JAFスポーツ[モータースポーツ情報] JAF MOTOR SPORTS 第54巻 第2号 2020年5月1日発行(年4回、2、5、8、11月の1日発行) 2020 SPRING JAF MOTOR SPORTS 今年のレースはこう変わる SUPER FORMULA&SUPER GT & RACING KART 2020 JAF地方選手権レース/ラリー/スピード競技 2019年チャンピオンの足跡 期待と悔しさ 進化する日本人WRCドライバーの現在形 特集
Headl 間4回が予定されているFIA 世界モータースポーツ評議会 (WMSC)の第1回会合がスイ ス・ジュネーブで行われた。 FIAジャン・トッド会長とグラハム・ス トーカー氏が主催する今年最初のWMSC では、まずは新型コロナウイルス感染症の パンデミックに関する詳細なプレゼンテー ションが行われた。そして、FIAメディカル 委員会のジェラール・サイヤン教授の主導 による「FIAクライシスセル」が設立され、 各国の状況とその影響について監視し、各 政府や世界保健機構(WHO)を含む関係当 局の助言に従うことが確認された。 フォーミュラ1に関しては、FIAとスク ーデリア・フェラーリとの関係の和解契約 が結ばれ、2020年のF1技術規則や競技規 則に関する承認や2021年以降のF1技術 規則の更新や財務規則の変更などが承認さ れている。世界耐久選手権(WEC)につい ては、11月1日富士スピードウェイ開催を 含めた2020-2021シーズンのカレンダー が承認され、プロトタイプトップクラス車 両のベースとなるプラットフォームの一般 原則の承認などが行われた。 世界ラリー選手権(WRC)については、 新しい車両区分「Rally1」に関する2022年 規則の技術定義を、対外アピール要素を含 めた達成可能なコストで競争できる規則の 開発をテーマに行ってきており、持続可能 なハイブリッド技術をあらゆるモデルに対 応できるシステムの構築と、コスト削減を 両立させることも確認されている。 また、地域選手権における2021年以降 のRally3クラスの更新を含む技術規定の 修正を承認。同じ重量と出力(210PS)を 持ち過給器はリストリクター装着でバラン スさせることで合意されている。 そして、今年の最終戦として予定されて いるWRC日本ラウンドについては、「Ral ly Japanタスクフォース」が組織され、開 催へのあらゆる支援が予定されている。 FIAシングルシーター委員会は、Haloを 組み込んだ第2世代のフォーミュラ4車両 が2021年から利用可能になることを発表。 各国のF4選手権には2023年末まで現行 車両を使用できる移行期間を設けており、 この移行が済めば、FIAのシングルシーター すべてにHalo導入が完了することになる。 FIAドリフト委員会では「DC1ドリフト 車両」と呼ばれる、FIA公認ドリフト競技に 3月6日、FIA世界モータースポーツ評議会がジュネーブで開催 技術規定やカレンダーなどの調整が進み、2020年以降の方向性が固まりつつあるはずが……!? Headline #01 モータースポーツ話題のニュース速攻Check! フォト/吉見幸夫、上尾雅英、JAFスポーツ編集部 レポート/JAFスポーツ編集部 年 ※この記事は3月31日までの情報を元にしております。 4
Headl eおける史上初の統一技術規定が承認された。 エンジン仕様と出力に変更の余地を残しな がら、FIAの新しい安全基準を施すことに 重点が置かれている(15ページに関連記事 あり)。また、FIAデジタルモータースポー ツ作業部会は2021年からFIAデジタルモ ータースポーツ委員会に昇格することも承 認されている。 3月6日のWMSC決議事項はこのよう な内容だったが、そこから1か月の間に、 新型コロナウイルス感染症の影響は深刻さ を増している。そのため、上表に挙げたと
られていたが、3月29日の全日本ジムカー ナ選手権開幕戦は中止、4月18~19日の 全日本カート選手権OK部門についても中 止(代替日未定)が発表されている。 また、3月24日には国際オリンピック委 員会(IOC)と東京2020組織委員会は、東 京2020オリンピック・パラリンピック競技 大会の延期を決定。3月30日には新日程も 合意され、オリンピック競技大会は2021 年7月23日~8月8日、パラリンピック競 技大会は2021年8月24日~9月5日に開
留意しつつ、早期の正常化を祈りたい。 海外イベント(3/31現在、JAFスポーツ編集部調べ) 開催最終日 大会名称 開催地 開催状況 3/15 FIA世界ラリー選手権第3戦.ラリー・メキシコ メキシコ 最終日キャンセル 3/15 FIAフォーミュラ1世界選手権第1戦.オーストラリアGP アルバート・パーク・サーキット 中止 3/20 FIA世界耐久選手権第6戦.セブリング1000マイルレース セブリング 中止 3/22 FIAフォーミュラ1世界選手権第2戦.バーレーンGP バーレーン・インターナショナル・サーキット 延期 3/22 FIAアジア・パシフィックラリー選手権第1戦.南インドラリー チェンナイ 延期 4/5 FIAフォーミュラ1世界選手権第3戦.ベトナムGP ハノイ市街地コース 延期 4/5 FIAアジアパシフィックラリー選手権第2戦.ラリー・オブ・オタゴ ニュージーランド 延期 4/19 FIAフォーミュラ1世界選手権第4戦.中国GP 上海インターナショナルサーキット 延期 4/25 FIA世界耐久選手権第7戦.スパ・フランコルシャン6時間レース スパ 延期 4/26 FIA世界ラリー選手権第4戦.ラリー・アルゼンティーナ アルゼンチン 延期 4/26 FIA世界ツーリングカー・カップ第1戦 ハンガロリンク 中止 5/3 FIAフォーミュラ1世界選手権第5戦.オランダGP ザントフォールト・サーキット 延期 5/10 FIAフォーミュラ1世界選手権第6戦.スペインGP カタロニア・サーキット 延期 5/10 FIAアジア・パシフィックラリー選手権第3戦.ワンガレイラリー ニュージーランド 延期 5/24 FIAフォーミュラ1世界選手権第7戦.モナコGP モンテカルロ市街地コース 中止 5/24 FIA世界ラリー選手権第5戦.ラリー・ポルトガル ポルトガル 延期 6/7 FIA世界ラリー選手権第6戦.ラリー・イタリア イタリア 延期 6/7 FIAフォーミュラ1世界選手権第8戦.アゼルバイジャンGP バクー市街地コース 延期 6/14 FIA世界耐久選手権第8戦.ル・マン24時間レース ル・マン 延期(9/19-20) 1. 岡山国際サーキットで行われたスーパーGT公式 テスト。2. 富士スピードウェイは、東京2020オリン ピック・パラリンピック競技大会の自転車競技の 会場として使用される予定だ。3. 富士スピードウェ イで行われたスーパーフォーミュラ合同テスト。 1 2 3 国内イベント(3/31現在、JAFスポーツ編集部調べ) 開催日 開催名称 開催地 3/7-8 モースポフェス2020.SUZUKA 鈴鹿サーキット 中止 3/9-10 スーパーフォーミュラ第1回鈴鹿合同テスト 鈴鹿サーキット 延期 3/28-29 スーパーGT公式テスト富士 富士スピードウェイ 中止 3/29 JAF全日本ジムカーナ選手権第1戦 ツインリンクもてぎ南コース 中止 4/3-5 JAF全日本スーパーフォーミュラ選手権第1戦 鈴鹿サーキット 延期 4/3-5 JAF全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権第1~2戦 鈴鹿サーキット 延期 4/10-12 FIAインターナショナルシリーズ.スーパーGT.Round.1 岡山国際サーキット 延期 4/17-19 JAF全日本スーパーフォーミュラ選手権第2戦 富士スピードウェイ 延期 4/17-19 JAF全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権第3~5戦 富士スピードウェイ 延期 4/18-19 JAF全日本カート選手権OK部門第1~2戦 ツインリンクもてぎ北ショートコース
JAF全日本カート選手権FS-125/FP-3部門東地域第1戦 ツインリンクもてぎ北ショートコース
4/26 JAF全日本カート選手権FS-125/FP-3部門西地域第2戦 琵琶湖スポーツランド 中止(代替未定) 5/3-4 FIAインターナショナルシリーズ.スーパーGT.Round.2 富士スピードウェイ 延期 5/15-17 JAF全日本スーパーフォーミュラ選手権第3戦 オートポリス 延期 5/15-17 JAF全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権第6~8戦 オートポリス 延期 5/30-31 FIAインターナショナルシリーズ.スーパーGT.Round.3 鈴鹿サーキット 延期 5
おり、F1を始めとした世界選手権や地域選 手権の中止や延期が続出している。 各国で中止延期が相次ぐ 国内モータースポーツにおいても、スー パーフォーミュラやスーパーGTなど、大 勢の観客を集めるレースイベントについて は、主催者やプロモーター等から、3月か ら4月、そして5月開催の大会の延期が、 いち早く発表されている。 3月14~15日には、岡山国際サーキッ トでスーパーGT公式テストが、愛知県新 城市では全日本ラリー選手権第2戦、京都 コスモスパークでは全日本ダートトライア ル選手権開幕戦、鈴鹿サーキット国際南コ ースでは全日本カート選手権FS-125/ FP-3部門西地域開幕戦が開催され、来場 者に感染機会を減らす徹底した工夫が講じ
催される予定であることが発表された。 モータースポーツだけでなく、今シーズ ン上半期におけるあらゆる催事のスケジュ ールが世界的に読めない状況となった。 FIAやJAF、そして各種機関による発表に
中止(代替未定) 4/18-19
中止(代替未定)
ポイントレースがなく、残り2日3レース でローソン選手に8ポイント差というとこ ろまで来ていた。最終ラウンドではフラガ 選手が2勝を挙げて逆転チャンピオン。厳 しい展開で精神的なタフさも見せた。 2019年はFormula Regional Europe an Championshipに参戦しシリーズ3位 だったフラガ選手。とはいえこのシリーズ は出走台数が多くは集まらず、チャンピオ ンは3位のフラガ選手の1.5倍ものポイン トを積み上げた圧勝だったため、フラガ選 手の存在感はさほど大きくなかった。 予選ではなかなかポールポジションが取
Headl ージーランド国内5か所を転 戦する2020年のToyota Rac ing Series(TRS)は、1月18 日から全15レースで争われた。 オフシーズンに南半球で行われるシリー ズとあって、F4からステップアップしたば かりの選手からF3マシンに乗り慣れた選 手まで、参加者の経験値にはかなり幅があ った。そういう状況で、今シーズンは前年 の覇者であり、FIA-F3のシリーズ参戦と 経験で勝る地元のリアム・ローソン選手が 圧倒的に有利と目されていた。 いざ開幕すると南米の選手たちもローソ ン選手に劣らぬ速さを示し、そろって予選 で好タイムをマークして前方グリッドを確 保する展開になった。決勝で荒さを見せ、 時に自滅する他の南米勢に対し、常に冷静 なレース運びでポイントを積み重ねたのが イゴール・フラガ選手だった。 ローソン選手は第4ラウンド12レース を終え5勝を挙げてシリーズをリード。フ ラガ選手は2勝ながら表彰台は7回でノー
れず4勝留まりだったが、グリッドから大 きく順位を下げることの少ない、安定した レースぶりが功を奏し、最終的にはシリー ズ上位に食い込めた。このシリーズでも最 終ラウンド3レースで2勝しており、学習 の一年だったのかもしれない。 フラガ選手は、以前は北南米のシリーズ にも参戦していたが、名を挙げたのはむし ろデジタルモータースポーツの世界だった。 2018年にはFIAタイトルも獲得。リアル レースでもゲームメーカーの支援を受けて いる。そういう意味では、ゲームの世界を 飛び出してきた選手と思われがちだが、そ うでもない。 日本生まれで日本でカートに乗り始め、 カート競技にも参戦。アジアタイトルを獲 っており、当時から成績を残していた。 しかし、現在、彼を支援する元F1ドラ イバーであり日本とも縁の深いロベルト・ モレノ氏が「資金も後ろ盾もないが、レー スへの情熱だけは引けを取らない点が自分 の経歴と重なった」と評するだけあって、 リアルレースへの参入にはなかなかハード ルが高く、時間を要していたようだ。 彼のレースキャリアには空白も多い。そ のハードルを越え、今年のTRSではタイ トルを獲得。3月にはレッドブル・ジュニ ア・チームへの加入も発表された。南米の 苦労人がここに来て急階段を登り始めた。 今後はFIA-F3に挑むフラガ選手がどこま で到達することになるのか期待したい。 “リアル”への急階段を駆け上がる“苦労人”イゴール・フラガ選手 Toyota Racing Series 2020年タイトル獲得!デジタルモータースポーツを経てレースの道へ Headline #02 モータースポーツ話題のニュース速攻Check! フォト/Bruce Jenkins Photography、TOYOTA GAZOO Racing New Zealand レポート/JAFスポーツ編集部 ニュ 6
くの観客を集める可能性が高 いイベントは軒並み中止や延 期の判断が下される中、3月 14~15日の週末には、鈴鹿サーキット国 際南コースで全日本カート選手権FS125/FP-3部門西地域の開幕戦、そして京 都コスモスパークでは全日本ダートトライ アル選手権の開幕戦が行われた。
全日本ラリー選手権も第2戦が開催され、 開幕戦嬬恋は台風19号の影響で中止され ていたため、この週末の第2戦新城ラリー が事実上の開幕戦となっていた。
各主催者は感染機会を減らす工夫を講じ た上で開催に踏み切り、それぞれの競技の 展開としては、今シーズンを象徴する激戦 が展開されることになった。 しかし、この週末には3月29日にツイ ンリンクもてぎ南コースで開催予定の全日 本ジムカーナ選手権開幕戦の中止が発表さ れ、その後にはツインリンクもてぎ北ショ
ートコースで予定された全日 本カート選手権OK部門開幕 戦の中止も発表されている。 これら大会の開催可否につ いては、主催者が決断し、発 表する情報であるため、今後 も各主催者の公式ホームペー ジ等から発信される公式情報 を確認してほしい。 ※追記:
4月1日にJAFから「新型コロナウイル ス等防止対策に係るお願い(2020年4月1 日版)」というお知らせが発表され「国内モ ータースポーツに関係するすべての皆様な らびに国民の健康と安全を考慮して、JAF メディカル部会の助言に基づき、催事等に 起因した感染リスクを防止するため、4月 30日までの間に開催が予定されているす べての日本選手権競技会をはじめJAF公 認競技会、JAF認定ライセンス・公認審判
全日本ジムカーナ第3戦名阪、全日本カー トFS-125/FP-3部門西地域第2戦は、延 期とアナウンスしている。
Headl e
員講習会、練習・走行行事等につきまして、 延期等とする感染防止対策を講じていただ くことをお願い申し上げます(一部抜粋)」 という内容となっていた。 これを受けた各主催者は同日に開催断念 等の意思を表明。全日本ダートトライアル
3月14~15日、各地で全日本選手権2020年シリーズが開幕 ついに開幕した全日本カート西地域と全日本ラリー、全日本ダートトライアル。しかし……。 Headline #03 モータースポーツ話題のニュース速攻Check! フォト/石原康、友田宏之、吉見幸夫、JAFスポーツ編集部 レポート/JAFスポーツ編集部 各主催者は様々な「感染機会を減らす工夫」を講じて開催を試みていた。 多 ※この記事は3月31日までの情報を元に、4月1日発表のJAFお知らせを追記しています。 7
第2戦恋の浦、全日本ラリー第3戦唐津、
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2020 春 CONTENTS HEADLINE 4 3月6日、FIA世界モータースポーツ評議会がジュネーブで開催 6 “リアル ” への急階段を駆け上がる “ 苦労人” イゴール・フラガ選手 7 3月14~15日、各地で全日本選手権2020年シリーズが開幕 SPECIAL ISSUE 10 巻頭特集 期待と悔しさ 進化する日本人WRCドライバーの現在形 15 特集 FIAドリフトDC1車両、発進! “世界統一”ドリフト車両規定がいよいよ明らかに! 18 スーパーフォーミュラ/スーパーGTシリーズ2020 全日本選手権&FIAシリーズ2020年参戦体制プレビュー 24 日本カート選手権最前線レビュー2020 2020年の選手権規定の変更点を解説&地方選手権のイマを調査 28 “ 働く”ドライバー 仕事と趣味の両立を目指す!全日本選手たちの工夫と苦悩 40 安全なラリー運営のために FIAラリーセーフティを再確認。主催者向けセミナー始まる 43 このひと、注目! レーシングドライバー小山美姫選手 46 モータースポーツのお仕事 ~レースフォトグラファー編~ 50 2019年JAF地方選手権チャンピオンの足跡 JAF公認ラリー&スピード競技、2019地区戦王者たちの奮闘記 56 2019年JAF地方選手権レースレビュー FIA-F4、F4、スーパーFJ、ツーリングカー、2019各地区を制した勝者たち TOPICS 62 オートテスト倶楽部 雪そしてグラベル。滑るオートテストのひと味違う楽しさって、何でしょう? 64 地方発信! モータースポーツ振興への飽くなき取り組み JMRC中部ジムカーナレッスンツアー2019 in キョウセイ INFORMATION 33 INFORMATION from JAF 2020年モータースポーツ公示(WEB)一覧 34 2020JAFモータースポーツ委員会名簿 JAF MOTORSPORTS JAFスポーツ[モータースポーツ情報] 監修/一般社団法人 日本自動車連盟 〒105-0012 東京都港区芝大門1-1-30 ☎0570-00-2811(ナビダイヤル) 発行所/(株)JAFメディアワークス 〒105-0012 東京都港区芝大門1-1-9野村不動産芝大門ビル10F ☎03-5470-1711 発行人/西岡敏明 振替(東京)00100-88320 印刷所/凸版印刷株式会社 編集長/佐藤均 田代康 清水健史 大槻聡 デザイン/鎌田僚デザイン室 編集/(株)JAFメディアワークスJAFスポーツ編集部 ☎03-5470-1712 COVER/2020年FIA世界ラリー選手権第1戦ラリー・モンテカルロ PHOTO/廣本泉
期待 本でも久々に注目度が高まりつつある WRC世界ラリー選手権。 2020年はシリーズ最終戦として10年 ぶりにWRC日本ラウンドが開催予定となっており、 世界最高峰のラリーに参戦している孤高の日本人ドラ イバー・勝田貴元選手の存在は、やはり目が離せない と言える。 勝田貴元選手は、1979年全日本ラリー選手権A部門 ドライバーチャンピオンの勝田照夫氏を祖父に持ち、 全日本ラリー最高峰クラスで8度のタイトルを獲得し た勝田範彦選手を父に持つ「三世ドライバー」だ。 彼のキャリアは、2004年からレーシングカートに始 まり、2009年にはフォーミュラ・トヨタ・レーシング スクール(FTRS)のスカラシップを獲得。以降、フォー ミュラ・チャレンジ・ジャパン(FCJ)に参戦し、2011 年にタイトルを獲得すると、トヨタ・ヤング・ドライ バーズ・プログラム(TDP)のドライバーとして全日本 フォーミュラ3選手権へステップアップした。 レースで活躍する一方で、2013年には全日本ラリー 選手権にもスポット参戦。トヨタ86で参戦した2014 年の第8戦ハイランドマスターズではJN5クラスを制 するなど、ラリーにおいても才能を発揮してきた。 2015年からは本格的にラリーへ専念することにな り、トヨタの若手ドライバー育成プロジェクト 「TOYOTA GAZOO Racingラリーチャレンジプログ ラム」の育成ドライバーに選出。勝田貴元選手のラリー ドライバーとしての新しいキャリアがスタートした。 2016年にはフィンランド選手権に参戦するほか、ト ミ・マキネンレーシングのフォード・フィエスタR5で 日 10
と 世界ラリー選手権に挑戦し続ける唯一の日本人は、 ヤリス W R C を得た今シーズン、さらに飛翔する。 フォーミュラレース出身の勝田貴元選手は、 世界の道と孤軍奮闘しながら、己を鍛え上げ、 チャレンジプログラム/トヨタ・ヤング・ドライバー フォト/廣本泉、 T O Y O T A G A Z O O R a c n g R、 e d B u l l C o n t e n t P o o レポート/廣本泉、 J A F スポーツ編集部
戦に一本化。TOYOTA GAZOO Racingワールドラリ ーチームのヤリスWRCを駆り、欧州圏の7戦とWRC 日本ラウンドに参戦することになったのだ。 この新たなプログラムについて、TGR WRT代表のト T G R W R C チャレンジプログラム T G R D C 育成ドライバー(ラリー) 勝田貴元 悔しさ 進化する日本人WRCドライバーの現在形 11
WRCにデビューするなど、海外武者修業を開始。 2018年ラリー・スウェーデンでWRC2クラスを制す ると、2019年ラリー・チリでもWRC2でクラス優勝し てみせた。このように、WRCサポートカテゴリーで実 績を残すことで、2019年にはスポット参戦ながら、ヤ リスWRCでWRCのトップカテゴリーに参戦するチャ ンスを獲得。ラリー・ドイツでは総合10位に入り、 WRCにおけるポイント獲得を成し遂げた。 育成プログラムが2020年から大幅変更 まさに異色のキャリアを持つ勝田貴元選手は、ラリ ー転向後も着実に進化を遂げてきている。それは、 2020年からトヨタの若手ドライバー育成プログラムが 「TGRドライバー・チャレンジ・プログラム(TGRDC)」に刷新されたことも影響しているだろう。 この新しいプログラムは、世界で活躍できる日本人 レース&ラリードライバーを育成するために、既存の プログラム(TGRラリーチャレンジプログラム/WEC ズ・プログラム/フォーミュラトヨタ・レーシングスク ール)を統合・発展させたもの。 国内ラリーに参加する若手ドライバーやFIA-F4のス カラシップドライバーを対象に、ラリーにおける育成 ドライバー枠が新設され、従来のレーシングドライバ ー育成ラダーの他に、ラリー競技におけるステップア ップラダーが生まれたことになったのだ。 その先駆けとなった勝田貴元選手は「TGR WRCチ ャレンジプログラム」の候補生として活動することにな り、プログラムが強化されることとなった。 これまでは、フォード・フィエスタR5によるWRC2 参戦を主軸に、年に数戦のみWRカーによるWRC参 戦があった。しかし、2020年からはWRカーによる参
「インフォメーションとクルマを信じ切れないまま走 っていたら、ガードレールに当たってしまいました。な ので、そこからは気持ちを切り替えて、完走だけを考 えて走ることにしました」と厳しい表情を見せる。 数台とはいえ、格下となるR5車両の先行を許してい ただけに、彼にとってこのリザルトは不本意だったに 違いない。事実、デイ1については「不安と悔しさしか なかった」と暗い表情で語っていた。 しかし、ドライターマックとなった1月24日のデイ 2ではペースアップ。「アイスノートクルーの情報と実 際のコンディションがズレていたので、必要以上にペ ースを落としました」と語りながらも、安定した走りを 披露して総合7位に浮上してみせた。 25日のデイ3では、オープニングのSS9でスノーバ ンクにヒット。ラジエターに雪が詰まって3分を失っ ミ・マキネン代表は「タカ(貴元選手)にとって、2020年 のプログラムは大きなステップとなる。今後のために もWRカーで多くの経験を積んでほしい」と期待を込め る。勝田貴元選手も「2021年への経験のためのプログ ラムなので、リスクマネジメントをしながら戦ってい きたい」と意気込みを語っていた。 新プログラムの緒戦は、1月23日~26日にモナコ公 国で開催されたWRC開幕戦のラリー・モンテカルロ。 雪と氷に覆われた特殊なターマックで、勝田貴元選手 の新たなチャレンジが幕を開けた。 2019年大会にフォード・フィエスタR5で参戦して いることから、彼にとっては2度目の参戦だったが、 「WRカーはR5マシンと違ってスピードが高いので、 ペースノートの情報量を減らしました」とのこと。 さらに「今年の8戦はイベントによってレベルが変わ ると思います。スウェーデンやフィンランドなどは経 験値が多いのでチャレンジできると思います。でも、 モナコについては何が起こるか分からない。頭を使い ながら最後まで走りたい」と慎重な姿勢を見せた。 加えて、彼がドライブする4台目のヤリスWRCは 2019年スペックであるほか、ペースノートについて も、マニュファクチャラー登録ではない彼は、ワーク スドライバーに対して、アイスノートクルーが走行で きる出走時刻が早く、インフォメーションと実際の路 面状況に大きなギャップがあった。そのため、デイ1 のナイトステージから苦戦を強いられることになった。 SS1こそ9番手タイムをマークしてみせたが、SS2で は14番手に低迷。デイ1総合では12位と出遅れる。 開幕戦モンテカルロは”路面情報”との戦い 近年のモンテカルロは積雪することは限定的で、ウェットパッチや アイスパッチが交互に出現するターマックラリーとなっている。そ のためタイヤ選択は難しく、直前の路面状況を伝えるノートクルー の情報如何によっては、攻めることすら困難な状況となっている。 12
Racing Companyの友山茂樹代表は「準備期間が少な い中で、難しいラリーを完走してくれましたからね。 このまま経験を積んでいけば、Rally Japanが楽しみに なると思いますよ」と高評価。勝田貴元選手自身も「多 くの経験を積みながら、このラリーを完走できたので 満足しています。木曜にスタートした時から比べると 大きく成長できたと思います」と笑顔を見せた。
勝田貴元選手は、過酷なモンテカルロを走り抜くこ とによって、リザルト以上の手応えを掴んでいた。 第2戦スウェーデンでは光る走りを披露
このように、僅か1戦ながら目覚ましい成長を見せ た勝田貴元選手は、2月14日~16日に開催された第2 戦のラリー・スウェーデンにコマを進めた。
例年のスウェディッシュはシーズン唯一のフルスノ ーイベントとして開催される。フィンランドで武者修 業を行ってきた彼にとって、2018年大会ではWRC2ク ラスを制するなど、得意な一戦にあたる。
しかし、2020年大会は積雪量が不足したことから、 多くのステージをキャンセルした短縮ルートで開催。 しかも、雪やアイスは少なく、多くの道でグラベルが 露出した、例年とは異なる路面状況となっていた。
当然、グラベル路面では金属製のスタッドが抜けや すくなるため、タイヤマネジメントが重要となるが、
ラリー・モンテカルロを無事完走した。
期待 と 悔しさ た。続くSS10でも13番手に留まるなど、スタッドタ イヤで挑んだファーストループでは低迷していた。 しかし、雪と氷の残るステージにスリックタイヤで 挑んだセカンドループでは、順調な走りを披露した。 「スプリットタイムはオジェ選手とあまり変わらないよ うでした。全体的にペースを落としていたけど、悪く はなかったと思います」と語るように、SS7では7番手 タイムを計測。SS8ではフォード・フィエスタWRCを 駆るテーム・スニネン選手と僅差の8番手タイムを計 測して、総合7位でデイ3をフィニッシュした。 そして、ドライターマックとなった1月26日のデイ 4では、SS14およびSS16で6番手タイムをマーク。ス ニネン選手やチームメイトのカッレ・ロバンペラ選手 を凌駕する走りを披露してみせた。その結果、勝田貴 元選手は総合7位に入賞し、自己最高位を更新して、
この一戦について現地で活動を見守ったGAZOO
コースカーとしてGRヤリスが登場した第2戦スウェーデンは、写真 の通りグラベル路面が露出する状況。そのため予定の行程が大幅に 変更され、開幕戦に続いて路面に翻弄されることに。しかし、そんな 状況にも関わらずワークス勢に匹敵するタイムを計測してみせた。 13
15日のデイ2でも路面の掃除役を強いられることに なったが「出走順がトップでしたが、タイムは向上しま した」と語るようにペースアップを果たす。そして、こ の日の最終SS16では、ヒュンダイのオイット・タナッ ク選手や、Mスポーツのスニネン選手、チームメイトの ロバンペラ選手を抑えた5番手タイムをマーク。ワー クス勢を凌ぐスピードを見せていた。 強い雨に見舞われた16日のデイ3でも堅実な走りで 最終SSを走破。総合9位でスウェーデンを終えた。 リザルトこそ開幕戦モンテカルロの7位に及ばなか ったが、「トリッキーなコンディションの中、走りを改 善することができました。トップ選手たちとの差も縮 まってきたと思います」と語るように、この一戦におい ても、多くのことを吸収したようだった。 事実、TGR WRCチャレンジプログラムにおいて勝 田貴元選手のインストラクターを務めるヤルッコ・ミ エッティネン氏も「最速ドライバーと比べても、タカ (貴元)とのギャップは1km当たり1秒以下。WRCでの トップクラスにおけるパフォーマンスは以前よりも向 上している」と、彼の走りを高く評価していた。 勝田貴元選手は「この新しい体制では、素晴らしいド ライバーたちと比較できるので、どこを改善できるの かを知ることが可能です。今回も多くの改善点が見つ かりました」と自己分析する。 その言葉通り、彼はラリーを重ねるごとに進化して いる。経験不足が露出することはままあるが、緒戦の 難しいコンディションを完走し、しかも、トライ&エラ ーを繰り返しながら、ワークス勢と伍するタイムを計 測するなど、着実な進化が目に見えている。 フォーミュラレースの世界から飛び込んだ勝田貴元 選手が見せた緒戦の戦いぶりは、すっかりラリーストの それになっていた。日本人として多くを背負ってWRC のトップクラスに挑む彼の動向には今後も注目だ。 期待と 悔しさ 昼間ですら先が読めない路面状況は、ナイトステージが加わると状況 把握の困難さに拍車が掛かる。これら緒戦の難しい状況を成績を残し ながら完走した勝田貴元選手。この経験から得たものは大きいだろう。 ドライバーとしての強さも備 わりつつある勝田貴元選手。 どんな状況でもインタビュー にはしっかり対応するというこ とで、海外メディアからの評価 も高いという。 14
勝田貴元選手は終始安定した走りを披露していた。 「いつものスウェーデンと違って、路面に雪や氷が少 なく、路面状況も頻繁に変わっていました」と語るよう に、トリッキーな路面状況に戸惑いながらも14日のデ イ1を総合9位でフィニッシュした。
もあり、FIAはドリフトの将来性に対して、
初年度ということもあり、その活動が注目されていた が、まず最初のステップとして車両規則の統一化とい う形で成果を、今回、世界に示すこととなった。 ドリフト委員会は24名程のメンバーで構成され、委 員長はル・マン勝者のレーシングドライバー、飯田章 氏。16名が各国のASNの代表者、プロモーター、1名 のタイヤメーカー代表(TOYOタイヤ)、残り6名は FIAの技術委員、スポーツ委員等で構成される。 また、D1グランプリを運営し、これまで3度のFIA F I A ドリフト D C 1 !! 3月 6 日に開催された I A 世界モータースポーツ評議会( W M S C )において、 I A 公認ドリフト競技の統一車両規則が承認された。 これまで検討が重ねられてきた車両規則の制定は、 ドリフト競技のグローバル化が始まる第一歩。 公表された規則の概要をお届けしよう。 フォト/堤晋一、 S R O M o t o r s p o r t s 、 J A F スポーツ編集部 レポート/ J A F スポーツ編集部 い 15
わゆる“競技ドリフト”が世界へと拡散し、 興行的に成功を収めるプロモーターの勃興
これまでの注視というスタンスから、直接的な関わり を持つ方向に変わってきていることは既によく知られ ているとおり。 FIAがドリフトをモータースポーツとして定義する試 みは以前から進められてきた。この度、それら国際化 と統一化戦略の第一歩として、世界統一車両規則のド ラフト版が固まり、3月6日のFIA世界モータースポ ーツ評議会(WMSC)において承認された。 FIAはかねてからドリフトに対し一定の関心は持っ ており、2019年より「FIA DRIFTING COMMISSION (FIAドリフト委員会)」を立ち上げることで、ドリフト に対するアクションを本格化させてきた。 FIAが実務としてドリフトに取り組むのは2019年が
3月6日、FIAは史上初となるド リフト競技の統一車両規則を 承認した。この「DC1」と呼ば れる新たな車両規則は「ドリフ トを拡大するための多くの計 画のうち、最初のものに過ぎな い」とFIAドリフト委員会の飯 田章委員長が語るように、まだ まだ暫定状態ながら、各国シ リーズで異なる車両規則を世 界統一に導く、一つの基準にな ることが期待されている。
別のシリーズへの参戦を容易にする DC1車両規則の基本的な方向性は、いわゆる「ドリ 車」作りの実態がよく反映されたものとなっており、エ ンジンスワップや過給器の装着を自由とし、ハイパワ ー化の潮流を妨げないものとなっている。 ボディやシャシー側についても、もはや現代のドリ フト競技車両に付き物である、切れ角アップやキャン バー拡大などへの対応を容易にする、極めて改造範囲 の広いものとされている。 飯田章委員長はこの統一規則が浸透することで、複 数の異なるシリーズへのエントリーを容易にする、つ まり、車両製作の負担を大幅に減じることで、ドリフ ト競技の国際化が一気に広がることを期待していると 語っている。つまりこれは参加者側の視点だ。 すでに、D1グランプリを始め、北米のフォーミュラ ドリフトやロシアのロシアン・ドリフト・シリーズ (RDS)等が、それぞれの開催域を超えた独自の地位を 確立している。そして、各地で勃興しているドリフト シリーズにおいても、お国柄に合わせた、それぞれの 事情を反映した規則で大会が運用されている。 このように、各国でバラバラとなっている規則を統 一することが、ドリフト競技をより広いエリアに浸透さ せるには不可欠であるという意味でもある。 その一方で、FIAの技術スタッフであるジル・サイモ ン氏は「FIAスタンダードの安全基準の浸透を徹底させ ることが目的である」というFIAとしての立場を強調し たコメントを残している。これら安全基準の徹底も含 めた統一規則の確立が実現すれば、FIAまたは各ASN による公認ドリフト競技として、全世界的に広めるこ とができる絶好の契機となるに違いない。 著名ドリフトシリーズの中間点 ここからは、具体的にDC1車両規則を見ていこう。 エンジンについては「自動車用内燃機関」であること だけが明記され、スペシャルブロック等への記載は一 切見当たらない。もちろん改造は自由と明言され、電 気・ハイブリッドについても、FIAのテクニカルデリゲ
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インターコンチネンタル・ドリフティングカップ(FIA IDC)を成功させてきた、サンプロスの齊田功氏もプロ モーターとして委員会に名を連ねている。 FIAのウェブサイトでは、すでに「DC1」と呼ばれる 車両規則がダウンロードできるようになっている。こ のDC1車両規則には「DRAFT(草稿)」という文字が残 されているが、ひとまずこの資料を参考にして、DC1 車両規則を紐解いていこう。
ートの個別判断という条件付きながら、参加は妨げら れないと書かれている。
そして、ターボチャージャーについては「製造時のコ ンディションを保つこと」とある。これはターボチャー ジャーユニット(タービン&コンプレッサー)の改造を 許可しないと読み解くべきだと思われる。
NOS(亜酸化窒素ガス噴射システム)の使用が許可さ れている点も見逃してはならない。 一方で、サスペンションの改造については、すでに 各国で地位を確立しているドリフトシリーズの中間点 に落とし込まれたような形となった。
フロントサスペンションについては、明確な改造の 制限は謳われていないが、サスペンション形式の変更 については、FIA技術部の許可を得る必要がある、そし て事前に「テクニカルパスポート」が必要となると明記 されている。 つまり、改造範囲の明文化はなされていないが、そ の判断はFIAに委ねられるという不明確な記述となっ ている。文字どおりに解釈すれば、D1車両のようにメ
分は今後の運用で細則が付記されていくことが予測さ れる。こうした空白部分がどのように落とし込まれて いくのかは、今後も注視しておく必要がある。
2020年末にDC1車両のお披露目か FIAのリリースによれば、2019年に華々しく開催さ れた「FIAモータースポーツゲームス」の第2回大会が 2020年秋にスケジュールされており、昨年同様に「ド リフティングカップ」の実施も明記された。
DC1車両規則を眺めると、実際のところ、細かい部
そして、詳細は未定ではあるが、このドリフティン グカップについては、DC1車両規則で制作された車両 も参加できることが、統一規則の発表と同時期にアナ ウンスされた。これにより、運用面でのコンセンサス 等も含め、FIAドリフト委員会と各国ASN、参加者らの 対応が急速に迫られることとなるだろう。
車両、発進!
また、WMSCの決定事項では、次なるFIA IDCのプ ロモーターの入札も間もなく開始されることも明記さ れている。ということで、第2回FIAモータースポーツ ゲームスと次なるFIA IDCのどちらか、あるいは両方 が、DC1車両規則を最初に適用した世界規模の大会と して開催されることになりそうだ。
F I A
D C 1
ドリフト
ンバーやピボット位置の移動も許容されることになる が、運用の実際については現段階では不明だ。 リアサスペンションは、純正のサスペンション形式 を維持する必要があるという文言のみで、他に特段の 規制はない。ただし、前後とも各輪に最低1本の油圧 式ショックアブソーバーを装備せよ、としている。 大きく異なるのがボディやフレームの改造範囲の指 定だ。文字で詳細を説明するのは困難なので割愛する が、ざっくりと表現すれば、フォーミュラ・ドリフトの 考え方をほぼそのまま踏襲した形となっている。 他のレギュレーションに合致する車両の適合につい ては個別にしっかりと精査する必要があるだろう。 FIAが強く主張する安全面の強化については、FIA-J 項253の遵守を規定するもので、ここにDC1車両規 則として独自の規則は盛り込まれていない。
昨年12月に筑波サーキットコース 2000で開催された第3回FIAイン ターコンチネンタル・ドリフティング・ カップ。次戦の開催に向けてプロモー ターの入札が始まっているという。 昨年から始まった「FIAモータースポー ツゲームス」では「ドリフティングカッ プ」を設定。10月23~25日には、第2 回大会がポールリカールサーキットで開 催されることが発表されており、すでに FIAのDC1車両規則で作られた車両も 参加できることが明らかにされている。 17
決勝レースでは、優勝者から10位までのドライバ ーにポイントを付与。優勝者には20点、2位15点、3 位11点、以下、8-6-5-4-3-2-1点となる予定で、これ により優勝の価値がより高まることになる。 予選方式は、昨年と同様にQ1からQ3までのノッ
競技規則がきめ細かくリニューアル さて、ドライバーたちの顔ぶれも楽しみなスーパー フォーミュラだが、今シーズンはレギュレーションに も様々な変更点がある。それもチャンピオンシップの 行方を左右する要素となるのは間違いない。 大きな変更点はポイントシステム。これまで予選で はポールポジション(PP)獲得者に1点が与えられてい たが、今季からは予選トップ3のドライバーに対して、 PPは3点、2位は2点、3位は1点が与えられる。
日本スーパーフォーミュラ選手権に参戦予 定のチームは、3月24~25日、富士スピー ドウェイで公式合同テストを実施した。 今年も全7戦を予定しているスーパーフォーミュラ には、多くのルーキードライバーたちが参戦予定だ。 これまで日本でのレース経験がなく、海外から新たに やって来ることになったのは、年始のホンダ体制発表 で明らかにされたタチアナ・カルデロン選手と、合同 テスト直前に参戦が明らかにされたセルジオ・セッ テ・カマラ選手。いずれもF1テストドライバーを務め るなど、欧州で将来を嘱望されているドライバーだ。 特にカルデロン選手については、国内トップカテゴ リーでは1997年序盤に参戦したサーラ・カバナ選手 以来、23年ぶりの女性ドライバーとなる。 一方、日本のレースを経験済みで、スーパーフォー ミュラにステップアップしてきた選手は、昨年全日本 F3チャンピオンを獲得したサッシャ・フェネストラズ 選手と、昨年は怪我による欠場があったものの同じく 全日本F3を戦ったシャルル・ミレッシ選手だ。そし て、唯一の日本人ルーキーとなる大湯都史樹選手も、 全日本F3からステップアップを果たしている。 昨年の最終戦に突然来日することになったレッドブ ル・ジュニアのユーリ・ビップス選手も今季はフル参 戦。すでにデビュー済みだが、ルーキー扱いとなる。 ともに大きな変革を伴う開幕戦を迎えるはずだった。今シーズンのスーパーフォーミュラとスーパー主催者やプロモーター、自動車メーカー等の情報を元にここでは、シリーズ開幕前に行われた公式テストや 2020 シーズン概要をおさらいしよう。 フォト/吉見幸夫、上尾雅英、 F o r m u l a M o t o r s p o r t s L t d 、 J A F スポーツ編集部 レポート/貝島由美子、はた☆なおゆき、 J A F スポーツ編集部 スーパーフォーミュラ スーパーフォーミュラ 全日本選手権&FIAシリーズ 今年も海外選手が注目するスーパーフォーミュラ セッテ・カマラ選手&カルデロン選手が参戦表明 全 ※この記事は3月31日までの情報を元にしております。 18
加えて、今季参戦2年目となる坪井翔選手、牧野任 祐選手、さらには福住仁嶺選手ら、イキのいい若手ド ライバーたちもズラリと顔を揃えた。 彼ら若手と刃を交えることになるのは、参戦3年目 にしてシリーズチャンピオンに輝いたニック・キャシ ディ選手や、すでに複数回のタイトル獲得を経験して いる中嶋一貴選手や石浦宏明選手、山本尚貴選手とい った面々。幾度も印象的な走りを見せた元F1ドライバ ー・小林可夢偉選手の存在も気になるところだ。
クアウト方式だが、Q1突破台数が変更。昨年 よりも2台多い14台がQ2へと駒を進められ ることになった。 また、車両に搭載できる燃料の量が90リ ッターまでに統一される。昨シーズンまで は、セーフティカーが導入された際など、そ の後の走行をリフト&コーストに切り替えて、無給油 で走り切ってしまうドライバーもいたが、今季は 250kmのレースを無給油では走り切れないように搭 載量が少なくなった形だろう。 燃料に関しては、各セッションともに、ドライバー はチェッカーが出されたら自走でパルクフェルメに戻
らなければならないというルールもできた。この時、 車両には最低1リッターの燃料が残っていなければな らない。ガス欠でコース上、あるいはコース外にスト ップした場合には、ペナルティの対象になる。 さらに、スタート前とゴール後のタイヤ内圧が、こ れまで以上に厳しく管理される予定だ。エントラント としてはタイヤ内圧はできるだけ下げてスタートした いと考えるもの。しかし、そこに起因する、レース中
内トップフォーミュラとしては初めて、タイヤ内圧管 理が規制されることになったのだ。 こうした内圧管理は、例えばドイツ・ツーリングカ ー・マスターズ(DTM)などでも採用されているが、ウ ォームアップ走行でどのようなタイヤの温め方をする G T は スーパーGTシリーズ 2020年参戦体制プレビュー 2020年スーパーフォーミュラチーム体制(2月中旬までのメーカー等の発表に基づくJAFスポーツ編集部調べ) トヨタ KONDO.RACING 3号車 山下健太選手 4号車 サッシャ・フェネストラズ選手 YH carrozzeria.Team.KCMG 7号車 小林可夢偉選手 18号車 国本雄資選手 YH ITOCHU.ENEX.TEAM.IMPUL 19号車 関口雄飛選手 20号車 平川亮選手 YH VANTELIN.TEAM.TOM'S 1号車 ニック・キャシディ選手 36号車 中嶋一貴選手 YH ROOKIE.Racing 14号車 大嶋和也選手 YH JMS.P.MU/CERUMO・INGING 38号車 石浦宏明選手 39号車 坪井翔選手 YH ホンダ DOCOMO.TEAM.DANDELION.RACING 5号車 山本尚貴選手 6号車 福住仁嶺選手 YH Threebond.Drago.CORSE 12号車 タチアナ・カルデロン選手 YH TEAM.MUGEN 15号車 ユーリ・ビップス選手 16号車 野尻智紀選手 YH REAL.RACING 17号車 ※参戦休止 YH B-Max.Racing.with.Motopark 50号車 セルジオ・セッテ・カマラ選手 51号車 シャルル・ミレッシ選手 YH TCS.NAKAJIMA.RACING 64号車 牧野任祐選手 65号車 大湯都史樹選手 YH アルファロメオのF1テストドライバーを務めながら昨年はFIA-F2に参 戦したタチアナ・カルデロン選手。 19
のタイヤバーストといった危険を排除するために、国
17日の第3戦オートポリス大
か、どのような車速でグリッドに着くかなど、かなり シビアになってくる。この辺りは各チームや各ドライ バーの腕が試される部分と言える。スタート後のタイ ヤ内圧の状態にも大きく関わってくるからだ。 さらに、レース中のピット作業についても変更があ る予定。これまでは消火器を担当していたメカニック が、給油作業終了後にジャッキを下げる作業などに携 わることができた。だが、今季から消火作業要員はそ れの専任となる模様だ。 ピット作業エリアに出られる人数は変わらないこと から、各チームのタイヤ交換担当は、今まで以上に速 さと工夫が求められることになる。こうした部分も、 レースの行方を左右するファクター となるだろう。 3月9~10日の鈴鹿サーキット の公式合同テストは延期、3月24~ 25日の富士スピードウェイの合同 テストは何とか開催された。しか し、3月31日現在では、4月4~5 日の開幕戦鈴鹿大会、4月18~19 日の第2戦富士大会、そして5月16 日~
会は、今年から併催される全日本スーパーフォーミュ ラ・ライツ選手権とともに延期されている。 3月下旬の合同テストの後、次はいつ走行の機会が 得られるだろうか。コースや車両の習熟がまだできて いないルーキーたちには辛い滑り出しとなるだろう。 だが、その中でもキラリと光るものを見せるドライ バーはいるはずだ。初優勝者が誕生することが多いス ポーツランドSUGOといったコースもあるため、各地 で誰が速さを見せるのかは今年も混迷を極めるだろう。 世界の大部分が時を止めている状況だが、ドライバ ーたちにはまず“走れる喜び”、“レースができる豊か さ”を感じながら、コースに出ていただきたい。 2019年のスーパーフォーミュラ開幕戦鈴鹿で撮影された集合写真。2020年の開幕が待たれる。 2019年全日本F3チャンピオン、サッシャ・フェネストラズ選手。 全日本F3の大湯都史樹選手は牧野任祐選手のチームメイトに抜擢。 今季からスタートする全日本スーパーフォーミュ ラ・ライツ選手権には、昨年までFIA-F3を戦った 名取鉄平選手が参戦予定。 ※この記事は3月31日までの情報を元にしております。 20
年は海外2戦を含む全8戦を予定している スーパーGT。最大のトピックスは、GT500 クラスはCLASS1規定に基づいて開発され た車両によって争われることだろう。 CLASS1とは、GTアソシエイションがDTMの統括 団体であるITRと議論してきた共通規定。細かく改め られた点もあるが、前提はエンジンをフロントに置き、 後輪で駆動する、いわゆる“FR”であることだ。 GT500は全車新型に改められたが、これに伴い本 来ミドシップであるNSX-GTを、ホンダはFRに変更 することになった。また、トヨタも従来のレクサス LC500からGRスープラにスイッチした一方で、日産 はGT-Rで引き続き参戦するものの、すべてが一新さ れたこともあり、勢力図にも変化が生じそうだ。 その要因の一つとして、昨年は大嶋和也選手と山下 健太選手がドライバーチャンピオンに輝いたが、今年 はゼッケン1で臨むチームは存在しないこと。
大嶋選手は引き続きWAKO’Sをメインスポンサー とするも、チーム体制を改められたTGR TEAM WAKO’S ROOKIEで、新たに坪井翔選手とコンビを 組むことになっている。山下選手は昨年の途中から WECにLMP2で挑むことになり、そちらに集中する。 車両の変更もさることながら、そういったラインアッ プの変更も、変化を生じさせる理由になるはずだ。 笹原右京選手がGT500に大抜擢 それぞれの陣営について触れてみることにしよう。 まずはトヨタ。ドライバーラインナップは不動のまま、 TGR KeePer TOM’SとTGR TEAM ZENT CERU MOは、それぞれ平川亮選手とニック・キャシディ選
籍してきたが、残るチームの若手ドライバーはいずれ もGT500初挑戦だ。昨年のGT300チャンピオンであ る福住仁嶺選手はARTAに加わって野尻智紀選手と、 そして大津弘樹選手がModulo Nakajima Racingで 伊沢拓也選手とコンビを組むことになった。 そして、今年一番のサプライズは、笹原右京選手が TEAM MUGENで武藤英紀選手と走ることになった ことだろう。昨年のポルシェカレラカップジャパン、 アジアF3のチャンピオンながら、スーパーGTのシリ ーズ参戦経験は皆無とあって、異例の大抜擢と言え る。これらの変化は、それぞれホンダが大改革を求め ていることの証明でもあり、うまくマッチすれば、か なりの爆発力を生みそうだ。
日産は、まずNISMOが松田次生選手とロニー・ク インタレッリ選手のコンビを継続、最強チームへの復 権を目指す。KONDO RACINGも、高星明誠選手とヤ ン・マーデンボロー選手の二人で再び戦いに挑む。
一方、NDDP RACING with B-MAXは平手晃平選 手の新たなパートナーに千代勝正選手を、そして TEAM IMPULは佐々木大樹選手の新たなパートナー に平峰一貴選手を起用した。中でも佐々木選手と平峰 選手はカートレースからライバルの関係。競い合った ことで手の内を知るだけに、今は不安より期待がはる かに上回るとも。ドライバーとしてのタイプは異なる ため、ここも化学変化の期待がかかる。
NSX-GTバゲット選手がトップタイム
さて、実際のところは……。開幕を控え、各チーム の力量を推し量れる機会となるのが、岡山国際サーキ ットでの公式テストである。初日は雨が降ったり止ん だりの天候で、2日間、4セッションが行われた。 初日の最速タイムはKEIHIN NSX-GTのバゲット選 手がマークし、2番手はARTA NSX-GTの野尻選手だ った。2日目は早朝こそ前日までの雨で濡れていたが、 徐々に路面状態は向上。ただし、ほとんどのチームが
テップアッパー、宮田莉朋選手とサッシャ・フェネス トラズ選手を受け入れたのは、TGR TEAM Weds Sport BANDOHとTGR TEAM au TOM’Sで、それ ぞれ国本雄資選手、関口雄飛選手とコンビを組む。フ レッシュな才能が、どんな化学変化を生むだろうか。 ホンダで昨年から変更がなかったのは、塚越広大選 手とベルトラン・バゲット選手を擁するKEIHIN REAL RACINGのみ。他の4チームは、そろって若手 を第2ドライバーとして起用した。
手、立川祐路選手と石浦宏明選手のコンビが王座奪還 を目指す。 TGR TEAM SARDもまた、ヘイキ・コバライネン 選手と中山雄一選手のコンビのまま。GT300からのス
ゼッケン1の奪還を目指すTEAM KUNIMITSUは 山本尚貴選手のパートナーとして、牧野任祐選手が移
ロングランを重視していたようで、驚くほどのタイム スーパーGTシリーズ GT500クラスは参戦マシンがすべて一新! GT300も有力チームが体制変更 3月14~15日、岡山国際サーキッ トで公式テストが行われた。 スーパーフォーミュラ スーパーGTシリーズ 全日本選手権&FIAシリーズ2020年参戦体制プレビュー 今 21
は記録されなかった。 セッション3はWAKO’S 4CR GR Supraの坪井選 手が、セッション4はZENT GR Supraの石浦選手が トップだったが、初日のセッション2でバゲット選手が 記した最速タイム、1分17秒850は更新されなかった。 今回の全体的なホンダ勢の好調ぶりは、正直言って 意外な感も。NSX-GTをFR化せざるを得なかった、と いうネガティブな印象が一切なかったからだ。 一方、トップタイムこそ記されることのなかった日産 勢ながら、松田選手とクインタレッリ選手の駆る、 MOTUL AUTECH GT-Rが絶えず上位につけて安定 感をアピール。そもそもテストはそれぞれメニューが異 なることが多々あり、タイムだけがすべてではない。願 わくは、実力伯仲の戦いとなることを期待したい。 WECでおなじみティーム選手が参戦 GT300におけるトピックスは、ミシュランの復帰 だろう。これでGT500同様、タイヤメーカー4社で の戦いになる。新たにミシュランを装着するのは、ア ストンマーティン・ヴァンテージGT3を走らせる PACIFIC-D’station Racingと、レクサスRC F GT3 を走らせるLM corsa。マッチングが進めば、大きな 武器となることだろう。藤井誠暢選手と吉本大樹選手 のパートナーは、それぞれ、アストンマーティン・フ 2020年スーパーGT GT500クラスチーム体制(2月中旬までのメーカー等の発表に基づくJAFスポーツ編集部調べ) トヨタ TGR TEAM WAKO'S ROOKIE 14号車 大嶋和也選手/坪井翔選手 WAKO'S 4CR GR Supra BS TGR TEAM WedsSport BANDOH 19号車 国本雄資選手/宮田莉朋選手 WedsSport ADVAN GR Supra YH TGR TEAM au TOM'S 36号車 関口雄飛選手/サッシャ・フェネストラズ選手 au TOM'S GR Supra BS TGR TEAM KeePer TOM'S 37号車 平川亮選手/ニック・キャシディ選手 KeePer TOM'S GR Supra BS TGR TEAM ZENT CERUMO 38号車 立川祐路選手/石浦宏明選手 ZENT GR Supra BS TGR TEAM SARD 39号車 ヘイキ・コバライネン選手/中山雄一選手 DENSO KOBELCO SARD GR Supra BS ホンダ ARTA 8号車 野尻智紀選手/福住仁嶺選手 ARTA NSX-GT BS TEAM MUGEN 16号車 武藤英紀選手/笹原右京選手 MOTUL MUGEN NSX-GT YH KEIHIN REAL RACING 17号車 塚越広大選手/ベルトラン・バケット選手 KEIHIN NSX-GT BS Modulo Nakajima Racing 64号車 伊沢拓也選手/大津弘樹選手 Modulo NSX-GT DL TEAM KUNIMITSU 100号車 山本尚貴選手/牧野任祐選手 RAYBRIG NSX-GT BS 日産 NISMO 23号車 松田次生選手/ロニー・クインタレッリ選手 MOTUL AUTECH GT-R ML NDDP RACING with B-MAX 3号車 平手晃平選手/千代勝正選手 CRAFTSPORTS MOTUL GT-R ML TEAM IMPUL 12号車 佐々木大樹選手/平峰一貴選手 カルソニックIMPUL GT-R BS KONDO RACING 24号車 高星明誠選手/ヤン・マーデンボロー選手 リアライズコーポレーションADVAN GT-R YH 2019年チャンピオンの大嶋和也選手はチーム 体制を改められたTGR TEAM WAKO’S ROOK IEで、坪井翔選手とコンビを組む。 公式テストでトップタイムをマークしたのはNSX-GTを駆るベ ルトラン・バゲット選手。 日産勢では12号車・佐々木大樹選手のパートナーに平峰 一貴選手が抜擢されている。 今シーズンから導入される予定の「フルコース イエロー」の実地テストも行われた。 ※この記事は3月31日までの情報を元にしております。 22
昨年、チャンピオンを獲得したARTA は、高木真一選手のパートナーがルーキ ーの大湯都史樹選手に改められた。その ARTAとタイトルを最後まで争い合った
K-tune’s Racingは、新田守男選手と阪口晴南選手の コンビを継続。車両はともにホンダNSX GT3やレク サスRC F GT3のままだが、K-tune’s Racingはタイ ヤをダンロップに変更している。こう言った昨年との 違いが、どう影響を及ぼすのか注目したい。 車種のバラエティに富むGT300ながら、今年は新 規導入となる車両はない模様。ただ、BMW Team Studieが国内レース活動を再開し、BMW M6 GT3を 再び戦列に加える発表も。ドライバーは荒聖治選手と、 ポルシェカレラカップジャパンのジェントルマンクラ スチャンピオン、山口智英選手だ。
至らない、安全確保の手段であり、FCY宣言後は全車 80km/hで走行しなくてはならない。
このメリットとして挙げられるのは、短時間で競技 を再開できることと、前後の車両との間隔を一定に保 てることだ。赤旗やSCでは間隔が詰まってしまった り、位置関係によっては周回遅れになることもあるが、 FCYではそういった事象が起こりにくい。
またポイントシステムやウェイトハンデに関しても 変更があり、両クラスともポールポジションを獲得し たチームに1ポイントが付与される。
そしてGT300クラスに対し、チームポイントはト ップと同一周回及び1周遅れに3ポイント加算は従来 通りだが、2周遅れまでは2ポイント加算、3周以上の 遅れでも完走を果たせば1ポイント加算となった。
ウェイトハンデも従来は獲得したポイントの2倍と されていたが、これが3倍に改められ、第7戦に対し ては1.5倍となる。上限は100kgのままだから、アッ という間に到達してしまいそうだ。この辺り、タイト ル争いにどう影響を及ぼすのか、とても気になるとこ ろではある。なお、GT500に関しては変更はない。
3月14~15日の岡山国際サーキットにおける公式 テストは入場制限を設けて開催。しかし、3月28~29 日の富士テストは中止された。そして、3月31日時点 では、4月11~12日の開幕戦岡山、5月3~4日の第 2戦富士、5月30~31日の第3戦鈴鹿大会は延期とい う発表がなされている。
岡山テストで存在感を示したのは2号車エヴォーラ。今季は加藤 寛規選手と柳田真孝選手がタッグを組む。 埼玉トヨペットGBはマザーシャシーを継続使用。昨年 までのマークXからGRスープラに変更された。
Dream 28だ。加藤寛規選手の新 たなパートナーとして起用されたのは、GT500と GT300両クラスでチャンピオン経験を持つ柳田真孝 選手。公式テストにおいて加藤選手が最速タイムを記 しており、マザーシャシーと岡山のコースの相性の良 さを差し引いても、この新たな組み合わせはライバル
約30台がエントリーするだけに、すべて紹介できな いのをお詫びしたいが、ドライバーラインナップ変更 の中で特に注目されるのが、ロータス エヴォーラMC で臨む、Cars Tokai
にとって、大いなる脅威となりそうだ。 ウェイトハンデの見直しとFCYの導入 一方、競技運営面の変更として「FCY」こと「フルコ ースイエロー」が導入されるのが、最大のポイントだろ う。これは赤旗やセーフティカー(SC)を出すまでには ァクトリードライバーのニッキー・ティ ーム選手、ルーキーの河野駿佑選手に改 められている。
2019年チャンピオンの55号車は、ベテラン高木真一 選手とルーキー大湯都史樹選手の組み合わせに。 スーパーGTシリーズ 全日本選手権&FIAシリーズ2020年参戦体制プレビュー スーパーフォーミュラ 23
レクター”の記述が加わったことだ。 2019年の地方選手権(FS-125部門)は、 東地域と西地域の2シリーズの開催が予定 されていた。しかし、両地域の全大会でエ ントリーがレース成立の5台に達せず、シ リーズ自体が不成立に。実は2018年も、 同じ理由で西地域がシリーズ不成立となっ ている。年齢層・レースレベルの両面でジ ュニア選手権と全日本の橋渡し役となるべ きレースがなくなったことで、不利益を被 る選手も現れた。
ントリーした。ところが、そのレースは前 述のとおり不成立に。とはいえ、この年12 歳になる野村選手は、年齢制限のためまだ 全日本に出場することはできない。大事な 活躍の場をひとつ失った野村選手は、当該 年13歳となって全日本の出場資格を満たす 2019年まで、日本カート選手権以外のレ ースで雌伏の時を過ごすこととなった。 かつては新たな才能を多数輩出して存在 感を放った地方選手権の消失に、カート界 からはこの事態の打開を望む声が上がって いた。そして2020年、地方選手権は東西 2地域での開催地域区分を取り止め、替わ って北海道/東北/関東/中部/近畿/中 国/四国/九州という8つの地方区分を設 定。シリーズをひとつまたは複数のカート コースで実施する形(2019年まで“コース シリーズ”と呼称されていた形式)を採用し た。その結果、2020年は宮城県から三重県 に至る全国5カ所のカートコースで各々の
日本カート選手権 最前線レビュー トップカテゴリーを夢見るドライバーが数多く参戦する日本カート選手権。 過去の成績や年齢に応じてステップアップをする選手も多く、クラスによっては メンバーがガラリと変わったり、ベテランvsルーキーの新たな戦いに 発展することもある。では、2020年のカート情勢はどう変化するのだろうか? 変更された選手権規定等の紹介とともに、今年の日本カート選手権を占ってみた。 フォト/小竹充、吉見幸夫、JAFスポーツ編集部 レポート/水谷一夫、JAFスポーツ編集部 イラスト/高梨真樹 日本カート選手権/地方カート 選手権/ジュニアカート選手権 という3つの選手権を定め、日 本カート選手権。その2020年のレギュレ
2019年全日本FS-125部門チャンピオ ンの野村勇斗選手も、そのひとりだ。2017 年にジュニア選手権FP-Jr部門を制した野 村選手は、次のステップへと進むべく、 2018年の地方選手権・西地域第1戦にエ
ーションの大きな変更は2点だ。ひとつは 地方選手権の開催地域区分の変更。もうひ とつは競技会競技役員の項目に“レースディ
日本カート選手権に新しく設定されたレー スディレクターについては、2020年全日本 中のレース運営や判定に関する項目につい て、シリーズを通した独自の判断に基づく 提言を競技長に行い、大会における競技運 営および判定基準の平準化を図るものとす る。ただし、レースディレクターはレース 運営や判定に関する最終的な判断を下す権 限を競技長に委譲する(以下略)」 レースディレクターに最終的な決定権限 は与えられていないとはいえ、この記述か ら、その役割が相当に重みを持ったもので あることがうかがえる。 日本カート選手権では大会ごと(=開催サ ーキットごと)にオーガナイザーと競技役員 が異なる。この状況において、レースの審 査基準、技術規定の解釈・運用などを選手 権全体で均一化するよう求める声が、かね てより参加者の間から出ていた。規則上は ひとりのレースディレクターが選手権の全 大会を受け持つと限ったわけではないのだ が、「競技運営および判定基準の平準化を 図る」と明記されており、その存在は参加者 たちの不満解消への大きな一歩となること が期待できるだろう。 それ以外にも、選手権規定にはいくつか の変更点がある。全日本では、国際Cセニ アおよび国内Aライセンスの所持者が新た にOK部門へ参加する場合、前年の全日本 2020 2020年選手権規定の変更点等を解説&地方選手権のイマを調査 /ジュニアカート選手 権統一規則に、その役 割がこう記されている。 「レースディレクター 1名をJAFより派遣す る場合がある。/レー スディレクターは常時 競技長と協議しながら 役務を遂行する。/レ ースディレクターの義 務(役務)は、大会期間 全
地方選手権が行われる手はずとなった。
FS-125部門で年間ランキング10位以内に 入る必要があったが、前年の全日本FP-3 部門での年間ランキング3位以内の実績で も参加が認められることになった。 また、統一規則では、シャシーが破損し た場合に、各ヒートのスタート20分前まで の申請を条件として1回の変更(交換)が認 められた。シャシー変更後のヒートのグリ ッドポジションは最後尾(複数名の場合はも っとも遅く申告した選手が最後尾)になる。 さらに、全日本FS-125部門では、ワンメ イク指定タイヤのメーカーがダンロップか らブリヂストンに変更。全日本FP-3部門 の吸気消音器(ノイズボックス)は「CIK-FIA 公認または公認実績品の吸気消音器または ヤマハ純正吸気消音器を必備」とされた。 選手権の統一規則以外にも、注目すべき ことがある。2020年の全日本/ジュニアカ ート選手権で最初に行われた西地域第1 戦・鈴鹿大会では、全エリアでのエンジン
2019チャンピオンの佐々木大樹選手が、今季も参戦を表 明。同じベテラン勢の高橋悠之選手、朝日ターボ選手、三村壮 太郎選手も継続参戦の模様だ。2019シリーズを活気づけた2 ~3年目組も、渡会太一選手ら上位ランカーの大半が今季も 参戦してくる。またFS-125部門から、チャンピオンの野村勇斗 選手をはじめ有望株が多数ステップアップしてくるとの情報 が。さらに、2019年はFP-3部門に参戦していた佐々木大河選 手がトップカテゴリーに復帰。2020年のOK部門は、全世代の 強豪が激突する“カート界総力戦”の様相を呈している。
暖気の禁止が公式通知として告知された。 ただし、エンジンの作動・確認(始動後2~ 3秒)は各指定エリアで行うことが認められ ている。エンジン暖気の禁止は国際レース の現状に倣ったもの。以降の大会でも踏襲
地方選手権としてスタートしたFP-3部門は、2019年に全日 本へと生まれ変わったことでエントリーが急増、かつてない盛 り上がりを見せた。今季もこの部門は、全国各地のホビーカー ターたちによる熱いレースが期待できそうだ。2019年にベテラ ン勢が活躍を演じた西地域では、ほぼ変わりない顔ぶれが 揃ったレギュラー陣とスポット参戦の地元勢の好バトルに期 待。対して東地域では、2019ランキングの1・2位を占めた山 本祐輝選手と佐々木大河選手がこの部門を“卒業”したため、 レースは新局面を迎えることとなる。 ローティーンやミドルティーンの選手が中心となって未来 を懸けた戦いを繰り広げるFS-125部門は、2019ランキングの 上位陣がOK部門へのステップアップなどで抜けたことで、東 地域/西地域とも優勝争いの顔ぶれが大きく入れ替わりそう だ。現時点で誰がタイトル争いの中心になるのか、まったく読 めない。まずはシリーズ序盤戦の成り行きに注目だ。また、 2019年は東地域の参戦が西地域より押しなべて多かった。こ の状況に変化があるのかどうかも興味深いところだ。最初の レース、西地域開幕戦には18台のエントリーが集まった。 有望株が多数ステップアップして波乱の展開に!? OK部門 ベテラン勢とスポット勢の熱きバトルに注目!! FP-3部門 メンバーが入れ替わってチャンピオン争いが白熱! FS-125部門 2020年全日本選手権シリーズ展望 25
される可能性がありそうだ。
トラントたちから「今あるローカルのX30ク 地方カート選手権シリーズ情報
ラスを地方選手権にすればいい」という声が 上がっていた。今季の規則変更は、そんな 日本カート選手権は、下からジュニア選手権(FP-Jr部門/FP-JrCadets部門)→地方選手権(FS-125部門)→全日本 選手権(FS-125部門/OK部門)というステップアップの流れになっている。このステップアップとは、年齢層・レベ ル両面でのこと。2020年に刷新されたのは、その流れの中間地点に位置する地方選手権だ。また、ホビーカーターを 対象にして始まった全日本FP-3部門は、ここではこのピラミッドの外に置いてみた。
X30クラスで 全 国5カ所のサーキットでの“コ ースシリーズ”へと生まれ変わ った、2020年の地方カート選 手権。この新たなレースには、ひとつの特 色がある。それは、もてぎ/瑞浪/鈴鹿の 3シリーズが、既存のローカルレースに地方 選手権FS-125部門のタイトルを冠したも のである、ということだ。 FS-125部門と同じイアメ・パリラX30 エンジンのワンメイクレースは、鈴鹿では 鈴鹿選手権シリーズ カートレース IN 全日本選手権FP-3部門 ※日程はJAFスポーツ編集部調べ(2月7日現在) 26
新生・地方選手権の最初のレースが行われ た。鈴鹿シリーズ第1戦の出走は27台。 2019年の鈴鹿選手権Parilla 全日本選手権OK部門 全日本選手権FS-125部門 地方選手権FS-125部門 ジュニア選手権FP-Jr部門 ジュニア選手権FP-Jr Cadets部門
は最少で22台、最多で34台の参加があり、
今回の台数はそれとほぼ変わりないものと 言えるだろう。 注目すべきは、その顔ぶれ。地方選手権 のタイトルを狙う新鋭だけでなく、以前か ら鈴鹿X30クラスで活躍していた選手、全 日本の開幕戦に向けて腕慣らしに参加して きた選手、とバラエティ豊かな面々が集ま ったのだ。年齢層も出自も多様な強豪たち の中で腕を磨けることは、将来を目指す若 手にとっては大きなプラスだろう。この開 幕戦を制したのは鈴鹿X30クラス2年目、 13歳の鈴木斗輝哉選手だった。 選手や参加チームの声を拾ってみると、 このレースが地方選手権としての輝きを放 つ場所となるか否かを測るには、まだ時間
現場の意見に沿う形になったと言えそうだ。 そして2月23日、全国に先駆けて鈴鹿で ヒエラルキーを整理すると……
地方カート選手権FS-125部門開幕! SUGOカートレースシリーズ SUGO西コースは数多くのビッグレースの舞台と なり、旧レイアウト時代にはアイルトン・セナもレー スを走った、歴史と伝統のあるサーキット。いわば 東北のカートの聖地だ。2020年の地方選手権は4 戦でのシリーズが予定されている。 ●開催地:宮城県柴田郡村田町大字菅生6-1 第1戦 3月29日 第2戦 6月28日 第3戦 8月16日 第4戦 9月27日 もてぎシリーズ ローカルレースでは国内有数のエントリー台数を 集める北関東の人気サーキット、もてぎ北ショート コース。全日本の開催地としても名高い同サーキッ トでの地方選手権は、今季最多の6戦から成るシ リーズ戦が組まれた。 ●開催地:栃木県芳賀郡茂木町桧山120-1 第1戦 3月22日 第2戦 5月10日 第3戦 6月21日 第4戦 8月23日 第5戦 10月11日 第6戦 11月29日
SUZUKAの『Parilla X30クラス』として、 もてぎではもてぎカートレースの『X30クラ ス』として以前から行われ、どちらも時に30 台近辺の参加を集める人気レースとなって いた。また、瑞浪ではTOYOPET SL KA RT MEETINGの中で『X30クラス』が行わ れ、やはり新旧の全日本ドライバーも参加 するハイレベルなレースとして定着してい る(SUGOの『X30クラス』は、2019年は成 立に至らなかった)。 2019年の地方選手権が東西両地域で不 成立となった際には、事態を憂慮したエン 2020年に地方カート選手権が開催される スポーツランドSUGO西コース(宮城県)/ツ インリンクもてぎ北ショートコース(栃木県)/ 本庄サーキット(埼玉県)/フェスティカサー キット瑞浪(岐阜県)/鈴鹿サーキット国際南 コース(三重県)は、いずれも全日本の開催実績 が豊富なサーキットだ。かつて7~8地域で地 方選手権が行われ隆盛を誇っていた1990年 代には、複数の地域でチャンピオンとなって名 を上げる新鋭ドライバーがいた。はたして 2020年の地方選手権からは、どんなヒーロー が誕生するのだろうか。
が要りそうだ。なにはともあれ、新たなス タイルの地方選手権は熱くにぎやかに幕を 上げた。まずはこれからのレースに、期待 を込めて注視したい。
Ash 築山敬氏 愛知のカートショップ『かあと小僧』
りますね。ただ、このレースで地方選手 権としての参加が増えるかどうかは、 もう少し様子を見る必要があると思い ます。地方選手権をやること自体は大 賛成なんですが、最近は新しいレース を始めても、台数が集まらないとすぐ
ます」
本庄サーキットカートシリーズ 本庄サーキットは本来、自動車・バイク用のミニ サーキットで、カートコースとしては異例のアクセル 全開区間の長さとコース幅の広さを持つ。3月8日に 予定されていた第1戦は、新型コロナウィルス感染 症の影響で中止となった。 ●開催地:埼玉県本庄市児玉町高柳883 第1戦 3月8日 第2戦 6月7日 第3戦 8月2日 第4戦 11月22日 瑞浪シリーズ 1000m級の高速カートコースとしては日本有数 の歴史を持ち、オーバーテイクポイントも豊富な フェスティカサーキット瑞浪。独自のペナルティカ タログを公開するなど、参加者目線に立ったレース 運営にも評価の高いサーキットだ。 ●開催地:岐阜県瑞浪市釜戸町1064-118 第1戦 3月1日 第2戦 4月12日 第3戦 5月17日 第4戦 7月5日 鈴鹿選手権シリーズ 鈴鹿南コースは日本のみならず海外のカートドラ イバーからも羨望を集める、世界屈指の人気カート コース。ローカルレースの鈴鹿選手権シリーズには 中部・関西地域のみならず、遠隔地からも多くのド ライバーが参戦してくる。 ●開催地:三重県鈴鹿市稲生町7992 第1戦 2月23日 第2戦 5月24日 第3戦 7月26日 第4戦 9月26日 第5戦 12月13日 TOP LABO 加納康雅選手(13歳) 大会ごとにヒーローが入れ替わった2019年のジュニア選手権FP-Jr部門・ 西地域。加納選手はその第4戦で2位表彰台に立った。同時に鈴鹿選手権の YAMAHA SSクラスにも参戦して、ランキング6位に。今季は100ccカテゴ リーを卒業して125ccのレースに挑戦予定だ。「SS(100cc)のレースは十分
ね。新しく参加してきた子たちの レースのやり方が去年まで(の X30クラス)と違っていて、そこ に少し戸惑いました。あの子たち がこのレースのやり方を覚えて くると、もっと手強くなるかもし れないですね」 NexusCompetition 木内秀柾選手(15歳) OKドライバーが地方選手権に登場! 木内選手は2019年に全日本OK部 門へデビューすると、たびたび印象的な速さを披露した期待の新鋭だ。「今年 は受験で去年の11月くらいから走れてなかったので、OK部門の開幕に向けて のリハビリも兼ねて参加しました。OK部門とは違いもあるけれど、基本を磨く 上では走る意味の大きいレースだと思います。OKドライバーの意地を見せた いところなんですが、若い子たち がみんなけっこう上手で、楽はで きそうにないです。自分も子供の 頃の気持ちに戻ってあがいてみ ようと思います(笑)。勝ちたい 気持ちはOK部門と変わりない けれど、プレッシャーは少ないの で、明るい気持ちでレースができ そうです」 アステック 佐野雄城選手(13歳)
て、チームの雰囲気は良くなっ ていると思います。このクラス はFP-Jrと比べるとタイヤの グリップが上がって、最初は苦 労したけれど、だいぶ慣れてき ました。鈴鹿では、去年はラン キングが後ろの方だったので、 今年は上位に入れるように頑 張りたいです」 地方選手権に エントリーした理 ワ 由 ケ さまざまな選手権が開催されている中、2020年に地方選手権FS-125部門へ 参戦した選手は、何を思ってエントリーをしたのだろうか? 全日本選手権や ジュニア選手権にはない、このカテゴリーが持つ独特の“魅力”に迫るべく、 鈴鹿シリーズで現場のナマの声を拾ってみた。 ハラダカートサービス 原田稔一氏 鈴鹿サーキットの間近に居を構える カートショップ『ハラダカートサービ ス』でチーム員たちのサポートに当た る原田氏は、2000年代に全日本の最
の代表として、またそのチーム『Ash』 のドライバーたちのサービスに勤しむ 築山氏。「僕らの年代にとっては、地方 選手権という響きにはやはり魅力があ
TEAM SCHU 堂園鷲選手(12歳) 2019年は5戦4勝(1戦欠場)の圧倒的な強さでジュニア選手権FP-Jr 部門のチャンピオンに輝いた堂園選手は、明確に“地方選手権タイトル” を狙ってここに参戦してきた。「今年はもともとX30クラスに出場する予 定だったけれど、地方選手権がかかったことも参加の決め手になりまし た。X30エンジンは今年が初めて。音がいいし、速くて乗りやすいです。 土曜日の仕上がりはまずまずでした。ドライならいいレースができると思
やったなという感じもあって、このレースに出場しました。地方選手権になった ことで、全日本などの速い選手が 出てきてくれるのはいいですね。 X30エンジンのレースは今回が 2回目。速くて楽しいけれど、難 しいなって気持ちの方がまだ大 きいです。もちろん優勝はした いけれど、まずはずっとシングル に入り続けて、将来につながる一 年にしたいです」 NEXT-ONE Racing 金本きれい選手(19歳) 元全日本ドライバーの金本選手は、2016年から鈴鹿選手権X30クラスに参 戦するトップコンテンダーのひとり。新加入の面々を迎え撃つ立場の選手だ。 同クラス5年目の開幕戦では、3位表彰台をゲットした。「今年は全日本ドライ バーも参加してきて、上を目指している子たちが多いなって思います。参加台 数が増えることは歓迎です。決勝では一時4位まで落ちて焦ったけれど、そこ から落ち着いて抜き返せました。 でも、やっぱり勝ちたかったです 27
2019年はジュニア選手権FP-Jr部門で1勝を含む4度の表彰台に立ち、大 きな注目を浴びた佐野選手。並行して鈴鹿選手権X30クラスにも出場してい たが、こちらはランキング14位に留まった。今季はそのリベンジを果たすべき 一年だ。「今年は全日本(FS-125部門)の東地域とこのシリーズに出場する予 定です。X30クラスが地方選手権になった今年は、自分のチームも選手が増え
上級クラスでドライバーとして活躍し た人物だ。「開幕前には地方選手権に なってエントリーフィーが上がるん じゃないかという不安の声があったけ れど、それは変わらなかったので、参加 者にとってデメリットはないと思いま す。一方で、レースの形式は去年まで と一緒なので、今のところメリットも見 えない印象です。転戦型のシリーズは お金がかかるといっても、やる人はや るんですから」
に止めてしまうことが多いですよね。 そうではなく、継続することで徐々に 台数も増えていくのではないかと思い
います。アグレッシブな レースをしたいです。今年 はこのレースでチャンピオ ンを獲って、来年は全日本 (FS-125部門)でチャンピ オン。そこからOK、FIA-F4 とどんどんステップアップ していって、F1を目指した いです」
ータースポーツは、実に多くの 時間をとられるスポーツである ことは、多くの選手が同意する ところだろう。 どんなカテゴリーでも、走る場所は往々 にして市街地から離れた場所にある。その ため、往復の移動だけで軽く一日仕事とな り、当日の準備と片付けをしようと思うと、 丸一日の確保では済まないはずだ。 全日本選手権ともなれば、遠征すれば月 曜の出社もおぼつかなくなり、ライバルと の高いレベルのコンペティションを欲する ならば、セッティングやテストなどで、別 の走行機会も必要になるだろう。 勤め人、平たく言えばサラリーマンは、 上司には一定の成果を求められ、責任ある 立場になれば部下を監督することも求めら れるもの。多くの選手は、勤務先で与えら れた責務を果たしつつ、家庭も顧みながら モータースポーツ活動を続けているはずだ。 ここでは、スピード競技の全日本選手権 で優勝争いを繰り広げる”サラリーマンドラ イバー”たちにご登場いただき、どのように 活動を成り立たせているのかを伺った。 今回話を伺ったのは、全日本ジムカーナ 選手権PN1をND5RCロードスターで戦う 髙屋隆一選手、同じくロードスターでPN1 を戦う小林規敏選手、そしてDJLFSデミオ 15MBで全日本ダートトライアル選手権 PN1を戦う太田智喜選手。 「働き方改革」や「ワークライフバランスの 見直し」といった話題が叫ばれる昨今。働き 責任ある仕事を抱える社会人は、休みも日取りもままならない。 年に何度も連休することなど、普通の勤め人には許されるはずもない。 昨今の全日本選手権では「勤め人ドライバー」が少なくない。 その代表として、全日本選手3名の「現在進行形」を伺ってみよう。 フォト/西野キヨシ、JAFスポーツ編集部 レポート/山中知之、JAFスポーツ編集部 モ 28
し、仕事を調整してゆくことだと言う。どん なに頑張っても発生する、一人ではどうに もならない事態が起きた時はどうするのか。
太田選手「そういう時は、チーム(部署)の 皆さんのサポートを得ています。僕に限っ たことではないんですが、そもそもチーム の皆さんがそういう雰囲気なので、誰かが 有給を取得するといった話になると、仕事 が終わっていないようなら、サポートし合 って終わらせるように、チームで頑張ろう という感じになりますね」
しかし、そういった雰囲気を作るための 努力も、並々ならぬものがあるようだ。 フレックス制度を利用して、朝早く出勤 して少しずつ仕事を先行させたり、時間外 勤務などで調整したり。そもそもモーター スポーツ活動と同じく、仕事も「やれること
は全部やる」を実践しているそうなので、 きなどは、そんな状態だとやっぱり成績が 出ないんですよね」 強行軍で移動した時の試合はやはり「しん
バランス取りを強く意識し始めたという。 しかし、仕事の流れでどうしようもない 時もある。そういう時には「周りの人が助け てくれたこともある」そうなので「皆さんの おかげで何とか両立させられていると思い ます」と、小林選手は同僚への感謝を何度も 口にしていた。 一般企業でもよく聞かれる『お土産』問題 についても、髙屋選手はこう語る。 髙屋選手「そういう気遣いは社会人として もちろんありますが、必ずしもご当地の“美 味しいもの”を差し入れたりするわけじゃな くて、例えば、物凄く辛いとか、ちょっと 笑えるモノとか……」 互いに気を遣い合う状況にならないよう な環境作りも必要な要素と言えそうだ。 全日本選手権を追える環境は 家族や仲間の支えがあればこそ 髙屋選手と小林選手はロードスターで全 日本ジムカーナ、太田選手はデミオ15MB で全日本ダートラを追っている。サラリー マンドライバーという形態の参加者として、 全日本ジムカーナ選手権PN1 髙屋隆一選手 全日本ジムカーナ選手権PN1 小林規敏選手 全日本ダートトライアル選手権PN1 太田智喜選手 全日本ジムカーナPN1をND5RCロードスターで戦 う髙屋選手。以前はDC2インテグラを駆り2004年 にJAF中国ジムカーナS2で初栄冠。2006~2009 年はS2で4年連続、PN1では2014~2018年の5 年連続のJAF中国タイトルを獲得した。 全日本ジムカーナPN1をND5RCロードスターで戦 う小林選手。2017年まではDC2インテグラでN部門 やSA部門を戦ってきたが2018年からPN1に移行し て現体制となっている。2014年のJAF中国ジムカー ナAN1チャンピオン。 全日本ダートラPN1をDJLFSデミオ15MBで戦う太 田選手。2016年までDC2インテグラでSA部門を戦 い、JAF中国ダートラでは2014~2015年にSA1タ イトルを獲得、デミオに乗り換えた2017年はJAF中 国PN1タイトルを獲得。 か」という直球の質問をぶつ けてみた。 しんどい、キツイでは意 味がない 互いにサポートする チーム態勢 まずはベテラン髙屋隆一選 手から。 髙屋選手「基本、というわ けではないんですけど、前も って1年間の活動スケジュー ルを立てることですね」 全日本のカレンダーを把握 盛りのお三方に、まずは 「サラリーマンと全日本活 動をどう両立させているの 「だからこそ、同僚の協力が得られる」とい った見解が3人に共通した意見だった。 その一方で、小林規敏選手は同僚への遠 慮があったようで、全日本に参戦し始めた 当初は、木曜の定時後に広島を出発して、 そのままレースウィークに突入するといっ た強行軍をこなすこともあったという。 小林選手「そうしていたのは、だいたい4 年くらいですかね、でも、特に遠征すると 29
どい」「キツイ」ということになり、仕事との
気を抜いたら』って 言ってくれたりする んで。うまいことコ
家族には感謝しています。それと、安全で あることも伝えないといけないと思ってま す。妻は理解があるのですが、祖父母とな ると、やはりあまり理解は……。安全装備 の話や負傷のリスクなどについては、ちゃ んと伝えるようにしていますね」 参戦形態を伺っているはずが、話はいつ しか家族のサポートにシフトしていった。 これはやはり、家族の理解なくして全日本 う同じ会社に所属するサラリーマン。社名 からも分かるように、自動車関連の技術開 発を主業務とする企業で、マツダの一員と して実験研究やデザイン、カスタマイズ車 両や用品の開発などを行う技術集団だ。 もちろんクルマ好きは多く、社内の自動 車部「親和会自動車クラブ」のメンバーは34 名を数え、サーキット走行会などの活動も アクティブに行われているという。 そして、社員の趣 味や課外活動をサポ ートする福利厚生制 度も用意されており、 年間を通じて、支援 や補助を受けられる ことが可能だという。 クルマ好きなら涎 の垂れそうな制度だ が、そんな環境にあ ったとしても、全日 本選手権の高みに挑 もうとすると、やは りそうそう楽なもの ではない。 有給休暇の取得に ついては、そもそも の社風が大きく影響 小林選手「自分は かなり家族に助けて もらってますね。試 合にも常に一緒に来 てくれてるんで、準 備段階での手助けと か、会場でビデオを 撮影してくれたりと か。自分は試合が始 まるとピリピリしや すい性格なんです よ。その辺りについ ても、奥さんが『試 合の合間やシーズン オフなら、ある程度
しているようだ。 太田選手「有給は凄く取得しやすい雰囲
髙屋選手「昨年の全日本ジムカーナは全
続きました。かなり連チャンで休みになる
太田選手「家族は気持ち良く送り出してく
活費から捻出しているので、無駄な出費は あんまりしないのが基本です。ただただ、 選手権を追うことは不可能であるという証 左と言えるのかもしれない。 会社の制度を最大限利用した 趣味に打ち込める環境作り ちなみにこのお三方は「マツダE&T」とい 参戦形態はどのようなものだろうか。 髙屋選手「ロードスターは、テントやタイ ヤなどまでは積めないので、メカニックと して友人に来てもらったりしています。小 林選手と共同で、タイヤや道具などを持っ てきてくれたりとか。だから、自分一人で はたぶん無理で、メカニックとして付いて 来てくれた友人がおったからこそ、全日本 を追えているんだと思います」 全日本ジムカーナには1998年からスポット参戦している髙屋選手。2012年から全日本PN1に挑戦しており、2015 年第7戦恋の浦ではZC32Sスイフトで初勝利、2017年第5戦美川大会ではスイフトで自身2勝目を挙げている。 30
気ですね」
10戦でしたから、3週間に1回くらい大会が
ントロールしてくれているなって感じがあ りますね(笑)」
れます。ただ、モータースポーツ活動は生
んですが、そこは『試合に行くんだから』と、 仲間が背中を押してくれましたね」 モータースポーツ参戦に対する雰囲気は 所属会社の社風と、お三方の普段の努力の 甲斐あって極めて良好だという。代表して、 その空気感を髙屋選手に語っていただこう。 髙屋選手「会社にはモータースポーツ好き も居るので、自分の部署じゃなくても、試 合から帰ってきたら声を掛けられることも あります。会社の上層部の方にも「この前は 良かったね。偉いじゃん!」なんて言葉をも らったり……。個人的な活動についてまで 関心を持ってもらえているなんて、やっぱ り恵まれてると思います」
ありました。ですが、同じ時期に地方選手 権で少しずつ成績が出てきたので、ありが たいことに、周囲に協力してくれる方々が 増えてきたんですよね。そういう方々に恩 返ししたいという思いもあって、活動の継 続や高みを目指すモチベーションに繋がっ ていると思います」
太田選手「自分としては、楽しくやるのが 一番大切かなと考えています。お金を掛け ると際限のないスポーツですからね。そこ はちゃんと線引きをして、借金はしないよ うにとか、大会にも今年はここまでしか出 ないようにしようとか。出たい気持ちはあ りますがちゃんと我慢してやると。そうじ ゃないと、家族の理解が得られなくなって きますからね。仕事と家族を優先した後に、 自分の趣味としてモータースポーツを続け る。長く続けるためには、そこが欠けてい ると続けていけないと思っています」 髙屋選手「モータースポーツを長く続ける と古い仲間ができて。やっぱり、モーター スポーツという趣味の話をできる仲間がい ることはすごく楽しいんです。仕事は仕事 での仲間、やっぱりモータースポーツはモ
さだけではなく、当然のことながら全日本 レベルの走りや戦い方が要求される。プロ ドライバーであれば勝負に全精力を注ぎ込 むことはある意味当然の行為だが、給与所 得者にとっては、生活の糧を得る営みと、 モータースポーツ活動に何かしらズレが生 じたり、様々な障壁が立ち塞がることも多 いはずだ。それらを乗り越えて、モーター スポーツの高みを目指す方向に切り替える モチベーションはどこにあるのだろう。 小林選手「最初の頃は収入的な余裕もな いですし、始めたばかりなんで投資するば っかりだったんです。このままでは全日本 で戦うことはできないかも、という感触は
生活のために働くことと 高みを目指すための努力 全日本選手権ともなると、拘束期間の長
ータースポーツの仲間が居ますからね。モ チベーションという意味では、趣味の延長 という範囲の楽しさでやっていくことだと 考えています。自分がしんどくなることは 避けたいので、無理のない範囲でやって来 ました。だから続けられたと思いますね」 ここまでの話だと、仕事人としてしっか りと調整する、無理をしない、家族の理解 を得る、という実に理性的かつ自戒的な話 になっていた。では、純粋なドライバーと しての思いはどこにあるのだろう。 仕事と勝負のせめぎ合い 自分なりの「KPI」と「KGI」 小林選手「やれるだけやり尽くさないと安 心できない、という思いは確かにあります。 でも、それだけだと周りが見えなくなって 悪影響が出てしまうことも頭では分かって います。だけど、戦いの中で本当に集中し ないといけないときがあるので、そこをど う切り分けるかは、やっぱり難しいですね。 未だにそれは難しいと感じています」 髙屋選手「やはり勝負事なので、他人より 上に、他人に勝つということがあるわけで すが、まずは自分の中で、自分自身の 100%を試合で出せたかどうかを問う感じ ですね。やり切った時にいいタイムが出た ら『ああ良かった、自分を信じて良かった』 という思いはすごくありますからね」 キャリア30年の髙屋選手にしてこのセリ フ。やはりモータスポーツは奥が深い。そ して、3人の中で、最もクールで熱い想いを 語ってくれたのが太田選手だ。 太田選手「モータースポーツ活動で自分が 何を目指してるかという話なのですが、ま ずは、自分のクルマの運転スキルを上げた いというところなんです。そして、モチベ ーションを高く維持するために『絶対クルマ のせいにしない』っていうところを主眼に置 いてます。『同じ規則で作ったクルマなんだ 小林選手はDC2インテグラで2011年から全日本ジムカーナに挑戦。乱高下がありながらも2016年第7戦恋の 浦で全日本初勝利。2018年からロードスターでPN1に挑み、昨年は3勝してPN1のタイトル争いを展開した。 31
『決め台詞』としてまとめていただいた。 小林選手「あまり自分を追い込まず、今あ る状況の中で、どこまで自分が楽しめるか を見つめることですね」
小林選手はこのことを強調していた。そ して、ダートラ組の太田さんは少し独特だ。 太田選手「クルマの運転スキルは、モータ ースポーツ走行をするときに一番伸びるん だとは思いますが、法定速度を遵守した街 乗りなどでも、ちゃんと意識すれば、運転 が上手くなれると思っています」 街乗りの中で繊細なコントロールを集中 して身につけておけば、いざスポーツ走行 でも必ず役に立ちます、とのことだ。競技 歴30年の髙屋選手は、クルマを走らせる フィールドが、公道からサーキットへ変化 してきた時代を肌で経験している御仁だ。
満身創痍のDC2インテグラで全日本にステップアップしてきた太田選手。2015年第8戦門前では全日本初勝利を挙げ、 2017年からデミオ15MBにスイッチ。門前では2年連続PN1優勝を果たしている門前スペシャリスト。
から、腕の差で負けてるんだ』という発想に 持っていって、自分が100点の運転ができ たかどうかを常に考えてます」 「門前で優勝したときも、自分にとっては まだミスをしてましたし、クルマをベスト
ことが多いという話も明らかにしてくれた。 それは、自動車関連企業だからというわけ ではなく、スポーツで頂点を目指し挑戦し 続ける姿勢が、業務、そして生き方にも反 映されることが少なくない、といった内容 であったことを言い添えておこう。 置かれた環境を冷静に見渡して やれることをやり続ける 近年のモータースポーツ、特にラリーや スピード競技においては、学生時代にこの 世界に触れてハマり、社会人になっても趣 味として続けている選手が多くなっている。 その一方で、社会人になってうまく時間や 活動費用を作れずに、モータースポーツ活 動を止めてしまう選手も少なくない。 全日本選手権を追いかけているお三方に、 サラリーマンドライバーとしての心得えを 髙屋選手「クローズドコースなら、しっか り飛ばすことができます。だからモーター スポーツをすることで、普段は安全運転に なりました。競技車両を移動で消耗させて も仕方ないですし、競技車両は『看板』です。 変なことはできません(笑)」という、やや 生々しい実情も吐露してくれた。 自動車競技やクルマ趣味に理解のある職 場だからこそ、全日本戦を追える環境にま で到達できた。そして応援してくれる。 確かに恵まれた環境ではあるが、その一 方で、そういう環境を維持しながら戦い続 けるための、並々ならぬモチベーションが、 静かな言葉の裏にみなぎっていた。 全日本戦のリザルトの向こう側に、エン トリーするために自分自身と戦っている彼 らの姿を、今後は思い出して見て欲しい。 32
に持っていけるようにして、かつ自分もベ ストで走り切って成績を出すことが楽しい と思ってるんですよ。もちろん、シリーズ チャンピオンを獲りたいという思いもあり ますが、まずは自分の運転をやり切ること。 皆さんに比べて、割と自分以外の順位が気 にならないという性格もあるんですけどね」 3人とも、これらのモータースポーツ活 動から自身の業務にフィードバックできる
JAF登録エンジンの新規登録について
2020年03月03日[2020-WEBK03] 2020年全日本/ジュニアカート選手権適用車両規定の制定について
2020年03月04日[2020-WEBK04] 2020年全日本/ジュニアカート選手権統一規則の誤記訂正について 2020年03月11日 [2020-WEBK05] カートレーシングスーツのJAF公認取得について ※上記公示(WEB)一覧の詳細は、JAF.MOTOR.SPORTSホームページ(http://jaf-sports.jp)内の「公示・お知らせ」で閲覧することができます。
33 INFORMATION fromJAF モータースポーツ公示(WEB)一覧(2019年12月26日~2020年3月31日) 公示(四輪) オーガナイザー会議/規則説明会/チーフオフィシャル会議開催 公示(カート) 日付 公示No. タイトル 2019年12月26日 [2019-WEB059] 2020年日本レース選手権規定の一部改正 2020年01月09日[2020-WEB001] 第2編ラリー車両規定.第2章安全規定.第4条ロールケージ 4.3)および4.4.3)8(○に8)に記載の手続きについて 2020年01月29日[2020-WEB002]
2020年全日本ジムカーナ/ダートトライアル選手権統一規則の誤記訂正について 2020年02月05日[2020-WEB007] 2020年地方ジムカーナ/ダートトライアル選手権クラス区分の誤記訂正について 2020年03月06日[2020-WEB008] 2020年全日本ジムカーナ/ダートトライアル選手権および2020年JAFカップオールジャパンジムカーナ /ダートトライアル競技会における「再出走」と「同一車両による重複参加」による作業について 2020年03月06日[2020-WEB009] 新型コロナウイルス等防止対策に係る対応について 2020年03月17日[2020-WEB010] 2020年FIA世界耐久選手権日程変更について 2020年03月19日[2020-WEB011] 2020年JAF全日本ジムカーナ選手権第1戦の開催中止について 2020年03月19日[2020-WEB012] 2020年JAF九州ラリー選手権開催日程の変更について 2020年03月19日[2020-WEB013] 2020年JAF東日本ラリー選手権RPN車両のホイールについて 2020年JAF全日本ラリー選手権第1戦の開催中止に伴う同選手権カレンダーへの追加申請の募集について 2020年03月31日[2020-WEB014] 2020年地方ジムカーナ/ダートトライアル/サーキットトライアル選手権の開催中止および開催日程変更について 日付 公示No. タイトル 2019年12月26日 [2019-WEBK18] 2020年日本カート選手権使用タイヤ銘柄および振興策について 2019年12月26日 [2019-WEBK19] 2020年日本カート選手権使用エンジン銘柄および振興策について
2020年JAF地方ラリー選手権のクラス区分等について 2020年01月29日[2020-WEB003] 2020年JAF地方ジムカーナ/ダートトライアル選手権クラス区分等について 2020年01月29日[2020-WEB004] 2020年JAF日本ラリー選手権開催日程の変更について 2020年01月29日[2020-WEB005] 2020年JAF北海道ダートトライアル選手権開催日程の変更について 2020年01月29日[2020-WEB006]
2019年12月26日 [2019-WEBK20] 2020年地方カート選手権カレンダー一覧 2020年02月07日[2020-WEBK01] 2020年JAF地方カート選手権開催日程の変更について 2020年02月19日[2020-WEBK02]
各専門部会がそれぞれ会議を開いた。主に今年から適用されるレギュレーションについて、“全日本”の冠がつく 国内カテゴリーに携わるオーガナイザーやエントラントらが集まり、規定の確認や意見交換、議論を活発に行った。 公示(カート) 公益財団法人日本アンチ・ドー ピング機構の教育トレーナー・ 岩間秀子氏を講師に招いたア ンチドーピングの講習会が、1月 25日の全日本レース選手権規 則説明会の後に行われた。 上:村瀬秋男部会長 下:中村善浩リーダー 上:高桑春雄副部会長 下:竹道雄康リーダー 上:鈴木亜久里部会長 下:柘植和廣委員 上:小島義則部会長 下:鎌田新リーダー 2020年全日本ジムカーナ/ダートトライアル選手権 オーガナイザー会議 開催日:1月16日 開催地:東京都港区 2020年全日本ラリー選手権オーガナイザー会議 開催日:2月7日 開催地:東京都港区 2020年全日本レース選手権規則説明会 開催日:1月25日 開催地:東京都港区 2020年全日本カート選手権チーフオフィシャル会議 開催日:2月10日 開催地:東京都港区
2020年のシーズンインを直前に控えた1月中旬から2月中旬にかけて、スピード競技、レース、ラリー、カートの
ニッポンのモータースポーツは JAF 動画サイトでチェックしよう! NEWS! スーパーフォーミュラからレーシングカートまで、国 内で開催されるJAF全日本選手権のイマを伝え る、インターネット配信を利用した 国内モータースポーツニュース情報番 組を配信中です。番組のナビゲーター は、日本を代表するレースアナウンサ ー、ピエール北川さん。毎月15日頃& 30日頃、月2回の配信予定です。 JAFモータースポーツホー ムページの特設バナーから ご覧になれますが、YouT ubeのJAF公式アカウン ト「jafchannel」からも 無料で視聴が可能です。 全日本選手権のイマを伝えるモータースポーツ・ニュース情報番組 「JAF モータースポーツニュースダイジェスト」好評配信中! JAF モータースポーツホームページ http://jaf-sports.jp JAF MOTOR SPORTS ホームページの“取扱説明書”です WEB誌面、動画、カレンダー、講習会日程、オートテスト… などなど、役立つ情報が盛りだくさん! JAF スポーツ誌は2018年にリニュ ーアルし、年4回の季刊発行と なりました。本誌内容の充実化のため、また情 報の速報性を図るため、いくつかのコンテンツ がJAFモータースポーツホームページに移行し たしました。 そこで今回はパソコンやスマホでいつでも気 軽にアクセスできるホームページの活用方法を、 主だったバナーを中心に紹介していきます。 常に最新の情報を掲載している「公示・お知ら せ」「モータースポーツカレンダー」は競技関係者 なら要チェック。またWEBならではの動画配 信コンテンツ「NEWS DIGEST」や、競技会等 の速報「ニュース&トピックス」も必見です。そ の他、競技結果や獲得ポイントのデータベース もありますので、上手に活用して、さまざまな シーンでお役立て下さい。 JAFモータースポーツ ホームページへアクセス http://jaf-sports.jp 1 公示・お知らせ モータースポーツの規則や規定の改 正、登録車両や車両公認の申請一覧、 競技会の日程の変更や取消等、ライ センス所持者向けの情報を掲載。 2 NEWS&TOPICS 最新のモータースポーツのニュース やトピックスを随時更新している コーナー。各種競技の速報はここで チェックしよう! 3 NEWS DIGEST 直近で開催された競技を月2回公開! モータースポーツのHOTなニュースを お伝えする動画番組。過去放送のバッ クナンバーも充実。 4 競技会カレンダー 主要モータースポーツを始め、全日本 選手権や国内競技会を「ラリー」「ジ ムカーナ」「ダートトライアル」「レーシ ングカート」のカテゴリーで紹介。 5 ライセンス講習会日程 全国で開催されているライセンス取得 のための講習会を開催日順にご案内。 A/Bライセンス以外に、公認審判員 やカートライセンスも検索が可能。 6 AUTO TEST モータースポーツの入門競技・オート テストのルール説明から、直近開催予 定の情報までを網羅。オートテストの 雰囲気がわかる動画も必見! 2 3 4 5 6 1
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と題された今回の催しは、国際格式のラリ ー開催について20年近くの歴史と実績を 誇るAG.MSC北海道の協力を得て、まず は座学という形式で講義が行われた。 セミナーの内容は、FIAラリー・セーフテ ィ・ガイドラインの解説ではあるのだが、 このガイドラインは”ラリー運営マニュア ル”ではなく、あくまで考え方や指標を示 した”ガイドライン”なので、実務にすぐ落 とし込めるものがすべてではない。 ということで、今回のセミナーでは、ガ イドラインをベースにしながらも、AG. MSC北海道がWRCやAPRC主催経験で 得た様々なノウハウを散りばめ、国際格式 ラリーを国内で運営する場合の実例を盛り 込んだ、実践的な内容が提供されていた。 AG.MSC北海道の田畑邦博氏は「ガイド WRCマシンのスピードについても、その 危険度を把握していないと指摘している。 このガイドラインは、国際格式のラリー 開催において確実に求められる要素が6章 に渡って記されている。現在の全日本ラリ ー選手権はルールが異なるため、そのまま 適用されるものではないが、FIA-R5車両の 走行がルール上は解禁された上に、再び WRC日本ラウンド開催が決まった現状を 踏まえれば、より高い基準における安全な ラリー運営が求められるのは必然だろう。 まず全日本ラリー主催者に向けて そんな中、全日本ラリー選手権の主催者 に対して、FIA基準のラリーセーフティを解 説する機会がJAFによって設けられた。 全日本ラリー・オーガナイザーセミナー F I A ラリーセーフティを再確認。 2月 8 A G ・ M S C 北海道の F I A つては牧歌的な雰囲気を持って いたこともあった世界ラリー選 手権。しかし、安全面に関して は、インシデントを起こさせない、起きて も被害を最小限に留めるといった、多方面
ページには英文で公開されている。 その内容は、まず前段として、ラリーと いうモータースポーツが他の多くのイベン トと同じく公共性のあるもので、スポーツ 競技としての性格はその次に考慮されるも のだと謳っている。そして、これまで厳し いルールの下で主催者が安全を熟慮しなが らラリーが開催されてきたわけが、こうし た努力をスポイルするオーガナイズによっ て、多くの人が愛するラリーの未来が脅か されてしまうと警告している。 また、すべての観客がスペシャルステー ジ(SS)における潜在的な危険性を理解して いるとは限らず、年々速くなっている か フォト/ J A F スポーツ編集部 J A F スポーツ編集部 FIAが定期発行している「FIA Rally Safety Guidelines」。 40
からの取り組みが行われてきた。 安全面というと、どうしても車両や選手 のイクイップメントに目が行きがちだが、 そもそもラリーフォーマットや競技運営に 無理があれば、安全装備を重ねても、その 効果が正しく発揮されないことにもなる。 国際格式のラリーについては、オフィシ ャル配置を始めとした、ラリー作りや運営 手順、観客やインシデントへの対応等を定 めたガイドラインが存在する。 それは「FIAラリー・セーフティ・ガイド ライン」として策定されており、FIAホーム
持続性があるこ とも考慮して、 より安全なラリ ー開催を目指し ているという。 「FIAのガイド ラインで、おお よそのリスクは カバーすること はできるが、大 きなインシデン トが起きたとき に、生命を救う ために何が必要 かを常に考えて います。ルール に従えばOKと いうわけでない んです」。
田畑氏はこのように力説していた。 セーフティカーの重要な役割 FIAラリー・セーフティ・ガイドラインは 6章で構成されている。その内容は、「オフ ィシャルの役割と責任」から始まり、「セー フティカーとその義務」、「セーフティプラ ン」、「観客の安全」、「ヘリコプターとドロ ーン」、「インシデントの取り扱い」といった 章立てで、ラリー開催前の準備からラリー 開催期間中のオフィシャル配置やスペクテ ーターの規制まで事細かに決められている。
このガイドラインは毎年大きく更新され ているが、シーズン中であっても随時、内 容が変更・更新されている。オーガナイザ ーやオフィシャルは、これらの情報更新に 注意しなくてはいけないだろう。
第2章「セーフティカーとその義務」では、 0カーと000、00、スイーパーなどのセーフ ティカーを区別している。ラリーにおいて は、ステージの安全はこれらの車両の働き に担保されていると言っても過言ではない。 その役割について抜粋してみた。
特に0カーは、ラリー車としての装備が 必須とされ、競技前の車検を受けなければ ならないことや、ドライバーとコドライバ ーは、FHRデバイスを含めたFIA公認の装 備を着用したうえで、速度はトップタイム から70~80%で走るべきだと記載。
SSが30kmを超える場合は1台はスター トから、もう1台はミッドポイントからフィ ニッシュまでと、2台の0カーが適切なタイ
ミングで走行することも勧めている。
前を走行)や00(1号車スタートの10~20
トレースし、ステージの備品や安全性の問 題、マーシャルや観客の安全に関する最終 チェックの役割を担っていることも記載。 2月8日の全日本ラリー・オーガナイザーセミナーは、AG.M SC北海道の協力を得て実現した。 昨年11月のセントラルラリー愛知/岐阜2019では、FIA WRCメディカルデリゲートのエリック・ハーゲン氏が 来日。FIA国際競技規則付則H項及びFIA INSTITUTE セミナーに基づく救出活動の概論解説や方法を講義。 本大会のレスキューマーシャル評価も行った。 ラインにない部分は、クラブの経験から導 かれているもの」で、その考え方の土台にあ るのは、「安全であること」だという。 事故を起こさないラリー作りが大前提な のだが、それでも何らかのインシデントは 起きてしまうもの。そういった可能性を常に 想定しながら、いかに重傷者を出さず、地 域に悪影響を及ぼさない設定とし、さらに 41
一方で000(1号車スタートの30~40分
分前を走行)は、どちらかが必ず全ルートを
SSの終了を告げるスイーパーは、通過 車両の確認を始め、コントロールシートや 報告書の受け取り、リタイア車からのタイ ムカード回収などに加え、リピートステー ジの場合にはさらなる役務があるという。 こうした一般的なセーフティカー以外に も、1号車スタートの40~50分前、000よ り前を走るスペクテーターセーフティカー (観客安全オフィサーが乗車)は、当初の計 画どおりの場所に観客がいるかどうか、ま た、オフィシャルが適切に配置されている ことを確認し、000と00の間にはFIAのセ ーフティデリゲートが走行することで、00 に乗車するオフィシャルに対して必要な追 加の措置をとれるようにしているとも。 こうした何重ものチェックが行われるこ とでSSの安全を担保してから1号車のスタ ートが認められることになっている。 もちろん、こうした準備にも関わらず突
ドラインの内容について少し触れてきたが、 AG.MSC北海道の田畑氏が語るように、ガ イドラインに書いてあることを守ればOK ということではないし、一足飛びに運営ス キルが身に付くものでもない。 今回は全日本ラリーのオーガナイザーを 対象とした座学によるセミナーだったが、 アジア地域のFIAリージョナル・トレーニ ング・プロバイダー資格を持つJAFとして は、今後も全日本ラリーのオーガナイザー やボランティアオフィシャルなどを対象と したトレーニングを実施する予定だ。 こうした取り組みが行われることで、国 内ラリー界でも安全への再認識に繋がり、 世界レベルの安全基準の理解が浸透するき っかけになるはずだ。今後の国内ラリーの 発展のためにも注目したい試みと言える。 こともある。しかし現在では、観客を巻き 込む事故が起これば、オーガナイザーへの 安全管理に対する追求は免れない。 ラリー開催前にイベントが直面するであ ろうリスクを評価し、それを最小限にする ことでラリーを安全に開催する方法を書面 に記したものがセーフティプランだ。 中でも、特に観客エリアについては事前 にリスク評価をすることで、危険度の高い エリアを特定しておく必要がある。 主催者のプランに対して、FIAのセーフテ
ィデリゲートと医師団長が審査をして、必 要に応じて提案などがなされる。そのため、 少なくとも1か月前、理想的には2か月前 にセーフティデリゲートがラリールートを チェックできる体制が求められている。 ここまでFIAラリー・セーフティ・ガイ
発的なトラブルは起きないとも限らない。 このために、セーフティカーをサポートす るための追加のセーフティカー2台を用意 することも求められている。 国内でFIAトレーニングの提供 競技車両と観客との距離が近いのがラリ ーの大きな特徴でもあるだけに、観客の安 全については一つの章を割いている。 ラリーの本場・欧州では、かつてラリー 観戦のリスクは観客自身が負うと言われた FIAホームページで公開されているラリー・セーフティ・ガイドライン。 FIA基準のラリー組織・運営方法の指標が記述されている。そのまま運 営マニュアルに使えるような書類ではないが、基準となる考え方が記さ れているため、ラリー関係者は必読と言えよう。また、年更新の 書類だが、1年の間に内容が頻繁に更新されるため 定期的なチェックが必要だ。 これまでも全日本ラリー 選手権では定期的に救急 活動訓練が行われてきた が、今シーズンについて は、規模の大きなFIAト レーニングの実施が予定 されている。 42
鋭い眼差しと真っ直ぐな言動。戦うアスリートたちは、 皆共通した近寄り難いオーラを発出しているものだ。 単身で欧州に渡り「W Series」に挑んだ小山美姫選手。 彼女はどんな思いで1年を戦ったのか。 JAFウィメン・イン・モータースポーツ作業部会の 座長でもある飯田裕子氏が聞いた。 フォト/滝井宏之、W Series レポート/飯田裕子、JAFスポーツ編集部 単身で乗り込んだ本場・欧州レース界 小山美姫選手が掴んだ飛翔のチャンス このひと 注目! レーシングドライバー 小山美姫選手 43
っと”戦闘モード”だった彼女。 「今日は6速も使って、流して走 ってもいいんだよ」と、つい大人 は言ってあげたくなる。
彼女は今回のインタビューで、会話中も、 会話の内容についても、ずっとピークパワ ーを引き出しながら攻め続けているような 勢いだった。化粧っ気もなく小柄で、目を キラキラさせながらレースの話をする彼女 は、実年齢の22歳よりずっと若く見える。 取材日が雨風の強い日だったこともあり、 お会いした直後、ストレートの長い髪のま とまり具合を気にしていたのがとても印象 に残っている。女性なら誰でも気にするこ となのに、彼女の仕草だけを忘れられない のは、彼女が持つギャップのせいだろう。 ちょっと髪を直そうか、とリクエストす るカメラマンに向かって「こんな天気なんだ から仕方ないでしょっ!」と遠慮がない。 俗に言う跳ねっ返り系女子と表現したい
ースに全力投球したようだが、ここではW Seriesにフォーカスを当て、小山美姫とい う人物を紹介しようと思う。
孤独と挫折と苛立ちと不安
W Seriesは世界でハイレベルなレーシ ングドライバーを輩出することを目的に、 2019年に英国で創設されたレースシリーズ だ。書類選考をパスしたのは55名。小山選 手は世界26の国と地域から集まったドライ バーの中から厳しいオーディションを経て 参戦資格を得た。そして唯一の日本人とし て2019年のファーストシーズンを戦った。 オーディションではトップ通過を狙うほ ど調子が良かった彼女。実際のレースでは もっと良い結果が残せると信じて、毎戦全 力で戦ったが、結果はシリーズ7位。前シ ーズンのシリーズ上位ドライバーは翌年も 参戦できるシステムのため、今年こそチャ ンピオンを狙うと意気込む。
Series」に参戦。彼女は関わったすべてのレ
昨年を振り返る彼女は、落ち込みながら でも、話す口調は強い。そして頼もしい。 W Seriesは、車両に加え、メカニックや エンジニアも毎戦変わるというルールがあ る。そして、彼女にとっては走るコースが すべて初体験。車両やコースへの対応だけ でなく、毎戦入れ替わる担当者とのコミュ ニケーションにも苦労したという。 仲間たちも、オーディションのときは、 英語のコミュニケーションで色々とサポー トしてくれたり、彼女の速さやチャレンジ に対して、一緒に一喜一憂してくれていた。 しかし、当然のことだが、シリーズが始 まるとライバル関係になるわけで、そこで
はないかと思ってしまったほどで、それこ そ今の小山選手の魅力でもある。 単身で欧州に渡りレースにチャレンジし ようと考えるのだから、このくらい威勢が 良くても不思議じゃないと思ったのだ。 小山美姫選手は5歳でカートを始め、以 降は主にフォーミュラの経験を積んできた。 そんな彼女が目指すはシートはF1だ。 昨年は国内のFIA-F4、F3アジアなどに加 えて、欧州で始まった女性だけのレース「W
女性。物怖じせず勝ち気で、でも不器用そ うで、真っ直ぐで……。近年の若手男子ド ライバーのほうがよほどお行儀がいいので
単身渡欧ゆえの孤独を味わい、思うように レースで結果が残せないことになる。 挫折感と苛立ち、そして不安。初モノ尽 くしの彼女にとっては、出会うあらゆるこ とが戦いだった。おかげで、日本で彼女を サポートしてくれる関係者のありがたさを 改めて実感したという話も。このとき、勝 ち気な表情が一瞬緩んだようにも見えた。 トレーニングやW Seriesに関わる予習 1.2019年から欧州で始まった女性 だけのレースシリーズ「W Series」。 日本では事前情報が少なく、開幕直 前に飛び込んできたのは、小山美姫 選手がオーディションで好成績を 挙げたという動画ニュースだったこ とは記憶に新しい。2. オーディショ ンでは量産車でサーキットを走り込 みタイムアタックも実施。3. フィジカ ルやメンタル面のトレーニングも。 4. 初年度はDTMのサポートレース として開催され、ホッケンハイムか らブランズハッチまで合計6戦で争 われた。車両はタトゥースT-318の ワンメイクで、カラフルなマシンを、 エンジニアやメカニックもセットで 毎戦入れ替える方式だった。 ず このひと 注目! 1 2 3 4 44
や復習、ライバルの研究など、とにかくで きる限りのことをやってきたそうだ。 「やるからには一番になれ」
彼女のモチベーションの原点は、父親と 戦ってきたカートにあるようだ。 「子供の頃は、カートも小学校でのリレー などでも『やるからには一番になれ』と父親 から言われ、そのための努力は惜しまなか ったですね」と小山選手。
彼女が過去を振り返る話では、ある時期 のところまでは「(お父さんに)一番になれっ て言われていたから」という枕詞付きでレー スキャリアを話してくれていた。 「チャンピオンになるまでオレは辞めない」 という父親と二人三脚で没頭したカートレ ース。ところがあるカテゴリーでチャンピ オンになると次のステップアップに進むた めの資金の壁にぶち当たり、「この先、続け ていくのは難しいだろう」と父親から戦線離 脱を提案されるのだった。
彼女のために父が架けたハシゴを、父が 外そうとしたのだ。しかし、それは娘がこ の先で味わう苦労を思えばこその提案であ
っただろうことも想像できる。 ただそれ以降の彼女の話は「私がレースを したい、レースしかないんだ」という大前提 のもとで話は展開されるようになる。 恵まれた環境でレースができているわけ ではないという反骨精神と、本人いわく、 学業を少々おろそかにしてきたことへのコ ンプレックスが、小山選手を「F1に乗りた い」という明確な目的へと導き始めた。 「自分にはレースしかない。今年はW Seriesでシリーズチャンピオンを狙うしか ない。F1にホントに乗れるかは正直わかり ません。でも、目の前のチャンスには全力 でチャレンジするしかないんです」と語る。 欧州では、F1のテストドライバーのシー トを獲得した女性もいる。FIAフォーミュラ E選手権を戦うベンチュリのチーム・プリン シパルを務めるスージー・ウォルフ氏は、 かつてウイリアムズのテスト&開発ドライ バーだった。そして、今年から全日本スー
パーフォーミュラ選手権を戦うタチアナ・ カルデロン選手は、現在もアルファロメオ のF1チームの開発ドライバーでもある。
W Seriesの初年度チャンピオンであるジ ェイミー・チャドウィック選手はウィリアム ズだ。日本人女性がその座を得て、決勝の グリッドにつく日が来るのだろうか。
2年目の2020年、小山選手が狙うのは、 もちろんW Seriesのチャンピオン。「どん な条件下でも結果を残せるドライバーにな らないと、世界で通用するドライバーにな れない」と、支えてくれた人々に押し上げて もらったチャンスを、唯一のアジア人とし て掴み取るべく孤軍奮闘する。
今シーズンは活動の拠点を欧州に移す彼 女。筆者としては、一人の女性として、そ してドライバーとして、彼女がどんな経験 を積み何を得るのかに注目したい。そして 様々な経験談を、あの強く、頼もしい口調 で、再び伝えて欲しいと思っている。
毎戦2本のフリープラクティスと予選、決勝レースという合計4回走行するフォーマット。プラクティスと の違いに戸惑い、思うようにいかない予選。しかし決勝では後方グリットから果敢に追い上げ、レース最大 となる10ポジションアップといった攻めのレースを展開して、表彰台とはならずも初戦から存在感を示し た。第1戦ホッケンハイムでは7位、第2戦ゾルダーでは8位、第3戦ミサノは最上位の4位、第4戦ノリス リンクでは6位を獲得したが、第5戦アッセンでは完走できず、最終戦ブランズハッチでは最下位に終わ る。最終的に合計30ポイントを獲得してシリーズ7位。翌年シリーズへの優先参戦権を獲得している。
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イド、あるいはピットロードでシャッターを切り続ける フォトグラファーの皆さんだ。彼らの仕事によって、 ウェブサイトや雑誌には迫力ある写真の数々が掲載さ れ、モータースポーツの魅力が発信されている。 実は、国内にはそうしたフォトグラファーたちをま とめる団体がある。それが日本レース写真家協会 (JRPA)だ。その会長を務めているのが、モータース ポーツの写真を撮り続けて40年以上という経験を持 つ小林稔氏。小林氏はどのようにしてモータースポー
写真学科に行ったんですけど、大学生の途中ぐらいか ら「将来はフォトグラファーとして生きていきたい」と本 当の意味で思うようになりました。その大学時代、4年 生の頃から自分でレースを走る方に目覚めて(笑)。富 士に来てサーキットを走ったりしていたんです。大学 に入ってから、趣味はクルマと音楽で、レースを観に 行ったりもしていたんですよね。でも、なぜか就職が 決まるまで、自分がレースの写真を撮るということと は結びつかなかった。将来はファッションフォトグラ ファーかなとか、漠然としていたんです。ただ、大学4 年の11月、富士で事故って右手を怪我して、卒業制作 の写真が撮れなくなってしまったんですよね。そこで1 年間留年することにしていたんですけど、年が明けた2 月頃、ゼミの先生から「カーグラフィックでフォトグラ
モータースポーツの主役はなんといってもドライバーとマシンだが、 その主役たちを支えるさまざまな裏方の存在を忘れてはならない。 今回、レースの醍醐味を“写真”で表現してきたフォトグラファーの仕事に密着! 感動と情熱が込められた写真の誕生を紐解く ~レースフォトグラファー編~ ツに取り憑かれたのか、またフォトグラファーという 仕事の魅力は何なのか、教えていただいた。 小林さん自身、フォトグラファーになられたのは どういう経緯でしたか? 中学ぐらいから写真を撮り始めて、日大芸術学部の
を分かった上で、カーグラフィックが採用してくれて。
動車レースが行われているサーキットの現 場には、様々な仕事がある。その中でも普 段は黒子として働いているのが、コースサ
自 フォト/森山良雄、JAFスポーツ編集部 レポート/貝島由美子 協力/日本レース写真家協会(JRPA) 46
ファーを募集しているから、受けてみないか?」って言 われたんです。結果、まだ卒業できないっていう事情
そこから今の道が始まりました。
の写真を撮り始められたんですか? 大学生との二足のわらじみたいな感じでしたけど、
て来年には創立50周年。今、会員は60人います。 最初は親睦団体だったということですが、現在の 会の目的は? 今は、撮影場所などについて各サーキットと交渉を したり、会員がより仕事をしやすい環境を整えること が目的です。会として、アマチュアフォトグラファー に対する講習会を行ったり、裾野を広げることもして います。また、自分たちの作品を集めて写真展をやっ たり、アマチュアの方達のためのコンテストをやった りということもしていますね。毎年東京で開催されて いるモータースポーツ・ジャパンでは、子供向けの写 真教室も開催しています。写真を通じて、モータース
で発表されていること。加えて、3年以上在籍している 会員2名の推薦が応募の条件です。その上で、年1 回行われる総会で審査&投票があり、出席者 の4分の3以上の賛成が得られれば入会す レースを妨げることな く、常に“安全”な撮影を 心掛けているという。オ フィシャルを始めとする レース関係者とのコミュ ニケーションも、円滑に 仕事を進める秘訣だ。 自身も開発に携わったフォトグ ラファーベストを愛用している 小林さん。大小さまざまなポ ケットが効率良く配され、機材 や資料の収納に長けている。 国内主要サーキットで開催される レース取材の際に必要なメディア 専用のパスの数々。過去の撮 影実績に応じて発行される 特別なパスだ。 機材はNikonのフラッグシップモデルであるD5 を基軸に、走りから表彰台の選手まで、さまざま なシチュエーションに対応できるレンズを用意。 日本レース写真家協会ホームページ http://jrpa.org 日本レース写真家協会( 47 会員2名の推薦が応募の条件です。その上で、年1 と断言するほど、フォトグラ ファーという職業に面白さと 誇りを持つ小林さん。現在、 日本レース写真家協会 (JRPA)の会長を務め、国内 外問わずさまざまなレース で撮影を行いつつ、後進の育 成にも力を入れている。 J R P A )会長
カーグラフィックに入った後、いつ頃からレース
カーグラフィックに入ってすぐ、4月の末にはもう富士 のレースを撮影しに行っていました。そこから1年間 ずっと、ビッグレースも小さいレースも、今と同じよう に撮影していましたね。そういう意味では、短期間で ものすごい経験をさせてもらいましたよね。 現在、JRPAの会長という要職を務められていま すが、会の成り立ちを簡単に教えていただけますか? JRPAは1971年に設立したんですが、国内外のモ ータースポーツの撮影を生業としているメンバーで作 られた会です。最初はサーキットで顔を合わせるメン バーたちの親睦の会というか、「みんなでまとまろう」 みたいな所から始まったんですけど、そこから始まっ
ポーツの振興・発展に役立てればと考えて活動してい ますね。 JRPAの会員になるには、どうすればいいのでし ょうか? まず連続する3年間以上、年間7レース以上モータ ースポーツの撮影経験があって、それらの写真が媒体
ます。 次に実際のお仕事についてお伺いします が、モータースポーツを撮影するために、特別 なスキルみたいなものはありますか?
まずスキルの前に、モータースポーツは「時に 危険を伴う」という意識を持つことが重要です ね。写真そのものをキチンと撮らなくちゃいけ ないというのはもちろんですが、JRPAの一番の 目的は「安全に撮影ができる」こと。そこが一番 重要だと思っています。今のこの時代、カメラ も良くなっているので、写真を撮ることはある 程度できると思いますが、安全を考えるために は、レースの色々なことを知っているというの が大切になってくると思います。みんなそれぞ れ技術はあるので、その場所に立てれば写真は 撮れる。世界中のどこでも、サーキットの1コ ーナーに立てれば、スタートの写真は撮れるわ
ます。あとは長いレンズで遠くを見ているので、近く が見えていないんですね。だから、他の多くのフォト グラファーもやっていますけど、レンズを覗く右目だ けでなく、左目も開けて写真を撮っています。両目を 開けて撮るようにしているんです。もし近くで何かあ っても、何となく視野に入ってきますから。レースの 流れを見ていると接近戦になると分かるので、そうい う時は特に気をつけていますね。あとはピットレーン でも、周りの状況をよく見るというのはやっています。 ピットロードは給油もありますし、タイヤ交換もすごい 勢いでやっているので。だからこそ、ピットレーンに は入場規制もありますし、レースによって入る時に耐 火服を義務付けています。それもJRPAとして提案し たことなんですよ。伝える側の我々が怪我をしたとか、 クルマに引っ掛けられたとかしてはいけないと思って いますし、業界に迷惑はかけられない。その辺りは、 JRPAの会員みんながよく理解していると思います。
~レースフォトグラファー編~ ることができます。
いますよ。 けですよ。そう言う技術は誰でも持っている。ただ、1 コーナーに立てるまでの準備とか、そういうことをで きることの方が大切かも知れませんね。 撮影現場で特に気をつけていることはありますか? コースから目を離さないことですね。昔、フィルム
いと思いますが。 そういう意味では、かなりカメラやレンズといった 道具に頼る職業でもありますね。当然のことながら長 レースのクライマックスとも言うべき表 彰式はフォトグラファーにとって一番の 大仕事。選手側から見ると多数のレンズ が向けられる景色が広がる。 ドライバーの一瞬の表情を捉えるために、 常に撮影チャンスのアンテナを張り巡ら せて、ワンショットを狙う。 撮影が終わるとともに出版社や通信社へ 納品する画像の選択や、画像の補正と いった業務をメディアセンターでこなす。 大きなレースでは、サーキット内を定期的 に周回しているシャトルバスがある。これ で撮影ポイントへ移動する。 撮影前にはフォトグラファーミーティング が行われる。撮影禁止区域(レッドゾー ン)等の注意事項を確認する。 夏の暑さ、冬の寒さ、降雨まで、さまざまな環境下でも撮影をする フォトグラファー。また大口径の超望遠レンズとカメラボディのセッ トで約4~5kgの重量を常に持ち歩く、まさに体力勝負の仕事だ。 ビッグレース開催時には、カメラ機材のメ ンテナンスを行うメーカーのフォトサービ スがメディアセンターに設置される。
JRPAの会員になることで、フォトグラファーと して何かメリットはありますか? これは会の目的ということではありませんが、メデ ィアパスの申請をJRPAからまとめて行っています。 その分、手続きは多少スムーズかもしれませんね。ま た、サーキットの撮影場所に関しても、JRPA会員はグ レードが担保されているというか、「(経験ある)JRPA の会員だから入ってもいいですよ」というポイントがあ ります。日頃から、サーキットと信頼関係を作り上げ ているからこそ、そういうことも可能になっていると思
を交換する時も、手元は見ずにコースを見ていたぐら いです。それは先輩からの教えでした。極端な話、「何 が飛んでくるか分からないから、いつ何時もコースか ら目を離すな」と。最初に教えられたことなので、ずっ と実践してきました。最近はデジタルカメラで、撮影 したらすぐにモニターで確認できるんですけど、僕は その作業もコースサイドではあまりしないようにしてい
一方モータースポーツの迫力を伝える写真を撮影 する上で、大切なことは何ですか? 被写体がかなり遠
その分、JRPA会員には責任もあるという ことですか? それはもちろん。一番大切な所ですね。他の 模範になるような行動をしなければならないと 思っていますし、そうあってもらいたいと思い
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いレンズが必要です。迫力とかそういう部分は、撮影 者のスキルかも知れません。キチンと写真を撮ること ができれば、あとはそのシーンに巡り合うかどうか。 そこはレースの読みという部分もありますし、やはりレ ースを知っているかどうかですね。例えば、選手の性 格なんかも分かっていれば、「そろそろ勝負を仕掛ける だろうな」とか、タイヤがどれぐらい消耗してきている かとか。そういうのもレースを知っていればこそで、 ただ目の前に来るものを撮っているだけでは、面白い 写真にはならないんです。写真って何でもそうですけ ど、被写体のことをよく知ることが大切。そういう意 味で、レースのことをよく知らないとダメですし、 色々なサーキットを転戦するわけなので、そのサーキ ットによって、どこに行ったらどういう写真が撮れる かっていうことを知らないと。天候だって、晴れもあ れば雨もあって、雨だったらここがいいとか。そこは 各カメラマンが引き出しを持っていて、それをどう使 って、どう組み合わせるかっていうのもあります。そ の結果、迫力ある写真だったり、シーンを伝える写真 だったりが撮れるんじゃないかと思いますね。 —皆さんは日々、サーキットで活躍を続けていらっ しゃいますが、モータースポーツの中でのフォトグラフ
すし、写真を通じてそれをどう伝えられるか。「伝え る」ということが、僕らの役割かなと思います。モータ ースポーツの素晴らしい部分をもっともっとみんなに 知ってもらいたいというか。そこが大きいと思います ね。今、僕は各カテゴリーのオフィシャルフォトグラフ ァーをやっていますけど、そこで大切なのはいかに正 確に記録として残すか。カッコいい芸術的な写真も大 切ですし、僕自身、そういう写真を撮らないわけじゃ ない。写真家ということで言うと、誰でも自分の作風 を残したいというのはありますからね。ただ、それを やっていると記録としての写真がなかなかできなかっ たりして歯がゆい面もあります。両方を上手くバラン ス取りながらできれば一番いいですね。だから、普段 みんなが媒体に出せないような芸術的な作品を集めて、 JRPA展を開催しています。JRPA展では、みんなが色
日本レース写真家協会報道写真展 「COMPETITION」開催 モータースポーツの振興および発展のため、日本レース写真家 協会(JRPA)の会員たちが、フォトグラファーの視線で捉えたモー タースポーツの感動や興奮を1枚の写真に込める。そんなモー タースポーツファン垂涎の報道写真展が毎年開催されている。 レースによっては何人 ものJRPAの会員が撮 影でサーキットを訪れ る。レースの状況から 撮影ポイントにいたる まで、会員同士でさま ざまな情報交換も行 われている。 て、モータースポーツが面白かったり、楽しかったり、
いと思っていますし、そうした写真はJRPAのウェブサ イトのフォトギャラリーでも公開しています。 現在、現場ではどんなカメラマンを求めています か? 正直なところ、今のJRPAは20代のフォトグラファ ーが一人いて、30代はゼロ。40代から上、特に50代、 60代が多いので、どう考えてもマズイと思っていま す。この後、伝えていく人がいなくなってしまいます から。だから、若手が欲しいですよね。メディアパス を含めて色々制限が多く、少し敷居も高いので、矛盾 も抱えているんですけど。媒体がなくて、発表する場 がないから、プロとしてなかなかやっていけないし、 入りたいけど入れないということもあるでしょう。で も、そこはJRPAとしても、若い人たちが入れるよう にしていかなくちゃいけないなと思っているので、モ ータースポーツの写真をプロとして撮りたいと思って いる学生さんや若い人たちのために何らかのアクショ ンを起こしていかなくちゃいけないと思っています。 ァーの役割とはどういうものだと考えられていますか? 記事を書く人も同じだと思いますが、やっぱりモータ ースポーツを伝えることだと思います。自分たちだっ 49
感動したりだとか、好きだからこの世界にいるわけで
んな思いを持って撮っているということを見てもらいた
州熊本在住のダートトライアルドライバ ー、橋本和信選手は、一度だけ、全日本の 頂点に立ったことがある。 1996年、地元の三井三池オートスポーツランドで行 われたシリーズ第2戦。綾部美津雄選手、荒井信介選 手、宝田芳浩選手といった当時のトップドライバー達を 尻目に、ランサー・エボⅢを駆ってスポット参戦ながら 栄冠を勝ち取ったのだ。 「ちょうどランサー・エボⅣが出たばかりで、何人か 速い人も乗り換えてたんですけど、まだエボⅢの方が 速かった。その隙を突いたんですよ。まだ若かったか ら、調子づいてたのも確かなんですけどね(笑)」。 この年、1996年は橋本選手が10年間務めた勤め先 を辞め、自らのモータースポーツショップを立ち上げた 年だった。門出を飾る忘れられない1勝になった。 「ダートラを続けていくために転職したんです。全日 本を追ってみたい気持ちがなかったわけじゃないけど、 九 2019 JAF 地方選手権 チャンピオンの足跡 Rally Gymkhana Dirt-Trial Circuit-Trial Rally Gymkhana Dirt-Trial Circuit-Trial JAF公認ラリー&スピード競技 2019 地区戦王者たちの 奮闘記 J A F スポーツ編集部 レポート/ J A F スポーツ編集部 J A F モータースポーツ表彰式と時期を前後して、 J A F 地方選手権のモータースポーツ表彰式が 12 月から今年の 2 月にかけて全国 8 地区で開催された。 50
「あと何回か獲れば20回のチャンピオンになるんだと 気が付いた時に、これを節目にしようと思ったんです。 勝ちだけにこだわらずに、何かフォローする側に回ろう と。走ったら勝てた方がいいのは間違いないし、それ でチャンプを獲れたら、なおいい。だけどこの先、僕 らの世代がいなくなったらダートラはダメになると思う んですよ。あと10年くらいしたらダートラ人口は半減 すると思う。そうなった時に、一生懸命やってきた若 い奴らが、“もう終わりだから仕方ないな”っていう状況 にはしたくない。何とか残ってもらう方法を、いま考え
ないといけないんです」。
JAF九州ダートトライアル選手権 2019年D部門チャンピオン 橋本和信選手 金字塔!20回目のタイトル獲得 全日本を追うこととその後のリスクを考えたら、やっぱ り無理でした」。 ダートラとの出会いは高校生の時。友人にダートラ 場に連れて行ってもらって、初めてその迫力に触れた。 「もう、その日に、走りたい、誰かクルマ貸してくれん かな、と思った。俺だったらある程度行けるぞ、とい う変な自信だけが沸いてきたのは覚えてます(笑)」。 就職した20歳からダートラを始める。最初のクルマ はTA22セリカ。続いてKP61スターレット。そして BFMRファミリアにチェンジしてからは4WDターボひ と筋だ。FFの競技車に乗ったことはない。 「始めた頃は地区戦だろうが何だろうが、ダートラと 名の付く競技会は全部出ました。とにかく毎日走りた かった。競技に出ると失敗するから、明日またすぐに 走りたいと思っちゃう。ダートラ中毒でしたね。給料は 当然すべてダートラに消えました。仕事がどうしても日 曜が休めない時は、土曜の夜中に走るラリーに出まし た。ダートラの練習のつもりで走ったんです」。
目標の20回目のチャンピオンを獲得して臨む今年 も、もちろん競技生活は続行する。同時に、40年間楽 しませてもらってきたダートトライアルへの恩返しを始
28歳の時に地区戦初優勝。31歳で初の地区戦チャン ピオンを獲得する。2009年にはランサー・エボⅣのC ランサー・エボリューションを乗り継いでき た経験を生かしたチューニング技術は一般の ストリートドライバーにも好評を博している。 拠点となっている加盟クラブ「MSH」にはFF やスバル車を駆るドライバーも在籍している。 51
車両で10度目のチャンピオンに輝いた。 「ダートラをやめようと思ったことは一度もない。ただ 同じモチベーションで続けてきたというわけではないで す。出れば勝つ、という時もあって、そういう時は正直、 モチベーションはなかなか上がらなかったですよね」。 4連覇を達成した2013年に転機が訪れる。江川博 選手、岩下幸広選手という九州を代表する改造車ドラ イバー達と、最速のDクラスで三つ巴のバトルを展開 することになったのだ。 「ライバルがいないとやっぱり面白くないですよね。二 人がいなかったら、ここまで続けられなかったと思い ます。それにクラスやライバルが一緒でもクルマを変 えるとまたモチベーションが上がる。エボXに代えたこ とも新たなモチベーションになりましたね」。 そんな橋本選手に3年前、心境の変化が訪れる。
める年にもするつもりだ。 「今までも、そういう気持ちはあったけど、心の余裕 がなかった。今まではまず自分がやりたいからやって きた。やっぱり『勝ちたい』があるから、お客さんのク ルマにトラブルが出ても人に任すとかしてたんです。 もっと現場でフォローしなきゃダメだったというのがあ るので、今年はその辺りから始めていきたい。一番大 事なのは後に続く人に道を作ることだと思ってます」。 10年後のダートラの確かな未来のための第一歩を踏 み出す覚悟だ。 ダートトライアルの他、ジムカー ナ、ラリーでも全日本選手権の参 戦経験がある。ジムカーナでは R32GT-Rを駆ったことも。マルチ ドライバーとして九州のモーター スポーツ界に貢献してきた。
Rally Gymkhana Dirt-Trial Circuit-Trial
り前ですが、アルトとはすべてが違っていてかなり苦 労しました。最初は怖くて、VTECの作動域に入れら れませんでしたから(笑)。いきなりSタイヤは難しい と思ったので、ラジアルで徐々に慣れていこうと考え て中国シリーズのBR2クラスに挑みました」。 「とにかく開幕前に走り込んで、何とか恥ずかしくな い走りができるようにもっていきました。なので、開 幕戦から優勝できたのは自分でもびっくりでしたね。 結局7戦中5勝することができましたが、シーズン中 は前日練習と本番に集中することで、何とか合わせ込 めたと思います。2020年はSタイヤでSAに挑戦した いと考えてます。中国シリーズのタイトル争いもそう ですが、2020年は全日本ジムカーナにも挑戦して、ま ずは入賞を目指したいと思っています」。
“車部”のみんなでラリーを研究する
JAF九州ラリー選手権RH-5クラスは、排気量区分 なしのAT限定車クラス。そこで2019年ドライバーチ ャンピオンを獲得したのは河本拓哉選手だ。九州の名 だたるベテランラリーストがスポット参戦したこのク ラス、河本選手は全7戦のうち開幕4連勝で初タイト ルを獲得。しかも、毎回違うナビゲーターとコンビを 組むという、ちょっと異色の参戦スタイルだった。 「2018年はマイカーのDC2インテグラで、JMRC九 州チャレンジシリーズでチャンピオンを獲得できまし た。自分は大学院修士2年生として九州工業大学自動 車部に所属していて、最初はEG6シビックでジムカー ナを始めたんです。それがだんだんラリーの魅力にハ マってきて、ラリー車のDC2を譲ってもらえることに なったので、ラリーに参戦するようになりました」。 「2019年は、お世話になっている師匠の徳尾慶太郎 さんの勧めもあって、部車のヴィッツでAT限定の RH-5に参戦することになりました。クラブでは年に2
回、ラリーを主催しているので、部員のみんなに参加 者側の経験も積んでもらいたくて、毎戦、別の部員に コドラを体験してもらうことにしたんです」。 「昨年は部の活動としての参戦で、ナビも初心者なの で、“ロスト当たり前”ではありました。部車なので壊 せませんし、ちゃんと帰って次の大会に繋げることも 大切だったので、ひたすら自分を律する走りでした」。 「2019年のRH-5には星野元さんや榊雅広さん、師 匠の徳尾さんらも参戦してくれて、皆さんに勝つこと ができました。これは製作してもらったヴィッツの CVT車両が、他の方々の車両よりも扱いやすかったこ とが大きいと思います。第6戦で全日本ナビの桝谷知 彦さんに乗ってもらえたことも勉強になりましたね」。 「シリーズ序盤はタイトルのことは頭にありませんで
J A F 2019 年 B
吉﨑太郎
したが、最終的には年間4勝できました。当然、勝つ JAF 地方選手権チャンピオンの足跡2019 JAF 地方選手権チャンピオンの足跡 九州RH-5ドライバーチャンピオンの河本拓哉選手。 DC2インテグラでJAF中国ジムカーナBR2を初制覇した吉﨑太郎選手。期待の若手ドライバーだ。 54
R 2 チャンピオン
ために最善を尽くしたつもりでしたが、皆さんからは 『忖度がねえな!』と怒られました(笑)」。 「自分は未熟ですし、その未熟さ故に、皆さんが危険 を感じて抑えるところを、踏みすぎていたのかも知れ ません。でも、師匠の徳尾さんは全開がモットーな人 ですから、ギリギリの選択をする状況では、自分も踏 むほうを選んでいた可能性もあります。そこがこれだ けの勝利に繋がったのかも知れませんね(笑)」。 筑波皆勤賞でようやく掴んだ栄冠 “継続は力なり”を地で行く選手が、苦節6年目で初 タイトルを獲得した。2013年、筑波サーキットで開催 されたサーキットトライアルのプレシーズンマッチか
筑波サーキットトライアル選手権
タイトルを獲得。JAF関東地 方選手権の表彰会場では、思 わず顔をほころばせた。 「元々、モータースポーツに は興味はあったんですけど実 際に参加する機会がなくて。 たまたま友達に誘われて参加 してみたのが始めたきっかけ です。いざサーキットを走っ てみると、とにかく気持ち良 くて、興奮してですね、まさにハマっちゃった感じで す。そこから一気にモータースポーツ熱が盛り上がり ました」。 「最初のころは当然勝てなくて……。でも参加して走 るだけで楽しかったので、苦しいって感じではなかっ たんです。ただ、参加し続けている中で走り方や攻略 にも変化をつけると、段々タイムが速くなっていき、 順位も上がって、時々優勝できる時があったりとか。 自分のスキルがアップしてるなと、成果が見え始めて からますます楽しくなりました」。
馬場元
2019 年 B 6 チャンピオン
「2019年は1戦目と2戦目で連勝して、3戦目で (2018年チャンピオンの)蝶間林さんに負けて、4戦目 に勝負を決めてやろうと思って、気合を入れて競技に 臨みました。おかげさまでチャンピオンになれました が、今シーズンは欲張らずに、まず全戦参戦が目標で す。ついでに2連覇できればいいなと思っています」。
J A F
ら参戦し続け、2019シーズンまで皆勤賞を誇る馬場元 選手は、地道な努力の成果が2019シーズンに華咲き、 JAF筑波サーキットトライアル選手権B6クラスで初
JAF九州ラリー選手権 2019年RH-5ドライバーチャンピオン 河本拓哉選手 JAF筑波サーキットトライアル選手権B6クラスをGDBインプレッサWRXで戦う馬場元選手。 55
FIA-F4地方選手権チャンピオン 佐藤蓮選手 国各地のJAF公認サーキットでは、JAF地 方選手権レースがシリーズ開催されている が、2019年もFIA-フォーミュラ4地方選 手権(FIA-F4)を始め、フォミュラ4地方選手権(F4)、 スーパーFJ地方選手権(S-FJ)、そしてツーリングカー 地方選手権の4部門が地方選手権として開催された。 FIA-F4地方選手権 カートチャンピオンが万全体制で臨んだ FIA-F4参戦2年目のシーズン 中でも一番人気だったのはFIA-F4で、常時20台を 超すエントリーがあった。スーパーGTの国内ラウンド との併催ということ、また1大会2レース開催であるた め、全14戦に及ぶ長き戦いではあるが、ステップアッ プしていくためには避けて通れない、という認識が 年々高まっている。 また、選手権対象外だが、40歳以上のジェントルマ ンドライバーと女性ドライバーを対象とした、インディ J A F スポーツ編集部 レポート/はた☆なおゆき、 J A F スポーツ編集部 上位カテゴリーへのステップアップや、 ドライビングスキルの向上を目指して 2019 シーズン、 その実力を発揮して栄冠を手にした、 J A F 2019 JAF地方選手権 レースレビュー カートを卒業して FIA-F4に専念し た2年目、佐藤選 手はしっかり結果 を残し、2020年は 海外に挑戦する。 全 FIA-F4、F4、スーパーFJ、 ツーリングカー 2019 各地区を制した 勝者たち 56
ペンデントカップが設けられたことにより、「たくさん の観客の前で走りたい」という層も取り込んだことも、 大人気の理由ともなっている。
そんなFIA-F4において、最大のトピックスは Hondaフォーミュラ・ドリーム・プロジェクト (HFDP)勢の3人で優勝が独占されたことだろう。
とりわけ強烈な存在感をアピールしたのは佐藤蓮選 手で、11勝を挙げて第7戦からは負け知らず。ポール ポジションも8回獲得して、それぞれ記録更新となっ たばかりか、シリーズ設立5年目にして、初めて最終 大会を待たずにチャンピオンを決めている。
残る勝利は太田格之進選手が2勝、三宅淳詞選手が 1勝を分けていた。この佐藤選手が卓越した強さを見せ たのは、参戦2年目だったことと、フォーミュラに専念 できたことがある。
ご存知のとおり、佐藤選手は全日本カート選手権の 最高峰、OK部門を2017年から2年連続で制している。
勝は一度のみながら、8戦で表彰台に上がる安定感が決 め手となった。今年はGT300とスーパー耐久の参戦が 決定。逆にPP獲得回数でも佐藤選手に準じた太田選 手が6位に甘んじたのは、落としたレースも少なくなか ったからだ。その二人に割って入ったのは、川合孝汰 選手と平木玲次選手、そして菅波冬悟選手。優勝こそ 飾れなかったとはいえ、FIA-F4での豊富な経験は、そ れぞれしっかり活かしていた格好だった。
特に川合選手には、予選より決勝で順位を上げてき たという印象が強く、そのことでより評価を高めたのは 間違いない。今年は埼玉トヨペットGreen Braveから GT300とスーパー耐久、86/BRZレースと、異例の3 カテゴリーへの進出がすでに発表となっている。すで にGT300参戦を決めている菅波選手ともども活躍を期 待したい。
F4地方選手権 初参戦ドライバーが初チャンピオン! 今シーズンも2連覇を目指す
一方、通称“JAF-F4”と呼ばれているF4は、長らく 東日本と西日本の2シリーズによって争われてきたが、 2019年からは一本化されて全10戦での開催となった。 ツインリンクもてぎの初戦を制したのは、FIA-F4チ ャンピオンとなった佐藤選手。しかし、序盤3戦の参 戦だったこともあり、ポイントランキングは5位に留ま っている。だが、より運動性能に優れるJAF-F4で学 んだことこそ、FIA-F4での大活躍に結びついたと語っ ている。
それはHFDPのチームメイトにも当てはまっていた ようで、三宅選手と太田選手も同じようにスポットで参 戦。それぞれ2勝をマークして、ランキングでは佐藤 選手と同率の5位、7位という結果を修めている。2019 年にFIA F2を戦った角田裕毅選手も、2017年東日本 F4のタイトルを獲得している一人だ。
過去にもカートチャンピオンたちがFIA-F4でも結果を 残してきただけに、佐藤選手にも注目が集まったもの の、2018年は表彰台には一度も上がれず、ランキング は7位という、正直言って物足りないものだった。 ただ、過去のカート出身の成功者たちはFIA-F4のス ポット参戦や、スーパーFJなどを戦った後、フル参戦
F4地方選手権チャンピオン 徳升広平選手 57
で結果を残していた。佐藤選手にとっては初めてのフ ォーミュラがFIA-F4であり、いきなりのフル参戦とい うことで、明らかに経験は不足していた。 とはいえ、その1年間で修正すべき点を見出し、な おかつカートを卒業したことで、精神的な余裕ができ たことは自ら認めている。ひとたび勝ち方を覚えた佐 藤選手は、逃げ足も速ければバトルにも強く、何事に も動じないドライバーという印象に。Hondaモータース ポーツ活動計画によれば、今季の佐藤選手はフランス FIA-F4に挑むことが発表されている。 ランキング2位は三宅選手。先にも述べたとおり優
最終的にタイトルはフル参戦のドライバーによって 争われ、シリーズ中盤までは第5戦富士スピードウェイ で優勝した河野靖喜選手がリードしたものの、終盤に 徳升広平選手が躍進。第8戦富士で初優勝を飾ると、 最終戦筑波サーキットで2位、優勝と大量得点を果た し、F4参戦初年度にしてチャンピオン獲得となった。 その徳升選手は、スーパーFJからのステップアッパ ー。日本F4協会は昨年から独自にオーナーズアワード を設け、「若手を支援するオーナー」も表彰対象として おり、徳升選手をチャンピオンへ導き、自らも参戦す る入榮秀謙選手が初受賞となった。なお、徳升選手は 今年もF4に継続参戦を予定しており、「シリーズ後半 のいい流れを、新しいシーズンにも! より内容の濃い
レースができるようになりたいですし、例えHFDP勢 が出てきても、今度は負けないようにしたいです」と意 気込みを語っていた。 近年はフォーミュラルノーでの参戦も徐々に増えて おり、ランキング2位の河野選手、3位のハンマー伊澤 選手もユーザーの一人。車両は元々ステップドボトム だったため、フラットボトムに改めるなどの改造は必要 だが、手を加えられる部分も多いのがF4の特徴で、そ ういった労もむしろ魅力となっているようだ。 ちなみに今季は再び鈴鹿サーキットを舞台に加えて、 全12戦で競われることに。2レース開催が4大会あるだ けに、大きな負担増にはならないだろうが、そろそろ
もてぎシリーズもまた一騎討ち。それも岩澤優吾選 手と伊東黎明選手というチームメイト同士で競われた。 5戦中3戦でポールポジションを奪い、速さでは優った 2019 JAF地方選手権レースレビュー J A F 菅生スーパー F J 選手権チャンピオン 山陰一 J A F もてぎスーパー F J 選手権チャンピオン岩澤優吾 JAF筑波スーパーFJ選手権チャンピオン KAMIKAZE 選手 JAF富士スーパーFJ選手権チャンピオン 木下藍斗選手 58
有効ポイント数を見直しの必要性も感じる状況だ。 スーパーFJ地方選手権 北はSUGOから南はオートポリスまで 7シリーズでドラマが生まれた 2019年もスーパーFJは、7シリーズで争われた。北 から順に振り返ってみよう。 まずはスポーツランドSUGOシリーズ。ここは完全 に山陰一選手と前田大道選手の一騎討ちとなっていた。 開幕からの2戦で優勝を分け合い、最終決戦の期待が かかった第5戦は台風の影響を受けて中止に。Wヘッダ ーの第3戦と第4戦を、共に前田選手より先着した山陰 選手の初戴冠となった。なお、本レースでは遠征組の 荒川麟選手が連勝している。
感のある伊東選手だったが、いかんせんスタートの出 遅れが目立った。対して岩澤選手はしっかりレースを まとめ上げて3勝をマーク。最終戦では二人で激しい トップ争いを繰り広げながらも岩澤選手が先着してお り、これでタイトル争いに決着を付けることとなった。 筑波シリーズは、ベテランKAMIKAZE選手の独壇 場。第5戦までに4勝を挙げ、最終戦を待たずしてチ ャンピオンを決めている。2016年に菅生シリーズで戴 冠しているものの、筑波シリーズに関しては7年目の悲 願成就となり、同時にスーパーFJの卒業も表明。新王 者不在となった最終戦では、伊藤駿選手がデビューウ ィンを飾っている。ランキング2位は秋山健也選手で、 未勝利ながら全戦で表彰台に上がっていた。
開幕戦で久々の女性ウィナー誕生となった富士シリ ーズ。しかし、その村松日向子選手は2戦のみの出場 となったため、ランキングでは5位に。VITAによる女 性ドライバーだけのレース“KYOJO-CUP”ではチャン ピオンに輝いた実力派ながら、今季は留学でレース活 動を休止するという。
最終戦でも下野璃央選手が優勝し、女性ドライバー の活躍が目立った一方、チャンピオン争いは木下藍斗 選手と小村方喜章選手によって繰り広げられた。シー ズン序盤は第2戦を制した小村方選手がリードするも、 Wヘッダーとなった第3戦、第4戦を連勝した勢いを 木下選手が最後まで維持し、チャンピオンを獲得。
台に上がっていた。
岡山国際サーキットのシリーズも、タイトル争いは一 騎討ちとなった。スタートダッシュを決めたのは入山 翔選手だったが、第2戦から菊池宥孝選手が2連勝。 だが、Wヘッダー大会となった第4戦、第5戦で澤選手 の連勝を許し、こと菊池選手は一度も表彰台に上がれ なかったことが最後まで尾を引いた。
最終戦は入山選手が勝ち、優勝と2位の回数では一 緒だったものの、もう1戦の有効ポイントの差で明暗が 分かれてしまったからだ。なお、チャンピオンの入山 選手は、今季から新設される「スーパーフォーミュラ・ ライツ」へのステップアップを予定しているという。
7シリーズで唯一、大激戦となったのはオートポリ ス。誰一人2勝を挙げることが許されなかったのだ。 チャンピオンに輝いたのは益田富雄選手。優勝は開幕 戦の一度だけながら、コンスタントに入賞を重ね、ラ スト2戦の2位が決定打となった。
Wヘッダー開催となった第3戦は遠征の荒川選手、
シーズンを通じて40名が参戦し、最も活況だった鈴 鹿シリーズは、全日本カートFS-125部門2017年チャ ンピオンの澤龍之介選手が5戦4勝でチャンピオンを 獲得。第5戦で早々と決めたこともあって、欠場となっ た最終戦は、岩佐歩夢選手が第2戦に続く2勝目をマ ークしてランキング2位に付けた。 岩佐選手が回を重ねるごとに差を詰めていたのは間 違いなく、シーズンエンドに行われた日本一決定戦で は、互角の戦いを見せたものの、岩佐選手が逆転で優 勝。ランキング3位は中村賢明選手で、第3戦で表彰
J A F
F J
入山翔 JAF鈴鹿スーパーFJ選手権チャンピオン 澤龍之介選手 JAFオートポリススーパーFJ選手権チャンピオン 益田富雄選手 59
岡山スーパー
選手権チャンピオン
そして第4戦は久々の地元レースで吉田宣弘選手が優 勝。第5戦では富士シリーズ最終戦でも勝った下野選 手が自身初勝利を挙げ、最終戦も遠征組の佐藤巧望選 手が優勝という展開になっていた。 なお、FJ協会とジャパンスカラシップシステムは、鈴 鹿以外の6サーキットを舞台とした「スーパーFJジャパ ン・チャレンジ」を独自に設立。様々なサーキットで経 験を積むことでより腕を磨いてほしいという配慮によ り、6大会9レースで競われた。誰より積極的に出場し た荒川選手が4勝を挙げてチャンピオンを獲得。1勝の 下野選手が2位となった。
なのは、海老澤選手は自ら率いるチームの裏方に徹し、 今季の参戦予定はないことだ。ランキング2位は寺岡 選手で、3位は太田選手。表彰台には2戦で上がった安 井亮平選手が4位となっていた。
鈴鹿6戦、岡山1戦で争われた、鈴鹿・岡山シリー ズは、地方選手権連覇を狙う伊藤裕士選手が開幕戦を 制し、まずは上々の滑り出しを見せていた。その後も 優勝を飾ることは許されずとも、リタイアとなった岡山 での第4戦を除けば、コンスタントに上位に付け、最 終戦に王手をかけて挑んでいたのだが……。 第4戦までのウィナーが西田拓矢選手と岡田祐二選 手、蜂須賀清明選手と分かれていたので、伊藤選手有 利と見られていたが、その潮目が変わったとしたら、 HIROBON選手の目覚めによるものだろう。 これまでなかなか本領を発揮できずにいたHIRO BON選手だが、第5戦で久々の優勝を飾ると第6戦も
優勝ドライバーが入れ替わる中、 ベテランドライバーの経験が光った ツーリングカー地方選手権は「FIT 1.5チャレンジカ ップ」とのWタイトルで、「もてぎ・菅生ツーリングカ ー選手権」と「鈴鹿・岡山ツーリングカー選手権」として 開催された。まずはもてぎ4戦、菅生2戦で争われた もてぎ・菅生シリーズの序盤戦は、太田侑弥選手と海 老澤紳一選手、寺岡亮選手の順で毎回ウィナーが入れ 替わった。しかも、それぞれがポール・トゥ・ウィン。 この中から誰が抜け出すのか注目されたが、そこは過 去のチャンピオン経験が生かされた格好だ。 第4戦、第5戦を連勝した海老澤選手は、最終戦こ そ3位に留まり、寺岡選手の優勝を許したものの、
ツーリングカー地方選手権
2015年、2016年に次ぐ3度目のタイトルを獲得。残念
も同然だった。 しかし、決勝では後続車の追突を受けて、伊藤選手 はリタイア。そして、HIROBON選手は3連勝を達成。 チャンピオンを獲得したが、その表情に晴れ晴れしさ はなかった。なお、HIROBON選手は今季、もてぎ・菅 生シリーズに活躍の場を移すという。 フォーミュラリージョナル 2020年から新たに加わったフォーミュラレースの地方選手権 2020年のJAF地方選手権レースは、既存のFIA-F4と通 称JAF-F4、スーパーFJ、ツーリングカーの4部 門に対し、新たに「フォーミュ ラリージョ ナル地方選手権(FORMULA.REGIONAL)」の追加が公示 され、FIAスーパーライセンスポイントの付与も明らかにさ れている。今季は6月5~7日の富士大会を皮切りに第6 大会までを予定。最終戦は10月30日~11月1日に富士 で開催されるWEC第3戦日本ラウンドとの併催を予定して いる。 J A F 海老澤紳一 JAF鈴鹿・岡山ツーリングカー選手権チャンピオン HIROBON 選手 2019 JAF地方選手権レースレビュー 60
優勝。最終戦では、そんなHIROBON選手を押さえて 伊藤選手がポールポジションを奪って、王手をかけた
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テストを初体験した一人。そこでオートテ ストにハマってしまい、昨年は途中から オートテストシリーズも追いかけた。 「昨年のここはビリだったんですよ。一年 越しでリベンジ達成です」と笑った。ヒート 1の2.4秒の遅れを挽回して、2本の合計タ イムで2番手を4.8秒離して快勝した。「2 本目はラインを多少外しても、テカテカの 所は避けてグリップする部分を選んだのが 勝因だと思います」と振り返った。 雪路面ではどうしても出走順がタイムに 影響するが、「出走順が後ろになっても、 いい路面が探せる余地を残した設定にはし
たつもりです」と猿川氏。このコンセプトは しっかりと具現化されたようだ。 一方、グラベル路面でのオートテストが
の倍となる20台の一般参加があった。希 望すれば、レンタルの軽トラで走れるのが このオートテストの特長で、今回も過半数 の13名が用意された軽トラに分乗してア タックした。 特筆すべきは前回はほぼゼロだったマイ カーで走った参加者が7名もいたことだ。 「家から近かったことが一番の理由ですが、 雪そしてグラベル。滑るオートテストの ひと味違う楽しさって、何でしょう? 人気のオートテストは、シーズンオフを迎えても開催されている。 北海道では、雪の上を舞台にシビアな戦いが展開され、 北陸のオートパーク今庄では、もう恒例と言ってもいい グラベル版のオートテストが行われた。 フォト/加藤和由、JAFスポーツ編集部 レポート/JAFスポーツ編集部 イラスト/高梨真樹 オート テスト 倶楽部 AUTO TEST CLUB 2月9日、北海道の新千歳モーターラン ドでスノーオートテストが開催され た。今回のオートテストは札幌のJAF準加 盟クラブでもあるGR Garage札幌厚別通 モータースポーツクラブが主催したスノー イベント、『GRガレージ スノーパークin 新千歳ML』の一環として行われたもの。今 年はJMRC北海道オートテストシリーズの 開幕戦に組み込まれ、正式な競技として開 催される形になった。 今回の参加台数は、32台。シリーズの対 象となるMT、AT、CLの3クラスには24 台が参加した。スノーオートテストがシ リーズに加わるのは今年が初めてだが、う ち17台は昨年のシリーズの参加経験者だ。 コースレイアウトについては「比較的、狭 いスペースの中でも、オートテストの要素 は一通り楽しめる設定にしました」とコース を作成した猿川仁氏。今まで培ってきたテ クニックを雪という特殊な路面でどう フィードバックできるかが勝負の分かれ目 となったようだ。 今回、ATクラスで優勝した高田克己選 手は、昨年のこのスノーイベントでオート 新千歳モーターランドは人工降雪機を持つため、しっかりと圧雪されたフラットなスノーコースが用意された。当日は オートテストをお試し体験できるコーナーも設けられ、イベントを訪れた人々もスノーオートテストにチャレンジしてい た(写真左)。グラベル版のオートテストはオーオトパーク今庄の駐車場で開催された。砂利が敷かれたコースは、本 コースよりもμが低いため、参加者達は『滑るオートテスト』を存分に楽しんだ(写真右)。 62
3月1日、福井県のオートパーク今庄で行 われた。昨年12月に続いての開催。前回
今庄のHPでコースの写真 を見て、こういう所が走れ るんなら、と興味を持ちま した」と話してくれたのは 現行のスバルWRXで参加 した三中淳史選手だ。 残念ながら今回は前日の 雨で当初予定されていた本 コースの路面が悪化したため、急遽、全日 本ダートラの際にパドックとして使われる 砂利の広場がコースとなったが、「正直、サ イズ的には自分のクルマにはツラいコース でしたが、2本目は楽しく走れました」と振 り返った。「自分のクルマには色んな機能が ついてますけど、試す場がないんですよね。 実は氷上トライアルも申し込んでたんです けど、雪不足で中止になってしまって。こ
シリーズを追う山口勇太選手(写真右)は会 社の同僚の青塚翔太選手を誘って参加。「ス ノーは初です。雪独特の滑り方があって難し かったですね」(山口選手)。「融けた路面が難 しかったです」(青塚選手)。
ATクラス優勝の高田克己選手はオートテス ト歴1年。「皆さんが踏んで行った所も、自分 は敢えてアクセルを緩めて抑えました。でも ブレーキをきっかけに向き変えるのはまだま だ下手と痛感しましたね」。
藤井陽大選手は信州大学自動車部に所属。 「野沢で先輩の競技車の横に乗ってダートラや りたくなったので、Bライ取るならならここで取 ろうと(笑)。グラベルは初めて走りましたが、ま だまだ下手ですね」。
JMRC北海道オートテストシリーズ第1戦 ウインターオートテスト2020 開催日:2月9日 主催:GRG SAD MSC オートテストinオートパーク今庄(ダート版) 開催日:3月1日 主催:URARA
三中淳史選手は、オートテスト初参加。「皆さん の走りを見たら、こなれた感じなので、途中で帰 りたくなりましたが(笑)、2本めは楽しく走れま した。砂利を走るのは面白いですね。次は滑ら せて走りたいですね」。
昨年のチャンプ、大貝進一選手は今回も貫禄 勝ち。「オートテストはただでさえ堪(こらえ る)える競技なのにスノーはさらに堪えるか ら難しい(笑)。でもMINIのようなクルマでも 勝てる所が気に入ってます」。
トの参加者達から、自分も走りたいという 声が結構、返ってきたんです。色んな路面 を走りたいという声を今後何らかの形で繋 げていければと思っています」と低μ路オー トテストの可能性を感じている。 舗装のオートテストも十分に『非日常』を 体験させてくれるのは事実。しかし低μ路 という普段は走れない路面の要素が加わる オートテストは、『非日常』プラスアルファ 競技参加用にストーリアを購入した三浦貴彦 選手。「今日は我慢が大事でストレス溜まりま したけど、グラベルでやってくれたらまた出ま すよ。バックが下手なんで今年はジムカーナも やってみます(笑)」。
スタート直後に360度ターンをクリアし、スラロー ムを経て車庫入れと、ジムカーナの要素を入れつ つ、オートテストの定番もしっかり盛り込まれた、 息つく暇のないスリリングなコースが用意された。 63
ういう場所があると助かります」と三中選手 は話した。 スノーオートテストをシリーズに組み込 んだJMRC北海道ジムカーナ・オートテス ト部会長の石川和男氏は「実は昨年、オー トスポーツランドスナガワで行われた JMRCオールスターダートラで地区対抗の グラベルオートテストをやった時に、その 模様をSNSで上げたら、道内のオートテス の楽しさをもたらしてくれるか もしれない。そうした期待感に 応えるオートテストをどう作っ ていけるかは、先人の課題では あるのだが、そこにチャレンジ しようという人たちは確実に増 えている。このふたつのイベン トは、そんな実感をたしかなも のにしてくれたことは事実だ。 今回も軽トラが大人気でトリプルエントリー 等で参加者は楽しんだが、マイカーでチャレ ンジする人も。急遽変更となった浮砂利とい う超スリッパリーな路面も、かえってクルマと 格闘する楽しさをもたらしてくれたようだ。
MRC中部ジムカーナ部会で は、モータースポーツ未経験者 や初心者を対象としたジムカー ナレッスンを開催しており、ジムカーナ部 会のレッスン担当委員の前島孝光選手らが 中心となって、近年では中部エリアにある 複数のコースを巡るツアー形式で行われて いる。 2019年は富山県のイオックスアローザ スポーツランドや滋賀県の奥伊吹モーター パーク、愛知県のモーターランド三河AB コース及びCコースで開催され、2019シー ズン最後のレッスンとして、12月21日にキ ョウセイドライバーランドで開催された。 過去最多となる47名の参加者を集めた 今回のレッスンだが、参加者は競技未経験 者やジムカーナ初心者及び中級者、そして オートテストをメインに参加する選手と 様々。また、参加者の動機も、サイドター ンなどの競技走行ならではのテクニックを 試してみたい人や、さらなるステップアッ プを図りたいジムカーナドライバーなどな ど千差万別だった。 こうした様々なニーズに応えるため、前 島選手を始めとしたレッスン担当者らは「こ のレッスンでは参加者3名に講師1名とい う少数精鋭のグループ講義を行うようにし ています。ですから、今回はジムカーナド ライバーなどに協力を得て16名の講師を用 J フォト/滝井宏之 レポート/山中知之、JAFスポーツ編集部 JMRC中部ジムカーナレッスンツアー2019 in キョウセイ 日程:2019年12月21日(土) 会場:キョウセイドライバーランド(愛知県岡崎市) 担当:JMRC中部ジムカーナ部会 中部のジムカーナ選手16名が講師として協力。 参加者3名に対して1名の講師が付いた。 ブリーフィングでは参加者に旗信号を説明。約 15名のオフィシャルが運営に臨んだ。 未経験者や初心者だけでなくエントリージム カーナに参戦する中級ドライバーも参戦。 JMRC中部のレッスンツアー2019年最後の舞 台は愛知県のキョウセイドライバーランド。 64
意しました」。 「その顔ぶれは全日本ジムカーナの現役選 手をはじめ、地区戦ドライバーや『G6ジム カーナ』を長く戦うベテランなどです。皆さ ん趣旨に賛同してくれて、ボランティアで 駆け付けてくれているんですよ」と語ってお り、JMRC中部のジムカーナ界総出でモー タースポーツ振興に繋げようとする気概が 感じられた。
また、今回は参加者の約1/3が女性選手 というのも特筆すべき点で、JAFウィメン・ イン・モータースポーツ作業部会からも幟 旗が貸与されている。その立役者となった 河合豊美選手によれば、オートテストなど で女性参加者に声を掛けたり、女性ジムカ ーナドライバーに興味がありそうな女性の 参加を促してもらうなどして、このレッス ンへの参加を募ったそうだ。
また「以前に比べてJAFカップジムカー ナのレディスクラスが成立するか分からな いほど、女性参加者は少なくなっています し、2020年のJAFカップジムカーナは中部 で開催されるので、そこでの一助になれば と思って……」ということで、少しでもジム カーナの楽しさを知ってもらいたいという 思いが多分に反映されたエントリーリスト となっていた。 レッスンでは、自動車教習所のレイアウ トを持つキョウセイドライバーランドに2 種類のジムカーナコースが設定され、参加
大薮育子選手 BP5P Mazda3 新車のMazda3をいきなりジムカーナコースに持 ち込んだのは大薮選手。「元々クルマに乗るのが
者は2種類のコースを代わる代わる走るこ とができた。広大な敷地をフル活用したレ イアウトで、パイロンスラロームや8の字 ターン、1本パイロンまたは3本パイロン のフルターンに加えて、高速セクショ
ても、携帯端末からのアクセスで自分の走 行タイムを知ることが可能だった。 担当講師は、菅野秀昭選手を始め、佐野 今回のように「少数精鋭」で「個別指導」してく れるジムカーナ練習会は全国でも希少だ。 外周の高速区間ではアクセル全開やフルブ レーキングなどを試せるようになっていた。 講師はコース外から走行を観察。走り終えた 参加者に良かった点や課題点等を提起した。 「自分たちの手で何とかジムカーナを振興させ る策を打ちたかった」と語る前島孝光選手。 走行は日没間際まで続き、視認用のイルミネー ションが設置される用意周到ぶりだった。
好きだったんです。それで『入門者向けのモー タースポーツでオートテストというものがある からそれに参加してみれば』とお師匠様に勧め られて、2019年から初めて参加しました。今回 はモータースポーツのガチ初心者でも大丈夫だと 聞いて参加しましたけど、本格的な人も多くてビック リです(笑)。クルマが納車されてまだ3週間なので、 最後まで壊さずに走り切ることが目標です」。 SW20 MR2 ”頭文字D”の影響で小学生の頃からクルマ好きという遠山選手。「高 校生のころに友達と一緒にミニサーキットに走りを見に行ってか ら自分も走りたいなぁと思い始めて、現在はサーキットを走っ ています。ジムカーナを走るのは初めてですが、道が覚 えられないですね(笑)。今日はみんなでワイワイ言 いながら走っていますし、色々なクルマを見られる のも楽しいです。ジムカーナはステアリングを多 く回すので、今日は練習になったと思います」。 平野雅大選手 SE3P RX-8 愛知工業大学の自動車部の部長を務め、30名を超 す部員を束ねる平野選手。今回は自分のRX -8で 参加した。「今日の課題はサイドターンなんですが、 いつもは部車のシビックで走っているので難 しいです。でも、いずれはこれでモーター スポーツをやりたいので、頑張ります。ラ イン取りははかなり教えてもらったので、 コツを掴みかけていると思うのですが、サ イドは減速でアンダーを出してしまい上手 く制御できてないですね」とコメントを残 すと、すぐにコースへとクルマを動かした。 パイロンスラロームやフルターンなど、部分練習に集中できるコース構 成となっていた。 65
ンも設けられ、両方を走るこ とでバランス良く様々なシチ ュエーションを体験できるよ うになっていた。 参加者3名に対して1名の 講師が受け持ち、慣熟歩行か らフルサポートする方法が採 られた。講師が希望に応じて 参加者の車両をドライブした り、走行後すぐに講師がアド バイスをしてくれるなど至れ り尽くせり。走行タイムもすぐさまWEBサ イトにアップされるようになっており、会 場内でアナウンスされたタイムを聞き逃し
があって、勉強になるなぁという感じで すね。講師の方に密にコミュニケーショ ンをとっていただけるので本当にありが たいです」。そして、モータースポーツ歴 はまだ約1年の兼松選手。18年に開催さ れたL1ラリーが初チャレンジだ。それ以 降、ラリーを中心に活動してきたそうだ。 「10歳代のころにお兄ちゃんが『MTの免 許をとったら(お兄ちゃんが乗っていた) クルマをくれる』と言うので、そのDC2 インテグラをもらってからドンドンとハ マりました。今回はラリーのスキルアッ プも兼ねて参加です。講師が付いてくれ るので、一本一本に課題とかを持って走 ることができました。メチャクチャいい 講習会ですよ!」。
良選手、大前尚史選手、石原裕也選手、磯 村良二選手、柏木良文選手、上本昌彦選 手、森嶋昭時選手、加田充選手、小澤忠司 選手、妖怪J清本選手、前島孝光選手らと 光之選手、佐藤巧選 手、望月健太郎選手、 下原幸登選手、緒方和 いうことで、レジェンド級のドライバーや 全日本選手権及び地方選手権チャンピオン などなど、錚々たる面々が協力していた。 全日本ジムカーナ選手権では4度のタイ トルを獲得している森嶋選手は、レッスン の講師として2度目の登場となった。 「ジムカーナをやってみたいけど、敷居が 高そうとか思っている方とかに、実際に体 験して知ってもらうのにはすごく良いイベ ントだと思います」と話しつつ、「ジムカー ナ経験のある僕たちが走ることで『それを見 て走りたいと思う人もいるはず』と言われた ことがあるんです。競技会本番の走りも大 事ですが、こうした機会は大切です。これ からも関わり続けようと思っています」と語 ってくれた。 今回のレッスンは午後からの開催だった が、多い人では15本以上も走り込むことが できたようた。通常の練習会やフリー走行 に単身で参加すると相対的な評価が得られ にくく、自分の成長や課題は理解しにくい ものだが、現役選手がしっかりと評価をし てくれるこのレッスンは、初心者ならずとも 得るものが大きい機会となったに違いない。 斉藤怜央選手/兼松由奈選手 NF2EKアバルト124スパイダー 斉藤選手は現在社会人2年目でモーター スポーツ歴は大学の自動車部からとのこ と。今回はアバルト124スパイダーでダ ブルエントリー。「サーキット走行や趣味 でエビスの耐久レースに出ています。FR で過給器付きのクルマでジムカーナは 今日が初めてなので、今日は楽しいです ね。これまでとは違った難しさと面白さ
山田好子選手 ZN6
すごくいいですね。自分はモータースポー ツを始めようと思った時にどうしたらいい のかわからなかったので、そういう方々に もお勧めのイベントだと思います。(自分 の周りにも)ジムカーナをやりたいという 人がいたら、連れてきたいです」。 今回参加した多くの女性ドライバーを東奔西 走・手弁当で声がけしたのは河合豊美選手。 ドラポジの決め方やサイドブレーキの扱い 方など、あらゆる気付きがあったはずだ。 未経験の女性には、外気で弱ったお肌のケア方法に至るまで、詳細な参戦 ガイドを配布。 66
86 2020年からジムカーナに参戦するために 今回持ち込んできた86を購入したと話し てくれた山田選手。「今回のイベントは初 心者の方々にも丁寧に教えてもらえるので
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2020 SPRING 254 円+税
R S P O R T 第S 54巻 第 2 号 2020 年 5 月 1 日発行(年 4 2 、 5 、 8 、 11 1 日発行) 発行人 西岡敏明 03 ( 5470 ) 1711 (代) 一般社団法人 日本自動車連盟 東京都港区芝大門 1 1 番 30号 0570 ( 00) 2811 (総合案内サービスセンター) 発行所 東京都港区芝大門 1 9 番 9 号 ㈱ J A F メディアワークス