FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021 EDITION Fashion Transparency Indexは、世界の大手ファッションブランドや 小売業者250社を対象に、事業活動やサプライチェーンにおける 人権や環境に関する方針、実践、 インパクトの公開状況を分析し、 ランク付けしたものです。
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
CONTENTS
CONTENTS
02 03 06 14 18 19 19 19 21 22 23 24 26 27 28 29 30 31 32 33 33 34 35
概要 ファッションレボリューションについて 主な調査結果 主な結果
このインデックスについて 私たちのセオリー・オブ・チェンジ 私たちが見たい変化 産業システムの内と外での私たちの役割 変化を起こすために、透明性が大切な理由 FASHION TRANSPARENCY INDEXの役割と目的 FASHION TRANSPARENCY INDEXが起こす変化 Case Studies: 現場での透明性 調査の方法と範囲について ブランドと小売業者の選定基準 ブランド一覧(アルファベット順) 調査範囲について 調査プロセス 調査方法について 調査方法に関する諮問委員会 調査の限界 調査結果の算出方法 得点の割合 最終スコアの見方
36 37 38 39 40 50 56 57 64 65 73 74 81 83 92 95 99 100 101 103 104
この出版物の内容は、 ファッションレボリューションの資金提供者の見解を一切反映していません。 この資料はファッションレボリューションCICの許可なしにコピーや翻案することはできません。
結果と分析 最終スコア 調査結果概要 各分野ごとの平均スコア 1. ポリシーと公約 2. ガバナンス (経営管理) Viewpoint: 環境、社会およびガバナンスの問題に関する透明性と投資家の役割 3. サプライチェーン・トレーサビリティ Tamil Nadu Allianceへのインタビュー 4. 把握・開示・改善 Viewpoint: 透明性の欠如と新疆ウイグル問題 5. 重点課題 Viewpoint: 大手アパレルブランドの新型コロナウィルス感染症パンデミックの 対応について Viewpoint: グローバルファッション業界における透明性向上の必要性に関する メーカーの視点 Viewpoint: 主流なブランドの過剰生産と循環、古着の取引に関する透明性の欠如 Viewpoint: なぜ、衣類における有害化学物質の使用に関する透明性が必要なのか Viewpoint:カーボンフットプリントの透明性は、 ブランドのSCIENCE-BASEDTARGETS の信憑性を高める鍵である 最終結論と推奨事項 透明性に向けての行動 Thank You 参考資料 免責事項
01
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
概要 TITLE CHAPTER
02
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
ファッションレボリューショ ンについて ファッションレボリューションは、環境を保全・修復し、成長や 利益よりも人を大切にするファッション業界の実現を目指して 活動しています。 バングラデシュのラナ・プラザ(5つの縫製工 場が入った商業ビル)の崩壊事故をきっかけに設立されたファ ッションレボリューションは、研究、教育、アドボカシー活動を 通じて、市民、産業界、政策立案者を動員する世界最大のファ ッション・アクティビズム運動となっています。
ファッション業界の問題は、決して一人の人間や一つのブラン ド、企業によって解決できるものではありません。 だからこそ私 たちは、私たちの声でシステム全体を変革することに注力して います。システム的、構造的な変化により、 ファッション業界は 何百万人もの人々を貧困から救い、彼らに適正で尊厳のある 生活を提供することができます。生きている地球を保全し、回 復させることができます。 人々を結びつけ、個人やコミュニティ の喜び、創造性、表現力の大きな源となることができます。
EXECUTIVE SUMMARY
03
FASHION TRANSPARENCY INDEXにつ いて Fashion Transparency Indexは、世界の大 手ファッションブランドおよび小売業者250 社を対象に、自社の事業やサプライチェーン における人権および環境に関する方針、活 動、影響についての公開レベルに応じて毎 年評価を行っています。
私たちは、 最大規模かつ最も収益性の高い ブランドや小売業者に焦点を当てています。 なぜなら、 これらの企業は、 労働者や環境に 最も大きな負の影響を与えており、 それゆえ に変革のための最大の責任を負っているか らです。
透明性は、世界のファッション業界で体系的 な変化を実現するための基盤となるもので す。 だからこそ、私たちは2014年から透明性 を求めるキャンペーンを展開し、 このツール の作成に至りました。 透明性は変革を支え るものですが、残念ながらファッションのバ リューチェーンの多くは不透明なままで、搾 取が平然と行われています。 透明性は最初 の一歩であり、抜本的なものではありません が、必要なものです。 透明性はサステナビリ ティと混同されるものではありません。 しか し透明性がなければ、 サステナブルで説明 責任を果たし、公正なファッション業界を実 現することは不可能です。
Fashion Transparency Indexは、人権や環 境問題に関するブランドの情報公開を、5つ の主要分野の239の指標で評価しています。 1.
2.
ポリシーと公約
ガバナンス
3.
サプライチェーン・トレーサビリティー
5.
今年の重点課題は以下の通り
4.
把握・開示・改善 •
•
働きがいのある人間らしい仕事、 新型コロナウィルス感染症への 対応、生活賃金、購買慣行、組合 結成と団体交渉 ジェンダーと人種の平等
•
サステナブルな調達と素材
•
廃棄物と循環性
• • •
過剰消費とビジネスモデル 水と化学物質
気候変動と生物多様性
このインデックスの仕組み、 透明性が重要な 理由、 および方法論については、 19〜35ペー ジをご覧ください。
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
EXECUTIVE SUMMARY
初めに ッション産業憲章」、G7の「ファッション協 定」、WRAPの新しい 「テキスタイル2030戦 略」などの共同の取り組みによって実現し ています。 しかし、本レポートで後述するよ うに、 ファッション業界は、特にサプライチ ェーンにおける環境への影響や、持続不 一方で、気候変動の緊急事態は依然とし 可能な生産と消費がもたらす結果に関し て続いています。 実際、 ここ数カ月の間に、 て、世界的な課題の規模に対処するため より大胆かつ 地球がさまざまな気候関連の転換点に予 に何をしているかについて、 想以上の速さで到達していることを示す 透明性を高める必要があります。 新しい研究結果がいくつか発表されてい ます。例えば、北極海の海氷は、 これまで もう一つの良いニュースは、世界のファッ 考えられていたよりも2倍の速さで減少し ション業界に人権と環境問題への取り組 ています。湖の酸素濃度は、40年前の3倍 みを要求する様々な新しい法律や規制が から9倍の速さで低下しています。先月発 目に見えるかたちとなり、そして今後も具 表されたWWF(世界自然保護基金)の報 現化されることが予想されることです。例 告書によると、ペンギン、 パフィン、 ユキヒョ えば、欧州連合(EU)では、今年、企業がサ ウなどの主要な種が、地球の気温が1.5℃ プライチェーン全体で人権と環境のリスク その一方で、多くの大手ファッションブラン 以上になった場合に絶滅の危機にさらさ を積極的に評価し、行動し、報告すること これはオーストラリ が求められるようになると予想されます。 ドとそのステークホルダーたちは、世界中 れるとしていますが、 また、企業が繊維や衣類の廃棄物をどの の何百万人もの衣料品労働者が職を失 アなどの地域ですでに起こっています。 ように処理しなければならないかについ い、賃金の未払いに直面し、食糧不足が 深刻化し、時には適切な個人用防護具( グロ ーバル・ファッション・アジェンダ ての新しい規則や、製品のデザイン、生産 マスクや防護服など)や社会的な距離を (GFA)と北米系コンサルティングファーム、 工程、製品表示の義務化についての政府 ファッション の新しい政策も、サステナビリティのテー 置くことなく仕事に戻ることを余儀なくさ マッキンゼーの調査によると、 れ、新型コロナウィルス感染症への感染リ 業界は世界の温室効果ガス排出量の4% マに関連して出てくるでしょう。 そのな スクがある状況を生み出したにもかかわ を占めていると推定されています。 らず、莫大な利益を上げ続けました。私た かでも良いニュースは、多くの大手ブラン ちの服を作っている人たちへの影響は壊 ドや小売業者が、パリ協定に沿って排出 滅的だと言っても過言ではないでしょう。 量を削減し、ネット・ゼロを達成するため 今年はグローバルバイヤーとそのサプラ に共同で行動しているという事実です。こ イヤー、そして縫製労働者の間の不均衡 れは、国連の「気候変動対策に関するファ 世界のファッション業界は、2020年4月に 昨年のインデックスを発表して以来、新型 コロナウィルス感染症の影響でひっくり返 ってしまいました。以降、残念なことに業 界内では多くの人権問題や環境問題にお いても状況が後退しています。2020年3月 にロックダウンが発表され、世界中の小 売店が閉店したとき、大手ブランドや小売 店はほぼ一晩でサプライヤーへの注文を キャンセルしました。 これらの注文はすで に動いていたもので、多くの場合、サプラ イヤーは原材料や労働力のコストを前払 いしていました。製品はすでに製造され、 時には出荷され、港や倉庫で待機してい ました。 その結果、多くのサプライヤーとそ の労働者が未払いとなってしまったので す。
な力関係が特に浮き彫りになり、私たち の服を作ってくれている人々の労働条件、 生活、健康に対するブランドの購買活動の 影響力とインパクトがより一層大きくなっ ています。
#fashionrevolution
75%のサプライヤーが パンデミック時のバイヤーの 購買活動の結果 従業員の労働時間を削減しなければ ならなかったと報告しました Centre for Global Workers' Rights
#fashionrevolution
ファッション業界は 年間9800万トンの 非再生可能資源を 使用しています。 Ellen MacArthur Foundation
04
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
EXECUTIVE SUMMARY
今年のインデックスの変化
この1年間、私たちは、情熱的なコミュニ ティの声に耳を傾け、 ステークホルダー へのインタビュー、 ソーシャルメディアで のフィードバック、 メディアでのレビュー など、インデックスの詳細な見直しを行 いました。 また、方法論を強化し、 ブラン ドや小売業者が、ポリシーやコミットメン トを超えて、取り組みの実施や成果につ いてより多くの情報を公開することを後 押しするため、さまざまな措置を講じて きました。私たちは、ポリシーが必ずしも 企業経営を正確に反映しているとは限 らないことを理解しており、今年はビジ ネスアクションをより重視したいと考え ました。 そのために、セクション1「ポリシ ーと公約」のスコアの重み付けを半分に し、サプライヤー監査や生活賃金、購買 慣行、ジェンダーと人種の平等、気候と 水のデータなど、実施と成果に焦点を当 てた指標に重み付けをしました。 また、 ファッション業界のサプライチェー ンで働く人々が、新型コロナウィルス感 染症の大流行により絶望的な状況に置 かれていることを踏まえ、主要ブランド が注文のキャンセルやパンデミックによ るサプライチェーンの労働者への影響に ついてどのような情報を開示しているか
について、6つの指標を追加しました。 (詳細な分析は79〜80ページを参照)
当レポートをより深く理解していただき、 ま たその活用状況についての懸念を払拭す るために、関連する質問に答えるQ&Aを作 成しましたので、 こちらをご覧ください。 ま た、なぜこの調査を行うのか、その目的と 範囲、 そして透明性が企業の説明責任と変 革の基盤となることを説明した変化の理 論も更新しました。 (19-23ページを参照) 最後に、今年は、本指標がブランドによって グリーンウォッシュ目的で誤用されたり、倫 理や持続可能性の指標として誤解された りすることを防ぐために、調査対象となっ たブランドや小売業者に対するコミュニケ ーションガイドラインを作成しました。 詳細 はこちら。私たちは、グリーンウォッシュの ために本指標への参加を利用したブラン ドに警告を発し、誤解を招くようなコミュニ ケーションを発見した場合には、 これまで と同様に修正していきます。もし、 ブランド がこのインデックスについて何か懸念事項 を伝えているのを見かけたら、ぜひ私たち にお知らせください。
皆様からのご意見を お待ちしております 私たちは、 この指標が完璧なものではなく、 常に改善できるものであることを認識して います。 このインデックスの透明性に関する ご意見やご質問は、英語:transparency@ fashionrevolution.org 日本語:japan@ fashionrevolution.orgにて受け付けてい ます。
05
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
主な調査結果 世界のファッション業界にお ける透明性の向上は、世界主 要ファッションブランドおよ び小売業者250社の間ではま だ遅々として進まず、Fashion Transparency Index 2021で は、 ブランド全体の平均スコア はわずか23%にとどまっていま す。
今年もまた、主要なブランドおよび小売業 者は、人権および環境問題に関するポリシ ー、 コミットメントおよびプロセスについて 最も多くの情報を公開しており、その取り 組みの結果、成果および影響については 著しく少ないことがわかりました。
大手ブランドおよび小売業者は、ガバナン ス情報、サプライチェーンの詳細、影響デ ータと比較して、自社のポリシーやコミッ トメントについて、前年に引き続き最も多 くの情報を開示しています。サプライチェ ーン全体の社会監査、サプライチェーンで 働く人々の生活賃金、購買慣行、労働組合 の結成、ジェンダーと人種の平等、生産量 と廃棄物量、循環型社会、化学物質の使 Fashion Transparency Indexは、 2016年 用、森林破壊、サプライチェーンでの炭素 すべ の発表以来、多くの主要ブランドに重要な 排出量などの問題に関する公開が、 これ サプライチェーン・データ情報の開示を促 ての主要ブランドで不足しています。 してきましたが、購買慣行、生活賃金、過 らはすべて緊急かつ重要な問題であり、 剰生産、水の使用、サプライチェーンにお 気候変動、新型コロナウィルス感染症、体 ける炭素排出などの重要な問題について 系的な人種差別、世界的な経済的不平等 は、最高得点を獲得したブランドにおいて などの交差する危機に対応して、私たちが 一丸となって 「より良いものを作り直す」 た も、 進捗が遅すぎる傾向にあります。 めには、 より早い進展が必要です。 イタリアのブランドO V S は 今 年 、7 8 % (2020年から44%増加)で最高得点を獲 多くの大手ブランドが、人権や環境問題の 得し、続いてH&M(68%)、Timberland、 改善に向けて、期限付きの測定可能な目 これらの目標は、 The North Face(66%) となりました。一 標を発表していますが、 方、 Belle、Big Bazaar Billabong、celio、 アウトプットやプロセス(提供されるサー Elie Tahari、 Fashion Nova、 Heilan ビスや実施される活動)に重点が置かれ アウトカムやインパクト Home、 Jessica Simpson、 KOOVS、 ていることが多く、 Max Mara、Metersbonwe、Mexx、New (実際の結果や物事の成り行き)を達成 Yorker、Quiksilver、Pepe Jeans、Roxy、 することを目的としたものではなく、労働 Semir Tom Ford、Tory Burch、 Youngor 者や環境に対する具体的な変化を示すは など20の主要ブランドは0%の評価となっ るかに意味のあるものとなっています。 ています。
EXECUTIVE SUMMARY
大手ファッションブランドや小 売業者の間では、サプライチェ ーンの情報開示が改善されつ つあります。 しかし、 製造施設を 開示しているブランドはまだ47 %に過ぎず、サプライチェーン の奥深くにある水処理施設や 紡績工場を開示しているブラン ドは約4つに1つ (27%) です。
大手ブランドは、自社のサプライチェーン に目を向け、人権や環境に関するリスクや 影響を特定し、それらに対処する明確な 責任があります。 サプライチェーンが可視 化されていないと、搾取的で危険な労働 条件や環境破壊が蔓延し、誰がこれらの 問題を解決する責任と力を持っているの かが曖昧になってしまいます。 まずは、 ブラ ンドや小売業者が自らのサプライチェー ンを理解し、開示する必要があります。 そ のためには、 トレーサビリティーと透明性 を高める必要があります。
06
されている主要ブランドの半数近くが、少 なくとも主要な製造施設を網羅したリスト を公開しています。
昨 年のインデックスで検 討された以 下 19ブランドが、その後、初めてファースト ティアの製造業者を公開しました。Boo hoo、Carhartt、Carrefour、Desigual、 Dick's Sporting Goods、Dr Martens, Ermenegildo Zegna、Fendi、Foschini、F ossil、Gucci、JD Sports、LL Bean、Mang o、MiuMiu、Nordstrom、Otto、Prada、U GG。今年、いくつかの大手高級ブランドが 初めてサプライヤーを公開したことで、 こ の分野の透明性が重要な一歩を踏み出 したことは大変喜ばしいことです。 より多 くのブランドがこの動きに追随することが 期待されます。
このような進展は、Transparency Pledge (透明性の誓約)や#WhoMadeMyClothes キャンペーン、Fashion Revolutionを含 む30以上の市民社会グループによる最近 の共同行動の呼びかけなど、大手ブランド や小売業者にサプライチェーンをマッピン グし、それを実行していることを示すよう 良いニュースとしては、大手ブランドが第 促す機運が高まっていることが大きな要 一段階の製造業者のリストを公開するこ 因です。また、消費者や投資家、さらには とが一般的になってきたことです。裁断、 政策立案者も、企業に対して自社のサプ 縫製、仕上げ、出荷のための梱包など、生 ライチェーンを知り、それを示すことを求 産の最終段階である一次メーカーのリス めるようになってきています。24〜25ペー トを公開することが一般的になってきまし ジのケーススタディでは、NGOや労働組 た。 10年前、多くのNGOや労働組合にとっ 合がどのようにして透明性の高い情報開 ブランドに責 て、 このような工場リストを一般公開する 示を利用して虐待に対処し、 ことは現実的ではないと思われていまし 任を求めているかを紹介しています。 たが、現在では、 このインデックスに掲載
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
さらに上向きなニュースとしては、多 くのブランドが製造施設の住所、従業 員数、女性や移民労働者の数など、よ り詳細な情報を開示するようになって きたことや、Open Apparel Registry ( アパレル大手のサプライヤーリスト情 報を一元的にまとめたウェブサイト)の 努力のおかげで、これらのリストが機 械で読める形式で公開されるようにな ってきたことが挙げられます。機械読 み取り可能なリストにアクセスできる ということは、情報を利用するために 手間をかけてデータを再フォーマット する必要がなく、より幅広いステーク ホルダーが情報を利用できることを意 味します。
しかし、残念なことに、何百万人もの 人々が暮らす製造業の第一階層以外の 生産施設の開示は、まだ遅々として進 んでいません。世界中の何百万人もの 人々が、私たちが身につけている繊維 や生地を生産・加工するために働いて います。加工施設の一部を公開してい るブランドはわずか27%(前年比3% 増)、原材料の一部を公開しているブ ランドは11%(前年比4%増)となって います。昨年、「タミルナドゥ宣言」 を支持してOut of Sightレポートを発表 し、2021年4月に#WhoMadeMyFabric キャンペーンを開始して以来、ブラン ドからのさらなる進展を期待していま した。何を隠そうとしているのか、と いう疑問がわいてきます。
私たちは、サプライチェーンのトレー サビリティーに関するこれまでの進展 を歓迎し、より多くのブランドが情報 開示を行い、すでに情報開示を行って いるブランドについては、より深いレ ベルのトレーサビリティーとより包括 的な情報開示に向けて、その進展を加 速させることを奨励します
新型コロナウィルス感染症に よるパンデミックの中、大手ブ ランドや小売業者が注文をキ ャンセルしたことで、サプライ ヤーや労働者に多大な経済的 負担がかかりました。 それにも かかわらず、過去1年間の注文 キャンセルのデータを公開し ているブランドはわずか18% です。
世界労働者権利センター(CGWR)と 労働者の権利コンソーシアム(WRC) は、衣料品サプライヤーとその業界団 体からの情報を分析した結果、主要ブ ランドと小売業者は小売店の閉鎖と利 益喪失の恐れから、当初400億米ドル のキャンセルを行ったと発表しまし た。その結果、多くのサプライヤーが 閉鎖を余儀なくされ、労働者の一時帰 休や賃金の支払い、退職金の支給など ができなくなりました。多くの従業員 は、賃金が支払われていないことに抗
EXECUTIVE SUMMARY
議するため、ロックダウンプロトコル に反して行動しました。その結果、食 費や住居費などの基本的な生活費を捻 出するために、ローンを組んで借金を した労働者もいました。多くの労働者 は、食料不安、飢餓、ストレス、疲労 に直面しました。 このような悲惨な状況にもかかわら ず、パンデミック中に行った受注キャ ンセルの割合を公開している主要ブラ ンドは5社に1社以下(18%)で、キャ ンセルされてまだ復活していない受注 の割合を公開しているのは14%に過ぎ ません。世間の声に押されてブランド が受注を再開した際、ブランドによっ てはサプライヤーに以前合意した価格 からの大幅な値引きを提案したり、値 引きが認められない場合はキャンセル すると脅したりするケースもありまし た。現時点までの調査では、以前に合
07
意した支払い条件に適用される割引の 割合を開示しているブランドはわずか 14%でした。 これらの大規模で影響力のあるブラン ドがキャンセルされた受注を元に戻す ためには、世論の圧力を必要とすべき ではありませんでした。それどころ か、大手ブランドが比較的経済的に強 い立場にあり、その購買活動がサプラ イチェーン全体のサプライヤーや労働 者に波及効果をもたらすことからも、 パンデミックの期間中彼らの契約は厳 守されるべきでした。
"私が作っている糸を使っているファッション業 界には、責任を持って紡績工場の労働条件を変 えるための支援をお願いします。" Kavitha, タミル・ナードゥ州, インド, 衣料品労働者
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
コロナ禍において、大手ブラン ドや小売業者の中で、労働者 を中心としたデータを開示し たところはほとんどありません でした。そのため、パンデミッ ク期間中に労働者が直面した 社会経済的な影響の全体像を 把握することができませんでし た。
衝撃的なことに、賃金の支払いが遅れた 労働者の割合についてデータを公開して いるブランドはわずか3%であり、大手ブラ ンドは自社のサプライチェーンの労働者 がパンデミック中に無給になったかどう かについて限られた知識しか持っていな い可能性を示唆しています。一方、カンボ ジア、 インドネシア、 バングラデシュなどで 何百万人もの衣料品労働者が職を失って いるにもかかわらず、新型コロナウィルス によって解雇された労働者の割合につい てデータを公開しているブランドはわずか 3%しかありません。 ブランド側はこの情 報を追跡しているかもしれませんが、透明 性の欠如により、 パンデミック中に労働者 が直面した壊滅的な影響について一般の 人々が完全に知ることはできない状況と なっています。
それにもかかわらず、パンデミック以降、 従業員が仕事を失ったり仕事を見つけら れない理由として、 ブランドのキャンセル
EXECUTIVE SUMMARY
や受注の減少を挙げている報告が多くあ ります。さらには、組合員であることを理 由に解雇され、代わりに非組合員が雇わ れるなど、組合潰しがこの1年でより多く 見られるようになったことも指摘されてい ます。
主要ブランドや小売業者は、パンデミック が自社製品を製造する人々にどのような 影響を与えているかについて透明性を確 保するために、 このデータを監視し、開示 する必要があります。 しかし、 サプライヤー のリストが公開されたことで、労働組合や 労働活動家は、 ブランドやそのサプライヤ ー、受注のキャンセル、労働者が経験した 賃金窃盗などの関連性を明らかにし、説 明責任を果たすことができるようになりま した。
97% のブランドが
パンデミックによって
職を失った従業員の割合を 公表していません。
大手ブランドや小売業者は、 サ プライヤーからの購入方法を 直接管理しており、 その不適切 な購入方法は、 サプライチェー ンにおける人権リスクにつなが る可能性があります。にもかか わらず、 ブランド側の購買活動 については不透明なままです。 Better Buying (より良い購買)のデータと ヒューマン・ライツ・ウォッチの広範な調査 によると、受注や支払い条件の直前での 変更を含む不適切な購買慣行は、違法な 低賃金や未払いの手当、過剰で強制的な 残業、一時的で不安定な仕事など、労働 者にとって壊滅的な結果をもたらす可能 性があります。 このようなリスクがあるに もかかわらず、主要ブランドのうち、受注 後の受注内容や支払い条件の変更につい て透明性を確保している主要ブランドは わずか3%です。
人件費を他の部門の資金と完全に分ける ことで、 ブランド側は残業代や福利厚生を 含む労働者の賃金が交渉の余地のないも のであることを保証できます。 それにもか かわらず、主要ブランドのうち、人件費を完 全に分けた方法を開示しているのは10% 未満であり、人件費を別会社化した注文 数を開示しているブランドはわずか1%で す。
08
主要ブランドの大半は、 サプライヤーに生 産コストの前払いを求めています。 サプラ イヤーは通常、受注に応じて材料を信用 購入しますが、 ブランドからの支払いは何 カ月も後になります。 このような支払い構 造は、大手ブランド、 サプライヤー、労働者 の間の不均衡な力関係に支えられていま す。 60日以内にサプライヤーに支払うとい うポリシーを公開している大手ブランドは 10%未満で、納品後どれくらいの期間で サプライヤーに支払うかを公開している のはわずか6%です。驚くべきことに、 ブラ ンドが生産工場に支払いをする前に、消 費者が服を着ていることが多いのです。
残念なことに今年は、主要ブランドが自社 の購買慣行に関するサプライヤーからの フィードバックを毎年開示する数が減少し ました。2021年にはわずか3%となってい ます。 さらに、大手ブランドのうち、典型的 な受注・支払条件を定めた標準的なサプ ライヤー契約書を公開しているのは、わず か7%です。 これらの情報は、 ブランドの購 買慣行を精査し、 ブランドがサプライヤー や労働者に対するコミットメントを守る責 任を負うために必要です。
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
私たちの服を作っている人た ちの大多数は、基本的なニー ズを満たすのに十分な給料を もらっていません。 しかし、サプ ライチェーンで働く労働者の 生活賃金に対する取り組みを 公開している大手ブランドは、 わずか27%にすぎません。ま た、サプライチェーンの中で実 際に生活賃金を支払っている 労働者の数に関するデータを 開示しているのは、250ブラン ド中、わずか2ブランドです。
ほとんどの生産国における法定最低賃 金は、生活賃金を大幅に下回っています。 これは、労働者が、食料、水、住宅、教 育、医療、交通、衣類、不測の事態への備 えなど、まともな生活水準を確保できる 収入です。
労働者が自由かつ自主的に労働組合を 結成・加入し、賃上げや労働条件の改善 を求めて使用者と団体交渉を行うことが できれば、賃金上昇の可能性は高まりま す。 この基本的な権利は、大手ブランドや 小売業者の84%が自社の行動規範に基 づいてサプライヤーに要求しています。し かし、サプライチェーン内で組合に加入し ている、あるいは団体協約の対象となっ ている労働者の数を追跡・公表している ブランドは10%と少なく、また、サプライ
EXECUTIVE SUMMARY
ヤー施設で締結されている団体協約が 労働者に法定最低賃金以上の賃金を提 供していることを公に証明しているブラン ドは1つもありませんでした。
悪いニュースばかりではありません。今年 はいくつかの進展がありました。今年は、 昨年(2%)に比べて2倍のブランド (4%) が、サプライチェーン上のすべての労働者 の生活賃金をどのように達成するかにつ いて、期限付きの測定可能な戦略を発表 したことで、いくつかの進展が見られまし た。 とはいえ、 この進捗率では、 ブランドや 政府が労働者の公正な賃金を確保する ためにもっと努力しない限り、私たちの服 を作っている人たちはずっと貧困賃金か ら抜け出せない運命にあるようです。
自社の取締役会への労 働者代表の参加を開示 しているブランドは わずか
7%
大手ファッションブランドや小 売業者の中には、役員クラス の給与やボーナスがどのよう に人権や環境への影響と結び ついているかを公表するとこ ろが増えていますが、彼らの給 与や業績評価はほとんどが収 益性などの他の要因に左右さ れています。
給与やボーナスなどの経営者のインセ ンティブが、人 権や環 境 へ の影 響 の改 善とどのように結 びついているかを開 示するブランドが着実に増えていること は歓迎すべきことです。今年は、大手ブ ランドの5社に1社が、役員のインセンテ ィブ(給与、ボーナス、業績評価を含む) が人権や環境への影響の改善に結びつ いていることを開示しました。 この増加 は、ESG(Environmental, Social and Governance 環境・社会・ガバナンス)要 素に対する株主の期待の高まりが寄与し ていると考えられます。
09
利益などブランドのパフォーマンスの他の 側面と同様に優先し、報いることを奨励し ます。
主要ブランドや小売業者の大 多数は、サプライヤーの施設 に労働者を代表させることを 要求していますが(84%)、自 社の取締役会に労働者の代 表を配置していません(7%)。
自由に選出された労働者委員会を含む 結社の自由の要件は、通常ブランドの購 買契約の一部としてサプライヤーの行動 規範に書かれています。84%のブランド が、サプライヤーの行動規範に結社の自 由と団体交渉を盛り込んでいます。 ブラン ドは、 このことがサプライチェーンの労働 者にもたらすメリットを説明し、労働者が 経営者にフィードバックしたり、直接交渉 したりすることを可能にしています。 しか し、自社の取締役会に労働者が参加して いることを公表しているブランドはわずか 7%です。 ブランドは、サプライヤーに期待 しかし、役員の評価(給与やボーナスの見 するのと同じ、あるいはそれ以上の基準 直しなど)で環境や人権への影響を考慮 を自らに課すべきです。そして、自分たち する場合でも、 これらの問題は最優先事 の仕事に影響を与える問題について、意 項ではなく、評価全体に占める割合は少 思決定のトップレベルで労働者代表のメ 数です。例えば、典型的な情報開示では、 リットを実現することを、自社の従業員に エグゼクティブの業績評価のうち15%程 も認めるべきです。 度がサステナビリティ目標に結びついて います。私たちは、 ブランドや株主が、人権 や環境への影響に関する進展を、収益や
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
EXECUTIVE SUMMARY
主要ブランドや小売企業は、 業にこの開示が義務付けられていることが 人種差別との戦いを最優先事 一因となっています。これは、透明性の高い 情報開示を促進するための法律の価値を示 項とするだけでなく、事業やサ すものであり、また、英国内外の法律におい プライチェーンにおける人種 て、人種的平等を男女平等と同様に優先さ 的・民族的不平等に対処する せる必要性を示すものでもあります。 ことで、 それを証明しなければ なりません。 気候危機の緊急性にもかかわ らず、重要な環境データを開 近年、多くのファッションブランドが人種や民 族の平等を支援することを声高に主張して 示している主要ブランドや小 います。 特に、 この1年で世界的に盛り上がっ 売業者はあまりにも少ない。 たBlack Lives MatterやStop Asian Hateの 動きに呼応しています。 しかし、その一方で、 事業活動における人種的平等の推進に関す る行動を公表しているブランドは、わずか12 %であることがわかりました。 また、主要ブラ ンドのわずか16%が、自社の業務における 人種別の職務内訳を開示しており、 サプライ チェーン内で民族間の賃金格差データを公 開しているのはわずか2%です。人種間の平 等に対する連帯感や社会的支持は、 ブランド にとって貴重なPRツールとなり得ますが、自 社の事業やサプライチェーンにおける人種 間・民族間の不平等に対処するための説明 責任を果たす行動に結びつける必要があり ます。
男女間の平等データは、人種間の平等デー タよりもはるかに透明性が高く、例えば主要 ブランドの55%は、直接的な業務における 職務の性別内訳を毎年公表していますが、 人種別に公表している主要ブランドは16% です。 これは、英国の法律で男女間賃金格差 の報告義務があり、従業員250人以上の企
79%のブランドがエネルギーと温室効果 ガスの排出に関する企業方針を公表して いますが、 この問題に関するサプライヤー の方針を公表しているブランドは58%と 少なく、脱炭素化に関する期限付きのコミ ットメントを公表しているブランドは30% とさらに少なくなっています。
95% のブランドが
原材料レベルでの年間の ウォーターフットプリントを 開示していません。
10
ブランドの施設や運営における年間のカ ウォーターフットプリントを開示しています ーボンフットプリントの開示は増加してい が、原材料レベルでの年間ウォーターフッ ますが(スコープ1および2:昨年の58%に トプリントを開示しているのはわずか5% です。 対し62%)透明性は低下しています。
しかし、 サプライチェーンの下流域(スコー プ3:セクターの排出量の最大80%が発 生)になるほど、透明性は低下していきま す。例えば、グローバル・ファッション・アジ ェンダ (GFA)とマッキンゼーの報告書によ ると、製造段階での年間カーボンフットプ リントを公表しているブランドはわずか26 %、原材料段階での排出量を公表してい るブランドはわずか17%です。 これは、衣 服のライフサイクルにおいて環境への影 響が最も大きい場所です。 さらに、業界の 排出量を削減する上で基本となる、 サプラ イチェーンにおける絶対的なエネルギー 削減に関するデータを公開しているブラン ドは18%にとどまっています。
ファッション業界にとって、水もまた重要 な問題です。水質汚染はバリューチェーン 全体で発生します。 水質汚染は、有害な農 業生産物の流出、染色や仕上げの工程で の有害化学物質の使用、合成繊維の洗濯 時に放出されるマイクロプラスチックな ど、 バリューチェーン全体で発生しますが、 ブランドは水質汚染をサプライチェーンに おける重大なリスクとして忘れがちです。 実際、危険な化学物質の使用をなくすた めの取り組みを開示しているブランドは、 わずか30%にすぎません。 同様に、水の消 費量に関するブランドの透明性は、 サプラ イチェーンの下流に行くほど低下します。 例えば、31%のブランドが自社施設内の
環境データの収集は、多くの業界で標準 的に行われています。気候危機の社会的・ 環境的影響を考えると、地球に大きな影 響を与えるグローバルなファッション業界 にとって、 これは緊急の課題です。 ブランド は、サプライチェーン全体でこのデータを 追跡しなければ、環境への影響を実証的 に削減することはできません。そして、重 要なことは、 このデータを共有し、どのよ うな取り組みがなされているのか、また、 より多くの努力が必要な場所はどこなの かについて、すべての利害関係者や一般 市民がよりよく理解できるようにすること です。
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
毎年、1,000億枚以上の衣料 品が作られています。過剰生 産・過剰消費は、地球や世界中 のコミュニティに悪影響を及 ぼしているにもかかわらず、主 要ブランドや小売業者はこの 問題に十分な対応をしていま せん。 過剰生産と過剰消費は、長い間、「触 れてはいけない話題」のように、大手 ファッションブランドや小売業者はほ とんど無視してきました。リユースや ダウンサイクルを超えて、繊維から繊 維へのリサイクルを可能にする循環型 ソリューションへの投資を開示するブ ランドは増えていますが(2020年には 18%であるのに対し、27%のブランド が開示しています)、年間生産量を公 表しているのは14%に過ぎません。こ のような情報開示の不足は、ファッシ ョンの過剰生産問題の真の姿を覆い隠 してしまいます。
業界の大手ブランドの間では引き取り 制度がますます普及していますが、引 き取り制度を導入しているブランドは 32%(昨年は30%)にとどまり、回収 された衣類がどのように処理されるか を公表しているブランドは22%と少な いのが現状です。Oxfamの調査による と、ヨーロッパで寄付された古着のう ち、約70%がアフリカに輸出されてい
るそうです。この問題についての詳細 は92ページをご覧ください。 循環型社会や繊維のリサイクルに取り 組むブランドが増えているのは朗報か もしれませんが、それだけではファ ッション業界が抱える過剰生産・過 剰消費の問題を解決することはできま せん。ファッションの未来と、地球や コミュニティへの影響を改善するため には、ペースを落とし、より少ない数 でより質の高い製品を作り、既存の服 や素材の寿命を延ばすことが不可欠で す。
主要ブランドや小売業者の半 数近く (44%)が持続可能な 素材に関する目標を発表して いますが、い わ ゆる「持 続 可 能」な素材を定義しているの は3分の1以下(30%)です。
調査によるとファッション業界の排出量の 70%以上は、原材料の生産、準備、加工 に起因することが判明しました。 しかし、 繊維の種類によっては、 その生産方法によ って環境への影響が大きく異なります。例 えば、従来の綿花の生産には、人間や生 態系の健康を損なう可能性のある農薬や 灌漑システムが必要です。一方、ポリエス テルなどの合成繊維は、化石燃料から作 られ、 マイクロプラスチックが水路に放出 され、酸素の枯渇や海洋の加熱の原因と
EXECUTIVE SUMMARY
なることがわかっています。 これに関連し て、パッケージングに使用するバージンプ ラスチックの使用量を削減するための測 定可能な目標を公表しているブランドは 39%ですが、バージン化石燃料から作ら れる繊維の使用量を削減するための目標 を掲げているのは25%に過ぎず、 また、以 下のような報告をしているブランドは21 %に過ぎません。 また、 マイクロファイバー の脱落による影響を最小限に抑えるため の措置を報告しているのは、わずか21% でした。
さらに言えば、より持続可能な素材の使 用について、期限付きの測定可能な目標 や戦略を発表しているブランドは半数以下 (44%)で、 これらの目標に対する年間の 進捗状況を報告しているのは37%に過ぎ ません。 また「持続可能な」素材の定義に ついて説明しているブランドは30%にと どまっており、 ファッション・繊維産業にお いて 「持続可能な」素材を構成する共通の 基準を確立するためには、より良い法律 が必要であることは明らかです。 さらに、Mistra社の調査によると、特定の 素材について持続可能性を明確に主張す る環境データが明らかに不足しているこ とがわかっています。 ブランドは、繊維が 環境に与える潜在的な影響をすべて測定 し、信頼できるデータにアクセスする必要 がありますが、Mistraの調査では、現在の データは限られた環境影響しかカバーし ていないことが明らかになりました。 この ように 「持続可能な」素材の選択が何を意 味するのかについて、信頼できる比較可能
11
な情報がないため、消費者は、購入する 衣服や所有する衣服の最善の手入れ方 法について、十分な情報を得た上で選択 することができません。
英 国 はヨ ー ロッパで最 も多
"意識することが 重要です。情報が なければ、何が起 きているのか、何 が私たちの健康や 水の供給、 そして 地球を危険にさら す可能性があるの か、誰にもわから ないのです。 " Erin Brockovich
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
くの衣料品を消費しています が、英国の主要ブランドは、透 明性の面でヨーロッパのブラ ンドに遅れをとっています。
透明性の向上は進んでいます が、大手ファッションブランド が人々や地球への影響につい て責任を負うためには、 より良 い法律が必要です。
EXECUTIVE SUMMARY
たとされており、重要な法案が最も必要と される時期に一時停止されていることは大 きな問題です。
今年は、人種的平等に関する指標を新たに 追加し、主要ブランドが役員、管理職、新人レ ファッションは英国最大の産業のひとつであ ベルの従業員の人種的/民族的内訳に関 り、消費者が衣料品に費やす金額は、1998 するデータを開示しているかどうかを調査し 年から2018年の間に150億ポンドから600 この10年の間に、いくつかの国で、企業に人 ました。 フランスとドイツでは、企業がこのデ 億 ポンドへと4 倍になっています。衣 料 品 権や環境関連の要求を課す新しい法律や規 ータを公開することは違法であり、 フランス の消費額は、ヨーロッパのどの国よりも高 制が施行されてきました。例えば、英国の現 とドイツの企業はこの情報を公開していま く、英国の消費者は、一人当たり年間平均 代奴隷法(Modern Slavery Act 2015)は、 せん。 このような法律によって、企業の採用 26.7kgの衣料品を購入しており、次に消費 アパレルのサプライチェーンから強制労働を 活動における人種的公平性について、重要 率が高いのは、 ドイツ(16.7kg)、デンマーク 根絶するという点ではインパクトがありませ な情報を提供するデータへのアクセスが妨 この法律により責任ある調達へ げられているのであれば、意味のある取り組 (16kg)、 スウェーデン (12.6kg)と続きます。 んでしたが、 英国の消費者が最大の消費者であることを の取り組みについてほとんど何も開示して みは困難になります。 ステークホルダーが精査 考えれば、英国のブランドや小売業者が透 いなかった企業が、 明性について主導権を握ることが期待され できるような情報を公開するようになりまし 2021年後半には、欧州委員会からさまざま た。 ていました。 な異なる規制や政策が提案されることが予 想されます。 これらの規制や政策は、サプラ しかし、今年のランキングでは、上位10ブラ 英国では、企業は毎年ジェンダー・ペイ・ギ イチェーンから製品の使用済みまでのバリ ンドに入った英国のブランドや小売業者は ャップ(男女の賃金差)のデータを公表す ューチェーン全体で、企業が人権や環境へ しかし、今 の影響に対処する方法に大きなシステム上 一社もありませんでした。 ノッティンガムに ることも義務付けられています。 本社を置くSpeedoは、53%のスコアで最も 年はパンデミックの影響で、政府は企業に の変化をもたらす可能性があります。例え 高い英国ブランドです。次いで、Sainsbury's 2019年のデータの報告を一時停止させま ば、人権および環境に関するデューディリジ その結果、ジェンダー・ペイ・データを ェンスの取り組みについて情報を開示する とMarks & Spencerが48%で続きます。 欧 した。 州のいくつかのブランドは、英国のブランド 公開しているブランドは、昨年の34%に比 大手ブランドは増加しており (2021年には よりも高い透明性を目指して一歩を踏み べ、今年は30%と少なくなっていることがわ 39%(昨年は34%))、 その一方で、26%が発 出したようです。おそらく、欧州委員会が今 かりました。イギリスのブランドは、最新の 見した顕著なリスクを公表し (昨年はわずか 後 数カ月のうちに提 案する予 定の「人 権 ジェンダー・ペイ・データを自主的に公表す 11%)、24%がこれらのリスクに対処するた および環境に関するデューディリジェンス ることができたにもかかわらず、その多くが めに講じた措置を説明しています(昨年は これは、企業に正し 15%でした)。欧州委員会は、今後数ヶ月の の義務化」法案に備えてのことでしょう。ま 公表しなかったのです。 た、Timberland、The North Face、Vansな い行動を取らせるためには、法律がいかに うちに、人権および環境デューディリジェン どのアメリカのブランドも、前回よりも多くの 重要であるかを示しています。特に、Oxfam スの義務化に関する法律を提案する予定で の調査によると、世界の女性は少なくとも す。 情報を開示し、今年は順位を上げました。 8,000億ドルの収入と6,400万の雇用を失っ
12
また欧州委員会は年末に、繊維製品の耐久 性、再利用性、修理性、 リサイクル性、エネル ギー効率に関する基準を定めた新しい 「サス テナブル・プロダクト・ポリシー・フレームワー ク」を提案する予定です。 これに関連して、当 社の調査によると、大手ブランドの44%が、 持続可能な素材の使用を増やすための時間 的・測定的な目標を開示しています。 (昨年 は42% ) また、 30%のブランドが、 「持続可能 な」素材の定義を説明しています。人権や環 境に関するさまざまな問題について、多くの ブランドは、今後の法規制を確実に遵守する ために、さらに多くの課題を抱えているよう です。
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
最後になりましたが、世界中で、人権や環 境の侵害を防止し、企業がその取り組み の実施状況や結果を監視・報告すること を義務付ける法律が必要です。 ブランドが これをしなかった場合には、意味のある 制裁と被 害に対する補償が必要です。
情 報 過 多 、データ・ダンピン グ、ふわっとしたストーリーテ リングは、多くの主要ファッシ ョン・ブランドで依然として問 題となっています。 大手ブランドの中には、自分たちの人権や 環境に対する取り組みを読みにくく、不可 解で、 また繰り返しが多く探しにくい 方法 で伝えているところがあり、顧客やステー クホルダーが意味のある行動可能な情報 として読み取ることが事実上不可能にな っています。
時には重要なデータが長い技術報告書 の付録や脚注に隠れていたり、 ブランドの ウェブサイトのトップページから何十クリ ックも離れた場所に埋もれていたりする こともあります。 本指標で高得点を獲得し ているブランドであっても、経験豊富なリ サーチャーがすべてのコミュニケーション
に目を通し、何が関連していて何が実行 可能なのかを明らかにするためには、何 日も何時間もかかるものです。
また、あまりにも多くの情報に目を通すこ とになりますが、そのほとんどがブランド の価値観についての聞こえの良いコピー や、サプライチェーンのごく一部に関連す るパイロットプロジェクトについての話で あり、曖昧にして注意をそらすための意 図的な戦略であるかのように思えます。 最近の調査 Changing MarketsとClean Clothes Campaignによる最近の調査で は、 ブランドが直接提供するサステナビリ ティ情報を信用する消費者はわずか18% でした。 このような不信感は、 一部のブラン ドが、自社の取り組みによる実際のシステ ム上の影響や成果を報告するよりも、刺激 的でふわっとしたストーリーテリングを紹 介する傾向があることに起因しているの かもしれません。 主要なブランドや小売業者による人権お よび環境への影響に関する信頼性の高い 比較可能な情報開示の標準化は、非常に 歓迎すべきことであり、私たちは、今後数 年のうちに法律レベルでこの問題につい て何らかの進展があることを期待してい ます。
EXECUTIVE SUMMARY
透明性を高めることは、 ファッ ション業界を変えるための第 一歩にすぎません。私たちの行 動への呼びかけ ー このインデ ックスをご自身の買い物の選 択に利用するのではなく、 この 調査結果をあなたの活動に役 立ててください。 多くのブランドが前 年 比で透 明 性を向 上させており、Fashion Transparency Indexがブランドに影響を与え、人権や環 境問題への取り組みについてより多くの 情報を共有するようになっていることがわ かっています。 しかし、 これだけでは十分 ではありません。 この業界では、いまだに 人権や環境への侵害が蔓延しています。 世界の大手ブランドや小売業者の半数以 上は、いまだにサプライヤーの情報を開 示していません。 この指標の平均スコアは わずか23%で、収益性の高い大手ブラン ドの多くは、人権や環境問題への取り組 みについて不透明なままです。 読者の皆様におかれましては、 これらの 調査結果をもとに、収益性の高い大手ブ RIGHT: NOBODY DENIM
13
ランドや小売業者の主張に異議を唱え、 各社が説明責任を果たし、紙面上だけで なく現実に変化をもたらしていることを証 明するよう求め続けることを強くお勧め いたします。 また、今回の調査結果をもと に、あなたの住んでいる地域の議員に連 絡を取り、大手ブランドが人権や環境への 影響に対して責任を負うような法律の改 善を求めてください。個人、 ブランド、小売 業者、政策立案者、投資家、NGO、労働組 合など、さまざまな立場の方が本調査結 果を活用してできることについては、100 〜104ページをご覧ください。
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
EXECUTIVE SUMMARY
14
主な調査結果
23% 23%
2021年に評価された 250ブランドの平均
2020年から評価されて いる239ブランドの平均
各セクションの平均スコア ポリシーと公約
ガバナンス
トレーサビリティ
把握・開示・改善
重点課題
53%
31%
19%
19%
15%
2021年トップ10 スコアブランド(%)
2020年から変化なし
25%
2019年から評価されて いる188ブランドの平均
2019年から2ポイント増加
28%
2018年から評価されて いる139ブランドの平均
2018年から6ポイント増加
31%
2017年から評価されて いる92ブランドの平均
2017年から8ポイント増加
2021年最低スコアブランド (%) Belle
0
Semir
0
Big Bazaar - ffb
0
Tom Ford
0
Elie Tahari
0
Billabong
0
Jessica Simpson
0
Heilan Home
0
KOOVS
0
Quiksilver
0
Metersbonwe
0
Roxy
0
60
Mexx
0
celio
0
Calvin Klein, Tommy Hilfiger, Van Heusen (PVH)
59
Youngor
0
Max Mara
0
Gucci, Kmart Australia, Target Australia
Fashion Nova
0
New Yorker
0
56
Pepe Jeans
0
Tory Burch
0
OVS
78
H&M
68
The North Face, Timberland
66
C&A, Vans
65
Gildan
63
Esprit, United Colors of Benetton
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
EXECUTIVE SUMMARY
2020年からの 増加率ランキング
2020年からの 減少率ランキング
OVS
+44
UGG
+37
Tom Tailor
+24
2017年から変化なし
Wrangler
-24
Adidas, Reebok
-15
Marks & Spencer
-12
Topman, Topshop
-11 -10
Target Australia and Kmart Australia
+23
Speedo
+19
Fendi
+18
Tesco, HEMA
Dick's Sporting Goods
+15
Kmart
-9
Bally, Gildan
+14
Zeeman
+13
Bershka, Massimo Dutti, Pull & Bear, Zara
-8
サプライヤーのリストを
公表しているブランドの
一次生産者
加工施設
2021
(250 brands) (250 brands)
2018
(150 brands)
2017
(100 brands)
2019
(200 brands)
32%
Bershka, Massimo Dutti, Zara
-1
Pull & Bear,
0
Heilan Home
0
Coach
0
Guess
0
Marks & Spencer
0
Claire’s
+1
Chico’s
+1
Kohl’s
+2
Topshop
+2
11% 7%
24%
35% 37%
-1
27%
40% 2020
Costco
原料サプライヤー
47%
比率
15
19% 18% 14%
5% 1% 0%
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
EXECUTIVE SUMMARY
重点課題 新 型コ ロナウイルス感染症
18%
コロナ禍で一部または全 てのオーダーキャンセルが 発生した場合、その割合を 公表したブランド
購買慣行
3%
3%
9%
1%
コロナ禍で従業員への支払 い遅れが発生した場合、そ の割合を公表したブランド
コロナ禍で従業員を解雇し た場合、 その割合または人数 を公表したブランド
価格交渉の際、人件費を他 経費と区別して管理する方 法を公表しているブランド
人件費が他経費と区別し て管理されたオーダー数 を公表しているブランド
人種&ジェンダー
生活賃金
27%
サプライチェーン上の従 業 員に対する生 活 賃 金 支払いへの取り組みを公 表しているブランド
4%
30%
16%
2%
サプライチェーン上の従業 員に、法定最低賃金を何% 上回る額を支払っているか 公表しているブランド
自社での男女別賃金格 差 を公 表しているブラ ンド
自社での民族間賃金格 差データを公表してい るブランド
サプライチェーン上での民 族間賃金格差を年次で公表 しているブランド
16
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
EXECUTIVE SUMMARY
重点課題(続き) 生産量&ビジネスモデル
サステナブルな材料
14%
18%
年間生産量を公表 しているブランド
リペアサービスを提供 しているブランド
14%
レンタルやリセールなど、服 の寿命を伸ばす新たなビジ ネスを展開しているブランド
44%
サステナブル材料に関する 期限付きで測定可能な戦 略を公表しているブランド
気候変動への影響
26%
Science-Based Targets(SBT)公表 しているブランド
30%
「サステナブル」な 材料の定義を公表 しているブランド
化学物質
62%
17%
10%
自社内(事務所、 ショップ など) での年間炭素排出量 を公表しているブランド
原料段階からの年間炭素排出 量を公表しているブランド
森林破壊ゼロに向け、期限付 きで測定可能なコミットメン トを公表しているブランド
42%
規制物質一覧を公 表しているブランド
31%
危険化学物質使用の排 除に向けた取り組みを公 表しているブランド
17
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
このインデックスについて
18
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
私たちのセオリー・ オブ・チェンジ 畑から工場に至るあらゆる場所で、 ファッシ ョンのサプライチェーンは気候危機に影響 を及ぼし、そして同時に影響を受けていま す。 グローバルなファッション産業は現在、限 りある自然資源を使用することで環境悪化 と生物多様性喪失の大きな原因となってい ます。
ファッション産業はまた、グローバルなサプ ライチェーン上で労働者やそのコミュニテ ィに影響を与えており、人権侵害の大きな 要因にもなっています。 グローバルなバイヤ ー、そのサプライヤーと労働者の間には根 深い権力の差があり、それが私たちの服を 作る人たちの労働環境、生活水準や健康に 脅威をもたらしています。
ファッションのサプライチェーンは高度にグ ローバル化され、規制が緩く、複雑で不透明 です。 ビジネス上の関係は曖昧で、作業は下 請けにも多く出されます。 このため、何か問 題が起こった際には責任の所在は曖昧にさ れがちです。透明性がないため、環境や人権 への侵害が起こった際に迅速で適切な対応 をとるとことができません。透明性なくして は人や地球を守ることができません。 透明性 は、現在のシステムを変革するための基礎と なるものです
ABOUT THIS INDEX
私たちが見たい変化 グローバルファッション産業の 構造改革 Fashion Revolutionでは、環境を守り、修 復し、成長と利益よりも人間を優先するグ ローバルファッション産業を目指していま す。ブランドは自身の社会的・環境的影響 に責任を持ち、単に責任を果たしていると アピールすることや工程管理に時間を取ら れることなく、サプライチェーン全体にわた って透明性を担保することが当たり前とな っている状態を目標にしています。Fashion Transparency Indexはこのビジョンを達成 するための一つのツールであり、8番目のマ ニフェストへと繋がります。
FASHION REVOLUTIONのマニフェスト
ファッションは透明性があって説明 責任が果たされているもの。複雑さ の後ろに隠れることなく明確であり、 価値を高めるためにミステリアスで ある必要はない。誰でも、 どこからで も、服がどのように、 どこで、誰によっ て、 どんな状況で作られているのか を知ることができる。
19
産業システムの中と外での私たちの 役割 Fashion Revolutionの活動は、 ファ ッション産業システムの中と外に分け られており、主に政策変更、文化的変 化、産業内変革の3つで変化を起こし ています。 持続可能でなく、搾取が横行し不公平 なシステムの中で活動するということ は、それを容認するというわけではあ りません。実際にはその逆で、人権侵 害、環境破壊とその責任を覆い隠す不 透明なサプライチェーンなどの構造を 根本から解体していくのです。時にも どかしいほど遅々として進まないこと もありますが、 この不公平なシステム の中で活動することが、変化を起こす ためには最も効果的な方法です。
私たちは産業全体のバリューチェーン で透明性が担保され、説明責任が果 たされることを目指していますが、そ れにはこのインデックスで調査された 規模の大きなブランドを巻き込んでい くしかありません。 というのは、及ぼし た負の影響の大きさとそれに対する 責任は彼らが一番大きく、 これからも 企業として続いていくためには問題に 向き合うことが不可欠だからです。
どのようにして今回調査するブランド を選んだのか、そして多くの場合より 透明性が高くポジティブで構造的な変
化を先導する小規模なブランドをな ぜ調査しなかったのかは、こちらの Q&Aをお読みください。
とはいえ、私たちはファッション産業 システムの外側でも同時に活動して おり、消費者への教育や結集を促し たり、政策提言を行なったりしていま す。大まかにいうと、産業内変革はシ ステムの内側、文化の変容と政策変 更はシステムの外側と位置付けてい ます。 Fashion Revolutionが起こそ うとしている政策、文化と産業にお ける変革では、透明性の担保が非常 に重要な素地となります。
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
政策改変
ABOUT THIS INDEX
文化の変容
他組織と協働し、英国及びオーストラリ ア現代奴隷法、欧州における強制人権 及び環境デューディリジェンス規制の策 定に影響を与える。
例
#WhoMadeMyClothes #WhoMadeMyFabric #WhatsInMyClothes?などのキャンペーンを通 じて、服の影響について世界中で会話が生まれ るように仕掛ける。 人々が自ら主張をし、個人的な変化を成し遂 げ、協力して変革を起こすためのツールを提供 する。 ファッションの社会的・環境的影響について学 ぶ無料のオンラインコースを提供する。
政策変更には時間がかかり、見えないとこ ろでの長期間にわたる戦略的なロビイン グが必要となります。地味ではありますが、 私たちの活動の非常に重要な側面です。
グローバルファッション産業が与える社会 的・環境的な影響を可視化する調査を行い、 大手ブランドの競争原理を利用して早期の 変革を図る
人々を結集し、共に行動を起こす
例
欧州議会と英国政府に対し、企業の説明 責任、透明性の担保、労働環境改善、環 境保護に関する規制を提言。
産業システムの 「中」 での活動
グローバルファッション産業が直面している 社会的・環境的問題について消費者に啓蒙 する
アドボカシーを通じて、行政にさらに 積極的にファッション産業への法制度 を整えるよう影響を与える
例
産業の変革
産業システムの 「外」 での活動
産業システムの 「外」 での活動
文化の変容は、政策変更に比べ効果が目 に見えやすいものです。 この活動では人々 を巻き込み、共に行動を起こします。
この活動の目的は消費者と生産者の間 にある壁を崩し、人々に消費を少なく、質 を重視し、 より良い服のケアをするようイ ンスパイアし、同時に変革のため声を上 げる後押しをすることです。
私たちの活動の詳細はここからお読みいただけます。
20
責任あるビジネスを行うブランド、デザイナ ーや生産者にスポットライトを当てる
Fashion Transparency Index とOut of Sightレポ ートの作成によって、サプライチェーン全体にわた る透明性の担保と説明責任を果たす動機付けを行 う。 変革の速度が遅すぎる箇所を指摘し、改善を促す。 消費者からの圧力を使ってブランドや小売店に影 響を与える Fashion Open Studioイニシアチブを使い、小規 模で革新的なブランドやデザイナーにスポットライ トを当てる。 産業の変革は、現状の不公正で搾取が横行す るシステムをひっくり返すことを意味していま す。 これを私たちは、大規模なプレーヤーに素 早い変革を促すと同時に小規模で責任あるブ ランドやデザイナーにスポットライトを当てる ことで実現します。
このためには、大きな責任がある大規模なプ レーヤーを巻き込む必要があり、そのために このFashion Transparency Index が役割を 果たすのです。
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
ABOUT THIS INDEX
変化を起こすために 透明性が大切な理由 信頼できてわかりやすく、比較可能なサ プライチェーンに関する情報を公表する ことは、システムの変革を促すために欠 かせません。投資家、議員、ジャーナリス ト、NGO、組合、従業員やその代表者が ブランドや小売店に説明を求めるにあた り、透明性は以下のような時に役に立ち ます。 • •
• •
企業が人権や環境保護のために取り 組んでいることを精査する時。
企業がポリシーや慣習に説明責任を 果たす必要がある時。 これはラナ・プラ ザの崩壊時など、問題が起こったとき に特に重要となる。
は困難です。 これだけで複雑でシステム に根付いた多くの問題を解決することは できませんが、透明性は服が作られる場 所や状況を見通す窓となり、素早く共に 行動を起こすことができるようになりま す。行動を起こすために透明性が果たす 役割は、24-25ページの関係者や専門家 の声から理解することができます。
透明性は持続可能性とは異なるもので すが、透明性なくして持続可能で説明責 任を果たす、公正なファッション業界を 実現することは不可能です。
透明性を求めているのは私たちだけで はありません。私たちは、透明性を求め 環境や人権への侵害をやめさせたり、 るNGOやサプライチェーン上の従業員 調停したり、修復するために協働する を代表する組合などの市民社会の一部 です。 2021年4月にFashion Revolution 時。 を含む33のNGOがファッションサプライ これらの問題について戦略やベストプ チェーンの完全な透明性を求めて署名 ラクティスを共有する時。 したレターをご覧ください。
透明性は変革へのツールであり、ゴール ではありません。 これはベースラインであ り、透明性なしではグローバルファッショ ン産業をより良いものに導いていくこと
「今こそ、サプライチェーンを完全に 透明化する時です。市民社会の一員の 組織として、ファッションブランドと 小売店にサプライチェーン上の全ての 施設を公表するよう求めます。既に一 部の施設の公表に踏み切った企業を支 援し、全ての施設の公表に向けた努力 を後押しします。
行政には、全てのブランドが同じレベ ルでの透明性を達成できるよう、この ような公表に関する規制を作ることを 要求します。」
透明性 精査 説明責任 変革
21
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
ABOUT THIS INDEX
FASHION TRANSPARENCY INDEXの 役割と目的 Fashion Transparency Index は以下の目的で作成されまし た。 • •
•
•
大手ブランドや小売業者に、詳細で比較 可能な年次データを公表する動機付け を行うため
世界最大級で最も影響力の大きいファッ ションブランドや小売店の人権や環境問 題に対する透明性のトレンドを分析・比 較するため
世界最大級のブランドがどのようなデー タを公表しているかをあらゆるステーク ホルダーが理解し、さらに進んだ行動に 移せるようにするため
グローバルファッション産業が直面してい る環境的問題・環境的問題について認知 度を高め、人々を教育するため
昨年版から、私たちのコミュニティ内ではフ ァッション業界の変化の遅さにフラストレー ションを感じるといった声を多く耳にしてき ました。気候危機の緊急性と根深い人権侵 害を踏まえ、多くの人々が早急なシステム変 革を求めています。 その声を反映し、今年か らいくつかの調査方法に大きな変更を加え ました。 変更点は、 今まで政策やコミットメン トにフォーカスしていたところを、 代わりに実
行と結果にフォーカスするようにした点で す。 不透明な産業内で環境破壊や人権侵害 が隠されてしまっている現状では、 このよ うに透明性を求める活動が不可欠で、本 インデックスはその活動の中で大きな役 割を担っています。 そして近い将来には、 こ の問題は解決され、他の重点課題に関心 が移ることによって、本活動がもはや必要 なくなることを願っています。 究極的に、 このインデックスの目標は透 明性の達成ではありません。 目標は、 この 情報が個人、活動家、専門家、従業員の代 表、環境団体、立法組織、投資家やブラン ド自体によって活用され、大手ブランドの 活動を注視し、 説明責任を果たさせること で変化を現実のものとすることです。
''透明性を持とう。聞 きにくいことが聞け て、正直な会話がで きて、刺激しあって共 に変わっていけるよ うなコミュニティを 作ろう。 ' Germany Kent, 放送ジャーナリスト
22
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
FASHION TRANSPARENCY INDEXが起こす変化 Fashion Transparency Indexが果たして いる役割の大部分は、産業内で透明性とい う概念を広め、消費者がブランドが行ってい る社会的・環境的な対策に関して公表を要 求することが珍しい事ではないという認識 を作り出した事です。
2017年から調査されているブランドは平均 スコアが著しく上がっています。 この調査を 2016年に開始した際、工場のリストを公開 したのは40ブランド中 わずか5ブランドでし たが、今では100以上の世界最大手のブラ ンドが一次サプライヤーやそれ以上のリス トを公開しています。
私 た ち は 、こ の 重 要 な 産 業 シ フト を、Transparency Pledge Coalitionや Open Apparel Registryなどの同じような 志を持つ団体と共に実現させてきました。
例えば、Wiki Rateとのパートナーシップに よって、収集したブランドに関するデータを 誰でも閲覧できるように、簡単に比較でき るように、機械でも読み取れるように、 また 最も重要な点として、行動に移すことがで きるようになりました。 こうして透明性に 関するデータを活用できることは投資家 や、従業員の代表を務める組合を含む市 民社会組織にとってとても価値のあること です。 このインデックスは、投資家が活用す るBusiness & Human Rights Resouce Center(ビジネス&人権リソースセンター) のブランドダッシュボードと、企業年金プラ ットフォームのMatterに組み入れられまし た。
また、調査方法と結果の一部はサステナブ ル志向の消費者によって利用されるGood On Youアプリと、 ブランドが生活賃金を支 払っているという主張と実際の従業員の給 また、更なる透明性を求めるだけではなく、 与明細を比較するFashionChecker.orgに この手法や調査が幅広い場面で活用され、 も活用されています。 明らかになった点を行動に移していくため に他団体とパートナーシップを組んでもい ます。
ABOUT THIS INDEX
23
''2度目になる今年も、Fashion Transparency Indexのスコア、元データとソースがWikiRate.orgと繋 がります。 このパートナーシップによって、 オープンデータラ イセンスのもとデータを共有することが可能になり、 あらゆ る組織がシームレスにインデックスのデータをそれぞれの 活動に活かすことができるようになります。2021年に行わ れる、 ファッション透明性インデックスとサプライチェーン上 の生活賃金に光を当てるClean Clothes Campaign によるFashionCheckerのパートナーシップも楽しみで す。'
Sarah Ditty, グローバル政策ディレクター, Fashion Revolution
''Fashion Transparency Indexは、 買い物をするべ きブランドを示すものではなく、 ブランドや小売業者の主張 を検証するときに使うものです。 この情報はあなたの買い物 を変えるのではなく、 あなたのアクティビズムのエネルギー 源となるものなのです'
Carry Somers, 共同創設者, Fashion Revolution
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
TRANSPARENCY CASE STUDIES
24
CASE STUDIES: 現場での透明性
The Australian Strategic Policy Institute (ASPI)
オーストラリア戦略政策研究所
Business & Human Rights Resource Centre (BHRRC) 新 型 コ ロ ナ ウイル ス 感 染 症 の さ な か、Business and Human RightsResource Centre (BHRRC)は、 グローバルアパレルブ ランドのサプライヤーで組合化されていなか った従業員が不当解雇された9件の事案に ついて調査を行いました。 その結果、 インド、 バングラデッシュ、 ミャンマーとカンボジアに 位置する、大手ファッションブランドに納品し ている9つの縫製工場について4,870人以上 の組合化されていない縫製工が解雇のター ゲットになったことが明らかになりました。 サプライヤーはオーダーの減少や新型コロ ナウイルス感染症による経済的影響を解雇 理由として上げていますが、従業員は組合 に所属していないことを理由に不当にター ゲットとされたと感じていると報告されてい ます。あるケースでは、組合に新たに所属し たり、職場での新型コロナウイルス感染症 対策を要求した後に解雇された従業員もい るというとです。
公表されているサプライヤーのデータ を使って問 題 の工 場 から仕 入 れてい るブランドを特定しコンタクトすること で、BHHRCはこのような不当解雇のケ ースの解決を支援しています。
BHRRCのレポートが発表された時点で は、9ケース中6ケースは未解決でした。 しかし2021年2月にもう1つのケースが 解決しました。 これは、労働者の権利を 守る団体の国をまたいだ協力によって Garment and Textile Workers Union (衣料・繊維労働組合)とサプライヤーの 間で合意が結ばれ、1,257名の労働者が 組合に加入したことで達成されました。 公表されているデータによってBHRRC は調査を実施・報告することができ、国 をまたいだコミュニティの支援のきっか けとなり、更には責任を追求することが できたのです。
登場した企業の多くは声明を発表し、中に はウイグル人の強制労働が行われていると いう施設から調達しているかどうかを明ら かにした企業、 また新疆ウイグル自治区から のコットン調達を全面的に中止するという 企業もありました。
2017年上旬から、中国政府が新疆ウイグ ル自 治 区 西 部 ( X UA R )からウイグル人や その他の少数民族の大量移住を行ってい 2020年にはアメリカ政府が中国企業への るとの 申し立てがされるように なりまし 制裁を発令し、2021年には新疆ウイグル た。 Australian Strategic Policy Institute 自 治 区からのコットン輸 入 を禁 止しまし (ASPI)によると、100万人を超える人々が勾 た。 Workers' Rights Consortiumのエグゼ 留キャンプに拘束され、少数民族の伝統を クティブディレクターScott Novaは、 アメリ 捨てさせるなど中国政府による 「再教育」を カでは年間15億枚(小売価格にして200億ド 受けたと推定されています。 このレポートで ル以上)の新疆ウイグル自治区産の服を輸 は2017年から2019年にかけて、少なくとも 入していると推定し、 この輸入禁止の決定を 80,000人のウイグル人が州の労働力移動プ 「コットン産業における強制労働の存在を ログラムによって新疆ウイグル自治区から連 否定し続けるブランドへの警笛」と見ていま れ出され、中国全土の工場で働かされた可 す。 能性があると指摘しています。 サプライヤーリストの公表がなければ、重大 ASPIの調査は公表されたサプライヤーリス な人権侵害を正すためこれらのグローバル トなどの透明性に関する情報によって可能 ブランドとサプライヤーの繋がりを証明する になりました。 この情報を用いて、本インデッ ことは難しかったでしょう。 クスに登場する企業も多く含む、83の大手ブ ランドや服、 テクノロジーと車を販売する小 売店とウイグル人の強制労働を紐付けたの です。 ASPIはこの調査で明らかになったブランド に連絡を取り、 サプライヤーの詳細を確認し 政府による強制労働とのリンクについて警 告しました。 また、当該地域と国全体の工場 における強制労働について、 すぐに詳細な調 査を実施するよう要求しました。 レポートに
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
南アジアにおける権利擁護(Arisa) &多国籍企業研究センター (SOMO)
CASE STUDIES: 現場での透明性
有害化学物質の排出ゼロ(ZDHC) とオープンアパレルレジストリ (OAR) ZDHCは、アパレル・フットウェアブラン ド、化学品サプライヤー、 メーカーが参 加する団体で、化学品の使用方法を体 系的に変革し、持続可能な化学品管理 のためのツールを確立することで、世界 の繊維生産における化学物質の使用量 (ケミカルフットプリント)を削減するこ とを目指しています。
Z D H C は 、中 立 的 で 自 由 に 利 用 で きるツールであるOpen Apparel Registry(OAR)と提携しています。 OAR は、世界中の衣料品施設をマッピング し、固有の識別番号を割り当てること で、施設の名称や住所の標準化に貢献 しています。サプライチェーンのグロー バル化と言語の違いにより、様々な関 係者が施設の名前や住所の情報を異な る方法で記録する可能性があり、情報 の重複、不正確さ、古さが生じ、 ブランド とサプライヤーの関係性の確認をより 困難なものとしています。例えば、ジョ ン・スミスという名前の人は世界中に何 千人もいますが、社会保障番号や国民 保険番号があれば、政府はその人たち を区別することができます ZDHCとOARのデータベースをリンク させることで、 これまで別々に存在して
TRANSPARENCY CASE STUDIES
いた2つのプラットフォーム間のコミュ ニケーションが可能となり、重複を減ら し、グローバルブランドとそのサプライ ヤー間の関係性の精度を高めることが できました。 この取り組みは、環境団体 や政府機関などの利害関係者が、施設 を特定し、化学物質の使用・汚染に対 処し、最も必要とされる場所で廃水処 理を改善するために協力する上で重要 なことです。現在までに、OARの58,000 以上の施設のうち、ZDHCは2,638の施 設を提供しています。
より多くの企業がOARプラットフォーム と固有の施設IDを使用すれば、一つの 施設に関する多くの情報源から情報収 集・共有することができるため、特定の 生産拠点に関するデータの精度が向上 します。今回の調査では、一部のブラン ドがサプライヤーリストに掲載されてい る施設のOAR IDを共有し始めているこ とに気づきました。 これは、 ステークホ ルダーが固有のIDをどれだけ役立てて いるかを示すものです。
Arisaはオランダの団体で、現地のグルー プと協力して、南アジアの人権保護の強 化を提唱しています。Arisaは長年に渡り タミル・ナードゥ州の労働環境について調 査を行ってきました。 タミル・ナードゥ州は インド南部の州で、インドの紡績工場の 60%以上が立地しており、28万人の労働 者が働いています。この地域は、国全体の 繊維生産量の19%を占め、 そのうち約30 %が国際的なブランドや小売業者に輸出 されており、テキスタイルハブとしての中 枢を示しています。
タミル・ナードゥ州の繊維工場では、何千 人もの少女や若い女性が働いており、そ の多くが搾取的な慣行の危険に晒されて いて、場合によっては強制労働になること もあります。これらの慣行には、過度の非 自発的な残業、極めて低い賃金、身体的・ 性的暴力、移動の制限、結社の自由の否 定などが含まれます。
2019年から2020年にかけて、Arisaは SOMOと協業しました。SOMOは、多国籍 企業の活動が人々や環境に与える影響を 調査する非営利団体です。 調査の目的は、 タミル・ナードゥ州の繊維産業において、 特に最も弱い立場にある労働者グループ (主に児童、青年、女性、移民労働者、ダ リットなどの部族、民族、低カーストの労 働者)の雇用、労働、生活環境の構造的な 改善を可能にすることでした。
25
ArisaとSOMOは、Open Apparel Registryで公開されている生産地のリス トと、Panjivaのデータベース (詳細な出荷 情報を含むサブスクリプション型のデータ ベース)を使用して、 タミル・ナードゥ州の 紡績工場と10の多国籍アパレルブランド との関係を明らかにしました。
調査は29の紡績工場で行われ、725人の 労働者にインタビューを行いました。29の 全ての紡績工場において、脆弱性の乱用、 欺瞞、脅迫、虐待的な労働・生活環境、過 剰な残業などの強制労働の指標が確認さ れました。 その中の2つのブランド側から、 特定の工場から調達している他のブランド と連絡を取りたいという要望がありました が、公開情報から確かめることができまし た。その結果、3つのブランドが協力して、 提起された疑惑の解決に取り組むことに なったのです。
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
調査の方法と範囲について
26
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
ブランドと小売業者の 選定基準 The Fashion Transparency Indexは、世 界の主流ファッションブランドと小売業者 250社について調査しランク付けしたもの です。 ブランドの選定には以下の基準を用 いました。 •
•
年間売上規模が4億USドル以上であ ること
企業名の表記に際し、親会社の名前やグ ループ会社を用いず敢えてブランド名を 使用したのは、その方が一般的に馴染み がありよく知られているからです。 しかし ながら、H&Mグループ、 Inditex、 PVH、 Hudson's Bay Companyなど大きなグル ープ会社の傘下にあるブランドについて は、本インデックスで名前が表記されてい るかにかかわらず、グループ企業の全ての ブランドがスコアに反映されていることに ご注意ください。
ハイストリート、 ラグジュアリー、 スポ ーツウェア、アクセサリー、 フットウェ ア、デニムなどに分類される市場区 分において、主流なブランドであるこ 今年は調査対象となったブランドと小売業 と(対象地域はヨーロッパ、北アメリ 者のうち、去年の51%を上回る55%からア カ、南アメリカ、アジア、アフリカとす ンケートの回答を得ることができました。 参加表明がない場合もそのブランドをイン る) デックスに掲載し、どのブランドも一様に とはいえ、回答を済ま このインデックスで評価を受けたブランド 公正に扱っています。 は、 アパレル産業において大規模かつ影響 せたブランドが高いスコアを得る傾向にあ 力ある消費者ブランドです。人権や環境に るのは、調査員が見落とした関連情報を 対するマイナスの影響も大きく、その改革 彼ら自身が補足することができるからでし を推進していく責任がある存在だと言え ょう。 ます。彼らは他の産業と比較しても非常に 規模が大きく、世界的に裕福なオーナーや 我々がエシカルな考えを持つ小規模ブラ CEOをトップに据え、高い収益性を上げる ンドではなく、多国籍で規模の大きいブラ ブランドです。経営者たちは透明性を高め ンドを調査対象にしている理由について このリンクからQ&Aをご覧ください。 るだけでなく、人権の向上や環境へのイン は、 パクトについても取り組み、ビジネスモデ ルの中核に据えた行動を起こすべきです。
METHODOLOGY & SCOPE OF THE RESEARCH
今年はいくつのブランドが参加し ましたか?
55%
39% 回答なし
回答あり
6%
回答辞退
27
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
METHODOLOGY & SCOPE OF THE RESEARCH
ブランド一覧(アルファベット順)
= アンケート回答済
Abercrombie & Fitch (Abercrombie & Fitch)
Claire's
Hanes (Hanesbrands Inc.)
Metersbonwe
Skechers
Adidas (Adidas Group)
Clarks
Heilan Home (Helian Group Co.)
Mexx
Speedo (Pentland Group)
Aeropostale
COACH (Tapestry, Inc.)
Helly Hansen (Canadian Tire Corporation)
Michael Kors (Capri Holdings Limited)
Splash (Landmark Group)
ALDI Nord (ALDI Einkauf GmbH & Co. oHG)
Cole Haan
HEMA
Miu Miu (Prada Group)
Sports Direct
ALDI SOUTH (ALDI Einkauf GmbH & Co. oHG)
Columbia Sportswear
Hermès
Mizuno
Steve Madden
ALDO (The Aldo Group Inc.)
Converse (Nike, Inc.)
Hollister Co. (Abercrombie and Fitch)
Moncler
Amazon (Amazon.com, Inc.)
Cortefiel (Tendam)
Hudson's Bay (HBC)
Monoprix (Groupe Casino)
Superdry
American Eagle
Costco
Hugo Boss
Morrisons
Takko
ANTA
Cotton On (Cotton On Group)
Intimissimi (Calzedonia Group)
MRP
Target
Stradivarius (Inditex)
Anthropologie (URBN)
Decathlon (Association Familiale Mulliez)
Ito-Yokado (Seven & I Holdings Co)
Muji (Ryohin Keikaku Co.)
Target Australia (Wesfarmers)
Aritzia
Deichmann
Jack & Jones (BESTSELLER)
New Balance
Tchibo
Armani (Giorgio Armani S.p.A)
Desigual
JD Sports (Pentland Group)
New Look
Ted Baker
ASDA (Walmart Inc.)
Dick's Sporting Goods
Jessica Simpson (Sequentional Brands Group)
New Yorker
Tesco
ASICS
Diesel (OTB Group)
Jil Sander (Onward Holdings)
Next
Tezenis (Calzedonia Group)
ASOS
Dillard's
Jockey
Nike (Nike, Inc.)
The Children's Place
Balenciaga (Kering)
Dior (LVMH)
Joe Fresh (Loblaw Company Ltd.)
Nine West
The North Face (VF Corporation)
Bally (Shandong Ruyi Group)
Disney (The Walt Disney Group)
John Lewis
Nordstrom
The Warehouse
Banana Republic (Gap Inc.)
DKNY (G-III Apparel Group)
Jordan (Nike, Inc.)
Old Navy (Gap Inc.)
Timberland (VF Corporation)
BCBGMAXAZRIA (Centric Brands)
Dolce & Gabbana
JustFab (TechStyle Fashion Group)
OTTO (Otto Group)
TJ Maxx (TJX)
Beanpole (Samsung C&T)
Dr. Martens (Permira)
K-Way
OVS
Tod's
Belle
Dressmann (VARNER)
Kate Spade (Tapestry, Inc.)
Paris (Cencosud)
Tom Ford
Bershka (Inditex)
DSW (Designer Brands)
Kathmandu
Patagonia
Tom Tailor
28
Big Bazaar - ffb (Future Group)
Eddie Bauer (Golden Gate Capital)
Kaufland
Pepe Jeans
Big W (Woolworths Group)
El Corte Inglés
Kiabi
Pimkie
Billabong (Boardriders)
Elie Tahari
KiK
Prada (Prada Group)
Topman (Arcadia Group)
Bloomingdale's (Macy's Inc.)
Ermenegildo Zegna
Kmart (Sears Holdings)
PrettyLittleThing (boohoo group plc)
Topshop (Arcadia Group)
Kmart Australia (Wesfarmers)
Primark (Associated British Foods plc)
TOPVALU COLLECTION (AEON)
Kohl's
Prisma (S Group)
Tory Burch
Pull&Bear (Inditex)
Triumph
Tommy Bahama (Oxford Industries, Inc.)
Tommy Hilfiger (PVH)
Bonprix (Otto Group)
Esprit
boohoo (boohoo group plc)
Express
Bosideng
Falabella
Koovs
Bottega Veneta (Kering)
Famous Footwear (Caleres)
La Redoute (Galeries Lafayette Group)
Puma
Truworths
Brooks Sports (Berkshire Hathaway)
Fanatics (Kynetic)
Lacoste (Maus Frères)
Quiksilver (Boardriders)
UGG (Deckers Brands)
Brunello Cucinelli
Fashion Nova
Lands' End
Ralph Lauren
Under Armour
Buckle
Fendi (LVMH)
Levi Strauss & Co
Reebok (Adidas AG)
Uniqlo (Fast Retailing)
Burberry
Fila
Lidl
REI
United Arrows
Burlington
Fjällräven (Fenix Outdoor)
Lindex (Stockmann Group)
Reliance Trends (Reliance Retail)
United Colors of Benetton
C&A
Foot Locker
Li-Ning
Reserved (LPP)
Urban Oufitters (URBN)
Calvin Klein (PVH)
Foschini (TFG)
L.L. Bean
REVOLVE
Valentino
Calzedonia (Calzedonia Group)
Fossil (Fossil Group, Inc.)
Longchamp
River Island
Van Heusen (PVH)
Canada Goose
Free people (URBN)
Louis Vuitton (LVMH)
Ross Dress for Less
Vans (VF Corporation)
Carhartt
Fruit of the Loom (Fruit of The Loom)
Lululemon
Roxy (Boardriders)
Vero Moda (BESTSELLER)
Carolina Herrera (Puig)
Furla
Macy's (Macy's Inc.)
Russell Athletic (Fruit of the Loom)
Versace (Capri Holdings)
CAROLL (Vivarte)
G-Star RAW
Mammut (Conzzeta AG)
s.Oliver
Very (The Very Group)
Carrefour
Gap (Gap Inc.)
Mango
Sainsbury’s-TU Clothing
Victoria's Secret (L Brands)
Carter's (Carter's Inc.)
Gerry Weber
Marc Jacobs (LVMH)
SAINT LAURENT (Kering)
Walmart (Walmart Inc.)
CELINE (LVMH)
Gildan
Marks & Spencer
Saks Fifth Avenue (Hudson's Bay Company)
Woolworths (Woolworths Holdings Limited)
celio
GU (Fast Retailing)
Marni (OTB Group)
Salvatore Ferragamo
Wrangler (Kontoor)
Champion (Hanesbrands Inc.)
Gucci (Kering)
Massimo Dutti (Inditex)
Sandro (SMCP)
Youngor
Chanel
GUESS
Matalan
Semir (Semir Group)
Zalando
H&M (H&M Group)
Max Mara
SHEIN
Zara (Inditex)
Chico's Chloé (Richemont)
Merrell (Wolverine World Wide, Inc.)
Zeeman
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
調査範囲について 我々は、開示による透明性という点に敢 えてフォーカスしました。もし、 ブランドの 開示する情報やデータが詳細かつ具体的 であればどうでしょう。労働組合や環境団 体、投資家、消費者やブランドそのものを 含む多くのステークホルダーは、人権や環 境問題にポジティブな変化をもたらすた めにこれらを利用することができます。 そ れこそが我々の求めるところであり、 この インデックスは主要ブランドに圧力をか け、鼓舞することを目的としています。
限定され、閉ざされた情報は、変革の範 囲を狭めてしまいます。情報を広く世の中 に公開することで、社会的な説明責任を 果たすことができます。 よってこのインデッ クスでは、 ブランドや小売業者が社内やサ プライチェーンの裏側で行なっていること は、敢えて除外しています。開示リスクが さほど無いブランドポリシー、手順、ガバ ナンスといった情報に関してはもちろん、 企業活動の結果や過程、成果、もたらされ る影響といった意味のある情報公開を我 々が追求するのもまた、 それが理由です。
METHODOLOGY & SCOPE OF THE RESEARCH
測定の対象となるもの
The Fashion Transparency Indexは、 ブランドが 自らの企業活動のもたらす人権問題や環境問題へ のインパクトをどのように把握し、またそれを開示 しているのかを測定します。
信用に足るとみなすのは、 バリューチェーン全体の 人権と環境問題に関する主要ブランドのポリシー、 手順、パフォーマンス、進捗状況の公開情報・デー タのみです。 ポイント付与の対象となったのは、 ブランドやその 親会社のウェブサイトに掲載された公開情報につ いてのみです。
情報やデータは以下のいずれかより、 閲覧可能でなければなりません ブランドまたは親会社のウェブサイト
ブランドもしくは親会社のウェブサイトに直接リンク 先がある、 サステナビリティ/CRマイクロサイト ブランドもしくは親会社のウェブサイトにある、公開 された年間報告書または年間サステナビリティ報告 書(2019年1月以降のものを有効とする)
ブランドもしくは親会社のウェブサイトから閲覧もし くはダウンロード可能なその他のドキュメント
ブランドもしくは親会社のウェブサイトに直接リ ンク先がある、具 体 的 な開 示 事 項が記 載されて いる第三者のウェブサイトの情報(Bangladesh Accord、 Better Work、 CDP、 FLA、 ETI、 BSCI / Amfori のウェブサイトなど)
測定の対象とならないもの
The Fashion Transparency Indexはインパクトの 測定はしません。あくまで測定の対象は公開され ている情報です。
ブランドや小売業者による主張について、 それらを 検証することはこの調査の範囲外ですが、ステー クホルダーが私たちの調査結果を用いて、 ブランド にその主張をしっかりと遂行させることを推奨しま す。 The Fashion Transparency Indexは倫理性やサ ステナビリティの測定はしません。 インデックス内 のブランドを支持したり、 ランキングに基づいた特 定のブランドでの買い物を消費者に提案したりす ることはありません。 これはショッピングガイドで はありません。
我々は以下を情報源としません
商品に付属しているラベルまたはタグ
店内またはその他の場所で取得しうる情報
スマートフォンアプリ
ソーシャルメディアチャンネル
ブランドサイトからのリンクがない、第三者のウェ ブサイトまたは資料(プレス記事を含む) ブランドのウェブサイト上でリンクのないダウンロ ード可能なドキュメント
29
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
METHODOLOGY & SCOPE OF THE RESEARCH
調査プロセス
2020年8月−11月
手法のアップデートを行う: 産業調査とステークホルダーとの協議を重 ねた上で、新しい注目事項の選定と、指標の考案、 そのほかの細かい調整 を行いました。 ブランドに依頼するアンケートの準備を進め、同時に、2020 年から2021年の間に年間売り上げ額が基準値に届かなかった又は撤退 したブランドに代わり、新たに調査すべき11のブランドを追加しました。
2020年12月ー2021年1月 選定したブランドと小売業者を調査する: 調査チームはそ れぞれのブランドを調査し、公開されエビデンスのあるも のについて事前にアンケートに入力をし、暫定的に採点し ました。 この段階で、 ブランドには今年のインデックスに含 まれていることを伝達し、参加を打診しました
2021年2月上旬 データのクオリティを確認する: 最低 2名以上の調査リーダーにより、全250 ブランドにおける各指標のアンケート について、内容の正確さと一貫性をチ ェックしました。
2021年3月下旬 ブランドが回答したアンケートを返却する: 参加 を取り決めたブランドは、記入済みアンケートを 返却。 調査チームは回答を確認し、十分な情報開 示がなされている部分に関して追加スコアの採 点をしました。
2月下旬 各ブランドがアンケートを受け取り、完成さ せる: ブランドには約1ヶ月間で、調査員が見 逃した情報を確認し、 アンケート内容の不足 を補ってもらいました。
2021年3月下旬−4月下旬 回答内容の評価とデータの精度チェック: 調 査チームは設問とスコアの最終決定をする前 に、数回に渡り査読をし、情報の精度を確認し ました。
2021年5月上旬−6月下旬 データ集計、分析、 レポートの作成: 各ブランドのアンケート内容を 順番に並べ、1つの大きな完全データにまとめました。 このデータ は、最終結果の分析、前年比の進展の判断、 また注目すべき内容を 抽出するために用いました。 最終得点は、公開直前にブランドに通 知しました。
30
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
METHODOLOGY & SCOPE OF THE RESEARCH
調査方法について Fashion Transparency Indexは、人権や環境問題に関する情報 開示について、以下の5つの主要分野の基準に従って評価します。
1. ポリシーと公約
2. ガバナンス(経営管理)
ブランドアンケート のテンプレート
4. 情報の把握、開示、改善
2021年版インデックス は、250ブランドの239の個別 指標をカバーし、57,490のデ ータポイントで構成されてい ます。 そのテンプレートはこち らをご覧ください。
3. サプライチェーンのトレーサビリ ティ 5. 重点課題
今年の項目は下記
•
•
働きがいのある人間らしい仕事、新 型コロナウイルス感染症への対応、 生活賃金、購買慣行、労働組合化と 団体交渉 ジェンダーや人種の公平性
•
サステナブルな調達と材料
•
廃棄と循環性
• • •
過剰消費とビジネスモデル 水と化学物質
気候変動と生物多様性
''透明性とは未来だと 思います。何故なら、 サプライチェーンに 関わる人々の信頼を 構築する力を有する からです。 それは、 こ の地球上の全てのも のの存続に必要なも のなのです'' Mostafiz Uddin, 衣料品メーカー
31
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
METHODOLOGY & SCOPE OF THE RESEARCH
32
調査方法に関する諮問委員会
この調査方法は2017年、様々な業界の専 門家やステークホルダー(研究職、貿易運 動団体、市民社会組織、社会的責任投資、 ビジネスコンサルティング、ジャーナリズ ムなど)と共に、4ヶ月の歳月をかけ協議を したのちデザインされました。今年は、20 名以上の専門家や組織を含むプロボノチ ームの手により、重要なアップデートを行 っています。 チームは以下の通りです。
Fiona Gooch, Traidcraft Exchange シニ ア個人部門ポリシーアドバイザー Christina Hajagos-Clausen, IndustriALL Global Union 繊維&衣料 産業ディレクター
Kristian Hardiman, Good On You 評価 部門長
Dr Mark Anner, ペンシルバニア州立大 Aruna Kashyap, Human Rights Watch 学 国際労働者権利センター センター長・ シニアカウンセル 博士 Kate Larsen, ビジネス・人権コンサルタ Eloisa Artuso, Fashion Transparency ント Index Brasil リーダー Hester Le Roux, CARE International シ Neil Brown, GIB Asset Management 普 ニアエコノミックアドバイザー・ ポリシー・ アドボカシー担当 通株責任者
Maddy Cobbing, Greenpeace デトック ス・マイファッション・キャンペーン Gary Cook, Stand.earth 地球気候運動 ディレクター Subindu Garkhel, The Fairtrade Foundation コットン・繊維部門長
Emily MacIntosh, European Environmental Bureau 繊維部門ポリシ ー担当者
Maya Rommwatt, Stand.earth ファッシ ョン気候活動家
Francois Souchet, エレンマッカーサー 財団 Make Fashion Circular 指揮
Joe Sutcliffe, CARE International 尊厳 ある仕事シニアアドバイザー
Urksa Trunk, Changing Markets キャン ペーンアドバイザー
Ben Vanpeperstraete, サプライチェー ンコンサルタント
我々の調査方法は、GRI、Open Data Standard、国連の指針、SDGs、OECD 適 正 評 価 ガ イド ラ イ ン 、I L O 関 連 協定、ACT、CHRB、Know The Chain、Transparency Pledgeなど、既存 の国際的な基準や枠組みや他のベンチマ ーク(指標)との整合性にも努めています。 また、共同型の検索プラットフォームであ るWikirateとのパートナシップにより、他 のベンチマークとも調査結果を共有しあ っています。
今年は前年と比較して19の指標を新たに 追加しました。 スコアのウェイトは、詳細 な開示、結果、成果、 それによる影響、及び 外部のステークホルダーがブランドの責 任を追求する際の実用的なデータに重き が置かれる配分になっています。
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
調査の限界 •
•
• •
データは2021年4月30日現在のもの であり、 これ以降にブランドが情報開 示または撤回、そのほかエビデンス へのリンクが機能しなくなったなど の状況が変わる可能性もあります。
2021年に調査方法を変更したこと で、対前年との比較をしたとき結果 に何らかの影響が及ぼされる可能性 があります。 そのことを念頭におきな がら年度別の比較をしてください。 主に机上にて行われる調査は人の 手によってなされており、調査チーム の人為的ミスも起こり得ます。
ブランドが公開している主張自体を 検証するところは、 この調査の範疇で はありません。実態とブランドの主張 があまりに相容れない場合、現場の 権利所有者と専門家のみがブランド に責任を追求することができます。
METHODOLOGY & SCOPE OF THE RESEARCH
33
調査結果の算出方法 我々は、主要ブランドの実用的な情報の 公開に関して、 この調査方法は包括的で 強固なものであると自信を持っています。 調査チームは、250のブランドすべてにわ たって可能な限り、徹底的に慎重に、客観 的かつ一貫性のあるものになるよう最善 を尽くしてきました。 とはいえ、 この調査を さらに良いものにするため、皆様からの貴 重なご意見やフィードバックは以下のEメ ールアドレスにご連絡ください。
(英語) transparency@fashionrevolution.org
全てのスコアは小数点以下2桁まで計 算された後、最終的に四捨五入してパ ーセンテージに置き換えられています (本報告書に記載されています)。
特に明記されていない限り、前年比との 差は変化率ではなく、実際の変化量を パーセンテージとして表記しています。 例えば、ある年に30%のスコアだったブ ランドが翌年45%となった場合、50%の 増加(45/30=1.5)ではなく、15%の増加 (45-30=15)としています。
それぞれのブランドのトータルスコア を算出するために、5つの異なるセクシ ョンに分けて点数配分を行いました。 それぞれのセクションのウェイトは異 前回の調査段階で四捨五入された数 なっており、必ずしも均等ではありませ 値が使われている場合、次の調査では 四捨五入前の正確な数値ではなく、四 ん。 : 捨五入後の数値を用いて前年度比との o セクション1:33/250ポイント 差を計算しています。例えば、あるセク ションで平均の数値が17.74%だったと o セクション2:13/250ポイント する と、18%に切り上げます。 前年度の 同じセクションの平均スコアが12.41% o セクション3:74/250ポイント とすると、それは12%に切り捨てられて o セクション4:47/250ポイント いるため、前年度比の違いは、厳密に言 えば5.33%ですが、四捨五入された後 o セクション5:83/250ポイント の数値で算出するため、6%となります。 このレポートにおける平均とは全て平 均値を意味します。
全体にわたる平均スコアは、 セクション ごとの平均スコアの平均ではなく、 ブラ ンド個別の最終スコアの平均を取って います。
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
METHODOLOGY & SCOPE OF THE RESEARCH
34
得点の割合
1.
2.
ポリシーと公約 従業員とサプライチェーン労働 者に関する社会・環境ポリシー において、どのように取り組ん でいるか、関連する目標やター ゲットを設定しているか、また ターゲットに対する年間の進捗 を報告しているかどうか、調査 します。今年は、結果や影響の 部分に重きを置くためこのセク ションの配点は半減することに しました。
割合 (%)
13.2%
3.
ガバナンス(経営管理)
トレーサビリティ
社会や環境に関する取り組みに ついて、取締役会の誰が責任を 負い、どのように実行している か、そこで改善された内容が従 業員・CEO・サプライヤーにどの ように関連しているか、担当部署 は一般から問い合わせがしやす いかどうかを確認します。また、 今年は取締役会に労働者の代 表が含まれているかどうかも項 目に入っています。
サプライヤーリストの公開につ いて、製造業者、加工施設、原 材料の3つの点から考察しま す。 また、サプライヤーの住所、 労働者数、性別の内訳、移民労 働者の数、労働組合の代表、 リ ストの最新更新日なども、 追 加情報としてチェックします。
5.2%
29.6%
4. 把握・開示・改善 ここでは、 ブランドがデュー ディリジェンスのプロセス についてどのような情報を 開示しているのか、ポリシ ーに対してサプライヤーを どう評価するか、監査と評 価の結果はどのようなもの か、問題が発見された場合 の対処方法、労働者の苦情 申し立て方法、その際の対 応についてチェックします。
18.8%
5. 重点課題 こ の 最 後 の セ ク ション は 、去 年 の 19.6%から大幅に比重をアップさせま した。 というのも、産業が直面する緊急 かつ難しい課題に関しての情報を公 開する姿勢を強く後押しする必要があ るからです。新型コロナウイルス対応、 生活賃金、購買慣行、労働組合化、人 種とジェンダーの平等、過剰生産、廃 棄物と循環性、サステナブルな資源の 活用、水や化学薬品の使用、気候変動 と森林破壊といった数ある問題に対し て、 ブランドがどのような情報を開示し ているかを見ていきます。
33.2%
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
METHODOLOGY & SCOPE OF THE RESEARCH
最終スコアの見方
0—5%
6—10%
250点満点でカウントし、最終的なスコアはパーセ ンテージに直され、小数点以下を四捨五入して表 示します。 ブランドの個別の得点ではなく、 ブランド の得点範囲に焦点をあててください。 そうすること で、業界全体の透明性の傾向をより正確に把握する ことができます。
11—20%
21—30%
31—40%
41—50%
51—60%
61—70%
71—80%
81—90%
91—100% 透明性
0から5%のスコアを獲 得したブランドは、全く 何 も 開 示して い な い か、非常に限られた情 報のみ公開しています。 その 限ら れ た 情 報 と は、 ブランドの雇用慣習 や地域社会と関わる活 動に関連していること が多いです。
6から10%のスコアを 獲得したブランドは、従 業員とサプライヤーの ための何らかのポリシ ーを公開していること が多いです。スコアが 1 0 % 程 度 のブランド は、基本的なサプライ ヤーの行動規範、手続 きに関する情報、サプ ライヤーの評価プロセ スについて限定的に開 示する傾向にあります。
11から20%のスコアを 獲得したブランドは、従 業員とサプライヤーの ためのポリシーを多く 公開しています。 サプラ イヤーに関する評価と 改善の手続きに関する 幾つかの情報も見られ ます。 しかし、これらの ブランドはほとんどの 場合サプライヤーのリ ストを公開しておらず、 我々が重点課題と位置 付ける以下の情報を例 え公開していたとして も、多くの情 報 は 得ら れません。(新型コロナ ウイルス対応、生活賃 金、購買慣行、労働組 合化と団体交渉、人種 とジェンダーの平等、 サ ステナブルな調達と素 材、過剰消費、繊維廃 棄物と循環性、水や化 学薬品の使用、脱炭素 化、森 林 破 壊と再 生、 炭素排出とエネルギー 使用)
21から30%のスコアを 獲得したブランドは、ポ リシー、手順、ガバナン ス、社 会 的・環 境 的 目 標、サプライヤーの評 価や改善の手続きにつ いて、より詳 細 な情 報 を公開していることが 多いです。工場名や住 所などメーカーの基本 情報はありますが、サ プライヤーの評価結果 や苦情処理ルートに関 する情報は共有してい ないと思われます。 すべ ての重点課題に関して 情報を開示しているわ けではありませんが、 い くつかの課題には触れ ている事があります。
31から40%のスコアを 獲得したブランドは通 常、第一次製造業者ほ か、ポリシー、手順、社 会的・環境的目標、ガ バナンス、サプライヤー の評価や改善の手続き についての詳細な情報 を開示しています。 我々 が重点課題と位置付け る情報のうち、 炭素排 出、ジェンダー平等、サ ステナブルな調達と素 材、エネルギー使用の いくつかに関しても部 分的に公開されている 可能性が高いです。
41から50%のスコアを 獲得したブランドは、 よ り詳細なサプライヤー リストを公開しており、 その多くはメーカーだ けでなく加工施設も公 にしています。加えてブ ランドポリシー、手順、 社会的・環境的目標、 ガバナンス、サプライヤ ー評価・改善手続き・サ プライヤー評価の報告 についても詳細な情報 が確認できました。炭 素排出、ジェンダー平 等、サステナブルな方 法と素材、エネルギー 使用、繊維廃棄物、脱 炭素化、水と化学物質 などの重点課題に取り 組んでいる可能性が高 いです。
51から60%のスコアを 獲得したブランドは、他 の範囲ですでに記載さ れている全ての情報を 公開し、さらに詳細な サプライヤーリストも 掲載があります。 ここに ランク付けされたブラ ンドは、殆どの人権や 環境政策、手順、社会 的・環境的目標、ガバナ ンスとデューディリジェ ンスのプロセスに関す る情報も公開していま す。また、サプライヤー に関する評価の結果に 関してもある程度情報 開 示しています。炭 素 排出、ジェンダー平等、 サステナブルな調達と 素材、 エネルギー使用、 繊 維 廃 棄 物 、脱 炭 素 化、水と化 学 物 質、生 活賃金、循環性などの 重点課題に取り組んで います。
61から70%のスコアを 獲得したブランドは、他 の範囲ですでに記載さ れている全ての情報を 公 開し、さらにメーカ ー、縫製工場、 コットン、 ウール、 ビスコースなど の原材料サプライヤー の詳細リストも公開し ています。 ここにランク 付けされたブランドは、 これより下のランク内 で既に説明された重点 課題以外にも、人種の 平等、 コロナウイルス、 過剰消費、森林破壊と 再生、購買慣行、労働 組合化と団体交渉につ いても取り組んでいくで しょう。
71から80%のスコアを 獲得したブランドは、他 の範囲で既に記載され ている全ての情報を公 開し、 さらにコットン、 ウ ール、ビスコースなど の原材料の製造業者、 加工施設、サプライヤ ーの詳細リストも公開 しています。 それに加え てデューデリジェンス におけるプロセスやそ の結果、サプライヤー の評価や改善方法に関 しても公にしています。 ここにランク付けされ たブランドは 、重 点 課 題に関してのインデッ クスにおいてかなり包 括的で詳細な情報やデ ータを提示しています が、成果とそのインパク トに関しての重要な開 示はまだ欠如していま す。
80%以上のスコアを獲得したブランドはあり ませんでしたが、あるとすれば既に説明した全 ての情報を公開するとともに、特定の施設に おけるサプライヤーの評価および改善方法の 詳細情報を公開するでしょう。 また、原材料か ら製造に至るまでの、少なくとも95%の詳細 なサプライヤーリストを共有しています。 ここに ランク付けされたブランドは、社会面・環境面 へのインパクトを財務的なビジネスモデルに 反映させ、サステナブルな素材の使用につい て十分な情報開示をし、自社及びサプライチ ェーンにおける職務内容とジェンダーの関係 についても提供しています。企業の購買慣行、 サプライチェーンの労働者の賃上げに向けて の取り組みや進捗状況に関する情報にもアク セスすることができます。炭素排出、再生エネ ルギーや水の使用量について自社の業務から 原材料レベルに至るまでの情報も公開されて います。 スコア100%がどのような状態を意味 するのかについては、 このQ&Aリンクの質問を ご覧ください。
35
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
36
結果と分析 全ての結果のアクセスは こちらから
全250ブランドの基礎データを確 認する場合はWikirate.orgをご 覧ください
FULL RESULTS & DETAILED ANALYSIS
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
最終スコア 0-5%
6-10%
11-20%
21-30%
31-40%
41-50%
51-60%
61-70%
71-80%
Brunello Cucinelli
5
Macy's
10
boohoo
20
Brooks Sport
30
Next
40
Lindex
50
Esprit
60
H&M
68
Sports Direct
5
Bloomingdale's
10
Hollister Co.
20
Big W
29
Hanes
39
Old Navy
49
60
Timberland
66
Gerry Weber
5
The Children's Place
9
Abercrombie & Fitch
20
Ralph Lauren
29
Champion
39
Gap
49
United Colors of Benetton
Splash
9
Otto
20
Pimkie
29
Zeeman
38
Banana Republic
49
59
66
5
Van Heusen
The North Face
Bosideng
5
La Redoute
9
PrettyLittleThing
20
Fjällräven
28
Asda
38
ASICS
49
59
65
Marni
Tommy Hilfiger
Vans
4
DSW
9
REI
19
Nordstrom
28
Primark
38
Sainsbury's
48
59
65
Fila
Calvin Klein
C&A
4
Sandro
9
Prada
18
El Corte Inglés
28
Hermès
37
Marks & Spencer
48
56
63
LC Waikiki
Target Australia
Gildan
K-Way
4
Merrell
9
Miu Miu
18
Morrisons
28
Pull&Bear
36
Dressmann
48
Kmart Australia
56
Aeropostale
3
United Arrows
9
Chloé
18
Amazon
27
Zara
36
ASOS
47
Gucci
56
Justfab
3
LL Bean
9
Monoprix
18
Lidl
27
Stradivarius
36
Zalando
45
Patagonia
56
Claire's
3
Carhartt
9
Moncler
18
Topshop
27
Massimo Dutti
36
Levi Strauss & Co
44
Nike
55
Eddie Bauer
3
Kmart
8
Cotton On
18
Topman
27
Bershka
36
Fendi
43
Jordan
55
Longchamp
3
Chico's
8
Falabella
17
JD Sports
27
Helly Hansen
36
G-Star RAW
43
Converse
55
Deichmann
2
Canada Goose
8
Matalan
17
John Lewis
27
Bonprix
35
SAINT LAURENT
43
REVOLVE
2
Valentino
8
Foschini
17
The Warehouse
27
Lacoste
35
Balenciaga
43
Jockey
2
Skechers
8
TOPVALU COLLECTION
16
Mango
26
Wrangler
34
Bottega Veneta
42
BCBGMAXAZRIA
2
Reliance Trends
7
Urban Outfitters
16
Walmart
26
New Look
34
GU
42
DKNY
2
Foot Locker
7
Free people
16
Vero Moda
26
Clarks
34
Tom Tailor
42
Dolce & Gabbana
2
AJIO
7
Anthropologie
16
Salvatore Ferragamo
25
Russell Athletic
34
New Balance
42
Nine West
1
Diesel
7
Versace
16
Jack & Jones
25
Fruit of the Loom
34
Lululemon
42
SHEIN
1
Furla
7
American Eagle
16
Prisma
25
Burberry
34
Target
42
Tory Burch
0
Buckle
7
Michael Kors
16
Columbia Sportswear
25
Hugo Boss
34
Uniqlo
42
New Yorker
0
Beanpole
7
Dr. Martens
15
ALDI Nord
25
Tesco
34
Max Mara
0
ANTA
7
Reserved
15
Kathmandu
25
Ermenegildo Zegna
33
celio
0
Ross Dress for Less
6
MRP
15
Decathlon
24
Superdry
32
Roxy
0
Jil Sander
6
Kohl's
15
24
Mammut
31
Quiksilver
0
Dillard's
6
Cortefiel
15
Woolworths South Africa
24
31
Heilan Home
0
Famous Footwear
6
Ito-Yokado
15
HEMA
Dick's Sporting Goods
24
31
Billabong
0
Express
6
Burlington
15
Carrefour
ALDI SOUTH
24
Tom Ford
0
Triumph
6
Lands' End
14
CELINE
22
Semir
0
Tommy Bahama
6
KiK
14
Very
23
Pepe Jeans
0
Cole Haan
6
Carolina Herrera
14
Louis Vuitton
22
Fashion Nova
0
ALDO
14
Aritzia
22
Youngor
0
Bally
14
Dior
22
Mexx
0
Armani
14
Muji
22
Metersbonwe
0
Kaufland
14
Marc Jacobs
22
KOOVS
0
Tod's
14
River Island
22
Jessica Simpson
0
Steve Madden
14
Victoria's Secret
22
Elie Tahari
0
Joe Fresh
13
Kiabi
22
Big Bazaar - ffb
0
Saks Fifth Avenue (HBC) 13
Kate Spade
22
Belle
0
Hudson's Bay
13
COACH
22
TJ Maxx
13
Under Armour
22
Li-Ning
13
Mizuno
22
CAROLL
13
Ted Baker
21
Fossil
13
Desigual
21
Fanatics
12
Disney
21
Carter's
12
GUESS
12
Takko
12
Costco
12
Paris
12
s.Oliver
11
Chanel
11
Tezenis
11
Intimissimi
11
Calzedonia
11
Truworths
11
UGG
55
Reebok
54
Adidas
54
Tchibo
53
Speedo
53
Puma
51
* ブランドは、250点満点中のスコアでランク付けされていますが、四捨五入された数値で表示されています。 同じ点数のブランドがある場合は、 アルファベット順に表示され、同一の親会社であれば、他の会社とグループ化されています。
OVS
81-90% 78
91-100%
37
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
FULL RESULTS & DETAILED ANALYSIS
調査結果概要 平均点は250点中 57点(スコア23%)
全体の8%にあ たる20ブランド のスコアが0%
80%以上のス コアを獲得した ブランドはありま せんでした
70
60
70%以上のス コアを獲得した ブランドは1つ
50
40
ブランド数
30
20
10
0-5
6-10
11-20
21-30
31-40
41-50
51-60
61-70
71-80
81-90
91-100
最終得点 (%)
透明性
38
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
FULL RESULTS & DETAILED ANALYSIS
39
各分野ごとの平均スコア
53% 1.
31% 2.
19% 3.
19% 4.
15% 5.
ポリシーと公約
ガバナンス(経営管理)
トレーサビリティ
把握・開示・改善
重点課題
ポリシーと公 約 は 主 要 なブラ ンドにおいて最 も透 明 性 の 高 いブランドを示すセクションで す。OVSとPumaはスコア94% の最高得点をマークし、16ブラ ンドがスコア90%台、39ブランド が80%台、21ブランドが70%台 と続いています。 この結果から、 これらのブランドは社会や環境 に対するポリシーの全てもしく は大部分が公開されているとい うことが分かります。同時に、人 権や環境インパクトに関する大 部分のポリシーがどのように具 体 的 な方 策や目 標に落とし込 めているかどうかも見て取れま す。0−10%のスコアを獲得した 26のブランドは、関連するポリシ ーを殆ど公開していません。 今年 の配点方法では、結果や成果、 イ ンパクトの部分のウェイトを大き くしたため、 このセクションの有 効ポイントは半減されています。
B a l e n c i a g a 、B o t t e g a V e n e t a 、G u c c i 、S a i n t L a u r e n t 、P u m a 、H u g o Boss、H&Mの各ブランドは、 この セクションで85%と最も高い評 価を得ています。大半のブランド はサステナビリティ部門の連絡 先を開示し、人権や環境問題に 対する取締役会の説明責任につ いても言及しています。3社に1社 は、経営者、従業員、サプライヤ ーが影響を改善するためのイン センティブを開示しています。労 働者が取締役会に参加している ことを開示したり、サステナビリ ティの取り組みへの財務投資の 詳細を公表しているブランドは ほとんどありません。
これまで以上に多くのブランド (47%)が、一次製造元を公開し ています。今 年 初 めて4つのブ ランドが 9 0 % 台 のスコアを獲 得し、最も高いスコアを獲得し たUGGに至っては、驚くことに 97%の得点を獲得しました。そ の後、GildanとZenga、OVSと Espritが続きます。 これらのブラ ンドは、一次製造先以降の詳細 な製造元リストと、加工施設と原 材料のサプライヤーを公開して います。 また、全体の51%を占め る大多数のブランドが0-1%の得 点にとどまり、サプライヤーにつ いて全く公開していません。私た ちは、2021年までに少なくとも 一次製造先に関して50%のブラ ンドが明らかにすることを期待し ていましたが、今後もその希望を 持ち続け、来年には50%を超え ることを目指しています。
このセクションでは、ブランドが サプライチェーンにおいて自社 の方針(セクション1の方針)が守 られているかどうか、また、その 取り組みが労働条件の改善や責 任ある環境活動につながってい ることをどのように証明している かを示しています。 ここで55%以 上のスコアを獲得したブランド はありません。最高得点の55% を得点したのは、OVSとTarget Australiaでした。 一方、全体の約 3分の1を占める81ブランドが、最 も低い0-10%の得点であり、サ プライチェーンの適正評価やサ プライヤーの精査、 そして問題が 起こった際の対応策を何も開示 していない、もしくはほとんど開 示していないということになりま す。100ものブランドが0-10%の 範囲であった昨年と比較して、少 々状況は改善していますが、 この セクションで獲得できる得点の 50%未満にとどまっているブラン ドが全体の94%を占めています。
このセクションにおいて、OVSが 最も高い得点72%を獲得した ブランドとなりました。OVSは唯 一、70%代の得点を獲得したブラ ンドです。Gucciが66%で2位、そ の次にH&Mが54%で3位と続い ています。 結果は重点課題のセク ションにおいて、 全ブランドの99% を占める247ブランドが50%以下 であることを示しています。 これ は、新型コロナウイルス感染症に 対する対応や、購買行動、賃金、 組合結成、ジェンダーと人種の平 等、サステナブルな素材の使用、 廃棄物と循環性、水と化学物質、 気候変動と森林破壊といった非 常に重要でかつ緊急の課題に関 して、大多数の主要なブランドに おいて透明性が欠けていること を意味します。
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
40
ポリシーと公約
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
POLICIES & COMMITMENTS
41
1. ポリシーと公約 アプローチ 主流ブランドや小売業者が公表している人や 環境に優しいポリシーとは?
このセクションでは、企業レベル(企業が経営する本社、店舗、倉庫と所 有する生産施設)とサプライヤーレベル(行動規範とサプライヤーの指針 書)の双方において公開しているポリシーや手順を確認しています。
私たちは以下の問題を取り上げます: •
動物福祉
•
•
贈収賄、汚職、及び事実に反する 情報の提示
•
ハラスメントや暴力
児童労働
• •
在宅勤務
• • • • • • •
•
• • •
年次休暇と祝日
生物多様性及び保護
地域社会とのかかわり
契約における賃金の雇用条件
• •
差別
•
エネルギーや二酸化炭素の排 出量
•
多様性と包括 賃金平等
強制労働、拘束労働
外国人や移民の労働
• • • • •
結社の自由、組織する権利、団体 交渉
•
廃棄物、 リサイクル(製品と繊維)
健康・安全
• •
水の消費
生活条件・寮
製造に関して制限された物質のリ スト (MRSL) 出産の権利、育児休暇の取得
精神的健康とウェルビーイング 残業手当
規制化学物質リスト(RSL) 下請け
賃金や福利厚生(生活保護、保険、 年金、ボーナス) 廃棄物、 リサイクル(パッケージ、紙)
• •
排水と処理
労働時間、休憩
水の使用と資源の消費
社会的・環境的な優先事項と 重要な長期的目標 私たちは、 バリューチェーン全体に渡り、 ブラ ンドが社会的・環境的なインパクトを改善す るための目標や戦略を公開しているか確認 し、具体的な目標達成年が2021年以降に設 定されている場合にのみ調査に反映しまし た。また、目標達成に向けて毎年の進捗状 況を公表しているブランドには加点していま す。 最後に、サステナビリティに関する年次レポ ートが独立した第三者機関によって監査さ れているか確認しました。
POLICIES & COMMITMENTS
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
42
1. ポリシーと公約 結果 0-5%
6-10%
11-20%
21-30%
31-40%
41-50%
51-60%
61-70%
71-80%
81-90%
91-100%
BCBGMAXAZRIA
5
DKNY
8
Fila
20
Canada Goose
30
Anthropologie
40
Carter's
50
Aritzia
60
Zeeman
70
ASICS
80
Gildan
90
OVS
94
Brunello Cucinelli
5
Nine West
8
Fanatics
20
Famous Footwear
30
Free people
40
REI
50
Lacoste
60
Amazon
70
CELINE
80
Bershka
89
Puma
94
celio
3
SHEIN
8
LL Bean
20
Buckle
30
Urban Outfitters
40
Costco
49
COACH
58
Decathlon
70
Dior
80
Calvin Klein
89
C&A
93
Max Mara
3
Dillard's
19
Splash
30
Chico's
39
Disney
49
Cortefiel
58
Fjällräven
70
Fendi
80
Massimo Dutti
89
Hermès
93
New Yorker
3
Justfab
19
Foot Locker
28
Cotton On
39
Dr. Martens
49
Kate Spade
58
Very
70
Louis Vuitton
80
Pull&Bear
89
Levi Strauss & Co
93
Tory Burch
3
Deichmann
18
Marni
28
Kiabi
39
Fossil
49
Lands' End
58
80
Stradivarius
89
Converse
92
2
Claire's
17
Tommy Bahama
27
Merrell
39
Bloomingdale's
48
Lidl
58
70
Marc Jacobs
Billabong
Woolworths South Africa
Tommy Hilfiger
89
Jordan
92
2
Aeropostale
17
Bosideng
26
Sandro
39
Hudson's Bay
48
Versace
58
70
80
Heilan Home
Bonprix
Superdry
Van Heusen
89
Nike
92
2
Beanpole
17
Carhartt
26
La Redoute
38
Macy's
48
Victoria's Secret
58
69
79
Quiksilver
Moncler
Big W
Zara
89
The North Face
92
2
Eddie Bauer
16
Jil Sander
25
Skechers
37
Miu Miu
48
Michael Kors
58
69
78
Roxy
Sainsbury's
Lululemon
Gucci
89
Timberland
92
2
Gerry Weber
16
Kaufland
25
Furla
36
Prada
48
Abercrombie & Fitch
57
68
78
Fashion Nova
New Look
Patagonia
Next
89
2
Jockey
14
Ross Dress for Less
25
DSW
35
Saks Fifth Avenue (HBC) 48
American Eagle
57
67
77
Pepe Jeans
Carrefour
Hugo Boss
Target
89
REVOLVE
2
Dolce & Gabbana
12
K-Way
24
AJIO
34
Burlington
47
Hollister Co.
57
67
77
92
Clarks
Walmart
United Colors of Benetton
G-Star RAW
87
Semir
2
Longchamp
12
Express
23
Reliance Trends
34
CAROLL
47
KiK
57
67
75
92
Salvatore Ferragamo
Muji
Vans
H&M
87
Tom Ford
2
ANTA
23
Takko
34
Joe Fresh
47
Morrisons
57
67
74
91
UGG
Wrangler
Adidas
Burberry
86
91
0
Triumph
23
Ermenegildo Zegna
33
Truworths
47
Desigual
56
66
73
Belle
Armani
El Corte Inglés
Banana Republic
73
86
91
Big Bazaar - ffb
0
LC Waikiki
22
Kmart
33
Helly Hansen
46
Otto
56
66
Tchibo
Gap
Tom Tailor
ALDI SOUTH
GU
86
91
Elie Tahari
0
Sports Direct
22
Tod's
33
Chanel
45
Columbia Sportswear
55
65
73
Old Navy
Mango
Lindex
Target Australia
86
91
Jessica Simpson
0
Cole Haan
21
Valentino
31
Matalan
45
Falabella
55
64
73
Reebok
Champion
Monoprix
Uniqlo
86
Paris
45
Kohl's
55
64
72
0
Hanes
Kathmandu
KOOVS
Kmart Australia
86
0
The Children's Place
45
Chloé
55
64
71
Metersbonwe
Nordstrom
Ralph Lauren
Balenciaga
85
0
ALDO
44
Pimkie
55
64
71
Mexx
ALDI Nord
Asda
0
HEMA
43
s.Oliver
55
64
85
Youngor
Fruit of the Loom
Bottega Veneta
43
Ted Baker
55
64
85
MRP
Jack & Jones
Primark
Bally
42
GUESS
54
River Island
64
Diesel
42
Mizuno
54
Russell Athletic
64
Calzedonia
42
Carolina Herrera
53
TOPVALU COLLECTION
64
Foschini
42
JD Sports
53
Vero Moda
64
Intimissimi
42
TJ Maxx
53
Dick's Sporting Goods
63
Tezenis
42
boohoo
52
Prisma
63
United Arrows
42
PrettyLittleThing
52
Topman
63
Mammut
52
Topshop
63
Reserved
52
Ito-Yokado
62
Li-Ning
51
John Lewis
61
Steve Madden
51
Brooks Sport
61
Under Armour
51
* ブランドは、250点満点中のスコアでランク付けされていますが、四捨五入した数値で表示されています。 同じ点数のブランドがある場合は、 アルファベット順に表示されます。
SAINT LAURENT
85
Esprit
84
Tesco
84
ASOS
83
Marks & Spencer
83
Speedo
83
Zalando
83
Dressmann
82
The Warehouse
82
New Balance
81
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
43
1. ポリシーと公約 調査結果
会社のポリシー
サプライヤーのポリシー 手段
いくつのブランドが有効なポリシーを公表したか? 差別
131
地域社会との関わり
208
51
219
205
エネルギーや温室効果ガスの排出
145
贈収賄、汚職防止、 および事実に反する情報の提示
198
129
廃棄物、 リサイクル (パッケージ、事務所、小売)
134
多様性と包括
172
健康・安全
128
ハラスメントや暴力
196
191
196
192 185
109
217 200 210
172
水の消費量
119
153
149
動物福祉
200
192
193 177
賃金や福利厚生(例:ボーナス、保険、生活保護、年金)
223
139 139 138
生物多様性及び保護
111
賃金平等
158
138
88
152
136
精神的な健康やウェルビーイング
121 129
結社の自由・組織する権利、団体交渉
106
廃棄物、 リサイクル(製品、繊維)
51
114
労働時間・休憩
105
規制化学物質リスト(RSL) 60
年次休暇と祝日
89
42
73
150 206
113 117
104
出産の権利、育児休暇の取得
209
114
102 94
強制労働・拘束労働
166
外国人や移民の労働
125
113
排水と処理
119
児童労働
219
131
119
契約と雇用条件(通知までの期間、解雇や懲戒処分を含む)
223
64
在宅勤務
145
24
92
生活環境・寮
44
155
製造制限物質リスト(M RSL)
64
残業手当
83 184
60
下請け
79
0
15
30
45
60
75
173
90
105
120
135
150
165
180
195
210
225
240
255
270
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
POLICIES & COMMITMENTS
1. ポリシーと公約 調査結果 ポリシーの実行
児童労働
賃金平等
89% サプライヤーの
ポリシーを公開している
48% ポリシーの
実行方法を公開している
在宅勤務
強制労働・拘束労働
35%
54% 会社のポリシーを 公開している
ポリシーの
実行方法を公開している
精神的健康とウェルビーイング
37% サプライヤーの
ポリシーを公開している
88% サプライヤーの
ポリシーを公開している
66% ポリシーの実行方法を 公開している
サプライヤーの行動規範
10%
48%
52%
72%
36%
ポリシーの実行方法を
会社のポリシーを
対処する手順を 開示している
行動規範が契約 の一部であること を明記している
行動規範を主要生産国 の言語で開示している
公開している
公開している
44
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
POLICIES & COMMITMENTS
1. ポリシーと公約 調査結果 ポリシーの実行
動物福祉
生物多様性および保護
エネルギーや温室効果ガスの排出
55%
56%
55%
44%
79%
58%
会社のポリシーを 公開している
ポリシーの実行方法 を公開している
会社のポリシーを 公開している
サプライヤーのポリシーに このトピック(生物多様性 及び保護)を含んでいる
会社のポリシーを 公開している
サプライヤーのポリシーに このトピックを含んでいる
規制化学物質リストと製造時制限物質リスト
排水と処理
製品と繊維に関する廃棄物
42%
26%
52%
48%
46%
規制化学物質リスト (RSL)を開示している
製造時制限物質リスト (MRSL) を開示している
サプライヤーのポリシー
ポリシーの実行方法 を公開している
会社のポリシーを 公開している
を公開している
20% サプライヤーのポリシー を公開している
45
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
POLICIES & COMMITMENTS
1. ポリシーと公約 調査結果 年間進捗 状況
従業員の賃金や福利厚生
外国人や移民の労働
繊維品の廃棄物と リサイクル
行動規範
多様性と包括
91 86 74 70
70 69
59
50 42 36
33
2021
2020
30 20 12 2020
2021
従業員の賃金や福利 厚生に関するポリシー を公開している企業 の割合
2020
2021
外国人や移民の労働に 関するサプライヤーのポ リシーを公開している企 業の割合
2020
2021
製品や繊維に関する廃棄 物やリサイクルに関するサ プライヤーのポリシーを 公開している企業の割合
2020
サプライヤーの行動規範 を製造国の言語で公表 している企業の割合
2021
多様性に関する手順を公 開している企業の割合
46
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
POLICIES & COMMITMENTS
47
1. ポリシーと公約 分析 前年比で見ると、 経営管理の情 報やサプライチェーンの詳細、 影響するデータに比べ、主要な ブランドと小売業者が一番多 く公開しているのは、ポリシー と公約に関する情報です。
休暇(45%)となっています。驚くことに、 世間では活発な動きがあるにも関わら ず、動物愛護のポリシー(55%)と平等な 賃金に関するポリシー(54%)について明 らかにしているのは、わずか半分弱のブ ランドのみでした。私たちは今年、 メンタ ルヘルスや健康に関するポリシーを開示 しているかどうかを尋ねる指標を追加し ました。 その結果、半分弱の48%が開示 これ 主要なブランドの大多数が、自社の取締 していることが明らかになりました。 役や従業員に適用される企業のポリシー は、昨年のパンデミックでほとんどの社 を公開しています。高い割合で公開され 員が隔離された環境での仕事を強いら ている項目として、贈収賄や汚職(78%)、 れたことからも、特に重要なテーマです。 地域社会との関わり(82%)、差別(83%)、 多様性と包括(77%)と健康と安全(77%) が挙げられます。差別(2020年には80%) 、多様性と包括(2020年には73%)の分野 で情報開示が進んでいるのは望ましいこ とです。 これは、人種差別、男女間の不平 等、LGBTQIA+の権利など、重要な問題に 焦点を当てた世界中の社会運動の高まり に反応し、主要なファッションブランドがこ れらのポリシーに関する情報をより多く開 示していることを示唆しています。 企業が公開しているポリシーのうち最も 割合が少ないものは、年次休暇と祝日(29 %)、出産の権利と育児休暇(36%)、規制 化学物質リスト(RSL) (42%)と労働時間、
一般的に、 ブランドは次のようなトピック について企業のポリシーを明らかにする ことによって、2017年から前年同期比の 動きを明らかにしています。
会社のポリシーを明らか にしているブランドの割合 2021
2020
2017
年次休暇と祝日 29%
42% 23%
贈収賄と汚職
78% 78% 35%
出産の権利と育児休暇 36%
43% 30%
廃棄物とリサイクル(会社とパッケージ) 78% 75% 37%
この数年に渡り、一部のブランドは内部の ポリシーを初めて公開するステップを踏 み始めています。 企業の方針はサプライヤ ーの方針に比べてあまり精査されない傾 向があるため、私たちがこれらの公開情 報を探していることにブランド側が驚く時 もあります。関連情報は項目によって、従 業員ハンドブック、企業の行動規範、個別 の環境管理ポリシー、またはブランドのウ ェブサイトのキャリアセクションに示して あることが大半です。
4分の3以上のブランドが、サプライチェー ンにおける製造者と労働者に適用される サプライヤ―のポリシーを公表していま す。児童労働(89%)、差別(88%)、強制・拘 束労働(88%)、結社の自由と労働組合結 成(84%)、 ハラスメントや暴力(85%)、健康 と安全(87%)、賃金と福利厚生(80%)、労 働時間と休憩(82%)。 このように、 より高 い割合で情報が開示されている理由とし ては、 これらのトピックは英国やオースト ラリアの現代奴隷法、カリフォルニア州の サプライチェーンの透明性に関する法律 など、いくつかの法律に示されている内容 だからと言えます。
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
一般的に、 ブランドは次のようなトピックに ついてサプライヤーのポリシーを明らかに することによって、2017年から前年同期比 の動きを明らかにしています。
サプライヤーのポリシーを 明らかにするブランドの割合 2021
2020
2017
贈収賄や汚職
76% 75% 61%
解雇及び懲戒処分
58% 55%
44%
賃金平等
61% 61% 49%
外国人や移民の労働
50%
42% 32%
生活環境、寮
62% 63% 51%
今年、私たちは在宅勤務に関する項目を追 加しました。37%のブランドがサプライヤー のポリシーを明らかにし、10%のブランドが 対処するための手順を公開しています。 こ れは、サプライヤーがブランドの注文を小規 模な工場に委託し、その工場が生産の一部 を在宅勤務労働者に委託してる場合もある ため、驚くべきことです。例えば、非営利団体 WIEGO(非正規雇用の女性: グローバリゼ ーションと組織化)によると、 インドだけでも 500万人の在宅勤務労働者がいると推定さ れています。在宅勤務労働者は、 その仕事の 性質上、どのブランドで働いているのか特定 することが難しく、非常に脆弱な存在である と考えられています。 これは、 パンデミック以 前に行った仕事の給料を受け取っていない といった苦情を申し立てる際の障害となっ ています。 また、在宅勤務に関する情報開示 が限られていると言うことは、在宅勤務者が 位置づけられているサプライチェーンにおい て、一次製造先以上の情報にも透明性が求 められていることを示しています。
POLICIES & COMMITMENTS
主流ブランドは、ポリシーの実 行方法よりも、ポリシーの内容 自体を公開する傾向にありま す。
例えば、88%のブランドが強制・拘束労働に 関するサプライヤーのポリシーを公開してい るにも関わらず、 このポリシーに対する特別 な手順・課程、実行方法を公開しているブラ ンドは66%にとどまっています。同様に、84 %がサプライチェーンにおける結社の自由 と団体交渉に関するポリシーを公開してい ますが、 このポリシーの実行方法を明らかに しているのは42%にとどまっています。
そして、少なくとも4分の3のブランドが次の 項目に関する、特定の焦点を絞った活動や 手順を通してどのように企業やサプライヤ ーのポリシーを実行しているのかを説明し ています。 その項目は、地域社会との関わり (89%)、エネルギーや温室効果ガスの排出 (80%)、そしてオフィスや包装の廃棄物やリ サイクル(77%) です。
48
ブランドは企業やサプライヤーのポリシーの 実行方法を公開するために多くの対策を取 っています。 しかし来年は、より広範囲の問 題に対処できるような更なる進展を期待し ています。今年、前年比で最も進んだ項目は こちらです。
前年比で最も進んだ項目 2021
2020
2019
動物福祉
56% 52% 47%
生物多様性と保護
63% 57%
39%
一方で、次の項目に関するポリシーの実行 差別 方法を説明しているブランドは5分の1以下 52% でした。 その項目は、年次休暇と祝日(20%)、 42% サプライチェーンにおける在宅勤務(10%)サ 43% プライヤーの生活状況と寮(16%)です。 そし て、約4分の1のブランドが、解雇や懲戒処分 外国人や移民の労働 を含む雇用契約(26%)と残業手当(24%)を 45% 公開しています。 43%
32%
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
人権問題に関する目標設定は 遅れているのに対し、 気候変動 の危機を受け環境目標を公表 するブランドは増えてきていま す。ですがここには、結果や成 果の伴わない、 意欲ばかりをア ピールするグリーンウォッシュ のリスクが潜んでいます。
へと増加していることが分かります。 また、人 権関連の目標達成に向けた進捗状況を伝え ているブランドは37%にとどまっています。 こ こで浮かび上がる疑問は、なぜ大手ブランド が環境への影響と同様に人権関連の進捗 を優先していないのかということです。
製造工程で使用される有害化学物質より も、最終製品でどのような有害化学物質を 避けるべきかについてのポリシーを公表し ている大手ブランドは多くあります。
ますます多くのブランドが、環境改善対策と グリーンピースは、主流ファッションブランド して期間を定め公表しており、 これは2020 を対象に 「Detox My Fashion」 キャンペー 年の57%からさらに増加して、2021年には ンを展開し、2020年までに有害な化学物質 65%ものブランドに及んでいます。様々なス の排出を停止することを一部のブランド・サ テークホルダーから、 ブランドに対してパリ プライヤーらに約束させました。 しかし、主 協定への賛同と1.5℃の軌道へのコミットを 流ブランドのうち制限物質リスト(RSL)を 求める圧力が高まっているためと考えられ 公開しているのは42%、製造制限物質リスト ます。 しかし、環境目標を明らかにするブラン (MRSL)に関しては26%にとどまっていま ドが大幅に増加しているにも関わらず、主要 す。 情報開示に関して生まれるこの数字のギ ブランドの57%しか、 これらの目標達成に向 ャップは、EUや英国のREACH、カリフォルニ けた最新の進捗状況を毎年発表していない ア州の Proposition 65などの法規制を遵守 ことが現状です。 するために、 ブランドがRSLを必要としてい ることが原因と考えられます。 このテーマに 一方、人権への影響を改善するために、期限 ついては、95ページのグリーンピースの記事 付きの測定可能な目標を公表している主要 をご覧ください。 ブランドは半数に満たないのが現状です。 た だし、人権関連の目標を公表しているブラン 今回の調査では、RSLとMRSLの違いにつ ドは、2020年の38%から2021年には41% いて、いくつかの主要ブランドや小売業者 が理解不足であることが明かになりまし た。ZDHCによると、MRSLは製品の製造過 程で使用されるすべての化学物質を測定す
POLICIES & COMMITMENTS
るのに対し、RSLは最終製品に含まれる化 学物質のみを測定します。MRSLはRSLより も包括的で、最終製品に含まれる物質の制 限にとどまらず、製造のどの段階においても 有害な化学物質を使用して衣服を製造する ことができないことを保証しています。
"計測できないものは、管理す ることもできない" Jeremy Lardeau, Sustainable Apparel Coalition
49
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
ガバナンス(経営管理)
50
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021 2020
GOVERNANCE
2. ガバナンス アプローチ 社会的、環境的影響の責任は 誰にあるのか? このセクションでは、社会的及び環境的パフ ォーマンスとその影響は社内の誰に責任が あるのかを理解したいと思います。 初めに、 ブランドがサステナビリティチームや 企業責任チームなど関連部門の連絡先を公 開しているかどうか確認しました。
また、社会的及び環境的問題を担当する取 締役の名前と、 その監督がどのように実施さ れているのかを調べました。
今年は、以下の2つの指標を新しく追加しま した: •
•
労働者の代表が、企業の取締役会に含 まれているか
サステナビリティへの取り組みに対す る財政投資は、総予算または収入のど れくらいの割合を占めているのか
ブランドが業績評価またはボーナスを通じ て、サステナビリティチームの枠を超えた従 業員(デザイナー、 バイヤー、 ソーシングマネ
ージャーなど) らに対し、社会的および環 境的影響の改善を達成させる動機づけ ができているか、またそれを開示してい るかどうかを調べました。さらに私たち は、CEOや役員レベルの報酬においても 社会的・環境的影響との結び付きがある かどうか調査しました。
最後に、サプライヤーのインセンティブが 人権への影響と環境管理の改善に関連し ているかどうかも調べました。 インセンテ ィブの種類としては、 ブランドによる長期 契約の締結、注文数の増加、価格のプレミ アム化、監査回数の削減などが挙げられ ました。
"秘密は権力の乱 用の要であり、 そ れを可能にする 力です。 透明性は 唯一の本当の解 毒剤です。 " Glen Greenwald, 弁護士兼ジャーナリスト
51
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
GOVERNANCE
2. ガバナンス 結果 0-5%
6-10%
11-20%
21-30%
31-40%
41-50%
51-60%
61-70%
71-80%
81-90%
91-100%
Aeropostale
0
Brunello Cucinelli
8
AJIO
15
Costco
23
ALDI Nord
38
ALDI SOUTH
46
Bonprix
54
Hermès
69
C&A
77
Balenciaga
85
BCBGMAXAZRIA
0
CAROLL
8
ALDO
15
GUESS
23
American Eagle
38
ASOS
46
New Balance
54
Tchibo
69
CELINE
77
Bottega Veneta
85
Belle
0
Cotton On
8
ANTA
15
HEMA
23
Clarks
38
Banana Republic
46
Patagonia
54
Adidas
62
Champion
77
Gucci
85
Big Bazaar - ffb
0
Fila
8
Armani
15
KiK
23
JD Sports
38
Beanpole
46
Pimkie
54
Aritzia
62
Dior
77
H&M
85
Billabong
0
Matalan
8
Bloomingdale's
15
Li-Ning
23
Kiabi
38
boohoo
46
Zalando
54
Asda
62
Fendi
77
Hugo Boss
85
Canada Goose
0
s.Oliver
8
Bosideng
15
Next
23
Primark
38
Calvin Klein
46
Zeeman
54
ASICS
62
Hanes
77
Puma
85
celio
0
Sandro
8
Buckle
15
REI
23
River Island
38
Carrefour
46
Bershka
62
Louis Vuitton
77
SAINT LAURENT
85
Claire's
0
Sports Direct
8
Carhartt
15
Reserved
23
Tod's
38
Columbia Sportswear
46
Burberry
62
Marc Jacobs
77
Deichmann
0
TOPVALU COLLECTION
8
Carolina Herrera
15
Splash
23
Abercrombie & Fitch
31
Falabella
46
Chloé
62
OVS
77
Desigual
0
Carter's
15
Under Armour
23
Amazon
31
Gap
46
Converse
62
Sainsbury's
77
Diesel
0
Chanel
15
Wrangler
23
Anthropologie
31
GU
46
Dressmann
62
Speedo
77
DKNY
0
Chico's
15
Bally
31
Lululemon
46
Esprit
62
Dolce & Gabbana
0
Cole Haan
15
Big W
31
Monoprix
46
Fjällräven
62
Eddie Bauer
0
Cortefiel
15
Brooks Sport
31
New Look
46
G-Star RAW
62
Elie Tahari
0
Decathlon
15
Burlington
31
Old Navy
46
Gildan
62
Fanatics
0
Dillard's
15
Calzedonia
31
Otto
46
Jordan
62
Fashion Nova
0
DSW
15
COACH
31
PrettyLittleThing
46
Kmart Australia
62
Fossil
0
Ermenegildo Zegna
15
Dick's Sporting Goods
31
Prisma
46
Levi Strauss & Co
62
Heilan Home
0
Express
15
Disney
31
Ralph Lauren
46
Marks & Spencer
62
Jessica Simpson
0
Famous Footwear
15
Dr. Martens
31
Tesco
46
Massimo Dutti
62
Jil Sander
0
Furla
15
El Corte Inglés
31
Tommy Hilfiger
46
Nike
62
Jockey
0
Gerry Weber
15
Foot Locker
31
Uniqlo
46
Pull&Bear
62
Justfab
0
Helly Hansen
15
Foschini
31
62
0
Hudson's Bay
15
Free people
31
46
Reebok
KOOVS
United Colors of Benetton
0
Ito-Yokado
15
Fruit of the Loom
31
46
62
LC Waikiki
Van Heusen
Salvatore Ferragamo Stradivarius
62
LL Bean
0
Joe Fresh
15
Hollister Co.
31
Superdry
62
Marni
0
John Lewis
15
Intimissimi
31
Target Australia
62
Max Mara
0
K-Way
15
Jack & Jones
31
The North Face
62
Merrell
0
Kathmandu
15
Kate Spade
31
Timberland
62
Metersbonwe
0
Kaufland
15
Kmart
31
Vans
62
Mexx
0
Kohl's
15
Lacoste
31
Walmart
62
New Yorker
0
La Redoute
15
Lands' End
31
Nine West
0
Longchamp
15
Lidl
31
Woolworths South Africa
62
Pepe Jeans
0
Macy's
15
Lindex
31
Zara
62
Quiksilver
0
Mammut
15
Michael Kors
31
Ross Dress for Less
0
Mango
15
Miu Miu
31
Roxy
0
Mizuno
15
Moncler
31
Semir
0
Paris
15
Morrisons
31
SHEIN
0
Reliance Trends
15
MRP
31
Takko
0
Saks Fifth Avenue (HBC) 15
Muji
31
The Children's Place
0
Skechers
15
Nordstrom
31
Tom Ford
0
Steve Madden
15
Prada
31
Tommy Bahama
0
Ted Baker
15
REVOLVE
31
Tory Burch
0
Topman
15
Russell Athletic
31
Triumph
0
Topshop
15
Target
31
United Arrows
0
Truworths
15
Tezenis
31
Youngor
0
Valentino
15
The Warehouse
31
Very
15
TJ Maxx
31
Victoria's Secret
15
Tom Tailor
31
UGG
31
Urban Outfitters
31
Vero Moda
31
Versace
31
* ブランドは、250点満点のスコアで数字順に並べられていますが、 パーセンテージは四捨五入して表示されています。 同スコアのブランドはアルファベット順に表示されています。
52
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
GOVERNANCE
2. ガバナンス 調査結果 サステナビリティの問題について、容 易 にブランドとコンタクトをとることはで きるか?
68%
サステナビリティを担当する部署の 連絡先情報を公開している
ブランドはサステナビリティに どのくらい費やしているのか?
6% サステナビリティへの取り組みに 費やされた金額が全体予算の何% にあたるか明らかにしている
取 締 役 会の説明 責 任について
53%
54%
人権や環境の問題について
役員レベルの責任者を公開している
取締役会の責任説明がどのよう に実施されているか公開している
7%
取締役会において労働者 の代表が含まれている
インセンティブは環 境と人 権の進 展に結 びついているのか?
20%
33%
人権と環境への影響に
人権と環境への影響に関連する
労働条件と環境への影響に
開示している
開示している
インセンティブを開示してい
17%
関連する従業員のインセンティブを
役員報酬/ボーナスを
関連するサプライヤーの
53
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
GOVERNANCE
54
2. ガバナンス 分析
主流ブランドや小売業者は、 自社よりも高い水準をサプラ イヤーに求めています。 企業の取締役会における従業員代表は、 主流ブランドや小売業者の間では非常に 低く (7%)、 しかしその一方で84%は、サプ ライヤーの行動規範の中でサプライヤー施 設内での労働者代表が必要であると述べ ています。Zalandoは、監査役会の9人のメ ンバーのうち3人が従業員の代表であるた め、取締役会における従業員代表に関して は、最も適切な例であると言えます。 これに より、取締役会はバランスが保たれ、投資 家、専門家、従業員の利益を平等に代表す ることができます。 サプライチェーン内の労働者が交渉し、経 営陣に直接フィードバックすることができる ため、サプライヤーレベルでの労働者代表 は有益です。 ブランドは、彼らの決定が労働 者に直接影響を与えることを考えると、重 大な意思決定の局面において労働者の代 表性を確保するために、同じ基準を持つべ きです。
ブランドの33%は、購入への長期的なコミッ トメント、契約期間の延長、 より少ない監査 など、サプライヤーのインセンティブが労働 条件や環境への影響の改善にどう関係して いるかを開示しています。それに比べ、サス テナビリティチームのみならず従業員全体 が人権と環境への影響を改善するためにど のようなインセンティブが与えられているか 開示しているのは、17%に過ぎません。 ブラ ンド自身の内部チームよりも、サプライヤー に対して労働及び環境慣行を改善するため インセンティブを付与している可能性が高い ようです。社内の人間がサプライヤーを選ぶ 際、価格以外の基準で選択することに何らイ ンセンティブを与えられていない現実がある のに、サプライチェーン全体で人権と環境条 件が改善されることなど果たして期待でき るのか、疑問です。
より多くのブランドが、役員ボ ーナスがサステナビリティの目 標に関連していることを開示し ていますが、ベースとなる報酬 が社会的および環境的パフォ ーマンスに関連しているかどう かは不明です。
役員報酬やボーナスが、社会および環境目 標の達成とどのように関連しているのかを 開示するブランドは増加しています。2020年 の14%に対し今年は20%でした。 ただし、役 員報酬の計算において目標がどのように重 みづけされているかを開示しているブランド はほとんどありません。
私たちの調査によると、経営幹部が業務対 価の一部としてサステナビリティの目標達 成のインセンティブが与えられている場合で も、 これはボーナスにのみ影響し、ベースの 報酬には影響しない傾向があります。 ブラン ドが役員報酬に関連する持続可能性目標の 重みを開示している場合でも、 その割合はご く僅かであることがわかります。
ファッション業界の役員報酬はパンデミッ クの間に前例のないレベルにまで上昇しま した。 ブランドは数十億の注文をキャンセル し、サプライヤーに負担させ、何百万もの衣 料品や繊維製品の労働者を無給・無職にさ せたにも関わらずです。 (Center for Global Workers' Rightsによると、 バングラデシュだ けでも約100万人以上の労働者がいます) 。状況は偽善であると言わざるを得ません。 人権と環境への影響を役員の報酬やボーナ スに結び付けるべきかどうか疑問を提起し ますし、 またそのリンクの方法の有効性につ いても、疑いが生じます。目標達成に関連す る報酬が増加したにもかかわらず、 パンデミ ックは、 ブランドが依然としてサプライチェー ンの労働者の幸福よりも株主の利益を優先 していることを浮き彫りにしました。
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
ますます多くのブランドが人権 と環境問題に対する取締役会 のレベルの説明責任を開示し ていますが、 これらの問題に対 処するためにどの程度の投資 をしているかについての情報 はまだ不足しています。
このインデックスで調査した主流ブランド の半数以上(54%)が、人権と環境問題を 担 当する取 締 役の名 前と、彼らが社 内で どのように責任を負っているのかを開示し ています。 しかし、NYU Stern's Center for Sustainable Business の調査によると、企 業の取締役会は、環境、社会、ガバナンスの 問題に関して専門知識が不足しており、 フォ ーチュン100(雑誌フォーチュンが発表する、 米国の企業リストトップ100)の取締役会メ ンバーのうち、環境関連の専門知識を持って いるのはわずか6%に過ぎません。
それでも、環境及び社会問題が会社の最高 意思決定機関で議論され、対処されること を確実にするので、 この増加は心強いもので す。主流ブランドがステークホルダーから気 候変動への対応を求められるようになり、 さ らにCOVID-19危機により衣料品サプライチ ェーンで働く労働者の不当な扱いが明らか になる中、執行委員会が組織の短期的・長 期的な戦略の最優先事項としてサステナビ リティの問題に取り組むことは極めて重要 です。
株主と投資家は、環境や人権への影響に関 する開示と行動をより強く要求するようにな ってきていますが、主流ブランドのうち、サプ ライチェーンにおける人権や環境のリスク 特定の方法を開示しているのは、わずか39 %に過ぎません。環境と人権の問題を担当 する取締役会メンバーの開示が大幅に増加 しているにもかかわらず、サステナビリティ への取り組みに費やした金額が、全体の予 算や収入のどのくらいの割合を占めている かを開示しているのは、わずか6%にとどま っています。我々が期待するのは、 より多くの 投資家が、人権と環境への影響改善に取り 組む企業に有意義な投資をすること、 またそ の取り組みのための資金について、透明性 を保つよう企業側に働きかけることです。
GOVERNANCE
透明性
フェアトレード
ウェルビーイング 生活賃金
エンパ ワーメント ジェンダー 平 等
ビジネス の 説 明 責 任 サステナブル な生 活 良 好 な作 業 状 態
環境の持続可能性
クリーン、安全、公正なファッション産業
55
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
VIEWPOINTS
56
VIEWPOINT: 環境、社会およびガバナンスの問題に 関する透明性と投資家の役割
取締役会が問題に関する専門知識を持っ ランドの財務実績が危険にさらされ、評 ていると実証することは、 この議論をさら 判や規制上のリスクにつながる可能性が あります。 に手助けすることができます。
ELINE SLEURINK 責任投資原則(PRI)の英国およびアイルラン ドとオランダの責任者
消費者、投資家、そしてファッション業 界のステークホルダーは、 ファッション ブランドの持続可能性をさまざまな方 法で評価することができます。事業内 の社会的および環境的パフォーマン スに対し取締役会レベルの説明責任 があるかどうかの判断も、 これに含ま れます。 これは強力で重要なツールです。事業運 営のプラスになるか否かを、経営陣が検 討をしているのだとわかるからです。 問題 が、孤立したサスティナビリティチームで のみ完結されるのでなく、組織全体に埋 め込まれていることの確認につながりま す。
役員報酬とインセンティブが社会的および 環境的パフォーマンスに関連しているかど うかブランドに尋ねることは、ビジネスに おける社会的および環境的影響の優先度 を評価する際の投資家にとって、重要なデ ータポイントです。 ESGに連動した報酬を 示すことで、企業価値を高めることができ ますし、短期的な業績目標に固執しすぎず 長期的なパフォーマンス目標を設定できま す。経営陣全体で、持続可能性のパフォー マンスに対するより良い説明責任を果たす ことは、 ブランドが環境および社会慣行を 改善することにどれほど関与しているか、 投資家に示せます。
投資家は、ESG統合[投資分析および決定 にESG問題を含めること]、 スクリーニン グ[フィルターに基づいて投資機会から企 業を除外すること]、 またはテーマ戦略[特 定の社会的および環境的成果への貢献 を意図すること]を通じて、主要な環境・社 会・ガバナンス[ESG] 要素を投資戦略に 組み込むことができます。
またスチュワードシップも、投資家がサス ティナブルビジネスを改善または開発す るために企業と関わることができるため、 重要な役割を果たします。 このツールは、 ファッション業界のみならず、あらゆる業 界全体で使用できます。投資戦略にこれ らの問題を織り込むため、投資家はESG を測定する会社の業績データを必要とし ています。 これをサポートするには、比較 可能なESG開示が必要です。
長期的な戦略を実行する責任者は、明確 かつ期限を定めた目標に責任を負うた め、グリーンウォッシングは軽減されます。 報酬が連動していない場合、投資家には 事業の環境的および社会的悪影響が優先 されておらずチェックもされていないよう ファッション業界の成長に伴い、国境を越 に見えるため、投資リスクがあると結論付 えたサプライチェーンが爆発に増加し、不 そのため投資家 けられる可能性があります。 これにより、 ブ 透明性が増しています。
は、企業が環境や社会に与える負の影響 を確かめようとしますが、 このとき大半の 場合、適切なデータが不足しています
EUで今後予定されている法律では、 より 透明性を高め、 これらの影響を公表するこ とを企業に求めていきます。 これにより、 ビ ジネスの習慣によって引き起こされる法 律違反を防止および是正するための統一 したアプローチが可能になります。 ファッ ションブランドが責任を負う可能性のある 社会的および環境への悪影響を特定し、 改善できるようにするための貴重なステッ プです。投資チェーン全体で、投資家の参 戦を歓迎し、 ファッション業界でのESG原 則の採用が増え続けることを期待してい ます。
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
サプライチェーン トレーサビリティ
57
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
SUPPLY CHAIN TRACEABILITY
58
3. トレーサビリティー アプローチ 主流ブランドや小売業者は、 サ プライヤーの詳細リストを公 表しているのか? このセクションでは、 ブランドがサプライヤー のリストを公開しているのか、その情報公開 はどのレベルまでされているかに焦点を当 てています。
工場、加工施設、 原料サプライヤーの公表 サプライヤーリストを3つのレベルに分けて 調査しました:
1.
2.
3.
提供される詳細情報のレベル はどの程度か。 公表データのチ ェック項目の例: • •
ブランドは服を製造する工場つまり、 • 直接ブランドが関係性を持ち、通常、裁 • 断、縫製、最終の仕上げを行う施設を • 公開しているか。 • ブランドはサプライチェーンの上流にあ る加工施設(編み物、織り、紡績、湿式 加工、刺繡、印刷と仕上げ、染色、皮な めし、洗い上げに至るまで)を公開して いるか。 ブランドは、繊維、皮革、ゴム、化学薬 品、金属などの原材料の主要材料のサ プライヤーを公開しているか。
更に私たちは、 ブランドがビスコース、綿、 ウ ールまたは革などの原材料のうち、少なくと も一つはサプライチェーンの追跡ができてお り、その情報を公表しているかも確認しまし た。
• • •
• •
•
親会社名
施設の所在地
商品/サービス
おおよその労働者数 労働者の性別内訳
移民・契約労働者の割合
施設に労働組合があるか
施設に独立した労働者委員会があるか 施設が保有する認証
リストにサプライチェーンの95%以上 が含まれているか
リストが機械可読形式(csv、json、xls) か 過去数ヶ月以内にリストが更新された か
今年は新しく、 メーカーおよび加工施設が関 連認証を保有している場合、 ブランドがそれ を公開しているかどうかの指標を追加しま した。原材料レベルでは、特定の施設または 農場の名前を指標に追加しました。
"透明性は夢のまた 夢だが、 ブランドの 公開するサプライ ヤーリストは、私た ちの仕事の一助と なってくれる。" Dr Mark Anner, Center for Global Worker Rights, ディレクター
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
SUPPLY CHAIN TRACEABILITY
59
3. トレーサビリティー 結果 0
1-5%
6-10%
11-20%
21-30%
31-40%
41-50%
51-60%
61-70%
71-80%
81-90%
Aeropostale
0
Joe Fresh
5
Abercrombie & Fitch
9
Big W
20
Fanatics
27
Champion
39
Zalando
50
Lululemon
59
Tom Tailor
69
Ermenegildo Zegna
78
AJIO
0
Takko
5
COACH
9
Kaufland
20
Kathmandu
27
Hanes
39
HEMA
47
Speedo
59
Patagonia
68
Calvin Klein
72
ANTA
0
ALDO
1
Fjällräven
9
Morrisons
20
Jack & Jones
26
Next
36
New Balance
47
Adidas
58
Fendi
66
Tommy Hilfiger
72
Anthropologie
0
American Eagle
1
Fossil
9
Nordstrom
20
River Island
26
Asda
35
Wrangler
46
G-Star RAW
58
Helly Hansen
65
Van Heusen
72
Armani
0
Aritzia
1
Hollister Co.
9
Prisma
20
Ted Baker
26
Fruit of the Loom
35
Banana Republic
45
Reebok
58
Sainsbury's
65
Bally
0
Beanpole
1
Hudson's Bay
9
Very
20
Vero Moda
26
Russell Athletic
35
Gap
45
Target Australia
55
ASOS
62
BCBGMAXAZRIA
0
Bershka
1
Kate Spade
9
Columbia Sportswear
19
Victoria's Secret
26
Target
32
Old Navy
45
Clarks
55
Converse
61
Belle
0
Burberry
1
Saks Fifth Avenue (HBC)
9
Disney
19
ALDI SOUTH
24
Tesco
32
Levi Strauss & Co
43
Dressmann
55
Jordan
61
Big Bazaar - ffb
0
Canada Goose
1
GU
19
Hugo Boss
24
GU
32
Zeeman
42
Kmart Australia
55
Nike
61
Billabong
0
Carter's
1
LL Bean
19
John Lewis
24
Uniqlo
32
Dick's Sporting Goods
42
Lacoste
55
Bloomingdale's
0
CELINE
1
boohoo
18
Pimkie
24
Brooks Sport
31
Topman
42
ASICS
54
Bosideng
0
Chloé
1
Lidl
18
Under Armour
24
Gucci
31
Topshop
42
Marks & Spencer
54
Brunello Cucinelli
0
Cole Haan
1
Matalan
18
The Warehouse
24
Mammut
31
Bonprix
41
Tchibo
51
Buckle
0
Cortefiel
1
PrettyLittleThing
18
Desigual
23
New Look
41
Burlington
0
Costco
1
ALDI Nord
16
Hermès
23
Puma
41
Calzedonia
0
Decathlon
1
El Corte Inglés
16
JD Sports
23
Carolina Herrera
0
Dior
1
Kiabi
16
Mizuno
23
CAROLL
0
Famous Footwear
1
Mango
15
Primark
23
celio
0
Gerry Weber
1
Miu Miu
15
Amazon
22
Chanel
0
Ito-Yokado
1
Prada
15
Cotton On
22
Chico's
0
KiK
1
REI
15
Claire's
0
Kohl's
1
Dr. Martens
14
Deichmann
0
La Redoute
1
Foschini
14
Diesel
0
Lands' End
1
Otto
14
Dillard's
0
LC Waikiki
1
Carhartt
12
DKNY
0
Louis Vuitton
1
Balenciaga
11
Dolce & Gabbana
0
Marc Jacobs
1
Bottega Veneta
11
DSW
0
Massimo Dutti
1
Carrefour
11
Eddie Bauer
0
Merrell
1
SAINT LAURENT
11
Elie Tahari
0
Michael Kors
1
Express
0
Moncler
1
Falabella
0
MRP
1
Fashion Nova
0
Muji
1
Fila
0
Pull&Bear
1
Foot Locker
0
Ralph Lauren
1
Free people
0
Reserved
1
Furla
0
s.Oliver
1
GUESS
0
Salvatore Ferragamo
1
Heilan Home
0
Skechers
1
Intimissimi
0
Stradivarius
1
Jessica Simpson
0
Superdry
1
Jil Sander
0
Versace
Jockey
0
Walmart
1 1
Justfab
0
K-Way
0
Woolworths South Africa
1
Kmart
0
Zara
1
KOOVS
0
Li-Ning
0
Longchamp
0
Macy's
0
Marni
0
Max Mara
0
Metersbonwe
0
Mexx
0
Monoprix
0
New Yorker
0
Nine West
0
Paris
0
Pepe Jeans
0
Quiksilver
0
Reliance Trends
0
REVOLVE
0
Ross Dress for Less
0
Roxy
0
Sandro
0
Semir
0
SHEIN
0
Splash
0
Sports Direct
0
Steve Madden
0
Tezenis
0
The Children's Place
0
TJ Maxx
0
Tod's
0
Tom Ford
0
Tommy Bahama
0
TOPVALU COLLECTION
0
Tory Burch
0
Triumph
0
Truworths
0
United Arrows
0
Urban Outfitters
0
Valentino
0
Youngor
0
0
* ブランドは、250点満点のスコアでランク付けされていますが、四捨五入された数値で表示されています。同じ点数のブランドがある場合は、 アルファベット順に表示されます。
91-100%
United Colors of Benetton
85
C&A
84
The North Face
84
Timberland
84
Vans
84
Lindex
82
H&M
81
UGG
97
Gildan
96
OVS
93
Esprit
92
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
SUPPLY CHAIN TRACEABILITY
60
3. トレーサビリティ 調査結果 一次製造 業者の詳細公表について
47%
44%
21%
7%
29%
一次製造業者の
所在地が含まれている
性別の内訳が含まれている
各工場においての労働組合の
95%以上の製造業者 が公表されている
リストを公表している
加工施設について
27%
一次製造業者の先の加工施設 の情報が公開されている
有無が含まれている
5%
その施設がどのような 認証を保有しているか
原 材 料サプライヤーについて
26%
2%
11%
5%
57%
所在地が含まれている
その施設がどのような 認証を保有しているか
原材料サプライヤ一 を公開している
複数の原材料タイプ を公開している
ブランドが原材料サプライ チェーンを追跡している ことを公開している
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
SUPPLY CHAIN TRACEABILITY
3. トレーサビリティ 分析
主流ブランドや小売業者は、サプライチ ェーンを調べ、人権と環境のリスクと影 響を特定し、それらに対処する明確な責 任を負っています。 サプライチェーンが可 視化されていないと、 これらの問題を是 正する責任と力を誰が持つのかが曖昧 になり、搾取的で危険な労働条件と環境 被害を拡大させる可能性があります。最 初のステップとして、 ブランドと小売業者 は、自社のサプライチェーンを理解して 公表する必要があります。 前回のFashion Transparency Indexに おいて、Industrial Global Union 事務総 長補佐のJenny Holdcroftがこのように 話し ています。 :
「 工 場 から仕 入 れ る主 な 販売業者名を認知すること で、労働者や組合は強い影 響力を手にすることができ ます。組合の認知を拒否し たり、権利を要求したため の不法解雇などの対立を 解決するために重要です。 また、それらの情報は労働 者と顧客を繋 げ、さらには 労働者の抱える問題を、メ ディアに取り上げさせる可 能 性 をも秘 めているので す。 」
サプライヤーリストの一般公開は、サ プライチェーンの中で労働者が抱える 問題について、労働組合や環境活動 家、労働者の権利団体に訴えかけ、是 正するための手助けとなります。 (詳細 は、 p.24~25 グループが透明性情報を どのように使用しているかの事例研究 を参照ください)
サプライヤーリストの公表は、 ブランド 自身にとってもメリットがあります。サ プライチェーンの透明性により、 ブラン ドは労働者の代表者や環境グループか らタイムリーで信頼できる情報を受け 取ることができ、不正な下請けなどの 労働・人権・環境リスクを軽減するのに 役立ちます。 サプライチェーンの透明性 は、同じ施設を利用する、他の企業と 協力して問題を解決することも可能で す。また、 ブランドに対する投資家と消 費者の信頼を高めることができます。 製品がどこで作られているのかをオー プンにし、サプライチェーンで起こるこ とについて責任を負う意思があること をステークホルダーに示すことができ ます。
トレーサビリティー:年度別に みる平均スコアの推移 2017
2018
2020
2021
2019
全ブランド100のうち
8%
全ブランド150
11%
全ブランド200のうち
12%
全ブランド250のうち
16%
全ブランド250のうち
19%
61
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
一次製造業者の公表
これまで以上に多くの大手ブランドがサプ ライチェーンのこの第1層の工場を公表し ていますが、 ブランドの半分以下(47%)が 一次製造業者を公表しており、44%が工 場の住所を公開しています(昨年の36%か ら増加)
施設に独立した労働者委員会の存在有 無を公表しているのはわずか7%です。 こ の情報を公表しているブランドは最近に なって始めたものですが、労働者の代表 者やブランド自身に役立つため、 おそらく 今後はより多くのブランドがこの情報を 提供するようになるでしょう。 懸念が生じ る可能性のあるサプライヤーとの最善の 関わり方を知ること、 また、労働組合が組 織化の取り組みに優先順位を付けるこ とにも役立ちます。
一次製造業者とは、生産の最終段階で衣 服の裁断、縫製、仕上げを行うサプライヤ ーを意味します。 これらは、製品を売り場 を通じて私たちのクローゼットに届ける ブランドの21%が各サイトの労働者の性 倉庫に向けて出荷するサプライヤーです。 別の内訳を公表しており、移民または契 約労働者の数を公表しているブランドは サプライチェーンでは可 工場の住所を公開するということは、 ステ わずか7%です。 ークホルダーがサプライヤーの正確な地 視性がさらに低下するため、残念なこと 理的位置を見つけるのに役立つため、非 に第1層の段階で既に衣服を作る人々 常に重要です。多くの場合、サプライヤー に関するこれらの重要な詳細について は他のサプライヤーと同様の会社名を持 の公表が少ない状況です。たとえば、施 っているか、同じ施設で複数のサプライヤ 設内の女性労働者の割合を知ることで、 ー企業が運営されている可能性があり、 女性労働者の現実とニーズに基づいて 混乱もたらしたり、不完全または不正確 ポリシーを設計および実装できる、ジェ なサプライヤー情報につながったりしてし ンダーに対応した対策が可能になりま す。具体的には女性が良好な月経衛生 まいます。 を実践できるようにし、月経中のトイレと さらに、 ブランドの28%が工場の親会社の 休憩を許可することなどが含まれます。 名前を公開し、37%が提供される製品ま たはサービスの種類を公表しています。 ブ 施設が保有する認定を開示しているの これは ランドの36%が、各サイトの労働者のおお はブランドの5%に過ぎません。 よその数を公表しています。 これは、昨年 2021年の新しい指標であり、労働組合や の30%から増加しています。 これらの情報 市民社会が施設がどのようなデューデリ は、 ステークホルダーが問題のサプライチ ジェンスプロセスに参加し、それがどれ ェーンをより理解し、必要に応じて労働、 ほど頑丈であるかを理解するため、施設 人権、環境リスクに対処するための最も レベルで公表するものです。 良い行動方針に優先順位を付けるのに役 Open Apparel Registryの要件に合わ 立ちます。 せるために、 ブランドのサプライヤーリス
SUPPLY CHAIN TRACEABILITY
トの形式とファイルを確認、またはブラン ドがサプライヤーリストをOARプラットフ ォームにアップロードするかどうかを確認 します。今年、 ブランドの31%(2020年の 15%から増加)は、サプライヤーリストを 機械可読形式(cs、json、またはxls)で公 表しています。 つまり、情報は、 トロールし たり再フォーマット化する必要がなく、幅 広いステークホルダーがより簡単に使用 できるようになります。 ステークホルダー が作業でOARのサプライヤーの詳細をど のように使用するかの例については、24 〜25ページのケーススタディを参照して ください。
ブランドの32%は、第1層工場の何パーセ ントが公開されているかを公表しており、 ブランドの29%は、サプライチェーンの第 1層工場の少なくとも95%を公開していま す。 ブランドの33%は、 リストが過去数か 月間に更新されたかどうかを公表してい ます。主流なブランドや小売業者は、サプ ライヤーとの連携を頻繁に開始および停 止することが知られています。 つまり、 サプ ライヤーリストはすぐに古くなり、継続的 なサプライチェーンの可視性が失われる 可能性があります。 そのため、定期的な更 新を少なくとも年に2回行う必要がありま す。 ASOSは、 2か月ごとにサプライヤーリ ストを更新するベストプラクティスの例の 1つです。 昨 年 は 、B o o h o o 、C a r h a r t t 、C a r r efour、 Desigual、 Dick's Sporting Goods、 Dr Martens、 Ermenegildo Zegna、Fendi、Foschini、Fossil、Guc ci、 JD Sports、 LL Bean、 Mango、 Miu Miu、Nordstrom、Otto、Prada、UGGの19
62
のブランドがインデックスでレビューさ れました。 ラグジュアリー、 スポーツウェ ア、 フットウェア、 アクセサリーなど、 さま ざまな市場セグメントで進歩が見られる ことは特に心強いことです。
“ブランドはサプライチェー ンを背後に隠すことをやめ なければならない。衣服は 実際の人間によって、実際 の場所で作られている。消 費者には衣服がどこで、 ど のような状況で生産されて いるかを知る権利がある”
Paul Roeland, Clean Clothes Campaign
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
加工施設の公表
加工施設には、綿繰り、紡績糸、生地の編み 物と織り、染色と湿式加工、皮なめし、刺繡 と装飾、生地の仕上げ、染色と印刷、洗濯な どの幅広い活動が含まれます。 2021年4月 に#WhoMadeMyFabricキャンペーンを開 始したことを踏まえると、主要なブランドや 小売業者のうち、加工施設の一部を公開し ているのはまだ27%に過ぎず、昨年の24% からわずかしか増加していない事実には驚 かされます。
さらに、 ブランドの17%が加工施設の親会社 の名前を公表し、26%が住所を公表し、23 %が製品またはサービスの種類を公表して います。 20%が各サイトの労働者のおおよ その数を公開していますが、各サイトの労働 者の性別の内訳を公開しているのは1%の みであり、各サイトの移民または契約労働者 の数が含まれているのはわずか6%です。一 方、施設に労働組合または独立労働者委員 会があるかどうかを公表しているブランドは わずか4%であり、施設が関連する認証を保 持しているかどうかを公表しているブランド はわずか2%です。 加工施設の何パーセントが公開されている かを公表しているのはわずか14%で、21% が過去数か月以内にリストが更新されたか どうかを公表し、18%がサプライヤーリスト をCSV、json、またはExcelファイルとして利 用できるようにしています。
SUPPLY CHAIN TRACEABILITY
63
トが公開されているかを公表しているのは 投資家、規制当局、消費者、 ブランド自身の わずか5%です。 これは、主流ブランド間での 利益のために、サプライチェーンをマッピン 原材料サプライチェーンの全体的な可視性 グして公開する必要があります。 が非常に低いことをほのめかしています。今 年から、原材料が生産されている特定の施 設または農場の名前をブランドが公表して 原材料サプライヤーの開示 いるかどうかを尋ねました。7%がこの情報 を含んでいます。5%は、 リストが複数の材料 原材料サプライヤーは、繊維(綿、羊毛、ビス タイプをカバーしているかどうか(2021年の コース、ポリエステル、 ナイロンなど)、皮革、 もう1つの新しい指標)を開示しています。 ゴム、染料、化学薬品、金属などの原材料を ブランドとそのメーカーに提供するサプライ さらに良いニュースとして、大多数のブランド ヤーです。 サプライチェーンのこの部分は、 ブ (57%)が、綿や皮革など、少なくとも1つの ランドの認知度が通常最も低く、 したがって 特定の原材料のサプライチェーンを追跡し 多くの人権や環境への悪用が見過ごされが た証拠を昨年の50%から公表しています。 ちな場所です。 主流なブランドがこのトレースとマッピング を行うために使用するツールには、認証シス サプライチェーンのトレーサビリティは、 パン テム (Better Cottonなどのマスバランスシス デミックが世界中のサプライチェーン労働者 テムを使用するものを除く)、 ブロックチェー にもたらした損害と、最近の研究が中国の ン、DNAトレース、 およびその他の同様のテク 綿花とタミルナードゥ州の繊維部門におけ ノロジーが含まれる場合があります。 る強制労働の指標を浮き彫りにしたという 事実を考えると、 これまで以上に重要です。 次のブランドは、2021年に初めて原材料サ 詳細については、24〜25ページのケースス プライヤーの一部を公表しました: Calvin タディを参照してください。 さらに、政府と社 Klein, COACH, Fendi, Gildan, Kate Spade, 会がCOP26に向けて準備を進めている今、 Lindex, OVS, Patagonia, Sainsbury's, 私たちは気候危機の危機的状況にあります Tommy Hilfiger, UGG, Van Heusen。 が、森林破壊は私たちの衣服や靴に使用さ れるいくつかの原材料の生産に結びついて おり、脱炭素の重要な炭素隔離源を損なっ このインデックスでレビューされた主流なブ ています。 ランドと小売業者の間でサプライチェーンの トレーサビリティが着実に向上していること ますます多くの大手ブランド (11%)が、2020 は心強いことですが、サプライヤーリストを 年の7%から、少なくとも少数の原材料サプ 公開しているブランドは半数未満(47%)で ライヤーを公表しているのを見るのは心強 あり、進捗はまだ遅すぎます。政府の規制が いですが、原材料サプライヤーの何パーセン 必要であり、企業は、労働者とその代表者、 昨 年 の イン デックス でレ ビュ ー さ れ た Anta、Dick's Sporting Goods、Fendi、JD Sports、UGGの主要5ブランドが、それぞれ 加工施設の一部を初めて公表したことは注 目に値すべき点です
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
INTERVIEW: TAMIL NADU ALLIANCE THE TAMIL NADU ALLIANCEは、繊維部門の若い青年労働者の状態をよくすることに焦点を当て た、南インドの100を超える草の根組織を代表する市民社会フォーラムです。
Q.Fashion Transparency Index 2021 では、世界最大のファッションブランドと 小売業者の250のうち、サプライチェーン 内の加工施設と繊維工場を公表してい るのはわずか26%であることがわかりま した。もし国際的な大規模小売業者が、 自社がどの繊維工場から生地を調達し ているかについての透明性を高めた場 合、TNAなどの団体、 そしてテキスタイル 製造に携わる労働者にとって、 この情報は どのように役立ちますか? A: 国際的なブランドや小売業者が生地や 糸をどこから調達しているかを知れば知 るほど、繊維サプライチェーンにおける労 働者の権利をよくするための行動を起こ すことができます。 これには、繊維労働者 の不満に対処するための効果的なメカニ ズムの確立、倫理的な採用慣行の促進、 公正な賃金の支払いの確保、結社の自由 の奨励も含まれます。 透明性が高まると、Tamil Nadu Alliance のような市民社会ネットワークは、国際的 なブランドと協力して労働者が幸せにな るためのサポートする繊維産業を構築す ることにより、サプライチェーンにおける 労働者の声を増幅することができます。
Q: 私たちの調査では、世界最大のファッ ションブランドと小売業者のうち、繊維工 場を含むサプライチェーンの第1層を超え てサプライヤーを監査しているのはわず か21%です。タミルナードゥ州の繊維工 場の労働者が直面している、ブランドが 気付いていない可能性のある最も差し迫 った問題は何ですか?
A: 賃金は重要な問題です。 現在、見習い 繊維労働者には法的に義務付けられてい る最低賃金(477ルピー=6.53 USドル) し かなく、実際には、多くの経験豊富な労働 者でもこの半分未満しか支払われていま せん。 強制的な残業、移動の自由の制限、結社 の自由の欠如、法定の社会的保護給付へ のアクセスの拒否が広まっています。過去 1年間、新型コロナウィルスパンデミック の影響はこれらの問題の多くを悪化させ ました。残業や賃金の支払いの遅れにつ いては、特に悪化しました。
SUPPLY CHAIN TRACEABILITY
64
Below: Laudes Foundation
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
把握・開示・改善
65
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
KNOW, SHOW & FIX
4. 把握・開示・改善 アプローチ
主 流ブランドや小 売 業 者 は、人権や環境面における デューディリジェンスのプロ セスについて、 どのように説 明しているでしょうか?また、 その規則の順守について、 どのようにサプライヤーを 評価しているでしょうか? 今年は、デューディリジェンスのプロセ スに関する指標の要件を厳しく見直し、 そのプロセスに人権と環境の両方に与 えるリスクを含む場合にのみ、点数を加 算しています。 また、デューディリジェン スのプロセスが最初に開示されていな い限り、 リスクやリスクに対処するため にとった行動についての情報開示には 点数を付与しませんでした。
把握
ブランドがサプライチェーンにおける 人権や環境のリスク、影響、違反を特定 すべく、どのように手を尽くしているか を理解するために、人権と環境面での デューディリジェンスに関する情報開 示を調査しました。 また、 ブランドが、 サ プライヤーが自社のエシカル基準やポ リシーを満たしているかどうかを評価 する方法(通常は工場監査も含め)も 調べました。今年ははじめて、労働組 合の代表者を含めた監査役の人数を 指標に追加しています。
開示
ブランドが、サプライヤーの評価結果 を、工場で確認された問題の概要か、 もっと細かなレベル(例:工場ごとの評 価結果)で開示しているかどうかにつ いて調査しました。
改善
サプライチェーン内で起きている人権 や環境への侵害に対してどのように是 正しているかについて、 ブランドが公表 している内容を調査しました。さらに、 ブランドがサプライチェーン内の従業員 と労働者向けに機密性の高い苦情申 告の仕組みを提供しているか、 ブランド が違反行為の是正、苦情の改善に向け た努力の結果を公表しているかどうか についても調べています。今年は、 ブラ ンドのサプライヤー出口戦略(英: exit strategy)を開示する際の指標を強化 し、その戦略に人権への潜在的な悪影 響に関する評価が含まれているかを精 査しました。
今回は、以下の各情報をブランドが開示して いれば点数を付与しています:
•
•
• • •
•
•
サプライチェーンにおいて、人権問題や 環境に与えるリスクや影響、また違反 を、そのブランドがどのようにして特定 し、対応しているか(デューディリジェン スを実施するためのアプローチ)
労働者、労働組合、その他影響を受け るステークホルダーがデューディリジェ ンスのプロセスにどのように関与して いるか
ブランドの方針に対し、サプライヤーは どのように評価されているか
新規のサプライヤーを採用する際のプ ロセス
サプライヤーが撤退する際のプロセス
ブランドが、二次サプライヤー以降のサ プライヤー評価を行っているか
サプライヤー評価において、現場から 離れた場所での労働者インタビューを 行っているか、行っている場合は何人の 労働者がインタビューを受けているか
66
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
KNOW, SHOW & FIX
4. 把握・開示・改善 結果 0-5%
6-10%
11-20%
21-30%
31-40%
41-50%
51-60%
61-70%
Carhartt
4
American Eagle
9
Louis Vuitton
19
ALDI SOUTH
30
Tchibo
40
Adidas
49
OVS
55
Claire's
4
ANTA
9
Marc Jacobs
19
Bonprix
30
ASOS
40
Dressmann
49
Target Australia
53
Diesel
4
Armani
9
CELINE
19
Burberry
30
Gildan
40
Reebok
49
Banana Republic
53
DKNY
4
Carolina Herrera
9
Brooks Sport
19
G-Star RAW
30
47
Gap
53
4
Chanel
9
CAROLL
19
Hermès
30
40
Patagonia
Famous Footwear
United Colors of Benetton
Old Navy
53
4
Chico's
9
Desigual
19
Hugo Boss
30
38
47
Fila
Big W
Target
The North Face
53
4
Dr. Martens
9
Kiabi
19
Mammut
30
38
45
Justfab
Lidl
Balenciaga
Timberland
53
4
Fossil
9
KiK
19
Muji
30
38
45
Marni
New Balance
Bottega Veneta
Vans
53
4
Furla
9
Kohl's
19
Sainsbury's
30
36
45
s.Oliver
Next
Gucci
Kmart Australia
53
4
Gerry Weber
9
Otto
19
Speedo
30
34
45
Splash
Asda
Marks & Spencer
C&A
51
2
HEMA
9
River Island
19
Tom Tailor
30
34
45
Bosideng
Bershka
SAINT LAURENT
Calvin Klein
51
2
Kaufland
9
TOPVALU COLLECTION
19
Zeeman
30
34
43
Eddie Bauer
Lululemon
ASICS
H&M
51
2
Miu Miu
9
Dior
19
Disney
28
34
43
Jockey
Massimo Dutti
Esprit
Puma
51
2
Prada
9
Michael Kors
17
Fruit of the Loom
28
34
43
LC Waikiki
Pull&Bear
GU
Tommy Hilfiger
51
2
Sandro
9
Carter's
17
Levi Strauss & Co
28
34
43
Nine West
Stradivarius
Primark
Van Heusen
51
2
Skechers
9
Chloé
17
Prisma
28
34
43
REVOLVE
Zara
Uniqlo
Beanpole
0
Ted Baker
9
Ito-Yokado
17
Ralph Lauren
28
Converse
32
Belle
Jordan
32
Morrisons
32
Nike
32
Walmart
32
0
TJ Maxx
9
Lands' End
17
Russell Athletic
28
Big Bazaar - ffb
0
Truworths
9
Matalan
17
Zalando
28
Billabong
0
Aeropostale
6
Steve Madden
17
ALDI Nord
26
Calzedonia
0
AJIO
6
Takko
17
Carrefour
26
celio
0
Bally
6
Topman
17
Cotton On
26
Deichmann
0
BCBGMAXAZRIA
6
Topshop
17
Decathlon
26
Dolce & Gabbana
0
Cole Haan
6
Very
17
Dick's Sporting Goods
26
Elie Tahari
0
Fanatics
6
Versace
17
El Corte Inglés
26
Fashion Nova
0
Foot Locker
6
Anthropologie
15
Fjällräven
26
Heilan Home
0
GUESS
6
Burlington
15
JD Sports
26
Intimissimi
0
Jil Sander
6
COACH
15
Mango
26
Jessica Simpson
0
La Redoute
6
Dillard's
15
New Look
26
K-Way
0
Paris
6
Ermenegildo Zegna
15
Salvatore Ferragamo
26
KOOVS
0
Reliance Trends
6
Free people
15
Aritzia
23
LL Bean
0
Reserved
6
Hudson's Bay
15
Champion
23
Longchamp
0
Tommy Bahama
6
Jack & Jones
15
Columbia Sportswear
23
Max Mara
0
United Arrows
6
Joe Fresh
15
Hanes
23
Metersbonwe
0
Kate Spade
15
Lacoste
23
Mexx
0
Li-Ning
15
Lindex
23
New Yorker
0
Mizuno
15
Nordstrom
23
Pepe Jeans
0
Moncler
15
Tesco
23
Quiksilver
0
Saks Fifth Avenue (HBC) 15
UGG
23
Roxy
0
Tod's
15
Fendi
21
Semir
0
Triumph
15
Abercrombie & Fitch
21
SHEIN
0
Urban Outfitters
15
ALDO
21
Sports Direct
0
Vero Moda
13
Amazon
21
Tezenis
0
boohoo
13
Clarks
21
Tom Ford
0
Brunello Cucinelli
13
Cortefiel
21
Tory Burch
0
Buckle
13
Falabella
21
Youngor
0
DSW
13
Helly Hansen
21
Kathmandu
13
Hollister Co.
21
Kmart
13
MRP
21
Monoprix
13
Pimkie
21
PrettyLittleThing
13
Superdry
21
Ross Dress for Less
13
Under Armour
21
Valentino
11
Victoria's Secret
21
Bloomingdale's
11
Canada Goose
11
Woolworths South Africa
21
Costco
11
The Warehouse
21
Express
11
Foschini
11
John Lewis
11
Macy's
11
Merrell
11
REI
11
The Children's Place
11
Wrangler
* ブランドは、250点満点でランク付けされていますが、四捨五入された数値で表示しています。
71-80%
81-90%
91-100%
67
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
KNOW, SHOW & FIX
68
4. 把握・開示・改善 調査結果 把 握:サプライヤーの評 価について
把握:デューディリジェンスのプロ セスについて
39%
21%
17%
81%
2%
1%
人権や環境面でのデュ ーディリジェンスへの取 組みを公表している
ステークホルダーがどのようにデ ューディリジェンスのプロセスに 関与しているかを開示している
違反行為に対処する ために取った措置の結 果を開示している
サプライヤーの施設の 状態を評価するプロセ スを公表している
監査の一環として、現場 から離れた場所ででイン タビューを受けた労働 者の数を開示している
労働組合の代表者 を含めた監査役の人 数を開示している
開示:監査結果の公表について
改 善:問 題の是 正について
46%
4%
<1%
66%
52%
25%
一次製造業者の調査結果 の概要を公表している
原材料レベルの調査結果 の概要を公表している
一次製造業者の名指しさ れた施設ごとの全ての監 査報告書を公開している
サプライヤーの改善プ ロセスを公表している
サプライチェーンの労働者 向けに機密性の高い苦情申 告の仕組みを提供している
サプライチェーン内の苦情につ いて、申告、対応、解決した件数 に関するデータを公表している
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
KNOW, SHOW & FIX
69
4. 把握・開示・改善 分析
把握
一般に、大手ブランドは、特定のリスクへの 対応結果や影響を開示することよりも、サプ ライチェーンのデューディリジェンスのプロ セスを説明することや、次第に増えるステー クホルダーとどのように協議するかについて 説明する方がはるかに得意です。
デューディリジェンスの一環として特定され た人権や環境分野のリスク、影響、違反に関 する開示は、昨年から大幅に増加(2020年 はブランドの11%、2021年には26%) してい ますが、依然として低い水準です。 この増加 は、欧州委員会が今年後半に予定している、 人権および環境に関するデューディリジェン ス報告書の自主的な作成から義務的な作成 への移行によるものと思われます 世界的な法律事務所であるノートン・ロー ズ・フルブライト社は次のように述べていま す。 この画期的な法案は、 「(EU)圏内で活動 する企業が、人権や環境、グッド・ガバナンス を尊重する義務を果たし、自らの活動、ある いは取引関係やバリューチェーンによって、 自社の事業、商品、サービスに直接関係す
る活動を通じて、潜在的あるいは実際の悪 影響などを引き起こしたり、その一因とな らない(後略)」 ことを保証するものです。 こ のデューディリジェンスの義務は、国連の「 ビジネスと人権に関する指導原則(英語: UN Guiding Principles on Business and Human Rights)」に基づいており、EUで商 品を販売するすべてのブランドに、グローバ ルなサプライチェーンにおける人権と環境 への影響の特定、防止、緩和、説明すること を求めるものです。 ブランドはこれらの取り 組みについて公表することが必要です。
デューディリジェンスのプロセスに関する 成功事例を一つを挙げると、ヘリー・ハン セン (英語: Helly Hansen)は、 サプライチ ェーンで特定した主要な問題をどのように 阻止、防止、軽減しているかを開示していま す。開示内容は、目標、状況、具体的な行動 と進捗状況を表形式で詳細に記載されて おり、読むにも、理解するにも十分に分かり 易いです。
さらに、 ブランドの労働者とその代表者(生 産者、農家、労働組合を含む)がデューディ リジェンスのプロセスに関与していること を開示する大手ブランド (2020年の12%か
ら2021年は21%に増加)が増えています。 女性の労働者は、社会的にも環境的にもジ ェンダー特有のリスクに直面しています。女 性(女性団体やジェンダー専門家を含む) に相談していることを開示しているブランド が、昨年に比べて大幅に増えているのは喜 ばしいことです。 しかしながら、 それを実施す るブランドは僅か10%(2020年には3%)と、 驚くほど低い水準に留まっています。女性労 働者やその代表者など、最も影響を受ける ステークホルダーが、意義あるデューディリ ジェンスのプロセスに確実に含まれるよう、 私たちはブランドに働きかけています。 デュ ーディリジェンスのプロセスの結果を開示す るブランドは昨年から2倍以上に増えました が、17%(2020年の8%から上昇)と依然と して低い水準です。デューディリジェンスの
結果や成果が、特定のリスクほど頻繁に開 示されていないことは残念なことです。 デュ ーディリジェンスの結果を開示する数少ない ブランドの中でも、一般的に提供される情報 は具体性を欠いており、実際の結果や影響( 実際の結果や物事の成り行き)よりもアウト プット(提供するサービスや行動)に焦点を 当てていることが多いのですが、 このような 情報は労働者や環境に対する具体的な変化 を示す、はるかに意味のあるものです。
“日の当たる場所で活動していないのなら、影で 何をしていたのか?” Dave Eggers, The Circle
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
KNOW, SHOW & FIX
アウトプット
影響
成果
例えば、あるブランドが、従業員がジェン ダーに基づく暴力(英語: Gender-Based Violence , GBV)のリスクにさらされてい ることを確認し、 その対応として、 リスクに 晒されている従業員に、GBVとは何か、ど のように報告すればよいか、学ぶための 研修を提供する場合を考えてみましょう。 ブランドは一般的に「50%の労働者が研 修以降でジェンダーに関する苦情を訴え る自信がついたと自己申告した」 という成 果よりも、 「研修に10人が参加した」など の結果を指標とする傾向があります。 です が、 この研修の結果や影響(=インパクト) を挙げたほうがはるかに意義のある指標 になります。例えば研修後に3人の労働者 が管理者に対して GBVの苦情を申し立 て、調査が行われた結 果、 その管理者が 解雇された、 といったインパ クトだったり、 その延長線上で、苦情を申し立てた3人を 含む40% の労働者が上司の解雇後によ り安全になっ たと自己申告した、 という報 告などです。
大多数の主要ブランド (81%)は、施設の 監査プロセスがどのように機能している かについて情報を公開しており、過半数 (6 8 %)は、新しいサプライヤーを受け 入れる際の基準も公開しています。昨年 と比較して、倍以上のブランド (昨年の13 %→27%に増加)が、予告ベース(事前に 日取りを合意・通知する)、半抜き打ちベ ース(3週間など期間だけ合意・告知し、 日取りは通知しない)、抜き打ちベース( 監査前に日取り通知をしない)のいずれ の監査を執り行うかを開示するようにな りました。監査の一環として現場の外でイ
70
ンタビューを受けた労働者の数について は透明性を欠いており、 この情報を開示し ているブランドは僅か2%でした。
現場外でのインタビューは、労働者が労 働条件に関する心配事を素直に打ち明け ることができる安全な場を提供します。 ま た、労働組合の代表者を含む監査の数を 開示しているブランドも1%と僅かでした。 エシカル・トレーディング・イニシアティブ ( 英語: Ethical Trading Initiative, ETI)は 次のように述べています。労働者に対する 脅迫、ハラスメント、脅迫のニュアンスは、 生産現場では簡単に隠蔽され、労働者が 気になる問題について発言することを恐 れる環境を作り出してしまうため、結社の 自由を倫理的な監査で捉えるのは難しい のです。 独立した労働組合を通じた団体交 渉、および監査プロセスにおける組合代 表との協議は、 これらの課題を克服するの に役立ちます。
99% のブランドは、 労働組合 の代表者を含む監査の 数を開示していません
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
71
開示
水準にまで拡大しました。 さらに、是正措 “この非効率なリスク評価の根底には、 ビジネスリスクへの注 置の状況を公開することで、 ブランドにとっ 目があります。一部の企業は、風評被害が生じた場合に、効果 表にあるように、主流ブランドの半数近く ては迅速かつ変革するための動機付けと 的な行動ではなく、活動を示すことで安心感を得たいと考える (46%)が、サプライヤーの監査結果につ なり、結果的に従業員保護へと繋がりまし いて一般化された情報を共有しています。 た。 ところもあります” この手の監査データは興味深いもので、 最も差し迫った労働問題のいくつかを浮 き彫りにします。 ところが、工場ごとの詳細 Francis West, な監査情報ではなく、要約された情報で Shift は、外部のステークホルダーがこの情報 を利用して、ポジティブな変化をもたらす 主流ブランドのサプライチェーン ことができません。 ブランドによるサプライ 監査結果の開示 ヤーの監査結果の開示は、 ブランドがそも ニ次サプライヤー以降のレベル(加工施設、繊維工場) 一次サプライヤーレベル 原材料レベル そも監査を行っていない可能性が高い二 次製造業者以降になると、はるかに少な くなります 監査結果の概要 - サプライヤー名を伏せた場合 記名施設の主な監査結果 一般的に、 サプライチェーンの二次製造業 者以降において、労働者は人目につきに くく、 より弱い立場にあり、搾取のリスクが 高い傾向にあるため、労働条件に関する 透明性が大きく欠如しています。
ベターワークプログラム(英: Better Work programme)では、監査結果を公開する ことで、 「 工場の発展を促し、労働条件を 改善し、部門の競争力を強化し、エシカル ソーシング (倫理的な調達)を促進する可 能性がある」 としています。 ベターワークプ ログラムが2014年にカンボジアの労働基 準順遵守状況を開示して以来、基準を満 たしている工場の数は3年間で57%も急 増し、 また、 この分野の収益は過去最高の
46%
29%
16% 4%
記名施設のファシリティレベル評価
16% <1%
記名施設の全ての監査報告書
2%
<1%
>1%
0%
0%
0%
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
改善
ブランドの大半(2021年は66%:2020年 の75%から減少)は、 サプライヤーの施設 における問題発覚時に行う改善プロセス について説明しています。 このプロセスに は通常、是正措置計画や作業停止通知が 含まれます。
最後に、効果的な改善策について説明し ます。 サプライヤーが注文の大部分をある ブランドに依存している場合、そのブラン ドが、競合のサプライヤーや他の国でより 安価な取引相手を見つけると、一夜にし てそのブランドとの取引が消えてしまう可 能性があります。 これは「底辺への競争( 英: race-to-the-bottom)」 として知られ ており、 ブランドが「コスト削減のために、 最低賃金を払い、最悪の労働環境を提供 する」 というものです。
是正措置計画(英語: Corrective Action Plans, CAPs)は、人命を救うために必要 不可欠です。 しかし、CAPsだけでは、サプ ブランドがサプライヤー出口戦略 ライチェーンの中で起きている深刻な社 今年は、 会問題や環境問題を全て解決することは (言い換えると、特定のサプライヤーとの できません。大半の場合、同じ問題が指摘 取引を打ち切る際に何が起きるか)を公 サ され、 その後解決されても、また次の監査 表しているかについても調査しました。 で再び検出されるというように、CAPsは プライヤー出口戦略には、人権への影響 形式的な運用と化しています。 さらに、改 に関する評価が含まれており、サプライヤ 善プロセスにおいて、影響を受けるステー ーに対して取引終了の合理的な事前通 クホルダーとどのように関わっているかを 知が保証されることを含める必要があり ブランドがサプライヤーとの取引関 説明しているブランドは、5分の1程度(21 ます。 (”cut-and-run”と %) しかありません。 このため、 ブランドが 係を突然打ち切ること 問題の根本原因を是正しているか、ある 呼ばれるもの)は、労働者へ壊滅的な影 いは、毎年同じ症状を改善しているだけ 響を与える可能性があるため、出口戦略 ブランドの撤退 なのか、 ステークホルダーが精査できるよ の調査は重要なことです。 うに、改善プロセスの成果と影響に関す について、サプライヤーが合理的な事前 る透明性を高める必要があります。社会 通知を受けていれば、急な解雇を避ける 的な監査と是正行動計画は、ブランドの ために、事前に計画を立てることができま 後ろ盾としてではなく、労働者の保護と問 す。今回の調査によると、17%のブランド 題の根本的な解決を中心に据えるべきで では、影響評価やまたは合理的な事前通 す。 この点については、来年の方法論でさ 知が行われた場合の出口戦略を開示して いました。 らに掘り下げていく予定です。
KNOW, SHOW & FIX
より良いニュースとしては、主要ブランドに おいて自社の従業員向けに、機密性の高 い苦情申告の仕組み(労働条件に関する 苦情を通報できるもの)を提供するブラン ドが着実に増加(2020年の59%から2021 年には62%に増加) しており、 さらに、 サプ ライチェーンの労働者向けにも仕組みを 公開するブランドも大幅に増加(2020年の 40%から2021年には52%に増加) してい ました。問題の片棒を担いでいるであろう 管理者・雇用主に直接相談する場合と比 べても、労働者が脅迫や報復の恐れ少な く、声を上げることができるという点で機 密性の高い仕組みが重要です。 また、27% のブランドが、苦情申告の仕組みの存在 について、従業員へのどのように周知する かを説明しています。 これが無いと従業員 は使い方が分からないため、大切なことで す。
現在、4分の1のブランドが、サプライチェ ーンの労働者が提出、対処、解決を行った 違反や苦情の報告件数データを開示して おり、昨年の16%から増加しているのは励 みになります。 しかし、 より多くのブランド がデータを開示し、 また、全てのブランドに おいて、 苦情の結果とその解決方法につい て、さらに詳細な情報をしてくれると良い と思います。業界全体にとって意義のある 学びとなるはずです。
将来的には、誰が苦情申告の仕組みを利 用しているかなど、苦情申告の仕組み関 するさらなる情報開示を検討することに なるでしょう。 それによって、 ブランドのデュ ーディリジェンスのプロセスにおいて、誰 が力を得ていて、誰が取り残されているか が明らかになるかもしれません。
"ファッションブランドは、 女性労働者の賃金、 休 暇、 社会福祉などの問題に取り組むべきだと思い ます" Eswari, インド、 タミルナドゥ州、繊維工場労働者
72
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
VIEWPOINT: 透明性の欠如 と新疆ウイグル問題
VIEWPOINTS
73
"約300万人ものウイグル人やトルコ 人が強制収容所に収容され、国際的な ブランドのために強制労働の条件下 で働いています" Dolkun Isa, 世界ウイグル会議 事務総長
貢献(左から右へ) DR FLAVIA LOSCIALPO(ソレント大学, 上席研究員, 文化研究とファッション), ELEONORA MONGELLI(イタリア人権擁護連盟副会長), DOLKUN ISA(世界ウイグル会議事務総長)
コンシャスな購買活動では、 透 明性を重視するだけでなく、 人 権や環境問題に関する説明責 任を果たすことが基本です。
農場、加工施設、工場を対象とした施設レベ ルの監査結果を公表していません。 このよう な透明性の欠如が持つ意味は、明らかに大 きいものです。 東トルキスタン (新疆)や現在 のウイグル問題のように、中国から調達、生 産するブランドがサプライヤー情報を公表し ていない場合、国家主導の強制労働や新疆 ウイグル問題に加担している可能性が非常 に高いです。
2013年に起きたラナ・プラザの崩壊事故の ように、ヘッドラインに載るニュースからは、 グローバルサプライチェーンに蔓延する非 倫理的で搾取的な慣行や、耐え難いほど安 世界ウイグル会議のドルクン・エイサ 全ではない労働環境を垣間見ることができ (Dolkun Isa)事務総長は、次のように述 ます。 下請け業者が何層にもわたって存在す べています。 ”約300万人ものウイグル人や る不透明なサプライチェーンでは、明確なイ トルコ人が強制収容所に収容され、国際的 メージを再構築することが難しいため、原材 なブランドのために強制労働の条件下で働 料レベルでも透明性の欠如が見られます。 いています。 東トルキスタンでのジェノサイド 現在のところ、大半のグローバルファッショ は、 ブランドが、国連の 『ビジネスと人権に関 ンブランドは、原材料のサプライヤー情報、 する指導原則(UN Guiding Principles on
Business and Human Rights)』に則ったデ ューディリジェンスの実行を不可能にしてい ます。 中国当局の監視の目が厳しくなったこ とで、企業や監査人は、自分たちのサプライ チェーンの状況について、信頼性の高い情 報を得るための手段がなくなってしまいまし た。 東トルキスタンから直接調達している企 業、 また、国家主導の強制労働と繋がりがあ る企業は、共犯にならないためにも、 この地 域から完全に撤退しなければなりません。 ” ウイグル人の強制労働は、 企業がサプライ チェーンで何が起こっているのかを検証でき ず、 サプライヤー情報を公表する法的義務 がない場合に起こりうる、 残虐行為の一例 です。 2011年、 国連は『ビジネスと人権に関 する指導原則(UN Guiding Principles on Business and Human Rights)』 を発表し、
保護、 尊重、 救済という3つの柱を掲げまし た。 この数年間で、 国連の決定を実現した国 は僅かしかありませんでした。 一方で、 貧しい 国や紛争後の国、 また、 政府が人権や環境基 準に関する自国の法律を執行できない、 ある いは執行したくない国で活動する企業が増 えています。 人権は、 企業にとってオプション ではありません。 企業は、 その活動の場にお いて、 人権に大きな影響を与えています。 この 影響はプラスにもマイナスにもなります。 そ れを選ぶのは私たち消費者です。
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
74
重点課題
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
SPOTLIGHT ISSUES
毎年、いくつかの課題テーマを特集し、詳しく調査しています。2021年は、重点課題を 2030年までに人々と地球のためにより良い世界をつくることを目的とする、国連のによ る持続可能な開発目標(SDGs)に寄り添った6つの分野としました。毎年、業界の専門 家やステークホルダーと協議しながら、重点課題のテーマを選定し、指標を策定してい ます。
5. 重点課題: アプローチ 働きがいのある人間ら しい仕事と購買慣行
主流ブランドや小売業者は、 自社及びサプライチェーン における労働者の条件の改 善に向けてどのようなこと を行っているのでしょうか? 以下の項目に着目しました。 •
• • •
新 型コ ロナウィルス感 染症とパンデミックに対 するブランドの対応につ いて
サプライチェーンにおけ る生活賃金と賃金のデ ータについて
ブランドの買付時におけ る慣行について 労働組合化と団体交渉 について
75
ジェンダーと 人種的平等
主流ブランドや小売業者は、 ジェンダーと人種的平等の 改善に向けてどのようなこ とを行っているのでしょう か?以下の項目に着目しま した。 • • •
自社及びサプライチェー ンにおけるジェンダー不 平等について 男女の賃金差について
人種的平等のデータと ブランドの取り組みにつ いて
サステナブルな調達と 材料
主流ブランドや小売業者は、 サステナブルな素材の使用 量を増やし、バージンプラス チック (再生素材ではないプ ラスチック)の使用やマイク ロファイバーの脱落を減ら すためにどのようなことを行 っているのでしょうか?以下 の項目に着目しました。
•
• • •
「サステナブル」な材 料 を定義するためのツール とプロセスについて サステナブル素材使用へ の切り替えに関する戦略 と進捗について
バージンプラスチック使 用量の削減に関する戦 略と進捗について
マイクロファイバー汚染 を最 小 限に抑えるため にブランドが講じている 措置について
過剰消費、 廃棄と循環性
主流ブランドや小売業者は、 過剰生産や廃棄物を最小限 に抑え、循環性を高めるため にどのようなことを行ってい るのでしょうか?以下の項目 に着目しました。 •
•
•
• •
報 告 期 間 内に製 造され た商品数について
テキスタイル の 廃 棄 物 量、その中で廃棄または リサイクルされた量につ いて
プレコンシューマー廃棄 物の削 減と着 用 後 廃 棄 物のリサイクルに関する 戦略と進捗について
回収のスキームと衣類を 長く着用するための戦略 について
テキスタイルからテキス タイルへの循環リサイク ルへの投資について
水と化学物質
主流ブランドや小売業者は、 有害化学物質の使用量削減 とウォーターフットプリント ( 企業活動過程、原材料調達 から廃棄・リサイクルまでに 消費・汚染された水の総量) の削減のためにどのような ことを行っているのでしょう か?以下の項目に着目しま した。 • • •
有害な化学物質使用量 削減に関する戦略と進 捗について
自社施設とサプライチェ ーンにおけるウォーター フットプリントについて 水のリスクに関する評価 について
気候変動と生物多様性
主流ブランドや小売業者は、 気候変動の危機とどう立ち 向かい、環境への影響を軽 減するためにどのような措 置を講じているのでしょう か?以下の項目をブランドが しているか調べました。 • • • • • •
脱炭素化目標について
SBT(科学的根拠に基づ く目標)について 森林破壊ゼロに向けた 公約と進捗について
自社施設とサプライチェ ーンにおけるカーボンフ ットプリントについて 確かなエネルギー使用 の削減について
自社施設とサプライチェ ーンにおける再生可能 エネルギーの利用につ いて
SPOTLIGHT ISSUES
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
5. 重点課題: RESULTS 0-5%
6-10%
11-20%
21-30%
31-40%
41-50%
51-60%
ANTA
5
ALDO
10
Aritzia
20
Primark
30
Burberry
40
Converse
48
Brunello Cucinelli
5
Desigual
10
COACH
20
Marks & Spencer
29
Adidas
39
Jordan
48
Costco
5
Marc Jacobs
10
Kate Spade
20
Next
28
Reebok
39
Nike
48
Disney
5
MRP
10
Morrisons
20
Asda
27
Puma
37
Balenciaga
47
Dr. Martens
5
Prisma
10
Hugo Boss
19
Hermès
27
47
5
Splash
10
ALDI SOUTH
18
Mammut
27
37
SAINT LAURENT
Ermenegildo Zegna
United Colors of Benetton
5
Versace
8
Amazon
18
Decathlon
25
36
47
Fossil
Gildan
Tchibo
5
Armani
8
Anthropologie
18
Fruit of the Loom
25
35
47
HEMA
Banana Republic
The North Face
Jil Sander
5
boohoo
8
Free people
18
John Lewis
25
Gap
35
KiK
5
Clarks
8
Helly Hansen
18
Russell Athletic
25
La Redoute
5
Kohl's
8
JD Sports
18
Fjällräven
24
Lands' End
5
PrettyLittleThing
8
Kiabi
18
ASOS
24
Sandro
5
Steve Madden
8
New Look
18
Dressmann
24
Sports Direct
5
TJ Maxx
8
Tesco
18
Salvatore Ferragamo
24
Victoria's Secret
5
Michael Kors
8
Tom Tailor
18
New Balance
23
Carter's
4
CAROLL
7
Urban Outfitters
18
Nordstrom
23
DSW
4
Chanel
7
Walmart
18
Pimkie
23
Merrell
4
GUESS
7
Bally
17
The Children's Place
4
Matalan
7
Bonprix
17
Woolworths South Africa
AJIO
2
Otto
7
G-Star RAW
17
Bloomingdale's
2
Takko
7
Lidl
17
Chico's
2
Topman
7
Lululemon
17
Cotton On
2
Topshop
7
Reserved
17
Diesel
2
Under Armour
7
Columbia Sportswear
16
Foot Locker
2
Beanpole
6
Fendi
16
Macy's
2
Canada Goose
6
REI
16
Reliance Trends
2
Cortefiel
6
Vero Moda
16
Tommy Bahama
2
Ito-Yokado
6
ALDI Nord
14
Valentino
2
Joe Fresh
6
Carolina Herrera
14
Cole Haan
1
Kaufland
6
Jack & Jones
14
Eddie Bauer
1
Li-Ning
6
Muji
14
Fanatics
1
s.Oliver
6
Carrefour
13
Fila
1
Truworths
6
Chloé
13
Hudson's Bay
1
United Arrows
6
Lacoste
13
LC Waikiki
1
Miu Miu
13
LL Bean
1
Prada
13
Longchamp
1
Tod's
13
River Island
1
Abercrombie & Fitch
12
Ross Dress for Less
1
American Eagle
12
Saks Fifth Avenue (HBC)
1
Big W
12
Skechers
1
Burlington
12
Aeropostale
0
Dick's Sporting Goods
12
BCBGMAXAZRIA
0
Foschini
12
Belle
0
Hollister Co.
12
Big Bazaar - ffb
0
Kathmandu
12
Billabong
0
Mizuno
12
Bosideng
0
Moncler
12
Buckle
0
Ted Baker
12
Carhartt
0
TOPVALU COLLECTION
12
celio
0
Louis Vuitton
11
Claire's
0
CELINE
11
Deichmann
0
Calzedonia
11
Dillard's
0
Dior
11
DKNY
0
Falabella
11
Dolce & Gabbana
0
Intimissimi
11
Elie Tahari
0
Monoprix
11
Express
0
Paris
11
Famous Footwear
0
Tezenis
11
Fashion Nova
0
The Warehouse
11
Furla
0
Very
11
Gerry Weber
0
Heilan Home
0
Jessica Simpson
0
Jockey
0
Justfab
0
K-Way
0
Kmart
0
KOOVS
0
Marni
0
Max Mara
0
Metersbonwe
0
Mexx
0
New Yorker
0
Nine West
0
Pepe Jeans
0
Quiksilver
0
REVOLVE
0
Roxy
0
Semir
0
SHEIN
0
Tom Ford
0
Tory Burch
0
Triumph
0
Youngor
0
Old Navy
35
ASICS
34
Ralph Lauren
34
Zalando
34
Champion
33
Esprit
33
GU
33
Hanes
33
Levi Strauss & Co
33
23
UGG
33
Wrangler
23
Uniqlo
33
Zeeman
23
Lindex
31
Brooks Sport
22
Sainsbury's
31
El Corte Inglés
22
Target
31
Mango
22
* ブランドは、250点満点中のスコアでランク付けされていますが、四捨五入された数値で表示されています。 同じ点数のブランドがある場合は、 アルファベット順に表示されています。
Timberland
47
Bottega Veneta
46
Kmart Australia
45
Vans
45
Target Australia
45
C&A
43
Speedo
43
Pull&Bear
43
Bershka
42
Calvin Klein
42
Massimo Dutti
42
Stradivarius
42
Tommy Hilfiger
42
Van Heusen
42
Zara
42
Patagonia
41
Superdry
41
H&M
61-70% 54
Gucci
71-80% 66
OVS
81-90% 72
91-100%
76
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
SPOTLIGHT ISSUES
5. 重点課題 調査結果 - 働きがいのある人間らしい仕事と購買慣行 新 型コ ロナウィルス感染症について
生 活 賃 金について
18%
3%
3%
27%
6%
1%
新型コロナウィルス感 染症発生以降にキャ ンセルされた注文の 割合を公開している
新型コロナウィルス感 染症により賃金の支払 いが遅れた労働者の 割合を公表している
ブランドのサプライチェーンに おいて、新型コロナウィルス 感染症発生以降に解雇され た労働者数を開示している
サプライチェーンに おける労働者の生 活賃金を保障する措 置を公開している
生活賃金支払いに向けた進捗 状況の公開を毎年行っている
生活賃金が支払わ れている労働者数 を公開している
買付時における慣行について
9%
9%
6%
7%
人件費を価格交渉から区別 する方法を公開している
60日以内にサプライヤー
注文を受けてからサプラ イヤーに支払われる平 均日数を公開している
サプライヤーとの取引方法や 売買契約例を公開している
に代金支払いを行う
ポリシーを公開している
77
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
SPOTLIGHT ISSUES
5. 重点課題 調査結果 - 働きがいのある人間らしい仕事と購買慣行 労働組合 化について
9%
労働組合があるサプライヤ ー施設数を公開している
人種的平等について
10%
0%
12%
2%
団体交渉協定の対象とな る労働者数を公開している
法定最低賃金以上の賃金を 労働者に提供する団体交渉 協定の数を開示している
人種的平等の促進 に焦点を当てた行 動を公開している
自社における民族間賃 金格差を公開している
ジェンダー平等について
55%
自社における職務の性 別内訳を公開している
30%
3%
自社における男女間賃 金格差を公開している
サプライヤー施設にお けるジェンダー暴力の データを公開している
78
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
SPOTLIGHT ISSUES
79
5. 重点課題 分析- 働きがいのある人間らしい仕事と購買慣行
新型コロナウイルス感染症
2020年3月、世界中でロックダウンが発表 され、ほとんどの国で小売店が閉店しまし た。 それに伴い、世界の主要な多国籍ブラン ドと小売業者は、潜在的な利益損失の影響 を軽減するために、サプライヤーへの注文 をキャンセルしたのです。 Workers’ Right Consortium(WRC:米労働人権NGO)の推 計によると、初期の注文キャンセルは、完成 品、港や倉庫に保管されている納品在庫、製 造途中の注文などを含め、総額400億米ドル (約4兆円)に上るといい、多くの場合、サプ ライヤーは原材料や人件費を既に支払って います。 この注文キャンセルは、 サプライヤー にへ即座に深刻な影響を及ぼしました。 サプ ライヤーは、巨額の材料費の負担、労働者へ の支払い、労働者の雇用の維持、一時解雇 や退職金の支給、事業の継続に苦慮しまし た。結果として、私たちの服を作る人たちが、 パンデミックによる最大の経済的負担を負う ことになったのです。 2021年のインデックスでは、 この問題にスポ ットライトを当て、主流ブランドや小売業者 が、注文キャンセルやパンデミック中の労働
者への理解とサポートのための取り組みを 開示しているか、確認することが不可欠であ ると感じました。
一般的に、 この問題への透明性は非常に低 いです。パンデミックによる労働者への影響 に関するデータを共有するよりも、注文キャ ンセルに関する情報と取り消された注文を 復活させるための行動を共有するブランド の方が多いことがわかりました。
18%のブランドが、新型コロナウィルス感染 症の発生以降で部分的または完全なキャン セルが適用された注文の割合を開示した一 方で、14%のブランドが、まだ注文が復帰し ていない、または全額支払われていない注 文に関する情報を開示していることがわか りました。
WRCの調査によると、新型コロナウィルス感 染症が発生して以来、 バイヤーはサプライヤ ーに対し、同じ製品を昨年の価格と比較して 平均で12%値下げするように求め、 サプライ ヤーは顧客の新規注文を完了して発送した
後、支払いを受けるまでに平均して77日間 待たなければならないというのです。 パンデ ミック前の平均は43日間でした。
さらに、14%のブランドが、過去に合意した支 払い条件に適用される割引率を開示してお り、過去12か月間にサプライヤーが直面した Free on Board(FOB:本船渡し)価格の変更 を開示したのは、わずか2%でした。 FOB価格 は、 サプライヤーが事前に負担する費用のこ とで、商品が破損または破壊された場合でも サプライヤーは商品の輸送に対して責任を 負います。 これに加えて、 サプライヤーが事前 に支払う原材料費もあります。
労 働 者の権 利の専 門 家によると、衣 料 品 生産国の政府の介入は、サプライヤーが労 働者の賃金を支払う資金援助など限られ たものであったため、サプライヤーは家族 を養うために他の手 段を模 索することを 余儀なくされました。 例えば、 Society for Labor&Development(労働開発協会)によ ると、 インドの360万人以上の縫製労働者が、 年金口座から総額15億米ドルを引き出しま
した。 これは通常、労働者が子供の教育費の ために取っておいたものです。
縫製労働者はもともと不安定な契約で働き、 賃金も非常に低いた め、 パンデミックのよう な不測の事態に備え て貯蓄することはおろ か、 基 本的な生活必需品を買う余裕もなく、 非常に脆 弱な状況にありました。 パンデミッ ク中、9か国158工場の396人の縫製労働者 を対象にWRCが調査したところ、88%の労 働者がパンデミックのせいで収入が減り、 そ の結果毎日の食物摂取量をを減らさざるを 得なかったと報告しています。 さらに、77%が パンデミックが始まって以来、家族の誰かが 飢えていると報告しており、75%は食料を買 うためにお金を借りたり、負債を抱えたりし ていると報告しています。 一方でパンデミックが始まって以来、賃金 の 盗 難 や 労 働 組 合 潰しが 蔓 延していま す。 BHHRC(Business & Human Rights Resource Centre:ビジネスと人権リソース センター)は、パンデミック中に組合員が非 組合員と入れ替わる 「fire and rehire:解雇
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
SPOTLIGHT ISSUES
80
下記: Remake #PayUpキャンペーン のソーシャルメディアの一部
と再雇用」という手法が蔓延していることを 報告しています。 WRCの推計によると、調査 対象の31施設で、37,367人の労働者が本来 受け取るべき賃金である3,980万米ドルを拒 否されました。 つまり、縫製労働者一人あた り約5か月分の賃金を拒否されたということ です。 この数字は氷山の一角にすぎません。 WRCは18か国でさらに210の縫製工場を確 認しており、新型コロナウィルス感染症発生 以降、16万人の労働者が推定1億7,150万米 ドルの債務を抱えています。
#PayUpキャンペーンは、新型コロナウィル スが始まった時に、 ファッション業界が完了 した衣料品注文の支払いを拒否するとい う、壊滅的な決定をしたことから始まりまし た。 それ以来、主流ブランドや小売業者に対 して、 キャンセルされたすべての注文を復活 させて全額を支払うように世論の圧力をか け、少なくとも150億米ドルを取り戻すこと に貢献しました。 この キャンペーンをサポー トするために、Fashion Revolutionは、自 動メールツールを作成しウェブサイトのトッ プページに掲載しました。 これにより、主流 今回の調査によると、主流ブランドは、自社 ブランドや小売業者の顧客が直接彼らにメ のサプライチェーンで働く労働者がパンデミ ールをし、 キャンセルされた注文の復活、全 ックの影響をどのように受けたのかの透明 額支払い、サプライチェーンの労働者のサ 性についてほとんど公表していないことが ポートを求めることができます。 ブランドや わかり、 ブランドが監視していない可能性を 小売業者との対話から、問題を取締役会レ 示唆しています。新型コロナウィルス感染症 ベルの議論に持ち込むには何通もの手紙 拡大以降、賃金の支払いが遅れた労働者の やメールは必要ないことがわかっています。 割合を公表しているブランドはわずか3%で、 私たちのコミュニティは、合計で約13,000 職を失った労働者の割合を公開しているブ 通のメールを主流ブランドに送りました。 ランドもわずか3%です。
しかし、主流ブランドや小売業者がサプライ ヤーに対して正しく行動し、 バリューチェーン 全体で商品を作っている人たちを支援する ためには、 このような世論の高まりは必要な かったはずです。新型コロナウィルス感染症 のような壊滅的な出来事が発生した時だか らこそ、 ブランドは背を向けるのではなく、サ プライチェーンにおけるパートナーシップを 強化するべきではないでしょうか。
ファッションブランドに、注文した商品の代金の支払いをすることを 要求しよう - それが彼らにできる最低限のことです。
97% の主流ブランドは、新型コロ ナウィルス感染症発生以来、 賃金を遅れて受け取った労働 者の割合を公開していません
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
VIEWPOINTS
81
VIEWPOINT: 大手アパレルブラン ドの新型コロナウィルス感染症パ ンデミックの対応について
MARK ANNERは労働・雇用関係の教授; グローバル労働者権利センターディレクター; ペンシルベニア州立大学のMPSプログラム (労働者およびグローバル労働者の権利)ディレクター
私は30年以上にわたって世界の衣料 産業を見てきましたが、新型コロナウ ィルス感染症のパンデミックによる混 乱と困難の規模を見たことがありませ ん。店舗が閉鎖され、各国がロックダ ウンを行ったため、 ブランドは2020 年初頭に400億米ドルを超える注文 を支払わずにキャンセルしました。 そ の結果、無数のサプライヤーが廃業 に追い込まれ、何百万人もの労働者 が職を失い、栄養失調に陥りました。
こ の 変 遷 を よ り よく 理 解 す る た め に、Fashion Revolutionは各ブランドに
パンデミックへの対応に関する一連の基 本的な質問を行いました。 その結果、明ら かになったことがあります。 いくつかの会 社は、自らの義務を果たし、労働者のウェ ルビーイング (身体的・精神的・社会的に 良好な状態)を確保するために並々なら ぬ努力をしました。 しかし、ほとんどの会 社は質問に答えず、回答したブランドの中 には、理想的なエシカルとは言えないビ ジネス慣行を示したものもありました。
FTI(Fashion Transparency Index)のデ ータ調査結果によると、パンデミック中に 注文キャンセルしたかどうかについて有 効な回答をしたブランドは18%のみ、 サプ ライヤーに注文の全額を支払ったかどう かについて適切な回答をしたブランドは わずか14%のみでした。回答したブランド は、 その透明性を評価すべきです。しかし、
これらのブランドの多くは、当初、支払い をせずに注文キャンセルし、2020年初め にサプライヤーとその労働者に甚大な被 害をもたらしました。 これらのブランドが 注文を再開し、支払いを行ったのは活動 家の圧力とメディアの報道があってからで す。ロックダウンが終了して店舗が再開さ れてから、支払いを再開したブランドもあ りました。
あるブランドは、 「完了」の注文に対して支 払いを行ったと述べていますが、 よりコス トのかかる 「処理中」の注文に関してはど のように対応したかを言及していません。 他のブランドは、全額を支払ったが、支払 条件の延長(最初にサプライヤーと合意し た条件よりも遅れて支払っている)と説明 しています。 これは「業界の慣行と一致し ている」と述べています。 しかし、 これこそ が問題なのです。サプライヤーが注文を完 了して出荷してから数か月後にサプライヤ ーへ支払うことが、 バイヤーにとっての 「業 界慣行」 となっているのです。これはサプラ イヤーのキャッシュフローに影響し、次の 注文のために新しい原材料を購入すると きに、 問題を引き起こします。
さらに懸念されるのは、 パンデミック中に 労働者が受け取った賃金に関する質問 に適切に回答したブランドがわずか3% 、労働者の一時解雇に関する質問に答え てくれたブランドもわずか3%だったこと です。 私たちが知るかぎり、 パンデミック 中、300万人以上の縫製労働者が職を失 い、その多くが数百万人の賃金と退職金 を拒否されています。
こうした傾向は、 ブランドがサプライヤー に適切に支払うことを保証するだけでは 不十分で、賃金の支払い、仕事の確保、労 働者の安全と社会的保護の保証を確実 にするメカニズムを整う必要があること を示しています。 そのための最善のメカ ニズムは、団体交渉権を持つ強力で独立 した組合、強制力と拘束力のある合意、 堅牢な社会的セーフティネットです。 これ らのメカニズムこそが、 「より良く構築す る」 ために不可欠な要素なのです。
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
ブランドの買付時における慣 行 主流ブランドの買付時における慣行は、 グローバルなサプライチェーンにおいて、 適切で安全な労働を可能にする上で大 きな役割を担っています。 ブランド側は、 サプライヤーに製品を製造するために支 払う価格を交渉します。 また多くの場合 ブランド側で注文のリードタイムや支払 いスケジュールなど、 ビジネスを行うため の条件を設定することがよくあります。 ブ ランドのデザインチームや調達チームは、 製品のデザイン、色と素材の選択、どの商 品をいつ販売するかを決定しています。 こ れらはすべて、一定のコストと時間枠内で 製品を供給するサプライヤーの能力に影 響を与えます。ブランドが急にデザインや リードタイムを変更した場合、サプライチ ェーン上のサプライヤーとその労働者に 悪影響を及ぼす可能性があります。 それ にもかかわらず、大手ブランドや小売業者 のうち、契約締結後に注文や支払い条件 に変更を加えたというデータを開示して いるのは、わずか3%であることがわかり ました。
さらに、主流ブランドがサプライヤーに生 産コストの「前払い」を期待することがご く普通になっています。 サプライヤーは注 文に必要な原材料、生地などを信用購入 (掛け買い) しています。 2021年のインデ ックスで初めて調べたものですが、生産 開始前にサプライヤーに前払いの方針を 開示しているのは、米国のオフプライスデ
パートであるBurlingtonの1ブランドのみ でした。
冒頭の調査結果まとめやブランドの新型 コロナウィルス感染症に関する回答でも 述べたように、サプライヤーは、注文を生 産し納品後、 ブランドから支払われるまで 時間がかかることがよくあります。納品後 60日から180日の間にサプライヤーに支 払いが行われることも珍しくありません が、今まではこれほど長くありませんでし た。 納品後の支払いはますます遅くなっ ており、私たちの調査ではこの問題に関 しての透明性が欠如していることがわか りました。 主流ブランドのうち、 サプライ ヤーへの支払いを60日以内とする方針を 公表しているのは10社に1社以下で、 これ はUK Prompt Payment Code(英国即 時支払い規約)の公約に沿ったものです。 また、納品後、平均してサプライヤーに支 払う期間を開示しているブランドはごくわ ずか(わずか6%)です。このデータを開示 しているブランドの場合、支払い条件は商 品を受け取ってから60日から180日でし た。 これは、 ブランドがサプライヤーに支 払う前に、顧客が洋服をすでに着用して いることを意味します。
SPOTLIGHT ISSUES
ンの労働者間の不均衡な力のバランスに よって起こっています。 この問題の大部分 は、 ブランドとサプライヤーとの間の契約 に関係しており、法律の専門家は、 ブラン ドにとって一方的に有利な契約になって いると懸念しています。 この問題は、パン デミック中に、主流ブランドが「フォースマ ジュール(不可抗力条項)」を適用し注文 キャンセルしたことで脚光を浴びました。 だからこそ、2021年のインデックス作成に 向けて、主流ブランドがサプライヤーとの 注文と支払い方法の条件を定めた契約 書のテンプレートを公開しているかどうか を確認しました。 結果としては、 そのよう な契約書を発行している大手ブランドは わずか7%であり、 ステークホルダーはサ プライヤーとビジネスを行う際の典型的 な取引条件を精査することができます。
労働者の労働の権利と賃金は、 ブランドと そのサプライヤーとの間の価格交渉プロ セスの一部であってはなりません。 労働者 の賃金(残業代、傷病手当や社会保険な どの福利厚生を含む)を固定することで、 労働者の福祉と適切な労働条件を価格 交渉のテーブルから外れるようにするリン グフェンス(隔離)は役立ちます。 それにも かかわらず、 サプライヤーとの価格交渉に Center for Global Workers' おいて、人件費をリングフェンスで囲う方 Rights(CGWR:グローバル労働者の権利 法を開示している主流ブランドは10社に1 センター)の調査で説明されているように、 社にも満たず、人件費を分離してリングフ 「サプライヤーが生産の初期費用を負担 ェンスで囲った注文の数についてデータ (C&Aと し、バイヤーは工場が製品を出荷してか 提供しているのは、2つのブランド さらに、 これらは全体の ら数週間後または数か月後まで何も支 H&M)のみです。 払わない」 という既存の支払い構造は、主 注文の一部をカバーしているに過ぎませ 流ブランド、サプライヤー、サプライチェー ん。 主流ブランドが価格交渉で人件費を
82
保護できない場合、貧困レベルの賃金、未 払いの残業代、法的に義務付けられた給 付金の未払いなど、労働者の搾取によっ て利益を得るリスクが出てきます。
最後に、 ブランドがサプライヤーからの購 買慣行に関するフィードバックを公開して いるかどうかを調べました。 今年は、2020 年よりも少ないブランドがこの情報を公 表していることがわかりました。 2020年に はすでに5%という低い水準であったの が、2021年にはわずか3%に減少してい ます。これは残念なことですが、新型コロ ナウィルス感染症の対応に多くの大手ブ ランドや小売業者が取った行動を考える と、驚くべきことではなく、 これはサプライ ヤーが一番助けが必要な時にブランドが 背を向けたことを意味しています。
主流ブランドのうち、60 日以内にサプライヤーへ の支払うポリシーを公開 しているのは
わずか 10社に1社
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
VIEWPOINT: グローバルファッション 業界における透明性向上の必要性に関 するメーカーの視点 等を拡大し、社会的および環境的な搾取の懸念が 高まっているのです。
MOSTAFIZ UDDIN バングラデシュの衣料品メーカーDENIM EXPERT LTDのマネージング・ディレクター
特にファッション業界にとって、透明性 が一番必要とされていると思います。 世界は今、異常な状況に置かれていま すが、 それでも生活は続けなければな りませんし、私たちは集中し続ける必 要があります。世界情勢の変化と私た ちが生きている現実、企業の責任、 サ ステナブルな課題など、 すべてが透明 性に関する議論の背景となっています。 私たちは21世紀に生きており、目隠しを続けるこ とはできません。 現実は、私たちの祖父や先祖が 生きていた頃と全く異なっています。 特にこの1世 紀において、 グローバリゼーションは文明の歴史 に大きな変革をもたらしました。 ある意味では、 グ ローバリゼーションは世界の隅々に発展をもたら しましたが、 この変革は必ずしも良いことではあり ませんでした。グローバリゼーションはまた、不平
透明性がメーカーとブランドの説明責任を負わせ るメカニズムとして扱われない限り、私たちが持続 可能な開発目標(SDGs)の達成につながる状況に 身を置くことはできないでしょう。 ブランドとサプラ イヤー間の力関係には、 より多くの均衡がなけれ ばなりません。過度の支配と権力の行使はやめる べきです。 ブランドや小売業者が不公正で非倫理 的な購買慣行を平然と続けることができるのは、 彼らの側に透明性が欠如しているからです。 メーカ ーは、 ブランドからの報復を恐れて、 そのような無 責任な購買行動に対して声を上げません。透明性 は、世界中のメーカーにとって公平な競争の場を 作るためにとても重要なのです。
また、 サプライチェーンのパートナーが共有しなけ ればならないコンプライアンスと透明性に関わる コストもあります。 ブランドが支払う価格について の私の見解は、 これらはグローバルな市場の力に よって決定されていて、現在の市場には全般的な 供給過多があり、 それが価格を引き下げている理 由にもなっています。 しかし、私は市場の力を信じ ていますが、市場がより効果的に機能し、 より社会 的に望ましい結果を達成するために、助けの手を 必要とする場合もあると思います。 価格に関して は、難しい問題があります。 現在、縫製労働者が公 正な賃金、 あるいは少なくとも最低賃金を受け取 ることを保証するだけのマージンが交渉プロセス に組み込まれているか?透明かつサステナブルな
VIEWPOINTS
生産のためのコストをカバーするだけのマー ジンは組み込まれてるか?消費者側でも透明 性のある製品とそうではないものを区別でき、 そこに価値を感じることも同様に重要です。 消 費者の製品に対する価値は、価格プレミアム を通してもたされるべきです。
透明性は交渉の材料にとして使用するべきで はないですし、新しい監査プロセスを開拓する ことになってもいけません。 実際、私たちは長 年にわたり、社会監査のための統一された行 動規範を要求してきましたが、 これは透明性 のある方法で行うことができます。 これは、 バ イヤー、 サプライヤー、 そして業界で働くすべて の人にとって大きな助けになると思います。し かし現状では、同じ監査でもブランドによって 少しずつ行動規範が異なっています。なぜグ ローバルブランドはこの問題に一丸となって 取り組み、透明性のある監査報告書を開示で きないのでしょうか?これは、私が何度も繰り 返している質問です。
ラナ・プラザのビルが倒壊した後、 火災、 電気お よび構造上の安全性に関する検査のために、 バイヤーとバングラデシュの地方自治体が連 携するという、 これまでにない事例が生まれま した。 検査報告書はウェブサイトで開示され、 労働者が懸念や苦情を報告できるホットライ ンが用意されており、 そして私の工場も含め、 第三者の監査人が検査できるように施設が開 放されました。私たちはこの事例と同じよう に、 すべての繊維および衣料品の生産国で検 査報告書を公開し、 透明性を確保すべきです。
透明性を高めるために、 主流ブランドに期待す ることは次のとおりです。 すべてのブランドは、 ベンダーの詳細と共に調達量を開示すること。 ブランドが新しいサプライヤーと契約する時の プロセスも、 オープンで透明性のあるものにす
83
ること。 ブランドが社会監査のための統一された 行動規範を支持し、 重複を避けるために現状の監 査報告書を全て開示すること。 ブランドが購買慣 行の透明性とデューディリジェンスを実施するた めにグローバルなポリシーとルールに沿うこと。 そ して、 メーカーがいじめや悪い購買慣行に関する 懸念を恐れることなく安心して報告できるグロー バルなプラットフォームを用意すること。 バイヤーは、購入慣行と責任ある調達について消 費者から指摘されることがあります。 そのため、透 明性のある購入方法により、 より多くの顧客ロイ ヤリティを獲得し、 サプライチェーンの可視性を高 めることにも繋がります。 透明性は、 サプライチェ ーンの力関係を健全に保つことができるのです。
私は透明性こそが未来だと思います。 なぜなら、 この地球上の私たち全員が生きていくために、必 要不可欠なサプライチェーンにおける人々の間に 信頼を築く力があるからです。
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
生活賃金
このトピックが単純ではないことは理解し ています。 ブランドは通常、労働者の賃金 悔しいことに、 この1年も、主流ブランドや を直接支払うことはなく、サプライヤーが 小売業者は、サプライチェーンで働く労働 支払っています。 一方、複雑な政治的・経 者の生活賃金の問題について、ほとんど 済的要因や、時には汚職までもが絡み合 透明性を提供していませんでした。 生活 い、過酷な環境で長時間働いているにも 賃金の支払いを達成するための会社のア かかわらず、賃金が低く抑えられ、貧困に これはブ プローチを開示しているブランドはわずか 陥っている人々もいます。しかし、 27%で、昨年の23%からわずかに増加し ランドの責任を免除する理由にはなりま ていますが、期限付きで測定可能な形で せん。 ブランドは、製品を作る人々がいな 戦略を公表しているのはわずか4%です。 ければ、販売する製品もありません。ブラ さらに、サプライチェーン労働者の生活賃 ンドとその株主が莫大な利益を上げてい 金の達成に向けた年間の測定可能な進歩 ますが、サプライチェーンで働く労働者は を報告しているブランドは、わずか6%でし 生活の基本的な必需品を買うのにさえ苦 労しているのです。 た。 住んでいる場所、仕事に関わらず、世界中 のすべての人々が適切な生活水準を手に 入れることができるべきです。 生活賃金 は、私たちの服を作る何百万人もの人々、 その大多数は女性である人々の貧困を解 消する力があります。生活賃金は、国連に よって認められている人権であり、それは 1週間の労働時間が48時間を超えない範 囲で、食料、水、住宅、教育、医療、交通、衣 類、などを支払うのに十分な給料が支払 われることを意味します。
主流ブランドはもっとできることがあり、 そ うすべきですが、今のところ、 この問題に ついて話題にすることすらなく、彼らの努 力がサプライチェーンで働く労働者の生 活水準を向上させる賃金上昇につながっ ていることを示す証拠もほとんどありま せん。 まずは、どの主流ブランドが、労働者 の賃金と労働者の住む地域の生活賃金 とのギャップを測定しているのかを調べ ることから始めるのが良いでしょう。サプ ライチェーンで働く労働者の賃金を追跡、 およびベンチマークするために使用する
SPOTLIGHT ISSUES
生活賃金の額を開示しているブランドは わずか12%であり、最低賃金より高い金 額を労働者に支払っているというデータ を公開しているブランドはさらに少ない( わずか4%) ことがわかりました。 また、生 活賃金を受け取っているサプライチェー ンの従業員の数について、データを公開 しているブランドはたったの2社(OVSと Patagonia)で、開示されているデータを 見ると、ほとんどが生活賃金を受け取って いないことがわかりました。最後に、今年 は初めて、 ブランドがデジタルペイメント で賃金の支払いを受け取っている労働者 の数に関するデータを開示しているかど うかを調べました。最近の調査では、 デジ タルペイメントが女性労働者にプラスの 影響を与えていることが示唆されていま すが、 このデータを公開しているブランド はわずか2%でした。
''サプライチェー ンと賃金の透明 性は、労働者、労 働組合、市民社会 が企業にビジネ ス慣行の説明責 任を持たせるた めにとても重要 です' Paul Roeland, Clean Clothes Campaign
84
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
労働組合化と団体交渉
サプライヤー施設における団体交渉と結 社の自由に関する違反行為の有無につ いてデータを公開しているブランドはわ ずか8%です。 例えば、C&Aはこのデータ を公開している数少ないブランドの1つ です。 C&Aは、 サプライチェーン全体で結 社の自由を注意深く監視し、2019年には 18件の違反を検出できたと報告していま す。C&Aでは、サプライヤー、生産部門、 そ の他の部門、および政府代表者と連携す るチームを作り、将来に向けて必要な保 ステークホル これらの権利の重要性にもかかわらず、 護措置が確保するために、 独立した民主的に選出された労働組合を ダーのニーズに応じてそれぞれのケース 持つサプライヤー施設の数または割合を に対処しています。 開示しているブランドはわずか9%、 団体 交渉協定の対象である労働者の数を開示 団体交渉をサプライチェーンの労働者の しているブランドはわずか10%であること 賃金に結び付けるために、今年は主流ブ は注目すべき点です。 昨年に比べて開示 ランドが団体交渉協定によって現地の法 件数はわずかに増加していますが、ほとん 律で要求されるよりも高い賃金を提供し どのブランドがサプライヤー行動規範の ているかを調べたところ、開示しているブ 中でサプライヤー施設の労働者代表を必 ランドは1つもないことがわかりました。 要していることを考えると、数値は本来あ 多くの大手ブランドでは、唯一のツールと して団体交渉を行う縫製労働者の努力 るべき姿をはるかに下回っています。 を支援することにのみ焦点を当てていま 労働組合を結成して加入する権利や団体 交渉を含む協会の自由は、多くの国際協 定や国内法に定められている基本的な労 働者の権利です。なぜなら、労働者が団結 して、 より良い労働条件について雇用主と 話し合い、交渉することができれば、賃金、 社会保障給付、残業時間、健康と安全、出 産の権利、職場での差別など、最も懸念さ れる問題に取り組むことができるからで す。
SPOTLIGHT ISSUES
す。 労働者にとってより良い賃金を得る為 に団体交渉権が不可欠であり、 ブランド はこうした努力を支援べきです。しかし同 時に、労働者が生活するには法定最低賃 金が低すぎることが多いため、団体交渉 によって現地の法律で定められている賃 金よりも高い賃金が提供されていること を確認できれば、 さらに励みになります。 これは、 バングラデシュやインドだけでな く、 アメリカや一部のヨーロッパの国でも 同じことが言えます。 社会的、文化的、政治的、経済的なさまざ ま理由から、衣料品や繊維製品の生産国 では一般的に労働組合の加入が比較的 低い傾向にありますが、主流ブランドや小 売業者は、 これらの権利にもっと注意を 向け、支援をするためにもっと努力する 必要があります。
団体交渉協定の対象とな るサプライチェーンの労 働者の数を公表している ブランドは
10社に1社 のみ
85
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
ジェンダーと人種的平等
2021年版インデックスの新しい指標とし て、主流ブランドが人種的平等の促進に関 する行動を公表しているかどうかを調べ ていますが、関連情報を公表しているブラ ンドはわずか12%であることがわかりま した。 また、自社における人種・民族別の職務内 訳を公開しているブランドは、わずか16% であることがわかりました。 さらに、サプラ イヤー施設における民族間賃金格差を公 開しているのは、2%のみでした。
この1年で、主流ブランドは、人種や民族 の平等を公的に支持する姿勢を発信し てきました。特に、2020年と2021年に世 界的な盛り上がりを見せたBlack Lives Matter(ブラック・ライブズ・マター)や Stop Asian Hate(ストップ・アジアン・ヘ イト)の運動に応えるためのものと思われ ます。だからこそ、 ソーシャルメディア上で の彼らの連帯感が、自社やサプライチェー ンにおける雇用・給与の差に関する人種 的および民族的データについて、透明性を
SPOTLIGHT ISSUES
86
値、そして企業の事業とサプライチェーン 種、民族の不平等への対処に取り組んで における人種および民族データの透明性 いる証拠を開示することが必要です。 を義務付けることの必要性を示す説得力 一方、 ブランドの半数以 残念ながら、 フランスの法律では、本指標 のあるケースです。 で取り上げたいくつかのブランドを含み、 上(55%)が、直販事業におけるジェンダ サプ 仏企業が人種、民族、 または宗教に基づい ー間の職務内訳を公開していますが、 たデータを収集することを禁じています。 ライチェーンで公開しているのはわずか6% サプ そのため、 フランスのブランドはこれらの (昨年のわずか2%からは増加)です。 ポイントを獲得することができませんでし ライチェーンにおけるジェンダーに基づく た。このような構造的問題に光を当てるこ 労働違反のデータを開示しているブランド とのできるデータがないことは、社会的に はわずか3%で、昨年の1%未満からは増 さまざまな報告書によると、 広がる人種的および民族的不平等に取り 加しています。 ジェンダーに基づく差別、 ハラスメント、暴 組む上での妨げとなります。 力は、繊維や衣料品のサプライチェーン全 この問 主流ブランドは、人種問題と比べてジェン 体に広がっているにもかかわらず、 ダー平等の問題の透明性がはるかに高い 題へ公に取り組んでいるブランドはほとん とはいえ、依然として低過ぎます。 主流ブラ どないようです。 ンドの半数以上(55%)が、直販事業にお けるジェンダー別で職務の年間分布デー ジェンダー、人種、民族の平等を含む社会 ブラ タを公開していますが、人種別で公開して 的大義に対して公に連帯することは、 いるのは16%のみです。 この違いは、イギ ンドにとって価値あるPRツールになりま リスの法律で250人以上の従業員を抱え す。なぜなら消費者は、ブランドがこれら る英国企業で男女の賃金差の開示が義務 の重要な問題について発言することをま 世界的に見て、男女間の賃金差は23%と推定されてい 付けられていることも一因となっています。 すます期待しているからです。ただし、人 ます。これは、女性が男性の77%を稼いでいることを意 種差別や男女差別との戦いが最優先事項 味しますが、発展途上国の非正規な自営業が多い発展 これは、主要な社会的問題に関する透明 であると言うだけではなく、直販事業及び 途上国では、実際の賃金差は過小評価されています 性のある公開を増やすための法律の価 サプライチェーンにおいて、ジェンダー、人 持って開示していないのが残念でなりま せん。
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
NAZMA AKTER, AWAJ FOUNDATIONの常務理事およびバング ラデシュのSOMMILITO GARMENTS SRAMIK FEDERATIONの会長
VIEWPOINTS
87
"私たち労働者は利益分配を望んでいます。 私たちはあなた方の服を作り、 あなた方の利益を生み、 あなた方を豊かにし、 あなた方を有名にする...し かし私たちは何も持っていません。 利益分配は重要です。 団体交渉も非常に 重要です。女性はリードすべきであり、給与ボーナスの増加やその機会を共 有するべきです。女性は、尊厳と敬意を持って力を与えられ、扱われるべきで す。 出産休暇を確保する必要もあります。女性は適切な休息をとり、危険な 仕事に従事してはいけません。 バイヤーは何が起こっているのかを開示する 必要があります。
工場の労働者は何人いて、 どんな設備があるのでしょうか?組合はあるので しょうか?これらの答えは工場リストで開示すべきことです。
バングラデシュは新型コロナウィルス感染症でまだ封鎖されていますが、 縫製工場は開いています。しかし、 多くの労働者は職を失いました。産休に 入ったり、 妊娠したために解雇された人もいます。パンデミック中、 ブランド の担当者は工場を訪問しておらず、 オンラインで監視をしています。労働者 を支援するために良いことをしているブランドは聞いたことがありません。 いくつかのブランドは支援を行っているかもしれませんが、 彼らは何をし たのでしょうか?それを知る由もありません。一方、 実際には、 労働者の生 活は良くなっていません。彼らはずっと苦労しています。私たちはデモを行 い、 #PayUpキャンペーンで国内外で戦ってきました。しかし、 ブランドは時 間通りに請求書を支払うことや、 労働者を助けようとはしないようです。私は とても失望していますし、 とても怒っています。 ビジネスパーソンの役割にも 不満があります。労働者がその日暮らしで生きているのに、 彼らは貪欲です。 "
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
SPOTLIGHT ISSUES
5. 重要課題 調査結果 - 原材料の使用、過剰消費、廃棄 サステナブルな素材の使用
プラスチック
44%
30%
サステナブルな原材料に 関して期限付きで定量的 な戦略を公開している
“サステナブル”な素材 の定義を説明している
21%
毎年調達している繊維の種類 に関する情報を公開している
ビジネスモデルと消費
14%
スローな消費のため の新しいビジネスモデ ルを提案している
25%
未加工の(新しい)化 石燃料由来のテキス タイルの使用削減目 標を公開している
39%
21%
バージンプラスチック由 来のパッケージの使用削 減目標を公開している
マイクロファイバーの排出 を最小限に抑えるための 措置を明らかにしている
廃棄物とリサイクル
18%
32%
14%
衣類を長持ちさせるための 修理サービスを提案している
不必要な衣類の回収 計画を提案している
年間の製品総産量 を公開している
6%
年間報告期間中の生 産前のテキスタイル廃 棄量を公開している
27%
テキスタイルからテキスタ イルへのリサイクルの取 り組みを報告している
88
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
5. 重要課題 分析 - 素材の使用、過剰消費、廃棄物 サステナブルな調達と素材 サステナブルな素材の使用の 目標を公開している主流ブラ ンドは約半数(44%)ですが、“ サステナブル”な素材の定義を 明記しているブランドは、3割 以下です。
Global Fashion Agenda and McKinsey 社の調査によると、衣類における炭素排 出の70%は初期段階の活動、特にエネル ギーを多く必要とする原材料の生産、準 備、加工の段階で発生していることが分か りました。原材料の生産における環境へ の悪影響は顕著であり、サプライチェーン で働く人々や地域社会、生物多様性の健 康や安全により多くの脅威をもたらしてい ます
衣類の生産量は2000年から倍になってお り、2015年の62億トンが、2030年には102 億トンに増加すると予測されています。 そ うなるのは当然です。衣類の生産の増加 や莫大な量の原材料の注文と言った何の 工夫もない近年の生産過程が、炭素の排
出、廃棄物、有害化学物質の使用、水路へ のマイクロファイバーの排出などの重大 なリスクを増加させています。
ところが、生地といっても全て同じな訳で はなく、使用される繊維によって異なる環 境負担があることを考えるべきです。例え ば、コットンの従来型の栽培には農薬と 灌漑するための多大な量の水が必要であ り、土壌を傷つけたり、人々の健康や水の 供給を脅かす可能性があります。
一方で、化石燃料である石油から作られ るポリエステルからは、着用や洗濯により マイクロファイバーが排出されます。 さら には、Mistra Future Fashionの調査によ ると、研究が進んでいない繊維の生産に おいては、各繊維の有毒性と富栄養化(栄 養が過剰に流れ出すと、水生生物の生息 地が有毒になる現象)に関して、信頼性が 高く比較可能な環境上の情報が総じて欠 如していることが分かりました。
SPOTLIGHT ISSUES
さらに、“サステナブル”な素材を作るため の手段や過程を説明しているのは、大手ブ ランドのうち30%に留まり、実際に調達し ている繊維を公開しているブランドはわず か21%であるというのは、印象的な結果 となりました。 これらの結果から分かるように、異なる種 類の原材料の選択による環境への影響が 不透明なために、企業の原材料の選択に よる環境への影響を緩和するための明白 なガイダンスや手段などを定義づける業 界全体の強制的な基準を含む、厳しい規 則が求められます。
プラスチックと未加工の化石 燃料の使用の減少
世界中の衣類の半分以上が、ポリエステ ル、ナイロン、ポリオレフィン、アクリルの4 つの代表的な化学繊維からできています。 ほとんどの人工的な繊維は、再生すること が不可能な化石燃料である原油から作ら れたプラスチックです。国際エネルギー機 関によると、化学繊維の生産はプラスチッ ク使用量のうち15%、世界的な原油消費 量のうち1.35%を占めていると予測され ています。 これは、スペインの国家全体の 石油の年間消費量より多く、 テキスタイル これらを考慮すると、半分以下(44%)のブ 部門は梱包部門と建設部門に次ぐ量のプ ランドが“サステナブル”な原材料の使用 ラスチックを使用していると意味していま を増やすことを企業の戦略として公開し す。ポリエステルの生産は、莫大なエネル ていますが、目標に対して進捗を報告して ギーを必要とし、温室効果ガスを多く排出 いるのは、37%のブランドのみという結果 し、人間の健康を脅かす揮発性物質を含 には驚きを隠せません。 む汚水を排出します。
89
それにも関わらず、未加工の化石燃料か ら作られるテキスタイルの使用削減に関 する期限付きで定量的な目標を公開して いるのは主流ブランドの1/4のみで、それ に対する進捗を明らかにしているのは18 %です。梱包に関しては、 より多くのブラン ドが目標を定めているようです。 バージン プラスチックの使用削減に関する期限付 きで定量的な目標を公開しているブラン ドは39%で、その目標に対する進捗を明 らかにしているのは36%です。
マイクロファイバーは、私たちが衣類を着 用し、洗濯し、廃棄する際に自然界に排出 される、非常に小さな破片です。 毎年、5億 トンものマイクロファイバーが海に排出 されています。 これは500億本のペットボ トルに値する量です。さらに衝撃的なの は、 マイクロプラスチックは、妊婦の胎盤 からも見つかっています。 マイクロプラス チックが環境と健康に及ぼす影響は、完 全には明らかになっていませんが、1/4以 下(21%)の主流ブランドがマイクロファイ バーの排出を最小限にするための施策を 公開しています。
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
SPOTLIGHT ISSUES
過剰消費、廃棄物、 そして循環性 過剰生産と過剰消費、廃棄物は、世界 的なファッション産業において発展しつ つある挑戦分野です。 ファッション産業 では、毎年1000億以上の衣類と200億 以上の靴が年間生産されていると推定 されています。そのうちのほとんどは、 購入後たったの5年以内にごみとして埋 め立て地に送られるか、焼却されます が、 それに逆行し、 ファッションの需要は 世界的に増加すると予測されています。
ブランド Adidas/ Reebok Esprit Inditex (Zara, Bershka, Massimo Dutti, Stradivarius) Mango Morrisons Pimkie United Colours of Benetton URBN (Free People, Anthropologie, Urban Outfitters)
年間の生産量における透明性 の欠如
最近では、莫大な衣類生産の大半は、 再生可能ではない素材を商品に使用 し、着用されなくなった後に、 ごみ処理 所で埋め立てられるか、焼却されると いう直線的(リニア)モデルです。 この 直線的モデルは、世界中で前代未聞 の量のテキスタイルが廃棄される原因 となっており、社会問題と環境に対す る重大でネガティブな影響を与えてい ます。
報告期間における、 年間の生産量 アパレル 528億枚 靴 448億足
23.5億枚
545.036トン 158億枚 35億個 25億枚 76億枚 44億個
市場に出ている衣類のトン数: 去年のIndexでは、年次報告期間中に1.6億枚の製品が作られたと公開されています
過剰生産の問題に注目すると、年間生産 量を公開している主流なブランドは、たっ たの14%です。ほとんどのブランドはこの 情報を追跡していないか、 より考えられる のは、追跡はしていても公開をしていませ ん。 年間生産量の情報が公開されたら、今 まで世界的な主流ブランドや小売業者に 無視され、非常に不透明にされてきた、世 界的な過剰生産の規模がより詳しく調査 されるでしょう。
売れ残り商品の焼却に関する、 非常に低い透明性 一方で、年間に処分する商品量を公開し ている主流なブランドは、たったの6%で す。BurberryやH&M、Nikeでは、衣類を 焼却しているというスキャンダルが発覚し ました。なぜ、 ラグジュアリーブランドは衣 類を焼却するのでしょうか?それは、 ブラ ンドイメージや価値を落とさないように であったり、売れ残り商品や販売できな いサンプル、安全基準を満たさない製品 の量があまりにも多いためだと考えられ ます。 しかしながら、 フランスやEUでは、 ブ ランドが衣類を破棄することを禁止する 法律が制定されているものの、注目すべ き抜け穴が存在するのも事実です。
衣類を回収する案と再利用
90
主流なブランドの32%が永年的な衣類の回 収案の実施を表明したことには価値があり ますが、回収後の過程(一般的には、不必要 な衣類を新しい生地や製品に再生するので はなく外国に売るという過程)を公開してい るブランドは、 たったの22%です。 西洋からの 古着は、南の発展途上国で溢れかえり、多く の場合、地域の製造業やビジネス、環境を破 壊する原因になっています。 それを回避する ために、 フィリピンやルワンダなど、いくつか の南の発展途上国では西洋からの古着の輸 入を禁止しています。 私たちが寄付した衣類 の行方に関する透明性の欠如は、 ファッショ ン産業の植民地時代の痕跡と密に繋がって いるのです。 多くの世界的ブランドは、南の発 展途上国の従業員を非常に安い賃金で雇っ て、資源を搾り取り、衣類を安く製造し、 その 後に購入者が着用しなくなったら回収だけ して、南の発展途上国に価値のない物資を 送り返し、地域社会に環境問題と社会的コ ストだけを残しています。 この問題に関して は、 93ページのThe OR FoundationのLiz Rickettsによるviewpointを読んでください。
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
主流ブランド、循環経済とテキ スタイル
循環型のプロセスとビジネスモデルに移 行することは、 ファッション業界の廃棄物 問題を追跡する上で必要不可欠です。エ レン・マッカーサー財団によると、循環型 経済は、廃棄と汚染の削減、製品と原材 料の耐久性、自然なシステムの再生とい う3つの方針が基本だと定義されていま す。 これに関して、テキスタイルからテキ スタイルへのリサイクルに関する循環的 な解決を発展させる方法を明らかにする 主流なブランドが急増しています。2020 年の18%に対し、2021年には27%に増 えています。 しかしながら、循環性(廃棄さ れた衣類の原材料を、新しい衣類のため の原材料に変えるというリサイクル) が 可能なデザインで製造された製品の割 合を公開しているのは、たったの3%で す。 この情報を公開している8つのブラン ドのうちの半分、Balenciaga、Bottega Veneta、Gucci、Saint Laurent は、 エ レン・マッカーサー 財 団 が 発 展させた 方法論を活用したKering Material Circularity Index(ケリンググループの原 材料循環性指針)を使用しています。
ブランドが衣類の生産前、生産後、両方の 過程における異なる種類の廃棄物に関す る詳細な情報を共有しているかを調査し たところ、生産前の年間廃棄量(切れ端、 く ず、生地の耳)を公開していたブランドは、 たったの6%でした。一方、生産後の年間 廃棄量(デッドストック、過剰な在庫、売れ 残りの商品、サンプル)を公開していたの
は、2%でした。 この結果が意味している のは、ほとんどの主流ブランドは、サプラ イチェーンの廃棄物の種類と量をあまり 把握しておらず、 これが彼らの循環性イニ シアチブの有効性やインパクトを妨げて いるということです。
テキスタイルと衣類の廃棄問題に関する 他の重要な解決方法は、 スローな消費の 効果を重視し、衣類を長持ちさせることで す。 これは、環境に対して非常に良い効果 があります。 しかしながら、レンタルや転 売などの新しいビジネスモデルの実行を 明らかにしている主流ブランドはたったの 14%で、衣類を長く着るための修理サー ビスを提案しているブランドは18%でし た。
世界的なファッション産業における、過剰 生産、過剰消費、廃棄物、循環型経済に関 する複雑な問題はまだまだ明らかにされ ていませんが、主流ブランドが取り組むべ きことは、 よりよい透明性を持つことであ り、それは戦略的な初めの一歩でになる ことは明確です。
SPOTLIGHT ISSUES
91
下記: 不要となったウールの衣類は、Tim Mitchellの Panipatにある大きな倉庫で再び仕分けされます
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
VIEWPOINTS
92
VIEWPOINT: 主流なブランドの過剰生産と循環、古着の取引 に関する透明性の欠如
LIZ RICKETTS THE OR FOUNDATION 創設者
最初に私の目にとまったの は、大多数のブランドが修理 プログラムよりも衣類の回収 プログラムを提案しているこ とです。これは、企業や市民 に製品の責任を取ることの必 要性に対し、真の循環原理と 持続可能性を体現していませ ん。むしろこの統計は、大多 数の大きなファッションブラ ンドが製品に対して責任を持 たず、日頃から彼らが促して いる消費者の過剰消費に対し ての責任から逃れていること を意味しています。
大半のブランドの回収プログラムは、不必要 になった衣類を南の発展途上国の古着市場 に移送するだけです。南の発展途上国では、 多くの衣類がごみとして埋め立て地に送ら れ、焼却されるか、海に流出します。 古着の過 剰供給は、 その土地の持続可能な筋道を密 かに破壊し、直線的な行動をすることで、長 らく使い捨て文化に反対してきたコミュニテ ィの人々に『衣類は使い捨てても良い』と勘 違いさせてしまいます。
修理、アップサイクル、耐久性の高いデザイ ン、生産量の制限と言った更なる公約がな ければ、回収プログラムはブランドが生み出 す廃棄物に対して責任を果たしているとは 言えません。 これらのブランドが回収プログ ラムを“リサイクル”や“循環型”とアピールす ることで社会を混乱させ、消費者に更なる多 くの新製品を購入させる見返りを与えてい ます。 これは逆効果であり、 テキスタイルの“ リサイクル”について、消費者に間違った観 念を持たせてしまいます。 さらには、ほとんどのブランドがI:CoやSoex などの第三者と協力して回収プログラムを 実行しているために、ポストコンシューマー
ウェイストの流れの中でフィードバックを得る ことができず、また、 ブランドのデザインチー ムは、着用パターンに関する利点や耐久性、 修理、アップサイクルに役立つデザイン学ぶ 大事な機会を逃しています。 これに関しては、 循環型経済のためにデザインされた製品の 割合を公開しているブランドはたったの3%、 すなわち250社を調査した中の8社のみとい う事実が証拠と言えるでしょう。 ブランドの過 剰生産と廃棄物の正しい取り扱いに関する 公約の説明がないと言うことは、回収プログ ラムは単に廃棄物を南の発展途上国に輸出 し、 それによってリニア(直線的)経済を拡大し ているだけであり、悪循環を断ち切れないと いうことを表しています。 衣 類 の 生 産 量 を 公 開 して い るブランド は、2021年は合計33つのブランド、 または13 %という、2020年に比べて9社しか増えてい ない結果になりました。 しかし本来、生産量と いうのは世界中の全てのブランドが把握して いる数値であり、未公開にする理由はないは ずです。全ての生産量が発覚してしまうと、 ブ ランドは地球にどれだけ負担をかけているか という事実が明らかになることや、彼らの広 告キャンペーンにおけるグリーンウォッシュが
台無しになることを恐れていると物語ってい ます。
生産量の情報を公開すれば、 ブランドが主張 するほど需要と供給は単純ではないという 事実を突き付けられられるでしょう。 ブランド は、人々が何を購入するか予測できないた め意図的に過剰生産をしていますが、彼ら は需要に基づいた分量のみを生産している とよく主張します。 しかしながら、 それはブラ ンドが南の発展途上国の人々の"需要" を言 い訳にして、(実際は不必要な衣類を古着貿 易に繰り越しているだけ)、 『需要と供給のバ ランスを保っている』という見当違いの主張 なのです。 もし、本当に需要に基づいた分量 のみを生産しているとしたら、私の活動拠点 であるガーナのカンタマント市場に溢れか える衣類の40%は廃棄されないでしょう。 生 産量の公開は、 より誠実な対話を生むだけ ではなく、 より意味のあるバリューチェーン の改革を導くはずです。
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
SPOTLIGHT ISSUES
5. 重要課題 調査結果 - 水、化学物質、地球環境 有害化学物質
水の使用 量
31%
5%
自社施設における年 間ウォーターフットプリ ントを公開している
原材料レベルの年間 ウォーターフットプリ ントを公開している
30%
有害化学物質使用量 を削減する期限付き目 標を公開している
森林の破壊と再生
19%
水に関するリスクを 評価する実施プロセ スを公表している
炭素を除去するための公 約を明らかにしている
9%
森林破壊ゼロの公約 を明らかにしている
1つ以上の原材料の環 境再生型農業の実践の 証拠を提供している
再生エネルギー
カーボンフットプリント
30%
10%
26%
Science Based Targets(SBT)を 公開している
62%
自社施設における年 間カーボンフットプリ ントを公開している
17%
原材料レベルのカーボンフ ットプリントを公開している
44%
自社施設における再 生エネルギーの使用 情報を公開している
7%
サプライチェーンにおけ る再生エネルギーの使 用情報を公開している
93
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
SPOTLIGHT ISSUES
94
5. 重要課題 分析 - 水、化学物質、地球環境
汚水の処理
テキスタイルの加工と衣類の生産において は、癌の要因になったり、不適切に扱われる と従業員や地域社会の健康への脅威とな る、何千もの人工的な化学物質が使用され ています。 国連の概算によると、 テキスタイル に関係する汚水の80%以上は、適切な処理 をされずに自然界に戻されることが分かって います。 また、CDPの報告では、人々の健康を 脅かしたり、綺麗な水と衛生的な生活を手に 入れることに不平等をもたらし、土壌の肥沃 と水生生物の生息地にダメージを与える汚 水が、 どのように水路に流れ出すか説明され ています。同様に、 これは生きるための食糧 を耕作する土地と新鮮な水に頼っている人 々の社会経済的な問題にも関係しています。 今年、私たちはこの資料にサプライチェーン が汚水の試験結果を公開しているかという 指針を掲載しましたが、 それに関連する情報 を公開していた主流なブランドは、たったの 14%でした。
有害化学物質
有害化学物質による環境への影響に関する 情報を公開している主流なブランドの数が 増加しているのは嬉しいことです。 その要因 として、Greenpeaceによるキャンペーン、デ トックス・マイ・ファッションの影響が大きい と言えるでしょう。 このキャンペーンでは、多 くのブランドに2030年までに有害化学物質 の使用をゼロにすることを公約させました。 この問題に関する期限付きの定量的な目標 を公開した主流なブランドは、昨年の24%か ら30%に上昇しました。 また、有害化学物質 排出の進捗に関する情報を公開しているブ ランドは、去年の19%から31%に上昇しまし た。 それにも関わらず、大多数のブランドは、 未だ衣類の製造過程で生まれる有害化学 物質の排出に対する公約や取り組みを明ら かにしていません。
水の消費
一般的にテキスタイルの生産には、 コットン アセスメントにおいてのプロセスや方法論 の栽培から皮革の染色、生地の処理や洗濯 を公開しているブランドは、19%でした。 こち など、サプライチェーンの様々な過程におい らは今年新たに追加された指針です。 て莫大な量の水を使用します。 テキスタイル の生産は、水質汚染の原因になるだけでは なく、 テキスタイルの生産が主に行われてい る南の発展途上国における水不足を悪化さ せています。 この問題は、非常に多くの水を 必要とするコットンの場合がほとんどです。 下記の写真: Bronwyn Seierによるコラージュ この問題の懸念レベルを考えると、主流な ブランドや小売業における水の消費に関す る情報の公示は非常に少ないと言えます。 自社施設(本社、店舗、流通センター、倉庫な ど)における年間ウォーターフットプリントを 公開しているブランドは31%で、 その値は去 年から増加していません。製造・加工施設に おける年間ウォーターフットプリントを公開 しているブランドは更に少なく、たったの14 %です。また、繊維や原材料の製造段階に おける水の消費量を公開しているブランド は、5%のみです。 そして、サプライチェーンに おける水質汚染と水不足への脅威を理解す る上で必要不可欠である、水に関するリスク
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
SPOTLIGHT ISSUES
95
Photo copyright: Jiri Rezac/Greenpeace
VIEWPOINT: なぜ、衣類における有害化学物 質の使用に関する透明性が必要なのか
VIOLA WOHLGEMUTH 消費と有害成分に関する活動家 GREENPEACE GERMANY
年もの間、地域社会はグローバル・ローカ ル両方のファッションブランドの工場での 染色過程の影響によって何色にも染まっ た川を目撃してきました。 より多くのブラン ドがこの問題に対して責任を負い始めて いるのは、嬉しいことです。デトックス・マ イ・ファッション・キャンペーンは、最終製品 に含まれる有害化学物質を重要視してい たファッション産業の焦点を、 サプライチェ ーンにおける有害化学物質の使用と排出 と言った、 より大きな問題にシフトさせまし た。
欠如は地域社会や公共利益団体、そし て消費者が有害化学物質の排出源を知 り、問題を解決するための過程を見出す 邪魔となっています。
また、多数のブランドがウォーターフット プリントに関する施策を掲げているのに 対し、 サプライヤーと繊維の製造におけ るウォーターフットプリントを公開してい Greenpeaceは、Fashion るブランドが少ないという懸念もありま Revolutionによる新しい す。サプライチェーンの工場における環 Transparecy Indexが発刊 境負担に対するアクションは、化学物質 されることを嬉しく思いま の取り扱いから水源へのアクセス、資源 す。2011年のGreenpeace キャンペーン、デトックス・ 今回のIndexでは、この傾向が増加してい の消費、大気への排出、エネルギーの消 マイ・ファッションの発足か ることが分かります。サプライチェーンの工 費、そして温室効果ガスの排出に至るま ら、有害化学物質の排出ゼロ 場で使用される有害化学物質の排出に関 で、包括的である必要があります。 を公約したブランドの間で衣 する製造時制限物質リスト (MRSL)を使用 類品のデトックスが広がって しているブランドは、64社(26%)でした。有 サプライチェーンにおける環境負担の います。80の企業(30社のフ 害化学物質使用削減の期限付きで定量的 削減に関し、ノウハウが不足している訳 ァッションブランドと50社 な目標を掲げ、目標に対する進捗を報告し ではありません。ZDHCやOEKO-TEX® 、bluesign®などの専門的な企業があり のサプライヤー)がデトック ているブランドの数も増加しています。 ます。 ご存知の通り、 ファストファッション スを公約しました。 これらに信憑性を加えるには、廃棄水に含 はサプライヤーのスピードアップと手抜 テキスタイルの製造業は、有害化学物質 まれる有害化学物質の排出に関する公開 きを促進しているため、環境と社会両方 を使用する主な産業であること(引用1)、 情報によって進捗の報告を検証する必要 への負担を減らすためにはファッション たったの36ブランド の過剰生産を減らすことが非常に重要 製造過程において世界中の新鮮な水を があります。現状では、 汚染していること(引用2)など、様々な環 (14%)のみがサプライヤーの廃棄水に関 です。 この透明性の 境への悪影響で悪名をはせています。何 する情報を報告しています。
この透明性の欠如は地域 社会や公共利益団体、 そし て消費者が有害化学物質 の排出源を知り、問題を解 決するための過程を見出 す邪魔となっています。
引用1. UNEP (2013), Global Chemicals Outlook Towards Sound Management of Chemicals, p.14; https://www.unenvironment.org /resources/ report/globalchemicals-outlook-towardssoundmanagement-chemicals 引用2. Business for Social Responsibility (2008)
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
地球の気候と生物多様性
世界的なファッション産業は、原材料を生 産し、原材料を衣類に製造し、世界中に配 送し、最後に私たちが購入し、取り扱い、 そ して廃棄するまで、多くの段階で環境破壊 をしています。
総合的にいえば、私たちはファッション業 界のカーボンフットプリントがどれほど莫 大なのか知りません。 サプライチェーンが 複雑で、温室効果ガスの排出の計測が難 しいことが要因のひとつと言えます。いく つかのブランドは第三者を通して排出デ ータを集めて公開していますが、Global Fashion Agenda(GFA)とマッキンゼー・ア ンド・カンパニーの調査によると、世界的 な温室効果ガスの排出のうち、4%がファ ッション産業によるものだと予測されて います。
暑さに関連した労災の増加や安全性の低 下を引き起こしています。また、労働力の 過半数を占める女性に対し、 より多くの悪 影響を与えています。異常な熱波と危険 性の高い台風は、近い未来に衣類生産を 崩壊させ、企業の損失に悪影響を与える でしょう。
気候変動は深刻で切迫した問題にも関わ らず、期限付きで測定可能な公約とサプラ イチェーンの脱炭素(スコープ1, 2, 3にお ける排出など)を掲げているのは、主流な ブランドの3割のみです。
炭素排出の情報公開
ファッション業界のサプライチェーンにおけ る炭素排出の70%以上は、原材料の生産や 加工の段階で発生しています。 それにも関わ らず、自社施設における年間カーボンフット プリントを公開しているブランドが62%なの 気候変動の影響は不平等であり、衣類を に対し、原材料段階でのカーボンフットプリ 生産してる国々では、海面上昇、致死的な ントを公開しているブランドはたったの17% 熱波、干ばつ、火事や台風など、地球温暖 、また、製造・加工段階でのカーボンフットプ 化の悪影響に直面しています。 さらには、 リントを公開しているブランドは26%です。
テキスタイルの製造工場で働く人々や周 辺の住民は、空気汚染を含む、環境問題 に関する不平等な健康被害の負担を抱え ています。国際労働機関(ILO)によると、地 球温暖化は、衣類製造工場が集中する都 市部と密接に関係していることが分かり ました。不十分な換気や冷却システムが
私たちは、再生エネルギーに関する問題で も似た例を発見しました。直接的な業務に おける再生エネルギーの使用情報を公開し ているブランドは44%ですが、サプライチェ ーンにおける再生エネルギーの使用情報を 公開しているブランドはたったの7%です。 さ
SPOTLIGHT ISSUES
らには、サプライチェーンのエネルギー削 減についての明確なデータを公開している ブランドは、たったの18%です。 これは、恐 らくサプライチェーン全体の炭素とエネル ギーの情報を得ることが難しく、本来ブラ ンドがもっと力を入れる必要のあるサプラ イヤーの施設の環境関連のデータを監視・ 計測していないことが大きな原因であると 言えます。 主流なブランドがサプライチェーンの原材 料段階における炭素排出を追跡しない限 り、彼らは地球の気候への影響を正確に測 ることができないでしょう。さらには、 この 致命的な情報を公開しなければ、 ブランド は簡単に炭素排出の削減量を計算できな いことも明らかです。
主流ブランドのカーボン ネット・ゼ ロを達成するための公約の緩やか な増加
炭素排出の削減目標を設定する大手ブラ ンドが増えていますが、 カーボン ニュート ラルとカーボン ネット・ゼロを区別するこ とが重要です。 なぜなら、 これらの表現はよ く交互に使われ、混乱の大きな原因となり えるからです。
96
カーボン ニュートラルは、温室効果ガスの 排出の削減と相殺、数量化の条件が含まれ た、国際的に認知されている基準と定義さ れています(PAS 2060)。 一方で、 カーボン ネ ット・ゼロはパリ条約で決まった温室効果ガ ス1.5℃目標と足並みを揃え、やむを得ずこ の規定から漏れた温室効果ガス排出は、炭 素の吸収と貯蓄などといった方法を用いて 取り除き、バランスをとることで達成されま す。
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
Science Based Target イニシアチブに基づ いた下記の情報は、 カーボン ニュートラルと カーボン ネット・ゼロの違いを理解するのに 役立ちます。
カーボン ニュートラル
カーボン ネット・ゼロ
カーボン ニュートラルは、最低でもスコ ープ1、2における排出を抑え、 スコープ 3における排出をできるだけ抑える必 要がある
カーボン ネット・ゼロの範囲は、企業 の世界的なスコープ1、2、3における 排出を含む
意欲の 水準
カーボン ニュートラルに向けた確かな軌 道に乗るための、企業の炭素排出削減の 条件がない
ネット・ゼロにするために、組織は 1.5℃目標に従いスコープ1、2、3に おいて炭素排出を減少させなければ ならない
ルール
カーボン ニュートラルを達成するため に、組織はカーボン オフセットを購入し、 炭素排出に見合った分の削減、効率化、 抑制する努力を通して埋め合わせを図ら なければならない
カーボン ネット・ゼロは、組織のバリュ ーチェーン全体の炭素排出量を計算 した場合のみ達成できる
スコープ
意図
カーボン ニュートラルを達成するため に、組織はカーボン オフセットを購入し、 炭素排出に見合った分の削減、効率化、 抑制する努力を通して埋め合わせを図ら なければならない
カーボン ネット・ゼロの目的は、産出 された排出量と地球の大気から除去 された排出量のバランスを取るという 目標の元、温室効果ガスの排出を削減 することである カーボン ネット・ゼロを達成するため に、組織は削減努力をし、地球の大気 から炭素を除去する施策に投資する 必要がある
SPOTLIGHT ISSUES
2015年のパリ協定では、各国の政府が気 温 上 昇を1 . 5 ℃までに抑える努 力を追 跡 し、2℃以下に抑えることを公約しました。 こ の公約を達成するために企業は重要な役割 を担っています。 パリ協定と足並みを揃えた 明確な温室効果ガスの排出削減への道と 共に、科学に基づいた目標が企業に供給さ れました。
私たちの調査では、 カーボン ネット・ゼ ロとScience Based Targetを達成するた めの公 約を明らかにしている主 流ブラン ドの 数 が 増 加していることが 分 かりまし た (2020年の16%に比べ、2021年は26 %に上 昇 ) 。これに関 連して、環 境 への負 荷を計測し、緩和できるようなツールを開 発・発展中のブランドは9つでした(2020 年 の 3 % に 比 べ 、2 0 2 1 年 は 4 % に 上 昇 ) 。特 に 素 晴らしい例 としてあ げられるの はKering Group (Balenciaga、Bottega Veneta、Gucci、Saint Laurent)で、自社の 運営とサプライチェーンの環境におけるフッ トプリントの情報を計測し、金銭価値をつけ る、環境損益計算ツールを導入しています。
97
生物多様性の急減にも関わらず、再 生可能な農業の実践と森林伐採ゼ ロを公約している主流ブランドは非 常に少ない。
森林は、世界中の陸上生物の80%の住処で あったり、地域社会の生活と文化を支える場 所である一方、綺麗な水源、炭素の吸収と貯 蓄をする重要なエコシステムです。
レザーや木のパルプから作られるビスコー スなど、衣類に多く使われる原材料は、原始 的で絶滅寸前の森林の破壊につながって います。森林伐採は気候変動に関わる致命 的な問題であり、先住民族の住まいや生活 の脅威となっています。Canopy(カナダの環 境保全NGO キャノピー)による調査では、セ ルロース由来の生地(ビスコース、 レーヨン、 モダール、 リヨセルなど)を作るために年間 200億本もの木が伐採されており、世界の未 開拓の原始的な森林は20%以下になってい ます。
この問題に関連する調査結果としては、森 林破壊ゼロに対する期限付きで定量的な公 約を掲げているブランドは、 たったの10%で あることが分かりました。 しかしながら、去年 の2%と比べると、少し進歩していると言え るでしょう。 これは、以前に比べて多くのブラ ンドが森林破壊ネット・ゼロの公約を公開し たことによると考えられます。
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
森林破壊ゼロは、森林が伐採や転換されたり していない状態を指しますが、森林破壊ネット ゼロは、森林の破壊や転換されたあるひとつ の地域と同じ範囲分を植林することを意味し ます。 しかしながら、私たちは森林破壊ゼロに 対する公約のみに着目することにしました。 な ぜなら、森林破壊ゼロの方がより野心的であ り、計測しやすいとも言えるからです。
興味深い事例として、最近BurberryはPur Projetとパートナーシップを組み、カーボン・ インセットを支援する環境再生基金を立ち上 げたことが挙げられます。 カーボン・インセッ トとは、自社のサプライチェーンに集中して 炭素を発生源で押さえ込み、空気中に放出 するのを防ぐだけでなく、植林事業を行った り、生物多様性を促進し、エコシステムを回 復させ、現地の生産者の生活を支援するとい 最後に、世界的なファッション産業の中で持続 う仕組みです。 しかしながら重要なのは、何 可能性の代弁者の間で、環境再生型農業に関 千年もの間、既に世界中の地域社会は環境 する話題が少しずつ一般的になってきました。 再生型農業を実行してきたという事実です。 ファッション産業において、環境再生型農業は 環境再生型農業への移行に関しては、地域 次の決まり文句となることが予測されるので、 社会の知識への尊重、 より伝統的な農業法 今年私たちは、それに関連した情報を公開し の復元などにフォーカスするべきであり、産 ているブランドの数を指針として新たに追加 業として、国際社会としての植民地時代の歴 しました。 史に対する深い反省が求められます。 環境再生型農業は、生物多様性を向上させ、 土壌に栄養を与え、水の流域を増やし、 エコシ ステムを強化する農業の原理と実践のことで す。 多くのファッションブランドは原材料を得る ため農業に頼っていますが、少なくとも1種類 の原材料に関する環境再生型農業実践の手 段の証拠を公開しているブランドは、 たったの 9%でした。
SPOTLIGHT ISSUES
"サプライチェーンに おいて、 トレーサビリ ティと透明性がなけ れば、 ブランドは、 人 権と環境問題に対し てビジネスの実践が 生む影響力に気付く ことがないでしょう" Dr Flavia Loscialpo and Eleonora Mongelli
98
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
VIEWPOINTS
99
VIEWPOINT: カーボンフットプリントの 透明性は、 ブランドのSCIENCE-BASED TARGETSの信憑性を高める鍵である PAULINE OP DE BEECK THE CARBON TRUST EU ビジネスマネジメント マネージ ャー / サステナブルファッション リーダー
2021年の報告書において、全てのエ リアで透明性が上昇していることを 見るのは心から嬉しく思います。ま た、今年新たに追加された指針は非 常に重要です。多数のブランドが国 連ファッション業界気候行動憲章や ファッション協定などのセクター別 の公約に署名しましたが、彼らが本 当に達成に必要な行動をとっている と確信を持つには、やはり炭素に関 するアクションについての透明性が 必要不可欠です。 さらに、報告が増え ているのは喜ばしいことですが、 これ らの公約に署名したブランドの多く は未だに排出と科学に基づいた目標 を明らかにしていません
一組織が目標を決めたあと、目標の構成要 素である範囲に基づいた仮説と炭素排出の 詳細を明らかにすることは、 ブランドがパリ 協定の要件とScience Based Targetに沿っ
て行動しているのか理解するために極めて 重要です。 その目標は本当に企業に影響を もたらしているか、また、企業が取り組む具 体的な挑戦を理解するために、炭素に関す る透明性は必要不可欠なのです。 例えば、 スコープ1と2(自社の運営)におけ る炭素排出量と目標についての実行計画 は、企業のエネルギーのうち再生可能なエ ネルギーの割合、その割合を増やすための アクション、そして使用エネルギーの効率 化・削減のために行っていることを明らかに できます。
スコープ3のフットプリント(バリューチェー ン)の透明性と報告は、企業がどのくらいの 規模で変わる必要があるのか理解するのに 重要です。ほとんどの場合、 スコープ3での 炭素の排出量はブランドのフットプリントの うちの80~90%を占めます。最も炭素を排 出する原材料や過程は何か、また、削減目 標をどうやって達成するか、という説明は、
組織の炭素排出に対する行動の意欲を説明 するだけではなく、年度ごとの削減に対する 責任を明らかにするのに役立ちます。
サプライチェーンの可視化が欠如しているの で、当面の間、 フットプリントの大半は仮説に 基づくことになるでしょう。 関連する報告にサ プライヤーが誓約すること、 そして、最終的に サプライチェーンにおいて削減を達成するこ とが鍵となります。 このデータや原材料に関 する正確な報告に焦点が集まっているため、 ファッション産業はライフサイクル分析(LCA) に基づいたアプローチに変更する必要があ ります。 このアプローチは、 ファッション業界 内での平均値を証明するだけでなく、各ブラ ンドが仕入れの過程における炭素排出を証 明することが可能なため、特に重要なので す。 また、LCAアプローチは、原材料の移行と 過程の改革に関して、 ブランドにインフォーム ド・チョイス(正しい情報を得た上での選択) を促します。
カーボンフットプリントに関しての正確 さと透 明 性の改 善 は 、組 織のS c i e n ce Based Targetとネット・ゼロの公約の信憑 性を高める上で鍵となります。 これに関す るさらなる情報はCarbon Trustでご覧く ださい。
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
最終結論と推奨事項
100
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
FINAL THOUGHTS & RECOMMENDATIONS
透明性に向けての行動 次に何をすべきか どこで、誰が、どのようにして、どのような 環境的・社会的コストをかけて服を製造し たかということは、誰もが知る権利のある ことです。 これを実現するにはファッション のグローバルバリューチェーンにかかる透 明性を高める必要があります。 私たちは一丸となり、 ブランドには透明性 の向上を、政府にはブランドに対して情報 の開示を義務付けるよう要求しなければ なりません。
私たちの願いは、 Fashion Transparency Indexが必要とされなくなるくらい、 ファッ ション業界に透明性と説明責任が深く根 付くことです。透明性の向上はこのような 大きなシフトに向けたほんの第一歩でし かありませんが、今のファッション業界に はとても必要な一歩です。 最終的には、透明性を高めることで、環境 を保全・修復し、成長や利益よりも人を大 切にするグローバルなファッション業界を 実現することができます。
だからこそ、私たちは皆さんにこ う呼びかけますーこのインデッ クスを買い物ガイドにするので はなく、 ここに書いてある情報を これからの行動・アクティビズム に生かしてください。大手ブラン ドが責任を持って公に主張をし ていることを精査し、 その主張に 責任を持たせてください。
個人ができること:
主流ブランドや小売業者に対し て、Fashion Transparency Index に 記載のある問題についての透明性の向 上を求める。 #WhoMadeMyClothes? #WhatsInMyClothes? や#WhoMadeMyFabric?などのハッシュタ グを使い、積極的にブランドに問いかける。
政策担当者に対して、大手ブランドのサ プライチェーン全体を通して人権や環境に かかる負荷の説明を義務付けるよう求め る。
株主や投資家に対し、 その影響力を以 って、大手ブランドがより透明性を高め、私 たちの服を作る全ての人々のためにより良 い活動をするよう求める。
労働組合やNGO(非政府組織)などの 市民社会に対して、 ブランドのポリシーや取 り組みが服を製造している人たちに良い影 響を与えていることを確認するよう求める。
101
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
ブランドと小売業者ができること:
Open Data Standard for the Apparel Sectorに乗っ取り、自 社のサプライチェーンを原材料 レベルまで可能な限り早く公 開する
Fashion Transparency Index に記載される全てのトピックに おいての透明性を目指し、変わ りゆくリスクや社会情勢を考慮 した情報を常時更新する
人権や環境リスクのデューディ リジェンスを実施し、実行した 対策の結果とインパクトを開 示する
同じ施設で仕事をする同業者、 そして権利者(特に女性労働者 や労働組合に属する人)と協力 してデューディリジェンスを実施 し、 その過程と成果を公開する グローバルなファッション業界 内の環境的、人権的な問題に ついてのより高い透明性と企業 の説明責任を求める法律を指 示する
FINAL THOUGHTS & RECOMMENDATIONS
政府と政策立案者ができる事:
ファッション業界内の環境的、 人権的な問題についての透 明性と企業の説明責任を求 める規制、法律、政府の政策 を指示する 世界のファッション産業に関 連する社会・環境問題につい て、制裁措置を含む既存の法 律のより良い執行を支援する
グローバルなファッション産 業における労働搾取や環境 破壊に関する危険信号やリス クに、 より積極的に対応する
グローバルなのファッション 業界に影響を受ける労働者や コミュニティの視点に立ち、耳 を傾け、政策立案活動に役立 てる (本レポートP56, 64, 73, 81, 83, 87, 92, 95, 99参照)
投資家や株主ができること:
大手ファッションブランドと小売 業者に対し、人権や環境問題に 関してより明確なガバナンスと説 明責任を求める 人権や環境問題について、取締 役会レベルでの説明責任を求 め、役員報酬がこれらの問題の 改善と連動することを求める
人権と環境問題の複雑さと微妙 さについての専門知識を有する よう取締役会に求める 投資戦略において、価値のある 環境、社会、ガバナンス (ESG)要 素を最優先にする
グローバルなファッション業界 における環境および人権問題に ついて、透明性と企業の説明責 任を義務付ける法律の制定を 求める
市民社会、ジャーナリスト、学者に できること: 本報告書やWikirate.orgに 掲載されているデータと調査 結果を活用して、 ファッション ブランドが発表する主張を精 査・検証し、責任を追求する
ブランドの発表や主張が実際 に起きている現実にそぐわな い場合、警告を促す
このデータを利用して、他のス テークホルダーやブランドと 協力しながら、 サプライチェー ン内の問題に対処し、再発を 防止する グローバルのファッション業 界において、環境問題や人権 問題に関する透明性、及び企 業の説明責任の立法を皆で 求めていく
102
103
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
THANK YOU! Fashion Transparency Index 2021 は、2021年6月にSarah Ditty、Ciara Barry、 Liv Simpliciano、Delphine Willotが執筆 しました。 デザインは、Emily Sear、Maria Maleh、Ipsa Dhariwalが担当しました。 レポ ートの調査は、2020年11月から2021年4月 にかけて、以下の方々が行いました:Sarah Ditty, Carry Somers, Ciara Barry, Delphine Williot, Liv Simpliciano, Ilishio Lovejoy, Sienna Somers, Lian Sing, Ysabl Marie D. Dobles, Isabella Luglio, Nicky Allan, Dr. Fiori Zafeiropoulou, Shruti Singh, Nora Milena Vehling, Michelle Ying-Chi Lai, Clara Buckens, Julia Handler, Alex Scott, Manon Thomas-Delbeke, Veronica Vanessa Stone.
このレポートの作成に尽力してくれたフリー ランスの研究者チームに感謝を申し上げま す。特に、データの品質保証にご協力いただ いたLian SingとYsabi Marie D. Dobles、 長年に渡りこのプロジェクトに尽力いただ いたIlishiro Lovejoy, Sienna Sorners, Eliosa Artusoに感謝します。 今回のプロジェクトにおいて、私たちのチー ムを指導してくださったプロボノコンサル テーション委員会の皆様: Dr. Mark Anner,
Neil Brown, Maddy Cobbing, Gary Cook, Subindu Garkhel, Fiona Gooch, Christina Hajagos-Clausen, Kristian Hardiman, Aruna Kashyap, Kate Larsen, Hester Le Roux, Emily MacIntosh, Maya Rommwatt, Francois Souchet, Joe Sutcliffe, Urksa Trunk and Ben Vanpeperstraete に最大の 感謝を申し上げます。 また、本プロジェクトの 調査手法について情報提供をして頂いた全 ての方々に感謝します。
今年の報告書に追加の分析と見解を提供 してくださった専門家の方々に、心から感 謝します – Nazma Akter, Dr. Mark Anner, Dolkun Isa, Dr Flavia Loscialpo, Eleonora Mongelli, Pauline Op de Beeck, Liz Ricketts, Eline Sleurink, Mostafiz Uddin, Viola Wohlgemuth and the Tamil Nadu Alliance.
また、 コミュニケーションをサポートしてくれ たCarry Somers、Ruth MacGilpとGemma McSherryを筆頭に、Fashion Revolution C I C チ ー ム 全 員 に 感 謝 い た し ま す。ま た、McGrory Communicationsにも感謝い たします。
パートナーであるWikirateのLaureen van BreenとAileen Robinson、Good On Youの チームとビジネスと人権リソースセンターの Alysha Khambayにも感謝します。
今年のFashion Transparency Indexに参加 してくださったブランドや小売業者の代表者 の皆さま、ありがとうございました。 ブランド は、市民やNGO団体から頻繁に情報提供を 求められ、全てに返信することは難しいとい うことを知っています。皆さんの参加は不可 欠であり、感謝いたします。
最 後 に 、英 語 で 発 表 さ れ た F A S H I O N TRANSPARENCY INDEXを日本語に翻訳し ていただいいた日本ボランティアチームの皆 さまにも感謝を致します:羽生田律子、 マル ティンメンド有加、 中西友里、村雲明日香、 神谷眞白、陰原夢歩、岡部美幸、張毓青、 後藤七海、 サルスバーグ莉奈。 レイアウトデザ
皆様のご支援のおかげで、 私たちはよ り公正でより良い業界を目指すべく、 ブランドに透明性の向上を求め続け られることができますし、 私たちの衣 服を作ってくれる人たちの生活の質を 擁護することができます。 透明性と説 明責任を果たすファッション業界を作 るために重要な活動をこれからも続 るために、 定期的なサポーターになっ ていただくか、 1回限りの寄付を受け 付けていますので、 サポートをご検討 ください。 詳細はこちらから。 Fashion
Transparency
IndexはLaudes
Foundationより資金提供を受けており、 その 継続的なサポートに感謝申し上げます
イン:竹村伊央。
Fashion Revolution Foundation: Registered Charity in England & Wales No. 1173421; Registered Company in England & Wales No. 10494997. Fashion Revolution CIC: Registered Company No. 08988812. Registered Address: 70 Derby Street, Leek, Staffordshire ST13 5AJ, UK
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
104
FTI 2021 参考資料 #PayUp Campaign (2021). Available at: https://
Bick R. et al. The global environmental injustice of
Business and Human Rights Resource Centre (BHRRC).
Canopy, CANOPYSTYLE 5-YEAR ANNIVERSARY REPORT
payupfashion.com/the-problem/
fast fashion, Environmental Health (2018) Available at:
India: Unions accuse factory producing for H&M of
(2018) Available at: https://canopyplanet.org/wp-content/
https://ehjournal.biomedcentral.com/track/pdf/10.1186/
union busting after dismissal of 1,200 garment workers
uploads/2019/02/CanopyStyle-5th-Anniversary-Report.
s12940-018-0433-7.pdf
during COVID-19; Incl. comments by H&M. (2020).
A global call for supply chain transparency in the clothing sector. (2021). Available at: https://call-for-
Available at: https://www.business-humanrights.org/en/
transparency.medium.com/a-global-call-for-full-
Bloomberg, Boohoo Links Bonuses to Sustainability and
latest-news/india-unions-accuse-factory-producing-
Carbon Trust, Briefing: Net zero for corporates, Available
supply-chain-transparency-in-the-clothing-sector-
Governance Targets, (2021) Available at: https://www.
for-hm-of-union-busting-after-dismissal-of-1200-
at: https://www.carbontrust.com/resources/briefing-
33535011c1ed
bloomberg.com/news/articles/2021-05-19/boohoo-
garment-workers-during-covid-19-incl-comments-
net-zero-for-corporates
links-bonuses-to-sustainability-and-governance-
by-hm/
Akhter, T. Bangladesh’s Garment Workers are Being
targets
Treated as Disposable. The Nation and Magnum
CARE. Preventing violence and harassment at work
Business and Human Rights Resource Centre (BHRRC).
(2020). Available at: https://www.care.org/our-work/
Foundation (2020). Available at: https://www.thenation.
Bourke, P et al. Further step towards a mandatory
Indonesia: Impacts of Covid-19 on Indonesia’s garment
education-and-work/dignified-work/preventing-
com/article/world/bangladesh-garment-workers-
human rights due diligence law in the EU. Norton
sector. (2020). Available at: https://www.business-
violence-and-harassment-at-work/.
covid-19/
Rose Fulbright. (2021). Available at: https://www.
humanrights.org/en/from-us/covid-19-action-tracker/
nortonrosefulbright.com/en-gb/knowledge/
indonesia/
CDP. Interwoven risks, untapped opportunities. (2020). reports/interwoven-risks-untapped-opportunities
Anner, M., S. Nova, and L. Foxvog. Unpaid billions:
publications/65559296/further-step-towards-a-
trade data shows apparel order volume and prices
mandatory-human-rights-due-diligence-law-in-the-
Business and Human Rights Resource Centre. China:
plummeted through June, driven by brands’ refusal to
eu
83 major brands implicated in report on forced labour
pay for goods they asked suppliers to make. Center for
of ethnic minorities from Xinjiang assigned to factories
Global Workers Rights at Pennsylvania State University
BSI Group, PAS 2060 Carbon Neutrality, Available at:
across provinces; Includes company responses. (2020).
and Worker Rights Consortium (2020). Available at:
https://www.bsigroup.com/en-GB/PAS-2060-Carbon-
Available at: https://www.business-humanrights.org/en/
https://www.workersrights.org/research-report/
Neutrality/
latest-news/china-83-major-brands-implicated-in-
unpaid-billions-trade-data-show-apparel-ordervolume-and-prices-plummeted-through-june-driven-
Burberry, Burberry introduces carbon insetting and
by-brands-refusal-to-pay-for-goods-they-asked-
Autumn/Winter 2020 runway show certified carbon
suppliers-to-make/.
neutral (2020) Available at: https://www.burberryplc.
Arisa and The Centre for Research on Multinational
xinjiang-assigned-to-factories-across-provincesincludes-company-responses/
com/en/news/corporate/2020/burberry-introduces-
Business and Human Rights Resource Centre. Union
carbon-insetting-and-autumn-winter-2020-runw.html
Busting & unfair dismissals: Garment Workers during
Corporations (SOMO). Spinning Around Workers’ Rights (2021). Available at: https://www.somo.nl/spinning-
Business and Human Rights Resource Centre (BHRRC).
around-workers-rights/
Cambodia Over 130 garment factories suspend their operation & lay off around 100,000 workers;
Arisa. Available at: https://arisa.nl/about-arisa/?lang=en
report-on-forced-labour-of-ethnic-minorities-from-
workers raise concerns over livelihoods & lack of
Covid-19. (2020). Available at: https://media.businesshumanrights.org/media/documents/files/200805_ Union_busting_unfair_dismissals_garment_workers_ during_COVID19.pdf
support from brands. (2020). Available at: https:// Better Buying. About purchasing practices (2018).
California Government, Proposition 65 (1986) Available
www.business-humanrights.org/en/latest-news/
Available at: https://betterbuying.org/about-purchasing-
at: https://oehha.ca.gov/proposition-65
cambodia-over-130-garment-factories-suspend-
practices/.
their-operation-lay-off-around-100000-workers-
BetterWork. Transparency Portal (2021). Available at: https://portal.betterwork.org/transparency
Cambridge Business English Dictionary. Definition
workers-raise-concerns-over-livelihoods-lack-of-
of ‘race to the bottom’. Cambridge University Press
support-from-brands/
(2021). Available at: https://dictionary.cambridge.org/us/ dictionary/english/race-to-the-bottom
Available at: https://www.cdp.net/en/research/global-
Center for Global Workers’ Rights (CGWR) Unpaid Billions: Trade Data Show Apparel Order Volume and Prices Plummeted through June, Driven by Brands’ Refusal to Pay for Goods They Asked Suppliers to Make (2020). Available at: https://www.workersrights.org/wp-content/ uploads/2020/10/Unpaid-Billions_October-6-2020.pdf Cernansky, R. End-of-life regulation is coming for fashion. (2021). Available at: https://www.voguebusiness. com/sustainability/end-of-life-regulation-is-comingfor-fashion Chaffo, T. #WhoMadeMyClothes: Transparency Has Become a Fashion Industry Imperative. (2021). https://sustainablebrands.com/read/supply-chain/ whomademyclothes-transparency-has-become-afashion-industry-imperative
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
105
Changing Markets Foundation and Clean Clothes
representationstep-4-communicate-remediate/
core.windows.net/assets/bee4ef3a-8876-4566-98cf-
NYU Stern School of Business Forthcoming, U.S.
Campaign. Majority of the UK public feel clothing
beyond-audit
7a130c013805/The_Future_of_Petrochemicals.pdf.
Corporate Boards Suffer from Inadequate Expertise
Landmark survey highlights lack of trust in information
European Commission, Registration, Evaluation,
International Labour Organisation (ILO), Turning up
https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_
provided by fashion giants (2019). Available at: http://
Authorisation and Restriction of Chemicals (REACH)
the heat: Exploring potential links between climate
id=3758584.
changingmarkets.org/wp-content/uploads/2019/01/
(2007). Available at: https://echa.europa.eu/regulations/
change and gender-based violence and harassment
UK_SUSFASHION_PR_FINAL.pdf
reach/understanding-reach
in the garment sector, Available at: https://www.ilo.
Ohana Public Affairs. Everything you need to know
org/wcmsp5/groups/public/---asia/---ro-bangkok/
about the EU’s upcoming Sustainable Product Initiative.
documents/publication/wcms_792246.pdf.
(2021). Available at: https://www.ohanapublicaffairs.eu/
brands should be responsible for supply chain impacts
in Financially Material ESG Matters (2021) Available at:
Changing Markets, Fossil Fashion, The hidden reliance
European Parliament. Briefing Note: Towards a
of fast fashion on fossil fuels (2021) Available at: http://
mandatory EU system of due diligence for supply
changingmarkets.org/wp-content/uploads/2021/01/
chains. (2020). Available at: https://www.europarl.
Jane, S.F., Hansen, G.J.A., Kraemer, B.M. et al. Widespread
FOSSIL-FASHION_Web-compressed.pdf
europa.eu/RegData/etudes/BRIE/2020/659299/EPRS_
deoxygenation of temperate lakes. Nature 594, 66–70
BRI(2020)659299_EN.pdf
(2021). Available at: https://doi.org/10.1038/s41586-021-
Olternman, P. and Henley, J. France and Germany
03550-y.
urged to rethink reluctance to gather ethnicity data. The
Cline, E. Cancelling fashion orders: The legal rethink.
en/2021/04/27/everything-you-need-to-know-aboutthe-eus-upcoming-sustainable-product-initiative/.
Vogue Business (2021). Available at: https://www.
Fashion Revolution and Tamil Nadu Alliance. Out of
voguebusiness.com/fashion/cancelling-fashion-
Sight: A call for transparency from field to fabric.
Kashyap, A et al. “Paying for a bus ticket and expecting
com/world/2020/jun/16/france-and-germany-urged-
orders-the-legal-rethink-sears-pay-up/.
(2020). Available at: https://www.fashionrevolution.org/
to fly”: How apparel brand purchasing practices drive
to-rethink-reluctance-to-gather-ethnicity-data.
transparency-beyond-tier-one/
labor abuses. Human Rights Watch (2019). Available
Dhingra, P. The Pandemic’s Impact on Tamil Nadu’s
Guardian. (2020). Available at: https://www.theguardian.
at: https://www.hrw.org/report/2019/04/23/paying-
Open Apparel Registry (2021). Available at: https://info.
Garment Supply Chain. Delhi Post. (2021). Available at:
Fox, B. and Taylor, K. New EU reporting requirements will
bus-ticket-and-expecting-fly/how-apparel-brand-
openapparel.org/
https://delhipostnews.com/the-pandemics-impact-
force firms to ‘get serious’. (2021). Available at: https://
purchasing-practices-drive.
on-tamil-nadus-garment-supply-chain/
www.euractiv.com/section/energy-environment/news/
Eckehard et al. Forest biodiversity, ecosystem
Open Data Standard for the Apparel Sector. (2019).
new-eu-reporting-requirements-will-force-firms-to-
Kering. Environmental Profit and Loss Methodology
get-serious/
(2018) Available at: https://www.kering.com/en/ sustainability/environmental-profit-loss/methodology/.
functioning and the provision of ecosystem services,
Available at: https://odsas.org/. Oxfam International. Covid-19 cost women globally over
Biodiversity and Conservation (2017) Available at: https://
Garment Worker Diaries. March 2021 Update: One Year of
link.springer.com/article/10.1007/s10531-017-1453-2
Covid-19. (2021). Available at: https://workerdiaries.org/
Labour Behind the Label. (2021). Available at: https://
at: https://www.oxfam.org/en/press-releases/covid-19-
march-2021-update-one-year-of-covid-19/
labourbehindthelabel.org/campaigns/living-wage/
cost-women-globally-over-800-billion-lost-income-
business models (2019) Available at: https://www.edie.
Gilbert, J. and Keane, D. How French law makes
Labour Behind the Label. A Living Wage is a Human
net/news/12/Fashion-retailers-team-up-to-trial-new-
minorities invisible, The Independent (2016). Available
Right. Available at: https://labourbehindthelabel.org/
Plastic Waste and Recycling, Synthetic fibers are the
closed-loop-business-models---/
at: https://www.independent.co.uk/news/world/politics/
campaigns/living-wage/
most important type, and man-made fiber from natural
$800 billion in lost income in one year. (2021). Available
one-year.
Edie, Fashion retailers team up to trial new closed-loop
how-french-law-makes-minorities-invisible-a7416656. Ellen MacArthur Foundation, What is a circular
html.
economy? A framework for an economy that is restorative and regenerative by design. Available at:
Greenpeace, Detox My Fashion Campaign. Available at:
https://www.ellenmacarthurfoundation.org/circular-
https://www.greenpeace.org/international/act/detox/
economy/concept
polymers, in particular cellulose, lags far behind .(2020) Mallett, Robbie D. C., et. al. Faster decline and higher
Available at: https://www.sciencedirect.com/topics/
variability in the sea ice thickness of the marginal
earth-and-planetary-sciences/synthetic-fiber.
Arctic seas when accounting for dynamic snow cover.
The Cryosphere, Vol. 15, (2021). Available at: https://
Positive Luxury. Urgent EU Legislation Update: The
tc.copernicus.org/articles/15/2429/2021/
Sustainable Products Initiative. (2021). Available at:
ILO Better Work. ILO Brief: Gendered Impacts of Covid-19
https://www.positiveluxury.com/blog/2021/06/02/eu-
Environmental Audit Committee. Fixing Fashion:
on the garment sector. (2020). Available at: https://
McKinsey & Company and Global Fashion Agenda.
clothing consumption and sustainability. (2019).
www.ilo.org/wcmsp5/groups/public/---asia/---ro-
Fashion on Climate: How the Fashion Industry can
Available at: https://publications.parliament.uk/pa/
bangkok/---sro-bangkok/documents/publication/
Urgently Act to Reduce its Greenhouse Gas Emissions.
Randin G., Roos S. and Johansson M. Mistra Future
cm201719/cmselect/cmenvaud/1952/full-report.html
wcms_760374.pdf
(2020). Available at: https://www.mckinsey.com/~/
Fashion, Environmental impact of textile fibers – what
media/mckinsey/industries/retail/our%20insights/
we know and what we don’t know, the fiber bible part 2,
sustainable-products-initiative/.
Ethical Trading Initiative. Beyond audit (2019). Available
International Energy Agency, The Future of
fashion%20on%20climate/fashion-on-climate-full-
(2019) Available at: http://mistrafuturefashion.com/wp-
at: https://www.ethicaltrade.org/resources/foa-worker-
Petrochemicals (2018) Available at: https://iea.blob.
report.pdf.
content/uploads/2019/03/Sandin-D2.12.1-Fiber-BibelPart-2_Mistra-Future-Fashion-Report-2019.03.pdf
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
106
Remake World. #ShareYourProfits: A Call for Severance
UN PRI, Shareholders pressing for climate risk
Worker Rights Consortium (WRC). Leveraging
& Direct Relief. (2020). Available at: https://remake.world/
disclosures are doing companies a favour (2021)
Desperation: Apparel Brands’ Purchasing Practices
stories/news/shareyourprofits-a-call-for-severance-
Available at: https://www.unpri.org/pri-blog/
during Covid-19. (2020). Available at: https://www.
direct-relief/.
shareholders-pressing-for-climate-risk-disclosures-
workersrights.org/wp-content/uploads/2020/10/
are-doing-companies-a-favour/7713.article
Leveraging-Desperation.pdf
in India’s Lockdown. (2020). Available at: https://media.
United Nations Framework Convention on Climate
Worker Rights Consortium (WRC). Leveraging
business-humanrights.org/media/documents/files/
Change (UNFCC) . FASHION INDUSTRY CHARTER FOR
Desperation: Apparel Brands’ Purchasing Practices
documents/Garment-Workers-in-Indias-Lockdown11.
CLIMATE ACTION Climate Action Playbook. Fashion
during Covid-19 (2020). Available at: https://www.
Industry Charter for Climate Action Resources (2021).
workersrights.org/wp-content/uploads/2020/10/
Available at: https://unfccc.int/sites/default/files/
Leveraging-Desperation.pdf
Society for Labour & Development. Garment Workers
Tamil Nadu Alliance. Tamil Nadu Declaration (2020).
resource/20_REP_UN%20FIC%20Playbook_V7.pdf
Available at: https://tamilnadudeclaration.org/.
Worker Rights Consortium (WRC). Unpaid Billions: United Nations Framework Convention on Climate
Trade Data show Apparel Order Volume and Prices
Terra Genesis International, Regenerative
Change (UNFCCC). About the Fashion Industry Charter
Plummeted through June, Driven by Brands’ Refusal
Agriculture, Available at: http://www.
for Climate Action (n/d). Available at: https://unfccc.int/
to Pay for Goods They Asked Suppliers to Make. (2020).
regenerativeagriculturedefinition.com/.
climate-action/sectoral-engagement/global-climate-
Available at: https://www.workersrights.org/wp-content/
action-in-fashion/about-the-fashion-industry-charter-
uploads/2020/10/Unpaid-Billions_October-6-2020.pdf
The Fashion Pact. Available at: https://thefashionpact. org/?lang=en. The New York Times. US bans all cotton and tomato products from Xinjiang Region of China. (2021). Available at: https://www.nytimes.com/2021/01/13/business/ economy/xinjiang-cotton-tomato-ban.html. The White House. Fact Sheet: President Biden and G7 Leaders Launch Build Back Better World (B3W) Partnership. (2021). Available at: https://www.whitehouse. gov/briefing-room/statements-releases/2021/06/12/ fact-sheet-president-biden-and-g7-leaders-launchbuild-back-better-world-b3w-partnership/. Transparency Pledge (2017). https://transparencypledge. org/ UK Government: Government Equalities Office. Employers do not have to report gender pay gaps. (2020). Available at: https://www.gov.uk/government/ news/employers-do-not-have-to-report-gender-paygaps UK Public General Acts. UK Modern Slavery Act (2015). Available at: https://www.legislation.gov.uk/ ukpga/2015/30/contents/enacted
for-climate-action World Wildlife Fund (WWF). Feeling the Heat: The fate of United Nations Water. Water Quality and Wastewater
nature beyond 1.5°C of global warming. (2021). Available
(n/d). Available at: https://www.unwater.org/water-facts/
at: https://www.wwf.org.uk/sites/default/files/2021-06/
quality-and-wastewater/
FEELING_THE_HEAT_REPORT.pdf
Women in Informal Employment: Globalizing and
WWD, Who Made What? Fashion’s Highest-Paid
Organizing (WIEGO). The world’s most vulnerable
Executives (2021) Available at: https://wwd.com/
garment workers aren’t in factories – and global brands
business-news/financial/ceo-executive-pay-fashion-
need to step up to protect them. (2020) Available at:
retail-stock-options-perks-1234781112/
https://www.wiego.org/blog/worlds-most-vulnerablegarment-workers-arent-factories-and-global-brands-
WWF, Forest Habitat, Available at: https://www.
need-step-protect.
worldwildlife.org/habitats/forest-habitat
Worker Rights Consortium (WRC). Abandoned? The
Xiuzhong Xu, V., Cave D., Leibold, Dr. J, Munro, K. and
Impact of Covid-19 on Workers and Businesses at
Nathan Ruser. Uyghurs for Sale. Australian Strategic
the Bottom of Global Garment Supply Chains. (2020).
Policy Institute (ASPI). (2020). Available at: https://www.
Available at: https://www.workersrights.org/wp-content/
aspi.org.au/report/uyghurs-sale.
uploads/2020/03/Abandoned-Penn-State-WRC-ReportMarch-27-2020.pdf
Zero Discharge of Hazardous Chemicals (2011) Zero
Worker Rights Consortium (WRC). Fired, then Robbed:
Available at: https://www.roadmaptozero.com/post/the-
Fashion brands’ complicity in wage theft during
importance-of-a-single-unified-mrsl
Covid-19. (2021). Available at: https://www.workersrights. org/wp-content/uploads/2021/04/Fired-Then-Robbed. pdf
Discharge of Hazardous Chemicals Programme.
Zero Discharge of Hazardous Chemicals (ZDHC). Roadmap to Zero (2020). Available at: https://www. roadmaptozero.com/?locale=en
FASHION REVOLUTION | FASHION TRANSPARENCY INDEX 2021
免責事項
Fashion Transparency Indexは、一般的な情報提 供目的でのみ利用可能です。 読者は本インデックス で言及されている各ブランドについて、独自の見解 を形成することを勧めます。 Fashion Transparency Indexの内容は、言及されているブランドに関係のあ る法律・規制・研究・投資に関するアドバイスや、売買 や取引に関するあらゆるアドバイスに関与していると 解釈されるべきものではありません。 また、 いかなる 投資目標に合わせて作成されているものではありま せん。 本インデックスの内容を元に行動を起こす前に 必ず、読者自身の状況を考慮し、必要であれば専門 家の助言を求めて参考にして下さい。 本インデックス の正確性、完全性、 そして最新の情報であることの保 証はないものとします。
対する追加情報の提供、本文に含まれる情報の更新 や出てき得る誤りの訂正について、一切の義務を負 わないものとします。
この参考文献に含まれるブランド、商品、 その製造過 程、 サービスをいかなる商用名、商標、製造者で参照 しても、弊社や共同出資者、代理人、代表者、 アドバ イザー、 その他の関係団体、取締役員及びその従業 員による推奨、推薦、支持、ボイコット、悪用、中傷の 一切を示唆していません。
本インデックス及びその関連資料に関わる一切の責 任は、詐欺行為や悪意のある不実表示が発覚した 場合の責任と対処法をこの免責事項にて明記しな かった場合を除き、明確に法律に放棄されておりま 本インデックスの内容は、公知である情報に基づいて す。 本インデックスに関わる論争、申し立て、 そして法 おり、公開時に正しいであろうと判断されたものを使 的手続きには英国の法律が適用され、専属管轄を 用しております。 Fashion Revolutionは本インデック 有するイングランド及びウェールズの法廷に対し申 スの作成に使用されたデータを検査、検証、監査して し立てが行われます。 おりません。 各ファッションブランドの評価は、 プロジ ェクトパートナーや弊社の分析チームが使用する評 価方法ではなく、Fashion Transparency Indexのた めに考案された方法論だけに基づいております。 本 インデックスに含まれる全ての主張、見解、結論と推 奨事項は、公表時に誠実に、 そして合理的に出された ものです。 文中に表明されている見解は、詳細な研究 に基づいた公開当時のものであり、予告なく変更す る場合がございます。 また、表明されている見解は全 て、他に明記されていない限りFashion Revolution CICのものです。 本出版物の内容は、Fashion Revolution CICとFashion Transparency Indexの 資金提供者の意見を反映するものではありません。
本インデックスの内容は善意のもと誠実に組まれて いますが、 この内容及び本インデックスに関連して発 表された情報の正確性、完全性、信憑性、真実性に ついてはFashion Revolution CIC及び弊社の共同 出資者、代理人、代表者、 アドバイザー、 その他系列 会社、取締役員、 そして従業員は一切の責任を負わ ず、 いかなる申し立て及び誓約(明示的・黙示的の両 者において)を行わないものとします。 また、本インデ ックスの使用による当事者間のいかなる被害や負債 についても一切の責任を負わないものとします。 弊 社及び弊社の代理人、代表者、 アドバイザー、系列会 社、取締役員、従業員は、本インデックスの使用者に
107
貢献
この取り組みは、Fashion Revolution CIC(会社番 号:898812)によって開催され、 その方針監督であ るSarah Ditty、Policy & Research team のCiara Barry, Liv Simpliciano, Delphine Williotによって執 筆されました。
この調査は、Fashion Revolutionのグローバルポ リシーディレクターのSarah Ditty、Ciara Barry, Liv Simpliciano, Delphine Williotを含むPolicy & Research teamの主導のもとに行われ、 ファッショ ンレボリューションの創設者の一人であり、 グロー バルオペレーションディレクターのCarry Somersの 支援によって成り立っています。 追加調査は、Ilishiro Lovejoy, Sienna SOmers, Lian Sing, Ysabi Marie D. Dobles, Isabella Luglio, Nicky Allan, Dr. Fiori Zafeiropoulou, Shruti Singh, Nora Milena Vehling, Michelle Wing-Chi Lai, Clara Buckens, Julia Handler, Alex Scott, Manon ThomasDelbeke, Veronica Vanessa Stonによって、2020 年11月から2021年5月に行われました。 デザインは Emily Sear, Maria Maleh, Ipsa Dhariwalが手掛け ています。
Fashion Revolution CICはこの調査をするた めに、Laudes Foundationより投資を受けまし た。 Laudes Foundationは個人財団であり、CDFRA グループの事業や、Perticus Good Energies Foundation, Argidius Foundationを含む公益事業 を経営するBrenninkmeijer family enterpriseに属 しています。 当財団はCDRFAグループから独立して管 理されており、C&Aが属するCDFRAを含む、服飾業界 全体に影響を与えられるよう活動をしています。 Fashion Transparency IndexにおいてのC&Aを評価 するにあたり、事実を公正に扱い、公平なアプローチ を撮っていること強調したいと思います。
利益相反のリスクを軽減するために次の3つの方法を 取りました。 C&AとLaudes Foundationは別の組織 と捉え、扱う。 C&Aを優遇せず、本紙で分析した249の ブランドと同じように扱う。 調査パートナーであるメキ シコのNGO団体ArlenicaにによるC&Aの追加調査と、 ブラジルの技術パートナーであるABC Associadoes による外部調査を行う。
ライセンス – クリエイティブ コモンズ
このFashion Transparency Indexは、クリエイテ ィブコモンズの表示、非営利、改変禁止4.0国際 ライセンスの下で許可されています。自由文化ラ イセンスではありません。詳細については、リン クを参照してください:: https://creativecommons. org/licenses/by-nc-nd/4.0/ このインデックスを作成するために編集した元デ ータを使用するためのライセンスを付与すること はありません。第三者は元データファイルの閲覧 のみが許可されています。 Fashion Revolutionが作成したクレジットを表示 することを条件に、Fashion Transparency Index を任意のメディアまたは形式で自由にコピーして 再配布できます。このライセンスは、コンテンツ を変更、再構築、変換、翻駅、またはその他の方 法で変更する権利を第三者に与えるものではあり ません。 これには、有料サービスの一部としての提供や、 コンサルタントまたはその他のサービス提供の一 部としての提供が含まれます。このインデックス の全体または一部を商業化する場合は、legal@ fashionrevolution.org でFashion Revolutionに連 絡してライセンスを取得する必要があります。 © Fashion Revolution CIC 2021 Published July 2021
Fashion RevolutionのFashion Transparency Indexは、 ファッションブランドのサプライチェー ン全体の透明性を高めるとともに、 業界に説明 責任を果たすよう働きかけてきました。
皆様のご支援のおかげで、 私たちはより公正でよ り良い業界を目指すべく、 ブランドに透明性の向 上を求め続けられることができますし、 私たちの 衣服を作ってくれる人たちの生活の質を擁護す ることができます。 透明性と説明責任を果たすフ ァッション業界を作るために重要な活動をこれ からも続るために、 定期的なサポーターになって いただくか、 1回限りの寄付を受け付けています ので、 サポートをご検討ください。詳細はこちら より。
寄付する
www.fashionrevolution.org
@fash_revjapan
fashionrevolutionjapan
www.facebook.com/FashionRevolutionJAPAN/