患者用 ハンドブック

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初めて診断を受けた方のための

患者用 ハンドブック

多発性骨髄腫 | 骨髄のがん 国際骨髄腫財団発行
2023年2月版 | 医師Brian G.M. Durie作成

1990年に設立されたInternational Myeloma Foundation(IMF、国際骨髄腫

財団)は、骨髄腫に特化した最初で最大の組織です。国際骨髄腫財団(IMF) は140 か国から52 万 5 千人を超える会員を擁しています。国際骨髄腫財団 (IMF)は骨髄腫の患者さんの生活の質を向上させることに専念し、研究、 教育、支援、アドボカシーの4つの基本的原則を通じて 予防と治療に向け て取り組んでいます。

研究 国際骨髄腫財団( IMF )は骨髄腫の治療法を見つけることに専念しており、 これを実現するためにさまざまな取り組みを行っています。International Myeloma

Working Group

(国際骨髄腫ワーキンググループ)は、1995 年に設立された国際骨髄 腫財団(IMF)の科学諮問委員会から誕生した最も権威ある組織で、300名近くの骨髄 腫研究者が所属し、世界中で遵守される批判的に評価されたコンセンサスガイドライ ンを提供しながら、患者さんの転帰を改善するための共同研究を行っています。Black Swan Research Initiative®(ブラックスワンリサーチイニシアチブR)は、長期的な寛解か ら治癒までの橋渡しをしています。毎年恒例のBrian D. Novis(ブライアンD.ノビス)研 究助成プログラムは、若手およびシニア研究員による最も有望なプロジェクトを支援 しています。主要な骨髄腫治療センターの看護師で構成される 看護師会執行部は、 骨髄腫の患者さんの看護ケアに関する推奨事項を作成しています。

教育 国際骨髄腫財団(IMF)のウェビナー、セミナー、そしてワークショップでは、一流 の骨髄腫専門家や臨床医が発表する最新情報が、患者さんとそのご家族に直接提供 されます。患者さん、介護者の方、医療専門職向けの100冊を超える出版物のライブラ リがあります。国際骨髄腫財団(IMF)の出版物は常に無料で、英語で利用でき、他の 言語も選択できます。

支援 国際骨髄腫財団(IMF)InfoLine(インフォライン)は骨髄腫関連の質問や懸念に 電話とメールで対応し、最も正確な情報を思いやりのある方法で提供します。また、骨 髄腫支援グループのネットワークを維持しており、地域社会でこれらのグループを率 いる何百人もの献身的な患者さん、介護者の方、ボランティア看護師のトレーニング を行っています。

アドボカシー 骨髄腫コミュニティにとって重要な問題について毎年ポジティブな 影響を与える何千人もの個人に力を与えています。米国では、連邦レベルと州レベル の両方で骨髄腫コミュニティの利益を代表する連合を主導しています。米国外では、 国際骨髄腫財団(IMF)のグローバル骨髄腫活動ネットワークが、患者さんが治療を受 けられるよう支援しています。

国際骨髄腫財団(IMF)が予防と治療に向けて取り組みながら、 骨髄腫患者さんの生活の質の向上を支援している方法についての 詳細をご覧ください。

1-818-487-7455またはまでお電話いただく か、myeloma.orgをご覧ください。

目次 あなただけではありません 4 この小冊子で学べること 4 骨髄腫は十分治療可能な病気です 4 骨髄腫の前駆状態 5 骨髄腫に関する統計 5 骨髄腫の原因または誘因 6 正しい診断を受けましょう 7 骨髄腫の診断基準 9 骨髄腫の病期分類 11 本当に必要な検査 13 ベースライン検査 14 診断時に考えられる緊急の問題 16 骨髄腫の種類 17 骨髄における骨髄腫の影響 19 骨髄の外側における骨髄腫の影響 20 新たに診断された骨髄腫の治療 20 自家幹細胞移植 23 治療レジメンの選択 24 維持療法の有無 25 臨床試験 25 支持療法 25 医療チーム 28 骨髄腫の患者さんと新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 28 最後に 29 用語と定義 29

あなただけではありません

国際骨髄腫財団がお手伝いします。国際骨髄腫財団( IMF )は、 多発性骨髄腫(以下、単に「骨髄腫」と呼びます)の患者さんとその介護者 の方、ご友人、ご家族への情報提供と支援に努めています。ウェブサイト myeloma.org、国際骨髄腫財団(IMF

)インフォライン

、セミナー、ウェビナー ワークショップ、その他のプログラムやサービスで利用できる幅広いリソー スを通じてこれを実現しています。

骨髄腫は、診断時にほとんどの患者さんが知らないがんです。ご自身の医 療に積極的に関わり、医師とともに治療について適切な決定を行うため に、骨髄腫とその治療の選択肢についてできる限り多くのことを学ぶこと は重要であり、役に立ちます。この冊子の情報は、医療チームとの話し合い に役立ちます。

この小冊子で学べること

国際骨髄腫財団(IMF)の新たに診断された方のための患者ハンドブック は、骨髄腫をより深く理解するのに役立ちます。太字の青で書かれた言 葉の説明は、この小冊子の最後にある「用語と定義」セクションにありま す。骨髄腫関連の完全版である国際骨髄腫財団(IMF)の骨髄腫用語集は glossary.myeloma.orgにあります。

この小冊子を電子書籍版でお読みの場合は、水色のハイパーリンクから対 応するリソースにアクセスできます。国際骨髄腫財団(IMF)の出版物はすべ て無料で、publications.myeloma.orgからダウンロードしたり、印刷版をリ クエストしたりすることができます。

骨髄腫は十分治療可能な病気です

健康な形質細胞は、免疫系の重要な部分です。形質細胞は、骨髄中の白血 球(WBC)の一種で、免疫グロブリン(Ig)とも呼ばれる抗体を作る役割を 担っています。骨髄腫細胞は悪性の形質細胞で、機能する抗体を作らず、代 わりに異常な

単クローン性蛋白(骨髄腫蛋白、M蛋白)を作ります。

骨髄腫は、体内の複数の領域に発生することが多いため、「多発性」と呼ば れます。骨髄腫が「多発性」でない唯一の場合は、形質細胞腫のまれなケー スです。

骨髄腫は、ほとんどの場合、脊椎、頭蓋骨、骨盤、胸郭、肩、腰の骨の中の骨 髄で増殖します。通常、手、足、前腕、下腿の骨は影響を受けません。骨髄腫 は、腫瘍や骨欠損部位として現れることがあります。いずれの場合も、これ は病変部と呼ばれます。骨髄中に骨髄腫細胞があると、骨髄微小環境の内 外で他の医学的問題が生じることがあります。

4 1-818-487-7455 • 1-800-452-CURE

非常に効果的な多くの治療 法が、骨髄腫の治療法として、

United States Food and Drug Administration( FDA 、米国食品 医薬品局)、European Medicines Agency(EMA、欧州医薬品庁)、お

よびその他の規制当局によって 承認されています。現在、世界中

で多数の臨床試験が行われており、さらに有望な治療法が選択肢として増 え続けています。

骨髄腫の患者さんの多くは、診断後何年も、場合によっては数十年も充実 した生産的な生活を送っています。骨髄腫の患者さんの生存率と生活の質 は着実に改善しているのです。骨髄腫について学び、骨髄腫がどのように治 療されるかを理解すると、患者さんとその愛する人の不安を減らし、コント ロールの感覚が得られ、診断を受け入れることが容易になります。

骨髄腫の前駆状態

骨髄腫の初期段階は、意義不明の単クローン性ガンマグロブリン 血症(MGUS)と呼ばれる良性の状態です。MGUSの患者さんの状態に変化 がないか、注意深く観察する必要があります。M蛋白濃度が安定しており、他 に健康上の変化がない場合は、血液専門医や腫瘍専門医に診てもらう間 隔を延長できます。

すべての骨髄腫の患者さんは、骨髄腫に進行する前にMGUS を患っていま すが、最終的に骨髄腫を発症するのは、MGUSと診断された人の20%のみと なっています。MGUSから骨髄腫に進行するリスクは年間1%です。

MGUSと活動性骨髄腫の間の段階は、くすぶり型多発性骨髄腫(SMM)と 呼ばれます。MGUSよりも高値の M 蛋白が特徴ですが、活動性骨髄腫の兆 候はありません。標準リスクSMM の患者さんでは、活動性骨髄腫への進 行リスクは、最初の 5 年間が年 10% 、次の 5 年間は年 3% 、次の 10 年間は年 1% ~ 2%となっています。詳細については、国際骨髄腫財団(IMF)の出版物 「Understanding MGUS and Smoldering Multiple Myeloma(MGUSとくす ぶり型多発性骨髄腫の理解)」をお読みください。

骨髄腫に関する統計

National Cancer Institute(米国国立がん研究所)のSEER(観察、疫学、最終結 果)プログラムのデータによると、2022年の骨髄腫の新規症例数は約34,470 人で、これは新規がん症例全体の1.8%に相当します。また、利用可能な最新

5 myeloma.org
図1.骨髄中の骨髄腫細胞

のSEERデータによると、2019 年には米国で骨髄腫を患っている人が推定 159,787人いました。

2020年にジャーナルOncologistに発表されたように、骨髄腫の全世界での 発生率には大きな差があり、世界の多くの地域で過小評価され、最適な治 療が行われていないことを示しています。この記事は、世界中の骨髄腫の 患者さんの診断と生存率を向上させるための経済資源、医療へのアクセ スと質、患者教育の重要性を強く訴えています。

骨髄腫は65~74歳の人で最も頻繁に診断されますが、50歳未満の人でも

診断されています。40 歳未満の骨髄腫の患者さんは 5% ~ 10%しかいませ ん。小児の骨髄腫は非常にまれです。

男性は女性よりも骨髄腫を発症する可能性が高くなっています。この病気 はアフリカ系の人に2倍見られます。骨髄腫の発生率は、世界のいくつかの 地域、特にアジアで増加しているようです。

骨髄腫の診断の約 5% ~ 7% は、MGUS、SMM 、または骨髄腫と診断された 近親者がいる人で発生します。近親者にそのような診断を受けた人がい る場合は、この情報を医療記録に含めるようかかりつけ医に伝えてくださ い。逆に、ご自身がMGUS 、SMM 、または骨髄腫を患っている場合は、その 診断を近親者の病歴に含めるよう、その人のかかりつけ医に伝えてもらっ てください。

骨髄腫の原因または誘因

免疫系を妨げたり抑制したりするものへの曝露、または発がん性ウイルス

への感染はすべて、骨髄腫の原因または引き金として関係があるとされて います。確認されている有毒化学物質には次のものがあります。

¡ ベンゼン

¡ ダイオキシン類(枯れ葉剤に含まれるものなど)

¡ 農薬(枯れ葉剤や殺虫剤など)

¡ 溶剤

¡ 燃料

¡ エンジンの排気

¡ クリーニング製

骨髄腫の誘因となる可能性があるウイルスには、HIV(エイズウイルス)、

肝炎、一部のヘルペスウイルス、シミアンウイルス40(SV40 、1955 年から 1963 年に使用されたセービンポリオワクチン製剤中の汚染物質)などが あります。

6 1-818-487-7455 • 1-800-452-CURE

正しい診断を受けましょう

骨髄腫は個人差が大きい病気です。動きが遅い場合が多いです。しかし、非 常に攻撃的になることもあります。骨髄腫および形質細胞のその他の疾患 を専門とする熟練した血液・腫瘍専門医は、正確な診断を下し、個々の状況 に最適な治療アプローチを調整することができます。

地元の腫瘍専門医は、数人の骨髄腫の患者さんを診察することもあれば、 まったく診察しないこともあります。大規模な「手術症例の多い」治療セン ターや大規模な学術機関の骨髄腫専門医は、何百人もの骨髄腫の患者さ んを診察し、新薬や新しい併用療法の臨床試験を実施し、適切な決定を下 すために必要な専門知識を磨いています。経験豊富な骨髄腫専門医は、治 療関連の問題を予測し、それらを予防または軽減することができます。

1.国際骨髄腫ワーキンググループ(IMWG)診断基準

疾患 定義 意義不明の 単クローン

性ガンマグ

ロブリン血症

(MGUS)

すべての基準を満たすこと

1.血清M蛋白<3g/dL

2.骨髄中の単クローン性形質細胞<10% 3.CRABを認めないこと – C(高カルシウム血症)、R(腎障害)、A(貧血)、B (骨病変)

軽鎖 MGUS すべての基準を満たすこと

1.異常遊離軽鎖(FLC)比<0.26または>1.65

2. 局所性病変が関与した軽鎖値(比率> 1.65の患者さんではκ FLC が増加 し、比率<0.26の患者さんではλFLCが増加)

3.免疫固定における免疫グロブリン(Ig)重鎖の発現を認めないこと

4.CRABを認めないこと

5.骨髄中の単クローン性形質細胞<10%

6.尿Mプロテイン<500mg/24時間

SMM 両方の基準を満たすこと

1.血清 M 蛋白(IgGまたは IgA)≧ 3g/dL 、または尿 M 蛋白≧ 500mg/24 時間、骨 髄中の単クローン性形質細胞10%~60%

2.骨髄腫診断事象(MDE)またはアミロイドーシスを認めないこと

骨髄腫 両方の基準を満たすこと

1.骨髄中の単クローン性形質細胞≧ 10%、または生検により確定診断さ れた骨の形質細胞腫または髄外性形質細胞腫

2.以下の骨髄腫診断事象(MDE)が1つ以上認められること

¡ CRABを認める

¡ 骨髄中の単クローン性形質細胞≧60% ¡ 局所性病変が関与した/ 関与しない血清 FLC 比≧ 100(局所性病変が 関与したFLC値≧100mg/L、かつ尿中M蛋白値はUPEPで最低200mg/24時 間)

¡ MRI検査で1つ以上の局所性病変(最低5mm)

¡ 骨格X線写真、CT、またはPET-CTで1つ以上の溶骨性病変

以下を変更しました。Rajkumar SV, Dimopoulos MA, Palumbo A, et al. InternationalMyeloma WorkingGroupupdatedcriteriaforthediagnosisofmultiplemyeloma.Lancet Oncology 2014

7 myeloma.org

骨髄中で増加した骨髄 腫細胞による影響

CRAB 基準

表2.骨髄腫に関連した医学的な問題

原因 患者さんに及ぼす影響

C – 血中 カルシウム 濃度の上昇 損傷した骨から血流中へ のカルシウム放出

R – 腎障害– 腎障害

骨髄腫細胞により産生さ れた異常なM蛋白は、血流 中に放出され、尿中に排 泄され、腎臓損傷を引き 起こします。高カルシウム 血症、感染症、その他の因 子も腎臓損傷の原因とな り、重症度を決める要因と なります。

A – 貧血 骨髄中の赤血球産生細胞 の減少と活性低下

B – 骨損傷

• 椎骨の薄化 (骨粗しょう症)

または

• より重度の損 傷領域(溶骨性 病変という)、骨 折、または崩壊

他の臓器障害の 種類

骨髄腫細胞が破骨細胞を 活性化し、骨を破壊し、通 常は損傷した骨を修復す る骨芽細胞を抑制します。

• 精神錯乱

• 脱水

• 便秘

• 倦怠感

• 脱力感

• 腎障害

• 血流障害

• 倦怠感

• 精神錯乱

• 倦怠感

• 脱力感

• 骨の痛み

• 骨折や骨の崩壊

• 骨腫脹

• 神経や脊髄の損傷

CRAB の症候以外の骨髄腫 による局所的または全身 的な影響

• ニューロパチー

• 反復性感染

• 出血障害

• その他の個々の障害

免疫機能の異常 骨髄腫細胞は、感染に対 する抗体を産生する正常 形質細胞の数と活性を抑 制します。

• 感染症への感受性

• 感染症からの回復の 遅れ

8 1-818-487-7455 • 1-800-452-CURE

近くに骨髄腫の専門医がいない場合でも、直接または遠隔で専門医からセ カンドオピニオンを受けるようお勧めします。また、かかりつけの医師は、症 例について話し合うために骨髄腫の専門医との診察をスケジュールし、専 門医と協力して治療を行うこともできます。

2016年に発表された大規模研究では、小規模な医療機関よりも「手術症例の 多い」施設で治療を受けた患者さんの全生存率(OS)が高いことが示されてい ます。このような理由で、骨髄腫の専門医に相談することをお勧めします。

骨髄腫の診断基準

「CRAB基準」は骨髄腫によって最もよく引き起こされる次のような医学的問 題を示しています。

¡ 血液中のカルシウム(Calcium)濃度の上昇

¡ 腎障害(医学用語では腎(Renal)障害)

¡ 血球数の低下(特に赤血球(RBC)数の低下、または貧血(Anemia)

¡ 骨(Bone)損傷

長年にわたり、CRAB 基準が活 動性骨髄腫の診断の唯一の 根拠でした。骨髄腫がすでに 「末端臓器障害」を引き起こ していることを示すこれらの 兆候が 1 つでもなければ、患 者さんは医師によって観察さ れるだけで、治療は受けられ ませんでした。

過去数年間で、骨髄腫に対す るより効果的な治療法と早期 疾患を評価するより良い方法 により、治療パラダイムは大き く変化しました。

国際骨髄腫財団( IMF )の研

究部門である International

Myeloma Working Group

( IMWG 、国際骨髄腫ワー

キンググループ)のメンバー は、無症候性 SMM の患者 さんを研究し、末端臓器障

害が 18 か月~ 2 年以内に起

図2.骨髄腫の骨と健康な骨の比較

9 myeloma.org
- + 骨髄腫 細胞 溶骨性 病変 健康な骨 多発性骨髄腫
© 2017 Slaybaugh Studios

病期Ⅱ

(細胞量が中程度)

病期Ⅲ (細胞量が多い)

3.骨髄腫と早期骨髄腫の定義

CRAB(高カルシウム血症、腎障害、貧血、骨病変)基準

骨髄腫診断事象(MDE)

 骨髄形質細胞≧60%

 単クローン性軽鎖と正常軽鎖の比≧100

 MRIでの局所性病変>1

スペイン基準、 Mayo Clinic基準

MM:多発性骨髄腫 早期活動性骨髄腫:超高リスクのくすぶり型骨髄腫 HR SMM: 高リスクのくすぶり型多発性骨髄腫 LR SMM: 低リスクのくすぶり型多発性骨髄腫 MGUS:意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症

3.デューリー・サーモンの病期分類(DSS)

以下のすべてに該当すること

• ヘモグロビン値>10g/dL

• 血清カルシウム値が正常または<

10.5mg/dL

• 骨格X線で正常な骨格構造(スケール0)、 または孤立性骨形質細胞腫のみを有す ること

• M蛋白産生率が低値、IgG値<5g/dL、IgA値

<3g/dL

• 尿中軽鎖M蛋白(電気泳動)<4g/24時間

病期Ⅰにも病期Ⅲにも該当しないこと

以下のうち1つ以上に該当すること

• ヘモグロビン値<8.5g/dL

• 血清カルシウム値>12mg/dL

• 進行した溶骨性病変(スケール3) を有すること

• M蛋白産生率が高値、IgG値>7g/dL、

IgA値>5g/dL

• 尿中軽鎖M蛋白>12g/24時間

補助分類

(AまたはB)

億個/m2

億個~1兆2,000億個/m2

• A:腎機能が比較的正常(血清クレアチニン値<2.0mg/dL)

• B:腎機能が異常(血清クレアチニン値≧2.0mg/dL)

10 1-818-487-7455 • 1-800-452-CURE
MM HR SMM LR SMM 早期 活動性 骨髄腫 MGUS 図
病期Ⅰ
病期 基準 測定された骨 髄腫細胞量 (全身の骨髄腫細胞)
(細胞量が少ない)
6,000
6,000
>1兆2,000億個/m2

こることを予測できる生物学的マーカーを発見しました。この研究が完 了して発表された後、国際骨髄腫ワーキンググループ(IMWG)は 3 つの 骨髄腫診断事象(MDE)を含む骨髄腫の診断に関する新しいガイドライン を作成しました。次のMDEは、それぞれ独立して治療の必要性を示します。

1. 骨髄中の形質細胞≧60%

2.局所性病変が関与しない遊離軽鎖に対する局所性病変が関与した 遊離軽鎖の比率≧ 100(局所性病変が関与しない軽鎖は骨髄腫細胞 によって作られない軽鎖)

3.磁気共鳴画像法(MRI)検査で複数の局所性病変が認められること

これら3つのMDE は、新たに診断された患者さんの骨髄腫精密検査の一 部である検査を使用して特定できます。

¡ 骨髄生検

¡ Freelite®(フリーライトR)検査(

¡ MRI検査

骨髄腫の病期分類

骨髄腫と診断される場合、病気の段階は患さんごとに異なります。

1975 年、骨髄腫の患者さんを分類するためにDurie-Salmon(デューリー・ サーモン)の病期分類(DSS)が導入されました。DSSにより、骨髄腫の量と それに起因する損傷との相関関係が実証されました。M 蛋白を多く産生

する一部の患者さんでは、骨髄腫細胞の数が非常に少ないことがありま す。逆に、M 蛋白の産生が低い患者さんでは、骨髄腫細胞の数が多くなる ことがあります。

2005 年、国際骨髄腫ワーキンググループ(IMWG)は予後因子と予測生存 率に基づいた国際病期分類(ISS)を開発しました。ISSは、進行性骨髄腫を 最も予測する疾患挙動を評価します。ISSは、進行性の疾患を予測する4つ の高度なマーカーに基づいています。

1.血清β2ミクログロブリン(S β2M)

2.血清アルブミン(S ALB)

3. C反応性蛋白(CRP)

4.血清乳酸脱水素酵素(LDH)

2015年に国際骨髄腫ワーキンググループ(IMWG)は、ISSと染色体異常の2 つの検査を組み合わせた改訂国際病期分類(R-ISS)を発表しました。診断 時に採取した骨髄サンプルに対して、次の2つの染色体研究を実施するよ う強くお勧めします。

¡ 細胞遺伝学的検査(核型分析)

¡ 蛍光 insitu ハイブリダイゼーション(FISH)

11 myeloma.org
血清遊離軽鎖アッセイ)
12 1-818-487-7455 • 1-800-452-CURE
図5.骨髄腫細胞の蛍光insituハイブリダイゼーション(FISH) 図4.ヒト染色体核型分析 図6.高リスク骨髄腫における染色体異常 欠失 転座

本当に必要な検査

臨床血液検査では、血液中の蛋白であるS β2M、S ALB、CRP、LDHを評価で きます。

細胞遺伝学的検査は、分裂中の骨髄腫細胞における染色体の臨床検査評 価です。骨髄腫細胞の活発な増殖率は、通常は非常に低いです。増殖して いる細胞は3%未満、多くの場合1%未満です。そのため、染色体の変化があ る場合は、不完全な評価となります。それにもかかわらず異常が認められ た場合、それは実際に増殖している少数の細胞に現れるため、それらは重 要です。

FISHは、骨髄サンプル中のすべての骨髄腫細胞の染色体の評価です。FISH検 査では、転座、欠損部分、余分な部分、染色体の喪失の存在を検出すること ができます。FISHは、骨髄腫細胞が増殖しているかどうかに関係なく変化を 検出できます。蛍光を発する(光る)特殊な遺伝子プローブが骨髄サンプル に添加されます。これらのプローブは細胞分裂後の遺伝物質を追跡し、骨 髄腫で発生することが知られている染色体異常の有無を知らせます。

各染色体には異なる色のプローブが与えられます。たとえば、 4番染色体の 遺伝物質が誤って14 番染色体に接続されている場合、これらの染色体の 遺伝物質の異なる色の点が一緒に現れ、「4番染色体と14番染色体の間の 遺伝物質の転座」を意味するt(4;14)という高リスクの異常を示します。高リ スクと考えられる他の異常としては、t(14;16)、t(14;20)、「17番染色体の短腕

表4.骨髄腫のリスク因子と改訂国際病期分類(R-ISS分類) 予後因子

病期 Ⅰ 血清β2ミクログロブリン<3.5mg/L、血清アルブミン≧3.5g/dL Ⅱ ISS病期ⅠかⅢのいずれかでない

蛍光in situハイ ブリダイゼー

FISH

(CA)

(LDH)

Ⅲ 血清β2ミクログロブリン≧5.5mg/L

高リスク 以下のうち1つ以上を有すること。染色体17p欠失(del(17p))、 t(4;14)、t(14;16)

標準的なリスク 高リスクではないCA

正常値 血清LDH値<正常値上限

高値 血清LDH>正常値上限

多発性骨髄腫の重症度分類の新モデル

R-ISS病期 Ⅰ ISS病期Ⅰおよび標準リスクのFISHによるCAおよびLDH正常値

Ⅱ R-ISS病期ⅠかⅢのいずれかでない

Ⅲ ISS病期Ⅲ、および高リスクのFISHによるCAまたはLDH高値の いずれか

CA:染色体異常、FISH:蛍光in situハイブリダイゼーション、 ISS:国際病期分類、LDH:乳酸脱水素酵素、R-ISS:改訂国際病期分類

13 myeloma.org
基準
ISS
ション(
)に よる染色体異常
乳酸脱水素酵素

(上部)の欠失」を表すdel(17p) 、および「

を表す+1qがあります。

染色体異常の存在は一般に予後不良を示唆しますが、これは傾向であり、 予後が保証されるものではありません。高リスクの特徴のいずれかを有す る患者さんの約 3 分の1 は、導入療法とそれに続く自家幹細胞移植(ASCT)

など現在の標準治療の選択肢で良好に経過し、通常の転帰をたどること ができます。

ベースライン検査 骨髄生検:

これは、骨髄中の骨髄腫細胞の 存在と割合の両方を判定し、予 後を評価するための最も重要な 検査です。ステージ I の骨髄腫ま

たは孤立性形質細胞腫の場合、 腫瘍塊の直接生検が必要になる 場合があります。細胞遺伝学的分 析によって、染色体の特徴の良し

悪しがわかりますが、この種の検 査には新鮮な骨髄サンプルが必 要です。

血液検査:

生検部位

骨 皮膚

Studios

¡ 全血球計算(CBC)は、貧血、白血球数の低下、血小板数の低下の有無と 重症度を評価するために使用されます。

¡ 生化学検査は、腎機能(クレアチニンとBUN)、肝機能、アルブミン、カル シウム濃度、LDHを評価するために使用されます。

表5.予後因子

検査 意義

血清β2ミクログロブリン(S β2M)

血清アルブミン(S ALB)

C反応性蛋白(CRP)

乳酸脱水素酵素(LDH)

骨髄細胞遺伝学的検査と蛍光in situ

ハイブリダイゼーション( FISH )検査

における染色体異常

数値が高いほど病期が進行

数値が低いほど病期が進行

活動性疾患で増加

活動性疾患で増加

いくつかの染色体欠失や転座が高リスクで あると見なされ、寛解期間が短くなることに 関係

14 1-818-487-7455 • 1-800-452-CURE
1 番染色体の長腕(下部)の増加」
骨髄 © 2015 Slaybaugh
図7.骨髄生検

¡ 血清蛋白電気泳動(SPEP)は、骨 髄腫の重鎖蛋白の量を評価し、M スパイクの存在を示します。

¡ 免疫固定法(IFE)は、骨髄腫蛋白 の重鎖型(G、A、D、 E、M)および軽 鎖型(カッパ[ κ ]、ラムダ[ λ ])を示し ます。

¡ Freelite アッセイでは、SPEP また は UPEP の異常が検出されなかっ

た場合、遊離κ軽鎖または遊離λ 軽鎖の量、およびκ / λ比を測定し ます。

¡ Hevylite®(ヘビーライト)アッセイ では、完全型免疫グロブリンの正 常濃度および異常濃度を測定し ます。

尿検査:

尿蛋白電気泳動(UPEP)は、尿中のM 蛋白量を示します。免疫固定により、 M蛋白の種類がわかります。

骨検査:

以下を使用して、骨損傷の有無、重症 度、位置を評価できます。

¡ X 線検査では、大部分の患者さん で特徴的な骨髄腫の骨疾患が示

されますが、活動性骨髄腫の患者

8.血清蛋白電気泳動(SPEP)の検

査結果

albumin

alpha-1 alpha-2 beta-1 beta-2 gamma

正常なSPEPの結果

albumin

alpha-1 alpha-2 beta-1 gamma

骨髄腫細胞がM蛋白を産生し、β2領域にMスパイ クを形成している異常な結果

骨髄腫細胞がM蛋白を産生し、γ領域にMスパイク を形成している異常な結果

さんの約25%でX線検査が陰性となることがあります。骨が関与してい る可能性を排除するには、全身 MRI 、全身低線量コンピュータ断層撮 影検査(CATまたはCT)、または陽電子放出断層撮影法(PET)-CTによ

るさらなる画像検査が必要です。骨髄腫の骨破壊、溶骨性病変、また は骨折や骨の崩壊に起因する骨損失(骨粗しょう症)または骨の薄化 (骨減少症)を示すには、一連の X 線を用いた骨髄腫の完全な骨格調 査が必要です。

¡ MRIでは、X線検査で骨損傷が示されない場合に、骨髄における骨髄腫 の存在と分布を明らかにすることができます。MRIでは、脊椎や脳など

15 myeloma.org
alpha-2 beta-1 beta-2 gamma
beta-2 albumin alpha-1
alpha-1 alpha-2 beta-1 gamma beta-2 albumin alpha-1 alpha-2
gamma
albumin
beta-1 beta-2

の特定の領域を詳細に示すことができます。MRIでは、神経や脊髄を圧 迫している可能性のある髄外疾患が明らかになることもあります。

¡ CT 検査では、体内の構造の3 次元画像を作成します。骨髄腫では、X 線 が陰性の場合、または特定の領域をより詳細に画像化するためにCT 検査を使用します。CT検査は、骨損傷や神経圧迫の小さな領域の検出 や詳細な評価に特に有用です。

¡ PET 検査は、より感度の高い全身検査の技術です。フルオロデオキシ グルコース( FDG )-PET または PET-CT の使用は、骨髄腫、特に 非分泌性骨髄腫の観察に有用です。CT は PET 陽性疾患の部位の評価 に使用されます。

¡ 骨密度検査は骨髄腫において、びまん性骨粗しょう症の重症度を評 価し、ビスホスホネート療法による連続的な改善を測定するのに有 用です。

¡ 核医学検査は骨髄腫には有用でないため、他の診断を除外しない限 り実施すべきではありません。

骨髄腫に使用される検査の詳細については、国際骨髄腫財団(IMF)の出 版物「Understanding Your Test Results(検査結果の理解)」をお読みくだ さい。

診断時に考えられる緊急の問題

椎骨 は骨髄腫の影響を受けることが多く、また脊髄が椎骨の中を通っ ているため、神経圧迫を引き起こす痛みを伴う椎骨骨折は珍しいことで はありません。運動神経の喪失により麻痺を生じることがあります。椎 骨の中で増殖する骨髄腫腫瘍も脊髄神経を圧迫することがあります。 骨のカルシウムが分解されると、血液中のカルシウム濃度が高くなる 高カルシウム血症を引き起こすことがあります。高カルシウム血症と血液 中の高濃度 M 蛋白は腎臓に深刻な影響を及ぼし、腎不全を引き起こすこ とがあります。

脊椎圧迫骨折、脊髄神経損傷、感染症、腎不全はすべて、骨髄腫の全身療 法を開始する前に注意が必要な緊急の医学的問題です。緊急の問題を治 療する際には、将来に向けてすべての治療選択肢が残されていることを 確認するために、骨髄腫の専門医に速やかに相談することをお勧めしま す。たとえば、神経組織を圧迫している形質細胞腫を縮小させるための放 射線療法は、放射線が骨髄に損傷を与え、その後の治療選択肢を制限す ることがあるため、外科的選択肢と慎重に比較検討する必要があります。

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骨髄腫の種類

骨髄腫にはさまざまなタイプとサブタイプがあり、それらは骨髄腫細胞に よって産生される免疫グロブリン蛋白の種類に基づいています。体内で異 なる機能を果たす正常な重鎖免疫グロブリンは、IgG、IgA、IgD、IgE、IgMの 5種類です。各患者の骨髄腫細胞は、これら5種類の免疫グロブリンのうち1 種類のみを産生します。

各免疫グロブリンは2本の重鎖と2本の軽鎖が結合したものです。軽鎖には κ軽鎖とλ軽鎖の2 種類があります。骨髄腫の分類は免疫固定法(IFE)で行 われます。

骨髄腫の患者さんの約65%は、κ軽鎖またはλ軽鎖のいずれかを有するIgG 骨髄腫を患っています。 2番目に一般的な種類はIgA骨髄腫で、これもκ軽鎖 またはλ軽鎖のいずれかを有します。IgD 骨髄腫、IgE 骨髄腫、IgM 骨髄腫は 非常にまれです。

骨髄腫の患者さんの約 3 分の 1 は、重鎖に結合した軽鎖の完全な分子の 組み合わせに加えて、遊離軽鎖を産生します。患者さんの約 15% ~ 20%で は、骨髄腫細胞は軽鎖のみを産生し、重鎖は産生しません。これはベンス・ ジョーンズ骨髄腫

であり、軽鎖を最初に検出して同定し、1848 年にその発

見を発表した英国の医師にちなんで命名されました。軽鎖単クローン性蛋 白は重鎖よりも小さくて軽いため、腎臓に血液を送る小さな毛細血管を通 過できます。血液を通って腎臓に到達する軽鎖は、腎臓の尿細管を閉塞す るまで蓄積され、腎機能の低下を引き起こすことがあります。

まれに、患者さんの約 1% ~ 2%でのみ、骨髄腫細胞がほとんど、またはまっ たく単クローン性蛋白を産生しないことがあります。これは非分泌性骨髄 腫と呼ばれます。Freelite検査では、これらの分泌量が非常に少ない患者さ んの約 70%の血液中の微量の軽鎖を検出できます。2015 年、メイヨークリ ニックは非分泌性骨髄腫の患者さん124 名を対象とした研究を発表し、非

分泌性骨髄腫の患者さんの生存率は分泌性骨髄腫の患者さんの生存率よ りも優れているようだと結論づけました。

図9.免疫グロブリンの構造

17 myeloma.org
IgM IgA IgG、IgE、IgD

表6.骨髄腫とその関連疾患の種類

疾患の種類 説明

骨髄腫: IgGκまたはλ IgAκまたはλ まれなサブタイプ:

IgD、 E、またはM

軽鎖のみ、またはベン

ス・ジョーンズ骨髄腫:

κ型またはλ型

非分泌性骨髄腫:

κ型またはλ型

IgM骨髄腫: κサブタイプまたはλサ

ブタイプ

アミロイドーシス:

アミロイド軽鎖( AL )型 または免疫グロブリン

軽鎖型

κサブタイプまたはλサ

ブタイプ

軽鎖沈着症(LCDD):

κサブタイプまたはλサ

ブタイプ

• 典型的な骨髄腫 – 患者さんの大半 SPEP(IgG)や定量的な免疫グロブリン(QIG)測定法(IgA/ IgD/IgE)を用い、血清中単クローン性蛋白を追跡するこ とにより観察します。IgA 骨髄腫の場合、QIG 測定法のほ うが信頼性が高くなることが多い。

• ベンス・ジョーンズ骨髄腫 – 患者さんの約15%~20% 尿蛋白電気泳動( UPEP )や血清遊離軽鎖測定法

(Freelite)を用い、尿中単クローン性軽鎖を追跡するこ とにより観察します。

• あまり一般的ではない骨髄腫 – 患者さんの1%~2% 血清遊離軽鎖アッセイ(Freelite)、または骨髄生検やPETCT検査を用いて観察します。

• IgM骨髄腫 – 非常にまれなサブタイプ

IgM産生は、通常、ワルデンストレームマクログロブリン 血症で認められます。この病気は、骨髄がんである骨 髄腫よりもリンパ腫に近いといえます。

• アミロイドーシス

軽鎖は、分解されたり尿中に排泄されたりするのでは なく、組織内に線状に沈着します(βプリーツ)。異なる 種類の蛋白の沈着を伴うアミロイドーシスにはさまざ まな種類があります。たとえば、アルツハイマー病は、 脳内に蛋白の沈着を伴います。

• 骨髄腫に関連するアミロイド 軽鎖は、皮膚、舌、心臓、腎臓、神経、肺、肝臓、腸 などの多くの組織に沈着することがあります。 組織は「コンゴレッド」染色で陽性に染まり、診断に用 いられます。質量分析や電子顕微鏡法による詳細な 検査が適切である場合や、そのような検査が必要にな る場合があります。

• LCDD

軽鎖は無秩序に架橋された形で沈着します。κまたは λの直接免疫染色法で陽性に染まります。コンゴレッド 染色は通常陰性です。多くの場合、腎臓、肺の内膜(胸 膜)、腹膜(腸の周囲)、眼球内など、組織沈着にはさま ざまなパターンがあります。

POEMS症候群:

通常は IgG または IgA λ (まれにκサブタイプ)

• POEMS症候群

多発性神経障害、臓器肥大症、内分泌障害、単クロー ン性ガンマグロブリン血症、および皮膚の変化を伴う 複雑な障害です。骨髄腫とは異なる診断と治療が行 われます。

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骨髄腫の種類を知ることの重要性

自分の骨髄腫の種類を知ることは、治療の過程で検査結果を理解し、追 跡するのに役立ちます。Freelite 検査は SPEPとともに、骨髄腫細胞が産生

する軽鎖 M 蛋白と重鎖 M 蛋白の濃度を観察するために使用されます。骨 髄腫細胞の産出量の測定は、間接的ではありますが、がんの量と活動性 を評価するのに効果的な方法です。骨髄腫細胞を直接観察する唯一の方 法は骨髄生検です。

治療に対する反応を評価し、寛解期の状態を把握するために、M 蛋白濃 度を観察する検査や、その他多くの検査が定期的に行われます。検査結 果を継続的に記録し、骨髄腫で使用される検査について深く理解して おくことを強くお勧めします。もう一度、国際骨髄腫財団(IMF)の出版物

「Understanding Your Test Results(検査結果の理解)」を読むことをお勧 めします。

さまざまな種類の骨髄腫の挙動

¡ IgG 骨髄腫は最も一般的な種類で、その挙動はよくあるCRABの特徴に 一致しています。

¡ IgA骨髄腫は骨の外側に腫瘍ができることがあります。

¡ IgD骨髄腫は形質細胞性白血病(PCL)を伴うことがあり、血液中に骨髄 腫細胞が耐量に循環することが特徴です。IgD骨髄腫は腎臓損傷を引き 起こすことでも知られています。

¡ 軽鎖骨髄腫は腎障害を引き起こす可能性が最も高く、腎臓や神経、ある いは他の臓器に軽鎖の沈着を起こす可能性が最も高い種類です。軽鎖 沈着の特徴に応じて、この状態はアミロイド軽鎖アミロイドーシス(AL アミロイドーシス)または軽鎖沈着症(LCDD)と呼ばれます。

形質細胞に関連する他の疾患としては、IgMに関連するワルデンストレー ムマクログロブリン血症(WM)やニューロパチー、臓器肥大、内分泌障 害、単クローン性蛋白、皮膚の変化を伴うまれな疾患であるPOEMS 症候 群があります。

骨髄における骨髄腫の影響

骨髄腫細胞は、多くの蛋白やその他の化学物質を骨髄の局所微小環境に 放出して血流に直接流入させます。すべての血球(白血球、赤血球、血小 板)は骨髄で作られます。骨髄腫が骨髄で増殖すると、血球の産生が減少 するなどの影響が生じます。赤血球またはヘモグロビンの濃度が低い貧 血は、骨髄腫の初期に見られる一般的な兆候です。

19 myeloma.org

健康な骨髄の細胞は、骨の破壊 と形成というダイナミックでバラ ンスの取れたプロセスで骨格を 維持します。骨髄中の骨髄腫細胞

は、骨を破壊する細胞(破骨細胞) を刺激し、新しい骨を形成する細

胞(骨芽細胞)を抑制します。その 結果、バランスが崩れ、骨の痛み、 骨折、血液中へのカルシウムの放 出が起こります。

骨髄の外側における骨髄

腫の影響

骨髄腫細胞が増殖して骨髄に蓄 積すると、M 蛋白が循環する血液

中に放出されます。M 蛋白は離れ

図10.骨形成の解剖学的構造

赤色骨髄を 含む海綿骨

破骨細胞 (骨を崩壊)

骨細胞

骨芽細胞 (新しい骨を形成)

た部位の組織を損傷することがあります。たとえば、腎障害はよく起こりま す。M 蛋白は血液凝固や血液循環を妨げ、神経組織の損傷など、他の臓器 や組織の損傷を引き起こすことがあります(末梢神経障害、PN)。

新たに診断された骨髄腫の治療

迅速かつ効果的な治療は、あらゆる骨髄腫の患者さん、特に 高リスク骨髄腫の特徴を有する患者さんにとって不可欠です。ベースライ ン検査、病期分類、予後分類が不可欠です。最も重要な最初の判断は、骨 髄腫の治療をいつ開始するかです。

骨髄腫の治療により、骨の破壊と腫瘍の増殖、さらには M 蛋白とそれらが

刺激する

サイトカインを起因とするさまざまな影響を制御します。

症候性の活動性骨髄腫およびMDEを伴う無症候性のSMMに治療が推奨 されます。治療の緊急度は、個々の患者さんが直面する問題によって異な ります。これが、骨髄腫専門医の経験と専門知識が非常に重要である理由 です。

近年の多くの重要な臨床試験は、新たに診断された骨髄腫の治療に大き な進歩をもたらし、患者さんが利用できる選択肢を大幅に拡大しました。

国際骨髄腫財団(IMF)から無料で入手できる薬物固有のUnderstanding (理解)シリーズの出版物では、骨髄腫の治療に使用される薬物について 詳しく説明されています。

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緻密質
黄色骨髄
© 2017 Slaybaugh Studios

図11.SMMまたは新たに骨髄腫と診断された場合の治療開始時期

新たに診断されたSMMまたは骨髄腫の可能性

SMM(MDEがない)

中等度リスク または低リスクSMM

観察

臨床試験

高リスクSMM

Revlimid(レブラミ ド)またはRdによる

2年間の早期治療

骨髄腫(MDEがある)

• CRABのうち1つ以上を有

する

• 形質細胞≧60%

• FLC比≧100

• MRIにおける局所性

病変>1

骨髄腫として 治療

図12.ASCTの対象となる患者さんのためのフロントライン治療アルゴリズム

3~4サイクルのVRd療法また

は DRd療法

幹細胞の採取と凍結 保存

3~4サイクルのD-VRd 療法

Revlimid(レブラ ミド)による維持

療法

VRd導入療法: VRd療法を6サイクル継続、

その後 Revlimid (レブラミド)で維持療法 または

DRd導入療法:DRd療法を継 続、再発時に後期 ASCT

VRによる維持療法

図13.ASCTの対象とならない患者さんのためのフロントライン治療アルゴリズム

標準リスク骨髄腫

8~ 9サイクルのVRd 療法

Revlimid(レブラ ミド)による維持

療法

進行するまで DRd療法

高リスク骨髄腫

8~ 9サイクルのVRd 療法

VRによる維持療法

進行するまで DRd療法

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©2022, SV Rajkumar ©2022, SV Rajkumar ©2022, SV Rajkumar 標準リスク骨髄腫 高リスク骨髄腫
早期ASCT 早期ASCT
©2022, SV Rajkumar ©2022, SV Rajkumar ©2022, SV Rajkumar

2023 年 1 月時点で、新たに診断された骨髄腫に対して米国食品医薬品局 (FDA)によって承認されている薬物をアルファベット順で以下に示します。

¡ Darzalex®(ダラツムマブ)は、静脈内注入によって投与されるモノク ローナル抗体であり、以下の組み合わせで承認されています。

• ASCTの対象となる患者さんに対してVelcade®(ベルケイド(R))(ボル

テゾミブR)+サリドマイド+デキサメタゾン(D-VTd)を投与

• ASCTの対象にならない患者さんに対してRevlimid®(レブラミドR)(レ ナリドマイド)+デキサメタゾン(DRd)を投与

• ASCTの対象にならない患者さんに対してVelcade(ベルケイド)+メル

ファラン+プレドニゾン(D-VMP)を投与

• Velcade(ベルケイド)+Revlimid(レブラミド)+デキサメタゾン(D-VRd) –VRdのレジメンに関する以下の注記を参照してください。

¡ Darzalex Faspro®(ダラツムマブおよびヒアルロニダーゼ-fihj)、皮下 注射によって投与されるモノクローナル抗体であり、以下の組み合わ せで承認されています。

• ASCTの対象となる患者さんにはD-VTd

• ASCTの対象とならない患者さんにはDRd

• ASCTの対象とならない患者さんにはD-VMP

¡ デキサメタゾンと他のステロイドは、通常、 1つ以上の他の薬剤と組み 合わせて投与され、経口投与か静脈内投与が可能です。

¡ 経口免疫調節薬であるRevlimid®(レブラミドR)(レナリドマイド)は、 VRd(以下を参照)などフロントライン治療で承認されているいくつか の併用療法の構成要素です。

¡ サリドマイドは、2006年に骨髄腫に対して承認され、米国食品医薬品 局(FDA)によってそのような承認を受けた最初の免疫調節薬です。

¡ プロテアソーム阻害剤であるVelcade®(ボルテゾミブ)は、VRd(以下を 参照)など治療で承認されているいくつかの併用療法の構成要素です。

¡ Velcade(ベルケイド)+Revlimid(レブラミド)+デキサメタゾンのVRd併

用療法は、現在、新たに骨髄腫と診断された患者さんに対する標準治 療と考えられています。

• ダラツムマブ+VRd(D-VRd)の併用療法は、米国食品医薬品局(FDA) によって正式に承認されていませんが、National Comprehensive Cancer Network(NCCN、全米総合がん情報ネットワーク)の骨髄腫 治療ガイドラインに載っています。2021 年 12 月、American Society of Hematology(ASH、米国血液学会)の年次総会で、GRIFFIN 臨床試験 から発表された最新の分析が、ASCTの対象となる新たに診断された

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骨髄腫の患者さんにおいて、D-VRdが安全でVRd単独よりも効果的で あり、その他の安全性の懸念や幹細胞の動員に対する悪影響はない ことが実証されました。

フロントライン治療のために米国食品医薬品局(FDA)に承認されている

他の主なクラスの薬物には、アルキル化剤(例:メルファラン、シクロホス ファミド)やアントラサイクリン(例:ドキソルビシン、リポソームドキソルビ シン)がありますが、より有効な薬物が入手可能であるため、これらの薬 物の使用頻度は低くなっています。

特定の導入療法に効果がない場合、この入門ハンドブックの範囲を超え て利用できる治療選択肢は数多くあります。ただし、利用できる選択肢を 使い果たさないようにして、ある治療レジメンから別の治療計画に急い でスキップすることはお勧めできません。

自家幹細胞移植

ASCTは、20年以上にわたって骨髄腫の治療法として使用されてきました。 移植医は、幹細胞を採取して高用量療法(HDT)の前に、腫瘍量を減らす(で きるだけ多くの骨髄腫細胞を死滅させる)よう試みます。したがって、患者さ んは、幹細胞救助によるHDTのプロセスを開始する前に導入療法を受けま す。フロントライン治療に顕著な反応が見られない場合でも、患者さんは採 取、HDT、ASCTに進み、優れた結果を得ることができます。病気がまだ進行 していない限り、HDT後の反応は、HDT前の反応よりもはるかに重要です。

2021 年 3 月、全米総合がん情報ネットワーク( NCCN )は骨髄腫の管理

に関するガイドラインを更新しました。全米総合がん情報ネットワー ク( NCCN )は、ASCT が、新たに骨髄腫と診断された対象患者さんの フロントライン治療で未だに重要な部分を占めていると述べていま す。国際骨髄腫財団の 2009 年臨床試験の追跡データから得られた最 新の結果により、新たに診断された骨髄腫に対するASCT の利益が確 認されました。追跡期間の中央値 93 か月で、無増悪生存期間( PFS ) の中央値は、VRd併用療法導入後のASCTでは47.3か月であったのに対し、 VRd単独では35.0か月でした。

米国では、デューリー・サーモン病期Ⅱ期またはⅢ期の骨髄腫で、新たに 診断されたか、治療効果が持続している場合、どの年齢でもMedicare(メ

ディケア)保険が1 回のASCT に適用されます。また、患者さんは、心臓、肝 臓、肺、腎臓の機能が十分でなければなりません。Medicareは、「タンデム」 (連続 2 回)の自家移植を補償しませんが、患者さんがMedicareの対象と なる移植を1回受け、 2年以上の寛解後に再発した場合、Medicareは、その 時点でもう1回の移植を補償することがあります。

詳細については、国際骨髄腫財団(IMF)の出版物「Understanding Stem Cell Transplant in Myeloma(骨髄腫における幹細胞移植を理解する)」を お読みください。

23 myeloma.org

治療レジメンの選択

いくつかの重要な問題を考慮する必要があります。

¡ 日常の機能:治療は日常生活に影響を及ぼすか?

¡ 仕事:変更や中断は必要か?

¡ 年齢:これは治療法の選択や期待される結果の要因となるか?

¡ 治療の 副作用:これらはどの程度重要になるか?

¡ その他の医学的な問題:それらは治療法の選択や治療に対する耐性 に影響を及ぼすか?

¡ 移植:ASCTによる大量化学療法は推奨されるか?

¡ 治療反応性の速さ: 治療はどのくらいの速さで効果を発揮するか? 反応はどのように評価されるのか?

¡ 当初とその後の決断:すぐに決定する必要がある金額はいくらか?

¡ 経済的考慮事項:保険でどの部分が補償されるか?経済的責任はど うなるのか?治療費を支払うためのリソースはあるか?

表7.治療目標とタイムリーな意思決定

治療の種類

安定化 緩和

目的 体内化学と免疫系の生命を脅か す混乱に対抗すること

• 血液を薄めて脳卒中を防ぐ血 漿交換

• 腎機能が低下した場合の血液 透析

• 高カルシウム血症を軽減する薬 物(化学療法を含む場合もあり ます)

決定までの期間 数時間~数日

治療の種類

目的 症状の改善、病気の経過を遅ら せたり止めたりすること

• 全身の悪性細胞を死滅させる 治療法

• 腫瘍部位の悪性細胞を死滅さ せる放射線療法

決定までの期間 数週間~数か月

不快感を和らげ、患者さんの機能 する能力を高めること

• 骨破壊を止める放射線療法

• 貧血を軽減する赤血球輸血

• 骨を修復・強化する整形外科手術

数日~数か月

永続的寛解

• 大量化学療法を実施する手段と しての幹細胞移植

数週間~数か月

*治療とは、病気を恒久的に根絶することを意味します。「機能的治癒」と は、診断から長年にわたって患者さんが安定した寛解状態にあります が、骨髄腫が完全には根絶されていない場合に、治療に対する優れた奏 効を表すために使用されてきた用語です。

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寛解導入 治癒的
*

図14.治療レジメンを選択する際に考慮すべきこと

維持療法の有無

治療に関する

治療に対する最大の奏効が得られた後、医師は維持レジメンを推奨する ことがあります。疾患が進行するまで継続治療の有益性は生存率を改善 することが十分に実証されていますが、すべての患者さんに必要なわけ でも、適切であるわけでもありません。継続治療の経済的、身体的、感情 的な影響は、各患者さんの骨髄腫の特徴とともに考慮される必要があり ます。

臨床試験

導入療法の臨床試験は、他の方法では利用できない新しい併用療法や 新しい治療を受けるための優れた方法となり得ます。患者さんが標準治 療または新しい治療を受ける機会が等しい無作為化臨床試験であって も、臨床試験では厳密に文書化された治療と観察が行われます。臨床 試験への参加を選択した場合、治療プロトコールの全範囲を理解する ことが重要です。臨床試験の包括的な議論については、国際骨髄腫財団 (IMF)の出版物「Understanding Clinical Trials(臨床試験の理解)」をお 読みください。

支持療法

導入療法の開始と同じくらい重要なことは、骨髄腫の身体的精神的影響 を軽減するための支持療法の策を早期に実施することです。

国際骨髄腫財団(IMF)の小冊子「Understanding Treatment of Myeloma Bone Disease(骨髄腫の骨病変治療の理解)」では、ビスホスホネートの Aredia®(アレディアR)(パミドロン酸)やZometa®(ゾメタ)(ゾレドロン酸)、

モノクローナル抗体 Xgeva®(ザイゲバ)(デノスマブ)などの骨修飾薬につ いて説明しています。

25 myeloma.org
考慮事項 日常の機能 仕事 年齢 治療の 副作用 その他の医学 的な問題 移植 治療反応性 の速さ 当初とその後 の決断 経済的考慮 事項

表8.支持療法

症状 治療 コメント

貧血による倦怠 感と脱力感

• 貧血が重度の場合は輸血(濃厚赤血 球:白血球除去済みでウイルス検査 済み)

• 貧血が軽度から中等度の場合で治療 によって生じたものであればエリスロ ポエチン

骨の痛み • ビスホスホネート アレディア(毎月2~4時間かけて90mgを 静脈注射)、ゾメタ(毎月15~45分かけ て4mgを静脈注射)

• モノクローナル抗体 Xgeva®(デノスマブ)は皮下注射として投 与されます。

• 鎮痛薬 必要に応じて、処方薬または市販薬 (OTC 薬)について医師にご相談くだ さい。

• 適切な抗生物質

• 低下した白血球数を増やすために必 要な場合はNeupogen®

• 重度の感染症に対する静脈内免疫グ ロブリン(IVIG)

• 感染症の正確な種類を診断するため に必要に応じて検査を実施(危険な生 検や培養検査を除く)

胃腸の副作用

• 吐き気、嘔吐、便秘、下痢を治療するた めの適切な薬

• 水分と栄養の適切な摂取

血栓と血栓塞 栓性イベント

• 凝固イベントは医療上の緊急事態で す。イベントおよび患者さんの危険因 子に基づいて治療します。

• アスピリンまたは抗凝固薬が処方され ることがあります。

末梢神経障害

• 鎮痛薬

• 投与量、スケジュールや投与経路の 調整

• 理学療法、ビタミン剤、その他のサプリ メント

ステロイドの副 作用

• 医師の指示に従って服用

• 感染症の兆候や症状、血糖値の変化 に注意

• 帯状疱疹やイースト菌感染症の予 防薬

治療は簡単で、通常は非常に 有益であり、幸福感を向上させ ます。

• 骨の痛みを軽減すること自体 が重要であり、身体活動が改 善され、その結果、骨の強度と 治癒が促進され、精神的安定 が向上します。

• ビスホスホネート療法を長期 間続けると、まれですが、腎臓 やあごに障害が出ることがあ ります。

• これを知っておいて予防する ことが大事です。

• 抗生物質は慎重に選んで使用 する必要がありますが、感染 を早く抑えることが非常に重 要です。

• 緊急時(特に旅行時)のため に抗生物質を手元に用意して おくことをお勧めします。

症状について医療機関に相談 してください。重篤な症状の場 合は入院が必要になることが あります。

リスクは、運動、減量、禁煙に よって軽減されることがあり ます。

• 症状について医療機関に相談 してください。

• 早期介入により後遺症となる 障害を防ぎ、治療を続けるこ とができます。

• 自己判断で投与量を調節しな いでください。

• 医師に相談せずにサプリメン トを摂取しないでください。

• 副作用と症状を医療機関に 報告してください。

• 自己判断で投与を中止したり 投与量を調節したりしないで ください。

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発熱や 感染の兆候

国際骨髄腫財団(IMF)の小冊子「Understanding Fatigue(倦怠感の理 解)」では、がんとその治療に関連する倦怠感について説明していますが、 倦怠感は全米総合がん情報ネットワーク(NCCN)によって「がんやがん治 療に関連する苦痛を伴う持続的で主観的な疲労感や極度の疲労感であ り、最近の活動量に比例せず、通常の機能に支障をきたすもの」」と定義 されています。

国際骨髄腫財団(IMF)の小冊子「Understanding Peripheral Neuropathy in Myeloma(骨髄腫における末梢神経障害の理解)」は、すでにPNを患っ

ている骨髄腫の患者さんを支援することと、患者さんがこの問題の発症 を避けることの両方を目的としています。問題が発生する前に予防し、問 題が発生した場合は早期に治療することが常に最善です。これは特にPN に当てはまります。

特定の症状の管理だけでなく、次のような他の支援策が非常に重要です。

¡ 身体活動:すべての身体活動が可能かどうか、または骨病変や骨損傷 のために調整が必要であるかどうかを確認するために、医師に相談し てください。通常、ウォーキングや水泳、柔軟体操や筋力トレーニング、 また、個人に合わせたヨガプログラムなどの身体活動を計画すること ができます。

¡ 食事:骨髄腫の患者さんのための特別な食事法は開発されていませ んが、研究では肥満と骨髄腫との関連性が明確に実証されています。 果物、野菜、魚、その他の脂肪の少ない動物性タンパク質、全粒穀物、 未加工の「本物の」食品を重視した健康的な地中海食をお勧めしま す。加工糖や人工トランス脂肪を含む食品は避けてください。次の2点 に注意してください。

 ハーブやビタミンのサプリメント:骨髄腫の治療を受けている方 は、サプリメントを服用する前に医師・薬剤師に相談してください。 薬やサプリメントの相互作用によっては、骨髄腫治療の効果的な 作用が妨げられたり、深刻な医学的問題が生じたりすることがあ ります。薬局には、相互作用の可能性を特定できる参照用の情報 資源があります。

 ビタミンC:1000Mg/ 日を超える服用は、骨髄腫には逆効果とな り、腎障害のリスクが高まる可能性があります。

¡ 心の健康:計画どおりに治療を受けるために、心の健康は重要です。 治療計画に対して安心していることを確かめてください。不安やう つ状態にあることを感じた場合や、他の人が自分をうつ病ではない かと心配している場合は、メンタルヘルスの専門家に面談の予約を

27 myeloma.org

入れてください。これはがんの診断に対する正常な反応であり、がん 患者さんのほとんどが一度は何らかの助けを必要とします。現時点 では仲間同士のサポートが不可欠であり、この状況では骨髄腫支援 グループが役に立ちます。骨髄腫支援グループへの紹介については、 support.myeloma.orgにアクセスし、国際骨髄腫財団(IMF)インフォラ イン(InfoLine@myeloma.orgまたは 1-818-487-7455)までご連絡くだ さい。

¡ 規則正しい睡眠:これは免疫系にとって非常に重要です。

¡ 調整する:可能であれば、仕事、家族、社会的状況におけるストレスを 減らし、人ごみや学童期の子どもとの密接な接触を避けてください。手 洗いを頻繁にしましょう。病気と治療の両方によって免疫系の機能が 低下してしまいます。骨髄腫が寛解状態に入るか安定した状態になる までは、骨髄腫の管理は最も重要なことです。

医療チーム

血液・腫瘍専門医が治療を計画し、管理する一方で、医療チームに次の重 要なメンバーが含まれることもあります。

¡ かかりつけ医

¡ 整形外科医

最適な治療は、医療チームメンバーと患者さん、または指名された介護者 との間の効果的なコミュニケーションによって実現します。

骨髄腫の患者さんと新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)

骨髄腫の患者さんのための最新情報については、国際骨髄腫財団(IMF) のウェブサイト(covid19.myeloma.org)の「新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)」のページをご覧ください。COVID-19の新たな変異種が引き 続き出現しており、骨髄腫の患者さんには、屋内や暴露リスクが高まる状 況でのマスクの使用などの注意が推奨されています。

国際骨髄腫財団(IMF)は、骨髄腫、SMM、または MGUSの患者さんに対し、 ファイザー・ビオンテックのCOVID-19ワクチンか、モデルナCOVID-19ワクチ

ンのどちらか可能な方を接種することを推奨しています。これらのワクチン には優れた利益があり、現在のところ、その有効性は毒性の懸念をはるか に上回っています。COVID-19ワクチン接種を計画する前に、骨髄腫を治療 している医師と相談し、疑問や懸念を解決してください。すでに予防接種 を受けている場合は、追加接種が必要かどうかを医師に尋ねてください。

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¡ 看護師やナース・プラクティショナー
薬剤師 ¡ 腎臓専門医 ¡ 歯科医や口腔外科医
¡

最後に

この小冊子は、あなたの健康管理プランに関する質問に最も的確に答え てくれる医師や看護師のアドバイスに代わるものではありません。国際骨 髄腫財団(IMF)は、あなたが医療チームと話し合う際の指針となる情報 を提供することのみを目的としています。効果的な治療と良好なQOL(生 活の質)を確保するには、あなた自身が医療に積極的に参加する必要が あります。

骨髄腫の詳細についてはmyeloma.orgにアクセスしてください。骨髄腫関 連の質問や懸念がある場合は、国際骨髄腫財団(IMF)インフォラインに

問い合わせることをお勧めします。国際骨髄腫財団(IMF)インフォライン

は、骨髄腫に関する最新かつ正確な情報を思いやりのある方法で一貫し て提供しています。国際骨髄腫財団(IMF)インフォライン(1-818-487-7455

またはInfoLine@myeloma.org)までお問い合わせください。

用語と定義

この小冊子では以下の選択された用語が使用されていますが、骨髄腫関 連の語彙のより完全な概要は、glossary.myeloma.orgにある国際骨髄腫 財団(IMF)の骨髄腫用語集を参照してください。

アルブミン(ALB):血清中に見られる単純な水溶性蛋白です。骨髄腫が非 常に活性化されると、アルブミンの産生はインターロイキン6によって阻害 されます。

アミロイド軽鎖アミロイドーシス(ALアミロイドーシス):軽鎖蛋白が腎 臓から排泄されない形質細胞疾患です。代わりに、蛋白が互いに結合し、 これらのアミロイド線維が組織や臓器、最も一般的には腎臓、心臓、胃腸 (GI)管、末梢神経、皮膚、軟部組織に沈着します。ALアミロイドーシスは、 原発性アミロイドーシスともいいます。「アミロイドーシス」を参照してく ださい。

貧血:赤血球には体組織や臓器に酸素を運ぶ蛋白であるヘモグロビンが 含まれています。貧血は通常、ヘモグロビンが10g/dL 未満に減少、または 個人の正常値から2g/dL

以上減少した状態と定義されます。13 ~ 14g/dL

を超えると正常値とみなされます。体内の酸素レベルが低下すると、息切 れや疲労感を引き起こすことがあります。新たに骨髄腫と診断された患者 さんの多くは貧血を患っています。

抗体:体内に侵入した抗原に反応し、形質細胞によって産生される蛋白の ことです。「

抗原:免疫系に自然抗体の産生を引き起こすあらゆる異物のことです。抗 原の例として、細菌、ウイルス、寄生生物、真菌、毒素があります。

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抗原」および「免疫グロブリン(Ig)」を参照してください。

ベンス・ジョーンズ骨髄腫:遊離κ軽鎖または遊離λ軽鎖から成る尿中の 異常蛋白であるベンス・ジョーンズ蛋白の存在を特徴とする骨髄腫です。 「ベンス・ジョーンズ蛋白」参照。

ベンス・ジョーンズ蛋白:骨髄腫の単クローン性蛋白です。この蛋白は、

遊離κ軽鎖または遊離λ軽鎖のいずれかで構成されます。ベンス・ジョー ンズ軽鎖はサイズが小さいため、腎臓でろ過され尿中に排泄されること があります。尿中のベンス・ジョーンズ蛋白量は、24 時間あたりのグラム

数で表されます。通常、尿中には非常に少量の蛋白(<0.1g/24時間)が存

在することがありますが、これはベンス・ジョーンズ蛋白ではなくアルブミ ンです。尿中にベンス・ジョーンズ蛋白が存在すれば異常であるといえま す。骨髄腫蛋白の重鎖はサイズが大きすぎるため、腎臓でろ過できません。 「ベンス・ジョーンズ骨髄腫」を参照してください。

良性:がんでない状態であり、周辺組織に浸潤しない、つまり、身体の他の 部分に広がらない状態をいいます。

ベータ

2-ミクログロブリン、β 2M 、またはβ 2M

):血 中に見られる低分子量蛋白です。活動性骨髄腫の患者さんで高値を示し ます。早期骨髄腫や非活動性骨髄腫の患者さんでは、その値は低いか正 常です。約 10%

の患者さんはβ

2Mを産生しない骨髄腫を患っています。再 発時に、骨髄腫蛋白の値が変化する前に、β2Mが増えることがあります。ウ

イルス感染などの要因により、血清β2M値が上昇することがあります。

生検:診断に役立つよう顕微鏡検査のために組織サンプルを採取するこ とです。

ビスホスホネート:破骨細胞の活動(骨の破壊)から保護し、吸収または 破壊されている骨の表面に結合する薬物の一種です。

骨髄:骨の中心にある柔らかい海綿状の組織のことで、白血球、赤血球、 血小板を産生します。骨髄腫が増殖すると、異常な形質細胞が骨髄中に 蓄積します。

骨髄穿刺:顕微鏡検査を行うために、骨髄から体液と細胞のサンプルを針 で採取することです。

C反応性蛋白(CRP):肝臓で作られる蛋白で、全身に炎症があると増加し ます。

カルシウム:主に骨基質の硬い部分に含まれるミネラル(ハイドロキシア パタイト)です。過剰に産生または放出されると、血流中に蓄積することが あります。「高カルシウム血症」を参照してください。

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無症候性:兆候や症状を示さないことです。
2ミクログロブリン(β

がん:悪性細胞が無制御に分裂する病気を表す用語です。がん細胞は周辺 の組織に浸潤し、血流およびリンパ系に乗って身体の他の部分へ広がるこ とがあります。

染色体:細胞核の中にあるDNA 鎖と蛋白のことです。染色体には遺伝子が 含まれており、遺伝子情報を伝達する機能があります。通常、ヒトの細胞に は46本の染色体(23対)が含まれています。

• 染色体欠失 – DNA 複製中に染色体の一部または全体が失われる遺 伝子変異です。骨髄腫で起こる染色体欠失には、13 番染色体長腕欠失 (13q-と表記)または17番染色体短腕欠失(17p-と表記)が含まれます。

• 染色体転座 – 異なる染色体の一部が再配置される遺伝子変異です。小 文字の「t」の後に、転座した遺伝物質を含む染色体の番号が続きます。 骨髄腫で起こる転座には、t(4;14)、t(11;14)、t(14;16)、t(14;20)があります。

臨床試験:患者さんを巻き込んだ新しい治療法の調査研究のことです。各 試験は、がんを予防、検出、診断、治療するためのより良い方法を見つけ、 科学的な疑問に答えることを目的としています。

• 治験登録数 – 臨床試験に患者さんを登録する過程のこと、または臨床 試験にすでに登録したか、あるいは登録を予定している患者さんの数の ことです。

• 治療群 – 2つ以上の治療群がある無作為化試験における治療群。

• コホート - 同じ試験で同じ治療またはプラセボ(無治療)を受ける患者 群です。

• 対照群 – 標準治療またはプラセボを受ける無作為化臨床試験の群 です。

• 二重盲検試験 – 患者さんも治験責任医師も、患者さんが無作為化され た試験のどの群にいるかを知らない場合の試験です。その目的は、結果 報告における偏りを排除することです。

• エンドポイント – 試験の目標です。臨床試験のエンドポイントは、毒性、 奏効率、生存を目的とすることがあります。

• 実験群 – 新しい治療法を受ける無作為化試験の群です。

• 無作為化臨床試験 – 患者さんが特定の治療を受けるよう無作為に割り 当てられる試験です。

• 第Ⅰ相臨床試験 – 新しい薬物や薬物の新たな組み合わせの最大耐量 (MTD)と安全性プロファイルを決定する試験です。これは、人体におけ る新しい治療法の初の試験となることがあります。併用療法では、個々 の薬剤が人体ですでに十分に試験されている場合があることに注意し てください。

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• 第Ⅱ相臨床試験 – 第Ⅰ相試験で試験された新しい治療法の有効性と 安全性を判断することを目的とする試験です。被験者の要件は通常、い かなる標準治療にも抵抗性を示す測定可能な疾患を患っていることと されます。第Ⅱ相試験の結果が標準治療よりも明らかに優れている場 合、その治療法は第Ⅲ相試験で試験されずに承認されることがありま す。第Ⅱ相試験の結果が有望な場合、その治療法は第Ⅲ相試験で試験 されることがあります。

• 第Ⅲ相臨床試験 – 2つ以上の治療法を比較する試験です。第Ⅲ相試験の エンドポイントは、生存期間または無増悪生存期間(PFS)とされること

があります。第Ⅲ相試験は、通常、無作為化されるため、被験者はどの治 療法を受けるか選ぶことができません。第Ⅲ相試験の中には、第Ⅱ相試 験で良好な結果が得られた新しい治療法を標準治療と比較するものも あり、他の第Ⅲ相試験では、すでに一般的に使用されている治療法を比 較します。

• 第Ⅳ相臨床試験 – 薬物が特定の適応症での使用についてU.S. Food and Drug Administration(FDA、米国食品医薬品局)によって承認された後で も、追加の試験が必要になることがあります。たとえば、安全性サーベイ ランスは、第Ⅰ相~第Ⅲ相臨床試験で可能であったよりも多くの患者集 団と長期間にわたり、まれな副作用や長期にわたる副作用を検出する ことを目的としています。

コンピュータ断層撮影検査(CATまたはCT):体内構造の三次元画像を作成 します。骨髄腫では、X 線が陰性の場合、または特定の領域のより詳細な検 査に使用されます。骨損傷や神経圧迫の小さな領域の検出や詳細な評価 に特に有用です。

CRAB(高カルシウム血症、腎障害、貧血、骨病変)基準:血中 のカルシウ

ム濃度の上昇、腎障害 、貧血 または赤血球数の低下、および骨 損傷は、

骨髄腫定義事象(MDE)」とともに骨髄腫の診断に使用される基準です。

サイトカイン:サイトカインは、通常、感染に反応して血流中を循環する蛋白 です。サイトカインは、他の細胞の増殖や活性を刺激したり阻害したりする ことがあります。

電気泳動:M 診断とモニタリングの両方に使用される臨床検査で、患者さ んの血清(血液)または尿蛋白がそのサイズと電荷に応じて分離されるこ とがあります。血清または尿の電気泳動(SPEPまたは UPEP)により、患者さ んごとの骨髄腫蛋白の定量とMスパイクの種類の特定の両方が可能にな ります。

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髄外性形質細胞腫:骨髄の外側の骨から離れた軟部組織に見られる単ク ローン性形質細胞の腫瘍です。

蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH):骨髄腫の専門家が染色体上

の特定のDNA配列の位置を突き止められるようにする手順のことです。

遊離軽鎖(FLC):免疫グロブリン軽鎖は、抗体を構成する2つの単位のうち 小さい方です。κ軽鎖とλ軽鎖の2 種類があります。軽鎖は重鎖に結合して いることもあれば、結合していない(遊離している)こともあります。遊離軽 鎖は、血中を循環し、腎臓に排泄できるほど小さく、ろ過されて尿中に排泄 されたり互いに付着して尿細管を遮断したりすることがあります。

フロントライン治療:新たに骨髄腫と診断された患者さんの奏効を得る ための治療活動に使用される初期治療の総称です。「導入療法

「奏効」を参照してください。

血液専門医:血液および骨髄の問題を専門とする医師です。

高リスク骨髄腫:細胞遺伝学的(染色体)異常 t(4;14) 、t(14;16) 、t(14;20) 、 17p欠失、および1qの増幅、改訂国際病期分類(R-ISS

)のステージIII疾患や

高リスク遺伝子発現プロファイル(GEP)シグネチャで定義される、治療後 速やかに再発する可能性が高いか、または治療抵抗性を示す骨髄腫です。

高カルシウム血症:血中のカルシウム濃度が正常値を超えていることで す。骨髄腫の患者さんでは、通常、骨の破壊によってカルシウムが骨から血 流中に放出されます。この状態は、食欲低下、吐き気、のどの乾き、倦怠感、 筋力低下、不安、錯乱などを含むさまざまな症状を引き起こすことがあり ます。「カルシウム」を参照してください。

免疫系:感染細胞や悪性細胞を破壊し、細胞の破片を除去する身体の防 御システムです。免疫系には、白血球、リンパ系の器官と組織があります。

免疫固定法(IFE):蛋白を特定するために使用される血清または尿の免 疫学的検査です。骨髄腫の患者さんの場合、医師は M 蛋白の種類(IgG 、 IgA、κまたはλ)を特定できます。最も感度が高い日常的な免疫染色法で あり、M蛋白の重鎖および軽鎖の種類を正確に特定します。

免疫グロブリン(Ig):形質細胞から産生される蛋白で、身体の免疫系に 必須です。免疫グロブリンは外来物質(抗原)に付着し、それを破壊するの を助けます。免疫グロブリンのクラス(アイソタイプ)は、IgG、IgA、IgD、IgE、 IgMです。「抗体

• IgG、IgA – 最も一般的な種類の骨髄腫です。GとA は、骨髄腫細胞から 産生される免疫グロブリン重鎖を指します。

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」および
」および「抗原」を参照してください。

• IgD、IgEA – 発生頻度の低い骨髄腫です。

• IgMA – 骨髄腫の種類ではまれです。IgM型骨髄腫はワルデンストレーム マクログロブリン血症と同じではありません。

免疫調節薬:免疫系に影響を与え、増強し、または抑制する薬物です。免疫 調節薬は、IMiD®化合物と呼ばれることもあります。

導入療法:自家幹細胞移植(ASCT)の準備として患者さんに行われる初期 治療です。「フロントライン治療」および「治療ライン」を参照してください。

乳酸脱水素酵素(LDH):体内のほぼすべての組織に存在するエネルギーを 生成する酵素です。血流中のLDH 濃度は、細胞の損傷に反応して上昇しま す。LDHは骨髄腫の活動性を観察するために使用されることがあります。

病変部:異常な組織の領域で、がんなどの損傷や病気によって生じることの あるしこりや膿瘍のことです。骨髄腫において、「病変部」は形質細胞腫また は骨の抜けた部分(穴)のことを指します。

• びまん性病変 – 骨領域に骨髄腫病変が広がっている状態です。

• 局所性病変 – MRIおよびPET-CT検査で骨髄に見られる不規則な細胞の 一定の範囲のことです。骨髄腫の診断とみなされるためには、MRIで少な くとも5mmの大きさの病変が少なくとも2つ見られる必要があります。

• 溶骨性病変各領域の健康な骨の最低 30% が侵食された場合に、X 線写 真上で暗い点として現れる骨の損傷領域です。溶骨性病変は骨に開い た穴のように見え、骨が弱くなっている証拠です。「溶骨性(溶解)」を参照 してください。

軽鎖沈着症(LCDD):臓器における完全または部分的な単クローン性軽 鎖の沈着を特徴とするまれな種類の単クローン性免疫グロブリン沈着症 (MIDD)です。

LCDD は通常、腎臓に影響を与えますが、他の臓器にも影響 を与えることがあります。LCDD の治療目標は、臓器の損傷を遅らせること です。

治療ライン:患者さんが受けた治療の回数を計算するために使用される用 語です。治療ラインとは、単剤、合剤、またはさまざまなレジメンで予定され た連続療法からなるレジメンの1つ以上の完全なサイクルです。「

M スパイク:単クローン性スパイク(蛋白電気泳動検査で生じる鋭い パターン)は、骨髄腫細胞の活性マーカーです。「 単クローン性

磁気共鳴画像法(MRI):電離放射線ではなく磁場と電波を使用して、体内 の構造の詳細な2Dまたは 3D 画像を生成する画像診断です。MRIでは、X 線

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導入療法」 も参照してください。
」および
「単クローン性蛋白」を参照してください。

検査で骨損傷が示されない場合、骨髄における骨髄腫の存在と分布を明 らかにすることができます。骨以外の病気も明らかにすることができます。 MRI は、軟部組織、特に脊髄の浸潤を非常に高解像度で撮像できますが、 神経や脊髄を圧迫している可能性のある骨病変については精度が低くな ります。

悪性:がんの状態で、周辺組織に浸潤し、身体の他の部分にも広がりま せん。

微小残存病変(MRD):治療が完了し、完全奏効(CR)に達した後に存在す る残存腫瘍細胞です。厳格な完全 CR(sCR)を達成した患者さんでも、MRD がある場合があります。非常に感度の高い新しい検査方法により、血液ま たは骨髄から採取された百万個の細胞の中から1 個の骨髄腫細胞を検出 できるようになりました。「

単クローン性:1つのクローン、つまりコピーです。骨髄腫細胞は、骨髄中の 単一の悪性形質細胞である「単クローン」に由来します。産生される骨髄腫 蛋白の種類も単クローン性であり、多くの形態(ポリクローン性)ではなく 単一の形態です。単クローン性蛋白の重要な実利的側面は、蛋白電気泳動 検査で鋭いスパイクのMスパイクとして現れることです。「Mスパイク」を参 照してください。

意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS):血液中や尿中の 単クローン性蛋白濃度が比較的低いことを特徴とする形質細胞疾患のカ テゴリーです。骨髄形質細胞濃度は低い(< 10%)です。CRABの特徴はあり ません。「 CRAB(高カルシウム血症、腎障害、貧血、骨病変)基準」を参照し てください。

単クローン性蛋白(骨髄腫蛋白、M 蛋白):骨髄腫細胞によって産生され る異常な蛋白で、骨や骨髄に蓄積して損傷します。骨髄腫の患者さんの 血液中や尿中には異常に大量に検出されます。「 単クローン性 」および 「Mスパイク」を参照してください。

多発性骨髄腫:骨髄形質細胞(抗体を作る白血球)のがんです。がん化した 形質細胞は骨髄腫細胞と呼ばれます。

骨髄除去:重度の骨髄抑制で、大量化学療法または放射線療法の結果、 血球を産生する骨髄の能力が完全に、またはほぼ完全に破壊されます。 「骨髄抑制」を参照してください。

骨髄腫診断事象(MDE):骨髄腫の診断には、CRAB 基準、骨髄中のクロー ン形質細胞が60%以上、局所性病変が関与した/関与しない血清遊離軽鎖 (FLC)比が100 以上、MRIで局所性病変が1つより多いなど、 1つ以上のMDE の証拠が必要です。「CRAB(高カルシウム血症、腎障害、貧血、骨病変)基準」 も参照してください。

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微小残存病変(MRD)陰性」を参照してください。

骨髄抑制:赤血球、血小板、および一部の白血球の産生が減少している状 態をいいます。

非分泌性骨髄腫:骨髄腫の患者さんの約1%は、血液(血清)中や尿中に検

出できるM 蛋白を持っていません。これらの患者さんの一部は、無血清軽 鎖アッセイを使用して正常に観察することができますが、他の患者さんは、 骨髄生検やPET-CT 検査で観察することがあります。非分泌性骨髄腫の患 者さんは、M蛋白を産生する患者さんと同じ方法で治療を受けます。

腫瘍専門医:がん治療を専門とする医師です。一部の腫瘍専門医は、特定 の種類のがんを専門としています。

骨芽細胞:骨組織の生成に関わる骨細胞です。骨芽細胞は類骨を産生し、 カルシウムで石灰化され、新しい硬い骨を形成します。

破骨細胞:骨髄と骨の間の接合部に見られる細胞です。古い骨組織の破 壊または再形成の役割を担っています。骨髄腫では、破骨細胞が過剰に刺 激される一方で、骨芽細胞の活性が阻害されます。骨吸収の促進と新骨形 成の阻害の組み合わせにより、溶骨性病変が生じます。

全生存(OS):特定の期間後に生存しているグループ内の人数の中央値で す。全生存は、臨床試験における治療効果の指標としてよく使用されます。 骨髄腫の臨床試験における全生存期間が延びているため、このエンドポ イントを使用するのが困難になっており、新しいエンドポイントとして微小 残存病変(MRD)の状態を検証する取り組みが行われています。

末梢神経障害(PN):末梢神経障害は、手、足、下肢、腕の神経に影響を及 ぼす重篤な状態です。患者さんは、骨髄腫自体の影響や骨髄腫の治療に よって末梢神経障害をきたすことがあります。症状には、しびれ、うずき、灼 熱感、痛みなどがあります。

血漿:血液から赤血球、白血球、血小板を除いた液体部分です。

形質細胞:抗体を産生する白血球です。骨髄腫細胞はがん性形質細胞で あり、臓器や組織の損傷(貧血、腎臓損傷、骨の病気、神経損傷)を引き起 こすことがある単クローン性蛋白(M蛋白)を産生します。

形質細胞腫:「髄外性形質細胞腫」および「孤立性骨形質細胞腫(SPB)」を 参照してください。

血漿交換法:血液から特定の蛋白を除去するプロセスです。血漿交換法 は、骨髄腫の患者さんの血液から高濃度のM 蛋白を除去するために使用 できます。

血小板:3 大血球の1つで、他には赤血球と白血球があります。血小板は血 管壁の破綻部分をふさぎ、血栓の形成を刺激する物質を放出します。血小 板は出血に対する主要な防御機能です。血小板とも呼ばれます。

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陽電子放出断層撮影法(PET):カメラとコンピュータを使用して身体の画 像を生成する高度な診断検査です。PET 検査では、活性化がん細胞による 放射性標識された糖の取り込みに基づいて、健康な組織と異常に機能し ている組織の違いが示されます。

無増悪生存期間( PFS ):骨髄腫の治療中および治療後に、患者さんが 病気を抱えながらも骨髄腫が悪化しない期間のことです。PFS は、臨床 試験において治療効果がどの程度あるかを測定する 1 つの方法です。

「進行性疾患」を参照してください。

進行性疾患:検査によって確認された悪化または再発している骨髄腫で す。骨髄腫蛋白濃度や疾患の新たな証拠における確認済みの奏効の最低 値から25%以上の増加として定義されます。

プロテアソーム:正常細胞とがん細胞の両方で損傷した蛋白または不要 な蛋白をより小さな成分に分解する酵素(「プロテアーゼ」)の結合グルー プ(「複合体」)です。また、プロテアソームは細胞内損傷のない蛋白の制御 された分解も行っており、これは多くの重要な細胞機能の制御に必要なプ ロセスです。これらの小さな蛋白成分は、細胞に必要な新しい蛋白を産生 するために使用されます。これは細胞内のバランスを維持し、細胞の増殖 を制御するために重要です。

プロテアソーム阻害剤:プロテアソームの正常な機能を阻害する薬物です。 「プロテアソーム」を参照してください。

タンパク質:アミノ酸で構成される物質です。タンパク質は、特に筋肉、毛 髪、コラーゲンなどの体組織の構造成分として、また酵素や抗体として、す べての生物にとって不可欠な要素です。

治験実施計画書:使用する薬物の用量やスケジュールが含まれる詳細な 治療計画のことです。

放射線療法:X 線、ガンマ線、または電子を使用して悪性細胞を損傷また は死滅させる治療法です。放射線を体外から照射する方法や腫瘍の中に 直接放射性物質を埋め込んで照射する方法があります。

赤血球(RBC):赤血球とも呼ばれ、血中のこれらの細胞にはヘモグロビン が含まれており、身体のあらゆる部分に酸素を届け、二酸化炭素を取り除 きます。赤血球の産生は、腎臓によって産生されるホルモン(エリスロポエ チン)の刺激によって生じます。腎臓損傷を有する骨髄腫の患者さんは十 分なエリスロポエチンを産生せず、貧血になることがあります。骨髄腫の 患者さんは、骨髄が新しい赤血球を作る能力に骨髄腫細胞の影響がある ため、貧血になることもあります。

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奏効または寛解:がんの兆候や症状が完全または部分的に消失すること を表す入れ替え可能な用語。

• 厳格な完全奏効(sCR)– sCRはCR(以下に定義)に正常なFLC比を加え たもので、免疫組織化学または免疫蛍光法で骨髄中のクローン細胞 がない状態です。

• 完全奏効(CR)– 骨髄腫の場合、CRは血清(血液)および尿に対する免 疫固定が陰性であり、軟部組織、形質細胞腫、骨髄中の5%以下の血漿 細胞が消失しています。CRは治療法と同じではありません。

• 最良部分奏効(VGPR)– VGPR は完全奏効未満です。VGPR は、免疫固 定により検出できるが電気泳動では検出できない血清 M 蛋白および 尿 M 蛋白、または血清 M 蛋白の90% 以上の減少、および24 時間あたり 100mg未満の尿中M蛋白です。

• 部分奏効(PR)– 部分奏効は、M蛋白が最低50%減少し、尿中M蛋白が 少なくとも24 時間で90% 減少(または 24 時間あたり200mg 未満まで) 減少するレベルの奏効です。

血清:血球が浮遊している血液の無色の液体部分のことです。

くすぶり型多発性骨髄腫(SMM):SMM は MGUSよりも発症率の高い疾 患ですが、SMM は臓器損傷を示すCRAB 基準の特徴を備えた活動性骨髄 腫ではありません。標準リスクSMMの患者さんは治療を必要としません が、血液・腫瘍専門医による定期的な観察を受ける必要があります。高 リスクSMMの患者さんは、臨床試験への参加を選択することができます。 「CRAB(高カルシウム血症、腎障害、貧血、骨病変)基準」を参照してくだ さい。

孤立性骨形質細胞腫(SPB):骨中の目立たない単一の単クローン性形質 細胞の塊のことです。SPBの診断には、孤立性骨病変、すなわち形質細胞 の浸潤が生検で確認されること、他の骨病変の画像診断結果は陰性を示 すこと、骨髄の無作為サンプルにクローン形質細胞が認められないこと、 全身性骨髄腫を示唆する貧血、高カルシウム血症、または腎臓への浸潤 の証拠が認められないことが必要です。

移植(移植手術):移植手術にはいくつかの種類があります。

• 自家幹細胞移植(ASCT)– これは骨髄腫で最も頻繁に用いられる移 植の種類です。ASCT は、医師が患者さんの循環血液から健康な末梢 血幹細胞(PBSC)を除去する手術です。採取された幹細胞は凍結され、 数日、数週間、または数年以内に使用できるよう保存されます。患者さ んがASCT を進める準備ができると、骨髄破壊的高用量療法(HDT)を 行い、骨髄中の骨髄腫細胞を破壊しますが、健康な血球も破壊されて

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しまいます。その後、患者さんの凍結幹細胞が解凍されて患者さんに 戻されます。そうすることで、これらの細胞は HDT によって破壊された 細胞と置き換わる新しい血球を生成することができます。ASCT は長く 深い寛解を提供できます。

• アロジェニック(アログラフト)移植 – この種の移植では、ヒト白血球 抗原(HLA)照合により、患者さん(レシピエント)と適合すると判断され た個人 1 人(ドナー)から採取された幹細胞または骨髄が使用されま す。ドナーの細胞は、骨髄破壊的 HDT 後に患者さんに注入されます。ド ナーの免疫系細胞はレシピエントの骨髄腫細胞を異物として認識し、 攻撃します。残念ながら、ドナー細胞は、レシピエントの体内の他の組 織も攻撃し、移植片対宿主病(GVHD)を引き起こし、合併症を引き起こ したり、場合によっては死に至ることもあります。

• 強度軽減前処置(RIC)同種移植 - 同種移植の一種で、略して「ミニア ロ」と呼ばれることもあります。RIC 移植は骨髄腫にとって新しい技術 であり、骨髄破壊を起こさないため、「完全な」アロジェニック(アログ ラフト)移植よりも安全な技術です。RIC 移植は通常、標準的なASCT 後 180日以内に行われます。

• 骨髄移植 – 患者さんの循環末梢血からではなく、患者さんの骨髄から 幹細胞を採取する自家移植の一種です。現在、骨髄腫では ASCT 手術 が好まれているため、骨髄移植が用いられることはまれです。ただし、 末梢血から幹細胞を採取できない場合は、骨髄移植が検討されるこ とがあります。

• タンデム移植 – 2回連続して行われる自家移植を指す用語です。タンデ ム移植は通常、移植の間隔を3か月から6か月置いて計画します。効果 的な新規治療法の時代となり、米国ではタンデム移植があまり一般的 ではなくなりました。

• 同系移植– アロジェニック移植の一種で、一卵性双生児の兄弟(ド ナー)の骨髄または幹細胞を、もう一方の一卵性双生児(レシピエン ト)に注入します。

• 適合非血縁ドナー(MUD)移植 – アロジェニック移植の一種で、幹細 胞は遺伝的に患者と一致しますが、家族の一員であるドナーからのも のではありません。骨髄腫では、この種の移植をするとGVHDの発生率 が高いため、用いられることは非常にまれです。

• 臍帯血幹細胞移植 – アロジェニック移植の一種で、成人の移植に十 分な幹細胞を得るために新生児の複数の臍帯から幹細胞を採取しま す。骨髄腫では、この種の移植をするとGVHDの発生率が高いため、用 いられることは非常にまれです。

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腫瘍:過剰な細胞分裂によってできた組織の異常な塊です。骨髄腫では、 腫瘍は形質細胞腫と呼ばれます。

椎骨:脊柱の33 個の骨質部分のうちのいずれかをいいます。複数名詞は 「椎骨」です。

ウイルス:細胞に感染し、細胞の機能を変化させることができる小さな生 きた粒子です。ウイルス感染に起因する病気と症状は、ウイルスの種類と 感染した細胞の種類によって異なります。

ワルデンストレームマクログロブリン血症(WM):形質細胞に影響を及 ぼすまれな種類の非ホジキンリンパ腫(NHL)です。IgM蛋白が過剰に産生 されます。WMは骨髄腫の一種ではありません。

白血球(WBC):侵入した細菌、感染症、アレルギー原因物質と戦う役割 を担うさまざまな白血球の総称です。これらの細胞は骨髄でつくられ、そ の後、身体の他の部分に移行します。特定の白血球には、好中球、好塩基 球、好酸球、リンパ球、単球があります。

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