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The Educational Research Center for Anthrozoology Newsletter

www.ercaz.jp

和 製ヒトと 動 物 の 関 係 学 の た め に

CHANGE

By ANTHROZOOLOGY in Japan

ニュースレター J a n / Fe b 2 0 1 4

Vol.

20

最終号

特集コメント

人と動物の関係学ー今までの進展と未来 デニス・ターナー博士 新説イヌ 番外編

動物の地震予知能力「猫に注目！」

2014年に実施される 動物看護師統一認定試験に対応した最新版が登場！ 2013年8月下旬発刊予定！

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CHANGE Jan,Feb 2014 Vol 20

C o n t e n t s ERCAZ featur e 4

Special Comment

人と動物の関係学ー今までの進展と未来

（デニス・ターナー博士） 9

Ser ies of ne w t he o ry ” D o g ” 新説イヌ番外編

動物の地震予知能力「猫に注目！」

Model Animal Wink&John

C u t i e , Yu f f y & T i a r a

12

研究

犬のストレス評価に関する研究 ～ ”down!”、”sit!” 成功でリラックス～

Publishing Director Mitsuaki Ohta

Chief Editor

R esearch

14

Column コラム

Junko Akiyama

馬と人の関係ー午年だから馬を知ろうー

Photographic Hikari Mita Chika Sato

15

ニュースレター CHANGE vol.20

Model's Profile

2014 年 2 月 1 日発行 発行所： ヒトと動物の関係に関する 教育研究センター (ERCAZ) 〒 252-5201 神奈川県相模原市 中央区淵野辺 1-17-71 麻布大学 介在動物学研究室 Tel:042-786-7027 Fax:042-786-7147 info@ercaz.jp 本誌記事・写真等の無断転用を固く 禁じます ©ERCAZ 2014

Ev ent&Topics

ウィンク（ポニー雑種、牝）

ジョン（ノルウェージャン・フォレストキャット 、♂） キューティー（ポニー雑種、牝）

ユフィ―とティアラ（ラブラドール・レトリーバー、♀）

最終号の表紙は、馬と猫の組み合わせで登場です。 ウィンクは、小柄でかわいい牛柄模様の外見から 子供たちには大人気です。ジョンは、猫が大抵嫌 がる散歩が大好きで道を歩いていると人が振り返 ります。 最終頁に犬と馬の写真を掲載しています。ユフィ―とティアラは、私には未 だ見分けがつかないそっくりな外見の仲良し兄弟です。キューティーは馬た ちの中で一番芸達者でお転婆な性格です。 今まで研究室の様々な動物が表紙を飾りました。写真では動物しか写ってい ませんが、その裏側 ( 正面）には人の苦労と笑顔があり、人と動物の幸せな 関係を感じます。 本誌は ERCAZ の機関誌です。

Special Comment

人と動物の関係学―今までの進展と未来 本誌創刊号にデニス・ターナー博士に寄稿をお願いしましたが、5 年を経てこのたびの締 めくくりに再度コメントをいただきました。前回ターナー博士は「アンソロズーオロジー （人と動物の関係学）は青年期に達した」と言われました。この学問の変化は過去から今 までにみられたのでしょうか。過去の発展を振り返り、また未来のアンソロズーオロジー についてお話しいただきました。

思います。この５年間の anthrozooloy （人 と動物の関係学）の領域において多くの

で同様の依頼を受けましたことを光栄に

た、若干残念なことですが、この最終号

の創刊号で短報を ５年前の CHANGE 書 く こ と が で き 光 栄 に 思 い ま し た。 ま

使として務めています。私は、ＥＵの国

表であり、しかしそれはＩＡＨＡＩＯ大

するＩＡＨＡＩＯ委員会の〝唯一の〟代

大の大会となった２００７年の東京大会

たものを手掛けました、それは、過去最

るカンファレンスの中で近年最も成功し

チューリッヒ大学獣医学部特定教員、麻布大学客員教授、 ERCAZ（ヒトと動物の関係に関する教育研究センター） 評議メンバー、ヒトと動物の関係学会（HARS）名誉会員、 IEAP 所長

織）の会長だった当時、３年毎に開催す

ことが生じました。私が、まだＩＡＨＡ

です。今私は、ヨーロッパの問題を担当

Ｉ Ｏ（ 人 と 動 物 の 関 係 に 関 す る 国 際 組

デニス・C・ターナー博士

ERCAZ Newsletter / Jan, Feb 2014 / 4

Special Comment Dr Dennnis Turner

メンバー組織を加えて、組織を拡大する

ロの大金を出資しました。私の後任者の

を務めましたが、３年毎に１００万ユー

ションプロジェクトの幹部委員会の代表

オンアニマルに関する主要なＥＵコミッ

は大変評判の高い組織であり、コンパニ

を築くことができました。ＩＡＨＡＩＯ

際組織、ヨーロッパ委員会との良い関係

クショップを取り入れるためにビジネス

重要な問題に対するシンポジウムとワー

年 次 大 会 で も 新 規 の 重 要 事 項 に 挑 戦 し、

ジョンソンとエンダース・スレーゲル ス両博士の先導のもと、ＩＡＨＡＩＯの

配属された初の人となりました。

トと動物の関係学の寄付基金教授として

レ ー ゲ ル ス（ Marie-Jose Enders-Slegers ） はヨーロッパ（オランダ）において、ヒ

であるマリー・ジョゼ・エンダース・ス

なっています。そのうえ、副会長の一人

ＳＡＡＴには、世界におけるトレーニン

めの応募書類の合否を行っています。Ｉ

するという点で「正会員」に加入するた

ＩＳＡＡＴはその組織が適性認定に相当

適 性 評 価 委 員 会 メ ン バ ー の 推 薦 の も と、

までその地位を務めています。独立した

法に関する国際学会）の創立メンバーと

太田光明教授はＩＳＡＡＴ（動物介在療

女の貢献は良く知られています。 その後、

ＡＩＯやＩＳＡＺ（人と動物の関係に関

士を採用するまで展開しました。ＩＡＨ

グプログラムに対して高い基準がありま

なり、副会長に当選してから今日に至る

する国際学会）のカンファレンスでの彼

のに成功しました。年々加入し、特にこ

日に

会 議 へ と 発 展 さ せ ま し た。 （ 注 記： 次 の

の

のたびＡＶＭＡ（アメリカ獣医学会）と

年次大会は２０１４年７月

会長レベッカ・ジョンソン教授が、

合同で実施したときには、 我々の組織が、

アムステルダムで開催される。 ）したがっ

す。現在の正会員８団体のうち２つの大

日・

さまざまな方法でコンパニオンアニマ ルと関わりのある８万の専門家の代表に

て組織的な観点から言えば、その分野は

学のプログラムがあります。

する教育研究センター）は世界で名高い

学のＥＲＣＡＺ（ヒトと動物の関係に関

ムを世界で初めて設立しました。麻布大

でのＡＡＩトレーニングと認定プログラ

でしょう。ＩＡＨＡＩＯケーススタディ

ムステルダム会議で精査され表明される

の定義をまとめています。それらは、ア

動 物 介 在 介 入（ 療 法、 教 育、 活 動、 等 ）

は、国際的に受け入れられる専門用語と

の歴史と未来の両方にとっ anthrozooloy て重要であり、広範に基づく国際委員会

Ｉ Ａ Ｈ Ａ Ｉ Ｏ の 最 近 の 二 つ の 活 動 は、

研究者や教育者を主要メンバーとして招

麻布大学大学院では私個人の組織であ るＩＥＡＰと協力しており、大学ベース

急速に、正しい方向へ成長しています。

26

くことに成功し、後に教員に大谷伸代博

ERCAZ Newsletter / Jan, Feb 2014 / 5

25

50

Special Comment

データバンクを設立することに打ち込む ワークショップもあるでしょう。それは より多くの研究（メタ分析）を可能にし て、動物介在介入の分野でより良い実践

治療的な研究を含む実践のための最も重

と 猫 の 円 満 な 関 係 に 重 要 で す。 し か し、

に対する最初の証拠である考えられ、人

の哲学者によって種間の「公正」な概念

とが報酬となります。その発見は、一部

パートナーの交流への要求の順守するこ

動 に 合 う よ う 行 動 を 調 節 し、 お 互 い が

特に飼い主と猫の両方がパートナーの行

（ＮＩＨ）とマーズ社のウォルサムセン

年の初めにはアメリカ国立衛生研究所

参」は心から感謝しています。２００９

り定着することができました。我々「古

でした。このおかげでその分野は生き残

の研究はペットフードの会社による出資

るのかということでした。初期の大部分

科学分野の人にとってどのようにみられ

金を稼ぐか、そしてこれらの研究が他の

私の研究を振り返ってみますと、自分 の研究の中で最も重要な研究成果と実践

反応な子どもが、どのようにセラピー動

安定な愛着をもつ子ども、人の助けに無

おり、選抜されたこれらの研究の質と安

Ｈ と ( その他の国立健康科学財団 に )お ける通常の相互評価のプロセスを通して

築しましたが、今や研究の提案は、ＮＩ

ターの二つで官民パートナーシップを構

要 な 研 究 は、 最 初 に 説 明 し た 研 究 成 果 （

Beetz, Kotrschal, Turner, Hediger, UvnasMoberg and Julius, 2011 Anrhrozoos 24 (4): ） で あ る と 考 え て い ま す。 そ れ 349-368

は、 Julius, Beetz, Kotrshal, Turner, Uvnasが書いた最新で広範な評価の高 Moberg

へ の 示 唆 に つ い て ど の よ う に 思 う か と、

するメカニズムについての証拠を示しま

を促進するでしょう。

の 編 集 者 に 尋 ね ら れ ま し た。 CHANGE 多くの発見がありました。ちょうど発行

した。

い本 "Attachment to Pets" （ Hogrefe Publ. ） に示されています。この研究の中で、不

されたばかりの第３版のターナーとベイ

で、人と動物の研究でどのようにして資

物、特に犬によって助けられるかを説明

トソン著「ドメスティク・キャット（家

私が注目するのは１９８０年代の当時 私が研究していたときに起きたある変化 ）にま Cambridge University Press と め ら れ て い ま す。 し か し、 お そ ら く、

猫） 」 （

ERCAZ Newsletter / Jan, Feb 2014 / 6

Special Comment Dr Dennnis Turner

と健康の雑誌の中に多くのＨＡＩ（人と

定性を保証しています。定評のある医療 麻布大学から去る予定です。ただし、お

しょうか？太田光明教授は来年あたりに

の分野の未来とコンパニオン・アニマル

Ｏ２００７のカンファレンスで理解した

あります。我々「欧米人」はＩＡＨＡＩ

性を増しています。

待しています。しかし、日本には他にも

な仕事を彼女が継続してくれることを期

してきて、太田教授が大学で始めた重要

かし、この数年間大谷伸代講師と仕事を

仕事してきたことを光栄に思います。し

爽快に、楽しくやってきました！

同 じ 時 代 に す べ て を ワ ク ワ ク し な が ら、

も 貢 献 す る こ と が で き れ ば と 思 い ま す。

に、日本での私の仕事が両方にわずかで

について強い自信をもっています！最後

のです。つまり、私は、日本におけるこ

動物の関係）に関する投稿論文を見るこ

そ ら く anthrozoology の分野を去るので はありません！過去 年の間彼と一緒に

私は２０００年より日本で仕事をして いますが、その 年間について考えたい

優秀なＨＡＩの研究者がいる大学施設も

とがあります。それもまた私たちの信頼

と思います。一つは、雑誌 CHANGE の 発行を含む麻布大学の活動について、一

10

つは、ＩＡＨＡＩＯメンバー組織である Ｊ Ａ Ｈ Ａ（ 日 本 動 物 病 院 福 祉 協 会 ） 、Ｈ Ａ Ｒ Ｓ（ ヒ ト と 動 物 の 関 係 学 会 ） 、ＪＳ Ｄ Ｒ Ａ（ 日 本 介 助 犬 ア カ デ ミ ー） 、ＣＡ ＲＩＣ （コンパニオンアニマルリサーチ） に つ い て で す。 日 本 人 は、 コ ン パ ニ オ

ERCAZ Newsletter / Jan, Feb 2014 / 7

ン・アニマルが我々にもたらすもの、彼 らが人の健康や福祉に与えてくれる恩恵 についてもっと多く気づくようになりま した。同様にこれは、こうしたコンパニ オン・アニマルに対する尊敬の念が増し、 動物の福祉や保護を確実にするのを助け ています。幸せな動物は人を幸せにする では将来待ち受けていることは何で

ということです！

Beetz, A., Kotrschal, K., Turner, D., Hediger, K., Uvnäs-Moberg, K. & Julius, H. (2011). The effect of a real dog, toy dog and friendly person on insecurely attached children in a stressful task: an exploratory study. Anthrozoös, 24, 349-368.

10

Special Comment Anthrozoology – progress to date and the future. (meta-analyses) and promote better/best practices in the field I was honored to be able to write a short article in

the first issue of “Change” some 5 years ago and am honored, but somewhat saddened, to be asked to do the same in this last issue. Much has transpired in the field of anthrozoology in those five years. Back then I was still the president of IAHAIO, which had recently conducted one of its most successful triennial conferences - and certainly the largest ever - in Tokyo 2007. Now I am “only” a Delegate of the IAHAIO Board for European Issues; but as an IAHAIO ambassador, I have been able to establish good contacts for the international organization in the EU and with the European Commission.

IAHAIO is a very well-respected organization and represented on the executive committee of a major EU-Commission project on companion animals, financed to the tune of 1 million Euros over three years. My successor as president, Professor Rebecca Johnson, has succeeded in expanding the organization to include some 50 member organizations - with more joining each year - and now, especially since the AVMA joined us, our organizations ((Junko: plural)) represent some 80’000 professionals involved with companion animals in one way or another. Further, one of our vice presidents, Marie-José Enders-Slegers, has just become the first person to be installed as an endowed professor in anthrozoology in Europe (in the Netherlands).

Under the leadership of Drs. Johnson and Enders Slegers, our IAHAIO annual meetings are also taking on a new importance and being expanded beyond just the business meeting to include symposia and workshops on important issues. Note: The next such annual meeting will be held on July 25 and 26, 2014 in Amsterdam (see www.iahaio.org for details in due course). Therefore from an organizational point of view, the field is growing rapidly and in the right direction.

Azabu University Graduate School of

Veterinary Medicine - in cooperation with my private Swiss institute I.E.A.P. - established the very first university-based AAI training and certificate program in the world. The Educational Research Center for Anthrozoology (ERCAZ) at Azabu University succeeded in attracting world-renowned researchers and educators as principals and later expanded its staff to include Dr. Nobuyo Ohtani, well known for her contributions to IAHAIO and ISAZ (the International Society for Anthrozoology) conferences. Later Prof. Mitsuaki Ohta was a founding member and elected as vice president of the International Society for Animal-Assisted Therapy (ISAAT, www.aat-isaat.org), a position he holds to this date.

Upon the recommendation of its independent Accreditation Board members, ISAAT accepts or rejects applications for ‘full membership’ in that organization, the equivalent of accreditation. ISAAT has the highest standards for training programs in the world, eight of which are now full members including two university programs.

Two recent activities of IAHAIO are important

to both the history and the future of anthrozoology: A broadly based international committee is finalizing internationally acceptable terminology and definitions of animal-assisted interventions (therapy, education, activities etc.), which will be refined and voted on at the Amsterdam meeting. And there will be a workshop dedicated to establishing an IAHAIO case study data bank, which will enable more outcome research

of animal-assisted interventions.

Looking back now on my own research, the

editor of Change asked me what I consider to be my own most important research finding and its implications for practice.

There were many findings, summarized in the just published, third edition of Turner & Bateson’s The Domestic Cat (Cambridge University Press). But in particular, probably that both the owner and a cat adjust their behavior to fit that of the partner, and that they reward each other for compliance with the partner’s interaction wishes. That finding is considered by some philosophers to be the first evidence for a “fairness” concept between species and it is important for harmonious human-cat relationships. But I think the most important work for the practice, including therapeutic work, is the finding presented first in: Beetz, Kotrschal, Turner, Hediger, UvnäsMoberg and Julius (2011) Anthrozoös 24(4): 349-368, followed by the recent and widely acclaimed book Attachment to Pets (Hogrefe Publ.) by Julius, Beetz, Kotrschal, Turner and Uvnäs-Moberg. In those works we propose and provide evidence for the mechanism explaining why insecurely attached children, who are unresponsive to human help, can be reached and helped by a therapy animal, especially dogs.

One change that I have witnessed taking place

since I began working in this field back in the 1980s is how human-animal research is financed and how people in other scientific disciplines look at such research. In the beginning almost all research was financed by the pet food industry, for which we “oldies” are grateful since it helped keep the field alive and establish it. Beginning in 2009 with the publicprivate partnership between two of the US National Institutes of Health and Mars Inc./Waltham Centre, research proposals now go through the normal peer-review process at NIH (and other national health and science foundations) ensuring the quality and robustness of those studies selected for support.

We are also seeing ever more HAI publications in established medical and health journals, which also increases our credibility.

I have been working in Japan since 2000 and

I would like to think that over the last decade, partly due to the work of Azabu University, including publication of the journal “Change”, and partly due to the IAHAIO member organizations JAHA, HARS, JSDRA and CAIRC, Japanese people have become more aware of what companion animals mean to us and the benefits they provide to our health and well-being; this in turn has hopefully increased their respect for these companions and helped ensure the animals’ welfare and care. Happy animals make people happy!

What does the future hold? Prof. Mitsuaki Ohta

will be leaving Azabu University sometime next year, but hopefully, not the field of anthrozoology! It has been great working with him over the past decade. But I have also worked with Nobuyo Ohtani during several of those years, and I hope that she will continue the important work that Ohta began at that university. But there are also other academic centers with excellent HAI researchers in your country - as we “westerners” discovered during IAHAIO 2007. So I am quite confident for both the future of the field and the companion animals in Japan! Finally, I hope that my work in your country has also made a small contribution to both. It has been exciting, invigorating and fun all at the same time!

ERCAZ Newsletter / Jan, Feb 2014 / 8

番外編 動物の地震予知能力 「 猫に注目！」 猫の地震予知

変化が現れてきました。きっか

けは阪神淡路大震災です。兵庫

県内の獣医師アンケートや日本

・ ２ ％、 猫 で は

愛玩動物協会の聞き取り調査の

・５％が異常行動を示したと

結 果、 犬 で

・５％という数値の評価は

の回答が寄せられたのです。猫

の

分かれるところですが、この調

的 捉 え や す い と さ れ て い ま す。

ト型の地震で、前兆現象を比較

とするこれらの地震は、プレー

のことです。東海地震をはじめ

南海地震ですら不可能であると

での直前予知は、東南海地震や

しかしながら、そのほかの地域

知 も ど う や ら 可 能 な よ う で す。

測網も整備され、発生直前の予

います。東海地震については観

異常行動による地震

様 な 扱 い で、 動 物 の

た。 現 在 で も ほ ぼ 同

扱いされてきまし

の少なさから〝迷信〟

学的な根拠や被験数

り ま す。 し か し、 科

を読み込んだ歌があ

れら動物の異常行動

承されています。中国では、こ

げ出す〟などの話は古くから伝

〝 ナ マ ズ が 騒 ぐ と 地 震 が 起 こ る〟や〝地震直前にネズミが逃

したが、絶対数が少なくひとつ

れたなどの話が紹介されてきま

のたびに、犬が騒いだや猫が暴

査結果の意義は調査対象者の多

これに対して、主に内陸部で発

予 知 な ど と い え ば、

地震前に動物たちが見せる異 常行動は迷信に過ぎないのか

生する直下型地震は活断層のズ

みんなそろって 地震の予知は 動物異常 大切さ ウシ、ウマ、ロバ、ラバ 小屋入らず 豚餌食べず ウサギ耳たて はねとんで イヌ屋根の上 狂いほえ ネコ驚いて 家を出る ニワトリは樹に ハトは去り ネズミ群なし 引っ越して イタチ、オオカミ 群れ駆ける 氷と雪に ヘビ出でて 冬眠動物 はや見覚め トンボ群れ飛ぶ 同じ向き ミツバチ群れて 飛び去りぬ トノサマガエル、ヒキガエル 声なくもだえ 魚はねて 浮いて見せるは 白き腹 キジ怪しさに 乱れ飛び セミ木から降り 静けさに 動物園のヒョウ、トラは 餌食べず 恐れいななく パンダ、鹿 サンショウウオは岸で啼き 金魚は鉢から飛び出して 飛び鳴き騒ぐ かごの鳥 気を配り 地震前兆 見つけ出し にせもの除き 考えよう すぐに出来て 効果あり どこの家でも 役に立つ

『宏観異常与地震』より池谷訳 『地震の前、なぜ動物は騒ぐのか』（池谷元伺著、ＮＨＫブックス）

さにあります。これまでも地震

レによるもので、その前兆現象

る傾向があります。

「カルトである」とす

地 震 大 国 ニ ッ ポ ン に と っ て、 その予知は切実な問題となって

26

を捉えるのは極めて困難とされ

と こ ろ が、 こ こ 最

近このような状況に

ERCAZ Newsletter / Jan, Feb 2014 / 9

39

39

て い ま す。 残 念 な こ と で す が、 我々人間は地震の前ではまだま だ無力のようです。

中国の地震防災歌

光明 太田

物の異常行動と地震発生の関連

など複数の大学や研究機関で動

大阪大学、東海大学、麻布大学

受 け ら れ ま せ ん で し た。 現 在、

のエピソードとしての評価しか

テレビでも放送されました が、実験では猫の近くで人為的

いことです。

取っているのか検証されていな

がどのようなメカニズムで感じ

問題はこの電磁波を、動物たち

ています。

はあまりにもったいないと思っ

猫の異常行動を〝迷信〟のよ うなものとして、一笑に付すの

があります。

のメカニズムは未だ不明な部分

に成功した例は少ないのが現状

観的なデータとして捉えること

られますが、これらの行動を客

生する何らかの物理・化学現象

に地殻に応力が加わることで発

です。

を感知したために生ずると考え

性やメカニズムが研究されてい に電磁波を発生させると、確か

破壊が起こることも定説となっ

し、地震発生前後に大量の岩石

は科学的にも確認されています

岩石破壊による、電磁波の発生

たちが反応するという説です。

が放出され、この電磁波に動物

り、それによって大量の電磁波

ら震源域の岩石に破壊が起こ

発生の当日～２週間前あたりか

かな説明は省略しますが、地震

されているのが電磁波です。細

動物たちが地震発生前に異常 行動を取る原因として、有力視

で す。 例 え ば、 「塩分を取りす

事例が数多く存在しているから

も、現象として確認されている

ニズムが解明されていなくと

要なものです。なぜなら、メカ

ズムが解明されていなくとも重

しかし、猫が電磁波に反応し たという実験結果はそのメカニ

脱していません。

ん。電磁波説は未だ仮説の域を

いるのかは確認されていませ

のどの感覚器や組織が反応して

ては確認できるのですが、生体

を感じていることは、現象とし

に遠ざかります。動物が電磁波

バルの一助にはなるはずです。

行えば、大地震発生時のサバイ

心構えや非常用品の確認などを

これをきっかけに地震に対する

と は 思 い ま せ ん。 少 な く と も、

目に考えることが間違っている

ですから、猫の異常行動を真面

ほかに入手できる情報がないの

な く、 精 度 に 乏 し い に し て も、

なります。確かに科学的根拠が

一の地震予知情報ということに

と、私たちが確認しうるほぼ唯

情報が皆無であることを考える

な科学的根拠に基づく地震予知

だ不明ですが、天気予報のよう

猫の異常行動と地震発生の因 果関係やメカニズムは、まだま

観測することができれば、地震

着きのなさ」を定量化し、日々

かになっています。この「落ち

行動が最も多かったことが明ら

猫 と も に「 落 ち 着 き を な く す 」

行 動 に 関 す る 調 査 に よ り、 犬、

地方太平洋沖地震」の地震前兆

報告は多く、「２０１１年 東北

犬や猫の地震前兆行動に関する

です。世界中で飼育されている

が可能で、客観的な指標が必要

猫の異常行動を確認したら

ます。

ていますから、電磁波発生は間

ぎると高血圧になる」は現象と

動物を使用して地震予測を行 うためには、毎日観測すること

違 い な い と 思 わ れ ま す。 ま た、

して確認され、広く認知されて

に 猫 は 目 を し ょ ぼ つ か せ た り、

電磁波は極めて高い直進性を有

いますが、なぜ塩分の過剰摂取

電磁波に反応する？

していますから、地中深くで発

電磁波発生地点から逃げるよう

生した電磁波でも地上まで到達

が高血圧を引き起こすのか、そ

地震前兆行動は、地震発生前

最新の研究

す る こ と も 検 証 さ れ て い ま す。

猫に装着した活動量計 " fitbit zip（参考価格：5480 円）"

ERCAZ Newsletter / Jan, Feb 2014 / 10

２０１３年９月 日から約５か

着 に １ 週 間 の 馴 致 期 間 を 設 け、

段 と 同 様 に 飼 育 し ま し た。 装

） を 猫 の 首 輪 に 装 着 し、 USA 研究室内を活動範囲として普

た。活動量の測定のため、人用

済 み オ ス、 ９ 歳 ） を 用 い ま し

介在動物学研究室で飼育さ れ て い る 猫 １ 頭（ 雑 種、 去 勢

を検証しました。

行動の観測手法としての妥当性

性を検証することで、地震前兆

観測し、発生した地震との関連

きのなさを「行動頻度」として

そこで研究では、飼育されて いる猫を対象とし、猫の落ち着

可能性があります。

間前に＋２δを超えた地震が

み ら れ（ ※ ） 、 ま た、

＋２δ（デルタ）を超える値が

果、２つの地震の

間前の合計歩数を算出した結

した解析対象地震は合計７回あ

した。また、試験期間内に発生

試験期間内で、猫は一日平均 で ３ ０ ３ ３・４ 歩 活 動 し て い ま

析対象としました。

震度３以上を観測した地震を解

の地震、及び同観測点において

観測したマグニチュード

以上

溝観測点において震度１以上を

に最も近い神奈川県相模原市上

における地震のうち、麻布大学

地震との関連性を検証するた め、気象庁が発表した日本国内

めに行う観測では、煩雑な手法

かわからない地震を予測するた

あります。また、いつ発生する

を増やし、観測を続ける必要が

れます。様々な地域で供試動物

とが原因の一つであると考えら

よる変動を除去出来なかったこ

人間の活動などの様々な要因に

ます。

上では有効な手段であると考え

とんどなく、活動量を計測する

が手作業で操作する必要性がほ

命も６ヶ月と長いことから、人

び解析を自動で行い、電池の寿

器はデータのアップロード、及

は有効ではありません。この機

Me an

3000

2500

+2σ

4000

48-72 時間前

1500

24-48 時間前

1000

0-24 時間前

500

0

72-96 時間前

-2σ

2000

歩 数 / 日

の ワ イ ヤ レ ス 活 動 量 計（ fitbit り ま し た（ 表 １） 。各地震の発 zip; FB301C-JP; Fit bit, Inc.; 生直前から 時間前、 ～ 時 間前、 ～ 時間前、 ～ 時

１ 回 観 察 さ れ ま し た（ ☆ ） （図

No.7

No.6

No.5

No.1 No.2 No.3 No.4 図 1 7 回の地震発生前における合計歩数

時間以内に

１） 。 今 回 の 結 果 か ら、 地 震 の

時

軸の加速度センサーによって測

前兆として活動量に変化が現れ

～

定され、歩数として記録されま

ERCAZ Newsletter / Jan, Feb 2014 / 11

前兆行動を数値的に捉えられる

月間記録しました。活動量は３

し た。 サ ー バ ー 上 に 蓄 積 さ れ

R Software る可能性が示されましたが、活 動量の上昇と地震との明確な関 連は明らかにできませんでし

※

5000

72 24

までの 震度 震源地 マグニチュード 深 さ (km)

96 48 48

24

48

た。 供 試 猫 は １ 頭 で あ る た め、

表 1 2013 年 9 月 22 日～ 2014 年 2 月 18 日に発生した有感地震のうち マグニチュード 5.0 以上、もしくは震度３以上の地震

観測 地

距 離 (km)

498.2 1

2013/10/26

02:10

7.1

56

福島県沖

2

2

2013/11/10

07:37

5.5

64

茨城県南部

2

78.6

3

2013/11/16

20:44

5.3

72

千葉県北西部

3

69.0

4

2013/11/29

01:15

4.8

69

千葉県北西部

3

67.2

5

2013/12/14

13:06

5.5

49

千葉県東方沖

1

121.7

6

2013/12/21

01:10

5.2

62

茨城県南部

2

78.1

7

2014/02/11

04:14

5.3

91

房総半島南方沖

2

190.1

3500

（σは標準偏差を表し、これを倍にした±２σの範囲内に全データの 95％が入る。 したがって２σを超えた値は異常な値として認識することができる。 ）

5.0

72 24

24

※

☆

4500

た 歩 数 デ ー タ は、

析に用いました。

（ version 2.15.0) を用いて、 分毎の歩数データを回収し、解

15

時間 年月日 地 震 No.

22

Reference： 山口詩織（2014）犬のストレス評価に関する研究ーリラックスの指標 としてのコマンド「down!」の検討ー , 麻布大学卒業論文 （一部改変）

見られた（P < 0.05）（図 1）。また、個体別に

るものではなかった。このことがコマンドの成功

HF、LF/HF の変化量とコマンドの成功回数の相

回数と HRV に相関関係がなかった要因だと思わ

関を解析したところ、対象犬 A 及び B において

れる。

は「sit」、「down」ともに相関関係はなかった。

本研究では、様々な状況下におけるコマンドの

個体 C においてベースと有刺激での「down」の

成功回数と尿中コルチゾール濃度及び HRV の関

成功回数に有意差がみられ、HF 及び LF/HF 変

連性を明らかにする事を目的とした。結果より、

化 量 は 相 関 傾 向 に あ っ た（P ＝ 0.07）（ 図 2）。

コマンドの成功回数と HRV に関連性があること

このことからストレス・興奮状態であるときほど

が明らかになり、コマンド「sit」、「down」がス

コマンドの成功回数が少なく、逆にリラックスし

トレス指標として使用できる可能性が示唆され

ている状態ではコマンドの成功回数が多いという

た。今回使用したコマンド「sit」、「down」は、

ことがいえる。

一般の飼い主が必ず飼い犬に教えるコマンドであ

また、コマンドの成功回数が多いと副交感神経

り、一般の飼い主でもリラックスの指標として簡

が活性化している傾向があった。コマンドの成功

易的に用いることができるストレスサインとして

回数が多い時と少ない時とを比べると、報酬とし

有用である。

てのフードの数は個体で統一していたため摂食の

犬との幸せな生活をしたいというのがすべての

影響は低く、ハンドラーの褒める回数の違いが関

飼い主にとっての願いであるが、何をすればよい

係しているのではないかと考える。このことから

か分からず、思い通りの関係にならないという人

犬はハンドラーから提示されたコマンドに対して

もいるだろう。犬にとって心地よいのは飼い主と

成功し、褒められることで副交感神経が活性する

の関わりである。本研究では、犬にコマンド（指

事が示唆された。

示）を与え、できたら褒めてやることが犬をリラッ

対象犬 A と B は、対象犬 C で観察された低姿

クスさせることが分かった。日常のトレーニング

勢や震えなどの高いストレス反応はみられず、刺

で犬の状態を把握し、しっかり褒めてやることは

激提示直後において耳を引く、舌舐めずりなどの

犬の福祉にも有効である。また、犬とのよい関係

行動が見られたものの刺激提示終了時まで持続す

を築くことは飼い主にも確かな恩恵がある。

6

6 sit down

5

5 成功回数︵回︶

成功回数︵回︶

4 3 2

4 3

1

1

-1.5

-1

-0.5

0

sit down

2

0

0.5

1

1.5

2

LF/HF 変化量（ms²）

図 1. sit、down の成功回数と LF/HF 変化量に有意な 相関関係がみられた

-20

-15

-10

-5

0

0

5

10

15

HF 変化量（n.u.）

図 2. 個体 C においてベースと有刺激での成功回数に 差があり、HF、LF/HF 変化量と相関傾向があった ERCAZ Newsletter / Jan, Feb 2014 / 12

人と動物の関係をもっと知りたい！調査研究を紹介します

犬のストレス評価に関する研究 ～ ”down!”、”sit!” 成功でリラックス～ 生物にとって、ストレスは毎日の生活の中で日 常的に経験するものであるが、環境の変化への適 応は生き残るために必要なことである。ストレス がかかると恒常性（ホメオスタシス）によって保 たれていたバランスが崩れ、この状態が長く続く ことで様々な身体的、行動的変化が生じ、結果的 に疾患を引き起こすようになる。一般の家庭で飼 われている犬にとっても、新奇の人や様々な音刺 激は、犬の行動や生理機能に影響を与えることが 示されており、過度な舐め行動、尾追い行動、回 転、過度な吠えといった常同行動などがみられる ようになる。 飼い主がストレス状況を認識し対処することが

リラックスした状態の down

できれば、犬の福祉を守ることにつながり、さら

先行研究において、リラックス状態の指標とし

に問題行動へ発展する前に防ぐことができるかも

て「down」への反応率を用いることができる可

しれない。しかし、多くの飼い主は鳴くまたは身

能性が示唆された。もし「down」がリラックス

震いなど、ストレス指標として読み取ることが簡

状態の指標として有用なのであれば、これまでの

単な行動に注意を向け、あくびや鼻を舐めるなど

自発的なストレスサインとは異なり、飼い主から

ストレスの初期段階に見られるサインを見逃しが

の指示への反応により評価が可能であるため、簡

ちであるため、犬のストレスサインを正しく解釈

単に認識できると考えられる。

できる飼い主は少ないのが現状である。

本研究では、ストレスの生理的指標として用い

ストレス反応の生理学的指標として、コルチ

られている尿中コルチゾール濃度及び心拍変動と

ゾールがある。コルチゾール濃度は犬に対してス

コマンドの成功回数との関連性を明らかにするこ

トレス反応の生理学的指標として有効性が確認さ

とを目的とした。

れている。また、即時的なリラックスの指標と

実験では無刺激（ベース）と有刺激（音及び状

して自律神経系活動を評価する心拍変動（Heart

況）下においてハンドラーから提示されたコマン

rate variability : HRV）解析がある。HRV は交

ド「sit」、「down」への成功回数を記録した。対

感神経および副交感神経由来の低周波成分（low

象は介在動物学研究室の犬 3 頭（個体 A~C）とし、

frequency：LF）と、副交感神経由来の高周波

1 頭につきベースを 4 日間、有刺激を 5 日間実

成分（high frequency：HF）からなり、心理的

施した。実験前後の尿を採取し、コルチゾール

ストレス反応に対する自律神経活性を非侵襲的に

濃度を測定した。また実験中は対象犬に Polar®

測定することができる有効な方法であることが示

RS800CX を装着して心拍変動を測定し、HF・

されている。したがって、HRV 解析を行うこと

LF/HF 値を得た。

により、様々な刺激に対する自律神経の働きを測 定することが可能である。 ERCAZ Newsletter / Jan, Feb 2014 / 13

結果、全頭で「sit」と HF 変化量、そして「sit」、 「down」 と LF/HF 変 化 量 に 有 意 な 相 関 関 係 が

んでいる理由と先生の信念が

られたとあり、これに取り組

ポーツを２０００年から始め

店）では、エンデュランスと いう日本では馴染みのないス

増井先生の御著書「 歳で 夢を見つけた」 （紀伊國屋書

ある。

識が低いことは非常に残念で

動物ではなく、馬に対する認

日本人の生活では馬は身近な

競馬馬（サラブレッド）とい う偏った状況である。すでに

んどの種が絶滅危惧種であ る。それは使い道が閉ざされ ているからである。ただ保存 するだけでは普及は望めな い。新しいスポーツで有用性 が証明されれば種の保存に役 立 つ。 」 と。 増 井 先 生 が 麻 布 大学から去られる際に、後任 の太田光明先生に「馬を研究 室で継続して欲しい」と残さ れたそうである。太田先生は その約束を守り今日まで馬の 研究と実践を継続して行って いる。 馬は、近代化・機械化が進 む に つ れ 役 割 を 失 っ た た め、 日本での飼養頭数は激減して いる。また、諸外国では数や 種類に大きな変化がなく、小 型ポニーから大型のものまで さまざまな種類を飼養してい るのに比べ、日本では６割が

も異なっている。体の大きさ

けでなく、歩いたときの揺れ

は、体の幅や高さが異なるだ

い か な い。 色 々 な 種 類 の 馬

何でも良いというわけには

つ い て ま と め て い る。 セ ラ ピーに用いる馬は、馬ならば

る犬を最良の友と呼ぶが、馬 も人になつき従順な動物であ る。特に、馬の特徴的な役割 は、人や荷を乗せて移動する ことで、忠実に仕事をこなす ことができる。草食動物とし ての感覚が発達していること から、周りの環境や人に対し て敏感に反応し、臆病な性格 と言われることもあるが、訓 練 す れ ば 適 応 で き る。 ま た、 目や耳などの様子が感情を表 現していることから表情豊か であることは大きな魅力であ る。これらの要素は、人との 関係を築く上でとても大切で あり、セラピーにも有用であ ろう。 研 究 室 で は ホ ー ス・ セ ラ ピーの効果を実証するデータ を 集 め、 さ ら に 実 践 し、 最 近ではセラピーに最適な馬に

としたい。

からの愛すべき家畜動物の未 来についてじっくり考える年

から初めてみよう。この古来

能力、良い所を理解すること

ので、まずは馬が持っている

や性格な ど人が扱 いやすい こと以外 に も、 乗 り 手（ 対 象者）に 合った馬 を選ぶ必 要がある。その結果、やはり 木曽馬は揺れが安定していて 最もよさそうである。 増井先生は、コウノトリや パンダなど数々の野生動物の 保護活動に貢献されたが、そ の中でも馬に特別な思いがあ り、家畜動物にも関わらず絶 滅の危機に瀕している在来 馬の行く末を案じていらっ しゃった。我々は増井先生の 遺志を継ぎ、馬を守ることが できるだろうか。今年は馬に

当研究室における馬とのつ きあいは、１９９６年に新設 された動物人間関係学研究室 に増井光子先生（前横浜ズー ラシア園長、２０１０年 月 逝去）が着任され、障がい者 乗馬研究のために２頭の木曽 馬を導入したことから始まっ た。著者は当時この研究室に 所属して、ダイとアカという 名前の２頭の馬の世話に奮闘 した。馬たちとの楽しい生活 というわけにはいかず、初心 者の学生にとって、ひき馬で ひっぱられ、足を踏まれると い っ た、 苦 い 経 験 の 方 が 多 かった。現在研究室では６頭 の馬を飼育し研究で活用して い る が、 ダ イ は 優 秀 な セ ラ ピー・ホースとなった。

書 か れ て い た。 「在来馬は８

人にとって従順で忠実であ

触れる機会が多いと思われる

種類いるが、残念ながらほと

10

60

文・秋山順子

ー午年だから馬を知ろうー

馬コラム

馬と人の関係

富士山の麓の牧場で乗馬効果実験

ERCAZ Newsletter / Jan, Feb 2014 / 14

E ve n t & T o p i c s ヒトと動物の関係に関する今後の予定を紹介します

ERCAZ 編

集

部

CHANGE 休刊のごあいさつ 2009 年の創刊以来、読者の皆様に親しまれて おりました小誌は、本号をもちまして休刊する こととなりました。 2007 年に東京で開催された IAHAIO カンファ レンス（人と動物の関係に関する国際学会）を 受けて設立した当センターですが、本領野につ いてわが国での普及のために何ができるかを考 え、広く知見を紹介することを目標とし発行を 開始しました。学問を学ぶ人、動物との共生に 関心をもつ一般の人などを対象とした読者のた めの手ごろな学習ツールとして、また、学問の 発展に寄与することを企図して続けてまいりま した。 これからも人と動物の共生に関わる業界にとっ て発展的な役割を担えるよう、良質な情報の発 信に努めたいと思います。 創刊から 5 年間、ご愛読いただいた読者の皆様 に深く感謝するとともに、ご支援いただきまし た皆様に心より御礼申し上げます。 CHANGE 編集長 秋山順子

学 会・ セ ミ ナ ー 第２０回ヒトと動物の関係学会 学術大会開催 第 20 回目の節目を迎える HAR ｓ（ヒトと動物 の関係学会）学術大会は、記念シンポジウム「こ れまでとこれからの HARs を考える」と、学会 シンポジウム「犬はどこまで理解されたのか」 を 2 日間で開催する。 ■日時…2014 年 3 月 8 日・9 日 ■会場…東京大学駒場キャンパス 13 号館 1313 ■主催…ヒトと動物の関係学会 ■最新情報はホームページ（http://www.hars. gr.jp/）をご覧ください

ＩＳＡＺ 2014 カンファレンス ウィーンで開催 第 23 回目となるＩＳＡＺ（人と動物の関係に 関する国際学会）はウィーンで開催される。テー マは「動物と人と共に。社会における融合」 。 ■日時…2014 年 7 月 19 ～ 21 日 ■会場…ウィーン大学（オーストリア） ■主催…ISAZ（conferences@isaz.net） ■最新情報はホームページ（http://www.isaz. net/conferences.html）をご覧ください

I A H A I O 2014 年次総会 アムステルダムで 開催

犬と馬の見つめる先には人の笑顔

ERCAZ Newsletter / Jan, Feb 2014 / 15

本シンポジウムでは、HAI（人と動物の関係） に関する視点、実践、知識の共有のために必要 な話し合いを行い、メンバー組織と文化の間で の情報交換とより良い理解を実現する。テーマ は「HAI における文化や専門領域の境界を乗り 越える」 。 ■日時…2014 年 7 月 24 ～ 26 日 ■会場…アムステルダム（オランダ） ■主催…IAHAIO ■ 最 新 情 報 は ホ ー ム ペ ー ジ（http://www. iahaio.org/）をご覧ください

CHANGE by ANTHROZOOLOGY in Japan

Vol. 20

2014 年 2 月１日発行 ヒトと動物の関係に関する教育研究センター 発行人：太田光明