Issuu on Google+

John Hejduk 研究 早稲田大学 創造理工学部 建築学科

都市理論『Collage City』と作品集『Vladivostok』との関係にみる

古谷誠章研究室

1960-80 年代のアーバニズムとしての〈Masque〉の設計意図

1X0A042-1 小田切 駿

■第二章 1974-79 年/ジョン・ヘイダック:

■第四章 1979-89 年/ジョン・ヘイダック:

前期 Masque シリーズ

作品集『Vladivostok』

〈第三世代の役割、悲観主義というアンチテーゼの提起〉  ヘイダックはモダニズムの巨匠たちに対して第三世代に位置する自らの役 割を、「近代建築においてやり残されたことを充填すること」と述べている。  前期 Masque は、あらゆる点で近代建築のアンチテーゼとなっている。

研究概要

アンチテーゼの充填

 ジョン・ヘイダックの都市的な問題を扱った

Masque:仮面劇シリーズを、1960-80 年代のモダニズムへの信頼が消失

1974-79 年

モダニズムが提起する生活像

ジョン・ヘイダック:前期 Masque

する過程に生まれた一つのアーバニズムとして、その設計意図を探る。

John Hejduk (1929-2000)

 研究対象は Masque シリーズの集大成として位置づけられる作品集 『Vladivostok』とする。  ニューヨーク・ファイブの知的指導者とされるコーリン・ロウの理論が先行しジョン・ヘ イダックはそれを実践するという従来の一般的な解釈の構図を前提とするのではなく、ロウ とヘイダックは対等に、互いに影響を与え合っていたという前提のもとに Masque を分析 する。ヘイダックの Masque シリーズとロウの都市論『Collage City』との影響関係に着目 して研究する。

■目次

研究対象:『Vladivostok』

■第一章 コーリン・ロウとジョン・ヘイダック

序論 研究背景/目的 研究概要/構成

私はヘイダックやロウたちが共同で作業していたその時期にクーパー・ユニオンに学 生として在籍していたのでわかるのですが、その関係は反対です。ロウがヘイダック の影響を受けていて、

ヘイダックの考えを都市計画として理論化しようとしたのが 『Collage City』なのです。 森 俊子

第一章

コーリン・ロウとジョン・ヘイダック

(本研究によるインタビュー「ジョン・ヘイダックについて」、2013 年)

1-1. コーリン・ロウについて

・建築の浮遊、大地の白紙化。

・ヴェニスの伝統的都市への挿入。

・明るく、開放的な内部空間。

・暗く、閉鎖的な内部空間。

・個々の機能の連続。

・個々の機能の分離、独立。

・最小限のプライバシーと極度の開放性

・プライバシーの保護への過剰な執着。

・既存の歴史の否定、白紙化。

・物語の形式による都市の記憶の継承

楽観主義的生活像の提起

1-2. ジョン・ヘイダックについて

以上の言説から、ヘイダックは第三世代としてモダニズムのアンチテーゼを提 起し、それによって生まれる平衡状態、すなわち異なる理念の衝突により絶え 間ない論争が引き起こされる状況をつくり出そうとしていたと言える。

(1920-1999)

1-2-1. 住宅空間から Masque:仮面劇へ 1-2-2. 自伝的作品集『Mask of Medusa』概要 1-3. 考察 1-4. 小結

第二章

1974-79 年/ジョン・ヘイダック:前期 Masque シリーズ

2-1. 前期 Masque:ヴェニス三部作概要 2-2. 考察 2-3. 小結

第三章

1975 年/コーリン・ロウ:都市理論『Collage City』

3-1. 都市理論『Collage City』概要 3-2. 考察 ­前期 Masque との関係性を主軸に 3-3. 小結

Peter Eisenman

Michael Graves

Charles Gwathmey

John Hejduk

Richard Meier

(1932-)

(1934-)

(1938-2009)

(1929-2000)

(1934-)

NEW YORK FIVE

Colin Rowe

John Hejduk

(1920-1999)

(1929-2000)

 コーリン・ロウはニューヨーク・ファイブの知的指導者と認識されているが、クー パー・ユニオンを卒業した後にヘイダックとともに教佃を執った建築家・森俊子さんに インタビューを行ったところ、ヘイダックが逆に影響を与えていたという証言を得た。  したがって本研究では Masque シリーズの設計意図を探るにあたって、従来の「ロ ウ→ヘイダック」の構図ではなく「ロウ⇆ヘイダック」という相関に基づいて研究を進 める。

仮説:「ロウ→ヘイダック」という従来の認識の構図を解体し、 「ロウ⇆ヘイダック」という構図に基づく認識においてこそ、 Masque シリーズの設計意図を理解できるのではないか。 研究構成 1974

第四章

1979-89 年/ジョン・ヘイダック:作品集『Vladivostok』

前期 Masque(1974-79)

1989 Collage City(1975-78)

後期 Masque(1979-89)

4-1. 外科的建築家:ジョン・ヘイダック 4-2. 作品集『Vladivostok』概要 4-3. 実現例にみる Masque シリーズの実空間への影響 4-4. 考察 ­『Collage City』との関係性を主軸に

In Venice; The Cemetery of Ashes of Thought, The Silent Witnesses, and

小結:第三世代の建築家としてモダニズムのアンチテーゼを 徹底して提案し続けたヘイダックが理想としたのは、平衡状 態、すなわち異なる理念が衝突し、互いに影響し合うことに よって絶え間ない論争が生まれるような状況であった。前期 Masque はその理想に基づく提案である。

■第三章 1975 年/コーリン・ロウ: 都市理論『Collage City』 〈コラージュ・シティ:ユートピアや歴史の衝突による論争〉  近代と伝統の間のジンテーゼを提唱しようというロウとコッターの試みの 中で、彼らは近代都市の建築家=科学者の神話に基づくトータル・デザインの 手法に対して、 「野生の思考」に基づいたブリコラージュの手法を導入し、こ の両者のメンタリティを同時に受け入れる技法を模索した。  そして彼らは「コラージュの技法」に り着く。この技法は異なる複数のユー トピアの断片的受容や、ナポレオンが夢想した博物館都市のような歴史的表現 の多様性を可能にし、そして異なる理念の不意な衝突によって、アイディアの 結合や議論が巻き起こる。

〈前期 Masque と Collage City との関係〉

The 13 Watchtowers of Cannaregio.

 ロウが目論んだコラージュの技法による異なるユートピアや歴史的表現の 衝突によって生まれる論争という状況は、ヘイダックが理想とした「平衡状態」 に極めて類似している。

4-5. 小結

結論

Collage City = 断片的ユートピアや歴史の表現の衝突により論争が生まれる都市

結論:1960-80 年代のアーバニズムとしての〈Masque〉の設計意図

ロウとヘイダックの相関に基づ き、論文を構成する。

参考文献 Colin Rowe

John Hejduk

(1920-1999)

(1929-2000)

資料編

前期 Masque 前期 Masque

『Vladivostok』和訳 『The Riga Project』和訳 インタビュー:森俊子「ジョン・ヘイダックについて」記録

〈現代都市の病理の治療としての Masque〉

ヘイダックはエッセイ『建築と病理的なもの』において現代都市をメタフォリ カルに批判しているが、Vladivostok は現代都市に対する外科的建築であると ヘイダックは言う。Collage City 以後のアーバニズムである。

〈Masque の世界へのブリコラージュ的展開〉

Masque のありあわせのオブジェクトをその地に応じて選ぶ手法は紛れもなく 「ブリコラージュ」の手法である。

〈表現者と観察者の間の論争を引き起こす装置〉

Masque では、ヘイダックの表現と観察者の個人の記憶の間に論争が起こ る。Collage City は 結 局 は 表 現 者 同 士 の 論 争 に 過 ぎ ず、 ヘ イ ダ ッ ク は

Masque において個人への眼差しを重視した。表現者と観察者 との間の論争で、新たな都市が思考される。 小結:Vladivostok は「現代都市の病理」を治療するための 試みであった。「出来事」が旅という物語によって「構造」 をなし、「表現者⇆観察者」という構図で都市の記憶に関す る絶え間ない論争を引き起こそうと、プログラムを世界中に 展開した。

■結論 ロウと同時期に都市へ関心を移したヘイダックは、近代建築の アンチテーゼの提起による論争を目論んだが(前期 Masque)、 ロウはこれを都市的に理論化し、その足場を作った(Collage City)。 しかし表現者同士の論争でしか都市を考えられない現状に ヘイダックは疑問を呈し、観察者と表現者との間の論争を、

展望

『The Collapse of Time』和訳

「出来事」の発生 + 旅、放浪という「構造」

悲観主義的生活像の提起

(『Mask of Medusa』、p.90、1989 年)

Colin Rowe

ビルト/アンビルトの両方がある。

中世にも楽観主義のプログラムはありましたが、しかし、同時に悲観主義のプ ログラムもありました。 両方の状況の同時の存在は、特定の議論を引き起こしました が、モダン・ムーブメントの段階では楽観主義のプログラムしかなかったので す。常に、平衡であること、均衡を保つことがなければならないように思われ ます。 John Hejduk

1-1-1. 建築空間論から都市論へ 1-1-2. 建築論選集『マニエリスムと近代建築』概要

10 年間の旅行に伴い設置されていく Masque

(1974-79)

都市理論 『Collage City』

↓ Collage City

(1975-78)

後期 Masque 『Vladivostok』 (1979-89)

ジョン・ヘイダック年譜

↓ Vladivostok ↓

Canadian Center for Architecture 収集資料

結論 結論:1960-80 年代のアーバニズムとしての〈Masque〉の設計意図

Masque によって世界中に引き起こした(Vladivostok)。 それが Masque の設計意図であり、モダニズムへの信頼が消

平衡状態 = 異なる理念の間に絶え間ない論争が生まれる状態

小結:『Collage City』はヘイダックをはじめとする第三世 代の役割を都市的に理論化したものであった。ヘイダックが 提起した近代建築のアンチテーゼを理論に組み込み、 「コラー ジュ」の手法によって歴史的表現やユートピア像を受容する 方法を編み出した。結果として生まれるのは、ヘイダックの いう「平衡状態」に共通する、異なる理念の衝突が絶え間な い論争を生む状況であった。

失する過程で生まれたひとつのアーバニズムとして考えられ る。

■主要参考文献 Mask of Medusa(ジョン・ヘイダック) Vladivostok(ジョン・ヘイダック) Soundings(ジョン・ヘイダック) The Collapse of Time(ジョン・ヘイダック) The Riga Project(ジョン・ヘイダック) Victims(ジョン・ヘイダック)

マニエリスムと近代建築(コーリン・ロウ) コラージュ・シティ(コーリン・ロウ) 都市の建築(アルド・ロッシ) 輝く都市(ル・コルビュジエ) インターナショナル・スタイル(HR ヒッチコック、P ジョンソン) 近代建築(ヴィンセント・スカーリー)


John Hejduk 研究 都市理論『Collage City』と作品集『Vladivostok』との関係にみる1960-80 年代のアーバニズムとしての〈Masque〉の設計意図