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Case study, Nissan GT-R
商品自体をコンテンツに仕立てる −日産 GT-R のケーススタディ
日産のスポーツカー、スカイライン GT-R が、 「マイナス 21 秒ロマン」というキャッチコ
をたたき出してその高性能を証明して見せ たというエピソードもある。
ピーを用いてマスマーケティングを展開し たのは、今からほぼ 20 年前のことである。
毎年更新される GT-R のラップタイムや走行
ドイツ・ニュルブルクリンク・サーキット
動画、それをめぐる競合メーカーとの戦い
はその過酷さから一周のラップタイムがク
を、ファンや顧客は自発的に検索して接触
ルマの総合性能を反映すると言われ、世界
し、楽しみ、驚き、憧れを抱く。ニュルブ
的にスポーツカー開発の聖地として名高い。
ルクリンクでの GT-R のラップタイムは、言
前述のスカイライン GT-R のコピーは、この
語の壁を越えて理解できる上に、シンプル
ニュルブルクリンクでの旧モデルとのラッ
なメッセージゆえの王道感・本格感、また
プタイム差を示すことで、モデルチェンジ
20 年以上に及ぶ一貫性や伝統までを、世界
により更なる高性能を手に入れたことを、
中のファンに伝える役割を果たしている。
ターゲットに効果的にアピールするもので
日産 GT-R は、その商品と高い性能そのもの
あった。
を、どれだけ広告を打つよりも雄弁に伝え られるコンテンツとして仕立て、ファンや
ゴーン体制下で復活した「日産 GT-R」は、
顧 客 が こ の コ ン テ ン ツ に 触 れ る こ と で、
グローバルで一貫してマスマーケティング
GT-R に憧れ、ひいては日産への信頼を増し
を 行 っ て い な い。デ ビ ュ ー 前 か ら 各 地 に
ていく構造となっている。
GT-R の車両自体を出没させ、写真を撮らせ 拡散させることでファンの間での興味を引
伝統やエピソード、そして日産の情熱を含
き、2007 年の復活デビュー後は毎年ニュル
め、商品そのものに価値を語らせるコンテ
ブルクリンクに GT-R を持ち込み、現在まで
ンツが、言語の壁を超えた迫力あるメッセー
量産市販車としての最速ラップタイムを更 新し続けている。2008 年にはポルシェから GT-R のラップタイムに対して疑義が呈され たが、翌 2009 年にはこれを逆手にとって世 界中から多数のメディアを証人として招い た上で、前年以上のラップタイム
ジとなることを日産 GT-R のケースは教えて
くれている。そして、そのコンテンツはグ ローバルの顧客の心を捉え続けている。