Interbrand 30th Year Initiative 07

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Case study, Nissan GT-R

商品自体をコンテンツに仕立てる  −日産 GT-R のケーススタディ

日産のスポーツカー、スカイライン GT-R が、 「マイナス 21 秒ロマン」というキャッチコ

をたたき出してその高性能を証明して見せ たというエピソードもある。

ピーを用いてマスマーケティングを展開し たのは、今からほぼ 20 年前のことである。

毎年更新される GT-R のラップタイムや走行

ドイツ・ニュルブルクリンク・サーキット

動画、それをめぐる競合メーカーとの戦い

はその過酷さから一周のラップタイムがク

を、ファンや顧客は自発的に検索して接触

ルマの総合性能を反映すると言われ、世界

し、楽しみ、驚き、憧れを抱く。ニュルブ

的にスポーツカー開発の聖地として名高い。

ルクリンクでの GT-R のラップタイムは、言

前述のスカイライン GT-R のコピーは、この

語の壁を越えて理解できる上に、シンプル

ニュルブルクリンクでの旧モデルとのラッ

なメッセージゆえの王道感・本格感、また

プタイム差を示すことで、モデルチェンジ

20 年以上に及ぶ一貫性や伝統までを、世界

により更なる高性能を手に入れたことを、

中のファンに伝える役割を果たしている。

ターゲットに効果的にアピールするもので

日産 GT-R は、その商品と高い性能そのもの

あった。

を、どれだけ広告を打つよりも雄弁に伝え られるコンテンツとして仕立て、ファンや

ゴーン体制下で復活した「日産 GT-R」は、

顧 客 が こ の コ ン テ ン ツ に 触 れ る こ と で、

グローバルで一貫してマスマーケティング

GT-R に憧れ、ひいては日産への信頼を増し

を 行 っ て い な い。デ ビ ュ ー 前 か ら 各 地 に

ていく構造となっている。

GT-R の車両自体を出没させ、写真を撮らせ 拡散させることでファンの間での興味を引

伝統やエピソード、そして日産の情熱を含

き、2007 年の復活デビュー後は毎年ニュル

め、商品そのものに価値を語らせるコンテ

ブルクリンクに GT-R を持ち込み、現在まで

ンツが、言語の壁を超えた迫力あるメッセー

量産市販車としての最速ラップタイムを更 新し続けている。2008 年にはポルシェから GT-R のラップタイムに対して疑義が呈され たが、翌 2009 年にはこれを逆手にとって世 界中から多数のメディアを証人として招い た上で、前年以上のラップタイム

ジとなることを日産 GT-R のケースは教えて

くれている。そして、そのコンテンツはグ ローバルの顧客の心を捉え続けている。


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