JAFスポーツ 2023年 春号(第57巻 第2号 2023年5月1日発行)

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前人未到に挑むスーパーフォーミュラ野尻智紀選手の苦悩

特集 さらなる高みへ
初栄冠の誉れ 2022年JAF全日本ラリー選手権”初”チャンピオンインタビュー 2022年JAF地方選手権チャンピオン
JAF スポーツ[モータースポーツ情報] 第 57 巻 第 2 号 2023 年 5 月 1 日発行(年 4 回、2、5、8、11 月の 1 日発行)
2023 SPRING JAF MOTOR SPORTS

第1戦バーレーンGPでタイヤ交換を終えて、ピットか ら発進する角田裕毅選手(アルファタウリ)。14番グ リッドから11位まで順位を上げたが、前を行くライバ ルを抜くには至らず、入賞にはあと一歩届かなかった。

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F1

角田裕毅選手、3シーズン目のスタートは入賞まであと一歩に迫る! 王者レッドブルは2戦連続1-2フィニッシュを果たし、開幕直後から貫禄ある走りを見せる!! PHOTO/Red.Bull.Media.House REPORT/吉田知弘[Tomohiro.YOSHITA]、JAF.スポーツ編集部[JAFSPORTS]

上最多の23戦で争われる2023 年のFIAフォーミュラ1世界選 手権(F1)。2023シーズンもホン ダ・レッドブル・パワートレインズ(ホンダ RBPT)のパワーユニット(PU)を搭載するア ルファタウリより、日本人パイロットの角田 裕毅選手がフル参戦する。

3月に開催された第1戦バーレーンGP、 第2戦サウジアラビアGPではポイント獲得 にあと一歩届かなかったが、角田選手は高 評価を得る激走を見せている。

今シーズンのアルファタウリは、ピエー ル・ガスリー選手がアルピーヌに移籍し、 初のF1フル参戦となるニック・デ・フリー ス選手が加入した。

角田選手が先輩としてチームを牽引する 立場となったが、F1では3シーズン目という ことで“勝負の年”といっても過言ではない 状況を迎えている。

大きく環境が変わった第1戦。直前の公 式テストでは、ライバルチームの先行を許 したアルファタウリの新車AT04のパフォー マンスは、長いシーズンを戦うには苦しい

のではないかと見られていた。

実際、GPウィークが始まると、初日の2 回のフリー走行でも下位に低迷。角田選手 も「ライバルたちと比較してパフォーマンス は良くない感じ」と話すなど、流れは決して 良くなかった。しかし、予選でこの苦境を 打破したのは、彼自身だった。

Q1でソフトタイヤを3セット投入し、積 極的にアタックした角田選手は1分31秒

400の8番手で突破。フリー 走行3回目までの成績からす れば予想以上の結果だった。

しかし、Q1突破にタイヤを 使いすぎて劣勢となったQ2 は14番手でQ3進出ならず。

それでも「まさかQ2に進め るとは予想していませんでし た。僕自身だけでなくチーム にとっても、すごくポジティ ブなことでした」と角田選手。 渾身の走りに牽引されて、チ ームの雰囲気が良くなったこ とは間違いないだろう。

決勝でも角田選手は粘り強い走りを見せ、 レース終盤には11番手に浮上。入賞圏内に つけるウィリアムズのアレクサンダー・アル ボン選手を追ったが、ストレートスピードで 劣るAT04では決定打を見出せず。

ファイナルラップまでの追撃も、1.1秒差 の11位で角田選手は開幕戦を終えた。 「レースペースは予想していたより良かった ですが、あと少しのところでポイントに届か

2023シーズンは紅葉した楓の葉を取り入れた、和風デザインのヘルメット でスタートした角田選手。第2戦サウジアラビアGPで一時は8番手につけて 入賞の期待が高まったが、奮闘も実らずライバルたちにかわされて、2戦連 続で11位と入賞はできなかった。

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なかったことがとても悔しいです。最後は 彼らのストレートスピードは速すぎて、オー バーテイクすることができませんでした」と 角田選手は悔しさをにじませた。それでも 彼の孤軍奮闘が光る開幕戦だった。

第2戦では入賞圏内を走るも 惜しくも入賞は果たせず

第2戦はサウジアラビアの港湾都市ジェ ッダに設営される、高速レイアウトのジェッ ダ市街地コースが舞台となる。

第1戦で得たデータを活かし、ポイント 獲得のために予選でも上位進出を目指した 角田選手。しかし、わずか0.01秒届かず 16番手でQ1敗退となってしまった。

2戦連続でのQ2進出はできなかったが、 第1戦とは違いフリー走行から手応えを感じ ており、決勝での逆襲に期待がかかった。

スタートから順位を上げていった角田選 手は、セーフティカー出動でのタイヤ交換 に乗じて、入賞圏内の8番手に浮上。ライ バルの多くもタイヤ交換を済ませており、 ポイント獲得の期待が高まった。

しかし、レースが再開されるとアルピー ヌの2台にかわされて、あっという間に10 番手に後退する。さらにハースのケビン・ マグヌッセン選手が背後に迫ったが、1ポイ ントでも欲しい角田選手は懸命にブロック し、熾烈な入賞争いを繰り広げた。

AT04に優るVF-23を駆るマグヌッセン 選手の猛攻を、約20周に渡り巧みに抑えた 角田選手。しかし、フィニッシュまで残り4 周、ついにターン1でイン側からかわされた。

角田選手はフィニッシュまで諦めず、マ グヌッセン選手を追い続けたが、再逆転は 叶わず。約2.7秒差の11位でフィニッシュ

と、2戦連続で入賞にあと一歩届かなかった。 「残りわずかのところでポジションを失った ことが悔しいです。チームは素晴らしい仕 事をしてくれて、すべてが完璧に運びまし たが、最終的にポイントに届かず、がっか りしています」と角田選手も無念の一言。

AT04の戦闘力不足が露呈してしまった アルファタウリの開幕2戦。しかし、それを カバーする角田選手の奮闘が顕著だったこ とを特筆したい。2戦続けてデ・フリース選 手より予選、決勝とも上位だったことにも、 角田選手の成長が伺えた。第3戦以降も彼 の奮闘から目が離せない。

レッドブルは2戦連続 トップ2独占で好発進!

アルファタウリの姉妹チームで、同じホ ンダRBPTのPUを搭載するレッドブルは、 今シーズンも開幕から絶好調。

第1戦では、ドライバーズチャンピオン3

FIA-F2で岩佐歩夢選手がスプリントレース初優勝!

角田選手に続く日本人F1パイロットを目指して、2022年からFIA-F2に参戦する岩 佐歩夢選手。2022年はフィーチャーレースで2勝を挙げてランキング5位を獲得して おり、2023シーズンも体制は変わらず、ダムスから挑んでいる。

第1戦バーレーンのスプリントレースは4番グリッドからスタート。2番手に上がる もタイヤの性能劣化に苦しみ、ライバルたちの先行を許して4位となった。

第2戦でレッドブルの2戦連続1-2フィニッシュを決めた ポール・トゥ・ウィンのセルジオ・ペレス選手(右)と2位 のマックス・フェルスタッペン選手(左)。ドライバーズ ランキングでは1ポイント差で、3連覇を狙うフェルス タッペン選手がトップに立った。

連覇を目指すマックス・フェルスタッペン選 手が、チームメイトのセルジオ・ペレス選 手に約12秒差の独走態勢を築いて1-2フィ ニッシュ。2021年、2022年と叶わなかった “シーズン開幕戦での勝利”を手にした。

第2戦では、予選Q2でフェルスタッペン 選手が車両トラブルで15番手に沈む波乱が 発生。しかし、この波乱に奮起したペレス 選手がポールポジションを獲得し、決勝で もポール・トゥ・ウィンを果たした。

フェルスタッペン選手も2位フィニッシュ の猛追を見せて、レッドブルは2戦連続の 1-2フィニッシュを達成した。

ドライバーズ、コンストラクターズの両ラ ンキングでもレッドブル勢がトップを占め、 ホンダRBPTのPU搭載車両による2年連 続の二冠達成に向けて、好発進となった。

タイヤ交換義務があるフィーチャーレースは7番グリッドから5番手に上げるも、戦 略がうまくいかずに順位を守れず8位となったが、両レースでポイントを獲得した。

第2戦のサウジアラビアでのスプリントレース、岩佐選手は4番グリッドから2周目 にトップを奪取。終盤は後続から1秒差を切る猛追を受けるも「セクター1でペース を落とし、比較的速いセクター2、3で引き離すプランで、何とか抜かれずに済みま した。」とクレバーな走りを見せて、今シーズン1勝目を挙げた。

5番グリッドからスタートした第2戦のフィーチャーレースでは、7周目で早めのタ イヤ交換を敢行。4位とひとつ順位を上げてフィニッシュした。

2戦を終えて、4レース全てでポイントを獲得した唯一のドライバーとなった岩佐 選手。ランキングではトップと2ポイント差の3番手、念願のチャンピオン獲得に向 けて好位置につけた。

e岩佐歩夢選手(ダムス)が優勝した第2戦スプリントレースの表 彰台。左から2位のビクター・マルティンス選手(ARTグランプ リ)、ダムスのチームスタッフを挟んで岩佐選手、3位のユアン・ ダルバラ選手(MPモータースポーツ)。

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WRC勝田貴元選手、フル参戦3シーズン目は苦難の船出となる

三冠防衛を目指すTGR-WRTは開幕3戦で2勝を挙げて、好スタートを切る!! PHOTO/TOYOTA.GAZOO.Racing、Red.Bull.Media.House REPORT/廣本泉[Izumi.HIROMOTO]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

023年のFIA世界ラリー選手権 (WRC)は1月19〜22日、モナ コとフランスが舞台の第1戦ラリ ー・モンテカルロで開幕した。

伝統の一戦にTOYOTA GAZOO Raci ng WRCチャレンジプログラムに参加中の 日本人ドライバー、勝田貴元選手もコ・ド ライバーのアーロン・ジョンストン選手とと もにGR YARIS Rally1 HYBRIDで挑んだ。

ヤリスWRCを含め、WRCの最高峰車両 で4回目のラリー・モンテカルロ参戦の勝田 貴元選手は「テストの時からずっといいフィ ーリングでした」と、デイ1はナイトステー ジのSS1で4番手タイムをマークした。

しかし、「いいスタートを切れたんですけ ど、SS2のスタートでハンドブレーキにトラ ブルが発生して、その状態で24.9kmのSS を走行。SS2はヘアピンの多いステージだっ たので、約50秒をタイムロスしてしまいま した」と語るように10番手タイムと出遅れて

WRCフル参戦3シーズン目、刷新されたラリー1車両 の2シーズン目を迎えて、更なる飛躍を期した勝田貴 元選手。第2戦では初のワークスノミネートでの参戦 も無念のリタイアとなったが、SS4で今シーズン初の ベストタイムをマークする、光る走りも見せた。

しまい、トップから57秒遅れの総合9番手 でデイ1を終えた。

初日から浮き沈みを演じた勝田貴元選手 のデイ2は、4回の4番手タイムなど安定し

た走りを披露、総合7番手に浮上した。

デイ3は「3日目はSSのキャラクターが変 わってインカットできるコーナーが多く、そ こから泥が出ていたので抑え気味に走りま

第1戦での勝田貴元/アーロン・ ジョンストン組は、デイ1から車 両トラブルに見舞われたが6位 入賞。尻上がりに順位を上げてい ただけに、パワーステージでの車 両トラブルが悔やまれた。

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勝田貴元選手は初挑戦となった第3戦ラリー・メキシコで総合23位。ジョンストン選手とともに果敢な走りを見せ ていたが、SS5でコース脇に転落。転落直後には両手で顔を覆い、悔しさをにじませた。

した」と語りながらも、2度の5番手タイムを マーク、総合6番手に上げた。

デイ4ではSS17で2番手タイムを計測す るなど、勝田貴元選手は尻上がりにペース アップ。それだけにパワーステージSS18で の走りが期待されたが、「5kmぐらいの地点 で駆動系のトラブルが発生しました」と語る ように、トップから約58秒遅れの22番手 タイムでフィニッシュした。

それでも総合順位は守り切り、「パワース テージは残念な結果でしたが、ラリー・モ ンテカルロでのパフォーマンスとしては最も 高かったと思います」と語るように総合6位 で入賞を果たした。

なんとかこのSSは走り切れたものの、 「応急処置をして次のステージを走っていた んですけど、走行中に水漏れが酷くなった のでマシンを止めました」と語るように、SS6 でデイリタイアを決断した。

悔しい展開となった勝田貴元選手だが、 デイ3に再出走。出走順が先頭となったこ とで路面の掃除役を強いられたものの、 SS15で3番手タイムをマークする素晴らし い走りも披露した。

貴元選手。デイ2のSS3で7番手タイム、 SS4で6番手タイムをマークして徐々にペ ースアップしていたのだが、SS5でハプニン グが発生した。

「ハイスピードなセクションでブレーキング ポイントの判断が楽観的になり、コーナー にターンインするのが遅れて、ラインから 外れてしまいました」とスピンからコースオ フ、デイリタイアを喫した。

勝田貴元選手にとって波乱の展開となっ たが、デイ3に再出走。出走順が早く、路 面の掃除役を強いられたことからペースを 上げることができなかったが、貴重な経験 を重ねて総合23位でフィニッシュした。 「再出走後は自信とフィーリングを取り戻す のは簡単ではなかったですが、最後までラ リーを走り切り、多くの異なるステージで経 験を積むことができたのは良かった」と勝田 貴元選手。第4戦以降の活躍に注目したい。

3シーズン連続の三冠達成を狙う

TGR-WRTは3戦で2勝を獲得

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得意とするラリー・スウェーデンで 初のワークスノミネート

第1戦ではトラブルに祟られながらも、総 合6位を獲得した勝田貴元選手は2月9〜 12日、スウェーデンを舞台に開催された第 2戦のラリー・スウェーデンに参戦した。

第1戦はワークスノミネートを受けずに TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team(TGR-WRT)から4台目のGR YAR IS Rally1 HYBRIDでの参戦だったが、今 シーズン唯一のフルスノーラリーにはワーク スノミネートを受けて参戦した。

2018年にWRC2でクラス優勝、2022年 には総合4位で入賞を果たすなど、ラリー・ スウェーデンは勝田貴元選手が得意なラリ ー。SS3で3番手タイム、SS4で今シーズン 初のベストタイムをマークして、総合5番手 につける順調なラリー運びを見せていた。

しかし「ステージの終盤で轍に足をすくわ れ、オーバースピードでコーナーに進入。リ アをぶつけて、フロントをひっかけてロール してしまいました」と、SS5で転倒を喫した。

「フィーリングが良かったのでパワーステー ジではいい仕事ができそうな手応えはあり ました」と好感触をつかんでいたのだが、 「デイ4に入ってからエンジンのフィーリン グが良くなくてリタイアすることにしまし た」と語るように、パワーステージを前にし てリタイアを決断した。

「初のワークスノミネートだったので意気 込んでいたし、手応えはあったんですけど ね。自分のクラッシュで落としてしまったの でチームに申し訳ないと思っています」と語 るように、悔しい一戦となった。

初挑戦のメキシコでは 2戦連続のミスに泣く

序盤の2戦で一進一退の結果と なった勝田貴元選手は3月16〜 19日、第3戦のラリー・メキシコ に参戦した。

2020年以来の開催となるこの ラリーは今シーズン初のグラベル ラリー。TGR-WRTのドライバー で唯一、メキシコ未経験の勝田貴 元選手は4台目の車両で挑んだ。

世界遺産グラナファトの市街地 を舞台にした、デイ1のSS1と SS2を9番手タイムで終えた勝田

TGR-WRTはドライバーとコ・ドライバ ー、そしてマニュファクチャラー、3部門の チャンピオンに輝く三冠を、3シーズン連続 で獲得する偉業に挑んでいる。

第3戦終了時点では、勝田貴元/ジョン ストン組と3台目の車両をシェアするセバス チャン・オジエ/ヴァンサン・ランデ組が 第1戦と第3戦を制し、TGR-WRTは3部門 のトップに立っている。

王座防衛に挑むカッレ・ロバンペラ/ヨ ンネ・ハルットゥネン組は3番手、エルフィ ン・エバンス/スコット・マーティン組も5 番手。第4戦以降はレギュラークルー2組 の奮闘にも期待がかかる。

第3戦はセバスチャン・オジエ(右)/ヴァンサン・ランデ(左)組が優 勝、ヤリ-マティ・ラトバラ代表(中央)率いるTGR-WRTは3シーズン 連続での三冠獲得に向けて、各部門のランキングトップに立った。

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国内四輪モータースポーツ、2023年シーズンがいよいよスタート! ラリー/スピード競技の全日本大会が開幕! モータースポーツを支える各種行事も続々開催 PHOTO/遠藤樹弥[Tatsuya.ENDOU]、小竹.充[Mitsuru.KOTAKE]、佐藤靖彦[Yasuhiko.SATOU]、森山良雄[Yoshio.MORIYAMA]、 山口貴利[Takatoshi.YAMAGUCHI]、吉見幸夫[Yukio.YOSHIMI]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS] REPORT/JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

日本ラリー選手権は、2019年 以来となる群馬県嬬恋村のスノ ーラリーで開幕した2023年。

今季の全日本ラリーではクラス区分が見直 され、JN1クラスで走れる車両に、国際モ ータースポーツ競技規則付則J項252条お よび253条の安全要件・一般事項等に基 づくASN公認または承認車両が加わった。

これは海外ASNが規定するグループ AP4に準じたJAF公認車両で、新たに 「JP4」と定義された。JAF特別団体(自動車 メーカー)により車両公認が申請され、JAF が発行する公認書を持ち、道路使用では臨 時運行許可番号標が必要となるものだ。

近年の全日本ラリーではFIA Rally2車両 がJN1クラスを席巻しているが、このJP4 は国産車ベースの競技車両に対する性能調 整とも言える施策で、最高峰JN1クラスに

おける競技性がより高まることが期待され ている。しかし、開幕戦の嬬恋ではさすが にJP4車両のデビューとはならず、投入予 定チームに対して登録番号標付きでの参加 が特例として認められることになった。

そして、スピード競技の全日本選手権で もクラスの見直しが行われ、昨年までの JD、JGを付した名称ではなく、車両改造 を示す旧来のクラス名称に一新。名称だけ ではなく参加車両区分も再編された全日本 ジムカーナ選手権では、エントリー車両の 顔ぶれが大きく変化することになった。

3月26日にモビリティリゾートもてぎ南 コースで開幕した全日本ジムカーナ選手権 では、新生PN1クラスにFWDで1.5Lの 10ヤリスが8台参戦。そして、電動式駐車 ブレーキが装着された車両を対象とした新 生PE1クラスには、中部の深川敬暢選手が

話題のBEV車両、テスラ・モデル3を投 入した。土曜の公開練習ではPE1クラスの トップタイムを計測して、まさに”黒船来 航”を予感させるニュースとなっていた。

3月19日に京都コスモスパークで開幕し た全日本ダートトライアル選手権では、山 崎利博選手が新生SA2クラスにGRカロー ラを初投入。同日に鈴鹿サーキットで開幕 したスーパー耐久シリーズでは、ST-2クラ スにHonda R&D Challengeが昨年から 投入するFL5シビックタイプRがクラス優 勝を果たすなど、プロダクションカーやツ ーリングカーのカテゴリーでは、従来の勢 力図が塗り替えられる兆しが感じられた。

4月にはスーパーフォーミュラやスーパー GTも開幕する四輪モータースポーツの 2023シーズン。関係者が腐心した新たな施 策がうまく結実することが期待されている。

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ドライバー・オブ・ザ・イヤー 2022年は野尻智紀選手に輝く

一年で最も輝いた四輪モータースポーツ競技運転者を投票で決める「ドライバー・ オブ・ザ・イヤー」。2022年は野尻智紀選手が選ばれ、2021年受賞者の佐藤琢磨 選手がプレゼンターを務める表彰式が東京オートサロン会場にて行われた。

自民党MS振興議連総会では 2022年チャンピオンが挨拶

3月15日には自由民主党モータースポー ツ振興議員連盟総会が党本部で行われ、 スーパーフォーミュラの野尻智紀選手や スーパーGT500クラスの平峰一貴選手、 全日本ラリーの新井敏弘選手らも出席。

新城ラリーではSSラリーの 安全性向上講習会を開催

全日本ラリー第2戦新城ラリーでは「FIA基金助成 による2023年FIA-JAFラリーのスペシャルステー ジにおける安全性向上講習会」が開催。AG.MSC 北海道による座学と実技講習が行われた。

長谷見昌弘氏と星野一義氏が スポーツ功労者として顕彰

文部科学省が制定するスポーツ功労者顕彰にお いて、令和5年度は長谷見昌弘氏と星野一義氏が 選出された。3月2日の顕彰式は第52回日本プロ スポーツ大賞と併催され、日本プロスポーツ大賞 では野尻智紀選手が敢闘賞を受賞した。

スーパー耐久機構のエントラントリーグ委 員長を務めたエンドレスの花里功氏が2月3 日に71歳で逝去された。スーパー耐久シ リーズ開幕戦鈴鹿では黙祷が捧げられた。

第1回モータースポーツ審議会が開催され、2023年のJAF公認競技統轄業務も本格始動

e3月23日に第1回モータースポーツ審議会がJAF本部にて開催され た。今回から二部形式となり、新設された第一部は、審議会を構成 する専門部会委員が集まり、部会を超えた共有事項や横断的な解決 が求められる案件確認などを行う場となった。特に喫緊の課題であ るカーボンニュートラル対応については、久々の対面形式も相まっ て議論が白熱。現実的な策の構築が急務であることが共有された。

2023年からラリー部会長を務めることになった高桑春雄氏(左写真)と、新た にスピード競技ターマック部会長となった中村真幸氏。

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2023 春 CONTENTS

4 F1角田裕毅選手、3シーズン目のスタートは入賞まであと一歩に迫る!

6 WRC勝田貴元選手、フル参戦3シーズン目は苦難の船出となる

8 国内四輪モータースポーツ、2023年シーズンがいよいよスタート!

12 さらなる高みへ

最高峰フォーミュラで二連覇達成。前人未到に挑む野尻智紀選手の苦悩

18 “SF23”シェイクダウン

新パッケージで2023年を牽引するのは誰なのか?

20 初栄冠の誉れ

2022年全日本選手権“初”チャンピオンインタビュー 全日本ラリー選手権 ドライバー部門/コ・ドライバー部門編

29 2022年JAF地方選手権カート総まくり

鈴鹿選手権シリーズ/もてぎシリーズ/瑞浪シリーズ

40 2022年JAF地方選手権レース総まくり

FIA-F4/F4/S-FJ/ツーリングカー/FORMULA REGIONAL

48 JAF地方選手権2022チャンピオン

RALLY/GYMKHANA/DIRT TRIAL/CIRCUIT TRIAL

TOPICS

26 Kean Nakamura Berta選手の挑戦

日本人初のFIAカート世界選手権チャンピオンが鈴鹿凱旋!

54 社員一丸RALLYING 競技の“現場”から人材育成と品質向上を狙う 全日本ラリーに「KAYABA Rally Team」参戦!

57 愉しきフォーミュラ モノ作りの拠点、そして生涯スポーツとして日本を支えるフォーミュラシリーズの現在形

64 オートテスト倶楽部

兵庫・南あわじ市で地元クラブが初開催。盛りだくさんのイベントを60名が堪能

INFORMATION

33 JAFモータースポーツサイトのススメ

35 INFORMATION from JAF モータースポーツ公示・JAFからのお知らせ(WEB)一覧(2022年12月23日~2023年3月30日)

36 2023年JAFモータースポーツ委員会名簿 2023年全日本選手権審査委員名簿

JAF MOTOR SPORTS JAFスポーツ[モータースポーツ情報]

監修/一般社団法人 日本自動車連盟 〒105-0012 東京都港区芝大門1-1-30 ☎0570-00-2811(ナビダイヤル) 発行所/株式会社JAFメディアワークス  〒105-0012 東京都港区芝大門1-9-9 野村不動産芝大門ビル10F ☎03-5470-1711(代) 発行人/日野眞吾 振替(東京)00100-88320 印刷所/凸版印刷株式会社 編集長/佐藤均 田代康 清水健史 大司一輝 デザイン/鎌田僚デザイン室 編集/株式会社JAFメディアワークス メディアグループ(JAFスポーツ) ☎03-5470-1712

COVER/2022年JAF全日本スーパーフォーミュラ選手権 第10戦 第21回JAF鈴鹿グランプリ PHOTO/吉見幸夫[Yukio YOSHIMI] 本誌の記事内容は2023年3月30日までの情報を基にしております。また、社会情勢等によって、掲載した情報内容に変更が生じる可能性がございます。予めご了承ください。

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「JAFモータースポーツサイト」も要チェック! https://motorsports.jaf.or.jp/

さらなる

内最高峰のフォーミュラカーレース、全日 本スーパーフォーミュラ選手権の2022シ ーズンは全7大会10戦で行われ、野尻智 紀選手(TEAM MUGEN)がライバルを圧倒。2年連続 でドライバーズチャンピオンを獲得した。

国内トップフォーミュラで同一ドライバーが2年連 続で日本一に輝くのは、2007〜2008年の松田次生 選手以来、14年ぶりのこと。チャンピオン確定の舞台 となった10月29日の鈴鹿サーキット(第9戦)は、こ の14年ぶりの快挙達成で、歓喜に沸いた。

野尻選手は、初タイトルを獲得した2021年も全7 戦中3勝を挙げる活躍ぶりだったが、2022年はさら に上回る快進撃を見せ、全10戦のうちポールポジシ ョンは6回、決勝では優勝2回を含む計8度の表彰台 を獲得した。そして、表彰台を獲得できなくても、第 4戦オートポリスと第8戦もてぎで得た4位が最低順 位であったという驚異的な成績を収めた。

スーパーフォーミュラのパドックでは「いつも野尻 が速い」という声が当たり前のように聞こえてきてい たが、当の本人は連覇のために、時には我慢し、時に は苦戦し、時には悩むこともあったシーズンだった。

しかし、その道程は決して平坦ではなく、シリーズが進むにつれて 2022

回もの表彰台を獲得して、最高峰フォーミュラの連覇を達成した。

2レース制の2022年開幕戦・富士 絶対に決めたかったスタートダッシュ

年の戦いぶりを振り返る。

勝を挙げてスーパーフォーミュラ王者に輝いた野尻智紀選手。

2022年4月、富士スピードウェイを舞台に開幕を 迎えたスーパーフォーミュラ。この年は、全7大会中 3大会で土曜と日曜にそれぞれ予選と決勝を行う2レ ース制のフォーマットが導入された。

高みへ

戦でポールポジション獲得

スーパーフォーミュラは、シーズン中にテスト走行 をする機会がなく、予選前のフリー走行(90分間)で マシンセッティングを決めなければならない。

そこでうまく仕上げられれば、2レース制の場合は 有利に立てるのだが、逆に調子を上げられず2レース とも下位に沈むと、大きな痛手となってしまう。

「富士の開幕大会でポール・トゥ・ウィンを決め、ス タートダッシュを決められるかどうか」、これが野尻 選手が連覇のために掲げた第一目標だった。

しかし、富士における土曜の第1戦では、予選で歯 車を噛み合わせられず6番手。決勝ではピットストッ プのタイミングをうまく決めてトップに浮上したが、 レース後半に入って平川亮選手(carenex TEAM IM PUL)が接近。野尻選手も応戦して、白熱のサイドバ イサイドのバトルを展開したが、ついに平川選手の先 行を許し、2位でチェッカーを受けた。

レース後、野尻選手は悔しさを堪えながら記者会見 の席に座っていたが、翌日の富士・第2戦では王者の 貫禄あふれる強さを発揮する。

日曜午前の第2戦の予選では順当にQ1を突破した が、Q2でのアタックでミスが出て、コカ・コーラコ ーナーでわずかにコースオフを喫してしまった。この

PHOTO/石原.康[Yasushi.ISHIHARA]、遠藤樹弥[Tatsuya.ENDOU]、 佐藤靖彦[Yasuhiko.SATOU]、鈴木あつし[Atsushi.SUZUKI]、 森山良雄[Yoshio.MORIYAMA]、吉見幸夫[Yukio.YOSHIMI]  REPORT/吉田知弘[Tomohiro.YOSHITA]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

2021 年に 3
2022 年は全 10
6 回、優勝 2 回を含む 8
最高峰フォーミュラで二連覇達成前人未到に挑む野尻智紀選手の苦悩
国 特集 レース/RACE
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野尻智紀

全日本スーパーフォーミュラ選手権 2022

年ドライバーチャンピオン

最終・鈴鹿大会の第9戦 でスーパーフォーミュラ 2度目のドライバータイ トルを確定させた野尻 智紀選手。第10戦を前に TEAM.MUGENのチー ムタイトルも確定した。

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ままでは走路外走行によりタイムが採用されな いと判断した野尻選手は、瞬時にクールダウン に入り、冷静に次の周回で再びアタックを敢 行。見事にライバルを圧倒して、2022シーズ ン初のポールポジションを獲得した。

日曜午後の決勝レースでもスタートから安定 した走りを披露。前日と同様に平川選手が背後 に迫ってきたが、相手に隙を与えない走りで 2022シーズン初優勝を飾った。

野尻選手は「開幕前から“2連覇”というのは 意識していましたが、そのためにシーズンをど のように進めていきたいかというのは、その時 の流れや状況でかなり大きく変わってしまいま

す。そういう意味で、富士の第2戦で優勝して、僕が ポイントでリードして、流れを作ることができたのが 良かったです」と語る。

2022年11月25日のJAFモータースポーツ表彰式では、全日本スー パーフォーミュラ選手権のドライバーチャンピオンとチームチャ ンピオン、メカニック賞を獲得。

2023年1月13日に東京オートサロンの会場で発表されたJAFドラ イバー・オブ・ザ・イヤー。2021年の佐藤琢磨選手に続き、2022 年は野尻智紀選手が獲得した。

スーパーフォーミュラ最終大会は、第9 戦に笹原右京選手と野尻選手がワン ツーフィニッシュしてタイトルを確定。 TEAM.MUGENの独壇場となった。

連覇のために“我慢した”中盤戦 結果では語られなかった“苦労”

続く鈴鹿サーキットでの第3戦。ここでも野尻選手は 速かった。予選ではKONDO RACINGの山下健太選 手やサッシャ・フェネストラズ選手が肉薄したものの、2 戦連続で野尻選手がポールポジションを獲得した。

しかし、雨模様となった決勝では、松下信治選手 (B-MAX Racing Team)の猛追に屈して2位でフィ ニッシュ。残り周回わずかのところで逆転されただけ に、さぞ悔しさが滲み出ていることと思いきや、記者 会見では「チャンピオン争いのことを考えると悪くな い結果」と冷静。常にタイトル獲得を意識する姿勢が 垣間見えた。実際、ドライバーズポイントでは野尻選 手が56ポイントに伸ばしており、ランキング2位で 追う平川選手には16点差をつけていた。

シーズン序盤を終えて、チャンピオン争いの流れは 野尻選手に傾いた印象があったものの、ここからの中 盤戦では“我慢のレース”を強いられる。第4戦オー トポリスでポールポジションを奪うも、決勝のペース に苦戦して4位フィニッシュ。この年、初めて表彰台 を逃すレースを経験した。決勝4位とはいえ、予選ポ イントも含めて11ポイントを上乗せし、ランキング 首位も維持したものの、「このままではマズい。トッ プに戻るためにもう一度、全てを見直さないといけな い」と、野尻選手は険しい表情を見せていた。

そして、続く第5戦スポーツランドSUGOでも、 予選で他を圧倒する走りを見せて4戦連続ポールポジ

2022年JAF全日本スーパーフォーミュラ選手権成績表 順位 ドライバー ①富士 4/9 ②富士 4/10 ③鈴鹿 4/24 ④AP 5/22 ⑤菅生 6/19 ⑥富士 7/17 ⑦もてぎ 8/20 ⑧もてぎ 8/21 ⑨鈴鹿 10/29 ⑩鈴鹿 10/30 予選 決勝 予選 決勝 予選 決勝 予選 決勝 予選 決勝 予選 決勝 予選 決勝 予選 決勝 予選 決勝 予選 決勝 1位 野尻智紀(1号車) 6番手 2位 1番手 1位 1番手 2位 1番手 4位 1番手 3位 3番手 3位 4番手 3位 3番手 4位 1番手 2位 1番手 1位 2位 S.フェネストラズ(4号車) 5番手 3位 7番手 20位 3番手 4位 6番手 2位 2番手 1位 7番手 DNF 2番手 2位 2番手 6位 17番手 16位 7番手 4位 3位 平川 亮(19号車) 3番手 1位 8番手 2位 12番手 7位 8番手 1位 16番手 7位 11番手 DNF 13番手 DNF 6番手 2位 11番手 9位 6番手 5位
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「ダブルヘッダーが、自分たちを苦しめる……」

ションを獲得。有言実行な“リカバリー”をみせた。

マシンの調子にもかなりの手応えがあったと語る野 尻選手だが、セーフティカーが2回出る波乱となった SUGOの決勝では、「リスクを承知で優勝を狙いに行 くのではなく、チャンピオンのために確実にポイント を獲りに行く」という戦略を優先。結果、トップの座 を明け渡し、3位でチェッカーを受けた。

「SUGOはちょっと悔いが残ったレースでした。マ シンの調子が良く、本来なら優勝すべき一戦だと思う ところがあったのは確かです。そういう意味で、スタ ートでフェネストラズ選手に競り負けて、流れを作れ なかったのが悔しいです」と野尻選手は振り返る。

その後も、中盤戦では確実に上位を狙い続けるレー スを披露。第6戦富士、第7戦モビリティリゾートも てぎは荒れたレース展開に見舞われたが、チームと共 に「確実にポイントを獲る」という任務を遂行し、連続 で3位表彰台を獲得。もてぎの2レース目となった第 8戦でも、相手の動きを見ながら柔軟に対応して4位 フィニッシュ。もちろん、チャンピオンとして、ドラ イバーとして勝ちたいという気持ちは誰よりも強い が、あくまでも目標は「2連覇の達成」。自身の中で葛 藤がありながらも、野尻選手は粛々と任務をこなし、 ついにスーパーフォーミュラ連覇に王手をかけた。

最後にして、最大のピンチを 一晩で乗り越えたチームの底力

10月末に鈴鹿サーキットで行われた最終大会。こ こも2レース制のフォーマットが採用された。日曜の

最終レースにはJAFグランプリ杯も掲げられている。

レースウィークの金曜にはチャンピオン候補者が揃 っての記者会見が行われたが、ここで野尻選手は初め て心中の本音を語り始めた。

「やっぱり、心境は昨年とだいぶ違います。今年のほ うがだいぶピリピリした自分がいるなという印象で す。今回はダブルヘッダーで、流れを掴めなかった ら、逆転される可能性もかなりあると思います。そこ を乗り切ることがどれだけ大変かを自分たちが一番分 かっているだけに、このダブルヘッダーが、僕たちを 余計苦しめているなという感じがします」。

計算上では、土曜の第9戦で野尻選手がチャンピオ ンを決められる可能性は十分にあったが、もしセッテ ィングを外して2戦ともノーポイントにでもなれば、 逆転される可能性もあり得る状況だった。奇しくも金 曜のフリー走行は16番手。野尻選手が抱いていた一 抹の不安が当たったかのようだった。

しかし、そこで諦めないのが野尻選手とTEAM MUGEM。セッション終了後からチーム総出で苦戦し た原因究明にあたった。野尻選手も夜10時くらいま でサーキットに残り、翌日の予選に向けてデータを見 直し、メカニックも必死に作業した。何とか第9戦に 向けたセッティングが完成するが、それで調子が戻る か否かは予選Q1を走り出してみなければ分からない。 翌日の土曜・第9戦予選直前、TEAM MUGENのピ ットは異様な空気に包まれていた。野尻選手自身も不 安を抱えたままコックピットに収まったが、いざコー スに出ると、それらは一瞬にして消え去った。見事に

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苦境を克服し、“速い野尻の1号車”が戻っていたのだ。

予選ではそのままQ2に進出して5度目のポールポ ジションを奪った野尻選手は、土曜の第9戦決勝では シリーズ中盤戦と同様に、チャンピオン獲得のために リスクを負わない走りを徹底。そして、第9戦はチー ムメイトの笹原右京選手に次ぐ2位でチェッカーを受 けて、2年連続チャンピオンを決めた。

レース後のパルクフェルメでは、珍しく雄叫びをあ げて拳を高々と突き上げた野尻選手。それまで抱えて いたプレッシャーから解放された瞬間だった。

しかし、彼の2022シーズンはこれで終わったわけ ではない。すぐに翌日の最終戦JAFグランプリに照 準を合わせた。シーズン中に何度も我慢してきた“優 勝”を勝ち獲るために。

一夜明けた第10戦の予選・決勝日を迎えた野尻選 手。日曜の朝はプレッシャーから解放された反動から か、起きた時に力が入らなかったという。しかし、い ざマシンに乗り込むと、2022年のレースでは封じて いた“攻めの走り”が存分に発揮された。

予選ではポールポジションを獲得し、決勝でも自ら ペースを握るレース展開を披露。ライバルを一切寄せ 付けない力強い走りで、シーズン2勝目を飾った。 「ずっとポールから勝てないというようなレースが続 き、“どうしても勝ちたい”という思いはどんどん強く なっていました。日曜の最終戦では、かなりのリスク をとって最初から常にプッシュし続けて、『自分に挑 戦するレース』にしていきました。今まででベストな レースができたと思います」。

“獲るなら今しかない!” 2連覇王者が抱く、2023年の目標

2023年3月。2023シーズン開幕に向けて、各カテ ゴリーのテストが始まろうというタイミングで、野尻 選手に改めて目標を聞いた。

その答えは“スーパーフォーミュラの3連覇”であ り、“スーパーGTとのダブルタイトル”だった。 「もちろん3連覇という大きな目標はありますが、プ ラスアルファで狙っていきたいし、次に狙うとすれ ば、そこしかないなという気持ちでいます。恐らく、 3連覇しても(周りの反響は)『すごい!』となるでしょ う。でも、その一方で『また野尻か』となるところもあ ると思います。そういった状況で、スーパーGTも獲 ることができれば、もっといろいろな人が認めてくれ 2

終盤戦ではモビリティリゾートもてぎで第7/8戦、鈴鹿 サーキットで第9/10戦という2レース開催が続いた。も てぎ大会ではライバルを注視しながらポイントを稼ぐ レースに終始したが、鈴鹿大会の第9戦でタイトルを確 定させると、最終戦では“自分に挑戦する”攻めのレー スを展開。会心のポール・トゥ・ウィンで締めくくった。

レース開催
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狙うは三連覇、そして……

前人未踏のスーパーフォーミュラ3連覇、そしてスーパーGTとのダブルタイトル。高め合 えるチームと共に、“獲るなら今しかない”という偉業達成への戦いが始まった。

るのかなという気がしています」。

そして、2022シーズンに野尻選手が抱えていたス トレスが、本人の口から明かされた。

ついにデビュー

「2連覇に向けて戦っていた時って、プレッシャーも ありましたけど、それ以上に、安定した成績を出して いた中で『また野尻か』という声も聞こえてきました。

実は、僕の中ではそれが悪い意味に聞こえていて、ス トレスになっていたんです。ただ、今はチャンピオン も2回獲ったし、(ストレスも)昨年経験したので、今 年、もし同じような状況になったとしても、周りの声 に振り回されずに、集中できていればいいかなと思っ ています。そこで大きな記録を残すことができれば、 いつか評価される時が来ると思う。まずは3連覇とい うものに向かって突き進んでいきたいです」。

誰もが認める日本最速・最強のドライバーになりた い。その思いを胸に、2023シーズンもスーパーフォ ーミュラとスーパーGTで挑戦を続ける野尻選手。そ して、2023年は偉業達成のチャンスが大きくなって いる一年だと捉えているという。彼がスーパーGTで 所属するARTAのメンテナンスを、TEAM MUGEN を運営するM-TECが担うことになったからだ。

野尻選手は「(TEAM MUGENの)チームとしての パフォーマンスの高さを知っているので、すごく心強 いですし、今が(ダブルタイトル獲得の)可能性がある 時だと感じています。そういった意味でも『獲るなら 今しかないな』というところはあります。僕たち8号

車には若いメカニックが多いですが、そんな彼らを引 き上げるベテランの人たちも大勢いますし、ベテラン になってもすごくモチベーション高くやっているの が、このチームの良さです。全員が全員を高め合うよ うな雰囲気の中でこのチームは動いているので、僕た ちにとっても助けになっています」と語る。

スーパーフォーミュラでは2023年から新しい空力 パッケージを装着した「SF23」がデビューする。野尻 選手は鈴鹿サーキットで行われた第1回合同テストで は苦戦した様子だったが、恐らく開幕戦までには帳尻 を合わせてくるだろう。そしてスーパーGTに関して も、野尻選手と大湯都史樹選手が駆る8号車はテスト から好調。優勝候補の上位に挙げられている。

2023年3月には日本プロスポーツ大賞・敢闘賞を 受賞した野尻選手。その表彰式後に「僕も“日本一速 い男”と呼ばれたいな」とつぶやいていたのが印象に 残っている。ドライバーとして、さらなる高みへ向か って、王者・野尻の新たな挑戦が、今始まる。

S F 23
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シーズンの全日本スーパーフォ ーミュラ選手権に参戦するスー パーフォーミュラ新型車両が、 3月上旬の鈴鹿サーキットに勢揃いした。

この「SF23(エスエフニーサン)」は、モ ノコックや足回りこそSF19のキャリーオ ーバーだが、前後のウイングやサイドポン ツーン、エンジンカウル、さらにはフロア まで一新されたエアロパッケージをまとっ ている。これは、車両から発生するダウン フォース量を削減し、車両後方に流れる気 流の乱れを抑えることでオーバーテイクの 機会を増やそうとする改良とされている。

これは「SF NEXT50」プロジェクトの一 環として、昨年来行われてきた開発テスト で得られた知見をフィードバックしたもの で、レースのエンターテインメント性をよ り向上させることを狙いとしている。

また、今季からは横浜ゴムが開発した、 サイドにグリーンの帯が入ったカーボンニ ュートラルタイヤも投入される。昨年来、 再生可能材料や植物性素材などを用いた多 くのスペックを試していたが、その中から

選ばれた仕様が実戦投入されるのだ。 顔ぶれもガラリと変わる2023年 このようにハード面で大きな変化があっ たスーパーフォーミュラには、今季12チー ム、22台が参加する。TOYOTA GAZOO Racing陣営では、昨年タイトル争いを演じ たサッシャ・フェネストラズ選手が日本を 離れ、代わってKONDO RACINGから小 高一斗選手がステップアップを果たす。

HRC陣営からは「言葉のコミュニケーシ ョンは難しいけど、日本のチームとの仕事 は期待以上のものだった」と語るリアム・ロ ーソン選手を始め、ラウル・ハイマン選手 やジェム・ブリュックバシェ選手ら外国人 ドライバーが初参戦。昨年、スーパーフォ ーミュラ・ライツを戦った太田格之進選手 もDOCOMO TEAM DANDELION RACI NGからステップアップを果たした。佐藤蓮 選手や大湯都史樹選手らはチームを移籍、 新天地でタイトルを目指すこととなった。

今季は5つのサーキットを舞台に7つの 大会が行われ、富士スピードウェイと鈴鹿

国内トップフォーミュラ50周年を迎えた2023年。サスティナブルな モータースポーツ業界作りを目指すスーパーフォーミュラが、 ついに新型車両「SF23」を導入する。 ここでは、3月上旬の鈴鹿サーキットで行われた第1回合同テストにおける シェイクダウンの機会で、注目選手らのファーストインプレッションにより 新型車両の可能性を探る。

PHOTO/石原.康[Yasushi.ISHIHARA]、遠藤樹弥[Tatsuya.ENDOU]、鈴木あつし[Atsushi.SUZUKI]  REPORT/貝島由美子[Yumiko.KAIJIMA]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

サーキットではそれぞれ2戦を開催する。 レース数は一つ減って全9戦となるが、有 効ではなく全戦が加算されるポイントシス テムは昨年同様で、取りこぼしが大きく響 く一方、ポール・トゥ・ウィンを達成すれ ば1戦で23ポイント獲得できることから、 今季も最後まで緊迫した戦いとなりそうだ。

3連覇を目指す野尻選手の印象 では、新たなエアロパッケージ、新たな タイヤで迎える今シーズンを牽引するのは 誰なのか。それを占う形となったのが、3 月4〜5日の鈴鹿サーキットモータースポ ーツファン感謝デーに続き2日間に渡って 行われた第1回公式合同テストだ。

2日間ともポカポカ陽気に恵まれ、全セ ッションともドライコンディションで行わ れた。走行時間中には、各チームが細かく エアロバランスを合わせ込み、減った分の ダウンフォースや新タイヤに対する足回り のセットアップにも余念がなかった。

しかし「2日間、4時間というセッション では時間が足りない」という声が各ドライ

“SF

シェイクダウン

新パッケージで2023年を牽引するのは誰なのか?

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JRP新会長に近藤真彦氏が内定

これまで中嶋悟氏が取締役会長を務めてきた株式会社日本レースプロモーション (JRP)は、2023年2月の取締役会でKONDO RACING代表兼チーム監督の近藤真彦 氏を取締役会長に選任することを内定した。この新人事は2023年4月の定時株主総 会および取締役会で正式決定される見込みだ。

小林可夢偉選手/Kids.com.Team.KCMG 野尻智紀選手/TEAM.MUGEN リアム・ローソン選手/TEAM.MUGEN

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シェイクダウン

新パッケージで2023年を牽引するのは誰なのか?

バーから聞かれるなど、まだまだ新車に対 しては手探りといった状況。その中で、初 日午後に総合トップを奪ったのは、シリー ズ3連覇に挑む野尻智紀選手だった。

両日とも午後のセッションでは、オーバ ーテイクシステムを合計40秒間使用できた が、野尻選手は1分35秒955と、唯一の 35秒台を叩き出した。しかし、2日目午後の ロングラン中にはコースアウトする珍しい シーンも見られている。野尻選手は新しい SF23にどんな印象を持ったのだろうか。 「結構いろいろなところに違いを感じてい ます。まずストレートではドラッグが少な くなった感覚があって、結構スピードが伸 びていますね。以前はもう少しエンジンパ

ラウル・ハイマン選手/B-Max.Racing.Team

ジェム・ブリュックバシェ選手/TGM.Grand.Prix

ワーが(空力に)負けて、車速の上昇がある 所で止まる感じがありました。一方、コー ナリングに関しては、みんなフラフラ走っ ていると思います。僕も何度もハーフスピ ンしましたから。ダウンフォースが自分か ら遠いところでしか出ていない感じがあっ て、僕らはリニア感を欠いた状況です」。 「タイヤも少し感触が変わっていて、ちょ っと剛性感が減っているんじゃないかと感 じます。クルマの動きが違う分、タイヤの どこに力が掛かるかなども大きく変わって きていると思うので、評価は難しいんです けどね。現状でもリアのダウンフォースが 少ないなという印象なので、前のクルマに 付いて行ってオーバーテイクできるかどう かはまだ分からないですね。他のクルマの 後ろに付いてみたりもしましたけど、テス トではお互い全開ではないので、レースで 初めてわかるんじゃないかと思います」。

巧者・小林選手は手応えを掴む 総合タイムで野尻選手に続いたのは、山

本尚貴選手と佐藤選手。さらに、2日目に トップタイムをマークした小林可夢偉選手 がTGR勢トップの総合4番手で続いた。

これまでF1やLMP1ハイブリッド、ハ イパーカーを含め、多くの車種でのレース 経験を持つ小林選手だが、スーパーフォー ミュラでは苦戦が続いていた。しかし、今 回のテストでは、2日間を通じて常に上位に つけて本来の速さを見せていた。そんな小 林選手はSF23の印象をこのように語った。 「タイヤは多少違うかなという感じですが、 タイムが落ちる感じはありません。暑い時 に走らないと最終的には何とも言えません が、今の温度ではネガティブな感じはあり ませんね。エアロはすごく難しくて、恐ら く数値上は今までより低い(ダウンフォース が少ない)はずなんですよね、間違いなく。 タイムでは明らかな差は出ないし、昨年よ り高速コーナーが明らかに遅いという感じ もないので、体感的にはそこまで落ちてい ないんじゃないかなと思います。ただ、僕 らにとって、エアロが必要なのはコーナー ですよね。でも、コーナーでどうなってい るかを調べるのは結構難しいんですよ。だ から、もしかしたら、今回のコンセプトは コーナリングに対して良かった可能性があ るんじゃないかなと感じています」。

今回のテストで「昨年より全然グリップ する」と話していたのが大嶋和也選手。大 嶋選手も苦戦が続いていた一人だが、今回 は常に上位に顔を出す仕上がりだ。

第1回合同テストを終えた選手の印象に よれば、進化した車体、そしてセットアッ プの違いによって、今シーズンの勢力図に は変化がありそうな兆しがあった。しかし、 それは開幕戦の富士スピードウェイを終え て初めて見えてくるはずだ。なぜなら今年 は恒例の富士テストが開幕前には行われな いため、全くキャラクターの違う鈴鹿での テストから、いきなり富士で本番を迎える ことになるからだ。

開幕戦富士の4月7日には最初のフリー 走行が行われる予定だが、その結果はどう なるのか。新型車両SF23デビューイヤー は序盤から見逃せない戦いになりそうだ。

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特集 ラリー/RALLY

2022年全日本選手権“初

初栄冠

全日本ラリー選手権 ドライバー部門

2022年の全日本ラリー選手権は3月の新城ラリーに始まり、4 月のツール・ド・九州 in 唐津、5月の久万高原ラリー、ラリー 丹後、6月のモントレー、7月のラリー・カムイ、9月のラリー 北海道、10月のラリー・ハイランドマスターズの全8戦を開催。 ここでは2022年シーズンで初めて全日本チャンピオンを獲得 した選手たちに、タイトル争いの道程を聞いた。

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/コ・ドライバー部門編

PHOTO/宇留野潤[Jun.URUNO]、遠藤樹弥[Tatsuya.ENDOU]、 加藤和由[Kazuyoshi.KATOU]、森山良雄[Yoshio.MORIYAMA]、 CINQ、TOYOTA.GAZOO.Racing、JAFスポーツ編集部[JAF.SPORTS]  REPORT/廣本泉[Izumi.HIROMOTO]、JAFスポーツ編集部[JAF.SPORTS]

の誉れ ”チャンピオンインタビュー
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日本ラリー選手権の2022シーズンでドラ イバー部門のタイトル争いを席巻したのが JN6クラスの海老原孝敬選手。開幕6連勝 を達成し、2戦を残してチャンピオンに輝いた。

2013年に全日本デビューを果たした海老原選手 が、活動休止を経て全日本に復帰したのが2020年。 コロナ禍の影響で変則的となったシーズンを年間3位 で締めくくるも、10戦中8戦が開催された2021シー ズンも4度の表彰台を獲得しながら再びシリーズ3位 に終わった。海老原選手に転機が訪れたのは2022年 の開幕戦で、ヴィッツRSで挑み続けたJN6クラス で、ようやく全日本初勝利を挙げることができた。 「新城の初日は佐藤セルゲイビッチ選手と争っていま したが、2日目の林道でうまく引き離すことができま した。全日本に復帰してからコ・ドライバーの蔭山恵 選手と一緒に戦って、やっと優勝できたので本当に嬉 しかった」と初優勝の喜びを振り返った。

2022年は全8戦が予定通り開催され、海老原選手 もフル参戦で臨む。ベテラン山岸典将選手がコ・ドラ イバーを務めた第2戦唐津でも勢いを維持して連勝 し、再び蔭山選手とコンビを組んだ第3戦の久万高原 ラリー、そして第4戦ラリー丹後でも連勝を重ねる。 第5戦モントレーでは、ターマックながらも「ステー ジが荒れていたので、意識的に抑えたのが良かったで すね」と語るように、破竹の開幕5連勝を達成した。

スマッシュDL.itzzヴィッツ[NCP131ヴィッツ] ターマック5連戦の後に北海道のグラベル2戦が開催された2022年。 海老原選手は開幕5連勝を挙げ、第6戦カムイでタイトルを決めた。

は1ポイントでも獲得すればタイトルが確定するが、 コドラの蔭山選手は4勝だったため、クルーとしてタ イトルを確定させるには優勝が絶対条件だった。

「グラベルラリーということもあったので、ヘマをす る可能性もありました。自分は完走すれば良かったの で気楽ではありましたが、とにかく平常心で走ること を心掛けました」と振り返る海老原選手。ラリー・カ ムイでは自制の効いた戦いぶりを披露する。

グラベルのカムイでいち早くタイトル確定 そして、海老原選手は第6戦ラリー・カムイでタイ トル争いに王手をかける。すでに5勝した海老原選手

初日は4連続ベストで上位争いを支配すると、2日 目にはペースをコントロール。最終的にはすべてのス テージをベストタイムでフィニッシュした海老原選手 が開幕6連勝を達成。海老原選手と蔭山選手はキャリ ア初となる全日本タイトルを確定させた。

海老原選手は「やっとチャンピオンを獲れたので安 心しました。サービスに帰ったらメカニックが祝福し てくれましたが、それがいつもとあまり変わらない感 じで(笑)このチームらしくて、逆に嬉しかったです ね」とタイトル確定の瞬間を振り返る。

海老原選手は「ポイントを意識せずに走りたい」とい う心境で第7戦ラリー北海道に参戦。コ・ドライバー は原田晃一選手で、車両もアクアに替えていた。しか し「SS1のギャップで足回りを曲げてしまったので、 思うように走れなかった」というハプニングに見舞わ れ、幸い昼のサービスで修復できたものの、逆転は果 たせず2位に惜敗することになった。「借りたクルマ で無理に続ける必要はないと判断」した海老原選手は 最終戦を欠場。7戦6勝で2022年を終了した。

「全日本に復帰して3年目ですが、県戦を含めると長 い期間ラリーをやってきましたから、印象深いシーズ ンになりました。まずは開幕戦の新城ラリーで勝てた ことが大きかったですね。蔭山選手とは5年以上コン ビを組んでいて、新城が初優勝だったので、そこで勢 いが付いたと思います。そしてチームに支えられたこ とも大きかったですね。クルマに大きなトラブルはな かったし、面倒見がいいチームなので、色々な面でサ ポートしてくれたことがこの結果に繋がりました」。

海老原選手は2023年の活動について「引き続き JN6クラスで連覇に挑みたいと思います。JN6に移る

全日本ラリー選手権 2022 年 J N 6 クラス 全
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天野智之選手など手強いライバルがいるので燃えます ね。チャンピオンとして恥ずかしくない走りをしたい と思います」と語るだけに、新たな相棒となるフィッ トハイブリッドのポテンシャルとともに注目したい。

シーズンで2人のドライバーをサポート

2022年の全日本ラリー選手権で海老原孝敬選手と JN6クラスに参戦しながら、鎌野賢志選手とJN5クラ スに参戦するなど、コ・ドライバーとして積極的な活 動を展開した蔭山恵選手。特にJN6クラスでは、海老 原選手と怒涛の開幕5連勝を挙げ、自身初となる全日 本ラリーのコ・ドライバーチャンピオンに輝いた。

蔭山選手の全日本デビューは、鎌野選手のコ・ドラ イバーとしてJN2クラスに挑んだ2012年に遡る。以 降は鎌野選手と全日本へのスポット参戦を重ね、車両 もヴィッツから86へとクラスを上げていく。そして

2018年には、鎌野選手とのコンビで第7戦いわき大 会で全日本初優勝を挙げ、続く第8戦ラリー北海道で も連勝するなど、着実なスキルアップを見せていた。

2020年からは、それまで群馬県シリーズでコンビ を組んでいた海老原選手と全日本ラリーに出場するよ うになったが、しばらく勝利からは遠ざかっていた。

歓喜の瞬間が訪れたのは2022年の開幕戦・新城ラリ ーで「初日は鬼久保で負けていたし、路面が滑りやす かったので翌日も気を引き締めていました。ここでは 海老原選手と組んで初めて全日本で勝つことができた ので嬉しかったですね」と語るように、海老原選手の 全日本初勝利をナビシートからサポートした。

第2戦の唐津では、かつての相棒である鎌野選手と JN5クラスに参戦。そして、第3戦久万高原からは再 び海老原選手とJN6クラスに挑み「途中のミスでタイ ムを落とすこともあったので、優勝した喜びよりもフ ィニッシュできた安堵の方が大きかったですね」とシ ーズン2勝目を獲得する。第4戦ラリー丹後では圧勝 とも言えるリザルトで海老原選手が開幕4連勝を挙 げ、このリザルトを受けて、蔭山選手も「ライバルと のタイム差を見る限り、タイトルを獲れるのではと思 えるようになりました」と振り返った。

第5戦モントレーでは「初日は道が荒れていたり、 雨が降ったりしていたので気を付けました。でも、翌 日1本目のギャラリーステージでオーバーランしたの で、無事に復帰できたのは良かった。それもあってモ ントレーで勝った時は嬉しかったです」と蔭山選手が 振り返るように、海老原選手は開幕5連勝、蔭山選手 は4勝目を獲得。そして、JN6のタイトル争いに王手 をかけて、第6戦ラリー・カムイを迎えた。

勝って決めたかった初チャンピオン 「残り2戦は鎌野選手とJN5クラスに参戦すること が決まっていたので、カムイは勝ってタイトルを決め たいと思っていました。でも、優勝狙いでプッシュさ せてリタイアさせるわけにもいかないので、複雑な気

持ちではありました」という蔭山選手の思いに応える ように海老原選手は快走。海老原選手は開幕6連勝、 蔭山選手は5勝目を獲得してJN6クラスのチャンピ オンを確定。そして、自身初の全日本王者に輝いた。 「序盤からしっかり走れていたし、2日目もそのまま逃 げ切ることができました。負けて次戦の結果を待つん じゃなくて、勝ってタイトルを決められたことは本当 に嬉しかったです。でも、正直なところ、フィニッシ ュできた安堵感のほうが強かったかも知れません」と は蔭山選手。当初の計画通り鎌野選手と第7戦ラリー 北海道に参戦してJN5クラスで5位、そして第8戦岐 阜では鎌野選手とクラス7位でフィニッシュした。 「ドライバーやクラスが変わってもコ・ドライバーと してラリーに挑むモチベーションは変わらないです し、JN5もJN6クラスもスピードレンジはそんなに変 わらないので、ペースノートリーディングの切り替え もスムーズなんですよ。でも、JN5クラスは速い人が 多いですね。海老原選手はドライバーとしての実力が あるし、コンビとしてスキルアップしてきたことが今 回タイトルを獲れた最大の理由だと思います。ラリー は安定して走り続けられることや、トラブルが起きな いことも大きいので、海老原選手はクルマもうまく仕 上がっていたと思います」とタイトル獲得の要因を自 己分析する。

全日本ラリー選手権 2022

年 J N 6 クラス コ・ドライバーチャンピオン

蔭山選手は2023年シーズンもJN6クラスの海老 原選手とJN5クラスの鎌野選手のナビシートを預か ることになるという。JN6にはJN5王者の天野智之/ 井上裕紀子組が挑んでくるだけに、どう迎え撃つのか に注目が集まる。

恵 23

日本ラリーには2015年から参戦する木村 悟士選手。2022年は竹内源樹選手とJN3 クラスに参戦し、全日本7年目にして初め てコ・ドライバーチャンピオンを獲得した。

YH.CUSCO.大阪冷研.BRZ[ZD8.BRZ]

4戦ラリー丹後では再び山田選手が台頭。竹内選手が 2年連続で制している得意なラリーではあったものの、 山田選手に届かず2位に惜敗することになった。 グラベル連戦で浮き彫りになった課題

竹内/木村組と山田/藤井組が2勝2敗で並ぶなか、 第5戦モントレーで好走したのは竹内選手だった。木 村選手が「ドライターマックは山田選手が速いですが、 モントレーの初日は雨で、道が荒れてダートも出てい たので、自分たちに分があると思っていました。抑え つつ攻めるような走りでギャップを築けました」と語る ように、盤石のラリー運びで今季3勝目を獲得した。

木村選手のラリー人生は、2020年に竹内選手と出会 ったことで転機を迎えたという。「竹内選手はチャン ピオン経験者で、勝てるドライバーなので、オファー が来た時は悩みました」と語る木村選手だが、コロナ 禍の影響を受けた2020年は2勝を挙げてタイトル争 いを展開。しかし、JN3の王座は僅差で逃している。

2021年はスポット参戦ながら1勝を挙げ、最終戦 として開催された久万高原では、竹内選手が新型 BRZをデビューさせた。竹内選手は2014年に旧 JN4クラスで初チャンピオンを獲得すると共に、旧 型BRZにラリーの全日本タイトルをいち早くもたら している。そのため木村選手は、2022年は「新型BRZ にタイトル一番乗りをもたらすこと」がテーマとなる ことを予感していたという。

開幕戦の新城ラリーでは竹内/木村組が好調な滑り 出しを見せる。木村選手が「JN3に戻ってきた山本悠 太選手と比べ、竹内選手は前年の経験があった分、初 日からタイムが良かったですね」と語るように、初日か ら大差を築いて新型BRZに全日本初勝利をもたらし た。しかし、第2戦唐津では旧型86を駆る気鋭の山 田啓介/藤井俊樹組が躍進。木村選手は「タイヤマネ ジメントがうまくいかなかった」とのことで、山田選手 の全日本初勝利を許してしまう。第3戦久万高原は前 年のステージを踏襲しており、木村選手が「セッティ ングもペースノートも合ったので、気負わずに戦えま した」ということで今季2勝目を獲得する。そして、第

第6戦ラリー・カムイはグラベルということで旧型 BRZで挑んだ竹内/木村組だが「ぶっつけ本番状態で、 ペースノートのリーディングを合わせられず、竹内選 手からも“信用して踏んでいけない”と言われました」 と4位に低迷。続く第7戦ラリー北海道では、3位以上 なら竹内/木村組がタイトル確定という状況だった が、「SS2でもリーディングがずれてしまい、2日目に は何とか修正できて3番手争いができました。最終SS は完璧なアタックでしたが逃げられました」とのことで クラス4位に終わり、タイトル争いは持ち越された。

最終戦を前に木村選手は過去のインカー映像を元に ペースノートを見直した。「最終戦こそ竹内選手に安 心して走ってもらいたかったので、保井隆宏選手から インカー映像にアドバイスをもらいました」と入念な準 備を行った。竹内選手もドライビングとセッティング を見直しており、その努力が奏功することになった。 「竹内選手がタイヤに合ったドライビングをしていた ので、SS2の段階で今回は勝てると思いました」とは 木村選手。タイトル争いは山本選手との一騎打ちだっ たが、竹内選手は4連続ベストで初日を制すると、2 日目は後続を見ながらの走行でトップフィニッシュ。 今季4勝目を獲得し、竹内選手は2回目、木村選手は 初の全日本チャンピオンを確定させ、新型BRZに全 日本タイトル一番乗りをもたらすことにも成功した。 「自分もいつかはチャンピオンを、と思っていたので 嬉しかったですが、竹内選手のタイトル獲得を強く意 識していたので、安心したという気持ちが正直なとこ ろです」と語る木村選手だが、竹内選手と高め合いな がら掴み獲った初の栄冠は格別だったことだろう。

全日本ラリー選手権 2022 年 J N 3 クラス 24

WRCチャレンジプログラム2期生が ついに世界ラリー選手権デビュー! 荒れたスウェーデンで

大竹直生選手が RC4クラスを制する

大竹直生/マルコ・サルミネン組[クリオRally4]

路面状況はかなり荒れていた中 で「山本選手がリタイアした後 は、自分自身がきちんと走り切る ことがポイントになり、ミスをし ないようにと思ったら、逆に難し く感じてしまいました」と初の WRCを振り返る大竹選手。

日本ラリー選手権JN3クラスで2021年チャンピオンに 輝いた大竹直生選手を筆頭に、山本雄紀選手と小暮ひ かる選手が選出されたTOYOTA GAZOO Racing WRCチャ レンジプログラム。彼ら2期生のプログラム2年目となる2月 9~12日に開催されたFIA世界ラリー選手権(WRC)第2戦ラ リー・スウェーデンで、ついにWRCデビューを果たした。

これまでフィンランド選手権などでRally4車両による実戦 トレーニングを重ねてきたが、今回もルノー・クリオRally4を 駆りWRCのRC4クラスに参戦した。300kmを超えるスペ シャルステージは彼らにとって初挑戦で、本格的なスノーラ リーも国内選手権のラップランド・ラリーに続く2回目という 状況となっていた。

小暮ひかる/トピ・ルフティ ネン組[クリオRally4]

テクニカルトラブルに見舞われ ながらも再出走では多くの気付 きを得られた山本選手。3月の フィンランド選手権ではス ウェーデンよりも難しいとされ るスノー路面を好走して、クラス 3位で初表彰台を獲得している。

山本雄紀/ミイカ・テイスコネン組[クリオRally4]

スノー路面でのペース作りに苦労していたとい う小暮選手。レッキとフィジカルトレーニング、 ドライビング分析による改善を重ね、土曜には いいペースを掴むことができたという。

ラリー序盤は大竹選手と山本選手が接戦を演じ、金曜は大 竹選手が山本選手を1.3秒差でリードして折り返す状況となっ た。土曜は山本選手が大竹選手をわずかにリードしてクラス トップに立つも、午後のステージで電気系トラブルに見舞われ、 山本選手はリタイアを喫してしまう。小暮選手は金曜の午前に タイヤ交換を余儀なくされて勝負権を失いな がらも好走。しかし、最終日には雪壁に足を取 られてスタック。約15分を失ってしまった。

プログラムのチーフインストラクターはWRCドライ バーのミッコ・ヒルボネン氏。2023年の序盤は、フィ ンランド選手権2戦とWRCスウェーデンで、スノーラ リーの経験を積むことがテーマだったという。

大竹選手は山本選手のリタイアにより後続 に大きな差が生まれ、それが後半のペース作 りに影響するものの、大きなミスやトラブルも なくクラストップでラリーを終え、初のWRC でRC4クラス優勝を飾ることができた。

なお、3月に行われたフィンランド選手権第 3戦では、難しいスノーラリーを完走した山本 選手がクラス3位で初表彰台を獲得。さらに 自信を深める結果となった。

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レーシングカート界を揺るがした 日本人初の世界チャンプが参戦!  2022年12月11日、三重県鈴鹿市の鈴 鹿サーキット南コース。鈴鹿選手権シリー ズ カートレース IN SUZUKAの最終戦 は、2022年限りでカートタイヤ事業から 撤退するブリヂストンとカートユーザーた ちが互いに感謝を捧げ合う大会として開催 された。そこでメインレースとなった“サ ンクスブリヂストンレース”は、OKカテゴ リーのスペシャルマッチとして、現役カー

ト選手やカート出身のプロドライバーたち が参戦してきたこともあり、普段とはひと 味違う華やかな盛り上がりを見せていた。  その中でひときわ注目を浴びるドライバ ーがいた。Kean Nakamura Berta(中村紀 庵ベルタ)選手、2007年11月12日生まれ の15歳だ。パドックでみんなから「キア ン」と呼ばれていたのに倣って、ここでも キアン選手と呼称する。

このキアン選手の名前が日本でクローズ アップされたのは2021年10月のこと。

スペイン・カンピージョスで開催された FIAカート世界選手権のOK/Juniorクラ ス最終戦で優勝するとともに、シリーズラ ンキング2番手から逆転チャンピオンを決 めた。そしてリザルトの彼の名前の横に は、日本の国旗が記されていたのだ。  ところが、2021年のFIA表彰式に招待 され、日本人初のカート世界チャンピオン という偉業を達成したキアン選手について よく知る人を、日本のカート界の中で見つ

日本人が初タイトルを獲得する快挙! イギリスのライセンスを持つ日本国籍のKeanF1で活躍するドライバーたちが通過してきた、世界一を決めるレーシングカート選手権で、

Nakamura Berta選手が 世界チャンピオンの肩書を引っ提げ、日本で行われるカートレースに電撃参戦を果たす。

そんなベールに包まれた選手の素顔に迫ってみた。

PHOTO/長谷川拓司[Takuji.HASEGAWA]、.FIA、FIA.Karting/KSP、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS] REPORT/水谷一夫[Kazuo.MIZUTANI]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

日本人初のFIAカート世界選手権チャンピオンが鈴鹿凱旋!

Kean Nakamura

中村紀庵ベルタ選手

けることはできなかった。それもそのは ず、キアン選手はイギリス在住で、日本で 一度もレースをしたことがなかったのだ。  翌2022年、キアン選手はOKクラスに ステップアップし、今度はFIAヨーロッパ カート選手権でシリーズチャンピオンを獲 得する。この年、アルピーヌF1の若手育 成プログラムであるアルピーヌ・アフィリ エイト・プログラムの所属ドライバーにも 選ばれ、世界では早くもレーシングカート の枠を超えた注目を集め始めていた。 「いろいろ大変なことがあったけれど、チ ャンピオン獲得は自信を持つ契機になりま した。翌年に向けてステップアップしてい く後押しになったと思います。あと精神面 でも少し成熟することができたましたね」。

そんなキアン選手は「いつか日本に来て レースをやりたいと思っていた」という。そ

Kean Nakamura Berta選手

中村紀庵ベルタ選手 2007年11月12日生まれ イギリス在住  2021.FIA.Karting.World.Championship.OK/Juniorチャンピオン 2022.FIA.Karting.European.Championship.OK.チャンピオン

Nakamura Berta 選手の挑戦

ヨーロッパのトップドライバーは同じ性能のエンジンを 使っていることを挙げ、今回は周りと比較してエンジンの 性能に不満を見せていたキアン選手。負けん気を見せた。

ブリヂストンのスペシャルタイヤのグリップ力の良さは 高評価の様子だが、ピーク時からの急激な落ち方やダ メージ具合には辛辣なコメントも。

してついに日本のサーキットに姿を現した。  キアン選手をマネジメントするBuzz & Co Groupによると、日本の選手たちに対 して、世界選手権やヨーロッパ選手権のチ ャンピオンと一緒にレースができる機会を つくりたいという想いがあり、キアン選手 に打診して今回実現したそうだ。この経験 が国内カート界の刺激、そして希望になれ ばという狙いもあると明かす。

初めて走るという鈴鹿サーキット南コー スながら、公式練習を経てタイムトライア ルは6番手、予選では総合3番手と噂に違 わぬ速さを披露したキアン選手。ただし本 人は、初体験のスペシャルタイヤにいささ か手を焼いていたのだという。

「タイヤはいっぱいグリップがあるけれど、 すぐピークから落ちてオーバーヒートし て、ダメージもひどい。エンジンも、ヨー

ドライビングで印象に残った選手を尋ねると「ドーゾノ」 と答えたキアン選手。堂園鷲選手とは以前、ヨーロッパ で一緒に走ったことがあるという。

ロッパでは上位陣の性能はあまり変わらな いけれど、今回は周りの方がいいように感 じています」。

迎えた決勝はアクシデントでリタイア (リザルト上は失格)に終わったが、そのア グレッシブな走りと速さは周囲に大きなイ ンパクトを与えるものだった。

アイルトン・セナ氏をリスペクト 自ら思い描くドライバー像を目指す  父親はスロバキア人で母親は日本人。イ ギリス生まれで一時は日本で過ごし、5〜 6歳から現在までをイギリスで暮らす。パ スポートの国籍は日本、カートライセンス の国籍はイギリス……。この上なくインタ ーナショナルな出自を持つキアン選手。

「日本人で初めて世界チャンピオンになれ たことはもちろん素晴らしいし、そういう 記録は可能な限りつかみたいと思うけれ

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ど、基本的には自分のためにレースをして いるので、どこかの国のためっていう意識 はありません。自分の思い描いたベストな ドライバーになりたいっていう気持ちの方 が強いです」と自身の想いを明らかにする。  一方で「日本はすごく好きで、おじいち ゃんやおばあちゃんもいることですし、で きれば毎年夏に来たいと思っています。日 本食も、日本のお菓子も大好き(通訳によ るとグミがお気に入りとのこと)」と年齢相

応の顔を見せた。キアン選手は日本語も堪 能で、日常会話レベルの話なら通訳を介す る必要はまったくない。

「1年にひとつはタイトルを獲るという目 標を立てていて、それは今のところ順調に 進んでいます。このまま自分の課題にフォ ーカスして、今後もうまく進んでいけば、 いい将来につながると思います」と、語り 口は穏やかでにこやか。終始落ち着いた様 子はインテリジェンスを感じさせる。

「ヨーロッパではちょっとぐらいの接触は許されるけれど、日 本のレースでは当たったらペナルティということを常に考え てしまうので、チャレンジがしづらいと感じました」と語る が、予選では元全日本カート選手権王者の佐藤蓮選手と接触 スレスレの激しいバトルを展開していた。

一氏に話を聞くと、キアン選手のまた違っ た顔が見えてくる。

「自分が望むものはとことん要求してきま す。その代わり、納得するものを与えれば 必ずタイムを出してきます。今までたくさ んのドライバーをマネジメントしてきたけ れど、普通はメカニックやチームに対して いくらか遠慮するものなんですよね。あん な子はちょっといません。ああいうドライ バーがやっぱり上に行くんじゃないのかな

“If you no longer go for a gap that exists, you're no longer a racing driver.” -Ayrton Senna-

「存在する隙間を狙わなければ、もはやレーシングドライバーではない」

って思いますね」。

今年2月、FIA F2などで活動するイタリ アの名門プレマ・レーシングは、カートレ ースへの参入と、そこでのキアン選手の起 用を発表。キアン選手は今季、近い将来の フォーミュラ進出に備え、国際カートレー スのOK/KZクラスを戦う予定となって いる。世界の頂点への階段を、キアン選手 はまたひとつ上った。

キアン選手に自身の座右の 銘を尋ねると、上記のアイ ルトン・セナ氏の言葉を挙 げた。彼のアグレッシブな 走りはこの言葉に裏付けさ れていると感じた。

この次、日本であなたのレースを観られ るのはF1日本GP? インタビューの最 後にそう尋ねると、キアン選手は「そうで すね」といたずらっぽく微笑んだ。数年後、 我々はイギリス生まれの日本人F1ドライ バーの姿を見られるかもしれない。

アイルトン・セナ
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2022年JAF地方選手権

地方カート選手権で輝いた 将来を嘱望される若き覇者

カート総まくり

鈴鹿選手権シリーズ/もてぎシリーズ/瑞浪シリーズ

2022年は3つのシリーズにおいて、X30エンジンで争われるFS-125部門が 地方選手権として成立した。熱き思いを秘めた若獅子たちが1年を戦い抜き、 努力の末に頂点の座を勝ち獲った。ここでは栄えある覇者たちの戦いぶりを振り返る。

PHOTO/長谷川拓司[Takuji.HASEGAWA]、JAPANKART、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS] REPORT/水谷一夫[Kazuo.MIZUTANI]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

022年の地方カート選手権は、栃木県茂木 町・モビリティリゾートもてぎ北ショート コースでの「もてぎシリーズ」(全6戦)、岐 阜県瑞浪市・フェスティカサーキット瑞浪での「瑞浪 シリーズ」(全5戦)、三重県鈴鹿市・鈴鹿サーキット南 コースでの「鈴鹿選手権シリーズ」(全5戦)と3つの

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JAF地方カート選手権鈴鹿選手権シリーズ 第4戦は悔しさが残るレース内容だが 見事にチャンピオンを手繰り寄せた

平均参加台数27.2台の激戦区となった鈴鹿選手権 シリーズを制したのは、14歳のルーキー中井陽斗選手 だった。ジュニアカテゴリーでの華々しい活躍を経 て、上位カテゴリーへと戦場を移した中井選手は、第 1戦でいきなりブレイクスルーを果たした。タイムト ライアルでトップタイムをマークしてコースレコード を更新すると、ウェットコンディションに変わった決 勝では2番グリッドからのスタートでトップを奪って 独走し、見事デビューウィンを飾ったのだ。 「ドライのタイムトライアルと予選は結構速くて自信 があったんですが、決勝は予想外の雨になって……。 雨は元々自信がなかったからちょっとヤバいかなと思 っていましたが、この年から使っているシャシーが雨 でも調子がいいので、大きな差をつけて勝つことがで きました。シリーズを通して一番うれしかったのは、 特集.地方選手権/REGIONAL.CHAMPIONSHIPS

シリーズが行われた。開催カテゴリーはすべて無改造 の水冷2ストローク125ccエンジンと、市販ハイグリ ップタイヤをワンメイクで使用するFS-125部門だ。 そこで王座に就いたのは、いずれも中学生のドライバ ーたちだった。将来を嘱望される彼らの声とともに、 その一年間の戦いを追ってみよう。

やっぱりこのデビューウィンです」。

ここから中井選手は2位、優勝、2位と好成績を重ね、 残る最終戦を待たずして戴冠を確定させた。ただし、 チャンピオン確定で喜びのレースとなるはずだった第4 戦は、中井選手にとって苦い思い出なのだという。 「一番悔しかったのは第4戦です。勝てる速さがあっ たのに、ミスが続いてペナルティも取られて、自分で 勝てるチャンスをなくしてしまったので。レースが終 わったときは自分もチームもみんな悔しすぎて、チャ ンピオンのことには気づいていま せんでした。でも、家に帰ってか らメディアの方がSNSに(チャン ピオン確定の一報を)上げてくれた のを見て、そこで初めて気づきま した。その時は驚きとうれしさの 両方がありました」。

鈴鹿選手権シリーズ初戦の勝利を皮切りに、全 日本カート選手権でも頭角を現した中井陽斗選 手。そして東西統一競技会では優勝を飾った。

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JAF地方カート選手権 鈴鹿選手権シリーズ 2022年チャンピオン

中井陽斗選手

さらに中井選手はこの年、全日本カート選手権FS125部門の東地域にも参戦。ペナルティで降格とな った第5戦を含めると、第4戦から3戦連続でトップ チェッカーを果たし、シリーズ後半の台風の目となっ た。シリーズ前半では、速さがうまく結果につながら ないレースが目についたが、後半からの大きな飛躍に ついて、中井選手はこう語る。

「FS-125部門に上がることになって、最初はちょっと

JAF地方カート選手権もてぎシリーズ FS-125部門最後のレースで優勝 チャンピオン確定という結果に満足!!

もてぎシリーズでは、15歳の五十嵐文太郎選手が参 戦2年目でチャンピオンに輝いた。ランキング首位の 鈴木悠太選手と2点差でシリーズ最終戦に臨んだ五十 嵐選手は、決勝をポールからスタートしたが、序盤の アクシデントで4番手に後退し、鈴木選手にも先行さ れてしまった。だが、五十嵐選手はここから落ち着い て挽回を始め、逆転勝利を遂げた。熱闘を制して戴冠 を確定させた最終戦を、五十嵐選手はこう振り返る。 「いつもタイムトライアルと予選はそれなりにいい結 果なんですけれど、決勝になると余計な力が入ったり して速さを結果につなげられなかったんです。なの で、最終戦ぐらいはそこを直して1位を絶対獲るぞっ ていう気持ちでした。(4番手に下がってからは)チャ ンピオンのことはあまり重視していなくて、目の前の レースを勝とう、ぶつかることだけは絶対に避けよう と思っていました。ゴールしたときは、もう最高でし たね。チャンピオンもついてきたし、FS-125部門で 最後のレースを優勝という形で終われて、すごくうれ しかったです」。

6戦すべてを4位以内でゴールし、2勝を含む4度の 表彰台登壇を果たした2022シリーズを、五十嵐選手 はこう自己評価する。

「最初のころは速さもなくて、そこから徐々に速くな ってきたけれど、速いのに結果が出ない時期が続いた ので、最後に結果を出せたって感じです。速さが結果 につながらなかった理由は、精神的な部分だと思いま

不安な気持ちもあって、その不安が重なってミスや失 敗をしていたんです。でもシーズンを進めていくうち にだんだん速さも見えてきて、そこで自信がついたの で、結構勝つレース運びができるようになりました」。 「クルマづくりの面でも、シーズン最初はメカニック とあまりうまくコミュニケーションが取れなくて駄目 なレースになってしまうことがあったけど、シーズン 後半はメカニックとのコミュニケーションが取れて、 クルマも決勝に向けて決まっていって、速さをちゃん と結果につなげられるようになりました」。

早々に地方選手権のチャンピオンを確定させた中井 選手は、最終戦を欠場して同日に鈴鹿で行われたOK 部門の特別戦にチャレンジし、ひと足先に未来へのス テップを歩み始めた。目指すは世界の頂点だ。 「2023年は新しく始まるGPRカーティングシリー ズのOK部門への参戦を予定しています。目指すはシ リーズチャンピオン。将来の一番の目標はF1です。 好きなドライバーはシャルル・ルクレール選手。結構 アグレッシブなところが好きですし、自分が乗ってる カートもルクレール(CLカート)ですから」。

す。バトルで負けちゃうことも結構あったし、走りが 雑になってペースダウンしてどんどん抜かれていくこ ともありました。気持ちが弱いときと強いときが極端 だったのかなって思いますね」。

タイムトライアルでは4戦でトップを獲り、併せて フル参戦した全日本でも2度の決勝ポールを獲得。

五十嵐選手は傑出した速さを披露した。

「速さには自信があります。レースっていつもコンデ ィションが違うので、大事なのはその時々の状況に走 りを合わせていく柔軟性だと思います」。

JAF地方カート選手権もてぎシリーズ 2022年チャンピオン

五十嵐文太郎選手

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X30エンジンのレースは2022年が初めてながら、松本拓海選手は順 応性の高さを発揮してチャンピオンへと上り詰めた。

JAF地方カート選手権瑞浪シリーズ 2022年チャンピオン

松本拓海選手

JAF地方カート選手権瑞浪シリーズ 慣れないマシンを早々に乗りこなし

松本拓海選手が全戦表彰台獲得で圧倒

瑞浪シリーズのチャンピオンに輝いたのは、15歳の 松本拓海選手だ。彼のカートデビューは中学1年生 で、周りに比べて決して早くはない。にもかかわら ず、そこから2年と5か月で地方選手権の王座に上り 詰めた。

「(FS-125部門のカートは)音がすごくでっかくてカン高 いし、キャブレターの調整も独特だったけれど、最初か ら、以前までのカートより乗れてるなって思いました」。

FS-125部門の初レースとなった第1戦では、いき なりタイムトライアルでトップになり、決勝は3位表 彰台に。そして、第2戦では全セッション1位で文句 なしの初優勝を飾った。

「第1戦は(全日本ドライバーの)落合蓮音選手がいた ので、負けるにしても自分が勝っている部分が1個で も欲しかったんです。だから、タイトラはポールを獲 ろうと頑張りました。獲れて『よっしゃ!』って感じで した。第2戦は完璧って言ったらなんですけど、結構

2018年のジュニアカート選手権FP-Jr Cadets部 門チャンピオンに続き、日本カート選手権の2冠目を 手中に収めた五十嵐選手。2023年は次のステップへ 進む予定だという。

「FS-125部門はもう2年やったので、2023年はOK 部門に進みたいと思っています。参戦が叶ったら、目 標はまず1勝。チャンピオンも、獲れるなら獲りたい です。将来の目標は(プロの)レーサーになること。最 終的にどこまで、ということは決めていなくて、参加 するレースをひとつひとつ完全にこなして、行けると こまで行きたいです」。

ジュニア時代から速さに 定評があった五十嵐文太 郎選手。ステップアップ後 は苦しんだ時期もあった が、ようやく開花した。

良かったと思います。コース入りした土曜日の練習か ら周りよりもコンマ2〜3秒速くて、これはレースで もそこそこ離せるなと思っていました」。

第3戦では、このパッケージのマシンで初体験のウ ェットレースに戸惑いながらも3位に。そして第4戦 と第5戦が不成立になったことで、シリーズは松本選 手の65ポイント獲得で幕を閉じた。

「チャンピオンという肩書きが得られたのは、やっぱり うれしいです。瑞浪はホームコースなので、そこは他 より有利だったと思っています。あと、チームの方が いいクルマをつくってくれたことにも感謝しています」。

この年は全日本のFS-125部門にも2戦参戦。さら に鈴鹿で行われたOK CHAMPでOK部門のレースも 経験した。プロのレーシングドライバーを目指す松本 選手は、2023年にどんな一歩を踏み出すのだろうか。 「OK部門に出たい気持ちもあるんですけど、資金の 都合もあるので、それよりフォーミュラの練習にお金 を使おうか、今結構悩んでいるところです。練習でFI A-F4に乗ったんですが、フォーミュラは楽しいです ね。カートに比べて体が全然疲れないし、大きいコー スを走れるっていうのが楽しいです」。

カート総まくり 2022年JAF地方選手権 31
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JAFからのお知らせ 日付 タイトル 2022年12月28日 2023年全日本ジムカーナ/ダートトライアル選手権統一規則、2023年全日本ラリー選手権統一規則、 2023年全日本/ジュニアカート選手権統一規則の公示について 2023年01月04日 モータースポーツ公示・JAFからのお知らせ一覧(2022年12月1日~12月31日) 2023年01月12日 【プレゼンターは佐藤琢磨氏】ドライバー・オブ・ザ・イヤー2022の発表について 2023年01月18日 スポーツ資格登録規定第3章第2条1.1)の取扱いについて 2023年02月01日 モータースポーツ公示・JAFからのお知らせ一覧(2023年1月1日~1月31日) 2023年02月22日 長谷見昌弘氏と星野一義氏に文部科学省よりスポーツ功労者顕彰が授与されます 2023年03月01日 モータースポーツ公示・JAFからのお知らせ一覧(2023年2月1日~2月28日) ※上記公示・お知らせ(WEB)一覧の詳細は、JAFモータースポーツサイト(https://motorsports.jaf.or.jp/)内の「>公示・JAFからのお知らせ」で閲覧することができます。

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特集.地方選手権/REGIONAL.CHAMPIONSHIPS

2022年JAF地方選手権

レース総まくり

FIA-F4/F4/S-FJ/ツーリングカー/FORMULA REGIONAL

全国のJAF公認サーキットで開催されるレースでは、若手からベテランまで、 あらゆるドライバーがステップアップを目指して切磋琢磨している。

ここでは、地方選手権レースの激戦を制した猛者たちの、2022年の軌跡をたどる。

PHOTO/石原康[Yasushi.ISHIHARA]、 遠藤樹弥[Tastuya.ENDO]、 皆越和也[Kazuya.MINAKOSHI]、 吉見幸夫[Yukio.YOSHIMI]、 JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS] REPORT/はた☆なおゆき [Naoyuki.HATA]、 JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

020年よりレースシー ンに大きな影響を及ぼ した新型コロナウイル

ス感染症は、2022年もその影響は残ったものの、感染 リスクは大幅に低下した。それに伴い、シーズンを追 うごとに入場規制などが緩和され、サーキットも賑わ いを取り戻しつつある。

そんな中、2022年のJAF地方選手権レースは、フ ォーミュラとツーリングカーを併せ、5カテゴリー・ 10シリーズが開催された。いずれも激戦だった各カ テゴリーのシーズンを振り返ってみよう。

FIA-フォーミュラ4地方選手権(FIA-F4) 大本命と目された3年目の小出峻選手 ライバルを退け9勝を挙げてタイトル奪取 コロナ禍によるサーキットの変化を最も感じている のがFIA-フォーミュラ4(FIA-F4)のエントラントで はないだろうか。全戦が大人気を博しているスーパー GTのサポートレースとして開催されており、無観客 レースを経験した後に、再び大観衆に注目される喜び をじわじわ噛み締めていたに違いない。

そんなFIA-F4と言えば「モータースポーツ甲子園」 とも呼ばれ、プロドライバーを目指す若手の登竜門で ある。一方で、40歳以上のジェントルマンドライバー や女性ドライバー(2022年は登録者なし)を対象とす

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「それは王座のために」 地方レースを席巻した チャンピオンかく戦えり
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る「インディペンデントカップ」を、地方選手権とは別 に設定して、それぞれで激戦が繰り広げられていたの は言うまでもない。

FIA-F4における2022年のJAF地方選手権は小出 峻選手が獲得した。シリーズ参戦3年目のドライバー であり、Hondaフォーミュラ・ドリーム・プロジェク ト(HFDP)に所属する、まさに本命中の本命だった。

だが、決して好スタートが切れたわけではない。

富士スピードウェイで開催された第1戦では、スタ ート直後の1コーナーで追突され、あえなくリタイア を喫していたからだ。14戦にも及ぶシリーズで、しか もポイントは全戦有効であるため、チャンピオンを狙 うには1戦のリタイアが命取りになりかねない。その 第1戦で勝ったのは小出選手のチームメイトである三 井優介選手で、デビューウィンを達成。同じ条件で戦 うだけに、直接のライバルとも言える存在だ。

その後は小出選手が第2戦を制して連勝街道を邁進 するも、その間に三井選手も連続で2位を獲得する。 第5戦でようやく小出選手がランキング首位に立つ が、三井選手は依然として粘り、第4大会の鈴鹿サー キットでは連勝も飾る。そして、スポーツランド SUGOの第10戦では小出選手にリスタート違反があ りドライビングスルーペナルティを課せられてノーポ イントだったため、三井選手が再び首位に立った。

だが、小出選手は続くオートポリスで再び連勝を飾 り、さらにモビリティリゾートもてぎでの最終戦も制 して9勝目を挙げたのに対し、そのラスト2大会の三 井選手は急減速。もてぎでは三井選手が表彰台に立つ

FIA-F4選手権 2022年チャンピオン 小出峻選手

ことさえ許されなかったからだ。

小出選手、三井選手に続くランキング3位は荒川麟 選手となった。2021年は2勝を挙げたが、2022年は 一度も勝てず、絶えずトップを争うも、あと一歩とい うレースが多かった。逆にルーキーながら優勝を飾っ ているのは中村仁選手(第10戦)と小林利徠斗選手 (第13戦)だ。いずれも後半戦で勝っているのは成長 の証と言えるだろう。この3人はTGR-DC Racing School所属の、いわゆるトヨタ育成ドライバー。ラ ンキングでは中村選手が4位、小林選手が6位となっ ている。ちなみに小林選手のポールポジション(PP) 獲得は3回で、8回の小出選手に続く速さをアピール した。

その間、5位に割って入った岩澤優吾選手は非メー カー育成ドライバーの最上位だ。優勝こそできなかっ たが、Bionic Jack Racing率いる高木真一監督の指 導により、確実に上位を走れるドライバーにまで成長 したと言えるだろう。また選手権対象外のインディペ ンデントカップでは、鳥羽豊選手が10勝を挙げる圧 倒的な強さでチャンピオンを獲得している。

Champion’s Voice

「正直、速さには常に自信があって、 どのレースでも全力を出してきたん ですけど、開幕戦での接触や、 SUGOのセーフティカー明けのミ スだったり……経験不足を痛感し ました。トップドライバーの人たち が持っている強さというのは、自ら リスクを減らしていくことだと思う んです。そういう部分が僕にはまだ 足りてなくて、それらが露呈した レースは苦しかったと言えば苦し かったですね。とくにシーズンの中 盤あたりから強いドライバーになろ うと意識して走ってきました。その 結果、以前の自分よりは成長できた と感じました。でも、まだまだ足り ないところもあります。この先も しっかりと学んで、確実に強さを身 につけていきたいと思っています」

2022年JAF地方選手権レース総まくり
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フォーミュラ4地方選手権(F4) 成長ぶりを存分に見せつけたシリーズ 佐藤樹選手が堂々たるチャンピオンに

“JAF-F4”ことF4で大いに話題になったのは、言わ ずと知れたベテラン佐々木孝太選手の参戦だ。開幕戦 のもてぎで優勝を飾ってシリーズを無双状態にするか と思われたが、続くSUGOではハンマー伊澤選手や 佐藤樹選手の抵抗を受け、それぞれに優勝を許してし まう。それでも十勝スピードウェイでの2戦、続く富 士での第6戦で佐々木選手は連勝を飾る。その後の岡 山国際サーキットでの2戦はGR86/BRZカップとの バッティングで佐々木選手は欠場するも、これがまさ か潮目の変わるきっかけとなろうとは……。

岡山では佐藤選手が連勝。こと第7戦に至っては、2 位に12秒もの差をつける圧勝であった。成長著しい とはまさにこのこと。併せて受講していた鈴鹿サーキ ットのレーシングスクール(HRS鈴鹿Formulaクラ ス)との相乗効果もあって、佐藤選手の逆襲が始まる。

ル・トゥ・ウィンを達成。最終戦の鈴鹿サーキットで は、佐藤選手はチャンピオンに王手をかけて臨む。

すると「チャンピオンは無理でしょうが、せめて勝 って終わりたい」と語っていた佐々木選手。最終戦で PPを奪い、佐藤選手が2番手という最高のグリッド が整えられた……はずだったが、なんと佐々木選手に はブレーキトラブルが発生し、スタートすら切れなか った。佐藤選手がつかんだ、ラスト6連勝を含み、10 戦出場して7勝は、チャンピオンに値する確固たる結 果。胸を張って卒業することとなった。

ランキング3位は表彰台に3回上がった黒沼聖那選 手で、4位はハンマー伊澤選手。全戦に出場した貴重な 存在ながら、マシントラブルに泣くことも多く、ハン マー伊澤選手は前述のとおり1勝を挙げるもこの結果 に終わっている。また、選手権対象外のジェントルマ ンクラスでは安井和明選手が王座を獲得した。

そして2023年に30周年を迎えるF4は、シリーズ 名称がFormula Beat(F-Be)に改められた。シャシ ー、エンジンともに自由な選択が許される、現在の日 本で唯一の「マルチメイク」なフォーミュラは、モノづ くり技術を重視するコンセプトと共に、変わらず引き 継がれていく。

SUGOの第9戦では佐々木選手に予選で1秒、決勝 で10秒もの差をつけたのだから、どれだけ自信や手 応えを感じたことか! 続く富士でも2戦連続でポー フォーミュラ4選手権. 2022年チャンピオン

Champion’s Voice 「序盤戦は僕のレベルが低い上にすごく速い人(佐々木孝太選手)がいたのでやら れちゃっていたんですけど、終盤戦では僕が連勝していけたので、そこは良かった ですね。でも孝太さんがいてくれたおかげで、僕自身がかなりレベルアップできた と思います。相手が誰であれ僕は常に勝ちたい気持ちが強く、孝太さんに3戦目で 初めて勝ったんですが、その時はうれしいというよりも、前戦の悔しさの方が印象 に残っています。シーズンを通じてレース毎に技術的にも体力的にもレベルアッ プしている実感はあったので、それが結果につながっていったんじゃないでしょう か。最終戦はかなりラッキーでしたが、アクセルは最後まで抜きませんでした」

佐藤樹選手
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スーパーFJ地方選手権(S-FJ) 4シリーズながら活況を見せたS-FJ 若手が伸びたハイレベルな戦い

フォーミュラの原点でもあるスーパーFJ選手権は、 近年、その意義が再注目され、いずれのシリーズも活 況を呈している。ただ、2022年は岡山シリーズが休 止となったため、4シリーズで覇が競われた。

まずは田上蒼竜選手がチャンピオンに輝いたもて ぎ・菅生シリーズから。最終戦を待たずして決めたこ ともあり、シリーズを通して言えば、田上選手が圧倒 的な強さを見せつけた。しかし、そのスタートは順風 満帆ではなかった。鈴鹿から代わる代わる経験豊富な ドライバーが遠征してきて田上選手に襲いかかったか らだ。実際、もてぎの開幕戦は森山冬星選手、続く

SUGOでは岡本大地選手、もてぎの第5戦では渡会 太一選手に優勝を許している。しかし、遠征ドライバ ーに敗れたとはいえ、互角に渡り合い、成長して残り のレースをしっかり勝ったことから、勝ち得た栄冠で あることは紛れもない事実だ。

ランキング2位は、田上選手不在の最終戦を制した 内田涼風選手で、第2戦以降は表彰台を逃さなかっ た。3位の村田悠磨選手も全戦で入賞を果たしている。

筑波・富士シリーズも田上選手が制し、2022年に おける唯一の二冠獲得となった。開幕戦こそチームメ イトの稲葉摩人選手の優勝を許すが、第2戦から2連

JAFもてぎ・菅生スーパーFJ選手権/ JAF筑波・富士スーパーFJ選手権 2022年チャンピオン

田上蒼竜選手

勝。富士での連戦では森山選手と岡本選手が優勝する も、前述のとおり成長を見せており、とくにメンタル 面の強化を自覚しているという。第7戦で3勝目を挙 げたことで、もてぎ・菅生シリーズ同様に最終戦を前 に田上選手が戴冠を決めている。2022年は両シリー ズ合わせて13戦に出場した田上選手。11戦で表彰台 に立つ安定感も二冠獲得の理由だろう。

稲葉選手がランキング2位となり、3位はやはりチ ームメイトの白崎綾選手。最終戦で悲願の初優勝を飾 り、シリーズでただひとり全戦入賞を果たした。4位 は第6戦で約1年ぶりの優勝を挙げた安田航選手が獲 得。

人気の高い鈴鹿シリーズは、継続参戦するスーパー FJの主こと岡本選手の優勝で始まった。しかし、第2 戦と最終戦は他のレース出場を優先したため欠場、そ の意味でチャンピオン狙いではなかったのは明らかだ ろう。第2戦を制したのは居附明利選手。PPを奪った のは清水啓伸選手だったが、そのままの逃げ切りは許

Champion’s Voice

「2021年の終盤に筑波でデビュー したころはまだマシンに習熟でき ていなかったんですが、冬に練習し て新しいタイヤもテストして、よう やく感触をつかんだ感じでしたね。 2シリーズを追って、もてぎ・菅生 シリーズでは鈴鹿勢と一緒に戦っ て自分の課題も見えましたし、筑 波・富士シリーズではチームメイ ト同士の争いが激しかったので、そ こで自分が成長することができた と思います。序盤は全然勝てずに 2位ばっかりだったのでメンタル がヤバかったんですが、1回勝って から落ち着けるようになって、それ からはほぼ表彰台から落ちずに シーズンを終えられたので、そこは 良かったと思います。もちろん、こ れからもステップアップし続けて いきたいです!」

2022年JAF地方選手権レース総まくり
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されず、戦いは森山選手を含めた三つ巴に。ラスト2 周で居附選手が逆転する展開だった。

続く5月の鈴鹿大会は2レース開催。PPを森山選手 が奪い、2番手は居附選手。第3戦は僅差ながら森山 選手が居附選手を最後まで抑えてポール・トゥ・ウィ ンを達成する。その結果に基づき、第4戦はトップ6 のリバースグリッドに。それでもなお、このふたりに よってトップが競われ、2勝目を挙げたのは居附選手 だった。そして、その後の2戦は完全にふたりのマッ チレースとなった。だが、第5戦は居附選手がトップ を走りながら、ミッションのセレクターが折れるトラ ブルでリタイアして、森山選手が優勝。最終戦もふた りで激しいバトルを繰り広げ、居附選手が競り勝って いた。

その結果、総得点では森山選手が上回りながら、居 附選手が有効得点で優ったはずが、後に大どんでん返 しが……。居附選手が2勝目を挙げた第4戦は、赤旗

Champion’s Voice

「2022年はスーパーFJだけじゃな く、スクール(HRS鈴鹿Formulaクラ ス)も受講したことで、ドライバーと して大きく成長できたシーズンでし た。でも、鈴鹿シリーズは全然うまく いかなくて……。チャンピオンを獲 れたのはいいんですけど、2勝しかで きなかった点が悔しいです。なので、 いちばん印象に残っているレースを 挙げるとすれば、鈴鹿じゃなくて夏 の富士の1戦目(第4戦)ですね。岡 本(大地)選手と大バトルして、ギリ ギリ勝てたレース。あとは優勝した もてぎの初戦です。ただ、岡本選手 とはずっと一緒にバトルしていまし たけど、とく富士では(ノンタイトル 戦を含めて3戦中)2勝されているの で、それは本当に悔しかったですね」

終了によるハーフポイントになってしまったのだ。2 勝に留まった森山選手だが、一度も表彰台を外さなか ったのだから、十分チャンピオンの資格ありと言える だろう。

岡本選手が4戦のみの出場ながら、ランキング3 位。以下、卜部和久選手、岸本尚将選手、大木一輝選 手という順でシーズンを終えた。なお2023年は鈴 鹿・岡山シリーズとして新たなスタートを切ることと なっている。

オートポリスシリーズは清水選手がチャンピオンを 獲得。鈴鹿シリーズをメインに戦ったドライバーなが ら、長崎出身であるだけに、地元とも言えるだろう。 清水選手の開幕戦は2位に19秒もの大差をつけて圧 勝。第2戦は欠場したが、2レース開催となった第3 戦と第4戦には出場。この大会は予選が1回だけで、 ベストタイムで第3戦、セカンドベストタイムで第4 戦のグリッドを決する。ベストタイムのトップは遠征 組の岡本選手だったが、終盤に出された赤旗によって 連続アタックが許されず、岡本選手の第4戦は最後尾 に。この時、セカンドベストタイムで最速だったのが 清水選手だった。

第3戦は岡本選手のポール・トゥ・ウィン。2位は渡 会太一選手で、清水選手は3位だった。予選よりひと つ順位を上げていたことが重要な意味を持つ。第4戦 では清水選手がポール・トゥ・ウィンを飾ったこと で、ランキングのトップを守り抜いたからだ。そして

JAF鈴鹿スーパーFJ選手権 2022年チャンピオン 森山冬星選手

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最終戦は悪天候のため中止となり、清水選手が逃げ切 ることとなった。ランキング2位は入江裕樹選手が獲 得し、第2戦で優勝した東慎之介選手は3位だった。

なお、選手権ではないが、スーパーFJでは鈴鹿以 外の6サーキットを転戦する「ジャパンチャレンジ」

を、レース運営のFJ協会が独自に設けている。2022 年はノンタイトル戦の岡山での2戦を含む10戦を開 催し、そのうち6戦に出場した岡本選手が3連覇を達 成した。2位が田上選手で、3位は岡山で連勝している 清水選手だった。

JAFオートポリススーパーFJ選手権 2022年チャンピオン

清水啓伸選手

Champion’s Voice

「四輪を始めた1年目から順調にいっていると思ったのですが、それ は最初だけで、実は途中から伸び悩んでいました。オートポリスの 初戦で勝って、夏ぐらいまでは結構苦労していましたね。レースに 出ていないしばらくの間も、四輪に乗ってたくさん練習してきまし た。そこで積んできた経験が活かされ、フォーミュラを始めた当初 よりレベルの底上げができたと思います。また苦労していたところ を改善できたのも、自分の中では良かったポイントです。最終的に オートポリスでは2勝してチャンピオンになれましたが、その2勝 目はペースもあんまり良くなくて、展開に助けられたという感じで したから……、納得できていないのが正直なところですね」

景にあった。

だが、そうなることを安井選手は自ら勝って回避し た。その最終戦は5回目のPP獲得ながら、オオタ選 手はコンマ1秒差で続き、決勝でも終始テールに貼り つかれていた。安井選手のプレッシャーは相当だった ツーリングカー地方選手権 容易く王者にはなれない奥深さを展開 苛烈を極めたツーリングカー選手権

FIT 1.5チャレンジカップにはJAFツーリングカー 選手権がかけられ、2022年も2シリーズ開催された。 もてぎ・菅生シリーズでチャンピオンを獲得したのは 安井亮介選手。6戦中3勝はもちろん最多であるのは 言うまでもないが、最終戦までタイトル争いが持ち越 されたのは、オオタユウヤ選手による必死の抵抗が背

またツーリングカーはF4やスーパーFJ等とは異な り、有効ポイントが成立したレースの80%ではなく 70%となっている。万一、安井選手が最終戦でリタ イアしてオオタ選手が優勝すると、同ポイントだが、 上位回数では上回ることになる。

2022年JAF地方選手権レース総まくり 45

はで、その上、オオタ選手がSUGOの最終 コーナーを得意とし、安井選手は水温が上 がらずストレートも伸びないというハンデも乗り越え ての戴冠だった。

JAFもてぎ・菅生ツーリングカー選手権 2022年チャンピオン

Champion’s Voice

ランキング3位は第4戦を制した尾藤成選手で、ツ ーリングカー初年度で初優勝。4位は第2戦のウィナ ー、窪田俊浩選手で、松尾充晃選手と中村義彦選手が 続く結果となった。

そして岡山が外れた鈴鹿シリーズは4戦での開催に なったため、ポイントは全戦有効。2018年以来の王 座返り咲きを目指し、ベテラン伊藤裕士選手が第1戦 でポール・トゥ・ウィンを達成して好調な滑り出しを 見せた。しかし、第2戦から思いがけぬ強敵が乱入。

就職のため、本来はシリーズを追いかけられなかった はずの西尾和早選手が復帰して、挨拶代わりの優勝を 飾ったのだ。続く第3戦もスーパー耐久出場で伊藤選 手が欠場したスキに西尾選手が勝ち、連覇に王手をか けたかと思われた。

最終戦で西尾選手は予選3番手、PPは伊藤選手だっ JAF鈴鹿ツーリングカー選手権 2022年チャンピオン

山内剛志選手

Champion’s Voice 「いろんな人から『チャンピオン獲ったね!』って言われると、チャン ピオン獲ったんだなって感覚になるんですが、『これからは?』って 聞かれると、出られるところで出たいんですけどねって答えるしか なくて……。今はじわじわ来ていますが、確定したときはチャンピ オンという実感はありませんでした。何せ勝って終わっていないで すからね。本当は2023年も出たいところですが、2022年に就職 したことで、今後は僕メインで業務で動かなくてはならないので。 西尾(和早)選手のように、いつでも出られるようにちょこちょこ練 習に行ったりしようと思っています。絶えず詰めきれなかったのは コンマ1、2秒でしたし、1回だけでも勝ちたいです!」

「2021年は最終戦で接触によるリタイアをしてまして、 2022年は第3戦で違反によるペナルティを1回やっちゃっ たんです。なので、そこからはシリーズを考えて一戦一戦を 大事にしようと思って、レースに取り組むようにしました。も てぎは苦手だったのに初戦で優勝でき、得意なSUGOでは なかなか優勝できず、第6戦でやっと勝てたというシリーズ でした。チャンピオンを獲れたのはうれしいですが、ホッと したという気持ちが一番強い ですね。今後のことは分から ないですけど、会社のクラブ チームでやっているので、ま ずは若手メンバーの活動の機 会を多くつくれるようにした いと思っています。その中で 僕の活動が後輩のためになる んだったら挑戦したいです」

たが、西尾選手がポジションを保てば最悪6位でも逃 げ切れる計算だ。しかし、いざスタートを切ると大ど んでん返しが待っていた。西尾選手は序盤早々にミッ ショントラブルに見舞われ、ポイント獲得さえ果たせ ない。その間に伊藤選手はトップを快走し、チャンピ オン獲得に向けてあとはチェッカーを受けるだけに ……。しかし、その確信してパドックに戻ってきた伊 藤選手に伝えられたのは違った結果だった。

チャンピオンを獲得したのは2位でゴールした山内 剛志選手。第2戦から3戦連続で2位のドライバーだ ったのだ。その差、わずか1ポイントでの大逆転。山 内選手は一度も勝っていないが、3戦ともにトップと の差は1秒以内。また第2戦ではPPも獲得している。

ただしその第2戦は、伊藤選手も最速タイムを計測 していたのだ。結果的には走路外走行と判定されて最 後尾スタートを余儀なくされ、決勝では7位でゴール している。あとひとつ上げていれば……というタラレ バは最終戦でまさかのトラブルを抱えた西尾選手も一 緒。改めて運も実力のうちだと、このシリーズから感 じさせられた。

安井亮介選手
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小山美姫選手が 富士で初戴冠!

フォーミュラリージョナル地方選手権 2022年チャンピオン 小山美姫選手

界選手権が久々に日本に帰ってきた2022年。富士ス ピードウェイで開催されたFIA世界耐久選手権(WEC) 第5戦では、フォーミュラリージョナル・ジャパニーズチャンピ オンシップ第5大会が併催された。

この大会は土曜に予選と第13レース、第14レースの決勝が 行われ、日曜朝に第15レースが開催されるスケジュール。本シ リーズには、TOYOTA GAZOO Racingが展開するTGRドラ イバー・チャレンジ・プログラム(TGR-DC)育成ドライバーと して小山美姫選手が参戦しており、第4大会までに小川颯太選 手に73ポイント差を付けた首位で富士大会に挑んでいる。

晴天に恵まれた富士大会の第13レース。小山選手はポール ポジションを獲得したもののスタートで出遅れ、スポット参戦 の大草りき選手にホールショットを奪われてしまう。果敢に首 位を狙った小山選手は2位に終わり、約3時間後に行われる第 14レースに気持ちを切り替えることになった。

迎えた第14レース。2番グリッドからスタートした小山選手 は、またもスタートで出遅れ、1コーナーの立ち上がりでは大草 選手、片山義章選手に続く3番手からの巻き返しとなった。大草 選手が逃げを打つ中で、小山選手は片山選手にテール・トゥ・ ノーズで肉薄。5周目にはストレートで小山選手がスリップスト リームを使い、アウト側から並んで2番手に順位を上げた。

そのまま首位の大草選手との差をコンマ5秒差に詰めた小 山選手。7周目には最終コーナーから大草選手に迫った小山選 手がストレートエンドでアウトに並び、立ち上がりで大草選手 を抜いて首位に立った。

大草選手は小川選手にも抜かれてしまい、今度は小川選手 が小山選手を追撃する展開に。レース後半は、逃げ る小山選手と追う小川選手というタイ トルコンテンダー2名によ

る白熱の攻防戦となったが、小山選手は1秒6、1秒9、そして ファイナルラップでは2秒以上の差を付けてトップチェッ カー。大逆転で今季7勝目を挙げてみせた。

この勝利により、3戦を残して2022年のシリーズチャンピオ ンを確定させた小山選手。表彰式ではGAZOO Racing Comp anyの佐藤恒治プレジデントからサプライズの花束贈呈もあ り、悔しいスタートが続いたものの、チームと一緒に掴んだチャ ンピオン確定に安堵の表情を見せた。

そして、ミックスジェンダーで行われるシングルシーターの FIA公認フォーミュラカーレースにおける女性チャンピオン誕 生というニュースは、即日のうちに海外のモータースポーツメ ディアでも報じられることになり、小山選手は歴史に残る偉業 を成し遂げたドライバーとも評価されている。

第14レースの表彰式ではGAZOO.Racing.Company佐藤恒 治プレジデントからサプライズの花束贈呈が。

フォーミュラ リージョナルは
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特集 地方選手権/REGIONAL CHAMPIONSHIPS

JAF地方選手権2022 チャンピオン

RALLY / GYMKHANA / DIRT TRIAL / CIRCUIT TRIAL

2022年のラリー、スピード競技にかけられたJAF地方選手権シリーズは、 関係者、選手の尽力により、4つのカテゴリーで150を超える競技会が開催され、 コロナ禍に見舞われた過去2年間で失われたものを取り戻すような一年となった。

ここでは、困難な状況に耐えながらも挑戦を続け、 見事に栄冠を勝ち獲った選手達を紹介する。

フォト/石原康[Yasushi ISHIHARA]、加藤和由[Kazuyoshi KATOU]、佐久間健[Takeshi SAKUMA]、鈴木あつし[Atsushi SUZUKI]、 山口貴利[Takatoshi YAMAGUCHI]、吉見幸夫[Yukio YOSHIMI]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]、レポート/JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

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ラリー地方選手権

全国最多の7戦が開催された九州地区は、全国最多の6クラスでチャンピオンが決定 2022年のJAF地方ラリー選手権は、全国5地区で前年と同数とな る26の競技会が開催された。北海道地区は新型コロナウイルス感染 症感染拡大の影響を受けて1戦が中止となったものの、計5戦が開 催。東日本地区は2戦がやはりコロナ禍のために中止を余儀なくされ たが、2021年は全戦が中止となった東北地区での1戦が復活し、計4 戦のシリーズとして行われた。中部・近畿地区は前年から1戦減った ものの、予定通り、中部、近畿ともに3戦ずつの計6戦が開催され

JAF地方ラリー選手権2022年チャンピオン

北海道

RA-1ドライバー 関根正人選手

RA-1コ・ドライバー 松川萌子選手

RA-2ドライバー 谷岡一幸選手

RA-2コ・ドライバー 東郷純一選手

RA-3ドライバー 藤田幸弘選手

RA-3コ・ドライバー 藤田彩子選手

東日本

BC-1ドライバー 渡辺謙太郎選手

BC-1コ・ドライバー 伊藤克己選手

BC-2ドライバー 井之上優選手

BC-2コ・ドライバー 井上草汰選手

BC-3ドライバー 細谷裕一選手

BC-3コ・ドライバー 蔭山恵選手

中部・近畿

DE-1ドライバー 廣嶋真選手

DE-1コ・ドライバー 廣嶋浩選手

DE-2ドライバー 岩田晃知選手

DE-2コ・ドライバー 山下秀選手

DE-5ドライバー 山口航平選手

DE-5コ・ドライバー 谷美希選手

DE-6ドライバー 洪銘蔚選手

DE-6コ・ドライバー 浦雅史選手

2022年JAF北海道ラリー選手権(5戦開

2022年JAF中部・近畿ラリー選手権(中

2022年JAF東日本ラリー選手権(東北1 戦+関東3戦開催)

2022年JAF中四国ラリー選手権(中国1 戦+四国3戦開催)

た。なお同地区では女性ドライバーの洪銘蔚(ホン ミンウィ)選手が DE-6クラスのドライバーチャンピオンを獲得した。中国・四国地区 は2022年も中国1戦、四国3戦の計4戦のシリーズが行われた。2021 年はコロナ禍で1戦中止を余儀なくされた九州地区は、全国で最多と なる7戦が開催された。昨年は1クラスが新設され、6クラスが設定さ れたが、全クラスが成立となり、全国最多となる12名のシリーズ チャンピオンが誕生した。

中四国 FG-1ドライバー マクリン大地選手

FG-1コ・ドライバー 大橋正典選手

FG-2ドライバー 松岡竜也選手

FG-2コ・ドライバー 縄田幸裕選手

FG-3ドライバー 松原久選手

FG-3コ・ドライバー 和田善明選手

FG-4ドライバー 片岡大士選手

FG-4コ・ドライバー 相原貴浩選手

九州

RH-1ドライバー 津野裕宣選手

RH-1コ・ドライバー 竹尾真理華選手

RH-2ドライバー 黒原康仁選手

RH-2コ・ドライバー 松葉謙介選手

RH-3ドライバー 豊田智孝選手

RH-3コ・ドライバー 山本祐介選手

RH-4ドライバー 貞光建選手

RH-4コ・ドライバー 麻生大智選手

RH-5ドライバー 中西昌人選手

RH-5コ・ドライバー 國貞友博選手

RH-6ドライバー 若杉達哉選手

RH-6コ・ドライバー 斉藤龍選手

2022年JAF東日本ラリー選手権(東北1 戦+関東3戦開催)

2022年JAF中四国ラリー選手権(中国1 戦+四国3戦開催)

2022年JAF中部・近畿ラリー選手権(中 部3戦+近畿3戦開催)

2022年JAF九州ラリー選手権(7戦開催)

RALLY
催)
部3戦+近畿3戦開催)
49

ほとんどの地区で競技会数が増加して盛り上がりを見せる一年に 2021年は新型コロナウイルス感染症感染拡大の少なからぬ影響を 受けたJAF地方ジムカーナ選手権だが、2022年は多くの地区で前年 を上回る開催数を確保し、10戦多い59戦が行われた。特に2021年は

JAF地方ジムカーナ選手権2022年チャンピオン

北海道

東北

関東

PN-1クラス 金内佑也選手

SH-1クラス 成瀬悠人選手

PN-1クラス 善方広太選手

PN-2クラス 佐藤宏明選手

SATW-2クラス 阿部崇治選手

SATW-4クラス 中村武留選手

SAC-2クラス 飯野哲平選手

JG1クラス 大野航選手

JG2クラス 金子進選手

JG3クラス 石澤一哉選手

JG4クラス 小平勝也選手

JG5クラス 大脇理選手

JG6クラス 高橋真二選手

JG7クラス 安藤祐貴選手

JG8クラス 杉谷伸夫選手

JG11クラス 本田泰章選手

JG13クラス 中村光範選手

JG14クラス 幅信太郎選手

中部 ATクラス 大仲敦選手

RPN1クラス 渡邉庸仁選手

RPN2クラス 武藤英司選手

PN1クラス 森嶋昭時選手

PN2クラス 田村直選手

PN3クラス 磯村良二選手

SA1クラス 近藤瑛貴選手

SA2クラス 隅田敏昭選手

SA3クラス 小澤忠司選手

SA4クラス 松尾勝規選手

SCクラス 中村友也選手

Dクラス 佐藤宗嗣選手

近畿

BR1クラス 山村一真選手

BR2クラス 寺谷正樹選手

僅か3戦のみの開催にとどまった近畿地区は予定通りの7戦を開催 し、全国一を誇る13クラスが成立。前年より2戦増えて8戦が成立し た中部地区も12クラスが成立するなど活況を呈した。

近畿

BR3クラス 岩崎玲生選手

BR4クラス 北村健選手

PN1クラス 奥浩明選手

PN2クラス 仲健太郎選手

PN3クラス 福永隆一選手

PN4クラス 小玉知司選手

SB1クラス よこ山弘之選手

SB2クラス 中山務選手

SB3クラス 野田太一選手

SB4クラス 辰巳浩之選手

Lクラス 辰巳知佳選手 中国

T28クラス 西島公一選手

RCクラス KAZUYA選手

R2クラス 宮部貴盛選手

R4クラス 佃真治選手

PN1クラス 高屋隆一選手

PN2+クラス 内田敦選手

S2クラス 中田匠選手

S4クラス 藤木拓選手

PNクラス 一色健太郎選手

R1クラス 土居明生選手

R2クラス 堀央尚選手

R3クラス 仙波秀剛選手

R4クラス 山下和実選手

NS1クラス 田中康一選手

PN1クラス 奥薗圭介選手

PN2クラス 黒水泰峻選手

PNR1クラス 松本博文選手

SA1クラス 井上洋選手

SA2クラス 藤本伸選手

B1クラス 池武俊選手

B2クラス 菅智資選手

2022年JAF九州ジムカーナ選手権(8戦 開催)

ジムカーナ地方選手権
戦開催) 2022年JAF近畿ジムカーナ選手権(7戦 開催) 2022年JAF関東ジムカーナ選手権(9戦 開催)
開催)
開催)
開催)
GYMKHANA
2022年JAF北海道ジムカーナ選手権(7
2022年JAF四国ジムカーナ選手権(7戦
2022年JAF東北ジムカーナ選手権(7戦
2022年JAF中国ジムカーナ選手権(6戦
2022年JAF中部ジムカーナ選手権(8戦 開催)
四国
九州
50

ダートトライアル地方選手権

前年から一気に3戦増えた北海道地区は全国最多の9戦を開催 2022年のJAF地方ダートトライアル選手権も、JAF地方ジムカーナ 選手権同様に開催数について回復傾向が見られ、2021年より6戦多い 57の競技会が開催された。特に北海道地区は、1戦が中止となり6戦 の開催にとどまった2021年から3戦増えて計9戦が開催され、全国 最多の地区戦ダートラが行われた地区となった。また北海道のほか、 東北、中部、中国の3地区が前年より1戦多い競技会を開催した。東 北地区はエビス新南コースの新設や丸和オートランド那須での一戦

JAF地方ダートトライアル選手権2022年チャンピオン

北海道 FF-1クラス 左近弘道選手

FF-2 /4WD-1クラス 竹花豪起選手

RWDクラス 和泉泰至選手

4WD-2クラス 島部亨選手

東北 S0クラス 竹村由彦選手

S1クラス 佐藤史彦選手

S2クラス 加藤琢選手

Dクラス

四戸岳也選手

関東 N1500&PN1クラス 鈴木義則選手

PN2&PN3クラス 鶴岡義広選手

N1クラス 山﨑純選手

N2クラス 影山浩一郎選手

S1クラス 小山健一選手

S2クラス Sam Iijima選手

Dクラス

星野伸治選手

中部 RWDクラス 寺田伸選手

PN1・S1500クラス

天野佳則選手

Nクラス 三浦陸選手

S1クラス 横内由充選手

S2クラス 松原実選手

近畿 AE・PNクラス

RWDクラス

執行信児選手

福田剛選手

Nクラス 木村剛士選手

2022年JAF北海道ダートトライアル選 手権(9戦開催)

2022年JAF近畿ダートトライアル選手 権(6戦開催)

2022年JAF東北ダートトライアル選手 権(7戦開催)

2022年JAF中国ダートトライアル選手 権(7戦開催)

が組み込まれたことで南東北・北関東地区の開催数が増えたことに よるもの。中部地区は2021年に2戦中止となった輪島市門前モー タースポーツ公園の競技会が昨年は無事開催されたことで増加と なったもので、中国地区も2021年に中止を余儀なくされた一戦分が 昨年は復活したことによる。なお中国地区は昨年、全国で唯一、AT車 対象のクラスが成立したことで前年より1クラス多い全国最多の9ク ラスが成立した。

近畿

中国

四国

九州

S1クラス 今村太亮選手

S2クラス 矢本裕之選手

Dクラス 金井宏文選手

AEクラス 小野守選手

ATクラス 西村颯人選手

PN1+クラス 山谷隆義選手

NPSAクラス 坂本幸洋選手

SA1クラス 川本圭祐選手

RWDクラス 臼井幹夫選手

NS1クラス 浜孝佳選手

SCD1クラス 一柳豊選手

SCD2クラス 西元直行選手

PNクラス 萩原豪選手

N1クラス 谷芳紀選手

SD1クラス 谷正史選手

SD2クラス 竹下俊博選手

N1クラス 永田誠選手

PN1+クラス 篠原徹選手

S1クラス 中村凌選手

S2クラス 岡本泰成選手

RWDクラス 橋本英樹選手

Cクラス 濵田隆行選手

Dクラス 五味直樹選手

2022年JAF関東ダートトライアル選手 権(8戦開催)

2022年JAF四国ダートトライアル選手 権(4戦開催)

2022年JAF中部ダートトライアル選手 権(8戦開催)

2022年JAF九州ダートトライアル選手 権(8戦開催)

DIRT TRIAL
51

CIRCUIT TRIAL

サーキットトライアル地方選手権

岡山国際でクラス増と人気拡大。

2つの選手権を制するドライバーも誕生!

2022年のJAF地方サーキットトライアル選手権は、前年同様、 スポーツランドSUGO、筑波サーキット、岡山国際サーキットの3 コースを舞台とするシリーズがそれぞれ行われた。開催数につい ても前年と同数となるSUGOで4戦、岡山国際で4戦、筑波では5 戦の計13の競技会が開催された。開催クラスはSUGOが4クラ ス、筑波が6クラスと変わらなかったのに対して岡山国際は2クラ ス増えて4クラスが成立と人気の高まりを示した。注目すべきは前 年に続いてSUGO選手権を制した吉崎久善選手で、昨年は筑波選 手権CT6クラスも制して、ただ一人、2冠に輝くドライバーとなっ た。その筑波選手権では、森田正穂選手、梅野健太選手、柴田尚 選手の3名がタイトルを防衛し、チャンピオンの貫禄を見せた。

2022年JAF菅生サーキットトライアル選手 権(4戦開催)

JAF地方サーキットトライアル選手権2022年チャンピオン 菅生

CT1クラス 芦名英樹選手

CT2クラス 門馬勇人選手

CT4クラス 田中洋一選手

CT6クラス 吉崎久善選手

筑波

岡山国際

2022年JAF筑波サーキットトライアル選手 権(5戦開催)

CT1クラス 澁澤栄一選手

CT2クラス 森田正穂選手

CT4クラス 梅野健太選手

CT5クラス 柴田尚選手

CT6クラス 吉崎久善選手

CT7クラス 日向孝之選手

CT1クラス 赤石憲俊選手

CT3クラス 渡邊敬司選手

CT4クラス 大住拓選手

CT5クラス 山下猛選手

2022年JAF岡山国際サーキットトライアル 選手権(4戦開催)

CUSCO & WinmaX & DUNLOP

2023年Bライセンス競技若手育成支援プログラムのサポート選手が発表!

国内Bライモータースポーツの老舗サプ ライヤーとして知られるCUSCO(株式会 社キャロッセ)が、エムケーカシヤマ株式 会社、住友ゴム工業株式会社と共同で行っ ている「CUSCO & WinmaX & DUNLOP Bライセンス競技若手育成支援プログラ ム」の2023年度のサポート 選手がこのほど発表された。 このプログラムはBライセ ンス競技に参加する若手ド ライバーの支援・育成を通し て、B ライ競技の活性化、 モータースポーツの振興に

2023年サポート選手

貢献するというもので、サポート選手には 競技用パーツ(LSD)、ブレーキパッド、タイ ヤ、エントリー費のサポートが行われる。こ のプログラムでは、昨年も2021年度のサ ポート選手だった目黒亮選手(写真左)が 全日本ダートトライアル選手権で2連覇を

氏名 参戦予定カテゴリー 参戦車両

全日本ラリー選手権

福島賢大郞選手 JN6クラス アクアNHP10

河本拓哉選手 JN5クラス デミオDJLFS

兼松由奈選手 JN4クラス スイフトスポーツZC33S

全日本ジムカーナ選手権

小野圭一選手 PN2クラス ロードスターND5RC

中田匠選手 PN2クラス ロードスターND5RC

小平勝也選手 B SC1 クラス ミニジョンクーパーワークスMFJCW

全日本ダートトライアル選手権

奈良勇希選手 PN1クラス スイフトスポーツZC32S

鶴岡義広選手 PN2クラス スイフトスポーツZC33S

寺田みつき選手 PN3クラス 86 ZN6

果たしたほか、2022年度にサポートを受け た井之上優選手(同中)、鶴岡義広選手(同 右)が東日本ラリー、関東ダートラでチャン ピオンに輝くなど、その活躍が注目を集め ている。今年も選ばれた選手達の飛躍を期 待したいところだ。

氏名 参戦予定カテゴリー 参戦車両

ラリー地方選手権

鮎川諒一選手 東日本BC2クラス スイフトスポーツZC32S

小林佑輝選手 東日本BC2クラス BRZ ZC6

塙将司選手 中部・近畿 DE5クラス ヴィッツNCP131

ジムカーナ地方選手権

山本哲也選手 関東PN3クラス ロードスターRF NDERC

張靖遠選手 近畿BR2クラス インテグラ Type-R DC2

西村優輝選手 中国PN2クラス ロードスターND5RC

ダートトライアル地方選手権

城越明日香選手 北海道PN1クラス スイフトスポーツZC31S

山﨑裕汰選手 中部RWDクラス 86 ZN6

南優希選手 中国PN1+クラス スイフトスポーツZC32S

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社員 一丸 RALLYING

特集 モータースポーツ業界の新たな取り組み/NEW CHALLENGES

競技の現場から人材育成と品質向上を狙う

全日本ラリーに「KAYABA Rally Team」参戦!

自動車用緩衝器メーカーとして世界的な知名度を誇るカヤバ株式会社が、

全日本ラリーに“オール社員”のラリーチームで参戦することを表明した。

自社チームを率いて参戦する意義、そしてラリー参戦で得られるものとは? カヤバ株式会社が全日本ラリーに挑む狙いを、開幕戦・嬬恋で聞いた。

PHOTO/遠藤樹弥[Tatsuya ENDOU]、山口貴利[Takatoshi YAMAGUCHI]、 JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS] REPORT/JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

「KAYABA Rally Team」と名付けられた 新たなラリーチームは、監督およびエンジ ニア、メカニックをカヤバ株式会社の社員 が務め、いずれはドライバーやコ・ドライ バーも含めて“オール社員”で運営するチー ムを目指す、意欲的な試みとなっている。

た開幕戦「Rally of Tsumagoi」から参戦を 開始。嬬恋村のサービスパークには、どこ か懐かしい雰囲気を醸し出しながら、カヤ バロゴをまとった関係者が多数集結した。 ワークス参戦する意義

ーを任されてきた田口幸宏/佐 藤忠宜組は2004年と2006年 に全日本での優勝を遂げてお り、当時もサプライヤーとして チームとコラボしながら製品を 開発するという立場ではあった が、このような参戦活動は 2008年をもって終了し、以降 はエンジニアを派遣して主力チ

ームと共同開発するといったユーザーサポ ートが中心となっていた。

このたび誕生した新チームが参戦するの は新規定のJN2クラスで、車両も最新の GRヤリスだ。しかし、カラーリングはか つての活動を彷彿とさせるイエローを全身 にまとい、車体には2015年から導入され た斜体の現行ロゴではなく、盛時を知る者 には様々な思いがこみ上げてくる、旧タイ プのカヤバロゴを大きくあしらっている。

その活動初年度となる2023年シーズン は、2月3〜5日に群馬県嬬恋村で開催され

全日本ラリーとカヤバの関わりと言え ば、三菱自動車と横浜ゴム、PIAAなどと 協業し、タスカエンジニアリングによるオ ペレーションで「アドバンPIAAカヤバラ ンサー」を走らせてきた記憶が蘇る人も多 いだろう。長年“カヤバカラー”のランサ

全日本ラリーではTOYOTA GAZOO Racingを始め、2023年にはSUBARUラリ ーチャレンジとしてワークス参戦を行うな ど、自動車メーカーが本格的な活動を行っ ているが、自動車部品のサプライヤーがワ ークスチームを結成するケースは珍しい。

その理由について、チーム監督を務める カヤバ株式会社モータースポーツ部、桝本 一憲部長は「数年前に社会的にご迷惑をお かけした経緯がありましたので、技術出身 の企業としては原点を見つめ直したいとい 日本ラリー選手権に、自動車用 緩衝器、建機・産業機械用油圧 機器メーカーとして知られる “カヤバ”がワークス参戦を開始した。

54

開幕戦では、かつてタスカエンジニアリン グでチーフメカニックを務めた山田淳一氏 が新チームの運営にアドバイスしていた。

開幕戦嬬恋は奴田原文雄/東駿吾組が乗車 スノーと舗装で激変する路面に翻弄される う気持ちがありました。そのため、まずは モータースポーツ参戦で社内に元気を取り 戻すこと、そしてモータースポーツ参戦を 通じて新製品を開発し、我々のブランドを アピールしていくことが重要になると考え ました。そこで全日本ラリーに参戦するこ とになり、社員からアイデアを公募して、 当時を彷彿とさせるカラーリングなどを決 定しました。これまで社内でチームを立ち 上げてラリーに参戦したことはなかったの で、初めての試みになります」と語る。 ラリーを通じた人材育成

KAYABA Rally Teamでは、社内公募で 選ばれた6名の社員がエンジニアおよびメ カニックとしてチームを構成し、桝本監督

開幕戦嬬恋で乗車したのはKAYABA Rally Team にアドバイザーとして参画する奴田原文雄選手と コ・ドライバー東駿吾選手。

お話を伺ったカヤバ株式会社経営企画本部モー タースポーツ部の桝本一憲部長(左)と同モーター スポーツ部の松下雄介氏。

カヤバGRヤリス[GXPA16 GRヤリス]

久々にスノーラリーで開幕した2023年の 全日本ラリー選手権。奴田原/東組は新生 JN2クラスで2位表彰台を獲得した。

や広報およびホスピタリティ担当者が必要 に応じて現地で支援する体制を敷いている。

桝本監督によれば「これまでは、参戦チ ームと連携して、皆さんの要求に応える形 で商品開発を行ってきましたが、ダンパー という一部分の設計だけでなく、車両全体 を見渡した商品開発ができる人材を育てた いという思いも込めています。自分たちで 考えながら創造することが大切だと思って いますので、そのために自社チームである 必要があると考えています」と付け加える。

カヤバといえばラリーのみならず、レー スやスピード競技など様々なカテゴリーで 多くのユーザーをサポートしているが、ワ ークス活動の舞台として全日本ラリーを選 んだ理由について桝本監督はこう語る。

「アフターパーツの開発という意味では、 オールマイティに対応していきたいので、 あらゆる路面を走るラリー競技は最適でし た。それに我々は二輪のモトクロスに強み がありますし、恐らく多くの方にとって、 カヤバ=グラベルというイメージがあるの ではないかと思っています。ラリーのステ ージには様々なエッセンスが詰まっていま すから、ラリーで収集したデータはジムカ ーナやダートトライアル、レースにも活か せるのではないかと考えています。フォー ミュラカーレースでは軽量化などの勉強に もなりますが、アフターパーツ販売を考え るとプロダクションカーによるカテゴリー が最適なフィールドだと捉えています。ラ

かつて田口幸宏/佐藤忠宜組を擁して全日本ラリー選手権に 参戦していた「アドバンPIAA カヤバランサー」。いわゆる“ラ リーアートカラー”に独自の黄色を加えた意匠が特徴だった。

Rd.1
55
嬬恋

カヤバGRヤリス[GXPA16

第2戦では横尾芳則/高橋昭彦組が乗車。SS1で最速タイムを計測 するもSS3でクラッシュ。修復作業でレグ2の再出走を果たした。

活動初年度はプロドライバーが乗車を担当。開幕戦 は奴田原文雄選手で第2戦は横尾芳則選手、そして、 名手として知られる石田雅之選手の名も挙がる。

リーは路面や天候の条件によって、同じ大 会でも装着タイヤやセットアップが大きく 変わりますよね。セッティングについて学 ぶことができますし、ラリーではより多く のデータが収集できると考えています」。

KAYABA Rally Teamでチーフエンジ ニアを務める同社モータースポーツ部の松 下雄介氏は「ラリーのスペシャルステージ は公道を使用しますので、得られた知見が アフターパーツだけではなく、将来的には 量産車の純正パーツなどにも活かせるので はないかと考えています」と付け加える。 開発ドライバーの育成も こうして社員の意識向上や原点回帰によ るブランドイメージの回復、そして人材育 成や技術開発などを目的に、全日本ラリー

嬬恋村の氷雪を掻き出して車両状態を確認するメカニック。ど んな悪条件でも的確な成果が求められるのがラリーなのだ。

Rd.2 新城

第2戦新城は横尾芳則/高橋昭彦組が担当 滑りやすい舗装路面で試練が訪れる……

参戦を開始したKAYABA Rally Team。

開幕戦嬬恋は奴田原文雄/東駿吾組、第2 戦新城は横尾芳則/高橋昭彦組が乗車した が、以降も石田雅之選手らベテランドライ バーがステアリングを握る予定だという。

桝本監督は「アドバイザーとして加わっ てもらっている奴田原選手と相談しながら ドライバーを選考しています」としつつも、 「開発へのフィードバックを考えると社員 ドライバーを起用したいのですが、いきな り全日本選手権に出場できる実績を持つ社 員はいませんでした。そのため、初年度は プロドライバーに乗っていただいてチーム 運営を学び、ラリーチームを確立させる段 階と捉えています。そして他のラリーで社 員ドライバーを育て、機を見て社員ドライ バーを起用したいと思います」とも語る。

人材育成の対象はエンジニアだけでな く、開発ドライバーも含んでおり、桝本氏 は「社内にはテストコースがあり、試験評 価を担当するドライバーもいます。かつて はトヨタ自動車さんの協力を得て”トップ ガン”レベルのテストドライバーを育てる 活動も行っていました。近年はドライバー 育成を休んでおりましたが、ラリー活動を きっかけに開発ドライバーの育成にも取り 組みたいですね」と今後の展開を語った。 目指すは“品質”を高めること

競技スポーツにおいて、勝利を目指すこ とは何よりも重要な指標とされるものだ。

では、KAYABA Rally Teamはラリー活動 で得られる成果をどのように評価するのだ ろうか。それを桝本氏は“品質”だと語る。 「当社は上場企業ですので、コンプライア ンスを遵守した上でラリーに参戦して、あ らゆる領域での品質を高めていきたいと考 えています。もちろんスポーツですので、 いずれ優勝を意識したくなるとは思います。 最低3年間は全日本選手権への参戦を計画 していますが、成績については我々の成長 を見極めながら各大会で設定していくこと になると思います。そして、将来的には JN1クラスに挑戦したいとも考えています。 勝てるかどうかというよりも、常に高みを 目指すことが、人材育成の面において、さ らなる成長に繋がると考えています」。

一般的なスポーツの世界でも、近年では 行き過ぎた勝利至上主義は見直されてい る。そして、勝利のために努力すること や、ライバルと高い次元で切磋琢磨する過 程で得られる、技術的・人間的な成長にこ そ価値があると捉える向きも多い。

KAYABA Rally Teamの活動は、不確 定要素が多いラリー競技へ主体的に関わる ことで、チームを構成するメンバーの人間 力の成長を期待し、延いては、彼らから生 み出されるアウトプットの“品質”を高め ていこうとする試みなのだろう。

全日本ラリー選手権に新たな価値をもた らす試みはどのような発展を遂げるのか。

KAYABA Rally Teamの動向に注目したい。

GRヤリス]
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“JAF F4”が30周年を機に「Formula Beat」に 生まれ変わった。そして、鈴鹿発祥の「フォーミュ ラEnjoy」は独自のコンセプトを維持して20周年 を迎えた。日本のフォーミュラカーレースの一翼を 担うシリーズは、今後どのような発展を遂げるの か。現状と将来について各協会関係者に伺った。

特集 レース/RACE

モノ作りの拠点、 そして生涯スポーツとして 日本を支える フォーミュラシリーズの 現在形

愉しき フォーミュラ

PHOTO/遠藤樹弥[Tatsuya ENDOU]、吉見幸夫[Yukio YOSHIMI] REPORT/深澤誠人[Masato FUKAZAWA]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

Formula Beat

“JAF F4”が「Formula Beat」で再出発

日本には30年の歴史を持つ マルチメイクのフォーミュラがある

いわゆる“JAF F4”として長らく親しま れたフォーミュラカーレースシリーズが 2023年より「Formula Beat」に名称が変 更され、新たな装いで2月に開幕戦を迎え た。この新生Formula Beatは、従来の “JAF F4”と何が異なるのか。開幕戦の舞 台となった鈴鹿サーキットを訪れてみた。 2023年に30周年を迎えることとなっ た“JAF F4”は、1993年に「FJJ」そして「フ ォーミュラ4(F4)」として始まった。そし てシリーズの節目である30周年を迎える にあたり、世界でも数少ないマルチメイ

近年の国内レースには二つの「F4」が存 在し、“JAF F4”とFIA-F4ともJAF地方選 手権を冠していたこともあり、日本におけ るフォーミュラ4相当のカテゴライズはや や分かりにくい状態となっていた。

イザーを務める土屋武士氏、そして同シリ ーズに参加する選手の皆さんに、新生For mula Beatの在り方を伺った。

今や世界でも珍しい

マルチメイク・フォーミュラ

Formula BeatとFIA-F4の違いをおさ らいすると、まずFIA-F4はワンメイクレ ースであり、童夢製シャシーやトムス製エ ンジン、戸田レーシング製トランスミッシ ョン、タイヤはダンロップを組み合わせ る。改造は禁止されており、勝負の行方は ドライバーの技量に大きく左右される。

ここでは、Formula Beatを運営する日 本F4協会の福永亜希子氏を始め、アドバ

一方のFormula Beatは、タイヤこそダ ンロップによるワンメイクだが、その他の ク・フォーミュラが躍動するという想いを 込めて、エンジンの鼓動、レースの躍動 感、モノ作りの現場に響く打音、といった 様々な意味を内包する「Beat」という言葉 をシリーズ名に冠すことになったという。

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要素は車両規則に沿っていればシャシーや エンジンに特段の制限はないマルチメイク であり、今季開幕戦のエントリーリストを 見ただけでも、14台がほぼ異なるシャシー で、搭載エンジンも3種類があった。

同じヒエラルキーに位置しながら、成り 立ちは根本的に異なっており、特にシャシ ーとエンジンの組み合わせや種類は多岐に 渡る。そのため、各チームは車両製作やセ ットアップといったエンジニアリング、メ カニック能力が問われることとなるのだ。

これこそがマルチメイク・カテゴリーの 大きなメリットであると福永氏と土屋氏、 そして各チーム関係者が指摘する。

また、このフォーミュラ4領域のカテゴ リーは、プライベーターが挑戦できる最速 のヒエラルキーとも言えるため、参戦コス トも大きな要素になってくる。 「走行時間は若干Formula Beatの方が少

ないけど(FIA-F4と比べて)半額くらいで できるかな」とは1998年鈴鹿&MINEチ ャンピオンの佐々木孝太選手。「半額まで はいかないけれど、ざっくり半分ちょい」

日本F4協会

福永亜希子氏

日本F4協会の代表として現場を駆け回る福永氏。

走行中はストップウォッチを並べて全車のタイム を計測し、レースの前後にはピットを巡って参加者 との密なコミュニケーションを図っている。

Formula Beatアドバイザー 土屋武士氏

Samuraiの二つ名を持ち、自身のチームではとびきり の腕を持つ職人を束ねる土屋氏。モノ作りは日本の 根幹だと考え、Formula.Beatの根底に流れる精神に 惚れて、アドバイザーとしてシリーズを支える。

と語るのは2019年JAF F4チャンピオン の徳升広平選手だ。この要因について佐々 木選手は「あらゆる部品が国内のコンスト ラクターで作れちゃうからね。ワンメイク だと、どうしても指定部品を買わざるを得 ないから」と明かしてくれた。

少し違った点を指摘するのはベテラン植 田正幸選手。「Formula Beatはドライバ ーが育つと感じています。“先”のカテゴリ ーに繋がる経験ができるから、こちらをも っと見た方がいいと思うんだよね」。スー パーGTを始め、近年ではFIA-F4やフォ ーミュラリージョナル、スーパーフォーミ ュラ・ライツを走らせてきた稀有なベテラ ンは、しみじみそう語ってくれた。

Formula Beatの参戦車両と レギュレーション

コロナ禍の影響が残るなかで、2023年 の開幕戦には14台、第2戦では20台の参 加を数えたFormula Beat。しかし、一時 は参加台数が落ち込み、成立台数ギリギリ の大会もあった。その遠因と言えるのが、 参戦可能な車両供給の減少だったという。

そこで協会は、車両規則の見直しで参戦 車両を確保するという対策を打った。その

一例がフォーミュラ・ルノー車両を“JAF F4化”するための規則改定で、現在では 一大勢力となっている。福永氏は「最初は エントラントの皆さんから、なんで速いク ルマを金かけて遅くする必要があるんだ、 と見事に板挟みになりました」と振り返る。

この規則改定は、コンストラクターとエ ンジンチューナー、主催者で構成される F4協会評議会が、既存のフォーミュラ4 車両との公正な競争と“モノ作り”の振興 を図る目的で策定したものだったが、フォ ーミュラ・ルノーそのままの車両での参加 を希望する声が大きく、暗礁に乗り上げそ うになったという。しかし、ハンマーレー シングのハンマー伊澤代表が手を挙げて、 第1号車を仕立てたことで流れは変わり、 他チームも追随して、カーボンモノコック のフォーミュラ・ルノーベースの車両が活 躍することになったという。

他のワンメイク車両を受け入れること で、マルチメイクのレースが元気になっ た、という実例は過去のものではなく、マ ルチメイクのカテゴリーにとっては、将来 的にも重要であると福永氏は考えている。 「ワンメイク車両には、いつか終わりが来 るんです。ホモロゲーションが切れたら、

2023 Formula Beat地 主催:
58

方選手権シリーズRound

1

AASC、SMSC/開催地:鈴鹿サーキット

翌年から走れなくなりますからね」。

シャシーもエンジンもマルチメイク

各車両は同じモノコックでも各部の取り回しや装着 パーツがかなり違っている。しかも「ウチはここ、ア ルミ板買ってきて作った」、「そこベニヤでいいやん」 となぜかローコスト自慢が始まる。コストキャップ 意識はエントラントの方が高いと言えそうだ。

年間で最も多く勝利を上げた車体製造者に与えられる「国土交通大 臣賞」。2022年度は自動車工房MYSTの「KK-ZS/MARUSAN★ MYST」が受賞した。賞状を受け取るのは車両オーナーの吉村英夫氏。 ずしりと重いトロフィーを持つのはMYST代表、庄司富士夫氏だ。

FIAのワンメイクレース車両は常に更新 され、最新の安全規定の適用が求められる ため、世代交代する運命にある。世界に繋 がるラダーの登竜門フォーミュラは新規格 車両に委ねるとして、行き場を失った旧規 格車両の受け皿として、マルチメイクの存 在意義があるのではないかということだ。 「ワンメイクが盛り上がるにはマルチメイ

クという場も必要だと思っています。どち らにも良さがあって両方とも盛り上がる。 これがお互いにとっていい関係になるはず だと思っています」とは福永氏。

2018年の改定規則は、より広範囲から の受け入れを想定した内容となっているそ うで、フォーミュラ・ルノーだけではな く、より安全な、ホモロゲ切れを含めた FIA安全規定を満たす車両、例えばダラー

佐々木孝太選手

ファーストガレージ&ISP[F108/K20A] 広範なレース経験からF-Beを俯瞰する佐々木選 手。印象的だったのは「シングルスロットル、マツ ダのエンジンはちょっと面白いですよ」というコメ ント。F-Beはまだまだ進化する余地がありそうだ。

2023年の開幕戦で行われた2022年のシリー ズ表彰式ではチャンピオン佐藤樹選手も表彰 式に登壇。2017年の東日本シリーズでは角田 裕毅選手がタイトルを獲得しており、佐藤選手 も控えめではあったが「海外で活躍できるドラ イバーになりたいです」と目標を語る。

ラF3なども適合させられるという。その ため、今後はシャシーとエンジンの種類が さらに増える可能性も想定できるだろう。

ドライバーと密な関係を築いて レース全体のマナーアップを 日進月歩で進化する最新車両に対して、 旧型車両を含めたレースに一定のリスクが 伴うことは協会側も十分理解していて、

徳升広平選手

フジタ薬局アポロ電工高山短大 [WEST096/K20] 「F-Beは車両として面白い。デフも入ってるしエン ジンも回るし、ないものは作れるし。ウチはネジか ら作っちゃいますから」と徳升選手のコメントも 熱い。2023年は勝ちに行くシーズンとのこと。

愉しきフォーミュラ
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特集 レース/RACE

楽しいが一番♪

このレベルの速さを持つフォーミュ ラカーレースだと、たいていピリピ リしているものだが、至る所で笑い声や真剣なレース談義が聞こえてくる のがF-Beの特徴でもある。手の内は隠すというより積極的に晒して、もっ といいクルマにしていこうと切磋琢磨しているようだ。

FIA基準に比肩する、日本独自の車両安全 基準を策定するべく準備を進めているとい う。そして、安全性の向上を実現するため に現在取り組んでいるのは、ソフトウェア 面における安全対策の強化だという。

2022年からは土屋武士氏がシリーズの アドバイザーに就任しており、土屋氏の発 案によるソフト面での安全対応の一環とし て、各チーム・ドライバーとコミュニケー ションを図った上で「サムライRBプライ ズ」という賞典を独自に制定している。

これはレース中にマナー良く活躍した選 手の振る舞いを称えるもので、当初は土屋 氏が自腹で賞典を贈呈していたが、昨年中 盤から新興工業株式会社の協力を得て「新 興RBプライズ」へとリニューアル。2023年 も「新興サムライプライズ」として継続され る予定だという。ちなみに“RB”は「Race Beat」の略で“飛躍”への期待が込められて いる。しかし、土屋氏によれば、愛を込め た「レースバカ」の略でもあるそうだ。

この賞典を贈るためにドライバーとコミ

ュニケーションを取るわけだが、その際に 「ちょっと行き過ぎちゃうドライバー」に声 をかけ、ドライバーとして成長してもらう ことを狙いとしている。レースウィークを 通してエントラント同士のコミュニケーシ ョンを深めてもらい、レース全体のマナー アップを図り、ひいてはレースの安全性を 高めるという活動。これがアドバイザー土 屋氏に課せられた大きなタスクだという。

福永氏は「もちろん、Halo装着も段階的 に準備が必要だと思います」と語っており、 ハード面での未来像も描いている。

モノ作りの拠点として 人材を育てる試み

そして土屋氏は「日本の根幹となる部分、 モノ作りの部分が失われてはいけない。職 人の仕事、職人が育っていかないと。For mula Beatにはそれがあるんです。日本 のモノ作りをする職人、つまり、レースで モノを作っていける人って、もうかなり少 ないんですよ。Formula Beatはそういう

ハンマー伊澤選手

アルカディア☆ハンマーRハヤテ [疾風/F4R]

かつて角田裕毅選手が驚愕したドライ バーでもあるハンマー伊澤選手。フォー ミュラ・ルノー導入時に大工を辞めてハ ンマーレーシングを興し、夫妻でF-Beの 一翼を担う。

人材を育てられる数少ない場ですから。こ んな面白いカテゴリーって、なかなかない んですよ」とも語ってくれた。

Formula Beatには、レース界での新し い人材を育てる場として自動車大学校も参 加して、多くの人材を輩出している。日本 F4協会では、“モノ作り”を支える社会活 動として高等学校のレース体験参加プログ ラムを推進しているので、興味のある高等 学校は協会まで問い合わせてほしい。

これは、チームやタイヤサービスなどに 関わってもらい、レースを生で経験しても らうことで“モノ作り”の現場に触れてもら おうという試み。チームからも好評を博し ており今後も拡大していく予定だという。

週末を通じて、福永氏は気づけばどこか のピットで談笑し、走行時間にはストップ ウォッチをズラリと並べて、参加者のタイ ム計測に勤しんでいた。土屋氏も、取材班 が何度も見失うほどピットを飛び回ってい た。そしてドライバーたちも、空き時間が あればどこかのピットに集まって、クルマ 作りや走らせ方をオープンに話し合ってい た。今回の取材を通じて、Formula Beat に関わる人々は、みな同じ目線を持ってい るのであろうことが十分に確認できた。

土屋氏が言うところの、心底レースが好 きな“RB”が集まり、パドックでは情報共 有しながら互いを高め合い、コースに出れ ば安全と真摯に向き合いつつ、かつ全力で レースに臨む。あらゆる役割を引き受けな がら地道な歩みを続けてきたこのシリーズ は、Formula Beatとして未来に向けた鼓 動を刻み始めている。

植田正幸選手

Rnsports制動屋KKZS [KKZS/S-LF-VE]

数多くの国内フォーミュラカーレースを経験して いる植田選手。「上位にステップアップすると、 F-Beの経験は必ず役に立つ」と語る。

特集 レース/RACE
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愉しきフォーミュラ

2023 SUZUKA CLUBMAN RACE Round1

主催:AASC、SMSC/開催地:鈴鹿サーキット

フォーミュラ Enjoy

「フォーミュラEnjoy」21年目の飛躍

鈴鹿発のフォーミュラカーレースで 「一生涯モータースポーツ」を

フォーミュラEnjoyは、計画段階そし て開始20年を経た現在まで、安全でロー コストな専用マシンを使った「入門モータ ースポーツ」という位置付けを貫いている。

ここでは、そのユニークな参戦システム を持つフォーミュラEnjoyについて、シ リーズを運営する協会関係者や参加者の皆 さんにお話を伺い、そこから垣間見えた “エンジョイ”の姿を紹介していこう。

低価格でイコールコンディション。 競り合いを純粋に楽しめる場

2002年にフォーミュラEnjoyの計画が アナウンスされた際に、驚きの数字が発表 された。車両予定価格を190万円、年間シ リーズ参戦コストを約300万円程度に抑え ることを目標としており、見えにくくなり がちな参戦コストも、メンテナンスガレー ジをフォーミュラEnjoy協会員のみとする ことで、ガレージ保管料やメンテナンス費 用の基準料金を明示して、参入障壁をでき るだけ下げる工夫が盛り込まれていた。

2003年からシリーズが始まり「FE1」と 呼ばれたワンメイク車両は、2015年に、

よりフォーミュラらしいスタイルをまとっ た2代目の「FE2」へと進化した。車両価格 は約296万円、現在は約330万円へと変 更されているが、低価格と公平性、そして 楽しむことをコンセプトに、操る楽しみを 体感できる車両に生まれ変わっている。

フォーミュラカーとしては異例の低価格 を可能にしたのは、周到に設計されたアル ミモノコックシャシーと、ホンダ・フィッ ト用1.3Lエンジン+ミッションを横置き 搭載するアイデアによるところが大きい。

車両規則でも変更・調整できる箇所は大 きく制限されていて、シートやシフトノブ、 フットレスト、オイル、点火プラグなどは 自由だが、コイルスプリングは協会公認パ ーツに限定。ステアリングの変更について は協会への事前申請が必要となっている。

これらハード面における各種の制限は、 公平性とコスト抑制を狙ったものだが、走 りや競い合いを純粋に「楽しむ」ことに集中 できて、スキルアップで得られる喜びを最 大化するための施策となっている。

フォーミュラEnjoy協会の舘和也会長 は「当初は入門というか、フォーミュラに

フォーミュラEnjoy協会 舘 和也会長

レプリスポーツの代表であり、協会ではガレージ 部会に所属する舘和也会長。21年目以降の新たな 運営方針を策定してさらなる発展を誓う。

ドライビングアドバイザー 福山英朗氏

世界の様々なレースで活躍してきた大ベテラン の福山英朗氏。速さだけでなく、安全性やマナー といった分野まで幅広いアドバイスを行う。

フォーミュラEnjoy
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福山英朗アドバイザーが データに基づきアドバイス

走行データと目視によるチェックを元に、参加者にきめ細かなア ドバイスを行う福山氏。面談で使用するサンプルデータは福山氏 自身のもので誰よりも速い数値が並んでいた。セッション後には ドライバーがアドバイスを求めて福山氏を訪れる。真剣だが雰囲 気は柔らかく、データに裏打ちされた圧倒的な説得力でスキル向 上に努めていた。ちなみにフォーミュラEnjoyでは、予選と決勝の 上位3位に入るとバネレートやダンパー減衰、タイヤ空気圧など のセッティングデータを公表する決まりがある。

しかし、参加者の多数は「一度レースと いうものをしてみたかった/生活に余裕が できて、憧れていたレースをやってみた い」といった層で、若くて30歳代、ボリ ュームゾーンは50〜60歳代だという。 協会では、楽しく続けられるレースである ことをより広く伝えるために、2021年か ら「一生涯モータースポーツ」というコンセ プトを提唱。パワーは100馬力で車両重 量は487kg、タイヤは溝付きとなれば、 ドライバーへの身体的な負荷は最小限に抑 えられる。実際に60歳代、70歳代のドラ イバーが上位でバトルを繰り広げる姿も当 たり前に見られるレースとなっている。

ドライバーズ・コミュニティが レースを護る

参加者のスキルアップと新規参入を促す試 みとして「トライアルデー」を始めとした試 乗会が企画され、料金的にも手軽にフォー ミュラ体験ができるようになっている。

ことも大きな特徴と言えるだろう。

この「トライアルデー」と呼ばれる催し は、FE1、FE2車両専有の合同走行会で、 参加経験のある人にとっては、混走ではな く専有走行ゆえ、安全にスキルアップに臨 める場となっている。初めて参加する人に は、トライアルデー自体が受付やブリーフ ィング、閉会式など競技会のスケジュール を模した行程となっているため、コースを 走行するだけではなく、実際のレース参戦 を疑似体験できるようにもなっている。

前輪駆動車のエンジンとミッションを横置き のまま搭載してパワートレーン開発費用を低 減させた専用車両。エンジンは封印され、変 更できる箇所も大きく制限されている。

いては、経験豊富なレーシングドライバー 福山英朗氏をアドバイザーに迎え、毎レー スに帯同してもらうことで対応している。

既存の参加者を始め、新規ユーザーを対 象としたイベントを定期的に開催している

福山氏は、走行セッションを実際に見て 各ドライバーにアドバイスを行い、希望者 にはロガーデータを基に精細なドライビン グレッスンを行っている。走行後はレッス ンを受けるためドライバーが協会テントに 集まるのだが、他のドライバーもじわじわ と集まり、ドライビング談義に花を咲かせ るシーンが見られた。互いに敬意をもって 競い合うこと。顔と名前を知り、互いを理 解していれば、コース上で礼を失した危険 な行為には至らないものだ。 おけるステップアップの通過点として捉え る人もいました。今ではステップアップと いうよりは、もっと速いクルマに乗ってみ たいから卒業する、といった感じで別の車 両のシリーズに移る人もいます」と語る。

初心者の参入が多いレースとなると、ド ライビングやレーススキル、マナー面につ いて気になる向きもあるだろう。これにつ

三浦和貴選手

セイコーレーシング@KRS[FE2] 本番2回目ながら予選3番手を記録する天才肌だ が、真剣な表情で福山氏の指導を受ける努力家で もある。決勝は苦手なスタートが課題とも。

亀蔵選手

すずかラッキー初亀 REV[FE2] 2023年開幕戦での最年長エントラントである亀 蔵選手。決勝でも上位争いを展開し、69歳という 年齢を全く感じさせない走りを見せた。

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福山氏曰く「参加者の皆さんは大人です から、その辺りは言わなくても全然大丈夫 です。フォーミュラEnjoyは、周りを押 しのけてでも前に出たいというレースでは ありません。そういった要素もこのレース の楽しさなんでしょうね」とのことだ。

フォーミュラEnjoyが描く 未来像とは

協会には、コンストラクターであるウエ ストレーシングカーズやセキグチカーズ、 自動車工房ミストを始め、鈴鹿サーキット 周辺を中心とした15のガレージが会員と して名を連ねている。参加台数は長く横ば い状態だったが、2021年からのトライア ルデー開催や、2020年からの岡山国際サ ーキットへの開催地拡大で伸びたものの、 持続可能性も課題となっているという。

ドライバーの平均年齢が他のカテゴリー に比べて高めであることは「一生涯モータ ースポーツ」のコンセプトに合致している。 しかし、エコシステムという意味では幅を

多屋貞一選手 K&Gクマ工房 萬願亭 伸生S青海豚R[FE2] 国際C取得の早道として参加 したが「やってみたら難しく、 レースは面白い」と早10年が 経過。しかし「全然速くなら へん」と笑う。

福山氏のアドバイス・タイ ムを終えてもなお事務局 テントで談笑し続ける参 加者の皆さん。この後、さ らにドライバーが増えて 笑いの輪が広がった。 愉しきフォーミュラ

特集 レース/RACE

“フォーミュラの聖地”・鈴鹿 地元自治体もシリーズを後援

フォーミュラEnjoyは、鈴鹿市と鈴鹿市観光協会の後援を受けている。鈴鹿 市の観光・モータースポーツ振興グループに所属する原田麗加さんは「鈴 鹿は”フォーミュラの聖地”とも言われています。最高峰のF1からフォーミュ ラの入口に至るまで、さまざまな機会が提供されることは、鈴鹿市の魅力を 発信していく上でも大切なことだと考えています」と話す。写真は左から、同 グループの後藤幹雄氏と原田氏、そして鈴鹿市観光協会の岡本隆典氏。

広げる必要があり、今後も継続的に議論し ていくとのことだ。また、現状では休眠し ている車両も少なくないということで、ま ずは休眠する選手や車両を参加に繋げるこ とも短期的な目標としてあるという。

また、オープンホイールのフォーミュラ 車両の宿命でもある、車両の安全対策につ いても、協会では安全性検討委員会を設置 し、Halo装着などを含めて、できるだけ現 実的な対策の導入を議論していくという。

そういった課題を関係者らの努力で乗り 越えながら、参加者にとっては、競り合い を通じて自分やライバルを高め合える場で あり、参加者に愛され、長く続けられる居 心地のいい場であること。このようなスキ ルアップに集中できる理想的な環境を積極 的に維持していくことを、21年目を迎える にあたり、新たな目標に掲げている。

フォーミュラEnjoy流の それぞれの楽しみ方

2月のフォーミュラEnjoy開幕戦では、 39歳で最年少エントラントだった三浦和

貴選手。なんと一切のスポーツ走行未経験 のままいきなりフォーミュラEnjoyに乗 り、今回が2戦目にも関わらず予選3位に つけた。三浦選手は愛車をサーキットで安 全に走らせるためのトレーニングとしてこ のレースに出たそうだが「これはこれで面 白いので、続けちゃうかも」とのこと。

最年長エントラントは、2月の開幕戦が 60歳代最後のレースになるという亀蔵選 手。はるか昔にB110サニーで短期間レー スをしたものの、仕事が忙しくなりレース を封印。50歳代でようやくレース活動を復 活させ、それ以来、途中のお休みはありつ つも18年間もフォーミュラEnjoyを走り 続けている。「まだ表彰台のてっぺんがな いんですよ。ついつい熱くなっちゃうんで ね、まだまだですわ」。その言葉通り、予 選も決勝もアツい走りを披露していた。

多屋貞一選手は、もともとニュルブルク リンク24時間レース参戦を考えていた が、年々厳しく複雑になる出場要件などで 参戦の実現がやや遠のいていた。そして、 代わりに参加してみたのがフォーミュラ Enjoyだったという。

今回お話を伺ったお三方は、自分のスキ ルを高めたいという思いがある一方で、こ のレースで“真剣に遊んでいる”という雰 囲気が強く感じられた。それは、インタビ ューの過程で奇しくも「楽しいんですよ」と 皆さんが口を揃えたことにも現れている。 フォーミュラカーを題材に「楽しむ」こと に主眼を置いたフォーミュラEnjoy。互い を尊重し、長く付き合える仲間が集うコミ ュニティとして新たな歩みを開始する。

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オート テスト 倶楽部

AUTO TEST CLUB

庫県南あわじ市にある「淡路ファー ムパーク イングランドの丘」にて、3 月5日にオートテストが開催された。この 大会はJAF加盟クラブTEAM FLEETが 初めて主催したオートテストで、兵庫県下 で兵庫県のJAF登録クラブが初めて主催 するオートテストともなった。

この会場は淡路島南部にある農業公園 で、名物のコアラを始めとした約30種類 の動物や四季折々の花々に囲まれ、野菜の 収穫体験などもできるレジャー施設。今大 会はJAF関西本部、兵庫支部による「JAF デー」との併催で、JAF会員証で入園料が 無料となり、地場産品などが当たる園内の スタンプラリーなども行われていた。

オートテストの会場は施設奥にある第3 駐車場。ここは満員御礼となった60台の 参加車両を収容しながら、後述する盛りだ くさんなコースレイアウトを設定できる好 立地で、ネッツトヨタ兵庫/ネッツトヨタ ウエスト兵庫や兵庫三菱自動車販売/姫路

オートテスト2023 in 淡路ファームパーク イングランドの丘

開催日:2023年3月5日 主催:TEAM FLEET 協力クラブ:RC NARA 開催地:淡路ファームパーク イングランドの丘

第3駐車場(兵庫県南あわじ市)

兵庫・南あわじ市で地元クラブが初開催 盛りだくさんのイベントを60名が堪能 2015年に導入されて以来、オートテストは日本全国で開催されてきたが、 兵庫県での実績は意外と少なく、このたび「兵庫の登録クラブが主催する 兵庫県内でのオートテスト開催」が初めて実現した。 今大会はロケーションを含めて、かなり充実したイベントとなっていて、 ここでは、その特筆すべきポイントをレポートしよう。

三菱自動車販売、兵庫スバル、兵庫ダイハ ツ販売、Honda Cars明舞ら協賛企業が、 車両展示を伴うブースを出展。広いスペー スをそれぞれフル活用して、クルマ好きの 琴線に触れる空間演出がなされていた。

当日は天候に恵まれて、施設の各駐車場 がほぼ埋まる来場が認められた。オートテ スト会場にはスタンプラリーのチェックポ イントが設置され、施設利用者が訪れてオ ートテスト観戦を楽しんでいた。

今大会は、TEAM FLEETが初主催とい うことで、オートテスト黎明期から主催に 携わるRC NARAが協力クラブとして参 画した。RC NARAの大会ではおなじみの 川脇一晃氏がコース委員長を務め、特別ゲ ストにはマルチドライバー山野哲也選手を 招聘。参加者の慣熟歩行では川脇氏と共に インストラクターを担当してくれた。

“攻略”に集中できるコース

この会場はジムカーナ競技が開催できそ うな広さを持つものの、一部のグレーチン グがある場所を避けて、路面が平滑な場所

が選ばれた。また、駐車場の路面には薄く 砂が堆積していたため、適宜、路面清掃が 行われていた。そして、その限られたスペ ースを活用し尽くして、数多くのセクショ ンを含むコースが設定されていた。

スタート直後には直進で入るラインまた ぎが配置され、一度斜めに後退してから、 スラロームと右旋回の島回り、8の字旋回 が続く。8の字で使ったパイロンをスラロ ームで再走し、90度右折進入で2回目のラ インまたぎに入り、そこから後退でややオ フセットされたガレージに入って、前進 90度左折でゴールするというレイアウト。

会場となった「淡路ファームパーク イングランドの 丘」は、ファミリーが一日中楽しめる、あらゆるアク ティビティが用意された農業公園。

PHOTO/谷内寿隆[Hisataka TANIUCHI]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS] REPORT/JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]
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これは、事前配布されたコース図を見た 限りでは、オートテストの要素をすべて採 り入れた超ロングコースと言えるものだっ た。当日の開会式&ブリーフィングでは 多くの参加者がオートテスト初体験である ことが確認されたため、正直なところ、や や滑りやすい状況でもあったことから、ミ スコースが続出してスケジュールが遅延す るのではないかという懸念もあった。

しかし、いざ走行が始まると、複雑そう に見えて実はスムーズに走り切れるレイア ウトであったことに気付かされた。多くの 参加者は、ミスコースというよりは、攻め すぎによるペナルティの方が目立ち、違っ た走らせ方を試して減点を減らそうとする など、前向きなアプローチでオートテスト の醍醐味を味わっているようだった。

今大会には日紫喜俊夫選手や篠原賢爾選 手、浜屋雅一選手や藤塚伊織選手らオート テストで長く活躍するベテラン勢も参戦し た。彼らは、スタート地点でのラインまた

オートテスト会場は施設の「第3駐車場」。メイン 施設から駐車場までの導線沿いでコースを一望 できるため、多くの観客が足を止めていた。

コース脇の敷地では協賛企業である地元自動車 ディーラー各社がブースを出展。大会参加者のほ か施設を訪れた一般客も利用して賑わった。

藤田靖史選手/藤田美枝選手[アルト] オートテストにハマっている藤田ファミリー。 靖史さんは普段VWポロGTIで参加している が、今回は奥様・美枝さんが初挑戦するため に街乗りのアルトでダブルエントリー。さらに 息子さんの航彗さんもアバルト124スパイ ダーで参戦する走りのDNA濃いめのご一家。

楽しい仲間と♪

ぎへの進入角度やラインまたぎ後退時の角 度、8の字通過後のスラロームからの90度 右折に至るライン取りなどについて、練習 走行1本+計測2本のすべてを使って「走 りの組み立て」をあれこれ試しており、彼 らオートテストの巧者ですら、攻め甲斐の あるコース設定だったことが伺えた。

そして、今大会のリザルトにおいて計測 1回目と2回目のポイント差が一定であっ たことも評価したい。これはスポーツ走行 初心者でもミスコースの恐怖をあまり感じ ず、“攻略”に集中できていた証とも言える ため、あらゆる参加者にとって満足度の高 いコースとなっていたと言えるだろう。

今大会は、淡路ファームパークの利用時 間を確保するため、15時30分には競技を 終了する計画だった。初心者多めのロング コースで、希望者には参加車両の同乗走行 もあり、最後には山野選手によるJAFレッ カー車でのデモ走行まで行われたが、時間 どおりに終了していたことも驚きだった。

コース委員長は数多くのオートテストでコース設 定を担当してきた川脇一晃氏。特別ゲストにはマ ルチドライバー山野哲也選手が駆け付けた。

宮本篤志選手[ポルシェ911GT3 RS]

普段は鈴鹿や岡山国際を走る宮本さん。プロのサーキッ トレッスン経験もありながら、自分の運転レベルを確認 するためにオートテストに初挑戦。「いつもの半分以下の 速度ですが、走ったら頭が真っ白になってしまったので、 メンタル面の訓練になりました」と語る。

速くなるため! 旧車のセダンでも!!

藤川和之選手[430セドリック]

某刑事ドラマの影響で430セドリックに一目惚れして、 未レストアの綺麗な個体(しかもコラムMT)を入手して 通勤で愛用する藤川さん。オートテストには「テクニカ ルな運転と自分の腕試しをしたかった」と2回目の参戦 で、テレビで見たあの走りを再現していた。

衆目が集まる会場で、モータースポーツ 運営には欠かせない協賛企業の出展もあ り、初心者も上級者もあれこれ考えながら 走ることができて、かつ、走り以外のレジ ャーも堪能できた今大会は、オートテスト の理想形と言えるものだった。開催には多 くの障壁が伴うものだが、関係者が一丸と なって挑んだ今回のような試みが、今後も 続いていくことを願ってやまない。

リズミカルに左右旋回が連続するコース。8の字の後のスラロームでは、コー ス図よりも黄色パイロンの間隔が広げてあり、直線的なラインを取れるよう になっていた。しかし、そこで速度を乗せすぎると次のラインまたぎへの理 想的な進入に失敗するため、部分的な速さではなく、ロスが少ない的確な走 りが好成績に繋がるという、かなり練られたレイアウトとなっていた。 松下真幸選手[ロードスター] NA6CEロードスターに一目惚れした松下 真幸さん。このクルマに乗るためにオートマ 免許を限定解除したそうで、松下さんの楽 しい仲間たちに見守られてオートテストに 初挑戦した。「一般道ではできない走りがで きて、めっちゃ楽しかったです♪」とのこと。

川脇氏と山野選手がインストラクターを務めた慣 熟歩行。3回とも両名が同伴してくれたため、多 くの参加者が攻略のコツを掴んでいたようだ。

ファミリーで♪
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J A F M O T O R S P O R T 第S 57巻 第 2 号 202 3 年 5 月1日発行(年 4 2 、 5 、 8 、 11 1 日発行) 発行人 日野眞吾 ☎ 0 3 5470 ) 1711 (代) 一般社団法人 日本自動車連盟 東京都港区芝大門 1 1 番 30号 0570 00 2811 (総合案内サービスセンター) 発行所 東京都港区芝大門 1 9 番 9 号 ㈱ J A F メディアワークス 定価279円 2023 SPRING
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