JAFスポーツ 2022年 春号(第56巻 第2号 2022年5月1日発行)

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2022 SPRING JAF MOTOR SPORTS JAFスポーツ[モータースポーツ情報] JAF MOTOR SPORTS 第56巻 第2号 2022年5月1日発行(年4回、2、5、8、11月の1日発行) 特集 強い自分のままで スーパーフォーミュラ野尻智紀選手 苦節8年、ようやくつかんだ快挙! 初栄冠の誉れ 全日本ラリー選手権“初”チャンピオンインタビュー 2021年JAF地方選手権チャンピオン

車両トラブルのためにフリー走行3回目は走行できず、 予選では16番手に終わった角田裕毅選手(アルファタ ウリ)。決勝では成長を感じさせる走りを見せ、レッド ブル・パワートレインズ勢の中で唯一の入賞となる8位 を獲得。チームに貴重なポイントを持ち帰った。

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勝負の2年目、成長を見せる角田裕毅選手が開幕戦で8位フィニッシュ!

新技術規則のF1開幕戦バーレーンGPで、フェラーリが復活の狼煙を上げる!

PHOTO/本田技研工業[Honda]、Red.Bull.Content.Pool REPORT/吉田知弘[Tomohiro.YOSHITA]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS] 2

022年もFIAフォーミュラ1世 界選手権(F1)にフル参戦する アルファタウリの角田裕毅選手 は、開幕戦バーレーンGPで8位入賞。

2021年のF1デビュー戦を上回る順位で ある以上に、“1年前より成長した姿”を披 露したGPウィークだった。

昨シーズンは7年ぶりの日本人F1ドラ イバーとして、大きな注目を集めた角田選 手。デビュー戦のバーレーンGPではアル ピーヌのフェルナンド・アロンソ選手をは じめ、歴代チャンピオンたちを次々とオー バーテイク。この活躍で本人も勢いに乗 り、周囲から期待の声も高まったが、それ が第2戦以降で逆効果を生んでしまった。 「表彰台を狙っていましたし、自信満々な 部分もありました。逆にそこで自信を持ち すぎてしまったところもあり、(第2戦の) 予選でミスをしてしまいました。そこから 大きく流れが崩れ始めて、クラッシュも重

なってしまい、開幕戦で持っていた自信と いうのが、どんどん失われていきました」。

ちょうど無線での応答も話題を集め、序 盤の数戦は批判も受けた角田選手。クラッ シュを恐れて守りのレースになることも多 く、前半戦の成績は低迷した。

そんな角田選手の挽回への糸口を見出し たのが、チームを率いるフランツ・トスト 代表と、レッドブルのドライバー育成も担 当するヘルムート・マルコ氏だった。

トスト代表は、まず角田選手の生活面を 見直した。昨シーズン途中にイギリスか ら、チームのファクトリーがあるイタリア

に移住。角田選手は代表から送られたスケ ジュールに沿って毎日、トレーニングやフ ァクトリーでのミーティングなどを実施し た。その効果によって、シーズン終盤に は、体つきもだいぶ変わっていたのだ。

そしてマルコ氏は、レッドブル・ホンダ のリザーブドライバーを務めていたアレク

サンダー・アルボン選手を角田選手のコー チ役に任命。今年の年頭での記者会見で も、角田選手はアルボン選手から様々なこ とを教わった、と語っていた。

これらの地道な積み重ねが実ったのは、 昨シーズン最終戦のアブダビGP。角田選 手は予選から勢いある走りでQ3進出を果 たすと、決勝でも序盤から入賞圏内を走 行。セーフティカー明けの“残り1周勝 負”となったファイナルラップでは、優勝 で決まるチャンピオン争いに注目が集まる 後方で、角田選手はメルセデスのバルテ リ・ボッタス選手をオーバーテイク、自己 最高位となる4位を勝ち取った。

ルーキーイヤーでの苦しい経験を活かし 2年目は開幕戦からポイントを獲得

着実にF1で生き残る術を身につけつつ ある角田選手。2022シーズンは技術規則 が大幅に変わり、前後のウイングをはじめ

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とした車両の形状変化や グラウンド・エフェクト の復活、さらにタイヤサ イズも18インチに拡大 した。各チームとも手探 り状態で迎えた開幕戦だ ったが、角田選手はこの 1年で学んだことを存分 に活かして、好結果をつ かみ取った。

金曜日のフリー走行1 回目では9番手につける が、2回目は14番手と順

位を下げた。角田選手は「良いスタートを 切ることができましたが、2回目のセッシ ョンでは少し苦戦しました」と、車両のバ ランスで課題を残している様子だった。と はいえ何が問題で、どこを解決するのかを エンジニアとともにすぐに判断し、対応し ているところは、昨シーズンあまり見られ なかった光景だったかもしれない。

初日から成長した姿を見せた角田選手だ が、土曜日は不運に襲われた。フリー走行

3回目は車両トラブルにより、1周も走行で きなかったのだ。最後の微調整が施せなか った車両で迎えた予選はQ1敗退を喫し、 16番手に終わった。昨シーズンはこのタ イミングで、築き上げた流れが途切れるこ とが多かったが、日曜日の決勝ではまた、 成長した姿を見せてくれた。

スタート直後の混戦で順位を4つ上げた 角田選手は、早めに1回目のタイヤ交換を 済ませるなど、積極的な戦略を採った。ペ ースも安定しており、レース後半にはポイ ント圏内に浮上すると、手綱を緩めずさら に順位を上げた角田選手は8位で今シーズ ン最初のGPを終えた。

「すごくハッピーな1日となりました。特に スタートでいくつかポジションを上げるこ とができてよかったです。終盤には他車の 脱落など運も味方してポジションを上げる ことができました。この集団で安定して戦 うためには、やるべきことがたくさんあり ますが、今後もクルマを開発してパフォー マンスを改善していけると信じています」。

不運に見舞われても気持ちを切らすこと

スタート直後の2コーナー。ポールポジションからホール ショットを決めたシャルル・ルクレール選手(フェラーリ) が2019年第14戦以来の優勝、名門復活を予感させた。

開幕戦バーレーンGPでは、持ち前の積 極的な走りも健在だった角田選手。バル テリ・ボッタス選手(アルファロメオ)と のバトルなど、見せ場もつくった。

なく、冷静に挽回した角田選手。その戦い ぶりからは確実な成長の軌跡を感じ、たく ましさも垣間見えた今シーズン初戦だっ た。より結果が求められる2年目の2022 年、果たしてどこまで突き進んでいくの か、角田選手の活躍には要注目だ。

F1新技術規則での新車両の初戦 “赤い跳ね馬”に凱歌があがる!

今シーズン最初のF1ウィナーは、開幕 前のテストから好調だったフェラーリのシ ャルル・ルクレール選手。昨年まで2シー ズンに渡り未勝利の辛酸をなめたフェラー リだったが、チームメイトのカルロス・サ インツ選手も2位で1-2フィニッシュを果 たし、名門復活の兆しを見せた。

昨シーズンのドライバーズチャンピオ ン、レッドブルのマックス・フェルスタッ ペン選手の予選は2番グリッド。レースの 序盤から中盤にかけてはルクレール選手と トップを争うも、19位に終わった。

レッドブル・パワートレインズのホンダ から引き継いだパワーユニットを積む4台 は、角田選手のチームメイト、ピエール・ ガスリー選手がリタイア。レッドブルのセ ルジオ・ペレス選手とフェルスタッペン選 手は18位と19位。3台ともレース終盤で 車両トラブルに見舞われてしまい、角田選 手だけが入賞を果たす結果となった。

eFIA-F2を戦う岩佐歩夢選手(ダムス)の初戦は予選失敗で2レースとも最後 尾スタートになるも、スプリントレースは8位。フューチャーレースは7番 手まで追い上げるが、リスタートで加速できず16位に終わった。

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WRCフル参戦2季目の勝田貴元選手、第2戦スウェーデンで4位獲得!

Rally1車両による新時代WRC、TGR-WRTはロバンペラ選手が2戦目で勝利を挙げる!

PHOTO/TOYOTA.GAZOO.Racing、Red.Bull.Content.Pool REPORT/廣本.泉[Izumi.HIROMOTO]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

022年から、FIA世界ラリー選 手権(WRC)の最高峰クラスは ハイブリッドシステムを搭載し たRally1車両によって競われることとな り、TOYOTA GAZOO Racing World Ra lly Team(TGR-WRT)は新車両GR YAR IS Rally1を投入した。

第1戦「ラリー・モンテカルロ」では昨季ド ライバーズチャンピオンのセバスチャン・オ ジエ選手と、ベンジャミン・ヴェイラス選手 のクルーが2位を獲得。TGR WRCチャレン ジプログラムに参加中の日本人ドライバー、

勝田貴元選手の今季はTGR-WRTのサテラ イトチーム、TGR-WRT Next Generation からGR YARIS Rally1でフル参戦すること になり、開幕戦は8位入賞を果たした。

2021年までのヤリスWRCに代わるGR.YARIS.Rally1 が、開幕戦モンテカルロからデビュー。1.6ℓ直列4気筒 ターボエンジンにハイブリッドシステムを組み合わせ たFIA.RALLY1技術規則に準拠した新車両で、合成燃料 とバイオ燃料を混合した再生可能燃料を使用する、サス ティナブルな時代に適応する新世代のラリーカーだ。

サバイバルラリーを生き残る 着実な走りで、2戦連続入賞

第2戦「ラリー・スウェーデン」は2月24 〜27日、スウェーデン北部の都市、ウー メオーにサービスパークを移して開催。今 季唯一となるフルスノーラリーの1戦で、 勝田貴元選手は4位入賞を果たした。

2021年は中止となったことから、2020 年以来の開催となったラリー・スウェーデ ンはサービスパークの移動でコースが一新、 積雪量が豊富な氷雪路面で開催された。

勝田貴元選手にとってのラリー・スウェ ーデンは、2018年にWRC2クラスを制し たことがあるラリー。2022年のこのステー ジについては「直線をジャンクションで繋

いだようなセクションも多かったですが、 ツイスティな部分も多かった。それに雪が 多くて、アイスベースもしっかりしていた ので走って楽しい高速ステージでした」と 分析。シェイクダウンでは4番手タイムを マークし、順調な走り出しを見せた。 デイ1での勝田貴元選手は「最初は良かっ たんですけど、プッシュしようとしたとき に感覚が合っていなかった。アンダーステ アで、グリップ不足に悩まされていまし た」と言うように、SS1を8番手でフィニッ シュ。それでも、SS2で7番手、SS3で5 番手タイムと、徐々にペースアップした。 しかし、「ラインを外してブレーキング した際に、全く止まらず雪壁にぶつかって スタックしてしまいました」と語ったよう

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2022年はサテライトチーム「TOYOTA.GAZOO. Racing.World.Rally.Team.Next.Generation」を 率いることになった勝田貴元選手。コ・ドライ バーのアーロン・ジョンストン選手とともに、新 たな“挑戦”の年となる。

な気持ちを語った。

に、SS4でスノーバンク(雪壁)にヒットし て21番手、SS5も8番手タイムと失速し てしまう。それでもSS6で5番手タイム をマークすると、最後のSS7で3番手タ イムと復調し、デイ1を6番手で終えた。

序盤で出遅れながらも、終盤でペースア ップを果たした勝田貴元選手は「デイ1の 最終サービスで、デフ関連の足回りのセッ

トアップを変更しました。そのおかげで攻 める自信もついてペースアップすることが できたんです」と語ったように、デイ2で は安定した走りを披露した。

4月21〜24日開催の第3戦「クロアチ ア・ラリー」については「2021年に出場し ていますが、路面状況が変わるし、カット も多いので難しいラリーです。昨年は競争 力があったステージもあるのでそこを伸ば したいし、金曜からいいペースで走れるよ うにしたいですね。ターマックでもモンテ カルロとはセットアップが違うのでテスト で見極めたいと思います」と語った勝田貴元 選手の活躍が続くことに期待したい。

TGR-WRTは新車両で初優勝 ランキングでもトップに浮上

デイ2最初のSS8で4番手タイムをマー クすると、その後もコンスタントに5番手、 6番手タイムをマーク。「前にオリバー・ソ ルベルグ選手がいたんですけど、50秒あっ たギャップを30秒まで縮めることができ た」と手応えを感じていた勝田貴元選手は、 デイ2を5番手でフィニッシュした。

そして最終日のデイ3、勝田貴元選手は 「前とも後ろとも差があったので、サテラ イトチームとして少しでも多くパワーステ ージポイントを獲るためにタイヤを温存し ていました」と語りながらも、最初のSS16 で5番手タイムをマークした。

さらに、狙っていたパワーステージの SS19でも「1ループ目(SS17)はストールし た結果、ハイブリッドブーストなしの状態 で走ったんですが、あまりタイム差はなか ったので行けるかなぁ、と思っていました。 最終セクターのブレーキングでミスをした ので、それがなければもう少し上に行けた と思うので悔しさが残るステージでしたが、

90%は良かったと思います」と語ったよう に4番手タイムをマークして貴重なボーナ スポイントを獲得。その結果、Rally1車両 が6台しかフィニッシュできなかったサバ イバルラリーを4位で終え、ドライバーズ ランキングでも6番手に浮上した。 「結果としては4位で、チームに対する仕 事はできたかな、という思いはあります し、終盤のパフォーマンスにも満足してい ます。けど、序盤のミスが悔しいのでミッ クスな気持ちです」と勝田貴元選手は率直

第2戦スウェーデンの優勝は、TGR-WRT のカッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルット ゥネン組。先頭スタートで路面の雪かき役 を強いられたり、ハイブリッドシステムに トラブルを抱えながらも、終始安定した走 りを披露した。

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「スウェーデンで優勝することができて、 とても嬉しいです。週末を通して良い戦い ができました。このクルマで初めて出たラ リー・モンテカルロでは少し苦労しました が、今回は自信を持って走れました」と WRC3勝目を喜んだロバンペラ選手が、 GR YARIS Rally1に初優勝をもたらした。

TGR-WRTに2018年以来の復帰となっ たエサペッカ・ラッピ/ヤンネ・フェルム 組が3位表彰台を獲得。その結果、ロバン ペラ組がドライバーズとコ・ドライバー ズ、TGR-WRTはマニュファクチャラーズ ランキングのトップに立った。

ラリー・フィンランドを制したカッレ・ロバンペラ(右)/ ヨンネ・ハルットゥネン(左)組。ロバンペラ選手の父、ハ リ・ロバンペラ氏も2001年にこのラリーを制している。

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3月5日の記者会見でお披露目されたトヨタエンジンと ホンダエンジンをそれぞれ搭載する今後の開発車両。

スーパーフォーミュラが変わる! 次代を創造する「SF NEXT50」本格始動!!

振興そして持続可能なモータースポーツの在り方を模索する、2022年の試みが続々とスタート PHOTO/吉見幸夫[Yukio.YOSHIMI]、日本レースプロモーション[JRP] REPORT/貝島由美子[Yumiko.KAIJIMA]、はた☆なおゆき[Naoyuki.HATA]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

内トップカテゴリーである全日 本スーパーフォーミュラ選手

権。この源流は、1973年に開 幕した全日本F2000まで遡る。その後、 F2やF3000、フォーミュラ・ニッポン、 そしてスーパーフォーミュラと名称こそ変 更されてきたが、発足当時から国内レース の頂点として多くの才能あるドライバーを 輩出し、海外のレーシングドライバーの挑 戦の場としてこれまで歴史を紡いできた。

その国内トップフォーミュラが今年50 年という節目を迎えるにあたり、シリーズ を運営する日本レースプロモーション (JRP)は「SF NEXT50(ネクストゴー)」プ ロジェクトを立ち上げ、昨年10月25日

に今後の50年に向けた施策を発表した。 「ドライバーズ・ファースト」をキーワー ドにその価値の向上と子供たちが憧れを抱 くような「アジアを代表するSUPER FOR MULA」を目指すこのプロジェクト。支え るのはトヨタとホンダという日本を代表す

る自動車メーカーで、近年の社会環境を考

慮し、モビリティとエンターテインメント の技術開発の実験場と位置づけ、サスティ ナブルかつ社会に必要とされるモータース ポーツの在り方を探っていくという。

今年はその準備のための1年と位置付け られており、開発車両を使用して環境負荷 の低い自然由来のカーボン素材やe-Fuel をテストする。タイヤに関しても横浜ゴム のバックアップで、リサイクル素材や自然 由来素材などを積極的に採り入れたタイヤ を開発していくことなどが明らかにされた。

こうしたテストの結果が2023年から導入 されるシャシーには反映される予定だ。

また、ハード面の試みだけでなく、ソフ ト面でも、新たにデジタルプラットフォー ムの開発を進めることを公表。同席では、 ストラテジーパートナーとして、デロイト トーマツファイナンシャルアドバイザリー 合同会社が参画することも発表された。

そして2022年、JRPは体制を変更し、倉 下明氏から上野禎久氏へと代表が交代し た。このプロジェクトの中心人物が上野氏

だったこともあり、その後もJRPは、積極 的に進捗状況について情報を公開している。 中でも、1月末のオンライン会見で具体 的な話として出てきたのは、今シーズンの レースフォーマット変更に関して。また、 デジタルプラットフォームについても、富 士通とM-TECをデジタルパートナーとし て、「SFgo」と名付けられたアプリの開発 を進めることが明らかにされた。

このアプリの正式なローンチは2023年 だが、先行して一般から300名の有料サポ ーターを募集。このアプリでは、全ドライ バーの車載映像やテレメトリーの走行デー タをリアルタイムで見られるだけでなく、 将来的には無線交信の公開なども目指して いて、サポーターの意見を反映させながら、 内容をブラッシュアップしていくという。 また、鈴鹿サーキットで行われたファン 感謝デーの初日である3月5日にもJRPが 会見を実施。この場では、開発車両を使っ たテスト日程が公表され、各大会の前ある いは後に、2日間が予定されているという。

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開発ドライバーに抜擢さ れたのは石浦宏明選手と塚 越広大選手。また全体のテ クニカル・アドバイザーに は、昨年までトヨタ・ TRDのエンジン開発責任

者だった永井洋治氏が就任 した。さらには、開発テス トの進捗などについて情報 発信を行うアンバサダーも 設定され、レーシングドラ イバーにして、現在はエン ジニアやチームオーナーと して活躍する土屋武士氏が

就任した。

さらに3月22日、富士スピードウェイ で行われた開幕前テストの初日夕方にも記 者会見を実施した。ここでは、今シーズン のライブ中継に関する体制が発表された。

J SPORTSのBS・CS・オンデマンド放送 での予選・決勝レースの全戦放送はこれま で通り。そして4月からYouTubeの有料メ ンバーシップがスタートし、予選・決勝の 他にフリー走行の様子も配信されるという。

このYouTubeでは、日本語版の新たな 解説者として脇阪寿一氏、塚越選手を迎 え、ピットレポーターには三浦愛選手の他、 モータースポーツ好きとして知られるレイ

ザーラモンのHG/RG氏の2人も加わる。

そして、同シリーズの公式放送としては 初となる英語の実況・解説も実施される。 この英語版では、サッシャ氏が実況を担当 し、解説には2010年にフォーミュラ・ニ ッポンでタイトルを獲得したジョアオ・パ オロ・デ・オリベイラ選手と、日本のモー タースポーツに造詣が深いレン・クラーク 氏を迎える。また、水村リア氏がピットレ ポートを担当して、ドライバーと海外ファ ンのパイプ役を務めることになった。

今後も、積極的に情報発信が行われるそ うなので、SF NEXT50の行方に関しては、 今後も本稿でお伝えしていきたい。

スーパー耐久シリーズに2021年から設けられたST-Qクラスは、 これまでの概念にとらわれない、メーカー開発車両を主な対象

としたクラスだ。この理念を最大限に活かし、2021年はORC.ROO KIE.Racingが水素を燃料とするカローラスポーツを投入した。自動 車業界全体が取り組むカーボンニュートラルの実現に向けて、二酸化 炭素を排出しない内燃機関を搭載した開発車両は、デビュー戦かつシ リーズで最も過酷な「富士24時間」を完走したことは記憶に新しい。

その後も”水素カローラ”は、改良が重ねられ、ラップタイムの向上 や連続周回数の増加、水素充填時間の短縮など、大会ごとに性能を高 めてきた。そういったORC.ROOKIE.Racingの、というより、もはやト ヨタ自動車の積極的な姿勢に賛同する企業である「仲間」も徐々に増 えて、スタート時の8社から現在は22社にまで増えている。

2021年からST-Qクラスに参戦したマツダ。MAZDA.SPIRIT.RAC

INGを設立し、2021年の最終戦・岡山大会でディーゼルエンジン搭 載のデミオに「サステオ」を使用した。これはユーグレナを原材料の ひとつとした、次世代バイオディーゼル燃料だったのだ。

そして2022年。3月20日の開幕戦では新たなカーボンニュートラ ル燃料使用車両として、トヨタからはGR86、スバルからはBRZが投

上野禎久代表率いる新体制となったJRP。3月22日の記者会見ではライブ中継の体 制が発表され、日本語実況はおなじみピエール北川氏、新設の英語実況はサッシャ 氏が担当する。また、ピットレポーターにはこれまで担当していた三浦愛氏に加え、 レイザーラモンのHG/RG氏が新たに起用された。

ENDLESS.SPORTSは、メルセデス AMG.GT4に自社開発製品を装着し てST-ZからST-Qにクラスを変更し て参戦。開幕戦鈴鹿では折り紙つき の実力通りクラス優勝を果たした。

入された。このカーボンニュートラ ル燃料とは、燃焼時に二酸化炭素 は排出するものの、原材料に二酸 化炭素と水素、非食用のバイオマ ス等を由来としてプラスマイナス ゼロになるというものだ。  投入された新型BRZとGR86 は、前者が本来の水平対向2.4ℓエ ンジンを積むのに対し、後者はGR ヤリスに積まれるエンジンを1.4ℓ に縮小し、ターボを組み合わせたも のに換装している。それぞれの足回 りなどは、よりレーシングカーらし いレイアウトに改められており、兄

次世代バイオディーゼル燃料で今季も奮 闘するMAZDA.2.Bio.concept。

今季からST-Qクラスを走るカーボンニュー トラル燃料使用のGR86と新型BRZ。

弟車とはいえ、それぞれ異なる開発理念が反映されている点も注目だ。  また、開幕戦の鈴鹿ではトヨタ、スバル、マツダの代表による記者会 見が行われたが、ここで思いがけない発言も。マツダの丸本明社長が、 300馬力を発する2.2ℓディーゼルエンジン搭載車両の年内投入を公 言したのだ。一説にはMAZDA3との噂だが、丸本社長の語るところの 「ガチ勝負」が環境に優しい車両で繰り広げられ、盛り上がるとなれば、 今季のS耐は新たな価値観を創造する場になるかも知れない。

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スーパー耐久2022、鈴鹿サーキットで開幕! 話題のST-Qクラスでは新たなバトルが!?
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HEADLINE

4 勝負の2年目、成長を見せる角田裕毅選手が開幕戦で8位フィニッシュ!

6 WRCフル参戦2季目の勝田貴元選手、第2戦スウェーデンで4位獲得!

8 スーパーフォーミュラが変わる! 次代を創造する「SF NEXT 50」本格始動!!

SPECIAL ISSUE

12 巻頭特集

強い自分のままで

苦節8年、ようやくつかんだ快挙!!

18 特集

初栄冠の誉れ

スーパーフォーミュラ・野尻智紀選手の苦悩と飛躍

2021年全日本選手権“初チャンピオン”インタビュー 全日本ラリー選手権ドライバー部門/コ・ドライバー部門編

30 全日本ジムカーナJG10クラス

新たな可能性を秘めた未来形、注目の2022年がついに開幕!

42 2021年JAF地方選手権レース総まくり

~FIA-F4/F4/S-FJ/FRJ/ツーリングカー~

50 2021年JAF地方選手権カート総まくり

~もてぎシリーズ/瑞浪シリーズ/鈴鹿選手権シリーズ~

54 JAF地方選手権2021チャンピオン

~RALLY/GYMKHANA/DIRT TRIAL/CIRCUIT TRIAL~

60 齢を重ねて得た極意

シンプルながら奥深い。ダートトライアルの真髄とは!?

TOPICS

36 2022 JAFモータースポーツ委員会名簿 2022年全日本選手権審査委員名簿

40 ついにキックオフ

次世代に向けた環境整備を担う「モータースポーツ未来委員会」

INFORMATION

35 INFORMATION from JAF モータースポーツ公示・JAFからのお知らせ(WEB)一覧 (2021年12月25日~2022年3月31日)

JAF MOTOR SPORTS JAFスポーツ[モータースポーツ情報]

監修/一般社団法人 日本自動車連盟 〒105-0012 東京都港区芝大門1-1-30 ☎0570-00-2811(ナビダイヤル) 発行所/株式会社JAFメディアワークス  〒105-0012 東京都港区芝大門1-1-9野村不動産芝大門ビル10F ☎03-5470-1711(代) 発行人/西岡敏明

振替(東京)00100-88320 印刷所/凸版印刷株式会社 編集長/佐藤均 田代康 清水健史 大司一輝 デザイン/鎌田僚デザイン室 編集/株式会社JAFメディアワークス メディア事業本部(JAFスポーツ) ☎03-5470-1712

COVER/2021年全日本ラリー選手権第10戦 PHOTO/山口貴利[Takatoshi YAMAGUCHI]

本誌の記事内容は2022年3月31日までの情報を基にしております。また、社会情勢等によって、掲載した情報内容に変更が生じる可能性がございます。予めご了承ください。

「JAFモータースポーツサイト」も要チェック! https://motorsports.jaf.or.jp/

2022 春
CONTENTS

年、有力なドライバーが増えてますます激 しいバトルが繰り広げられている全日本ス ーパーフォーミュラ選手権。2021シーズ ンは、その“シビアさ”をまさに象徴する一年だった。

前年にスーパーGTとスーパーフォーミュラの二冠王 に輝いた山本尚貴選手。2021年は古巣のTCS NAKAJ

IMA RACINGに移籍してスーパーフォーミュラ4度目 の王座を目指したが、開幕前のテストから原因不明の不 調に悩まされ、優勝はおろか、表彰台も獲得できない 不本意な年を過ごすこととなった。その一方で頭角を現 したのが、山本選手と同じくホンダのエース格として評 価の高い野尻智紀選手(TEAM MUGEN)だ。

ルーキーイヤーで初優勝を記録、 しかし苦戦の日々は長く続いた……

2014年にスーパーフォーミュラデビューを果たした 野尻選手は、その年の第6戦SUGOで初優勝を記録。 翌2015年も二度の3位表彰台を獲得するなど、確実 に上位争いに加わる走りを見せ、チャンピオン争いに 絡んでくる日もそう遠くはないだろうと思われていた。 しかし、初優勝を遂げてからは、肝心の2勝目をな かなか得られず、2017年以降は強力な海外ドライバ ーが次々と参戦し、後方に沈むレースも少なくなかっ た。2018年は予選では速さを見せる場面が何度もあ

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PHOTO/鈴木篤[Atsushi.SUZUKI] REPORT/吉田知弘[Tomohiro.YOSHITA]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

ったが、決勝でのレースペースでライバルの先行を許 してしまい、この年も第1戦鈴鹿での3位表彰台が最 高位。いつも明るく振舞っている野尻選手だが、その 胸の内は焦りと不安が募っていたのかもしれない。

そんな野尻選手に転機が訪れたのは2019年。デビ ュー以来在籍していたDOCOMO TEAM DANDELI ON RACINGを離れ、TEAM MUGENに移籍。前年 にドライバーズタイトルを獲得した、何度も優勝経験 のある名門チームへの加入だったが、序盤戦はなかな か歯車が噛み合わず、苦戦する場面も見られた。

2019年第3戦SUGOでは表彰台争いを展開し、2 番手を狙ってオーバーテイクを試みるも、減速時に止 まりきれずコースアウト。攻めた結果だから仕方ない とはいえ、自分の判断が間違っていたかもしれない と、レース後に悔し涙を流した。

なかなか結果に恵まれない日々が続いたが、ついに チャンスをつかむ時が到来する。最終戦の鈴鹿で2番 手からスタートすると、8周目にトップに浮上。レー ス後半は、この年のチャンピオンとなるニック・キャ シディ選手など強力なライバルが迫ってきたが、最後 までペースを落とすことなく走り切り、見事、2014 年以来となる自身2勝目を飾った。

2021年タイトル獲得への布石は 逆転王座を逃した2020シーズン

新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、約5 ヶ月遅れで開幕した2020シーズンのスーパーフォー ミュラ。この年も、野尻選手はTEAM MUGENから レースに臨んだ。前年の最終戦で優勝を飾ったことが 追い風となり、開幕戦から着々とポイントを重ねてい くと、第4戦オートポリスでは予選ポールポジション を獲得。決勝では、ピットストップを終盤まで遅らせ る戦略を採った山本尚貴選手に食らいついて、わずか の差でトップに返り咲き、通算3勝目をマークした。

チャンピオン経験のある山本選手を、レースペース で上回りねじ伏せた……。記者会見ではレースの状況 を謙虚に語るも、その表情からは、今までにない自信 をつかんでいる姿が垣間見えた。

変則的に2レース開催となった2020年第5戦・第 6戦の鈴鹿でもポイントを獲得し、逆転チャンピオン に望みをつなげた野尻選手。ポイント的には決して優 位な状態ではなかったが、「もしかしたら?」と思わせ たのが予選だった。Q1から安定した速さを見せ、最 終のQ3でコースレコードを更新する1分19秒972 をマーク。見事ポールポジションを獲得した。

スーパーフォーミュラはこの年から予選上位にもポ イントが与えられることになっていた。さらにチャン ピオンを争う山本選手、平川亮選手、キャシディ選手 らが後方に沈んだこともあり、野尻選手の逆転チャン ピオンの可能性が大きくなっていったのだ。

周囲の期待も高まる中「自分ができることをやる」と

リラックスした表情で話していた野尻選手。スタート ではポジションを落としてしまうものの、終始上位に 絡む走りを見せる。だがレース終盤にマシントラブル が発生し、リタイアとなってしまった。

逆転での王座獲得が潰えたレース後、今までにない くらい落胆していた野尻選手がそこにいた。 「タイトルを獲りたかった、というのが本音です。自分 自身、今までとは違ったレースができて、自分の力や 成長を示せたシーズンだったと思います。ただ、トー タルで考えると、自分たちの弱さがまだあると思うし、 乗り越えなければいけない壁もあります」。

チャンピオンを手にできるだけの速さはあったが、 結果として“負け”だった。その現実を目の当たりに した野尻選手の悔しい表情は、今でも鮮明に記憶され ている。ただ、この敗戦が“強すぎる”と言われた 2021シーズンへの出発点だった。

富士スピードウェイで開幕を迎えた2021年のスー パーフォーミュラ。実は開幕前から、野尻選手のマシ ンはひときわ注目を集めていた。

コロナ禍において、日夜必死で働いている医療従事 者の方々への感謝のメッセージをマシンに大きく掲 示。カラーリングも赤一色に一新され、レーシングス ーツにも「医療従事者の皆様、ありがとうございま す!」と刻まれていた。

TEAM MUGENの田中洋克監督は「感謝の気持ち を伝えるには結果を出さなければいけない。全戦ポー ル・トゥ・ウィンをするつもりでいきます!」と、カ ラーリングお披露目の際には力強く語っていたが、後 に野尻選手はこのカラーリングで走るからこその緊張 感みたいなものが、快進撃の一助になったと言う。 「メッセージを出していることで、チームがすごく引 き締まっている感じがあります。結果を出して軌道に 乗れば、このメッセージを発信しやすい部分もあるし、

スーパーフォーミュラ初参戦の2014年は第6戦で初勝利を遂げてルーキ ー・オブ・ザ・イヤーに輝くも、以降は長らく勝利から遠ざかり、苦しい時 期を過ごした野尻選手。だが2019年、チーム移籍によって転機を迎えるこ ととなる。

タイトルを獲る手応えを感じた開幕戦 “僕たちは速い”と信じ続けて邁進
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TEAM.MUGENの一瀬俊浩エン ジニアと共に試行錯誤を繰り返 し、野尻選手は勝つためのマシン づくりを追求してきた。その緻密 なデータ分析とセッティングが奏 功して、2021シーズンは3勝をマ ーク。チャンピオン獲得の大きな 要因となった。

野尻智紀 選手の

チームに良い流れを及ぼしているように思います」。

迎えた開幕戦、圧倒的な速さを見せていたのが野尻 選手だった。新しく台頭してきたライバルが集う中、 予選Q3では2番手以下に0.2秒の差をつけてポール ポジションを獲得。決勝ではスタートで少し出遅れて ポジションを落とすも、安定したペースでライバルを 追い詰めていき、途中で逆転を果たした。レース後半 には雨がパラつく場面もあったが、一切動揺すること なく最後まで力強く走り、優勝という最高の形でシー ズンのスタートを切った。

「ようやく明確に『タイトルを獲る』と言えるだけの手 応えを感じています。そこを目指す上では、非常に良 いスタートが切れたのかなと思います」と、レース後 の記者会見で語った野尻選手。明らかに昨年までとは 違った“何か”を感じ取れるほどのオーラがあった。

続く第2戦鈴鹿でも安定した速さを見せ、予選2番 手を獲得。決勝ではトップを走る福住仁嶺選手がトラ ブルにより脱落したことでトップに浮上し、そのまま 開幕2連勝を飾った。第3戦オートポリスではスター ト直後のアクシデントで後方に下がるも、驚異的な追 い上げを見せて5位入賞。第4戦SUGOでは予選Q2 で敗退を喫してしまったが、レースではしっかりと挽 回し、6位でポイントを積み重ねた。

こうしてランキング首位の座を維持して前半戦を終 えた野尻選手。それを近くで見ていた田中監督は、彼 の変化についてこのように語った。

「野尻選手からは自信をすごく感じます。チームに入 って3年目ということもあり、『こういう体制でやり たい』という要望が出され、それに応えられるように 僕が動いた感じでした。あとは、ここ数年ずっとクル マのデータ採りに時間を費やし、それがきっちりと蓄 積されてきて、安心して走れる環境や信頼関係がつく

れてきたのではないのかなと思います」。

また、2020年の最終戦でチャンピオンを獲得でき なかった悔しさが、野尻選手だけでなくチーム全体の

原動力にもなっていたという。

「2020年の最終戦でチャンピオンが獲れなかったの もありますし、あの時の富士でポールを獲れたことが チームとしても大きな前進と言いますか、収穫だった なと思います。あのままレースも勝てれば良かったの ですが、そう甘くはないですよね。でも、あの1戦で チームとしても自信がついたのが大きかったです」。 また一瀬俊浩エンジニアは「2020年の最終戦はト ラブルがなければ2位か3位あたりで終われていたと 思いますし、チャンピオンを獲れた可能性もあったの かもしれません。そういった意味で取りこぼしたもの を、もう一度獲りにいったというのが大きかったで す。シーズン全体の反省点を踏まえ、しっかり分析し てつくったのが、2021シーズンのクルマです」と語る。 野尻選手もシーズンオフの間に自身の走り方を徹底 的に見直し、セッティングに関する勉強もして、より 細かいところまで理解を深めようと努力していた。 「オフシーズンの間に、なぜ2020年の前半戦はうま くいかなかったのか、逆になぜ後半戦はうまくいって いたのかを深く考え、すごく勉強もしました。オフの 間で準備してきてきましたが、テストもこなしていく 中で、新たな考え方が深まっていきました」。 細かな分析を怠らず、速いクルマをつくり上げてい く野尻選手とTEAM MUGEN。それがチャンピオン 争いが佳境に差し掛かったラウンドで存分に活きた。 チャンピオン獲得への最終関門

“苦手なもてぎを攻略せよ”

野尻選手が圧倒的に優勢という流れで迎えた第5戦 のツインリンクもてぎ。ここはコース特性の関係もあ り、トヨタエンジンを搭載するチームが速さを見せる 傾向にあった。さらにシーズン開幕前にスケジュール が変更され、10月に行われる第6戦も同地で開催され ることが決定。もてぎを得意とするチームにとって は、トップとの差を詰める絶好のチャンスだった。

もちろん、野尻選手とTEAM MUGENもそれを十 分に理解していた。なぜなら、彼らにとってもてぎは 相性が良いとは言えないコースだったからだ。野尻選 手自身も出身の茨城県から近く、“地元レース”と言っ ても過言ではないサーキットなのだが、スーパーフォ ーミュラでは6位が最高位という状況だった。 “苦手なもてぎをどう克服するか?”が、チャンピ オン獲得に向けた最後にして大きな関門だった。だ が、そこで答えを導き出し、ベストな状態で乗り込ん だのが2021年の彼らだった。第4戦SUGOから約2 か月のインターバルで、もう一度全てのデータに目を 通し、徹底的に話し合ってセッティングを施した。 「普段ドライバーが気にしないところまで情報をいた だきながら自分なりに考え、疑問に思ったところはす ぐに一瀬エンジニアと何度も連絡を取って話し合いを しました。それこそ、工場でセットアップしている段 階の微妙なコーナーウエイトの違いとか、その取り方

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の違いとか……。本当に細かいところまで指定して、 とことん突き詰めました」。

「もてぎに関しては難しいという印象で、低荷重のサ ーキットでうまくいった試しがなかったんです。その 理由が何なのかを、この2カ月間のインターバルでし っかりと確認できました。もちろん、野尻選手とは結 構ミーティングをやりましたね。何度もやり取りを繰 り返し……。なんか“野尻エンジニア”と“一瀬エン ジニア”がつくったクルマみたいな感じでした。で も、その話し合いの中で発見がありましたね。野尻選 手の感覚から来るものとデータの裏付けができました し、第1戦・第2戦がなぜ良かったのかというところ も分析ができました」と一瀬エンジニアは振り返る。

このもてぎ仕様のセッティングは、想像以上の速さ を見せる。予選Q1ではいきなりコースレコードを塗 り替える1分31秒336をマークし、Q2では1分31 秒110でさらにタイムを更新。最終のQ3では2番手 以下に0.2秒以上の差をつける1分31秒073で今季 2度目のポールポジションを奪った。

翌日の決勝レースでも序盤から力強い走りを見せた 野尻選手だが、そこに立ちはだかったのがcarenex

TEAM IMPULの関口雄飛選手と平川選手。戦略を駆 使してトップ攻略にかかったが、野尻選手もチームと冷 静に状況を把握し、その時にできるベストを尽くした。

「今回は関口選手が真後ろにいて、タイヤを換えられ ていいペースで走られる可能性もありました。ここ最 近、僕たちはピットストップを引っ張って失敗するこ ともあったので、今回は純粋に真後ろにいるドライバ ーをフォローして作戦を採るということを事前に決め ていました。レース後半、平川選手がいいペースで走 っているという情報もありました。ピットストップを 終えて、もし僕と関口選手の間に入ろうものなら、僕

は絶対にやられてしまうという考えもありました。そ こで、自分のタイヤもある程度温存しつつ、平川選手 とのバトルに備えていました」とは野尻選手。

こうして、複数のライバルの位置や状況を理解しな がら、対策を採りつつ周回を重ねた野尻選手。見事に ライバルの追い上げを振り切って、今シーズン3勝目 をマークした。ある意味、この1勝がタイトル獲得へ のターニングポイントだったと言えるかもしれない。

第5戦はチームスタッフの中 で新型コロナウイルス感染症 の陽性者や濃厚接触者が出 ていたタイミング。メカニッ クなどのメンバーが入れ替わ っていた中、野尻選手は予選 からコースレコードを塗り替 える速さを発揮した。

最終戦を待たずにチャンピオンを確定させる機会に 王手をかけた野尻選手。続く第6戦の舞台も同じもて ぎ。しかも予選日は天候が不安定で、どのタイヤを装 着してタイムアタックするか非常に悩ましいコンディ ションだった。その中で野尻選手は順当にQ3まで進 んだのだが、最終セッションでは“一瞬の判断”で、 チャンスをつかみにいく。

2021年のスーパーフォー ミュラ第6戦、野尻選手 は5位フィニッシュながら 堅実にポイントを獲得。 その結果、最終戦を前に チャンピオンを確定させ る。レース後、パルクフ ェルメで出迎えたTEAM. MUGENの田中洋克監督 と喜びを分かち合った。

過去の失敗が大きな糧として しっかり活かされた第6戦もてぎ
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第6戦でチャンピオンを確定させ、 第7戦でもアグレッシブな走りを見 せた野尻選手。大湯都史樹選手と のサイド・バイ・サイドのバトルは 勝ちたいという気持ちが強く表れた 瞬間で、2021シーズンを象徴するレ ースだったと言えるだろう。

ほとんどのマシンがウェットタイヤを装着してコー スイン。野尻選手も同じ戦略を採ったのだが、すぐに 新しいウェットタイヤを要求してピットインを選択し た。Q3は7分しかセッション時間が設けられていな いため、途中のタイヤ交換は致命的なタイムロスだ。

一瀬エンジニアも計算したらギリギリ間に合うタイミ ングだと話してくれたが、それでもピット作業でロス があれば全てが水の泡となる。そこで頼りになる働き をしたのがTEAM MUGENのメカニックだった。

「(タイヤ交換を)90度コーナーで判断してピットイ ンしたのですが、その時点でちゃんと新しいタイヤが 用意され、メカニックもスタンバイしていて……本当 に素晴らしいと思いました。そういう時はバタバタと してしまいがちですけど、事前に予測して準備してい るチームはなかなかないと思います。最後はそういう

チャンピオンとして表彰台の頂からト ロフィーを高々と掲げながら、視界に 広がる景色の素晴らしさに感嘆する野 尻選手。同時に、一人のドライバーと してさらなるレベルアップを図るべく、 精進し続けようと思ったという。

部分が力になりました。僕たちの強さをしっかりと示 すことができたと思います」と野尻選手は語った。 ポールポジションこそ獲得できなかったが、しっか りと3番手につけた野尻選手。悲願のタイトル獲得ま で、あと一歩と迫ったのだが……そう簡単につかめな いのが“日本一”の称号。決勝レースではシーズン一 番と言って良いほどの劣勢を強いられる。 予選日と同様に、途中で路面コンディションが変わ るなど難しいレース展開となり、そこでベストな合わ せ込みができず、スタートから順位を落として一時は 8番手までポジションダウン。途中のピットストップ で5番手まで挽回したが、終始ライバルに追われる展 開となってしまった。ただ、ポイントのことを考える と、この位置を守り抜けばチャンピオンは確定する状 況で、コクピットの野尻選手は“昔の弱かったころ” に戻りそうな自分の気持ちと戦い続けていた。 「この場面で何かをしてしまうのが過去の自分でした。 けど、逆にたくさん失敗してきたので『こういう時にこ れをやってはいけない』というのを、思い出していきま した。それらをマイナスに捉えそうな気持ちになりま したけど、最後はいろんな人の応援が見えて、強いま まの自分でいることができたのかなと思います。そう いった過去の失敗があって、今日のレースを乗り越え られたことは間違いないのかなと思います」。 こうして、野尻選手は最後までミスをすることなく 5番手でフィニッシュ。念願の初チャンピオンを手に した。シーズン中は感情を表に出すことがあまりな く、インタビューや記者会見でも淡々と話す姿が印象 的だが、この時だけはマシンを降りると涙を見せた。 「(涙が込み上げてきた時は)過去にあった全てのこと を思い出していました。これまで色んな人が力を尽くし てくれたけど、結果につなげられなかった不甲斐ない 自分が過去にいて、本当に色んな人に迷惑をかけてき

野尻智紀
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選手の

ました。それこそFCJとか、全日本F3とか、F4で西日 本シリーズに出ていた時とか……。その全てですね」。

「2020年の途中から成績を残せるようになり、戦え る手応えと覚悟は持てていたのかなと思います。残念

ながら最終戦でリタイアとなり結果につなげられなか ったですけど、その時から『あのまま走っていればチ ャンピオンは僕だった』と強く言い聞かせて、臨むこ

とができました。シーズン中もチームのみんなが助け

てくれて、強い自分のままでいられたと思います」。

こうして振り返ると、確かにコース上ではライバル とポジションを争っているのだが、サーキットに来る までの準備段階の話を聞くと、自分と向き合い、何か

を乗り越えようとしている雰囲気があった野尻選手。 ある意味、彼の最大の敵は“過去の弱かった自分自 身”だったのだろう。そして、それに打ち勝つことが できたからこそ、あの快進撃につながったと言えるの かもしれない。明らかに、レーシングドライバー“野 尻智紀”が大きく変わったと言える2021年だった。

次なる目標は“2連覇” そのための対策に早くも着手

迎えた2022シーズン。3月初旬の鈴鹿公式テスト には、カーナンバー1がつけられたTEAM MUGEN のマシンに乗り込む野尻選手の姿があった。スーパー フォーミュラ初タイトル獲得以降、シーズンオフはメ ディアの取材や地元自治体への表敬訪問など慌ただし い時間を過ごしていたが、その間に気持ちの面でもし っかりと振り返りができた様子だった。

「(カーナンバー1は)乗っていたら自分からは見えな いので、いつもと変わらない感じですけど、コースの 内外から注目されると思いますので、色々な責任感を 持ってやらなきゃいけないなという思いでいます」。

「今まではチャンピオンを獲らなきゃという気持ちが 大きくて、『チャンピオンを獲ること』、『結果を残す こと』ばかりに縛られていて、それらが自分の重荷に なっていたような気がします。自分のパフォーマンス につながってくれればいいですけど、そうでないとき も多かったんです。でも、こうして1回獲ったからこ そ、チャンピオンというものを変に意識せず『レース に勝つ』ということだけを考えて、色々な準備ができ ているのかなと思います。なので、例年よりも集中で きているという印象ですね」。

もちろん、2022シーズンは2年連続でチャンピオ ンを獲得することが目標なのだが、そこに向けては昨 年の経験を活かし“さらなる完璧”を求めている雰囲 気がテストでうかがえた。

「2連覇のために、ひとつひとつレースを勝つ、そこ を意識していきたいです。昨年は鈴鹿があまり良くあ

りませんでした。優勝こそしましたが、速さという点 では物足りなかったですし、鈴鹿が一番ライバルと戦 えていない印象です。今年は鈴鹿大会が3戦に増える ので、攻略に主眼を置いてテストを進めています。現 時点の感触としては今一歩ですが、よくない問題を解 決できればと思っています」。

「年が変わってしまえば、スタートは横並びの状態だ と思っています。カーナンバー1だからこそ、チャン ピオンを獲る厳しさだったり、大変さを理解している つもりです。そういったものを今年良い方向に生かし ていければいいのかなと思います」。

チャンピオンを獲得したことで自信に満ち溢れ、ひ とつひとつの状況を落ち着いて話してくれる野尻選 手。昨年の経験は間違いなく彼を進化させた。よりい っそう強くなった野尻選手が、どんな走りを見せてく れるのか? 4月の開幕戦から目が離せない。

2022シーズン、野尻選手が見据える目標はスーパーフ ォーミュラ2連覇だ。チャンピオンを獲得した自信と経 験を基に、さらなる飛躍を遂げてくれるに違いない。

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2021年全日本選手権〝初

初栄冠

全日本ラリー選手権ドライバー部門

2021年は全10戦が計画されていた全日本ラリー選手権。しか し、開幕戦嬬恋と第8戦横手が中止、第4戦久万高原は10月末に 延期され、最終的にターマック4戦+グラベル2戦+ターマック 2戦というシリーズ構成に変更された。ここでは、変則的だった 2021年シーズンを戦い抜き、初めて全日本チャンピオンに輝い たドライバーとコ・ドライバーに王座獲得の心境を伺った。

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特集 ラリー/RALLY

の誉れ 〟チャンピオンインタビュー

/コ・ドライバー部門編

PHOTO/CINQ、遠藤樹弥[Tatsuya.ENDO]、加藤和由[Kazuyoshi.KATO]、 小竹充[Mitsuru.KOTAKE]、佐久間健[Takeshi.SAKUMA]、 中島正義[Tadayoshi.NAKAJIMA]、山口貴利[Takatoshi.YAMAGUCHI]、 JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]、TOYOTA.GAZOO.Racing  REPORT/廣本泉[Izumi.HIROMOTO]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

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日本ラリー選手権の2021年シーズン、 JN2クラスで圧倒的なパフォーマンスを 見せたのが、ヘイキ・コバライネン選手だ

った。コ・ドライバーの北川紗衣選手と開催8戦中6 戦に出場したコバライネン選手は、出場全戦で勝利を 挙げ、JN2クラスのドライバー部門でチャンピオンを 獲得。1979年の全日本ラリー選手権設立以来、初め ての外国人チャンピオンに輝くこととなった。

コバライネン選手はご存知のとおり、2006年から 2014年にかけてFIAフォーミュラ1世界選手権(F1) で活躍した生粋のレーシングドライバーで、2015年か らは日本のスーパーGTに挑んでいる。その一方で、 2015年にはフィンランドラリー選手権でラリーデビ ューを果たしたほか、2016年にはラックラリーチーム からGT86 CS-R3で全日本ラリー選手権に参戦する

など、スポットながらラリー活動を並行させていた。

日本のレース活動の傍らで全日本ラリー選手権へ参 戦した理由について、コバライネン選手はこう語る。 「スーパーGTは3週間や4週間と長いブレイクがあ るからね。他のドライバーはスーパーフォーミュラや スーパー耐久に参戦してるけど、僕の場合は、その間 のトレーニングとして全日本ラリー選手権を選んだん だ。まったく違うカテゴリーだし、マシンもまるで違 うけど、頭や気持ちの上でも、いいトレーニングにな ったんだ。それに、全日本ラリー選手権はコンペティ ティブなシリーズだと思う。ホビーで楽しむジェント ルマンもいるけど、トップ10に入るドライバーとチー

ムはレベルが高いしクルマも仕上がっている。なので、 ここで勝つためには経験と進化が必要だったんだ。始 めた頃は、十分なスピードがなかったんだよね」。 さすがのF1パイロットも始めた当初は苦戦を強い られていたようだが、コバライネン選手は2019年の 第9戦ハイランドマスターズで初優勝を獲得すると、 2021年にはスーパーGTと並行して、全日本ラリー 選手権には合計6戦に出場。参戦全勝という圧倒的な 成績を挙げて全日本タイトルを獲得してみせたのだ。

ウェットではスピーディに走れた

2021年シリーズで印象に残った一戦については、 「グラベルラリーならラリー・カムイかな。上原(淳) 選手が強いし、僕はシーズン初のグラベル戦だったの で、多くのミスをしていたんだ。でも、その中で勝つ ことができたから、本当にラッキーだったと思う。タ ーマックラリーは、全般的に良かったし、強かったと 思うから、どこがベストだと言うのは難しいかな。で も、雨のスリッパリーなコンディションでは、とても 速かったということは言えるね。ドライだと中平(勝 也)選手が速くて、大きな差は生まれなかったけど、

ウェットではスピーディに走れていたので、JN1クラ スのタイムを意識していたんだ」と語る。

ウェット条件のラリーで速く走れた理由としては、 「タイヤの選択がうまくいったね。他のドライバーは フルウェットタイヤを選択する中、僕たちはドライタ イヤのソフトコンパウンドで走ることが多かったん だ。状況によっては、僕たちのタイヤ選択が合ったこ とも多くて、それがアドバンテージになっていたと思 う。それに僕はフィンランドにいた時から雪や氷など のスリッパリーなコンディションを楽しんでいたし ね。スーパーGTでもレインコンディションが得意 で、2016年のもてぎで、キャリアで唯一のポールポ

ジションを獲った時もウェット路面だったんだ。なぜ か分からないんだけど(笑)、ウェット路面でもグリッ プの感覚が良く感じることができるんだ」と分析する。 コバライネン選手がラリーで重視しているポイント を聞くと、ペースノートという答えが返ってきた。 「ラリーにおける僕の最大のチャレンジが、ペースノ

2015年からスーパーGTのGT500クラスに参戦したコバライネン選手。 2021年は39号車DENSO KOBELCO SARD GR Supraを中山雄一選手と 走らせた。そして、日本のレース活動は2021年で終了することに。

Heikki KOVALAINEN
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2021年全日本ラリー選手権JN2チャンピオン ヘイキ・コバライネン選手/北川紗衣選手

AICELLOラックDL速心GT86 R3[ZN6 86]

ィなセクションではレーシングラ インも重要だと思っている。僕は レースキャリアがあるから、他の ドライバーよりも、慣性をキープ できるラインを見つけることがで きるんだと思う」と自己分析する。

タイトル獲得の50%は 彼女のおかげだと思う

もちろん、このドライビングを 実現するためにはコ・ドライバー の存在も大きいと語っている。こ れまでコンビを組んできた北川紗 衣選手については、 「ミスをしないし、ノートのリー ディングも安定している。それに 彼女の声はとても聞き取りやす い。ラリーのオンボード映像を見 ていると、コ・ドライバーが叫ぶ ようにノートを読んでるシーンが あるよね。僕はあれが苦手で

コバライネン選手は2016年から全日本 ラリー参戦を開始。2021年は、全日本ジ ムカーナドライバーでもある牧野太宣氏 率いるRally Team AICELLOがプリペア するGT86 CS-R3を駆り、コ・ドライバ ーには2010年全日本チャンピオン北川 紗衣選手を起用。スーパーGTと並行し て6戦に参加し、11月のFORUM8 Cent ral Rally 2021にも参戦した。

ートを作ることだったんだ。僕らはセカンドループで タイムを上げることができていたんだけど、それは、 ファーストループの走行の後にペースノートをうまく インプルーブできたからなんだよね」。

ちなみに、コバライネン選手のペースノートシステ ムは独特で「日本のドライバーはコーナーの大きさを 数字で表現してるけど、僕は“スロー”や“ファース ト”、“ミディアム”などと言葉で表現してるんだ。数 字で表すのは距離だけ。これはフィンランドのスタイ ルで、向こうで学んだ手法なんだよね」とのことだ。

さらに速度のコントロールを重要視しているよう で、「例えばナローでツイスティなステージは、慣性 をキープすることが重要で、タイトコーナーが続く場 合は必要以上にブレーキを使わず慣性をキープしなが ら、できるだけ早くコーナーの出口を目指すんだ。コ ーナー入口ではコンサバティブにスピードを落とすけ ど、脱出スピードが速いことがタイムに繋がってると 思う。それに、JN2クラスのクルマはエンジン回転を 落としてしまうとパワーが出ないので、僕は可能な限 り高い回転を維持するようにアクセルを調整している んだ」と語る。

そして、コーナーのライン取りについても「ツイステ

(笑)、コ・ドライバーにはどんな状況でも同じトーン で読み上げて欲しいんだ。北川選手はそれを良く分か っているし、僕のペースノートシステムも理解してい る。リーディングのタイミングもいいし、マネジメン トも良かった。タイトルを獲得できた要因の50%は 彼女のおかげだと思う。コ・ドライバーとのマッチン グに自信がなければ、あんなハイペースでは走れなか ったと思うよ」と高く評価する。 そして、所属チームであるアイセロについても、 「チームが競争力の高いクルマを用意してくれたよね。 セットアップもタイヤ選択もうまくいった。丹後ラリ ーでは2回パンクしてもステージをフィニッシュでき たし、アクシデントやメカニカルトラブルがなく、 2021年は全てのラリーで完走することができた。チ ームが強くて安定していたことの証だよね」と語る。 「2015年に来日した時、実は、スーパーGTと全日 本ラリー選手権で勝つことをイメージしていたんだ。 スーパーGTでは2016年にタイトルを獲得できたけ ど、全日本ラリー選手権は、ステージを熟知して、ペ ースノートもセットアップもできている日本人がライ バルだから、外国から参加するドライバーとしては簡 単なことではなかった。でも、4年間の経験を重ねて、 進化することができたんだ。だから、全日本ラリー選 手権でタイトルを獲得できたことは誇りに思う。スー パーGTと全日本ラリー選手権のタイトル獲得という 当初の目標を達成できて、本当に満足しているよ」。 2021年を最後にスーパーGTでの活動に休止符を 打ったものの、全日本ラリー選手権にはマシンと参戦 クラスを変更して2022年も引き続きシリーズ参戦を 予定している。新天地でのさらなる活躍に注目だ。

初栄冠の誉れ
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日本ラリー選手権のJN3クラスでは、例年 以上に激しいタイトル争いが展開された。 実質的な最終戦として開催された第4戦久 万高原ラリーまで僅差のバトルが続き、その混戦を抜

け出して、2021年のJN3クラスでドライバーチャン ピオンに輝いたのが大竹直生選手だった。

大竹選手は奴田原文雄選手が主宰する「ヌタハララ リースクール」の門下生で、2019年に全日本ラリー選

手権にデビューした若手。「2021年はチャンピオンを 獲るつもりで挑みました」と、勝負の年としてJN3ク ラスに挑んだものの、その緒戦となった第2戦新城ラ リーでは苦戦の展開が待っていた。

「もともとターマックは苦手な部分があって、新城ラ リーは初挑戦でもあり、ドライ路面のレグ1からうま く走れませんでした。レグ2はウェット路面になった のでさらに遅れて、ステージ毎に離されました。順応 できず、攻めきれないまま終わったという感じです」。

緒戦を6位でスタートした大竹選手だが、2戦目の第 3戦ツール・ド・九州 in 唐津では躍進を見せる。

「唐津は2019年に参戦しましたし、新城ラリー後の インターバルで、テクニックステージタカタを走り込 みました。そのおかげで気持ち良く走れましたね。レ グ1で後続との差を開くことはできたんですけど、ラ リーリーダーになるのは初めてだったので、後続との ギャップを見ながら走ることが難しかったんです。数 十秒のギャップがあっても、『大丈夫かな……』と心配 しながら走っていたので、フィニッシュした時は、う れしいというより、ホッとしました(笑)」。

乱高下するターマックの成績

そんな大竹選手は、この唐津で全日本ラリー初優勝 を果たす。こうして待望の一勝を得たものの、続く第 5戦丹後では、SS1でいきなり痛恨のクラッシュを喫 し、失意のなかでラリーを終えている。 「丹後ラリーのステージは、地方選手権で経験してい たので、ここでは攻めようと思っていました。です が、雨が降って難しいコンディションになりました し、ペースノートも良くなくて……。クルマも壊して しまったので、めちゃくちゃ凹みましたね……」。 このクラッシュがメンタル的に影響したようで、続 く第6戦モントレーでは6位に留まってしまう。 「クルマの修理が間に合わなくて、RPN車両を借りて 参戦したんですけど、壊したらいけない……という気 持ちが強かったですし、レグ2は苦手なウェット路面 になったので攻めきれませんでした。表彰台を獲得し てポイントを獲りたかったので悔しかったですね」。 足踏み状態が続いた大竹選手だが、シリーズ中盤の 得意なグラベル連戦がやってくると復調を果たした。 「2019年に経験していたし、グラベルが得意という こともあって優勝を狙っていきました」と語るように 第7戦ラリー・カムイでは持ち前の勢いを見せた。 「レグ1は調子が良くなくて出遅れてしまいました。 レグ2で追い上げたんですが、ミッショントラブルが 発生して……。でも、20分間のサービスでミッション 交換をしていただいたおかげで何とか勝つことができ ました。奴田原さんから“最初がダメでも結果が1位 ならいい”と褒めてもらえたのでうれしかったです」。  シーズン2勝目を挙げた大竹選手の勢いは、グラベ ルラリーの第9戦ラリー北海道でも健在だった。 「横手ラリーがなくなったので、タイトル争いを考え るとラリー北海道で勝つしかないと思っていました。 過去に2回経験があったので、レグ1から気持ち良く 走れました。唐津から少し成長したのか(笑)、ラリー 北海道のレグ2では、後続とのギャップを見ながら余 裕を持って走ることができたんですよ」。

こう語る大竹選手は得意なグラベル2連戦で連勝を 成し遂げ、シーズン3勝目を獲得した。

この結果、JN3クラスのランキング首位に浮上した 大竹選手だが、第10戦ハイランドマスターズでは、 またしても苦戦の展開を強いられることになった。 「やっぱり、ターマックが課題なんですよね……。ハ イランドでもドライのレグ1から遅れましたし、ウェ ットのレグ2も厳しかった。最低でも4位に入ってい ないとタイトル争いは苦しくなるので、ギリギリで4 位に入ることができたのでホッとしました」。 そして、大竹選手と鈴木尚選手、長﨑雅志選手の3 名がドライバータイトル獲得のチャンスを残すなか、 最終戦となる第4戦久万高原ラリーを迎えた。 「ランキングは首位でしたが、有効ポイント的には優

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勝か2位じゃないとタイト ル獲得は厳しかったので、 ここは勝つつもりでいきま した。でも、SS4ではグレ ーチングに当たってバース トしてしまったので、ちょ っと離されてしまったんで すよね」。

最後の最後で まさかの展開に

レグ1の大竹選手は3番 手でフィニッシュ。そして レグ2は雨の影響により、 大竹選手が苦手とするウェ ットターマックというコン ディションとなった。 「攻めるしかない状況だっ たので、吹っ切れたのか、 この時はまったく恐怖感が

2021年全日本ラリー選手権JN3チャンピオン

大竹直生選手/藤田めぐみ選手

ADVAN KTMS ヌタハラRS 86[ZN6 86]

大竹直生選手を支える実父の大竹公二氏は全日本ダートトライアラー。中国 地区のスバル使いとして長年活躍し、”破壊王”の異名を持つことでも知られる。

が2番手に繰り上がり、JN3クラスを2位フィニッシ ュ。この結果、大竹選手が自身初となる全日本ラリー 選手権のドライバーチャンピオンに輝いた。 「実は、この最終ステージでは、僕のクルマもエンジ ンが壊れていたので、ゆっくりとサービスパークに戻 っていました。長﨑選手がコースアウトしたのも知ら なかったので、サービスパークに着くまで、2位に上が ってタイトルを獲得していたことが分からなかったん です。サービスパークでは、とてもうれしくてチーム の全員とハグしました。初日ではタイヤトラブル、2日 目にはエンジントラブルに見舞われただけに、諦めず に走り続けることの大切さを痛感しました」。

大竹選手の2021年は、浮き沈みを繰り返す激動の シーズンとなった。それでもタイトルを獲得できた要 因を振り返ってもらうと、「シーズンを通して諦めず に走れましたし、シーズン中もヌタハララリースクー ルやコ・ドライバーの藤田(めぐみ)選手のサポートが あったおかげで、この1年間で進化して、少しでも成 長できたことがタイトル獲得に繋がったんじゃないか なと感じています」と自己分析した。

大竹選手のコ・ドライバーは藤 田めぐみ選手。JN3王座決戦は 最終戦までもつれ込み、コロナ 禍の影響で10月末に延期され た第4戦久万高原で大竹選手が 初タイトルを確定させた。

2021年のタイトル争いは鈴木尚選手との対決。最終戦の第4戦久万高原で は鈴木選手に惜敗したが、有効3点差で大竹選手がタイトルを奪取した。

ありませんでした」と語るように、大竹選手は鬼神の 追い上げを披露してみせた。

しかし、順位としてはタイトル獲得圏外の3番手 で、万事休すという状況……。ところが、2番手につけ ていた長﨑選手が、何と最終ステージでコースアウト からのリタイアを喫してしまう。その結果、大竹選手

こうして初参戦からわずか3年目にして全日本タイ トルを獲得した大竹選手だが、2022年初旬に大きなニ ュースが飛び込んできた。何とTOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムの選考を勝ち抜 き、2022年は選抜ドライバーの一人としてフィンラン ドを拠点にラリー活動を開始することになったのだ。 「ドライバーのスキルアップには、一番の環境だと思 いますので、色々と吸収して結果を残したいですね」 と語る大竹選手。頂点を目指す新たな挑戦に注目だ。

初栄冠の誉れ
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WRCに羽ばたく 次世代ドライバー

TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムに 国内ラリーから3名が選出

いざフィンランド修業へ!

本からFIA世界ラリー選手権 (WRC)で活躍できる若手ドラ イバーを発掘し、育成するため に2015年にスタートしたTOYOTA GAZ OO Racing WRCチャレンジプログラム。

最初の選抜で選ばれたのは勝田貴元選手 で、2021年のサファリラリーでは2位入賞 を果たし、自身初の表彰台を獲得したこと は記憶に新しい。そしてこの度、勝田選手 に続く次世代を担うドライバーが新たに選 出され、小暮ひかる選手と大竹直生選手、

大竹直生選手

大阪府出身/ 2000年生まれ

山本雄紀選手

京都府出身/ 1997年生まれ

山本雄紀選手が、TOYOTA GAZOO Rac ing WRTに所属する講師陣らによる本格 的なトレーニングを受けることになった。

TOYOTA GAZOO Racingでは、2021

年8月に新規参加者の募集を開始。2022 年1月末には、60名の応募者から選ばれた 8名が活動拠点のフィンランド・ユバスキ ュラに集結し、最終選考となる2週間のト レーニングキャンプに参加していた。

このキャンプでは市販マシンのGRヤリ スやクロスカート、Rally4車両によるドライ ビング技術やフィジカル面、メンタル面の テストを実施。チーフ講師であるミッコ・ ヒルボネン氏を筆頭に、ヨウニ・アンプヤ 氏、ユホ・ハンニネン氏らが担当し、現時 点のスキルよりも、プロのラリードライバ ーになるためのポテンシャルを考慮し、学 習能力と適性が重視されたという。

その結果、18歳でラリーを始め、2021 年の全日本ラリー選手権でJN3クラスの チャンピオンに輝いた21歳の大竹選手、

2006年にカート、2020年にTRDラリー

カップでラリーを始め、2021年には東日

小暮ひかる選手

本ラリー選手権で活躍した20歳の小暮選 手、2018年にTOYOTA GAZOO Racing ラリーチャレンジへの参戦を開始し、2021 年には全日本ラリー選手権JN6クラスで ルーキーながらいきなり2勝をマークした 24歳の山本選手が選出された。 彼らは4月上旬にはWRCチャレンジプ ログラムの育成ドライバーとしてフィンラ ンドへと渡り、ペースノートの作成やRal ly4車両の走行によるトレーニングを実施 し、夏以降はRally4車両でフィンランドや 欧州のラリーに参戦する予定となっている。 「2週間に渡る候補者8名の姿勢には本当 に感心させられました。彼らは一生懸命で 自分の限界に挑戦しようと努力していまし た。私たち講師は将来最も有望なドライバ ーを選ぼうとしましたが、これは決して簡 単な決断ではありませんでした」と語るの はチーフ講師のヒルボネン氏。今回選出し た3名のドライバーに対しては「自身のキ ャリアをよく学び、常に進歩させようとい う強い意志が感じられました。またトレー ニング期間中の成長度合い、講師からのア ドバイスの習熟度、プレッシャーのかかる 様々な状況への対応といった点も印象的で した。今後の彼らには明るい未来が待って いると信じています」と期待を寄せた。

TOYOTA GAZOO Racingネクストジ ェネレーションからGRヤリスRally1で WRCにフル参戦中の勝田貴元選手。今回 の選考では勝田選手のようなレース畑では なく、国内ラリー界のドライバーにチャン スが与えられたことも特筆すべき点と言え る。勝田選手とともに日本のラリーの未来 を背負う彼らの成長に期待したい。

群馬県出身/ 2001年生まれ 日
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日本ラリー選手権の最高峰JN1クラスでは シュコダ・ファビアR5の福永修/齊田美 早子組とGRヤリスの勝田範彦/木村裕介

組が激しいタイトル争いを展開。それを制したのが勝 田/木村組で、勝田範彦選手を助手席からサポートし た木村選手が自身初の全日本チャンピオンに輝いた。

コ・ドライバー木村選手の全日本デビューは2013 年。2021年は勝田範彦選手と初めてコンビを結成し、 しかもチームはワークスとも言えるTOYOTA GAZOO Racingで、マシンは新型モデルのGRヤリスだった。 「勝田選手から直接連絡が来た時はビックリしました。

新車でトップクラスに挑める最高のチャレンジでした からね。でも、勝田選手のペースノートのタイミング は独特ですし、開幕前に何回か合わせたんですが、完 璧とは言えない状況だったので不安はありました」。

木村選手の2021年は期待と不安が入り交じる中で 幕を明けることになったが、序盤はやはり好調とはい かなかった。緒戦の第2戦新城ではSS1のスタート直 後にエンジントラブルでリタイア、第3戦唐津では4 位に入ったものの「ペースノートが伝わっているのか不 安だった」そうで「ペースノートが合ってきたのは京都 ぐらいからでした」と語る。しかし、第5戦丹後では 2位入賞を果たしてGRヤリスに初の表彰台をもたら したが、第6戦群馬では4位に留まっている。

「最初はWRX STIで作ったペースノートでしたが、 群馬辺りからGRヤリスに合わせて修正していきまし た。それに僕は淡々と読む方だったので、勝田選手か らは石田(裕一)選手のように抑揚をつけて欲しいと言 われました。それから車載映像を見ながらアクセント の強弱を勉強して、まだまだあの“石田節”には程遠 いですが(笑)、勝田選手の指示は減ってきました」。

そしてシーズン初のグラベル戦となった第7戦ラリ ー・カムイでは、ついに歓喜の瞬間が訪れた。GRヤリ スで全日本ラリー初優勝を獲得したのだ。

「グラベルの走りはスムーズでしたし、ターマックよ りペースノートのタイミングも合っていたと思います。 レグ2は絶対ミスできない状況でしたが、ノートを読 み遅れてコースアウトしそうになったこともあり、最 終ステージを終えた後も最終TCまでは緊張していま した。優勝の実感が湧いたのは、パルクフェルメにマ シンを入れてサービスパークに戻ってからでしたね」。 続く第9戦ラリー北海道では「リアサスに不調を抱え ていたので最後まで不安でした」と語りながらもグラベ ル2連勝を達成。第10戦ハイランドマスターズでは 「レグ2はウェットだったので手探り状態でしたが、ベ ストを尽くして勝つことができました」とGRヤリスに ターマック初優勝をもたらし、3連勝を獲得した。 ランキング首位で迎えた最終戦の久万高原では、タ イヤ戦略の賭けに出て失敗したかと思われたが、恵み の雨で、2本のタイヤが追加されることになった。 「福永選手を追うためにレグ1でタイヤを使い切って いたので、レグ2の雨で『ヨッシャ!』と思いました。

ターマックではFIA R5車両が他を圧倒した2021年。JN1クラスのタイトル争い は10月末の第4戦久万高原までもつれ込み、勝田範彦選手が逆転で制した。

ラリーで雨が降って喜んだのは初めてですね(笑)」。 この好機を活かした勝田/木村組はレグ2で逆転。4 連勝を獲得して、激戦のJN1クラス王者に輝いた。 「新車なので2021年はデータ収集のシーズンだと思 っていましたが、岐阜で勝った時にタイトルが見えて きて、久万高原でダンロップさんのチャンピオンキャ ップをもらって実感が湧きました。初めてのタイトル、 しかも、最高峰のJN1ですからね。勝田選手のフィー ドバックは的確でしたし、メカニックもそれに応えて いました。そして、GRヤリスが進化してくれたことが タイトル獲得の大きな要因だと思います」。 2022年も勝田/木村組はGRヤリスでJN1クラス に参戦する予定で「まだコ・ドライバーとしては100% の仕事ができてません。勝田選手にはドライビングだ けに集中してもらえるよう、うまくマネジメントして いきたいですね」と意気込みを語る。シリーズ連覇に挑 む勝田/木村組とGRヤリスの熟成に期待が集まる。

初栄冠の誉れ 25

日本ラリーにも慣れてきたし、コロナ禍の 影響で参加台数も少ないので、タイトルを 獲得するには絶好のチャンス。そう思って 2021年はフル参戦しました(笑)」と語るのは、2021 年の全日本ラリー選手権でJN4クラスのドライバー チャンピオンに輝いた西川真太郎選手だ。

西川選手は2017年に全日本デビューを果たし、 2021年はタイトル獲得を狙ってフル参戦した。緒戦 の第2戦新城では「ドライのレグ1はタイヤ選択を間 違えてタイムが伸びませんでした」と語るものの、ウ ェットで争われたレグ2では「いつも雨のターマック はビビってしまうんですが、この時は上手く走れまし たね」と追い上げ、逆転で全日本初優勝を飾った。

その勢いは第3戦唐津でも衰えず、レグ1からハイ ペースを維持した。しかし「ペースを上げた結果、レ グ1の最終ステージで足回りを破損しちゃって……」 と2番手に後退してしまう。「スペアパーツがなくて、 平塚(忠博)さんがダンパーを探してきてくれて、何と か一晩で修復してくれました。万全の状態に戻しても らえたので、楽しくて全開でいきました」と、西川選 手はレグ2で逆転を果たし、2連勝を達成する。

「新城で初優勝しましたが、中止になった大会です し、鬼久保ステージでは走り負けていました。唐津で は他力本願ではなく走り勝てましたから、皆さんの協 力があって勝つことができたのが印象的でしたね」。

しかし、第5戦丹後では苦戦の末に2位に終わる。 「レグ1が雨で、経験豊富な須藤(浩志)選手に追いつ けませんでした。コ・ドライバーの本橋(貴司)選手に “まったく乗れてないよ”と言われる始末で(笑)。ド ライのレグ2でベストを出して追い上げたんですが、 追いつくことはできませんでした」。

その悔しい思いは第6戦群馬で払拭された。モント レーはホームラリーでもあったため、「レグ1から自

信を持って走れましたね。レグ2は雨が降りました が、抑えすぎずにアタックできました」と終始安定し た走りで3勝目を挙げた。このまま躍進が続くかと思 われたが、グラベルの第7戦カムイでは失速。何とレ グ2でコースアウトからリタイアを喫してしまった。 「もともとグラベルは苦手なんですが、台数が少なか ったので、ここは確実に完走したかったんです。先に コースアウトしていたクルマに引き寄せられるように 自分もコースアウト。クルマのダメージはなかったん ですが、メンタル面でダメージを受けました……」。 大量得点のチャンスをフイにした西川選手だが、続 く第9戦ラリー北海道では堅実な走りを披露した。 「周りから“がんばるな!”と言われたので(笑)、完 走を目指してペースを落としました。ラリー北海道で はちゃんと完走できたので、ホッとしましたね」。 こうしてランキング首位をキープした西川選手は、 第10戦岐阜でタイトル確定の大一番を迎える。 「3位以上で完走すればタイトル確定なので、何とか ここで決めたいと思ってました。レグ1はトップでし たが、2番手とは10秒差ぐらいだったので、レグ2も 気を緩めずに走りました。それで後続とのギャップを 築くことができたんですが、最終ステージのゴール手

第10戦岐阜の勝利で初の全日本タイトルを決めた西川真太郎選手と本橋貴司選 手。二人のラリーを支えたチームの力がチャンピオン獲得を後押しした。

前でエンジンが3気筒になっちゃったんですよ」。 それでも無事フィニッシュを迎えた西川選手はシー ズン4勝目を獲得。この結果、自身初となる全日本チ ャンピオンに輝いた。タイトル獲得の要因については、 「平塚さんのおかげです。アドバイスは的確だし、セ ッティングも完璧でしたから。やはり達成感がありま すね。全日本タイトルに憧れていたけど、難しいと思 っていただけにうれしいです。タイトル獲得のために 我慢の走りをしましたが、目標は達成できたので、こ れからは攻めた走りでラリーを楽しみたいです」。 西川選手を支えた本橋選手の愛のムチ 西川選手とコンビを組んだのは本橋貴司選手。西川 選手と同様に、2021年で自身初の全日本タイトルを 獲得し、コ・ドライバーチャンピオンに輝いた。

「全
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”モンスターカラー”のスイフトスポーツで 戦い続けた西川/本橋組。大きなトラブル が発生してもチームの力で戦線復帰し、着 実にポイントを重ねることに成功した。

西川真太郎選手/本橋貴司選手 スマッシュDLモンスターitzzスイフト[ZC33Sスイフトスポーツ]

本橋選手は元々ドライバーで、ドライバーとしては 2004年に全日本デビューを果たしている。コ・ドライ バーとしては2015年からの参戦で、西川選手とコンビ を組み始めたのは2016年の群馬県シリーズ。2018年 からは西川選手と全日本ラリーに挑戦している。 「2020年は転職してバタバタしていたので、ラリー 活動を休止していたんですけど、2021年には西川選 手と復帰しました。自分のことより西川選手を勝たせ たいという気持ちが強かったですね」と語る本橋選手。 そのチャンスは第2戦の新城ラリーで訪れた。 「西川選手はスロースターターで、レグ1で出遅れる ことも多かったんです。その都度、走りについてフィ ードバックしていましたが、あまり焦りみたいなもの はありませんでした。新城のレグ2はタイヤが路面に 合っていたことが大きかったと思います。初優勝は嬉 しかったですね」と本橋選手は語る。

ウトだったんですよね」と、大 量得点の機会を失ってしまっ た。この教訓から第9戦ラリー 北海道では確実な走りで3位に 入賞。この時の心境については 「ストレートでもセーブするぐ らい抑えました(笑)。でも、ポ イントが獲れたのでラクになり

ましたね」と語る。

本橋貴司

2021年コ・ドライバーチャンピオン全日本ラリー選手権JN4クラス

第3戦唐津ではレグ1でのサスペンション破損とい うトラブルからの逆転優勝となったが、その時の心境 については「チームに勝たせてもらいました。連勝で すし、やはり嬉しかったですね」と語る。

第5戦丹後では雨のレグ1での出遅れが響いて2位 に惜敗しているが、「西川選手はウェットなど滑る路 面が苦手なんですよ。有視界走行に頼っている部分も 多く、レグ1は霧が出ていたのも厳しかったですね。

好天のレグ2で追い上げたんですけど届きませんでし た。でも、ドライの速さを改めて証明できましたね」。

続く第6戦群馬では西川/本橋組が今季3勝目を挙 げたものの、「西川選手はダートが苦手なので、この 時点ではタイトル獲得なんてどうなるか分からない状 況でした」と語る。この不安はシーズン初のグラベル 戦となった第7戦ラリー・カムイで的中した。

西川/本橋組はレグ1を4番手でフィニッシュした もののレグ2でコースアウト。「ポイントを獲得する ために、レグ1は“徐行”のような走りだったんです。

レグ2でも、そんな速度が出ていない所でのコースア

こうして西川/本橋組はJN4のタイトル争いに王手 をかけて第10戦岐阜を迎えた。「西川選手は緊張して ました。ぎこちない走りでしたね」と指摘するが、それ でもドライのレグ1を首位で折り返し、苦手な雨のレ グ2でも安定した走りでポジションをキープした。最 終SSではエンジントラブルに見舞われて、辛くもフ ィニッシュしたという状況だったが、シーズン4勝目 を獲得。そして、延期された第4戦久万高原を前に、 西川選手とともに本橋選手の初タイトルが確定した。

「自分はこれまでオープンクラスに出ることが多かっ たので、大会で優勝したいという気持ちはありました が、シリーズチャンピオンなんてリアリティがありま せんでした。それが現実になったので嬉しいですね」 とタイトル獲得の喜びを語ってくれた。

本橋選手は「今シーズンはチームの皆さんに助けら れたことが大きいですね。西川選手は、踏めていない のに踏めてると思い込んでるタイプで、丹後ラリーの レグ1では、あまりにも乗れていなかったので、ノー トを読みながらキレたこともあります(笑)。僕もドラ イバー経験があるので、乗れていない場合には、でき るだけ事実を伝えて現状をフィードバックするように していますが、2021年を見る限り、メンタル面を含 めて成長したと思いますよ」と振り返る。

西川選手も「本橋選手には、色々なところで怒られ ました(笑)」と語っていたが、本橋選手の“愛のムチ” が、西川選手の成長を後押ししたに違いない。

初栄冠の誉れ
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2021年全日本ラリー選手権JN4チャンピオン

造範囲が狭く、参戦コストも抑えられる全 日本ラリー選手権JN6クラスには、多く の若手が参戦している。この登竜門クラス

で素晴らしい飛躍を見せたのが吉原將大選手だった。

吉原選手は2年間のTRDラリーカップを経て、 2021年は、辻井利宏氏率いるMATEX-AQTEC RA LLY TEAMから全日本選手権に挑んだルーキー。そ

していきなり第2戦新城から6連勝を挙げ、参戦初年 でタイトルを確定させる速さを見せた。

彼の快進撃がスタートしたのは実質的な開幕戦とな った第2戦新城ラリーだった。「新城は初めてで、鬼 久保のような高速ステージは経験がなくて苦労しまし た」と語るものの、レグ1は晴れ、レグ2は雨と難し い状況の中で、全日本ラリー初優勝を挙げた。

第3戦唐津も初挑戦の場となったが、独特のワイン ディングロードを攻略して2連勝を挙げる。この時の 心境について吉原選手は「新城は2日目が雨で、タイヤ の性能に助けられたので、あまり優勝した実感がなか ったんですが、唐津はドライ路面でライバルに走り勝 てたので実感が湧きましたね。チャンピオン経験者で ある明治(慎太郎)選手に勝てたことが自信に繋がりま した。唐津の優勝は素直に嬉しかったですね」と語る。

第5戦丹後は、TRDラリーカップでいくつかのステ ージを経験していて、吉原選手によれば「得意なラリ ーのひとつ。レグ1は雨の中でドライタイヤで行った ので苦戦しましたが、それでも全体を通して自信を持 って走れました」とのことで3連勝を達成する。

「2021年はチャンピオン獲得が目標でしたが、そう 簡単にはいかないだろうとも思っていました。でも、

3連勝でタイトルが近付き、これ はもう行くしかないぞ! と思い ました」と手応えを掴んだという。

続く第6戦群馬も制して怒涛の ターマック4連勝を挙げた吉原選 手は、シーズン初のグラベル戦と なる第7戦カムイでも安定した走 りを披露した。

「グラベルラリー自体はTRDラ

リーカップで経験していましたが、北海道は初めてで したし、ヤリスでのグラベルも初。改造範囲の狭い JN6クラスだったので、無理しないように走りまし た。4連勝とはいえ、水原(亜利沙)選手もポイントを 重ねていたのでリタイアだけは避けたかった。だか ら、完走した時はホッとしましたね」と、堅実な走り で5連勝を達成した。

タイトル争いに早くも王手をかけた吉原選手だが、 第9戦ラリー北海道では「コ・ドライバーの佐野(元 秀)選手が北海道遠征が難しかったので、この2戦は 石田(裕一)選手に乗ってもらいました。石田選手のア ドバイスでペースノートの精度が上がりましたし、第 8戦横手ラリーが中止になって、この期間にグラベル テストを行ってセッティングも良くなりましたから、 ラリー北海道は自信を持って走れました」と語る。 この第9戦北海道で6勝目を挙げた吉原選手は、2 戦を残してJN6のドライバーチャンピオンに輝いた。 「チームと相談した結果、全日本の1年目は結果が出 しやすいクラスがいいだろうとJN6にしましたが、 ここまでうまくいくとは思っていなかったので驚きま した。チームのおかげで、何とか1年目でタイトルを 獲得できました。ありがたいという気持ちと、結果で お返しできたという安堵感がありました」と語る。 吉原選手は残り2戦をステップアップの準備と位置 づけ、第10戦岐阜では小藤圭一選手とJN5クラスに 参戦した。「JN5には天野(智之)選手のようなベテラ ンがいるので、挑戦するには最適なクラス。チームと 相談して次のステップにと考えていたので、腕試しの つもりでクラスを変更しました」と吉原選手は語る。 「でも、JN5クラスはクルマが速くて。SS1ではクル マをぶつけて意気消沈し、得意なステージは天野選手 に迫れましたが、苦手な箇所では大きく離される始 末。強豪ぞろいのJN5では、得手不得手なんて言っ てられず、とにかく走れないと勝負にならないという ことが分かりました」と格上クラスの手応えを語った。 吉原選手の2022年はJN5クラスのフル参戦を予定 していて「簡単にはいかないと思いますが、天野選手 に立ち向かえるようになりたい」と意気込みを語った。 後半戦はそれぞれの

全日本ルーキーながら第2戦新城からターマック4連勝を飾った吉原/佐 野組。吉原選手は第9戦ラリー北海道、佐野選手は第10戦岐阜で全日本 タイトルを確定させた。

チャレンジに

吉原將大選手と共に、2021年全日 本ラリーJN6クラスのタイトルを初 めて獲得したコ・ドライバーの佐野元 秀選手。北海道のグラベル2戦は遠征 が難しく、吉原選手とのコンビが組め なかったため、吉原選手と一緒にラリ ー北海道でタイトル確定とはならず、 佐野選手は第10戦岐阜までチャンピ オン争いが続くことになった。

佐野選手はローカルラリー経験を経

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2021年全日本ラリー選手権JN6チャンピオン 吉原將大選手/佐野元秀選手 KYB DLアップガレージYaris[MXPA10ヤリス]

トが発表された段階で払拭される。石田選手のオープ ンクラス出場が明らかになったため、この時点で佐野 選手のチャンピオンが確定することになったのだ。

「プロ野球などでも、最終戦で負けたのにライバルが 勝てなかったことで、自分の優勝が決まることがあり ますよね。僕もそうはなりたくなかったので、ハイラ ンドでは優勝を目指しました」と語る佐野選手。

ラリースト辻井利宏氏率いるMATEX-AQTEC RALLY TEAMは、国内ラリー を舞台に今後のモータースポーツ界を担う人材育成を行っており、特に全日 本ラリーにおいては若手の登竜門となっている。

て、2021年から全日本に挑戦したコ・ドライバーで、 「8年ほど前に群馬県戦でラリーデビューしましたが、 吉原選手とはその時からのコンビです」とのこと。そ れゆえ吉原選手とのコミュニケーションは完成度が高

かったが、「グラベル2戦は仕事の関係でスキップする 予定だったので、他のターマックをうまく戦えばタイ トルを狙えるんじゃないかとも思ってました」と語る。

第10戦岐阜では、吉原選手がJN5クラスに参戦し ていたことから、佐野選手は若手の山本雄紀選手の コ・ドライバーとしてJN6クラスに参戦した。 「山本選手の隣もハイランドマスターズも初めてでし たが順調でした。走る前にタイトルは決まってました が、狙い通りに勝って終われたので、2021年で一番 うれしい勝利だったかも知れません」と振り返る。

佐野元秀

2021年コ・ドライバーチャンピオン

事実、第2戦新城でいきなり全日本初優勝を飾って 存在感を示し、第3戦唐津では2連勝を達成する。

佐野選手は「もっと苦戦すると思いましたが順調で した。チャンピオン経験のある明治(慎太郎)選手を勝 たせて勢いをつけさせたくなかったのですが、無事に 勝てたので自信に繋がりました」と手応えを語る。

第5戦丹後では「経験したことがあるステージだっ たのでイメージは掴めていました。雨のレグ1では濡 れている箇所についてペースノートの精度に問題があ りましたが、勝つことができて素直に嬉しかったです ね」と佐野選手が語るように、3連勝を達成した。

さらに第6戦群馬では「本数の少ないロングステー ジで構成されていたので、大きく引き離されたら挽回 できない。そう思って最初から優勝を狙っていきまし た」という意識が奏功して破竹の4連勝を達成した。

「JN6のコ・ドライバーは、シーズンを通して参戦 する人が少なかったので、正直、4連勝した時点でタ イトルは獲れるだろうと思っていました。最終的にラ リー北海道には参戦できることになったんですが、吉 原選手はすでに石田(裕一)選手との参戦が決まってい

たので、チームと相談した結果、辻井(利宏)さんと JN5クラスに参戦することになったんです」。

格上クラスで戦ったラリー北海道については「JN6 よりも台数が多く速度域も高いので、いい経験ができ ました。でも、このグラベル連戦で吉原選手が連勝し たので、石田選手がランキング2位に浮上したんで す。残りの動向しだいではタイトル獲得が厳しくなる ので、正直、複雑な気持ちでした(笑)」と語る。

しかし、この不安は第10戦岐阜のエントリーリス

全日本ラリー選手権JN6クラス

「自分は数年前までは“観る側”だったので、全日本ラ リーに参戦するなんて思ってもいませんでした。そも そも負けず嫌いなので、毎戦”勝ちたい”という気持ち はありましたが、”チャンピオン”なんて信じられない 気持ちです。2021年は3名のドライバーと出場できて 貴重な経験ができました。開幕から連勝で勢いに乗れ ましたが、それもチームのおかげ。年間通してトラブ ルフリーで走り切れましたから、チームには本当に感 謝しています。自分たちは勝ち運はあると思うので、 実力以上のものを出せるようになりたいですね。これ から挑むJN5クラスはライバルが多いので、コ・ドラ イバーとしてのミスを減らして、少しでも上の順位に 行けるよう、ドライバーを導きたいと思います」。

前半の舗装4戦を吉原選手、終盤2戦を山本雄紀選手と参加し た佐野選手。第10戦岐阜ではエントリーリスト発表と同時に自 身のタイトルを確定させ、山本選手の全日本初勝利を支えた。

初栄冠の誉れ
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新たな可能性を秘めたジムカーナの未来形

全日本ジムカーナJG10クラス

注目の2022 年がついに開幕!

2021年からスピード競技の全日本選手権に新設されたオートマチック

ートマチック限定免許で運転で きる“2ペダル車両”を対象とし たクラスとして、2021年の全 日本ジムカーナ選手権にはJG9クラスと JG10クラスが新設された。

4輪駆動のP・PN・AE車両を対象にし たJG9クラスの2021シーズンは残念な がらシリーズ不成立となったが、2輪駆動 のP・PN・AE車両を対象にしたJG10ク ラスは、北陸の角岡隆志選手がポルシェ・ ケイマン、近畿の織田拓也選手はZC33S スイフトスポーツのAT車を持ち込み、 2021年は織田選手が初代チャンピオンに 輝いた。

そのJG10クラスが、設立2年目にして 本格的に盛り上がる兆しを見せている。

2022シーズンは3月12〜13日に筑波サ ーキット・コース1000で開幕したが、 JG10クラスには合計9台のAT/CVT車

両がエントリー。9台とも異なる車種とな り、国産のコンパクトやスポーツカーを始 め、海外のハイパフォーマンスマシンも登 場したことから、ジムカーナ新時代の到来 を予感させる幕開けとなった。

アルピーヌA110S × 山野哲也

なかでも最大の注目を集めたのが、全日 本ジムカーナ選手権V21という金字塔を打

ち立てている山野哲也選手と言えるだろう。 このジムカーナ界の鉄人がついにJG10に 移行して、アルミボディのライトウェイト スポーツ、ルノー・アルピーヌA110Sを 投入。事前テストから高いパフォーマンス を予感させて、大きな話題となっていた。 「国内のほとんどのクルマが2ペダルで、 パーキングブレーキもレバー式ではなく、 電気式が増えてますよね。この流れはもう 受け容れるしかなくて、そこで、2ペダル で、かつサイドブレーキレバーがなくても ジムカーナができる、ということを伝えた くてJG10に挑戦することにしたんです」。

JG10設定初年度の2021年はポルシェ・ケイマンで1勝を挙げた角岡隆志選手。2022年はルノー・ルーテシア に乗り換えて開幕戦に参戦。殿村裕一選手はコペンGR SPORTで継続参戦し、関東のフォーミュラ使い・関谷光 弘選手が86で参戦。24歳の新鋭・黒崎澪音選手はノートe-POWER NISMO Sで全日本デビューを飾っている。

オ PHOTO/遠藤樹弥[Tatsuya ENDO]、小竹 充[Mitsuru KOTAKE]、廣本 泉[Izumi HIROMOTO]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]  REPORT/廣本 泉[Izumi HIROMOTO]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]
限定免許で運転できる車両のクラスが2年目に突入。
大変革が予想される注目クラスの今季初戦の様子をレポートする!
特集 ジムカーナ/GYMKHANA
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2022年全日本ジムカーナ選手権JG10

山野哲也選手

EXEDY 12D A110S[DFM5P]

言わずと知れたジムカーナの鉄人・ 山野哲也選手がJG10に満を持して 参戦。車両はアルピーヌA110Sで、 ミッドマウントした1798ccターボ に7速DCTを組み合わせる。

こうキッカケを語る山野哲也選手。気に なるマシン選択の理由については、 「新車で買えることがクルマ選びの第一条 件でしたが、以前、アルピーヌA110Sに 乗ったことがあって、ハンドリングの印象 がすごく良かったんです。それにスペック を見たら、300馬力近いのに車両重量は 1100キロちょっとだったので、ジムカーナ では有利になると感じていました」と語る。 「このA110Sというクルマは、ミッドシ ップで前後ダブルウィッシュボーン。しか

もアルミボディなので、本当にいい素性を 持っています。現状では国内未投入です

が、300馬力モデルもラインナップされる ので、タイミングを見て、300馬力モデル の投入も検討しています」と高く評価する。

めちゃめちゃ楽しく伸び代も多い

2ペダル車両でのジムカーナの可能性に ついて山野選手は次のように説明した。 「A110Sに限らず、それぞれのクルマが そうですが、2ペダルのクルマでジムカー ナ走行をする場合、ドライビング面でのア ジャストが必要になりますね。例えば、ブ レーキングしながらタイトめなコーナーへ

2022年全日本ジムカーナ選手権JG10 河本晃一 選手

BSオーリンズBRZ(^o^v[ZD8]

JAFスピードPN車両が導入された当初からフェア レディZで全日本ジムカーナに挑んできた河本晃一 選手。2022年は新型BRZのAT車に乗り換え、“SH IFT_Gymkhana”を合言葉に新境地に挑む。

入ると、リアのイン側が浮きますよね。そ うなると3速でコーナーに入っていたとし ても、1輪だけ状態が違っているので、車 両側の制御が介入する。1速にダウンシフ トされたり、次の動作でアップシフトした いのに入らないとか、そういうことが起き るわけです。制御の介入を制限するスイッ チも各車にありますが、クルマの挙動によ っては、クルマ側が制御の制限をキャンセ ルすることもあるので、そういった電子制 御の介入を見越したドライビングやセッテ ィングが必要になってくるんです」。

今どきの量産車にはフェイルセーフに至

るあらゆる機構が装備されており、走行時 の安全を担保したい製造者側の思想と、そ れとは相反しがちな動きに持ち込みたいド ライバー側の意思を擦り合わせる、新たな “乗りこなし”のスキルが必要になってく るというわけだ。その上で、2ペダル車両 の魅力について次のように解説した。 「めちゃくちゃ楽しいですよ。A110Sもそ うですが、パーキングブレーキがレバー式 ではないクルマの場合、サイドターンした 方が速いセクションでは、サイドターンし たクルマに差を付けられてしまいます。で もそれはそれで、そもそも、滑るクルマを 操る楽しさはMTだろうとATだろうと変 わらないし、MT車ではヒール・アンド・ トゥなど、ある程度の運転手の技量が必要 ですが、ATではそれが必要なくて手軽に なったし、ステアリングやアクセル操作に 集中できるので、ドライバーのキャリアの 差も埋まってくると思います」。

ジムカーナ競技にはいわゆる“サイドター ン”が付き物と言われているが、JG10クラ スの参加車両にはパーキングブレーキがレ バー式ではない車両も多いため、他クラス とは別にサイドターンを廃したJG10専用 コースを設定する主催者も多かった。

2ペダル車両は難しさと楽しさの両面を 持っているが、そんな状況を乗り越えて、 山野哲也選手は2022年の開幕戦を制し、 A110Sのデビューウィンを飾っている。 「僕のキャリアの中でも2022年は大変革 となるシーズンです。以前は2ペダルでジ ムカーナをやるなんて思ってもいなかった し、開幕前の時点で3回ぐらいしか走れて いないので、走行モードの見極めも含め て、まだまだ実験的で完成度は30点ぐら いです。でも、伸び代は多いと思います」。

“サイドターン”が不要な JG10専用コースを設定!
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全日本ジムカーナJG10クラス 注目の2022 年がついに開幕! 特集 ジムカーナ/GYMKHANA

2022年全日本ジムカーナ選手権JG10

山野直也選手 マクラーレン東京600LT[ABA-P13SP]

全日本ジムカーナのほか、スーパー耐久などでも活躍する山野直也選手が、マク ラーレン600LTでJG10クラスに参戦。その理由について「自動車販売者とい う立場として、2ペダルのスポーツカーが戦えるクラスがあれば、比較的気軽に オーナーさんにスポーツ走行を体験してもらえる場になるのでは、と考えていた ので、そのトライアルとして参戦しました」と語る。「サーキット走行は、思った 以上にクルマに負担が掛かるんですよ。ジムカーナはクラッシュのリスクも低 いので、クルマを大切にする方にもオススメですね。サーキットに比べてジム カーナはコースがトリッキーですが、シフトミスも減るので、ATモードを積極的 に使ったほうがいいと思います」と語る。

2022年全日本ジムカーナ選手権JG10

安木美徳選手 ATSスノコBSスイフト4F4[ZC33S]

「ATSさんから、FF車のAT用のLSDを開発しているので参戦してみないか?  と声を掛けていただいてJG10クラスに挑戦しました」と語るのは、SA車両の EK9シビックでJG4クラスを戦っていた安木美徳選手。車両はZC33Sスイフ トスポーツのAT車で、これまでとは180度異なる仕様のマシンでの戦いとなっ た。「EK9では20年ぐらい、ずっとSタイヤで競技をやっていたので、ドライビ ングがまるで違いますね。まだまだ乗りこなせていませんが、新しい発見が多く て面白いです。AT車はシフト制御のレスポンスに特徴があって、左足ブレーキ を始め、MT車とは違うスキルが必要です。難しいんですが、それだけに楽しい んですよね」とのことだ。

2022年全日本ジムカーナ選手権JG10

古谷知久選手 アーイーストロックGT3RS[991MA175]

「19歳から27歳までJAF戦のジムカーナをやっていましたが、その後は草ジム カーナや草レースで遊んでいました。12月にサーキット走行用にポルシェ911 GT3 RSを購入したんですが、山野哲也選手がアルピーヌでジムカーナに出る というニュースを見て、2ペダルクラスがあることを知ったんです。それなら 911で出てみようかと思って参戦しました」と語る古谷知久選手。25年ぶりに ジムカーナ復帰を果たしたそうだが「久々のジムカーナだったのでコースを覚 えることが大変でしたが、やっぱり楽しいですよ。今後もサーキット走行と並行 しながらジムカーナに参戦したいですね」と意気込みを語る。繰り出すサウンド も必聴の要注目マシンだ。

新型BRZのAT車×河本晃一

山野哲也選手ともに2022年のJG10クラ スで注目したい存在は河本晃一選手にほか ならない。河本選手は2011〜2012年に PN2クラスでタイトルを獲得するなど、こ れまで日産フェアレディZで活躍してきた が、2022年は心機一転、新型スバルBRZ、 しかもAT車でJG10に挑むことになった。 「2011年からフェアレディZで戦ってき ましたが、ある程度の方向性が見えてきた ので、次のフェーズに移行したいと思って いました。そして、5年後の未来を考えた 時に『ジムカーナのカジュアル化』が必要な んじゃないかと考えていたので、2ペダル でも楽しめる世界観を創りたいという気持 ちもあったんですよね」とは河本選手。

車両選択の理由については「1000万円 級の輸入車も考えましたが、ベース車両の 素性の良さとMT車用のアフターパーツを 使えるというパーツ供給の柔軟性を考えて スバルBRZを選びました」と説明する。

“辻褄”をどうやって合わせるか

気になる2ペダル車両でのジムカーナに ついて、河本選手は「難しくて、奥が深く て、面白い」と語る。その理由について「自 動制御されるAT車は、クルマに合わせた 操作が必要になってきます。例えば、コー ナー進入で3速から2速に落とす際にAT車 はワンテンポ遅れますが、その遅れている 間にドライバーはアクセルを開けていたか ったりするワケですよ。そういう辻褄をど うやって合わせるのか? それらを見越し た組み立てが必要になるんです。特にBRZ は速度が50km/h以下にならないと1速に は落ちてくれないので、慣熟歩行では、車 両特性を踏まえたドライビングを想像しな がら走りを組み立ててます」とのこと。

それでも、河本選手は「コースによって は、MT車より速い場所もあると思います。

例えばストップ&ゴーのようなセクション では、どのクルマもしっかりスピードを落 としますよね。AT車でも1速に入ってくれ

るからMT車との差は少ない印象です」。 そして河本選手は意気込みをこう語る。 「目標はJG7クラスのMT車。同じポテ ンシャルを出せるように開発していきたい ですね。MT車の方が意のままにコントロ ールできますが、AT車でも十分に面白い 戦いができる。しかも、MT車よりもリー ズナブルにできることを伝えたいですね」。 以上、注目ドライバーを中心に、2年目 を迎えたJG10クラスの動向を紹介してき たが、山野哲也選手によれば「開幕戦のエ ントリーは9台ですが、その全てが違う車 種になりました。こんな異種格闘技戦にな ると面白いですよね。今回はマクラーレン やポルシェなどが出てますが、タイヤのル ール的には小さいクルマの方が、いわゆる “PNタイヤ”を使えるので、必ずしも大排 気量のハイパワーマシンが有利という訳で はないんですよね。間違いなくJG10クラ スは盛り上がると思います」と語る。 持続可能なジムカーナの未来は“2ペダ ル”が切り拓くのか!? 今後に注目だ。

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全日本ダートトライアル開幕!

JD11では “33スイフト”が活躍

日本ダートトライアル選手権にもオートマチック限定 免許で運転できる「JD10クラス」と「JD11クラス」

が設定されている。初年度は四輪駆動のJD10が不成 立だったが、二輪駆動のJD11では86/BRZが活躍し、JD11は後 輪駆動クラスの様相を呈していた。JD11にはFF車でも参戦でき る規則だが、未舗装路ではLSDの存在は無視できず、MT車と同じ

LSDを装着できる86/BRZが一世を風靡した格好だ。

そして新規定2年目の2022年、開幕戦の京都コスモスパーク には、2021年のチャンピオンマシンを引き継いだ佐藤秀昭選手 と小田桐由季選手、そしてチャンピオン小関高幸選手とタイトル

争いを演じた寺田伸選手、寺田みつき選手に加え、長いAT車歴 を誇る福西貴志選手という初年度の顔ぶれが並んだ。

そして、JD11クラスのファーストゼッケンを付けたのは、中 部の改造車使い・則信重雄選手で、SC車両のST202セリカから

ZC33SスイフトスポーツのAT車に乗り換えて参戦していた。

2021年はアクアやヴィッツ、32スイフトのスポット参戦があっ たが、33スイフトは初登場。次代を担う現行車であり、開幕戦の JD11唯一のFF車ということで注目が集まった。しかし、土曜

の公開練習ではクラス最下位となり周囲に苦境を予感させた。

ところが、日曜の決勝第1ヒートでは、則信選手の33スイフト が1番出走で1分47秒台を計測する。実はこのタイム、JD11クラ

スの2番手は1分49秒台であり、後続の JD9やJD8クラスよりも速いタイムとなって いて、決勝第1ヒート前半は前日までの雨の 影響で路面状況が悪化傾向にあったことを差

JD7クラスにはGR86と新型BRZがデビューした。GR86 でナンバー付きクラスに戻ってきたTeam.FUKUSHIMA の竹本幸広選手が新型車勢最上位となる2位を獲得。 JD11初代王者の小関高幸選手は、JD7クラスにAT車の新 型BRZで殴り込む孤高のチャレンジを開始した。

JD7 には GR86 /新型 BRZ が参戦!

2022年全日本ダートトライアル開幕戦 京都のJD11クラスは、33スイフトの則 信重雄選手が優勝。2位は86の寺田伸 選手、3位はBRZの佐藤秀昭選手。

し引いても、前日までの予想 を大きく覆す、驚きのベスト タイムとなっていた。

天候が回復に向かった第2ヒート。則信選手は自己タイムを更新 できなかったものの、自己タイムを上げた後輪駆動のライバル勢は 1分48秒台に留まる。この結果、則信選手がJD11クラスのデビ ューウィンを飾り、FF車にJD11クラス初勝利をもたらした。

「昨年から乗り換えの準備を進めていて、色々な方々から情報をい ただいて“デフなしオートマ”の33スイフトに合ったセットアップ を試行錯誤してきました。ある程度クルマは方向性が見えたので、 後は自分ですね。独特の乗り方があるので、今回はそこが少しでき たのかなと思います。オートマ車って面白くないイメージがあると 思いますが、33スイフトはトルクもパワーもあって、スピードもそ こそこ乗りますし、ダートラとしての楽しみは全然あるんですよ。 オートマでも意外と楽しかったのが発見でした」とは則信選手。

今回の33スイフトAT車の全日本ダートトライアル初勝利は、 後輪駆動車クラスの様相を呈していたJD11クラスの車両選択基準 に、一石を投じるリザルトとなった。

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INFORMATION from JAF

モータースポーツ公示・JAFからのお知らせ(WEB)一覧(2021年12月25日~2022年3月31日)

公示

日付 公示No. タイトル

2021年12月28日 [2021-WEB111]

2021年12月29日 [2021-WEB112]

2022年01月04日 [2022-WEB001]

2022年01月04日 [2022-WEB002]

2022年01月06日 [2022-WEB003]

2022年01月13日 [2022-WEB004]

2022年01月14日 [2022-WEB005]

JAF国内カート競技規則・細則の制定

2022年地方ラリー選手権カレンダー

2022年全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権統一規則の制定について

2022年全日本スーパーフォーミュラ選手権統一規則の制定について

2022年全日本ジムカーナ/ダートトライアル選手権統一規則の制定について

2022年日本ジムカーナ選手権競技会(JAF北海道ジムカーナ選手権第7戦)の開催日程の変更ついて

2022年日本ラリー選手権規定一部改正について

2022年JAF地方ジムカーナ/ダートトライアル/サーキットトライアル選手権クラス区分等について 2022年01月19日 [2022-WEB007]

2022年01月17日 [2022-WEB006]

2022年日本カート選手権規定及び2022年全日本/ジュニアカート選手権統一規則の制定について 2022年01月19日 [2022-WEB008]

2022年JAF地方ラリー選手権のクラス区分等について

2022年01月26日 [2022-WEB009] 登録車両申請一覧表

2022年01月26日 [2022-WEB010]

ロールケージ公認申請一覧

2023年以降の FIA KARTING ACADEMY TROPHYへの推薦について 2022年02月07日 [2022-WEB012]

2022年01月31日 [2022-WEB011]

2022年JAF近畿ジムカーナ選手権クラス区分等の変更について 2022年02月08日 [2022-WEB013]

2022年02月14日 [2022-WEB014]

2022年02月17日 [2022-WEB015]

2022年02月18日 [2022-WEB016]

2022年03月02日 [2022-WEB017]

2022年地方カート選手権カレンダー

2022年JAF近畿ジムカーナ選手権クラス区分等の変更について(訂正)

2022年全日本レース選手権競技会名称について

2022年JAF全日本ジムカーナ選手権第3戦の競技会名称変更について

2022年全日本ラリー選手権統一規則の制定について

2022年全日本ラリー選手権統一規則第8条クルーおよび参加車両の変更における特別措置について 2022年03月09日 [2022-WEB019]

2022年03月09日 [2022-WEB018]

2022年全日本ラリー選手権統一規則における運用について 2022年03月10日 [2022-WEB020]

2022年全日本/ジュニアカート選手権統一規則の制定について 2022年03月18日 [2022-WEB021]

全日本カート選手権FP-3部門のドライバーの出場資格について 2022年03月24日 [2022-WEB022] ロールケージ公認申請一覧表

2022年03月29日 [2022-WEB023]

JAFスポーツ資格登録規定の一部改正について 2022年03月29日 [2022-WEB024] 講習会開設規定の一部改正について 2022年03月29日 [2022-WEB025] 自動車競技の組織に関する規定の一部改正について 2022年03月30日 [2022-WEB026]

2022年JAFモータースポーツ賞典規定の制定について 2022年03月30日 [2022-WEB027]

アンチ・ドーピングに関する規定の改定につきまして JAFからのお知らせ

日付 タイトル 2022年01月12日

2022年01月24日

JAF認定eスポーツイベントが開催!

【終了】モータースポーツプレゼントキャンペーン第4弾を開始しました

2022年01月27日 2021年 → 2022年 公示による国内モータースポーツ諸規則などの改正・変更点一覧

2022年02月10日 2021年ドライバー・オブ・ザ・イヤー結果発表

2022年02月10日 競技結果成績表への地域コードの記入について

2022年02月28日 モータースポーツプレゼントキャンペーン第5弾を開始しました

2022年03月03日

【JAFの取引先、関係者のみなさまへ】3月2日より、JAFの職員を装った「なりすましメール」が不正に発信されているという事例を確認してお ります。ご迷惑をおかけしますが、不審なメールが届いた際は、ご注意いただきますようお願いします。

2022年03月08日 JAF WOMEN IN MOTORSPORT International Women's Day 2022 動画公開のお知らせ

2022年03月15日 「JAF Mate」のデジタル版「JAF Mate Online(ジャフメイトオンライン)」が公開になりました。

※上記公示・お知らせ(WEB)一覧の詳細は、JAFモータースポーツサイト(https://motorsports.jaf.or.jp/)内の「> 公示・JAFからのお知らせ」で閲覧することができます。

訃報

JAF モータースポーツ名誉委員の高橋国光氏(82 歳)が、3 月 16 日逝去されました。

高橋氏は、1958 年に二輪レースの第 1 回全日本クラブマンレースに 18 歳で参加し、

世界大会にも進出した後、日本人として初めて世界選手権レースで優勝。四輪レースに

転向後は、伝説にもなったスカイライン GT-R での活躍や、1977 年 F1 日本グランプリ

(富士スピードウェイ)への出場、1978 年 JAF 鈴鹿グランプリでの優勝など、記憶に残

る数多くの結果を残されました。59 歳まで現役を続け、引退後は JAF の理事や日本モー ターサイクルスポーツ協会(MFJ)の理事を歴任。スーパー GT で自らのチームを率い

るなど、二輪、四輪競技の発展に長年大きく貢献されました。

2017 年には、モータースポーツの発展に著しく貢献したとして、モータースポーツ名

誉委員の称号が贈呈され、2020 年には、国内モータースポーツの関係者としては初め

て、文部科学省から「スポーツ功労者」として顕彰されました。

ここに謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

一般社団法人 日本自動車連盟

2017年JAFモータ ースポーツ表彰式で はJAFモータースポ ーツ名誉委員の称 号が贈呈された。

2020年には令和元 年度スポーツ功労 者に選出され顕彰を 受けた。

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次世代に向けた環境整備を担う

モータースポーツ

未来委員会」

ついにキックオフ!

JAFの副会長職を務める早稲田大学の杉山雅洋名誉教授を委員長とし、6 名の委員を構成。JAF藤井一裕会長を始め、JAF役員およびJAFモーター スポーツ部も一体となり、将来を創造する新たな取り組みが始まった。

欧米で進む環境対応型自動車の台頭といっ た事象を踏まえ、それらと協調した持続可 能なモータースポーツの在り方を創造・構 築することが喫緊の課題となってきている。 日本のモータースポーツは、世界選手権 を始めとした公益性の高いイベント開催が、 開催地の地域振興に留まらず、広範な国内 産業分野に高い経済効果をもたらしてお り、日本の自動車産業もその高い技術力を 活かす場として積極的に活用している。そ のため、モータースポーツ全般の環境を次 世代に向けて整備することは、自動車産業 の発展に繋がることも期待されている。 3月24日に行われた第1回会議では、業 界を牽引するキーパーソンが委員として集 結。まずはそれぞれの現状認識の共有や取 り組むべき課題の洗い出し、今後の方向性 などについて活発な意見交換がなされた。

モータースポーツの持続可能な成長と振興へ

動車やアフターパーツ製造者、

モータースポーツに精通した識 者らによって構成される「モー タースポーツ未来委員会」がこの度発足し、 今後を展望した日本のモータースポーツ振 興における戦略的な取り組みを進める方針 策定がスタートすることになった。

この委員会は「第2次JAFモータースポ ーツ振興ワーキンググループ(柿本邦彦座 長)」からJAF会長に提案された答申に基 づき、JAF会長直属の組織として2018年

9月に誕生した「モータースポーツ振興委 員会」を発展的に解消して新設された委員 会。前身となるモータースポーツ振興委員

会では、他のスポーツ統轄団体の取り組み や成功事例の情報提供、それらを踏まえた

モータースポーツ振興策および実行プロセ スの提案などの議論がなされてきた。

しかし、モータースポーツを取り巻く環 境は劇的に変化しており、日本政府の重要

戦略分野である2050年カーボンニュート ラルに伴うグリーン成長戦略への対応や、

PHOTO/JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS] REPORT/JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]
渡辺康治委員 本田技研工業株式会社 堀尾直孝委員 株式会社ブリヂストン 鈴木亜久里委員 JAFモータースポーツ審議会委員 佐藤恒治委員 トヨタ自動車株式会社 片桐隆夫委員 ニッサン・モータースポーツ・ インターナショナル株式会社 大前貴陸委員 横浜ゴム株式会社 杉山雅洋委員長 JAF副会長/早稲田大学名誉教授 □ 40

JAFモータースポーツサイト

アナタに合った楽しみ方が、きっと見つかる!

モータースポーツを やってる人もやりたい人も 楽しみ方が見つかる コンテンツ盛りだくさん!

JAFモータースポーツサイトには、モータースポー ツのあらゆる楽しみ方や関わり方を紹介したペー ジを多数ご用意しています。競技ライセンス所持 者の皆さんに向けた「公示・JAFからのお知ら せ」や「競技会スケジュール」、「国内競技結果 (リザルト)検索」の他、これからモータースポーツ を始めたい方々には「モータースポーツとは?」や 「選べるコンテンツ~あなたに合った楽しみ方を 紹介~」、「お手軽参戦オートテスト」などをご用 意。ぜひ一度、ご覧ください!

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JAF公認モータースポーツ・2022シーズン到来♪ 全日本選手権では序盤からアツい戦いが……!!

2022年全日本ジムカーナ/ダートトライアル選手権では、オートマ限定免許で参戦できるクラス が大盛り上がり! 憧れのハイパフォーマンスカーや話題の新型車が激闘する様子は、JAFモー タースポーツサイトのカレンダー情報をチェッ

クして、ぜひ一度、ナマでご確認を!!

2022年開始の新制度♪

「ゴーカートライセンス」で

年齢を問わないモータースポーツ愛好家の ためのライセンス発給制度が新たに導入さ れました。世界で活躍するため、国内でトッ プドライバーを目指すため、趣味で楽しむ ため……。JAFはモータースポーツを楽しむ 皆さまを積極的にサポートします。ご家族 や仲間を誘って、リアルモータースポーツ を楽しんでみませんか?

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JAF会員の皆さまにおトクな優待情報やイベン ト・講習会情報をはじめ、お住まいの地域に合っ た最新情報を、JAFのメールマガジンで定期的に 配信しています。また、競技ライセンス所持者の 皆さまには、モータースポーツに関わる旬な情報 を随時お送りしています。メールマガジンのご 登録は「JAFマイページ」から!

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特集 地方選手権レース/REGIONAL CHAMPIONSHIPS

2021年

JAF地方選手権

レース 総まくり

~FIA-F4/F4/S-FJ/FRJ/

ツーリングカー~

021年はJAF公認レースのうち、開催され た10シリーズに地方選手権が与えられた。 地方選手権といっても、近年のレースにお いては開催エリアが拡大傾向にあり、2015年からスー パーGTのサポートレースとして行われているFIA-フ ォーミュラ4(FIA-F4)や、2020年から始まったフォ ーミュラリージョナル(FR/FRJ)は、初年度から全 国転戦シリーズとして開催されている。

また、希少なマルチメイク・フォーミュラレースと して独自の地位を築くフォーミュラ4(F4/JAF-F4) も、2019年からは東日本/西日本シリーズが統合さ れ、全国を転戦するシリーズに生まれ変わっている。

一方、全国転戦ではないものの、ツーリングカーや スーパーFJにはエリア統合があった。2020年から筑 波・富士シリーズ、2021年からもてぎ・菅生シリー ズが発足。中でもスーパーFJはエントリーフォーミ ュラでもあるだけに、複数のサーキットを走れること でより学習の機会が増すと、おおむね好評であった。

新型コロナウイルス感染症の影響は2021年もレー ス界に及び、特に夏場の感染拡大は著しかった。しか し、こと地方選手権のレースに関しては、コロナ禍に よって中止や延期になったレースが、スーパーGTと 併催のFIA-F4の1大会だけに留まった。

体温測定や消毒、マスク着用の徹底実施は言うまで もなく、ブリーフィングは、密集を回避するために広

2021年も激戦だった地方選手権レースをプレイバック!

レースの頂点を目指す若手をはじめ 自分たちの限界に挑むベテランなどなど、 さまざまな目的と想いを持ったドライバーが 全国各地のサーキットに集っている。

多くの我慢や対策を強いられながらも、 激戦が繰り広げられた2021年の地方レース。 地方選手権を獲得した王者の1年を振り返る。

い場所で、時には分散やリモートで行った。また、多 くのサーキットでソーシャルバブル方式を採用したの も、対策として大いに機能したように思われる。まだ まだ我慢や対策を強いられた2021年だったが、まず はその激戦符を振り返ってみることにしよう。

FIA-フォーミュラ4地方選手権(FIA-F4)

TGR-DC RSとHFDPのドライバーの一騎討ち

野中誠太選手がチャンピオンの座を獲得!

2020年に続いて海外戦が行われなかったFIA-F4。 もてぎでの第2大会と、SUGOでの第4大会を各3レ ース開催とすることで、2021年は再び全14戦で競わ れた。ちなみに岡山国際サーキットとオートポリスで 開催されなかった理由として、前者はパドックの設置 余地がないこと、後者は長距離移動への負担減とされ ていた。なお、2022年は復活の方向にあるようだ。

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2021年も激戦だった地方選手権レースをプレイバック!

PHOTO/石原康[Yasushi.ISHIHARA]、 遠藤樹弥[Tatsuya.ENDO]、 関根健司[Kenji.SEKINE]、 皆越和也[Kazuya.MINAKOSHI]、 吉見幸夫[Yukio.YOSHIMI]、 JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]  REPORT/はた☆なおゆき[Naoyuki.HATA]、 JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

シリーズの展開としては、やはり例年どおりトヨタ VS ホンダの様相となった。正確にはフォーミュラト ヨタ・レーシングスクール改めTGR-DCレーシング

RS)VS Hondaフォーミュラ・

ドリーム・プロジェクト(HFDP)による一騎討ちで、 それぞれが実施している豊富な練習量が、ドライバー を鍛え上げた最大の要素ともなっていた。

第1大会の富士では、HFDPの木村偉織選手と

TGR-DC RSの野中誠太選手が優勝を分け合うも、 続く第3大会もてぎでは野中選手が3戦3勝し、一気 に流れを手繰り寄せたかに思われた。だが、延期とな った第2大会の鈴鹿で野中選手は失速、その影響は第 4大会のSUGOの2レース目まで続いてしまう。

対して木村選手はその鈴鹿とSUGOで優勝を重ね、 一時は野中選手に同ポイントで並んでいたが、第4大

たんですけど、このままじゃチャンピオンを獲れないという思いが 一瞬浮かんで焦る場面もありました。その中で、メンタル面でも成長する ことができて、結果にもつながって、最後にいいレースができました。  シーズンの途中で、ちょっとプレッシャーに弱い自分もいて、思いどお りのレースができないような状況がしばらく続いたんですけど、最後にこ うやってまた自分の走りがしっかりできて、その結果が優勝、チャンピオ ンという成績につながりました。本当に学ぶことが多く、いいライバルた ちがいたからこそのシーズンだったと思います。

スクール(TGR-DC
FIA-F4選手権2021年チャンピオン 野中誠太選手(TGR-DC RS トムススピリットF4)
最終戦は思っていた以上に展開が激しかったです、順位も変動があっ
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2021年

レース 総まくり

会3レース目に2位獲得で久々の表彰台に返り咲いた 野中選手に、再びリードを許すこととなる。

この2人の争いを尻目に現れた伏兵が荒川麟選手だ った。レースを一戦も落とすことなく、コンスタント

に高ポイントを獲得し続け、そして鈴鹿での2レース 目には繰り上がり初優勝を果たす。このとき、ペナル ティの対象となったのは木村選手で、チャンピオンを 争う上での致命傷となった。

その荒川選手は、第5大会もてぎの2レース目で待 望の自力優勝をもぎ取ると、野中選手を抑えてランキ ングのトップに躍り出た。2020年は他チームに在籍 していた荒川選手、2021年はトヨタから異例の抜擢 を受け、見事その期待に応えたという格好だ。

迎えた最終大会富士、ここで野中選手が再び覚醒、 ラスト2戦を完全制覇したことによって、通算6勝

で、これまでの悲願だったチャンピオンを獲得する。 また、連続表彰台登壇を果たした荒川選手は、4ポイ ント差で敗れはしたがランキング2位につけ、トヨタ 勢が上位を独占することに。対するHFDP勢は4勝 の木村選手が3位を獲得している。

続くランキング4位は伊東黎明選手となったが、 SUGOで挙げた勝利は、前述のメーカー育成ドライ バー以外では唯一となっただけに、評価されて然るべ き。5位、6位にはHFDPの太田格之進選手、そして 1勝を挙げた小出峻選手が続いた。

また、40歳以上のジェントルマンと女性ドライバー を対象としたインディペンデントカップでは、7勝を 挙げた鳥羽豊選手を、4勝ながらコンスタントに入賞 を重ねたHIROBON選手が上回り、参戦初年度にし てそのタイトルを獲得している。

JAF-F4選手権2021年チャンピオン

(佐藤製作所★TOMEI★ミスト、佐藤製作所KKZS★ TOMEI、Kデンタルオフィス★MYST)

本当はあんなに出る予定ではなかったんですが、皆さんに後押ししてもらえました。僕

の条件は勝つことしかなくて、「2位になったら次はないぞ」って、皆さんに言われて いたので、勝ち続ける必要がありました。それで最終戦まで出ることができたんです。本 当にまわりの方には恵まれてました、とても感謝しています。  僕なりにバトルも上手くなったと思いますし、強いところも出せたのかなと。最近は緊 張することなく走れるようになったので、それが強みかと思います。FJの頃はいっぱい いっぱいで、まわりが見えていなくて、いいところにいてもペナルティとか、しょっちゅう でした。最近はそういうことも減り、精神面ではだいぶ強くなったと思います!

JAF地方選手権
元嶋成弥選手
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F4地方選手権(JAF-F4)

元嶋成弥選手がシリーズを席巻する走り! 参戦したラウンドすべてで優勝を果たす

全10戦で競われたJAF-F4は、まさに元嶋成弥選手 のワンマンショー状態と言っても過言ではなかった。 もてぎとSUGOを除く6戦のみに出場して、そのすべ てを制してタイトルを手にしているからだ。

2020年のスーパーFJ日本一決定戦を制してスカラ シップでスポット参戦の機会を得ると、いきなり開幕 戦鈴鹿で優勝。西日本のサーキットに限定されたもの の継続参戦が決まり、「負けた時点で終了」状態を最後 まで維持した格好だ。

元嶋選手の強さや速さもさることながら、特筆すべ きは、ほぼレースごとに違う車両で走っていたこと。 これでオールマイティぶりも証明し、さらに言えば、 2レース開催となった岡山は「一度も走ったことがな かった」にも関わらず連勝を遂げていて、高い適応力 をアピールしていた。

ランキング2位は開幕戦以外の9戦に出場した徳升 広平選手が獲得。不運な展開が続いて優勝こそ飾れな かったものの、それでも8戦で表彰台に上がる安定感 が光っていた。ランキング3位、4位は全戦出場のハン マー伊澤選手、そして黒岩聖那選手。それぞれ1勝を 挙げており、こと伊澤選手は40歳以上のドライバー を対象とするジェントルマンクラスにおいて、第3戦 以降負け知らずだった。この他に優勝を飾っているの は、宮下源都選手と金井亮忠選手で、ランキングも 順当に5位、6位。レース最上位は5位だった女性ド ライバーの翁長実希選手がランキング7位につけた。

スーパーFJ地方選手権(S-FJ) 国内の主要サーキットで切磋琢磨!

5シリーズそれぞれでドラマが誕生

SUGOからオートポリスまで各サーキットでそれぞ れ開催されている地方選手権のスーパーFJを、北か ら順に振り返ってみることにしよう。まずはもてぎ・ 菅生シリーズ。近年はレース成立ギリギリの台数だっ た菅生シリーズだが、もてぎ・菅生シリーズとなって 2021年は常時二桁のエントリーがあり、活性効果は 十分あったと言えるだろう。そしてこのシリーズでチ ャンピオンを獲得したのは、ルーキーの佐藤樹選手だ。

全6戦のうち5戦に出場して4勝し、すべてのレー スでポールポジション(PP)を獲得している。全員に 初優勝のチャンスが与えられた開幕戦こそ、経験豊富 な宇高希選手に敗れてデビューウィンは飾れず、その ときはバトルに粗さが目立ったが、実戦の中で徐々に 精度を高めていった印象が強かった。

ランキング2位、3位もルーキードライバーだ。伊藤慎 之典選手、四倉悠聖選手ともに表彰台に4回登壇したも のの、佐藤選手に最後まで封じ込められてしまった。

筑波・富士シリーズは全7戦で競われたが、東京 2020オリンピック・パラリンピックの関係で富士で の開催は最終戦の1戦のみだった。それでも、FJ協会 が設けた転戦シリーズの「ジャパン・チャレンジ」との Wタイトルだったため、鈴鹿勢の遠征もあって、大 いに賑わいを見せた。ちなみに2022年も富士では1 大会2レースのみの開催ながら、日本一決定戦が年末 に富士で行われることが決定しただけに、前哨戦とし て再び大いに盛り上がることが予想される。

2021年の筑波での6戦において、野島遼葵選手と 安田航選手が互角の戦いを重ねていたが、最終戦の富 士で明暗は分かれた。前半戦で3連勝を飾るも、後半 戦にやや失速気味だった野島選手に対し、優勝こそ1 回のみだが、コンスタントに入賞を重ねる安田選手の 方に、むしろ勢いが感じられた。だが、ともに初めて 臨むサーキットで形勢が逆転、3位に入賞した野島選 手にシリーズの軍配が上がることとなった。

また、その最終戦で特筆すべきは、18歳の現役高校

りができていなくて、ミスが多すぎて自滅ですが……。その後も自分 の中では納得できるレースではなかったんですが、改善できた点はあった かなと思っています。

開幕戦でポールが獲れたのに、決勝でああいう負け方をして、ちょっと 自信を失いかけたんですけど、速さには自信あったので、その自信でなんと かその後を勝ち切れたという感じでした。カート時代にもチャンピオンを 獲った経験はなくて、実は初めてなんです。でも、思っていたより「よっ しゃ~!」みたいな感動はなかったですね。どちらかと言うと全戦でポー ル獲れた方がうれしかったかもしれません。

JAFもてぎ・菅生スーパーFJ選手権2021年チャンピオン 佐藤樹選手(群馬トヨペットリノアED) 開幕戦はシフトミスが多すぎて、それが敗因でした。そもそも自分の走
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2021年

レース 総まくり

崩れ、ちょっと不甲斐ない結果になっていましたね。でも初めて走る 富士に来て、フレッシュな気持ちになったというか……。  筑波とは全然違うじゃないですか、富士でのレースの仕方が。けっこう苦 しい部分もあったんですが、かなり楽しかったので結果が出たのかなと感じ ています。今までとは違った、色々なことを吸収できたので、すごくいいレー スになりました。めちゃくちゃうれしいです。最後にやっと自分らしい走り ができて、しかもチャンピオンという結果も残せましたから!

生の稲葉摩人選手がデビューウィンを飾って いることだ。走路外走行のペナルティで“幻 のPP”となるも、6番手スタートからの優勝 はバトルの強さもアピールした格好だ。

2022年は同シリーズにフル参戦が決定して いるだけに、大いに注目すべきドライバーと

言えそうだ。

鈴鹿シリーズは常に20台を超すエントリ ーがあり、名実ともに最激戦区となっている。

2021年は6戦すべて、フルコースが舞台と なっていた。チャンピオンになればステップ アップが約束されているカテゴリーではある ものの、岡本大地選手が2連覇を達成した。

一旦はFIA-F4にも出場した岡本選手だ

が、スーパーFJを極めることを身上とし、5戦出場し て3勝をマークした。この結果には「若い芽を摘む」そ

して「全体のレベルを上げる」など賛否両論ではある が、ステップアップを目指すドライバーにとって、超

えるべき存在であったのは間違いない。

そんな岡本選手に自力で土をつけたのは、上野大哲 選手と冨田自然選手。岡本選手不在のレースでは森山 冬星選手が勝っており、奇しくもランキングでは3 〜 5位。この3人を上回った佐藤巧望選手は、優勝こそ 飾れなかったものの、6戦すべてで表彰台に立つとい う絶対的な安定感を示していた。

岡山シリーズは、予定された6戦のうち参加台数不 足で3戦は不成立、シリーズとしてもギリギリの成立 だった。第4大会が2レース開催で「ジャパン・チャ レンジ」とのWタイトルだったこともあり、その2レ ースで連勝した岡本選手がチャンピオンとなり、 2021年の二冠を達成した。また、その2レースで連 続表彰台を獲得した冨田選手がランキング2位、成立 した残り1レースを制した鶴岡秀磨選手が3位となっ た。

しかし、岡山シリーズは2022年、8月に1大会2レ

鹿では連覇になりました。それでも1回はエンジンが吹けないトラブルで、もう1 回は雨がらみで落としちゃって、全勝できなかったのが……。前半はラクって言っ たらおかしいですけど、タイム差がある状態でレースして勝つことができたんです。た だ、後半になるにつれて、追い込まれていました。若い子たちが伸びてきましたからね。  僕のクルマ、ちょっとストレートに難があるので、みんなが速くなってくると、ハン デって言ったら感じ悪いですけど(笑)、不利な面もありました。そうやって追いつかれ る、苦しいレースになってくるっていう展開が2年続いていましたね。鈴鹿には速い子 がいっぱいいたので、最後まで気は抜けませんでした。

JAF地方選手権
JAF筑波・富士スーパーFJ選手権2021年チャンピオン 野島遼葵選手(Deep-R・10V・ED) シリーズ前半は調子良かったんですけど、後半になるにつれてリズムが
JAF鈴鹿スーパーFJ選手権2021年チャンピオン 岡本大地選手(FTK・レヴレーシングガレージ) 鈴
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ースの開催を予定しているが、選手権シリーズとして は残念ながら終了。エントリー減が理由のようだが、

平川亮選手や牧野任祐選手、大湯都史樹選手ら、優秀 なドライバーを輩出してきただけでなく、角田裕毅選 手がデビューウィンを飾った育みのサーキットだけに 復活に期待したい。

オートポリスシリーズは、2001年の開幕戦が延期開 催となったが、これはコロナ禍の影響によるものではな く、天候に恵まれなかったため。また「ジャパン・チャ レンジ」とのWタイトルだった第2戦以外も、地元ドラ イバーたちにより盛り上がりを見せていた。

そして同時に5戦すべてでウィナーが入れ替わる混 戦状態となり、優勝こそ挙げられなかったが、ただひ とり全戦で入賞を果たした入江裕樹選手が総得点では トップ……だったが、そこに8割有効のポイントシス テムの残酷さが。第3戦からの出場ではあったが、優 勝1回、2位2回の益田富雄選手が有効ポイントでは 上回ってチャンピオンを獲得し、入江選手はランキン グ4位まで陥落してしまったのだ。

JAF岡山スーパーFJ選手権2021年チャンピオン 岡本大地選手(FTK・レヴレーシングガレージ)

岡山でもチャンピオンを獲れたのがびっくりなんですけど、2戦

出てしっかり勝ったのが大きかったですね。自分の中では岡山 はどれだけブランクあろうが、速く走れないとダメ、っていうのがあ るので。久しぶりに走っても、しっかり身体に染み込んでいて、まっ たく問題ありませんでした。岡山はまだ出たいと思っています。  またFJを続けることにしました(笑)。GTやF4もお話があればや りたいんですけどね。あんまりそういう活動をしていなかったもの ですから、お世話になっているチームメイトから「どうせ暇だろうか らFJやって、俺に教えろ」って言われていますので(笑)。

オートポリスシリーズのランキング2位は、併せて スーパー耐久にも出場する篠田義仁選手が獲得。また 比較的年齢層の高い同シリーズにおいて、21歳の東慎 之介選手がキャリア3年目ながら開幕戦を制して話題 を集めた。だが、その勢いを最後までキープできず、 ランキング3位に留まったのが残念である。

フォーミュラリージョナル選手権 古谷悠河選手が13戦中10回の表彰台を獲得 フル参戦2年目でうれしい初戴冠を果たす

開催2年目のフォーミュラリージョナル(FRJ)にお いてひとつ残念だったのは、5大会13レースのシーズ ンでフル参戦したドライバーがわずか6名に過ぎなか ったことだ。しかも、マスタークラスのジェントルマ ンドライバーを除けば実質2名のみ。他のレース日程 のバッティングなどもあるようだが……。

JAFオートポリススーパーFJ選手権2021年チャンピオン

4

~5年のブランクがあって再開したんですけど、実はチャンピオンを 獲る気でいたわけではないんですよ。買ったクルマのメンテナンスが 伸びて最初の2戦は出られなかったし。ただ、勝ったときは頑張りました。あ の時は1大会2レース開催で、ミストの社長さんたちも来ていたので、優勝 できて良かったです(笑)。

いやぁ、なんか怒涛じゃないですけど、1か月とかの短期間でシリーズを 獲ってしまったので、呆気なかったと同時に面白かったですよ。鈴鹿勢と張 り合えたことがすごくプラスになったと思います。

益田富雄選手(KMTS・ミストKKS-Ⅱ)
ともあれチャンピオンに輝いたのは、初年度からフ 47

フォーミュラリージョナル選手権2021年チャンピオン 古谷悠河選手(TOM'S YOUTH)

最終戦の前にチャンピオンが決まったのはすごくうれし

かったんですけど、優勝したいなと思っていたので、ちゃ んと優勝で終われてすごくよかったです。ドライのスタートで バッチリ決まったのは初めてだと言ってもいいくらいだったの で、やっと普通のスタートが切れました、それが優勝につながっ て、本当によかったと思っています。

もしかしたら、後ろの選手の方が純粋なペースでは上回って いたかもしれませんが。S字でダウンフォースが抜けたりとか もあったようですね。でも、そこはペースを見ながらコントロー ルしたり、ちょっとタレてきたタイヤをいたわったりして、丁寧 に走っていましたし。最終戦、いいレースになりました。

ル参戦した古谷悠河選手で、やはり貴重なフル参戦ド ライバーの三浦愛選手と最後まで競い合った。だが、 両者ともコンスタントに表彰台に載ったものの、古谷 選手は13戦中4勝を、三浦選手も2勝を挙げただけ で、シリーズを席巻する存在とはならなかった。こと 古谷選手はスタートを得意としてはおらず、それが原 因で勝ち星を減らした感もあるが、スタートが決まっ た時には後続を寄せつけず、またレース後半に入って も衰えないスピードやタイヤマネジメントのうまさに は高評価があった。表彰台に10回登壇したことは、 王座獲得の最大の要因だったのは間違いない。

その他に優勝を飾ったのは、マシンの開発ドライバ ーも務めた片山義章選手。ホームコースの岡山国際サ ーキットで3連勝。そして大草りき選手と澤龍之介選 手がそれぞれ2勝を挙げている。このふたりに割って 入ってランキング4位を獲得したのが、4大会に出場 した塩津佑介選手だった。

また、40歳以上のジェントルマンドライバーを対象 としたマスタークラスでは、最終戦の逆転で畑享志選 手がタイトルを掌中に収め、総合でもランキング8位 につけている。

ツーリングカー地方選手権

東のもてぎ・菅生はHIROBON選手が、 西の鈴鹿・岡山は西尾和早選手が制す! ツーリングカーは、FIT 1.5チャレンジカップとの Wタイトルで、もてぎ・菅生シリーズが全6戦、鈴 鹿・岡山シリーズが5戦開催された。 まずはもてぎ・菅生シリーズだが、最大の話題は HIROBON選手の本格参戦だ。本来なら1年早く主 戦場を移すはずが、2020年はコロナ禍で日程変更を 余儀なくされ、3戦出場するに留まっていただけに、 まさに2年分の思いを込めての参戦となっていた。 開幕戦を制していきなり好スタートを切るも、第2

レース 総まくり JAF地方選手権 2021年
48

JAFもてぎ・菅生ツーリンングカー選手権2021年チャンピオン HIROBON選手(アンダーレNUTEC制動屋東野)

ちょっとしたミス(ファストレーン進入手順違反)で、予選は2番になっ

ちゃって、なんとかスタートで前に出ようと思ったんですけど、閉めて 当たってノーポイントになるのは避けたいなと。結局、抜けずに最終戦が終 わりました。一戦レースが被って出られなかったから、厳しいかなと思って いました。本音を言うと、勝ってチャンピオンというのがよかったですね。

でも、まぁまぁうれしいですよ、けっこう苦戦したし。獲らなきゃいけない と思ってやってきただけに、余計にそう感じます。いっぱいレースに出た年 でしたが、このレースは卒業の予定です。2022年はN-ONE(オーナーズカッ プ)で、チャンピオンを狙おうと思っています(笑)。

戦は2020年のチャンピオンマシンを受け継いだ芳賀 邦行選手の優勝を許したばかりか、自らは4位に。そ して第3戦を欠場したことから、第4戦で2勝目を挙 げても、まだリードは奪えなかった。そして第5戦で は同じく遠征ドライバーの窪田俊浩選手との激戦の 末、2位に甘んじてしまう。最終戦でも窪田選手に行 く手を阻まれてしまったが、ここでようやく芳賀選 手を上回ったHIROBON選手がチャンピオンを獲得 することとなった。

ランキング2位は芳賀選手で、3位は5戦で表彰台 に上った松尾充晃選手が獲得。ラスト2戦のプッシ ュが光った窪田選手は、シリーズ前半のマシン不調 が響いてランキングでは4位に留まった。

鈴鹿・岡山シリーズでは西尾和早選手が、HIROB ON選手や伊藤裕士選手といったチャンピオン経験 を持つドライバーが卒業したシーズンのニューヒー ローとなった。第1戦で初優勝を飾ると、そのまま

の勢いでシリーズを駆け抜け、終わってみれば5戦4 勝。地方選手権に関しては、最終戦を待たずして西尾 選手がチャンピオンを確定させることとなった。

とはいえ、西尾選手は最後まで気を抜けなかっただ ろう。なぜなら唯一敗れて3位に甘んじた第3戦も含 め、岡田拓二選手がずっと2番手につけていたから だ。何としても一矢報いてやろうという岡田選手の執 念をはねのけた、西尾選手の成長ぶりは想像に余りあ る。結局、岡田選手はランキング2位に終わり、ラン キング3位を獲得したのは松尾充晃選手。両シリーズ を追った松尾選手は両方ともランキング3位に留まっ たが、鈴鹿・岡山シリーズの第3戦で悲願の初優勝を 果たしている。

残念ながら……、ライバルたちは両シリーズのチャ ンピオンにリベンジが許されそうもない。HIROBON 選手は長年戦い続けてきたシリーズからの卒業を表明 しており、西尾選手も就職したばかりとあって、フル 参戦が難しい状況にあるからだ。だがそんな西尾選手 のように、2022年にはニューヒーローの登場も期待 したいものである。

JAF鈴鹿・岡山ツーリングカー選手権2021年チャンピオン

西尾和早選手(クローズアップR's Design制動屋Fit3)

強い選手が何人か抜けると聞いて、僕も内心チャンスだと思ってい ました。チームからも『狙い目の年だ!』と言われていて、僕自身も強い 気概を抱いて臨んでいました。ただ、僕が初めて出たシーズンに速 かった方も残っていたので、ヤバいなぁと(笑)。でも、開幕戦で勝てて からは、それが自信にもなってシリーズをうまく戦えたという感じです。  レースを始めて3年目なんですが、それまでやっていたカートとは 勝負の仕方などが違って戸惑ったものの、コツコツやってきたこと が、ようやく実を結んだという感じです。ガレージの方にはすごくお 世話になりましたので感謝していますし、大きい大会でチャンピオン を獲るのは初めてなので、うれしいです。

威風堂々! 地方選手権カート王者たちの2021シーズンを辿る

特集 地方選手権カート/REGIONAL CHAMPIONSHIPS

JAF地方選手権 2021年

カート 総まくり

イアメ・パリラX30エンジンによる

ワンメイクレースの地方カート選手権FS-125部門。

2021年はもてぎ、瑞浪、鈴鹿を舞台にシリーズが開催され、 多くの若手ドライバーがこのカテゴリーに挑戦した。

各地域で誕生したチャンピオンたちの喜びの声をピックアップ。

JAF地方カート選手権瑞浪シリーズ

“継続は力なり”を地でいく大谷拓幹選手、 ライバルと切磋琢磨してつかんだ栄冠!

瑞浪王者となった大谷拓幹選手のカートライフは、 家の近くにたまたまあったカートショップを、クルマ 好きの父親と共に訪れたことでスタート。ただし、当 初は特にステップアップ志向はなかったのだという。 「カートを始めてからは乗ることが普通に楽しくて、 上のクラスに行きたい気持ちはそんなになかったんで す。でも、一緒にやってた子たちが上のクラスに行っ て水冷エンジンのカートに乗ってるのを見ると、やっ ぱり自分も乗りたいなと強く思うようになりました」 と、2020年より地方カート選手権のFS-125へのフ ル参戦を開始した。だが、そのデビューイヤーは屈辱 的なものとなってしまった。

「おそらく2年目のフレームが良くなかったようで、 セッティングを変えても乗り方を変えてもまったくよ くならず、そのまま1年間が過ぎてしまいました。ウ チは父親がサラリーマンで、資金面で余裕があるわけ じゃない中でかなり頑張ってやっている方なんで、毎 年新フレームを入れるのはなかなかできないですし」。 しかし、2021年に何とか新車を投入したことをき っかけに、大谷選手は飛躍を遂げた。

「初めて新車に乗ったときに、シェイクダウンでいき なり自己ベストが出たんです。それで、今年はイケる なと思ったんですけど……」。

021年の地方カート選手権は宮城県のスポ ーツランドSUGO西コース、栃木県のツ インリンクもてぎ北ショートコース、千葉

県の新東京サーキット、岐阜県のフェスティカサーキ ット瑞浪、三重県の鈴鹿サーキット国際南コースにお いて各々サーキット単位のシリーズ戦(新東京のみ FP-3部門、他はFS-125部門)が組まれ、そのうちも てぎ/瑞浪/鈴鹿の3シリーズが実施に至り、2021 年のJAF地方選手権が与えられた。

その戦いは、いずれもドラマに満ちたものとなっ た。瑞浪シリーズでは最終戦を待たずして王者が確 定。もてぎ/鈴鹿シリーズでは最終戦の波乱によって タイトル争いが決着。かくして栄冠を勝ち取ったドラ イバーたちの喜びの声を聞いてみよう。

その大谷選手の眼前に立ちはだかったのが、2020 年ジュニア選手権FP-Jr部門チャンピオンの落合蓮音 選手だった。だがこの大物ルーキーは目を見張る速さ を披露しながら、重量不足やパーツ脱落でたびたび勝 利を獲り逃す。対して大谷選手は着々とビッグポイン トを積み重ね、第4戦までに3つの優勝とひとつの2 位を獲得して、最終戦の前に戴冠を確定させた。 「3勝のうち2勝はラッキーな勝利だったので、何と も言いづらいんですが……。とは言え、落合選手との 差はラウンドを重ねるごとに徐々に縮まっていきまし たし、1年間通して少しずつ速くなることができたの はよかったのかなと思います」。

「落合選手の存在はすごいモチベーションにつながり ました。2021年の瑞浪シリーズって、落合選手が出 てきたことでレースのレベルも高くなったと思うし、 鈴鹿で勝ったり世界戦(FIAカーティングアカデミー トロフィー)に参加している選手が出てくれたからこ

~もてぎシリーズ/瑞浪シリーズ/ 鈴鹿選手権シリーズ~
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地方選手権カート王者たちの2021シーズンを辿る

JAF地方カート選手権瑞浪シリーズ2021年チャンピオン

大谷拓幹選手(Team REGOLITH)

PHOTO/遠藤樹弥[Tatsuya.ENDO]、 長谷川拓司[Takuji.HASEGAWA] JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]  REPORT/水谷一夫[Kazuo.MIZUTANI]、 JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

限られた資金を有効活用してきた大谷選手。レース1週間前の練習では量よ り質を重視して取り組んできたという。

そ、シリーズの価値が上がったところもあると思うの で、彼らと一緒にレースできたのは本当によかったで す。できればラクに勝ちたかったんですけど(笑)」。 特別恵まれたレース環境にあるわけではない大谷選 手は、自身のチャンピオン獲得に、彼ならではの喜び を感じている。

「自分は資金をあんまり使えない中で8年ほどレース を続けてきて、それでもこうしてチャンピオンを獲る ことができました。カートには(自分と同じように)父 親が普通のサラリーマンって環境で走っている人もた くさんいると思うんですが、資金が乏しくても細々と 続けていたら、こうやっていつかいいときが来るんだ っていうことを、自分の結果で示せたのがよかったと 思います」。

「この先、全日本っていうのは資金面が苦しいので正 直しんどいですし、2022年は就職活動もあるから、 どこかのシリーズにフル参戦はできないかもしれませ ん。でも、せっかくなので瑞浪シリーズにスポットで 出たり、メカニックとかチームの手伝いとかの形でカ ートに関わっていけたらと思っています」。

JAF地方カート選手権鈴鹿選手権シリーズ

重要な最終戦予選でまさかのペナルティ!?

落合蓮音選手はピンチをチャンスに変えた

卜部和久選手とともにチャンピオン候補として臨んだ 最終戦。落合選手は予選でペナルティを受け、決勝グ リッドが最後尾の33番手になる大ピンチに立たされた。

「もうチャンピオンは99%無理だろうなと思ったん ですけど、ドベからの追い上げを見てもらって、みん なを楽しませて、僕も気持ちを晴らしてやろうと思っ

てスタートしました」。

するとレース中盤に事態が急変。コース上にまかれ た冷却水に乗った前のマシン10台ほどがまとめてコ ースから飛び出し、落合選手は一気に4番手へ。そし て2位の卜部選手に続いて3位でチェッカーをくぐ り、落合選手は劇的なチャンピオン確定を果たした。 「追い上げの最中に卜部選手が3番手にいるのを見て いたので、4番だったらこれはいけるんじゃないかと思 って気持ちが爆アガリし、それと同時にすごい緊張も わいてきました。ゴールした時は、最後尾からここまで 上がってきたことのうれしさと、チャンピオンになれた うれしさで、みんな見てくれてありがとう、今まで応援 してくれてありがとうって気持ちになりました」。

5戦2勝で終えた2021シリーズを、落合選手は自 らのシリーズを「85点くらい」と評する。

「良かったのは第2戦の雨の中でのポール・トゥ・ウ ィンです。僕のFS-125初優勝だったんですけど、本 当にあれがその先のモチベーションにつながった感じ です。悪かったのは、開幕戦の決勝のスタートでキャ ブレターのセッティングをミスして最後尾まで落ちて しまったこと。この1年は本当にミスから発見するこ とがすごくあって、この発見でこういう結果を得られ た感じです」。

2022年は全日本選手権FS-125部門にステップア ップ。そこではアウェーである東地域に参戦すること も考えているのだという。

「全日本に出ることは決定なんですけど、東地域で知 らないコースに挑戦して今後のOK部門参戦に備える

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2021年

カート 総まくり JAF地方選手権

JAF地方カート選手権

落合蓮音選手

のか、慣れたコースで安定してポイントを稼げそうな

西地域で走るのか、まだ決まってないです。僕として はOKに出るのがカートの最終目標みたいな感じで す。将来の夢はF1なんですけど、目標って言うと ……。僕は自分の目標をむやみに高く設定するより、 今できることを着々とやっていくっていうタイプなん です。まずは行ける道を進んでみて、もうちょっと歳 が上がって4輪に乗れる時期になったら、その先に目 指すところを考えてみようと思っています」。

JAF地方カート選手権もてぎシリーズ

ライバル野澤勇翔選手との一進一退の攻防! もてぎシリーズを僅差で制した中村仁選手

大量27台が参戦した最終戦。中村仁選手はポイン トリーダーの野澤勇翔選手とほぼイーブンの条件でチ ャンピオン獲得に挑んだ。すると、決勝の序盤に雨が 降り出し、野澤選手はスピン。さらにチェッカー目前

で2番手の選手がコースを外れた。波乱の相次いだレ ースを、中村選手は2位でフィニッシュし、野澤選手

を1点上回って戴冠を果たした。

「レース前は久しぶりに緊張しちゃって、焦りも出る かなと思ったんですけれど、何とか気持ちを落ち着か せて走ることができました。マシンの仕上がりがよく て、フォーメーションラップではチャンピオンを獲れ そうな手応えもあったんですが、いざスタートしてみ ると厳しいレースになりました。ゴールして車検場に 戻ってきたときは、ペナルティを食らったりしないか ちょっと不安もあったけど、やっぱり(野澤選手より) 前でゴールできたっていうことがうれしくて、とにか くホッとしました」。

2021年は全日本と地方のFS-125部門に同時参戦 した中村選手。メインは全日本選手権だったのだが、 愛着のあるコースのシリーズを勝ち獲ったことにも喜 びを感じている。

「もてぎシリーズにはフル参戦するつもりはなかった けど、第1戦で勝てたんで、シリーズを追おうかって ことになりました。僕は(キッズカートの)レオン出身 なんですが、そこで『もてぎは勉強になるよ』と教わっ てこのコースで走るようになって、そうしたら本当に 勉強になることがいっぱいあって、コーナーを回ると きのリズム感とかはここで養われたと思います。先輩 方からもここでいろんなことを教わりましたし、そう いった意味ではやっぱり、ここでチャンピオンを獲り たいって気持ちがありました」。

2022年はカートを卒業して、フォーミュラへの第 一歩を踏み出す予定だ。

「カートは、とにかく楽しかったですね。最初は乗る だけで楽しかったですが、今ではバトルや人間関係も 楽しいですし、すごくいいスポーツだと思います。で も、4輪に早く乗りたいんです。本当はFIA-F4に出た いんですけど、チームとか資金的な問題もあるので、 スーパーFJをメインにするなど、とにかくフォーミ ュラに乗って経験を積みたい。将来は人を楽しませる ことができて、みんなに慕われるドライバーになりた いです。落ち込んでいる人に勇気を与えることができ るようなレースができたらうれしいですね」。

中村仁選手
JAF地方カート選手権 もてぎシリーズ2021年チャンピオン (チームTKC with CSI Racing) 鈴鹿選手権シリーズ 2021年チャンピオン
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(Ash with Hojust)
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JAF地方選手権2021 チャンピオン

~ラリー・スピード競技の地方選手権タイトルホルダーを一挙紹介!~

2021年も新型コロナウイルス感染症の感染拡大の少なからぬ影響を受け、

一部の競技会が中止を余儀なくされたJAF地方選手権。しかし関係者、選手の尽力により、 2021年はすべての選手権がシリーズ成立となり、本来の形を取り戻した。

困難な状況の中でも挑戦を続け、栄冠を勝ち取った選手達を紹介する。

PHOTO/石原康[Yasushi.ISHIHARA]、加藤和由[Kszuyoshi.KATO]、関根健司[Kenji.SEKINE]、友田宏之[Hiroyuki.TOMODA]、 山口貴利[Takatoshi.YAMAGUCHI]、吉見幸夫[Yukio.YOSHIMI]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]  REPORT/JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]

RALLY GYMKHANA DIRTTRIAL CIRCUITTRIAL
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特集 地方選手権 ラリー・スピード競技/REGIONAL CHAMPIONSHIPS

RALLY ラリー地方選手権

JAF地方選手権2021年チャンピオン

北海道

RA-1ドライバー 山田健一選手

RA-1コ・ドライバー 竹下紀子選手

RA-2ドライバー 山田裕一選手

RA-2コ・ドライバー 南出 司選手

RA-3ドライバー 松倉拓郎選手

RA-3コ・ドライバー 藤田彩子選手

東日本

BC-1ドライバー 宇野 学選手

BC-1ナビゲーター 和氣嵩暁選手

BC-2ドライバー 踏みッパ選手

BC-2ナビゲーター もそ選手

BC-3ドライバー 細谷裕一選手

BC-3ナビゲーター 伊藤 朔選手

BC-4ドライバー 室田 仁選手

BC-4ナビゲーター 鎌田雅樹選手

中部・近畿

DE-1ドライバー 大江 毅選手

DE-1コ・ドライバー 田中大貴選手

DE-2ドライバー 山田啓介選手

DE-2コ・ドライバー 山下恭平選手

DE-5ドライバー 田中 潤選手

DE-5コ・ドライバー 北田 稔選手

DE-6ドライバー 高田幸治選手

DE-6コ・ドライバー 坂井智幸選手

中四国

FG1ドライバー 長江修平選手

FG1ナビゲーター 馬瀬耕平選手

FG2ドライバー 松岡竜也選手

FG2ナビゲーター 縄田幸裕選手

FG3ドライバー 松原 久選手

FG3ナビゲーター 和田善明選手

FG4ドライバー 日高重貴選手

FG4ナビゲーター 吉田賢吾選手

九州

RH-1ドライバー 津野裕宣選手

RH-1ナビゲーター 大庭正璽選手

RH-2ドライバー 窪 啓嗣選手

RH-2ナビゲーター 藤口裕介選手

RH-3ドライバー 豊田智孝選手

RH-3ナビゲーター 松葉謙介選手

RH-4ドライバー 貞光 建選手

RH-4ナビゲーター 久木野理恵選手

RH-4ナビゲーター 松本弥青選手

RH-4ナビゲーター 久木野文美選手

RH-5ドライバー 瀬戸駿一選手

RH-5ナビゲーター 國貞友博選手

全国5地域ともシリーズが成立。中四国ラリーも当初予定の4戦がすべて開催され、2年ぶりに復活 2021年のラリー地方選手権は全国5地域の選手権がすべてシリー ズ成立となった。北海道はスノーラリー2戦を含む当初の予定通り の6戦が無事に開催された。東日本戦は2021年もコロナ禍の影響 を受け、東北地区で開催予定だった4戦がすべて中止となったが、 関東地区の3戦が開催され、シリーズが成立した。

2020年は3戦の開催に留まった中部・近畿地域は、2021年は1戦

の中止を余儀なくされたものの、7戦が行われた。第3戦が12月第1 週に延期されたため、約8か月半という長いシリーズとなった。 2020年は台風の影響で1戦が中止となったためシリーズ成立には至 らなかった中四国ラリーは、1戦の中止もなく全4戦が開催され、2 年ぶりに選手権が成立した。九州地区は1戦のみ中止を余儀なくさ れたが、2020年より1戦多い合計6戦の競技会が開催された。

2021年JAF北海道ラリー選手権(6戦開催) 2021年JAF九州ラリー選手権(6戦開催) 2021年JAF中部・近畿ラリー選手権(7戦開催) 2021年JAF中四国ラリー選手権(4戦開催)
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2021年JAF東日本ラリー選手権(3戦開催)

GYMKHANA ジムカーナ地方選手権

JAF地方選手権2021年チャンピオン

北海道 PN-1クラス 米澤 匠選手

SH-1クラス 成瀬悠人選手

東北 SATW-2クラス 阿部崇治選手

SATW-4クラス 佐柄英人選手

PN-1クラス 岩谷 武選手

PN-3クラス 佐藤宏明選手

SAC-2クラス 宍戸政宏選手

SAC-4クラス 佐藤英樹選手

関東

JG1クラス 奥井優介選手

JG2クラス 坂庭正浩選手

JG3クラス 中島裕選手

JG3クラス 堀井紳一郎選手

JG4クラス 合田尚司選手

JG6クラス 德武銀河選手

JG7クラス 梅澤高志選手

JG8クラス 山口晃一選手

JG11クラス 関谷光弘選手

JG12クラス 岡野博史選手

JG13クラス 大多和健人選手

中部 RPN1クラス 山崎哲也選手

RPN2クラス 柏木良文選手

PN1クラス 鰐部光二選手

PN2クラス 土手啓二朗選手

PN3クラス 磯村良二選手

SA1クラス 表 和之選手

SA2クラス 佐野光之選手

SA3クラス 安部洋一選手

SA4クラス 堀 隆成選手

SCクラス 桃井 守選手

Dクラス 佐藤宗嗣選手

近畿 BR1クラス 川那辺学選手

BR2クラス 寺谷正樹選手

近畿 BR3クラス 間瀬戸勇樹選手

BR4クラス 北村 健選手

PN1クラス 古田公保選手

PN2クラス 福尾成泰選手

PN3クラス 福永隆一選手

PN4クラス 小玉知司選手

SB1クラス よこ山弘之選手

SB2クラス 中山 務選手

SB3クラス 前田 忍選手

SB4クラス 石田忠義選手

Lクラス 辰巳知佳選手

中国 BRK+クラス KAZUYA選手

BR2クラス 尾崎則夫選手

BR4クラス 難波信善選手

PN1クラス 高屋隆一選手

PN2+クラス 内田 敦選手

S2+クラス 佃 真治選手

S4+クラス 多田 淳選手

T28クラス 児玉直弥選手

四国

PNクラス 徳永秀典選手

NS1クラス 田中康一選手

R1クラス 土居明生選手

R2クラス ジュウガワ貴行選手

R3クラス 仙波秀剛選手

R4クラス 山下和実選手

九州

PN1クラス 衛藤雄介選手

PN2クラス 奥薗圭介選手

PNR1クラス 渡部峻佑選手

SA1クラス 内川俊弘選手

SA2クラス 松尾圭介選手

B1クラス 福田宗久選手

B2クラス 菅 智資選手

JAF近畿ジムカーナ選手権は13クラスでシリーズチャンピオンが誕生 2021年のジムカーナ地方選手権は、2020年はシリーズ不成立に 終わった中部地区も選手権が無事成立し、全国8地区すべてでシ リーズが成立した。北海道地区は全7戦がすべて開催され、東北地 区は最終戦については中止を余儀なくされたものの、開幕戦から6 戦連続で競技会が行われた。全10戦と最多のシリーズが組まれて いた関東地区は、2020年より2戦増えた8戦が成立した。中部地区 は東海、北陸ともに1戦が中止となったが、6戦が成立した。

近畿地区は当初予定されていた全6戦のうち、3月と5月、9月の3 戦が中止となった。7月と9月下旬の大会は共に10月に延期されたが 無事開催され、シリーズも無事成立して、全国でも最多となる13も のクラスでシリーズチャンピオンが誕生した。中国地区も2戦が中 止となったが、6戦が行われ、四国地区は1戦のみ中止の同じく6戦 が開催された。2020年は全戦が成立した九州地区も1戦のみの中止 に留め、7戦が開催された。

2021年JAF北海道ジムカーナ選手権 (7戦開催) 2021年JAF関東ジムカーナ選手権 (8戦開催) 2021年JAF東北ジムカーナ選手権 (6戦開催) 2021年JAF中部ジムカーナ選手権 (6戦開催) 2021年JAF近畿ジムカーナ選手権 (3戦開催) 2021年JAF四国ジムカーナ選手権 (6戦開催) 2021年JAF中国ジムカーナ選手権 (6戦開催)
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2021年JAF九州ジムカーナ選手権 (7戦開催)

DIRT TRIAL ダートトライアル地方選手権

JAF地方選手権2021年チャンピオン

北海道 FF-1クラス 左近弘道選手

FF-2 /4WD-1クラス 原 宴司選手

RWDクラス 古谷欣竹選手

4WD-2クラス 島部 亨選手

東北 S0クラス 竹村由彦選手

S1クラス 武蔵真生人選手

S2クラス 加藤 琢選手

Dクラス 四戸岳也選手

関東 N1500&PN1クラス 栗原正喜選手

PN2&PN3クラス 武石裕二選手

N1クラス 杉谷永伍選手

N2クラス 影山浩一郎選手

S1クラス 小山健一選手

S2クラス Sam Iijima選手

Dクラス 星野伸治選手

中部 RWDクラス 杉田 聡選手

PN1・S1500クラス 岸 貴洋選手

PN2クラス 片田龍靖選手

Nクラス 三上勝義選手

S1クラス 村瀬貴之選手

S2クラス 松原 実選手

近畿 AE・PNクラス 田中淳平選手

RWDクラス 千賀達也選手

N1クラス 正木宏和選手

N2クラス 辰巳浩一郎選手

近畿 S1クラス 増田拓己選手

S2クラス 藤本 隆選手

Dクラス 小川浩幸選手

中国 PN1+クラス 藤原祐一郎選手

N1+クラス 坂本幸洋選手

AEクラス 七田定明選手

SA1クラス 松岡修司選手

RWDクラス 臼井幹夫選手

NS1クラス 浜 孝佳選手

SCD1クラス 坂井秀年選手

SCD2クラス 河内 渉選手

四国 N1クラス 谷 芳紀選手

N2クラス 橋本充弘選手

SD1クラス 谷 正史選手

SD2クラス 岩見文輝選手

九州 N1クラス 永田 誠選手

PN1+クラス 水野喜文選手

S1クラス 中村 凌選手

S2クラス 岡本泰成選手

RWDクラス 良本 海選手

Cクラス 濵田隆行選手

Dクラス 橋本和信選手

2020年は不成立を余儀なくされた2地区の地方選手権もシリーズが成立

2020年はコロナ禍のために、東北、関東の2地区が不成立と なったダートライアル地方選手権だが、2021年はこの両地区を始め とする8地区すべてでシリーズが成立し、通常の形を取り戻した。

北海道地区は開幕戦のスノーイベントのみ中止となったが、残る6 戦が開催され、東北地区は最終戦が9月から11月に延期されたが、 全6戦がすべて開催された。関東地区は2戦が延期されたが、こち

らも全戦が開催され、中部地区は2戦が中止となったが、前年より

1戦多い7戦が開催された。

近畿地区は第1戦~第3戦を10、11月に延期して6戦の開催を確 保。中国地区も第3戦を10月に延期して同じく6戦を成立させた。 四国地区は5月の第2戦が10月に延期となったものの、当初予定の 全4戦をすべて開催。九州地区も2戦ほど延期を余儀なくされたが 予定の全8戦がすべて成立し、関東地区と並んで最多の競技会を開 催した地区となった。

2021年JAF関東ダートトライアル選手 権(8戦開催)

2021年JAF近畿ダートトライアル選手 権(6戦開催)

2021年JAF中国ダートトライアル選手

2021年JAF四国ダートトライアル選手

2021年JAF北海道ダートトライアル選 手権(6戦開催) 権(4戦開催) 2021年JAF東北ダートトライアル選手 権(6戦開催) 権(6戦開催) 2021年JAF中部ダートトライアル選手 権(7戦開催) 2021年JAF九州ダートトライアル選手 権(8戦開催)
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CIRCUIT TRIAL サーキットトライアル地方選手権

JAF地方選手権2021年チャンピオン

筑波サーキットトライアル選手権は最多の 6クラスでシリーズチャンピオンが誕生

2021年は2020年同様に、3か所のシリーズが成立した。スポーツ ランドSUGOの菅生選手権は前年より1戦増えて4戦を開催。開幕 戦は不成立となったB4クラスも第2戦以降は参加台数が増えてクラ スが成立した。筑波サーキットの筑波選手権は2戦増えて全5戦が 開催され、2021年最多の6クラスが成立した。この内、B2、B4、B6 クラスでは5戦全勝のチャンピオンが誕生している。2月下旬に開幕 した岡山国際サーキットのシリーズは12月第1週の最終戦までに全 4戦が成立した。B5クラスも第2戦以降、3戦連続で成立し、選手権 の対象となった。

CUSCO&DUNLOPの若手応援プログラムが、WinmaXが加わりスケールアップ!

国内Bライモータースポーツ競技における競技車両作りには 欠かせない老舗アフターパーツサプライヤーのCUSCO(株式 会社キャロッセ)が、DUNLOPとの共同企画として2020年から 始めた若手育成プロジェクトが、今季は新たにブレーキのWinm aXブランドを展開するエムケーカシヤマ株式会社が加わり、 「CUSCO & WinmaX & DUNLOP 2022年Bライセンス競技若 手育成支援プログラム」として継続されることになった。  このプログラムはラリーやジムカーナ、ダートトライアル競技 に参加する若手ドライバーの支援・育成を通して、Bライ競技の

2022年サポート選手

奥村大地選手 JN4クラス スイフトスポーツ

笠原彰人選手 JN5クラス ヴィッツ

全日本ジムカーナ選手権

黒崎澪音選手 JG10クラス ノート e-POWER NISMO S

小野圭一選手 JG8クラス ロードスター

堀 隆成選手 JG1クラス GRヤリス

全日本ダートトライアル選手権

寺田みつき選手 JD11クラス 86

浦上 真選手 JD7クラス 86

三枝聖博選手 JD7クラス BRZ

活性化、モータースポーツ振興に貢献するというもの。サポート 選手には競技用パーツ、タイヤ、ブレーキパッド、エントリー費 のサポートが行われる。

2021年はサポート選手が全日本選手権で大活躍し、目黒亮選 手(写真左)が全日本ダートトライアルでチャンピオンを獲得。 全日本ジムカーナでも奥井優介選手(同中)がシリーズ2位に入 り、嶋村徳之選手(同右)は全日本ラリーでCUSCOレーシングの GRヤリスをドライブした。そして今季は新たに17名の若者が選 出。各選手の活躍を期待したいところだ。

氏名 参戦予定クラス 参戦車両

ラリー地方選手権

岩堀 巧選手 中四国 GRヤリス

井之上優選手 東日本 BC2 インテグラ

石丸勝一選手 東日本 TBA

ジムカーナ地方選手権

小平美沙季選手 中部 PN1 ロードスター

深川敬也選手 中部 PN1 ロードスター

菱田真也選手 近畿 PN3 86

ダートトライアル地方選手権

大須賀智史選手 関東 PN2&3 スイフトスポーツ

鶴岡義広選手 関東 PN2&3 スイフトスポーツ

奈良勇希選手 中部 PN1・S1500 スイフトスポーツ

菅生 B1クラス 吉崎久善選手 B2クラス 上原和音選手 B4クラス 佐藤靖浩選手 B6クラス 髙岩良行選手 筑波 B1クラス 柴田 尚選手 B2クラス 石井 均選手 B3クラス 梅野健太選手 B4クラス 市川忠康選手 B5クラス 森田正穂選手 B6クラス 澁澤栄一選手 岡山国際 B2クラス 山村純一選手 B5クラス 石田泰久選手
2021年JAF菅生サーキットトライアル選手権 (4戦開催) 2021年JAF筑波サーキットトライアル選手権 (5戦開催) 2021年JAF岡山国際サーキットトライアル選手権 (4戦開催)
氏名 参戦予定クラス 参戦車両 全日本ラリー選手権
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PHOTO/小竹 充[Mitsuru KOTAKE]、中島正義[Tadayoshi NAKAJIMA]、 廣本 泉[Izumi HIROMOTO]、西野キヨシ[Kiyoshi NISHINO]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS]  REPORT/廣本 泉[Izumi HIROMOTO]、JAFスポーツ編集部[JAFSPORTS] シンプルながら奥深い。ダートトライアルの真髄とは !? 特集 ダートトライアル/DIRT TRIAL 60
齢を重ねて 得た極意

舗装のクローズドコースで2回のアタック を行い、その走行タイムで優劣を決するダ ートトライアル。極めてシンプルな競技性 を持ちながら、走るたびに状況が変化するダート路面 の攻略には、舗装のそれとは異なる特殊なスキルの習 得を要するため、奥が深いカテゴリーでもある。

そのため、経験を重ねてから得られる“発見”も多 く、全日本ダートトライアル選手権で活躍するベテラ ンの中にも、キャリアを重ねるごとに新たな発見があ ったり、スキルアップのキッカケを掴んだドライバー も少なくない。ダートトライアルの最高峰シリーズで 活躍する彼らは、長いキャリアを通して何を発見した のか? 齢を重ねたベテランたちが、経験を積み重ね てきたことで得た“極意”をクローズアップしたい。

目の前しか見えてなかった自分…… 全体を俯瞰して組み立てられるように

まず、気になるドライビング面において「経験を積 んでからは、ステアリングを回さなくなってきました

ね」と語るのが、1999年に全日本選手権にデビューし、 2021年はJD8クラスで活躍した中島孝恭選手で、 「若い頃は必死にハンドルを切っていましたが、クル マの動かし方が分かってきてからは変わりましたね。

以前は、クルマが曲がろうとしていないのに無理やり 曲げようとして、その結果”お釣り”が来て、さらに切 り返したりと無駄な動きが多かったんです。現在では クルマの動きがイメージできるようになったので、ハ ンドルを回さずに済むようになりました」と説明する。

さらに「コーナーとコーナーの“繋がり”を捉えられ るようにもなりました。最初は目の前のコーナーを曲 がることしか考えていなかったんですが、経験を重ね たことで、ここを全開で踏むためには、手前のコーナ ーではアクセルを戻さないとダメとか、全体を俯瞰し て捉えられるようになりましたね」と語る。

ちなみに、練習方法についても若手の頃とは変わっ てきたようで「モータースポーツは、反復練習をしな いと自分のカラダとクルマが一体になれないと考えて います。だから、一定量の走り込みは必要で、若い頃 はタイヤがなくなるまで走っていましたが、現在では 路面に合わせた走りを試したり、新しいタイヤならそ のマッチング、ほかにもダンパーやバネの確認だった り、目的を持って走るようにしています」とのことだ。

「全日本は遠征が多いのでコースへの慣れも必要で す。僕は中部地区出身なので広島のテクニックステー ジタカタや栃木の丸和オートランド那須とか、速度域 の高いコースを初めて走ったときは恐怖を覚えまし た。でも、それは結局、慣れの問題なので、遠征して 知らないコースを経験することで引き出しを増やして いった感じですね。ダートコースは路面状況が一定で はないので、今でも発見することが多々ありますよ」 とのことで、中島選手は今もなお進化を重ねている。

2021年JAF全日本ダートトライアル選手権 JD8クラス

中島孝恭選手

TEINルブロスYHスイフト栗[ZC33S]

2021年JAF全日本ダートトライアル選手権 JD7クラス

DL itzzクスコGR86[ZN6]

無駄のない操作を心がけることで 後輪駆動でもアジャストできるように

経験を重ねることでステアリングワークがスムーズ になったと語るのが、2003年から全日本を戦い、 2021年はJD7クラスで躍進した和泉泰至選手だ。 「昔からキレイに走ることを心がけていて、FFと 4WDに乗っていた頃は操作量の少ない運転をしてい たんです。でも、2014年に後輪駆動の86に乗り換え てからは、乗った瞬間から操作量が3倍ぐらいに増え たので、最初は苦労しました。現在ではクルマの動き がイメージできるようになったので、操作量は減って きましたし、何かあった時にも対応できるようになり ました。やはり経験を重ねて身に付いたことですね」。

さらに「最初は曲がり始めのタイミングをコントロ ールできなかったので、コーナー進入ではサイドブレ ーキを使っていたんです。けど、経験を重ねたこと で、サイドを引かなくてもキッカケを作れるようにな ったので、運転操作はラクになりました」と語る。

練習方法についても進化があるようで「経験という

和泉泰至選手
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意味ではないんですけど、車載カメラとGPSロガー を活用しています」と語る。さらに「2004年から 2007年辺りの全日本を追い始めた頃ですが、僕は北 海道から遠征しているので、当時はコースへの習熟が 一番の課題でした。2014年から全日本に復帰したん ですけど、そこで役に立ったのが車載カメラとGPS ロガーでした。あまり練習に行けないコースでもイメ ージがしやすくなったし、上位に入れるようにもなっ

奥村直樹選手

Koneヨコハマ・セリカ[ZZT231]

川島秀樹選手

てきた。こういったデバイスを積極的に活かすこと も、有益になってきたと感じています」とのことだ。

昔は知らないコースで悪戦苦闘 ライン取りを極めて応用が効くように

遠征先のコースへの習熟は、全国を転戦する全日本 ドライバーにとって大きな課題である。2000年に全 日本選手権にデビューし、2021年はJD3クラスで活 躍した奥村直樹選手は、「自分はフレッシュマンを5 年ぐらいやった後、いきなり全日本選手権に参戦した ので、最初は知らないコースばかりで、コースを覚え ることに苦労しました」とデビュー当初を回顧する。

その一方で「遠征費はかかったけれど、速度域がま ったく違うし、若い頃から色々なコースを走ったおか げで、クルマを動かす引き出しは増えました。例えば ライン取り。イン側とアウト側の両方のラインを走っ てみて、どちらでも全開で入れるようなコントロール ができないかを試すんです。伝わりにくいかも知れま せんが、イメージ的には“アクセルを踏んだところで、 どう曲げるか”ってことを考えてました」とのことだ。 運転操作については「経験を重ねたことで、左足ブ レーキが身に付きました。若い頃は右足だけでした が、荒井(信介)選手の助手席に乗せてもらった時、ク ルマを押さえつけるために左足ブレーキを使っていた ので、それをきっかけに練習して、そこからクルマを 動かせるようになりました」と奥村選手。 さらに「初めて四駆ターボのランサーに乗った時に、 “パワーのあるクルマだとアクセルは馬鹿みたいには 踏めない”ということを学んで(笑)、アクセル操作も 繊細になりましたね」と振り返る。クルマ作りに関し ても「自分でセッティングをやり出すと、本番ではク ルマだけを意識してしまうので、チームにお願いする ようになりました。そういった分業をするようになっ たのも経験を重ねてきてからです」とのことだ。 「慣熟歩行についても変わってきたことがあって、昔 はこのコーナーは何速だとか、シフトポイントはここ だとかを考えて歩いていたんですが、最近では1周を ゆっくり歩きながら、路面の整備状況やギャップの有 無、勾配やバンク角を見ています。特に勾配はスピー ドに影響してくるので、よく見ています」と語るよう に、奥村選手は独得な経験を重ねることによって、多 くの発見をしてきたのである。

極限の感覚は自分にしか分からない 身のあるクラッシュも大事な経験 ダートトライアルに付き物の“クラッシュ”につい ても、経験の中で発見した学びもあるという。1989 年に全日本選手権へデビューし、2021年はJD9クラ スで活躍したベテランの川島秀樹選手は「先輩からよ く言われていたことがあるんですが、クルマを壊さな いようにすることが大切ですよね」と語っている。 「とはいえ、ダートラでは上に行くまでにどうしても クラッシュや転倒は付き物なので、それを乗り越えら れるような体制作りも重要ですね。それに、クラッシ ュすると“ここまで行ったらひっくり返る”とか、“こ こまでなら攻めても大丈夫”とかが分かってくる。そ ういう感覚は、他人から教えられても理解できない要 素なので、“身のあるクラッシュ”も経験としては大切 だと思います」と川島選手。同時に「DC2インテグラ で戦っていた頃に、“無理に突っ込んでも成績は出な い”、そして“持てる力を出せればいい”と思えるよう になったんです。その結果、全日本タイトルを獲得す ることができたので、ミスなくきちんと走ることの大

2021年JAF全日本ダートトライアル選手権 JD3クラス 2021年JAF全日本ダートトライアル選手権 JD9クラス
齢を重ねて 得た極意 特集 ダートトライアル/ DIRT TRIAL 62
DL☆テイン☆BRIG☆ヤリス[MXPA10]

先の見えないコーナーでも、マシンと自分の腕を信じて突っ込んでいくのがダートトライアラーの本分。コ ンマ1秒を争うトライアル競技は、一瞬の躊躇がライバルの台頭に繋がるため、常に限界との戦いとなる。

切さを経験の中で学びましたね」とも語る。

練習方法についても「ダートコースってサーキット では体験できない非日常なので、適切なタイヤ選びや 第2ヒートでアジャストする、なんて方法は、やはり ダートコースで経験を重ねるしかないですよね。自分 も若い頃はとにかく走りまくっていましたが、今は要 点を決めて、クルマのセッティングを確認するように しています」とダート競技の特異性を強調した。

クルマの構造を知り、自分を知る 走りを楽しむことが長続きの秘訣

一方、1998年に全日本デビューを果たし、2021年 はJD4クラスで活躍した鈴木信地郎選手はユニーク な視点を持っている。「最大の発見は、“ダートトライ アルを楽しむ”という考え方ですね。自分が楽しいと 思えるように活動したり、ドライビングすることが大

2021年JAF全日本ダートトライアル選手権 JD4クラス

鈴木信地郎選手

オセロット・ダンロップランサー[CZ4A]

2021年JAF全日本ダートトライアル選手権 JD5クラス

細木智矢選手

MJT DL SWK WMスイフト[ZC33S]

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切なんだということが分かっ たんです」と語る。

「若い頃は勝ちたいとか、成 績を上げたいという気持ちの 方が強かったんですが、現在

では走ってるだけで楽しいんです。優勝したいという 気持ちよりは、自分のレベルの中で楽しむことにシフ トしているんですが、それは年数と経験を重ねたこと で、だんだんできるようになってきたんですよね」と 付け加える。

楽しいことを長く続けること、をテーマに活動する 鈴木選手は、車両メンテナンスについても発見があっ たそうで「クルマが壊れる前にしっかりメンテナンス することの大切さも学びました。若い頃はクルマが壊 れるまで放ったらかしだったんですが、マシントラブ ルが原因で転倒とかクラッシュすることも多かったの で、定期交換部品をリストアップするようになりまし た。例えばドライブシャフトなら18か月使ったら交 換しようとか。それでトラブルを防げるので、安心し て気持ち良く走ることができます」とのことだ。

ちなみに鈴木選手は「今までに50台ぐらいクルマ を壊していますが(笑)、修理する過程も楽しんでいま す。クルマの仕組みも分かってくるし、メカニックと してのスキルアップもできる。クルマの仕組みが分か ると、こんな運転をしてみようなんてイメージが湧く ので、転倒した後のイベントなんかは、そのイメージ で走っていたりします」とも語る。ダートラの“破壊 王”が至った結論には重みがあると言えるだろう。

全日本選手権では、よく整備された良質な 超硬質ドライ路面を走れることが多い。し かし、それでも出走を重ねる毎に路面は変 化するもので、そこがダートトライアルの 特徴にして醍醐味でもある。そのため、ど んなに最適なタイヤが選べても、どんなう まいセッティングを施せたとしても、想定 と目前に表れた現実との乖離をアジャスト できるのはドライバーの「腕」なのだ。

見てくれる、支えてくれる人こそ ダートトライアル活動の財産

鈴木選手は「経験を重ねてきたことで、家族やショ ップのサポートのありがたさを感じるようになりまし た」と語っているが、やはり、全日本選手権を戦うた めには周囲の協力が必須である。2009年に全日本選手 権にデビューし、2021年はJD5クラスで活躍した中 堅ドライバー細木智矢選手も「全日本を経験して分か ったことは一人では戦えないということです。メカニ ックやショップ、サプライヤーさんのサポートがいか に大切なのかが分かりました」と語っているが、ベテ ランになればなるほどその言葉は身に染みるだろう。 またサポートという意味では、先輩のアドバイスや 同乗走行を自身のドライビングに影響を与えた要因と して挙げたドライバーも少なくない。

2002年に全日本選手権にデビューし、2021年は JD2クラスで活躍した岩下幸広選手もその一人で、 「色々な人と話をしてアドバイスをもらったりすると、 勉強になるし自信にも繋がります。僕は広島の梶岡 (悟)さんから“ステアリングはゆっくり切れ”とか、 “アクセルもガバッと踏むな”とか、丁寧に走ること を学びましたが、それを心に留めて、実行できるよう

齢を重ねて 得た極意 特集 ダートトライアル/ DIRT TRIAL
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岩下幸広選手

DLアルテック・KYBランサー[CT9A]

になってからは無駄な操作が減ってきました」と語る。

さらに岩下選手は「自分にダメ出しをしてくれる人

を見つけることもスキルアップになることが分かりま した。僕は第1ヒートを探りながら走ることが多く、 色々な人からダメ出しをされてたんですが、その指摘 を意識するようになってからは、第2ヒートでタイム

を上げることができています」とのことだ。

“速い走り”とは何かを考えること 意識して、追い求める姿勢が大切

未舗装路を全開で走れるチャンスは、ラリーのスペ シャルステージかダートコースでしか得られない現代 においては、かなり貴重な機会となっている。1993

年に全日本ダートトライアル選手権にデビューし、そ の後は海外ラリー参戦に挑戦。そして2012年に再び

全日本ダートラに復帰した田口勝彦選手は、世界のあ らゆる路面を走ることで多くの発見を重ねてきた。

「ダートラとラリーはまったく違う競技。例えばブレ ーキでも、ラリーと違ってダートラはギリギリまで詰 めますからね。ラリーを始めた時はダートラ時代の走 りが抑えられなくてコースから飛び出していたし、ラ

リーからダートラへ戻った時は、逆にライバルとのギ ャップを詰めることに苦労しました。それでも、二つ

のカテゴリーを経験したおかげで、ドライビングの引 き出しはかなり増えたと思います。特に路面状況につ いては、発見してからの操作へのリアクションはかな り早い方なんじゃないかな」と語る。

「経験を重ねてきて分かったこととしては、“考えな がら走る”ことの重要性です。若い頃はできなかった

ことが、経験を積むとできるようになるものですが、 それは、ただ長い期間、走り続けるだけでは到達でき

ず、“速い走りとは何か”を意識して、追い求めていく からこそできるようになるんだと考えています」。

さらに田口選手は「セッティングを熟知することも

田口勝彦選手

HKS・YH・テインフィエスタ[MK7]

大切で、モータースポーツはドライビングだけでな く、マシンセッティングでアジャストできる面もある わけです。それを活用できるようになると、成績にも 大きく影響するようになると思います」と付け加える。

そして、”速い走り“を意識した練習方法についても 「昔はアホみたいに走っていました(笑)。その頃はド ライビングの引き出しを増やすためにどうしても走り 込みが必要でしたが、その一方で、上手い人に教えて もらった方が近道だと思っています。ゴルフでは独学 で変なクセを固めてしまうと修正することが難しくな りますが、ダートラも間違ったドライビングを正しい と思い込んでしまうこともあるので、速い人に定期的 に教えてもらったほうがいいと思います」と語る。

このように全日本選手権で活躍するベテランたち は、経験を積み重ねたことで多くの発見をしており、 その“極意”を武器に最前線で活躍しているのである。

ダートトライアルでは走行前に「慣熟歩行」がある。とはいえ、自分が走る頃には路面状況が激 変していることもあるため、目前の路面状況をいち早く察知して最適に対応する必要がある。

2021年JAF全日本ダートトライアル選手権 JD1クラス 2021年JAF全日本ダートトライアル選手権 JD2クラス
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J A F M O T O R S P O R T 第S 56巻 第 2 号 2022年5月1日発行(年 4 2 、 5 、 8 、 11 1 日発行) 発行人 西岡敏明 ☎ 0 3 ( 5470 1711 (代) 一般社団法人 日本自動車連盟 東京都港区芝大門 1 1 番 30号 0570 00 2811 (総合案内サービスセンター) 発行所 東京都港区芝大門 1 9 番 9 号 ㈱ J A F メディアワークス 定価279円 2022 SPRING

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