JAFスポーツ 2022年 冬号(第56巻 第1号 2022年2月1日発行)

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2022 WINTER JAF MOTOR SPORTS JAFスポーツ[モータースポーツ情報] JAF MOTOR SPORTS 第56巻 第1号 2022年2月1日発行(年4回、2、5、8、11月の1日発行) 特集 Victory Road 栄光に向かって 最高峰カテゴリーに挑んだ猛者たちのチャンピオン獲得劇 2021年JAFモータースポーツ表彰式

第22戦アブダビGPの4位フィニッシュで、 アルファタウリ・ホンダの角田裕毅選手はド ライバーズランキング14位に終わる。最終 盤ではメルセデスのバルテリ・ボッタス選手 を抜く活躍も見せて、存在感を示した。

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角田裕毅選手、F1自己最高位の4位で苦労多きデビューシーズンを締める! マックス・フェルスタッペン選手のドライバーズチャンピオン獲得でHonda最終年を飾る! フォト/本田技研工業、Red.Bull.Content.Pool レポート/吉田知弘、JAFスポーツ編集部

IAフォーミュラ1世界選手権 (F1)に挑む唯一の日本人ドラ イバー、スクーデリア・アルフ ァタウリ・ホンダの角田裕毅選手。成功も 失敗も、紆余曲折あったデビューシーズン は最終戦アブダビGPで自己最高位を更 新、確かな成長の足跡を見せた。

F1デビューの第1戦バーレーンGPで は、アルピーヌのフェルナンド・アロンソ 選手をはじめ、歴代チャンピオンたちとバ トルを繰り広げて9位入賞、鮮烈なデビュ ーを飾った。しかし、第2戦以降はその強 い気持ちが空回りしたのか、成績を残せ ず。周囲からの風当たりも厳しくなり、F1 の“洗礼”を浴びる前半戦と なった。

それでも、光る走りを見せ た大会もあり、第6戦アゼル

バイジャンGPで7位入賞を 果たし、第11戦ハンガリー GPでは6位と自己最高位を 更新して夏休みを迎えた。

しかし、後半戦に入ると再

び角田選手は苦しい試練に立ち向かうこと となった。第12戦ベルギーGPは悪天候の ため、セーフティカー先導で数周走行した のみ。何もできないまま15位で決勝が終 了する。続く第13戦オランダGPは、パワ ーユニットのデータに異常が出てリタイア。 さらに第14戦イタリアGPでも、決勝前の スターティンググリッド上で問題が発覚。 急遽ピットに戻された角田選手は、レース 出走さえ叶わなかった。

その後も入賞が遠い大会が続き、第15 戦ロシアGPは17位、9番手スタートだっ た第16戦トルコGPも14位と入賞圏外で フィニッシュ。前半戦で垣間見せた高パフ ォーマンスも発揮できず、「再びポイント 獲得を目指すために、今週末を終えてリセ ットし、自分のパフォーマンスのベースラ インを見直す必要があります 」と、元気が なくなりつつある様子だった。

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そして、上記コメントどおり心機一転し F
HondaがF1でのラストレースを 迎えて、角田選手は「ありがとう」 とHondaへの感謝が描かれた、特 別デザインのヘルメットでアブ ダビGPを戦った。

て臨んだ第17戦アメリカGP では、2戦連続で予選Q3に進 出すると、9位完走で6戦ぶり にポイント獲得。しかし、続 く第18戦メキシコGPと第 20戦カタールGP、初開催と なった第21戦サウジアラビア

GPでは予選Q3進出と、予 選で結果が出始めるも決勝で はポイント獲得ならず……。

我慢のレースが続いた角田 選手だが、その闘志は衰え ず、第22戦の最終戦アブダ ビGPでついに輝いた。

デビューシーズンの学びを 活かし自己最高位更新

初日から常にチームメイト のピエール・ガスリー選手を 上回るタイムを残した角田選 手は、予選で8番グリッドを 獲得。決勝でも序盤から入賞 圏内でレースを展開した。

そして、セーフティカー導 入で前走車との距離が縮まっ たファイナルラップ。メルセ

デスのルイス・ハミルトン選手とレッドブ ル・レーシング・ホンダのマックス・フェ ルスタッペン選手が激しいチャンピオン争 いを繰り広げる一方で、角田選手もアグレ ッシブな走りを披露していた。

周回遅れのマシンを次々と抜くと4番 手、メルセデスのバルテリ・ボッタス選手 に迫り、ターン6でインに飛び込んで鮮や かにオーバーテイク。すぐさま3番手、フ ェラーリのカルロス・サインツ選手を追い

かけたが、0.5秒差に迫ったところでフィ ニッシュした角田選手は、自己ベストの4 位を獲得。表彰台が手の届くところにまで 迫る会心のレースを、デビューシーズンの 最後の最後で見せた。

「このレースウイークを通して、マシンは 最高のパフォーマンスを発揮してくれまし た。レースペースがここまで良くなると予 想をしていなかったのですが、結果的に最 高の日になりました。シーズンをこんなに 良い状態で終えることができるなんて、本 当に最高です。ここまで来るのに長い道の りでしたが、これで自信を取り戻すことが できましたし、最高の結果をもってオフシ ーズンに入ることができます」。

こう最終戦を振り返った角田選手は、 2022年シーズンもアルファタウリから参 戦する。おそらく、全ての大会で順風満帆 に行くとは限らないのであろう。しかし、 2021年シーズンは数々の失敗や不運を経 験した中で学び、成長を遂げてきた角田選 手は、最後のアブダビGPで素晴らしい成 績を残した。これらの経験を糧に、2022年 シーズンはさらなる飛躍の年となるか。角 田選手の活躍から、ますます目が離せない。

ドラマチックな展開で決着! フェルスタッペン選手とHondaが 最終周の逆転劇で悲願を達成!

例年以上に熾烈な争いとなったドライバ ーズチャンピオン争いは、劇的な幕切れと なった。

序盤から続いてきたフェルスタッペン選 手とハミルトン選手のタイトル争いは終盤 戦に入ると、さらに白熱の一途を辿った。

各大会で一進一退のポイント争いを展開し

て、時には直接対決で接触してしまう場面 もあった。ドライバー、そしてチーム間で の心理戦も過熱していき、最終戦が近づく につれて緊迫感が増していくという、F1史 に残る接戦を繰り広げた。

そして、両者が同点という、最高の舞台 が整った最終戦アブダビGP。世界王者の 座をかけて、2人が激闘を繰り広げた。1周 目からサイド・バイ・サイドのバトルを展 開し、一瞬接触する場面も見られた2人だ が、ハミルトン選手がトップでレース後半 に突入。しかし、ウィリアムズ・メルセデ スのニコラス・ラティフィ選手がクラッシ ュしたことにより、残り4周というところ でセーフティカーが導入された。

ここでフェルスタッペン選手はピットに 入り新しいソフトタイヤを装着した一方、 ハミルトン選手はピットインせず。両者の タイヤ戦略が分かれ、あと1周というとこ ろでレースが再開。すると、フェルスタッ ペン選手はニュータイヤを活かしてターン 5でトップを奪った。ハミルトン選手も摩 耗したタイヤながらターン9で並びかけた が、逆転には至らなかった。

そして、10勝目を飾ったフェルスタッペ ン選手は、初のドライバーズチャンピオン に輝いた。Hondaのパワーユニット搭載車 両を駆ったドライバーとしては、故アイル トン・セナ氏がマクラーレン・ホンダで 1991年に輝いて以来となる、ドライバー ズチャンピオン獲得となった。

2021年シーズンでF1から撤退する Hondaは、最後のチャンピオン獲得の機会 だった。それを逃さず、劇的な展開で悲願 を達成したことは、モータースポーツ界の みならず、世界中で大きな話題となった。

eポールポジションを獲得するも、スタートからメルセデスのルイス・ハミルトン選手に先行されて苦しいレースとなったレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペン選 手。諦めずに戦うことで千載一遇の逆転チャンスを掴み、劇的な形で念願のドライバーズチャンピオンを手にした。

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勝田貴元選手、初のWRCフル参戦はランキング7位で終える

TGR WRTが念願の三冠を達成して、WRカーでのラストイヤーを飾る!

フォト/TOYOTA.GAZOO.Racing、Red.Bull.Content.Pool レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部

OYOTA GAZOO Racing WRC

Tチャレンジプログラムから、日 本人ドライバー初のFIA世界ラ リー選手権(WRC)フル参戦中、第6戦で は2位表彰台を獲得した勝田貴元選手。

2021年シーズンのWRC最終戦となる第 12戦「ラリー・モンツァ」では6位入賞を 果たして、フル参戦初シーズンを終えた。

F1イタリアGPも開催される、ミラノの 北東に建つモンツァ・サーキットを拠点に 開催されたこのラリーは、現行WRカーで の最後のラリーでもあった。

第10戦から組むコ・ドライバーのアーロ ン・ジョンストン選手と臨んだ勝田貴元選 手のデイ1。「午前中はリズムが掴めません でした」と語ったとおり、SS1で8番手タイ ムに留まると、続くSS2、SS3でも8番手 タイム、SS4で7番手タイムと厳しい立ち上 がりを強いられた。

しかし、モンツァ・サーキットに舞台が

移ったSS5、SS6で5番手タイ ムをマークすると、この日の最 終ステージとなるSS7ではセカ ンドベストをマークして6番手 でデイ1をフィニッシュ。「サー キットのステージはスタートか らとても良い感触が得られまし た。山岳ステージは、どこでタ イムを失っているのか分かりま した」と語り、デイ2での走りに も期待が高まった。

デイ2での勝田貴元選手は SS8こそ8番手タイムだったが、

前半戦での連続入賞から一転、後半戦は結果に恵まれなかった勝田貴 元選手。最終戦でようやく入賞を果たし、1年間の成長の軌跡を見せた。

SS9で4番手タイム、SS11で5番手タイ ム、SS12で再び4番手タイムをマーク、6 番手を守ってデイ2を走り終えた。

徐々にリズムを取り戻した勝田貴元選手 は、最終日デイ3のオープニングステージ となるSS14で4番手タイムをマーク。し かし、SS15ではスピンを喫して車両前部を

破損したものの、なんとか走りきった。 リタイアも覚悟したという勝田貴元選手 だったが、チームはわずか15分のリペアタ イムで最終SS16、パワーステージに向け てマシンを修復。その期待に応えるかのよ うに、勝田貴元選手も持ち前のスプリント 能力を披露して、今ラリー2回目のセカン

現在、レースでは使われないモンツァ・ サーキットのオーバルコースを駆ける勝 田貴元選手。初日最初の山岳ステージは 苦戦したが、得意のサーキットステージ に移ると徐々にペースを取り戻し、7位で 久しぶりのポイント獲得となった。

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ドベストをマーク。デイ2から順位をひと つ落としたが、7位でフィニッシュした。 「最終ステージを走ることができるように マシンを修理してくれたチームに感謝して います。パワーステージは、ラトバラ代表 から“自分を信じて行ってこい”と言われた ので、プッシュしました。ペース配分も勉 強になりましたし、感触の良いステージで は区間タイムも良かったので自信にもつな がりました。今回のラリーではいくつかポ ジティブな収穫があったと言えます」と振り 返った勝田貴元選手は、2位で表彰台に登壇 した第6戦以来のポイントを獲得して、 2021年シーズンのWRCを締めくくった。

初のフル参戦では表彰台にも登壇し、 2022年シーズンはさらに飛躍を誓う

WRCフル参戦初シーズンの勝田貴元選 手は第1戦から第3戦まで続けて6位入賞 を果たすと、第4戦と第5戦では4位。そ して第6戦「サファリ・ラリー・ケニア」で2 位、自身初となるWRCの表彰台に登るな ど、著しい飛躍を遂げた。

ル参戦が発表された勝田貴元選手。「今季 は中止になりましたが、来季はラリー・ジ ャパンもあって僕に対する期待も大きいと 思います。ラリー・ジャパンではいい走り をして、リザルトに関しても表彰台に上が っているところを見せたい。もちろん、そ の他のラウンドでも活躍して、ラリー人気 に貢献できるように頑張りたいと思います」 と語った勝田貴元選手に、これからも要注 目だ。

オジエ組が8度目の戴冠を果たし、 TGR WRTは念願の三冠を達成!

ドライバーズとコ・ドライバーズ、そし てマニュファクチャラーズの三つのチャン ピオン争いも、この最終戦で決着した。

ドライバーズとコ・ドライバーズチャン ピオン争いは、首位のセバスチャン・オジ エ/ジュリアン・イングラシア組と、17ポ イント差の2番手で、TOYOTA GAZOO Racingワールドラリーチーム(TGR WRT) のチームメイト、エルフィン・エバンス/ スコット・マーティン組との一騎討ち。

モンツァ・サーキットを駆け抜けるセバスチャン・オジ エ/ジュリアン・イングラシア組は優勝と8度目のチャ ンピオン獲得で、ふたりで走る最後のラリーを飾った。

しかし、デイ3のSS15でエバンス組が エンジンストールを喫してしまい、SS16で は手堅い走りで首位を守ったオジエ組が、 今季5勝目を挙げて8度目のチャンピオン を獲得。コ・ドライバーを引退するイング ラシア選手は有終の美を飾った。

第7戦以降はコ・ドライバーの交代など もあり、なかなか成績を伸ばせなかったが、 最終戦にしてようやく久しぶりの入賞を果 たして、ドライバーズランキング7位でフィ ニッシュしたことは称賛に値するシーズンだ ったと言えるだろう。

「フル参戦1年目で、こういったチャンスを くれたチームに感謝しています。同時に経 験を積むことができました。まだ足りない部 分もあるけれど、手応えをつかむこともでき ました。実際、シーズン前半はトップに対し て1kmあたり0.5秒から0.7秒ぐらい離さ れていましたが、後半では0.3秒以内に入 ってきました」と振り返る勝田貴元選手。

チーム代表のヤリ-マティ・ラトバラ氏 も「タカ(勝田貴元選手)はいいステップを踏 んできたと思う。とくにサファリ・ラリー は難しいコンディションのなか、マシンを うまくコントロールしていたし、セブ(セバ スチャン・オジエ選手)が迫ってきてもクレ バーで集中していた。シーズン中盤はコ・ ドライバーが変わったことで自信が低下し、 厳しい戦いになっていたけれど、シーズン 前半はコンスタントで安定していた」とのこ とで、勝田貴元選手の進化を高く評価して いる。

2022年シーズンもTOYOTA GAZOO Racingの新車両、GR YARIS Rally1でのフ

デイ2では「エルフィンと何度も順位を入 れ替える大接戦で、ファンの皆さんはエキ サイティングしたと思います。明日はまず タイトル獲得に集中して戦いますが、もし 優勝することができたら、それはおまけの ようなものです」とオジエ選手が語ったよう にアツいシーソーゲームを繰り広げた。

一方、マニュファクチャラーズチャンピ オンはTGR WRTの先輩2組が熾烈なラリ ーを展開する中、カッレ・ロバンペラ/ヨ ンネ・ハルットゥネン組が完走重視のラリ ーで9位入賞を果たしてチャンピオンを獲 得。TGR WRTは念願の三冠を達成して、 WRカー最後のシーズンを締めくくった。 新規定のRally1車両がデビューする2022 年シーズンもひき続き、TGR WRTの活躍 に期待したい。

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2017年のWRC復帰から5シーズンかけて、念願の三冠を達成して喜ぶTOYOTA.GAZOO.Racingワールドラリー チームのメンバー。中央が復帰初シーズンから2019年シーズンまではTGR.WRTのドライバーとして活躍し、2021 年シーズンからチーム代表を務めるヤリ-マティ・ラトバラ氏だ。

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FIA本部があるパリ・コンコルド広場に 並べられたチャンピオンマシン。2021

年のFIA表彰式はカルーゼル・デュ・ ルーブルでリアル開催され、日本の自 動車メーカーが三つの世界選手権で 活躍する記念すべき年となった。

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日本勢が大活躍した2021年、 FIA表彰式がルーブルでリアル開催!!

2020年はオンライン開催だったFIA Prize Givingがフランスで行われ、世界の王者が久々に集まった

フォト/FIA、JAFスポーツ編集部 レポート/JAFスポーツ編集部

シーズンのFIAフォーミュラ1

世界選手権(F1)は、12月12日 のアブダビGPで最終戦を迎え た。ヤス・マリーナ・サーキットでは、ル イス・ハミルトン選手とマックス・フェル スタッペン選手が同ポイントで対決。ファ イナルラップの1周勝負という状況でフェ ルスタッペン選手が逆転してドライバータ イトルを確定させた。そしてこの勝利は、 レッドブル・レーシングのパワーユニット サプライヤーであるHondaに、最後の最 後で、有終の美をもたらすことになった。

劇的な幕切れとなったF1最終戦から4 日後の12月16日、フランス・パリでは恒 例のFIA Prize Giving(FIA表彰式)が開催 された。2020年は新型コロナウイルス感染 症の影響によりオンライン形式で開催され ることになったが、2021年はカルーゼル・ デュ・ルーブルに成績上位選手を招待し た、リアル賞典授与式の開催が実現した。

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今季の世界選手権では日本勢が大活躍し ており、FIA世界耐久選手権(WEC)では小 林可夢偉選手が自身二度目となるドライバ ータイトルを獲得して、四輪の世界選手権 を二度制覇するという日本人としては初と なる偉業を成し遂げた。WECのマニュフ ァクチャラーズチャンピオンはTOYOTA GAZOO Racingが連覇したが、これは FIA世界ラリー選手権(WRC)でも同様で、 セバスチャン・オジェ選手がドライバータ イトルを獲得し、マニュファクチャラーズ タイトルはTOYOTA GAZOO Racingが 獲得している。

また、Hondaがパワーユニットを供給す るレッドブル・レーシング・ホンダがドラ イバータイトルを獲得。これにより日本の 自動車メーカーが三つの世界選手権で栄誉 を得ることになり、三選手権とも今季の国 内開催は叶わなかったものの、日本のプレ ゼンスを高めるメモリアルイヤーとなった。

FIA表彰式は、フォーミュラEのピット レポーターとしておなじみのニッキ―・シ ールズ氏らが司会を務め、FIAグランツー リスモ選手権の表彰から始まった。 同選手権のネイションズカップは、オリ ンピック・バーチャル・シリーズも制して いるヴァレリオ・ガロ選手が獲得。マニュ ファクチャラーシリーズは、山中智瑛選手 /イゴール・フラガ選手/コケ・ロペス選 手らトヨタが獲得しており、出席したガロ 選手とロペス選手にはJAFモータースポー ツ部の村田浩一部長から賞典が授与された。 二つの世界選手権を制したTOYOTA GAZOO Racingからは、小林可夢偉選手 と中嶋一貴選手がリアル出席。小林選手は 来季からWECチームを取りまとめる立場 となり、中嶋選手は欧州に拠点を移して TOYOTA GAZOO Racingのモータース ポーツ事業に関与することになっているだ けに、この二人の日本人にはFIAのモータ

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FIA世界耐久選手権(WEC)でドライバータイトルを獲得した小林可夢偉選手、そして中嶋一貴選手 らが出席。小林選手は、四輪レースで二度の世界タイトルを獲得した初めての日本人ドライバーと いう偉業を達成している。また、シリーズ2位で終えたWECを勇退した中嶋選手は、来季から欧州 を拠点に新たな立場でモータースポーツに関わることから、その手腕に期待が寄せられている。

ースポーツ行政における日本の顔役として の活躍が期待されている。

式典では、各地域のリージョナル選手権 におけるタイトルも認定され、FIAフォー ミュラ4地方選手権でチャンピオンを獲得 した野中誠太選手や、12月12日に最終戦 が行われたフォーミュラリージョナル地方 選手権でタイトルを獲得した古谷悠河選手 の名前が挙がり、栄誉が讃えられていた。

また、10月末にスペインで開催された FIAカート世界選手権の最終戦では、OKジ ュニアで2番手に終わりながらも劇的な逆 転を遂げたKean Nakamura-Berta選手が チャンピオンを獲得。日本人初の世界カー ト選手権制覇ドライバーという偉業を成し 遂げ、フェリペ・マッサ委員長とフェルス

FIAグランツーリスモ選手権の表彰が行われ、マニュ ファクチャラーシリーズを山中智瑛選手/イゴール・フ ラガ選手と制したコケ・ロペス選手と、ネイションズ カップ王者のヴァレリオ・ガロ選手に対して、村田浩 一JAFモータースポーツ部長から賞典が授与された。

タッペン選手から賞典が授与されていた。

式典の後半では、12年に渡ったFIA会長 の役を今季限りで退くジャン・トッド氏へ の謝意を込めた記念品の贈呈も行われた。

そして、12月17日にはFIA会長選挙が 行われ、61.62%の信任を得たモハメド・

英国のKean Nakamura-Berta選手が 日本人初のCIK-FIA世界カート王者に 英国Forza.RacingからOKジュニアに参戦したKean. Nakamura-Berta選手が、10月31日にスペインで行われ たCIK-FIA世界カート選手権大会で劇的な優勝を飾り、 日本人初の世界カート選手権チャンピオンに輝いた。 FIA表彰式ではFIAカート委員会のフェリペ・マッサ委員 長、そしてマックス・フェルスタッペン選手から賞典が 授与されていた。

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式典の後半では、12年に渡りFIA会長を務めてきた ジャン・トッド氏への謝意を込めた記念品の贈呈も行 われた。そして、翌日のFIA会長選挙では、グラハム・ ストーカー氏を破ったモハメド・ビン・スライエム氏 が、欧州以外からは初となるFIA会長に選出された。

ビン・スライエム氏が新会長に就任した。 これまで中東担当のバイス・プレジデント を務めてきた同氏は、ラリーストとして活 躍した経歴を持つ。トッド氏もコ・ドライ バー出身ということで、二代続けてラリー 出身の会長が選出されることになった。

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HEADLINE

4 角田裕毅選手、F1自己最高位の4位で苦労多きデビューシーズンを締める!

6 勝田貴元選手、初のWRCフル参戦はランキング7位で終える

8 日本勢が大活躍した2021年、FIA表彰式がルーブルでリアル開催!!

SPECIAL ISSUE

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戴冠の瞬

と 間 き

2021年JAFモータースポーツ表彰式

18 巻頭特集

Victory Road

2021年チャンピオン獲得への軌跡

全日本スーパーフォーミュラ選手権

栄光に向かって

全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権

FIAインターナショナルシリーズ スーパーGT 全日本カート選手権OK部門/FS-125部門/FP-3部門 ジュニアカート選手権FP-Jr部門/FP-Jr Cadets部門

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初栄冠の誉れ

2021年全日本選手権“初”チャンピオンインタビュー

46 アナタがラリーに挑むワケ

未知の世界へ果敢に飛び込む挑戦者たちの主張

TOPICS

51 明日への挑戦

モータースポーツ活性化を目指す飽くなき取り組み

63 オートテスト倶楽部

オートテスト主催者に向けたオートテスト開催のための講習会を実施!

INFORMATION

36 INFORMATION from JAF モータースポーツ公示・JAFからのお知らせ(WEB)一覧 (2021年10月1日~2021年12月24日)

36 2021年JAF地方選手権表彰式開催予定一覧表

37 JAFモータースポーツサイトのススメ

JAF MOTOR SPORTS JAFスポーツ[モータースポーツ情報]

監修/一般社団法人 日本自動車連盟 〒105-0012 東京都港区芝大門1-1-30 ☎0570-00-2811(ナビダイヤル) 発行所/株式会社JAFメディアワークス  〒105-0012 東京都港区芝大門1-1-9野村不動産芝大門ビル10F  ☎03-5470-1711 発行人/西岡敏明 振替(東京)00100-88320 印刷所/凸版印刷株式会社 編集長/佐藤均 田代康 清水健史 大司一輝 デザイン/鎌田僚デザイン室 編集/株式会社JAFメディアワークス メディア事業本部(JAFスポーツ) ☎03-5470-1712

COVER/2021年JAF全日本スーパーフォーミュラ選手権第6戦 PHOTO/石原康

本誌の記事内容は2021年12月24日までの情報を基にしております。また、社会情勢等によって、掲載した情報内容に変更が生じる可能性がございます。予めご了承ください。

「JAFモータースポーツサイト」としてリニューアル! https://motorsports.jaf.or.jp/

2022
冬 CONTENTS

瞬 と 間

2021年JAFモータースポーツ表彰式

2020年のJAFモータースポーツ表彰式 は新型コロナウイルス感染症の感染拡大の 影響を鑑みて事前収録の動画配信形式で行 われたが、2021年は引き続き各種感染症対 策を徹底しながらリアル開催が実現。各カ

テゴリーのチャンピオンを表彰式会場に招 いた、関係者のみの無観客で実施された。

JAF公認モータースポーツの一年の集 大成であるこの表彰式は、国内のFIA国際 格式や全日本選手権等で好成績を収めた選

手やチームの栄誉を称える式典として、国 内四輪モータースポーツを統轄する一般社 団法人日本自動車連盟の主催によって執り 行われた。

2019年までのセルリアンタワー東急ホ テルから場所を移し、会場となったホテル 雅叙園東京の花苑には盛装したチャンピオ ンたちが勢ぞろい。会場内が密にならない よう登壇の出番まで控室で待機して、賞典 授与の模様は控室のスクリーンでリアルタ イム配信する形が採られた。また同日夜に はJAFモータースポーツサイトにも式典 の映像が一般公開された。

開催日:2021年12月3日(金) 開催地:ホテル雅叙園東京 花苑(東京都目黒区)
JAF MOTOR SPORTS AWARD 2021 12
フォト/宇留野潤、加藤和由、関根健司、森山良雄、TOYOTA GAZOO Racing、JAFスポーツ編集部 レポート/JAFスポーツ編集部

ドライバー・オブ・ザ・イヤーの表彰

モータースポーツの認知度向上のため2021年から新たに設けら れた「ドライバー・オブ・ザ・イヤー」は、JAFモータースポーツ振 興委員会によってノミネートされ た候補者の中からJAF会員による 投票で選出された競技者を表彰 するもの。インディカー・シリー ズで活躍する佐藤琢磨選手が選 ばれ、スポーツ庁の室伏広治長官 より賞典の授与が行われた。

JAFモータースポーツ名誉委員の称号贈呈

モータースポーツの発展にとくに貢献の著しい個人に贈られる 「JAFモータースポーツ名誉委員」の称号は、1986年から長きに渡り JAFモータースポーツ委員会の職 務を全うし、また旧登録小委員会 委員、登録部会長、安全部会長を歴 任、数々の競技会の競技役員や運 営にも尽力された鈴木隆史氏が選 ばれた。JAF藤井一裕会長より称 号が贈呈された。

JAFモータースポーツ特別賞の贈呈

2021年FIA世界耐久選手権ハイパーカー・ドライバーズチャ ンピオン、2021年FIA世界耐久選手権第4戦ル・マン24時間 レース総合優勝を称えて小林可夢偉選手に特別賞が贈られた。 またFIA国際ラリー競技会を20年連続開催して国内ラリー競技 の普及や発展に貢献したAG.メンバーズスポーツクラブ北海道、 2021年FIA世界ラリー選手権マニュファクチャラーズチャンピ オンおよび2021年FIA世界耐

久選手権ハイパーカー・チーム

チャンピオンを獲得したTOYO

TA GAZOO RacingにはJAF坂

口正芳副会長から賞典が授与さ れた。

小林可夢偉選手

鈴木隆史氏 13
AG.メンバーズスポーツクラブ北海道 TOYOTA GAZOO Racing
佐藤琢磨選手

スーパーフォーミュラ・ドライバー 野尻智紀選手

全日本スーパーフォーミュラ選手権

スーパーフォーミュラ・チーム carenex team IMPUL スーパーフォーミュラ・メカニック賞 MUGEN

FIA インターナショナルシリーズ

スーパーGT

GT500クラス・ドライバー 関口雄飛選手/坪井翔選手

GT500クラス・チーム TGR TEAM au TOM'S

全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権

スーパーフォーミュラ・ ライツ・ドライバー 名取鉄平選手

スーパーフォーミュラ・ ライツ・チーム TOM'S スーパーフォーミュラ・ ライツ・エンジンチューナー Siegfried Spiess Motorenbau GmbH

GT300クラス・ドライバー 井口卓人選手/山内英輝選手

GT300クラス・チーム R&D SPORT

2021年FIA-フォーミュラ4選手権の表彰も行われ、 ドライバーチャンピオンの野中誠太選手、チーム チャンピオンのTGR-DC Racing Schoolが登壇。 JAF杉山雅洋副会長から賞典が授与された。

JAF MOTOR SPORTS AWARD 2021 14

FIA Electric & New Energy Championsh ip・4時間耐久レース総合優勝のMTHS松 工ソーラーカーチーム、オリンピア優勝の TEAM RED ZONE、ドリーム優勝のTHE BLUE STARSにそれぞれ写真パネルが贈 呈された。

JAFカップオールジャパンダートトライアル優勝者の皆さん。クラス9太 田智喜選手、クラス8中島孝恭選手、クラス7岡翔太選手、クラス6伏見浩 二選手、クラス5井之上優選手、クラス4マイケルティー選手、クラス3山 崎迅人選手、クラス2吉村修選手、クラス1鎌田卓麻選手。栄光の「JAF カップ」はJAFモータースポーツ部の村田浩一部長から授与された。

JAFカップオールジャパンジムカーナ優勝者の皆さ ん。クラス8斉藤邦夫選手、クラス7仲川雅樹選手、ク ラス6徳武銀河選手、クラス5片山誠司選手、クラス 4田中康一選手、クラス3山本太郎選手、クラス2藤井 雅裕選手。クラス1飯坂忠司選手とクラスWomen渡 邉千尋選手は欠席となった。

JAFモータースポーツ表彰式の開会に先 立ち、JAF藤井会長による挨拶があり、「こ れからもモータースポーツの発展に全力 を尽くします」と強く宣言した。

モータースポーツの実況でおなじみのピ エール北川氏、そしてゲストMCとして伊 藤ソニア氏というコンビがJAFモーター スポーツ表彰式の司会進行を務めた。

ドライバー・オブ・ザ・イヤー投票者から 抽選で選ばれた、幸運な表彰式特別招待 者は金子敦士さん。サプライズで佐藤琢磨 選手からサイン入りキャップが贈られた。

全日本カート選手権/ジュニアカート選手権

表彰式は1名ずつ登壇して謝辞を述べる スタイル。表彰対象者は待合室のモニター に映し出された表彰式の模様を眺めつつ、 自らの出番を緊張の面持ちで待った。

2021 JAF MOTOR SPORTS AWARD 好評配信中!

無観客での開催となった2021年JAFモータースポーツ表彰式の映像が、 JAFモータースポーツサイトで公開されているので要チェック。表彰式本編の 模様がノーカットで配信されており、チャンピオンとなった選手たちの晴れ舞 台や、喜びの声が視聴可能。また2020年以前の映像もアーカイブされている ので、過去の表彰式を振り返って見たい方もぜひご覧を。

https://motorsports.jaf.or.jp/results/award/2021

FP-Jr Cadets部門 酒井龍太郎選手 FP-3部門 村田悠磨選手 OK部門 佐々木大樹選手 FP-Jr部門 鈴木恵武選手 FS-125部門 堂園鷲選手
15

クラス8 川北忠選手 2016年以来4回目

全日本ラリー選手権

クラス6 ユウ選手 2018年以来3回目

クラス4 小武拓矢選手 2年連続2回目

クラス2 広瀬献選手 初タイトル

全日本ダートトライアル選手権

JAF MOTOR SPORTS AWARD 2021
クラス10 織田拓也選手 初タイトル クラス3 若林拳人選手 2018年以来3回目 クラス7 山野哲也選手 5年連続21回目 クラス1 津川信次選手 2年連続10回目 クラス5 茅野成樹選手 2019年以来12回目
16

クラス6ドライバー 吉原將大選手 初タイトル

クラス5ドライバー 天野智之選手 8年連続13回目

クラス4ドライバー 西川真太郎選手 初タイトル

クラス3ドライバー 大竹直生選手 初タイトル

クラス2ドライバー ヘイキ・コバライネン選手 初タイトル

クラス1ドライバー 勝田範彦選手 2017年以来9回目

クラス6コ・ドライバー 佐野元秀選手 初タイトル

クラス5コ・ドライバー 井上裕紀子選手 12年連続14回目

クラス4コ・ドライバー 本橋貴司選手 初タイトル

クラス3コ・ドライバー 藤田めぐみ選手 2014年以来2回目

全日本ジムカーナ選手権

クラス2コ・ドライバー 北川紗衣選手 2010年以来2回目

クラス1コ・ドライバー 木村裕介選手 初タイトル

クラス11 小関高幸選手 初タイトル

クラス9 太田智喜選手 初タイトル

クラス8 谷尚樹選手 初タイトル

クラス7 山崎利博選手 2年連続5回目

クラス6 北條倫史選手 4年連続6回目

クラス5 細木智矢選手 2018年以来3回目

クラス4 北村和浩選手 2019年以来17回目

クラス3 坂田一也選手 2019年以来2回目

クラス2 目黒亮選手 初タイトル

クラス1 炭山裕矢選手 3年連続6回目

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~栄光に向かって~

タイトルを手中に収めることに情熱を燃やし、

シリーズの一戦一戦を真摯に戦い抜いてきたドライバーたち。

ほんのひと握りの者にのみ辿り着くことが許される栄光への道は、 どのようなシーズンを経てつくられてきたのだろう。

ここでは2021年のシリーズチャンピオンに輝いた選手たちの軌跡について 1年を振り返りながらクローズアップする。

JAF全日本スーパーフォーミュラ選手権

020年ほどではないにせよ、2021 年も新型コロナウイルス感染症に よる影響を受けた国内モータース ポーツ界。なかなか日本に入国が叶わず、

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終盤2戦のみの参戦となったサッシャ・フェ ネストラズ選手、またFIA世界耐久選手権 との掛け持ちで2週間の隔離期間が必要に なり、幾度も欠場を余儀なくされた小林可 夢偉選手や中嶋一貴選手、タチアナ・カル デロン選手と、全日本スーパーフォーミュラ 選手権でも本来であればレギュラーシート に座るべきドライバーが代役にステアリン グを委ねるという大会が多かった。

そんなイレギュラーなシーズンとなった 2021年だが、その中で圧倒的なパフォー マンスを発揮し、国内最高峰のタイトルを ものにしたのは野尻智紀選手。野尻選手に とってはシリーズ参戦8年目にして、初の 戴冠となった。

布石は2020年シリーズ最終戦の富士 野尻智紀選手の飛躍の幕開けとなった

その序章となったのは、2020シーズン の最終戦・富士。山本尚貴選手や平川亮選 手、ニック・キャシディ選手と共にタイト

ルを争っていた野尻選手は、このレースで

会心のポールポジション(PP)を奪ってい る。決勝ではピット作業でタイムロス、そ の後はフロントタイヤに問題を抱えてリタ イアとなったが、後に自身が語るように 「もうチャンピオンになる準備はできてい る」という発言にもうなずける。

迎えた2021年、TEAM MUGENと組ん で3年目となるオフのテストから、野尻選 手は本番を見据えてのテストを着々とこな した。第1回公式テスト直前に発表された のは、2021年向けの新たなマシンカラーリ ング。M-TECの本田博俊氏による発案で決

フォト/石原康、宇留野潤、遠藤樹弥、小竹充、関根健司、長谷川拓司、吉見幸夫、JAPANKART、JAFスポーツ編集部  レポート/貝島由美子、はた☆なおゆき、水谷一夫、JAFスポーツ編集部
国内最高峰フォーミュラでシリーズ7戦3勝!
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苦節8年、野尻智紀選手が念願のタイトル奪取!!

2021年チャンピオン獲得への軌跡

JAF全日本スーパーフォーミュラ選手権 JAF全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権 FIA インターナショナルシリーズ スーパーGT

JAF全日本カート選手権

OK部門/FS-125部門/FP-3部門 JAFジュニアカート選手権 FP-Jr部門/FP-Jr Cadets部門

まったというデザインは、全身に赤をまと った車体に「医療従事者の皆様ありがとう ございます!」という感謝のメッセージが大 きく描かれている。

このマシンを操る野尻選手が活躍すれば するほど、その気持ちは多くの人々に届く はず……、そんな期待に、野尻選手は開幕 戦から応えることになる。舞台は前年の最 終戦と同じ富士だ。「テストからクルマに 手応えを感じていた」という野尻選手は、 練習走行から速さを見せる。予選では、全 てのセッションで“頭ひとつ抜けたタイ

ム”でトップを記録。自分のタイミングで アタックできるようにと真っ先にコースに 入ると、はやる気持ちをコントロールしな がらも見事なPPを獲得した。

決勝レースではクラッチに不安を抱えて いたこともあり、スタートでポジションを ひとつ落とすが、そこからオーバーテイク を仕掛けてポジションを奪還。終盤は雨が ぱらつき、滑りやすいコンディションとな ったが、その中でのタイヤ交換、アウトラ ップでも動じることなくトップチェッカー を受けた。前年の最終戦での忘れ物を取り

戻した1戦だった。

続く第2戦は、鈴鹿サーキットが舞台と なった。この大会で予選PPを獲得したの は福住仁嶺選手。野尻選手は、練習走行か ら今ひとつマシンセットアップが決まって いないという感触を抱いていた。チームは 野尻選手のリクエストに応えて大幅にセッ トを変更。さらに、予選Q3ではコースに 出てフロントタイヤだけを一旦スクラブ し、リアにニュータイヤを装着するという 形でアタックを敢行した。

しかし、福住選手にはわずかに届かず、

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2番手となっている。決勝レースでも福住 選手はスタートからトップをキープ。とこ

ろがその福住選手を不運が襲う。突然のタ イヤトラブルで戦列を去ることになったの だ。これでトップに立った野尻選手は、終 盤に平川選手の追撃を受ける形となった が、終始落ち着いたレース運びを見せて2 連勝。ポイントの上でも、ライバルを突き 放す形となった。

2連勝後は順位が停滞するも

着実にポイントを稼ぐ安定ぶり

早めの梅雨入りをした大分県・オートポ リスで行われた第3戦。この大会は予選も 決勝も雨に翻弄されることとなる。その中 で生まれたニューヒーローは、中嶋選手の 代役として鈴鹿から出場、これが2戦目と なるジュリアーノ・アレジ選手だった。

雨から始まり、一時は降り止んだもの の、最後は再び降雨となった予選。通常の ノックアウト方式ではなく、計時方式とな ったこの予選では、赤旗が4回も出され る。そこで鍵を握ったのが、前年のチーム ポイントによって決められているピットガ レージ位置。ピットロード出口に近いチー ムにとって、有利に働く状況だったから

だ。その中で、最初にコースに出ることが できる位置だったアレジ選手は終盤、雨が 再度降り始める中での猛プッシュ。デビュ ー2戦目にしてPPを獲得するという快挙 を成し遂げた。

これに対して、アタック中に赤旗が提示 されるなど、なかなかタイミングが合わな かった野尻選手は7番手。前年のオートポ リスを制しているだけに、少々残念な結果 に終わる。だが、本人は冷静に状況を分 析。「ピットガレージの位置に関わらず、 もっと自分にできることはあったんじゃな いかと思う」と振り返る。

翌日は、予選日以上の荒天。それでも、 雨の止み間に決勝は始まった。セーフティ カーではなく、スタンディングでのスター トでは、中団でアクシデントも発生し、最 初から波乱の展開となる。その後も随所で バトルが見られた。野尻選手も、激しいプ

ッシュを見せてポジションアップ。5番手 まで浮上してくる。ところが、その後は大 きく天候が崩れてレースは中断、そのまま 終了に。各ドライバーが得られたポイント は通常の半分となった。それでも野尻選手 は貴重な3点を追加している。

オートポリスに続き、第4戦・SUGO も予選は雨の中での開催となる。雨が強弱 を繰り返すような難しいコンディションの 中、自身3年ぶりのPPを獲得したのは関 口雄飛選手。2020年、苦しいシーズンを 送った関口選手は、よほど胸に秘めていた ものがあったのだろう。パルクフェルメに 戻ると男泣きを見せる。一方、ポイントリ ーダーの野尻選手は、雨の中でタイミング を合わせ切れずにまさかのQ2敗退。オー トポリスに続いて、上位グリッド獲得とは ならなかった。

しかし、ドライとなった決勝ではまた別

2021
Rank. No. Driver Rd.1 Rd.2 Rd.3 Rd.4 Rd.5 Rd.6 Rd.7 合計 有効 5戦 富士 鈴鹿 AP SUGO もてぎ もてぎ 鈴鹿 1位 16号車 野尻智紀選手 23 22 3 5 23 7 11 94 86 2位 5号車 福住仁嶺選手 11 3 0 20 0 0 21 55 55 3位 19号車 関口雄飛選手 0 8 0.5 14 17 8 8 55.5 55 4位 20号車 平川亮選手 8 15 0 8 0 15 46 46 5位 64号車 大湯都史樹選手 17 2 2 15 5 0 2 43 41 6位 15号車 大津弘樹選手 0 6 2.5 1 1 23 6 39.5 38.5
Driver Standings
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~栄光に向かって~

富士スピードウェイでの開幕戦は12年ぶりとなった

2021年のスーパーフォーミュラ。公式予選からトップ タイムを連発した野尻選手が、好調そのままにポー ル・トゥ・ウィンを飾った。

鈴鹿サーキットで行われた第2戦は、福住選手が圧倒 的な速さを見せつけて誰もが勝利を確信。だがリアタ イヤのアクシデントで戦線離脱となり、代わってトッ プを奪った野尻選手が2連勝を果たす。

第3戦では中嶋一貴選手の代役で出場したアレジ選手 が、激しい雨が降るオートポリスの厳しいコンディ ションを制し、嬉しい初優勝を遂げた。スーパーフォー ミュラ参戦2戦目の快挙!

スポーツランドSUGOの第4戦は、自身初優勝の可能 性があった第2戦で悔しさを残した福住選手がリベン ジ。予選5番手ながら好スタートでトップを捕らえ、つ いに表彰台の頂点を獲得する。

ツインリンクもてぎの第5戦は野尻選手がレース ウィーク中で絶好調。予選からコースレコードを更新 する速さで、決勝では盤石のレース展開を見せて見事 ポール・トゥ・ウィン。

ルーキー大津弘樹選手が第6戦ツインリンクもてぎで 活躍。初のポールポジションを獲得すると、後続から迫 るベテラン勢をしっかり抑えてトップチェッカー。また 野尻選手のチャンピオンが確定した瞬間でもあった。

JAF全日本スーパーフォーミュラ選手権 2021年ドライバーチャンピオン

野尻智紀 選手

陽性者との濃厚接触者が出ていた。そこで この大会、TEAM MUGENは、野尻選手の マシンを担当するメカニックを総入れ替え。 いつもはスーパーGTのメンテナンスをし ているメカニックたちが現場に投入された。 普段、触っていないマシンを触るスタッフ の不安はもちろんだが、走り始めるまでは 野尻選手にも不安があったはずだ。

のストーリーが展開される。好スタートと 序盤の激しいバトルで2番手に浮上してき た福住選手が、タイヤ交換後トップに立つ とフル参戦3年目にしてようやく初優勝。 第2戦・鈴鹿で落とした勝利をようやく手 にした。2位には、タイヤ交換でロスした タイムをコース上の激走で取り戻した大湯 都史樹選手、3位には関口選手。野尻選手 は終始速いペースを刻み続けただけでな く、牧野任祐選手との接近戦を演じるな ど、攻める姿勢で6位フィニッシュ。オー トポリスに続いて、予選から順位を上げて のフィニッシュとなり、安定した強さを見 せ続けた。

盤石の走りが光る野尻選手 最終戦を待たずにタイトル確定

その野尻選手が初タイトルに王手をかけ たのは、8月下旬にツインリンクもてぎで 行われたシリーズ第5戦。立っているだけ でも汗ばむような酷暑となったが、日本は 新型コロナウイルス感染症の第5波に見舞 われている最中であり、新規陽性者数も増 加傾向にあった。レース界でも陽性者が出 てしまっていたのがこの時期だ。それでも 戦いを続ける人々に勇気を与える走りを見 せたのが、この時の野尻選手だ。

実は野尻選手のチームスタッフの中にも、

ところが、ここでTEAM MUGENの強 さが光った。一旦コクピットに乗り込む と、野尻選手は練習走行からトップタイム をマーク。交代で入ったスタッフたちの仕 事は完璧だった。そしてその勢いのまま、 野尻選手はコースレコードを叩き出す走り で今季2度目のPPを獲得する。決勝でも スタートを決めると、王道のピットイン作 戦を採り、背後から迫る関口選手の攻撃を 最後まで凌ぎ切った。これでシーズン3勝 目を挙げた野尻選手に最終戦を待たずに、 王座獲得という可能性が高まった。

迎えた第6戦、このレースは当初岡山国 際サーキットで行われる予定だったが、場 所が変更され、再びもてぎで行われた。予 選、決勝とも完全なドライとはならず、雨 交じりの難しいコンディション。ここでま

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シリーズランキング3位の関口選手と4位の平川選手は、優勝こそなかったものの、シ リーズを通して手堅くポイントを獲得。チームチャンピオンは星野一義監督率いる carenex.TEAM.IMPULが獲得し、実に2010年以来の戴冠となった。

た新たなヒーローが誕生する。Q3で唯一 スリックでのアタックを敢行したルーキー の大津弘樹選手が初のPPを獲得したの だ。決勝は、ウェットから次第に乾いてい くコンディションとなっただけでなく、セ ーフティカーが3回も入る荒れ模様のレー スに。その中で、レインからスリックへの 交換タイミングを含めて、完璧なレースを 演じたのが大津選手だった。他のルーキー よりも回り道をしてきた大津選手にとって は、人生がかかった大勝負。その1戦を大 津選手は制してみせた。

一方、タイトルに王手をかけていた野尻 選手は、リスクを取らずにライバルと作戦 を合わせ、予選3番手のポジションを獲得 してきっちりポイントを重ねる。決勝では ドライ寄りのセットアップにした影響もあ ったのか、スタート後はライバルたちに 次々とかわされポジションを落とす場面 も。もちろん、タイトルへの重圧と守りの 気持ちもあったはずだ。しかし、スリック タイヤに交換した後半はプッシュする走り

今季よりスーパーフォーミュラにフル参戦を果たした大津選手。4名のルーキーたち が鎬を削る中、第6戦の優勝で獲得したポイントが決め手となり、ルーキー・オブ・ ザ・イヤーに選出された。これからの活躍に期待がかかることだろう。

に切り替える。最終的に5位まで浮上して チェッカーを受けると、この時点でチャン ピオンを確定させた。

長いトンネルを抜けた先で ようやくつかんだ栄光

最終戦・JAF鈴鹿GPでは、リスクを背 負ってでもバトルしに行く攻めの姿勢を見 せた新王者・野尻選手。その中で、大湯選 手と接触する場面もあり、それに関しては 反省しきりだったが、一歩も引かない強さ を見せたのは、野尻選手のこれまでの歩み

があったからだ。大会後に行われたチャン ピオン記者会見で、野尻選手はこれまでの 道のりを次のように振り返った。 「スーパーフォーミュラに上がってからは 8年ですが、四輪にステップアップしてか ら一度もチャンピオンを獲れていないの で、もう十何年という年月になります。そ の間、ずっと長いトンネルにいたような感 じがしますし、それを考えると不安でしか なかったという時期もありました。ただ昨

年のシリーズを考えると、タイトルこそ獲 れませんでしたが、最終戦あのまま走って いれば可能性も十分あると思ってました。 言い方としては(実際にタイトルを獲った) 山本尚貴選手に失礼かもしれませんが、 『昨年のチャンピオンは自分だ』と強く自分 自身に言い聞かせ、そういう強い想いを持 ってシーズンをずっと戦い続けることがで きました。昨年の途中からトンネルみたい なものは感じなくなっていましたし、この ままチームスタッフをはじめ、たくさんの 方々に支えてもらいながらやれたら、必ず 手にすることができると思っていました。 それが現実になって非常にうれしく思いま す」。 優勝するたび、結果を出すたび、“周りの 人に支えられて出せた結果”と感謝を述べ 続ける野尻選手。まだまだ伸び代があるし、 もっと成長したいとその姿勢は常に前向き だ。2022年はどんなレースを見せてくれる のだろうか。12月初旬のテストを経て、新 たな戦いは始まっている。

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~栄光に向かって~

JAF全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権

シリーズ2年目の名取鉄平選手が悲願のタイトルをつかんだ

たなシリーズとして2020年に スタートを切り、2シーズン目 となった全日本スーパーフォー ミュラ・ライツ選手権。2021シーズンは 7チームがエントリーした。そしてこのシ リーズは最終大会の舞台が岡山国際サーキ ットからツインリンクもてぎに変更された ものの、2020年同様に6大会・全17戦に よって競われた。

スーパーフォーミュラ・ライツ初代チャ ンピオンの宮田莉朋選手、そして宮田選手 とほぼ互角に渡り合った阪口晴南選手がシ リーズから卒業を果たし、継続参戦となる

名取鉄平選手(B-MAX RACING TEAM) や河野駿佑選手(RS FINE)が、新たに参戦 したルーキードライバーたちとどう渡り合 うのかが注目された。

混戦の様相を見せた序盤戦は 名取鉄平選手が6戦4勝の強さを発揮

開幕の地として選ばれたのは富士スピー ドウェイ。ここで2回とも予選トップだっ たのは、シリーズ2年目となる名取選手。 決勝でも第1戦を制したが、佐藤蓮選手 (TODA RACING)を終始背後に置く苦し

い展開ではあった。第2戦も同様に佐藤選 手とのバトルが続いたが、11周目に名取選 手が喫したわずかなミスを逃さず逆転した 佐藤選手が2戦目にしてルーキー初優勝を 飾った。

第1戦ウィナーの名取選手が引き続きポ ールポジション(PP)からスタートする第3 戦は、雨に見舞われて全車ウェットタイヤ を装着しての戦いとなった。トップでレー

スを開始した名取選手に対し、佐藤選手は スタートでストールしたことから、あえて ピットに戻ってドライタイヤに交換。雨脚 が弱まっていたからだが、結果ファステス トラップを記録して1ポイントを加えたも のの、中盤から再び雨は増して追い上げは

新 2021 Driver Point Standings Rank. No. Driver Rd.1 Rd.2 Rd.3 Rd.4 Rd.5 Rd.6 Rd.7 Rd.8 - Rd.10 Rd.11 Rd.12 Rd.13 Rd.14 Rd.9 Rd.15 Rd.16 Rd.17 合計 有効 14戦 富士 鈴鹿 オートポリス SUGO もてぎ もてぎ 1位 50号車 名取鉄平選手 12 8 7 12 12 10 2 5 7 12 8 7 3 0 4 0 0 109 109 2位 36号車 ジュリアーノ・アレジ選手 5 1 5 7 5 7 7 4 12 3 10 5 7 7 11 2 11 109 103 3位 2号車 佐藤蓮選手 7 11 1 0 7 3 0 0 0 7 1 12 12 11 7 10 3 92 92 4位 10号車 三宅淳詞選手 1 2 10 3 1 3 11 0.5 2 2 3 1 5 2 5 1 7 59.5 57 5位 37号車 平良響選手 3 DNS 3 2 3 5 3 1.5 5 5 5 1 3 2 41.5 41.5 6位 35号車 河野駿佑選手 2 0 DNF 1 0 1 5 2.5 3 DNF 2 3 1 3 0 5 1 29.5 29.5 ため中止悪天候の 23

3人のウィナーが誕生した富士スピードウェイの第1大 会。フロントローを獲得した名取選手と佐藤選手が1勝 ずつ分け合ったが、第3戦は三宅選手が6番手スタート からウェットコンディションを制して優勝。

第2大会の鈴鹿サーキットでは名取選手が3レースすべ てで優勝。そのうち2戦はフルマークの勝利と、他の追 従を許さない速さを見せた。名取選手がポイントリー ダーとして一気にアドバンテージを築いた格好に。

JAF全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権

2021年ドライバーチャンピオン

名取鉄平選手

オートポリス第3大会は雨。この大会でも好走を見せた 名取選手は第7戦でクラッシュを喫して順位を落とす も、第8戦で挽回して優勝を果たした。なお悪天候によ り第9戦が中止となった。

野選手が獲得した。

日曜日のオートポリスも雨に見舞われ、 相次ぐディレイの末に第9戦の中止が決定。 4時間遅れで開始された第8戦は、雨こそ 止んでいたが、霧でコースが覆われていた ため、SCスタートとなっていた。PPの佐 藤選手、3番手につけていた三宅選手がドラ イタイヤで臨むも、先導中に雨が再び降り 出し、三宅選手はピットへ向かってウェッ トタイヤに交換。9周目にようやくバトル開 始となったが、佐藤選手はやはり堪えきれ ず。そして、わずか2周のマッチレースは アレジ選手を抑えて、名取選手の優勝とな った。

スポーツランドSUGOで行われた第4 大会は、第10戦でアレジ選手が初のPP を奪い、第11戦は名取選手がPPを獲得。

叶わず。そしてその天候の変化は、誰より ウェット方向にセットを振っていた三宅淳 詞選手(ルーニースポーツ)に味方した。6番 手スタートから徐々に順位を上げて、12周 目には名取選手をも抜き去ってトップに躍 り出て初優勝。第1大会は3人のウィナー が誕生した。

鈴鹿サーキットに舞台を移した第2大会 でも、名取選手は2戦ともにPPを奪う。2 番手は第4戦が野中誠太選手(TOM'S)で、 第5戦は佐藤選手。第4戦の決勝では、ス タートで野中選手とポジションを入れ替え た佐藤選手が、またも名取選手とトップを 競い合う。が、最終ラップの接触で佐藤選 手はクラッシュ。辛くも逃げ切った名取選 手が2勝目を挙げ、2位はジュリアーノ・ア レジ選手(TOM'S)が獲得した。

続く第5戦も名取選手と佐藤選手の一騎 討ちの展開となった。しかし、ここでは名 取選手が佐藤選手に対して一歩も譲ること なく連勝を飾る。また第6戦はアレジ選手

が好スタートを切ってPPの名取選手に迫 るも、逆転には至らず。その後、アレジ選 手は平良響選手(TOM'S)への応戦一方と なり、名取選手のレースを楽にした。

中盤戦は天気に悩まされつつも

着実に表彰台を獲得する走りを見せる

第3大会オートポリスでは雨で公式予選 がキャンセルとなり、金曜日の専有走行3

回目の結果でグリッドが決定。PPを佐藤選 手が獲得し、名取選手と野中選手が続い た。第7戦はセーフティカー(SC)スタート となるが、3周目のSC退去直後に佐藤選手 がコースアウト。再びSCが導入されるも、 直後にあろうことか名取選手もスピン。こ れにより1コーナーで野中選手をかわして いた三宅選手がトップに立つ。8周目にリス タートが切られたが、次の周には三度目の SCランに。SC先導のまま最大レース時間 の30分が過ぎて終了。三宅選手が2勝目 を挙げ、2位はアレジ選手、そして3位は河

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~栄光に向かって~

元F1ドライバーのジャン・アレジ氏の息子であるジュ リアーノ・アレジ選手が第4大会SUGOの第10戦で初 優勝を遂げる。続く第11戦は名取選手に軍配が上がっ たが、第12戦では名取選手を抑えて2勝目を挙げた。

雨に見舞われた第10戦は、アレジ選手が ポール・トゥ・ウィン。途中でSCが入る 波乱の展開にも、名取選手を寄せつけなか った。

ほぼドライコンディションとなった第11 戦では、名取選手がポール・トゥ・ウィン。

2位は佐藤選手で、3位は平良選手、そして アレジ選手は第3戦以来、上がり続けてい

た表彰台を逃して4位だった。第12戦は名 取選手との激しいバトルの末に、アレジ選 手が2勝目を獲得。3位は平良選手で、 SUGOでの3戦すべて表彰台を獲得した。

2大会連戦のツインリンクもてぎ 苦しい戦いの中でタイトルをつかむ

第5大会ツインリンクもてぎは本来2レ ースの予定だったが、悪天候で中止になっ

ツインリンクもてぎで行われた第5大会は佐藤選手が パーフェクトウィン。3連続のポール・トゥ・フィニッ シュでもてぎを制覇して、手の届くところにタイトルが 見えている名取選手に待ったをかけた。

た第9戦の代替レースも行うこととなった。 2戦ともPPを佐藤選手が奪った一方で、 タイトルに手のかかった名取選手は3番手 と6番手に。それでも名取選手は第13戦 でスタート直後にアレジ選手を抜いて2番 手に上がったものの、最後まで集中力を欠 かさず走り続けた佐藤選手を抜くまでには 至らなかった。

第14戦と第9戦も佐藤選手はポール・ トゥ・ウィン。第5大会で3連勝を飾った のに対して名取選手は4位、そして第9戦 では1周目のコースアウトで入賞も許され

ず、王座確定を最終大会に持ち越した。

そして迎えた第6大会、再び舞台はツイ ンリンクもてぎとなった。予選でトップタ イムを刻んだのは名取選手だったが、エン ジン交換であらかじめ5グリッド降格が決

最終大会となる第6大会のツインリンクもでぎ。チャン ピオンの権利を残したアレジ選手が食い下がったが、 第16戦では名取選手とアレジ選手が接触して共に撃 沈。名取選手のチャンピオンが確定した。

チームチャンピオンはB-MAX.RACING.TEAMを僅 差でかわしたTOM'Sに、そしてエンジンチューナ チャンピオンは圧倒的なポイントを稼いだSiegfried. Spiess.Motorenbau.GmbHとなった。

まっていたため、アレジ選手が2戦ともPP となる。第15戦はアレジ選手が3勝目を マーク。一方、名取選手は4位に留まり、 またもや王座確定ならず。しかし、そのタ イトル争いは意外な形で決着がつく。

雨に見舞われた第16戦、佐藤選手がスタ ートを決めてトップに立った直後の1コーナ ーでアレジ選手と名取選手が接触、ともに ピットに戻らざるを得ず、入賞圏外に落ちる 予想外の展開となった。優勝は佐藤選手が 飾って5勝目をマーク。小高一斗選手(TO M'S)が2位で、河野選手が3位を獲得。後 味の悪い内容ではあったが、ここで10位に 終わった名取選手の王座が確定した。

第17戦も雨の中での戦い。ここではア レジ選手が圧倒的な速さを見せ、途中コー スアウトがあっても三宅選手を約20秒引 き離して4勝目を獲得し、シリーズの最後 を締めることとなった。なお新王者の名取 選手は8位に終わっている。

名取選手は、「このチャンピオンは、新 たなステージに向けたチャンピオンである と自分の中で実感しています。2022年はさ らなる躍進を目指して切磋琢磨し、より良 いドライバーになれるように頑張っていき ますので、今後も応援よろしくお願いしま す」と次なる挑戦への意気込みを語った。

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~栄光に向かって~

FIAインターナショナルシリーズ スーパーGT

GT500は大逆転でau TOMʼS GR Supraがチャンピオン、

GT300はSUBARU BRZ R&D SPORTが悲願の初タイトル

ーパーGTの2021シーズンは、 コロナ禍によって海外ラウンド が開催できなかったが、感染拡

大防止対策を徹底的に行うことで、国内サ ーキットでの開催を可能とし、例年どおり 全8戦で競われた。

GT500クラスは群雄割拠の様相 3メーカーの威信をかけた戦い

2年ぶりの開幕地となった岡山国際サー キットでは予選から衝撃が走る。ポールポ ジション(PP)をKeePer TOM'S GR Supraが獲得するも、最速タイムを刻んだ のはエースの平川亮選手ではなく、代役の 阪口晴南選手。平川選手の本来のパートナ ーであるサッシャ・フェネストラズ選手は コロナ禍の影響で入国できなかったが、阪 口選手は代役以上の貢献を果たした。

決勝でも阪口選手がトップを快走。だが、 中盤に発生したアクシデントに合わせて多 くのチームがドライバー交代を行う中、交 代した平川選手は再始動に手間取って順位 を落としてしまう。代わってトップに立った のはENEOS X PRIME GR Supraの山下 健太選手で、au TOM'S GR Supraの坪井 翔選手の猛追を退けてトップチェッカー。 大嶋和也選手と表彰台の中央に立ち、トヨ タ勢が決勝でトップ4を独占した。

500kmの長丁場となる第2戦富士は、 WedsSport ADVAN GR Supraの宮田莉 朋選手が初のPPを獲得。しかし、決勝で はトップ発進ならず、7位でゴールするのが やっとだった。このレースの決め手になっ たのは、アクシデントの発生に対して初の フルコースイエロー(FCY)提示直前にピッ トに入れたか否か。それを実現した数少な い1台がAstemo NSX-GTで、最小限の ロスで塚越広大選手からベルトラン・バゲ ット選手に交代することが成功した。

2回目のピットストップの遅れが響いて 先行を許したARTA NSX-GTは、その後 のFCY直前の追い越しによってドライブス ルーペナルティを課せられ、トップ争いか ら脱落。Astemo NSX-GTがトップに返り 咲き、後続の猛攻を振り切って優勝を飾

る。2位はENEOS X PRIME GR Supraが 獲得して2戦連続の表彰台。3位はKeePer TOM'S GR Supraだった。

本来なら5月下旬に行われるはずだった 第3戦鈴鹿は、急激な感染拡大によって延 期されたため、約2か月のインターバルを経 て第4戦もてぎが先に開催された。

PPを獲得したのはSTANLEY NSX-GT の山本尚貴選手。決勝では牧野任祐選手が スタートからトップを走るも、WedsSport ADVAN GR Supraの国本雄資選手が阻む。 7周目に逆転して一時はリードを築くが、 ピットでのロスがあり、STANLEY NSXGTの山本選手に再逆転を許す。それでも この2台のトップ争いは最後まで続き、辛 くもSTANLEY NSX-GTが逃げ切って優 勝。3位はau TOM'S GR Supraの関口雄 飛選手と坪井選手が獲得した。

そして3か月遅れで開催された第3戦鈴 鹿は、ホンダ勢が予選で上位を独占。Modu lo NSX-GTの伊沢拓也選手がPPを奪い、 Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GTの大 湯都史樹選手が2番手につけた。決勝でも 伊沢選手がスタートからトップを走行する が、わずか5周でブレーキトラブルに見舞 われてクラッシュしてしまう。

代わって首位に立ったのはニッサン勢だ

ス️ 26
最後まで接戦となったGT500クラス。最終戦の富士 ラウンドで大逆転劇を見せたau.TOM'S.GR.Supraの 関口/坪井組がドライバーチャンピオンに輝き、TGR. TEAM.au.TOM'Sがチームチャンピオンとなった。

GT500クラス

2021年ドライバーチャンピオン

った。中盤以降は絶 えず3台でトップを 争い、最初にチェッ

カーを受けたのはMOTUL AUTECH GT-Rをドライブする松田次生/ロニー・ クインタレッリ組。2020年の鈴鹿2連勝に 続く勝利で、同一コースで同一チームの3 連勝はGT500クラスでは史上初となった。 また、松田選手は自身が持つ最多勝を23 勝に伸ばしている。2位はCRAFTSPORTS

MOTUL GT-Rの平手晃平/千代勝正組、 そして3位はリアライズコーポレーション ADVAN GT-Rの高星明誠/佐々木大樹組 で、ニッサン勢が表彰台を独占。4位はST

ANLEY NSX-GTで、山本選手がランキン グのトップに躍り出た。

スポーツランドSUGOに舞台を移した第 5戦でPPを獲得したのはARTA NSX-GT の福住仁嶺選手。決勝でも野尻智紀選手が 逃げ続け、福住選手に交代しても展開は変 わらなかった。しかし、その最中にペナル ティの裁定。ピット作業違反があったこと によるもので、やむなくドライビングスル ーを行うも、その際にピット出口の赤信号

2021 GT500 Driver Ranking

関口雄飛 選手 /坪井翔選手

を見逃し、再度ペナルティを受けて上位入 賞の機会を失ってしまう。

これでトップに躍り出ることとなったの はカルソニックIMPUL GT-Rの平峰一貴 選手。サクセスウェイトに苦しんでいない こともあり、予選では3番手、序盤にも松 下信治選手が野尻選手との差をじわりじわ りと詰めていたのが功を奏した格好だ。

松下選手と平峰選手にとってもGT500 クラス初優勝となり、チームにとっても 2016年の第5戦富士以来、5年ぶりの優勝 だった。2位はサクセスウェイトを80kg積 んでなお速さを見せたSTANLEY NSXGTで、3位はAstemo NSX-GT。そして 予選14番手から4位にまで追い上げてい たのはau TOM'S GR Supraだった。

ARTA NSX-GTが唯一2勝を挙げるも タイトル争いは最終戦に持ち越し

シリーズ終盤に2連勝を飾ったARTA.NSX-GTの野 尻/福住組がシリーズ2位。最終戦ではピットイン時 に左ドアが外れるトラブルに見舞われ、逆転タイト ルを狙っていただけに順位を落としてしまったのが 悔やまれるところ。

Rank. No. Driver Machine

1位 36号車 関口雄飛選手/坪井翔選手 TOYOTA GR Supra

2位 8号車 野尻智紀選手/福住仁嶺選手 Honda NSX-GT

3位 1号車 山本尚貴選手 Honda NSX-GT

4位 1号車 牧野任祐選手 Honda NSX-GT

5位 14号車 大嶋和也選手/山下健太選手 TOYOTA GR Supra

6位 17号車 塚越広大選手/ベルトラン・バゲット選手 Honda NSX-GT

快進撃の続くSTANLEY NSX-GTは、 サクセスウェィト上限の100kgに達した第6 戦オートポリスでは予選13番手に留まった。 対して初のPPを奪ったのがRed Bull MOT UL MUGEN NSX-GTの笹原右京選手。決 勝では予選2番手だった ENEOS X PRIME GR Supraに1周目のうちに 抜かれたが、年間3基目 のエンジン使用に対する ペナルティで5秒ストッ

2020チャンピオンの山本/牧野組は、2021年も体 制を新たに同布陣で参戦。体調不良で開幕戦を欠場 した牧野選手の分まで山本選手が奮闘、ポイントを 獲得して単独でドライバーランキング3位となった。

プを命じられていたため、大湯選手は労せ ずしてトップに返り咲く。

だが、Red Bull MOTUL MUGEN NSXGTにも不運が。右後輪の脱落であえなく リタイアを喫したからだ。これでARTA NSX-GTがトップに立ち、福住選手から野 尻選手にバトンタッチ。独走状態に持ち込 むと、これまで続いていた不運を一掃する 会心の勝利となった。2位は立川祐路/石浦

27

宏明組のZENT CERUMO GR Supraが 獲得。STANLEY NSX-GTは6位でゴール し、ランキングのトップを守り抜いた。

サクセスウェイト半減となる第7戦もて ぎでシーズン2回目となるPPを奪ったのは WedsSport ADVAN GR Supraの宮田選 手。一方、ポール・トゥ・ウィンとなれば、 最終戦を待たずしてタイトル確定となるは ずだったSTANLEY NSX-GTは10番手に 留まっていた。決勝でも国本選手がトップ スタートを決めるも、予選4番手から一気 に2番手まで上がってきたカルソニックIM

PUL GT-Rの松下選手が食らいつき、21周 目に逆転を許してしまう。

平峰選手への交代後もトップを守り続け たカルソニックIMPUL GT-Rだったが、こ こに迫ってきたのがARTA NSX-GTの野尻 選手。ガードを固めて最終ラップ突入という ところで平峰選手にガス欠症状が発生。そ れを見逃さなかった野尻選手が首位に立ち、 ARTA NSX-GTが見事2連勝を飾った。We dsSport ADVAN GR Supraが2位、カル ソニックIMPUL GT-Rは3位。STANLEY NSX-GTは12位に甘んじたものの、依然 ランキングトップを死守していた。

その結果、第8戦富士には6チームがタ イトル獲得の権利を残して臨むことになっ た。勝ってなお……という条件つきながら、

ENEOS X PRIME GR Supraの山下選手 がPPを獲得。そして山本選手が2番手に つけて、一気に形勢を有利にした。だが、 やはり候補のKeePer TOM'S GR Supra

は3番手、au TOM'S GR Supraも4番手 とあって、予断は許されないところだ。

決勝はトヨタ勢の3台がトップを競い合う 中、STANLEY NSX-GTは淡々と4番手を 走行する。連覇に向けて盤石の構えとしてい たが、GT300車両に接触されてマシンにダ メージを負い、山本選手の希望は完全に絶 たれてしまう。序盤のうちに関口選手がト ップに立っていたau TOM'S GR Supra が、坪井選手に代わってもポジションを守 り抜いてフィニッシュ。坪井選手にとって はGT500クラス初優勝がタイトル確定の 一戦となる劇的な展開となり、もちろん関 口選手にとっても初めてのGT500クラス でのタイトルとなった。

その関口選手はレース後に「チャンピオ ンというより、絶対優勝すると決めていて、 ライバルも強かったけどトップで帰って来 られたので、『何がなんでも抑えてくれ!』 という気持ちが、坪井選手にも伝わったん だと思います。実感はこれから湧くと思い ますが、自分はここまで遠回りをしてきま した。その分、手を差し伸べてくれた多く の皆さんに、結果でお返しできて良かった です」とコメントしている。

一方の坪井選手は「チャンピオンに関して は他車の順位次第だったんですが、いろい ろあったとはいえ、本当に勝って獲れて、 今はこれ以上ないほど幸せです。正直チャ ンピオンになれるとは思っていなかったの で、今でもフワフワしています」と喜んだ。

T300クラスは、リアライズ日 産自動車大学校GT-Rの藤波清 斗/J.P.デ・オリベイラ組の優 勝で2021シリーズが幕を開け、連覇に向 けて好調な滑り出しを見せていた。 第2戦では新車に改められたSUBARU BRZ R&D SPORTの井口卓人/山内英輝 組がPPを奪うが、決勝では2位に。富士 にめっぽう強いGR Supraは3台に増加し、 中でも本領発揮となったSYNTIUM LMco rsa GR Supra GTの吉本大樹/河野駿佑 組がデビュー2戦目にして初優勝を果たす。 続く第4戦もてぎではGAINER TANAX GT-Rの平中克幸/安田裕信組が開幕戦以 来のPPを奪い、決勝も圧倒的に有利な状態 で進めていく。しかし、中盤でのFCYに対 し、絶妙のタイミングで加藤寛規選手から 阪口良平選手への交代ができたMuta Raci ng Lotus MCが一躍トップに浮上、その間 に築いたリードを守り抜いて優勝を飾った。

延期された第3戦鈴鹿ではSUBARU BRZ R&D SPORTが二度目のPP獲得で序盤をリ ードするが、タイヤ選択が裏目に出て9位で ゴール。ここでも GR Supra勢が強さを見せ て、たかのこの湯 GR Supra GTの三宅淳詞 /堤優威組がともに初優勝を飾った。 SUBARU BRZが本領発揮! 表彰台4回登壇でチャンピオンを確定 SUGOに舞台を移した第5戦で、いよい よSUBARU BRZ R&D SPORTが真価を 発揮。三度目のPPばかりか、レースの大

GT300クラス
井口卓人
G 28
2021年ドライバーチャンピオン 選手 /山内英輝選手

リアライズ日産自動車大学校GT-Rの藤波/オリベイ ラ組はディフェンディングチャンピオンとして健闘 したが、SUBARU.BRZ.R&D.SPORTの好走に歯止 めをかけることができず、ドライバーランキング2位。

2021 GT300 Driver Ranking

Rank. No. Driver Machine

1位 61号車 井口卓人選手/山内英輝選手 SUBARU BRZ GT300

2位 56号車 藤波清斗選手/ ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手 NISSAN GT-R NISMO GT3

3位 60号車 吉本大樹選手/河野駿佑選手 TOYOTA GR Supra

4位 55号車 高木真一選手/佐藤蓮選手 Honda NSX GT3

5位 244号車 三宅淳詞選手/堤優威選手 TOYOTA GR Supra

6位 65号車 蒲生尚弥選手/菅波冬悟選手 Mercedes-AMG GT

nes RC F GT3に乗り込むこととなった阪 口選手が、新田守男選手とともに2位を獲 得。そしてSUBARU BRZ R&D SPORT がサクセスウェイト上限の100kg積んでな お3位を獲得してみせた。同じ100kg搭載 のリアライズ日産自動車大学校GT-Rは入 賞を逃している。

ランキング3位の獲得は、シリーズ唯一2勝を挙げた SYNTIUM.LMcorsa..GR.Supra.GTを駆る吉本/河 野組。2020シーズンは最上位9位の成績だっただけ に、大躍進を果たしたチームと言えよう。

半を支配。終わってみればARTA NSXGTの高木真一/佐藤蓮組を11秒も引き離 す圧勝となった。そして、井口/山内組と R&D SPORTがついにランキングトップに 浮上した。

オートポリスでは、TOYOTA GR SPO RT PRIUS PHV apr GTを駆る嵯峨宏紀 /中山友貴組がコンビ結成2年目、さらに プリウスの駆動方式が改められてから初め ての勝利をポール・トゥ・ウィンで飾って いる。今大会ではフェネストラズ選手の来 日が可能となり、本来のシートであるK-tu

サクセスウェイト半減とはいえ、75kgを 積んで臨んだ第7戦もてぎでも、SUBARU BRZ R&D SPORTは予選2番手。決勝の 結果次第では最終戦を待たずタイトル確定 の可能性もあったが、終盤にブレーキが音 を上げて、スピンを喫して無念の6位。対 してリアライズ日産自動車大学校GT-Rは、 タイヤ無交換を成功させて3位に。2位は ARTA NSX GT3で、最終戦のタイトル争 いは、この3台を中心として競われること となった。第7戦の優勝はHitotsuyama Audi R8 LMSの川端伸太朗/篠原拓朗組 で、篠原選手は初優勝を挙げている。

そして迎えた最終戦の富士スピードウェ イ。SUBARU BRZ R&D SPORTが4回目 のPPを獲得し、決勝でも序盤を井口選手 がリードする。しかし、タイトルの望みは 失っていたが、SYNTIUM LMcorsa GR

Supra GTの河野選手が

山内選手は3位でゴールし、井口選手とと もに悲願のタイトルを確定。チームにとっ ては初代BRZ投入から10年目にして、よ うやく栄冠をつかむこととなった。 「本当に何年も苦しい時期が続いてきたん ですが、チームみんなの努力が形になっ て、最後に結果になって表れたんだと思い ます。こんな最高なことはないです、嬉し い! 本当に感謝しかありません」。涙な がらにタイトル獲得に歓喜する井口選手。

また「本当に嬉しいです。レースもしび れる展開でした。でも、多くのファンの 方々の応援があったので、皆さんの声援の おかげで獲れたし、その気持ちに応えられ たのが、今も安堵感が強くて、はい、幸せ です!」と山内選手も喜びを分かち合った。

惜しいラウンドも多数あったが、8戦中4戦で表彰台を獲 得する安定ぶりを見せた井口/山内組。チームチャンピ オンにも貢献し、R&D.SPORTに栄冠をもたらした。

意地を見せて逆転、後半 を担当した吉本選手がさ らにリードを広げ、2021
シーズン唯一の2勝目を 挙げ、ランキングでも3 位まで浮上した。一方、
~栄光に向かって~
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JAF全日本カート選手権

OK部門/FS-125部門/FP-3部門

“絶対王者”佐々木大樹選手の勝利の方程式

日本カート選手権OK部門の 2021シリーズは予想外の結末 となった。一年間の戦いを締め くくる第10戦の決勝にチャンピオン獲得 の権利を持って臨んだのは、30歳のベテラ ン佐々木大樹選手と、そのチームメイトで ある15歳の荒尾創大選手のみ。ところが、 ダミーグリッドからのコースインで、荒尾 選手はエンジンがかからずまさかのDNS。 スタートを待たずして、佐々木選手のチャ ンピオンが確定したのだ。エスケープゾー ンに止めたマシンの脇に立ち尽くすチーム メイトの姿を見た佐々木選手は、その胸中 に複雑な思いが浮かんだという。

「僕も(最終戦のスタート直後の)1コーナ ーで止まってチャンピオンを獲り逃したり

して、同じような経験をしてきているので、 荒尾選手も辛いだろうな、と。でも、レー スってそういう予測のつかないものだよな、 とも思いました。荒尾選手とはしっかりレ ースでチャンピオン争いをしたかったなと いう気持ちがあった一方で、一年間を通じ てチャンピオンを獲れる戦いをしてきたの は自分だったんだな、という気持ちも湧い てきました。そこからは、チャンピオン争

いは終わったけれど最後までしっかりレー スしよう、と気持ちを切り替えました」。 シリーズを通じて2勝を挙げはしたが、 苦戦を強いられる大会も多かった佐々木選 手。絶対王者とまで呼ばれた佐々木選手 が、中団グループでもがき苦しむ姿は、ほ とんど見覚えのないものだった。

「基本的にはリアグリップがぜんぜん感じ られなくて、タイムトライアルとかで一発 のタイムを出すことは何とかできるんです けど、(レースでは)タイヤの温存にしても 何にしてもリアグリップがないとうまくで きない。タイヤのマネジメントにはすごく 自信があるんですけど、それもうまくでき ず、自分の力を発揮できない状況が続いた のかなと思います」。

厳しいシーズンながら「最後まで諦めない」
開幕戦で勝利を飾った佐々木選手だが、その後は苦戦 を強いられる。チームメートでありライバルでもあるTO NYKART.RACING.TEAM.JAPANの荒尾創大選手ら、 若手選手の台頭も大きく影響したことだろう。
~栄光に向かって~
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全️

例年にはないエントリー台数で盛況となった2021年 の全日本カート開幕戦の鈴鹿大会。ベテランの佐々木 選手は2戦とも表彰台を獲得するも、ルーキーたちが上 位に食い込む活躍を見せた大会となった。

御殿場大会でも若手が表彰台の一角を獲得した。第1 戦で3位入賞のルーキー清水啓伸選手が第4戦で念願 の初優勝を果たしている。また第3戦では荒尾選手が シーズン初の勝利を手にしている。

OK部門 2021年ドライバーチャンピオン

1点の重みを痛感したシリーズ 苦しくても諦めないことが大事

佐々木大樹選手

荒尾選手がシリーズ2勝目を挙げると、鈴木斗輝哉選 手も負けじと2勝目を挙げた茂原大会。ポイント争いも 拮抗しており、誰がチャンピオンになってもおかしく ない混戦模様を予感させた。

それでも佐々木選手はチャンピオンを獲 ってみせた。終わってみれば荒尾選手とは わずか2点差、ランキング3位のルーキー 洞地遼大選手とも2点差。そんな大接戦の 勝負の綾を、佐々木選手は手繰り寄せたの だ。

「僕も荒尾選手も、最終戦のポイントの上乗 せはゼロ。そんな状況で、あり得ないと思っ ていたことが実際に起きたし、洞地選手が第 9戦で勝っていたらチャンピオンは彼のもの でした。やっぱりシリーズの最後まで気を抜 いちゃいけないということを痛感しました。

僕も荒尾選手も洞地選手も、1点の重みがす ごく分かったシーズンだったと思います」。

たけれど、本当に気持ちというか、最後ま で考え抜いて努力した結果、運が味方して くれた部分もあったのかな、というシーズ ンでした」。

ブリヂストンのタイヤ開発ドライバーを 務める佐々木選手にとって、2022年は特別 な一年になる。ブリヂストンは、この年を もってカートタイヤ事業から撤退すること を発表している。長年に渡り苦楽を共にし てきたブリヂストンと佐々木選手の共闘は、 これが最後の一年になるのだ。

ここまで優勝に届かずとも手堅くポイントを獲得して きた佐々木選手がSUGO西の第7戦で勝利。だが、第8 戦でシリーズ3勝目を挙げて荒尾選手も食らいつく。 チャンピオン争いは次戦のもてぎ大会にもつれこんだ。

「全戦ポールを獲って7戦で5勝してもチ ャンピオンが獲れなかった年もあるし、逆 に今季のように苦しい年でもしぶとく戦っ ていればチャンピオンになれることもある。 やっぱり、いつでも最後まで諦めないこと が大事なんだな、と分かりました。今季は チャンピオンを獲れるだけの速さはなかっ

「最後もやっぱりブリヂストンさんと共に チャンピオンを獲りたいなって気持ちがあ りますし、ブリヂストンさんも大樹といっ しょにチャンピオンを獲って終わりたいと 言ってくれています。2022年はブリヂスト ンユーザーで全部のレースのポディウムを 独占するっていうのが目標ですし、コース レコードもいろんなコースで出したい。も っと速くて、ロングランでももっと強いタ イヤの開発に貢献して、すべての面におい てタイヤのポテンシャルを高めて、ブリヂ ストンは最後の年まで強かったねって言わ れる状況で終わりたいですね」。

4名のタイトル候補で始まったもてぎ大会は荒尾選手の 不出走によって佐々木選手の戴冠が決まった。他のルー キーたちの活躍の裏でなかなか勝利をつかめなかった洞 地遼大選手が最終戦で悲願の初勝利を遂げた。

2021年全日本カート選手権OK部門ポイントランキング Rank. No. Driver Rd.1 Rd.2 Rd.3 Rd.4 Rd.5 Rd.6 Rd.7 Rd.8 Rd.9 Rd.10 合計 有効 8戦 鈴鹿南 御殿場 茂原東 SUGO西 もてぎ北 1位 2号車 佐々木大樹選手 34 29 29 21 21 10 35 27 3 0 209 206 2位 3号車 荒尾創大選手 14 18 33 24 35 29 16 35 14 6 224 204 3位 16号車 洞地遼大選手 32 28 7 12 11 0 26 28 32 35 211 204 4位 17号車 鈴木斗輝哉選手 15 29 22 22 18 33 6 13 26 5 189 178 5位 34号車 清水啓伸選手 25 16 3 32 26 9 0 2 20 27 160 158 6位 4号車 平安山良馬選手 25 21 27 11 10 18 0 9 20 15 156 147
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地域の5戦でふたつのポール・ トゥ・ウィンを果たし、西地域

の加藤大翔選手に次ぐ総合ラン キング2番手で東西統一競技会に臨んだ堂 園鷲選手。シリーズ最後のレースでも優勝 争いに加わり、ウィナーの中村仁選手と僅 差の2位でフィニッシュして、全日本デビ ューイヤーで見事チャンピオンを獲得した。 「東西統一競技会は、予選も決勝も全部1 位を獲ればチャンピオンだったので、自分 のできることをやろう、勝つレースをしよ うと思いました。予選が終わった時点で は、加藤選手が前の方のグリッドに来てい なかったので、決勝は無理してぶつかった りしないように気をつけました」とレース前 の心境を明かした。

タイトル確定後は「ホッとしました。この 一年に点数をつけるとしたら90点です。

良かったところは2戦目と3戦目のポー ル・トゥ・ウィンでポイントが獲れたこと と、最終戦でチャンピオンが獲れたこと。

マイナス10点は、2戦続けてポール・ト

2021年全日本カート選手権FS-125部門ポイントランキング

堂園鷲選手

ゥ・ウィンをした後にちょっと気が緩んだ りしたところです」と振り返った。

海外カート修行で自らを発奮 2022年は最高峰部門へ挑戦!

2021年はシャシーをエナジーに変更し、 チーム名も『ENERGY JAPAN』に一新。いわ ばエナジーの威信を背負っての戦いだった。 「レースでは自分の走りをするだけなん で、特にプレッシャーはありませんでし た。それでも、いろんな方にサポートして もらった一年だったので、優勝やチャンピ オン獲得の喜びは、その分すごく大きかっ たです」。

2019年はジュニア選手権FP-Jr部門で チャンピオンに。そして2020年はヨーロ ッパに遠征し、FIAカーティングアカデミー トロフィーにフル参戦した。

「ヨーロッパのレベルが高いことは分かって いたけれど、日本ではまあまあ速かったの に、向こうへ行ったら上には上がいて、もっ と頑張らないとって気持ちになりました。ヨ

ーロッパの選手は、ブレーキングや戦い方 で気合が入っているというか、すごい過激 なので、レースでも最初の方はぜんぜん上 がれなかったです。ヨーロッパのドライバー たちとやって、日本では負けないっていう自 信みたいなものができました。東西統一戦 ではそんなに速くなかったけれど、ヨーロッ パでの経験を生かして、あまり順位を落と さないように走ることができました」。 2022年はOK部門への参戦を予定。大 きな夢に向かって、次への一歩を踏み出す。 「(スペシャルタイヤを使用するOK部門 で)タイヤとかのマネジメントは初めてのこ となので、うまくできるかは分からないけ れど、みんなと同じくらいの速さはあると 思っています。1回くらいは勝って、できれ ばチャンピオンを獲りたいですし、速さが 見せられるレースをしたいです」。 「将来の夢は、四輪に上がってF1レーサ ーになること。ヨーロッパでも活躍できる ドライバーになりたいです。目指している のは、ミハエル・シューマッハー選手みた いなドライバーです。いっぱい優勝してチ ャンピオンも毎年獲って、すごくアグレッ シブなレースで、見ていて面白いところに 憧れます」と目を輝かせた。

Rank. 地域 No. Driver Rd.1 Rd.2 Rd.3 Rd.4 Rd.5 東西統一 合計 有効 5戦 琵琶湖/ もてぎ北 神戸/ 新東京 鈴鹿南/ 本庄 御殿場/ 茂原東 中山/ SUGO西 もてぎ北 1位 東 22号車 堂園鷲選手 27 35 35 20 16 42 175 159 2位 西 20号車 加藤大翔選手 13 27 35 26 34 19 154 141 3位 東 14号車 野澤勇翔選手 30 19 0 35 27 26 137 137 4位 西 81号車 卜部和久選手 12 15 29 31 25 33 145 133 5位 東 52号車 伊藤祐選手 35 0 0 31 24 38 128 128 6位 東 12号車 中村仁選手 9 26 14 16 15 47.5 127.5 118.5
FS-125部門 2021年ドライバーチャンピオン
~栄光に向かって~ 東 クレバーなレースを繰り広げた堂園鷲選手
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全日本デビューイヤーながらチャンピオンに輝く

2021年全日本カート選手権FP-3部門ポイントランキング

018〜2020年に参戦していた ジュニア選手権FP-Jr部門で は、なかなか優勝に手が届かな かった村田悠磨選手。しかし、ステップア ップ後の2021年の全日本FP-3部門では いきなり大きな飛躍を見せ、開幕戦を勝利 で飾った。この飛躍の要因のひとつは、シ ャシーの変更にあったという。

「ジュニア選手権では2年間使い古したフ レームを使っていたんですけれど、FP-3部門 では2019年モデルの新品フレームに思い 切って変えてみたら、その感触がとても良く て。開幕戦では事前練習から速く走れて、 うまく優勝することができました」とフレーム の恩恵をしっかり感じたそうだ。 「この新フレームは他のタイプよりちょっと 硬いんですが、以前のフレームと比べたら コーナリングスピードもぜんぜん違って。各

コーナーでコンマ1ずつくらい速いって感じ でした」と確かな手応えををつかんだようだ。

ここから村田選手は快進撃を開始する。 全6戦で3勝を挙げ、すべてのレースで表彰 台登壇を果たした。

第1戦優勝で打ち立てた目標 東西統一競技会で存分に実力を発揮

「1戦目で勝った時に、2021年は全戦表彰台 に乗るっていう目標を立てて、そこでチャン ピオンを獲る目標も見えてきました。ジュニ ア選手権時代は、練習で速くてもレースで

遅くなったりして、緊張が大きくなってしま うこともあったけれど、2021年は最初から ブッちぎりといってもいいくらいの速さが あったので、事前練習から楽しんで走って、 かつ、毎回絶対に一番の速さを見せるって 気持ちを持つことができるようになりました」 と村田選手は自身の成長を分析する。

そしてシリーズを締めくくる東西統一競技会 では、全セッション1位を獲って完勝、この一

年間の集大成にふさわしいレース展開を演じた。 「最終戦はすごく印象に残ってますね。東西 統一競技会という場でポール・トゥ・ウィン ができて、みんなに実力を見せつけることが できたのかなって思います。タイムトライア ルでも他の選手のスリップを使わず、自分ひ とりの力を出し切ったタイムでトップが取れ ました。決勝では一旦抜かれてしまったけれ ど、自分がいちばん速いんだって思って、焦 らずに抜き返して勝つことができました」。

村田選手は“自信”という武器を手に入れ て自分のものにした様子だ。

2022年はスーパーFJなどフォーミュラへ のステップアップを計画中という。長年続い た父親の竜一氏と二人三脚のタッグチームを 卒業し、新しいステップへと歩を進める。 「今までずっと一緒にやってきたから、お父 さんは僕が言いたいことをすぐに分かってく れますし、レースを見ていてダメなところと かもアドバイスしてくれます。これからもこ のチームを続けたいんですけど、フォーミュ ラに上がるとそうはいかないので、他の人と うまくコミュニケーションを取って、いいク ルマがつくれるように訓練していこうと思い ます。将来の第一目標は、佐藤琢磨選手や 角田裕毅選手のように、外国でも活躍できる 選手になることです」と村田選手はトップド ライバーを夢見て日々邁進中だ。

FP-3部門 2021年ドライバーチャンピオン

村田悠磨選手

Rank. 地域 No. Driver Rd.1 Rd.2 Rd.3 Rd.4 Rd.5 東西統一 合計 有効 5戦 琵琶湖/ もてぎ北 神戸/ 新東京 鈴鹿南/ 本庄 御殿場/ 茂原東 中山/ SUGO西 もてぎ北 1位 東 26号車 村田悠磨選手 31 21 35 32 20 47.5 186.5 166.5 2位 東 73号車 豊島里空斗選手 23 22 28 7 35 39 154 147 3位 西 44号車 中村海斗選手 30 34 20 14 26 19.5 143.5 129.5 4位 西 36号車 森岡真央選手 9 30 23 16 35 18 131 122 5位 東 34号車 柳沼光太選手 0 25 24 34 13 21 117 117 6位 東 89号車 熱海瑛達選手 20 20 31 22 22 115 115
親子二人三脚で成し遂げた初タイトル フレーム交換でつかんだ勝利が大きな自信に
2 33

JAFジュニアカート選手権

FP-Jr部門/FP-Jr Cadets部門

勝ってタイトルを決めたジュニアの2選手、 さらなる高みを目指して……

年間でいちばん印象に残ってい るのは第1戦です。ペースは周 りとそれほど変わらないのに、 自分のミスで前に追いつけなくて、そのモ ヤモヤがずっと頭に残っていました」。

FP-Jr部門にデビューした2021シリー ズ。鈴木恵武選手の開幕戦は3位だった。 この敗戦の悔しさをバネに、第2戦からは 怒涛の3連勝。東西統一競技会でも優勝を 飾って栄冠を手に入れた。

「一年ずっとチャンピオンを目標にしてき たので、トップでゴールした時は、緊張か ら解き放たれた感じで気持ちが楽になりま した。FP-Jr Cadets部門の時は自分の中 でも浮き沈みがあって、メカニックさんが やってくれたことに対して応えられないこ

酒井龍太郎 選手

とが多かったけれど、今季はメカニックさ んの頑張りに応えることができたのが良か ったと思います」。

チャンピオン獲得にこだわったのは、そ の先につながる目標があったからだ。

「2022年はFIAカーティングアカデミー トロフィーに行くという目標があって、そ

鈴木恵武 選手

の推薦を受けるため、Junior MAXの世界 大会の出場権とFP-Jr部門のチャンピオン を獲得できるように、この一年ずっと頑張 ってきました。それをふたつとも達成でき てうれしいです。将来はF1やスーパーフ ォーミュラに乗れるようないいドライバー になりたいです」と笑顔で語った鈴木選手 の今後の活躍に期待したい。

来は東地域がホームの酒井龍太 郎選手が、2年目となるFP-Jr Cadets部門の戦場に選んだの は、アウェーの西地域だった。

「初めて走ったコースでパッとタイムを出 すことはもともとできていたので、いける のでは、という自信はあったんですが、開 幕戦の琵琶湖大会では雨に苦しめられた し、まだ全然足りていないところがあるん だなと分かった一年でした。逆に、勝てな かった琵琶湖・神戸・中山の3戦でけっこ う成長できたところがあったなとも思いま す。東西統一競技会では、チーム(ミツサ ダ PWG Racing)みんなで2年間目標に してきたチャンピオンを、勝って獲ること ができて、すごくうれしい気持ちでゴール しました」。

2022年のターゲットは、FP-Jr部門に ステップアップしてチャンピオンを獲るこ と。その先には大きな夢が広がっている。 「将来のいちばんの目標はF1なんですが、 そこに行くまでの過程で、レースでいい結 果を追求するのは当たり前のこととして、 その時その時に自分が今いる場所でどれだ け努力できたのかっていう“自分の中の結 果”も追求していきたいです」。

11歳の酒井選手のチャレンジはこれか らも続く。

Rank. 地域 No. Driver Rd.1 Rd.2 Rd.3 Rd.4 Rd.5 東西統一 合計 有効 5戦 琵琶湖/ もてぎ北 神戸/ 新東京 鈴鹿南/ 本庄 御殿場/ 茂原東 中山/ SUGO西 もてぎ北 1位 東 25号車 鈴木恵武選手 20 25 25 25 20 37.5 152.5 132.5 2位 西 93号車 松土稟選手 25 18 22 18 0 33 116 116 3位 東 34号車 岡澤圭吾選手 25 22 22 22 22 24 137 115 4位 西 55号車 箕浦稜己選手 22 0 25 25 0 27 99 99 5位 東 14号車 春日龍之介選手 22 0 20 0 25 30 97 97 6位 西 16号車 佐藤こころ選手 18 25 18 0 18 DNF 79 79
2021年ジュニアカート選手権FP-Jr部門ポイントランキング
Rank. 地域 No. Driver Rd.1 Rd.2 Rd.3 Rd.4 Rd.5 東西統一 合計 有効 5戦 琵琶湖/ もてぎ北 神戸/ 新東京 鈴鹿南/ 本庄 御殿場/ 茂原東 中山/ SUGO西 もてぎ北 1位 西 44号車 酒井龍太郎選手 0 22 25 25 20 37.5 129.5 129.5 2位 西 38号車 澤田龍征選手 22 18 18 0 25 27 110 110 3位 東 33号車 松井沙麗選手 22 25 20 20 22 21 130 110 4位 東 11号車 遠藤新太選手 25 0 25 20 33 103 103 5位 東 46号車 吉岩泰選手 25 22 25 24 96 96 6位 西 46号車 山代諭和選手 25 14 22 18 DQ 79 79
2021年ジュニアカート選手権FP-Jr.Cadets部門ポイントランキング
~栄光に向かって~
FP-Jr部門 2021年ドライバーチャンピオン
「一
34
FP-Jr Cadets部門 2021年ドライバーチャンピオン
35

INFORMATION from JAF

モータースポーツ公示・JAFからのお知らせ(WEB)一覧(2021年10月1日~2021年12月24日) 公示(四輪)

日付 公示No. タイトル

2021年10月01日 [2021-WEB094]

2021年10月01日 [2021-WEB095]

2021年10月01日 [2021-WEB096]

2021年10月13日 [2021-WEB097]

2021年10月19日 [2021-WEB098]

2021年10月19日 [2021-WEB099]

2021年10月20日 [2021-WEB100]

2021年10月22日 [2021-WEB101]

2021年10月25日 [2021-WEB102]

2021年10月26日 [2021-WEB103]

2021年11月09日 [2021-WEB104].

2021年11月17日 [2021-WEB105]

2021年11月22日 [2021-WEB106]

2021年日本ダートトライアル選手権競技会の開催日程変更について

2022年JAF国内競技車両規則の制定と誤記訂正について

2021年日本サーキットトライアル選手権競技会の開催日程変更について

2021年日本ジムカーナ選手権競技会の開催日程変更および競技会の名称変更について

FIA国際モータースポーツ競技規則.付則H項および付則J項の書籍発行廃止について

2021年日本ダートトライアル選手権競技会の開催日程変更について

2022年FIA国際スポーツカレンダー登録申請一覧変更について

新型コロナウイルス感染防止対策に係る特例措置(2021年10月22日版)

2021年日本ジムカーナ選手権競技会の開催日程変更および競技会の名称変更について

2021年日本ジムカーナ選手権競技会の中止について

「コロナ禍におけるリアルモータースポーツイベントの開催と参加」に関する講習会の開催について

2022年JAFカップオールジャパンジムカーナ.カレンダー

モータースポーツ専門部会規定、及びモータースポーツ審議会規定の一部改正について

2021年11月22日 [2021-WEB107]. JAF国内競技規則の一部改正について

2021年11月25日 [2021-WEB108]

2021年11月25日 [2021-WEB109]

2021年12月17日 [2021-WEB110]

2021年12月24日 [2021-WEB111]

公示(カート)

2022年日本レース選手権カレンダー

2022年全日本ラリー選手権カレンダー

2022年地方ジムカーナ/ダートトライアル/サーキットトライアル選手権カレンダー

2021年JAF地方選手権表彰式開催一覧表(開催日順)

日付 公示No. タイトル

2021年10月01日 [2021-WEBK13]

カート競技に関する申請・登録等手数料規定の改正について

2021年10月01日 [2021-WEBK14] カート競技会組織に関する規定の改正について

2021年11月19日 [2021-WEBK15]

2021年11月29日 [2021-WEBK16]

2021年12月07日 [2021-WEBK17]

2021年12月24日 [2021-WEBK18]

JAFからのお知らせ

日付 タイトル

2021年10月13日

2022年カート競技カレンダー登録申請締切日の特例措置について

2022年日本選手権カレンダー一覧(カート)

2022.FIA.KARTING.ACADEMY.TROPHYへのJAF推薦参加者の募集について

2022年日本選手権カレンダー一覧(カート)

2021年ドライバー・オブ・ザ・イヤー中間結果発表!

2021年10月15日 身体に障がいのある方の「ユニバーサル・ロゴ」の掲示について

2021年10月27日 【終了】モータースポーツプレゼントキャンペーン第2弾を開始しました

2021年10月29日 「モータースポーツジャパン2021.in.JAF鈴鹿グランプリ」会場から生配信!

2021年11月09日 2021年JAFモータースポーツ表彰式について

2021年12月01日 モータースポーツプレゼントキャンペーン第3弾を開始しました

2021年12月02日 2021年JAFモータースポーツ表彰式.オンラインで公開します!

※上記公示・お知らせ(WEB)一覧の詳細は、JAFモータースポーツサイト(https://motorsports.jaf.or.jp/)内の「公示・JAFからのお知らせ」で閲覧することができます。

2021年JAF地方選手権表彰式開催予定一覧表(開催日順)

九州本部 2022年1月16日(日)

中部本部 2022年1月29日(土)

関西本部 2022年2月6日(日)

※.下記の内容は変更となる場合があります。式典の詳細や開催方法等については 各JAF地方本部・支部にてご確認ください。

ヒルトン福岡シーホーク(福岡市中央区)

鈴鹿サーキットホテル(鈴鹿市稲生町)

PREMIUM新大阪(大阪市淀川区) チャンピオンのみ招待

中国本部 2022年2月6日(日) 未定 ホテルセンチュリー21広島(広島市南区)

関東本部 2022年2月11日(金・祝)(予定) 未定 ホテル椿山荘東京(文京区関口) 開催規模縮小や中止の可能性あり

東北本部 2022年2月20日(日)

※上記の内容は2021年12月24日までの情報を元にしております。

ホテルニュー水戸屋(仙台市太白区)

36
地域 日付 開始時間 場所 備考 北海道本部 中止 各賞典は受賞者に発送 四国本部 2022年1月9日(日) PM(予定) JRホテルクレメント高松(高松市浜ノ町)
10:30~
未定
15:00~(予定)
11:00~

JAFモータースポーツサイト

アナタに合った楽しみ方が、きっと見つかる! のススメ motorsports.jaf.or.jp https://

モータースポーツを やってる人もやりたい人も 楽しみ方が見つかる コンテンツ盛りだくさん!

JAFモータースポーツサイトには、モータースポー ツのあらゆる楽しみ方や関わり方を紹介したペー ジを多数ご用意しています。競技ライセンス所持 者の皆さんに向けた「公示・JAFからのお知ら せ」や「競技会スケジュール」、「国内競技結果 (リザルト)検索」の他、これからモータースポーツ を始めたい方々には「モータースポーツとは?」や 「選べるコンテンツ~あなたに合った楽しみ方を 紹介~」、「お手軽参戦オートテスト」などをご用 意。ぜひ一度、ご覧ください!

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2021年はリアル開催♪

JAFモータースポーツ表彰式

オンラインで配信中!

国内トップカテゴリーで優秀な成績を収め たチャンピオンおよび上位入賞者の方々の 栄誉を称える毎年の恒例行事「JAFモー タースポーツ表彰式」が2021年12月3日に 開催されました。式典の様子はJAFモー タースポーツサイトの特設ページでオンラ イン配信中です!

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2021年全日本選手権〝初

初栄冠

全日本ジムカーナ選手権/

新型コロナウイルス感染症の影響で、全日本ダートトライアル 選手権は2戦が中止で成立6戦(有効4戦)、全日本ジムカーナ選 手権は1戦が中止で成立7戦(有効5戦)となった2021年。ここ ではそれぞれのシリーズを戦い抜き、初めて全日本チャンピオ ンを獲得した6名の選手に“初タイトル”獲得の感触を聞いた。 フォト/CINQ、小竹充、中島正義、西野キヨシ、廣本泉、JAFスポーツ編集部  レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部

38

の誉れ 〟チャンピオンインタビュー

全日本ダートトライアル選手権編

39

日本ジムカーナ選手権で二輪駆動最 速マシンが集結するJG2クラス。こ

の統合クラス設立初年度で、最も素 晴らしいパフォーマンスを見せていたのが、 S2000を駆る広瀬献選手だった。

これまで関東のサーキットトライアルなどで 活躍してきた広瀬選手は、スピードB車両をSC 車両へと変更し、2020年の名阪大会で全日本ジ ムカーナ選手権にチャレンジ。最終戦イオック ス大会では混走する四駆マシンを抑えて、いき なり全日本初優勝を獲得してみせた。

「以前からB車両を盛り上げたいという気持ちが ありました。2021年から改造車でも出られる二 輪駆動クラスができるし、いつかは全日本で勝ちたい という目標もあったので、SC車両を作って全日本に挑 みました。テスト的に参戦したイオックスで初優勝を 達成してしまったので(笑)、それなら今度はチャンピ オンを狙おう! とフル参戦することにしました」。

「いざ参戦しても、二輪駆動はFD(RX-7)が速いと 思ってましたし、作り方によっては前輪駆動も速いで すから、自分にアドバンテージがあるとは思っていま せんでした。それでも開幕戦では週末を通じて速かっ たし、決勝2本目は雨予報だったので、1本目でタイ ムを出せば勝てるかなぁ、と思っていました」。

広瀬選手は想定通りにもてぎ南を制覇したが、2戦目 の第3戦TSタカタではウェット路面に苦戦して2位に 惜敗。ここがターニングポイントになったという。

「事前テストはドライ路面で速かったんですが、公開 練習でウェットになるとミッドシップ勢に歯が立たな

くて、悔しくてセット出しを頑張りました」と語る広 瀬選手。その結果、第4戦名阪大会では「金曜の練習 会は雨でしたが、いいタイムを出せたので土曜、日曜 も気持ち良く走れました。達成感がありましたね」と 語るように、後輪駆動車でJG1クラスの四輪駆動を 抑えて最速タイムを叩き出して2勝目を挙げた。 その勢いは止まらず、次戦の第5戦スナガワでは3 勝目を挙げたが、印象に残る一戦となったそうだ。 「金曜にクルマが壊れて、北海道中から部品を探し て、自分で修復することになりました。本番の1本目 ではABSエラーが出てアタックできなかったので、2 本目で何とか勝てたのが印象に残っていますね」。 第6戦みかわは豪雨の影響で第2ヒートが中止とな ったが、第1ヒートのタイムでシーズン4勝目を獲 得。「今季は“1本勝負”が多かったですね。みかわは 金曜から雨でしたが、名阪でセットが決まったことも あって調子が良かったんですよ」と振り返る。 こうしてシーズン4勝をマークした広瀬選手は第8 戦の鈴鹿が中止となったことで、最終戦を待たずにタ イトルが確定。第7戦恋の浦をスキップした広瀬選手 は最終戦となる第2戦エビス西へ向かった。 「サービスに来てくれた後輩へのご褒美としてダブル エントリーする目的もありましたし、チャンピオンが 決まった時は、お世話になった人々と喜びを分かち合 えなかったこともあって、エビス西には参加しまし た。有効満点チャンピオンを期待されていたので、プ レッシャーはありましたね」とのこと。

金曜の練習会ではダブルエントリーした後輩がコー スアウトしたことで車両修復に追われ、決勝第1ヒー トも駆動系トラブルが発生したため、広瀬選手はまた も第2ヒートのみの勝負を強いられた。そんな状況に も関わらず広瀬選手は好タイムでシーズン5勝目をマ ーク。2021年を満点チャンピオンで締めくくった。 「今季は多くのサポートを得られたことで、しっかり とした体制で戦うことができました。上出来なシーズ ンだったと思います。でも、自分に足りない部分やト ップ選手との差も感じましたし、応援してくれる皆さ んのためにも、引き続きJG2クラスで再びチャンピ オン獲得に挑みたいと思います」と目標を新たにした。

献 2021 年 J G 2 クラスチャンピオン
マロヤトレーラーS二千亜舎YH[AP1 S2000] 40
全️

季の全日本ジムカーナ選手権には、いわゆる “2ペダル車両”で参加できるJG9/JG10 クラスが新設され、四輪駆動のJG9は不成 立となったが、二輪駆動のJG10では後輪駆動と前輪駆 動が入り乱れる中で、激しいバトルが展開された。

そんな新設クラスで初代チャンピオンに輝いたの が、スイフトスポーツを駆る織田拓也選手だった。

織田選手は2014年に全日本デビューを果たした若 手で、かつてSA車両のEK9シビックを愛用していた。

「シビックも古くていつ壊れるか分からなかったの で、クルマの買い替えを考えていました。当初はMT 車のスイフトスポーツを考えていたんですが、AT車 に乗る機会があって、その際に変速の制御が良かった

し、全日本には2ペダルのクラスができる話も知った ので、ATのスイフトスポーツでJG10に参戦しまし

た。シーズン前は角岡(隆志)選手のポルシェ・ケイマ ンが気になっていましたが、そもそも開幕戦でJG10 が成立するかどうかも不安でした。でも、いざ走れば スイフトスポーツはバランスが安定してましたし、全 日本初優勝も獲得できたので色々と安心しました」。 シーズン2戦目となる第3戦TSタカタでも「クルマ には慣れてきましたが、1本目はパイロンタッチ、2本 目はミスコース“未遂”だったので、内容は良くあり ませんでした」と語りながらも2連勝を獲得した。

第4戦の名阪は「地元のコースはいつも気負い過ぎ てミスをするので、落ち着いて走ること を心がけました」と語るように、織田選 手は冷静なドライビングを披露して開幕 3連勝を獲得した。その勢いは第5戦ス ナガワでも健在で、「スナガワは初めて シビックで走った2020年大会で3位に 入った相性の良いコース。ちょうど足回 りのセットアップを煮詰めるようになっ た時期だったので、その手応えもありま

した。この辺りから詰めた運転ができるようになりま したね」と振り返る。 勢いに乗る織田選手だったが、第6戦みかわではつ いに連勝がストップしてしまう。織田選手は「角岡選手 のケイマンがずっといい動きをしてました。コンディ ションが悪かったし、ミスコースもしたくなかったの で、守りに入っちゃいました」と2位に惜敗する。 そして、第8戦鈴鹿南が中止になったことで、最終 戦を待たずしてタイトルを確定させることになった。 「自分でポイントの計算をしていなかったので、ウェ ブサイトを見てチャンピオンになったことを知りまし た。嬉しかったんですが、喜び方が分かりませんでし たね(笑)」と当時の状況を振り返った。

織田選手は第7戦恋の浦にも参戦し、「恋の浦も相 性のいいコースですが、縁石に引っ掛けると横転した り、トラクション抜けのリスクもあるので、そこを気 を付けて走りました」と丁寧なドライビングで恋の浦 を攻略してシーズン5勝目を獲得した。 初代チャンピオンとして挑んだ最終戦となる第2戦 のエビス西だが、「勝って終わりたかったですし、タ イトルを確定させていたので、この大会は攻める方向 で取り組み方を変えました」と語る織田選手。エビス 西は初挑戦だったにも関わらずシーズン6勝目を獲得 し、満点チャンピオンで締めくくった。 「初代チャンピオンというのはなかなか獲れないの で、最初からタイトルを意識していましたし、新しい クラスは2年目以降になると勢力図も見えてくるの で、初年度が勝負だと思っていました。当初はパワー 勝負かと思ってましたが、もてぎ南の勝利でスイフト スポーツでも勝負になることが分かりました。恋の浦 からはMT車とのタイム差を意識して走りましたね」。 全日本初タイトルを獲得した織田選手はこう語る。 「今季は参加台数も少なかったのでやや卑屈になって いましたが、多くの方々に声をかけてもらえて、嬉し さを実感しています。AT車両の反響もかなり多かっ たので、JG10に参戦して良かったですね。来季はど んなクルマが出てくるのか分かりませんが、1年間分 のアドバンテージを使って、勝ちにいきます!」。

リジットDLレイズeTスイフト[ZC33Sスイフトスポーツ]

2021 年 J G 10 クラスチャンピオン 初栄冠の誉れ
今️ 41

っぱり達成感がありますね。でも、正直な ところ、応援してくれる関係者のためにも タイトル獲得が必要だったので、ホッとし たという気持ちの方が強いかもしれません」。

こう語るのは、全日本ダートトライアル選手権で JD2クラスのチャンピオンに輝いた目黒亮選手だ。

JAF関東ダートトライアル選手権での活躍を経て、 2013年に全日本ダートトライアル選手権にデビュー

した目黒選手は、2014年の野沢大会で初優勝を獲得し たものの「早いタイミングで初優勝することができま したが、Dクラスはプライベーターには難しいカテゴ リーで、金銭的にも体制的にも厳しく、その後は勝つ

ことができませんでした」と苦しい戦いを続けていた。

そこで「周りからは“まずはタイトルを獲りなさい” と助言を受けまして、身の丈にあったクラスに移るこ とにしたんです」と語るように、目黒選手は2021年

からCZ4AランサーエボリューションXでJD2クラ スへ参戦した。開幕戦の京都は4位に終わったもの の、第2戦恋の浦では本領を発揮。シーズン初勝利、 そして2014年以来の全日本2勝目を挙げた。

「開幕戦は新しく作ったクルマで最初の大会だったの で、こんなものかなあ、という印象でした。恋の浦は クルマに慣れたことが大きくて、秒単位で差を付けら れたので、ポテンシャルの高さも確認できました。僕 はメンタルが走りに影響するタイプなんですが(笑)、 恋の浦での優勝がプラスに働いて、次の丸和は走り込 んでいるコースだったので、何も起きなければ勝てる だろうと、自信を持って走ることができました」。

第3戦丸和で2勝目を挙げ、ここから破竹の連勝か と思われたが、第4戦スナガワでは2位に惜敗した。 「この辺りから欲が出てきて(笑)、JD1クラスのタイ ムに近付けたいと思うようになりました。そこで足回 りのセッティングを変えてみたんですけど、ちょっと ハマってしまったんですよね」と回顧する。

そして、第5戦切谷内、第6戦野沢が中止になった ことから「このインターバルを利用して、得意な野沢 に合わせたセットアップにしていたんですけど、その 次の今庄にはぜんぜん合わなくて撃沈したんです」と、 第7戦今庄では5位に終わっている。

それでも2勝を挙げた目黒選手はポイントリーダー として最終戦となる第8戦タカタに挑んだが、プレッ シャーはあまりなかったようで「ポイント差が開いて いて、自分がよっぽどヘマをしない限りは、タイトル を獲れる位置にいたので、タカタでは意外とリラック スしていました。セッティングに悩んでいましたが、 あまり悩むのもメンタル的に良くないので、気持ち良 く走ろうとアタマを切り替えました」と語るように、 目黒選手は第1ヒートをトップで折り返した。 しかし、第2ヒートは路面の変化に対応することが できず、目黒選手の最終戦は3位に終わってしまう。 ところが、目黒選手を追っていた亀田幸弘選手も4 位、上村智也選手も7位に沈んだことから、目黒選手 に全日本初タイトルの座が転がり込んできた。 「本当は勝ってチャンピオンを決めたかったんですけ ど、タイトルは獲れても大会は3位だったので、素直 には喜べなかったのが正直なところです。ですが、ク ルマを仕上げてくれたグローバルモータースポーツさ んやダンロップさん、現地でサービスをやってくれた スタッフの存在が大きかったですね。彼らのおかげで ドライビングだけに集中することができました。周り の期待もありましたが、もちろん自分もタイトル獲得 を目指してきたので、やっぱり嬉しいですね」。 「今季は2勝しかできなかったので、クルマをアップ デートしてもっと優勝したい。そしてJD1とのタイム 差も縮めていきたいです」と意気込む目黒選手。今回 のタイトル獲得は大きな自信となったに違いない。さ らなる強さを身に付けて、連勝街道を歩んでほしい。

亮 2021 年 J
クラスチャンピオン
D 2
「や️ 42
クスコDLグローバルランサー[CZ4AランサーエボリューションX]

イフトスポーツに乗り換えて全日本ダート トライアル選手権JD8クラスに挑んだ谷 尚樹選手。現行車に乗り換えた初年度で全

日本初優勝、そして初チャンピオンを獲得した。

「2003年に全日本デビューしてEK9シビックやDC5 インテグラで戦ってきましたが、ポイントを獲れるか 獲れないかという成績でしたし、転勤する事情もあっ

たので、今季は活動休止するつもりでいたんです」。

こう語る谷選手だが、その思いも一転し、今季は現 行車であるZC33Sスイフトスポーツに乗り換えて、 JD8クラスにシリーズ参戦することを決めた。

「周囲から“眠っている”スイフトがあるから乗って みれば、と勧められたので、ダートラ人生の最後に乗 ってみるか(笑)、と思って決意しました。開幕戦京都 がほぼシェイクダウンだったので、公開練習では転が さないようにビクビク走りました。ですが、京都は走 り慣れているコースだ し、いろんな人がアド バイスしてくれたので 本番は落ち着いて走れ ました」。

そして、開幕戦では いきなり全日本初優勝 を獲得した谷選手は「2 本目は誰かに更新され ると思っていたので、 勝利の瞬間は喜びより も『ウソやろ??』とい

う驚きの方が強か ったですね。表彰 式でもボーッとし てしまい(笑)、実 感がありませんで した」と振り返る。

しかし、これが 実力で掴んだ勝利であることを証明するように、第2 戦恋の浦でも抜群の速さを披露した。

「恋の浦は好きなコースで、やれることはやったつも りです。でも、勝てるとまでは思っていなかったの で、この時も『マジで優勝なん?』と驚きました(笑)」。

第3戦の丸和でも谷選手の勢いは止まらなかった。 「関東チャンピオンの経験はあるんですが、現在の丸 和は初めて走りました。土曜にタイヤバリアに激突し ましたが(笑)、サービス隊が直してくれたし、足回り のセットも合っていて、しっかり前に進んでくれまし

た。この時は、ライバルに競り勝てたので、ようやく 『全日本で勝った』という実感が湧きましたね」。 新たなクルマで連勝を続ける谷選手だが、第4戦ス ナガワでは苦戦を強いられることになった。 「いま思えば軽い熱中症だったんでしょうね。あまり 調子が良くなくて、1本目はダメダメでした。2本目は 何とかアジャストできましたが、後半でリム落ち。結 果は5位でしたが、ポイントは獲れたし中間タイムも 良かったので、爪痕は残せたと思います(笑)」。 そして、谷選手はタイトル争いに王手をかけ、初の 全日本ポイントリーダーとして第7戦今庄を迎えた。 「3連勝した辺りからチャンピオンを意識しました。 コロナ禍の影響で中止になる大会も出てきたので、チ ャンスはあると思っていました。今庄はきちんとゴー ルすれば獲得できる状態だったので、特にプレッシャ ーは感じませんでした。結局、表彰台には乗れません でしたが、もともと苦手なコースでしたし、終わり良 ければ……と気持ちを切り替えています(笑)」。 第7戦今庄は4位フィニッシュ。この結果で、全日 本参戦18年目にして初のチャンピオンが確定した。 最終戦タカタは日程が変更されたため、仕事の都合 で欠場となった。ひと足早くシーズンオフに入った谷 選手は、今シーズンについてこう振り返った。 「18歳からダートラを始めて、全日本ではずっと結 果が出ませんでした。最後だと思って参戦した年に勝 てたし、チャンピオンになることもできた。嬉しい一 方で『やっと終わった』という気持ちもありますね。勝 てなかったし、タイトルも獲れなかったからこそ、こ こまで続けることができたんだと考えています」。 完全燃焼した感のある谷選手だが、来季について は、「まだ分からない、というのが正直なところです。 でも、クルマは好きだしやり残したこともあるので準 備だけは進めておきたいと思います」と静かに語った。

キャッツ♂YH♀速心☆スイフト[ZC33Sスイフトスポーツ]

初栄冠の誉れ 谷2021 年 J D 8 クラスチャンピオン
ス️ 43

日本ダートトライアル選手権の デビューは2012年。10年目を 前にJD9クラスチャンピオン に輝いたのが太田智喜選手だ。

「昨シーズンの最終戦は走りの内容もタイ ムも良かったので、今季はタイトルを獲り にいくつもりで挑みました」と語る太田選手 は、デミオ15MBを入念にメンテナンス。

迎えた開幕戦京都では2位に入賞する。

「京都は高速コースなので1500ccのデミ オには厳しいかなと思ってました。これま で表彰台に上がれたこともないんですが、今回は2本 とも2位に着けることができました。おかげで、丁寧 に走れば十分に戦えることが分かったので、自信につ ながりましたね」と手応えを語る。

第2戦恋の浦は「1本目から2番手で、調子が良か ったんですが、2本目の最終コーナーでシフト抜けし ちゃいまして……」と3位に惜敗。それでも「もっとド ライビングの精度を上げないとダメということが学べ ました」と、頭を切り替えて第3戦丸和に挑んだ。

「ハイスピードコースにも関わらず、公開練習ではト ップタイムを出せました。でも、本番はタイヤ選択を ミスして5位。戦略では負けましたが、自分のベスト は出し切れたし、ライバルの上野(倫広)選手も6位に 沈んでましたから、落ち込みはしませんでした」。

第4戦スナガワはスキップ。第5戦切谷内、第6戦 野沢は中止になったことで、太田選手は約4か月の休 止期間を経て、第7戦今庄に挑戦することになった。

「前回はタイヤ選択をミスして5位だったので、今回 は路面を見極めたいと思っていました。硬い路面では パワー差が出やすい今庄ですが、低速コーナーをうま く処理すればイケるだろうと思っていました。1本目 はシフトミスしましたが、2本目はデータを見て修正 できましたし、今回のタイヤ選択はバッチリでした」。

今庄でようやく今季初勝利を挙げた太田選手は、地 元の第8戦タカタにポイントリーダーとして挑んだ。

この時点でJD9クラスのタイトル争いは、 4名による混戦となっていた。 「何位なら獲れるといった条件を知ってし まうとベストな走りができないと思ったの で、あえてポイントは計算しませんでし た。目標はあくまでも優勝で、そうすれば タイトルも付いて来る、と思ってました」。 そんな太田選手は第1ヒートでベストタ イムを計測。「これで負けたら仕方ないと 思えるほど、今までで一番いい走りができ ました」と語るように、第2ヒートもベス トタイムを更新して優勝。地元タカタでの

初勝利を挙げることに成功し、これまで“門前スペシ ャル”と思われてきたデミオ15MBに高速コースでの 優勝をもたらした。

「デミオでは不利だと思っていた、ハイスピードのタ カタで勝てたことが自信につながりました。これまで “ロスのない走り”をすれば1500ccでも勝てると信じ てやってきたので、それをようやく証明できましたね。 チャンピオンを獲れたことは嬉しいですが、それ以上 に、タカタで勝てたことが本当に嬉しかったです」。 初栄冠に輝いた太田選手は、今季の勝因について、 「シーズン前に低速での荷重移動トレーニングをした ことで様々な気付きが得られて、そこから丁寧なドラ イビングを実践するようになりました。その成果が京 都で現れて、開幕戦で自信を持てたんです」と語る。 そして太田選手は門前で開催された2021年JAFカ ップダートトライアルでも優勝し、2021年のJAFモー タースポーツ表彰式では全日本チャンピオントロフィー とJAFカップの両方を授与された唯一の選手となった。 「門前は過去に勝っているので、JAFカップの方がプ レッシャーはありました。今季は多くの方々に声をか けていただいたので、最終戦が終わってしばらくして から実感が湧いてきましたね。最終ゼッケンで成績を 出してこそだと思いますので、来季は歴代チャンピオ ンと同じように多くのプレッシャーを感じながら、デ ミオ15MBで“2年連続”を狙いたいと思います」。

2021 年 J D 9 クラスチャンピオン
DL Motysクスコデミオ[DJLFSデミオ15MB]
44
全️

季の全日本ダートトライアル選手権には、 オートマチック限定クラスとして四輪駆動 のJD10クラスと二輪駆動のJD11クラス

が新設された。JD10クラスは不成立となったが、 JD11は「後輪駆動AT車クラス」の様相を呈しており、 JD11クラスの立役者となったのが小関高幸選手だ。

小関選手は海外ラリー経験も豊富で全日本ダートラ には1999年にデビュー。スバル系ショップを営みなが ら歴代WRXで戦ってきた。そして今季はAT仕様の BRZで人生初の後輪駆動ダートラに挑むことになった。

新設のATクラスに挑むことになった経緯について、

「ラリーに参戦する選手のために、BRZのAT車を用意 したんですが、その選手が出場できなくなってクルマ が浮いたんです。全日本に2ペダルのクラスも設定さ れたので、それなら参戦してみようと思いました」。

開幕戦京都は1台の参加で不成立となったことから、 JD11クラスの成立初戦となったのは第2戦恋の浦だ。

「これまで四駆で走ってきたので、後輪駆動は自信が ありませんでした。それでも恋の浦では、公開練習で JD7クラスのMT勢と同等のタイムを出せていたの で可能性は感じましたね。決勝の1本目はブッちぎれ ましたが、2本目はボロ負けでしたけど(笑)」。

恋の浦の小関選手は、小関選手のマシンでダブルエ ントリーした寺田伸選手に逆転されて2位に惜敗。し かし、これがターニングポイントになったようで、 「第2戦以降は気持ちを切り替えて『2本目をゴールす るまでは気を緩めない』ことを意識して走るようにな りました」と小関選手。メンタル面の強化が功を奏し

ルの寺田選手は新車を仕立てて応戦したものの、最終 戦を待たずして小関選手のチャンピオンが確定した。 「ライバルの寺田選手はスナガワを欠場しましたが、 次の今庄は寺田選手の地元です。なので、自分が勝て るワケもなく、最終戦タカタまで持ち越すだろうと思 ってました。でも、今庄を気持ちを込めて走ったら、 寺田選手に勝つことができた。今庄では本当にいい走 りができたと思います」と、思いがけない勝利とタイ トル確定劇を振り返る小関選手。続く第8戦タカタで は4連勝ならず3位に惜敗した。 「チャンピオンを獲得したこともあって、“次”の可能 性を探るために、JD7クラスのMT車を意識して戦い ました。公開練習では初めて後輪駆動勢のトップタイ ムを出せたので、本番もイケるぞ! と思ってまし た。1本目はAT特有のトラブルが出たにも関わらずベ ストタイムを出せましたが、2本目はドライ勝負と思 っていたのが、慣熟歩行後に散水があって気持ちが切 れてしまったんですよね。集中力もなくて、2本目は 3回もミスしてしまいました」と最終戦を振り返る。 「普通に走れていれば、恋の浦もタカタも勝てたと思 います。JD11クラスでは“一日の長”ではないです が、“満点”を逃したのは自分の責任です。今シーズン を振り返ると反省の方が多いかもしれません。当初は MT車とAT車を比べてMT車の方が速かったし、AT 車は独特の技術が必要だったので、試行錯誤が続きま した。ライバルの寺田選手の方が後輪駆動には慣れて いるので、開幕前あたりの時点では厳しいかも……と 感じてました。そんな状況で丸和で全日本初優勝でし たから、まさかFRで、しかもATで、なんて考えて もいなかったので、本当は改造の四駆で優勝したかっ た思いもあったですし、喜び半分、悔しさ半分といっ た感じでしたね」と複雑な心境を語る。

「初代チャンピオンは一人しか獲れないし、ずっと残 る記録なので新設クラスに挑戦して良かったです。皆 さんから祝福していただき、タイトルの重みも実感し ています。AT車の反響が大きくて、ATの可能性をもっ と探りたいと考えています。そのため、来季は新型 BRZのATモデルをJD7クラスに投入して、MT車を相 手にAT車の可能性を検証する年にするつもりです」。

たのだろう。小関選手は第3戦丸和 で初優勝を獲得すると、第4戦スナ ガワも制して、2連勝してみせた。

今季は第5戦切谷内、第6戦野沢 が中止となったことで長いインター バルを挟むことになったが、その間 も練習に明け暮れていた小関選手 は、ポイントリーダーとして挑んだ 第7戦今庄で3連勝を獲得。ライバ

2021 年 J D 11 クラスチャンピオン 初栄冠の誉れ
今️
DL・KIT・AT-BRZ[ZC6 BRZ]

ミ・ライコネン選手やステファ ン・サラザン選手、近年なら勝 田貴元選手のように、FIA世界 ラリー選手権(WRC)を始めとしたラリー 競技では、レース出身のドライバーが活躍 している。しかし、現役で他のカテゴリー を戦いながら、ラリーに参戦しているドラ イバーは世界的にもあまり多くはない。 2021年の全日本ラリー選手権には、同 時進行で二つのカテゴリーを戦う奇特なド

ライバーがいた。第10戦には3名のドライ バーがチャレンジしていたので、そんな選 手たちにラリーに挑んでいる理由を聞いた。 ラリー競技は、コ・ドライバーが読み上 げるペースノートを頼りにしつつも、現実 的には先が読めない不安定な林道ステージ を全開で攻める必要がある特殊な競技だ。 彼らはなぜ自身のメイン活動の他にラリ ー競技へ挑戦したのだろうか? また、実 際に参戦してみた感触はどうだったのか?

ワケ
多くの種目を持つレースでは別のシリーズと掛け持つ選手は少なくないが、 競技性が全く異なるカテゴリーを掛け持ちして、 しかも同じシーズンで同時参戦している選手は珍しい。 ここでは全日本ラリーに集結した「掛け持ちドライバー」にフォーカス。 彼らの気持ちがラリーに向いた理由と、その効果についてインタビューした。
フォト/遠藤樹弥、廣本泉、山口貴利、SKILLD、JAFスポーツ編集部 レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部
キ に 挑む アナタ が 46

RALLY

サミー☆K-one☆MAX86[ZN6 86]

運転手の仕事が多くて大変

路面状況の見極めがキモ

昔からラリーには興味があった 街中に観客がいるのが面白い

近年、積極的にラリーに挑戦しているレ ーシングドライバーとして真っ先に思い浮 かぶのは織戸学選手だろう。織戸選手は 1996年の全日本GT選手権に参戦して以 来、長年全日本GT選手権/スーパーGT

で活躍している現役ベテランドライバー。 その出自はドリフトにあることはおなじみ で、主軸をレース活動に移行した後も、D1 グランプリなどでドリフトにも長年チャレ ンジし続けていた。

そんな織戸選手がラリー競技にデビュー したのは2015年の全日本ラリー選手権 で、K-oneレーシングチームの86で参戦。

この時はリタイアに終わったが、2度目の参 戦となった2019年の第9戦岐阜では、86 を駆りJN3クラスで8位完走を果たした。

そして、2021年もスーパーGTのGT300 クラス参戦の傍らで全日本ラリー選手権に 参戦して、第6戦群馬と第10戦岐阜に挑 戦。第6戦はコースアウト、第10戦は車 両トラブルでリタイアしたが、随所で存在 感を示す走りを披露していた。

「ラリーに出たのは、ボクの知り合いの小 菅社長(K-oneレーシング・小菅英久代 表)にダマされたのがキッカケ」と冗談混じ りに語る織戸選手。その一方で「実は以前 からラリーに興味があって、出てみたいな という気持ちがありました。でも、ラリー は情報が少なかったから、当初はルールも 分からなかったんだよね」と語る。

2015年にラリーデビューを果たした織 戸選手は、そのときを振り返って「とにか く拘束時間が長くて(笑)。レースだとゆっ

くりサーキットに来て、パ ッと乗って、すぐに帰る感 じだけど、ラリーは朝が早 いし夜は遅い。事前にペー スノートを作るために、ス テージやリエゾンを全部走 るでしょ。レースと比べて ラリーは“運転手”に仕事

をさせすぎだと思ったよね」と笑う。

そして「ラリーの魅力はやっぱり自然の 中を走れるところ。これはレースではでき ない経験なので面白いね。それにリエゾ ン。レースではサーキットでしか観戦でき ないけど、街中にギャラリーがいるところ も面白いんだよね」とも語ってくれた。

体力的にはレースがキツイ ラリーはメンタルがツライ

レースとラリーの“二足のワラジ”を履く 織戸選手。気になる相乗効果については、 「サーキットで養ったドライビングテクニ ックはラリーでも活きてくる。だけど、ラ リーはコース状況が安定していないので、 特有のテクニックが必要かな。サーキット ならウェットや季節ごとの違いなんかも走 り込みで分かってるから余裕があるけど、 ラリーはその部分の経験が足りない」と分 析する。さらに「グラベルラリーは経験な いけど、あれは別物で、レース経験は活か せないと思うな。ドリフトをやってたから クルマが滑ることに恐怖心はないけど、グ ラベルは未知の世界だね」とのことだ。

フィジカル面およびメンタル面の違いに ついては「体力的にはレースの方がきつい。 メンタル的には経験が少ない分、ラリーの 方がしんどいかな。レースはちょっとミス

FIAインターナショナルシリーズ スーパーGT GT300クラス/ JAF全日本ラリー選手権JN3クラス

織戸学選手

スーパーGTでは永井宏明選手とコンビを 組んでGT300クラスに参戦するレーシン グドライバー織戸学選手。かつてはレース 活動に並行してD1グランプリにもシリー ズ参戦していたマルチドライバーだ。

ってもオーバーランで済むけど、ラリーは ミスすると終わっちゃうから精神的にキツ イよね」と語る。また「ボクらも安定した道 なら100%以上の走りができるし、ベス トを出せる自信もある。でも、先の状況が 分からないから120%の走りはできない。 ラリーに慣れた人たちは、状況に応じてパ ーセンテージを調整してて、そのバランス の取り方がうまいんだろうね」とも語る。 「ラリーは特殊だし慣れてないから、今な らラリーの方が100倍難しいけど、経験 を重ねることでペースノートも合ってき て、こないだの群馬ではほとんどロスがな かった」と語る織戸選手。第10戦岐阜で も車両トラブルが出る直前のSS3ではク ラスベストをマークしているだけに、確実 に理解が進んでいる模様だ。織戸選手のラ リーチャレンジは今後も続くに違いない。

グラベルでの走行に活きた

ドリフトのアクセルワーク

クスコレーシングのCVT仕様のヤリス で全日本ラリー選手権JN6クラスに参戦 する水原亜利沙選手も二足のワラジを履く ひとり。全日本ラリー選手権にシリーズ参 戦しながら、ドリフトシリーズのMSCチ ャレンジにクスコレーシングが製作した改 造車のGRヤリスで挑戦している。

TOYOTA GR SPORT PRIUS PHV apr GT
RACE
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例え舗装のターマックラリーでも、林道ステージには危険なワナが隠れている。日陰に生えるコ ケや草木に隠れた側溝などに加え、雨が降ればコースを横断する川がいきなり出現し、前走者 の走行でグレーチングが外れてしまうこともある。いくらレッキで確認しても、本当の路面状況 はその場に行かないと分からない。これがラリーの難しさだと言えよう。

ハリウッド映画の影響でドリフトに興味 を持ち、S13シルビアを購入して走行会や

ドリフトコンテストに参加していた水原選 手。クスコレーシングのスタッフと知り合 ったことをきっかけに、2018年のTOYO

TA GAZOO Racingラリーチャレンジで ラリーデビューを果たした。

「WRCの動画を見ていて、ラリーでドラ イビングテクニックを磨いたら、ドリフト

にもフィードバックできるんじゃないかと 思って挑戦しました」と水原選手。とはいえ 「ドリフトしか経験がないので、速く走るこ との基本が分からなかったし、ペースノー トも初心者でした。準備してから挑んだつ

もりでしたが、林道でのレ ーシングスピードが想像で きなくて、最初はボロボロ の状態でした」とデビュー 戦の印象を語ってくれた。

水原選手は、TGRラリー チャレンジを経て2019年 から全日本ラリー選手権に

参戦。「最初は林道ステージを走ることが 怖かったんですけど、これまでたくさんの 経験を重ねたことで、何が危ないのかがだ んだん分かってきました」と語るように、

2020年の第3戦佐賀ではJN6クラスを制 して、ラリードライバーとしてのスキルを 着実に上げている。

「ドリフトのおかげでクルマが滑ることに 抵抗はありませんでした。グラベルではリ アがスライドした時にアクセルを緩める と、コースアウトに繋がる可能性もあるの でアクセルを踏むんですが、そういう対応 をできるようになったのは、ドリフトの経 験が活きているなと感じる部分ですね」。 崖下に落ちるワケじゃないから ハイスピードでも怖くない!?

その一方で「ドリフトでは後輪駆動に乗 ってきたので、ラリーで前輪駆動車に乗っ た時は苦労しました。カウンターステアを 当てる量が多すぎたり、当てている時間が 長すぎたので、いわゆる“手アンダー”状 態になってました。自分の理想はゼロに近 いカウンターステアなんですけど、やっぱ り駆動方式を理解して、アタマを切り替え ないといけないなと感じました」と語る。 そして水原選手は、ラリーの経験がドリ フトに活きていることがあるという。 「今までドリフトではハイスピードから振 り出すコーナーが怖かったし、コースアウ トしたらクルマを壊しちゃうと思ってビク ビクしてたんですが『コースアウトしても 崖下に転落するわけじゃないからいいか』 と思えるようになり(笑)、思いっ切り走れ るようになりました」と成長(!?)を語る。 「JN6クラスのクルマは市販車に近いの

MSCチャレンジ エキスパートクラス/ JAF全日本ラリー選手権JN6クラス

水原亜利沙選手

ドリフトの世界に飛び込んでシルビア で経験を積んできた水原亜利沙選手。全 日本ラリーJN6にCVT仕様のヤリス、 MSCチャレンジには改造車のGRヤリ スで挑戦する機会をクスコレーシング から得て奮闘中だ。

ラリーでしっかり腕を磨いて カッコよくドリフトしたい CUSCO
DUNLOP CUSCO YARIS[MXPA10ヤリス] DRIFT RALLY
RACING GRヤリス
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RALLY RACE

結婚の学校フィールドモータースポーツ

結婚の学校・サムライスピードトヨタ86[ZN6 86]

FIAフォーミュラ4地方選手権(FIA-F4)/ JAF全日本ラリー選手権オープンクラス

佐藤セルゲイビッチ選手

スーパーFJからステップアップしてFIA -F4インディペンデントカップを戦う佐藤 セルゲイビッチ選手。シビアなバトルが要 求されるFIA-F4と同時進行で全日本ラ リーに挑むというプログラムを進行中。

で、限界を探りながら、ムダをなくして丁 寧に走ることを心がけています。逆にドリ フトのGRヤリスはすごくパワーがあるの で、自分の技量が上がればもっとすごい走

りができようになると思っています。ラリ ーで腕を磨いて、ラリーで磨いた技術でカ ッコよくドリフトをキメたいと思っている んです」と水原選手。

「ラリーのおかげでハイパワーのドリフト 車に乗れるようになったし、ドリフトのお かげでラリーで完走できている。二つのカ テゴリーに挑むことができたおかげで、大 きくスキルアップできています」と語る水 原選手の今後の活躍に期待だ。

ずっと考えながら走るラリー その“集中力”には得るものが

そして、2021年の全日本ラリー選手権に は、もうひとりユニークな経歴を持つドラ イバーがラリーデビューを果たしていた。

佐藤セルゲイビッチ選手。2014〜2015 年はスーパーFJ、2016年はJAF-F4を戦 い、2017年からはFIA-F4のインディペン デントカップにシリーズ参戦するレーシン グドライバーで、2021年はFIA-F4に参戦 する傍ら、JAF中四国ラリー選手権第3戦 からラリー活動を開始した。そして全日本 ラリー選手権には第10戦でオープンクラ スに参戦、続く第4戦愛媛にも参戦した。 これまでフォーミュラ一筋でやってきたド ライバーが、なぜラリーに挑むことになっ たのだろうか。

その理由について佐藤選手は「岡山国際サ ーキットの裏とか、サーキットにアクセス する途中の道にワインディングがあります よね。レースの移動中に、こういうところ

で攻めることができたら楽 しそうだなぁ……という気 持ちを抱くようになって、 それでラリーを始めたんで す。冗談かと思うでしょう けど、割と本当の思いなん です」とのこと。

実際にラリーをやってみ た感想としては「レースは

ストレートとかで休める時間があります が、ラリーはずっと考えながら走るので、 正直、疲れますよね」と語る。

佐藤選手はすでにラリーから得られたも のもあるようで「それは“集中力”です。ラ リーの林道ステージは、道幅が狭い上にず っと休めないので、圧倒的にラリーの方が 集中力が必要なんです。サーキットレース の競争では、いわゆる“ゾーン”に入らな ければならないんですけど、ラリーをやり 始めたおかげで、スタート直後の1コーナ ーも今まで以上に集中できるようになりま した。実際、ラリーに出た直後のもてぎ大 会では、スタートで4台ぐらいオーバーテ イクできたんですけど、それはラリーのお かげだと思っています。そして、路面コン ディションが悪かったり、ちょっとグラベ ルにタイヤを落としたぐらいでは焦らなく なりました(笑)」と相乗効果を挙げる。

ラリーの有視界走行に役立つ FIA-F4で得た危機察知能力

「FIA-F4をやっていて、ラリーに活かせ たなと思うこともあって、それは“危機察 知能力”なんです。FIA-F4は30台以上の マシンが前後左右に数センチの幅で並びな がらレースをしているので、接触を回避す

る能力が磨かれていくんです。自分はこう いう、層が厚いというか、シビアな競い合 いができるレースが好きなんですよね。そ れがラリーにおける路面状況の把握に役立 っていて、岐阜も愛媛もレグ2は雨でした が、コケの上を走っても飛び出すことはあ りませんでした。レースではペースノート がないので、目視の情報を頼りに走ります が、ラリーでも危険な場所を避けて走るこ とができたので、それが完走につながって いると感じています」と語る。

同じシーズン中にフォーミュラレースと ナンバー付きのラリー競技を掛け持ちする 状況は、かなり特殊な経験と言えるが、 「マシンとシチュエーションが違いすぎる ので、自然と切り替えられています。で も、やっぱりスケジュール。2022年はFI A-F4と全日本ラリー選手権の両方にフル 参戦する予定ですが、さすがにスケジュー ル調整が厳しいですね。年間15週のレー スになりますから(笑)」と佐藤選手は語る。 それでも「チャレンジできる環境がある し、両シリーズに参戦することで自分がも っと進化できると感じています」と語る。 業界でもあまり例を見ない挑戦だけに、ど のような相乗効果が得られるのかは興味深 い。佐藤選手の来季の活躍には注目だ。

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シビアなFIA-F4にも活かせる ラリーで学んだ“集中力”
ワケラリーに挑む アナタが
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モータースポーツ活性化を目指す飽くなき取り組み国際格式大会の中止が相次ぎ、カーボンニュートラルへの新型コロナウイルス感染症の影響により 対応が進む欧米の現状を突き付けられた

日本の自動車業界そしてモータースポーツ界でも 活性化につながる新たなあらゆる取り組みがスタートしている。既存事業の持続可能性が再検討されており、 ここでは、

モータースポーツ振興につながる活動を振り返る。日本のプレゼンスを高める取り組みや、

年に行われた自動車業界の将来を見据えつつ

フォト/石原康、宇留野潤、遠藤樹弥、小竹充、廣本泉、 吉見幸夫、トヨタ自動車、マツダ、GTアソシエイション、 JAFスポーツ編集部

レポート/はた☆なおゆき、廣本泉、水谷一夫、 JAFスポーツ編集部

2021

2021

明 日 へ の挑戦

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リー・ジャパンは、2021年のFIA世界ラリ ー選手権(WRC)第12戦として11月11日 〜14日に開催が予定されていたが、新型 コロナウイルス感染症等の影響により、再び開催を断 念することになった。

日本のラリーファンにとっては二年連続の悲しいニ ュースとなったが、WRC日本ラウンドが開催される予 定だった日程で「セントラルラリー愛知・岐阜」が開催 されることになり、オーガナイザーや関係者はすでに 2022年開催に向けて準備を進めていた。

このセントラルラリー愛知・岐阜は、WRC日本ラウ ンドの舞台となる愛知と岐阜を走る国際格式のラリー

で、2019年にはFIAキャンディデートの意味も含めて 初めて開催された。前回はエントリーした顔ぶれも全 日本ラリー選手権を戦う選手が多かったが、WRCで活 躍する勝田貴元選手がヤリスWRCを走らせて優勝。

閉鎖した日本の公道を駆け抜けたWRカーの迫力に多 くのファンが魅了されたことは記憶に新しいだろう。

2022年大会の概要説明も

二年ぶりに開催された「セントラルラリー愛知・岐 阜2021」。この大会はWRC日本ラウンドのプロモー ションを兼ねており、レグ1が行われる11月13日に は、スタート前に「フォーラムエイト・ラリージャパ ン2022開催概要発表」を実施した。この会には自由 民主党モータースポーツ振興議員連盟の古屋圭司会 長、愛知県の大村秀章知事、岐阜県の古田肇知事のほ

か、開催エリアの自治体関係者も参加。冠スポンサー である株式会社フォーラムエイトの伊藤裕二代表を始 め、株式会社サンズの鈴木賢志代表、GAZOO Racing カンパニーの佐藤恒治プレジデントらも出席した。発 表会の後には各氏がスタートフラッグを担当するな ど、来季開催に向けた高い支援ムードが感じられた。 この大会はWRC日本ラウンドと同様のエリアを走 る設定を採用し、来季の“本番”と同様に、愛知県豊 田市の豊田スタジアムにサービスパークが設置され た。スペシャルステージ(SS)に関しても、岡崎城前に 設置されたギャラリーステージ「Okazaki City」を筆頭 に、レグ1は「Nukata Forest」や「Lake Mikawako」、 「Shinshiro」が愛知県域、レグ2は「Ena City」や「Asa hi Kougen」、「Inabu Dam」は岐阜県域を使用して合 計7ステージを用意していた。

メイン会場の変更に伴う確認

今大会の大会組織委員会、高桑春雄組織委員長によ れば、「2019年の大会は、ヘッドクオーターとサービ スパークを愛知県長久手市の愛・地球博記念公園(モ リコロパーク)に置きました。その後、メイン会場が 豊田スタジアムに変更されたので、今大会では各SS と無線で交信できるのかといった確認をしたかったん です。前回とはセーフティプランやステージ、ルート も異なるので、マーシャルカーやコースマーシャルの 配置などに関する実践テストといった要素が最大の目 的でした」と語る。

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地元の期待を受けセントラルラリー愛知・岐阜を再び開催
国際大会誘致

そして「今回は開催日数も短いので、1本のステージ 距離を最長で20km程度に抑えていますが、ステージ 自体は今回の8割程度が、実際に使用されるルートを 想定したものとなっています」と付け加えた。

また、今大会はサービスパークおよび岡崎城前の Okazaki Cityに観客を動員していたが、これについて も高桑氏は、「6月に群馬で全日本ラリー選手権を主催 したときには抗原検査を行いましたが、今回は各自治 体と調整して、関係者の検温と手指消毒、問診票の提 出を行った上でサービスパークを有観客とし、観客の 誘導方法や出展エリアの状況などを確認しました」と のことで、競技以外の要素に関する運営方法の確認も しっかり行われていたようだ。

また、高桑氏は「我々としても、“中止だから1年待と う”という雰囲気ではなかったですし、2021年のラリ

ージャパン開催に向けて90%以上の準備ができていま した。各自治体では開催気運がかなり高まっていたこ とを考えると、2年続けて中止にしたくはなかったんで す。地元の皆さんの気持ちを繋ぎ留めるためにも、イ ベントを開催したいと考えていました」とも語る。

ラリー特有のトラブル対応

このように様々な目的のもとで開催された今大会に は合計61台が参加。FIAおよびASN公認車両、JAF 国内競技車両規則に従ったR、RJ、RPN、AE車両を 対象にした「カテゴリー1」には36台、カテゴリー1の 車両およびJAF国内競技車両規則に従ったRF車両、 アルペンクラッシックカーラリーの車両規則に従った 車両を対象にした「カテゴリー2」に25台という内訳と なっていた。ラリーウィークは晴天に恵まれ、ラリー 自体も各クラスでシビアな争いが展開され、競技進行 もスムーズだった。

二度目のセントラルラリー愛知・岐阜 地元や中央からのサポートも強固に

豊田スタジアムではWRC日本ラウンドの概要発表が行われ、国会議員や開催地域の地方自治体 の首長らが駆け付けて、2022年の成功を誓った。

愛知県の大村秀章知事や岐阜県の古田肇知事 を始めとした支援者たちがセレモニアルス タートに立ち会い2日間のラリーが始まった。

岡崎城を望む乙川(おとがわ)河川敷にギャラ リーステージが設定され、市民観戦エリアと川 向うには一般観戦エリアが設けられた。

豊田市の旭高原元気村は敷地の一部がスペ シャルステージに使用され、ラリーのフィニッ シュ後にポディウムセレモニーも行われた。

恵那市ではルート上の3箇所でリエゾン観戦ス ポットが設定され、重要伝統的建造物群保存地 区として有名な岩村町本通りもその対象に。

しかし、SS1のNukata Forest short1ではクラッ シュが生じたり、SS3のOkazaki

City1へ向かうロー

ドセクションが渋滞したことから、レグ1のセカンド ループのスケジュールが約30分遅延する事態も発生 した。その影響によりSS7のShinshiroが夜間走行と なってしまうことから、安全上の理由で同ステージを キャンセルするといったハプニングも起きていた。

それらを踏まえた上で、高桑氏は「全体的にリタイ アも少なく、2日間ともスムーズに進行できたと思いま す。SS1のクラッシュにも、セーフティプラン通りの 対応ができました」と手応えを語る。

その一方で、この時期特有の課題も浮き彫りになっ たそうで「一番はロードセクションのルート設定です。 この季節は日照時間が限られますし、WRCに必要な 300kmを確保するために、もう一度ルートを練り直 す必要がありそうです。また、ナイトステージも検討 していますが、FIAとしては“3日間をかけて明るいう ちに距離を取って欲しい”といった意向もあるようで す。それを実現するには、早朝にスタートする必要が

豊田市では主要ランドマークをライトアップ する試みを実施しており、サービスパークの豊 田スタジアムも紫色に彩られていた。

本大会の競技長は前回に続き安東貞敏氏が務 め、写真の高桑春雄氏は大会組織委員長として セントラルラリーの準備・運営に尽力した。

あるのですが、この時期なので、朝が早いと山間部で は路面凍結の心配もあるんですよね」と語ってくれた。

「今回のOkazaki Cityは観客の対応を自治体の皆さ んにお任せしましたが、ギャラリーの対応には自治体 やボランティアによる、より多くの協力が必要になっ てきます。そういった面も課題ですね」と付け加える。

開催エリアの11月という時期は紅葉シーズンに当 たるため主要道路の行楽渋滞が予想される。日本の冬 季には積雪や路面凍結といったリスクもあるだけに、

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ラリールートおよびアイテナリーのさらなるブラッシ ュアップが必要となるだろう。そして、コロナ禍が落 ち着いて、有観客での開催が前提となれば、来季の大 会には、かなり多くの観客が詰めかけることになる。

このように、順調な競技運営に手応えを感じる一方 で、克服すべき課題も見つかったが、今大会を現地で 見た限り、ギャラリーステージやロードセクションに は数多くの観客が姿を見せていたことから、地元にお ける期待度の高さを強く伺えた。

WRCを受け入れる地元の皆さんもWRC日本ラウン ドの開催を心待ちにしているようで、Lake Mikawako Shortが自宅の前に設定された一部の住人からは「家 の前で世界的なイベントが開催されるのは光栄です。2 年連続で中止となったのは残念ですが、2022年は世界 中からトップチームが来てほしい。迫力ある走りを見 たいですね」という言葉を聞くことができた。

豊田市がWRCの運営主体に

地元住民だけではなく、自治体の気運も高く、メイ ン会場となった豊田市はWRC日本ラウンド開催に対 して熱い意気込みを持つ。トヨタ自動車の本拠地とな る豊田市では、以前からTOYOTA GAZOO Racing ラリーチャレンジの1戦が行われており、今大会の前 週に行われた特別戦には、地元の商工会が参戦する試 みもあった。

今大会には豊田市の太田稔彦市長も来場。一連の活 動に対してこう語ってくれた。

「豊田市は“クルマの街”で、クルマ好きの方々が多 いですからね、それにラリーの競技車両は量産車をベ ースに作られていて、製品が向上していく競技でもあ ることから、豊田市としては産業政策を後押しすると いう意味も大きいと考えております。また、豊田市は 7割が森林ですが、ラリーの醍醐味は林道を走るとこ ろにあると思いますので、そういう意味でも豊田市は ラリーに向いていると思います。豊田市の山間部には 日本の原風景が残っていますが、人口減少が著しく、 せっかくの美しい景色を維持することが難しくなって

豊田消防署と連携した救急訓練をセントラルラリーで実施

ラリーウィークの金曜には、愛知県の豊田消防署と連携したJAF主催のラリー救急活動訓練が実施され た。会場となった豊田スタジアムには救助・救護機器が並び、実際の競技車両をドナーとして関係者ら が救出訓練に取り組んだ。

きています。WRCが開催されれば、日本の原風景を国 内だけでなく世界に伝えることができますよね。そう いったきっかけにもなると考えています」。

「豊田市では毎年7月に“豊田おいでんまつり”という お祭りを開催していますが、地元の方々のご理解がい ただけないと開催できません。それと同じようにWRC も地元の皆さんのご理解がいただけないと開催できま せんので、皆さんと協力しながら前進したいですね。

開催エリアは日本を象徴するような場所だと考えてい ますので、豊田市がメイン会場になった以上は、盛り 上げていきたいと考えております」。

そして11月26日には、豊田市が令和4年度から令 和7年度にWRC日本ラウンドを行うための補正予算 案を提出することを明らかにした。

事項は世界ラリー選手権開催負担事業、限度額は 12億8700万円で、発表によれば「ラリーをまちづく りにいかすために世界ラリー選手権の継続的な開催が 必要と考えており、開催を継続するには本市が運営主 体となり、経費の一部の支払いを約束する必要がある ため債務負担行為として補正予算案を提出する」との ことで、官民一体でWRC開催に取り組む。

このように、3年越しのWRC日本ラウンド開催に向け て準備が進み、周囲の期待も高まっているだけに、2022 年の大会こそは無事開催されることを願うばかりだ。

豊田市がWRC日本ラウンドの 運営主体となることを表明

11月26日、豊田市は2022~2025年度の WRC日本ラウンドに対して運営主体と なって開催準備をするために、市議会定例 会に補正予算案を提出。市議会での予算案 の審議を経て、JAFに対してWRC開催申請 を行うなどの手続きを開始する予定であ ることを明らかにした。豊田市では「豊田 市山村地域の持続的発展及び都市と山村 の共生に関する条例(案)」の理念と目的の 実現のためにラリーを活用する方針も明 らかにしており、そのためにはWRCの継続 的な開催が必要で、運営主体となってラ リーをまちづくりに活かすことを効果とし て挙げている。

1 テーマ 国際大会誘致
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ーパーフォーミュラやスーパーGTではカ ーボンニュートラルへの取り組みが進めら れているが、それらの試みに先駆けて、 2021年のスーパー耐久シリーズでは、脱・化石燃料 を果たした次世代モータースポーツ車両として、トヨ タ自動車が「カローラH2コンセプト」を投入していた。

この車両は文字通り、「水素エンジン」を搭載した世 界に類を見ないレーシングカーで、5月のスーパー耐久 シリーズ開幕戦・富士24時間レースに新設「ST-Qク ラス」でデビューした。オペレーションはトヨタ自動車 の豊田章男社長がオーナーを務めるプライベートチー ム「ROOKIE Racing」が担当。ドライバーは井口卓人

選手や佐々木雅弘選手、モリゾウ選手、松井孝允選 手、石浦宏明選手、小林可夢偉選手ら豪華メンバーが そろっていた。

水素を使ったクルマといえばトヨタMIRAIのよう に、水素を燃料に発電して、その電気エネルギーでモ ーターを駆動させるFCV(燃料電池車)が主流となっ ているが、このカローラH2コンセプトは水素を燃料 とした内燃機関エンジンを搭載している。

ベースはGRヤリスに搭載されている1600ccの3 気筒ターボエンジンで、燃料供給システムとインジェ クション、スパークプラグの変更で気体燃料である水 素に対応。競技車両の燃料タンクは、MIRAIで採用さ

れる水素タンクを2本搭載しているほか、小型のタン クも2本搭載されていた。

GRヤリスのエンジンを使用した理由についてGA ZOO Racingカンパニーの佐藤恒治プレジデントは 「水素はガソリンより燃焼速度が7倍も早いので、燃 焼室が高温、高圧になります。そのため熱に対するマ ネジメントが重要になってきますが、GRヤリスのエ ンジンはモータースポーツユースを前提としています ので、高負荷にも耐えられますし、直噴の技術を生か すこともできたんです」と説明する。

カローラスポーツをベース車両に選んだ理由は「水 素ボンベを搭載するために、ある程度のスペースが必 要でしたし、水素エンジンを普及させるために認知度 の高い車種で参戦したかったんです」とも語る。

スーパー耐久におけるカローラH2コンセプトの参 戦クラスは、スーパー耐久機構(STO)が参加を認め たメーカー開発車両または各クラスに該当しない車両 を対象とした新設の「ST-Qクラス」で、ドライバーの ひとりである小林選手は「言われなければ水素エンジ ンだとは分からない」と印象を語る。実際、他のガソ リンエンジン搭載車と同様に迫力満点のエキゾースト ノートを響かせていたが、マフラーから排出されてい たのは水蒸気で、ピットで排ガス臭がなかったことも 特筆すべきポイントだ。

2021 EV
2 テーマ
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代替燃料の実験
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ROOKIE Racingが持ち込んだ“水素カローラ”の劇的な進化

代替燃料の実験

スーパー耐久第3戦の富士24 時間レースから“水素カローラ” をオペレーションするROOKIE. Racingのメンバー、そしてプロ ジェクトに協業する関係者。モ リゾウ選手も自ら参戦してマシ ンとシステムの熟成に関わる。

スピード不足と給水素の課題

気になるパフォーマンスについては、多くの課題が 残されている。デビュー戦の富士では電気系や足回り にトラブルが発生しながら24時間レースを完走した ものの、ラップタイムは2分04秒059で、ST-5クラ スのロードスターに近いものだった。

GRの佐藤プレジデントによれば「水素エンジンで もガソリンエンジンと同じような出力を出せますが、 今回はテスト参戦ということでパワーを抑えていま す。また、水素の供給システムで約200kgも重くな っているんですよね」とのことだが、ST-2クラスの GRヤリスが1分56秒台で走行していたことを考え ると、スピード不足は否めなかった。

燃費性能においてもカローラH2コンセプトが連続 で走行できる時間は30分に満たず、11周から13周お きに水素充填が必要とされた。排気量や搭載する燃料 タンクの容量にもよるが、他のガソリン車が1スティ ントで60分から90分の走行ができることを考える と苦しい状況だと言えよう。

加えて、この水素充填はピットインでのドライバー交 代とタイヤ交換を終えた後に岩谷産業の移動式水素ス

テーションで行われたが、1回の給水素に要

する時間は約5分ということで、水素の充填 システムの改良も大きな課題となっていた。

富士大会のカローラH2コンセプトは、 レースマシンとしてはまだまだ熟成が必要 な段階にあった。しかし、8月の第4戦オ ートポリス大会で見せた車両の進化は著し いものだった。

改良点は、まず水素の異常燃焼を抑えつ つ安定性を高め、エンジン燃焼の改善を行 ったことが最大のポイントで、これにより 出力およびトルクが向上。具体的には約 15%のトルクアップを実現したそうで、 加速性能においても9%の向上を達成して いたという。

車体についても足回りなどの細部を見直 すことで約40kgの軽量化を実現し、ドラ

イバビリティも向上しているそうだ。 一方、インフラ面においては水素充填の流速速度を 上げることで充填時間の短縮を果たしており、約40% の向上を実現。この結果、ノズルの接続から抜くまでの 作業時間が約3分に短縮されるなど、給水素においても 大幅な進化が見て取れた。

大会を追う毎に着実に進化

このようにデビュー戦からわずか9週間のインター バルで様々な進化を遂げた車両について、ドライバー のひとり、佐々木選手は「エンジンがパワーアップし ていて、ST-5クラスのロードスターより速いタイム が出せるようになりました」と語る。

事実、予選タイムは2分09秒992を計測してお り、ST5クラスのロードスター456号車が計測したト ップタイム、2分12秒217をはるかに凌駕した。ST-4 クラスの86の310号車がマークしたクラスベスト、2

第3戦富士スピードウェイ

鹿サーキットの5時間レース、第6戦岡山国際サーキットの3時間2レース制を駆け抜けた

カローラH2コンセプト。出力性能の向上や給水素時間の短縮など劇的な進化を遂げた。

2 テーマ
第3戦富士スピードウェイの24時間レース、第4戦オートポリスの5時間レース、第5戦鈴 第5戦鈴鹿サーキット 第4戦オートポリス
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第6戦岡山国際サーキット

11月13日、川崎重工業とSUBARU、トヨタ自動車、 マツダ、ヤマハ発動機の5社による、カーボンニュー トラル実現に向けた内燃機関を活用した“燃料の選 択肢”を広げる挑戦に関する共同声明を発表した。 その内容はカーボンニュートラル燃料を活用した レース参戦と二輪車などでの水素エンジン活用の 検討、水素エンジンでのレース参戦継続という三本 柱で、電動化の取り組みに加えて、消費者により多 くの選択肢を提供するプロジェクトとなっている。

分06秒574に迫るほどの進化ぶりを見せていた。

「前回の富士はガソリンエンジン搭載車に対して8割 の出力でしたが、今回は9割まで伸ばすことができま した。次で並びたいし、最終戦では燃費を犠牲にする

ことなく、ガソリンエンジン搭載車を出力で超えたい と思います」と語るのはエンジン開発を担うTOYO

TA GAZOO Racingの山崎大地氏。その言葉通り、9 月中旬開催の第5戦鈴鹿大会では、エンジン出力をガ ソリン車と同等レベルまで向上させたほか、車両の両 側から水素を充填できるよう改良したことで、水素充 填時間は2分にまで短縮された。

そして11月に最終戦として開催された第6戦岡山 大会でも進化を重ねており、第5戦鈴鹿大会における スペックと比較して、出力およびトルクが5%から 10%向上。これによりガソリンエンジン以上のパフ ォーマンスを実現したほか、燃費水準に関しても、デ ビュー戦の富士と比較して約20%向上するという大

幅な進化を遂げることになった。

もちろん、カローラH2コンセプトはまだまだ発展 途上にある状態だが、その分、将来への可能性も高

GAZOO Racingは水素エンジ

ン搭載のカローラH2コンセプトに加えて、2022年の スーパー耐久シリーズにはバイオマスを由来とした合 成燃料を使用する新型GR86をベースにした「GR86 CNFコンセプト」をST-Qクラスに投入することを表 明。電動化だけではない次世代レーシングマシン開発 のプロセスを目の前で示す機会となっているだけに、 文字通り、今後の進化に注目したい。

スーパー耐久レースでは、これまで大会毎に進捗状況を明らかにする情報発信が行わ れてきたが、最終戦岡山大会で発表された共同声明は、業界が一丸となって2022年以 降も推進する意思表示となった。

マツダの取り組みもすでに始まっており、ユーグレナ社から提供を受けた100%バイオ 由来のディーゼル燃料を使ったコンセプトモデルのデミオを最終戦岡山大会のST-Q クラスにデビューさせている。

い。さらにTOYOTA
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「つかう・つくる・はこぶ」。 業界を超えた日本の未来への協業

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代替燃料の開発

国内レースが打ち出す持続可能性の検証と代替燃料の開発

本の自動車業界では、2020年に菅義偉前 首相が「2050年カーボンニュートラル」を 所信表明して以来、官民を挙げて脱炭素化 が推し進められている。その動きに協調する形で、国 内モータースポーツでも「カーボンニュートラル」に対 する取り組みが進められており、2021年には国内の レースシリーズを運営する組織が、相次いて脱炭素に 向けた独自のプランを発表した。

中でも注目を集めたのは、スーパーフォーミュラを 運営する日本レースプロモーション(JRP)が打ち出 した「SUPER FORMULA NEXT50(ネクストゴー)」

だと言えるだろう。

日本のトップフォーミュラは、全日本F2000選手 権が始まった1973年から数えると、2022年に50年 目を迎える。その節目に向けてJRPは、サスティナ ブルなモータースポーツ業界作りを目的としたプロジ

ェクトとなる「SF NEXT50」をスタートさせた。

JRP中嶋悟会長によれば、「SF NEXT50は、私た ちが愛するモータースポーツを未来の子供たちの憧れ として残していくためのチャレンジです。積極的に新 しい声やアイデアに耳を傾けて、様々な分野で改革し ていきたいと思います」とのこと。

これまでグローバルで活躍する日本人のトップドラ イバーを数多く輩出しており、海外からも多くの選手 が参加してきたことから、“ドライバーズファースト” をビジョンとして掲げることを表明。「アジアを代表 するスーパーフォーミュラ」を目指していくとしてい るが、SF NEXT50における特筆すべきポイントは、 このプロジェクトを「モビリティとエンターテインメ ントの技術開発の実験場」と位置付けていることだろ う。今後は開発段階の技術を載せたテストカーによる 実証実験を繰り返していくという。

国内トップフォーミュラ50周年となる2022年、持続可 能なモータースポーツ業界作りを目的とした新プロ ジェクト「SUPER.FORMULA.NEXT50(ネクストゴ ―)」がスタートする。

JRP取締役会長の中嶋悟氏と上野禎久氏を始め、GAZ OO.Racing.Companyの佐藤恒治プレジデント、本田技 研工業執行職ブランド・コミュニケーション本部長の渡 辺康治氏が出席。

N E X T 50 〞を提言 スーパー G T
日 3 テーマ
共同発表会には、ゲストとしてレーシングドライバー の山本尚貴選手と小林可夢偉選手が登場。このSF. NEXT50プロジェクトは“ドライバーズファースト” もコンセプトに掲げている。

新燃料の存在が初めて明らかにされた第6戦オートポリス大会の定 例会見では、トヨタ、ホンダ、日産の3メーカーに取り組みへの確認を 行ったことを公表。第7戦もてぎ大会ではその詳細について言及があ り、新たな「カーボンニュートラルフューエル」の開発を打ち出した。

中でも、モビリティ分野におけるポイントが、本田 技研工業とトヨタ自動車をパートナーとして、パワー トレーンやシャシー、タイヤ、素材、燃料などのあら ゆる面でカーボンニュートラルの実験に着手するとい

う点。「eフューエル」や「バイオフューエル」と呼ばれ るカーボンニュートラル燃料を導入し、シャシーには 「バイオコンポジット」と呼ばれる植物由来の天然素材 を導入するなど、それらの実用化に向けて2022年か

らテストを開始していくようだ。

一方、エンターテインメント分野にも施策があり、 デジタルシフトをテーマに映像や音楽、データ、通 信、AI、ゲーム、アニメーションなどについて技術開

発にチャレンジ。日本から世界に発信する新たなモー タースポーツカルチャーを創造するべく、スマートフ ォンに最適化したデジタルプラットフォームからオン ボード映像や様々な車両データ、ドライバー無線音声 の発信などを試みるとしている。

GTAは燃料自体の開発を表明

カーボンニュートラルを含めた様々な改革に乗り出 したスーパーフォーミュラだが、時期を同じくして、 スーパーGTを運営するGTアソシエイション(GTA) は、第6戦オートポリスの定例会見において、カーボ ンニュートラルへの対応について、スーパーGT独自 の新たな施策を明らかにした。

具体的にはトヨタ自動車と本田技研工業、日産自動 車による協力のもと「カーボンニュートラルフューエ ル」の導入に向けてテストを実施するという内容。す でにトヨタとホンダが新燃料を使ったエンジンのベン チテストを行っており、GTAの坂東正明代表によれば 「相応の手応えを得ています」とのことだ。今後は同燃 料による走行テストやサプライヤー選定の後、2023 年シーズンからの導入を目指しているという。

また、この燃料はGT500クラスのマシンだけでな く、GT300クラス車両でも利用できる環境を整える

ため、FIA GT3車両を製造する海外の自動車メーカー

に対して燃料成分などの情報を通知するとしている。 「eフューエルやバイオ燃料など、様々な言われ方を していますが、我々としては“カーボンニュートラル フューエル”という名称で合意しました。基本的には 生産過程における二酸化炭素の発生に着目していて、 従来のガソリンにエタノールを10%加えたようなも のではなく、バイオエタノール10%以外の部分で化 石燃料は使わない、つまり、元々のガソリンの部分を 違うもので作るということです。こういう“とんでも ないこと”を、この島国ニッポンのモータースポーツ でやろうとしているのです。スペックはJIS規格に近 づけるべく開発を進めています。音や匂いをなくすこ となく、やれることをやる。その中で二酸化炭素をで きるだけ出さないようにしていきます」とは坂東代表。 欧米の自動車業界で進むカーボンニュートラル対 応。FIAフォーミュラ1世界選手権(F1)でも代替燃料 の導入が対策として打ち出され、世界のトレンドにな りつつあるだけに、日本のモータースポーツにおける 早期の実用化に注目が集まっている。

フォーミュラリージョナルは、カーボンニュートラル 実現に向けた挑戦として、天然繊維コンポジット素材 で成形されたボディカウル実装車両を12月の最終戦 鈴鹿で実戦投入した。素材はスイスBcomp社の「amp liTex」を用いて、ボディカウルは童夢が製作した。

新素材で成形された シートシェルの例。

「天然繊維コンポジット素材カウル」 フォーミュラ・リージョナルで導入
「カーボンニュートラルフューエル」開発を GTA坂東正明代表が第7戦もてぎで明らかに
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教育と振興

ジア地域の競技役員を対象とした、JAFモ ータースポーツ部主導による「FIAアジアト レーニングセンター」が2021年9月上旬か ら11月にかけて、オンライン形式で開催された。9月 下旬にはカートレースのレースディレクター編、10月 上旬にはサーキットレースのレースディレクター編、10 月下旬にはメディカル&レスキュー編、12月上旬には 講師育成編というテーマで、複数回に渡って行われた。

ここでは、10月上旬に行われたレースディレクター 編の聴講により、講義内容の一部をレポートする。

今回のFIAアジアトレーニングセンターは、FIA主導 のもと、JAFおよびAAMC(Automobile General As sociation Macau-China)の協業により実現したもの で、AAMCからはエルクラノ・リベイロ副会長、JAF からはJAFモータースポーツ部・村田浩一部長がセミ ナー主催者として出席した。

また、このセミナーの実現に尽力したFIA世界評議 会の副会長を務めたワン・へイピン氏を始め、オブザ ーバーにはFIA世界耐久選手権(WEC)のレースディ レクターを務めたエドワルド・フレイタス氏が招聘さ れた。また、参加者の中にはF1シンガポールGPの副 競技長を務めたジャネット・タン氏も聴講しており、 かなりの豪華メンバーが名を連ねることになった。

日本のJAF特命講師としては、FIAドリフト委員会 で初代委員長を務め、スーパーフォーミュラでレース ディレクターを務める飯田章氏と、同じくあらゆる国 内シリーズで同職に就く宮沢紀夫氏が招聘された。 セミナーの共通言語は英語となり、日本側の通訳は 伊藤ソニア氏が担当。気になるセミナーの参加者は何 と100名を超す盛況となった。コロナ禍によりオンラ イン形式で開催せざるを得なかったが、それがかえっ て参加しやすさにつながったようだ。

アジアで、アジアのための講習を

まずは、FIAアジアトレーニングセンター開設の経緯 を、JAFモータースポーツ部の村田部長に伺った。 「FIAは、スイスのジュネーブで毎年2月にサーキッ トレースのレースディレクターを対象としたセミナー を開催しています。対象は各国のASNが推薦したレ ースディレクターとクラーク・オブ・コース(競技長) ですが、アジア地域は距離的な問題、すなわち渡航費 の関係でどうしても出席率が高くはありませんでし た。そんな事情に鑑みて、FIA世界評議会の副会長を 務めたワン・ヘイピン氏から、『ジュネーブのFIAセ ミナーには、JAFは毎年来ているけど、我々中国はな かなか行けないこともある。他のアジア地域からはほ

JAFと共催したAAMC(Automobile.Gener al.Association.Macau-China)からは、エル クラノ・リベイロ副会長がリモート出席。

AAMCと共同主催したJAFからはJAFモー タースポーツ部の村田浩一部長が出席。設 立に尽力した関係者に謝辞を述べた。

今回のオブザーバーとして、FIA世界耐久選 手権のレースディレクター経験を持つエド ワルド・フェリタス氏が招聘された。

スーパーフォーミュラで同職を務める飯田 章氏と宮沢紀夫氏がJAF特命講師として出 席。日本の事例を丁寧に解説した。

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新設
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世界基準の役務遂行方法を地域単位で共有する新たな試み
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とんど来られない状況なので、できればアジアで、か つアジア地域向けの、FIAと同レベルのセミナーを開き たいですよね? その際にはぜひ協力を……』という 提案がありました。

その後、2020年の夏頃に、マカオのASNからFIAが アジアトレーニングセンターを開設する計画があるか ら、JAFにジョイントして欲しい由の連絡を受けました。 それから毎月のペースでオンラインミーティングを行 い、FIAとAAMCとの三者による打ち合わせを重ね、 約1年間の準備をして開設にこぎ着けました」。

物理的な距離は、時差や言葉の障壁をも生むだけ に、開設に至る苦労が偲ばれる。かくして世界初の 「FIAアジアトレーニングセンター」が無事開設される 運びとなり、カートレースのレースディレクター講座 に続いて、サーキットレースのレースディレクター講

座が10月上旬に東京を拠点として開催された。

レースディレクターの資質

セミナーでは飯田氏と宮沢氏が中心となり、レース

ディレクターの役割と責任について、日本のレース事 情を踏まえて説明された。特に強調されたのは、「レ ースディレクターは、サーキットで行われる全活動の 最高運営者である」ということ。また、具体例を交え

て役割や任務、職務について語られていった。

競技長やスチュワード(審査委員会)との関係につい て語られた後、オブザーバーとして参加した、WECな どでレースディレクターを務める、ポルトガルのエド

ワルド・フレイタス氏に意見を求めていた。

興味深かったのは、宮沢氏の思うところであるレー スディレクターに必要な資質。「ストレスも多い役務 なので、怒りっぽい人には不向きだが、大人しすぎて もダメ。幅広い経験値が必要で、また言語堪能でなく てはならない」というあたりは、そのままビジネスの 世界でも通用しそうである。

さらに、求められる素養として挙げられたのは、口 頭と書面の両方のコミュニケーション能力を備えてい ること、競技規則を誰より理解していること。そし て、対人スキルとスケジュールに対する柔軟性だっ た。この要素については「レースウィークは多忙だか ら、混乱することなくクリアする能力」だとも付け加 えていた。さらに宮沢氏は、レースディレクターがリ ーダーシップを発揮することを強調した上で、「権限 を他者に任せることも重要である」とも述べていた。

その後再びフレイタス氏が登場して、氏が考えるレ ースディレクターに必要な素養を挙げた。それは、「3 点ある。“3P"だ。PRESSURE(忍耐力)、PERSEVER ANCE(しつこさ)、PASSION(情熱)である」とのこと で、さすがウィットに富んでいて、分かりやすいもの だった。セミナーの後半では、主に質疑応答が行わ れ、長時間に渡る講義だったにも関わらず、アジア各 国の参加者からは活発に声が上がっていた。

レスキュー&メディカル編は鈴鹿サーキットから発信 カートレースとサーキットレースのレースディレクター講座に続く「メディカル&レ スキュー講座」は、鈴鹿サーキットのSMSC事務局を拠点にリモート開催された。FIA 国際モータースポーツ競技規則附則H項に準拠した鈴鹿サーキットの救急医療体制 の実例や、F1日本グランプリでの対応をベースとした各種オペレーションの配置や 手順などの実例が惜しみなく紹介され、救出手順などについてはフォーミュラ車両 やGT車両、カートなどタイプ別の詳細解説がなされていた。今後は主流になる可能 性も高い電動車への対応にも言及され、内容の濃い講義が提供されていた。

メディカル&レスキュー講座 のJAF特命講師は、F1日本GP のチーフメディカルオフィ サーを務める瀬戸口芳正氏。

初回の締めとなる言葉として、宮沢氏が「飯田(章) さんが持つ、ドライバーとしての経験をすごく重視し ています」と語った。そして飯田氏は「ドライバー経験 しかなかった自分が、こうやってレースディレクター をやることになって、レースコントロールの難しさに 気付きました。皆さんには頭が下がります。レースデ ィレクションには、ドライバーとして経験したことが 役立つこともありましたし、安全性に対しては先回り しておくことの重要性も分かりました。ペナルティを 受ける気持ちを、自分に置き換えて考えることもあり ました。経験も大事なのですが、学習しようという、 学びの姿勢も重要なんです」と返していた。

新たな試みである同センターが無事開設の運びとな ったことについて、村田部長はこう語る。 「こういう情勢ですから、オンライン形式は有効だっ たと思います。マカオにある常設のカートコースに、 FIAアジアトレーニングセンター専用の施設が設けら れるという話もあります。アジア地域全体のコロナ水 際対策が緩和されたら実技講習を採り入れる可能性も ありますが、このままハイブリッド開催の可能性もあ りますね。このセミナーは、アジアで初めてというよ り、恐らく“アジアが初”であると思います。これが 成功事例として認識されれば、他の地域のトレーニン グセンター設立につながり、ジュネーブに集めるのは 世界選手権レベルで、地域選手権以下はそれぞれのセ ンターで受講するといった棲み分けができる契機にな るかもしれませんね」と今後の展開を予想する。

JAFから記された第一歩。FIAアジアトレーニングセ ンターの開設によって、これまで講義の恩恵に預かれ なかった地域のモータースポーツ運営スキルが向上す ることになれば、より一層、安全で公平なモータース ポーツの運営、そして振興が進むことになるだろう。

主催スキル向上の橋頭保に
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今後の国際格式大会の国内誘致のため 官庁の協力で各種措置の説明会が実現

11月24日にはスポーツ庁協力のもと「2022年における外国籍選手等のモーター スポーツ競技会参加に伴う水際対策強化措置および防疫措置等の代替・特例措置 適用に関する説明会」が行われ、国際格式大会を主催・運営するオーガナイザー などが参加した。

予断を許さない新型感染症の感染拡大

11月21日と12月18日の二度に渡って、JAF主催による「コロナ禍におけるリアル モータースポーツイベントの開催と参加」に係るオンライン講習会が開催され、 AG.MSC北海道の運営により、国内競技会主催・参加時に採るべき防疫対策の実 例などがもたらされた。

ツインリンクもてぎで 実施されたEVカート試 乗会。全日本カート最終 戦でも行われた。 日

本カート選手権の2022年規定が制定さ れ、全日本カート選手権には新たにEV部 門が加わることとなった。それを受けて、 電気モーターで走るカートとはどのようなものかを実 際に多くの人に知ってもらうため、10月にツインリン クもてぎ北ショートコースで開催された地方カート選 手権もてぎシリーズ/もてぎカートレース第6戦で は、「EVカート」のデモランが催された。

このデモランには2台のEVカートが持ち込まれ、 それぞれのカート所有者のチェック走行の後、大会に 参加しているエントラントやメカニック、ゲストらが 搭乗。走らせ方の注意点などを教わってコースイン し、EVカートのドライビングを体験した。

コースインしたEVカートは、かすかなモーターの 音のみを残しながら静かにサーキットを走っていく。 その様子を見ていたギャラリーたちは、「ラジコンみ たいだね」などと感想を漏らしていた。

デモランに持ち込まれたマシンのうち1台はチーム パレットが自作したコンバートEVで、ERK Cup Japanなどのレースに参加している車両だ。フロント ブレーキ付きのトニーカートに72Vのリチウムイオン

バッテリーを搭載。電気自動車用として北米で発売さ れているモーターを使用し、パッケージされたコント ロールユニットが車体前部に備え付けられている。車 両重量は150〜160kg程度とのことだが、モーター をまたぐシートステーの取り回しなどに、マシン造り の苦心が伺えた。 チームパレット代表の田中精彦氏は、「フロントブ レーキは購入したカートに最初から着いていたもので す。マシンが重いのでそのまま付けていますが、なく ても問題なく走れると思います。今まで雨の中でも感 電や漏電の事故が起きたことはありません。ケーブル をしっかりつないでしまえば大丈夫だと考えていま す」と語ってくれた。

もう1台はコンプリート状態でドイツから輸入された もの。EVカート用として開発されたパワーユニットキッ トを、マッハ1のレンタルカート用シャシーに組み込ん だ車両だという。バッテリーは46Vのリチウムイオン で、コントロールユニットはシートの後ろに備え付けら れている。車両の重量は200kg程度。最初から付いて いたというタイヤは、ドイツのBEBA社製だ。 メカニックとして会場に来ていた全日本OKドライ バーの皆木駿輔選手は、チームパレットの72Vをドラ イブ。細かな雨粒が短時間落ちた後のほぼドライコン ディションのコースを、タイヤのスキール音を響かせ ながら駆け抜けた。5周の試乗を終えた皆木選手のベ ストタイムは44秒033。これは同じ日にレースが行 われたYAMAHA SSクラスの約2秒落ち、YAMAHA カデットオープンクラスとほぼ同等のタイムだ。 デモラン中だけでなくパドックでの整備中も、通り かかった人たちが興味深げにマシンをのぞき込む姿が たびたび見られた。EVカートは、2ストロークエンジ ンのカートしか知らなかった人たちの好奇心を強く刺 激していたようだった。

主催・参加時の対策方法を現場から提供
2022 年から始まる EV
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オート テスト 倶楽部

AUTO TEST CLUB 自

動車運転免許証を持っていれば誰で も参加資格を持ち、ヘルメットやグ ローブ等の身体装備は必要なく、ノーマル のマイカーで参加できる気軽さが好評のオ ートテスト。全国各地で開催され、身近な モータースポーツとして定着している。

イギリス発祥のモータースポーツである オートテストが日本に導入されたのは 2015年で、JAFによって同年3月25日に オートテスト開催要項が制定・公示、6月

1日に施行された。モータースポーツ振興 の目的のもとに導入され、万人に楽しんで もらうことを主眼に置いた新しいカテゴリ ーとなっている。

そして7年目を迎える現在、各主催者た ちは試行錯誤しながらも精力的に開催を行 っている。これまでにオートテストオーガ ナイザーガイドラインは2015年6月1日 にver.1が公示され、2016年6月1日に ver.2、2016年11月25日にver.3、2021

オートテスト主催者に向けた オートテスト開催のための講習会を実施!

モータースポーツの楽しさを一般の方々にも広く体感してもらうべく、 その入口となるオートテストが開催されるようになって7年目。 開催におけるさまざまな課題が見えている今、 主催者の意識の統一のために、JAF関西本部とRC NARAによる

「オートテスト開催のための講習会」で、新たな風を吹き込んだ。 フォト/宇留野潤、谷内寿隆、吉見幸夫、JAFスポーツ編集部 レポート/JAFスポーツ編集部

年8月10日にver.4と、4回の変更を経て きた。開催で浮かび上がってきた課題を反 映してきたことで、ガイドラインの内容が より現実的なものになってきたと言える。

だが、実際のオートテスト開催の仔細を 掘り下げていくと、このガイドラインの解 釈の仕方がまちまちで、主催者独自の判断 や工夫に委ねられていると言っても過言で はない。参加者の立場から見れば統一感に 乏しいと感じることだろう。一方で、オー トテストの主催に興味があっても、事前に

どのような準備を行い、何が必要なのかが 分からず、開催を躊躇しているクラブ等も 少なからずいるという。

オートテスト2021 IN アピタ大和郡山 の開催を翌日に控えた12月11日、JAF関 西本部の主催による「オートテスト開催の ための講習会」が行われた。講習会のおお まかな流れは、実際のオートテストで使用 するコースを用いての説明、ガイドライン についての質疑応答という二部構成で、オ ートテストの主催で豊富な経験を持つ、

オートテスト2021.IN.アピタ大和郡山等の会場を使用 して、JAF登録クラブ・団体を対象とした「オートテス ト開催のための講習会」を行った。

実際のオートテスト開催時と同様に、この講習会でもド ライブスルー形式の受付を行い、関係者らに新型コロ ナウイルス感染症対策方法を実地体験させていた。

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JAF登録クラブのモータースポーツクラブ 奈良(RC NARA)の小西俊嗣代表が講習会 のアドバイザーを担う。

この小西氏は、過去にスピード行事部会 の部会長を務め、オートテスト導入時より 規則変更等で尽力してきた御仁だ。参加者 にオートテストをもっと楽しんでもらうた め、そして日本全国で開催できるように と、JAF関西本部と共に発起人となって、 今回、オートテスト開催のための講習会の 実施に至った。

「いくら(ガイドラインを)書面で出して

も、やっぱり統一見解をしっかり共有しな いと」と、主催者が同じ見解を持ってオー トテストを開催できるよう、軌道修正を行 う重要性を説く小西氏。まずは関西地区が 主体となって新たな試みとなる講習会の実 績をつくり、いずれ他7地域にも広がって ほしいという強い願いもあるという。

「もっともっとオートテストを楽しんでも らい、クルマを好きになってモータースポ ーツに興味を持ってもらおうという趣旨 が、今回の講習会の狙いです。そのために はまず主催者側がガイドラインに記された 内容をしっかり把握し、それぞれ意味があ ることを理解し、安全なイベントにしなけ ればなりません」と語る。

今回は大阪の加盟クラブのトランピオ.ス ポーツ.コミュニケーション.大阪や、大阪 レーシングカークラブ、準加盟クラブのア ールアンドアールティーレーシングや、ク ワトロモータリストクラブスポーツ、滋賀 の準加盟クラブのチームスカイが出席。ま たJAF本部をはじめ、滋賀、京都、大阪、 兵庫、奈良、和歌山の各支部も参加した。

スピード競技ターマック部会の川脇一晃委員が競技長 代理となり、受講者にコースの特徴を説明。そのコース レイアウトに対し、審査委員長の円実司氏の指南を踏ま え、より良いコースへと昇華させた。

ガイドラインに沿ったコースづくりを前提 に、そのレイアウトの意図とパイロンの配 置方法、参加者に楽しんでもらうための配 慮、オフィシャルの配置場所をレクチャー。 だが、熟考されてできあがったコースに 見えて、いくつかの懸念点も挙がる。そこ で円実氏が、安全面でコース上の気になる 点を指摘してその場で協議し、オフィシャ ルが改善していくというワークフローを披 露。オートテストは主にクローズド競技と して開催されているケースが多いが、この ような観点から高位のオフィシャルライセ ンスを持った審査委員長を置く必要性があ る、ということが垣間見えた。

ミスコースが起きやすいオートテストでは、視認性を高 めるためにパイロンを色分けする配慮も。青パイロンは 右側から通過、黄パイロンは左側から通過とした。他 にもパイロンに矢印を添付する方法も有効だという。

2015年に導入されたオートテストをいち早くアクセス の良い市街地で開催したRC.NARAの小西代表。「日常 では味わえないスタート時のドキドキ感、ゴールした時 の達成感がオートテストの楽しさです」と、魅力を語る。

実技講習では競技長代理として川脇一晃 氏、審査委員長の円実司氏を招聘し、会場 となるアピタ大和郡山店駐車場を歩きなが ら、翌日のオートテストで使用するコース レイアウトについて詳細に説明を行った。

オートテストのキモとなるガレージ。 当初は幅最低3.5mの表記だったが、 2021年のver.4のガイドラインで幅 3.0m目安に改訂。幅の拡大によって 進入時の車速が乗りやすくなること から、危険防止が理由だ。

コース上のラインはテープ類を使用す るのではなく、チョークを引いて表示 させるのがベター。車両がテープの上 を走行した際に剥がれてしまい、ドラ イブシャフトやホイール等に絡みつい た事例があるとのことだ。

コースチェックが終わったら実走。オ フィシャルの立ち位置等を確認して いく。とくにラインまたぎはホイール ハブがラインを越えたかどうか、両サ イドから見られるようにオフィシャ ルを配置する必要がある。

熱心にメモを取りながら講習会を受 講している参加者の皆さん。コース図 とガイドラインを照らし合わせなが ら、コースレイアウトが意図するとこ ろを探った。この実地講習を糧に、新 たなオートテスト主催を期待したい。

チームスカイの井口芳博氏は滋賀で 開催したオートテストで起きた失敗 談を発表。自動ブレーキ搭載車両はス タートの旗を障害物と認知してス タートが切れなかったという事例を、 講習会参加者らと情報共有した。

その円実氏は「コース設定や安全に対す る懸念が生まれたら遠慮なく申し入れて、 コース委員長や競技長と打ち合わせしなが ら安全に、トラブルが起きないよう進めて ください。いったん決まったコースだから ……ということで諦めるのではなく、柔軟 性を持って打ち合わせに臨んでいただきた ジムカーナをはじめとする舗装路面を 使用する競技に共通して言えること だが、できるだけコースはキレイな状 態に保っておく。朝イチと昼休みのタ イミングでコース上の砂利を掃いて、 スリップを防ぐ処理をした。

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いと思います」と講習会参加者に向けてア ドバイスを送った。

続いて場所をやまと郡山城ホールに移し て行われた座学講習は、映像を用いたオー トテストの1日の流れや、ガイドラインの おさらい、また女性のモータースポーツ参 画を推進するJAFウィメン・イン・モー タースポーツ作業部会とオートテストのコ ラボレーション企画の紹介となった。 「状況に応じてガイドラインは適宜変更し ていきます」と柔軟性を示したJAFモータ

ースポーツ部スピード競技担当の近藤博嗣 氏。ガイドラインに記載された文書の意味 を言葉で明確化し、要点となる箇所をわか りやすく説明した。

またオートテストの参加者にとってなじ みのない、JAF登録クラブ・団体への問い 合わせは敷居が高いことも挙げ、「開催地 のJAF支部と連携して参加者を募る方法

もあります。JAFのホームページで開催に 関する広報活動も可能です」と、オートテ

オートテストの発展に強い意気込みを寄せるJAFモー タースポーツ部の近藤博嗣氏。ガイドラインの説明に も熱が入る。

ストならではのJAFとの協力体制の在り 方を示した。

女性のモータースポーツ参加促進を図る JAFウィメン・イン・モータースポーツ作 業部会の飯田裕子座長からは「オートテス トは我々の活動の方向性と一致していて非 常に有意義なイベントです。女性参加割引 実施のための費用補助等のサポートも積極 的に行っております」と共催や協賛による モータースポーツの底辺の拡大について相 乗効果を壇上で訴えた。

JAFウィメン・イン・モータースポーツ作業部会の飯田 裕子座長は、オートテストとのコラボレーション企画で 積極的に活動を行っている。

半日にわたる講習会を終えた小西氏に改 めて話をうかがうと、「まずはジムカーナ やダートトライアル等の主催に携わるクラ ブ・団体の皆さんは頭の中を真っさらにし て、新たな思考でオートテスト主催に臨ん でほしいと思います。そして一度、他主催 のオートテストの会場に行ってもらい、こ うしなければいけないという気づきにつな げていただければ幸いです。それが後の開 催時に必ず役立つと思います」とJAF登録 クラブ・団体に向けてエールを送った。

絶賛コラボ中!! AUTO TEST × JAF WOMEN IN MOTORSPORT

2021年JAFオートテストチャレンジ in 岩手・一関 開催日:2021年11月3日(水) 女性参加者数:4名 開催地:一関市総合体育館・ユードーム(岩手県一関市)

2021年、全国4か所で開催され るオートテストとJAF.WOMEN.IN. MOTORSPORTの第一弾のコラボ レーションが、一関市総合体育館・ ユードームで行われた。スーパーに 隣接した駐車場ということもあり、 買い物客の目を引いた。

女性参加者は4名と若干の寂し さはあったものの、JAFウィメン・ イン・モータースポーツの作業部会 がしっかりサポート。運転スキルに 応じた2クラスが設定され、誰もが 優勝のチャンスがある状態。ウィメ ンAクラスはS660の熊谷香選手、 ウィメンBクラスはハスラーの佐々 木美幸選手が優勝を果たした。

オートテストin 境夢みなとターミナル with JAF WOMEN IN MOTORSPORT 開催日:2021年11月21日(日) 女性参加者数:9名 開催地:境夢みなとターミナル(鳥取県境港市)

JAF鳥取支部が主催のモーター スポーツ祭.in.境港も開催され、 モータースポーツ色の濃いイベン トとなったオートテスト.in.境夢み なとターミナル。JAFウィメン・イ ン・モータースポーツ作業部会も バックアップ!

オートテスト初参加からベテラ ンまでバラエティに富んだ女性選 手たちが参加し、皆さんクルマが 好きであることを示すように笑顔 で楽しんでいたのが印象的だった。 そしてC-Compactクラスではノー トを駆る原聡美選手が優勝。自身 の中で眠っていたモータースポー ツ熱が再燃したそうだ。

オートテスト in みろくの里 with JAF WOMEN IN MOTORSPORT 開催日:2021年11月6日(土) 女性参加者数:19名 開催地:みろくの里駐車場(広島県福山市)  初心者/経験者/習熟者の3ク ラスを車格に合わせて細分化し、 計10クラスで開催されたオートテ スト.in.みろくの里。すべて男女混 合クラスながらも、表彰台の一角を 獲得する女性選手も数名おり、男 女問わずオートテストを満喫でき るイベントとなった。飯田裕子座長 のドラポジレッスンも大好評!  並み居る男性を抑えてINT-C(経 験者小型)クラスを制し、総合でも 12位を獲得した河田有華選手は、 夫の誠也選手と一緒に熊本から広 島まで2台で遠征して参戦。砂埃を 巻き上げるほどのアグレッシブな 走りが印象的だった。

オートテスト2021 IN アピタ大和郡山 with JAF WOMEN IN MOTORSPORT 開催日:2021年12月12日(日) 女性参加者数:20名 開催地:アピタ大和郡山店駐車場(奈良県大和郡山市)  モータースポーツクラブ奈良と JAF.WOMEN.IN.MOTORSPORT とのコラボレーションも3年目とな り、ますます大盛況となった12月 12日開催のオートテスト2021.IN. アピタ大和郡山。募集人数40台の うち20台を女性限定枠とし、それ ぞれ3クラスに分かれて熱い走り を披露した。

優勝はVWゴルフヴァリアント を駆るビトウヨシコ選手。アピタ大 和郡山のオートテストでは常連的 存在となったが、これまで優勝には あと一歩手が届かず、今回ようやく リベンジに成功。すっかりオートテ ストの虜となっている様子だ。

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J A F M O T O R S P O R T 第S 56巻 第 1 号 2022 年 2月 1 日発行(年 4 2 、 5 、 8 、 11 1 日発行) 発行人 西岡敏明 ☎ 0 3 5470 ) 1711 (代) 一般社団法人 日本自動車連盟 東京都港区芝大門 1 1 番 30号 00570 ( 00 2811 (総合案内サービスセンター) 発行所 東京都港区芝大門 1 9 番 9 号 ㈱ J A F メディアワークス 定価279円 2022 WINTER

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