで走っていないときは自宅と コースを移動中って感じですし、それ以外 の時間はシミュレーターで四輪の練習をす るかフィジカルトレーニング。ゲームにも まったく興味がないんです。でも、生活の すべてがレースに向いている毎日は、すご く充実しています」。
これで日本カート選手権の3部門でタイ トルを獲った酒井選手。2024年は条件がク リアになれば、全日本で上の部門に進みた いと語る。ひとつの目標は、5部門で王座に 就いた佐藤蓮選手を超えることだ。 「あと残っているのはFS-125部門とOK部 門なんですけれど、佐藤選手がFP-3部門以 外すべてで(地方選手権も含めて)チャンピ オンを獲っているので、僕も同じように全部 チャンピオンを獲っていきたいと思います」。
酒井龍太郎選手 ミツサダ PWG RACING
2/24土-25日
東京・
お台場
モータースポーツを やってる人もやりたい人も 楽しみ方が見つかる コンテンツ盛りだくさん!
JAFモータースポーツサイトには、モータースポー ツのあらゆる楽しみ方や関わり方を紹介したペー ジを多数ご用意しています。競技ライセンス所持 者の皆さんに向けた「公示・JAFからのお知ら せ」や「競技会スケジュール」、「国内競技結果 (リザルト)検索」の他、これからモータースポーツ を始めたい方々には「モータースポーツとは?」や 「選べるコンテンツ~あなたに合った楽しみ方を 紹介~」、「お手軽参戦! オートテスト」などをご 用意。ぜひ一度、ご覧ください!
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親子で“見て”、“聞いて”、“触って”、“体感する”! 「JAFモータースポーツジャパン イン お台場 2024」
サーキットの興奮を都会で感じることをテーマに行われてき た「モータースポーツジャパン・フェスティバル」が、2021年 からJAFが主催となって再出発。今回も東京・お台場特設会 場にて土日の2日間に渡って開催される。詳しくは、JAFモー タースポーツサイトの特設ページへ!
2021年は鈴鹿サーキットで開催された「JAFモータースポーツジャパン」。 前回の開催は2022年で、その舞台は東京・お台場に戻り、話題のフォーミュ ラEなど各カテゴリーの現役マシンが特設コースをデモ走行。自動車メー カーの次世代車両を使った模擬ラリーやオートテストも開催された。 https://motorsports.jaf.or.jp/enjoy/motorsportjapan
4/5金-7日 三重・鈴鹿
F1日本グランプリ鈴鹿が 2024年は4月開催に変更 好評JAFブースもあるよ♪
これまで毎年10月下旬の秋頃に開催され てきた鈴鹿サーキットのF1日本グランプ リが、2024年は4月5~7日に開催。GP スクエアには毎年好評の「JAFブース」を 展開。一緒に日本人ドライバー角田裕毅選 手を応援しよう! 大会の詳しい情報は鈴 鹿サーキット公式WEBサイトまで。
FORMULA1 MSC CRUISES
JAPANESE GRAND PRIX 2024
https://www.suzukacircuit.jp/f1/
モータースポーツ界で注目を浴びる女性ドライバー。
特にFIA世界耐久選手権(WEC)では 女性の躍進が際立っている。
ここではWECで活躍するキーパーソーンから、 それぞれが抱くモータースポーツへの想いを聞いた。
夢を諦めない FIA世界耐久選手権で活躍する、チャンスを掴んだ女性たち その臥薪嘗胆な道のりとは?
世界を翔ける伝道師 「アイアン・デイムス」 女性トリオで WEC に挑む! 笑顔に隠れたメンバーたちの苦悩
年、モータースポーツ界で存在 感を増してきている女性ドライ バーたち。中でも注目されてい るのがFIA世界耐久選手権(WEC)だ。
2023シーズンの第3戦スパ・フランコ ルシャンでは、LMGTE-Amクラスに参戦 する22歳のフランス人、リル・ワドゥ選 手がWEC初の女性ウィナーに輝き、最終 戦バーレーンでは、女性トリオで参戦して いるチーム「アイアン・デイムス」がクラス 優勝を果たしている。
特にこのアイアン・デイムスは、2022 年の富士大会ではクラス2位入賞を果たし ており、記憶にある人も多いだろう。
名実ともに注目されているWECの女性 ドライバーたち。ここではアイアン・デイ ムスに焦点を当て、メンバーから、どんな 思いを持って戦っているのかを聞いた。
昨今では、FIAが「ガールズ・オン・トラ ック‐ライジングスターズ」というオーデ ィションを展開しており、有望な若手女性
にスカラシップを与えるなど、女性ドライ バーを取り巻く環境は向上し始めている。
そんな中で、2023年9月に富士スピー ドウェイで開催されたWEC第6戦には、 日本の女性ドライバーが集まっていた。こ れは、JAFウィメン・イン・モータースポ ーツ作業部会の飯田裕子座長とアイアン・ デイムス・プロジェクトの協業により実現 した「アイアン・デイムス ミート・アン ド・グリート」企画に参加するためだった。
現場を訪れた選手たちは、アイアン・デ イムス・プロジェクトのピットの様子を見 学。世界選手権を戦うアイアン・デイムス のメンバーとの懇談も行い、将来に向けた 貴重なアドバイスなどが得られている。
この世界で大切なのは 夢を持ち続けること
参加した彼女たちにとって、恐らく強い 印象が残ったのは「絶対に夢を諦めないで」 という言葉だったに違いない。
WEC第6戦富士大会で開催された 「IRON DAMES Meet and Greet」 2023年9月のFIA世界耐久選手権(WEC)第6戦富士6時間レース の会場で開催された、アイアン・デイムスと日本の女性レーシング ドライバーたちとの交流会「ミート・アンド・グリート」では、各カ テゴリーで活躍する選手が集まり、富士スピードウェイとアイアン ・デイムスの協力により、ピット見学やグループトークが行われた。
これはアイアン・デイムスでプロジェク トマネージャーも兼務するドライバー、ラ ヘル・フライ選手からの言葉で、フライ選 手自身の経験に基づいた言葉でもあった。 いまや、WECシリーズの中でも認めら れるチーム、そしてドライバーに成長した 彼女たちだが、ここまでの道のりには、女 性ということで、それぞれ苦労があったの だとフライ選手は語ってくれた。
「ドライバーだけではなく、レース界はエ ンジニアやメカニックも男性が中心。私が この世界に入った15年前は、現在よりも っと女性が少なくて、とても孤独だった。 それに女性ドライバーは、男性たちの2 倍、自分を証明しなければならない。コー スでの速さはもちろん、コース外でもそ う。いかにレースに対して決意を持ってい るか、という証明も含めてね。まず、相手 に自分の話を聞いてもらえるための努力を しなければならなかった」。
「私は資金が集められなくて、シングルシ ーターのキャリアはフォーミュラ3までで 諦めた。けど、それでもアウディのファク トリードライバーになれたことはラッキー だったと思う。もちろんシングルシーター を止めざるを得なくなった時は寂しかった けど、そこから自分の夢を切り替えた。と にかく『夢を持ち続けること』がこの世界で は重要だし、私はいつもオープンマインド でオファーを受け入れてきた」。
スイス生まれのフライ選手は、レーシン グカートからフォーミュラにステップアッ プして、フォーミュラ・ルノー2.0を経て ドイツF3選手権に参戦。2009年には同選
WEC最終戦バーレーンでついに LMGTE-Am を制す! 手権で女性初の優勝をも果たしている。
その後はGTレースへ移り、アウディの ファクトリードライバーとしてDTMや ADAC GTマスターズ、アウディR8 LMS カップなどに参戦。近年ではガルフ12時間 やニュル24時間などの耐久レース参戦が中 心となり、長くGT3車両を操ってきた。
ここに戻ってきた
どうしても戻りたかった
プロフェッショナルとして活躍してきた フライ選手とは異なる経歴ながら、トリオ の中では”最速のアマチュア”として、予選 でポールポジションを争っているサラ・ボ ヴィ選手。しかし、彼女はアイアン・デイ ムスに入るまで、レース界においてほとん どチャンスを得られて来なかったという。
「アイアン・デイムスがドライバーを探し ていることをSNSで知り、eメールを送っ てチャンスを得たんだけど、そのころの私 はすでにレースをしておらず、キャリアは ほとんど終わっていたの。だから、加わっ てすぐは大変だった。今より10kg以上も 太っていたし、レースカーにたった30分 乗っただけでヘトヘトだった」。
「でも、このプロジェクトのおかげで、私 は新しいスタートを用意してもらえたし、 今ではアマチュアの中でも上位を争えると ころまで進化してきた。2021年に加わっ てから3年間、美しいストーリーが続いて いると思う。だから、ドライビングを別に すれば、私の役割は『本当にキャリアを終
えるまでは、まだ終わっていない』 ということを示すこと。私はグラン ドスタンドでラヘルたちの活躍を観 ている立場だった時期もあるけれ ど、モータースポーツを愛している から、ここに戻ってきた。そして、 どうしても戻りたかった」。
ボヴィ選手はベルギー生まれ。13 歳でカートを始め、フォーミュラ・
アイアン・デイムスは、WECのLMGTE-Amクラスに 女性トリオで参戦する唯一のチーム。2022年富士大 会では2位入賞を果たしたことも記憶に新しいが、 2023シリーズはさらにパワーアップ。第1戦セブリ ングと第5戦モンツァでポール・ポジションを獲得し て、最終戦の第7戦バーレーンではポール・トゥ・ウィ ンを飾り、WECに新たな歴史を築いた。
チームの司令塔でもあるラヘル・フライ選手。フォー ミュラ3からGTレースに転向し、アウディのファクト リードライバーとして世界を走った。
“最速のアマチュア”とも評されるサラ・ボヴィ選手。チーム では予選アタックを担当して秘めた才能を開花させる。
ルノー1.6の参戦経験があるものの、資金 不足により活動休止を余儀なくされる。GT やツーリングカーレースへのスポット参 戦、そしてWシリーズへの挑戦などもあ ったが、一貫性のあるキャリアは構築でき ない状況が続いた。
アイアン・デイムス加入を果たしてから は才能を開花させ、2022年のWECモンツ ァ6時間では、女性ドライバーとして史上 初のクラスポールポジションを獲得。同年 のバーレーン8時間や翌年のセブリング 1000マイルでもポールを獲得し、チーム に欠かせない予選アタッカーとなっている。
私たちはブランドを 代表する存在だから
アイアン・デイムスのエースドライバー であるミシェル・ガッティン選手も、ボヴ ィ選手と同様にキャリア形成は大変だった 様子。現代のように女性向けの育成プログ ラムもない時代から孤軍奮闘してきたが、 チーム加入後は生活が一変したという。 「アイアン・デイムスに加わってから、家
カートからこの世界に入ったボヴィ選手は、早い時 期にキャリアが途絶えてしまったものの、アイアン・ デイムスに出会ったことで見事返り咲いた。
あらゆるレースを体験するもキャリア形成には繋が らなかったミシェル・ガッティン選手。アイアン・デイ ムス加入後は「生活が一変した」と語る。
にいる時間が短くなったし、世界中を旅し て様々な選手権に出ているから、それをハ ッピーに思っている。以前は、年に一つの 選手権に出て、年間6~7レースできれば
アイアン・デイムスの”妹分”であるドリアーヌ・パン選手。 19歳ながらWECではLMP2クラスに挑戦し、第1戦セブリン グでは、いきなり3位表彰台を獲得して注目を浴びた。
キャリアも、まだ諦めていない」。
「だから、全ての生活がレース中心になっ た。それぞれのレース前には、そのための 準備をしているし、現在はプロジェクトが どんどん大きくなって、レース以外にも 様々なイベントがある。そう、マーケティ ング関連の仕事もあるわけ。私たちはブラ ンドを代表する存在だからね」。
「今後は、もっともっと若い女性カーター たちがここに参加してくれることを期待し ている。私にとって、カートは身近なもの で、私もそこから出てきたから。だから将 来は、いつか私がレースをしなくなって も、若い女性ドライバーやカーターたちを サポートしていきたいと思っている。でも その前に、私の夢は、今でも『ファクトリ ードライバーになること』なんだけどね」。
スカート選手権では2019年に女性チャン ピオンを獲得。その後はFIAガールズ・オ ン・トラック-ライジングスターズに挑戦 するも、最終選考でマヤ・ヴェーグ選手に 敗退してしまう。この頃からアイアン・デ イムスとの接点が生まれてGTレースへ参 戦。そして、2022年にはフェラーリ・チャ レンジ・ヨーロッパシリーズにフル参戦を 果たし、14戦で9勝、ポディウム13回、ポ ールポジション10回という圧倒的な戦績 でシリーズチャンピオンを獲得している。
そう語るパン選手は、いわゆるウィンタ ーシリーズとして久々に復活したFIA-F4 サウスイースト・アジア選手権の第2戦と 第3戦に出場。各3レース制で、初参加な がらレースごとに順位を上げ、最終大会で はレース1で3位、レース2で2位、そし て最終レースでは優勝を飾っている。
カート以降はGTマシンの経歴が多いパ ン選手だが、シングルシーターへの挑戦は 今後もチャンスがあれば、可能性は充分だ。
また、アイアン・デイムスには、パン選 手に続いて、ナタリア・グラナダ選手とい うカーターも控えており、今後も毎年メン バーを加えていく予定だという。
女性ドライバーの系譜が途切れ ないよう、そのチャンスと可能性 を広げていくのが目標だとラヘ ル・フライ選手は語る。将来は日 本の女性ドライバーもこのライン ナップに加わる日が来るのか。期 待したいところだ。 ラッキーという感じだったけど、今では年 間17レースもすることができている」。
デンマーク生まれのガッティン選手は、 レーシングカートからステップアップし、 フォーミュラフォード・デンマークではシ リーズ3位入賞を果たしている。その後は VWシロッコRカップやドイツのポルシェ カレラカップ参戦のほか、デンマークのス トックカーレースなどにも挑戦し、2016 年には優勝もしている。その後はフライ選 手と耐久レース参戦が続き、アイアン・デ イムスから挑戦したフェラーリ・チャレン ジ・ヨーロッパシリーズでは、2021年に シリーズ史上初の女性王者に輝いている。
目標はハイパーカー 究極の夢は、F1
そんなアイアン・デイムス所属の彼女た ちにとって「妹分」とも言える存在が19歳 のフランス人、ドリアーヌ・パン選手だ。
彼女は9歳からカートを始めて、フラン
年末に行われたWECのアワードセレモニーに盛装で出席 したアイアン・デイムスのメンバー。パン選手は2023年の 「レボリューション・オブ・ザ・イヤー」を獲得した。
フライ選手を始めとしたマネージングサ イドはパン選手のポテンシャルを見抜き、 より早く成長させるために、WECではい きなりLMP2のシートを用意。2023年は LMP2でプレマ63号車をドライブした。 「男性のファクトリードライバーとクルマ をシェアすることで、とても勉強になって いるし、それが自分の成長につながると思 っている。現在はLMP2マシンをドライ ブしているけど、目標はハイパーカーに乗 ること。でも、究極の夢はフォーミュラ 1。私は4歳の時、F1に憧れてレースを始 めたから、もちろんシングルシーターでの
日 女性にはたくさんの 可能性が開かれている あらゆる分野でキャリア獲得を! デボラ・メイヤー氏の願い 本の若い女性たちに、WEC第6 戦富士で開催された「ミート・ アンド・グリート」で刺激を与 えたアイアン・デイムス。そのメンバーが 所属するアイアン・デイムス・プロジェク トを立ち上げた人物は、フランス人の女性 実業家、デボラ・メイヤー氏だ。
彼女はプロジェクト・ファウンダーとい う立場で活動しているが、このプロジェク トはビジネスパートナーであり、夫でもあ るクラウディオ・スキアヴォーニ氏ととも に始めている。ここからは、設立の理由や 経緯、方向性などをメイヤー氏に伺った。 「私は銀行業界の金融部門でキャリアを始 め、後に株式部門でも働きました。約15 年前、エグゼクティブMBAを取得した後 に銀行業界を去り、自分の会社を立ち上げ ました。主に有形・無形資産への投資を行 う企業です。そして、モータースポーツ活 動は約10年前に始め、クラウディオと一 緒に、クラシックカーとモータースポーツ 活動に深く関わるようになりました」。
「私たちは二人とも、レーシングライセン スを取得してフェラーリでレースを始めて います。私はフェラーリ・チャレンジ・ヨー ロッパからスタートして、主に欧州でいくつ かのGT3レースに出場しました。彼は、今 でもWECでレースを続けています」。
スキアヴォーニ氏は「アイアン・リンク ス」のドライバーとしてLMGTE-Amクラ スに参戦中。アイアン・デイムスはピン
ク、アイアン・リンクスはイエローの車両 で、ピットも隣り合ってWECに参戦して いる。
そして現在のメイヤー氏は、ドライバー ではなく”裏方”として活動している。
「一方、私の方はレース活動をストップ し、アイアン・リンクス・モータースポー ツ設立の方に、より力を注いできたので す。 そして2018年に、アイアン・デイム ス・プロジェクトを考案して、発足させま した。このプロジェクトは、モータースポ ーツにおける女性の地位向上を目的とした ものです。女性も競うことが可能であるこ と、そして、エンジニアやドライバー、メ カニック、ジャーナリストなどなど、モー タースポーツに関わるあらゆる分野でのキ ャリア獲得が可能であることを示す。これ が、アイアン・デイムス・プロジェクトの 目的なのです。モータースポーツの分野で は、女性にたくさんの可能性が開かれてい ますからね」。
有能な人材が多い世界は 助けが必要なときもある
「アイアン・デイムス・プロジェクト設立の 背景の一つには、私のキャリアが関係して います。先ほどお話ししたように、私は金 融出身ですが、金融業界も他の多くの業界 と同様、往々にして女性にとって挑戦的で、 難しいわけです。自分は有能でスキルがあ り、競争力があり、実際にそれができると
富士スピードウェイを走るアイアン・リンクスの60号車。イエローとピンクの車体がトレードマークだ。
アイアン・デイムス・プロジェクトのファウンダーを 務めるデボラ・メイヤー氏。FIAウィメン・イン・モー タースポーツ委員会のプレジデントも務め、あらゆ る分野で女性の可能性を広げる活動を展開する。
WECでは「アイアン・リンクス」と行動を共にするア イアン・デイムス。60号車ドライバーのクラウディオ・ スキアヴォーニ氏はメイヤー氏のパートナー。
いうことを示さなければなりません。私は大 学時代から、ビジネスシーンやあらゆる活 動分野において、特に女性が少数派である 場、また、女性にとって競争の激しい環境 で、自分が有能であることだけではなく、 プラスアルファの何かがある、何かができ ることを示さなければなりませんでした」。 「モータースポーツも金融業界や法律事務 所、ジャーナリズム等と同様で、競争がと ても激しく、才能のある人材が豊富にいる という分野はたくさんあります。そういう 分野では、助けが必要な時もあります。な ので、私は自分のビジネスを軌道に乗せ て、私が真に愛するモータースポーツの分 野で、女性たちに恩返しをする、そしてチ ャンスを与えることを可能にするための全 要素が揃った時、私はまさに、このプロジ ェクトをスタートさせ、実行したのです」。
「私たちが立ち上げた2018年には、女性 はわずか5人でした。それが現在では、ア イアン・デイムスが参加するカテゴリー全 てで、30人ほどになっています。2023年 は、私たちがカートでも活動を始めた初め ての年になります。私たちのチームには若 くて才能があるスペイン人のナタリア・グ ラナダがいます。現在、私たちは耐久レー スやプロトタイプカー、GTカー、カート、 シングルシーターの全てのカテゴリーに参 戦することになりました。ドライバーから メカニック、チームマネージャー、ホスピ タリティ担当など、モータースポーツ活動 における全てのポジションを、女性たちに 対して提供しているのです」。
GMのスポーツカーレーシング・プログラムを統括する ローラ・ウォントロップ・クラウザー氏。2023年は率い るコルベット・レーシングがタイトルを獲得した。
若者に手を差し伸べる
メイヤー氏はこう続ける。
「このプロジェクトの開始以来、年長者や 最も経験豊富な者が若い者を導く、という 伝達の価値を持つことを大切にしています。 上の世代が下の世代を助けるのです。ドラ イバーを例にすると、ラヘル・フライやミ シェル・ガッティンなどの経験豊富な者が、 ドリアーヌ・パンやナタリア・グラナダなど の若者に手を差し伸べる、というように」。
「若い世代は、コーチングや身体工学など の面でサポートを受けられるだけでなく、 経験のある先輩たちから活動を支えられて います。人生において、道を示してくれる 誰かと出会う幸運に恵まれるかどうか、そ して、手を差し伸べて道を示してもらえる かどうか、ということが重要になるケース はとても多いんです」。
FIAウィメン・イン・モータースポーツ委員会が推進する「FIAガールズ・オン・トラック-.ライジングスターズ」活 動は、世界の女性レーシングドライバーの才能を発掘かつ育成するプロジェクトとして毎年開催中。
「だからアイアン・デイムスは、一つのレ ーシングチームであるだけではなく、それ 以上のもの、いわば『ファミリー』なんで す。アイアン・リンクスとアイアン・デイ ムスは、まさに一家。その中で、人々はお 互いのために存在しています。チームはレ ースウィークだけでなく、それ以上に一緒 に活動しています。しばしば、みんなで全 てを共有するんですよ。人生の浮き沈みに 対しても、互いを支え合っています」。 「ラヘルとミシェルと私は、長く一緒に活 動してきました。彼女たちは、アイアン・ デイムス・プロジェクトの最初のメンバー で、ともに道を歩んできたんです。レース についてのみならず、人生について、これ から何をするかについて、本当によく話し 合ってきました。全員が、互いにとても近 しい状態を保っています。そして、チーム 内が良い雰囲気であることが非常に重要な のです。その雰囲気を保って成功するため には、各メンバーが他のメンバーの上に立 つことがなく、全員が同じレベルで一緒に 仕事をしなければなりません」。
あらゆる職種において 輝けるようになること
より輝いていけると考えているのだ。
もちろん、メイヤー氏も、最終的には当 人の実力とスキルが全てだとはいうもの の、日本からもアイアン・デイムスへの応 募は大歓迎だと語ってくれた。
このプロジェクトと並行して、メイヤー 氏はミシェル・ムートン氏の跡を継いで、 FIAウィメン・イン・モータースポーツ委 員会のプレジデントを務めている。
FIAガールズ・オン・トラック - ライジ ングスターズは有名だが、それ以外にも、 ル・マン 24時間の開催期間中、そしてF1 イタリアGPの開催期間中に、サーキット 内であらゆる職種に就く女性を全員集めた ネットワークイベントなども開催した。
これらの活動に対して、FIAウィメン・ イン・モータースポーツ委員会のメンバー であるローラ・ウォントロップ・クラウザ ー氏も、こうした試みは大歓迎だと語る。 「私はGMの仕事がとても忙しくて、こ れらの活動に充分な貢献をできていないの は心苦しい。けど、こうした試みは素晴ら しいと思っているし、米国でも、もっと女 性たちが他の誰かに話を聞けたり、アクセ スできる機会を作りたいと思っています」。
「もちろん、そこから最終的に成功するか どうかは本人次第ですよ。ですが、もし誰 かが、少しだけ指示を与えてくれたり、マ ニュアルを見せてくれたりすることがあっ たなら、それは助けになるわけです」。
メイヤー氏は、立ち上げ当時から、この アイアン・デイムス・プロジェクトを、長 期的なものにしようと考えてきたそうだ。
女性たちの活躍の幅を広げることで、よ り若い世代の女性たちに興味を持ってもら い、同時に、その親世代にも娘の可能性を より信じてもらう。そのことによって、将 来的にはF1を始めとする、あらゆるカテ ゴリーに存在する、あらゆる職種におい て、男性たちと協力しながら、女性たちが 経験豊富な先輩たちが
クラウザー氏はゼネラルモーターズ (GM)のスポーツカーレーシング・プログ ラム・マネージャーを務めており、WEC ではキャデラック・レーシングやコルベッ ト・レーシングの統括を担当。WECでは ひと際大きな存在感を放っている人物だ。 「夢を諦めないこと」が、メンバーたちの モータースポーツ界における成功に繋がり つつあるアイアン・デイムス・プロジェク ト。メイヤー氏らによる力強い活動は、世 界のレースシーンで共鳴を広げている。
見逃すな! 「フォーミュラE 東京大会」決勝レースは3月30日土曜日!!
着々と進む“日本初の市街地レース世界選手権”の準備状況
ォーミュラE東京大会の開催ま で約4か月に迫った11月22日、
YouTube JAFモータースポー ツ公式チャンネルにおいて緊急配信が行わ れ、東京大会の準備状況が報告された。
この配信には、オーガナイザーを務める ビクトリーサークルクラブ(VICIC)今宮眞 会長と、フォーミュラEの東京プロジェクト マネージャー津山覚氏が出演した。
まずは気になるコースについて。今宮氏 によると、コーナー数は18個で全長は 2.6km弱。マーシャルポストは約30箇所を 用意するそうで、想定されるラップタイム は1分24~25秒、最高速度は時速250km になるという。コースの詳細は、東京ビッ グサイト東展示棟の東棟屋外臨時駐車場と 有明東臨時駐車場、そして東展示棟に隣接 する公道(臨港道路 青海・有明南連絡線/ 青海・有明南縦貫線)と、東棟屋外臨時駐車 場へのアクセス路を繋げたもので、「この公 道区間が速度の乗る箇所になりそうです」と は今宮氏。加えて「それに伴い、中央分離帯 の撤去や、グレーチング対策など、大きな 工事を進めています」とも語る。
常設サーキットを使う国内レースとは違
11月22日に行われたJAFモータースポーツ公式YouTubeの緊急配信では、オーガナイザー であるVICICの今宮眞会長と、東京プロジェクトマネージャーの津山覚氏が出演した。
い、未知のコースへの対応が必要となる今 大会。「予定のコース図と『現場』は存在しま すが、現段階では『サーキット』にはなって ません。誰も走ったことがないわけですか ら、実際の管理体制をどうするか……」につ いては、目下の課題だという。
レースのオーガナイズには競技役員の確 保や習熟が欠かせないが、「現状、富士スピ ードウェイさんとモビリティリゾートもてぎ さんで活動するオフィシャルの方々がほと んどで、そういう皆さんが自主的に個人参 加という形で、私たちと繋がりがある方々 にお声掛けをさせていただき、主要部分に 関しては、顔馴染みの方々で固めさせてい ただきました。私たちは筑波サーキットで
年4回のシリーズ戦をやっていますが、筑 波(コース2000)は2km強で、1周は約1分 なので、ペース的には同程度になると思い ます。つまり、他の国内サーキットよりテン ポが早く、メンバー同士の意思の疎通がよ り大切になると考えています」と、レース運 営面における進捗状況を語った。
また、英国ロンドンに拠点を置く「フォー ミュラEオペレーションズ(FEO)」との調整 役を担う津山氏は、大会に直接関わる代理 店2社に加えて、東京大会の期間中に東京 ビッグサイト内で開催されるゼロエミッシ ョン・ビークルのイベント運営に携わる代 理店などとの調整に奔走している。
ただ、大会のプロモーションに関しては
PHOTO/遠藤樹弥[Tatsuya.ENDOU]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS].REPORT/吉田知弘[Tomohiro.YOSHITA]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]
フ
2023年8月のJAF公示で東京大会の登録申請状況が明らかになり、10月 中旬のFIA世界モータースポーツ評議会では2023-2024年(シーズン10) のカレンダーが承認されている。そしてフォーミュラE公式サイトでは、 東京大会の予定コースが明らかにされている。
FIAフォーミュラE世界選手権(シーズン10) 2024年カレンダー(予定)
Rd.1 1/13 Mexico City
Rd.2 1/26 Diriyah
Rd.3 1/27 Diriyah
Rd.4 2/10 Hyderabad
Rd.5 3/16 Sao Paulo
Rd.6 3/30 Tokyo
Rd.7 4/13 Misano
Rd.8 4/14 Misano
Rd.9 4/27 Monaco
Rd.10 5/11 Berlin
Rd.11 5/12 Berlin
Rd.12 5/25 Shanghai
Rd.13 5/26 Shanghai
Rd.14 6/29 Portland
Rd.15 6/30 Portland
Rd.16 7/20 London
Rd.17 7/21 London
「正直遅れています」と津山氏は語る。「年明 けから集中的に告知するというアイデアも 出ています。もう少し経つと、皆さんにい ろいろな情報を発信できると思います」と語 るように、2024年初頭から様々な情報発信 が行われていくようだ。
津山氏は「公道は、そう簡単に封鎖できる ものではなく、我々はレース直前の約10日 間で準備をしなければなりません。東京ビ ッグサイトもたくさんのイベントが予定さ れていて、いつでも工事できるわけではあ りません。その辺りが現場で一番苦労して いるところです。その中で、東京都を始め とした行政の方々にはお世話になっていて、 東京ビッグサイトや警察の皆さんを含めて、 ご意見を伺いながら調整を進めているとい う状況です」と現状を語った。
また、今宮氏はフォーミュラE特有の注 意点があるとも語った。「電気自動車でのレ ースなので、万が一のクラッシュや停止車 両が出た時の扱いが非常に重要なポイント
「ファンビレッジ」は東展示棟内で展開予定 フォーミュラEでは「ファンビレッジ」と呼ばれる、体験型コンテンツを 含む観客向けのエンターテインメントスペースを展開している(写真は 2023年ロンドン大会)。これは東京大会でも予定されており、東京ビッグ サイト東展示棟内で開催される予定だという。
東展示棟を周回! ターン9が最高速 東京ビッグサイト東展示棟周辺の公道と施設内アクセス路等を 繋いだ周回コースとする計画。コーナー数は18で、ホームスト レートは東展示棟の東棟屋外臨時駐車場に設置される予定だ。
ゼロエミッション・ビークル(ZEV)普及キャンペーン「TOKYO.ZEV. ACTION」を展開する東京都。大会期間中にも東展示棟内で催事が計 画されているという(写真は2022年「ZEV-Tokyo.Festival」の様子)。
となります。普通のクルマと違って“感電対 策”が必要になるため、オフィシャルへの感 電対策の研修を相当やっていかないといけ ないと思っています。先日開催されたWRC ラリージャパンでも(Rally1車両を想定した 救出訓練では)感電対策トレーニングをして いて、競技長や医師団長、技術委員長、事 務局長が現地に伺って見学させていただき ました。大変な下準備や訓練をやっていく 必要性があることを感じましたね」。
それでも大会の成功に向けて意欲を見せ ており、今宮氏は「レース運営も精一杯やり ますので、ぜひ皆さんも観に来ていただけ ればと思います」と力強くコメント。津山氏 も「東京ビッグサイト駅や有明駅から歩いて 行けるところにサーキットができます。皆 さんにとっても初めての経験になると思う ので、ぜひ現場での雰囲気を味わっていた だければと思います」と呼びかけた。
コースマーシャルや車両回収、ピット・ グリッド、技術、レスキュー要員などは、
JMRC東京レース部会の協力を得て、11月 から募集が始まっており、12月以降には競 技役員を対象としたミーティングやレスキ ュー訓練などを予定しているという。
フォーミュラE東京大会は「東京で初めて 行われるモータースポーツの世界選手権」か つ「日本で初めて開催される市街地レースの 世界選手権」となる。初めて尽くしの試み は、老舗クラブを軸とした経験豊富な精鋭 による着実な準備が進んでいる。
市街地レースはコースサイドにデブリフェンスを設 置する必要があり、写真の「ターン9」に該当する地 点では、十分なコース幅を確保できるよう中央分離 帯の撤去工事が行われていた。
新イベント「ドリフトテスト」初開催
新
たなイベント「ドリフトテスト」の第 1回大会が、晴天に恵まれた2023 年12月2日に奈良県の名阪スポーツラン ドDコースで開催された。
この大会は2023年4月に組織された 「JAFオートテスト・ドリフト振興活性化 作業部会」(小西俊嗣座長)の企画・主導に より実現した「オートテストのドリフト版」 とも言える新機軸。これまで作業部会では 業界の現状を踏まえながら、さらなる振興 に繋がる新企画が検討されており、オート テストでおなじみの「マイカーでそのまま 出場できる」コンセプトを踏襲して、ドリ フト競技に繋がる運転技術を集中的に学べ る試みとして初開催されることになった。
具体的には、パイロンで設定したガレー ジに、ドリフト走行で車体(4輪)をしっか り入れることが目的。判定方法は、ガレー ジに入った車体の1輪につき20点が加点 され、「パイロンタッチ」は1本につき5点 減点、ドリフト走行でガレージに入庫でき た場合には、主観審査で最大20点が加点 されるという競技内容となっていた。
第1回大会は、奈良県のJAF加盟クラブ 「RC NARA」がオーガナイザーを務め、D1 グランプリに参戦するレーシングチーム 「俺だっ!レーシング」の全面協力により開 催にこぎつけた。また、D1グランプリの公 式実況を務める鈴木学氏も参画してくれて おり、判定方法の運用やイベント運営につ いての積極的な助言があった。
スとする中下高志選手が講師助手を務め、 模範走行やデモ走行を披露してくれた。
イベントは定員の20名がすぐ埋まる盛 況ぶりで、参加車両も軽自動車からオート マのセダン、後輪駆動や四輪駆動のスポー ツモデルなど駆動方式はさまざまで、改造 もほぼノーマルといった状況だった。
当日は参加受け付けから車両検査、ブリ ーフィングの後に、グループ分けした2回 の練習走行を行い、最後に「コンテスト」で 成績を判定するというスケジュール。練習 走行では鈴木学氏と最上選手が参加者の走 りを観察し、レベルや車両の状態に合わせ て、的確なアドバイスを行っていた。
しかし、スライドさせながら4輪をガレ ージに入れる操作は、スポーツ走行経験者 でも一筋縄ではいかないようだった。それ でも、走行回数が増えるにつれて車体をス ライドさせられるようになった未経験者も 現れ、迎えたコンテストでは、進入のテー ルスライドからピタリとガレージ内に四輪 未経験者も初心者も大歓迎! マイカーで走って学べる競技会
競技種目は「ドリフト」で、今回はJAF公 認クローズド競技として開催された。参加 車両は登録番号標付きのパーキングブレー キレバー装着車限定で、ダブルエントリー はOKながら、同乗できるのは講師のみと いう条件も付加。ハイグリップタイヤの装 着は禁止され、今回はフルフェイスヘルメ ットとグローブの装着を義務としている。
競技方法は、ランニングスタート方式で 1台の車両が散水された競技コースを走行 する「単走走行」で、審判員の判定は、いわ ゆる「ドリフト駐車」の優劣について、加点 または減点判定する形式を採用した。
講師には「俺だっ!レーシング」から今季 D1グランプリにステップアップを果たし た最上弦毅選手が参加。チーム総監督であ りJAFスピード競技ターマック部会の委員 でもある時田雅義氏と、名阪をホームコー
「ドリフトテスト」の判定方法
判定方法 判定事項 加点・減点 得点 ガレージ入庫 入った車輪の本数 1輪20点加点 最大80点 パイロンタッチ パイロン接触・移動 1本5点減点 ドリフトポイント ドリフトしているか 主観審査で加点 最大20点
いわゆる「ドリフト駐車」の判定で勝負が決まる方式となった今回。ガレージ内に収まったタイヤの本数で加点 判定がなされ、ガレージ進入のアプローチには主観審査を加味。二人の審判員の判定結果の合計が高かった選 手が上位になる。2回の走行でどちらか良い方の点数が最終的な順位決定に反映された。
D1グランプリの鈴木学氏が今大会の実況を担当し、イベ ント運営やコンテスト審判にも携わった。
練習走行では講師助手を担当してくれた時田雅義氏。コ ンテストでは鈴木氏と共に審判員も務めた。
今回はドリフトに適した後輪駆動車だけ ではなく、4駆やFF、オートマ車など、あ らゆる車両が名阪Dコースに集結。
ドライバーズブリーフィングでは鈴木氏 と時田氏が今回の競技方法や判定方法、 信号旗の解説を行った。
を収める参加者も登場した。その収まり方 がとてもキレイに決まったため、場内から は思わず拍手が起こるシーンも見られた。
散水された路面とはいえ、ノーマル車に とってはテールスライドさせること自体が 難しく、コンテストを迎えても成功に至っ た参加者は多くはなかった。しかし、目的
余吾泰衡選手/トヨタ・GRヤリス 今季からオートテストやジムカーナに挑 戦している余吾選手。ドリフト走行は初 体験だったものの、見事な車庫入れを決 めて優勝をさらった。「どんな動きをする のかわかりませんでしたが、ウェット路面 で、いろいろな走らせ方を試すことがで きました」と語る。
D1ドライバーの最上弦毅選手が講師と同乗走行を担当。 名阪を地元とする中下高志選手も講師助手を務めた。
散水路面に2つの区間を設けて ”ドリフト駐車”の優劣を判定 スタート後にS字のターンセクションを経て、ガレージへのドリフト駐車 を競う。今回は判定はガレージ入庫の優劣のみだったが、今後はS字ター ンの優劣や、進入速度などを判定方法に加えることも検討されていた。
今大会の成績は、鈴木氏と時田氏が審判員を務める「コ ンテスト」での、2回の走行の結果で決まる方式。
練習走行では鈴木氏と最上選手が参加者 の走りを観察。場内放送を活用して丁寧 な個別レクチャーが行われた。
が明確だったこともあり、悔しい表情なが らも、再戦を誓う声も多く聞こえていた。
できないことができるようになる瞬間は、 誰にとっても嬉しいものだろう。多くの参 加者は、半日という短い時間ではあったが、 この挑戦を大いに楽しんでいたようだ。
今回のドリフトテストには、ドリフト走
林原悠子選手/マツダ・アクセラスポーツ 6速MT車で参加の林原選手。「走るイベ ントは観たことも出たこともありません。 もともとドライブとMT車が好きで、ドリ フトも一生に一度は挑戦したかったんで す。今回は全然できなかったので、また イベントがあったらぜひ参加したいで す!」と笑顔を見せる。
最後には表彰式も行われ、最上選手や JAF関西本部の金原秀行事務局長がプレ ゼンターを担当してくれた。
行に限らず、ジムカーナなど多くの競技カ テゴリーに活きる技術習得のヒントが隠れ ていた。オートテスト参加者の新たな選択 肢として、ドリフト走行会やジムカーナ練 習会の一歩手前を受け持つ存在として、今 大会のような新たな試みが今後も続いてい くことに期待したい。
加苅香代選手/日産・180SX “ドリ車”なのかと思いきや、ミニサーキッ ト走行やジムカーナを楽しむ加苅選手。 「挙動が乱れたときに操作がドタバタし ちゃうことが多かったので、ドリフトでき る機会で基本操作を学ぶために参加しま した。半日でしたが5,000円はお得だと思 いますよ」と高評価。
武田伸治選手/日産・シルフィ サーキットレースでの写真撮影を趣味と する武田選手。オートマFFで電子制御が 介入しまくる厳しい状況ながら「二輪で は岡山国際で走っています。四輪ではあ まり走った経験がなくて、今回は二輪と の感覚の違いに驚きました。とても楽し かったです」振り返る。
ENTRANT VOICE
界ラリー選手権での知見を採り 入れたスポーツ4WDとして 2020年9月に登場したGRヤリ スが、3年の時を経て大きく進化した。今回 は袖ヶ浦フォレストレースウェイで試乗機 会を得られたため「進化型GRヤリス」の競 技ベース車両としての可能性を探った。
3気筒1.6LターボのG16E-GTSはその ままに、出力は224kW(304PS)、トルク は400N・m(40.8kgf・m)に向上。それに 伴い、冷却性能も強化されている。
「GR-FOUR」も制御が進化し、モードセレ クトには前53:後47配分の「GRAVEL」が 新設。現行車の「TRACK」は前50:後50 の駆動配分だが、新たなTRACKは、前 50:後50~前30:後70の可変制御へと 生まれ変わる。ちなみに、前30:後70の 固定だった「SPORT」は廃止され、ダイヤ ル回転でNORMALとGRAVEL、ボタン でTRACKを選ぶという操作に改められた。
ボディにはスポット溶接増しと補強用シ ーリング塗布部位拡大がなされ、フロント バンパーにはサイド部に分割構造を採用す るなど競技ユースにも考慮した変更もあ る。内装は徹底的に改善され、Bライセンス 競技でかなり役立つ「縦引きパーキングブ レーキ」がRCにオプション設定された。
進化型GRヤリス最大のトピックは、8速 AT「GR-DAT」搭載車の追加だ。DATは「レ ースでMTと同等に戦えるAT」を目指して
比較試乗の担当は、スーパー耐久ST-5クラス、全日本ジム カーナ選手権PE1クラスチャンピオンの山野哲也選手。
おり、AT制御ソフトウェアを最適化して世 界トップレベルの変速スピードを実現した という。高負荷走行を考慮した変速クラッ チへの高耐熱摩擦材の採用や、ATFクーラ ー追加など、走りへの対策も抜かりない。
誌面では書ききれないほど数多くの改良 がなされている進化型GRヤリスだが、今 回は山野哲也選手に試乗してもらい、進化 型の6速MTと8速AT車の印象を聞いた。
技術説明を聞いた山野選手は「壊しては なおす、モータースポーツで得た知見を活 かす」という考え方に好感を抱いたそうで、 「『壊してくれてありがとう』なんて言う自動 車メーカーは聞いたことがないし、作った 後も車両の進化を止めない姿勢は、競技ユ ーザーとしては嬉しいよね」と語る。
まずは袖ヶ浦のサーキットで試乗を開始。 進化型と現行車の6速MTの比較において、 一番大きな違いはエンジンにあるという。 「トルクの影響が大きいね。まるで排気量 が200cc増えたみたい。ボディの剛性感も
車体右側にサブラジエター(クーリング パッケージとしてメーカーオプション) が配置され、左側にATFクーラー(GRDAT搭載車に標準)を装備する。
競技者の意見を徹底反映! ガラリと変わるコクピット
ボディにはスポット溶接点数を13%増 やし、シーリング補強箇所も24%拡大。 ダンパー頭部の締結ボルトは、オーソ ドックスな3本締結に変更されている。
S耐と全日本ラリー参戦車両を参考に、ヒップポイントを25㎜下げて、かつステアリング位置を見直 すことでドライビングポジションを改善。センタークラスター上端を50mm下げて前方視界を拡大 し、操作パネルとディスプレイは運転席側に15度傾けられ、スイッチ類の配置も見直されている。8 速ATのシフトレバーはGRヤリスRSに比べて75mm上昇させ、6速MT車と同様に手引き式パーキン グブレーキレバーを採用する。そして、競技用のRCグレードには「縦引きパーキングブレーキ」を メーカーオプションで新設定。Bライ競技では大きな武器になりそうだ。
上がっている印象です。制御モードはグラ ベルとトラックを試して、トラックモード が結構いい仕上がりだね。コーナー進入時 はフロントがシャープに入り、その後もリ アがしっかり安定する。ドライバー側の操 作が少なくてラクに感じるね。これは速さ にも効いてくるポイントだと思う」。
続いてGR-DAT搭載の進化型を試乗。
「車両重量がMT車より20kg重かったり、 状況によってシフトダウンが拒否されたり、 引っ張ってシフトアップすると加速がワン テンポ遅れたりして、MT車に比べると少し 不満はあります。でも、思ったより差は少 なくて、トルコンATにしては高回転まで 回るし、シフトも速い。欧州のスポーツ系 2ペダル車を考えたら、GRヤリスの価格帯 でこれだけのATを作ってくるのは見事だ ね。GRヤリスを進化させてきたトヨタだけ に、この8速オートマチックをこれからど う進化させていくのかに期待してるよ」。 最後はダートコースでの試乗だ。ここで は現行の6速MT車と、現行車に8速ATを 搭載した開発車両を乗り比べた。なお、8速 AT車には縦引きレバーが装着されている。
GR車両開発ではおなじみの「壊してく れてありがとう」を示す例として、フロ ントバンパーのロワサイドに対して交 換を容易にする分割構造を新採用した。
今回の進化型は「幅広いドライバーがス ポーツ走行を楽しめること」をテーマに 開発が進められたと語る大嶋和也選手。
恒例のグラベル仕様も試乗 GR-DAT車は“楽しい”のひと言!
マニュアル操作を 「低μ路とDATのマッチングは凄くイイ ね。ダート走行の場合、タイヤのブロック で砂利を掻き出す走りになるから、DATだ と駆動をかけ続けられるので、全体的に安 定したドライブが可能だね。低速ターン や、シフトチェンジが多いコースだと、ク ラッチとシフト操作がないメリットは大き い。運転に集中できるからかなり武器にな るね。そして、縦引きレバーがものすごく イイ! “新常識”という感じで、全世界の 機械式パーキングブレーキがこの形状にな
8速AT搭載の開発車両を試乗し、勝田範彦選手の同乗走行を 体験した山野選手は「姿勢変化を起こす際の操作ロスを補っ てくれる。ダートでこそ真価が発揮されそう」と高評価。
って欲しい(笑)。競技でサイドを使う人 は、必ず選ぶべきオプションだね」。
山野選手は、進化型GRヤリスは競技ベ ース車両としても、より魅力的になったと 語る。特にGR-DATはグラベル競技との 親和性が高く、競技人口を増やすには意義 のあるメカニズムだとも指摘した。「すごく 楽しい。DAT車でダートを走りたくなって きた!」と笑う山野選手。クラッチとシフト 操作から開放された8速ATの走りに触れ て、新時代の到来を強く感じたようだ。