特集 Victory Road 栄光に向かって 最高峰カテゴリーに挑んだ猛者たちのチャンピオン獲得劇 2022年JAFモータースポーツ表彰式
WINTER JAF MOTOR SPORTS JAFスポーツ[モータースポーツ情報] JAF MOTOR SPORTS 第57巻 第1号 2023年2月1日発行(年4回、2、5、8、11月の1日発行)
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ドライバーズランキングトップで日本GPを迎えたマックス・フェル スタッペン選手(レッドブル)は、ドライ路面の予選でポールポジ ションを獲得すると、ウェット路面の決勝もポール・トゥ・ウィン と路面を選ばない強さで、2年連続チャンピオンを確定させた。
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F1日本GP、マックス・フェルスタッペン選手が2年連続チャンピオン!!
2019年以来となる待望の日本GP、鈴鹿サーキットに3日間で20万人以上が来場! PHOTO/吉見幸夫[Yukio.YOSHIMI]、Red.Bull.Media.House REPORT/吉田知弘[Tomohiro.YOSHITA]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]
022年10月7日から9日にかけ て、三重県の鈴鹿サーキットで FIAフォーミュラ1世界選手権 (F1)の第18戦、『Honda日本グランプリレ ース』(日本GP)が開催。3日間で延べ約20 万人が来場し、大盛況となった。
毎年、F1カレンダーの風物詩ともなってい た鈴鹿での日本GPだが、新型コロナウイル ス感染症の感染拡大の影響を受け、2020年 と2021年は開催が見送られた。しかし、主 催関係者らが開催実現に向けて各関係省庁 に働きかけを続け、2022年に入って外国人 の入国に対する水際対策も緩和されたこと もあり、ようやく開催の運びとなった。
この瞬間を誰よりも待ちわびていたのが、 日本のF1ファン。例年開催される木曜日の ピットウォークやドライバーサイン会などの イベントは行われなかったが、グランドス タンドをはじめ、各スタンドには多くのファ
ンが詰めかけて、ドライバーやチームに声 援を送った。
7日の金曜日はあいにくの雨模様となった のだが、正午スタートのフリー走行1回目が 始まる頃には、各スタンドを多くのファンが 埋めた。ウェットコンディションということ もあり、各チーム慎重なセッションのスター トだったがハースのケビン・マグヌッセン選 手が先陣を切ってコースインすると、サー
決勝には日本の現役の首相として初めて、岸田文雄首相が 日本GPに来場。決勝スタートセレモニーでの来場者への 挨拶や、ピットの視察などを行った。
キットは拍手喝采。日本GPが開催されなか った間に溜まったファンの想いが、一気に 解き放たれた瞬間だった。
さらに、アルファタウリの角田裕毅選手 が登場すると、この日一番の盛り上がりを 見せた。それだけ、日本人ドライバーにか けるファンの期待や想いの大きさが伺えた。
この日は、終日ウェットコンディションだ ったにも関わらず、直近に開催された2019
あいにくの空模様となった決勝だったが、決勝日には約9 万4000人ものファンが来場。中断の間も雨の中、再開を 祈り待つ姿は世界中から賞賛された。
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表彰台には左からHRCの浅木泰昭氏、2位のセルジオ・ペ レス選手(レッドブル)、優勝したフェルスタッペン選手、3 位のシャルル・ルクレール選手(フェラーリ)が登壇。ルク レール選手にはJAF坂口正芳会長がトロフィーを贈呈した。 年大会を約5000人も上回る 約3万8000人が来場。予想 以上の盛り上がりとなった。
翌8日、土曜日に開催され た予選では、2年連続のドライ バーズチャンピオンに王手を かけたレッドブルのマックス・ フェルスタッペン選手がポー ルポジションを獲得。この日 は前日を上回る、約6万8000 人のファンが観戦。翌日の決 勝では、さらに多くのファンの 来場に期待が高まった。
決勝は大雨で長時間の中断 チャンピオンの強さが光る
9日、日曜日の決勝は午前中こそ曇り空だ ったものの、正午過ぎから雨が降り始め、7 日と同様にウェットコンディションとなった。
決勝スタートに先立ち岸田文雄首相が鈴 鹿に来場し、スタートセレモニーに参加。 1970年代に初開催されたF1日本GPだが、 現役の首相が来場するのは初めてというメ モリアルな出来事だった。
コースオフした車両の回収を待ち、決勝再 開となるところだったが雨脚が強くなり、再 スタートのディレイが宣言。結局約2時間近 くもの間、再開を待つことになってしまった。 しかし、スタンドに詰めかけたファンの多く は、久しぶりの日本GPの再開を期待して降 りしきる雨の中、じっと耐え続けた。
これに対して、ドライバーやチームスタッ フが反応。ピットウォールまで出て手を振る など、待ち続けるファンにエールを贈ったの だ。他のグランプリではなかなか見られな い、ファンとの交流を見ることができた。
雨脚が徐々に弱まると、16時15分に決勝 を再開。最大延長時間が赤旗中断込みで3 時間と決まっていたため、予定していた53 周を走り切れなかったが、その中でもドライ バーたちは激しいバトルを披露。夕方にな り寒さが厳しくなっていたが、鈴鹿は熱気 に包まれていた。
決勝を制したのはフェルスタッペン選手。2 番手以下を大きく引き離す圧倒的な強さを見
雨模様となってしまったが、スタート前 の華やかなセレモニーが終了し、決勝のス タートが切られたが、雨で視界が悪化して1 周目からコースオフする車両が続出。2周を 終えたところで赤旗が振られた。
eせて、2年連続チャンピオンを確 定。過去にはチャンピオン確定 の舞台として名を馳せた鈴鹿だ が、ドライバーズチャンピオンを ここで確定させたのは2011年の ベッテル選手以来。鈴鹿は熱狂 の渦に包まれた。
そして、日本期待の角田選手
2011年の日本GPでチャンピオ ンを確定させたセバスチャン・ ベッテル選手は日本GPラスト ランで6位入賞を果たした。
は予選からブレーキトラブルに悩まされるな ど、悪戦苦闘の週末だったが、粘り強い走 りで13位フィニッシュ。18位だったチーム メイトのピエール・ガスリー選手を上回るな ど、成長した姿を母国のファンに披露した。
元チャンピオンがファンの 声援を力に鈴鹿ラストラン
これまで、さまざまなドラマや名シーンが 生まれてきた日本GPだが、2019年以来の 開催となった今回も、感動的なシーンが生 まれた。2022年シーズンでのF1引退を発表 したアストンマーティンのセバスチャン・ベ ッテル選手は、過去4回もドライバーズチャ ンピオンに輝いたドライバー。日本GPは4 勝を挙げて鈴鹿を得意としていた。
2022年シーズンは苦しい戦いが続いて いたベッテル選手だが、第8戦以来となる 予選Q3に進出。ここでは1度きりのアタッ クだったが、そのアタックにはサーキット中 が沸いた。そして、ベッテル選手はピットに 戻る際の無線で「アリガトウゴザイマス、ス ズカ」と日本語で挨拶。この日の夜、前夜祭 にも登場したベッテル選手は、ここでも日 本語のメッセージをファンに直接伝え、惜 しみない歓声が送られた。
決勝は9番グリッドからスタートしたベッ テル選手は1周目でスピンを喫しながらも、 スタンドからの声援を力にアルピーヌのフェ ルナンド・アロンソ選手との元チャンピオン 対決を制し、6位獲得の力走を見せた。
雨に翻弄された決勝となってしまったが、 来場者は約9万4000人を記録。決勝の来 場者が9万人を超えたのは、2012年以来と なった。そして、オールドファンはもちろん だが、有料配信サービスでもF1が発信され ている影響か、新世代のファンも多かった 印象を受けた。日本でのF1人気が静かに高 まっている、新たな可能性を垣間見たグラ ンプリウィークだった。
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12年ぶりのWRC日本ラウンドはHYUNDAIのヌービル選手が優勝 熾烈なWRC2選手権のタイトル争いはリンドホルム/ハマライネン組が逆転で戴冠! PHOTO/小竹充[Mitsuru.KOTAKE]、遠藤樹弥[Tatsuya.ENDOU]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS] REPORT/JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS] 新
型コロナウイルス感染症感染拡 大の影響などにより、2度に渡っ て開催断念を余儀なくされてい たFIA世界ラリー選手権(WRC)の日本ラウ ンド。その到来がようやく実現することにな り、2022年11月10〜13日、愛知県と岐 阜県を舞台した「FORUM 8 RALLY JAP AN 2022」が、日本では12年ぶりのWRC として帰って来ることになった。
近年のWRCではTOYOTA GAZOO Ra cing WRTの活躍が目覚ましいが、同チー ムとしては初のホームラリー参戦で、かつ、 WRCで活躍する唯一の日本人である勝田 貴元選手の凱旋ラリーでもあった。そのた め、トヨタ自動車のお膝元、そして勝田貴 元選手の出身地付近で開催されるWRCと いうことで、その時を2年待った大勢のギャ ラリーが詰めかけて声援を贈った。
今大会には、タイトル争いが決していな
いWRC2選手権が併設され、ポイントリー ダーのアンドレアス・ミケルセン選手を除く 欧州のタイトルコンテンダーが日本に集結 した。このWRC2には全日本ラリーJN1チ ャンピオンのヘイキ・コバライネン/北川 紗衣組やJN1の福永修/齊田美早子組のほ か、今大会限定でシトロエンC3を仕立てた 新井敏弘/田中直哉組が参戦。そして、 RC4クラスには2019年のセントラルラリ ーにも参戦した新井大輝/イルカ・ミノー ル組や、JN2チャンピオン中平勝也/島津雅 彦組も参戦し、ナショナルまたは地域選手 権参戦者を対象に設定されたナショナルク ラスには、勝田範彦/木村裕介組、柳澤宏 至/保井隆宏組、山本悠太/立久井和子組 らが参戦するなど、国内を代表するクルー もWRC日本ラウンドに挑んでいた。
ラリーはサービスパークが置かれた豊田 スタジアムを拠点として、木曜はセレモニ
アルスタートの後に豊田市の鞍ヶ池公園で SS1が始まる。本格的な競技が始まる金曜 は豊田市と設楽町に6本、土曜は岡崎市と 豊田市、新城市に7本、日曜は豊田市と恵 那市に5本のステージが設けられ、合計 19SS、283.27kmで争われる予定だった。 ところが、ナイトステージとして行われた SS1では新井/田中組が激しくクラッシュ。 SS2ではヒョンデのダニエル・ソルド/キ ャンディード・カレラ組の車両がステージ上 で全焼、WRC2のカエタン・カエタノヴィッ チ/マチェイ・シュシェパニャク組は別の 場所で自走不能なクラッシュに見舞われ、 SS4ではMスポーツ・フォードのクレイ グ・ブリーン/ジェームス・フルトン組がバ リアに激突するなど、赤旗提示が連続する 事態が発生。ステージの安全確保やアイテ ナリー正常化のために、ステージキャンセ ルが相次ぐ事態となった。
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新生ラリージャパンの初代 ウィナーはHYUNDAI SHE LL MOBIS WRTのティエ リー・ヌービル/マルティ ン・ウィダグ組。大きなミ スもなく序盤から安定して 僅差の上位につけていた ヌービル選手。最終日のタ イヤ戦略も味方した会心の 勝利だったと言えよう。
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エバンス選手を逆転した三河湖ステージを快走する ヌービル選手のヒョンデ.i20.N.Rally1.HYBRID。ベ スト計測はSS14岡崎市とSS16恵那市ステージのみ だったが、貴重なシーズン2勝目となった。
アヘッドジャパンレーシングチームからプジョー208. Rally4で参戦した新井大輝/イルカ・ミノール組。RC4 クラス優勝で、Rally1勢を除く日本人最上位を獲得。
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WRC2選手権の優勝はヒョンデi20.N.Rally2を駆るグレゴ ワール・ミュンスター/ルイ・ルーカ組。SS1の後半で左リア タイヤを縁石にヒットする鮮烈な幕開けだったが、SS18では 総合6番手タイムを叩き出して大逆転での勝利を飾った。
そして、勝負という面においても、TOYO TA GAZOO Racingのセバスチャン・オジ エ/ベンジャミン・ヴェイラス組はSS2で パンクを喫し2分半以上の遅れ、Mスポー ツ・フォードのガス・グリーンスミス/ジョ ナス・アンダーソン組はSS4で車両トラブ ルにより大きく後退するなど、序盤から波 乱含みの展開となった。
その中で、TOYOTA GAZOO Racingの エルフィン・エバンス/スコット・マーティ ン組とカッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルッ トゥネン組が金曜のステージベストを奪い合 い、土曜はオープニングのSS8でパンクに 見舞われたロバンペラ選手が大きく後退し、 首位のエバンス選手とヒョンデのティエリ ー・ヌービル/マルティン・ウィダグ組との 勝負となる。ベストタイムはオジエ選手が奪 うものの、エバンス選手とヌービル選手は一 進一退の首位争いを演じ、SS12ではヌービ ル選手がわずか2.0秒差でトップに立った。
シリーズはカエタン・カエタノビッチ選手とエミル・リンドホ ルム選手が次点で並んでいたWRC2選手権。カエタノビッチ 選手が早々にリタイアしたこともあり、WRC2を3位でフィ ニッシュしたリンドホルム選手が新たな王者に輝いた。
日曜のオープニングSS15では、ドライ路 面に賭けたエバンス選手がベストタイムを マーク。ヌービル選手にコンマ6秒差まで 迫ったが、続くSS16ではエバンス選手が まさかのパンク。1分40秒以上遅れたエバ ンス選手は4番手にドロップし、ヒョンデの オイット・タナック/マルティン・ヤルヴェ オヤ組が2番手、勝田貴元/アーロン・ジ ョンストン組が3番手に上がった。
FIA基準の安全装備を施したAP4車両やRJ車両が走れ るナショナルクラスが設定され、クスコレーシングの 柳澤宏至/保井隆宏組が最上位のJRCar1を制した。
Rally5車両や2018年までのFIAグループR1車両が走 れるRC5クラスは、ヴィッツで参戦したK'sワールドラ リーチームの伊豆野康平/東山徹大組がクラス優勝。
そして午後には予報通りの雨。それぞれ1 分から30秒程度の差があり、タイヤ戦略の 違いも影響して上位勢に順位変動はなく、 最終パワーステージは総合24番手のブリー ン選手が制して競技区間が終了。最終的に はタナック選手に1分11秒1の差をつけた ヌービル選手が優勝し、新生ラリージャパ ンの記念すべき初代ウィナーの座に輝いた。
今大会にはJAF国内格式の「Central.Rally.2022」が併催され、2022年のJMRC全国オールスターラリーフェスティバルと アルペンクラシックカーラリー2022が行われた。JMRCオールスターでは先頭ゼッケンで地元の廣嶋真/廣嶋浩組がR-1ク ラスで優勝。アルペンクラシックカーラリーはSA22C.RX-7を駆る国江仙嗣/丸山晃助組が総合とC3クラスを制した。
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日本では12年ぶりに開催されたFIA世界 ラリー選手権(WRC)だが、このWRCにお いてもTOYOTA GAZOO Racingが活躍 し、2021年に引き続き、製造者部門とドラ イバー/コ・ドライバー部門の三冠を達成 している。また、2022年からFIAとFIMの 公認で四輪と二輪を統一した世界選手権と して始まった世界ラリーレイド選手権 (W2RC)においても、FIA選手権ではナッサ ー・アル-アティヤ/マシュー・ボーメル組 がタイトルを獲得。製造者部門もTOYOTA GAZOO Racingが獲得したことで、2022 日本勢が席巻した2022年。FIA表彰式がイタリア・ボローニャで開催! F1、WEC、WRC、そしてW2RCで!日本の製造者らが世界選手権の獲得を成し遂げる PHOTO/FIA、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS] REPORT/JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]
年12月には、FIAが統轄する世 界選手権を始めとした年間チャ ンピオンを招いたFIA Prize Giv ing(FIA表彰式)が開催されている。
2020年は新型コロナウイルス感染症感 染拡大の影響によりオンライン形式で行わ れたが、2021年はフランス・パリのカルー ゼル・デュ・ルーブルに上位選手を招待し たリアル開催の表彰式が執り行われた。
2021年の式典の翌日にはFIA会長選挙 が行われ、12年に渡ってFIA会長を務めた ジャン・トッド氏に代わって、モハメド・ベ ン・スレイエム氏が新たな会長に選出され た。ということで、このたび12月10日に行 われた式典は、スレイエム会長体制では、 初めて開催されたFIA表彰式となった。
2022年はイタリア・ボローニャに舞台を 移して開催されたFIA表彰式。今式典の主 催者であるイタリアのACI Sport、そして 激動の世界を股にかけて戦いを繰り広げた 選手や関係者・主催者らに対する、スレイ エム会長の謝辞により開幕した。
今回の表彰式を席巻したのは、何と言っ てもTOYOTA GAZOO Racing勢で、FIA 世界耐久選手権(WEC)ではル・マン24時 間レースを5連覇し、シリーズについては4 シーズン連続で製造者部門とドライバー部 門のダブルタイトルを獲得している。
そして、2022年は8号車を走らせたセバ スチャン・ブエミ選手とブレンドン・ハート レー選手の新たなチームメイトとして加わっ た平川亮選手が自身初の世界選手権ドライ バータイトルを獲得することになり、チーム 代表兼7号車ドライバーとして2022年を戦 った小林可夢偉選手とともに栄光のFIAト ロフィーを壇上で手にしていた。
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毎 ローマ時代からボローニャの中心地として栄えた マッジョーレ広場にあるサン・ペトロニオ聖堂。その 向かい側にある市庁舎の前には、2022年タイトルを
獲得した選手やチームのマシンたちが並んだ。
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年はWECとWRC、そしてW2RCの三つ の世界選手権でタイトル争いを席巻した。
そして、FIAフォーミュラ1世界選手権 (F1)では、3年ぶりに鈴鹿サーキットで開催 された日本グランプリにおいて、マックス・ フェルスタッペン選手が、4戦を残して2年 連続のドライバーズタイトルを獲得したこと は記憶に新しい。その後の第19戦USグラ ンプリでもフェルスタッペン選手が優勝し、 セルジオ・ペレス選手が4位に入ったこと で、Red Bull Racingが、2013年以来とな るコンストラクターズタイトルを獲得してい る。Hondaは2021年をもってパワーユニッ トサプライヤーとしてのF1参戦を終了して いるが、2022年は四輪を含めた新体制に生 まれ変わったHRCが、Red Bull Racingの パワーユニット開発部門を支援した。両社 の息の合った協業により獲得できたタイト ルだったと言えよう。
盛大な演出で厳かに閉幕した2022年の FIA表彰式。2023年は12月8日にアゼルバイ ジャン・バクーでの開催が予告されている。
eWECでは4シーズン連続のダブルタイトル WRCは2年連続の三冠達成!
HRCがPU開発を支援するRed Bull Racingが F1ドライバー・製造者部門を制覇 2022年のTOYOTA.GAZOO. Racingは、WECとWRC、新 設されたW2RC(世界ラリー レイド選手権)で製造者およ びドライバーズ世界タイト ルを獲得。特にWECでは日 本人ドライバーが活躍し、ボ ローニャで開催されたFIA表 彰式では、GAZOO.Racing. Companyの佐藤恒治プレジ デントを始め、WECチーム代 表兼ドライバーの小林可夢 偉選手、そして初の世界タイ トル獲得となった平川亮選 手が、栄えあるFIAトロフィー を手にしていた。
モハメド・ベン・スレイエム会長からFIAトロフィーを授与されたマッ クス・フェルスタッペン選手。鈴鹿サーキットでドライバーズタイト ルを決め、翌戦にはRed.Bull.Racingが製造者部門を制した。
スポーツ庁と国内の世界選手権オーガナイザーらにより 今季の水際対策の代替・特例措置の総括と来季の課題を協議 11月28日、2021年に国内開催された世界選手権の主催担当者(富士スピードウェイ、ホ ンダモビリティランド、トヨタ・モータースポーツ・クラブ、サンズ、M.O.S.C.O.、お よび豊田市)が一堂に会し、スポーツ庁担当者同席のもとで、今季適用された水際対策 強化等の代替・特例措置の総括と、来季の開催に向けた課題の洗い出しが行われた。
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F1日本GP、マックス・フェルスタッペン選手が2年連続チャンピオン!!
6 12年ぶりのWRC日本ラウンドはHYUNDAIのヌービル選手が優勝
8 日本勢が席巻した2022年。FIA表彰式がイタリア・ボローニャで開催!
SPECIAL ISSUE
12 栄冠の煌 きらめ き
2022年JAFモータースポーツ表彰式
18 凱旋、鈴鹿
ようやく実現したSUZUKAでの母国グランプリ。ファンの声援に応える粘り強いレースを見せた
22 壇上の美酒
臥薪嘗胆で挑んだ初めてのWRCラリージャパン。天候に翻弄されるも、今季2度目の3位表彰台!
26 Victory Road ~栄光に向かって~ Part.1 2022年チャンピオン獲得の軌跡 全日本スーパーフォーミュラ選手権 全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権
37 Victory Road ~栄光に向かって~ Part.2
2022年チャンピオン獲得の軌跡 FIAインターナショナルシリーズ スーパーGT 全日本カート選手権OK部門/FS-125部門/FP-3部門/EV部門 ジュニアカート選手権FP-Jr部門/FP-Jr Cadets部門
48 初栄冠の誉れ 2022年全日本選手権“初”チャンピオンインタビュー 全日本ジムカーナ選手権/全日本ダートトライアル選手権
55 切磋する原石
全日本ラリー選手権でキラリと光る若手ラリーストたちの臥薪嘗胆
TOPICS
33 スーパーフォーミュラ次世代車両「SF23」がついに発進! 日本から次世代を創造する! 国内モータースポーツの試行
62 4駆ターボは進化する
TOYOTA GAZOO Racingが送り出す新たな“競技ベース車両”の可能性
64 オートテスト倶楽部
オートテスト史上、初の試みとなる全国一斉オートテストを実施!
INFORMATION
35 INFORMATION from JAF モータースポーツ公示・JAFからのお知らせ(WEB)一覧(2022年10月1日~2022年12月22日)
36 JAFモータースポーツサイトのススメ
JAF MOTOR SPORTS JAFスポーツ[モータースポーツ情報]
監修/一般社団法人 日本自動車連盟 〒105-0012
東京都港区芝大門1-1-30 ☎0570-00-2811(ナビダイヤル) 発行所/株式会社JAFメディアワークス 〒105-0012 東京都港区芝大門1-9-9 野村不動産芝大門ビル10F ☎03-5470-1711(代) 発行人/日野眞吾 振替(東京)00100-88320 印刷所/凸版印刷株式会社 編集長/佐藤均 田代康 清水健史 大司一輝 デザイン/鎌田僚デザイン室 編集/株式会社JAFメディアワークス メディアグループ(JAFスポーツ) ☎03-5470-1712
COVER/2022 SUPER GT Round8 MOTEGI GT 300KM RACE GRAND FINAL PHOTO/石原康[Yasushi ISHIHARA]
本誌の記事内容は2022年12月22日までの情報を基にしております。また、社会情勢等によって、掲載した情報内容に変更が生じる可能性がございます。予めご了承ください。
HEADLINE
冬 CONTENTS
2023
「JAFモータースポーツサイト」も要チェック! https://motorsports.jaf.or.jp/
きらめ
年を締めくくる 「 J A F
JAF MOTOR SPORTS AWARD 2022
2022年JAFモータースポーツ表彰式
開催日:2022年11月25日
開催地:品川プリンスホテル マクセル アクアパーク内 ステラボール(東京都港区)
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JAF坂口正芳会長の挨拶に続き、名誉委員の称 号、そして特別賞の贈呈が行われ、今回は特別企画 としてeスポーツのエキシビションマッチを開催。 会場内のモータースポーツ熱が温まり始めた後、JAF カップオールジャパンジムカーナ、JAFカップオー ルジャパンダートトライアル、FIA F4選手権、全日 本ジムカーナ選手権、全日本ダートトライアル選手 権、全日本ラリー選手権、全日本カート選手権、全 日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権、FIAイン ターナショナルシリーズ スーパーGT、そして最後
は国内フォーミュラ最高峰の全日本スーパーフォー ミュラ選手権の順で表彰式が行われた。
レーシングスーツ姿とは違った、盛装で身を包ん だ表彰対象の選手たちは、とても晴れやかな表情で この式典に臨んでいた。この1年間で築き上げた自 らの成績を誇り、新たな国内モータースポーツの歴 史にそれぞれ名を刻んでいった。
022年のJAFモータースポーツ表彰式は、こ れまでのコロナ禍におけるさまざまな制限が緩 和されたことにより、表彰対象となる年間上位入賞 選手が一堂に会した従来の形式を取り戻し、東京都 港区の品川プリンスホテルのマクセル アクアパーク 内にあるステラボールにて華やかに執り行われた。 この表彰式は国内四輪モータースポーツを統轄す る一般社団法人日本自動車連盟が主催し、JAF全日 本選手権やFIAインターナショナルシリーズ等で好 成績を収めた上位選手およびチームの栄誉を称える 式典となっている。またJAFモータースポーツ名誉 委員の称号やJAFモータースポーツ特別賞の贈呈も あり、2022年の国内モータースポーツシーンを彩っ た選手や関係者たちの集大成の場となった。
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PHOTO/石原康[Yasushi ISHIHARA]、宇留野潤[Jun URUNO]、加藤和由[Kazuyoshi KATOU]、関根健司[Kenji SEKINE]、森山良雄[Yoshio MORIYAMA]、 JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS] REPORT/JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS] 12
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JAFモータースポーツ 名誉委員の称号の贈呈 JAFモータースポーツ関係委員 会の経験者、またはモータース ポーツの発展にとくに貢献の著し い個人の中から、モータースポーツ 審議会で諮り、JAF会長より贈呈 される「JAFモータースポーツ名 誉委員」の称号。2018~2019年 に開催されたFIAフォーミュラ1 世界選手権シリーズ日本グランプ リでのJAF派遣審査委員を始め、 これまで60年近くモータースポー ツに携わってきたチーム淀の淀野 泰弘氏が選出され、JAF坂口正芳 会長がプレゼンターを務めた。
JAFモータースポーツ特別賞の贈呈 「JAFモータースポーツ特別賞」は、その年のモータースポーツ界に多大な貢献をされた個人や団体に贈ら れる。個人では2022年FIA世界耐久選手権ハイパーカードライバーズチャンピオンおよび2022年FIA 世界耐久選手権第4戦ル・マン24時間レース総合優勝の平川亮選手、2022年FIA世界ラリー選手権 フォーラムエイト・ラリージャパン3位入賞の勝田貴元選手、2022年FIA世界耐久選手権TOTALエナ ジーズスパ・フランコルシャン6時間1位をはじめ、ル・マン24時間2位/モンツァ6時間3位/富士6 時間2位/バーレーン8時間1位の成績を残した小林可夢偉選手の3名に贈られた。
また団体では2022年FIA世界ラリー選 手権チャンピオンおよび2022年FIA世界 耐久選手権ハイパーカーチャンピオン、 2022年FIA世界耐久選手権第4戦ル・マ ン24時間レース総合優勝のTOYOTA GA ZOO Racingを始め、国内3年ぶりとなる FIA世界耐久選手権を主催した公認クラブ のFISCOクラブと公認団体の富士スピー ドウェイ株式会社、2022年に国内3年ぶ りとなるF1世界選手権を主催した公認ク ラブの鈴鹿モータースポーツクラブ、 2022年に国内12年ぶりとなるFIA世界 ラリー選手権を主催した公認クラブのト ヨタ・モータースポーツ・クラブと加盟 団体の株式会社サンズと加盟団体の特 定非営利活動法人M.O.S.C.O.の4団体 に贈呈。スポーツ庁の室伏広治長官がプ レゼンターを務めた。
平川亮選手 勝田貴元選手 小林可夢偉選手 13
スーパーフォーミュラ・ドライバー 野尻智紀選手 スーパーフォーミュラ・チーム TEAM MUGEN スーパーフォーミュラ・メカニック賞 TEAM MUGEN 全日本スーパーフォーミュラ選手権 FIAインターナショナルシリーズ スーパーGT GT300クラス・ドライバー 藤波清斗選手 GT300クラス・ドライバー ジョアオ・パオロ・ デ・オリベイラ選手 GT300クラス・チーム KONDO RACING GT500クラス・ドライバー 平峰一貴選手 GT500クラス・ドライバー ベルトラン・バゲット 選手 GT500クラス・チーム TEAM IMPUL JAF MOTOR SPORTS AWARD 2022 14
表彰式の会場は品川プリンスホテル内の ステラボール。中央にはレッドカーペッ トの花道が用意されていた。
司会進行はレース実況でお馴染みのピ エール北川氏と稲野一美氏。2007年の 表彰式以来のコンビが復活した。
全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権
スーパーフォーミュラ・ ライツ・ドライバー 小高一斗選手
スーパーフォーミュラ・ ライツ・チーム TOM'S
スーパーフォーミュラ・ ライツ・エンジンチューナー 株式会社トムス
JAF坂口正芳会長が表彰式開催に先立ち、 「JAFモータースポーツ表彰式を楽しんで いってもらえればと思います」と挨拶。
スポーツ庁の室伏広治長官がJAFモー タースポーツ特別賞のプレゼンターを務 め、表彰対象者に向けて祝辞を述べた。
FIA F4選手権
FIA F4・ドライバー 小出峻選手
全日本カート選手権
eスポーツエキシビションマッチ eスポーツの選手として国内外を問わず活躍している武藤壮汰選手、菅原達也 選手、植木俊輔選手がJAFモータースポーツ表彰式に招待され、全日本選手権 参戦のリアルドライバーたちとペアになってエキシビションマッチが行われた。 全日本ラリー選手権から西川真太郎選手、JAFカップオールジャパンジムカー ナからナツキ選手、全日本ラリー選手権から藤原直樹選手がこのエキシビショ ンに参加。グランツーリスモを使用して、富士スピードウェイを舞台にスーパー フォーミュラSF19でレースを行った。6周で争われ、eスポーツの選手が3周 して交代、リアルドライバーが残り3周を走って順位を決めるというもの。優勝 した植木/藤原ペアには記念品が贈呈された。
FIA F4・チーム Hondaフォーミュラ・ ドリーム・プロジェクト OK部門 小田優選手 FP-3部門 春日龍之介選手
百瀬翔選手
梅垣清選手
FS-125部門
EV部門
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全日本ラリー選手権
クラス10
山野哲也選手
6年連続22回目
クラス3
西井将宏選手 初タイトル
クラス8
小林規敏選手 初タイトル
クラス2
広瀬献選手 2年連続2回目
クラス7
若林隼人選手
2016年以来2回目
クラス1
菱井将文選手
2019年以来15回目
クラス6
ユウ選手 2年連続4回目
クラス5
茅野成樹選手 2年連続13回目
クラス4
田中康一選手
初タイトル
JAFカップオールジャパンジムカーナ優勝の皆さん。クラス10大 橋政哉選手、クラス8箕輪雄介選手、クラス7岡野博史選手、クラス 6大多和健人選手、クラス5上本昌彦選手、クラス4奥井優介選手、 クラス3最上佳樹選手、クラス2若林拳人選手、クラス1高瀬昌史選 手、クラスWomenナツキ選手。
全日本ダートトライアル選手権
JAF MOTOR SPORTS AWARD 2022 16
クラス6ドライバー
海老原孝敬選手
初タイトル
クラス6コ・ドライバー
蔭山恵選手 初タイトル
クラス5ドライバー
天野智之選手
9年連続14回目
クラス4ドライバー
西川真太郎選手
2年連続2回目
クラス3ドライバー 竹内源樹選手
2014年以来2回目
クラス2ドライバー 中平勝也選手
2020年以来2回目
クラス1ドライバー ヘイキ・コバライネン選手
2年連続2回目
クラス4コ・ドライバー 本橋貴司選手 2年連続2回目
クラス3コ・ドライバー
木村悟士選手 初タイトル
全日本ジムカーナ選手権
クラス2コ・ドライバー 島津雅彦選手 2012年以来2回目
クラス1コ・ドライバー 北川紗衣選手 2年連続3回目
クラス4
北村和浩選手
2年連続18回目
クラス5コ・ドライバー 井上裕紀子選手 13年連続15回目 クラス3 坂田一也選手 2年連続3回目
JAFカップオールジャパンダートトライアル優勝の皆さ ん。クラス11佐藤秀昭選手、クラス9鈴木義則選手、クラ ス8鶴岡義広選手、クラス7小関高幸選手、クラス6大橋邦 彦選手、クラス5佐藤卓也選手(欠席)、クラス4林軍市選 手、クラス3山下貴史選手(欠席)、クラス2亀田幸弘選手、 クラス1谷田川敏幸選手、クラスWomen城越明日香選手。
クラス2 目黒亮選手
クラス1
4年連続7回目
2年連続2回目
炭山裕矢選手
クラス11 則信重雄選手 初タイトル クラス7 山崎利博選手 3年連続7回目 クラス9 工藤清美選手 2017年以来7回目 クラス6 北條倫史選手 5年連続7回目 クラス8 谷尚樹選手 2年連続2回目 クラス5
細木智矢選手 2年連続4回目
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本が期待する角田裕毅選手がついに母国凱 旋を果たし、ファンの前で成長した姿を披 露した。2022年のFIAフォーミュラ1世 界選手権(F1)第18戦「Honda日本グランプリ」は、 残念ながらポイント圏外でのフィニッシュとなった が、アルファタウリのチームメイト、ピエール・ガス リー選手を上回るパフォーマンスを見せた。
前戦のシンガポールでは、自身のミスによりクラッ シュを喫してしまった角田選手。流れとしては決して 良くない状況だったが、そこから連戦で行われる日本 グランプリのために、久しぶりの来日を果たした。
迎えた金曜のプラクティスセッション。朝からあい にくの雨となり、かなり肌寒さを感じる1日となった が、3年ぶりに開催されるF1日本GP、そして角田選 手の凱旋を心待ちにしていたファンが早朝から詰めか け、金曜日の観客動員は3万8000人を記録した。
12時から始まったプラクティス1回目。ウェット 路面により様子見の雰囲気だったが、12時04分にハ ースのケビン・マグヌッセン選手がコースインする と、スタンドから拍手が沸き起こる。その30秒後に 角田選手が走り出すと、この日で一番の盛り上がりを 見せる。鈴鹿サーキットの各コーナーで手を振って、 旗を振る観客が、角田選手の凱旋を盛大に出迎えた。 「雨の中、まさかこんなにお客さんがいると思わなく てビックリしましたし、すごくありがたかったです。 FP1から本当にたくさんの人たちがスタンドにいて くれて、最初アウトラップで(コースに)出ていったと
凱旋、
ようやく実現した SUZUKAでの母国グランプリ ファンの声援に応える 粘り強いレースを見せた
きはグッと来るものがありましたし、特別な1周だっ たと思います。本当にたくさんの応援が、(コックピ ットに)届いてきました。毎ラップ、毎コーナーでた くさん日本の国旗が振られていて、その度にエネルギ ーをもらいました。たまに“オーバーエキサイト”し すぎるのではないかなと思ったんですけど……けっこ う安定して走れていたと思います」とは角田選手。
数年前までは“観客”としてF1をスタンドから観る
日
18
3年ぶりに鈴鹿サーキット へ帰ってきたF1日本GP。10 月7日(金)は3万8000人、土 曜は6万8000人、雨となっ た決勝日の日曜は9万4000 人が来場し、角田裕毅選手 の母国グランプリと、マック ス・フェルスタッペン選手 のドライバーズタイトル確 定の瞬間を見守った。
特集 FIA世界選手権/FIA WORLD CHAMPIONSHIP
、鈴鹿
ここでは、唯一の日本人として世界最高峰のレースに挑む 角田選手による、自身初の鈴鹿サーキットでの 日本グランプリの戦いぶりを振り返る。
PHOTO/吉見幸夫[Yukio YOSHIMI] REPORT/吉田知弘[Tomohiro YOSHITA]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]
側だった角田選手。ついに自身がF1ドライバーとし て鈴鹿に帰ってきた実感が湧き、セッション中は感情 がこみ上げそうになった場面もあったようだ。
プラクティス2回目では大きくコースオフする場面 もあったが、しっかりと復帰して14番手でセッショ ンを終える。金曜を以下のように締めくくった。
の周に雨が降ればタイムが遅くなる。まずはタイムの ことを気にせずに行って、クルマの理解と(F1マシン での)鈴鹿の経験値を上げることに集中しました。予
選はコンディションが変わるようですが、FP3でやれ ることをやって、Q3に行けるように頑張ります」。
角田裕毅選手がQ2進出を果たすも…
公式予選が行われた土曜は、雲は残ったものの路面 はドライコンディションとなり、前日を大きく上回る 6万8000人もの観客が鈴鹿サーキットに訪れた。
予選を前に、ドライ路面で鈴鹿を走れるのはプラク ティス3回目の1時間だけ。セッション開始と同時に 多くのマシンがピットを離れ、その中に角田選手のマ シンもあった。積極的に走り込み、習熟とセットアッ プに努めたが、ベストタイムはトップから1.706秒 差の1分32秒377で17番手。予選に向けては不安 が残るタイムとなった。
15時から始まった公式予選。角田選手は真っ先に タイムアタックを敢行。Q2進出を目指して、ソフト タイヤを3セット投入する作戦だった。1回目のアタ ックでは1分31秒631とプラクティス3のタイムを 更新し、ここからさらに詰めていく予定だった。
その影響もあってか、Q2の1回目のアタックでは1 分32秒530と伸び悩む。ピットではできる限りの修 スクーデリア・アルファタウリのF1ドライバーとなって 2年目を迎えた2022年。角田裕毅選手はようやく 母国グランプリに凱旋することができた。
「スイートスポットを見つけるタイミングが重要にな ってきて、雨が止んだ瞬間はタイムが出ますけど、次
しかし、2回目のアタックではブレーキ温度がター ゲットレンジに入らなくなり、シケインでは大きくロ ックさせてしまう。1分31秒346と自己ベストは更新 したものの、他者に比べて伸び幅は少なめ。チームメ イトのガスリー選手も同じ症状に悩まされていた。
それでも角田選手は、最終アタックではブレーキの 問題を修正し、特にシケインがあるセクター3で大幅 にペースを改善。1分31秒130を叩き出し12番手で Q2進出を果たした。一方のガスリー選手は最後まで ブレーキロックを解消できず、17番手で敗退した。た だ、ブレーキのトラブルは根本的に改善したわけでは なく、角田選手はブレーキング時にタイヤをロックさ せないようマシンと格闘しながらの走行だったという。
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特集 FIA世界選手権/ FIA WORLD CHAMPIONSHIP
凱旋、鈴鹿
正とデータチェックを行い、最後のア タックに挑んだが、ウォームアップ中 にハースのミック・シューマッハ選手 と交錯してリズムが崩れてしまう。そ れでも角田選手は、Q1のタイムを上回 る1分30秒808を記録するも、結果 は13番手で、Q3進出は叶わなかった。 「(ブレーキトラブルは)FP3では問題なかったので すが、Q1の2走目から大きく問題が出てしまい、そ の周のセクター1から(違和感を)感じていました。予 選でブレーキはかなり重要なので、そこで安定性を失 ったことで、ドライビングが難しくなりました」。
「予選中はブレーキに意識を向けなければいけなく て、余計な力を使ってしまいました。簡単に言えば温 度で、ワーキングレンジに入っていなかった。とにか くクルマのマネジメントで対処するしかなくて、僕が できることは“ブレーキを踏む”ことでした。それに はスピードもあるし、タイヤのウォームアップもしな くちゃいけないので難しかったです。それでも(Q2 のアタックは)悪くないラップだったと思います」。
さらに「まぁ、しょうがないです」とコメントしつつ も、角田選手の表情からは、かなりの悔しさが伝わっ てきた。それでも“母国のファンの声援”が彼の後押 しとなり、諦めずにアタックし続けられたという。
「今日も応援してくれる皆さんのおかげで、自分も気 持ちをリセットして毎回アタックに臨むことができま した。本当に感謝していますし、何より皆さんの応援 から凄くパワーをもらえていたと思います」。
予報通りの雨が降り出した決勝
決勝日は雨予報だった。それでも角田選手は「とに かくコンスタントな走りをしつつ、僕のアグレッシブ なドライビングスタイルも、皆さんに見せられればな と思います」と、臆する様子はなかった。
午前中は曇り空でドライ路面を維持したが、恒例の
2022年FIAフォーミュラ1世界選手権(F1)における角田裕毅選手の成績
角田選手は、新幹線ではなく自走 で鈴鹿サーキットを目指し、高速 道路のサービスエリアに立ち寄り 「日本っぽいこと」をしながら自分 の時間を堪能。現地では彼の修業 時代の行きつけである焼肉店に直 行するなど縁の地を訪れて英気を 養った。木曜のメディアセッショ ンでは、彼らしい柔和な表情も見 せ、母国での戦いに備えていた。
ドライバーズパレードが始まったタイミングで、ポツ リポツリと雨が降り始めた。2022年からはHRCが技 術支援するパワーユニットを搭載するレッドブルとア ルファタウリに所属する4人のドライバーは、2コー ナーに設置された専用の応援スタンドで一時降車して 挨拶。国際映像の都合でインタビューは英語だった が、角田選手はあえて「日本語の方が伝わると思うか ら」と、日本語でファンに感謝のメッセージを伝え、 ポイント獲得を誓った。
観客席のボルテージの高まりとは裏腹に、スタート 時刻が近づくにつれて雨脚が強くなった。各車がスタ ート進行のためにグリッドについた頃には、完全なウ ェットコンディションとなってしまっていた。
今回は、岸田文雄首相が、現役の内閣総理大臣とし て初めてF1日本GPに来場。国歌斉唱が行われた後は、 各ドライバーに挨拶していたが、角田選手は自身が今 季使用していたレーシングスーツを持参して、サプライ ズで岸田首相に進呈した。僅かな時間だったが言葉を 交わし、気持ちを新たにしてマシンに乗り込んだ。
そして、いよいよ決勝レースのスタートフラッグが 振られた。13番手スタートの角田選手は、雨の中でも 好ダッシュを決めて9番手まで浮上。一気にポイント 圏内に躍り出たのだが、フェラーリのカルロス・サイ ンツ選手が200Rでクラッシュを喫したことでセーフ ティカー(SC)が入り、2周終了のところで赤旗中断と なった。雨脚がさらに強まっていたのだ。
一時は30分程度経ったところでレース再開のアナ ウンスがされ、各ドライバーもマシンに乗り込んだの だが、再開2分前で再び雨が強くなり、レース再開の 延期が発表された。そこから約1時間。当初の赤旗提 示の時間から数えると約2時間近く経過しようとして いた。気温も16度を下回り、とても寒い状況となっ たが、多くのファンがスタンドで待機し、レース再開 を待った。角田選手はピットウォールまで赴き、スタ ンドに手を振るなどのアピールを行った。
Round 開催日 開催地 角田選手 優勝者 Round 開催日 開催地 角田選手 優勝者 Rd.1 3/18-20 バーレーン 8位 C.ルクレール選手 Rd.12 7/22-24 フランス DNF M.フェルスタッペン選手 Rd.2 3/25-27 サウジアラビア DNS M.フェルスタッペン選手 Rd.13 7/29-31 ハンガリー 19位 M.フェルスタッペン選手 Rd.3 4/8-10 オーストラリア 15位 C.ルクレール選手 Rd.14 8/26-28 ベルギー 13位 M.フェルスタッペン選手 Rd.4 4/22-24 イタリア 7位 M.フェルスタッペン選手 Rd.15 9/2-4 オランダ DNF M.フェルスタッペン選手 Rd.5 5/6-8 US 12位 M.フェルスタッペン選手 Rd.16 9/9-11 イタリア 14位 M.フェルスタッペン選手 Rd.6 5/20-22 スペイン 10位 M.フェルスタッペン選手 Rd.17 9/30-10/2 シンガポール DNF S.ペレス選手 Rd.7 5/27-29 モナコ 17位 S.ペレス選手 Rd.18 10/7-9 日本 13位 M.フェルスタッペン選手 Rd.8 6/10-12 アゼルバイジャン 13位 M.フェルスタッペン選手 Rd.19 10/21-23 US 10位 M.フェルスタッペン選手 Rd.9 6/17-19 カナダ DNF M.フェルスタッペン選手 Rd.20 10/28-30 メキシコ DNF M.フェルスタッペン選手 Rd.10 7/1-3 英国 14位 C.サインツ選手 Rd.21 11/11-13 ブラジル 17位 G.ラッセル選手 Rd.11 7/8-10 オーストリア 16位 C.ルクレール選手 Rd.22 11/18-20 アブダビ 11位 M.フェルスタッペン選手
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「あんなに歓声があがる体験は初めて。
「(中断中は)早く始まらないかな、という気持ちでし た。ファンの皆さんが大雨の中、ずっと待っていてく れたので、本当に1分でも、1秒でも早く再開して欲 しかったですし、少しでも楽しんでもらえたらなと思 って、手を振りに行ったりしました」と角田選手。
「最低限、やれることはやれた」
そして、16時を過ぎたところで雨脚も弱まり、16 時15分の再開が発表される。角田選手はすぐに準備 を始め、マシンに飛び乗った。かなりの雨が降ったた め、各車ともウェットタイヤに交換。SC先導で数周 走り、6周目にグリーンフラッグが振られた。
この時点では小雨状態となり、路面上の水量も一気 に少なくなった。それを受けて各車が続々とピットイ ンし、角田選手も7周目にインターミディエイトタイ ヤに交換。素早い作業で彼を送り出した。
全てのマシンがインターミディエイトに交換したと ころで、角田選手は10番手につけていたが、なかな かペースを上げられないでいた。後方からはメルセデ スのジョージ・ラッセル選手が迫り、何とか応戦して いたものの、15周目の逆バンクでパスされ、ポイント 圏外に後退することになった。
その後、さらなるペースアップを求めて、2度目の ピットインに踏み切るライバルも現れた。そこで角田 選手にとって再びポイント獲得のチャンスとなるのだ が、チームはライバル同様に角田選手のタイヤ交換を 選択。20周目にピットに呼び戻し、新しいインターミ ディエイトタイヤを装着した。
しかし、後方集団のほとんどがステイアウトを選択。
角田選手は16番手まで後退してしまう。それでも、フ レッシュタイヤを活かしてオーバーテイクを重ね、最 終的には13番手まで挽回した。このままならポイント 圏内に手が届きそうなペースだったが、規定の3時間 を経過したため、28周でチェッカーフラッグが出され てしまう。角田選手は悔しい13位に終わった。
「(金曜の雨で感じた)キャラクターが今日も出ていま した。その時よりは少し抑えられたと思うんですけ ど、状況は改善されなかったです。最初のスタートで 9番手まで上がれたところまでは良かったし、途中で 何台かオーバーテイクして、最低限やれることはやれ たと思っています。ただ、9番手まで上がったところ から、最終的にポイントを獲得できなかったことは悔 しいです」と角田選手は肩を落とした。
初の母国凱旋レースは悔しい結果に終わってしまっ たが、日本のファンの前で粘り強くレースできたこと は、少なからず自信に繋がった様子。「あんなに歓声 が上がった体験は人生で1回もなかったので、本当に 皆さんのおかげで楽しめましたし、毎ラップ毎コーナ ーで声援を贈ってもらって、力強かったです」と語る ように、ファンの声援はシーズン終盤戦に向けて、彼 にとっての大きな原動力となったようだ。
ファンや角田選手にとって望んだリザルトにはなら なかったが、チームメイトのガスリー選手と比べて も、難攻不落と言われる鈴鹿で見せたパフォーマンス の高さに「角田の成長を感じた」という声も多方面から 聞こえてきた。まだまだ我慢の戦いは続くが、初めて の母国凱旋レースでの経験が、今後の彼をさらに強く するきっかけになることは、間違いないだろう。
予報どおりに降り出し た雨により、長時間の赤 旗中断を強いられた決 勝レース。スタート直後 は13番グリッドから9 番手にまで上げた角田 選手だったが、レース再 開後にはタイヤ戦略の 影響で16番手に転落。 それでも前向きに走り 続け、鈴鹿を13位で フィニッシュした。
毎ラップ、毎コーナーの声援が支えに」 21
いにFIA世界ラリー選手権(WRC)第13戦 「ラリージャパン」が11月10〜13日、愛 知県および岐阜県で開催された。
WRCの2022年シーズンを締めくくるこのターマ ックラリーに、TOYOTA GAZOO Racing WRCチ ャレンジプログラムに参加中の日本人ドライバー、勝 田貴元選手もGR Yaris Rally1 HYBRIDで参戦を果 たしており、詰めかけた大勢のファンや関係者の声援 を受けて総合3位に入賞し、ホームイベントで表彰台 を獲得した。
WRCの日本ラウンドは2004年に北海道帯広市を 中心に、AG.MSC北海道などの主催により初めて開催 された。2008年には札幌市を拠点に開催され、北海 道のグラベルロードを舞台にドラマチックな名勝負が 展開されてきた。2010年を最後に日本でのWRCは 開催されていなかったが、新型コロナウイルス感染症 感染拡大の影響を受けた2度の開催見送りを経て、こ のたび新生「ラリージャパン」が12年ぶりに復活。し かも、愛知県と岐阜県が舞台のターマックラリーとし て、フォーマットも一新されることになった。
「ジャパンはリスクを持って走りたい」
TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプロ グラムでWRCに参戦してきた勝田貴元選手だが、 2022年は「Next Generation」という新チームを率い る立場となり、開幕戦ラリー・モンテカルロから第10 戦ラリー・ギリシャに至るラウンドで連続完走を果た すという、トップレベルの安定感を見せていた。
特集 FIA世界選手権/FIA WORLD CHAMPIONSHIP
臥薪嘗胆で挑んだ 初めてのWRCラリージャパン 天候に翻弄されるも、 今季2度目の3位表彰台!
しかし、迎えた日本ラウンドに対しては「ラリージ ャパンでは、ポディウムフィニッシュを果たすため に、リスクを持って走りたい。序盤から攻めていきた いと思います」と語り、これまでのラウンドとは違う 攻めの姿勢を前面に押し出した意気込みを見せた。
日本のターマックロードは、多くのWRCドライバ ーにとって初体験となったが、勝田貴元選手は2019 年に開催された「セントラルラリー愛知・岐阜」に参戦 し、いくつかのステージを経験している。その優位性
壇上の
つ
壇上の美酒
12年ぶりのWRC日本ラウンドとして愛知県と岐阜県で 開催された、WRC第13戦「ラリージャパン」。
Rally1車両を操る唯一の日本人である勝田貴元選手は 母国そして地元の期待を受けてどう戦ったのか? ここでは勝田貴元選手の初の凱旋ラリーを振り返る。
PHOTO/小竹充[Mitsuru KOTAKE]、遠藤樹弥[Tatsuya ENDOU]、TOYOTA GAZOO Racing REPORT/廣本泉[Izumi HIROMOTO]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]
については、事前のコメントで「当時とはマシンも自 分も大きく変化・進化しているので、2019年に走っ た経験はあまり参考にならない」と語っていた。
そして、3日間のレッキを終えた勝田貴元選手は、 「やっぱり日本のステージは特有で難しいですね。た いてい何回も同じラリーに参戦すると、何となくステ ージを覚えてしまうんですが、同じようなコーナーが 多いので、どれだけ精度の高いペースノートを作れる のかが重要になってきます。一つのコーナーでコンマ 05秒ぐらい稼ぐことができて、そのペースで1kmぐ らい走れば5秒ぐらい積み重ねられる、そんな感じだ と思うので、ペースノートを精密に作って、ドライビ ングに反映していきたい」と難しさを表現した。
さらに「最終日の日曜は雨の予報が出ているので、 最後のパワーステージまで何が起こるか分からない。 そういったことを考えると、金曜に何かをやっちゃう わけにはいかないので、攻略について、考えないとい けないことが増えました」とも語っている。
それでも勝田貴元選手は「ファンの皆さんが色々な ところで声をかけてくれるので、いつも以上に気合が 入りますね。その分、他のラリーよりもプレッシャー はありますが、ネガティブには働いていない。いつも は様子を見過ぎている部分も多いんですが、今回は自 分の持てる力を全て出し切りたいと思います」と、改 めてラリージャパンへの意気込みを明らかにした。
セットアップが決まらず序盤で苦しむ
ラリーは10日の木曜から競技のアイテナリーが始 まり、午前中に行われたシェイクダウンに挑んだ勝田 貴元選手は9番手タイムでフィニッシュする。そして、 その夕刻には、サービスパークが設置された豊田スタ ジアム内のフィールドでセレモニアルスタートが行わ れ、詰めかけた多くのファンの声援に応えた後、オー プニングステージ「Kuragaike Park」へと向かった。
SS1はナイトステージとして設定されたことから、 各チームはライトポッドを装着して激しいアタックを 披露。勝田貴元選手もアグレッシブな走りでファンの 期待に応え、結果は7番手タイムだったが、トップと の差はわずか1.9秒に抑えた。そして、11日の金曜 に、林道ステージを舞台とした本格的な競技が幕を開 け、勝田貴元選手は力強いアタックを見せた。
ラリー2日目はSS2「Isegami’s Tunnel 1」で幕を 開けた。5番目スタートの勝田貴元選手はステージを 6番手でフィニッシュしたが、木曜をトップで折り返 していたセバスチャン・オジエ選手がパンクに見舞わ れてトップ争いから脱落したほか、8番目にスタート したダニエル・ソルド選手がマシントラブルでストッ プ。コース内で車両が炎上して、その後の走行がキャ ンセルされるなど、波乱含みの展開となった。
木曜から始まったラリー・ジャパン。午前のシェイク ダウンの後に豊田スタジアムでセレモニアルスター トが行われ、そのままSS1を走行。序盤の勝田貴元選 手はアンダーステアに悩まされたが、セットアップの 変更で解消。金曜の午後から攻めに転じた。
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特集 FIA世界選手権/ FIA WORLD CHAMPIONSHIP
壇上の美酒
続くSS3「Inabu Dam 1」もSS4への 移動のためキャンセルされ、SS4「Shita ra Town R 1」でも7番目にスタートし たクレイグ・ブリーン選手がスタートか ら9km地点でクラッシュ。さらに、
林道ステージの観戦チ ケットが早々に売り切れ た今大会。サービスパーク のある豊田スタジアムや、 パッセージコントロールが 設定された恵那市の岩村 町本通りなどには大勢の ギャラリーが詰めかけた。
脱落者が続出した金曜を、総合5番手で豊田スタジア ムに帰還した。勝田貴元選手は「午後の(比較的高かっ た)気温でこのグリップレベルなので、明日の朝は間 違いなくグリップ不足に悩むことになると思います。
3日目で良いリズムをつかみたいです」と、難しいラ リーになることを予想しつつ、意気込みを語った。
新城ステージでは自己ベストをマーク
サービスパークに戻った勝田貴元選手は「道に合わ せたセッティングができていなくて、朝はアンダース テアが出ていましたが、昼のサービスでセットアップ を変えたことで、気持ち良く走れるようになりまし た」と語ったが、続く午後のループでは、その言葉を 裏付けるかのように素晴らしい走りを見せている。
勝田貴元選手はSS5「Isegami’s Tunnel 2」で5番 手タイムを計測すると、SS6「Inabu Dam 2」ではこれ までの自己ベストリザルトとなる4番手タイムをマー ク。続くSS7「Shitara Town R 2」はガードレール修 復に伴う安全上の理由によりキャンセルとなったが、
2022年FIA世界ラリー選手権(WRC)における勝田貴元選手の成績 WRC2選手権のエミル・リンドホルム選手もコース 上にストップする事態に見舞われ、最終的にステージ キャンセルとなるものの、すでにSS4を通過してい た勝田貴元選手は冷静に5番手タイムをマークしてお り、総合5番手で金曜のファーストループを終えた。
12日土曜のオープニングステージはSS8「Nukata Forest 1」。ここは田畑を貫く日本の典型的な県道を 走るラリージャパンの名物ステージだが、すでにラリ ー・ニュージーランドで2022年ドライバーチャンピ オンを決めているカッレ・ロバンペラ選手が、総合3 番手につけていたもののパンクを喫してトップ争いか ら脱落してしまう。SS8では勝田貴元選手が5番手タ イムをマークし、総合順位でも4番手に浮上した。 そして、続くSS9「Lake Mikawako 1」は6番手タ イムをマークしたほか、全日本ラリー選手権・新城ラ リーでおなじみの「鬼久保」ステージの走行経験が少な からずのアドバンテージになったのだろう、同一ステ ージを使ったSS10「Shinshiro City」では、勝田貴元 選手の自己ベストリザルトとなる3番手タイムをマー クするなど、順調な立ち上がりを見せた。
リピートステージとなるSS11「Nukata Forest 2」 では5番手タイム、SS12「Lake Mikawako 2」では6 番手タイムを計測した勝田貴元選手は、土曜の最終ス テージとなるSS14「Okazaki City SSS 2」を7番手 タイムでフィニッシュ。「今日も難しいコンディショ ンで、納得の行く走りができませんでした」と語りな がらも、総合4番手を守り、ラリー3日目を終えた。 総合3番手を獲得し、表彰台を死守する戦い
最終日を前に、表彰台まであと一歩に迫る状態とな った勝田貴元選手。ラリー4日目はこれまでの愛知エ リアから岐阜エリアへと戦いの場を移した。最終日と なる13日の日曜は、午後から雨が降る予報が出る中 で、勝田貴元選手はハードコンパウンド×3本、ソフ ト×2本、ウェット×1本という、他者とはやや異な るタイヤ選択でサービスパークを後にした。
オープニングステージのSS15「Asahi Kougen」は ドライコンディションで行われ、勝田貴元選手は7番 手タイムを計測したが、続くSS16「Ena City 1」では 勝田貴元選手は今シーズン の第6戦ラリー・ケニアで総 合3位を獲得。ジャパンでも 表彰台を目標としており、荒 れた展開を冷静に駆け抜 け、難しかった母国ラリー で、今季2度目の総合3位を 獲得してみせた。
Round 開催日 大会 勝田貴元選手 総合優勝者 Rd.1 1/20-23 モンテカルロ 総合8位 +12:24.7 S.ローブ選手 Rd.2 2/24-27 スウェーデン 総合4位 +2:19.4 K.ロバンペラ選手 Rd.3 4/21-24 クロアチア 総合6位 +8:08.5 K.ロバンペラ選手 Rd.4 5/19-22 ポルトガル 総合4位 +2:19.4 K.ロバンペラ選手 Rd.5 6/2-5 サルディニア 総合6位 +4:02.6 O.タナック選手 Rd.6 6/23-26 ケニア 総合3位 +1:42.7 K.ロバンペラ選手 Rd.7 7/14-17 エストニア 総合5位 +4:13.4 K.ロバンペラ選手 Rd.8 8/4-7 フィンランド 総合6位 +3:09.0 O.タナック選手 Rd.9 8/18-21 ベルギー 総合5位 +6:06.1 O.タナック選手 Rd.10 9/8-11 ギリシャ 総合6位 +6:21.1 T.ヌービル選手 Rd.11 9/29-10/2 ニュージーランド DNF K.ロバンペラ選手 Rd.12 10/20-23 スペイン 総合7位 +2:19.1 S.オジエ選手 Rd.13 11/10-13 日本 総合3位 +2:11.3 T.ヌービル選手
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「母国開催のラリーで表彰台に立てて、 チームと多くのファンの皆さんに感謝」
チームに予想外のハプニングが発生してしまう。
総合2番手から逆転を狙っていたエルフィン・エバ ンス選手がSS16でパンクを喫し、4番手に後退して しまったのだ。そして、SS16で5番手タイムをマー クした勝田貴元選手が、TOYOTA GAZOO Racing 勢の最上位となる、総合3番手に浮上したのである。
これで勢いが増したのか、勝田貴元選手はSS17「Ne noue Plateau」で3番手タイムをマーク。ステージを2 本残して、このままポディウムフィニッシュへ突き進む かのように見えたのだが、この後から予報通りの雨が 降り始め、続くSS18「Ena City 2」は完全なウェット 路面で争われることになってしまった。
降雨量の多い本格的な雨となったため、ウェットタ イヤを1本しか搭載していない勝田貴元選手にとって はかなり厳しい状況になっていた。それでも冷静な走 りに努めた勝田貴元選手は、SS18を8番手タイムに 留まりながらも、総合3番手をキープした。
母国ラリー表彰台でも「100%は喜べない」
そして、ラリージャパンの最終ステージとなるSS19 「Asahi Kougen Power Stage」は、相変わらずのウェ ット路面で、しかも勝田貴元選手はタイヤにトラブルを 抱えてしまっていた。それにより、最終パワーステージ はトップから42.2秒遅れの16番手タイムに留まった が、それでも総合順位は死守。これにより、TOYOTA GAZOO Racing勢では最上位となる3位入賞を果た し、最終日の天候も含めて大荒れの展開となった母国イ
ベントで勝田貴元選手が 表彰台を獲得した。 「難しいコンディション でしたし、エルフィンの パンクは残念でしたが、 無事に完走することがで きました。プレッシャー があったのでホッとしま したが、同時に目標だっ た表彰台を獲得できたのでうれしいですね」と目頭を 熱くしながら応える勝田貴元選手。その上で、「まだ 優勝していないので、100%は喜べないですね」と神妙 な表情で付け加えた。TOYOTA GAZOO Racing、そ して自身にとってホームラリーとなるこの大会で獲得 した表彰台は、十分に誇れる成績であると言えるはず だ。しかし、この印象的な言葉が示す通り、勝田貴元 選手はまだまだ「次」そして「上」を見据えている。勝利 に対する飽くなき意欲が、勝田貴元選手をさらなる高 みに押し上げてくれるに違いない。
なお、2021年に続いてマニュファクチャラーズチ ャンピオンとドライバーズチャンピオン、コ・ドライ バーズチャンピオンの三冠を達成したTOYOTA GAZ OO Racingは、2023年の勝田貴元/アーロン・ジョ ンストン組がTOYOTA GAZOO Racing WRTに昇 格し、今回のラリージャパンにも参戦したセバスチャ ン・オジエ/ヴァンサン・ランデ組と3台目のシート をシェアすることを11月18日に発表している。
ポディウムフィニッシュ を成し遂げて、TOYOTA GAZOO Racing WRTの チームオーナー豊田章 男氏、チーム代表のヤリマティ・ラトバラ氏と喜 びを分かち合う勝田貴 元選手。
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2022年チャンピオン 獲得の軌跡
日々研鑽を積むモータースポーツの世界では “チャンピオンは一日にしてならず”で、 タイトル獲得のために通過してきた軌跡が存在する。 2022シーズンをどのように戦い、そして苦悩し、
栄冠をつかむことができたのかを追いかけた。
PHOTO/石原康[Yasushi.ISHIHARA]、遠藤樹弥[Tatsuya.ENDOU]、森山良雄[Yoshio.MORIYAMA]、吉見幸夫[Yukio.YOSHIMI] REPORT/貝島由美子[Yumiko.KAIJIMA]、はた☆なおゆき[Naoyuki.HATA]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS] 数々のドラマが生まれた2022年のレースカテゴリー。
JAF全日本スーパーフォーミュラ選手権
うやく新型コロナウイルス感染 症のパンデミックによる影響が 落ち着きをみせ、水際対策など も緩和された2022年。全日本スーパーフ ォーミュラ選手権は、レギュラードライバ ーたちが休場することなく全レースに出場 し、開幕戦から最終戦まで激しい戦いを繰 り広げた。ベテランから中堅、さらには伸 び盛りの若手やルーキーたちが顔を揃え、 まさにガチンコ対決と呼ぶに相応しい争い が戻ってきたと言っていいだろう。
そのシーズンをディフェンディングチャ ンピオンとして迎えたのは野尻智紀選手。
2020年のシーズンを通して、「もうチャ ンピオンになる準備はできている」と自信 を深めていた野尻選手は、同時にタイトル 獲得へのチャレンジャーでもあり、攻めの 走りを貫いて初戴冠を果たした。国内トッ プフォーミュラ参戦8年目、四輪レースに 上がってからの初タイトルということで、 達成感と喜びはひとしおだったはずだ。
しかし迎えた2022年は追われる立場。 周囲からは連覇の期待もかかる。それだけ に、気持ちの面では前年以上に大変なシー ズンのスタートを迎えたはずだ。2022年 のスーパーフォーミュラは大会数こそ7回 と前年同様だったが、2レース制を採用し た大会が3回あり、全10戦とレース数は 増加。またシリーズポイントに関しても、 有効ポイント制から全戦ポイントに変更。 取りこぼしがタイトル争いにはダイレクト に響くだけに、どのドライバーにとっても 気が抜けないシーズンとなる。それは野尻 選手にとっても同様だった。
世界耐久選手権にもフル参戦を開始し、ス ーパーフォーミュラでのタイトル獲得を悲 願としている平川選手だった。
ディフェンディングチャンピオン 野尻智紀選手が流れを引き戻す
開幕戦の舞台は富士スピードウェイ。そ こでまず周囲をアッと言わせる走りでポー ルポジション(PP)を奪ったのは、野尻選 手のチームメイトとなった笹原右京選手。 ルーキーの佐藤蓮選手が2番手、平川亮選 手が3番手。野尻選手は新しくなったリア タイヤに対してセットアップを煮詰めきれ ず、まさかの6番手に留まる。さらに決勝 レースで先手を取ったのは、2022年から
野尻選手は予選6番手からスタートでひ とつポジションを上げ、10周を終えたとこ ろで早めのタイヤ交換。そこから力強いペ ースで周回を重ねた。スタートから前半、 トップに立った平川選手がタイヤ交換を終 えてコースに戻ったときには、野尻選手が 先行。作戦は功を奏したかに見えた。しか し、平川選手はそこから野尻選手を追い詰 め、コース上で鮮やかなオーバーテイクを 披露。平川選手が逆転優勝を果たした。
野尻選手は、「一時はトップに立ったの でもちろん悔しさはありますが、レースと しては6番手スタートだったので非常に思 い切ったチャレンジができましたし、内容 としては満足しています」と2位フィニッ シュ。「ただ、2021年も平川選手はロング ランのペースが良かったですし、非常に怖
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い相手に勝たれてしまったなという印象が 大きいです。前年のチャンピオンという肩 書きは多分一瞬にして忘れ去られてしまう と思いますし、“誰にも負けない”という気 持ちを今日のレースでさらに強く持つこと ができたんじゃないかなと思います」と語 った。3位に入ったのは、2021年こそコロ ナ禍でなかなか再入国できなかったもの の、やっとフル参戦が叶ったサッシャ・フ ェネストラズ選手。最終的には、開幕戦で 表彰台を分け合ったこの3人が、タイトル 争いでも中心人物となっていく。
開幕戦の翌日、同じ富士では早くも第2 戦が行われた。このレースの予選で、前日 から大きく巻き返す形で2022年初PPを 獲得したのは野尻選手。しかも1周目のタ イムアタック前半に、トラックリミットを 超えたと見るや一旦スローダウン。そこか ら仕切り直したアタックでトップタイムを 叩き出す冷静さを見せた。前夜遅くまでセ ズンを終えて振り返っている。
さらに決勝レースでも、野尻選手はスタ ートを決めるとトップをキープ。TEAM MUGENのエンジニア陣も他のドライバ ーたちの作戦を見ながら、野尻選手を最適 なタイミングでピットに呼び戻してタイヤ 交換を行った。結果、野尻選手は横綱相撲 とも言えるような展開で、シーズン初優勝 を果たした。これに続いたのは、開幕戦を 制した平川選手。
平川選手は予選こそ8番手に留まった が、決勝レースでのペースの良さを活かし てそこからポジションアップ。予選でのビ ハインドを跳ね返して見せる。決勝中、野 尻選手の陣営は平川選手の動向を逐一チェ ック。それぐらい野尻選手にとっては“イ ヤなライバル”であり、タイトル争いでも 最も意識する存在だった。とは言うもの の、この第2戦での優勝によって「流れを 引き戻せて良かった」と、野尻選手はシー
3戦連続ポール獲得の野尻選手 攻めの姿勢か守りの姿勢かの葛藤!? ここからの野尻選手は第3戦鈴鹿、第4 戦オートポリス、第5戦SUGOと、連続 でPPを獲得する速さを見せる。ところ が、決勝レースはまた別の展開が待ってい た。鈴鹿はウェットレースとなったが、PP スタートの野尻選手は最終盤までトップを キープ。しかし、後方から迫った松下信治 選手がファイナルラップの1コーナーで野 尻選手を捕らえて、スーパーフォーミュラ 初優勝を果たす。
序盤、2番手以下に大きな差を築いてい た野尻選手は、後半に入るとタイヤのグレ ーニングに苦しめられ、松下選手の追撃に 抵抗することができなかった。また、オー トポリスでの野尻選手はなかなか決勝ペー スを上げられず、結果的に4位フィニッシ ットアップを見直したことが結果に現れた。
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ュ。これに対して、スタート直後から数々 のオーバーテイクを見せ、その後もハイペ ースをキープしたのが、予選8番手だった 平川選手。タイヤ交換後、トップに立った 平川選手がここでシーズン2勝目を果たし た。さらにSUGOでは、珍しく野尻選手 がスタートでポジションダウン。予選2番 手につけていたフェネストラズ選手の先行 を許す。さらに、セーフティカー(SC)中 のタイヤ交換でも、野尻選手はひとつポジ ションダウン。大湯都史樹選手の先行を許 して3位でレースを終えた。
シーズン中盤戦、野尻選手の連続PP獲 得記録は大いに話題となっていたが、当の 野尻選手は記者会見で時折、「最近PPを 獲ると優勝できないんで」と少し冗談めか したようなコメントをしていた。実はこの 頃が、最も心のコントロールが難しい時期 だったと想像できる。ドライバーとしての 純粋な“勝ちたい”という欲と、タイトル 争いをする中で“ポイントを落とせない” という我慢。野尻選手の中で、その2つの 要素がせめぎ合っていたはずだ。
前半5戦を終えた段階で、ランキングト ップの野尻選手が81ポイント、2番手の平 川選手が64ポイント、3番手のフェネスト ラズ選手が57ポイント。1レースで最大 23ポイントを獲得できることを考えれば、 いくらポイントリーダーでもうかうかはし ていられない。常に気持ちを引き締めてい ることが大切だった。
開幕戦は平川亮選手と野尻選手のサイド・バイ・サイド の戦いに。一瞬の隙を突いてトップを奪取した平川選手 が2022シーズン初戦を手中に収めた。
13番手スタートの笹原右京選手が第6戦で劇的な勝利 を挙げる。スポットを含めて参戦4年目でスーパーフォー ミュラ初優勝となった。
簡単には勝たせてくれない ライバルたちの激しい猛追
7月の第6戦富士からはいよいよ後半 戦。このレースは後から考えれば、タイト ル争いの鍵となった1戦でもある。雨の中 での予選は計時方式となり、赤旗が度々提 示される展開に。セッションが進むにつれ て次第に雨脚も強まり、序盤のタイムでグ リッドが決する。ここで約1年ぶりのPP
第2戦富士
再び野尻選手と平川選手がトップ争いを繰り広げた第 2戦は、野尻選手に軍配が上がる。優勝も狙えた第1戦の 雪辱を晴らしての勝利となった。
第7戦もてぎ
第7戦は勝利から久しく遠ざかっていた山本尚貴選手 が、2年ぶりのトップチェッカーを受ける。雨脚に影響さ れるレースを制してポール・トゥ・ウィン。
を獲得したのは関口雄飛選手。PPの連続 記録は途切れたが、それでも野尻選手は3 番手のポジションを獲得する。これに対し てフェネストラズ選手は7番手、平川選手 は11番手に留まった。
決勝レースでは、スタート直後の多重ク ラッシュに見舞われた平川選手がリタイ ア。さらに序盤のバトルでは、フェネスト ラズ選手が後方から迫った山本尚貴選手に リアのクラッシャブルストラクチャーを引
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JAF全日本スーパーフォーミュラ選手権 2022年ドライバーチャンピオン
Victory Road 野尻智紀選手
「今の“野尻智紀”を超えていく、 それが闘う者として必要なもの」
第6戦富士 第1戦富士
第3戦鈴鹿
第3戦は予選がドライで決勝がウェットというコンディ ションながら、タイヤを限界まで使い切る走りを見せた 松下信治選手が制した。
第8戦もてぎ
TEAM IMPULのチームメイト同士による激しいトップ 争いが繰り広げられた第8戦。果敢に攻めた関口雄飛選 手が2019年以来の優勝を遂げる。
第4戦オートポリス
好スタートを決めて一気にポジションアップした平川 選手が、野尻選手を抑え込んで優勝を遂げた第4戦。 シーズン2勝目を挙げ、ランキング争いは混戦の様相に。
第9戦鈴鹿
第9戦はTEAM MUGENが1-2フィニッシュ。1位の笹原 選手はシーズン2勝目を飾るとともに、2位の野尻選手 がシリーズタイトルを確定させた。
っ掛けられて大クラッシュ。強力なライバ ルでもあった2人がノーポイントに終わっ たのに対して、野尻選手は荒れたレースの 中でも3位表彰台を獲得。大きな差をつけ て、2レース制で行われるもてぎ大会に臨 む。早ければ、ここでタイトル争いが決着 する可能性もあった。
2022 Driver Standings
ところがもてぎのレースウィーク、金曜 日に行われたフリー走行で野尻選手のタイ ムは伸びない。平川選手が3番手につけた のに対し、野尻選手は9番手。エンジン回 りのトラブルでアタックできなかったフェ ネストラズ選手も最下位に留まった。しか し翌日の予選では状況が一変。平川選手が
第5戦SUGO
第5戦はサッシャ・フェネストラズ選手が、スーパー フォーミュラデビュー3年目にして悲願の初優勝を果た す。近藤真彦監督と笑顔で表彰台に上がった。
第10戦鈴鹿
「優勝だけを狙って戦いたい」と最終戦をポール・トゥ・ ウィンで締めた野尻選手。シーズンエンドセレモニーで はライバルたちからの胴上げが行われた。
まさかのQ1敗退となったのに対し、フェ ネストラズ選手はフロントローを獲得。野 尻選手も4番手と挽回してきた。
決勝レースは雨となり、SCスタート。 雨の量が刻々と変わる中、約2年ぶりの優 勝を果たしたのは山本選手だった。フェネ ストラズ選手が2位、野尻選手はひとつポ ジションを上げて3位表彰台を獲得する。 平川選手は激しい追い上げを見せたが、バ イザーの中が水煙で曇るトラブルに見舞わ れコースオフ、リタイアとなった。これで フェネストラズ選手がランキングでも2番 手に浮上する。
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翌日の第8戦で平川選手は巻き返しを見 せた。予選ではフェネストラズ選手が2番 手、野尻選手が3番手。平川選手は6番手 に留まったが、決勝レースでは中盤に入っ たところでのタイヤ交換を選択したライバ ルたちに対し、平川選手は引っ張る作戦に 出る。そして、最後はチームメイトの関口 選手とテール・トゥ・ノーズの優勝争いを 演じて2位表彰台を獲得。野尻選手が4 位、フェネストラズ選手が6位となり、こ の大会でのタイトル決着とはならなかっ た。野尻選手は、このもてぎ大会が「メン タル的に最もキツかった」と言う。2日連続 で2レースを戦わなければならないという こともあるが、力を認めるライバルたち が、やはりそう簡単には勝たせてくれない と分かっていたからだ。
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Rank. No. Driver Rd.1 富士 Rd.2 富士 Rd.3 鈴鹿 Rd.4 AP Rd.5 SUGO Rd.6 富士 Rd.7 もてぎ Rd.8 もてぎ Rd.9 鈴鹿 Rd.10 鈴鹿 合計 1位 1号車 野尻智紀選手 15 23 18 11 14 12 11 9 18 23 154
位 4号車 サッシャ・フェネストラズ選手 11 0 9 15 22 0 17 7 0 8 89
位 20号車 平川亮選手 21 15 4 20 4 0 0 15 2 6 87
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位 37号車 宮田莉朋選手 6 13 0 8 5 8 3 0 8 13 64
位 5号車 牧野任祐選手 5 0 11 6 8 6 8 11 4 2 61 6位 15号車 笹原右京選手 3 2 0 4 1 20 4 3 20 0 57
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最終戦を残してタイトル確定! そして早くも思いは“3連覇”へ
そこから約2か月という長いインターバ ルを経て、10月末に迎えた2レース制の最 終大会鈴鹿。「ひりついた気持ちで現場に 入った」と言うものの、その第9戦で野尻 選手はライバルを突き放すシーズン5回目 のPPを獲得する。決勝では、ペースに勝 るチームメイトの笹原選手が優勝したが、 野尻選手はタイヤマネジメントをきっちり 行い2位フィニッシュ。その結果、2年連 続のタイトルが確定した。翌日に行われた 最終戦は、今まで抑えていた気持ちを一気 に解き放ったかのようにポール・トゥ・ウ ィンで締めくくる。その走りには誰も寄せ
つけないような王者の風格が漂っていた。
2023年は、これまでF2時代の中嶋悟 選手(現TCS NAKAJIMA RACING監督) しか達成したことがない3連覇に挑む野尻 選手。チャンピオン獲得会見では、単に喜 びを表現するのではなく、早くもそのこと を視野に入れていた。「これほどまでにい いシーズンを送ったあと、2022年の結果 が自分自身を苦しめることになると思いま すが、“それを超えられるような野尻智紀” にならないといけないという思いが強くあ ります。それがレーシングドライバーとし て、戦う選手として必要なものになってく ると思いますし、頑張って超えなきゃいけ ないなと。それができなかったら、3連覇 はないし、その先のドライバー人生もなく
なると思うので、2023年も必死に戦い続 けたいなと思います」。
迎える2023シーズンは、スーパーフォ ーミュラの空力パッケージが大きく変わる が、野尻選手はそこでも真っ先に最適解を 見つけてスタートダッシュを果たすのか。 それともライバルたちが野尻選手の行く手 を遮るのか。4月の開幕に向けて、戦いは すでに始まっている。
シリーズ12位で、計25ポイントを獲得した佐藤蓮選 手がルーキ・オブ・ザ・イヤーに選出される。第9戦 では3位表彰台を獲得する好走を見せた。
野尻選手が2年連続のシリーズチャンピオンを確定 させるとともに、笹原選手の活躍もあってTEAM MUGENがチームタイトルを確定させた。
スーパーフォーミュラ2連覇を達 成した野尻選手。次に見据える3連 覇の目標に向けてどんなレースを 見せてくれるのか、目が離せない。
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JAF全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権
ャンピオンを筆頭に、2021年の ランキング上位勢が卒業、2022
年の全日本スーパーフォーミュ ラ・ライツ選手権(SFL)は、ラインアップ に大幅な変化があった。富士スピードウェ イの第1大会に集まった13名のうち、マ スタークラスの3名はお馴染みながら、実 に7名がルーキーだったのだ。
第1大会の富士では、2021年はスーパ ーフォーミュラに軸足を置き、ライツには 最終大会のみの出場だった小高一斗選手 (TOM'S)が第2戦のポールポジション (PP)を獲得。その一方で、第1戦のPP はルーキーの川合孝汰選手(ルーニースポ
2022 POINT Standings
ーツ)だった。だが川合選手にとっては、 これがシーズン最初で最後のハイライトと なり、決勝ではスタート直後の接触で順位 を落とした後、リタイアとなる。代わって トップを奪った野中誠太選手(TOM'S)が 初優勝。2位にはルーキーの木村偉織選手 (B-MAX RACING TEAM)がつけ、3位は 平良響選手(TOM'S)。エンジン交換によ って5グリッド降格、7番手からスタート を切っていた小高選手は、4位にまで追い 上げていた。
第2戦は小高選手がポール・トゥ・ウィ ン。2020年第16戦以来の優勝で、2位は ルーキーの太田格之進選手(TODA RACI NG)で、3位が平良選手だった。第3戦の PPは第1戦を制した野中選手だったが、 スタートで出遅れ、平良選手が木村選手と 競い合いながらトップに浮上。そのまま逃 げ切って初優勝を飾っている。
小高一斗選手が頭角を現すも オートポリスではまさかの未勝利 鈴鹿サーキットでの第2大会では、小高
~栄光に向かって~
選手と太田選手が予選でPPを分け 合った。このふたりによって第4戦 は激しいトップ争いが繰り広げられ るも、小高選手が最後までトップを 守り抜いてシーズン2勝目をマー ク。3位は野中選手。ウェットコン ディションに転じた第5戦は逆の展 開となり、太田選手が小高選手を振 り切って初優勝を飾り、3位は古谷 悠河選手(TOM'S)となった。引き 続き雨に見舞われた第6戦では、PP の小高選手をスタートで太田選手が かわして連勝を目論むも、終盤にな って急接近を許す。そして最終ラッ プの逆転で、小高選手が3勝目を挙 げている。3位は2戦連続で古谷選 手が獲得した。
オートポリスに舞台を移した第3
大会では、太田選手が2戦ともにPPを獲 得。しかし、第7戦では2番手から木村選 手が好スタートを決めて先行し、そのまま 逃げ切って初優勝を飾っている。2位は太 田選手で、3位は野中選手。第8戦は太田 選手のポール・トゥ・ウィンで雪辱を果た している。2位は古谷選手、3位は野中選手 が獲得。第9戦はPPスタートとなった木 村選手が逃げ続けて2勝目をマーク。太田 選手が2位で、野中選手が3位となった。 オートポリスでは表彰台に一度も立てな かった小高選手だったが、続くスポーツラ ンドSUGOの第4大会では、第10戦こそ PPを太田選手に譲るも、第11戦ではPP を獲得。3度もセーフティカー(SC)が入っ た第10戦では、スタートで小高選手がト ップに立ち、平良選手を従えて4勝目をマ ークした。3位は平木玲次選手(HELM MO TORSPORTS)で、初表彰台。
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勢いに乗る小高選手は、続く第11戦、 第12戦もポール・トゥ・ウィンを達成。 自身初の連勝を獲得した。また第11戦の 2位は古谷選手、3位は太田選手で、第12
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Rank. No. Driver Rd.1 Rd.2 Rd.3 Rd.4 Rd.5 Rd.6 Rd.7 Rd.8 Rd.9 Rd.10 Rd.11 Rd.12 Rd.13 Rd.14 Rd.15 Rd.16 Rd.17 Rd.18 合計 有効 14戦 富士 鈴鹿 オートポリス SUGO もてぎ 岡山国際
位 37号車 小高一斗選手 4 11 0 11 7 10 1 1 1 11 11 10 11 3 7 5 10 3 117 114 2位 2号車 太田格之進選手 DNF 8 3 8 12 7 8 12 7 DNF 6 2 7 2 3 12 5 10 113 108 3位 1号車 木村偉織選手 7 1 7 2 2 1 11 0 11 DNF 2 1 6 DNF 11 7 9 8 86 85 4位 35号車 野中誠太選手 10 2 5 5 0 1 5 5 5 3 1 6 0 7 0 3 0 5 63 63 5位 38号車 平良響選手 5 5 11 0 3 2 3 DNF 2 7 3 7 0 10 0 1 1 2 62 62 6位 36号車 古谷悠河選手 0 0 0 3 5 5 0 7 0 2 7 3 3 2 5 0 2 1 45 45
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第1大会富士
第4大会SUGO
第4大会は、終わってみれば小高選手が3連勝 の快挙。これによってポイントランキングも 太田選手を逆転。また第12戦ではTOM'Sが トップ4までを独占した。
第2大会鈴鹿
苦い経験を活かした後半戦 気を引き締めたレースを展開 モビリティリゾートもてぎの第5大会で は、木村選手が第13戦、太田選手が第14 戦のPPを獲得。あまり調子が良くないと いう小高選手は2番手と7番手に甘んじて いた。しかし、ウエット路面の第13戦で は、小高選手が好スタートでトップに浮 上。太田選手と平良選手の激しいバトルを 尻目に逃げ切り、4連勝となった。第14戦 は再びドライコンディションに転じ、2番 手から平良選手が好発進。その後は後続か らのプレッシャーを受けることなく快走 し、2勝目をマーク。2位は野中選手、3位 は小高選手の猛追を抑え抜いたルーキーの 菅波冬悟選手(B-MAX RACING TEAM) だ。第15戦は3番手スタートの木村選手 が、1周目に小高選手と繰り広げた激しい 攻防の末にトップに立ち、そのまま逃げ切 って3勝目を挙げている。2位は小高選手、 3レースで3選手がウィナーとなった第1大会。 すべてTOM'S勢が優勝を果たし、平良響選手 が3戦連続表彰台を獲得。シリーズの混戦が予 想される展開となった。
第2大会は小高一斗選手と太田格之進選手と の戦いに。第4戦と第6戦を小高選手、第5戦を 太田選手が制し、シリーズランキングはこの ふたりが牽引していくこととなる。
第5大会もてぎ
小高選手、木村選手、平良選手がそれぞれ優勝 を遂げた波乱の第5大会。チャンピオン争いは 小高選手がポイントリーダーをキープして最 終大会に臨む。
戦は小高選手に平良選手と野中選手が続 き、TOM'S勢が2009年以来、実に13年 ぶりとなる表彰台の独占を果たした。
第3大会オートポリス
ホンダ育成ドライバーの活躍が目覚ましかっ た第3大会。木村偉織選手が2勝、太田選手が1 勝を挙げ、その太田選手がポイントランキン グ首位を奪った。
第6大会岡山国際
第6大会は1戦を残して第17戦で優勝した小 高選手がチャンピオンを確定させた。前大会 でのチーム部門とエンジンチューナー部門と 併せてTOM'S勢がタイトルを獲得。
「2022年、ターニングポイ ントとなったのは、第3大会 のオートポリスだったと思い ます。ここで1ポイントしか 獲れず、せっかく鈴鹿をいい 流れで終えたのに、オートポ リスで苦しい状況になったこ とで、他のサーキットでも同 じ状態になりかねないと感 じ、岡山大会は事前にしっか り準備しました」。
「僕には2022年、チャンピ オンを獲る以外の選択肢はな かったので、あのオートポリ ス大会を経験したことで、自 分の気が引き締まったかなと 思います。チャンピオンを獲 ったからには、どんな舞台で もしっかり結果を残せるドラ 3位は古谷選手。
小高選手が太田選手を一歩リードして臨 んだ岡山国際サーキットの最終大会。しか し、第16戦は太田選手に、第17戦は木 村選手にPPを明け渡し、小高選手は3番 手、2番手スタートとなる。第16戦では木 村選手が2番手から好スタートを切り、最 後まで太田選手と激しくトップを競い合う も、逆転を許さず4勝目を獲得。小高選手 は3位だった。しかし、第17戦では小高 選手がスタートでトップに浮上。木村選手 の猛追を凌いで8勝目を挙げ、太田選手が 3位に甘んじたことから、第18戦を前に チャンピオンが確定した。第18戦は太田 選手が4勝目を挙げ、木村選手、野中選 手、そして小高選手の順でゴールした。
イバーになりたいと思います」と小高選手。
なおジェントルマンドライバーが対象の マスタークラスは、第1戦こそ植田正幸選 手(ルーニースポーツ)が優勝したものの、 以降は今田信宏選手(B-MAX RACING TEAM)とDRAGON選手(B-MAX RACI NG TEAM)による、チームメイト同士の 一騎討ちとなっていた。10勝を挙げ、第 10戦では総合でも6位となった今田選手 の2連覇が確定したが、接触でふたり揃っ てレースを失うこともあった。そういった 後味の悪さを除けば、今田選手にとっては 2021年以上のシーズンであったはずだ。
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JAF全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権 2022年ドライバーチャンピオン 小高一斗選手
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「僕にはチャンピオン以外の 選択肢はなかった!」
スーパーフォーミュラ次世代車両 「SF23」がついに発進!
日本スーパーフォーミュラ選手 権を運営する日本レースプロモ ーションは「サステナブルなモー タースポーツ業界づくり」などをテーマとし て「SUPER FORMULA NEXT 50」プロジ ェクトを2021年10月から展開してきた。
このプランの中核を担っていた、カーボン ニュートラル対応などに向けた新型車両の 開発が一区切りして、このたび2023年か ら新型車両「SF23」がスーパーフォーミュラ に導入されることが発表された。
12月13日に東京都内で行われた発表会 では、これまで1万km以上を走破した開 発車両の白寅/赤寅が、新たなSF23とし て展示。同時に発表されたスーパーフォー ミュラの新たなデジタルプラットフォーム 「SFgo」の2023年1月中旬からのサービス 提供開始を踏まえて、2021年に先行開発に 協力したサポーターの皆さんも招待され、 質疑応答にも積極参加していた。
ゲストとして訪れた今季のチャンピオン 野尻智紀選手や開発ドライバーの石浦宏明 選手と塚越広大選手に加え、パートナー企 業として支えるHRCの渡辺康治代表やト ヨタ自動車GAZOO Racing Companyの 佐藤恒治プレジデント、そしてデロイトト ーマツの三木要氏も登場し、一年間の総括 と今後の展開などについて語った。
ダラーラ社製の車体をベースとするSF23
は、ボディにカーボン素材同等の剛性と重 量を担保したBcomp社製バイオコンポジ ット素材を採用し、天然由来の配合剤や再 生可能原料などを活用した横浜ゴムのカー ボンニュートラル対応レーシングタイヤを 装着する。カーボンニュートラル燃料につ いては2023年の導入を見送り、国内製造 を目指して試験を継続していくという。
接近戦が可能になる新たなエアロパッケ ージをまとったSF23でのバトルを、膨大 な情報とともに、場所を選ばず楽しめるよ うになる2023年のスーパーフォーミュラ は、年間7大会、全9戦で2023年4月8 〜9日に富士スピードウェイで開幕する。
麻由来の天然素材を使ったボディと、33%のリサイ クル素材と再生可能原料の採用を達成したレーシン グタイヤなどの採用で一新されたSF23。そして約 600名の開発サポーターが支えた「SFgo」も2023 年1月中旬から本格的にローンチすることになった。
スーパーGTもてぎで 次世代燃料テスト実施
11月のスーパーGT最終戦では、坂東正 明代表から今後の環境対応ロードマップ 「SUPER GT Green Project 2030」が公 表された。ここではシリーズ全体のカー ボンニュートラル化の推進と2030年ま でのCO2排出量半減を掲げており、2023 年におけるCNF(バイオマス由来の非化 石燃料)導入から、2024年以降には各種 燃費向上技術の開発向上を狙ったGT500新型車両の導入や、 2027年以降にはGT500車両へのHEVなど電動化技術の採用検 討、そして国産e-fuelの導入といった具体的な計画が明らかにさ れた。最終戦翌日にはカーボンニュートラル燃料を使った実走・ 比較テストも行われ、目標達成に向けた取り組みが始まっている。
日本から次世代を創造する! 国内モータースポーツの試行 PHOTO/遠藤樹弥[Tatsuya.ENDOU]、GTA、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS] REPORT:JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS] 全
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INFORMATION from JAF
モータースポーツ公示・JAFからのお知らせ(WEB)一覧(2022年10月1日~2022年12月22日)
公示
日付 公示No. タイトル
2022年11月07日 [2022-WEB077] こどもがゴーカート等の乗り物を運転する施設の安全点検について
2022年11月09日 [2022-WEB078]
2022年11月16日 [2022-WEB079]
2023年地方ジムカーナ/ダートトライアル選手権競技クラス区分申請締切日の特例措置について
2023年地方ラリー選手権競技クラス区分申請締切日及び2023年地方カート選手権カレンダー申請 締切日の特例措置について
2022年11月30日 [2022-WEB080] 2023年全日本ジムカーナ/ダートトライアル選手権統一規則第2条2)における参考タイヤ銘柄につ いて
2022年11月30日 [2022-WEB081] 2023年全日本レース選手権カレンダー
2022年11月30日 [2022-WEB082] 2023年日本ラリー選手権カレンダー
2022年11月30日 [2022-WEB083] 2023年地方ジムカーナ/ダートトライアル/サーキットトライアル選手権カレンダー 2022年12月02日 [2022-WEB084] 2023年ジュニアカート選手権コースシリーズ登録申請の再募集について
2022年12月02日 [2022-WEB085] 2022年JAF地方選手権表彰式 開催一覧表(開催日順)
2022年12月07日 [2022-WEB086] JAFスポーツ資格登録規定の一部改正について 2022年12月07日 [2022-WEB087] 2023年全日本/ジュニアカート選手権カレンダー 2022年12月12日 [2022-WEB088] 2023年地方レース選手権カレンダー 2022年12月19日 [2022-WEB089] JAFスポーツ資格登録既定の取扱いについて
JAFからのお知らせ
日付 タイトル
2022年10月03日 モータースポーツ公示・JAFからのお知らせ一覧(2022年9月1日~9月30日) 2022年10月07日 2022年JAFモータースポーツ表彰式について
2022年10月25日 健康管理カードおよび健康自認書について
2022年10月25日 メディカルフォーム/メディカルサーティフィケイトについて 2022年10月31日 「2021年」→「2022年」へのライセンス更新手続き期限は2022年12月31日です
2022年11月01日 モータースポーツ公示・JAFからのお知らせ一覧(2022年10月1日~10月31日) 2022年11月10日 世界ラリー選手権(WRC)にJAFの体験型ブースを出展します! 2022年11月16日 JAFモータースポーツジャパン2022(11月16日更新)
2022年12月01日 モータースポーツ公示・JAFからのお知らせ一覧(2022年11月1日~11月30日)
2022年12月02日 「ゴーカート等の乗り物体験等を含むイベントに係る当面の安全対策(推奨事項)」について 2022年12月12日 「JAFモータースポーツジャパン2022」にご来場いただいた皆様向けアンケートの実施 2022年12月21日 メディカルカード(メディカルサーティフィケイト)申請について
※上記公示・お知らせ(WEB)一覧の詳細は、JAFモータースポーツサイト(https://motorsports.jaf.or.jp/)内の「>公示・JAFからのお知らせ」で閲覧することができます。
2022 JAF MOTOR SPORTS AWARD 好評配信中!
3年ぶりに従来の形式での開催となった2022年JAFモータース ポーツ表彰式の模様が、JAFモータースポーツサイトで公開中。各 カテゴリーのチャンピオンを始め、上位入賞した表彰対象者たちを称 える式典の一部始終を、余すところなく視聴できる。賞典を受け取っ た選手たちの、喜びの表情をお見逃しなく! 2021年以前の表彰式 の映像もアーカイブされているので、こちらも要チェック! https://motorsports.jaf.or.jp/results/award/2022
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JAFモータースポーツサイト
アナタに合った楽しみ方が、きっと見つかる!
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モータースポーツを やってる人もやりたい人も 楽しみ方が見つかる コンテンツ盛りだくさん!
JAFモータースポーツサイトには、モータースポー ツのあらゆる楽しみ方や関わり方を紹介したペー ジを多数ご用意しています。競技ライセンス所持 者の皆さんに向けた「公示・JAFからのお知ら せ」や「競技会スケジュール」、「国内競技結果 (リザルト)検索」の他、これからモータースポーツ を始めたい方々には「モータースポーツとは?」や 「選べるコンテンツ〜あなたに合った楽しみ方を 紹介〜」、「お手軽参戦オートテスト」などをご用 意。ぜひ一度、ご覧ください!
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「ドライバー・オブ・ザ・イヤー2022」は誰の手に!? ドライバー・オブ・ザ・イヤー
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\前回は佐藤琢磨選手/
最新情報をメルマガで配信中 「ドライバー・オブ・ザ・イヤー」は、その年にもっとも輝いたモータースポーツ競技運転 者(ドライバー)を投票で決める、2021年から始まったJAFの新たなアワードです。2022 年は、2022年10月から始まった一次投票によりすべての対象者から得票数上位の5名に 絞り、11月からの二次投票によりドライバー・オブ・ザ・イヤー2022が決定します。
JAF会員の皆さまにおトクな優待情報やイベン ト・講習会情報をはじめ、お住まいの地域に合っ た最新情報を、JAFのメールマガジンで定期的に 配信しています。また、競技ライセンス所持者の 皆さまには、モータースポーツに関わる旬な情報 を随時お送りしています。メールマガジンのご 登録は「JAFマイページ」から!
のススメ
第2回 JAFマイページ 検索
獲得の軌跡
FIAインターナショナルシリーズ スーパーGT
PHOTO/石原康[Yasushi.ISHIHARA]、宇留野潤[Jun.URUNO]、遠藤樹弥[Tatsuya.ENDOU]、森山良雄[Yoshio.MORIYAMA]、吉見幸夫[Yukio.YOSHIMI]、 JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS] REPORT/はた☆なおゆき[Naoyuki.HATA]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]
ロナ禍の影響は若干の鎮静があ ったとはいえ、完全な収束には 至らず、2022年のスーパーGT も海外ラウンドが行われなかった。それで も国内サーキットで全8戦が開催され、開幕 戦からピットウォークが再開、シーズン途中 からパドックも解放されるなど、徐々に日常 を取り戻しつつある。残念ながら2023年も 海外ラウンドは開催されないものの、早期に 復活することを心から望みたい。
2022年のGT500クラス最大の話題は、 日産陣営がGT-RからフェアレディZに車 両を変更したことだろう。サーキットごと に得手不得手が分かれたGT-Rよりも、空 力的に洗練されたZになったことで苦手と するサーキットが少なくなりそうに見えた。
第3戦まではイーブンの戦い
3メーカーが優勝を分け合う
岡山国際サーキットで行われた開幕戦 は、ENEOS X PRIME GR Supraがポー ルポジション(PP)を奪い、2番手もDEN SO KOBELCO SARD GR Supraが獲得 してトヨタ勢が好調。決勝でもENEOS X PRIME GR Supraの大嶋和也選手が好発
進を見せ、後続を引き離していく。そんな 状況は山下健太選手に交代しても変わらな かった。
ところが、残り5周というところで目前 を走っていた車両がスピンし、山下選手は 避けきれず接触。これでSTANLEY NSXGTの山本尚貴選手が急接近、場内が震撼 する一幕もあったが、その後の山下選手は 何事もなかったかのようにペースアップし て逃げ切りに成功。開幕戦に強いTGR TEAM ENEOS ROOKIEの真髄を見せつ けた。3位はMOTUL AUTECH Zが獲得 し、表彰台は3メーカーで分け合った。
富士スピードウェイでの第2戦は初の 450kmレースとして開催され、2回のピッ トストップこそ義務づけられたが、伴わな ければならないのは給油だけで、ドライバ ー交代やタイヤ交換などは自由とされた。
PPを獲得したのはWedsSport ADVAN GR Supraだった。2022年の予選はヨコハ マ勢が強く、3戦連続、計4回もWedsSpo rt ADVAN GR SupraがPPを奪い、第7 戦ではリアライズコーポレーションADV AN Zも獲得し、8戦中5回と速さを示した。 しかし、第2戦富士の決勝ではWedsSport
ADVAN GR Supraの阪口晴南選手は1周と してトップを守れず、4番手スタートのKeeP er TOM'Sスープラを駆るサッシャ・フェネ ストラズ選手がトップに代わる。2周目には au TOM'S GR Supraの坪井翔選手も2番 手に浮上。それぞれ宮田莉朋選手、ジュリア ーノ・アレジ選手に交代しても、好調に周回 を重ねていく。
だが、GT500クラス全車が最初のピッ トストップを終えた直後、GT300クラス で大クラッシュが発生して即座に赤旗が提 示される。レース再開後に宮田選手とアレ ジ選手が接触し、その隙にDENSO KOB ELCO SARD GR Supraの関口雄飛選手 がトップを奪い取る。そして関口選手を逃 さなかったのが、CRAFTSPORTS MOT UL Zの高星明誠選手だった。
ホームストレートでスリップストリーム を使って抜きにかかるが、そこにはスロー 走行していたGT300車両が……。関口選 手は難なく避けたが、視界を遮られていた 高星選手は回避が遅れ、コントロールを失 ってスタンド側のガードレールに激突。幸 い高星選手に怪我はなかったものの、また も赤旗が出されてしまう。
VictoryRoad Victory
Part.2 ~栄光に向かって~
Road
2022年チャンピオン
コ 37
新型Z が投入された2022年のGT500クラス、
カルソニックIMPUL Zがタイトルを奪取!
しかし、ピンチの後にチャンスありとは、 まさに鈴鹿サーキットでの第3戦を指すの だろう。ほぼイチからつくり直した格好と なったCRAFTSPORTS MOTUL Zが予 選3番手を獲得する。千代勝正選手が1周 のうちにトップに立ってリードを広げ続け、 またピットの素早い作業もあって、交代し た高星選手も同様に逃げて優勝。まさに完 全復活であり、Zの初優勝ともなった。
一時は平峰選手の接近を許していた宮田 選手だったが、最後はしっかり振り切っ て、フェネストラズ選手とともにKeePer ガードレール修復の間に最大延長時間が 迫り、再開されるもセーフティカー(SC) 先導のままチェッカー。しかもDENSO KOBELCO SARD GR Supraには赤旗中 の作業違反があり、またKeePer TOM'S GR Supraには接触によるペナルティが課 せられ、野尻智紀/福住仁嶺組のARTA NSX-GTが繰り上がり優勝。レース距離の 75%を満たしていないため、ハーフポイン トという荒れたレースでもあった。
最後尾スタートから怒涛の追い上げで カルソニックIMPUL Zが大逆転勝利!!
“100LAPレース”と銘打たれた第4戦 富士では、KeePer TOM'S GR Supraが 初優勝。予選3番手からフェネストラズ選 手が4周目に2番手へ上がり、リアライズ コーポレーションADVAN Zの平手晃平 選手を追うことに。その状況はそれぞれ 佐々木大樹選手、宮田選手に代わっても変 わらなかったが、続くピットで変化が生じ る。ともにWスティントを敢行すると、 ロスを最小限としたKeePer TOM'S GR Supraが前に出ることに成功。リアライズ コーポレーションADVAN Zは、カルソ ニックIMPUL Zの平峰一貴選手の先行も 許していた。
TOM'S GR SupraはGT500クラス最年少 コンビの優勝という金字塔を打ち立てた。
再び450kmレースとなった第5戦鈴鹿 では、MOTUL AUTECH ZがPPを獲得。 しかし、決勝で主役の座を射止めたのは松 田次生/ロニー・クインタレッリ組ではな く、予選で不調を抱えて最後尾スタートと なったカルソニックIMPUL Zの平峰/ベ ルトラン・バゲット組だった。
それまでもバゲット選手がじわりと順位 を上げていたが、終盤に発生したGT300 クラスのクラッシュに素早く反応、SC導入 直前にピットに入れたことが福音をもたら した。これで4番手に浮上した平峰選手は、 重ね続けたオーバーテイクの末にラスト2 周でトップに浮上。大逆転優勝を飾った。 スポーツランドSUGOの第6戦では、再 びWedsSport ADVAN GR SupraがPP を獲得するも、決勝では結果に結びつか ず。降ったり止んだりを繰り返した雨に対 し、威力を発揮したのはミシュラン&日産 勢で、MOTUL AUTECH Zのクインタレ ッリ選手がトップに立つと、やがてCRA FTSPORTS MOTUL Zの平手選手も続 く。さらに弱まっていく雨に対し、高星選 手への交代も絶妙のタイミングだったCR AFTSPORTS MOTUL Zがトップに躍り 出て、築き上げた大量のリードを守り抜い て2勝目をマークする。
そして迎えたオートポリスの第7戦、ポ イントリーダーとして臨んだCRAFTSPO RTS MOTUL Zの千代/高星組ではあっ
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たが、半減とはいえ依然として厳しいサク セスウェイトゆえ、予選では13番手に留 まる。代わって主役の座を射止めたのは、 Astemo NSX-GTの塚越広大/松下信治 組だった。
公式練習でクラッシュを喫し、修復でき たとはいえボンネットはカーボン地むき出 し。それでも予選は4番手から松下選手が 徐々に順位を上げ、またピットタイミング に恵まれたことと素早い作業で交代した塚 越選手がトップに躍り出る。タイヤの負担 が大きいコースとあって、ライバルの多く がコース上に留まるのが精いっぱいの中、 危なげない走りを見せたAstemo NSXGTが優勝。STANLEY NSX-GTが2位で、 ホンダ勢は1-2フィニッシュも達成した。 なお、このレースでCRAFTSPORTS
MOTUL Zが7位、カルソニックIMPUL Zが6位になったことで、両者は2.5ポイ ント差にまで肉薄。さらに1.5ポイント差 でAstemo NSX-GTが続き、可能性とし ては6チームにタイトル獲得の権利が残っ た。とはいえ、事実上の三つ巴としてGT 500クラスでは全車ノーハンデとなる最 終戦のモビリティリゾートもてぎに臨むこ ととなった。
2022 GT500 Driver Ranking
Rank.
接戦で迎えた最終戦もてぎ、 27年ぶりの戴冠はTEAM IMPUL もてぎの予選ではSTANLEY NSX-GTが WedsSport ADVAN GR Supraの年間最 多PP記録の更新を拒み、カルソニックIMP UL ZとCRAFTSPORTS MOTUL Zがそ の2台の後ろに。対してAstemo NSX-GT は10番手と、タイトル争いは一騎討ちとな った感があった。
レースはSTANLEY NSX-GTの完全勝 利。牧野選手〜山本選手の完璧なリレーに よって、開幕前に逝去した高橋国光監督に ポール・トゥ・ウィンという結果を捧げる。 そしてタイトルの行方は……CRAFTSPO RTS MOTUL Zにとって致命傷となった のは序盤の接触。千代選手は順位を落とさ ずに済んだが、これが危険行為との判定で ドライビングスルーペナルティを課せられ たのだ。
CRAFTSPORTS MOTUL Zは12番手 まで退きながらも諦めずに追い上げて4番 手まで順位を戻したものの、カルソニック IMPUL Zが盤石の走りで2位フィニッシ ュ。日産フェアレディZがデビューイヤー でチャンピオンに輝くとともに、平峰選手
1位 12号車 平峰一貴選手/ベルトラン・バゲット選手 CALSONIC IMPUL Z
2位 3号車 千代勝正選手/高星明誠選手 CRAFTSPORTS MOTUL Z
3位 100号車 山本尚貴選手/牧野任祐選手 STANLEY NSX-GT
4位 17号車 塚越広大選手/松下信治選手 Astemo NSX-GT
5位 14号車 大嶋和也選手/山下健太選手 ENEOS X PRIME GR Supra
6位 37号車 サッシャ・フェネストラズ選手/宮田莉朋選手 KeePer TOM'S GR Supra
今季、優勝2回を唯一果たした千代勝正/高星明誠 組がシリーズ2位。第2戦富士では大クラッシュを喫 したが、第3戦鈴鹿までに修復され、見事な復活勝利 を遂げた。 シリーズ3位は、最終戦でポール・トゥ・ウィンを達 成し、有終の美を飾った山本尚貴/牧野任祐組。 2020チャンピオンのふたりの、これからの快進撃に 期待したい。
Victory Road
~栄光に向かって~
とバゲット選手が初戴冠。TEAM IMPUL としても1995年以来、27年ぶりのチーム タイトル確定となった。
平峰選手は「チャンピオンを獲ることが できて本当にうれしく思います。何年も前 に挫折した時期もあったんですけど、そこ から這い上がってくるまで支えてくれたい ろんな人たちの顔が浮かんで、チェッカー を受けたら勝手に涙が出て……。本当に感 謝感謝です。僕を使ってくれている日産、 NISMO、そして星野(一義)監督に心から 感謝しています」とコメント。
バゲット選手は「タイトルを手にするこ とができて本当にうれしいし、感謝の気持 ちでいっぱいです。スーパーGT参戦9年 目にして、ついに成し遂げたタイトルとな りました。すべてチーム、ブリヂストンタ イヤ、日産、NISMO、そしてチームメイ トのおかげです。夢のようなシーズンを過 ごすことができました。今日はタフなレー スを戦い、チャンピオンになりました。ス ーパースーパーハッピーです」と喜びをあ らわにした。
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GT500クラス 2022年ドライバーチャンピオン 平峰一貴選手/ベルトラン・バゲット選手
No. Driver Machine
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サクセスウェイトがのしかかるも 藤波/オリベイラ組が首位を堅守 GT300クラスは、リアライズ日産メカ ニックチャレンジGT-Rをドライブする藤 波清斗/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイ ラ組の勝利から幕を開けた。PPこそSUB ARU BRZ R&D SPORTの井口卓人/山 内英輝組に譲り、5番手スタートだったが、 藤波選手が序盤のうちに2番手に上がり、 井口選手をパスしてトップに浮上。後半は 藤波選手の築いたリードをオリベイラ選手 がさらに広げる完璧な勝利だった。
しかしリアライズ日産メカニックチャレ ンジGT-Rは、この後2勝目を挙げること はできなかった。GT500クラスの2倍のサ クセスウェイトとは異なり、GT300クラ スは獲得ポイントの3倍を積まなくてはな
第2戦の富士でもPPはSUBARU BRZ R&D SPORTが獲得。しかし、スタート 直後にTANAX GAINER GT-Rの富田竜 一郎選手にトップを奪われてしまう。第2 スティントを富田選手から託されたのは大 草りき選手。ルーキーらしからぬ安定した 走りでトップを守り続けていた。しかしこ のレースはGT500クラスでも触れたとお り、二度の赤旗中断により規定の周回を満 たせぬまま終了。一方、リアライズ日産メ カニックチャレンジGT-Rは60kgのサク セスウェィトが効いて、予選こそ14番手 だったが7位でゴールしている。
鈴鹿での第3戦はStudie BMW M4の ~栄光に向かって~
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第4戦富士ではLEON PYRAMID AMG の蒲生尚弥/篠原拓朗組がPPを獲得。決 勝でも蒲生選手がトップを快走、100周レ
2連覇を狙った2022シーズン、第4戦で優勝するもハン ディキャップやトラブルに苦しんだレースが多く、最終 的に2位でシリーズを終えた井口卓人/山内英輝組。
富田竜一郎選手とペアを組む大草りき選手がルーキー ながらシリーズ3位。第2戦富士の優勝や、幻のポールと なった第3戦鈴鹿など、大きな印象を残したひとりだ。 らず、相当な足枷となったからだ。
ハンデを背負ってなお堅実な走り ポイントを積み重ねタイトル獲得 藤波/オリベイラ組の56号車は、続く第 5戦鈴鹿からはついに上限の100kgに達し てなお、予選では4番手につけたのだから 恐るべし。PPはルーキーの大草選手の力走 によってTANAX GAINER GT-Rが獲得。 決勝でも大草選手はしばらくの間トップを 保ち続けた。しかし、そこに襲い掛かった のがHACHI-ICHI GR Supra GTの三宅 淳詞選手で、トップに立った後はリードを 荒聖治/近藤翼組がPPからスタート。決 勝でも荒選手が逃げ、交代した近藤選手が さらに差を広げてポール・トゥ・ウィンを 達成、チームにスーパーGTでの初勝利を 献上した。2位はマッハ車検エアバスター MC86マッハ号を駆る若手コンビの冨林 勇佑/平木玲次組が、タイヤ無交換作戦を 完遂して獲得。そしてリアライズ日産メカ ニックチャレンジGT-Rのふたりは66kg を積んでなお、3位で表彰台に立っている。
TANAX GAINER GT-R
ースとあって早めのピットを敢行するも、 ホイールナットが締まらぬトラブルでリタ イアを喫してしまう。代わってトップに立 ったのはグッドスマイル初音ミクAMG で、片岡龍也選手〜谷口信輝選手のリレー も完璧で、レースの大半を支配した。
しかし、終盤に入って4号車にタイヤト ラブルが発生。ピットにはたどり着けたも のの勝負権を失う。そしてトップに躍り出 たのはGAINER TANAX GT-Rの安田裕 信選手で、徐々に迫ってきたのがSUBA RU BRZ R&D SPORTの山内選手。激し いバトルを繰り広げ、ラスト6周でSUBA RU BRZ R&D SPORTが逆転して優勝を 飾った。そしてリアライズ日産メカニック チャレンジGT-Rは99kgの重さを跳ね除 けて6位に入っている。
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2022 GT300 Driver Ranking Rank. No. Driver Machine 1位 56号車 藤波清斗選手/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手 リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R 2位 61号車 井口卓人選手/山内英輝選手 SUBARU BRZ R&D SPORT 3位 10号車 大草りき選手 TANAX GAINER GT-R 4位 52号車 川合孝汰選手 埼玉トヨペットGB GR Supra GT
52
埼玉トヨペットGB GR Supra GT
5位
号車 吉田広樹選手
6位 10号車 富田竜一郎選手
藤波清斗選手/ ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手
GT300クラス2022年ドライバーチャンピオン
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広げ続けていく。交代した佐藤公哉選手は Wスティントを担当。ピットタイミング の違いから順位を下げるも、トップ返り咲 きも間近といったところでクラッシュして しまう。
そして、気がつけばトップに立っていた のがグッドスマイル初音ミクAMGで、実 に5年ぶりの勝利となった。一方、リアラ イズ日産メカニックチャレンジGT-Rは二 度のペナルティを受けたため、シングルフ ィニッシュは果たしたものの13位に降格 し、ポイント獲得ならず。
SUGOを得意とするSUBARU BRZ R&D SPORTがPPを獲得した第6戦。不 安定な天候の中、タイヤチョイスがぴたり とハマったmuta Racing GR86 GTの加 藤寛規/堤優威組が、予選13番手からの 大逆転優勝を果たし、GR86が初優勝。そ してリアライズ日産メカニックチャレンジ GT-Rは4位入賞。着実に王座奪還に向け て前進を果たしていた。
第7戦オートポリスでは、SUBARU BRZ R&D SPORTが3回目のPPを獲得。しか し、予選2番手の埼玉トヨペットGB GR Supra GTが決勝でも離れず続き、川合孝 汰選手が井口選手を徐々に追い詰めてい く。序盤の10周で逆転を果たし、後半ス ティントを託された吉田広樹選手も逃げ切 って優勝を飾った。リアライズ日産メカニ ックチャレンジGT-Rはウェィト半減とは いえ、69kg積んでまたも5位に。だがSU BARU BRZ R&D SPORTも2位とあっ て、差は2.5ポイントにまで詰まっていた。 そして最終戦のもてぎでは、SUBARU
GT300クラスはリアライズ日産メカニック チャレンジGT-Rが2年ぶりのチャンピオンに
BRZ R&D SPORTの山内選手が予選Q2 でクラッシュする大波乱が。これで形勢は 一気にリアライズ日産メカニックGT-Rが 有利になったと思われた。実際、予選6番 手から藤波選手は淡々と周回を重ね、4番 手でオリベイラ選手と交代。もはや無理を する必要がなかったはずが、突然のホイー ル脱落により窮地に陥る羽目に。TANAX GAINER GT-Rの大逆転もあり得たが、 同じヨコハマタイヤユーザーの援護もあっ て、19位フィニッシュの56号車が2年ぶ りの王座奪還を果たすこととなった。レー スはARTA NSX GT3をドライブする武 藤英紀/木村偉織組がポール・トゥ・ウィ ン。不運続きだったシーズンを、55号車の ふたりは笑顔で終えていた。
「3年目にしてチームも熟成されて、ヨコ ハマさんがすごくいいタイヤを持ち込んで くれたのが大きかったと思いますね。ロン
グは絶対的に強かったです。セットアップ も本当にもうこれ以上ないくらいエンジニ アさんも振り絞ってやってくれて。本当に うれしいですし、自分のレース人生におい て2回も獲れているというのはすごく大き いし、記録にも残るので。本当にいいシー ズンでした」と藤波選手は振り返る。
またオリベイラ選手は「最終戦はあまり にもいろんなことが起こりすぎて、まるで ジェットコースターに乗っているような感 じでした。残り20周ぐらいからチームと は無線でコンタクトを取っていなかったの で、実はチャンピオンになったと知ったの はチェッカーを受けた後。最終ラップの展 開はラッキー。でも、それがスーパーGT なんですよ。とても最高のシーズンでし た。最初のレースで勝てて、それからも安 定してポイントを獲得できたので、完璧な シーズンだったと思います」と語った。
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JAF全日本カート選手権
OK部門/FS-125部門/FP-3部門/EV部門
PHOTO/宇留野潤[Jun URUNO]、長谷川拓司[Takuji HASEGAWA]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS] REPORT/水谷一夫[Kazuo MIZUTANI]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]
ビリティリゾートもてぎ北ショ ートコースで行われた全日本カ ート選手権開幕の第1戦/第2 戦。17歳のルーキー・小田優選手はいきな
第1大会もてぎ北
りタイムトライアルでトップを獲ったかと 思うと、そこから2レース続けて勝利を飾 って見せた。小田選手の開幕2連勝は、青 天の霹靂のような出来事だった。なにしろ、 ひとつ下のFS-125部門に参戦していた 2018 〜 2020年の3年間では優勝回数ゼ ロ。2021年に至ってはカートレースに出て
すらいなかったのだから。
「限定Aライセンスを取るために全日本カ ート選手権に参戦していたんですが、3年間 FS-125部門をやって(ライセンスの取得要 件となる)シリーズ6位以内に入ることもで きなくて、3年やってダメなら4年やっても 変わらないだろうと思って、2021年はフォ
SUGO西大会では絶対王者・佐々木大樹選手が第3戦で 久々の勝利を挙げる。一方、第4戦は昨年のFS-125部門 チャンピオンの堂園鷲選手が待望の初勝利をつかんだ。
茂原東大会では若手選手が奮闘した。金子修選手と佐野雄 城選手がともに初勝利を挙げ、ランキング首位の小田選手 を追いかける。佐野選手は5度目の表彰台獲得となった。 開幕戦となるもてぎ北大会は、鮮烈なデビューウィンを 果たした小田優選手の2連勝。これまでFS-125部門でも 優勝経験がなかった小田選手の実力が、一気に開花した。
第5戦で早くもシリーズ3勝目を挙げた小田選手がポイント リーダーの座を固めた御殿場大会。そして第6戦では熊谷憲太 選手がデビューウィン、またルーキー勢が表彰台独占の快挙。
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2022年全日本カート選手権OK部門ポイントランキング Rank. No. Driver Rd.1 Rd.2 Rd.3 Rd.4 Rd.5 Rd.6 Rd.7 Rd.8 Rd.9 Rd.10 合計 有効 8戦 もてぎ北 SUGO西 御殿場 茂原東 鈴鹿南 1位 25号車 小田優選手 34 33 10 30 31 16 24 20 29 6 233 217 2位 11号車 佐野雄城選手 23 25 28 15 29 19 19 33 18 0 209 194 3位 22号車 金子修選手 16 14 21 17 28 14 35 27 11 0 183 172 4位 29号車 三村壮太郎選手 32 7 17 29 0 19 28 8 28 0 168 168 5位 34号車 清水啓伸選手 17 18 25 28 16 5 22 16 22 4 173 164 6位 51号車 堂園鷲選手 25 22 28 29 7 27 6 10 154 154 「ひとつ勝つと次につながる走りが生まれる 一度勝利する意味はとても大きいです」 第2大会SUGO西
第3大会御殿場 第4大会茂原東 42
2022年チャンピオン
ーミュラの練習に専念することにしました。 そうしたら2022年の初めにチーム(Drago CORSE)から誘っていただいて、OK部門に 出られることになりました。2年もカートレー スに出ていないと名前を忘れられちゃうかも しれないから、この年はもともとOK部門に 出ようと思っていたんです」と参戦の経緯を 語る小田選手。
「OKのマシンに乗り始めた頃は全然スペ シャルタイヤの性能を使い切れなくて、チ ームから突っ込みが足りないって一日中言 われて、ようやく帳尻が合ったのが開幕戦 の前のテストでした。もてぎ北では自分に 速さがあるのは分かっていたけれど、タイ ムトライアルでトップを獲った時は自分で も『マジか!?』と思って、そこから一気に緊 張しました。2連勝したときは自分もチーム の人たちもびっくりでしたね。今振り返る
第5大会鈴鹿南
チャンピオン候補5名で臨む鈴鹿南大会。第9戦では小田 選手の優勝で3名の可能性が消え、第10戦では予選でラ イバルのリタイアにより、決勝前にタイトルが確定した。
と、なんであんな冷静に走れていたんだろ うって不思議に思います」。
その後の大会も小田選手はトップグルー プに加わり続け、開幕2連勝がフロックで はなかったことを自分の力で示し、ポイン トランキングの首位を走り続けた。
「SUGO西大会の前のタイヤテストでもい いタイムを残せて、そこからは自分の速さに あまり疑いを持たなくなりました。それに、 自分の走りはタイヤに優しいっていうことも あって、決勝の途中でタイヤがなくなること はないだろうなと思ったんです。今考える と、FS-125部門で勝てなかった理由はそこ
かなと思います。FS-125部門ってタイヤが なくなることはまずないんで、(そこでは走 りがタイヤに優しすぎて)タイヤの性能を 100%しっかり引き出せていなかったんでし ょうね」。
迎えたシリーズ最後の鈴鹿南大会。小田 選手は第9戦で4勝目を挙げ、残る第10戦 を待たずしてチャンピオンを確定させた。 「本当にうれしかったですね。このチーム で走れて良かったなと思いました。どこよ りも速いエンジンを用意してくれたこのチ ームじゃなかったら、チャンピオンは獲れ なかったでしょうから。これまでチャンピ オンはローカルレースの1回だけで、シリ ーズ2位ばかりで悔しい思いをしていたの で、ずっとチャンピオンを獲りたいと思っ ていたんです。やっぱり一度勝つと、次の 勝ちにつながる走りがまた生まれてくるし、 波にも乗れるので、ひとつ勝つことの意味 は大きいですね」。
2023年はカートを卒業し、全日本カー ト選手権に出始めた頃からの目標である四 輪レースを目指して新たな一歩を踏み出す。 「まだ確定ではないんですが、ホンダ・レ ーシング・スクール・鈴鹿(Formulaクラ ス)に通って、スカラシップを獲って、2024 年から四輪レースに参戦したいと思ってい ます。まず速いドライバーになりたいし、 安定していい成績を残せる選手になりたい です。もちろん目指すのはF1ですし、世界 で活躍できる選手になりたい。そのために もHRS鈴鹿のスカラシップを獲得して自分 の道を拓きたいと思っています」。
VictoryRoad
OK部門
小田優選手
Victory Road
~栄光に向かって~
43
「前に出たらゾーンに入る、 ちょっと自信があります」
FS-125部門2022年チャンピオン
百瀬翔選手
-125部門にデビューした2021 年の百瀬翔選手は、6位が最上 位。2022年のシリーズ開幕前に はこれまでの実績から西地域の優勝候補の 筆頭に挙げられたが、琵琶湖スポーツラン ドでの第1戦では4位に留まった。
「2021年はFS-125部門のマシンのパッケ ージが自分にとって初めてのもので、キャ ブレターの調整やタイヤの扱い方にだいぶ 苦戦しました。そういうことを一年間学ん で、2022年はそれを活かす年だと思ってい ました。でも琵琶湖では、周りから勝てる って言われていたのに4位に終わってすご く悔しかったです。この年こそ限定Aライ センスを取らないとダメだったので、焦り もけっこうありました」。
だが、ここから百瀬選手は周囲の期待を 上回る活躍を始める。第2戦でポールから 初優勝を飾ると、破竹の勢いで4戦続けて ポール・トゥ・ウィンを遂げて見せたのだ。 「第2戦の初優勝はもちろんうれしかった けれど、勝っても自分にはまだ学ばなけれ ばいけないことがたくさんあるんだと思い 知らされたようなレースでした。それ以降 もチャンピオンがかかっていることが自分 の中の大きな壁になっていたし、けっこう 不安を感じながらのレースでした。形とし てはまとまった手応えはなかったですね」。
傍目には計り知れない不安を抱えながら、 ポイントレースを圧倒的にリードしていた 百瀬選手。迎えた東西統一競技会では、予 選でもうひとりのチャンピオン候補が5番 手に留まり、決勝を待たずして百瀬選手の チャンピオンが確定した。
「予選が終わった後の場内実況で自分のチ
ャンピオン確定を知ったんですが、そんな に喜べるような感じはなかったですね。予 選のチェッカーが8位でぜんぜんダメなレ ースだったので、これで全日本のチャンピ オンだと言っていいのかっていう逆のプレ ッシャーみたいなものもありました」。
そして百瀬選手は、雨の決勝を8位で終 えた。悔しさの残るシリーズの締めくくり ではあったが、それでも西地域のレースで 見せた独走劇は見事なものだった。その揺 るぎない走りの裏には、ある秘策があった。 「前に誰もいないと集中しづらかったりもす るんですけれど、もっと前に行きたいって いう思いを心の中で唱えながら、前をどん どん追っていくような感じで後ろを離してい くようにしていました。あと、自分の心の中 でアンパンマンのテーマソングのようなテ ンポの遅い曲を流しながら走ると、けっこう 落ち着いて走れて集中力を保てました。前 に出たらけっこうゾーンに入りやすいのは、 ちょっと自信があるところですね」。
2023年、百瀬選手は小さい頃からの目 標に向かってカートから次のステップへと 進むこととなる。
「四輪レースにステップアップするために スーパーFJなどの練習をしながら、ホン ダ・レーシング・スクール・鈴鹿でスカラ シップを目指す予定です。将来はたくさん の人に応援してもらえる、世界一のドライ バーになりたいです」。
2022年全日本カート選手権FS-125部門ポイントランキング
Rank. 地域 No. Driver Rd.1
VictoryRoad
琵琶湖/ もてぎ北 Rd.2 神戸/ 本庄 Rd.3 御殿場/ SUGO西 Rd.4 神戸/ 茂原東 Rd.5 中山/ 御殿場 東西統一 鈴鹿南 合計 有効 5戦 1位 西 21号車 百瀬翔選手 25 35 35 35 35 22.5 187.5 165 2位 西 83号車 近江川暖人選手 28 31 9 22 31 30 151 142 3位 東 18号車 五十嵐文太郎選手 30 0 29 30 10 34 133 133 4位 東 31号車 中井陽斗選手 9 8 28 35 19 41.5 140.5 132.5 5位 東 11号車 落合蓮音選手 24 35 35 0 25 6 125 125 6位 東 30号車 加納康雅選手 20 18 22 20 23 26 129 111
~栄光に向かって~ Victory Road
FS️
44
1位 東 14号車
4
022年、春日龍之介選手はそれま で参戦していたジュニアクラス のカートを卒業し、幅広い年齢の ドライバーが集まる全日本カート選手権 FP-3部門に挑むこととなった。
「(2021年に参加していた)ジュニアカー ト選手権FP-Jr部門では、一度逃げちゃえ ばもうバトルが繰り返されることはなかっ たけれど、FP-3部門では終盤までバトル が続くことが多くて、逃げたつもりでも振 り返ると後ろに誰かがいて、最後までバト ルが大変でした。初めての全日本クラスと いうことで緊張もしていましたが、速い人 が自分以外にもいるのはレースをしていて 面白かったです」。
実績豊富なレギュラー参加勢がいたり、 ホームコースを知り尽くしたスポット参戦 組もいて、常に実力伯仲のレースが繰り広 げられるFP-3部門にあって、春日選手の 切れ味鋭いスピードは輝きを放っていた。
そして速さにこだわる負けん気の強さは、 春日選手の持ち味でもある。
「タイムトライアルでは全部のコースで1 位やコースレコードを狙っていました。速 さには自信があります。ただ速く走るだけ じゃなく、トップを走っているところに誰 かが追いついてきたとき、スリップに入ら れるギリギリ手前で僕がまた速くなって引 き離すような、土壇場での速さが発揮でき るところは自分の強みだと思います」。
タイトル決定戦となった鈴鹿南での東西
統一競技会は、チャンピオンを競い合うド ライバーに真後ろにつかれながらも、きっ ちり2位の座を守り切ってチャンピオンを
「ゴールした時はうれしかったけれど、最 終戦もしっかり勝ってチャンピオンになり たかったんで、2位だったのは残念でした。
2022年を総括して点数をつけるとした ら、80点くらいかな? 20点足りないの は、茂原東大会ではタイムトライアルでト ップタイムが出せるくらい速かったのに、 決勝ではエンジンがかからず10位という 結果で、後悔が残っていて……」。
2023年はFS-125部門にクラスチェン ジする予定とのことで、目指すのは2年連 続の全日本チャンピオンだという。
「過去のレース結果を振り返ると、FS125部門では2016年に佐藤蓮選手が5戦 連続でポールポジションから優勝してチャ ンピオンになっているんですよ。唯一、最 終戦の鈴鹿だけ2位でしたので、僕はシリ ーズ全勝してそれを上回ってやるくらいの 気持ちでいます。佐藤選手は憧れであり目 標にしている選手でもありますが、いつか 超えていきたい存在です。最終的な目標は F1で日本人初のチャンピオンになること です。速さにはこの先もこだわっていきた いですね」。
VictoryRoad
FP-3部門 2022年チャンピオン 春日龍之介選手 2022年全日本カート選手権FP-3部門ポイントランキング Rank. 地域 No. Driver Rd.1 琵琶湖/ もてぎ北 Rd.2 神戸/ 本庄 Rd.3 御殿場/ SUGO西 Rd.4 神戸/ 茂原東 Rd.5 中山/ 御殿場 東西統一 鈴鹿南 合計 有効 5戦
確定させた。
春日龍之介選手 32 34 26 16 35 43 186 170 2位 東 11号車 富下李央菜選手 29 24 30 28 30 39 180 156 3位 西 25号車 鈴木恵武選手 27 28 28 21 29 22.5 155.5 134.5
位 西 44号車 中村海斗選手 35 0 33 35 0 24 127 127
位 東 10号車 大越武選手 33 28 28 18 7 10.5 124.5 117.5
位 西 86号車 内海陽翔選手 8 32 31 20 21 0 112 112 2️ 「自分の強みは土壇場で 速さが発揮できること」 45
5
6
新設“EV部門” 初代チャンピオンは梅垣清選手!
EV部門2022年チャンピオン
燃機関以外のパワーユニットに よる史上初の全日本選手権とし て大きな注目を浴びたEV部門 で、初代チャンピオンとなって歴史に名を 刻んだのは、全日本カート選手権OK部門 でも活躍する14歳の新鋭、梅垣清選手だ。 「まず、新しく開催されたEV部門というク ラスでチャンピオンを獲れたことがとてもう れしいですし、佐々木大樹選手や小高一斗 選手といったプロドライバーや、OK部門で チームメイトの佐野雄城君など本当に速い ドライバーがいる中でチャンピオンを獲れた ことは、本当にうれしいと思っています」。
バッテリーを積み、電気モーターで走る EVレーシングカートのレースは、誰にとっ ても経験のないものだった。
「EVは本当にアクセルを踏んだらすぐ加速 するので、FS-125部門やOK部門くらいの 速さを感じましたね。アクセルワークがち ょっと難しかったり、ハンドルが重くて体 力的にキツい面もあったけれど、僕も初め て乗った時に数周で慣れたので、EVカート が未経験の人でも楽しく乗れるマシンだと 思います」。
チャンピオン決定戦となった第6戦は、
お台場の特設コースで大観衆に見守られな がらの一戦に。これも排気や騒音のないEV カートだからこそ実現したことだった。 「大勢の人がカートレースを観てくれて、 うれしかったです。ただ、(ギャラリーの注 目が自分だけに集まる)1周単独アタックの タイムトライアルでは緊張しました(笑)。 このEVカートをつくってレースの準備をし てくださったトムスさんには本当に感謝し ています。環境問題が深刻になっている今、 みなさんにEVカートに乗ってもらって、ど んどんレースが盛り上がってくれたらいい なって思います」。
VictoryRoad
梅垣清選手
2022
EV部門ポイントランキング Rank. No. Driver Rd.1 琵琶湖 Rd.2 もてぎ北 Rd.3 本庄 Rd.4 SUGO西 Rd.5-1 御殿場 Rd.5-2 御殿場 Rd.6 お台場 合計 有効 3戦 1位 8号車 梅垣清選手 不成立 不成立 不成立 不成立 20 25 18 63 63 2位 3号車 佐野雄城選手 22 20 20 62 62 3位 1号車 小高一斗選手 25 22 DQ 47 47 4位 2号車 佐々木大樹選手 18 0 25 43 43 5位 5号車 渡邉カレラ選手 0 DNF 22 22 22 6位 6号車 大槻聖征選手 0 18 0 18 18 事実上の開幕戦となった第5戦はオートパラダイス御殿 場で開催された。1大会2レース制となり、表彰台は梅垣選 手と小高選手、佐野選手の3名が2レースとも独占した。 お台場の特設コースで実施された第6戦。佐々木選手が 勝利し、4位となった梅垣選手が1ポイント差で佐野選手 を下し、EV部門初代チャンピオンを確定させた。
内
年全日本カート選手権
46
-Jr部門のチャンピオン争いは、 思いもよらぬ決着になった。東 西統一競技会でポールの酒井龍 太郎選手は、雨中のレースで苦戦を強いら れ4番手に後退。一方、酒井選手と同ポイ ントの伊藤聖七選手はトップを独走してチ ェッカーをくぐった。ところがレース終了 後、伊藤選手はペナルティを受けて4位に 降格。3位に繰り上がった酒井選手が戴冠 を確定させたのだ。
「伊藤選手がどんどんブッちぎって遠いとこ
ろに行ってしまったので、『これじゃチャン ピオン獲れない!』ってすごく苦しい気持ち でした。結果を聞かされたときは、本当に 自分がチャンピオンなのか信じられなくて。
FP-Jr Cadets部門
イントレースが大接戦の状態で 東西統一競技会を迎えたFP-Jr Cadets部門のタイトル決定も また、ドラマチックな展開だった。関口瞬 選手はトップ独走のまま優勝。一方、澤田
その後もしばらく、チャンピオ ンおめでとうって言われても不 思議な感じがしました」。
2021年のFP-Jr Cadets部 門に続いて2年連続の王座就任 を果たした酒井選手。2023年に はさらに大きな夢を抱いている。
「活動予定はまだ決まっていな いけれど、いちばん行きたいの
FP-Jr部門 2022年チャンピオン
龍征選手は横山輝翔選手の真後ろ につけてラップを重ね、残り2周 の逆転で2位に。これで澤田選手 が関口選手を0.5点上回り、同部 門3年目でチャンピオンに輝いた。
「(勝負のタイミングを)待ってか ら前を刺そうと思っていました。 ゴールの直前で刺した方が抜き返
はFIAカーティングアカデミートロフィー です。飛び級でFP-3部門に出られたらそ こにも挑戦してチャンピオンを狙いたい し、X30エンジンのレースにも挑戦した い。それが叶ったら、参加する全部のシリ ーズでチャンピオンを獲りたいです」。
酒井龍太郎選手
されにくくなるから。優勝できなかったか ら、ゴールした時は悔しくて泣いてしまっ たけれど、シリーズチャンピオンは獲れた からまだよかったかなって思いました」。
VictoryRoad
2021年は初優勝を達成。そして2022 年は常勝の存在に。澤田選手は確かな成長 を見せながらこの栄冠にたどり着いた。 「今のチームに入ってから、メカニックの 方の指導が良くてどんどん速くなれまし た。チャンピオンになれた一番の理由は、 メカニックのおかげだと思います。2023 年の予定はFP-Jr部門。全部優勝してシリ ーズチャンピオンになります。目標はF1。 憧れの選手は(マックス・)フェルスタッペ ン選手です」。
2022年チャンピオン
FP ポ
~栄光に向かって~ Victory Road 2022
Rank. 地域 No. Driver Rd.1 琵琶湖/ もてぎ北 Rd.2 神戸/ 本庄 Rd.3 御殿場/ SUGO西 Rd.4 神戸/ 茂原東 Rd.5 中山/ 御殿場 東西統一 鈴鹿南 合計 有効 5戦 1位 東 44号車 酒井龍太郎選手 22 25 25 25 25 30 152 130 2位 西 50号車 伊藤聖七選手 25 25 22 25 25 27 149 127 3位 東 33号車 松井沙麗選手 25 0 22 20 22 33 122 122 4位 東 34号車 岡澤圭吾選手 20 22 20 22 0 21 105 105 5位 西 46号車 山代諭和選手 20 20 0 22 22 0 84 84 6位 西 24号車 田邊琉揮選手 0 0 25 DNF 20 0 45 45 2022年ジュニアカート選手権FP-Jr Cadets部門ポイントランキング Rank. 地域 No. Driver Rd.1 琵琶湖/ もてぎ北 Rd.2 神戸/ 本庄 Rd.3 御殿場/ SUGO西 Rd.4 神戸/ 茂原東 Rd.5 中山/ 御殿場 東西統一 鈴鹿南 合計 有効 5戦 1位 西 39号車 澤田龍征選手 25 22 25 25 33 130 130 2位 東 58号車 関口瞬選手 0 22 25 20 25 37.5 129.5 129.5
位 西 16号車 横山輝翔選手 22 25 22 25 20 27 141 121
位 西 23号車 元田心絆選手 20 18 20 22 22 16.5 118.5 102 5位 東 37号車 前田蒼介選手 20 0 22 22 0 22.5 86.5 86.5
位 東 13号車 常川将太郎選手 0 0 DNF 25 22 24 71 71
澤田龍征選手
JAFジュニアカート選手権 FP-Jr部門/ FP-Jr Cadets部門
年ジュニアカート選手権FP-Jr部門ポイントランキング
3
4
6
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特集 ジムカーナ・ダートトライアル/GYMKHANA.&.DIRTTRIAL
2022年全日本選手権〝初
初栄冠
全日本ジムカーナ選手権/全日本ダートトライアル選手権編
2022年の全日本ジムカーナ選手権は全8戦、全日本ダートト ライアル選手権は全7戦でカレンダーが組まれ、両シリーズ とも新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止策を徹底し ながらスケジュール通りに開催された。ここではそれぞれの シリーズを戦い抜き、初めて全日本チャンピオンを獲得した 4名の選手に“初タイトル”獲得の感触を聞いた。
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全日本ジムカーナ選手権/全日本ダートトライアル選手権編
PHOTO/宇留野潤[Jun.URUNO]、遠藤樹弥[Tatsuya.ENDOU]、鈴木あつし[Atsushi.SUZUKI]、 廣本泉[Izumi.HIROMOTO]、CINQ、JAFスポーツ編集部[JAF.SPORTS] REPORT/廣本泉[Izumi.HIROMOTO]、JAFスポーツ編集部[JAF.SPORTS]
の誉れ 〟チャンピオンインタビュー
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日本は勝つことさえ難しい上に、このクラ スはシビアなので、勝てそうで勝てない状 態が続きました。そこで試行錯誤しながら やっと勝てるようになって、今年はタイトルを獲れま した。これまで色々な人に助けられましたから、やっ と結果を残せたという安堵の気持ちもありました」と 語るのは、2022年全日本ジムカーナ選手権で初タイ トルを獲得した小林規敏選手。NDロードスターがワ ンメイク状態でひしめくJG8クラスでの戴冠だ。 2011年の第3戦TSタカタで全日本デビューした 小林選手は、DC2インテグラで地方選手権と並行して 全日本にスポット参戦。全日本でフル参戦を始めたの は中国チャンピオンを獲得した2014年で、2016年 の第7戦恋の浦では全日本初優勝を果たし、N1クラス のランキング2位を獲得した。その後は「ロードスタ ーが面白そうでしたし、選手層が厚かったので、参戦 するならやり甲斐のあるクラスに挑戦したかった」と いうことで、2018年からPN1クラスに参戦。当初は 初めてのリア駆動に苦戦したものの、2019年には3 勝をマークして、シリーズ2位を獲得した。
それだけに翌年以降の飛躍が期待されていたが、2 年に渡って未勝利が続く。小林選手にとって特に悔し かったシーズンは2021年で、「土曜はトップだけど 本番になると大ダメで。最終戦のエビス西では9位に 終わって、本当に悔しかったですね」と振り返る。
して冷静に走ることにしたんです」とのことだが、こ のメンタルコントロールが、小林選手の快進撃を生み 出すことになる。
とはいえ、2022年の開幕戦・筑波1000では「1本 目で狙いすぎて失敗」と6位に敗退。この悔しさも原 動力となったようで、第2戦エビス西では「リズム良 く走れた」という1本目のタイムで久々の勝利を飾る。 第3戦タマダで連勝するのだが、この広島ラウンドが 小林選手のターニングポイントになったという。
そこで小林選手は2022年に向けて意識改革に務め たという。「あまり本番で欲張らないように意識を変 えました。2021年は欲張って走って 力が入りすぎてしまったので、意識
「地元なので気負わずに走れました。路面温度が上が ると厳しいので1本目から意識して、勝つことができ たんです。タマダでは“走り勝てた”実感があったの で、ホント嬉しかったですよね。改めてクルマの動か し方やトラクションの掛け方が掴めたので、この優勝 で自信を持てたんですよ」と地元での勝利を振り返る。 ここから小林選手の快進撃が始ま り、第4戦名阪Cと第5戦スナガワ を制して4連勝を達成。破竹の勢い で第6戦の舞台、2016年以来の開催 となった岡山国際サーキット大会を 迎えた。ここで勝利すればタイトル 確定という状況で「岡山は久々でした が、ホームコースのTSタカタと速度域が近かったの で、楽しみながら走れました」と語る。この大会は激 しい暑さに見舞われたこともあり、小林選手は第1ヒ ートのタイムで優勝。JG8クラスのタイトルを確定さ せ、全日本参戦12年目にして、初めての全日本チャ ンピオンの座に輝いた。
「勝って決めたかったので、ゴール直後はホッとしま した。表彰式では色々と思い出してこみ上げてくるも のがありましたね」と語る小林選手。第7戦恋の浦で は台風接近を考慮して参戦を見合わせ、最終戦イオッ クスでは不安定な天候ながらも第2ヒートでタイムア ップを果たして優勝。シーズン6勝で締めくくった。 「このクラスで有効満点チャンピオンは、なかなか獲 れないので本当に嬉しいです。サービスの皆さんや嫁 さんのサポートで、勝てる環境を作ることができたこ とも大きかったですね。皆さんの支えは本当にありが たかったです」と仲間への感謝の言葉を結んだ。
2022 年 J G 8 クラスチャンピオン 「全
50
BSエナX★ADSロードスター[ND5RCロードスター]
終戦では4人にタイトルの可能性 があったJG3クラス。全員が初タ イトルを狙う戦いの中でチャンピ オンを決めたのが西井将宏選手だ。
2010年の第8戦鈴鹿南で全日本デビューを果たし た西井選手は、転職をきっかけに2018年からフル参 戦を開始。2021年の第7戦恋の浦では待望の全日本初 優勝を獲得し、2022年に向けて入念な準備を行った。 「デフのセッティングを大幅に変えました。それに合 わせたダンパーの仕様変更も効きましたね」と語るよ うに、これまで模索していたセットアップが固まって きたようで、「できるだけパイロンに触らないように 丁寧な運転を心がけました」と、ドライビング面でも 改善を試みていた。しかし、フタを開けたら「丁寧に 走ろうとしても、1本目のミスが多くて。勝てた大会 は、1本目できちんとタイムを出せた時だけだったん ですよ」と語るように一進一退を繰り返していた。
開幕戦の筑波1000では「土曜まで順調でしたが決 勝は1本目でパイロンタッチ。2本目はタイムアップ しましたが届きませんでした」と2位に惜敗。第2戦 エビス西では「2本ともミスはなく、イメージ通りの 走りができました」と、シーズン初勝利を獲得した。
第6戦岡山国際では「初めて走るコースでしたが、 スピードレンジが高くて楽しかったです。でも、1本 目でミスコースしちゃって(苦笑)、2本目のタイムで は表彰台にも届きませんでした」と4位に終わる。
今シーズンのJG3クラスは、西井選手の他に澤平 直樹選手と神里義嗣選手、佐野光之選手、高江淳選手 が勝利を分けており、優勝1 回、2位3回の西井選手がラ ンキング首位で第7戦恋の 浦を迎えていた。2021年も 制している恋の浦は西井選 手にとってシーズンを占う 大事な一戦だったが、台風 接近に伴い、安全を優先して欠場を決めている。
それだけに最終戦イオックスには並々ならぬ思いが あった。西井選手は第1ヒートで暫定ベストタイムを 計測。第2ヒートは雨の影響によりタイムアップを果 たせなかったが、西井選手のタイムが破られることは なく2勝目を獲得。全日本チャンピオンも確定させた。 「今回は1本目からタイムを出せました。イオックス は地元なんですが、地区戦でも勝ったことがなかった ので、チャンピオンを獲れたことも嬉しかったんです が、イオックスで勝てたことも嬉しかったんですよ」。
デビュー13年目で全日本の頂点に登りつめた西井 選手。「開幕当初はシリーズ上位を狙えそうだとは思 ってましたが、タイトルはあまり意識してなくて、第 2戦エビス西で勝ってから、これは狙えるかも……と 意識するようになりました。地元のイオックスで勝っ てチャンピオンを獲れたので良かったです。皆さんの サポートが大きくて、特に私の妻が協力してくれて、 現地で動画撮影をしてくれたおかげで、自分のドライ ビングをチェックすることできました」とタイトル獲 得の思いと感謝を語る。スピードSA車両のファイナ ルイヤーを最高の形で締めくくった西井選手。気にな る来季については「引き続きDC2インテグラで参戦 して連覇を狙いたいですね。どこまで行けるか分かり ませんが、チャレンジャーとして頑張りたいと思いま す」と、モチベーションは高い。
第3戦タマダでは「もともと上手く走れないコース なので、今回も2本ともパイロンに触ってしまいまし た」と8位に低迷した。第4戦名阪Cは「ソフトコンパ ウンドを選んだのでタイヤ的には1本目で決めたかっ たんですが、オーバーランでタイムロス。2本目は、 走りは悪くなかったけど、タイムが伸びませんでし た」と2位に終わる。第5戦スナガワでも「1本目で大 失敗して、2本目ではいい走りができた印象ですが、 追い付けませんでした。自分でも安定して走れていな いなあと感じました」と、またしても2位に惜敗する。
2022 年 J G 3 51
最 アイスペックインテグラDL[DC2インテグラ]
日本ジムカーナのフル参戦初 年度でJG4クラスのチャンピ オンに輝いた田中康一選手。SA
て、スナガワの勝利で自信が持てたので、チャンピオ ンを狙えると思ったんです」と田中選手は振り返る。 しかし、続く第6戦岡山国際では2位に終わり、こ の大会を制した合田尚司選手はシーズン3勝目を獲得 して、田中選手はかなり苦しい状況に陥ってしまう。 第7戦恋の浦の田中選手は「タイトル争いを意識せず に、イメージ通りに走れたんですが、勝てるとは思っ ていませんでした。ゴールでタイムを聞いた時にやっ た! と思いましたね」と2勝目を獲得する。この大会 ではシリーズ首位の合田選手が3位に留まったため、 最終戦は田中選手と合田選手の一騎打ちとなった。
とはいえ、田中選手がタイトルを獲得するためには 最終戦の成績が合田選手より上の順位で、しかも2位 以上が条件。田中選手の第1ヒートは4番手に留ま り、合田選手より上にいたとはいえ「モヤモヤしてい た」という。そして午後には雨が降り出してしまう。 「終わったと思いました」とその時の心境を語る。
車両のEK9シビックを駆り、シーズン2勝で自身初 の全日本タイトルを獲得した。
「2022年は勝負の年だと思ってフル参戦しました が、その選択は間違っていなかった。特に、1600cc のクルマだけで争える最後のシーズンだったので、そ こで最良の結果が残せたことが良かったと思います」。
こう語る田中選手は、2001年の第2戦名阪で全日 本ジムカーナにデビューして、地区戦をメインとしな がら全日本にもスポット参戦を続けていた。それが、 「2020年に足回りを変更して、それに合わせたドラ イビングをしたことで、2021年の全日本では感触が 良かったんです。2021年のJAFカップでは優勝でき て、全日本メンバーが出る中での優勝だったので、こ れをきっかけに、全日本にフル参戦してみようと思っ たんです」と、2022年はJG4クラスにフル参戦した。
開幕戦の筑波1000は、初めて走るコースで3位表 彰台を獲得。しかし、第2戦エビス西では5位に終わ り、第3戦タマダでも2位に惜敗している。第4戦名 阪Cは3位入賞だったが「名阪は勝つつもりだったの で、同じ3位でも筑波とは違って悔しかったですね」と 振り返る。しかし、第5戦スナガワで転機が訪れた。 「難しい路面なので1本目が勝負だと思っていて、本 番はイメージ通りに走れました。勝てそうで、勝てな かっただけに本当に嬉しかったですね」と語るように、 田中選手は全日本初優勝をスナガワで獲得した。 「それまでタイトル争いなんてできるとは思ってなく
それでも田中選手は第2ヒートで渾身のアタックを 披露。「最低限の仕事はできた」 と語るように暫定2番手へ浮上 した。続く合田選手は3番手だ ったが、「最終走者にダブルエ ントリーの小平勝也選手がい て、(小平選手の)CR-Xはパイ ロンコースで速いし、自分が3 位に下がるとタイトルは合田選手に渡ってしまう。本 当にヒヤヒヤしました」と祈るような気持ちでゴール を待ったという。結果、田中選手は2位を維持。同時 に田中選手がJG4クラスのチャンピオンに輝いた。 パルクフェルメではライバルの合田選手と固い握手を 交わし、激しくも清々しいバトルを締めくくった。 「タイトルが決まった瞬間は、多くの皆さんが祝福に 来てくれて素直に嬉しかったです。でも、勝てなかっ たし、タイム的にも離されていたので、表彰式では悔 しい気持ちの方が強かったです」と語る田中選手だが、 JAFモータースポーツ表彰式を迎える頃にはタイトル 獲得の喜びを噛み締めていた。「2023年は引き続き EK9シビックでの参戦を継続するつもりです。厳し い戦いになると思いますが、ベストを尽くして走りた いです」と来シーズンへの思いを新たにした。
2022 年 J G 4 クラスチャンピオン 全 ADVAN☆RSK☆シビック[EK9シビック] 52
日本ダートトライアル選手権に新設された “2ペダル車”のための注目クラス「JD11」 で、2022年の開幕戦から圧倒的なパフォ ーマンスを見せた則信重雄選手。AT車のスイフトス ポーツを持ち込み、6勝を挙げて初戴冠となった。 則信選手の全日本デビューは2003年の開幕戦・三 井三池オートスポーツランドで、当時はストーリアで N1クラスに参戦。その後は海外赴任による活動休止 を経て、2016年にAE101レビンでSC1クラスに復 活している。2018年にはSC車両のST202セリカを デビューさせ、2020年の開幕戦京都では全日本初優 勝を獲得した。しかし、転勤をきっかけに改造車で戦 うことが難しくなった則信選手は、2022年を迎える にあたり当初はPN車両での参戦を考えていたが、改 造車時代にお世話になったオートショップTガレージ の寺田伸選手がAT車の86でJD11クラスに挑戦し ていたのを受けて「2ペダル車も面白そうだ」と感じ、 「どうせなら違うクルマでやろう」と思って、新たな相 棒としてAT車のスイフトスポーツを選んだという。 しかし、それは前例のない挑戦でもあり、「LSDの 設定がないので、どういう動きをするのかが分かりま せんでした。シェイクダウンではアクセルコントロー ルが難しくて、最初は不安でいっぱいでした」と語る。
手探り状態で開幕戦を迎えた則信選手だが、コスモ スパークの第1ヒートではトップタイムを計測。その ままAT車のスイフトスポーツに初優勝 をもたらし、クラス移行の初戦でいき なり優勝してみせたのだ。
やタイヤサイズなどを見直して、2本とも納得いく走 りができました」と語るように2勝目を挙げる。しか し、第3戦丸和では「ドライビングはまだ手探りで、 アクセルとブレーキを試している状態」で2位に終わ り、「3連勝できると思っていただけに悔しかった」と 語る。この丸和での敗退が、則信選手の進化に繋がっ た。「テストを繰り返して、ATの制御のクセが分かっ てきました。それに合わせて、ドライビングを見直し たんです」ということで、その後の中盤戦から圧倒的 な強さを見せつけることになった。
第2戦恋の浦では「開幕戦の後にダン パーの減衰力やブレーキパッド、車高
第4戦スナガワで3勝目を得た則信選手は、第5戦 切谷内でも快走。切谷内は優勝すればタイトルが確定 する天王山だったが、至って冷静だったそうで「この 頃にはメンタルも強くなっていて、改造車時代は全部 のコーナーを攻める感覚でした が、ATスイフトでは抑える所は抑 える、落ち着いた走りの組み立て ができるようになりました」と振 り返る。切谷内では大差をつけて 4勝目を獲得し、JD11クラスのタ イトルを確定させた。
「1995年にダートラを始めたので27年越しに掴ん だタイトルで、全日本はレベルが高くてチャンピオン なんて夢みたいな話です。開幕戦でのデビューウイン も大きかったですが、やっぱり切谷内で勝ってタイト ルを決められたときが嬉しかったですね」と振り返る 則信選手だが、2戦を残して自身初のチャンピオンに 輝いた後も驚異的なパフォーマンスを披露。地元なが ら苦手としていた第6戦今庄では5勝目を挙げ、最終 戦タカタでは「事前の練習会でロワアームを曲げたり しましたが、本番では2本ともベストを獲れて、勝っ て終わりたいという思いも達成できました」というこ とで、7戦中6勝を挙げてシーズンを終えた。 「自分は器用ではないんですが、今までの改造車の走 らせ方をうまくリセットできたおかげで、パワーのな いPN車両に対応することができたと思います。感慨 深いものがありますね」と喜びを噛み締めた。 「JAFカップは勝てませんでした。だからこそ、2023 年もスイフトで2連覇を狙います」と意気込む則信選 手。“オートマクラス”に新風を吹かせた開拓者だけに、 2年目のさらなる進化には全国が注目している。
2022 年 J D 11 全 ADS☆VTX☆DL☆スイフト[ZC33Sスイフトスポーツ] 53
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スペシャルステージラリーは、サーキットや
占用された一般道を全開で攻める
特集 ラリー/RALLY
山口貴利[Takatoshi
TS] REPORT/廣本泉[Izumi
[JAFSPORTS] 原石
PHOTO/遠藤樹弥[Tatsuya ENDOU]、廣本泉[Izumi HIROMOTO]、
YAMAGUCHI]、JAFスポーツ編集部[JAFSPOR
HIROMOTO]、JAFスポーツ編集部
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クローズドコースを走るカテゴリーとは異なり、 ドライバーやコ・ドライバーの経験値がモノをいう。 切磋琢磨する彼らの声を聞いた。
リー競技は、常設コースで争わ れるレースやスピード競技とは 異なり、占用により閉鎖された 一般道を舞台にしている。そのため、普段か ら練習することが難しく、実戦経験が豊富 なベテランたちが上位争いを展開してき た。しかし、近年では若手ドライバーおよび コ・ドライバーたちの台頭も目立ち、全日本 ラリー選手権では躍進を遂げている。
経験値の少ない若手たちが、なぜ国内最 高峰シリーズで高いパフォーマンスを発揮 できているのだろうか? ここでは、2022 年の全日本ラリーで頭角を現した4名の若 手をクローズアップ。彼らの活躍ぶりと、 抱える課題へのアプローチを分析した。
2022年全日本JN3を席巻した 若手ターマックスペシャリスト
まず、2022年に目覚ましい活躍を見せた 若手ドライバーといえば、K-oneレーシン グチームからJN3クラスに参戦した山田啓 介選手を真っ先に思い浮かべるだろう。
山田選手は2年間の地方選手権参戦を経 て、2022年より全日本ラリー選手権に挑
戦。旧型86を駆り、第2戦ツール・ド・九 州でいきなり全日本初優勝を成し遂げ、第 3戦久万高原ラリーでは2位、第4戦ラリ ー丹後では全日本での2勝目を獲得した。
最終戦のラリーハイランドマスターズで は2位入賞で今季4度目の表彰台を獲得し、 全日本デビューイヤーをランキング3位で フィニッシュした。第7戦ラリー北海道ま でチャンピオン争いを展開するなど、ルー キーとは思えない走りを見せていた山田選 手だが、その躍進を支えた原動力が、2年間 の地方選手権経験で培った、ドライビング とペースノートの基礎修練だったという。 「ターマックラリーに関しては、地区戦時 代に基礎をしっかり身に付けました。クル マの動かし方で言えば、コーナーの手前で 向きを変えて、アンダーステアを出さない よう、リアでコントロールしながら曲がっ ていく感じです。ペースノートについて は、リスクを高めずにタイムアップできる ように、“攻め”と“守り”を表示していま す。これらは先輩方の教えでもあるのです が、ラリーの本番でしっかり実践すること で、地方選手権でも初参戦のラリーで勝つ
2021年JAF中部・近畿ラリー選手権DE-2ドライバーチャン ピオンの山田選手。2022年は藤井俊樹選手とコンビを組 み、K-oneラリーチームから全日本ラリーJN3クラスに参戦。
面なら、このコーナーに、このスピードで 進入してステアリングを切ると、こんな動 きをするだろうな』という“予測”をしなが ら走っていて、この予測を競技走行で走っ たときの感触と答え合わせをする、という 経験を重ねてきました。その予測に基づい てペースノートをしっかり作り込めば、本 番はノートに合わせて走るだけなので、気 負うことなく安定してタイムを出すことが できる、という考え方です。この予測の精 度が上がってきたように感じていて、これ まで積み重ねてきたやり方を全日本でも実 践しているので、初見のステージだとして も、しっかり走れているのかなと考えてい ます」と付け加える。
抱える課題はグラベルラリー 貴重な経験を吸収しモノにする
地方選手権で培った学びを全日本選手権 でもうまく活かすことができたと語る山田 選手だが、もちろん課題もあるようだ。 「グラベルラリーやダートトライアルの経 験がなかったので、グラベルではクルマの 動きが予測できないんです。今のところ低 μ路での対応が自分の課題で、ターマック でもウェット路面だったり、路面に泥が出 ていたりすると、その瞬間にライバルから 引き離されてしまうんですよ。自分として ことができたんですよ」と 自己分析する。
さらに山田選手は「地区 戦時代から、常に『この路 全日本ラリー選手権JN3クラスドライバー 山田啓介選手
第2戦唐津でいきなりの初優勝! K-oneラリーチームが推す期待の新人
K1ルブロスitzzソミック石川YH86[ZN6 86]
ラ 56
特集 ラリー/RALLY
切磋する原石
MATEX-AQTECラリーチームでの学び CVTヤリスで鍛えられる精緻な走り
全日本ラリー選手権JN5クラスドライバー 渡部哲成選手
は精一杯に攻めてはいるんですけど、低μ 路では“予測との答え合わせ”の経験をで きていないので苦労しています」と語る。
そんな山田選手は、第5戦モントレーを 4位でフィニッシュし、グラベルの第6戦 ラリー・カムイの前にダートトライアルコ ースでトレーニングを重ねたという。
「実際にダートの林道を走ると、道幅は狭 いし、深いワダチもできるので恐怖感があ りました。レグ1では車速が足りず、クル マを横に動かすことができなかったので、 ライバルに“キロ3秒”以上も離されまし た。レグ2ではダートコースでの練習をイ メージしながら、少しずつリアを操れるよ うになったので、最後の方では“キロ1秒” ぐらいまで詰められるようになりました。
カムイでは経験不足を痛感しましたね」。
それでもインターバルにダートコースを 走り込んだことが効いていると感じている ようで、第7戦ラリー北海道では「リクベ ツのようなダートコースでは大きく離され ずに走れたので、手応えはありました」と 語る。さらに「狭い林道ステージではトッ プとの差が大きくなったり、ワダチが深く なると『置きに行く』ようなドライビングに なっちゃいましたが、レグ2では車速の高 いパウセカムイで3番手タイムを出すこと
ができました。レグ1で試 していい感触だったドライ ビングをすぐに実践できた し、ペースノートに“スラ
2019年から全日本ラリー選手権JN5クラスに参戦する渡 部選手。MATEX-AQTECラリーチームの若手育成プログラ ムで、2022年は橋本美咲選手とコンビを組んで参戦した。
イド”という表現を入れることで、複合コ ーナーに対処できるようになってきたの で、グラベル2連戦は大きな収穫がありま した」とのことで、成績は5位に終わった ものの、ラリー北海道でも多くのことを吸 収したようだ。
そして、このグラベルラリーの経験が山 田選手の成長を促しているようで、「道の 状態が刻々と変わることで走らせ方の引き 出しが増えましたし、この経験はターマッ ク、特に路面温度の低い早朝やウェットな どの低μ路にも役立つと思っています。も ともと僕はアクセル操作がラフで、リアが 出て前に進まないことが多く、低μ路では タイムを落とすことが多かったんです。そ れが、グラベルの経験で、ラフなアクセル ワークを直せたところもあるので、そのシ ビアな操作が次に活きてくると思います」 と山田選手は分析する。事実、グラベル2 連戦の後に行われた最終戦ハイランドマス ターズでは2位入賞で終えている。体得す るまで繰り返し、得られたことはしっかり 次に活かす、愚直な修練を重ねる山田選手
は、まだまだ進化を遂げるに違いない。 熱き心をもってへこたれず 2ペダルヤリスの限界を極める
MATEX-AQTECラリーチームから JN5クラスに参戦する渡部哲成選手。 2015年に全日本デビューを果たした彼 も、ここ数年で頭角を現してきた若手ドラ イバーの一人だ。
渡部選手はフル参戦を開始した2021年 に第6戦モントレーで全日本初優勝を成し 遂げると、2022年には開幕戦新城ラリー で3位、第2戦唐津と第3戦久万高原、第 5戦モントレーでは2位に入り、第6戦ラ リーカムイでは再び優勝を飾っている。
常に上位争いを展開するトップランナー に成長してきているが、渡部選手のスキル アップの原動力は忍耐力と情熱だと語る。 「ちょっと精神論みたいな話ですが、情熱 と忍耐力がないと、シーズンを通してラリ ー活動を継続できないと考えています。僕 はMATEX-AQTECラリーチームの一員 として走れているので、プライベーターよ
カヤバDUNLOP CVT YARIS[MXPA10ヤリス]
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りラリーに集中できる環境にいますが、同 時に結果も求められるのでプレッシャーが ありました。でも、その環境でも熱意を持 って、へこたれずに戦ってきたおかげで、 トップのドライバーとの違いが明確になっ てきたと感じていますし、ターマックでは トップ争いができるところまで来られたと 感じています」とは渡部選手。そして、こ の成長を促したのが彼の相棒である10ヤ リスだそうで、2ペダル、つまりCVT車へ の対応がスキル向上に貢献したという。
「CVT車を速く走らせるためには、スロ ー・イン・ファースト・アウトのように、 いわゆる教科書通りのドライビングを心が けないといけないと考えています。マニュ アルミッション車ではブレーキングでミス をしても、シフトダウンでごまかせたりし ますが、CVT車ではそれができないのでシ ビアな操作が求められます。それでも、 CVT車はペダル操作がアクセルとブレー キしかないので、辛抱強く、その限られた 操作に集中して走ることで、荷重移動など の基本的な動かし方を学ぶことができたと 考えています」と渡部選手は語る。
さらに「同じ10ヤリスでもMT車とCVT 車では重量配分や駆動のかかり方が違うよ うに感じられたので、サスペンションのセ ッティング変更による足回りの動きを学ぶ ことができました。それに伴ってクルマの 動かし方も変わったので、ペースノート作 りも変わりました。コーナーのベンドの角 度が変わったり、ブレーキング時の“スロ ー”の割り振り方も変わってきたので、全 体的にスロー・イン時の無駄な“スロー” が減ってきたように感じています」とのこ とだ。
自身の課題については「グラベルのドラ イビングが課題です。CVT車なので、ター マックと同様に、コーナーの手前で姿勢を 作ってクリップでアクセル全開にできるよ うにスロー・イン・ファースト・アウトを 心がけていましたが、それだと、高速コー ナーでは大きな差が付いてしまうんです よ。ラリー・カムイは何とか勝つことはで きましたが、本当に苦労しました」と振り 返る。
その一方で、第7戦ラリー北海道ではコ ースアウトからのリタイアに終わったが、
名手・奴田原文雄選手のコドラに抜擢された東選手。東京 大学自動車部出身で、海外ヒストリックラリー参戦プロ ジェクトにも関わった、ある意味ラリーのエリート的存在。
「ラリー北海道は高速コー ナーが多いので、ドライビ ングの精度を高めながらコ ンスタントにクリアしてい
くことがテーマでした。そのために、ペー スノートのバンク角度を細かく分けるよう にして、そのおかげでメリハリのあるドラ イビングができるようになりました」と手 応えを掴んでいるようだ。
「シーズンを通してCVT車で戦ったおか げで、改めて基礎を学べました。今、MT 車に乗ればもっとうまく走れるような気が します(笑)」と語るように、渡部選手は実 りの多い一年となった様子。ベテランがひ しめく激戦区だけに、そこで得られた果実 は、次なる飛躍の糧になることだろう。
有名ドライバーから抜擢され 志を高く持って修業中
ここまで、2名の若手ドライバーを紹介 してきたが、近年は若手コ・ドライバーの 存在も見逃せない。中でも、特筆すべきな のが、ベテラン奴田原文雄選手のコ・ドラ イバーとしてJN1クラスに参戦している、 東駿吾選手だと言えるだろう。
2019年は東日本ラリー選手権でナビゲ ーターチャンピオンを獲得した東選手は、 2020年に小濱勇希選手とのコンビで全日 本ラリーJN5クラスに挑戦。上位争いを 展開しながら、最終戦となった第3戦唐津 では全日本初優勝を獲得している。
そして、奴田原選手が長年コンビを組ん
ラリー全体を俯瞰して戦いに挑む 名門に学ぶプロフェッショナルな所作
全日本ラリー選手権JN1クラス コ・ドライバー
ADVANカヤバKTMS GRヤリス[GXPA16 GRヤリス]
東 駿吾
選手
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ヤリスカップ西日本王者・大島和也選手が ジムカーナの“軽市”選手と全日本初挑戦!
全日本ラリー選手権オープンクラス 大島和也選手/小野圭一
日本ラリー第8戦のオープンクラスに、レーシングドライ バー大島和也選手が参戦した。大島選手はカート経験を 経てスーパーFJやスーパー耐久でチャンピオンを獲得し、2021 年はTOYOTA GAZOO Racingヤリスカップ西日本シリーズ の初代タイトルを獲得した箱車マイスター。ともに戦うコ・ド ライバーは全日本ジムカーナJG8クラスをロードスターで戦 う”軽市”こと小野圭一選手。この異色のコンビが、若手を支援 するWinmaXが制作した86で全日本ラリーに初挑戦したのだ。 「もともとラリーに興味があって、頭文字Dから競技の世界に 興味を持った自分としては、“公道最速”みたいなキーワードに 憧れがあったんです。それで、86/BRZレースやS耐、ヤリス カップでお世話になっ たウィンマックスさん がラリー車を制作する という話を伺って、運 良く今回乗せていただ けることになりました。
でいた名コ・ドライバー佐藤忠宜選手が一 線を退いたことから、奴田原選手は「NUT AHARA Rally School ジュニアチーム」の 卒業生である東選手を抜擢。2021年は車両 トラブルなどで苦戦を強いられたが、2022 年は第7戦ラリー北海道と第8戦ハイラン ドマスターズで2位入賞を果たした。
トップドライバーとコンビを組みながら も、初年度から冷静な対応を見せた東選 手。初ラリーは2017年の群馬県シリーズ とキャリアこそ短いが、「2018年は全日本 のオープンクラスや地区戦を含めて8戦に スポット参戦して、7人のドライバーと組 みました」と語るように、短期間に多くの
86/BRZレースのクルマをラリー車に仕立て直して、ラリー チャレンジ参戦を経て今回に至りました」と語る大島選手。
迎えた本番ではステージを追うごとにタイムを上げ、JN3ク ラスでも上位を狙えそうな兆しを見せていた。しかし、SS5で 大きくタイムを落とす事態が発生することになった。
「今回はブレーキをツメたり、ボトムスピードを高めるとかで はなく、どうしたら安全にタイムが出せるかを考えていまし た。いざ走ると、ステージでは立ち上がりで振られる傾向が あったので、立ち上がり重視の走らせ方を模索したところ、 JN3でもいい所に行けそうな走らせ方が見えて、これなら安全 にタイムを削れそうだと思っていたんです。ですが、やや高速 なステージに大きめのバンプがあって、そこで自分の想像を 越えた挙動が出てスピンしてしまったんです。これまでサー キットしか走っていなくて、ジャンプしながら進入して、立ち 上がりでトラクションをかけるというような、“立体的”な運転 の経験がなかったので、公道の難しさを痛感しましたね」。
ド素人がいきなり全日 本に出てきよったぞと いう状況は自分として もダメだと感じていて、
こう語る大島選手の86は、スピンの末に車体側面を低い土 手にヒット。走行に支障はないものの運転席ドアが開かなく なってしまう。ラリーは完走してオープンクラスを制すること となったが、ポディウムフィニッシュではNASCARばりに窓 から乗降して、違った意味での歓声を浴びることとなった。
ドライバーのナビシートを経験している。
「2020年には小濱選手とコンビを組みま したが、その際にラリーのルールに対する 理解をかなり深めることができました。そ して何より、小濱選手はラリーに対する情 熱や、クルマの知識がすごかったので、と ても勉強になりました」とのことで、短い ながらも濃密な経験を積めたようだ。
もちろん、奴田原選手と全日本に参戦し てからも多くのことを吸収しているという。
「まずは開幕する前に佐藤(忠宜)選手のイ ンカービデオを見ながら、リーディングの タイミングなどを研究するところから始め ました。奴田原選手はミスをしないドライ
バーですから、自分もミスをしたり、TC などでペナルティを受けないよう気をつけ て、自分なりにできるところから始めた感 じです。シーズンを追うにつれて、コドラ としてのラリーの組み立て方がだんだん解 ってきたので、2022年にはデータロガー を使用した走行データの分析にトライした り、チームのメカニックやタイヤエンジニ アとのコミュニケーション方法や、支援し てくださる皆さんとの関わり方など、色々 なことを意識して行動しました」。
全日本選手権ともなると、チームの規模 は大きくなり、関わるスタッフも多様にな る。大所帯になるとコ・ドライバーの役割
選手
全
WINMAX/ARD 86[ZN6 86]
特集 ラリー/RALLY 59
切磋する原石
ベテラン岡田孝一選手のコ・ドライバーを務める河本選手。
九州工業大学自動車部時代にラリーに出会い、2019年には JAF九州ラリー選手権RH-5ドライバーチャンピオンを獲得。
は、ペースノート作りやリーディングだけ ではなく、アイテナリーやドライバーの行 動管理のほか、車両状態やセットアップ変 更の伝達、ひいてはラリーチームの運営に 携わることが求められる場合もある。
経験が少ないうちはペースノートの管理 だけで手一杯になりがちだが、ハイレベル なカテゴリーでは、“走り”だけではない要 素も勝敗に影響するものだ。ラリーを俯瞰 しようとする東選手の試みは、その発想に 至れるだけでも将来有望だと言えるだろう。
とはいえ、東選手は「まだまだ圧倒的に 経験が少ないと感じています。今後は様々 なラリーに対応できるように、オーガナイ ザーともコミュニケーションをとっていき たいですね」と語る。一流ドライバー、そ して一流コ・ドライバーの教えを受け継ぎ 実践する東選手の今後に期待だ。
ドラとコドラの二刀流? 叱られながらも前進する
2021年に岡田孝一選手のコ・ドライバ ーとして全日本ラリー選手権にデビューし
キーストーンナビゲーターDLスイフト[ZC33Sスイフトスポーツ]
ベテランからのダメ出しの日々 少しずつ学びを重ねて修業中
全日本ラリー選手権JN4クラス コ・ドライバー 河本拓哉選手
た河本拓哉選手も著しい成 長を見せた若手選手の一人 だ。2022年の第7戦ラリ ー北海道では全日本初優勝
を獲得することになったが、少し変わった 立場でコ・ドライバーを務める河本選手に とって、全日本ラリーのコドラ生活は、決 して平坦な道のりではなかったという。
もともと2019年にドライバーとしてラ リーに参戦した河本選手は、大学の自動車 部で研鑽を重ねながら九州RH-5クラスで 初のJAF戦タイトルを獲得している。その 後、他のドライバーの技術、そしてラリー を学ぶという目標のもとに、2021年から岡 田選手のコ・ドライバーを務めている。 「全日本ラリーは情報量が多くて、ラリー ウィークは後手後手でした」と河本選手は デビュー当時を振り返る。しかし、多くの 先輩のアドバイスを受けながら経験を重ね ることで、事前の準備や、サービスとのコ ミュニケーションが行えるようになったほ か、ノートリーディングに関してもペース ノートの文字を大きくしたことでタイミン グも合ってきたという。その成果の一例が ラリー北海道での初優勝と言えるだろう。 「最初はコ・ドライバーとしてダメダメな 状態で、岡田さんにも厳しく鍛えてもらい
ました。皆さんからも多くのアドバイスを いただけて、それらを実践することで、少 しずつ課題を克服できているのではないか と感じています。岡田選手の走りを助手席 で体験することで、タイヤを潰してグリッ プさせることや、ペースノートの作り方で も、もっと細かいスケールで距離を表記し たりと、ドライバーとしても得るものがあ りました」とも語る河本選手。その甲斐あ ってか、全日本と並行してドライバーとし て参戦していた九州選手権では常に上位争 いを展開し、JMRCオールスターラリーへ の出場権も獲得する活躍を見せている。 「全日本コ・ドライバーのチャンスがあれ ば、また挑戦させていただきたいですね。 そして地区戦にもドライバーとして参戦し ていきたいです」と語る河本選手。
これは一見、無謀なチャレンジにも感じ られるが、ラリーの競技本番でスキルを上 げていく必要がある日本のラリーにおいて は、かなり現実的な選択、かつ上達への早 道だと言える部分もある。
次世代を担う若手選手たちは、制限が多 い環境であっても独自のアプローチを編み 出して、前向きに課題を克服しようとして いる。全日本ラリー選手権は、そんな若手 たちの頑張りも見どころなのだ。
切磋する原石 特集 ラリー/RALLY 60
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4 駆ターボは進化
TOYOTA GAZOO Racing
が送り出す新たな“競技ベース車両”の可能性
試乗を依頼し、新たな“4駆ターボ”の可能性を探った。「GRカローラ」が登場。今回は山野哲也選手に選択肢が激減した昨今、GRヤリスに続く
ヨタ自動車が久々に送り出した 4輪駆動のターボマシン「GRヤ リス」は、2020年のデビュー以 来、スーパー耐久シリーズや全日本ラリ ー、全日本ジムカーナ/ダートトライアル 選手権などで、ランサー・エボリューショ ンやWRX STIの後を継ぐ“4駆ターボ”の 競技ベース車両として活躍している。
そして、このGRヤリスと同様に、直列3 気筒1600ccターボの心臓に「GR-FOUR」 と呼ばれる4輪駆動システムを組み合わせ た「GRカローラ」が登場し、4駆ターボの次 なる競技ベース車両として注目を浴びてい る。この度、GRカローラのプロトタイプモ デルを試乗する機会を得られたため、スー パー耐久、そして全日本ジムカーナを戦う マルチドライバー・山野哲也選手の協力を 得て、インプレッションを行った。
試乗できたのは、5名乗車モデルの「GR カローラRZ」のプロトタイプと2シーター 仕様「GRカローラ モリゾウエディション」 のプロトタイプで、比較対象として「GRヤ リスRZ High Performance」もラインア ップされた。試乗コースは袖ヶ浦フォレス
トレースウェイと、付近に特設されたダー トコース。試乗を重ねた山野選手のコメン トからは、GRカローラの特徴と競技ユー スにおける可能性が見えてきた。
GRカローラは2ランク上質 期待感と将来性を感じる
GRヤリスとGRカローラの4駆システ ムは、フロントエンジンで生じた駆動をト ランスファーを介して後軸へ流し、後軸直 前にある電子制御カップリングにより前後 のトルク配分を行う仕組み。制御について は車種のキャラクターに応じて最適化され ていることから、まずは実績のあるGRヤ リスRZに試乗し、いくつかのトルク配分 と制御モードの組み合わせを確認した。
マルチドライバー山野哲也選手に今回の評価を依頼した。
まずは基本的な特性を知るために、TRA CKモード(50対50)で走行。山野選手は 「GRヤリスはフロントヘビーで背の高いク ルマですが、リアの動きでクルマの向きを 変えられるようになってますね。リアの動 きが良くて、ダンパーとスプリングを動か しながら前後をバランスさせています」と 評価する。そして50対50の配分のまま で、ブレーキ制御が入るEXPERTモード をテスト。こちらについては「曲がり始めが 少し遅くて、クリップにつけない感じがし ますが、剛性が上がって、4輪でスタビリテ ィを出している感覚です。弱アンダーステ アで安定しているので、サーキット走行の 経験がある人なら、気持ち良く走れるモー ドだと思います」と語る。そして、前後30 対70のSPORTモードについては「4輪が バラバラに仕事をしている感じで、ダンパ ーが軟らかくなったような動きになった。 抵抗感がなくなったので、ワインディング などでは楽しめると思います」とのことだ。 トヨタ自動車GAZOO Racing Company GR車両開発部の坂本尚之氏によれば「EX PERTモードは、ブレーキの制御で意図的
特集 新型車/NEW CARS PHOTO/佐藤靖彦[Yasuhiko SATOU]、中島正義[Tadayoshi NAKAJIMA]、TOYOTA GAZOO Racing、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS] REPORT/廣本泉[Izumi HIROMOTO]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]
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競技ベース車両として、
輪駆動のターボ車の
ト
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する
GRカローラの開発担当はトヨタ自動車 GAZOO Racing Company、GR車 両開発部の坂本尚之氏。石浦宏明選手や大嶋和也選手も評価ドライバーを 務め、モータースポーツ起点のもっといいクルマ作りが実践されている。
にタイヤのグリップを均等にしようとしま す。30対70のSPORTモードはリア寄り の駆動になるので、ワインディングでのラ イントレースが楽になったり、ダートでは オーバーステア気味に走ることができま す」とのことで、上級者がサーキットで最 大限のトラクションを得るような走行をす る場合は、50対50の前後トルク配分を軸 にして考える方向性が良さそうだ。
こうしてGR FOURの特徴を掴んだ山 野選手はGRカローラRZをドライビング。
こちらは前後50対50を基準に試乗した。
まず、走行した山野選手は、GRカロー ラが持つ基本特性に驚いた様子で「2ラン クぐらいクオリティが高くて、振動が少な く、高級車に乗っている感じ……というの が第一印象です。ハンドリング性能はしっ とりしていて、タイヤの接地バランスや均 等感は、GRヤリスよりGRカローラの方が いいですね」と評価。続いてエキスパート モードについては、「GRヤリスと同様で、 進入時はしっかり感があるけど、その後は 少しアンダーステアが強くなり、後から曲 がり始める感じですね。でも、タイヤの接 地感が安定して感じられるので、軽量化や 各部のレベルを上げるチューニングを施せ ば、もっと上に行けそうな期待感がありま す。GRカローラには将来性を感じますね」 と語る。
モリゾウエディションの圧倒
なかなか出会えないクルマ
そして、GRカローラ モリゾウエディショ ンを試乗する。これはGRカローラRZに 対して約30kgの軽量化を施し、エンジン の最高出力は304PSを実現して最大トル クは370N・mから400N・mに拡大。そし て駆動系には、スーパー耐久で鍛えられた
GRヤリスとは逆の発想で、WRCで鍛えた4WD システムを市販車にフィードバックして誕生し たGRカローラ。グラベルでの評価が行われてい るあたり、その本気度が伺える。
クロスミッションなどを採用したモデルだ。 「モリゾウエディションは、コーナーの進 入、特にクリッピングポイント直前がよく 曲がる。操舵を始めてクリッピングに着く までの間が強烈にグリップしていて、これ は本当に圧倒的。こういうクルマにはなか なか出会えないですよ。クロスしたギヤ比 がエンジンの美味しい所に合っていて、ど のギヤのどの回転域からでも加速感が味わ える。RZとは装着タイヤの違いもあるだ ろうけど、モリゾウエディションは、ハイ スピードな最終コーナーで、インに吸い付 いていく感覚が圧倒的に良かったね」と、3 車種の中では最も高い評価を示した。
このモリゾウエディションについては、 低中速コーナーをパイロンで構築したフラ ットダートで試乗する機会も得られた。15 インチのドライタイヤを装着したグラベル 仕様車を乗り終えた山野選手は、降りるな り「コレ、いいね!」と興奮気味。
「GRヤリスより重量はあるけど、仕上が っている感じがするし、向きが変わる時の 安定感が圧倒的に高い。サーキットでは4
GRヤリスで開発が進む FIA Rally2車両がお披露目
WRCラリージャパンの「Okazaki City SSS」開始 前に、GRヤリスをベースに開発が進むFIA Rally2車 両のコンセプトカーが初公開された。そして11月19 〜20日のTGRラリーチャレンジ豊田では、モリゾウ 選手とヤリ-マティ・ラトバラ代表によるGRヤリス Rally2コンセプトのデモ走行が行われた。
輪の接地性の高さを感じたけど、それはグ ラベルでも変わらないね。GRヤリスはピ ークが難しくて、操舵しても曲がらない時 があったけど、GRカローラは常に向きを 変えてくれる。それに接地感も高く、トラ クション性能も良い。浮き砂利みたいな路 面でも“奥のグリップ”を感じられるので、 まったく怖くないし、攻められる」。
山野選手がターマックでもグラベルでも 高い評価を下したGRカローラ モリゾウ エディションだが、GRカローラ自体の競 技ユースについて前出の坂本氏は「モリゾ ウエディションは販売台数が少ないので、 RZをベースに部品を最適化して、モリゾ ウエディションのレベルまで仕上げていく ような感じになると思います」と語る。
車格からサーキットでの活躍をイメージ しがちだが、低中速のグラベル走行でも高 評価を得たGRカローラ。基本性能の高い カローラスポーツにGR FOURを組み合わ せたトヨタが送り出す“4駆ターボ”は、予 想を超える進化が詰まった、業界期待の新 たな競技ベース車両になると言えるだろう。
FIA Rally2車両は、WRC2選手権などでは多くのプ ライベーターが使用して活況を呈しているが、今回 のデモ走行は、ついに日本のトヨタが参入することを示すニュースで あり、これまで欧州主導だったラリー界において、グループN時代の ように日本のプレゼンスを高める契機になる可能性を秘めている。
GRヤリス発売当初から開発が始まっていたというRally2車両は、 細部もしっかり作り込まれていて即実戦投入できそうな仕上がり。 車両公認の時期やスペックなどは明らかにされていないが、2023年 には日本でも活躍が見られそうな情報もあり、詳報が待たれる。
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全国一斉オートテスト 2022 IN 砂川<オートテスト in ASLスナガワ> 主催:AG.MSC北海道 開催地:オートスポーツランドスナガワ(北海道砂川市)
全国一斉オートテスト 2022 IN 舞洲<JMRC近畿モーターフェスタ> 主催:ORCC、Tj 開催地:舞洲スポーツアイランド(大阪府大阪市)
オート テスト 倶楽部
AUTO TEST CLUB
英
国発祥の伝統的なモータースポー ツ「オートテスト」が日本に導入さ れて早7年。全国各地で盛んに開催される ようになってきた。
日本におけるオートテストは、走行速度 が高くならないようにすることを前提に、 ヘルメットやグローブなどの安全装備を簡 略化し、競技ライセンスの取得をも不要と した画期的な取り組みとして開催され、モ ータースポーツを詳しく知らない初心者で も、老若男女問わず、街乗りのマイカーで 気軽に参加できるようになっている。
全国各地で毎週のように開催されている 感があるオートテストだが、JAFが独自に 集計したオートテスト参加者からのヒアリ ングやアンケート結果によれば、世間への 浸透はまだまだで、参加者からは「オート
全国一斉オートテスト 2022 IN 福島<2022オートテストチャレンジinエビス> 主催:BLEST 開催地:エビスサーキット・西コース(福島県二本松市)
全国一斉オートテスト 2022 IN 広島~オートテスト in ジアウトレット広島~ 主催:CCN 開催地:ジアウトレット広島(広島県広島市)
オートテスト史上、初の試みとなる 全国一斉オートテストを実施!
これまで、全国各地でそれぞれ開催されてきたオートテストだが、 その認知度をさらに高めていくための新たな施策として、 11月3日に「全国一斉オートテスト2022」が開催された。
これは、全国の8地区で同じ日に一斉開催するという試みで、 今後のオートテスト開催のあり方に一石を投じる契機になった。
テストの認知度を上げてほしい」、「参加者 が増えるようにもっとPRしてほしい」と いった要望の声が挙がっていたという。
それらを受けてJAFは、JAF登録クラブ 地域協議会(JMRC)の協力を得ながら、 オートテストのさらなる活性化に向けた新 規プロジェクトを立ち上げることになっ た。議論の結果、まずはオートテストに興 味を示してもらうことを目的とし、さら に、オートテストをもっと普及させていく ための周知活動の一環として「全国一斉オ ートテスト」の開催が持ち上がったという。
関係者の話によれば、この企画のイメー ジは”オートテストの甲子園”だそうで、 各地方で活躍するオートテスト参加者が集 まる全国大会、といった位置づけにするこ とも検討されていたという。2022年に関 しては、このような大会は実現しなかった が、「全国一斉オートテスト」企画は JMRCの全国会議に諮られ、全国の
JAFモータースポーツサイト内にあるオートテストページ に設けられた、全国一斉オートテストのイベント概要。一 斉開催の統一性を図るため、入賞者に贈られるトロフィー や、競技中のゼッケンデザインも同一のものが使用された。
JMRCの全面協力を得て今回の開催にこ ぎ着けた。
オートテスト史上、初めての試みである “全国一斉同日開催”という話題は、その インパクトの大きさから瞬く間に全国に広 がりを見せていく。北海道から九州まで、 全国8エリアで同じ日に開催される「全国
TANIUCHI]、 友田宏之[Hiroyuki TOMODA]、中島正義[Tadayoshi NAKAJIMA]、西野キヨシ[Kiyoshi NISHINO]、山口貴利[Takatoshi YAMAGUCHI]、 JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS] REPORT/JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]
PHOTO/遠藤樹弥[Tatsuya ENDOU]、加藤和由[Kazuyoshi KATOU]、鈴木あつし[Atsushi SUZUKI]、谷内寿隆[Hisataka
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全国一斉オートテスト 2022 IN 守谷<守谷市市制施行20周年記念事業> 主催:CI 開催地:守谷市役所駐車場(茨城県守谷市)
全国一斉オートテスト 2022 IN いたの <徳島工業短期大学 with P2 in 道の駅いたの> 主催:P² 開催地:道の駅いたの(徳島県板野町)
一斉オートテスト2022」について、9月13 日にJAFからお知らせがリリースされ、 同日からJAFモータースポーツサイトで イベント概要の公開と参加申し込みの受付 を開始する。併せて、北海道、東北、関 東・甲信越、中部・東海、関西、中国、四 国、九州・沖縄の8エリアの会場一覧も発 表。開催エリアによっては、受付開始早々 に募集人数以上のエントリーが殺到し、抽 選の倍率が一気に跳ね上がるほど反響があ ったようだ。
迎えた11月3日の祝日、満を持して全 国一斉オートテストは開催される。北海道 エリアは北海道砂川市のオートスポーツラ
パイロンに進行方向を示す矢印が貼りつ けられ、ミスコースを防ぐ手法が採られ たのが北海道エリア。
関西エリアは舞洲スポーツアイランドの 空の広場で行われ、1ヒート約50秒と全 国随一のロングコース設定となった。
全国一斉オートテスト 2022 IN 豊田~セーフティドライビングフェスタ!~ 主催:豊田市、FASC 開催地:豊田市公設地方卸売市場(愛知県豊田市)
全国一斉オートテスト 2022 IN 福岡 ~トヨタカローラ福岡&JMRC九州福岡支部オートテスト~ 主催:FMSC、BUKICCHO 開催地:スピードパーク恋の浦 ドリフトコース(福岡県福津市)
ンドスナガワジムカーナコース、東北エリ アは福島県二本松市のエビスサーキット・ 西コース、関東・甲信越エリアは茨城県守 谷市の守谷市役所駐車場、中部・東海エリ アは愛知県豊田市の豊田市公設地方卸売市 場、関西エリアは大阪府大阪市の舞洲スポ ーツアイランド、中国エリアは広島県広島 市のジアウトレット広島、四国エリアは徳 島県板野町の道の駅いたの、九州・沖縄エ リアは福岡県福津市のスピードパーク恋の 浦ドリフトコースが会場となった。
当日は北海道だけが唯一、天候に恵まれ なかったが、全国的には絶好のオートテス ト日和となり、総勢322名が参加する。タ
東北エリアは会場がサーキットだけあっ て、路面のグリップも高く、ひと味違っ たオートテストとなった。
アウトレットモールの駐車場で開催され たことで、オートテストを一般客へア ピールすることに成功した中国エリア。
イムスケジュールやコースレイアウト、参 加料については開催エリアによって多少の 違いがあったものの、基本的には統一され た特別規則書に則って実施された。なお、 クラス区分はAクラス(軽自動車AT)、Bク ラス(MT車両・気筒容積制限なし)、Cクラ ス(普通車MT以外の車両・気筒容積制限 なし)、Dクラス(初心者・自己申告 車両混 合)の4クラスで、排気量ごとの縛りはな く、あえてシンプルなものとなっている。
一方で、統一ルールに則りながらも、主 催者側のこれまでのオートテスト開催経験 に基づく独自の工夫が要所に盛り込まれて いた点は非常に興味深かった。例を挙げれ
市役所の駐車場が1日限定のサーキットへ 変貌を遂げた関東・甲信越エリア。応募の 倍率も高く、一番人気の開催地だった。
四国エリアは徳島県内最大級を誇る道の 駅の駐車場でオートテストを実施。旧車 も参加する賑わいを見せた。
中部・東海エリアの舞台は公設地方卸売 市場の駐車場。大型LEDビジョンカーが 常駐してライブ映像も流された。
スピードパーク恋の浦のドリフトコースが 使われた九州・沖縄エリア。地元を中心に モータースポーツ好きが多く集まった。
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ば、スピードを抑制するコース作成のテク ニックや、参加者全員に満足してもらう趣 向を凝らしたイベント要素、大会を賑やか にサポートする協賛各社など。主催者がそ れぞれ行ってきた隠れた努力が明確になっ たことで、今後の開催のヒントになったの ではないかと思われる。
全国一斉オートテストの関東・甲信越エ リアでは、茨城県守谷市が市政施行20周 年を記念する「守谷市1-DAYサーキット」 というイベントを開催し、その中にオート テストを組み込んだ。これは「もりや広報 大使」を務める全日本ジムカーナの山野哲 也選手がプロデュースした新たな試みで、 オートテストと同じコースレイアウトを使 った、セーフティドライブに寄与する運転 レッスンプログラムが中核を担っていた。
そして、中部・東海エリアでは、2023 年にはWRCラリージャパンを主催する、 JAF加盟団体の豊田市が主催者として名を 連ね、豊田市公設地方卸売市場で賑やかな イベントを開催。レースアナウンサーのピ エール北川氏が場内実況を務め、会場には 太田稔彦豊田市長も視察に訪れた。
このような地方公共団体とのコラボレー ションは、これまでも各地のオートテスト で実現してきてはいる。今大会でも市が発 行する広報誌などの告知を見てモータース ポーツ、そしてオートテストの存在を初め て知り、試しに参加してみたという市民の
関東・甲信越エリアは茨城県守谷市が舞台。市制施 行20周年を記念した事業の一環で、「守谷市役所 1-DAYサーキット」を山野哲也選手と開催。
中部・東海エリアはJAF加盟団体の豊田市も主催に名 を連ねた愛知県豊田市が会場。地元のピエール北川 氏を実況に迎え、太田稔彦市長も視察に訪れた。
「全国一斉オートテスト」トピックス
四国エリアは晴天での開催なのにウェットコンディ ション!? タイヤのスキール音を出させないように した周辺住民への配慮だ。
北海道エリア
オーガナイザー・田畑邦博氏 「北海道は本来、この時期はシーズンオフ だから開催が難しかった」と、同日開催に 縛られないやり方を切望。
関西エリア
中国エリアは参加者全員に競技中の愛車の写真がプ レゼントされた。表彰式終了後には全員参加のじゃん けん大会で豪華景品がもらえるチャンスも! コース委員長・吉川寛志氏
声も多く聞かれ、散歩がてら見学に訪れた というファミリーなどの姿も多く見られ た。こういったコラボレーションは、認知 度のさらなる向上や周知に大きく貢献する 取り組みでもあることから、一つの可能性 として検討する価値は大いにありそうだ。 こうして全国一斉オートテスト2022は 各大会とも無事に終了する。この取り組み によって、オートテストの認知・周知の拡 大に寄与した点については一定の評価の声 も聞こえていたが、参加者や主催者からは その内容についてさまざまな意見が挙がっ ていた。2023年も継続して全国一斉の形 態で開催されるかどうかは現時点で未定で はあるが、これらの声をどう活かし、そし て反映させていくのか。8年目を迎えるオ ートテストのさらなる発展に期待していき たい。
「全国一斉オートテスト」という取り組みへの率直な意見
組織委員長/競技長・岩淵幸弘氏 「いろんな地区で独自にやってきたことを 全国一斉という形で統一させることは、支 部との連携も含め大変でした」
「全国一斉は初めてのケースということで 統率が取れていなかった部分もあります が、スムーズに運営はできました」
組織委員/競技長・原博史氏 「全国一斉の前に、まずはどこを見てやるか を明確にしないと……」と、コンセプトの 深い掘り下げの必要性を説く。
関東・甲信越エリア
組織委員/競技長・亀井俊樹氏 「参加料だけではオートテストは成り立た ないので、全国的にもっと認知度を上げて 協賛メーカー等の協力も必要でしょう」
四国エリア
事務局長・浅野治行氏 「WEB申し込みやクレジット決裁ではな く、誰でも参加できるようにもっと簡素な エントリー方法も用意して欲しいです」
中部・東海エリア
オーガナイザー・上田研氏 「コアな層が多いので、もう少し穏やかな競 技になれば、もっとファミリー層などに受け 入れてもらえるのでは?」
九州・沖縄エリア
組織委員/時計委員長/事務局長・倉下慎一氏 「今後も 全国一斉という開催形態を定期的 に継続し、オートテストの認知が広がってく れれば良いのではないでしょうか」
東北エリア 中国エリア
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J A F M O T O R S P O R T 第S 57巻 第 1 号 202 3 年 2 月1日発行(年 4 2 、 5 、 8 、 11 1 日発行) 発行人 日野眞吾 ☎ 0 3 5470 ) 1711 (代) 一般社団法人 日本自動車連盟 東京都港区芝大門 1 1 番 30号 0570 00 2811 (総合案内サービスセンター) 発行所 東京都港区芝大門 1 9 番 9 号 ㈱ J A F メディアワークス 定価279円 2023 WINTER