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る成長と活躍を見せてくれるであろう。
WRCの歴戦のクルーたちが次々と脱落し ていった過酷なサファリ・ラリーでも着実 に上位で生き残り、勝田貴元選手は1994 年以来の日本人による2位表彰台を獲得し た。今季のWRCは残り6戦、今後も世界 4 7
経験を積み重ねて、実力発揮へ しかし、日本人初のWRカーによるフル 参戦となった今シーズンは好パフォーマン スを維持し、ワークス勢に迫る躍進を見せ ている。勝田貴元選手は開幕戦のモンテカ
合2位でフィニッシュして自身初のWRC 表彰台を獲得した。第6戦終了時点でのド ライバーズポイントでもロバンペッラ選手
勝田貴元/ダニエル・バリット組は、
選手権の厳しい舞台で鍛えられて、さらな
退。さらに最終日のデイ4のSS14では、 総合首位を走るヒュンダイのティエリー・ ヌービル/マーティン・ヴィーデガ組がサ スペンション破損でリタイアと、まさに波 乱の展開となった。 勝田貴元選手もデイ2で午前にラジエタ ー、午後はダンパーを破損したが、SS7で TGRのセバスチャン・オジェ/ジュリア ン・イングラシア組とSSベストを分け合 うなど好タイムを連発して、総合2番手に。 1. 第1戦モンテカルロ(モナコ):昨シーズンの総合7位を上回る、 総合6位でポイントを獲得。初のフル参戦を、幸先良く決められ た。2. 第2戦アークティック(フィンランド):WRC初開催となる 北極圏でのラリー。フィンランド国内選手権での経験を活かし、 総合6位で連続入賞。3. 第3戦クロアチア:今季初のフルター マックラリーではSSベストを2つも獲得する好走を見せて、3連 続となる総合6位フィニッシュを果たした。4. 第4戦ポルトガル: 今季初のグラベルラリー。タイヤの見極めが難しい状況でも初の 総合4位を獲得した。5. 第5戦イタリア:サバイバルラリーを駆 け抜け、連続で総合4位入賞を達成。デイ3ではコ・ドライバー のバリット選手の体調不良にも、しっかり対応したという。
Headl 型コロナウイルス感染症感染拡 大などの影響により、今シーズ ンもイベントの中止や延期が相 次いでいる国内モータースポーツ。全日本 選手権やFIAシリーズについても、天候不 良なども含めて各種変更がなされている。 全7戦のスーパーフォーミュラは10月3 日の岡山国際サーキットでの開催を10月 17日開催に延期。開催地をツインリンクも てぎに変更し、もてぎ2連戦となった。そ れに合わせて、スーパーフォーミュラ・ラ イツも最終戦が岡山からもてぎ開催へと変 更。5月のオートポリスでは第9戦が悪天候 のために中止となっているため、シリーズ 後半で代替レースが行われる公算が高い。 スーパーGTは今季は国内サーキットのみ で全8戦が予定されているが、5月30日の 第3戦鈴鹿大会が8月22日に延期され、 併せて地方選手権のFIA-F4の第3戦と第4 戦も8月22日に延期されることになった。 6月27日には、地方選手権のFIAフォー ミュラリージョナルが盛況のもとに岡山で 開幕したが、シリーズ後半戦は当初の予定 から大幅に変更され、第4戦(3レース開 催)は9月26日に富士スピードウェイで FIA世界耐久選手権(WEC)と併催、第5戦 (最終戦)は12月12日に鈴鹿サーキットで 2レース開催へと変更されている。 全日本ラリー選手権は開幕戦の群馬大会 が中止となり、5月の第4戦愛媛大会が10 月29日に延期され、当初は10月17日の 第10戦岐阜が最終戦だったが、久万高原 ラリーがトリを受け持つことになっている。 全日本ジムカーナ選手権は全8戦+JAF カップジムカーナで予定されているが、4月 の第2戦エビスサーキット西コースでの大 会が土砂災害被災のため延期。もともとの 最終戦である第8戦鈴鹿南大会の後、10月 24日に開催されることになった。 全日本ダートトライアル選手権は新型コ ロナウイルス感染症の影響で3つの大会が 延期。当初は5月末開催の第4戦オートス ポーツランドスナガワ大会は、一度6月20 日に延期され、再び延期で8月1日に開催 されることになった。6月20日の第5戦サ ーキットパーク切谷内と7月11日の第6戦 モーターランド野沢の大会は、主催者公式 ホームページにより延期が表明されている が、延期先の日程は明らかになっていない。 全日本カート選手権は、3月開幕の西地 域、4月開幕の東地域から遅れて、5月23 日にOK部門が鈴鹿南で開幕した。こちら は昨年同様に中止や延期はなく、当初発表 されたカレンダーで進行しており、11月21 日にはOK部門最終戦と東西統一競技会が ツインリンクもてぎで開催される予定だ。 ラリーやスピード競技の地方選手権は、 2021年全日本選手権とFIAシリーズは盛夏を迎えて後半戦に突入 今季も中止や延期が相次ぐ国内モータースポーツ。シーズン後半はタイトスケジュールに Headline モータースポーツ話題のニュース速攻Check! フォト/石原康、遠藤樹弥、加藤和由、吉見幸夫、JAFスポーツ編集部 レポート/JAFスポーツ編集部 新 8
Rd.6 ツインリンクもてぎ
10/29(金)-31(日) Rd.7 鈴鹿サーキット
2021年JAF全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権
開催日 シリーズ 開催地
4/2(金)-4(日) Rd.1/2/3 富士スピードウェイ
4/23(金)-25(日) Rd.4/5/6 鈴鹿サーキット
5/14(金)-16(日) Rd.7/8/9 オートポリス
6/18(金)-20(日) Rd.10/11/12 スポーツランドSUGO
8/27(金)-29(日) Rd.13/14/15 ツインリンクもてぎ
10/15(金)-17(日) Rd.16/17 ツインリンクもてぎ
2021年FIAインターナショナルシリーズ スーパーGT
開催日 シリーズ 開催地
4/9(金)-11(日) Rd.1 岡山国際サーキット
5/2(日)-4(祝) Rd.2 富士スピードウェイ
7/16(金)-18(日) Rd.4 ツインリンクもてぎ
8/20(金)-22(日) Rd.3 鈴鹿サーキット
9/10(金)-12(日) Rd.5 スポーツランドSUGO
10/22(金)-24(日) Rd.6 オートポリス
11/5(金)-7(日) Rd.7 ツインリンクもてぎ
11/26(金)-28(日) Rd.8 富士スピードウェイ
昨年よりは少ないものの、複数の大会が中 止や延期となっていて、シリーズの行方は 見通せない状況となっている。 シーズン後半には9月26日のWEC第5 戦富士大会や、10月10日のFIAフォーミュ ラ1世界選手権(F1)第17戦鈴鹿大会、11月 14日のFIA世界ラリー選手権(WRC)第12 戦愛知・岐阜大会といった世界選手権の日 本ラウンドが予定されているが、二輪の MotoGP世界選手権ではツインリンクもて ぎ大会(10月3日)の開催中止が表明されて おり、まだまだ予断を許さない状況だ。
開催日 シリーズ 開催地
4/10(土)-11(日) Rd.1 ツインリンクもてぎ北ショートコース
5/3(祝)-4(祝) Rd.2 新東京サーキット
6/19(土)-20(日) Rd.3 GOLDEX本庄モーターパーク
9/18(土)-19(日) Rd.4 茂原ツインサーキット東コース
10/16(土)-17(日) Rd.5 スポーツランドSUGO国際西コース 11/20(土)-21(日) 東西統一 ツインリンクもてぎ北ショートコース
会の作業部会が行われ、6月には話題のJAF デジタルモータースポーツ部会の第2回部 会が実施された。また、JAFがアジアで主 導するFIA認定の競技役員やマーシャル教 育活動(FIA RTP活動)に関する調整会議も 行われ、5月にはFIA基金助成によるJAF
2021年JAF全日本カート選手権FS-125部門・FP-3部門西地域
EVENT SAFETY TRAINING PROGRAMMEがAG.MSC北海道の協力で開催。 国内ラリーの競技役員らを対象とした JAF主催のスキルアップ講習はすでに複数 回実施されており、10年ぶりとなるWRC 日本開催に向けた準備支援も進んでいる。
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また、JAFそして各種専門部会では、関 係各所の協力によりモータースポーツの将 来に向けた取り組みが進められている。 5月にはJAFモータースポーツ振興委員
2021年JAF全日本選手権/FIAインターナショナルシリーズ・カレンダー ※6月30日現在 2021年JAF全日本スーパーフォーミュラ選手権 開催日 シリーズ 開催地 4/2(金)-4(日) Rd.1 富士スピードウェイ 4/23(金)-25(日) Rd.2 鈴鹿サーキット
5/14(金)-16(日) Rd.3 オートポリス 6/18(金)-20(日) Rd.4 スポーツランドSUGO 8/27(金)-29(日) Rd.5 ツインリンクもてぎ 10/15(金)-17(日)
2021年JAF全日本ラリー選手権 開催日 シリーズ 開催地 2/4(木)-7(日) Rd.1 中止 群馬県・舗装/積雪 450km 3/19(金)-21(日) Rd.2 愛知県・舗装 400km 4/9(金)-11(日) Rd.3 佐賀県・舗装 350km 5/21(金)-23(日) Rd.5 京都府・舗装 300km
-13(日)
群馬県・舗装 450km 7/2(金)-4(日) Rd.7 北海道・未舗装 500km 8/20(金)-22(日) Rd.8 秋田県・未舗装 350km 9/11(土)-12(日) Rd.9 北海道・未舗装 1000km 10/15(金)-17(日) Rd.10 岐阜県・舗装 400km 10/29(金)-31(日) Rd.4 愛媛県・舗装 250km 2021年JAF全日本ジムカーナ選手権 開催日 シリーズ 開催地 3/28(日) Rd.1 ツインリンクもてぎ南コース 5/15(土)-16(日) Rd.3 TSタカタサーキット 6/5(土)-6(日) Rd.4 名阪スポーツランドCコース 6/26(土)-27(日) Rd.5 オートスポーツランドスナガワ 7/17(土)-18(日) Rd.6 ハイランドパークみかわ 9/11(土)-12(日) Rd.7 スピードパーク恋の浦 10/2(土)-3(日) Rd.8 鈴鹿サーキット国際南コース
2021年JAF全日本ダートトライアル選手権 開催日 シリーズ 開催地 3/13(土)-14(日) Rd.1 京都コスモスパーク 4/3(土)-4(日) Rd.2 スピードパーク恋の浦
(土)-25(日)
丸和オートランド那須
→ 延期
→ 延期
2021年JAF全日本カート選手権OK部門 開催日 シリーズ 開催地 5/22(土)-23(日) Rd.1/2 鈴鹿サーキット国際南コース 7/10(土)-11(日) Rd.3/4 オートパラダイス御殿場 9/18(土)-19(日) Rd.5/6 茂原ツインサーキット東コース
スポーツランド
6/11(金)
Rd.6
10/23(土)-24(日) Rd.2 エビスサーキット西コース 11/6(土)-7(日) JAFCUP イオックスアローザスポーツランド
4/24
Rd.3
6/19-20
Rd.5 サーキットパーク切谷内 7/10-11
Rd.6 モーターランド野沢 7/31(土)-8/1(日) Rd.4 オートスポーツランドスナガワ 9/4(土)-5(日) Rd.7 オートパーク今庄 10/9(土)-10(日) Rd.8 テクニックステージタカタ 11/13(土)-14(日) JAFCUP 輪島市門前モータースポーツ公園
10/16(土)-17(日) Rd.7/8
SUGO国際西コース 11/20(土)-21(日) Rd.9/10 ツインリンクもてぎ北ショートコース 2021年JAF全日本カート選手権FS-125部門・FP-3部門東地域
開催日 シリーズ 開催地
Rd.1 琵琶湖スポーツランド
第2回JAFモータースポーツ 振興委員会作業部会 5月6日には、鈴木亜久里氏や柿本邦彦氏を 始めとした委員参加によるリモート会議形 式の第2回振興委員会作業部会が行われ、 JAF藤井一裕会長も臨席する中で活発な意 見交換が行われた。 2021年第2回FIA基金助成による JAF EVENT SAFTY TRAINING PROGRAMME 5月9日には、AG.MSC北海道が運営す るJAF主催のラリー安全セミナーをオ ンライン形式で開催。競技役員や関係 オフィシャルを対象としたセミナーで、 座学の後にはテストも行われた。 第2回JAFデジタル モータースポーツ (DMS)部会 6月21日、谷本勲部会長や小林 可夢偉委員らが出席した第2 回部会がリモート会議形式で 開催。興行として成立させ持続 可能な状態にするエコシステム の確立を目標とする議論が今 後は進んでいきそうだ。 9
3/20(祝)-21(日)
4/17(土)-18(日) Rd.2 神戸スポーツサーキット 5/22(土)-23(日) Rd.3 鈴鹿サーキット国際南コース 7/10(土)-11(日) Rd.4 オートパラダイス御殿場 9/11(土)-12(日) Rd.5 中山カートウェイ 11/20(土)-21(日) 東西統一 ツインリンクもてぎ北ショートコース
10
2021 夏 CONTENTS HEADLINE 4 アルファタウリ・ホンダの角田裕毅選手、F1前半戦は試練の連続 6 復活のWRCサファリラリーで勝田貴元選手が自身初の2位表彰台! 8 2021年全日本選手権とFIAシリーズは盛夏を迎えて後半戦に突入 SPECIAL ISSUE 12 巻頭特集 だから私は“Nゼロ”レース ナンバー付きワンメイクレースを愉しむ いまどきレーシングドライバーズ 39 特集 プロと若手の二人三脚! チームで挑む全日本カート選手権 かつて歩んだ道。プロドライバーが若者に伝えたいこと 26 孤高のチャレンジ スーパーフォーミュラに挑戦する タチアナ・カルデロン選手の道筋 30 勝利につなげるアプローチ 全日本ジムカーナドライバーに聞く 勝てるコーナリングの組み立て術 47 ライバルに学ぶ ダートラ走りのセオリー 不確定要素の多いダートトライアルは走らせ方の正解をどう導き出すのか? 52 ドリフト競技の“審判”の系譜 日本のドリフトの進化は評価方法の進化の歴史でもあった TOPICS 58 沖縄に新名所が誕生 新たな施設の落成から、改修・復旧まで JAF公認コースの最旬情報レポート 63 オートテスト倶楽部 東北・岩手の地で5年連続開催。リピーターも増加中! INFORMATION 35 2020年度 事業報告ならびに収支報告 (2020年4月1日より2021年3月31日まで) 38 INFORMATION from JAF モータースポーツ公示・お知らせ(WEB)一覧 (2021年3月26日~2021年6月30日) JAF MOTOR SPORTS JAFスポーツ[モータースポーツ情報] 監修/一般社団法人 日本自動車連盟 〒105-0012 東京都港区芝大門1-1-30 ☎0570-00-2811(ナビダイヤル) 発行所/株式会社JAFメディアワークス 〒105-0012 東京都港区芝大門1-1-9野村不動産芝大門ビル10F ☎03-5470-1711 発行人/西岡敏明 振替(東京)00100-88320 印刷所/凸版印刷株式会社 編集長/佐藤均 田代康 清水健史 大司一輝 デザイン/鎌田僚デザイン室 編集/株式会社JAFメディアワークス メディア事業本部(JAFスポーツ) ☎03-5470-1712 COVER/TOYOTA GAZOO Racing Yaris Cup 2021 第1戦 PHOTO/小竹充 本誌の記事内容は2021年6月30日までの情報を元にしております。また、社会情勢等によって、掲載した情報内容に変更が生じる可能性がございます。予めご了承ください。
本の公認レースにおけるグラスルーツモー タースポーツの領域は、いわゆる“ハコ 車”のレースがその役割を担っている。 かつては、ナンバーを切った量産車(またはナンバ ーを取得できないレースベース車)に専用の改造を施 したN1車両などで争われていた。1980年代には自動 車メーカーが支援するワンメイクレースも盛んに開催 されるようになり、あらゆる車種によるワンメイクレ ースが誕生して熾烈なバトルが繰り広げられてきた。 そしてJAFは、1999年12月に「自動車レースの健 全な発展を図るため」に「自動車登録番号標付車両によ るレース開催規定」を施行した。 この規定では、自動車登録番号標付き、つまりナン バー付き車両をベースにできる一方で、サーキットに おける「レース後に参加車両が一般の交通の用に供す るのに適するか否かの確認」を実施することを条件と している。この厳密な確認をセットに「ナンバー付き ワンメイクレース」が開催できることになったのだ。 現行規定では、ナンバー付きレースの参加車両は、 JAFスピードSA車両またはスピードB車両とされて いる。つまり、国内競技車両規則にはナンバー付きレ ース車両を直接示す車両の分類が存在していない。 日 だから私は ナンバー付きワンメイクレースを愉しむいまどきレーシングドライバーズ 「ヴィッツレース」21年の歴史に終止符 2021年からは「ヤリスカップ」が開幕! フォト/石原康、遠藤樹弥、小竹充、鈴木あつし、はた☆なおゆき、皆越和也、吉見幸夫、JAFスポーツ編集部 .レポート/はた☆なおゆき、廣本泉、JAFスポーツ編集部 巻頭特集 12
レースを1台のクルマで共用でき る手軽さから、多くのビギナーに 受け入れられ、各サーキットのグ リッド上限台数を上回るほどの人 気を博した。決勝に出場できない 参加者を対象にしたコンソレーシ ョンレースですらフルグリッドに なる盛況ぶりで、ヴィッツレース は、ナンバー付きワンメイクレー スの広告塔として、瞬く間に全国 各地へ開催が広がっていった。
2001年にはスズキKei Sport などを使ったSUZUKIワンメイ クレースシリーズ、2002年には マツダ・ロードスターによるロー ドスター・パーティレース、2003 年にはフォルクスワーゲン・ルポ GTIを使用したルポGTIカップジ ャパン、2007年にはロータス・ エリーゼなどによるロータスカッ プジャパンがスタートした。 2014年にはホンダN-ONEを使 ったN-ONEオーナーズカップ、 2018年にはBMW MINIを使用 したミニ・チャレンジ・ジャパン
が始まるなど、現在に至るまで、国産・輸入車問わ ず、ナンバー付きワンメイクレースが全国のサーキッ トで開催されている。
その存在はN1車両によるレースを凌駕する勢いが あり、特に入門領域においては「レースを始めるなら ナンバー付きで」といった風潮も醸成されていく。 ヴィッツレースは、ベース車両が2代目のNCP91 型、3代目のNCP131型に切り替わっても人気は続い た。併催されていた中級者対象のN1レース「Netz Cupアルテッツァシリーズ」や、2013年にスタートし た上位のナンバー付きレース「TOYOTA GAZOO Ra cing 86/BRZ Race」へステップアップしたドライバ ーがいる一方で、多くの選手がヴィッツのモデルチェ ンジに合わせて車両を乗り換えながら、レース活動を 継続したことも大きな特徴とも言える。
ナンバー付きワンメイクレースという新ジャンルを 切り拓いたヴィッツレースは、そのパイオニアとして 20年以上も開催されてきた。そんな、ヴィッツレー スも2020年で幕を下ろし、2021年からは新型ヤリ スによる「TOYOTA GAZOO Racing Yaris Cup」に リニューアルされることになった。
そして、注目の開幕戦が、6月5日に富士スピード ウェイで開催されたのだ。 ヤリスカップとヴィッツレースの違い
このヤリスカップの位置付けについて、トヨタ自動
この分類については、当時は量産ツーリングカーを 示す“N1”に対して“Nゼロ”と定義する向きもあった ようだが、JAF国内スポーツカレンダーには競技車両 の記号として”NR-A”が登場(一説によれば「旧スピー ドA車両を使った国産レーシングカー」の略)。それ 以降、JAFカレンダーにおけるナンバー付きレース車 両は、”NR-A”という記号で示されている。 Nゼロの火付け役は「ヴィッツレース」 2000年には、ナンバー付きワンメイクレースの火 付け役となった「Netz Cupヴィッツシリーズ」が開幕 した。このシリーズは初代SCP10ヴィッツによるワ ンメイクレースで、自動車ディーラーで専用車両を購 入して、ほぼそのままの状態でサーキットに移動して レースに参加できる点に注目が集まった。 車両運搬車がいらず、日常の移動や通勤と、趣味の
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今ではモータースポーツの入門カテゴリーとして 定着しているナンバー付きワンメイクレース。 軽自動車から輸入車、改造車などによるレースが 全国で開催されている。これら“Nゼロ”レースの 火付け役となったヴィッツレースが 今年の6月に「ヤリスカップ」へと生まれ変わった。 ここではNゼロレースを愉しむ選手たちに 「アナタがNゼロレースに挑戦する理由」を聞いた。
91 10 !!
少しレベルを上げて、改造できる領域を広げ、もっと レースを多角的に楽しめるように棲み分けています」。 ちなみに、ヤリスカップカーにはロールケージや指 定部品のサスペンションが組み込まれた状態で納車さ れる。封印エンジンの使用も踏襲されており、ヴィッ ツレースでは変更可能だった認定部品の設定も大幅に 減少し、改造できる領域はかなり限られている。一例 を挙げれば、車両規則でディファレンシャルの変更は 認められていないが、ヤリスにはもともとLSD装着 の設定がない。そのため現状では、いわゆる“オープ ンデフ”でレースに挑むことになっているのだ。 参加資格についても、新たに定義された「プロフェ ッショナル認定ドライバー」が参加できない条件が追 加され、国内外の上位レース入賞者や86/BRZレース の年間上位選手などが除外されることになっている。 「ベース車両のヤリス自体が、最新のプラットフォー ムを使用することで車両のレベルがかなり進化してい ますので、ノーマル状態でもレースで楽しんでいただ けるスペックになっていると思います。また、ヤリス の発売とほぼ同時期に、すべてのトヨタ販売店でヤリ スを購入できるようになりましたので、以前に比べて 決勝前には32台によるコンソレー ションレースが行われた。岩岡万梨 恵選手が終盤で逆転勝利を果たす。 週末通して好調だった神谷裕幸選手 がトップに立ったが、11番手から追い 上げた大島和也選手が大逆転勝利。 決勝レースは枠を上回る54台の戦 い。ポールポジションは予選B組トッ プの松本康平選手が獲得した。 今季からポイントが与えられるCVT クラス。決勝には5台が出走し、総合 16位の乙津竜馬選手が優勝した。 14
車GAZOO Racing CompanyでGRブランドマネジ メント部を統括する杉浦宏哉部長に伺った。 「TOYOTA GAZOO Racingとしては、FIA世界耐久 選手権(WEC)やFIA世界ラリー選手権(WRC)など の世界選手権から草の根と呼ばれるヤリスカップま で、幅広いカテゴリーで活動を行っていますが、観る だけでなく、数多くの方にレースに参加していただけ るようにスタートしたのがヴィッツレースであって、 その思いを引き継いだのがヤリスカップになります」。 「ナンバー付きのワンメイクレースとしては86/BRZ レースも開催していますが、ヤリスカップでは入りや すさを重視しています。そのため、ヤリスカップでは 改造できる部分を、運転席側のシートとホイール、ブ レーキパッド、油脂類などに限定することでイニシャ ルコストを下げています。一方で、86/BRZレースは
ヤリスカップカーを入手しやすくなったことも、ヤリ スカップにおける大きな変更点だと思います」。 「ヤリスカップはヴィッツレースの思想を引き継いで いますが、ヴィッツレース時代から、セミプロから販 売店の方、公務員や一般企業の会社員など、様々な立 場の方々が参戦されています。日常生活ではあまり接 点のない方々がレースで繋がって、サーキットで和気 あいあいと楽しんでいただけていると思いますが、そ ういったアットホームなところも、ヴィッツレースの 時からのポイントになっていると思います」。 このようにヤリスカップの特徴を語る杉浦氏だが、
先代のNCP131ヴィッツについても、新たなプラン が全国でスタートしていることを語ってくれた。 「NCP131ヴィッツのカップカーを購入されたお客 様がたくさんいらっしゃいますので、ヴィッツレース のルールを踏襲したレースを引き続き行えるように、
ということで、十勝インターナショナルスピードウ ェイと富士スピードウェイ、鈴鹿サーキット、岡山国 際サーキットではNCP131ヴィッツのナンバー付き レースが独自開催され、スポーツランドSUGOとツ インリンクもてぎでは耐久レースに参戦できることに
と併催された第2戦には20台が参加していた。 トヨタ自動車.GAZOO.Racing.Company GRブランドマネジメント部 杉浦宏哉部長 ヤリスカップは東日本/西日本シリーズで開催され、今季か らCVTクラスにシリーズポイントが付与された。参加者と参 加車両は「T.R.A.レーシングパスポート」に登録する必要が あり、その申請時にはゼッケン番号も登録申請し、車両搭載の エンジンには封印が必要となっている。また、ヤリスカップで は「フロントタイヤは、公式車両検査にてタイヤにマーキング を施されるまで、未使用の状態を保たなければならない」(つ まりフロントタイヤは新品)というタイヤ運用の規則が追加 された。ちなみに、ナンバー付きレースには「自動車登録番号 標付車両によるレース開催規定」により「参加車両が一般の 交通の用に供するのに適するのか否かの確認」が必須。ヤリ スカップでは「公式車両検査を受けて以降、レース終了後の 公道走行チェックを受けるまで、競技車両を当該サーキット の場外へ持ち出すことは認められない」としている。 86/BRZレースは2022年に大幅刷新 6月6日に富士スピードウェイで行われた「FUJI.86.STYLE.with.BRZ」では、新型GR. 86と新型BRZによる新たなワンメイクレースのコンセプトモデルが展示された。その 車両はキャリパーやローターが変更されており、来場者の大きな注目を浴びていた。 巻頭特集 15
国内のサーキットにご協力をお願いしました。その結 果、NCP131ヴィッツでレース活動を継続できる場所 を用意して頂けることになったんです」。
なっている。富士チャンピオンレースには「FCRVitz」が新設されて4月に開幕。ヤリスカップ開幕戦
91台ものエントリーがあった。レースは土曜の1デ イ開催。予選はAとBの2グループで行われ、各グル ープの上位27台、計54台が決勝レースに進出した。
ンなバトルが展開され、大きなトラブルはなかった。 決勝に先立ち32台で争われたコンソレーションレ ースは、わずか4周という短い距離ながら、最後まで
激しいバトルを展開。3番グリッドの岩岡万梨恵選手 が終盤で逆転するという見応えのある内容だった。 午後に行われた8周の決勝レースでは、クリーンな がらもスタート直後から激しいポジション争いが展開 された。主導権を握ったのは4番グリッドの神谷裕幸 選手で、3周目には一気にトップへと浮上した。 86/BRZレースでも活躍する神谷選手はその後も レースをリードするものの、同じく86/BRZレース で活躍する大島和也選手が11番グリッドから猛追。 何と最終ラップでトップに浮上した大島選手が記念す べき開幕戦ウィナーの座に輝いた。神谷選手が2位、 ポールポジションの松本康平選手が3位となり、総合 16位の乙津竜馬選手がCVTクラス優勝となった。 ニーズとウォンツの符合
ヴィッツレースで培った21年の歴史を受け継いだ ヤリスカップは、地域シリーズが再編されて、東日本 シリーズと西日本シリーズの2シリーズで構成される ことになった。東日本シリーズは十勝とSUGO、富 士を舞台に全5戦、西日本シリーズは富士と鈴鹿、岡 山国際、オートポリスで全5戦が開催される。開幕戦 はともに富士だが、富士大会の獲得ポイントが各シリ ーズに反映されることになっている。そして最終戦の 後には恒例の「特別戦」も開催される予定だ。
レースに挑戦しています。ヴィッツレースはウデで勝負できるレースですし、 色々な方が楽しめて和気あいあいとした雰囲気がいいですね。それなのにバト ルは激しい。86/BRZレースに比べれば速度は低いですが、ヴィッツならではの 戦い方があってなかなか勝てないんですよ。ヤリスカップも面白かったですね。 ヤリスでクルマ自体が進化してますし、スリップストリームも効くので奥が深 いですよ。最終周でシフトミスをしたので、開幕戦はやられちゃいましたが、楽
年齢やレース経験、性別を問わず多くの参加者を魅 了しているヤリスカップだが、GRブランドマネジメ ント部の杉浦氏は、今後の方向性をこう語った。 「今回からCVTクラスをシリーズポイント対象にし ていますが、今後もお客様のニーズに合わせたトライ をしていきたいと考えています。86/BRZレースでは プロフェッショナル、クラブマンとシリーズを分け、 クラブマンはエキスパート、オープンとクラスを分け て別レースにしていますが、ヤリスカップについても、
開幕戦富士は91台による激戦に 6月5日の記念すべき第1戦は、東日本と西日本シ リーズ両方の開幕戦と位置付けられ、何と全国から
今大会では、納車間もない選手も多かったため、不 慣れな車両による荒れた展開も予想されたが、コンソ レーションレースを含めて、スタート直後からクリー
開 幕戦2位の神谷裕幸選手は、ヴィッツレースからキャリアを始めたネッツ トヨタの社員ドライバーだ。「ネッツトヨタ中部に入社して、最初は会社 の活動で2001年にヴィッツレースでデビューしました。個人的にもヴィッツ レースに参戦して、2度チャンピオンを獲得できたので、2013年から86/BRZ
しいレースができました」。 関 西シリーズの2019年王者である峯幸弘選手は、ジムカーナ経験などを経て 2008年からヴィッツレースに参戦している関西のベテランドライバー。開 幕戦は悔しい8位だった。「ヴィッツレースは運転がシビアですが、接近戦が本当 に楽しいんですよ。平均速度は低いんですが、どの集団も密集して走るので、どこ でも競り合いができて面白いんです。86/BRZレースも考えましたが、タイヤがコ ンペティションなので、セッティングを煮詰めるためには時間とお金が必要になり ますよね。その点、ヴィッツレースはタイヤがワンメイクだという点もいいですね。 ヤリスの印象については、ヴィッツとはエンジンやブレーキ、駆動系のフィーリン グが違いますが、速度は上がっている印象です。ヤリスカップでは変更できる箇所 が限られているので、差が出にくくなるでしょうね。今回は1周目で7番手まで上が れましたが、後半が厳しかったですね。でも、十分に楽しかったですよ」。 2005年の富士チャンピオンレースで競技を始めた山口浩昭選手。NCP91時 代からヴィッツレースを戦うベテランだ。「サーキット走行会をチューニン グカーで走っていたのでウデに自信はありました。試しにNCP91ヴィッツで レースに出てみたら全然乗れなくて、それでハマったんです。最初は富士だけ 走る予定だったんですけど、手伝ってくれる人が増えて鈴鹿も走るようになっ て。鈴鹿で全損させても、またクルマを買って続けましたしね(苦笑)。ヴィッツ レースの魅力は普段の生活では会えない人と仲良くなれること。この雰囲気が 好きでずっと出ています。ヤリスカップになってもそれは変わりませんね。開幕 戦は14位でしたが、よく知った人たちとバトルができたので楽しかったです」。 神谷裕幸選手 [N中部GRGミッドレスYaris] 峯幸弘選手 [犬印ADSファクターYaris] 山口浩昭選手 [RSかなやエンドレスYaris] 「独特の戦い方があるので、 なかなか勝つのが難しい!」 「ドライビングはシビアだけど、 接近戦がホントに楽しい」 「普段の生活では会えない人と 仲良くなれる雰囲気が好き」 16
転しやすい印象です。決勝スタートではトラクションコントロールがうまく入 らず後退しちゃいました。やっぱりまだまだ初心者ですね。結果は25位でした が、レース中での前後左右の間合いはうまく取れたつもりです。クルマやサー キットレースには慣れていないなと感じる部分も多いので、これから少しずつ 吸収していきたいですね」。
ヴィッツレースは設立当初から多くの女性選手が参戦しているが、2001年 にデビューしたみなぴよ選手もその一人。しかも今大会では、ヤリスカッ プと併催されたFCR-Vitzにも参戦する、唯一の掛け持ちドライバーとなった。 「初めてヴィッツレースを観た時に、“観客席からではなく、コース側から景色 を見たい”と思って、すぐにカップカーを買っちゃったんです。ナンバー付きだ から積載車もいらないし、レースガレージに保管する必要もない。この手軽さが ヴィッツレースの最大の魅力だと思います。私は会社員なんですが、NCP91も NCP131も購入して、ヴィッツレースには200戦以上出ましたね。今では古株に なっちゃいました。それだけに、ヤリスカップも開幕戦から出たくて、納車され たばかりでしたが参戦しました。実は、4月に開幕した富士チャンピオンレース のFCR-Vitzに参戦して、予選1位と決勝のファステストを獲れたんです。決勝で はスピンして終わりましたが、優勝のチャンスがありそうだったので第2戦も出 ました。ヤリスカップでは、タイミングが悪くて予選35番手。コンソレーション レースになりましたが、16番手から10位に上がれました。4周でアッという間の レースでしたが、抜きつ抜かれつで楽しめました」。
そういったことを考えていく必要もあると思います」。 「2021年は東日本と西日本の2シリーズですが、従 来のように細分化する考え方もあります。ヤリスカッ プはあくまで入門カテゴリーという位置付けですの で、そこを大切にしながら考えていきたいですね」。 今回の取材では参加選手にも多くの話を伺ったが、 選手からは「このレースをやめる理由がない」という声 が聞こえていた。そして、杉浦氏へのインタビュー中 にも、運営側からのコメントとして同様の発言がなさ れたことが印象的だった。両者の思惑が一致するとい
な関係を維持しながら、今後も進化を遂げていくのだ。 レース経験豊富ながら一時活動を休止し、2015年からヴィッツレースで活動 を再開した三浦康司選手。今回は九州からの参戦だ。「1995年にマーチカッ プでレースにデビューして、シビックレースにも参戦しました。2015年からヴィッ ツで活動を再開して、他にN-ONEオーナーズカップやミニ・チャレンジ・ジャパ ンにも参戦しています。ヴィッツやN-ONEは台数が多くてライバルとのバトルが 楽しめるし、MINIではステータスを味わえるので、それぞれに違った魅力がありま すね。ヤリスカップはサウンドは静かですが、手軽にできるところが魅力です。な かなか単独走行にはなりませんから、やっぱり台数の多いレースは面白いですね。 例え勝てなくても、70番手なら70番手争いが楽しめるんですよ。ギスギスしてい ないし、みんなで助け合う雰囲気も好きなんです。今回は23位でしたが、32番グ リッドから追い上げられました。次はもっと上位でバトルをしたいですね」。 1985年の富士フレッシュマンレースでデビューした百瀬孝仁選手。結婚を 機にレースから離れていたが、ヴィッツレースで活動を再開させた。「手軽 でコストも安いことから、2001年からレースに復帰しました。キャリアもある し、1000ccだから簡単だろうと思っていたらみんな予選落ち。”コンソレ・キ ング”と呼ばれてました(笑)。それでも楽しいので続けてきました。現在62歳 ですが、歳を取ってマニュアルのシフトがキツくなってきたんですよ。それで 2019年からCVTに変更しました。まだ参加台数も少ないですから、昨年は優勝 することもできたんですよね。ヤリスはボディがガチッとしてますし、CVTでも レースは楽しいです。今年はCVTにもポイントが付くので気合が入りますね。 今回もCVTクラスで"1位"を狙いましたが、コンソレ—ションレースで24位。そ れでも”CVTのコンソレ1位”は獲れたので目標は達成です(笑)。たとえ順位が 下でもバトルの楽しさは変わらない。ヤリスになってもレースは楽しかったで す。いい汗をかきました!」。 ヤリスカップで念願のレースデビューを果たした26歳の千葉翔太選手。予 選B組ではいきなり4番手タイムを計測し、決勝レースでは7番グリッドを 獲得する才能の片鱗を見せた。「学生時代から5年間ぐらいジムカーナをやって いましたが、もともとレースがやりたかったので、それが社会人になってようや く実現しました。ワンメイクレースはマニュアル車でやりたかったのと、車両価 格も手頃だったのでヤリスカップを選びました。ヤリスはオープンデフなので、 走らせ方のアジャストに苦労しましたが、クルマのシャシー剛性が高いので運
う良好な関係は、長年に渡り、参加者と関係者が真摯 に向き合って構築された得難い関係だと言える。 ヤリスカップは、まだまだ始まったばかり。スポー ティングやテクニカルの両面において、さらなるブラ ッシュアップが図られていくことだろう。ヴィッツレ ースからバトンを受けたヤリスカップは、”相思相愛”
三浦康司選手 [NAVULおうちの買い方制動屋Yaris] 百瀬孝仁選手 [nmsU長野塩尻店μYaris CVT] 千葉翔太選手 [ミッドレスYaris] みなぴよ選手 [NAVUL GR港名四桜織Yaris] 納車直後だったヤリスは金曜 にピットでカラーリングを済 ませたばかり。併催された FCR-Vitzにも参加したみなぴ よ選手は忙しい1日となった。 「台数が多いレースなら 例え70番手でもバトルになる」 「やりたかったレースが ヤリスカップでようやく実現」 「たとえ順位が下の方でも バトルの楽しさは変わらない」 「レースを観客席からじゃなく、 コース側から観たかった」 巻頭特集 17
ストも低く抑えられ、お財布にも優しくなる。こうい
った流れを汲むシリーズは、ロードスター・パーティ レースやロータスカップジャパンなどが挙げられる。 改造できるシリーズと“第三の波”
競技用パーツへの交換が許されなくなると、純正部 品で戦うことになる。もちろん、純正部品はレース使 用を目的としていないので、交換時期は早くなる。そ して、セットアップを自分の色に染めたいといった声 も、現場からは聞こえるようになってくるものだ。 この問いに呼応したのがN-ONEオーナーズカップ だ。シリーズの認定部品は設定されているが、足回り などは複数選択が可能で、純正エアロパーツも装着で きる。タイヤは銘柄自由ながら、いわゆるエコタイヤ 限定で、消耗品のコストはかなり抑えられている。 そして、その発想をさらに広げたのが、ロードスタ ーカップであり、富士86BRZチャレンジカップだ。N ゼロレースはJAFスピードSA車両またはB車両とさ れており、スピードB車両は、車検対応であれば改造 範囲は広範だ。富士86BRZチャレンジカップについ ては「チューニングカーによる……」とキッパリ銘打っ ているので、潔いシリーズだと言えよう。 また、近年では“第三の波”もある。それは自動車 メーカー支援によるNゼロワンメイクレースのロー カルシリーズ化である。これはモデルチェンジに伴う 先代車両の再活用と言うべきか。メーカー支援のN ゼロレースの各種規則をそのまま、あるいはそれに準 じた規則でシリーズ化する流れはすでに各サーキット で定着しており、今年からは、ヤリスカップの開始に 伴い、先代ヴィッツによるワンメイクレースが各サー キットに新設されるケースが加わった。
軽自動車や輸入車、そして改造車まで! “Nゼロ”レースは全国でシリーズ開催中
Nゼロレースの車両はJAFスピードSA車両またはス ピードB車両と定義されているが、それを踏まえて、 安全装備以外を限りなくノーマルとし、交換は指定パ ーツに限るという独自規則を設けるシリーズがある一 方で、スピードSA車両またはB車両という前提に基 づいて、ある程度の改造ができるシリーズがある。 ヴィッツレースは、当初から指定部品や認定部品へ の交換のみという制限はあったものの、駆動系や制動 系パーツなどには自由度があった。後にタイヤはワン メイク化され、基本的には購入時の仕様を踏襲する流 れとなり、ヤリスカップでは整備できる箇所も含めて、 改造できる箇所はかなり制限されることになった。 制限を設けるメリットは、イコールコンディション を保ちやすいことと、各パーツの吟味をしなくて済む ことだ。となれば、イニシャルコストもランニングコ
ヴ
ィッツレースが2000年に始まってから、 日本のレース界は劇的な変化を遂げた。 『ハコ』と呼ばれるツーリングカーレース は、どんなクラスでもナンバーなしの競技車両で競わ れていたが、公道を走れるナンバー付きのNゼロレ ースの登場は、その台頭とともに、レース参戦の敷居 を大幅に下げ、新たな層をサーキットへ取り込むこと に成功した。その後はあらゆる車種によるワンメイク レースが開催され、モデルチェンジにより消滅してし まうなどの紆余曲折を経て現在に至っている。 改造を制限するワンメイクレース 現在行われているNゼロレースは、“改造”を中心に 見回すと大きく2種類に分けられる。JAFの規則では
巻頭特集 18
狭く、指定部品や認定部品への交換が許されている程 度だ。また、ヤリスカップはタイヤがワンメイクであ るのに対し、86/BRZレースは指定されたタイヤ銘柄 に限られるものの、選択肢があるのが特徴だ。
この2シリーズについて語ってくれたのはGR Tok yo Racingの水谷大介選手。FJ1600参戦を原点に、 ヴィッツレースと86/BRZレースのクラブマンシリ ーズを経て、現在は86/BRZプロフェッショナルシ リーズへとステップアップしてきた選手だ。 「個人的な意見ですけど、出やすいという意味では、 実は86/BRZレースも出やすいレースなんです。現在 は3クラスに分かれていて、プロフェッショナルシリ ーズはハードルが高いですが、クラブマンシリーズは エキスパートクラスとオープンクラスが別レースで行 われてますからね。対するヤリスカップは、基本的に は1クラスですし、ヴィッツレースから引き続き出場 する手練れの選手が数多くいますから、そこでいきな り上位に食い込むのは、かなり難しいと思います。な
86/BRZレースは現在3種類のレースが行われており、プロフェッショナ ルシリーズとクラブマンシリーズの2シリーズに、クラブマンはエキ スパートクラスとオープンクラスに分かれる。もちろん入門に適しているの はオープンだ。86とBRZには前期型と後期型が存在し、プロフェッショナル では後期型しか出場できないが、クラブマンの2クラスはその限りではない。 TOYOTA GAZOO Racing 86/BRZ Race YOTA GAZOO Racing 86/BRZレースとヤリスカ ップだろう。ともに知名度や人気も高く、全国規模で 開催されているシリーズだ。 86/BRZレースとヤリスカップは改造範囲がごく
ナンバー付きのNゼロワンメイクは、レースの登竜 門として初心者の参戦を意識していることが多い。そ こで、ここからはレース入門者目線によりNゼロレー スを考察する。実際にNゼロレースを戦う参加者が教 えてくれたお勧めポイントを交えて考えていこう。 勝負しやすい86/BRZと 深く学べるヤリス 最初に取り上げるレースは、やはりTO ヴィッツレースのコンセプトを受け継いで始まったヤリスカップは、初戦からいきなり91台もの エントリーを集めた。予選下位のドライバーを対象とする「コンソレーションレース」も設けら れているので予選落ちの心配はない。使用タイヤはグッドイヤーのワンメイクとなっている。 「人それぞれなんです が、86ってそもそも クルマが良くて、誰が乗っ てもある程度そこそこ乗 れちゃうんですね、楽し く。でも、運転を覚えるに はヤリスとかヴィッツの 方が圧倒的にいいんです。 なぜなら速度の低いとこ ろで、正しい運転操作をし ないと速く走れないから。 速度が低いと、格が下だと 見られがちですが、そんな の関係ありませんよね。む しろリミッターにも当たらず、スリップストリームも効くから、全体の作戦を学 んだりできます。ここで運転を覚えたら、どんなクルマでもハードル低く乗り こなせるんですよ。なので『86とどっちがいいですか?』って聞かれたら『ヤ リスカップですよって』すぐ答えるのは、そういう理由によるんです」 水谷大介選手 GR Tokyo Racing 86[ZN6 86] 19
ので、勝負という要素のハードルは、86/BRZレース の方が低いんじゃないかと思っています」。 「86/BRZレースは注目度もあるし、プロドライバ ーと同じ場所で走れる魅力は確かにあります。もちろ んオープンクラスも、速い人は速いんですが、基本的 には初心者が多く集まっているクラスなので、結果の 出やすさという意味では、これから始めるという人に も可能性があるんじゃないかなと考えています。です が、参戦費用やスケジュール、開催地、サポート体制 など、レースには付随する要素が多いので、それらを 含めたトータルで考えるとヤリスカップになりますか ね。長い目で見れば勉強になることも多いですしね」。 さらに水谷選手は、ヤリスカップの「CVTクラス」 もお勧めの一つだという。 「ヤリスのCVT車はヴィッツよりタイムロスが少な くなって、5速MT車と遜色ないタイムを出せるよう になっていますね。乗ってみてもモノ足りないなんて ことは全然なくて、何ならマニュアル車とは別のレー
うに、NB型からNC、ND型と歴代ロードスターで競 われてきたシリーズで、現在はNDシリーズ、NDク ラブマン、NCシリーズの3クラスが設けられている。 ロードスターにはロールケージや競技用サスペンシ ョンが装着された「NR-A」と呼ばれるベース車両がカ タログ設定されており、交換できる純正部品について も、基本的にはNR-Aモデルに設定された純正部品 しか使用が認められないという徹底ぶりだ。 ロードスター・パーティレースの魅力を語ってくれ たのは酒レーシングの廣木健司選手。スポーツランド SUGOの北日本シリーズ、筑波サーキットの東日本シ リーズ、岡山国際サーキットの西日本シリーズがあり、
「現 在54歳で、参戦 5年目になりま す。始めたきっかけは、 50歳になったら何か新 しいことを、今まで自分 が経験していない世界を 知りたいと思って選んだ のがレースでした。それ までサーキットに行った ことすらなかったんです が、クルマはもともと好 きでした。『酒レーシン グ』っていうのは、僕は 酒蔵、日本酒を作ってい るんですけど、その日本 酒を作っている仲間と、日本酒を売ってくれる仲間がいて、日本酒に関わる 人たちと一緒にレースをしている感じです。日本酒を広げていこうという仕 事上での共通した志を持った人と、趣味の世界でも一緒にやれるのは楽しい です。自分にとってサーキットは、いわば社交場でもあるんですよね」 スにして、CVTワンメイクで競ってくれればとも思い ます。きっと楽しいですよ。イコールコンディション だし、そうやってハードルが下がるといいですよね」。 そもそもベース車両自体がとても楽しい ロードスター・パーティレースも改造範囲を大きく 制限したレースだ。現在では「Ⅲ」と銘打たれているよ
廣木選手は北日本を戦って5年目のドライバーだ。 「クルマで何か楽しめることを、と思ってこの世界に 入りました。門戸が広く参加者の雰囲気もいい。サポ ート体制やルールもしっかりしていて、僕らみたいな アマチュアが入るには一番適したレースだと思いまし た。始めてみたら、自分の判断や期待以上のものがあ ったので、皆さんにも積極的に勧めたいですね。ロー ドスターはレースに出なくても楽しいクルマですし、 このレースは改造にお金をかけなくても済む。レース で接触したらノーポイントですから、参加者の皆さん はそこもきちっと考えておられる。こんな敷居の高く ないレースはないんじゃないでしょうか」。 ランニングコストの低さも魅力の一つだそうで、シ リーズ4戦で年間に使うタイヤは前日練習を含め1セ ット。ブレーキパッドも同様に1セットで済むと語る。 「もちろん、いくらでもお金を注ぎ込むことはできま すが、自分の場合は、あとはオイル代ぐらいで、楽し む方向性さえ自分で見極められれば、お金はかからな パーティレースのNDクラブマンは勝ち負けにこだわらず、安全にレース を楽しみたい人が対象とあってシリーズポイントは付かない。NDシ リーズもマナー重視。接触するとノーポイントになるので注意したい。なお、 両クラスとも車両規則は共通である。先代のNCECで競われるNCシリーズ は、筑波サーキットを舞台とする東日本シリーズでのみ開催されている。 ロードスター・パーティレースⅢ 廣木健司選手 酒レーシングロードスター飛露喜 [ND5RCロードスターNR-A] FFからFR、輸入車から軽自動車まで、様々な車両でナンバー付きワンメイクレースが行われている。 富士チャンピオンレースには現行のDJ5FSや先代のDE5FSなどが参加可能な「デミオレース」もあ り、CVT車両に対して最初に門戸を開いたシリーズでもあるが、今シーズンに関しては成立していな い。N-ONEには最近追加された6速MT車があるが、レースではCVT車両のみが参加できる。
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くれますから、その意味ではすごく上達できるレース だとも感じてます。僕は速くなりたいというより、運 転が上手になりたいんです。ロードスターは素直な動 きをするので、このクルマを動かせるようになれば、 すべての基本ができるようになる気がしています。教 材として、本当にいいクルマだと思っています」。 工夫すればローコストでも楽しめる 続いてはロータスカップジャパンだ。エルシーアイ
が輸入するロータス・エリーゼやエキシージ、2-イレ ブンなどが走れるNゼロレースだが、近年販売され たあらゆる仕様が走れるようになっている。車両ごと 3クラスに分けられていて、車両規則は基本的に共 通。安全装備などは部品が指定されているが、足回り や制動系、駆動系、マフラーなどの交換ができる。 今季はSUGOやもてぎ、富士を巡る4戦のロータス カップジャパンだが、語り手は秋葉有一選手。ロータ ス・エリーゼを駆る同レースの最古参ドライバーだ。 「魅力はたくさんありますが、一つは、エリーゼに関 して言えば、『雑な運転』を許容してくれないんです よ。なので、間違いなく運転が上手くなると思いま す。また、雰囲気もすごくいいんですよ。みんな、行 く時は行くけど、引く時は引くっていう、暗黙のコン センサスがあるんです。ロータス車はボディパーツが 高価なので、“ドン”とやった瞬間に人間関係が悪くな ります(苦笑)。なので、そこは日頃からコミュニケー ションを取っておかないと『何だよアイツ』って感じに なっちゃいます(笑)。それもあって、パドックではみ んなが声を掛け合うムードがありますね」。
ランニングコストは意外と控えめだそうで、タイヤ は練習用を含めて年間2セット、超軽量ということも あり、ブレーキパッドは2シーズン使え、リセールに 優れるメリットもあるそうだ。レースは幾らでも出費 してしまうものだが、秋葉選手は「工夫すればローコ ストで楽しめると思います」とも語ってくれた。 Nゼロから改造車へのステップアップも ミニ・チャレンジ・ジャパンは、BMW MINIマニ アならぜひ挑戦して欲しいシリーズだ。当初は「チャ レンジカー」と呼ばれるレース専用車両によるワンメ イクレースだったが、昨年から「CPSクラス」として Nゼロ車両が走れるようになった。競技車両は市販車 に事務局指定のパーツを組み込んで、イチから製作す
「もうすぐ60歳で定年を迎えるの で、今年を最後にしようかなと 思ってます。でも、このシリーズには魅 力があるので、事務局の方と話をして いたら『引退したらアンバサダーとし て雇うから』と言ってもらえました (笑)。このレースには渡邊信太郎さん という、スーパーGTで有名なエンジニ アの人が来てくださって、ドライビン グやセッティングの相談に乗ってくれ るんです。とてもフランクな方で、渡邊 さんの存在もシリーズの魅力だと 思っています。自分が初心者のハブに なれたり、自分の経験を伝えることで 参戦の敷居が下がるならアリかなと思っています。ギャラは昼のお弁当のようですが(苦 笑)、今後もシリーズに関わっていくことになりそうです」
いですよ。また、他の参加者の皆さんが色々と教えて
るスタイルなのだが、競技コンプリートカーをディー ラーで購入できるよう計画しているのが、バースレー シングプロジェクト(BRP)の奧村浩一選手である。 「MINIという絶大なファンがいるクルマの競技車両 を、ディーラーで購入かつメンテナンスできるように する、それを目的にディーラーとのタイアップで開発 ロータスカップジャパンは車両ごとにクラスが設けられており、現在 成立しているクラス1はV6のエキシージ、そしてクラス2は直4の エリーゼなどによって争われている。タイヤは両クラスとも現在はアド バンA052のワンメイク。車両はほぼノーマルながらタイヤの性能を余 すことがないのは、それだけベース車両の素性の良さを物語っている。 秋葉有一選手 Green Drop ELISE[エリーゼSPRINT250] 巻頭特集 LOTUS CUP JAPAN ナンバー付きレースは、JAF規則としては「自動車登録番号標付車両 によるレース」が正式名称。開催規定によれば、参加できる車両はJAF スピードSA車両またはB車両となっているが、各シリーズ独自に発 行する統一規則などによって、ベース車両や改造範囲が厳密に定め られている。それぞれの規則書は分かりやすい表現で書かれている ので、参加の際にはまず熟読しておきたい。 21
しています。このクルマの大きな特徴はスピンしにく いこと。電子制御は“全カット”にはならないので、 ほぼスピンしないです。初心者で、特別なスキルがな くてもコース上に留まれるのは安心ですよね」。
2リッターターボを搭載するCooper Sということ で「速度に物足りなさはない」とも語る。ちなみに、パ ドルシフトのATを採用している点が特徴で、GTマシ ンの雰囲気を味わえるのも魅力だそうだ。 「CPSクラスを1~2年やって、ナンバーなしの JCWクラスにステップアップしたりすることも、同じ シリーズの中でできます」と語る奥村選手。自分好みの MINIを作り上げていくストーリーも味わえるのだ。 140km/hしか出なくても、エコタイヤでも
「N-ONEならホンダディーラーで競技車両を作れる し、一般的なレースと違ってピリピリ感もない。今回 (取材した大会)の隣のパドックはレースデビューの選 手だったんですが、あえて隣にしてもらって、経験者 である僕らが声を掛けて、分からないことがあったら 教えたりするなんてこともやっています。最近ではオ ートマ限定免許も多いですが、このレースならヒール &トゥができなくても同じように走れますからね」。 140km/hしか出ないしエコタイヤはグリップしな いのでは? という疑問に阿久津選手は笑って一蹴。 「このぐらいのスピードが一番安全ですよ。これ以上 だと、いきなり乗った初心者はコントロールできなく
るN-ONEオーナーズカップをお勧めし たい。また、このレースには他のレース にはない大きな特徴がある。それは、ベ ース車両がCVTの軽自動車で、タイヤは、いわゆる エコタイヤ限定だということだ。 「お勧めですね、ホントに手軽だし、身近で入りやす いと思うんですよ」と語ってくれたのは阿久津敏寿選 手。全日本ジムカーナ選手権から転向し、N-ONEオ ーナーズカップ参戦7年目を迎えるベテランだ。
て、周りのペースに乗せられてすぐにコースアウトし ちゃうと思います。エコタイヤも、ハイグリップラジ アルに比べれば低グリップですが、限界が分かりやす N-ONEオーナーズカップは、筑波サーキットを含む国内主要サーキッ トを舞台とし、全15戦+ファイナルで競われる。それだけを聞くと、 「そんなにいっぱい、あちこちのレースに出ないといけないの?」と思うか も知れないが、シリーズは有効ポイント制。ランキングは15戦のうち上位 3戦、ファイナルのポイント合計で決まるのでご安心を。 N-ONE OWNER'S CUP 「N-ONEオーナーズ カップは、全国で レースが行われているこ ともお勧めの一つです。北 は十勝スピードウェイか ら、南はオートポリス。観 光も兼ねて全部行きまし た(笑)。シリーズ戦数はす ごく多いんですけど有効 ポイント制で、しかも有効 戦数が少ないので、近場の レースだけ出るも良し、遠 征するのも良しといった 感じで出られるんです。場 所によっては『フュー チャーズレース』という予選で下位の人も出られるレースもあるんですが、ラ ンキング上位の人だけ、逆に下位の人だけが出られるレースもあって、出たく ても全部は出られないんです(笑)。出られる時に出て、出た人は誰もが楽しん でいるっていう雰囲気が、私がN-ONEを長く続けている理由なんですよ」 阿久津敏寿選手 DLヌヴォラーリWMN-ONE [JG3 N-ONE] 「ワンメイクのナン バー付きレースっ て、クルマに差がないの で、抜いたり抜かれたりと いうよりは、サイド・バイ・ サイドの末に接触になる こともありますよね。CPS クラスに出てる方は自走 で来て帰る方が多いので、 今まで見ていても、あまり 接触がないんですよ。みん な紳士的に走っていただ けているというのもある ので、いいシリーズだと思 いますね。国産車に比べる とクラスも少し上なので、そういう点で心のブレーキが効くのかも知れません ね。熱心なファンが多いMINIは、今まではファッション的に楽しむ方が多かっ たと思いますが、これからはクルマを見るだけの楽しみじゃなくて、使う楽し みをもっと提案できたらいいなと思っています」 BMW.MINIで争われるミニ・チャレンジ・ジャパンは「サーキットで 過ごす一日を存分に満喫してもらおう」と、1デイ2レースという フォーマットを採用するのが特徴の一つ。レース2は、レース1の決勝結 果でリバースグリッドとなるので、誰にでも勝つチャンスが広がるよう に配慮されてもいる。20分間+1周で競われる。2021シリーズは富士と 鈴鹿、SUGO、岡山国際で5大会10戦を予定している。 MINI CHALLENGE JAPAN 奥村浩一選手 BRP★MINI岡山F56CPS [XM20 MINI Cooper S] 22
イコールコンディション化は賛成だけど、マシンを 少し自分色に染め上げたい、という志向もあるはず だ。そういう人には指定パーツが豊富に用意されてい
いんです。これ以上グリップすると、サーキットでは タイヤが食って転びやすくなりますしね。コスト的に も低いので、ちょうどいい感じだと思ってますよ」。 今年から新型N-ONE(6速MT車は不可)の混走が 可能で、2014年から開催しているだけに「中古がだい ぶ安く出回るようになってきたので、それを買って始 めるのがお手軽だと思います」と語る阿久津選手。ま ずは近くのホンダディーラーに相談してみては。 コースに合わせたセッティングができる
自動車メーカーやインポーターが支援するNゼロワ ンメイクレースの他にも、参加車両がJAFスピード SA車両またはB車両という開催規定を活用して設け られたのが、ロードスターカップや富士86BRZチャ レンジカップだ。いずれも富士チャンピオンレースが 発祥で、ロードスターカップはJMRC東北シリーズ としてスポーツランドSUGOでも開催されている。 まずは富士スピードウェイのロードスターカップに ついて。このレースは排気量で1.5と1.6、1.8、2.0 とクラスが分けられ、1.5と2.0には、チャレンジと オープンというクラス区分がある。このチャレンジは ロードスター・パーティレースの規則を踏襲してお り、オープンはそこからパーツ交換が許されている。 ND5RCロードスターによる「1.5オープン」が最も お勧めだと語るのは、1.5オープンと、かつて1.6でも チャンピオン獲得経験を持っている茂木文明選手だ。 「NDロードスターはクルマも新しいし、車体もしっ かりしているので、走っていて楽しいんです。特にオ ープンクラスなら足回りが交換できるので、コースに 合ったセット出しができますよ。チャレンジクラスだ と足回りがノーマルなので、コーナーでは少し大変か も知れませんが、その心配はないです。最近のクルマ
なのでメンテ費用も大きくは掛かりませんし、NDロ ードスターの中古価格も下がってきてますからね」。
そして、最近の富士シリーズでは新しいクルマへの 移行が進んでいて、旧型車を買って自分に合った仕様 にするのがいいのでは? と語ってくれたのは、JMRC 東北のロードスターカップを戦う佐藤覚選手だ。 「ロールバーもアシも入ったクルマなので、かなり安 く始められると思います。東北は台数こそ少ないんで
「僕は2017年にNAからNDロードスターに 替えて走っています。当時はNDがまだま だ新車でしか購入できず、まぁまぁ高かったんで すが、今は中古だったら車両価格がだいぶこなれ てきているので、あの頃と比べると、だいぶ始めやすくなっていると 思います。いろんなクラスとの混走になりますが、この1.5チャレン ジは総合で上位も争えるので、参加していても楽しいですよ。ラン ニングコストは、すべてのクラスに当てはまりますけど、そんなに掛 からないという印象です。例えばタイヤですが、レース1戦で1セッ ト、もしくは2戦で1セットでいけますね。セーブして使えば、年間4 戦を1セットで済ませてしまう方もいるようですよ」 宮城県にあるロードスターショップ「ケンオート」が「東北にもマツダ車のワンメイク レースを」と設けられたシリーズ。車両規則は富士のロードスターカップと共通で、相 違点はクラス区分を1.6リットル上下で分けている点だ。ベテランの川崎俊英選手が「ヌシ」 として出場しており、チャレンジャーたちのカベにも目標にもなっているのも特徴だ。 JMRC東北Moty's杯ロードスターカップ 茂木文明選手 JOYアクレMotys☆ND5 [ND5RCロードスターNR-A] 「東北のロードスターカップが始 まった時に、たまたまロードス ターを持っていたんですけど、当時は ナンバーを切ってサーキット走行会 だけで遊んでいたんです。このシリー ズを立ち上げたケンオートの小原(健 一)社長に「せっかくクルマがあるん だし、ナンバー付けてレースやれ」っ て言われて(笑)、そこからですね、始ま りは。ずっとケンオートさんには出入 りしていたので。NAロードスターです が、パーツで困ったことはありません ね。再販してくれるようにもなりまし たし。皆さんが思う以上にたくさんあ りますよ。私は仙台に住んでいて、SUGOは地元です。ここから30分ぐらい(笑)。走れる 時はできるだけ来て、練習するようにしています」 佐藤覚選手 アクロス・NA6[NA6CEロードスター] ロードスターカップ(富士チャンピオンレース) 富士チャンピオン レースで行われて いる、元祖ナンバー付き ワンメイクとも言える 存在が「ロードスター カップ」で、現在も歴代 ロードスターの多くが 参加可能となっている。 クラスは排気量別に分 かれていて、1.5と2.0は さらに改造範囲の違い によりチャレンジと オープンにも分けられ ている。エアロパーツの 装着を最初に可能にし たナンバー付きワンメ イクレースでもある。 巻頭特集 23
ポールを獲れた時は凄く嬉しかったですね(笑)。自分 の目標なんです。富士シリーズの皆さんもぜひ東北シ リーズに遠征して欲しいですね」。
JMRC東北のロードスターカップでは、排気量1.6 リットル上下で2クラスが設けられている。 チューニングが運転技術を補ってくれる
富士スピードウェイの86BRZチャレンジカップ は、以前は「8 Beat(エイトビート)」という名称で、86 とBRZの「チューニングカー」によるレースと謳われ ている。改造範囲とドライバーのスキルでクラスが細 分化されており、本家86/BRZレースの規則を踏襲 した車両が走れるクラスも存在している。 「僕はこのレースの言い出しっぺの一人なんですけど ね」と語るのは常勝ドライバー・たしろじゅん選手。 「よく、チューニングできるとコストが掛かると思わ
「クルマをイジれると、運転技術の足りない部分を補 うこともできるんです。改造できないワンメイクレー スでは、どうしても経験と特殊なウデの勝負になっち ゃいます。特に初心者やプライベーターにとっては、 クルマの性能を少し上げることでバランスが取れる部 分も多いんですよ。そういった方向の魅力があるレー スをやろうという話がきっかけだったんですよね」。 たしろじゅん選手が期待するのは、予定されている 86/BRZレースの新型移行で、旧型が富士86BRZチ ャレンジに新たな活路を見出してくれることだと語る。
オートポリス86/BRZレース
れますが、そういう部分もなくはないですが、逆にお 金が掛からないこともあるんです。例えば、車両規則 でノーマルキャリパーしか使えないとなると、ブレー キに厳しい富士では交換頻度が高くなるので、メンテ ナンスで成り立たせる必要があります。でも、最初か らいいパーツを吟味して使えば、耐久性にも性能にも 優れているので、長い目で見るとコストが安く済んだ すけど、川﨑俊英選手がいてくれるのが 何より大きくて。川崎選手の前で初めて
旧型車の新たな活路というと少々語弊があるもの の、ヤリスカップの開幕に伴い、NCP131ヴィッツで 走れる別のワンメイクレースがすでに始まっている。 今年から富士で始まった「FCR-VItz」や十勝インタ ーナショナルスピードウェイの「N0-VItz」、そして鈴 鹿サーキットと岡山国際を舞台とした「Nゼロ-Vitz 関西シリーズ」。これらは昨年までのヴィッツレース の各規則を踏襲したシリーズだ。 父親の水野泰昌選手が走らせていた競技車両の NCP131ヴィッツを受け継ぎ、今年からFCR-Vitz 「こういうレースを 作ったもう一つ の理由が、昔の富士フ レッシュマンやチャンピ オンレースで有名だった ショップさんが、軒並み 参加していないという現 実ですね。あの時の人た ちが、ショップとして積 み重ねたスキルを発揮で きる場があるべきだと 思ったんです。そういう 人たちをもう一回サー キットに引っ張り出すた めに、チューニング技術を存分に発揮できるようなレースを……と思ったん ですけど、なかなか戻って来てくれませんね(笑)。セッティング能力とか、本 当に速く走るための教材として、こういったクラスは重要だと思ってますの で、これからもしぶとくやっていきます。ワンメイクレースに飽き足りなく なった皆さん、お待ちしていますよ~」 富士チャンピオンレースの86BRZチャレンジカップは、N1車両の 86&BRZとの混走で競われている。同シリーズは公道走行が可能なレ ベルでのエンジンチューニングが許されているため、スリックタイヤを履く N1車両をストレートパフォーマンスで勝り、ドライコンディションであれば 封じこんでしまうほど。ウェットコンディションでは立場は逆転するが……。 富士86BRZチャレンジカップ(富士チャンピオンレース) たしろじゅん選手 AUTOFACTORY86[ZN6 86] 「最近レースをやっていて感じるのは、ぶつかっても『ああ、ごめん』程度で終わっちゃ う雰囲気です。弁償とかじゃなくて、せめてちゃんと謝罪するとか……。それで泣 き寝入りしてレースを諦める人も多いと感じています。オートポリスの86/BRZレースに は延べ25台ぐらい出てたと思いますが、今では10台ぐらい。それでも、ウチの店には新規 のお客さんも多いので、モータースポーツしたいと思う人は減ってないと感じてます。で も、実際にレースに出てもらうには時間は掛かりそうです。これは今まで何も動いていな かったツケなので仕方ないですね。サーキットも積極的に動いてくれるので、これから九 州も変わっていきそうな予感があります。楽しみです」 小笠正範選手 重設工業/医療法人森和会FORC社長86[ZN6 86] 24
り、得るものも多いという考え方もありますよね」。
ワンメイクレースのローカルシリーズ
巻頭特集 FCR-Vitz(富士チャンピオンレース) 「昔はジムカーナをやっていて、 決まったクルマしか勝てなく なって悶々としてたんです。レースも 一生に一度はやってみたいと思って いて、ヴィッツレースなら出られるん じゃないかと飛び込んだら、すごく楽 しくて、もう12年もやってます。当時息子は中学生で、GTなんかを一緒にテレビで観てま したが、免許を取って最初に買ったのが180SXだったので『この子はドリフトか』って 思ってました。今、こうやって一緒にレースができて、共通の趣味があることはすごく嬉し いですね(父・泰昌選手)」「学校ではモータースポーツ学科に通っていたので、興味がな かったわけじゃないんですけど、むしろ、父がやっていたから、こうやってスムーズに始め ることができたので、とても感謝しています。基本的に鈴鹿と富士のレースに出ようと 思っています(泰平選手)」
に使っていたクルマだし、処分するより息子に使って もらう方が嬉しい。何より、FCR-Vitzはちょうどいい 台数なんです。今は20台ぐらいで、多くも少なくも ない。ヴィッツレース時代から走っている仲間もいま すから、やりやすいんじゃないかと思います」と語る。 熟成された車両とあって、安心してレースができる 上に価格も手頃。そういう意味では、初心者やこれか ら始めようとする人には最適なのではなかろうか。 86やBRZについても、すでに岡山国際やオートポ リスにはローカルシリーズが設けられていて、本家 86/BRZレースの登竜門的な存在になりつつある。
メイクの地方レース。富士スピードウェイの「FCR-Vitz」や十 勝インターナショナルスピードウェイの「N0-Vitz」、そして鈴鹿 サーキットと岡山国際サーキットの「Nゼロ-Vitz関西シリーズ」は、 水野泰昌選手/水野泰平選手 NCミッドレスMIRUヴィッツ[NCP131ヴィッツ] ツインリンクもてぎの“Joy耐”にNゼロ専用「もてぎJoy耐チャレンジ」新設 25
「父の影響で自分もレースをやりたいなと思ってまし たが、車両価格にハードルがあって……。ちょうど父 が乗り換えるということで、譲ってもらってレースを 始めることができました。9年経つ個体なんですけど、 まだまだ走りますし、クルマに不安な部分はないです ね。実際にやってみて、かなり楽しめています」。 そんな息子の言葉を受けて、父の泰昌選手は「大事
に出場することになった水野泰平選手に話を聞いた。
今年から新設されたNCP131ヴィッツによるナンバー付きワン
特にオートポリスでは、クラスを二つに分けて、ク ラス1は本家86/BRZレースのクラブマンシリーズ 規定準拠、クラス2にはJAFスピードB車両が参加 できるようになっている。FOREST RACINGの小笠 正範選手はこう語ってくれた。 「オートポリスで86/BRZレースがあると、九州の エントラントもそこそこ参加してくれるのに、オート ポリス86/BRZレースだと台数は今ひとつで(笑)。 練習にもなるし、雰囲気はいいんですけどね。初心者 にはかなり向いていると思いますよ。クラス2はB車 両規定で出やすくしてあって、うちなんかAT車を出 してましたから。来年はヴィッツも一緒に走らせよう よって、とオートポリスとも話しているところです」。 メジャーなレースの華やかさに憧れるのもいいけれ ど、レース業界をじっくり見渡せば、よりフレンドリ ーなシリーズも存在する。Nゼロ車両によるワンメイ クレースは、現在、かなりの選択肢があると言える状 況となっている。どうか、自分に合ったレースを見付 けて、末永くモータースポーツを楽しんで欲しい。 従来のヴィッツレースの規定を適用する。十勝では2代目のNCP91 型の参加も検討されたそうだが、将来的な部品確保が保証できな いということで、他と同様に3代目のNCP131型に限定された。 ツインリンクもてぎで人気を博している「Joy耐」のサポートレー スとして、今年からナンバー付き車両限定の「もてぎJoy耐チャレ ンジ」がスタートした。86/BRZ、Vitz、ロードスター、Lotus、それ 以外の「All.Others」の5クラスで競われ、6月26日に開催された第 1回大会には13台が参加した。この耐久レースは最大3名の登録が 可能で、1回の満タン給油を含めた2回のピットイン義務がある。
孤高の スーパーフォーミュラに挑戦する タチアナ・カルデロン選手の道筋 フォト/石原康、吉見幸夫、ELMS、WEC、Tim Hearn、JAFスポーツ編集部 レポート/貝島由美子、JAFスポーツ編集部 ォーミュラ・ニッポンには、初の女性ドラ イバーとして参戦した選手がサーラ・カバ ナ選手であるという記録がある。そこから 約20年を経て、2020年から国内トップフォーミュラ であるJAF全日本スーパーフォーミュラ選手権に参 戦を開始した女性が、タチアナ・カルデロン選手だ。 彼女は日本でのプログラムと並行して、2020年は FIAインターナショナルシリーズの欧州ル・マン・シ リーズ(ELMS)、今年はFIA世界耐久選手権(WEC) に参戦するというダブルプログラムをこなしている。 新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止対策によ る日本入国後の自己隔離期間は現在も2週間。今年は WECとスーパーフォーミュラのカレンダーの関係か ら自己隔離期間が確保できないため、スーパーフォー ミュラにフル参戦できていない。しかし、今年で28 歳になった彼女は、日本のレースを経験することで、 ドライバーとして一歩一歩成長している。 挑戦はコロンビアから欧州へ 全日本スーパーフォーミュラ選手権で使用されてい るSF19は、FIAフォーミュラ1世界選手権(F1)に最 も近いスピードを持つと言われており、これまでも多 くのF1予備軍が欧州から来日して参戦してきた。 近年では、元F1ドライバーのストフェル・バンド ーン選手や、アルファタウリ・ホンダのエースドライ フ JAF全日本スーパーフォーミュラ選手権 タチアナ・カルデロン選手 タチアナ・カルデロン選手(左)はコロンビア出身のレーシングドライバー。昨年からJAF全 日本スーパーフォーミュラ選手権に挑戦しており、昨年のもてぎ大会では山本尚貴選手との バトルを演じて存在感を示した。姉のパウラ氏(右)はマネージャーとして活動に帯同する。 26
て日本のトップフォーミュラに挑戦することになった わけだが、これまでの彼女のキャリアは多彩だ。 コロンビア出身のカルデロン選手は、子供の頃から カートで速さを見せた逸材。母国を始め北米や中東の 大会でも成績を残しながら、北米インディ・ライツの 下位カテゴリーでフォーミュラデビューを果たす。 その後は渡欧して、英国フォーミュラ3やニュージ ーランドのトヨタレーシングシリーズ、ユーロ・フォ ーミュラ・オープンなどを経て、FIAフォーミュラ3 欧州選手権やGP3、フォーミュラV8 3.5などで研鑽 を積んできた。そして、2018年にはアルファロメオ・ ザウバーF1チームのテストドライバーの座を射止め、 それと同時に、ラテンアメリカの女性として初めて F1マシンをドライブする存在ともなった。 しかし、性別の壁などにも阻まれて、なかなか彼の
地で好成績を出すまでには至っ ていなかった。 「女性ドライバーの場合、欧州 ではチームに入ったばかりの新 人のエンジニアと組まされるこ とが普通だったし、クルマに文 句を言うことも許されなかった の。男性ドライバーは、タイム が出なかった時に『クルマが悪い』って言えるけど。女 性の場合は、チームメイトが作ったセットアップのク ルマをそのまま渡されて、タイムを出してこないとダ メっていう感じだった。男性と女性では肉体的な部分 で差があるからドライビングも違う。だから、私のド ライビングに合わせたクルマになれば、速く走れる自 信はあるんだけど……」。 来日当初、カルデロン選手はそう話してくれた。 新しい環境は“学べる”場所
スーパーフォーミュラで所属することになったのは ThreeBond Drago CORSE。シーズン1台体制のチ
昨年からスーパーフォーミュラを戦う コロンビア出身のタチアナ・カルデロン選手。 2年目となる日本での活動は、 新型コロナウイルス感染症の影響で 難しい状況ながらも着々と前進しつつある。 今シーズンも挑戦を続ける カルデロン選手の序盤戦の現状を追った。
チャレンジ
バーを務めるピエール・ガスリー選手、そして北米の インディカーに参戦して大活躍しているアレックス・ パロウ選手やフェリックス・ローゼンクヴィスト選手 らがスーパーフォーミュラから旅立っていった。
カルデロン選手は、そんな彼らに続くように来日し
コロンビア共和国駐日特命全 権大使のサンティアゴ・パル ド・サルゲロ氏の表敬訪問を 受けたカルデロン選手。故郷 を離れ、あらゆる人々の思い を背負って挑戦する。
んでいる”と口にしており、それは今年も続いている。 何が正しいのかを見極める
ームであり、ベテランのレースエンジニアである伊与 木仁氏が、担当するドライバーに合わせたクルマ作り をしてくれる。その点が、これまでとの大きな違いだ。 伊与木エンジニアは彼女をこう評してくれた。 「欧州では“走り方を変えろ”と言われていたようで、 エンジニアとのコミュニケーションは平行線だったと 聞いています。過去、来日し た欧州のドライバーたちと同 様で、欧州ではクルマのこと を教えてもらう場がなかった んじゃないかと思いますね。 もちろん、日本においても、 こちらから言うべきことは言 いますよ。でも、まだ勉強が 必要な部分はありますけどね」。 「クルマに関しては、最初にパワステの調整を少しや りました。でも、別に女性ドライバーだからというこ とで、セットアップを大きく変えたところはありませ ん。逆にそこは彼女の凄いところだと思いますよ。現
「FUJIでの昨年12月のテストでは、タイヤウォーマ ーがあったし、タイヤが温まっている状態から走り出 せたから問題なかったけど、シーズン開幕前のテスト ではウォーマーがなくて、タイヤをウォームアップす るのが大変だった。前後のタイヤが同時に適正温度に なるように温めないと、クルマのバランスもちゃんと 評価できないし。その点、同じ富士の開幕戦では、4 月ということで気温も路面温度も高くなり、テストの 時のようなことはなくなった」。 「ただ、決勝レース中も、スタート直後の3周とタイ ヤ交換後の3周はやはりウォームアップが難しかっ た。そこで大きくタイムロスしてしまっているし、今 後もっと身に付けなければならないポイントだと思 う。レース終盤で雨がパラついて、ダンプコンディシ ョンになったんだけど、その時にフロントタイヤの温 度をどうキープするかというのも課題だったと思う。 けど、この経験からまた新たに収穫があったと思う」。 カルデロン選手は前向きだ。しかも、昨年の12月 から今年の3月、4月と3回続けて同じ富士を走ったこ とも奏功したのか、今シーズンの開幕戦富士で、彼女 2020年JAF全日本スーパーフォーミュラ選手権 Rd.1 8/29-30 もてぎ 予選19位/決勝12位 Rd.2 9/26-27 岡山国際 (塚越広大選手) Rd.3 10/17-18 SUGO (塚越広大選手) Rd.4 11/14-15 オートポリス 予選18位/決勝16位 Rd.5 12/5-6 鈴鹿 予選18位/決勝13位 Rd.6 12/5-6 鈴鹿 予選19位/決勝12位 Rd.7 12/19-20 富士 予選19位/決勝17位 2020年FIA欧州ル・マンシリーズ(ELMS) Rd.1 7/18-19 ル・キャステレ 総合5位(LMP2) Rd.2 8/8-9 スパ 総合6位(LMP2) Rd.3
ル・キャステレ 欠場 Rd.4 10/10-11 モンツァ 総合10位(LMP2) Rd.5 10/31-11/1 ポルティマオ 総合11位(LMP2) 2021年JAF全日本スーパーフォーミュラ選手権 Rd.1 4/3-4 富士 予選11位/決勝13位
鈴鹿 予選19位/決勝17位
オートポリス (塚越広大選手)
SUGO (塚越広大選手) 2021年
世界耐久選手権(WEC) Rd.1 5/15-16 スパ 総合11位/LMP2 8位
ポルティマオ 総合9位/LMP2 6位 道上龍氏が率いるThreeB ond.Drago.CORSEから参 戦するカルデロン選手。昨 年から復帰したチームだ けに、伊与木仁エンジニア と”一緒に速くなる”こと を目指す。 カルデロン選手の代役として12号車を預 かる塚越広大選手。 28
在のF1直下のカテゴリーを見回しても、ここまで走 れる女性ドライバーはいないと思います」。 しかし、サーキットやクルマ、タイヤ、環境などな ど、日本のレース活動は初めてだらけという状況。彼 女にとっては、やはりイチから学ばなければならない 事柄が多かったのも確かだろう。彼女自身、毎回“学
8/28-29
Rd.2 4/24-25
Rd.3 5/15-16
Rd.4 6/19-20
FIA
Rd.2 6/12-13
は初めて予選Q1を突破した。このまま成長していけ ば、いずれはQ3進出も夢ではないと期待されている。 しかし、スーパーフォーミュラ第2戦の鈴鹿サーキ ットでは、予選と決勝とも下位に沈むことになった。 昨年の第5戦と第6戦の鈴鹿で残した結果をも下回 り、レース後にはガッカリした様子を見せていた。 「フリー走行でのクルマの状態が、あまり自分に合っ ていなくて、そのまま予選に行く自信が持てなかった。 だから、予選に向けてセットアップを変えたんだけど、 それでもまだポテンシャルをフルには発揮できなかっ た。決勝でも、どういうわけかストレートスピードが 上がらなくて苦労したんだけど、まだ何が理由か分か っていないし、それを見つけなければならないと思っ ている。タイヤに関しても、確かにスタート時の内圧 が低ければ走りやすくなるけど、それでタイヤを壊し てしまう可能性もあるから、何が正しいのかという部 分を見つけなければと思っているところなの」。 昨年の鈴鹿大会を終えた時、彼女は「SUZUKAの ようなハイスピードのテクニカルコースを走ったこと で、自分自身が違うドライバーになったと感じる」と 話していたが、まだまだ経験不足な面が露呈した格好 だ。しかしその分、逆に伸び代は残っている。 「一緒に速くなろう」
一方で、ThreeBond Drago CORSEも、昨年から スーパーフォーミュラに復帰したばかり。長年参戦し 続けている他の老舗チームと比べれば、まだまだチー ムとしての経験を積まなければならない部分もある。 伊与木エンジニアも、近年のスーパーフォーミュラ ではまだ分からないことがあるという。だからこそ、 「一緒に速くなろう」という言葉をカルデロン選手に 度々かけているそうだ。伊与木エンジニアは語る。 「欧州では、そう行かない部分もあるとは思います が、彼女には『分からないことは分からない』、『でき ないことはできない』とハッキリ言って欲しいと伝え ています。いいカッコをしたり、嘘をつく必要はな
もあったので、タイヤの状況が悪く なってきても、フリー走行で何周も 周回したりということがありまし た。ですが、現在では無駄にラップ を重ねるのではなく、2周でクルマ の良し悪しを判断しなくちゃダメだ
と言っていて、それを理解してくれて います」。
「また、日本で長く経験を積んでいるドライバーほ ど、細かくはないですけど、ここからクルマをもっと 速くするために、空力でバランスを取ればいいのか、 メカニカルグリップがいるのかなど、どのジャンルで 詰めていけば理想的なのかということも分かってきて います。後はドライビングの部分で引き出しを増やし ていってもらいたいですね。毎回、季節もコンディシ ョンも違うので、そういう引き出しが増えれば、もう 一つ高い次元に行けると思います」。
そのためにも、彼女が出場できない時、塚越広大選 手が走ることは重要だと言えるだろう。彼女が戻って きた時には、そのデータが大いに役立つからだ。
WECの影響でスーパーフォーミュラは第3戦から欠 場が続いているカルデロン選手だが、戻ってきた時に は、また成長していく過程を見せてもらいたいものだ。
い。僕もこのカテゴリーは久々だし、一緒にやってい こうと。彼女もドライバーとしては未完成ですしね。 でも、その中で、もちろん成長はしてきていますよ」。 「昨年は初めてづくしで、慣れなければいけない部分
昨年からカルデロン選手はスー パーフォーミュラと並行して、 女性だけのチーム「リシャール・ ミル・レーシング」からELMS、 今季はWECでLMP2に挑戦し ている。チームメイトは日本と も縁があるソフィア・フレール
JAFモータースポーツYouTubeチャンネル JAF WOMEN IN MOTORSPORT International Womenʼs Day 2021 日本自動車連盟(JAF)は女性のモータースポーツ参加促進を目的に、国際自動車連盟(FIA) が提唱するFIA.WOMEN.IN.MOTORSPORTの活動に賛同し、日本国内でも推進するため、 JAFウィメン・イン・モータースポーツ作業部会を組織しています。 モータースポーツの世界は、想像以上に競技もお仕事も多種多様で す。みなさんの興味を活かせるフィールドを、ぜひご覧ください。 JAFウィメン・イン・モータースポーツ作業部会は、国際女性デー 2021に、国内モータースポーツの第一線で活躍する7名の女性の声 をお届けします。 孤高の チャレンジ 29
シュ選手とベイスク・フィッ セール選手だ。
ジ ムカーナ競技は、決勝コースは たいてい当日の朝に発表され る。公式掲示板に貼り出された コース図を元に慣熟歩行で自分のドライビ ングを作り上げ、わずか2回の決勝ヒート でその走りを実践する……。大会毎にコー スが変わり、走行時間も90秒程度である ジムカーナは、ミスを犯しやすく、取り返 すことも難しいカテゴリーだ。 路面状況もサーキットのようには安定し ておらず、レコードラインがあるわけでも ない。そのため、慣熟歩行で路面状況やコ ーナリングのアプローチなどを確認して、 走らせ方を自分で組み立てる必要がある。 果たしてそれがトップタイムを計測でき る走りなのかどうかは、実際に走ってみな いと分からない。しかも、自分がイメージ
したとおりに走れるかどうかという問題に ついても、走り出さないと分からない。 最高峰の全日本ジムカーナ選手権になる と、その走りも千差万別だ。ある者はコー
る者は本能剥き出しでアグレッシブに駆け 抜ける。しかも、彼らのスタイルがどんな に違っていても、叩き出したタイムは、最 終的にはコンマ差の争いになっている。 全日本ジムカーナは“ドライビングテク ニックの見本市”と言える競技なのだが、 トップドライバーたちは、どんなことを意 識してコース攻略に挑んでいるのだろう か? 自身の走りを自ら分析してもらった。 コンパクトに走るか ボトムスピード重視か まず注目したいのが、EF8 CR-XでJG4 クラスを戦う若手ドライバー小武拓矢選手 で、「自分は可能な限り、コンパクトな走 アプローチ 勝利 につなげる 全日本ジムカーナドライバーに聞く 勝てるコーナリングの組み立て術 パイロンめがけてブレーキングしながら飛び込むマシン。 わずかにロックした後輪は、綺麗に流れて鋭く立ち上がる。 “ドラテクの見本市”とも言われるジムカーナは、 同じコースレイアウトでも、実は走らせ方は千差万別だ。 ここでは、全日本ジムカーナのトップドライバー達に、 勝利を呼び込むドライビングアプローチを聞いた。 フォト/小竹充、廣本泉 レポート/廣本泉、JAFスポーツ編集部 30
ナーを無駄なくコンパクトにクリアし、あ
りを意識しています」と語る。
「CR-XはライバルであるEK9シビック よりもパワーが少ないので、できるだけ早 めに向きを変えて、コーナーの立ち上がり でなるべく早くアクセルを踏むようにして います。サーキットコースでもパイロンコ ースでも、コーナーへの進入速度を多少落 としてでも、立ち上がりを意識した走りを 心掛けています」とのことだ。
一方、小武選手とは対照的なアプローチ でコース攻略に挑んでいるのが、EK9シビ ックでJG4クラスに参戦しているベテラ ンドライバー、安木美徳選手だ。 「自分はボトムスピードを上げることを優 先してライン取りを選んでいます。ある程 度コーナリングスピードを高めたいので、 ブレーキングもできるだけ制動時間を短く するように組み立てています」とのことだ が、これは、クルマとブリヂストンタイヤ の特性を考慮した、パッケージを生かした アプローチということだ。
なるべく早くアクセルを踏むようにしてます」
きるだけ早めに向きを変えて、立ち上がりで、
今回は全日本ジムカーナのパドックで自 身のドライビングについて上位ランカーに ポイントを尋ねたが、小武選手のようにコ ンパクトかつ立ち上がりを重視するドライ
全日本ジムカーナ選手権JG4クラス シンシアYHワコーズCRX艶々[EF8改 CR-X] 小武拓矢選手 C「 R - X はライバルよりパワーが少ないので、で
「昨 年まではあまり意識してませんでしたが、今年になって、 ようやく自分のドライビングを意識するようになったん です。特にライン取りを考えるようになりましたね」
全日本ジムカーナ選手権JG3クラス YH若林自ITO速心インテグラ[DC2インテグラ] 若林拳人選手
が、「実は昨年までは、自分のドライビン グを意識したり分析したり、ってコトをあ んまり考えてなかったんですよ。でも、今 年になって、ようやく自分のドライビング 慣熟歩行で組み立てる 決勝コースは一期一会 全日本ジムカーナ選手権JG4クラス BSスノコATSシビック4F4[EK9シビック] 安木美徳選手 「自分はボトムスピードを上げることを優先してライン取りを 選んでいます。コーナリングスピードを高めたいので、ブ レーキングもできるだけ短くするよう組み立てています」
ジムカーナは平坦な舗装路にパイ ロンなどを置いてコースを作るた め、サーキットで開催されたとし ても、ベストなラインは必ずしも 一つではない。そのため当日発表 されたコースレイアウトに従って 慣熟歩行を行い、自分が最速だと 考えるライン取りや走らせ方を組 み立てる。そして、そのイメージを しっかり実行して、それが正解(ベ ストタイム)だった選手だけが勝 利の栄冠を獲得できるのだ。 31
バーと、安木選手のようにボトムスピード を重視するという意見に分かれていた。 いずれも、クルマとタイヤのパッケージ を最大限に生かすためのアプローチだとい うことだったが、この両者の意見を俯瞰す ると、攻略のポイントとして浮かび上がる のが、“ライン取り”だと言えるだろう。 ちなみに、DC2インテグラでJG3クラ スを戦う若林拳人選手は、全日本デビュー 以来、常にチャンピオン争いの立役者とし て存在感を示してきた期待の若手なのだ を意識するようになったんです。特にライ ン取りを考えるようになりましたね」と、 新たなアプローチを模索している。 ジムカーナにおける ベストなラインとは AP1 S2000でJG2クラスに参戦する広
よう。対して、ライバルとは別の車種で挑 むドライバーは、ノウハウも自分オリジナ ルで戦う必要があり、話を聞くと愛車に合 わせた独特な対応を行っているようだ。 「S 2000というクルマは、他車種と比べて特別なアドバンテー ジがあるクルマではないので、自分は中低速でもない高速 でもない“中途半端なところ”でタイムを稼いでいます」 単純な1本パイロンのターンでも、局所的な“ターン”だと捉えるのか、前後の繋がりを意識して”コーナーの一 部”だと捉えるのかは選手によって千差万別。多くの選手がサイドを引く場所でサイドを引かない場合もある。そ れは前後で取り返せるのかどうかのせめぎ合いで、あらゆる天秤をかけながら約90秒のアタックに挑んでいる。
考えています。例えば、最初のコーナーで 進入するラインを間違えると、立ち上がり で膨らんだり、次のコーナーのアプローチ がキツくなったりして、最初の間違いが後 に影響していっちゃうんですよね。シワ寄 せが後に影響する状況では、進入速度を落 としても、ベストなラインをトレースする ことが重要だと思っています」とのことだ。 車種特性に合わせた 少数派のアプローチ 全日本ジムカーナの上位ランカーは、そ れぞれ哲学とも言える自分だけの走らせ方 を持っている。しかし、それらは同じ車種 で戦うライバルと比較できるからこそ、よ り明確にできるアプローチでもあると言え 全日本ジムカーナ選手権JG2クラス マロヤトレーラーS二千亜舎YH[AP1 S2000] 広瀬献選手
瀬献選手は「最も重視しているのはライン 取りです。ボクは大会には金曜の練習会か ら参加していますが、3日間をかけて、最 適なライン取りを選んでいます」と語る。 広瀬選手によれば「S2000というクルマ は、ストレートが速いとか、コーナリング が速いとか、他の車種に比べると特別なア ドバンテージがあるわけではないんです。 実際コーナリングに関してはエキシージが 速いという印象がありますしね。逆に言え ば、ボクは中低速でも高速でもない“中途 半端なところ”でタイムを稼いでいるんで す。それもやはりライン取りがポイントだ と思っていて、舗装の状況も場所によって 違うので、金曜から色々なライン取りを試 すようにしています」とのこと。 さらに「サーキットを使ったジムカーナ
全日本ジムカーナ選手権JG1クラス DL☆itzz☆URGランサー[CZ4Aランサー・エボX] 津川信次選手 「高速セクションでミスしてしまうとリカバリーが難しいの で、自分は『ミスをしない』ということを意識しています。 その中で最も大切なのはライン取りだと考えてますね」 32
と違って、パイロンコースの方がライン取 りの自由度は高いと思っています。そし て、ベストなラインを見付けられたら、そ れをトレースする方を重視しています。コ ーナーでの進入速度を多少落としても、ベ ストラインを走ることがタイムアップに繋 がると考えてますね」と付け加えた。 広瀬選手と同じ考え方を持つのが、 CZ4AランサーエボリューションⅩで JG1クラスを戦う津川信次選手だ。 「自分が意識しているのは、技術的な面と しては、スタートして最初に行うアクショ ンでもあることからブレーキが重要だと考 えています。後は、高速セクションでミス をするとリカバリーが難しいので、『ミス をしない』ということを意識しています。 その中で、最も大切なのはライン取りだと 注目したいのが、今年から新設された JG10クラスにZC33Sスイフトスポーツ で参戦している織田拓也選手だ。このクラ スはオートマチック限定免許で運転できる 2輪駆動のP・PN・AE車両を対象として おり、これまでEK9シビックのSA車両で 戦ってきた若手である織田選手も、2ペダ ルによる新たなドライビングを構築中だ。 「スイフトスポーツにはレバー式のパーキ ングブレーキがあるので、ターンも比較的 容易にできますね。AT車を選んだことで シフトとクラッチ操作がなくなったので、 よりステアリング操作とアクセル、ブレー キに集中できるようになりました。2ペダ ルの場合、エンジン回転数を早めに上げた
いので、アクセルもかなり早めにオンにす るように心掛けています」とのことだ。 また、Z34フェアレディZでJG7クラス に挑む河本晃一選手も「車両重量が1.5ト ンと重たいマシンなので、ライバルである アバルト124スパイダーと同じようなド ライビングはできないんです」と語る。 重量級モデルならではのドライビングを 実践しているそうで「実は、他の車種と比べ ても最大のGは変わらないんですが、軽い クルマならすぐに反応してくれる状況でも、 重たいクルマで急な操作をしてしまうと破 綻しやすいんですよね。そのため、アクセ ルやブレーキ、ステアリングにしても、ワ ンテンポ早めに動かして、できるだけスム ーズなドライビングにしています。この考 え方は、全日本であったり、重量級のクル マに限ったことではなく、地方選手権など ではハイグリップタイヤが規制されている こともありますが、そういうグリップの高 くないタイヤを履いた場合にも応用できる テクニックだと思います」と語る。 無駄なミスを起こさない スムーズなドライビング この「スムーズなドライビング」について は、ジムカーナでは大切なテクニックの一 つと考える意見も多く、全日本ジムカーナ 選手権の第3戦「広島トヨペットカップ ジムカーナIN TAKATA」に併設された”箱 D”クラスに参加したベテランドライバー、
と、細かくロスしたり、時には大きくロスする 可能性があるんです。なので、スムーズなドラ イビングを心掛けることが重要だと思います」 全日本ジムカーナ選手権 2011年/2008年/2006年チャンピオン 川脇一晃選手
必要なアプローチなので、やはりスムーズ なドライビングを心掛けることが重要だと 思いますね」とのことで、丁寧なドライビ ングもジムカーナ競技においてはコース攻 略のひとつのテクニックと言えそうだ。 全日本ジムカーナは今シーズンから改造 範囲が異なる車両が混走するクラス区分に 変更されている。それでも各クラスでは僅 差のバトルが継続しており、最速タイムを 奪い合う全日本ジムカーナの戦いは、駆動 方式の違いを超越して激化する傾向だ。 もともと全日本ジムカーナは車種バリエ ーションが豊富で、タイヤも3メーカーの コンペティション状態になっている。それ 「 現 役時代からスムーズさを心掛けてきま した。粗いドライビングをしてしまう
全日本ジムカーナ選手権JG10クラス リジットDLレイズeTスイフト[ZC33Sスイフトスポーツ] 織田拓也選手 「今年からAT車を選んだことで、シフトとクラッチ操作がなく なったので、今までよりもステアリング操作とアクセル、 ブレーキ操作に集中できるようになりました。」 サーキット走行に比べるとトリッキーな動きを見せ るジムカーナの走り。運転席では自らが描いた“正 解”を追求する格闘が繰り広げられているのだ。 33
川脇一晃選手も、現役時代を振り返ってこ う語ってくれた。 「自分が全日本ジムカーナ選手権を戦って いた時は、できるだけスムーズなドライビ 全日本ジムカーナ選手権JG7クラス Zニスモ.バージョンF.BS[Z34フェアレディZ] 河本晃一選手 「軽いクルマならすぐに反応してくれる状況でも、重たいクル マで急な操作をすると、クルマが破綻しやすいんですよ。 そのためワンテンポ早めに、スムーズに動かしています」
ングをするように心掛けていました。ドラ イビングテクニックとしては、やはりブレ ーキが最も大切だと考えていて、現役ドラ イバーを見ても、JG1クラスの津川信次選 手のように、ブレーキングが上手くないと 全日本では勝てないと思っています。ざっ くりとした言い方ではありますが、粗いド ライビングをすると、細かく、そして場合 によっては大きくロスしてしまう可能性が 高くなってしまうんですよね。そういうリ スクを排除していくこともジムカーナでは にも関わらず、コンマ差の争いが展開され る理由は、全日本ドライバーの腕が拮抗し ている証とも言える。いささかディープな 部分ではあるが、個性的なスタイルを持つ 各ドライバーが、それぞれの考え方に基づ いて渾身のアタックを披露している。全日 本ジムカーナの見どころは、この参加選手 それぞれのアプローチにあるのだ。
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コロナ禍の影響により、F1、WEC、WRCという各FIA 世界選手権競技会の国内開催が中止に追い込まれたものの、 FIAインターナショナルシリーズスーパーGTや全日本ス ーパーフォーミュラ選手権は2020年7月以降、開催日を延期し て順次開幕しました。国内レース競技再開に向けては、シリー ズオーガナイザーやサーキットと連携し、感染拡大防止対策な ど安全な開催の支援に努めました。
また、モータースポーツファンの裾野を広げるために、オリ ジナルのモータースポーツ番組をWEBで月2回配信したほか、 TwitterなどのSNSを活用し、ファンに向けて情報を発信しま した。
JAFグランプリについては昨年に引き続き、各種の支援・協 力を行いました。 詳細は以下の通りです。 注)以下のデータのうち*印は、2020年1月~12月までの1年 間の実績です。
国際(A・B・C・R)
国際ソーラーカー
国内A
1級 3,061 3,036 100.8 2級 4,987 5,071 98.3 3級 10,721 10,540 101.7 小 計 18,769 18,647 100.6 エキスパートライセンス 7 7 100.0 合 計 65,516 66,043 99.2
534 98.8
1,163 99.3
【ライセンス発給件数 四輪*】 分 類 ライセンス種別 2020年 2019年 前年比(%) ドライバー 1級 330 347 95.1 2級 196 198 98.9 3級 769 775 99.2 小 計 1,295 1,320 98.1 エキスパートライセンス 5 5 100.0 合 計 5,194 5,331 97.4 (5)登録クラブの活性化への寄与 ① 合計943件*のJAF登録クラブ・団体の登録を行っ た。
ライセンス 2020年度 事業報告ならびに収支報告 (2020年4月1日より2021年3月31日まで) 35
全日本選手権および地方選手権競技会として認定した 合計337件*の競技会のうち、全日本選手権等66競技*(四 輪、カート合計)に競技会審査委員を派遣し、規則の施行を 徹底した。 【選手権競技会等認定件数*】 種 別 内 訳 件 数 レース 全日本選手権 スーパーフォーミュラ 7 スーパーフォーミュラ・ライツ 6 地方選手権 FIA-F4 4 JAF-F4 8 スーパーFJ 28 フォーミュラリージョナル 6 ツーリングカー 13 ラリー 全日本ラリー選手権 10 地方ラリー選手権 33 ジムカーナ 全日本ジムカーナ選手権 8 地方ジムカーナ選手権 61 地方サーキットトライアル選手権 13 ダートトライアル 全日本ダートトライアル選手権 8 地方ダートトライアル選手権 60 カート 全日本カート選手権 27 地方カート選手権 23 ジュニアカート選手権 22 合 計 337 ※レースおよびカートについては、大会数を件数として記載しています。 (2)競技会の公認 ① 合計285件*の競技会を公認した。うち国際格式は15 件*であった。なお、予定されていた3つのFIA世界選 手権競技会(F1、WEC、WRC)は新型コロナウイル ス感染拡大の影響により中止となった。 【競技会公認件数*】 種 類 2020年 (クローズド含む) 2019年 (クローズド含む) 前年比(%) (クローズド含む) 四輪 レース 64 87 73.6 ラリー 38 77 49.4 スピード競技 151(331) 260(542) 58.1 カート 32(104) 52(135) 61.5 合 計 285(537) 476(841) 59.9(63.9) ② 「オートテスト」を75回*開催し、延べ2,563名*が参加 した。 (3)車両公認 国内車両公認申請26件*を承認した。 (4)モータースポーツライセンスの発給 ① 四輪各種ライセンス65,516件*、カート各種ライセン ス5,194件*を発給した。 ② 5月、7月および10月に実施したライセンス更新促進策 (はがきタイプの更新案内)では46,560件を取扱った。
ドライバー ライセンス 国際(A・B・C) 528
国内A 1,155
国内B 1,748
ジュニア国際
ジュニア国内(A・B)
小 計
1 国内モータースポーツ活動の充実 (1)選手権競技会の認定 3,737 97.2 エントラント ライセンス 国際 41 42 97.6 国内 217 227 95.5 小 計 258 269 95.9 オフィシャル ライセンス
2,958 2,920 101.3
84 150 56.0
18,494 18,609 99.3 国内B 24,531 24,939 98.3 小 計 46,067 46,618 98.8 エントラント ライセンス 国際 267 330 80.9 国内 406 441 92.0 小 計 673 771 87.2 オフィシャル ライセンス
【ライセンス発給件数 カート*】 分 類 ライセンス種別 2020年 2019年 前年比(%)
1,823 95.8
17 20 85.0
188 197 95.4
3,636
四輪
特別団体 9 9 100.0
公認団体 6 6 100.0
加盟団体 28 27 103.7 準加盟団体 14 17 82.3
公認クラブ 22 22 100.0
特別団体 4 4 100.0
加盟団体 16 18 88.8
公認コース団体 11 12 91.6
加盟クラブ 355 362 98.0 準加盟クラブ 399 402 99.2 小 計 833 845 98.5 カート
加盟コース団体 11 10 110.0 公認クラブ 6 6 100.0 加盟クラブ 37 37 100.0 準加盟クラブ 25 26 96.1 小 計 110 113 97.3 合 計 943 958 98.4
(6)JAFグランプリの開催 12月に三重県の鈴鹿サーキットで開催された全日本ス ーパーフォーミュラ選手権「JAF鈴鹿グランプリ」の開催 にあたり、支援・協力を行った。 (7)JAFモータースポーツ表彰式の開催 2020年JAFモータースポーツ表彰式は新型コロナウ イルス感染症拡大防止のため、オンラインによる表彰式を
実施した。
オンライン表彰式では、全日本選手権カテゴリーおよび FIA-F4シリーズ、スーパーGTシリーズ、フォーミュ ラリージョナル、ジュニアカート選手権のチャンピオンと 上位入賞者を表彰した。 また、2020年インディカー・シリーズ第7戦インディアナ ポリス500マイルレース(インディ500)において優勝 した佐藤琢磨氏、2019/2020年FIA世界耐久選手権第 7戦ルマン24時間レースにおいて総合優勝した中嶋一貴 氏、2019/2020年FIA世界耐久選手権LMPドライバ
策について引き続き検討を行っていく。 (2)デジタルモータースポーツ部会の設置 国内競技規則を一部改正(日本国内のデジタルモーター スポーツ統轄権明示、本年9月1日適用)し、現行作業部会と して設置している当該種目のデジタルライセンス発給を含 む管理統轄の促進を図るため、2021年からデジタルモータ ースポーツ部会を設置することとした。今後、デジタルモー タースポーツに係る事項については同部会にて鋭意検討を 行う予定。
② 全国8地域のJAF登録クラブ地域協議会との連絡会
議を7月、11月に開催した。 【JAF登録クラブ・団体の登録件数*】 分 類 2020年 2019年 前年比(%)
ーズチャンピオンを獲得した小林可夢偉氏、全日本ラリー 選手権ナビゲーター部門において11年連続チャンピオン を獲得した井上裕紀子氏、2019/2020年FIA世界耐久 選手権LMP1チャンピオンを獲得および2019/2020年 FIA世界耐久選手権第7戦ルマン24時間レースにおいて 総合優勝をしたTOYOTA GAZOO Racingに「JAFモータ ースポーツ特別賞」を贈呈した。 (8)説明会の開催 ① 全日本ラリー選手権オーガナイザー会議、オーガナイ ザーセミナーを2月に開催した。 ② 全日本ジムカーナ/ダートトライアル選手権オーガナ イザー会議を1月に開催した。 2 各種モータースポーツ振興策の推進 (1)モータースポーツ振興委員会の活動 モータースポーツ振興策についての検討を行うため立ち 上げられたモータースポーツ振興委員会は、2020年度にお
トトライアル、ドリフト、オートテストなど競技種目が多岐 に渡っており、専ら走行する路面により所轄する競技種目 を分派することにより、夫々の競技種目の更なる振興・発展
3 モータースポーツ各種委員会の開催、運営 モータースポーツ審議会をはじめ各種委員会を合計62回* (各部会に属する作業部会の開催数を含む)開催した。 【委員会開催件数*】 委員会名 回 数 モータースポーツ審議会 3 モータースポーツ審査委員会 0 モータースポーツ振興委員会 3 登録部会 7 安全部会 3 メディカル部会 4 技術部会 4 マニュファクチャラーズ部会 5 レース部会 3 ラリー部会 5 スピード競技部会 14 電気・ソーラーカー部会 4 カート部会 7 合 計 62 4 モータースポーツ関係規則の制定、改正 「国内競技車両規則」等、各種モータースポーツ関係諸規則 (21件)を制定または改正した。 5 安全対策の推進 (1)レーシングコース査察および許可証の発給 JAFコース査察員による国内/国際レーシングコース 査察をそれぞれ実施し、JAF国内モーターレーシングコ ース許可証(16件、13ヵ所)*を発給した。 (2)スピード競技コース査察および許可証の発給 36
いては新型コロナウイルス感染症によりスポーツ界全体の 動きが停止する中でデジタルを有効活用する必然性に着目 し、デジタルを活用したモータースポーツ振興の諸施策の 検討を行った。2021年度においてもモータースポーツ振興
(3)スピード競技ターマック部会およびスピード競技ダート部 会の設置 2021年から、モータースポーツ専門部会の1つである「ス ピード競技部会」を「スピード競技ターマック部会」と「スピ ード競技ダート部会」の2つに分派して設置することとした。 スピード競技は、ジムカーナ、ダートトライアル、サーキッ
に寄与することを目的としている。
JAFコース査察員によるジムカーナコース(4ヵ所)*、ダ ートトライアルコース(2ヵ所)*の査察をそれぞれ実施し、
JAFスピード競技コース許可証(ジムカーナ49件、ダート トライアル17件)*を発給した。
(3)救急医療体制の充実
競技会での救急医療体制充実のため、富士スピードウェ イ等でコロナ禍における医療体制の視察を行った。
(4)救急活動訓練の実施
競技参加者および競技役員を対象としたラリー救急活 動訓練を8回(実技5回、オンライン3回)実施した。
6 モータースポーツ広報の拡充
(1)JAF会員向け機関紙「JAF Mate」に、モータースポ ーツに関するコラム記事を毎号掲載した。
(2)JAFホームページにて、オリジナルのモータースポーツ 情報番組「JAF MOTOR SPORTS NEWS DIGEST」を月2 回配信し、ファンに向けて様々な情報を提供した。
(3)Twitterのモータースポーツ専用アカウントを活用し、全日 本選手権競技会の開催情報をはじめ、参加者および観戦者 に向けたモータースポーツに関する情報を発信した。
(4)コロナ禍の日本を元気づけようと「モータースポーツのチ カラ!」を合言葉に有名ドライバーからのメッセージ動画 をSNSで発信した。
(5)女性のモータースポーツへの参加促進を目的とした「ウィ メン・イン・モータースポーツ」活動PRのため、イベントへ の協力等を実施した。
(6)2020年JAFプレスパスを、審査のうえ38名に発行した。
大会をもって終了する旨リリースを行った。
10 収支報告
2020年度におけるモータースポーツ業務に直接係わる収 入は約3億円(事業収入(ライセンス所有者の会費を除く):クラ ブ・団体登録料、ライセンス発給料、競技会組織許可料、車両公 認料等)、支出は約5.7億円(事業費:委員への謝金・出張費、選手 権管理用器具の購入・管理費、JAFスポーツ誌製作費、WEB 製作費等)であり、収支差額2.6億円の赤字となりました。 コロナ禍による出張費等の削減により、支出は昨年度に比べ 約0.5億円減少しましたが、新型コロナウイルス感染防止対策 に係る特例措置を講じた影響により、収入は昨年度に比べ約1 億円の減収となりました。
11 罰金等の金額について 公認競技会で納められた罰金および没収された抗議料また
FIAの活動に参加し、その連携を強化するため、JAFの 役職員、モータースポーツ関係委員が各種会議に出席した。 【FIA会議等への出席*】 会議等 回 数 FIA総会 1 世界モータースポーツ評議会 4 専門委員会 29 作業部会 1 CIK委員会 1 その他 3 【海外競技参加出場証明書の発行数*】 レース 12 ラリー 11 カート 15 スピード 1 数次用(四輪) 92 数次用(カート) 12 合 計 143 8 カート競技における安全対策の推進と開催促進 (1)安全対策の推進 国内カートコース(2ヵ所)の査察を実施した。 (2)選手権競技会開催の支援 ① 全日本、地方、ジュニアカート選手権競技会を認定する
7 国際組織等との国際交流の推進
とともに、規則の施行を徹底するため、競技会審査委 員を派遣した。 ② チーフオフィシャル会議を2月に開催し、競技運営に 対する指導を行った。 (3)市街地公認競技会開催 2020年9月、島根県江津市にて市街地レースが開催され た。日本国内で公道を使用した公認レースの開催は、四輪、 カートを通じて史上初めて。 9 電気・ソーラーカーレースの振興 「ソーラーカーレース鈴鹿」の開催支援 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、参加者および関係 者の安全を考慮し、7月に予定されたFIA Electric & New Energy Championship「ソーラーカ ーレース鈴鹿2020」の開催を中止した。 また、11月には「ソーラーカーレース鈴鹿」の開催を、2021年
は控訴料の2020年度末の残高は以下のとおりです。 なお、罰金および没収された抗議料または控訴料は、国内競 技規則11-8(罰金収入の措置)に従ったJAFの特別基金に繰 り入れ、モータースポーツの振興および福祉目的のために使用 しています。 2020年度末罰金残高 12,514,104円 <内訳>2019年度罰金等残高 14,101,490円 2020年度罰金等総額 1,725,127円 2020年度の措置等(支出)総額 3,312,513円 以上 37
2021年04月15日 [2021-WEB021] 2021年JAF日本ラリー選手権競技会の開催日程等変更について 2021年04月19日 [2021-WEB022] 2021年JAF日本ラリー選手権競技会の開催日程変更について 2021年04月20日 [2021-WEB023] 2021年JAFモータースポーツ賞典規定 2021年04月21日 [2021-WEB024] 2022年日本ジムカーナ/ダートトライアル選手権規定の制定 2021年04月21日 [2021-WEB025] 2022年JAFカップオールジャパンジムカーナ/ダートトライアル規定の制定
2021年04月23日 [2021-WEB026] 登録車両申請一覧表
2021年04月26日 [2021-WEB027] 2021年JAF日本ラリー選手権開催日程等の変更について 2021年04月27日 [2021-WEB028] ロールケージ公認申請一覧表 2021年04月30日 [2021-WEB029] 2021年FIA.WRC.Rally.Japan.2021の開催内容変更について 2021年05月06日 [2021-WEB030] 2021年JAFオートポリススーパーFJ選手権の日程変更について
2021年05月14日 [2021-WEB031] 2021年日本ダートトライアル選手権開催日程等の変更について 2021年05月18日 [2021-WEB032] 2021年JAFモータースポーツ表彰式の開催日程について 2021年05月18日 [2021-WEB033] 「FIAインターナショナルシリーズ.SUPER.GT.適用車両規則」の改正について
2021年05月19日 [2021-WEB034] 2021年全日本ダートトライアル選手権の延期および開催日程変更について 2021年05月20日 [2021-WEB035] 2021年日本ジムカーナ選手権の中止について 2021年05月21日 [2021-WEB036] 2021年日本ジムカーナ/ダートトライアル選手権競技会の開催日程変更について 2021年05月21日 [2021-WEB037] 2021年JAF日本ラリー選手権の開催内容変更について
2021年05月24日 [2021-WEB038] 登録車両申請一覧表
2021年05月25日 [2021-WEB039] 2021年日本ジムカーナ選手権競技会の開催日程変更について
2021年05月28日 [2021-WEB040] 車両公認申請一覧表
2021年05月31日 [2021-WEB041] 2021年日本ダートトライアル選手権の延期について 2021年06月02日 [2021-WEB042] 2021年日本ジムカーナ選手権の延期について 2021年06月03日 [2021-WEB043] 登録車両申請一覧表
2021年06月08日 [2021-WEB044] 2021年全日本ダートトライアル選手権第4戦、第6戦の延期について 2021年06月09日 [2021-WEB045] 登録車両申請一覧表/各種部品公認申請一覧 2021年06月09日 [2021-WEB046] 2021年FIAインターナショナルシリーズの日程変更について 2021年06月11日 [2021-WEB047] 2021年JAF日本ラリー選手権の開催変更について 2021年06月11日 [2021-WEB048] 2021年日本ジムカーナ選手権競技会の開催中止、開催日程変更について 2021年06月17日 [2021-WEB049] 2021年JAF日本ラリー選手権競技会の開催内容変更について
プロドライバーがかつて歩んだ道。 若者に伝えたいこと 38 INFORMATION fromJAF モータースポーツ公示・お知らせ(WEB)一覧(2021年3月26日~2021年6月30日) 公示(四輪) 日付 公示No. タイトル 2021年03月31日 [2021-WEB017] 新型コロナウイルス等防止対策に係る対応について(2021年3月31日版)
[2021-WEB018] 講習会開設規定の一部改正について
2021モータースポーツイヤーブックの誤記訂正について
2021年04月01日
2021年04月05日 [2021-WEB019]
2021年04月12日 [2021-WEB020] 2021年全日本レース選手権開催日程の変更について
公示(カート) 日付 公示No. タイトル 2021年04月19日 [2021-WEBK05] 2021年地方カート選手権開催日程の変更について 2021年04月30日 [2021-WEBK06] 2021全日本/ジュニアカート統一規則の誤記訂正について 2021年05月10日 [2021-WEBK07] カートヘルメットのFIA公認取得について お知らせ 日付 タイトル 2021年04月26日 新型コロナウイルス関連のお知らせ(2021年4月26日版) 2021年05月10日 JAFスポーツ誌デジタル化に対する意見公募について 2021年05月17日 JAFスポーツ誌デジタル化に対するご意見募集フォームはこちら 2021年05月19日 モータースポーツウェブサイトリニューアルに伴う一部コンテンツ更新停止のお知らせ 2021年06月30日 モータースポーツウェブサイトリニューアルに伴う一部コンテンツ更新停止のお知らせ ※上記公示・お知らせ(WEB)一覧の詳細は、JAFモータースポーツホームページ(http://jaf-sports.jp/)内の「公示・お知らせ」で閲覧することができます。 JAF モータースポーツ名誉委員の澁谷道尚氏(85 歳)が、4 月 22 日逝去されました。 澁谷氏は、国内モータースポーツ黎明期の「日本アルペンラリー(1959 ~ 1976 年)」の競技長を務められ、初代ラリー小委員会委員長 やラリー審査委員グループリーダーなどの役職を歴任し、永年に亘りモータースポーツの発展にご尽力されました。 2010 年には、モータースポーツの発展に著しく貢献したとして、モータースポーツ名誉委員の称号が贈呈されました。 ここに謹んでご冥福をお祈り申し上げます。 一般社団法人 日本自動車連盟 訃報
れるようになってきた。そこに今季、脇阪 氏や伊沢氏、井出氏らの3氏が新しいチー ムを率いて参入。これが全日本カート選手 権(特に最高峰のOK部門)に新鮮な熱気を もたらしている。カートのことに疎い四輪 レースファンが今の全日本カート選手権の パドックを訪れたら、名だたるレーシング ドライバーたちが何人もいる光景に驚くの ではないだろうか。 実のところ、プロのレーシングドライバ ーがカートに関わってきた事例は、過去に
阪寿一氏、伊沢拓也氏、井出有 治氏が挑む。そして高木虎之介 氏、安田裕信氏、道上龍氏が受 けて立つ……。これは四輪レースの話では なく、2021年の全日本カート選手権のこ とだ。しかも彼らはドライバーとしてでは なく、レーシングカートチームのオーナー や監督として参戦している。 全日本カート選手権では約10年ほど前 から、カートから巣立って四輪レースの世 界で成功を収めたプロドライバーたちが、 自らのチームを立ち上げるなどして、再び カートレースの現場に戻ってくる姿が見ら
脇️ フォト/小竹充、長谷川拓司、JAPANKART、JAFスポーツ編集部 レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部
その視線の先には、将来のモータースポーツをより盛り上げていくための、 若手カーター育成にかける情熱が存在する。プロたちが用意する環境で、 カートを通じて選手たちに何を思い、何を学んでほしいかを探っていく。 タルカートコース『フォーミュランド・ラ ー飯能』の新オーナーに就任した。本山哲 氏も比較的早い時期から『TEAM MOTOY AMA』を立ち上げ、2018年まで全日本カ ート選手権を戦っていた。 彼らプロのレーシングドライバーはどん な思いでカートのフィールドでの活動を始 め、未来にどんなビジョンを描いているの だろう。今季の全日本カート選手権にチー ムオーナーとして参入している6名のカー ト出身ドライバーたちに話をうかがい、そ の情熱や意識を探ってみた。 もたくさんある。片 岡龍也氏は、カート 時代の古巣であるヤマ ハのドライバーサポー トプログラム『Formula Blue』スカラシップのア ンバサダー兼講師として、 若手ドライバーたちの成 長に寄与している。光貞秀 俊氏は、自らのチーム『MI TSUSADA PWG RACI NG』を率いてジュニアカー ト選手権に参戦中。塚越広大 氏は2014年、埼玉県のレン プロと若手の二人三脚! チームで挑む全日本カート選手権 39
さまざまなプロドライバーたちから熱い視線が集まっている2021年の全日本カート選手権。
MOTOR SPORTS』の名前が帰ってきたことに感慨 を覚えているのではないだろうか。このASSO MOT OR SPORTSは、1992年に脇阪寿一氏が弟の薫一氏 とともに全日本カート選手権に出場するにあたって設 立したチーム。その活動期間は長くはなかったが、脇 阪兄弟の華々しい活躍や、ふたりのカート卒業後の所 属ドライバーたちの活躍によって、強い印象を残した チームだ。 そのASSO MOTOR SPORTSが2021年、FS-125 部門のチャンピオン・津野熊凌大選手を擁して全日本 カート選手権に復活、最高峰のOK部門に参戦するこ ととなったのだ。チーム設立当時のことを、脇阪氏は こう振り返った。 「僕は19歳の時にカートを始めて、すぐに全日本に
上がったけど、なかなか成績が出なかったんです。そ れで周囲を観察してみて、成績を出すためにはドライ バーとして頑張るだけじゃなく、カートの輸入元など ともっとしっかりコンタクトを取る必要があると気づ いて、カートショップをつくりました。それが母体と なったチームがASSO MOTOR SPORTSなんです」。 当時、メカニックとして脇阪氏の戦いを支えたのが 西嶋和彦氏だ。西嶋氏はASSO MOTOR SPORTS の活動終了後、そのショップとチームを引き継ぐ形で 『Scuderia Sfida』をスタートさせ、2020年に所属ド ライバーの津野熊選手を全日本チャンピオンへと導い た。今回のASSO MOTOR SPORTSの復活は、津 野熊選手のOK部門へのステップアップを、脇阪氏が
氏
「昨年、Sfidaでチャンピオンを獲った津野熊選手が ステップアップするというので、その資金面をこちら でサポートしましょう、ということになりました。僕 1️ マシンやウェアには、脇阪氏が引き合わせたスポンサーであ るオウルテックのロゴが。「自分は今までスポンサーがいない 状態で走っていたんですけど、今年からいろんな方が応援し てくださるようになりました。周りの人の気持ちも乗せて走る ようになったんだな、ということを感じます」と、17歳の津野 熊凌大選手は語る。 レーシングドライバー以前に“人間”を育てたい ASSO MOTOR SPORTS 990年代のカートシーンを知る人たちは、 全日本カート選手権に『ASSO
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チームの運営面でサポートするためのプロジェクトと 言える。
と西嶋が集まったらやっぱり『ASSO』だよ ね、ということで、この名前を復活させた んです」。
「全部が全部、人とのご縁でつながるような感覚です ね。20年以上前の思い出が蘇って、僕も西嶋も若返ら せてもらえるし、若い子が高いレベルの戦いに挑むこ とに携われるのは喜びですね。彼らの邪魔にならない ようにサポートできればいいかなと思ってます」。
実はASSO MOTOR SPORTSは、TOYOTA GA ZOO Racing 86/BRZレースとeモータースポーツ のチームとして、カートより先に活動を始めている。 この3つのジャンルの活動には“脇阪イズム”とでも 言うべき信念が貫かれている。 「基本的にはレーシングドライバーが育ってくれたら うれしいんですが、その前にきちんとした“人間”を 育てたい。もっと言ったら、どうすれば周りのスタッ フたちが頑張ってくれるような人間でいられるのか、 ということを学んでもらいたい。もしレーシングドラ イバーにならなかったとしても、その能力はビジネス にでも何にでも応用できると思うんです。だから、目 先の勝負だけに左右されるような熱の上げ方はしない ように注意したいな、と僕は思っています」。 「僕の戦い方というのは、まず勝つ可能性を徹底的に 引き上げて、負ける可能性を徹底的に引き下げる準備
をしてから勝負に行くんですよね。そうしたら、負け たとしてもその要因がある程度定まってくる。そうい うことを徹底したいと思ってるんです」。
脇阪氏はカートショップがある奈良県でのイベント に出演した際、ショップに立ち寄り、津野熊選手のカ ートを自ら組み上げたのだという。さまざまなカテゴ リーで成功を収めてきた脇阪氏にとって、カートとは 何なのか? その質問に対する答えは明快だった。 「原点ですよ。今までの中でもいちばん速くて、いち ばん凄い乗り物ですね。F1マシンまで乗りましたけ ど、やっぱり6インチタイヤのカートがいちばんヤバ かったんちゃいますか」。
今、カート出身のプロドライバーたちが、チームオ ーナーとなって続々とカート界に戻ってきていること を、脇阪氏はこう評した。 「自分が(カートの世界で)レースをやらせてもらった ことに対する感謝があったら、その業界に対してどう やってお返ししようかって、普通の人間だったら考え ますよね。そういうことじゃないですか。でも、時の 流れを(自分たちのような)人間の存在で感じられるっ て、いいと思いませんか」。
エンジニアリング面の体 制は、基本的にFS-125部 門のタイトルを獲った 2020年から不変。その陣 頭指揮を執る『Scuderia Sfida』代表の西嶋和彦氏 (写真右)は、脇阪氏の カート時代にメカニック を務めた旧知の仲だ。 TGR TEAM TAKAGI PLANNING カート出身のプロドライバーによ るカートチーム運営の元祖的存 在なのが高木虎之介氏だ。2008年に 自らのチームとカートショップを立 ち上げ、多数の若手ドライバーたちの 成長を支えて、カート界の名門チーム /ショップとしての地位を確立。現在 もOK部門では『TGR TEAM TAKAGI PLANNING』、その他の部門では『TA KAGI PLANNING』として、ジュニアから最高峰まで日本カート選手権の幅 広いカテゴリーに参戦している。またトヨタ、ダンロップとの強い結びつき は、このチームの強みのひとつだ。高木氏はこう語る。 「OK部門は若手育成で、四輪ドライバーになりたい子たちがメインです。今 年OK部門に出ている3台のうち、基本的に1台はダンロップのタイヤ開発を 担当し、2台はトヨタのサポートで四輪に上がることを目指しています。ド ライバーたちに対して、走りのことはあまり言わないんですけど、これから 四輪界へ進んでプロドライバーになろうとする中学生や高校生が覚えなけ ればならないのは一般常識です。指導では挨拶や言葉づかい、自己管理と いったことを重視しています」。 「僕はカートをやっていなかったら、F1やインディには行けてなかった。カー トは原点です。僕の時代はライセンスの関係で12歳からしかレースができな かった。だから、すぐにカートに乗れる今の子供たちは幸せですよね」。 挨拶や言葉遣い、自己管理をドライバーに徹底 今季は全日本の3部門すべてと ジュニア選手権のFP-Jr部門に 所属ドライバーが参戦して、幅 広い活動を展開。初心者向けの カートスクールを始めたのも早 かった。 41
ヘルメットを被ったら生意気であろうが、きっちり走 ってくれたら気持ちいいし、戦う気もないドライバー だったら(サポートする)意味がありません。その辺を 見て選びますね」。 「僕は現場でアドバイスしたり怒ったりってしないんで す。考えてるのは、ドライバーにいい環境でレースし てほしいってことばかりです。というのは、自分がレー スをしてきて、環境次第でドライバーが活躍できるか どうかが決まっちゃうことを痛感したから。ウチはスタ ッフたちがすごい優秀なんで、僕ができることといっ たら、あちこちに頭を下げて資金をつくって、めちゃく ちゃお金がかかるこのレースで、ドライバーたちが安 心して活躍できる環境をつくることだけです」。 チーム運営の苦労を語りながらも、安田氏の表情は 実に生き生きとしていた。 「チームを継続するだけでもすごい大変なんですけれ ど、継続は絶対にしたいと思ってるんです。今年は大 きいスポンサーも支援してくれることになりました し、レーサーを目指してるちっちゃい子供たちに、将 来はあのチームで乗りたいな、カッコいいなって思わ
安田裕信 氏 山田杯利 伊沢拓也 井本大雅 日本カート選手権に『HIROTEX』が初めて 登場したのは2011年。プロドライバーが オーナーを務めるチームの先駆けのひとつ だ。その設立の理由を安田裕信氏はこう語る。 「自分がカートをやっていた時は、父親のおかげです ごくいい体制でレースをやらせてもらったんですけ ど、レースって本当に才能があっても、環境が悪かっ たりしたらその才能が 発揮できません。その ことが嫌で、速いヤツ にちゃんと輝いてほし い、資金に困っていて も才能ある子たちのた めの環境をつくりたい と思って、このチーム を立ち上げました」。 初年度の所属ドライバーだった藤波清斗選手 はカート卒業後、スーパー耐久(ST-Xクラス) やスーパーGT(GT300)でチャンピオンを獲
今季は『PONOS HIROTEX』としてOK部門 に参戦する。活動の舞台は、立ち上げ当初から 常に最高峰の部門。そのドライバー選びの基準 は、シンプルにして明快だった。 「一番上のカテゴリーしかやる気はなかったで す。その下のカテゴリーはステップアップ段階 なんで。ドライバーを選ぶ基準は、速さとスピ ードですね。礼儀正しいかどうかは僕あまり気 にしないんです。本人に魅力があるかどうか、です。
れるチームを目標にしたいです」。 全️ PONOS HIROTEX 今季は2020ランキング3位の山田杯利選手(集合写真左)がチームに加入。「こ のチームは走ることに集中できて、すごいやりやすい環境ですね。安田さんは、 すごい存在だということは知ってるんですけど、親身になっていろいろやって くれて、身近に感じられます。考えてる量がすごい人だなって思います」。 カートでは2001年に全日本FSA部門(当時の最高峰)のチャンピオ ンに輝き、スーパーGTでは日産系チームで活躍を続ける安田裕信 氏。『HIROTEX』はOK部門でヨコハマタイヤ陣営の一翼も担って活 動を続けている。
得。その後もHIROTEXからはスポット参戦を 含め、牧野任祐選手や菅波冬悟選手、平良響選 手、小高一斗選手、角田裕毅選手……と、次代 の四輪レース界を担う存在として期待されるレ ーシングドライバーが何人も巣立っていった。 「ずっとチームをやってると、ウチから出世し てメーカーのドライバーになってくれた子が続 いて、止められなくなってしまって(笑)。速い ドライバーにはやっぱりチャンスをあげたいで す。その意志でずっとやってるんですけれど、 カートだけで頑張れよっていうより、この先、 出世するためにはどうすればいいのかっていう ことを教えているつもりです」。
ートを磨いたり、カウルにステッカーを貼 り込んだり。新生チーム『CUORE』の初陣 となる全日本OK部門2021シリーズ開幕 戦・鈴鹿大会にやってきた伊沢拓也氏は、「手を動か すのはもともと好きなんですよ」と言いながら、甲斐甲 斐しく働いていた。表情はなんだか楽しそう。そんな 姿に、カート時代の伊沢少年の姿が重なって見えた。 「このチームを立ち上げたのは、タイミングですか ね。僕が昨年からスーパーGT(GT500)にダンロッ プタイヤで参戦するようになって、いろんな話の中か らダンロップさんに協力を得られることになり、チー ムを立ち上げようということになりました」。 「チームを運営するのは初めてです。今まで本当にド ライバーとしてしかレースに関わってこなかったん で、チーム運営のところは横から見ていてなんとなく イメージは湧いたんですけど、いざそれを自分でイチ からやるとなると、たぶん僕ひとりではこの活動はで きなかったですね。たとえばチームリリースひとつつ くるにしても、自分でパソコン開いてやるってなる と、意外とそういう作業ってやってみると大変だし、 気づかされることは今の時点でも多いです」。 「テントのデザインやレーシングスーツをつくったり ウェアをつくったりということも、スパルコのショッ
プをやっているアウティスタさんの手助けが なければできませんでした。ドライバーとし てずっと人生を歩んできましたけど、こうい うことをやってみて、改めて一般人としては 相当能力の低い人間だなと実感しました (笑)」。
新生チームの初代ドライバーを務めるのは、 OK部門5年目の19歳、井本大雅選手だ。 「井本君はずっとダンロップでOK部門をやっ てきた選手で、僕らの活動としてはダンロッ プとの関係も含めて欠かせない存在です。こ うしてレースの現場に来てみると、いろんな チームがいて、自分がカートをやっていたこ ろより規模も大きくて、やり方もいろいろ違 ってました。一年目のウチがそんなにうまく すべてが回るとは思ってはいないんですけど、 ウチに来てもらったからには、井本君にはひ とつでもいい結果を出してもらいたいです」。 言葉は控えめだが、そのあちこちに、カー トに対する伊沢氏の愛情がにじんでいる。 「自分がカートを11歳の時に始めてから、25 年ぐらいレースをやってきたことを振り返る と、レースが純粋に楽しいと思たのはカート
氏
の全日本をやってたころか なって思うんです。そういう意味で は、ウチで乗ってくれた子が、この 先もし四輪に行ったとしても、ここ で一緒にやったころが楽しかったな って思ってもらいたいなっていうの が、僕のやりたいことなんです。若 い子を育てるとか四輪に上げるとか って大それた目標が今はあるわけじ ゃないけれど、まずは楽しくやろう ぜっていうのがいちばん大事かな、 と思っています」。 「ウチはカートメーカーの威信を背 負ってるわけでもないので、調子が 悪かったら次のレースでは違うシャ シーを使うという選択肢もありま す。そういう意味では、けっこう自 由なチームですよね」。 カ️ CUORE チーム設立初年度はダンロップタイヤでの経験豊富な井本大雅選手を擁 し、1台体制でOK部門に参戦する。「このチームは、走る時は真剣だし、そ れ以外の時はリラックスできて、ずっと気を張り続ける必要がないのでメン タル的にはすごく楽ですね。伊沢さんのアドバイスは自分のダメなところが 分かりやすくて的確です」と井本選手。 カート時代には全日本の最高峰部門まで上がり、優勝も果た した伊沢氏。チームはできたてだが、エンジニアなどのス タッフは実績のある人物が就いている。その雰囲気が明るい のは、伊沢氏の人柄だろうか。 新規参入の初年度は楽しくやるがモットー 43
した。プロになってからもドライビングのことなどは カートで勉強になる部分がありましたし、カートって ドライバーが四輪に上がって行く上では必要不可欠だ なって、ずっと前から思っていたんですよ」。 「それで、自分がスーパーフォーミュラなどトップカ テゴリーでチームを持つようになってから、カートの 方でもDrago CORSEっていうブランドでチームを つくって若い子の育成をやりたいっていう気持ちがあ りました。カートから四輪に上がる子はいっぱいいる と思うんですが、そこでスムーズにステップアップで きる流れをつくれたらいいな、と思ってやり始めたの が最初のきっかけでした。チームの中でタイトルを獲 ったりいい成績を残したりした子には、スカラシップ
くはFIAとかCIKの公認シャシーをつくりたかった んで、2年前に公認を取りました。公認の取得に関し ては、弟(学氏)がヨーロッパのカート界に精通して いますから、彼にいろんな交渉をしてもらって、Dra go CORSEというひとつのブランドのシャシーをつ くることができたんです。それから角田裕毅選手が 来て、佐藤蓮選手が来て、渡会太一選手が来て。い いドライバーに恵まれたことで開発も進みました」。 今季のOK部門では、従来のチームであるDrago CORSEに加えて、マシンのカラーを全面ピンク色に 塗り替えた新チーム『Rosa Drago CORSE』も加わ り、女性ドライバーを含めた5台体制で開幕戦・鈴鹿 大会にデビューを飾った。 「今回、ピンク色の“ドラゴ”が増えちゃったし、ロ ーカルレースに行けば白黒や緑の“ドラゴ”もいて ……。なんかね、無法地帯なんですよ」。 そう苦笑しながらも、Drago CORSEを自由にアレ ンジしてレースを楽しむユーザーたちの姿に、道上 氏は楽しそうに目を細める。 「カートはすごく大事だと思っているんで、そこは やり続けていきたいですし、Drago CORSEでヨーロ ッパへ、という道もあると思うんですよ。今ヨーロッ
氏 井出有治 松浦光聖 020年に渡会太一選手が全日本 OK部門を制し、カート界日本一の栄冠に 輝いた『Drago CORSE』。それは単なる レーシングチームではない。同名のシャシーをリリー スするカート・コンストラクターでもあるのだ。四輪 レースの世界でもトップカテゴリーで活動するDra go CORSEがカートレースを手掛けている理由につ いて、そのオーナーである道上龍氏はこう語った。 「僕はちっちゃいころから父親(佐堵史氏)と一緒にず っとレースをやってきまして、カートから四輪に行っ てからも時々トレーニングなどでカートに乗っていま
のようなものを設けていて、 今はスーパーFJで渡会選手 が走っています」。 「Drago CORSEのカート は、最初はCroc Promoti on(イタリア発祥のカート
パでウチのシャシーを使っているチームとのコネクシ ョンもありますし。あと、カートから四輪までやって いるチームはなかなかないような気がしますから、そ こはDrago CORSEのひとつの 強みだと思います。国内のレー スに留まらず、海外に送り込め るドライバーも育てていきたい と思っています」。 2️ Drago CORSE 今季のOK部門のDrago CORSEは、渡会太一選手(写 真右)と清水啓伸選手(同左)の2台体制。F1を目標に据 えて2年目のOK部門に挑む15歳の清水選手は、「龍さん はGTの話をしてくれたりGTの車載映像を見せてくれ たりして、カート以外のことも教えてくれます。海外参 戦の時の話も勉強になります」と語る。 まだ四輪へのラダーが確立していない時代にカートからのステップアッ プに成功した道上龍氏は、『Drago CORSE』プロジェクト全体のオー ナー役。カートチームとしての運営は弟の学氏が担当している。 世界に羽ばたくドライバーを育てていく 44
メーカー)を青く塗ったものだったんですが、ゆくゆ
RS GEN』を立ち上げ、14歳のルーキー松浦光聖選手と ともにFS-125部門・東地域に参戦を開始した。 「昨年まではビレルのチーム(BirelART RAGNO Raci ng)で監督をやらせていただいていたんですけど、今年 から自分のチームで参戦することになりました。ビレ ルのチームでは名取鉄平選手とか荒尾創大選手とかと 一緒に楽しくやらせていただいたんですけど、自分の チームではなかったので、やっぱり完全な自由度はな いじゃないですか。自分がやりたいことを自分で決め て実行していくためには、自分のチームでやることが いいのかなと思って、新しくやらせていただきました」。 「松浦選手は昨年、まだKTエンジンの(ローカル)レ
浦選手ひとりですけど、もし一緒にやりたいと思 ってもらえる選手や親御さんがいたら、扉を開け てチームに受け入れたいなと思っています」。 新東京サーキットのオーナー就任にも共通する のは、走ることの楽しさを伝えたいという想い だ。そのきっかけになったのが、フォーミュラ・ ニッポンやGT500にドライバーとして参戦して いたころに運営していた、子供向けの無料カート
氏
カ️ 走ることの楽しさをカートで伝えていきたい Moty's RS GEN 実績豊富なカートショップ&チーム『RS GEN』にエンジニアリング面の協力を仰いで全日本に参 戦。全日本初挑戦の松浦選手は、「まだX30エンジンのレースでいい成績を残せていなくて、それで も支えてくれて感謝しています。いろんな大人の方が僕のレースに関わってくれて、ありがたいとし か言いようがありません」と語る。 新東京サーキットの新オーナーに就任した井出氏。5月には全日 本カート選手権が久々に開催された。松浦選手は第3戦で予選3 位となって、飛躍の気配を見せた。井出氏の挑戦は今、着々と 実を結びつつある。 ートからF1まで登り詰めた井出有治氏が 今、再びカートとの関わりを強めている。 2020年9月には千葉県市原市のカートコー ス・新東京サーキットの新しい代表取締役社長に就任。 そして、全日本カート選手権では自らのチーム『Moty's
体験スクールだった。 「オートサロンやスーパーGTなどの会場で、子供た ちに無料でカートを体験してもらいました。自分が お世話になったこの業界に何かお返しできるとした ら、こういうことだろうなという気持ちがありまし た。自分もレースのスタート前でバタバタしていて 大変だったんですけど、子供たちが笑ってカートに 乗ってくれて楽しかったですね。その幅をもっと広 げた活動を、新東京サーキットを使ってやっていき たいと思っています。レーシングというより、純粋 にハンドルやペダルを操作するのって楽しいんだよ、 ということを伝えていきたいですね」。 井出氏が新チームで育てようとしているのは、松浦 選手だけではない。松浦選手のアドバイザー役として チームに招いた15歳の荒尾選手にとっても、ここが 将来につながる学びの場になると考えているのだ。 「荒尾選手は事前練習の時もマメに来てくれていま す。彼にも言ったんですが、他人に教えることは自 分の勉強にもなるんですね。僕もいまだに、人に走 り方を説明しながら、『ああ、そうだよな』って自分 で理解が深まることがあるんです。荒尾選手には、 走るだけじゃなくて人に教えることも勉強になるん だよ、という話をしています」。 ースをやっていたんですが、FS-125部門にステップ アップしたいということで紹介していただきました。 今まではOK部門のできあがった選手ばかりだったん ですけど、まだ成長していく過程のドライバーと一緒 にやってみて、自分が育てたドライバーをOK部門で も活躍させたい、という気持ちがありました。今は松
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ここでは、そんな全日本のトップダートトライアラーたちに、
を刻むべく、自分の理想の走りを思い描 き、時にはライバルの走りを参考にしなが ら、限られたアタックに挑んでいる。 不確定要素が多い未舗装路面ではどのよ うな走らせ方が正解なのだろうか? そし て、その走りを実現するためにどんな情報 を参考にしているのだろうか? ここでは 全日本ダートトライアル選手権を戦う上位 ランカーたちに、自分が理想とするダート トライアルの走りを聞くと共に、ライバル の気になる走らせ方を教えてもらった。
PN車両はパワーが少ない タテ方向を意識してスムーズに 「ダートトライアルと言えば、クルマを横 に向けた豪快な走りをイメージする人が多 いと思うんですが、PN車両はパワーがな いですから、タイムを削るには無駄な走り ができないんですよ。なので、僕はトラク
出走するたびに刻々と変化する路面状況を見極めながら、 自分が思い描く理想の走りを展開するダートトライアル。その最高峰には全日本選手権が与えられ、 全国のダートコースでシリーズ戦が行われている。自分が理想とする“ダートラ走り”と、 気になるライバルの走りを比較してもらった。 るたびに路面状況が変化するダ ートトライアル。ドライバー は、刻まれたワダチや掘り出さ れた岩石などの不確定要素を回避、時には 利用しながら、良好なグリップが得られる 路面を見極めている。そして、最速タイム
走 ダートラ 走り の セオリー 走らせ方の正解をどう導き出すのか?不確定要素の多いダートトライアルは ライバルに学ぶ フォト/西野キヨシ、廣本泉、 J A F スポーツ編集部 レポート/廣本泉、 J A F スポーツ編集部 47
……という印象がありますね。別のクラス で注目しているドライバーとしては、JD7ク ラスの山崎利博選手ですね。後輪駆動なん ですが、リアをスライドさせないように前を 意識した走りが上手い。自分のマシンは前 輪駆動ですが、勉強になりますね」と語る。 手前でクルマを曲げておき 早めのアクセルで立ち上がる
上野選手が推すドライバー山崎利博選手 は、JD7クラスで後期型の86を走らせる。 もともとFF乗りでもあることから、“タテ 方向”を意識するドライバーの一人だ。
「コーナーでは手前でクルマを曲げておい て、立ち上がりで早めにアクセルを踏み込 んでいくような走りを煮詰めたいですね。 自分の走りは動画で確認してますが、まだ 進入時に角度が付いてないことがあるの で、まだまだ修業が必要だと思います」。
「同じクラスを走る岡翔 太選手が凄いコーナーの 飛び込みをするんです よ。ホントは、観る人を 感動させるような、そう いう思い切りの良い走り をしたいんですけど、車 速に対する感性が自分に はないので(笑)、なかな か出来ないんですよね。 悔しい部分はあります が、自分は無駄のない走 りでタイムを出していき たいと思ってます」。 理想と現実をきっちり 認識しながらタイムを出 す走りを磨く山崎選手。
トラで目指しているのはその走り方。パワ ーの少ないPN車両はタテ方向を意識した スムーズな走りがタイムに繋がるので、慣 熟歩行からそれをイメージしています」。 同じクラスのライバルの走りについても、 「出走順が近いのでナマで見ることはでき ないんですけど、撮影した動画をチェック しています。工藤清美選手は冷静でミスを しないし、太田智喜選手もパワーのないク ルマの走らせ方をよく研究しているなぁ
ションを重視して前に進めることを意識し てドライビングしています」。 こう語るのは、ZC32Sスイフトスポー ツでJD9クラスを戦う上野倫広選手だ。 「実は昔、カートをやっていたことがあっ て、コーナーではステアリングはきっかけ だけで、後はアクセルでコントロールし、 早めにステアリングを戻してアクセルを踏 む時間を増やすようにしていました。ダー
気になるライバルの走り
「FFだとJD9クラスの上野(倫広)選手が
立ち上がりだけではなく 進入でもタテ方向を意識する 一方、JD5クラスでSW20 MR2を駆る 葛西キャサリン伸彦選手は、自身のドライ ビングについてこう分析している。 「高速コーナーはスピード重視で、低速コ ーナーはトラクションを重視。コーナリン グ中はアクセルワークを細かくして、タテ 方向を意識した走りをしています。MR2は 特殊なクルマなので、進入のアプローチが 他のドライバーとは違うんですよ。このク ルマは破綻しやすく、横に向けると飛んで いっちゃうので、立ち上がりだけでなく、 2015年にそれまでのSA車両のシビックからPN車両に乗り換えて、近年では86で後輪駆動クラスに参 戦する山崎利博選手。昨年は乗り換え2年目にしてPN3タイトルを獲得した。 PN車両のスイフトスポーツで2年 連続全日本ダートラPN1クラス チャンピオンに輝いた上野倫広選 手。2013年からPNクラスに挑戦し ている関西のFFスペシャリスト。 全日本ダートトライアル選手権JD7 山崎利博選手 itzz☆DL☆鳥居ATS 86 [ZN6 86] 全日本ダートトライアル選手権JD9 上野倫広選手 DL田中自Lub BRGスイフト [ZC32Sスイフトスポーツ] 48
についてはこう語る。
上手いと思います。上野選手はコントロー ルが上手くて、無駄なくタイヤを使ってい る印象です。ベテランの工藤(清美)選手は 走りの組み立て方が上手いですし、ライン の見付け方も凄いと思いますね。でも、タ イプ的には、上野選手が僕と似たドライビ ングをしていると感じています」。 「四輪駆動だとやはりJD4クラスの北村和 浩選手ですね。北村さんは派手な走りのイ メージが強いですが、路面コンディション によっては、きっちり速度を抑えて、アク セルを合わせながらラインを通してきます。 その走りが参考になりますね。僕らのクラ スは後輪駆動なので、姿勢が大きく変化し やすいんですよ。なので、どこでアクセル を抜くのかといったポイントについては、 北村さんの走りをチェックしています」。
進入でもタテ方向を意識しています」。 「具体的にはレイトブレーキングを心掛け ているんですけど、できるだけ真っ直ぐア プローチしているので、イメージ的にはジ ムカーナに近いかも知れませんね。立ち上 がりではしっかり前に向けて車速を上げて いきたいので、コーナリング中は絶えずア クセルとブレーキを操作しています」。 FFともFRとも違うミッドシップで孤 軍奮闘している葛西選手。トラクションを しっかり掛ける運転を心掛けている。 「リア駆動車のドライバーとしては、JD7 クラスの浦上真選手や山崎利博選手がタテ 方向を意識したドライビングをしていると 思います。FFならJD5クラスの細木智矢 選手ですかね。彼も豪快なコーナリングを しているように見えますが、実はちゃんと 前に進めるドライビングで、タイヤをうま く使っていると思います。四駆だとやはり 北村和浩選手ですね。豪快なコーナリング で有名ですが、実はかなり繊細で丁寧。無 駄がない走りだと思うので、自分の理想と するドライビングだと思っています」。
ないし、どんな天候や路 面状況でも崩れることな く安定してます。荒井さ んはランサーですが、荒 井さんの無駄のないスム ーズなドライビングは、N クラスのGRヤリスにも 合っていると思います」。 まだまだ、久々の四駆 ターボに苦闘している様 子だが、FF時代の朋友の 走りはやはりイメージに 残っているようだ。 「昨年までPN2クラスで ライバルだった細木智矢 選手のドライビングは特 徴がありましたね。僕は リアを硬めにしてブレー キでリアを振り回してま
者の走りをどう分析しているのだろうか?
前輪駆動車で4度の全日本タイトルを獲得した宝田ケンシロー選手。集中力を高めた一発の走りには定 評があり、昨年までは朋友・細木智矢選手との切磋琢磨が注目された。 ナンバー付き車両の全日本レ ギュラー勢ではほぼ唯一となる ミッドシップ車を駆る葛西キャ サリン伸彦選手。この難しいマシ ンを操り、昨年は念願の全日本初 タイトルを獲得した。 全日本ダートトライアル選手権JD6 宝田ケンシロー選手 ADVANオクヤマGRヤリス [GXPA16 GRヤリス] 全日本ダートトライアル選手権JD5 葛西キャサリン伸彦選手 YH速心ガレージクロノスMR2 [SW20 MR2] 工藤清美選手は、SC車両のEK9シビッ クで5年連続チャンピオンに輝いた青 森のFF使い。2018年からPN1でGK5 フィットに乗り換えて、これまで3勝を 挙げている。主力のスイフトスポーツ 勢を押さえて最近頭角を現しているの はDJ5FSデミオ15MBを駆る広島の太 田智喜選手。 リア以来久々の四輪駆動に挑戦している。 「ボクは今年になってFFから4WDに乗り 換えたばかりなので、まだスピードに戸惑 っている段階です。そういう前提ですが、 JD4クラスの荒井信介選手の走りが理想で すね。僕は“イチかバチか”で行きすぎるこ とがありますが(苦笑)、荒井さんはそれが したが、細木くんのクルマはリアが軟らか い方向で、セッティングの仕方が違う。恐 らく、僕が細木くんのクルマに乗ったら前に 進まないと思うんです。でも、彼は独特な ドライビングでコントロールしていたので凄 いと感じてます」。 「凄いという意味では、D車両の皆さんは ダートラ走りの セオリー ライバルに学ぶ 49
無駄のないスムーズな走り GRヤリスに合う走らせ方 ここまで二輪駆動車のドライバーに話を 聞いてみたが、四輪駆動車のステアリング を握るドライバーたちは、自分の走りと他
今シーズンからGRヤリスに乗り換えた JD6クラス宝田ケンシロー選手は、ストー
かけたりもする。瞬間的に勝負をか ける走りという感じですかね。僕は 低リスクでタイムを出したいと考え ているので、荒井さんのような走り ができない。やっぱり人間のセンサ ーが凄いんだと思います」。 これまで北村選手と荒井選手の走 りに注目する選手の話が出てきた が、北村選手が瞬発力の“動”であ れば、荒井選手は安定感の“静”と いうイメージだった。しかし、北條 選手は荒井選手の“動”の部分に注 目しており、自分の理想のドライビ ングとしている。 「二輪駆動だと、JD9クラスの工藤 (清美)選手が圧倒的に凄いと思いま す。SC車両シビックの頃はアグレ ッシブなドライビングだった印象で
クラスを戦う炭山裕矢選手は、自分の理想 とするドライビングについてこう語る。 「中高速セクションでは、例え姿勢が乱れ たとしても、アクセルを踏んである程度の スピードを維持したいですし、低速セクシ ョンでは、スピードを抑えてでもラインと クルマの姿勢をきちんとして走ることがセ オリーだと考えています」。 その走りをFF車で実践しているのが、 JD5クラスの細木智矢選手だと見ているよ うで「中高速は豪快で、低速コーナーはき ちっと抑えて走っていますね」と分析する。 「シード選手は皆さん個性的で面白いです よね。JD4クラスなら進入速度を重視する
個性もあって技術も凄いですよね。谷田川 敏幸選手はハイパワーマシンを振り回しな がらも、ピッタリとラインをトレースして くるじゃないですか。鎌田卓麻選手も、ド ライビングはラリー的で、フェイントを積 極的に入れたりして、一つのコーナーに対 してクルマを細かく動かしている印象で す。凄く引き出しが多いんですよね。ダー トラでは『フェイントは無駄』だと考えてい る人も多いんですが、鎌田さんはちゃんと タイムを出してきます。いやー、まだまだ 真似できるレベルには至ってないですね」。 人間の“センサー”に着目 低いリスクでタイムを出す 同じくJD6クラスにCZ4Aランサーエ ボリューションXを投入する北條倫史選 手。理想のドライビングについてはJD4ク ラスの荒井信介選手の名前を挙げている。
すが、PN車両に乗り換えてからは丁寧な 走りでタイムを出してくる。後輪駆動だ と、かつてPN車両のBRZに乗っていた 鎌田卓麻選手が凄かった。自分はあんな走 り方はできないと感じているので、皆さん と同様に、自分にはないセンサーが優れて いるんだと思います」。 車速の維持とラインの維持 ラリーで身に付いた確実な走り 一方、全日本ダートトライアル選手権で はラリー出身のドライバーが活躍してい る。彼らはどのような走りを理想とし、ま た誰の走りを参考にしているのだろうか? まず、三菱ミラージュのD車両でJD1
は入口も出口も速い。北村さんのドライビ ングはボトムスピードが落ちてしまうの 父・炭山義昭氏謹製のD車両ミラー ジュで全日本ダートラに帰ってきた 炭山裕矢選手。2018年FIA APRC チャンピオンにして、ダートラでは5 度の全日本タイトルを獲得している。 全日本ダートトライアル選手権JD1 炭山裕矢選手 ZEAL by TS DLミラージュ [A05Aミラージュ] 2020年に自身5回目の全日本ダートラでのタイトルを獲得した北條倫史選手。もともとラリーストでも あり、ジムカーナ参戦や後進の育成にも積極的な北海道のベテランだ。 全日本ダートトライアル選手権JD6 北條倫史選手 DL☆MJT☆NTランサー [CZ4AランサーエボリューションX]
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くし、ラリーみたいにフェイントを
北村(和浩)選手に対して、荒井(信介)選手
「一般的には、同じクラ スの北村(和浩)選手とは 対極にあるイメージです が、すごいタイムを出し て来るんですよね。ある 意味、荒井さんのドライ ビングは理想のスタイル です。外から見ている と、荒井さんは派手さを 抑えた走り方をしている ので、自分に似ていると 思っていたんです。で も、練習会で助手席に乗 せてもらったら、イメー ジとはまったく違ってい たんですよ」。 「ちょっと古風なスタイ ルで、アクセルを踏むと ころはしっかりと踏み抜
で、アベレージスピードの高い荒井さんに 比べると、コースのキャラクターに影響さ
れやすいはずなんですよ。でも、北村さん は勝負所のコーナーではアプローチを変え ていたりするので、タイムが大きく落ち込 んだりすることがないんです」。 「JD6クラスを見ていても、豪快にコー ナーを攻める岸山信之選手や矢本裕之選手 に対して、北條(倫史)選手は無駄なく丁寧 に走らせている印象です。でも、その三人 はタイム的には接戦です。そこがダートラ の面白いところだと思います」。 「僕はダートラからラリーに転向して、ま たダートラに戻ってきました。ラリーでは、 いつも95%とか98%とかで走っていたの で、ダートラだけをやってきた選手に比べ るとミスは少ないと思います。でも、逆に 言うと、良い意味でも悪い意味でも『この ままだとスピンする』みたいなセンサーが 勝手に働いてしまうので、自分で言うのも 変ですが、ダートラの選手が時に見せる “スーパーアタック”みたいな走りは、自分 には生まれにくいって思ってます(苦笑)」。
コリン・マクレー選手か ユハ・カンクネン選手か?
JD2クラスでCZ4Aランサーエボリュ ーションXを駆る大西康弘選手もラリー出 身のドライバー。全日本ラリー選手権では 三菱使いとして名を馳せた大ベテランだ。 「僕の場合は、ラリーの走りをそのままダ ートラに持ち込んでいます。具体的には進
入の姿勢作りがポイント だと考えていて、イン側 ダートラ走りの セオリー ライバルに学ぶ
大西康弘選手はCZ4Aランサー エボリューションXでJD2クラス を戦う青森の大ベテラン。元全日 本ラリーストにして、2020年は全 日本ダートラSC2チャンピオン に輝いた。
ーなのかな」。 「自分が参考にしているのは、昔のWRC で言えば、ユハ・カンクネン選手のよう に、理にかなったドライビングをする田口 勝彦選手。自分は感性で走るような感じで はないので、田口選手の走りを見ながら、 第2ヒートで走りを修正しています」。 他のクラスに参戦するダートトライアラ ーの印象についても尋ねてみた。 「FFのクラスだと、工藤(清美)選手の走
りが完成されていると思います。どんなコ ースでもきっちり姿勢を作ってくるし、ラ インもしっかりトレースして速度を乗せて くるところが凄いと感じてます。後輪駆動 だと、BRZに乗ってた頃の鎌田(卓麻)選手 の走りが印象に残ってますね。アングルを つけて高い速度でコーナーに進入して、コ ントロールするところが上手かった」。 「JD6クラスの北條(倫史)選手は、路面 状況にきっちり合わせて丁寧にコントロー ルしている。JD4クラスの荒井(信介)選手 も、外から見る限り北條選手と似たような 走りなんですけど、助手席に載せてもらう と印象が違っていて、実は結構ドリフトも させている。そして、荒井選手はブレーキ ングやトラクションなどタテ方向のGが 凄かった。北條選手と荒井選手は、ダート ラの職人のような走りだと思います」。 「JD4クラスで言えば、北村(和浩)選手 の走りも凄いね。“ザ・ダートラ”といった 走りでドリフトを追求しているんだと思う けど、自分としてはそういう走りを追求す るドライバーがラリーでも実績を残してい るところが凄いと思う。やっぱり北村選手 はレジェンドなんだと思うね」。 このように、全日本ダートトライアル選 手権の上位ランカーは、ライバルの走りを 日夜研究しながら、自分が信じる理想のド ライビングを磨いている。不確定要素の多 い未舗装路を相手にしたダートトライアル。 個性的な走りを披露し合って、常に僅差の ベストタイム争奪戦を展開しているのだ。
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全日本ダートトライアル選手権JD2 大西康弘選手 YH・TEIN・AGランサー [CZ4AランサーエボリューションX] のラインをいかにキープ するかを意識して走って います」。 当然、参考にするドラ イバーもラリー経験者が 多く、特に改造車の走り に注目する。 「ラリー経験者がD車両 で戦っているのでJD1 クラスの走りをよく見て ますね。鎌田(卓麻)選手 は、クルマを振り回して いる印象ですが、ちゃん とタイムを出してくる。 昔のWRCで言えば、コ リン・マクレー選手のよ うに感性で走るドライバ “キタムラ走り”と呼ばれる、深い角度で車速の高いコー ナリングで観客を沸かせる北村和浩選手。タイムを出 す走りも確立させ、そのマルチぶりを披露する。対極に あるのが北村選手の長年のライバル、荒井信介選手だ が、運転席では意外とアツい一面を見せるという。
ドリフト走行の「うまさ」はどうやって評価するのか? リフト競技は、単走で予選を行 い、決勝となる追走トーナメン トで一人の勝者を決める形式が 一般的となっているが、このスタイルが定 着するまでには、紆余曲折があった。 ここでは、まず、1台のドリフト走行の良 し悪しを見極めるための判断基準にフォー カスしていくことにしよう。 サーキットで開催されるドリフトコンテ ストは、審判員が1周すべてを見渡すこと が難しいためコースの一部だけを使用する。 それらは「採点評価区間」と呼ばれ、メイン
度でコーナーにアプローチすることだ。そ の出来不出来は「飛距離」と「角度」、「白煙」 といった三要素で判断されることが多い。 「飛距離」は、カウンターを当てた状態をい かに長い距離で維持するか。それにはスト レートでの車速が必要となる。そして「角 度」は進行方向に対するクルマの向き。カウ ンターステアの早さや適切さが試され、上 級者にもなると、車体側の改造として“切 れ角アップ”も必須となってくる。 最後の「白煙」は、パフォーマンス的な要 素と思われるかも知れないが、アクセルを 踏む位置や、アクセル量の目安にもなるの で、欠かせない判断材料となっている。 評価区間においては「振り出し」と「コーナ リング」、「振り返し」といったエリアに分け ド 「ドリフト」はかつての自己満足の世界から、他人から評価されライバルとしのぎを削る“競技”へと進化した。 「ドリフトコンテスト」で確立された審判員が優劣を評価する方法は、今やドリフトイベントのスタンダードになっている。 ここでは“ドリコン”の進化を踏まえながら、ドリフトの評価方法がどう確立されていったのかの一例を紹介しよう。 フォト/SKILLD レポート/SKILLD、JAFスポーツ編集部 イラスト/高梨真樹 1 CHAPTERドリフト走行を見極める、基準のキホンは 「飛距離」と「角度」と「白煙」の三要素 “審判”の系譜 日本のドリフトの進化は 評価方法の進化の歴史でもあった ドリフト 競技 ジャッジ 52
ストレートから1コーナー、続くS字コーナ ーといった組み合わせになることが多い。 ドリフト走行は「カウンターステアを当て たコーナリング」だと思われることも多い。 しかし、ドリフトの醍醐味はコーナーの“進 入”にあり、グリップ走行からドリフト状態 への移行が難しいとされている。直進状態 からいかにドリフト状態に持ち込むか。そ れを「進入スタイル」と呼んでいる。 ドリフトの命題は、誰よりも高い車速で、 誰よりも手前から、そして誰よりも深い角
て、「ドリフトモーションをどの地点で開始 したか」、「コース幅を大きく使って果敢に 攻めていたか」、そして「コーナーの向きが 変わる時にカウンターステアを的確に当て て直しているか、車速が落ちていないか」な どを評価している。 また、コース外走行をどこまで許容する かなどを含めて、走行ラインが制限される こともある。上位に食い込むためには、評 価区間の区間タイムの速さも重要となって いる。派手なアクションだけではなく、車 速の高さも要求されているのが現状だ。 コ ース幅を大きく使い、次のコーナーに対して車 速を稼げているか。カウンターステアがフラフ ラと戻ったりしていないか。スピンモードに陥っていないかが評価される。車体に角度が 付いてから、アクセルオンまでの反応の早さや踏み込む量などもポイントだ。 右コーナー進入の同地点で撮影。左車両は手前から車体が横を向いているが、右車両はここから角度が増 していくと思われる。最終的に同じ角度に到達しても、早く最大角に到達する方が難易度が高く得点も高い。 エビスサーキット西コースで開催されたD1グランプリの事例。 「 振り出し 」 「コーナリング 」 荷 重移動の後にサイドブレーキを使うかクラッチ を蹴るかで、角度の付き方やその後の加速(減 速)感が違ってくる。また、進入の振り出し地点までのライン取りで、車速を落とさない努 力をしたどうかも判断材料となり、より難易度の高い走りが高得点となる。 得点高 得点低 左 右のコーナーが連続するS字コーナーなどでは、途中で異なる方向に車体の向きを変える必要があ る。そういった状況においては、変わるコーナーの曲率に対して的確にカウンターを当て直している か、車速の極端な落ち込みがないかどうかなどが評価される。 コーナー進入後は最大角度を安定させて、コーナリン グするための再加速地点までキレイにラインに乗せ ていく。写真はサイドブレーキで後輪をロックさせ て、車体をアウトまで“飛ばす”テクニックを使ってい る。ロック状態があまりにも長いと失速してしまうた め、減点の対象になり得る。 コーナリング中は基本的にはアクセルオン。いかに 早めに踏んでスムーズかつ高い速度で円弧を描く かがキモ。また、インクリップをしっかり取らない と、“減速が間に合わず流されている”と判断されて 減点となってしまう。この後のS字区間のアプロー チにも響いてくるので要注意だ。 ストレート部分からコーナーに対しての角度の違い、振り返 しの鋭さは車体の向きで明らか。アクセルを入れているか どうかも白煙量で判断できるだろう。写真は日光サーキッ トの逆走(6コーナーからストレート区間)で開催された MSCチャレンジの単走。 「 振り返し」 得点高 得点低 53
しているのがそれだ。 審判方法の明確化は、評価する側だけで なく、走る側も高得点を出すための走りを イメージしやすくなるものだ。このように 審判方法が進化していくにつれ、ドリフト コンテストへの参加も、ドリフトの楽しさ の一つとして定着していくことになる。 こうした審判方法は、D1グランプリが先 陣を切って採り入れている。その後、長い 歴史の中で進化させ、知名度を高めていく
2 CHAPTER “優勝とその他大勢”では納得しない時代に 精密なライン取り、そして「追走」の導入 リフトコンテストへの参加者が 増えてくると、スキルの幅も広 がるため、個々に対する評価の 的確さが要求されてくる。 かつては「最も上手い人を決める」だけの シンプルなコンテストも多かったが、「ドリ フト競技」が開催されるようになると、個々 のレベルの違いを量的に明確にする必要が 出てきたのだ。それは、大会参加を通じて 自分のレベルを知りたい人も増えてきてお り、“優勝とその他大勢”では納得しない時
条件には、的確な目を持っていること、理 由を説明できることなどが不可欠とされた。
代になってきたからだ。 これらの審判員は、過去に開催コースの ドリフトコンテストで上位を獲得した上級者 (D1GPライセンス取得者など)が主催者に 指名されて担当することが多い。審判員の 過程で、他のドリフトコンテストもどんど ん採り入れていった。そして、2000年の D1グランプリ開始時から採用された「追走」 は、これまで行われてきたドリフトコンテ ストの概念を一気に変えた。 ド アウトクリップは、奥までギリギリ角度を付けてスピン に耐える走りで、この先にあるS字にアクセル全開で入 るアプローチ開始地点の目安にもなる。サーキット走行 のセオリーとは異なり、ドリフトの場合は必ずしも早めに インに付くのはベストラインとは言えない。 D1グランプリの下部リーグであるD1ライツの例。進入地点のアウト側、1コーナーのアウ ト側、2コーナーのイン側に配置されているピンク色が「ゾーン」で、リアタイヤ(もしくはリ アバンパー)を通すことが前提。外せば1箇所につき1点の減点で、コースアウトの減点も明 記される。名阪では2戦連戦で開催されたため、2種類のレイアウトが描かれている。 筑波サーキットで開催されたD1グランプリのドライバーズブリーフィング。練習 走行の前に審判員からゾーンの位置や減点割合など、この大会の審判方法が伝 達される大切な機会。欠席や遅刻はペナルティの対象に。 ドリフトのライン取り制限事例 アウト側に「クリップ」がある! D1ライツの採点評価区間 (名阪スポーツランドCコース) 左奥に見える白線で 囲われた四角が振り 出しの目安。この枠 内を狙って、角度が 付いた状態でリアタ イヤを通していく。 アウトクリップ ゾーン 54
しかし、審判員も人間なので、場の雰囲
気や感情が入り混じって、客観的な評価が 難しくなる可能性も否定できない。 そこで、公平性を高めるため、審判員は 採点評価区間を幾つかのセクターに分け、 それぞれの走りを”基本三要素”に分解して 判断するようになっていく。加えて、個々 の成績は100点満点からの減点を基本とす るものの、そこに加点できる要素を設定し て、その合計得点を出すようになってきた。 さらには、減点の材料として走行ライン をチェックしたり、「ゾーン」と呼ばれる指 定通過場所を加えるようになっていく。進 入地点やコーナーのイン側やアウト側に「イ ンクリップ」や「アウトクリップ」を設けたり
ドリフトをバトル形式に見立てた追走方 式は、2台のクルマが前後に並び、“後追い” と呼ばれる後走車が先行車の動きとシンク ロさせながら、先行車との車間距離をいか に詰められるかが見せ所となる。 1台での走行を上回るテクニックが必要 なこの方式は画期的で、観る者にも刺激的 だった。各地でドリフトコンテストが盛り 上がり、興行としても成功を収めるように なったのは、この追走のおかげと言える。 追走方式のドリフトでは、1台での走行を 「単走」と呼び、予選として機能する。その 上位者がトーナメント方式の決勝に進出し、
【タテ引き】 荷重移動をせずに、車体が真っ直ぐな状態でサイドブレーキでリアをロックしつつ、後で角度を 付けること。減点対象。
【オン返し】 S字の振り返しでアクセルを抜かない状態。加点対象。逆は「オフ返し」。 【コースアウト】 一般的にタイヤ1本につき減点が決められる。「ゾーン外し」も同様。 【振り出し遅れ/引っかかり】
ルなドリフトコンテストだけではなく、海 外のドリフトシーンにも伝わって、スタン ダードになりつつあるのである。 1コーナー進入で得点の7割が決定する スムーズなV字ラインが高得点の秘訣! 前後を入れ替えて接近度を競う「追走」 [先行]いかに 単走の走りを維持するか 禁止事項: 故意の減速/コースアウト [後追い]先行との距離を いかに詰めるか 禁止事項: 追い抜き/接触 ※先行は指定ラインを順守、後追いは その限りではない 追走は、後追い車が先行車を「どのように、どれくらい」追い詰めるかで得点が変化する。距 離が近く長時間になるほど高得点だ。追い詰めるために角度が浅くなるのは低評価で、車速 が高い進入時の接近度が最も評価される。対戦相手のクセや性能差を読むことも重要。
前後に並んだ2台での「追走」によって優勝 者を決めている。これはD1グランプリ創 設時から続く基本形であり、国内のローカ
ドリフト“審判”用語の基礎知識 【パキン感】振り出しのモーションの早さと最大角度にピタッと止める的確さ。加点対象。 【流される】ドリフト状態で勢い余ってベストラインをオーバーランすること。減点対象。
ドリフト開始地点が他の者より著しく遅れること。ドリフトアングルが瞬間 的に生まれないこと。減点対象。 【戻り/アンダー】 車体は横滑りしていても、カウンターが戻っている状態。減点対象。 車体の角度が徐々に増えていくとか、アクセルを踏 めない状態が続くコーナリングは評価が低い。トッ プスピードから素早く大きな角度を付け、車体をア ウト一杯に飛ばして、アクセルオンでコーナーを抜 ける、という走らせ方が高評価を得ている。 インクリップへ コースアウトギリギリを狙う 55
3 CHAPTER “DOSS”の開発で審判方法の均質化を目指す 評価の正確さと公平さを追求したD1グランプリ 判員が人間である以上、どんな に公平を期したつもりでも、記 憶や感情が影響を与えてしまう ことがある。ドリフト走行というものは、最 初に見た衝撃は大きく、例え次に同じ走り が繰り出されたとしても、最初に見たイン パクトの方が鮮明に記憶されてしまうもの だ。そして、何十台もが競う大会で、実力 が拮抗していた場合、その違いをどう判断 して順位に反映させるべきかを考えると、 走りの違いを定量的に評価できるシステム が必要になってくる。 そこで生み出されたのが、機械計測によ る審判方法だ。GセンサーやGPSを利用し て、ドリフトの角度(カウンターステアの量 ではなくヨーの変化)や、その素早さ、車速、 加速度などを測定し、コースレイアウトやセ クターの難易度を考慮した上で点数化する。 このシステムは、D1グランプリを運営する D1コーポレーションが開発した計測採点装 置で「DOSS(ドス)=D1 Original Scoring System」と名付けられた。 DOSSは、まず単走で運用され、今では 追走でも計測採点装置の導入が認められて いる。DOSSは常に進化しており、より公 平で正確な審判を追求している。 現在のD1グランプリでは、ドリフト走 行技術の評価は「①速い走行速度、②鋭い 振り、③安定した大きな角度」という要素 審 DOSS(ドス) GPSアンテナ GPSアンテナは通常のアメリカのGPSに加えてヨーロッパの グロナスも受信するようにしており、信頼性は向上している。 DOSSとはレースロジック社が販 売していた「ドリフトボックス」か ら得られた計測データを元に、ドリ フト走行を点数化するシステム。 最大の特徴が「振り返しの鋭さ」と 「ドリフト角度の安定性」を評価し ていること。国際特許も取得して いる。市販のドリフトボックスには ない、バックアップ電源やテレメト リーを装備している。 DOSS(D1オリジナル・スコアリング・システム) 車速や角度、角度が付くスピード、角度の維持を計測する装置。審判区間を幾つかに分け、そ れぞれで記録した数値を元に、要求する走りの要素を絡ませながら得点化する。例えば、スト レートから始めのアクションを起こす区間が「セクター1」になることが多く、そこでは最高車速 と角度を付ける(付き終える)モーションの早 さの割合が高い。コーナーの向きが変わる S字の振り返しセクターとは計算式が異な る。しかし、ドリフト走行の完成度を決める 要素をすべて数値化できるわけではないた め、審判員の主観審査はいまだ重要だ。 DOSSでは審判できない要素 ●走行ラインおよびコースアウトの有無 ●カウンターステアの大小、戻り ●サイドブレーキ使用時間の長さ 56
ていた。今やドリフト大国となりつつある 北米では、最大規模を誇る「フォーミュラ D」が開催されているが、その審判方法は、 創設時から人間の主観審査を採用してい る。3名の審判員は「ライン」と「アングル」、 「スタイル」を分担して審判しているが、追 走の場合は3名の多数決とし、意見が別れ た場合には「ワンモアタイム」となり、仕切 り直しの再バトルが行われている。 D1グランプリと同時期にJAF公認競技 となったドリフトキングダム(旧ドリフトマ ッスル)は主観審査を採用していたが、区 間タイムやスピードガンで計測した進入速 度なども判断材料に加味されていた。 このように、ドリフトの審判方法は運営 者の考え方で大きく異なっている。ドリフ ト世界一決定戦として始まったFIAインタ
に対する慣れが走りを有利にすることもあ る。そのため、主催者はあえて逆走などの レイアウトに変更したり、大会固有の指定 ラインを設定するなど、できるだけ地元有 利にならないような配慮も行っている。 ドリフト競技では、走行前にドライバー ズブリーフィングが行われる。参加した大 会の評価区間や審判基準の説明があり、質 疑応答の時間が用意されることも多い。他 のカテゴリーに比べても、ドリフトのドラミ はとても大切な時間なので、必ず参加して、 不明な点は質問する姿勢が大切だ。
を対象としており、「走行は定められたトラ ック内であることが求められ、採点区間全 体の走行が評価される」としている。 また「単走競技」を「定められた曲線コー ス内をより大きく安定したドリフト角度で より速く走り、角度の切り替えをより素早 く行う走行技術を競う競技」とし、「追走競 技」を「先行車の単走の走りに後追い車がど れだけ合わせられるか、かつドリフト角度、 速い走行速度、鋭い振り、安定した大きな 角度で上回るか、接近した(ドリフト状態 で先行車の内側に入り込む併走状態)走行 が実現できたかを競う競技」と「D1採点基 準」で定義している。 機械計測が導入されるまでは、複数の審
スト的な負担を減らすために機械導入が見 送られているのが理由のようだが、どの方 法が標準化されていくのかについては、今 後の議論を待つ必要がありそうだ。 審判方法とは別に、コース(サーキット)
単走の得点表 各セクターの進入速度や角度の大きさ、角度の安 定感、角度が付く速さを該当区間ごとにバランスを 変化させながら数値化。赤い部分は減点で、Zが ゾーン、Lがライン、Jが審判員の判断(カウンター の戻りやサイドの多用など)。1セクターの最高速 度も表示される。 追走の得点表 DOSSを使った追走は、2台の距離だけでなく先行 と後追いの単走得点を元に判断する。赤い数字は 減点。上の写真の大会におけるDOSSの得点で は、先行の中村選手が98点で、後追いの横井選手 が93点だった。そこに「後追い点」と呼ばれる追い 詰めの度合いが8点プラスされたため、横井選手 が101点となり勝利している。 セクター分けした採点評価区間 減点と加点、接触や反則を審判 D1グランプリ2020年シ リーズ第2戦で、中村直樹 選手と横井昌志選手の対 戦。追走であっても先行車 のゾーン通過は必須だ。後 追い加点がセクターごとに 加算され最大で10点。この 接近度で角度も同一だと、 このセクターではしっかり2 点が加点されるレベルだ。 D1グランプリのエビス サーキット南コースの例。 セクターは5つに区切ら れ、黄色の四角部分がゾー ンだ。コースによって1セ クターの得点配分が他よ り大きいこともある。 57
判員が得点の平均値を出したり、話し合い をするなどして走りに対する評価をまとめ
ーコンチネンタル・ドリフティング・カッ プ(FIA IDC)でも、基本的には人間の主観 審判(ヒューマン・ジャッジ)が採用されて いる。これは開催地の主催者や参加者のコ
に が フォト/友田宏之、廣本泉、JAFスポーツ編集部 レポート/はた☆なおゆき、廣本泉、JAFスポーツ編集部 時代と共に発展し続けるモータースポーツにおいて、常に密接な関係にあるのが 各地に存在するJAF公認コースの数々だ。安全な競技を行ううえで、競技施設の新設や、 老朽化による改修、被災による復旧と、ニーズに合わせて着々と進化を遂げている。 これらのコースの中でも“今”注目すべき3か所のコースをピックアップしてみた。 新たな施設の落成から、改修・復旧まで、 JAF公認コースの最旬情報をレポート 沖縄発 モータースポーツマルチフィールド沖縄が落成! しては唯一の登録となるJAF加盟団体「沖 縄市」が関与して、本格的にモータースポ ーツ推進に取り組んでいるのだ。 沖縄の行政と団体が手を組んで 多目的コースの新設が実現した これまで沖縄には本格的なサーキットが なかったことから、モータースポーツが盛 んではないイメージが持たれていた。しか し、取材を進めていくにつれて、県内のモ ータースポーツに対する潜在的なポテンシ ャルは意外と高いことが分かった。それを い将来、スーパーフォーミュラ やスーパーGTなどの国内ビッ グレースのシリーズに“沖縄ラ ウンド”が加わるかもしれない……。そん な期待に胸が高まる理由として、沖縄県沖 縄市が取り組んでいる本格的なサーキット 建設に向けての「(仮称)沖縄サーキット整 備事業」の存在が挙げられる。 4月29日、沖縄市に満を持してモーター スポーツ用の多目的コース「モータースポ ーツマルチフィールド沖縄」がオープンし た。そしてこの施設では、地方公共団体と 近️ 高い防音壁でグルリと施設を囲み、騒音 対策がしっかり採られたコース。この壁 を越えた先には非日常のモータース ポーツフィールドが広がっている。 旧倉浜ごみ処理施設の跡地につくられ、 約8,600㎡の広大な敷地面積を誇る。フ ラットな見た目ながら、降雨時の排水対 策も考えられたつくりだ。 コース外周には収容人数も多い観戦エ リアを完備。コース間近で全体を見渡せ るため、モータースポーツファンにもう れしい設備と言えよう。 58
MABUI」の 代表でもある當間秀文氏は、 「自分は32年前にジムカーナ
を始めたんですけど、当時は名護サーキッ トというコースがあって、競技会には多い 時で120台以上がエントリーしていました し、ギャラリーは1000人以上も集まって いました」と回顧する。 またJAF加盟カートクラブ「スクーデリ ア沖縄」を組織するほか、ククル読谷サー キットを運営するなど沖縄のカートシーン を牽引してきた翁長達也氏は、「カートに関 しても米軍基地があることから、昔は基地 の中でレースが開催されていました。その 後は日本にモータースポーツが浸透したこ ともあって、県内に5箇所のコースができ、
そのひとつ、ククル読谷サーキットは 「元々は子供たちを対象にしたレンタルの スクールをやるためのコースだったので、 レースをやるには手狭でした」と翁長氏が 語れば、當間氏も「ククル読谷サーキット を借りて競技会はやっていましたが、あく までもクローズドで走行会のような状態で したし、キャパシティ的にも50台が上限 でした」と語る。
ファンに愛された名護サ ーキットや、ジムカーナ 競技が行われていたゆか り牧場、そしてカートコー 沖縄市役所 企画部 プロジェクト推進室 主幹 比嘉賢二 氏
2015年より「コザモータースポーツフェス ティバル」など、独自の振興イベントを実 施するようになった。 その背後では、ジムカーナやレーシング カート、さらにドリフトやミニバイク、バ イクジムカーナ、エクストリームバイクな ど、ジャンルの違う競技団体が手を取り合 い、“モータースポーツで青少年育成、振 興、交通安全運動をする”ことをスローガ ンとして掲げる「チームオキナワ」も結成さ れている。前述した沖縄市のイベント運営 スーパーフォーミュラ・ライツで活躍する 平良響選手も同コースに対する期待は高 く、「沖縄でレースをやっていた時は小さな コースしかなかったけど、ここなら高速コー ナーもつくれるので本土に行かなくても本 格的なトレーニングができる」とし、さらに 「ジムカーナやドリフトなど新規参加者も増 えそうで盛り上がりそう」とのことだ。
続けて、翁長氏によれば「カートもジムカ ーナもミニバイクも、ユーザーは走る場所に 困っていました」とのことで、近年の沖縄の モータースポーツシーンにおいては、競技 会場の確保が喫緊の課題となっていた。
「このプロジェクトのスタートから関わっ てきたので、コースができた時は夢に描 いていたものが現実になったと感動しま したね。モータースポーツ利用に関して は年間スケジュールができています。警 察や自動車メーカー、あとは地域の祭り やフリーマーケットなどの誘致を促して、 モータースポーツ以外の利用も増やしな がら、地域から愛される施設にしていき たいと思います。そのうえで次のステッ レーシングドライバー平良響選手
オープンから約2週間後の5月16日には、JMRC九州ジム カーナ沖縄シリーズが開催された。 59
とても盛り上がっていました」と語る。 しかし、栄枯盛衰。県内モータースポーツ
裏付けたのは、実際に沖縄で モータースポーツに長く携わ ってきた人々の声だ。 一般社団法人チームオキナ ワの代表理事で、ジムカーナ を中心に活動するJAF加盟ク ラブ「OKINAWA MOTOR SPORTS CLUB
スが諸事情により相次い で閉鎖され、残った施設 でカートのシリーズ戦や ジムカーナの競技会が行 われていた。 ストステップとして、沖縄市は県内でのモ ータースポーツの認知度向上を目的に、
JAFスピード競技コースのジムカーナ コース常設1級の公認を取得した。JAF 加盟団体の登録は、現在国内唯一の行 政“沖縄市”となっている。
県民のモータースポーツへの理解と 認知度を高めるイベントを開催 そんな沖縄モータースポーツ界において 転機となったのが、沖縄市による(仮称)沖 縄サーキット整備事業だった。そのファー プへ移行していきたいと思います」。
ェスティバルから始めました。5年の 積み重ねで大盛況のイベントに成長 できたので、次のステップとして県 内の競技者が自由に走れる場所をつ くるべく、“聖地化”を目指してこの 設備を整備しました」と語る。 「コースを見た時は感動しましたね。沖縄のモータースポーツの歴史に新しいページが 追加されたので、感慨深いものがあります。今後はこのコースをスタンダード化し、“甲 子園”のように、これから競技を始める若いドライバーたちに“この場所で走りたい”と思 われるような施設にしていきたい。現在は沖縄出身の平良響選手らがステップアップし ていきましたが、将来的にはここから彼らに続く選手が出てきて欲しいと思います」。
施設の所在地は沖縄市倉敷で、沖縄自動
すっかり定着した感がある。 このコザモータースポーツフェスティバ ルで手応えを掴んだ市関係者は、モーター スポーツの受容性の検証を図る施設とし て、モータースポーツマルチフィールド沖 縄の新設をいよいよ現実のものとした。 沖縄市役所の企画部プロジェクト推進室 で、(仮称)沖縄サーキット整備事業を担当 する比嘉賢二氏によれば、「簡易サーキッ 一般社団法人チームオキナワ 翁長達也氏(施設事務局長) 「設備がすごくいいですね。新しい参加希 望者もいますので、クローズドでビギナー を対象にした競技を行いたいです」と語る のは、JAF準加盟クラブ「Team Arc Drive」 の具志堅興司氏。さらに「本土でサーキッ ト走行もやっているので、ぜひ県内にも本 格サーキットをつくってほしいですね」との 期待をしているそうだ。
地。ごみ処理場の跡地につくられたフィー ルドは約8,600㎡と広く、パイロンや緩衝 材(TECPRO)を使用することでジムカー ナおよびレーシングカートのコースが設定 可能だ。しかも、中低速を中心としたテク ニカルなレイアウトから高速コーナーを主 体としたハイスピードまで、自由なコース 設定が行えることもポイントだ。
ドリフトランドの奥側はアスファ ルトがひび割れ、そこから土砂が 西コースへ雪崩れ込んだ様子。
西コース南側のくるくるランドに 残るガレキの山々が今回の地震被 害の壮絶さを物語っている。
JAF準加盟クラブ Team Arc Drive 代表 具志堅興司氏 福島発 地震で被災したエビスサーキットが着々と復旧 土砂崩れは高速S字やシケインの一部を覆ってレス トランにまで達し、建物を押し潰してしまった。跡地 には無残にも大岩や土砂が残る。
ブルドーザやショベルといった重 機を使って土砂を掻き出し、懸命 の復旧作業に努めていた。 コース脇の山林を見上げると、土砂崩れで一部がゴッ ソリとなくなっている。あまりに痛々しい景色で、思 わず眼を背けたくなるほどだ。
の警察による交通安全の普及・啓蒙、沖縄 の伝統芸能“エイサー”の練習など、地域 振興につながる利用も可能とのことで、ま さに沖縄市の“マルチフィールド”として活 至れり尽くせりのコース施設は さまざまな可能性を秘めている
催などにも応用が利きそうだ。 そのほか、敷地内には113台が収容でき る駐車場が常設され、ベンチや芝生が敷か れた観戦エリアも約615㎡と広いことか ら、数多くの観客を動員できるだろう。 モータースポーツだけに留まらず、地元
車道・沖縄北ICよりクルマで約8分の好立
もサポートし、まさに“官民一体”でモータ ースポーツの魅力を発信してきた。 結果、コザモータースポーツフェスティ バルは開催を重ねるごとに来場者数および 協賛企業が増加の一途をたどる。沖縄市の 市制施行45周年記念事業として行われた 2019年のイベントには4万2000人が来 場したほか、県内外から58社が参加する など、沖縄モータースポーツの祭典として
屋根付きのパドック棟では四輪なら10 台の作業が行えるほか、管理棟には競技時 に管制室および計時室として使用できる2 つの会議室や、救護室、ブリーフィングが 行える多目的ルームを設置。更衣室などの 付帯設備も充実している。多目的ルームに はドライビングシミュレーターが設置され ていることから、レーシングスクールの開 トもないし、モータースポーツに対する意 識も低いので、まずは普及促進を目的にし たイベントとしてコザモータースポーツフ 2 月13日、福島県沖を震源とする地震が発生、震源に近 い福島県二本松市のエビスサーキットがその被害を直接 的に受けた。特に甚大な影響を被ったのは西コースで、土砂 崩れでコースが塞がれる事態となった。 被災直後は全面復旧までに1年を要するとサーキットからアナ ウンスされていたが、さまざまなユーザーからの災害支援の寄 附や、サーキット職員らの努力と尽力により、日に日に復旧を果 たしている。5月上旬の取材時はまだ見るに堪えない状況だった が、6月末現在は土砂も掃けて舗装路が開通。完全復旧にはまだ 時間を要するが、1日も早く元どおりになることを祈るばかりだ。
比嘉氏は「行政としては前例がないもの だったので、手探りの状態からスタートし ました」とプロジェクト立ち上げ当時を振り 返る。続けて「各競技団体の皆さんの協力 を得ながら、行政としては騒音問題と安全 性を重視してこの施設を整備しました。競 技団体の関係者も市役所の中にも、ここま でできると思っていなかった人は多かった と思います」と施設を見て感慨深く話して くれた。
一方、當間氏も「コザモータースポーツフ ェスティバルから含めると約6年間を要した ので、完成したコースを初めて見た時は感 動しました。自分たちの力だけではここま でのものはつくれなかったと思います。そ れに行政が動いたことで、多くの企業が協 力してくれた部分も大きかったです」と語る。
各方面から寄せられる期待の声! 本格的なサーキットも夢ではない !?
こうして沖縄に新たなモータースポーツの 拠点ができたことで関係者の期待は非常に 高まっている。JAF準加盟クラブ「Team Emotion」の名嘉晋一郎氏は「新コースがで きたことで競技に興味を持った人もいるだろ うし、競技から離れていた元選手も出てくる と思います。Team Emotionとしても走行会
やオートテストを 開催して盛り上げ ていきたいですね」 と期待を寄せる。
ーキットのような大きなコースをぜひ県内に つくってほしいと夢を膨らませた。 スーパーフォーミュラ・ライツやスーパ ーGTで活躍する沖縄出身の平良響選手は、 「自分が沖縄で走っていた時は小さなコー スしかありませんでしたが、これだけ大き なコースなら本土と遜色のないトレーニン グが行えると思います」と笑顔でコースの 印象を語る。
今後のモータースポーツマルチフィール ド沖縄の活用方法について、施設の代表理 事でもある當間氏は「せっかくのJAFジム カーナ公認コースなので、公認競技をやっ ていきたいですね。今年はクローズド競技 をやりながらオフィシャルの育成を行って、 来年は地方選手権を開催したいです」とプ ランを明かした。
施設事務局長に就任した翁長氏も「今ま ではククル読谷サーキットでシリーズ戦を 行ってきましたが、今後はモータースポー ツマルチフィールド沖縄と交互にシリーズ 戦を行いたいですね。ククル読谷サーキッ トはスクールを主体にして、ゆくゆくはこ のマルチフィールドを“甲子園”のように憧
同じくJAF準 加盟クラブ「Team Arc Drive」の具志 堅興司氏は、「思 っていたよりも大 きいコースだった ので、うれしいの ひとことですね。 まずはここでJAF 公式戦をやってほ しいです」とコメン ト。またこれを通 過点に、本土のサ れの舞台にしていきたいと思いま す」と言う。 さらに「モータースポーツ利用に 関しては年間のスケジュールが組ん
であるので、警察や自動車メーカー、あと は地域活用などモータースポーツ以外の利 用も増やしていきたいです。そうすれば名 称どおりの多目的な施設になるので、地域 の祭りやフリーマーケットなどの開催を促 進していきたいと思います」と比嘉氏。 最後に、(仮称)沖縄サーキット整備事業 はこれで終わりではない。今回紹介した施 設はあくまで短期的なビジョンとしての通 過点であり、現在進行形で本格的なサーキ ット整備実現を目指して動いている。 「まだ時期や規模、場所など具体的なプラ ンはありませんが、モータースポーツマル チフィールド沖縄を運用していく中でいろ んなニーズが出てくると思うので、それを 汲み取って次のステップに進みたいです。 県や隣接する市町村との協力が必要となっ てくると思いますので連携していきたい」と 比嘉氏が構想を語ってくれた。當間氏も 「沖縄市は行政としてコースをつくった実 績ができたので、やりやすくなると思いま す。時間はかかると思いますが、チームオ キナワとしても協力していきたい」と語って いるだけに、今後の動向に注目したい。
用されていく予定となっている。
「最初、このコースを見た時は鳥肌が立つほど感動しましたね。同時にやり遂げたという 気持ちもありました。名護サーキットがなくなったことでジムカーナから離れた選手も多 いですが、このコースができたことで復活するドライバーもいると思うし、注目度が高い ので新たに始める選手もいると思います。今後は公式戦を開催して、来年は地方選手権 を行いたい。将来的にはこのコース出身のトップドライバーが出てきて欲しいですね」。 一般社団法人チームオキナワ 當間秀文氏(代表理事) JAF準加盟クラブ、Team Emotionの代表、 名嘉晋一郎氏も期待を寄せる。「コースを見 た時は感動しました。インパクトがあるので 新しく始める人や復活組にも期待できそう です。ここはアクセスもしやすいし、公共の 施設として体育館のように入りやすいので、 クラブとしても走行会やオートテストなどを やっていきたいと思います」と語る。 JAF準加盟クラブ Team Emotion 代表 名嘉晋一郎氏 受付と救護室を1Fに、多目的ルームや会議 室などを2Fに設けた管理棟。特に2Fから は見晴らしもよく、管制室および計時室と しての活用も期待される。 多目的ルームは20~30名程度の利用がで きる。大型モニター、テーブル&イスも揃っ ており、主にブリーフィングや講習会など で使えそうだ。 本格的なドライビングシミュレーターも多 目的ルームに導入されていた。リアルだけで はなくバーチャルな環境も整っている。 競技を終えてひと汗流せる個室のシャワー ルームを完備! モータースポーツを存分に楽 しめるノウハウがしっかり注ぎ込まれている。 61
設けられていたピットロード出口を3コー ナー先に移設。その先の部分である3コー ナーから4コーナーのランオフエリアが舗 装され、同様に最終コーナーのランオフエ リアも舗装の幅が3~4m拡大されている。 これらの改修は「安全対策に準じた改修と ご理解ください」と株式会社菅生のモーター スポーツ部の村林匡部長。従来のピットロ ードの狭隘さ由来で起きていた混乱はグッ と減るだろう。ランオフエリアの舗装部分 の拡張は、昨今の時流とも言えよう。 ピットロード出口に関しては、選手から は走行ラインと重なるのでは……という指 摘も聞こえている。昨今、HANSの着用義 務によって首が振りにくくなっていて、ア イコンタクトがしにくかろうという懸念か らだが、ことビッグレース初戦となるスー
発生せず。ピットアウトする車両が現れる たびに3番ポストで白旗が振られたことで、 通過するドライバーに対する注意喚起がで きていたからなのかもしれない。 「ピットロードの出口は多くの方の意見を 聞いて、結果的にああいう形にしました。 JAFの視察も受けてOKはいただいたんで すが、運用していて何かしら問題が出ると すれば、今後いろいろと使っていく中で対 応していこうと思っています。あれが 100%安全だとは言わないですが、現状で はベストかなと思っています」と村林部長。 その他にも施設面の改修として、車検場 とメディカルセンターの移設、そして西ピ
いうのは、グランドスタンドからの視界が 遮られてしまうため。パッシングポイント のひとつである4コーナーなどが見えなく なる、ということはなさそうなので、観客 の皆さんはご安心を。
またメディカルセンターは1コーナーイ ン側のEパドックに移され、従来あった場 所には車検場が設けられた。しかしなが ら、そのままでは車検場として十分なスペ ースが得られなかったことから、「苦肉の 策じゃないですけど、昨年まで土手だった 部分に人工地盤をつくりました」と村林部 長。これに伴い、意外と気づかれていない が、西ピットは最終コーナー寄りに伸ばさ れている。 なお、車検場のあった場所はフラットに 整地されている。これは、パドックエリア が広がったと、エントラントから大好評と なっている。ただ、現時点では西パドック の一部に段差があるのだが、これもまたシ ーズンオフに改修されて全面フラットにな るという。 「来年の東ピット改修で、とりあえず改装 工事は終わりますが、安全に関する細かい ことは皆さんの意見を採り入れつつ、今後
も順次対応していきます。SUGOは四輪だ けでなく二輪もやっているので、難しいと ころもあるんですが、両方の折衷案を考え ながら、安全面には妥協なくやっていきた いです」と村林部長。安全で使い勝手のい
ットと呼ばれる最終コーナ ー寄りのピット、ならびに ピット上のゲストルームが 改築されていたことが挙げ られる。1ピットあたりの幅 は従来よりも80cm広げら れており、ピット作業エリ アの拡幅同様にエントラン トから好評であった。な お、1コーナー寄りの東ピッ トも、2021年のシーズンオ フに同様の改修が行われる 予定だ。 余談ながら、東ピットの 上にはゲストルームは設け られない計画だという。と ポーツランドSUGOが、オー プン以来2度目となる大掛かり な施設改修を行っている。しか し今回は1987年の改修時とは異なり、国 際レーシングコースの基本レイアウトを変 えていないのが特徴でもある。 最大の変更点はピットの作業エリアが 2m広げられたこと。それに伴いホームス トレートもスタンド方面に2m寄せられた ことだ。また、これまでは2コーナー先に
ス メディカルセンターは1コーナーのイン側 に移動した。これによりパドックにゆとり が生まれ、利便性も高まった。 東ピットについては2021年末の シーズンオフでの改修を実施予定。 西ピット棟の2Fは使い勝手の良い ゲストルームに生まれ変わった。 間口が従来より80cm広がった西 ピットはエントラントに好評の様子。 3コーナー先のアウト側のランオフ エリアは舗装化された。 再舗装も行われてスッキリとした ピットロードの入口。 パドックのほぼ中央にあった車検場は、メ ディカルセンターの跡地を人工地盤で拡 張し、整地された場所に移設された。 手狭になっていたピットロードはメインス トレート側に2m拡張された。併せて西ピッ ト棟が建て替えられた。 ピットロード出口は2コーナー先から3コー ナーへと延びた。走行ラインとの重なりも 危惧されており、走行には気をつけたい。 宮城発 安全対策のための施設改修をSUGOが実施! 62
いSUGOにこれからも期待したい。 パー耐久においては、アクシデントは一切
ぐゴールする設定に変更した。 今回の設定の注目ポイントは、ガレージ の前に、その進入のラインを規制するよう に置かれた1本のパイロンだろう。ガレー ジに進入するラインにパイロンが置かれた 東北・岩手の地で5年連続開催。 リピーターも増加中! オートテスト日本導入当初から、積極的に開催を推進してきた東北地区。 5月5日には岩手県一関市において5年連続となるオートテストが開催された。 すっかり定着した感がある東北では、それだけにリピーターも多い。 今回は、オートテストを“次”に繋げる今後の取り組みについても話を伺った。 フォト&レポート/JAFスポーツ編集部
オート テスト 倶楽部 AUTO TEST CLUB 5 月5日に岩手県一関市で開催された 「JAFオートテストチャレンジin岩 手」は、今年で5回目を迎えた。第1回、第 2回は盛岡市で開催されたが、2019年から 一関市に会場を移して、今年で3年連続の 開催となった。会場は、『ユードーム』の名 で一関市民に親しまれている一関市総合体 育館の駐車場。一関市のオートテストはす べて、このユードームで開催されてきた。 参加者は年を追う毎に増加傾向にあり、 今回は70台を超える人気ぶりを示した。 岩手でのオートテストを一貫して主催して きたのは、一関市に本拠を置くJAF登録 クラブのブレストモータースポーツ(BLE ST)。代表の岩渕幸弘氏は長くJAF東北ジ ムカーナ選手権で活躍してきたスラローマ ーでもある。 大会のコースレイアウトは過去3回と も、スタートとゴールの位置は同じとして いるが、設定はアレンジが施されてきた。 会場となったのは一関市郊外にある、『ユードーム』の名で知られる一関市総合体育館の駐車場。隣には大型商 業施設があり、クルマの往来が頻繁であるため、安全対策もしっかり図られた。当日は検温を行うなど新型コ ロナウィルス感染症対策も徹底された。 63
スタート後はまずパイロンスラロームをク リアするが、そのセクションが車道に近い ため、万が一のコースオフの危険を想定し て今年は1本、パイロンを減らした。同様 に昨年まではゴール前に速度抑制のスラロ ームを設定していたが、昨年は振られてし まう選手もいたため、ここも安全面を考慮 し、手前のガレージ(車庫入れ)からまっす のは、一連の同大会では今回が初めてだ。 「今回のレイアウトの基本的なベースは、 実はうちの娘に任せたんですよ。他地区の
りだけど、オートテストでは特に初心者は 戸惑うだけですからね。こうして主催者が ちゃんと走り方までフォローする、という 姿勢があれば、またオートテスト出たい ね、という気持ちになると思います」とは 村上さん。ジムカーナのエントラントクラ ブ的な雰囲気を持つBLESTだが、あくま でビギナー目線でコースを設定するのが、 一関オートテストの特徴となっている。 .一関では3年連続開催。コースも、毎回、スタート位置とゴー ル位置は変わらない。昨年から、前半はスラローム等のジム カーナ色の強いセクションとし、最後にガレージを持ってくる という設定とした。今年はガレージの前に規制のパイロンを置 いたが、参加者からは、チャレンジングな設定と好評を博した。
今回の大会は、AT/MTでまず2部門に分 け、さらに経験者と初心者でそれぞれ2ク ラスに分けた。ライセンスホルダーや競技 経験者、ある程度のオートテストの経験者 はMT-AクラスかAT-Aクラス。初心者は MT-BクラスとAT-Bクラスという具合だ。 最大の激戦区となったのはMT-Bクラス。 25台が参戦した。 順位の決定方式は、2本の走行の内のベ JAFオートテストチャレンジin岩手・一関 開催日:2021年5月5日 開催場所:一関市総合体育館
オートテストを手伝ったりしていてある程 度、経験を積んでいるし、前回がちょっと 覚えにくいと言われたので、ジムカーナの 専門家ではない彼女の方が、分かりやすい レイアウトを作れると思ったんです。ガレ ージの前のパイロンは、パイロンが1本余 ったので僕が置いてみたんです。実は、あ まり深い狙いはないんですが(笑)、やっぱ りオートテストはバックギヤを使う所が勝 負だと思うので、ジムカーナ的な勝負の要 素を加えてみた、というところでしょう か」とは今回のイベントを仕切った岩渕氏 だ。慣熟歩行では、岩渕氏は初心者ととも にコースを歩き、特にこのガレージについ ては、攻略法を詳細に解説したという。 「手前のラインまたぎで斜めに止めれば走 りやすくなるということと、後退する際 は、右のミラーだけ見てパイロンに寄せて 行けば、ガレージには入れられます、と。 左側のミラーもつい心配になって見てしま うものですが、そこで迷うぐらいなら、右 だけ見た方がロスが少なく入れられます、 というアドバイスです」。 今回、総合最小減点で優勝した村上清隆 さんは、岩渕氏と同様のジムカーナ経験者 だが、こうしたコースやライン取りの“正解” を教えることは、大いにすべき、と語る。 「コースを設定したので、あとは好きに走 って下さいというのはジムカーナでは当た
ストポイントで競うというもの。小数点は 切り捨てとするので、同ポイントで並ぶ (例:50.01秒で走っても50.99秒で走って も与えられるポイントはどちらも50)とい う例が多く発生したが、その場合は、もう 一方のヒートのポイントで上位だった方の ドライバーが上の順位に来る形となる。 この方式を採用した結果、例えば25台 が競ったMT-Bクラスでは、ベストポイン トが並んだ例(2台以上がベストポイント で同一だった例)が7例もあったが、最終 的な順位がまったく同ポイントだった例は 1例しかなかった。同様に24台が参加し たMT-Aクラスでもベストポイントが並ん だ例は5例あったが、最終的なポイントが まったく同一という例はゼロだった。生の タイムではなく、換算したポイントで競う というのがオートテストの基本ルール。た だし実際は、オーテストの普及に伴い、小 数点以下のタイムもポイントとして計算し て、事実上は、タイムトライアルとして速 かった選手が勝ちとしているオートテスト も増えている。
岩渕氏は、「昨年、参加者のアンケート で自分のタイムも知りたいという意見が複 数あったので、順位の決定方式は変えませ んが、今年からリザルトに小数点以下2桁 まで計測したタイムを入れることにしたん です。切り捨てずにそのままポイントにす
るという方向も、個人的には考えていきた いという気持ちはあります」という。 日本に導入されて6年目を迎えるオート テストは、例えばリバースギヤのセクショ ンを多く設定するという形でオートテスト の独自性を追求するオーガナイザーもいれ ば、年間を通してコースレイアウトを固定 し、じっくりと参加者のスキルアップを見 守るイベントもある。 「ウチとしては、これまでと同じように、 ともかく試行錯誤を重ねながら作っていく しかないというところです」と岩渕氏は言 う。「ただ、オートテストを通して、まず はクルマを操る楽しさを知ってほしい、と いうのは今まで通り、基本に置くと思いま
す。楽しければジムカーナを始めてもいい し、サーキットの走行会に行ってもいい。 “その次”を踏み出すきっかけになってく れればいいんです。そして何か新しいこと をいつも加えて行きたい。高齢者の方にも 出てもらって、安全運転に繋がるような体 験もしてほしいし、レディスクラスの設定 なども考えています」。 あくまで間口は広く、オープンに。東北 の地で、しっかりと根づき始めたオートテ
ストの未来に期待していきたい。 今回も表彰式の後にはジャンケン大会を行い、ほと んどの参加者は何らかの景品を持ち帰ることができ た。過去には岩手出身のレーシングドライバーの 佐々木雅弘氏を呼んで参加者と交流を図るイベント も行ってきた。競技会としてだけでなく、イベントと しても楽しいものにしたい、と岩渕氏は言う。 普通のクルマでも楽しめるのがいいです 小野寺大輔サン(AT-Aクラス優勝) 2年連続の参戦となった小野寺さん。 「オートテストは、自分のような普通の クルマでも出られるというのがいいで すね。“2本目はこうやって走ろう!”と か、イチから考えなきゃいけないのが面 白いです。可能な限 り、今後も出たいと思 いますが、日曜も働い ているので、なるべく 早めに告知してくれる と有難いですね」。 ジムカーナにも是非参戦してほしい 村上清隆サン(MT-Aクラス優勝) 村上さんは他地区にも遠征に行くほ どのオートテストの熟練者だ。「今日は 狭いスペースの中で工夫したレイアウ トだったと思います。自分もジムカーナ に復活できたので、オートテストの人達 をジムカーナに引き 込みたいんです。オー トテストやっていたら ジムカーナは楽だと 思うので、ぜひ始めて ほしいですね」。 モータースポーツは観戦専門でした 五十嵐武蔵サン(AT-Bクラス優勝) 昨年の大会でオートテストを初体験 した五十嵐さん。「前回は2本ともパイロ ンタッチだったので、今日は冷静に安全 にマージンを取って走りました。モー タースポーツは観戦専門だったんです が、今日は慣熟歩行の 段階から、攻略法を考 えたりして、楽しかっ たですね。次はBライ 競技も観戦に行きた いと思います」。 サーキットを走るトレーニングで出ています 佐々木佳輝サン(MT-Bクラス優勝) 今回、オートテスト初優勝を飾った 佐々木さん。「サーキットを走るのが目 標なので、その前に自分のクルマの限界 の挙動を知りたくてオートテストに出 ています。限られたスペースでも、思い 切りクルマを動かせ るので楽しいですね。 ジムカーナも体験し てみたいですけど、 オートテストは続ける と思います」。 優勝ドライバーの皆さんに、今回の感想を聞いてみました! 65
ニッポンのモータースポーツは JAF 動画サイトでチェックしよう! NEWS! スーパーフォーミュラからレーシ ングカートまで、国内で開催 されるJAF全日本選手権のイマを伝 える、インターネット配信を利用し た国内モータースポーツ・ニュース 情報番組を月1回配信しています。 番組のナビゲーターは、日本を代表 するレースアナウンサー、ピエール 北川さん。 JAFモータースポーツホームペー ジの特設バナーからご覧になれます が、YouTubeの公式アカウントから も無料で視聴が可能です。 全日本選手権のイマを伝えるモータースポーツ・ニュース情報番組 「JAF モータースポーツニュースダイジェスト」好評配信中! JAF モータースポーツホームページ http://jaf-sports.jp 公式チャンネル チャンネル登録をお願いいたします!! JAF MOTOR SPORTS YouTube 2 3 4 5 6 1 JAF MOTOR SPORTSホームページの“取扱説明書”です WEB誌面、動画、カレンダー、講習会日程、オートテスト…などなど、役立つ情報が盛りだくさん! 1 公示・お知らせ モータースポーツの規則や規定の改 正、登録車両や車両公認の申請一覧、 競技会の日程の変更や取消等、ライ センス所持者向けの情報を掲載。 2 NEWS&TOPICS 最新のモータースポーツのニュース やトピックスを随時更新している コーナー。各種競技の速報はここで チェックしよう! 3 NEWS DIGEST 直近で開催された競技を月1回公開! モータースポーツのHOTなニュースを お伝えする動画番組。過去放送のバッ クナンバーも充実。 4 競技会カレンダー 全日本選手権を始め、国内競技会の 日程を「レース」「ラリー」「ジムカーナ」 「ダートトライアル」「レーシングカー ト」のカテゴリーで紹介。 5 ライセンス講習会日程 全国で開催されているライセンス取得 のための講習会を開催日順にご案内。 A/Bライセンス以外に、公認審判員 やカートライセンスも検索が可能。 6 AUTO TEST モータースポーツの入門競技・オート テストのルール説明から、直近開催予 定の情報までを網羅。オートテストの 雰囲気がわかる動画も必見! JAF スポーツ誌は2018年にリニューアルし、現在 は年4回の季刊発行となりました。本誌内容の 充実化のため、また情報の速報性を図るため、いくつかのコ ンテンツがJAFモータースポーツホームページに移行いたし ました。 そこで今回はパソコンやスマホでいつでも気軽にアクセス できるホームページの活用方法を、主だったバナーを中心に 紹介していきます。 常に最新の情報を掲載している「公示・お知らせ」「モータ ースポーツカレンダー」は競技関係者なら要チェック。また WEBならではの動画配信コンテンツ「NEWS DIGEST」や、 競技会等の速報「ニュース&トピックス」も必見です。その他、 競技結果や獲得ポイントのデータベースもありますので、上 手に活用して、さまざまなシーンでお役立て下さい。 予告 ※リニューアル移行作業期間中は「国 内競技結果リザルト」や「競技会スケ ジュール」等の更新停止を予定してい ます。あらかじめご了承ください。 JAF MOTOR SPORTS ホームページが 8月上旬 にリニューアルされます!
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