大阪府下におけるメダカ調査報告書―第4報

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大 阪 府 に 於 け る

メダカの生息と遺伝子型分布の実態に関する検討 ─ 第四次大阪府メダカ調査:大阪府に於けるメダカ遺伝子型分布に関する報告 ─

“ネキトンボの産卵とメダカの群れ”

“メダカ遺伝子プロジェクト” 認定NPO法人 シニア自然大学校 調査研究部門 水辺環境調査会


大阪府に於けるメダカの生息と遺伝子型分布の実態に関する検討 - 第四次大阪府メダカ調査:大阪府に於けるメダカ遺伝子型分布に関する報告

林美正、北坂正晃、香月利明、増田修平、 河田航路、上田収、田丸八郎、有本文彦、 認定NPO法人シニア自然大学校調査研究部門水辺環境調査会

目次 はじめに 1.第一次~三次一斉調査に於けるメダカ調査の概要 1)メダカ・カダヤシの生息分布の推移 2)ヒメダカの生息分布の状況 3)大阪府に於けるメダカの生息分布に関する纏め 2. 大阪府に於けるメダカ遺伝子解析研究の概要 1)メダカの系統地理学的背景 2)メダカ遺伝子解析の方法と材料 3)遺伝子解析結果の概要 4)メダカ遺伝子解析研究の纏め 3.大阪府に於けるメダカの生息分布と外来ハプロタイプ侵入に関する考察 4.結語に換えて

はじめに

こうした情勢を踏まえて認定NPO法人シニア自然 大学校調査研究部門水辺環境調査会(以下、水辺環境

メダカ(Oryzias latipes)は、日本列島、朝鮮半島、

調査会)では、2000 年に大阪府に於ける第一次メダ

台湾および中国の平野部の広域に分布する淡水魚であ

カ一斉調査を、2004 年に第二次一斉調査を、2008

る。日本国内では、古くから青森を北限とし本州から

年には第三次一斉調査を実施し、大阪府下に於けるメ

沖縄を南限とする琉球諸島までの広範囲にその生息が

ダカの生息分布状況を網羅的・時系列的にまとめ、生

報告されている。近年、メダカが生息する水田の乾田

息分布図の形で公表してきた。

化や用水路・小川などのコンクリート化による水辺環 境の変化や農業用化成品多用による生息地の減少が指

これら調査過程を通じ、調査員は、人為的に養殖・放

摘されるようになり、1999 年に、メダカは環境省に

流された黄色変異体であるヒメダカや、他地域由来と

より絶滅危惧Ⅱ類に分類・公表されるに至った。さら

推測されるメダカ移植放流の事例や記録に遭遇するこ

に 2003 年版環境省レッドデータブックでは、外来生

とになった。水辺環境調査会としても、事あるごとに、

物による在来生物への影響と共に、殊にメダカの「遺

生物多様性保全・遺伝的攪乱防止の観点から、異なる

伝学的地理変異」の観点から、多くの地域でメダカ保

遺伝子型を持つ他地域のメダカや人為的に養殖された

護を標榜して行われている増殖放流に警鐘を鳴らし、

ヒメダカなどの放流の禁止を訴えてはきたが、これま

無差別放流による遺伝的特徴の攪乱を起こす危険性が

で蓄積してきた大阪府メダカ生息分布状況に加えて、

指摘されている(環境省レッドデータブック,2003)。

同地域内に於けるメダカの遺伝子型分布を調べ、遺伝 的攪乱の実態を解明する必要性を痛感していた。

2


これまで数次にわたり実施してきた大阪府に於ける メダカの生息分布の実態と第四次大阪府メダカ調査と 位置づけたメダカ遺伝子型分布調査の要旨を概説する。

1.第一次~三次一斉調査に於けるメダカ 調査の概要 大阪府に於けるメダカ遺伝子型分布の実態を報告 するに先立ち、水辺環境調査会がこれまで実施して きた第一次・二次・三次メダカ一斉生息調査結果の概 要をメダカ・ヒメダカとそれらの生息を脅かすカダ

メダカ調査 畔も水路もコンクリートではネー!

ヤシ(特定外来生物)の生息分布の実態を概説する。 その後、2010‐2016 年に亘り、メダカ遺伝子解

詳細については、巻末参考文献に記載した報告書を

析の技術を持つ大阪府立大学大学院生命環境科学研究

参照されたい。

科(以下、大阪府立大学)との間で、基本的には府内 の野生メダカ採集を水辺環境調査会が、メダカ遺伝子

第一次・二次・三次一斉調査に於ける調査対象の内、

解析を大阪府立大学が分担する“大阪府に於けるメダ

メダカ、ヒメダカ、メダカと競合する特定外来種カダ

カ生息分布と遺伝子型分布の実態調査プロジェクト”

ヤシの確認場所の推移を纏めると次の通りであった。

(以下、メダカ遺伝子プロジェクト)が実現した。

メダカ

カダヤシ

ヒメダカ

一次(2000 年)

115

82

二次(2004 年)

153(33.0%)

94(14.6%)

三次(2008 年)

150(△2.0%)

123(30.8%)

5

これらを、環境省基準地域メッシュ・第 3 次地域区画

10(100%) 9(△10%)

以下に要旨を述べる。

(以下第 3 次メッシュ)に転記し、

3

全調査メッシュ 223 507 406

(増減率)


ミナミメダカ

ヒメダカ

カダヤシ(特定外来生物)

1) メダカ・カダヤシの生息分布の推移 第一次・二次・三次一斉調査に於けるメダカの

カダヤシの生息場所分布の推移を図 2 に示した。

個体群別生息場所分布の推移を図1に、メダカと

図1.第一次・二次・三次調査に於けるメダカ生息分布の変化(第3次メッシュ)

図2.第一次・二次・三次調査に於けるメダカ・カダヤシ生息分布の変化(第3次メッシュ)

4


メダカでは、大きな群れの減少傾向が顕著で、且 つ確認場所数に頭打ちの傾向が見られることから、 個体数を大幅に減らしていることは明らかである。

一方、カダヤシの分布範囲がより広がり、個体数 も増やしていることが読み取れる。また、水田での メダカの確認場所が僅かに6ヶ所にとどまり、嘗て の“メダカの楽園“の面影は、殆んど見られなくな

“メダカと紛らわしいカダヤシ”

っている。

2) ヒメダカの生息分布の状況

技術的に遺伝子レベルでの識別ができないことから、

第一次・二次・三次一斉調査に於けるヒメダカの生

視覚的に体色で識別できる範囲でヒメダカとした。

息分布の推移を示す個体群別生息場所を第3次メッ シュに転記すると図3の通りであった。

ヒメダカは、体表の黒色素が作られなくなった突 然変異体に由来する、人為的に固定された観賞・餌・ 実験用飼育メダカとされており、体色発現に係わる 一つの遺伝子が機能しないだけで、遺伝子構成はメ ダカそのものと本質的な違いはないとされている。 このような飼育品種であるヒメダカの種苗の生産地

“野外に遺棄された?ヒメダカ”

は、愛知県弥富市、奈良県大和郡山市などが指摘さ れているが、それらに由来するヒメダカが放流又は 逸出したものと考えられる。これまでの調査では、

図3.第一次・二次・三次調査に於けるヒメダカ生息分布の変化(第3次メッシュ)

5


3) 大阪府におけるメダカの生息分布に関す

に属するとされている。

る纏め

(2)北日本集団は、1800 万年前に南日本集団

第一次~第三次メダカ一斉調査を通じて、殊に大

と共通の祖先から分岐したという説もあり

阪では、都市化による商工地域の拡大や宅地化に加

(Setiamarga et al., 2009) 、さらに、北日本集

え、圃場整備事業に象徴される公共事業を契機に、

団は、新種 Oryzias

メダカの生息場所であった水田の乾田化とそれに繋

メダカ)として記載された(Asai et al., 2011)。

がる農水路・小川などのコンクリート化等による水

他方、南日本集団は、和名ミナミメダカと命名区

辺環境の悪化、農薬の繁用、カダヤシ等外来生物導

別され、したがって、現在では、日本のメダカ属

入などの影響を受けて、メダカはその生息数を減ら

は、2 種となっている。

sakaizumii(和名はキタノ

している実態を実見した。就中、調査期間中、観賞 用や実験用に人為的に増殖されたと思われる、所謂 ヒメダカの野外に於ける確認個体数に増加傾向が見 られたことに加えて、他地域由来のメダカの放流事 例や報道記事を実見して、大阪府に於ける遺伝的攪 乱が目に見えない形で進行していることに危機感を 覚えた。このことが、メダカ遺伝子プロジェクトの 契機になったことを付言しておきたい。

2. 大阪府に於けるメダカ遺伝子解析 研究の概要 本研究では、大阪府に於けるメダカの遺伝子の 多様性と国内外来種の有無を検証することを目的と し、メダカ遺伝子プロジェクトが 2010-2012 年 の間、府下の野外から採集したメダカの内 242 個

図4.日本のメダカ系統地理図

体並びに府内のペットショップで購入した7個体の

Takehana et al.(2003) などをもとに作図。

遺伝子を、Hirai et al., (2017)が解析した。それら

青の点線の範囲は“従来の南日本集団”

解析データを基に、水辺環境調査会が検討した概要 は、以下の通りであった。

1) メダカの系統地理学的背景 メダカ遺伝子解析結果の概要を報告するに先立ち、 日本におけるメダカ属の系統と分布について、最近 の動向にふれる。 (1)日本の野生メダカは、これまでアイソザイ ムや DNA を指標とした遺伝学的研究により、北 日本集団と南日本集団に大別され、南日本集団は、

新種 Oryzias sakaizumii(キタノメダカ)のタイプ産地で

さらに 7 つの地域型に細分化されてきた

ある福井県中池見湿地

(Takehana et al., 2003 など)(図4参照)。因 みに、本来、大阪府に生息するメダカは瀬戸内型

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2)

メダカ遺伝子解析の方法と材料

外来ハ プロ 15%

(1)遺伝子解析の方法: 大阪府立大学に於いて、メダカ遺伝子プロジェ クトが採集したメダカの尾鰭から全 DNA を抽出、 ダイレクトシーケンス法により塩基配列を決定、

瀬戸 内型 85%

比較した。Takehana et al., (2003)に基づき、 Hirai et al, (2017)は、各個体を北日本型(キタノ メダカ)と南日本型(ミナミメダカ)に、更に南日

図 5.大阪府に於ける在来・外来ハプロタイプの比率

本型を瀬戸内型と東日本型、東海型、四国型、北

東海型, 1

九州型などの遺伝子型に分類した。 (2)被験対象の採集場所と個体数:

四国型, 4

東日本 型, 29

調査期間中、大阪府下 29 市町村の野外 55 ケ

不明 型, 1

北九 州型, 1

所から採集した 242 個体、即ち、生息環境別では 水田 1 ケ所 4 個体、水路 13 ケ所 48 個体、河川

瀬戸内 型, 206

17 ケ所 91 個体、農業用溜池 14 ケ所 60 個体、公 園池 10 ケ所 39 個体、並びにペットショップで購

図 6.大阪府に於けるメダカのハプロタイプ(個体数)

入した 7 個体が、ミトコンドリアDNA塩基配列 型(以下、ハプロタイプ)の分析に供された。

それらの場所を環境省3次メッシュ(大阪府) にプロットすると、図 7、次頁図 8-10(Hirai et

3)遺伝子解析結果の概要

al., 2017 から作図)に示す通りである。

これまで野外採集した 242 個体並びにペット ショップで購入した 7 個体のハプロタイプの分析 結果は、以下の通りである。

(1)遺伝子解析結果、野外で採集された 242 個 体のうち 206 個体(85%)は、在来ハプロタイ プ瀬戸内型であり、他地域から持ち込まれたと思 われる外来ハプロタイプは、36 個体(15%) ;東 日本型 29 個体(12%) 、東海型 1 個体(0.4%) 、 四国型 4 個体(1.7%)、 北九州型 1 個体(0.4%) 、 不明 1 個体(0.4%) 、であった。尚、不明 1 個体 は、瀬戸内型に近いが、いずれの型にも属さない クレード(ハプロタイプ系統樹の分岐)であった。 以上を図 5-6(Hirai

et al., 2017 から作図)に

示した。 図 7.瀬戸内型分布メッシュ

7


こんな田んぼ脇の水溜りが貴重

(2)ペットショップで購入したメダカ7個体の 内、3 個体が瀬戸内型(野外から採集された瀬戸 内型の何れにも属さない在来ハプロタイプ) 、3 個 体が外来ハプロタイプ北日本型(キタノメダカ)、 1個体が東日本型のヒメダカであった。 図 8.全外来型分布メッシュ

(3)

採集場所数別

55 ケ所中 18 ケ所(33%)で外来ハプロタイ プが確認された。市町村別には、29 市町村中外来 ハプロタイプを確認したのは池田市・箕面市・茨 木市・枚方市・交野市・寝屋川市・守口市・四条 畷市・大阪市・堺市・和泉市・柏原市・河内長野 市の 13 市(45%)であった。大阪府地図に市町 村毎のハプロタイプを転記したものが、10 頁の図 11(Hirai et al., 2017 からの作図)である。

図 9.外来東日本型分布メッシュ

云うまでもなく、これら外来ハプロタイプ 36 個体は、他地域から人為的に移入されたものと考 えられる。殊に東日本型 29 個体のうち 20 個体

こんな丘陵地の公園池に!

は、愛知県弥富市で人為的に交配されたヒメダカ に由来するハプロタイプと考えられる。

8


四国型ハプロタイプ

東海型ハプロタイプ

北九州型ハプロタイプ

北日本型ハプロタイプ(ペットショップ)

M-26型ハプロタイプ

図 10..大阪府に於ける遺伝子型ハプロタイプ別分布メッシュ図(Hirai et al., 2017 から作図)

水田・水路を調査する

公園池はヒメダカ・カダヤシの天国?

9


図 11.大阪府に於ける市町村別メダカ遺伝子型分布(Hirai et al., 2017 から作図)

10


(4)因みに、大阪府を北摂1、北摂2、北河内、

東日本 型 13%

中河内、南河内、泉州1、泉州2の7ブロックに 分けて各ブロックの在来型・外来型ハプロタイプ

南河内

四国 型 3%

(個体数)を対比すると図12-18(Hirai et al., 2017 から作図)の通りである。

瀬戸内 型 84%

北摂1

図 16.在来・外来ハプロタイプ(南河内)

四国型 16%

瀬戸内 型 63%

東日本 型 21%

東日本 型 11%

泉州1

瀬戸内 型 89%

図 12.在来・外来ハプロタイプ(北摂1)

東日本 型 6%

北摂2

図 17.在来・外来ハプロタイプ(泉州1)

泉州2 瀬戸内 型 94% 瀬戸内 型 100%

図 13.在来・外来ハプロタイプ(北摂2)

東海型 2%

北河内

不明 2%

図 18.在来・外来ハプロタイプ(泉州2)

(5)生息環境別にみると、在来ハプロタイプが、 瀬戸内 型 75%

東日本 型 21%

水田 4 個体(100%) 、水路 40 個体(83%) 、 河川 75 個体(82%)、 農業用溜池 59 個体(98%) 、 公園池 28 個体 (72%)、 合計 206 個体であった。

これに対し、外来ハプロタイプは、水田 0 個体

図 14.在来・外来ハプロタイプ(北河内)

北九州 型 9%

(0%)、 水路 8 個体(17%) 、河川 16 個体(18%) 、

中河内

農業用溜池 1 個体 (2%)、公園池 11 個体 (28%) 合計 36 個体(15%)であった。これら生息環境 別在来ハプロタイプと外来ハプロタイプの個体数 をグラフで示すと次頁図 19-24(Hirai et al.,

瀬戸内 型 91%

2017 から作図)の通りである。

図 15.在来・外来ハプロタイプ(中河内)

11


外来ハ プロ 15%

外来ハ プロ 2%

全体

農業用溜池

在来 ハプ ロ 85%

在来ハ プロ 98%

図 19.在来・外来ハプロタイプ(全個体数)

図 23.在来・外来ハプロタイプ(農業用溜池・個体数)

水田

外来 ハプロ 28%

公園池

在来ハ プロ 100%

在来 ハプロ 72%

図 20.在来・外来ハプロタイプ(水田・

図 24.在来・外来ハプロタイプ(公園池・個体数)

個体数)

(6)生息環境別採集場所の外来ハプロタイプ(混 外来ハ プロ 17%

水路

生を含む)を見ると、水田 0 ヶ所(0%)、水路3 ヶ所(23%)、河川9ヶ所(53%)、農業用溜池 1ヶ所(7%)、公園池5ヶ所(50%)、合計18 ヶ所(33%)であった。水田からは外来ハプロタ イプは検出されなかった。

在来 ハプロ 83%

更に、生息環境別に確認された在来ハプロタイ プ、外来ハプロタイプ及び両ハプロタイプ混生の

図 21.在来・外来ハプロタイプ(水路・個体数)

場所数をグラフで示すと図 25、次頁図 26-30 外来ハ プロ 18%

河川

(Hirai et al., 2017 から作図)の通りである。

混生 24% 在来 ハプロ 82%

外来ハ プロ 9%

図 22.在来・外来ハプロタイプ(河川・個体数)

全体

瀬戸内 型 67%

図 25.在来・外来ハプロタイプ(全体)

12


公園池

水田 混生 30% 瀬戸内 型 100%

外来ハ プロ 20%

図 26.在来・外来ハプロタイプ(水田)

外来ハ プロ 8%

混生 15%

瀬戸内 型 50%

図 30.在来・外来ハプロタイプ(公園池)

水路

外来ハプロタイプの個体数比率は、公園池で 最も高く、農業用溜池では最も低い比率であっ た。殊に公園池では、工事施行者などによる他 地域由来のメダカやヒメダカの安易な放流によ って、外来ハプロタイプ混入の比率が高くなっ ていると推測される。他方、農業用溜池は、住

瀬戸 内型 77%

宅地から比較的に離れており、在来ハプロタイ プが保存されやすい立地にはあるが、昨今の農 業形態の変化や地域開発等の影響で利用されな

図 27.在来・外来ハプロタイプ(水路)

いまま放置され、或は消失するケースが起こり

河川

やすい。同様にまた、河川に於いても都市部を 流れる河川や流域部の広い地域ほど外来ハプロ

混生 41%

瀬戸内 型 47%

タイプ移入の可能性が高いことを指摘しておき たい。

外来ハ プロ 12%

(7)地域別には、便宜上大阪府を淀川以北、淀 川と大和川に挟まれた地域、大和川以南に分ける と、採集場所 55 ヶ所の内、在来ハプロタイプは

図 28.在来・外来ハプロタイプ(河川)

淀川以北で 9 ヶ所、淀川~大和川間 11 ヶ所、大 混生 7%

農業用溜池

和川以南で 30 ヶ所の計 50 ヶ所(両者混生を 含む)であった。在来ハプロタイプのみの採集場 所は、淀川以北7ヶ所、淀川~大和川間 5 ヶ所、 大和川以南 25 ヶ所合計 37 ヶ所であった。他方、 外来ハプロタイプ(在来・外来ハプロタイプ混生を 含む)は、淀川以北 3 ヶ所(30%)、淀川~大和

瀬戸内 型 93%

川の間 9 か所(64%)、 大和川以南 6 ヶ所(19%) で、合計 18 ヶ所となっている。在来・外来ハプ ロタイプ(場所数)の対比を著した次頁図 31-33

図 29.在来・外来ハプロタイプ(農業用溜池)

(Hirai et al., 2017 から作図)に示す通り、淀川 ~大和川間の大阪中央部では、他地域から移入さ れた外来ハプロタイプが顕著である。

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タイプ M-07、M-40 については、巻末付表 3 参 混生 20%

淀川以北

照。

両ハプロタイプの分布を第 3 次メッシュに転記

外来ハ プロ 10%

瀬戸内 型 70%

すると図 34、次頁図 35(Hirai et al., 2017 か ら作図)となる。

図 31.在来・外来ハプロタイプ(淀川以北)

淀川~大和川間 混生 50%

瀬戸内 型 36% 外来 ハプロ 14%

公園池にて

生息環境別にみると次頁図 36-37(Hirai et al.,

図 32.在来・外来ハプロタイプ(淀川~大和川間)

2017 から作図)の通り、ハプロタイプ M-40 は、

大和川以南 外来 ハプロ 6%

河川、水路、公園池に限られているのに対し、M-07

混生 13%

を有する個体は、河川、農業用溜池、水路、公園池、 水田に広く分布している。 瀬戸内 型 81%

図 33.在来・外来ハプロタイプ(大和川以南)

尚、 河川からは 41 のハプロタイプが確認され、 その内 36 は瀬戸内型、4は東日本型、1はどの 型にも属さないハプロタイプであった。これらを 河川別に見ると、瀬戸内型が野間川・切畑川・天野 川・打上川・安威川・神崎川・恩智川・妙見川・和田 川・金熊寺川・男里川・大津川の 12 河川、東日本型 が天野川・打上川・安威川・神崎川・大津川の 5 河川、 どれにも属さないハプロタイプは天野川であった。

(8)本研究に於いて、所謂ヒメダカに由来する と思われる遺伝子型が、瀬戸内型 206 個体中 43 個体(ハプロタイプ M-07) 、東日本型 29 個体中 20 個体(M-40)が、確認されている。 (ハプロ

図 34.東日本型 M-40 の分布メッシュ図

14


ら、本研究から得られた M-40 のハプロタイプ はヒメダカに由来する確率は高いと推測される。 他方、M-07 は、ヒメダカに由来すると可能性 はあるが、瀬戸内型クレードに含まれる最も普 遍的なハプロタイプであり、ヒメダカだけではな く所謂クロメダカにも確認されるので、それらが ヒメダカ放流に由来するか否かを判定することは 極めて困難である。

ヒメダカは、元来、人為的に固定された鑑賞・ 餌・実験用飼育メダカで、基本的な遺伝子構成は メダカそのものと本質的な違いはないとされてい る。そのような飼育品種であるヒメダカの種苗の 生産地は、愛知県弥富市、奈良県大和郡山市など と指摘されており、全国の養殖業生産量や内水面 養殖業など諸統計から類推すると、メダカ・ヒメ ダカの年間生産量は、少なくとも 2000 万尾に達

図 35.瀬戸内型 M-07 の分布メッシュ図

する模様で、本研究で確認された M-40 は愛知県 公園 池 5%

弥富市、M-07 は奈良県郡山市に由来すると考え

M-40個体数

られる。 水路 40%

大阪府に於けるハプロタイプ M-40 や M-07 の 存在は、それら飼育メダカが人為的に野外に放流

河川 55%

され或は逸出し、野生メダカと混生或は交雑した 結果であると考えられる。ヒメダカが野生メダカ と交雑すると、生殖能力を持った黒色素を有する

図 36.M-40 の生息環境別分布

野生型体色が生まれることは周知で、外見上全く

公園池 12% 農業用 溜池 21%

M-07個体数

識別できなくなることを指摘しておきたい。

水田 9%

4)メダカ遺伝子解析研究の纏め

水路 14%

大阪府におけるメダカの遺伝子の多様性と外来種 の有無を検証するために、野外 55 ヶ所から集めた

河川 44%

242 個体の mtDNA cytochrome b gene (100 3

bp)を解析し、84 のハプロタイプを確認し、

その内 52 のハプロタイプは、それぞれ1個体づ

図 37.M-07 の生息環境別分布

つであった。これらハプロタイプを Takehana et

M-40 は、東日本型個体群に由来するハプロ

al.(2003)によって分類し、206 個体が大阪地域

タイプで、流通しているヒメダカに高頻度に検

の在来種に由来する“瀬戸内型“、35 個体が他地

出されている(Koyama et al., 2011)ことか

域(“東日本”、“四国”、“東海”及び“北九州“)

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からのハプロタイプ、残る 1 個体は、いずれのク

でおり、公園池から流失した外来ハプロタイプが

レードにも属していないことが分かった。それら

河川や水路に拡散分布している可能性を排除でき

36 個体の外来ハプロはいずれも、人為的に移入さ

ない。 (個体数、採集場所における両ハプロタイプ

れた個体群から分化したものと考えられる。

の比率は、本文の図 19-24、25-30 を参照され たい)

一方、大阪府全体では、72 もの瀬戸内型ハプロ タイプが確認されでおり、遺伝子の多様性が比較

尚、ペットショップで購入した 7 個体のうち、

的高く保たれていることを示唆している。反面、

3個体が北日本型のハプロタイプ(キタノメダカ)、

外来ハプロタイプを有する個体数の比率では、公

1個体が東日本型ヒメダカのハプロタイプであっ

園池(28%)が、水路(17%)、河川(18%)、

たことは、これらの個体が野外に放流或は逸出し

農業用溜池(2%)と較べて著しく高く、採集場所

た場合、長期的視点から遺伝子への影響が懸念さ

数別にみても、外来ハプロタイプの比率は、河川

れるところである。

53%、公園池 50%、水路 23%、農業用溜池 7% の順であった。これら結果から、都市部に於いて は、高い比率で外来型ハプロタイプの混入が進ん

これなんですよネェ、心配は! よくやってくれました’ 讀賣新聞(2009..06.30)

3.大阪府に於けるメダカ生息分布と外来

田の乾田化、農水路や小川などのコンクリート化等

ハプロタイプ侵入に関する考察

による水辺の環境変化、人為的に移入された外来魚、 繁用される農薬や除草剤等の影響を受けて、年々そ

1)水辺調査委員会の数次にわたる大阪府メダカ一斉

の生息域や個体数を減らしている実態が裏付けられ

調査では、大阪レッドデータリスト2014版にミ

ている。

ナミメダカとして絶滅危惧種Ⅱ類に分類されたよう に、大阪府域のメダカは、繁殖に不可欠であった水

一方、本研究で注目すべき点は、大阪府立大学に

16


よるメダカ遺伝子解析によって、大阪府下に於ける

外来ハプロタイプを有する個体群の移入の諸因と

野外でのメダカ採集場所の内 33%に他地域由来の

して、生息環境の悪化によるメダカの減少を危惧し

メダカや人為的に増殖されたヒメダカ、すなわち国

た善意による外来メダカの放流のほか、自然保護を

内外来種の遺伝子が確認された事実である。このこ

標榜していても放流先の環境や在来個体群への配慮

とは、大阪でもほぼ全域に於いて、国内外来種移入

を欠いた外来メダカの放流、商業的に生産されたメ

による遺伝的攪乱が目に見えない形で静かに進行し

ダカの販売による、例えばヒメダカや遺伝子レベル

ていることを示唆している。それら国内外来種を放

で改良を加えた観賞用メダカなどの放流、ずさんな

置する限り、近い将来大阪府域から固有の遺伝子を

管理の所謂ビオト-プからの逸出等々、が指摘され

持ったメダカが消滅することが懸念される。例えメ

ている。

ダカが棲める最適な環境を復元し得たとしても、一 旦他地域由来のメダカやヒメダカの遺伝子が混入す

実際に、本研究の調査段階でも、調査員はそうし

ると、地球史的時間をかけて培われた固有の遺伝特

た事例に直面している。とりわけ、公的・私的造成

性が失われる。まさに、国内外来種は、見えない脅

を問わず所謂‘ビオトープ’への地域外由来のメダ

威である。

カやヒメダカが放流される例は、道路や河川工事な どにおけるノリ面へ外来植物を植えるなどの例を挙

2)昨今、遺伝子解析技術の向上を背景に淡水魚の系

げるまでもなく、それほど稀なケースではない。ま

統地理学が急速に発展し、メダカの遺伝子解析に拠

た、公共事業に伴う生き物救出の際に、救出された

る系統地理像が明らかにされてきた。こうした中で、

メダカに混入していたと思われるカダヤシによって、

異なった地域や水系からのメダカの人為的移入が生

受け入れ先のビオトープがカダヤシに侵食された例

物多様性に負の影響を及ぼしていることが指摘され

もある。

るようになった。 これらの事例は、関係者のみならず市民レベルで 大阪府立大学に於けるミトコンドリア DNA 解析

も 、 外 来 メ ダ カ の 放 流 に よ り 1800 万 年

の結果では、大阪府の野外から採集されたメダカ個

(Setiamarga et al.. 2009)に亘る時間軸の中で

体数の 15%に、採集場所数では、実にその 33%に

分化・形成されてきた在来メダカの遺伝的特性が失

外来ハプロタイプが確認されており、遺伝的攪乱が

われ、ひいては地域の生物多様性も乱されることに

進行している実態が明らかになった。外見上は同じ

気付いていない実態を示している。問題の本質を具

メダカでも、在来ハプロタイプと外来ハプロタイプ

体的に明らかにし、官・学・民がともに考え、より良

が交雑すれば、更に遺伝的攪乱が加速する可能性が

い対応策を協働で模索することが大事であると指摘

ある。こうした状況が続く限り、大阪から在来メダ

しておきたい。

カが消滅する恐れは十分にある。外来ハプロタイプ のメダカの放流は、厳に避けねばならない。

外来生物法の制定以来、外来生物に対する関心は 徐々に高まりつつあるが、メダカにおいても、本来

敢えて付記するならば、例え水槽内で飼育された

自然界で個別の水域や地域ごとに、気候や病気を含

メダカを同じ水域に放流することすら控えるべきで

めた天敵に適応してきた歴史があることを認識し、

あろう。即ち、自然界では本来淘汰されるべき個体

他水域の個体を、人間の都合で異なる地域に放流し

も過保護な環境下では生き残り、その弱い個体の遺

て、地域ごとに天変地変に対する適応能力を持って

伝子が次世代に引き継がれる可能性があるからであ

いる個体群の遺伝的攪乱を起こさせることのないよ

る。

うに、さらなる啓蒙運動が必要であると考える。

17


4.

結語に換えて

る。 (3)その上で、一般市民に対しては、国内外・外

これまで、私たちは、大阪府に於けるメダカの生息

来生物に関する生物多様性戦略の啓蒙と共に、絶

分布の実態に、メダカの mtDNA解析によるハプロタ

滅危惧生物、例えば、メダカの遺伝的攪乱を抑制

イプの分布を重ね合わせることを試み、その概要を述

する意味合いでは、以下のような留意事項をあら

べてきたが、結論的に、どのような形であれ、外来型

ゆるチャンネルを通じて周知徹底することが望ま

ハプロタイプを有する個体を人為的に移入する行為そ

れる。即ち、観賞用や研究用に或はペットとして、

のものが、大阪に於けるメダカの遺伝的攪乱を引き起

野外で採集したり、ペットシップなどで購入した

こす直接的誘因となっている事実と、将来的には、そ

り或は他から譲り受けたメダカ、ヒメダカや人工

のことが続く限り在来メダカ個体群の絶滅を招く必然

的に改良したメダカを、決して野外に放流しない

性を警告した。

よう注意を喚起する手立てを創出・周知すること が必要である。

さらに、そのような危機を回避するには、単に行政 関係者に止まらず、市民に至るまで、外来生物問題を

他方、メダカ・ヒメダカ生産者やペットショッ

取り巻く知識や理解のレベルを向上させる仕組みと啓

プ、生花店、道の駅、大型量販店等流通業者に対

蒙が不可欠であることを痛感している。

して、販売に際し、愛好家に寿命が尽きるまで飼 い続けることを奨励したり、飼えなくなった場合

1) 生物多様性国家戦略の観点から見ても、善意で

の処置等についての注意を喚起する指導や対応を

あれ恣意的であれ、他地域由来のメダカやヒメダ

求めるよう、個別に或は業界団体通じて協力を要

カを野外に放流する行為は、遺伝子の多様性を保

請する何らの具体的措置が不可欠である。

全する立場からは、むしろ不法行為に相当すると 云わざるを得ない。こうした事態が続く背景には、

2)国内外・外来生物の取扱いについて

生物多様性戦略に関する国の取り組みや、環境教

本報告書に於いては、国内外来種問題としてメ

育がまだ広く地方にまで浸透していない現実があ

ダカの在来・外来ハプロタイプについて論じてき

る。その結果、政府及び地方公共団体等の関連部

たが、昨今、農業被害や人的被害などで話題にな

門はさておいても、事業者や民間団体を含む一般

っている特定外来生物、例えば、アライグマ(哺

市民レベルでは、自然と人の関係性に関する理解

乳類)、ブラックバスやカダヤシ(魚類)、ウシガ

や洞察力が育まれていなかったり、自然環境保全

エル(両生類) 、ミシシッピアカミミガメ(爬虫類

に対する積極的な活動力が培われていない現実が

等、要注意)、ツマアカスズメバチ(昆虫類)、セ

障害になっていると考えられる。そこで、

アカゴケグモ(節足動物)、オオバナミズキンバイ (植物)等の外来生物に係る社会問題は、本研究

(1)現在、小・中・高等学校教育における理科教

課題と本質的に同根であり、海外から移入される

育では“生命の尊重”を優先課題として一貫指導

外来生物も、国内の特定の場所に他地域から移入

が実施されているが“生物多様性の保全”も併せ

される国内外来生物も同じレベルで論じられる必

て、自然や自然環境保全への理解向上を図る。そ

要がある。

のことを通じて生物多様性国家戦略に関する知識 を普遍的に啓蒙する。

水辺環境調査会では、2005 年に実施した「大

(2)地方公共団体、殊に市町村には自然環境の保

阪府に於ける淡水生カメ類並びに外来水生生物一

全に関する機構内横断的組織を設置、そこに専門

斉調査報告」以来、外来生物の取り扱いに関し機

職員を配置し、生物多様性戦略執行の中心に据え

会あるごとに提言してきたが、以下の通り、あら

18


ためて強調したい。

様性の向上などの事業がすでに実践され始めてい る。大阪府並びに市町村には、生物多様性戦略の

(1)生きた外来生物の原則輸入禁止と研究用など

市民レベルでの可視化に向けて一層の取り組みを

例外的輸入承認制の採用

期待したい。

(2)ペット等として飼われている国内外・外来生 物の登録制と不要ペットなどの回収システムの確 立 (3)国内で野生化し、繁殖している国内外・外来 生物の具体的駆除や処理システムの確立と地方公 共団体への徹底 (4)生物多様性の観点から、国内外来生物放流の 制限と遺伝的多様性確保の為めの放流ガイドライ ン策定等の法制化と啓蒙が不可欠である。

生花店でもメダカを販売

3)生物多様性地域戦略への取り組み 生物多様性基本法には、都道府県及び市町村は 区域内における生物多様性の保全に関する基本的 な計画(生物多様性戦略)を定めるよう努めなけ

讀賣新聞

(2016.03.15)

ればならないとあるが、その大切な理念が地方の 行政に反映され・具現化される取組みに温度差が あるように思われる。地方自治体によっては積極 的に取り組み、生物多様性戦略の策定や条例化に 繋がっているところもあるものの、多くの地方自 治体では自然環境保全に対する積極性が認められ ず、現状では、貴重なエコトーンである河川や農 地など公共事業も多様な生物の保全に配慮される ことのない、生活の利便性と効率を優先するもの になっていると云わざるを得ない。 先行する近隣府県などの事例をみると、生物多 様性地域戦略に基づき、特定外来生物駆除や不耕 作地の湿地環境への再生や冬季湛水による生物多

北陸中日新聞

19

(2016.07.22)


本研究・調査に参加された方々(順不同、敬称略) 1.大阪府立大学大学院生命環境科学研究科:メダカ遺伝子解析データの提供 2.シニア自然大学校メダカ調査関係者:有本文彦、石田由利子、市村浅子、上田収、香月利明、金井健一、河田 航路、菊地洋子、北坂正晃、木村俊三、鈴木一彦、島崎舜次、高橋剛、田丸八郎、林美正、浜嶋尚義、平川 宏和、山本尚義、増田修平、森本静子、若尾隆一、渡辺隆夫 3.ご協力頂いた諸団体の皆さん:茨木バラとカシの会(太田仁)、大阪市天王寺動植物公園(芦田貴雄)、加呂登 池自然クラブ(佃十純) 、枚方生き物調査会“メダカと魚”部会(大西正實、石川新三郎)、メダカ個体採集 に当たってご協力頂いた多くの地権者 上掲の各位に深甚なる謝意を表します。

参考文献 Asai et al.,:Ichthyol. Explor. Freshwaters 22: 289-299.(2011) Mukai, T.:Biological Science (Tokyo) 58: 192–201(2007). Kurita et al.,:J. Fac. Agric., Kyushu Univ. :429–433.(2008) Kitajima et al.,:Acheilognathus cyanostigma. Ichthyol. Res. 62: 122–130(2015). 小山直人他:魚類学会誌. 56. 153–157(2009) Setiamarga, D. et al., : Biol. Lett. doi: 10.1098/rsbl.009.0419(2009). Takehana. et al.,:Zoological Science 20: 1279-1291(2003). 竹花佑介他:魚類学会誌. 57: 76–79 (2011) 小山直人他:魚類学会誌 58(1)81-86(2011) 中井宏施他:魚類学会誌 58(2)189-193(2011) 大阪自然環境保全協会:大阪府に於けるメダカ生息状況報告-平成12年度生息調査結果- Estrela (92) 財)統計情報研究開発センター(2001) NPO シニア自然大学校:メダカの生息状況報告-第二次メダカ一斉調査(2005.10) NPO シニア自然大学校:メダカの生息状況報告-第三次メダカ一斉調査(.2010.04) NPO シニア自然大学校:大阪府に於ける淡水生カメ類の生息状況報告(2007.02) NPO シニア自然大学校:大阪府に於けるカエルの生息状況報告(第一報) (2004.04) NPO シニア自然大学校:大阪府に於けるカエルの生息状況報告(第二報) (2009.04) NPO シニア自然大学校:大阪府に於けるカエルの生息状況報告(第三報) (2015.03) 林美正他:大阪府に於ける淡水生カメ類の生息状況報告(抄録) 、自然と環境、Vol.1(2007) 林美正他:大阪府に於けるメダカの生息とメダカ遺伝子型分布の実態に関する検討、 自然と環境、Vol.4(2013) 林美正他:大阪府に於ける自然と環境カエルの生息状況報告(第 3 報)要旨、 自然と環境、Vol.5(2016) 環境省:改正・日本の絶滅のおそれのある野生動物4.汽水・淡水魚類 2003

20


大阪府:大阪府レッドリスト

2014

大阪府:大阪府に於ける保護上重要な野生生物

2000

岩松鷹司他:愛知県全域のメダカ及び外来魚の生息調査、 ESTRELA

№115、財)統計情報研究開発センター(2003.10)

岩松鷹司: 「野生メダカの生息調査から見た生物多様性国家戦略の現状」 愛知みずほ大学瀬木学園紀要 3:8(2009) 渡辺勝敏他:淡水魚類の地理の自然史、北海道大学出版(2010.1) 魚の科学事典(普及版):谷内透、朝倉書店(2012.5) 日本魚類学会自然保護委員会:見えない脅威”国内外来魚“-どう守る地域の生物多様性-(2013.7) 酒泉満:メダカを考える、水環境学会誌

Vol.23,No.3(2000)

細谷和海:メダカの生息状況と保護、水環境学会誌

Vol.23,No.3(2000)

端憲二:メダカはどのように危機を乗りこえるか、農文協(2005.2) 林美正他:大阪府に於けるメダカの生息調査予備報告、都市と自然 286 号(2000.1) 林美正他:大阪府に於けるメダカの生息調査報告、第2回全国メダカシンポジュウム (大阪市、2000.12) 山口県立厚狭高等学校生物部:メダカ(Oryzizs latipes)とカダヤシ(Gambusia affini)の 種間関係、日本めだか年鑑 2001 年版、日本めだかトラスト協会(2001) 小沢祥司:メダカが消える日、岩波書店(2000.4) 佐原雄二:メダカとヨシ、岩波書店(2003.2) 秋月岩魚:ブラックバスがメダカを食う、宝島社新書(1999.9) 日本生態学会:外来種ハンドブック、地人書館(2002.9) 環境省:ブラックバス・ブルーギルが在来生物群集及び生態系に与える影響と対策 財)自然環境研究センター(2004.7) 岩松鷹司:メダカと日本人、青弓社(2002.5) 岩松鷹司:メダカ学全書、大学教育出版(1997.12) 川那部浩哉他:日本の淡水魚、山と渓谷社(2001.8) 渡辺昌和:淡水魚ガイドブック、長岡書店(2003.6) 西野麻知子編 : とりもどせ!琵琶湖・淀川の原風景、サンライズ出版(2009.1) 養父志乃夫編:田んぼビオトープ入門、農文協(2008.1) 森誠一編:湛水生物の保全生態学、信山社サイテック(1999.11) 水谷正一編:水田生態工学入門、農文協(2007.3) 内山りゅう編:田んぼの生き物図鑑、山と渓谷社(2005.7) 内山りゅう:今絶滅の恐れがある水辺の生き物たち、山と渓谷社(2007.6) 岩松鷹司監修:学研わくわく図鑑、学習研究社(2006.5) 斎藤憲治他:くらべてわかる淡水魚、山と渓谷社(2015.2) 細谷和海:日本の淡水魚、山と渓谷社(201512) シニア自然大学水辺環境調査会(http://www.geocities.jp/kohgi04/mizube.htm): 大阪府第一~三次メダカ一斉調査報告書、大阪府第一~三次カエル調査報告書、 大阪府第一次淡水性カメ類並びに外来水生生物調査報告書

21


付表・図で見るメダカ遺伝子型分布(巻末掲載) 付表1.大阪府市町村別メダカ-ハプロタイプ分布表(Hirai et al., 2017 から作図) 付表2.ブロック別・生息環境別メダカ-ハプロタイプ分布表(Hirai et al., 2017 から作図) 付表3.大阪府に於けるメダカ-ハプロタイプ一覧表 ( Hirai et al., 2017 から作図) 付表4.野外採集メダカの生息環境別ハプロタイプの分布一覧(Hirai et al., 2017 から作図) 付表5.野外採集ヒメダカの生息環境別ハプロタイプの分布一覧(Hirai et al., 2017 から作図) 付表6.大阪府の2大河川を境界とした3地域に於ける野外採集メダカの ハプロタイプ分布状況(個体数)(Hirai et a.l, 2017 から作図) 付表7.大阪府の2大河川を境界とした3地域に於ける野外採集メダカの ハプロタイプ分布状況(採集場所数)(Hirai et al., 2017 から作図)

22


付表 1. 大阪府市町村別メダカ遺伝子型ハプロタイプ分布表

ブロック

北摂1

北摂2

北河内

中河内

南河内

泉州1

泉州2

野外採取 購入

総計

遺伝子型(ハプロタイプ)

市町村

採取場所

能勢 豊能 箕面 池田 豊中 吹田 小計 高槻 茨木 摂津 島本 小計 枚方 交野 寝屋川 守口 門真 四条畷 大東 小計 大阪 東大阪 八尾 小計 河内長野 千早赤阪 富田林 河南 松原 藤井寺 柏原 羽曳野 大阪狭山 太子 小計 堺 高石 泉大津 忠岡 和泉 小計 岸和田 貝塚 熊取 泉佐野 田尻 泉南 阪南 岬 小計 確認型数 個体数 確認型数 個体数

1 1 1 1

2 6 2 2

4 5 1 1 1

2

10 1 1 2 4 2 1 1

確認型数 個体数

瀬戸内型 うちM- 07 東日本型うちM- 4 0 東海型

確認遺伝子型数

四国型 北九州型

不明

十 十

十 十

十 十

2 1 1

8 8 1 1

十 十

4 14 2

3 3 1 9

十 十

十 十

十 十

十 十

55 1 1

206

43

1

4

1

56

209

43

30

21

1

4

1

29

20

3

1

1

23

十 1

ミナミメダカ

1 1 3 1 0 1 3 1 2 0 0 2 2 2 2 2 0 2 0 4 1 1 1 2 3 1 1 0 0 0 2 1 1 0 3 2 1 1 0 2 2 1 0 0 0 0 1 1 1 1 6 242 2 4

キタノメダカ

0

0

0

0

0

0

0 0 0 十

3

十 6 1 246 3 (H i rai e t al ., 2 0 1 7 から作図) 十

合計 1 1 3 1 0 1 3 1 2 0 0 2 2 2 2 2 0 2 0 4 1 1 1 2 3 1 1 0 0 0 2 1 1 0 3 2 1 1 0 2 2 1 0 0 0 0 1 1 1 1 6 242 3 7 7 249


付表.2 ブロック別・生息環境別メダカ遺伝子型ハプロタイプ分布表 生息環境別遺伝子型(合計) ブロック

採取場所

北摂1 北摂2 北河内 中河内 南河内 泉州1 泉州2

6 4 10 4 8 14 9

野外採取 購入

総計

確認型 個体数 確認型 個体数 確認型 個体数

遺伝子型(ハプロタイプ) 瀬戸内型 ( うちM- 07 ) 東日本型 (うちM- 40) 東海型 四国型 十

確認遺伝子型数 北九州型

不明

十 十

55 1 1

206

43

29

20

1

4

1

1

3

1

1

56

209

43

30

21

1

4

1

1

ミナミメダカ

キタノメダカ

3 2 4 2 3 2 1 6 242 2 4

0 0 0 0 0 0 0 0 0 十 3

合計 3 2 4 2 3 2 1 6 242 3 7

6 246

十 3

7 249

生息環境別遺伝子型(水田) ブロック

採取場所

北摂1 北摂2 北河内 中河内 南河内 泉州1 泉州2

0 0 0 0 1 0 0

野外採取

確認型 個体数

遺伝子型(ハプロタイプ) 瀬戸内型 (うちM- 07) 東日本型

1

4

4

0

(うちM- 40 )

東海型

四国型

北九州型

不明

0

0

0

0

0

確認型数 0 0 0 0 1 0 0 1 4

生息環境別遺伝子型(水路) ブロック

採取場所

北摂1 北摂2 北河内 中河内 南河内 泉州1 泉州2

0 2 2 1 2 4 2

野外採取

確認型 個体数

遺伝子型(ハプロタイプ) 瀬戸内型 (うちM- 07) 東日本型 十

(うちM- 40)

東海型

四国型

北九州型

不明

0

0

0

0

北九州型

不明

40

6

8

8

十 十 十

13

確認型数 0 1 2 1 2 1 1 2 48

生息環境別遺伝子型(河川) 遺伝子型(ハプロタイプ)

ブロック

採取場所

北摂1 北摂2 北河内 中河内 南河内 泉州1 泉州2

3 1 6 0 1 4 2

17

75

19

15

11

野外採取

確認型 個体数

瀬戸内型 (うちM- 07) 東日本型

(うちM- 40)

東海型

四国型

十 0

0

0

1

北九州型

不明

0

0

北九州型

不明

確認型数 2 2 3 0 1 2 1 3 91

生息環境別遺伝子型(農業用ため池) 遺伝子型(ハプロタイプ)

ブロック

採取場所

北摂1 北摂2 北河内 中河内 南河内 泉州1 泉州2

2 1 0 2 2 4 3

14

59

9

野外採取

確認型 個体数

瀬戸内型 (うちM- 07) 東日本型

(うちM- 40)

東海型

四国型

十 十 十

十 十 十

0

0

0

1

確認型数 1 1 0 1 2 1 1 2 60

生息環境別遺伝子型(公園池) 遺伝子型(ハプロタイプ)

ブロック

採取場所

北摂1 北摂2 北河内 中河内 南河内 泉州1 泉州2

1 0 2 1 2 2 2

10

28

5

6

1

1

野外採取

確認型 個体数

瀬戸内型 (うちM- 07) 東日本型 十

(うちM- 40)

東海型

四国型 十

十 十

24

3 1 0 (H i rai e t al. , 2 0 1 7 から作図)

確認型数 3 0 2 1 1 2 1 5 39


付表.3 メダカの遺伝子型ハプロタイプ一覧表 ハプロタイプ

遺伝子型

個数

採集

ハプロタイプ

遺伝子型

個数

採集

ハプロタイプ

遺伝子型

個数

採集

M- 01

瀬戸内型

3

野外採集

M- 32

瀬戸内型

4

野外採集

M- 62

不明

1

野外採集

M- 02

27

M- 33

1

M- 63

瀬戸内型

1

M- 03

2

M- 34

2

M- 64

1

M- 04

1

M- 35

1

M- 65

北九州型

1

M- 05

1

M- 36

2

M- 66

瀬戸内型

3

M- 06

2

M- 37

1

M- 67

1

M- 07

43

M- 38

東日本型

3

M- 68

1

M- 08

1

M- 39

1

M- 69

2

M- 09

3

M- 40

20

M- 70

1

M- 10

1

M- 40

1

M- 71

1

M- 11

4

野外採集

M- 41

東海型

1

野外採集

M- 72

1

M- 12

1

M- 42

四国型

3

M- 73

1

M- 13

8

M- 43

1

M- 74

1

M- 14

9

M- 44

瀬戸内型

1

M- 75

1

M- 15

2

M- 45

4

M- 76

2

M- 16

4

M- 46

1

M- 77

1

M- 17

1

M- 47

1

M- 78

東日本型

1

M- 18

2

M- 48

東日本型

1

M- 79

1

M- 19

5

M- 49

瀬戸内型

1

M- 80

瀬戸内型

2

M- 20

1

M- 50

キタノメダカ

1

ペットショップ

M- 81

1

M- 21

1

M- 51

1

M- 82

1

M- 22

1

M- 52

1

M- 83

1

M- 23

1

M- 53

瀬戸内型

1

野外採集

M- 84

2

M- 24

1

野外採集

M- 54

5

M- 85

4

M- 25

1

M- 55

1

M- 86

1

M- 26

1

M- 56

4

M- 87

1

M- 27

1

M- 57

1

M- 88

2

M- 28

8

M- 58

1

M- 89

1

M- 29

1

M- 59

東日本型

2

M- 90

1

M- 30

1

野外採集

M- 60

瀬戸内型

1

M- 31

2

M- 61

1

ペットショップ

ペットショップ

ペットショップ

瀬戸内型

ペットショップ

合計

(H i rai e t al. , 2 0 1 7 から作図)

その他

“山陽地方郊外の大型量販店では、商業的に生産された、多様な人工メダカが販売されていた”

25

249


付表4 野外採集メダカの生息環境別ハプロタイプの分布一覧 住 所 生息環境 瀬戸内型 (うちM- 0 7 ) 東日本型 (うちM- 40) 東海型 十 十 千早赤阪村 水田 十 十 高槻市 水路 十 十 高槻市 〃 十 十 四条畷市 〃 十 枚方市 〃 十 十 八尾市 〃 十 十 十 柏原市 〃 十 十 十 十 河内長野市 〃 十 泉大津市 〃 十 和泉市 〃 十 和泉市 〃 十 高石市 〃 十 泉南市 〃 十 泉南市 〃 十 十 池田市 神崎川 河川 十 十 能勢町 野間川 〃 十 豊能町 切畑川 〃 十 十 十 茨木市 安威川 〃 十 十 交野市 天野川 〃 十 十 十 十 寝屋川市 打上川 〃 十 十 枚方市 天野川 〃 十 十 十 十 枚方市 天野川 〃 十 十 十 十 枚方市 天野川 〃 十 十 十 十 枚方市 天野川 〃 十 十 柏原市 恩智川 〃 十 十 和泉市 大津川 〃 十 十 堺市 妙見川 〃 十 十 堺市 和田川 〃 十 堺市 明正川 〃 十 十 泉南市 金熊寺川 〃 十 十 阪南市 男里川 〃 十 十 吹田市 農業用溜池 十 十 吹田市 〃 十 茨木市 〃 十 東大阪市 〃 十 八尾市 〃 十 河内長野市 〃 十 十 富田林市 〃 十 和泉市 〃 十 堺市 〃 十 堺市 〃 十 堺市 〃 十 阪南市 〃 十 阪南市 〃 十 岬町 〃 十 十 十 十 箕面市 公園池 十 十 四条畷市 〃 十 十 守口市 〃 大阪市 〃 十 十 大阪狭山市 〃 十 羽曳野市 〃 十 堺市 〃 十 十 堺市 〃 十 岸和田市 〃 十 岸和田市 〃 合 計 206 43 29 20 1

26

四国型 北九州型

不明

合計 十 十 十 十 十 十 十 十 十 十 十 十 十 十 十 十 十 十

十 十 十 十 十 十 十 十 十 十 十 十 十 十 十 十 十 十

十 十 十 十 十 十 十 十 十

十 十 十 十

十 十 十 十 十 十 十

4 1 1 242 (H i rai e t al. , 2 0 1 7 から作図)


付表5 野外採集ヒメダカの生息環境別ハプロタイプの分布一覧 東日本型ヒメダカ (M40) ブロックM- 4 0 ( 東日本)水田 北摂1 十 北摂2 北河内 十 中河内 南河内 十 泉州1 泉州2 野外採取 20 0

水路

(個体数) 十

ブロックM- 4 0 ( 東日本) 水田 北摂1 十 北摂2 北河内 十 中河内 南河内 十 泉州1 泉州2 野外採取 10 0

8

11

参考: 瀬戸内型ヒメダカ(M07) ブロック M - 0 7 ( 瀬戸内型)水田 十 北摂1 十 北摂2 十 北河内 十 中河内 十 十 南河内 十 泉州1 十 泉州2 野外採取 43 4

東日本型ヒメダカ (M40)

河川 農業用溜池公園池

水路

0

(個体数) 十

ブロック M- 0 7 ( 瀬戸内型)水田 十 北摂1 十 北摂2 十 北河内 十 中河内 十 十 南河内 十 泉州1 十 泉州2 野外採取 23 1

十 十

十 十

十 十

6

19

9

5

付表.6 大阪府2大河川を境界とした大阪3地域における野外採集メダカのハプロタイプ分布状況 (個体数)

採取場所 (場所数) 淀川以北 淀川~大和川間 大和川以南 合計

瀬戸内型 東日本型 東海型 10

14

31

55

206

29

四国型 北九州型

不明

十 十 4

合計 35

十 1

67 140

1

1

242

(H i rai e t al. , 2 0 1 7 から作図)

付表.7 大阪府2大河川を境界とした3地域における野外採集メダカのハプロタイプ分布状況 採集場所 淀川以北 淀川~大和川間 大和川以南 合計 註)累計採集場所数

瀬戸内型東日本型 東海型 四国型 北九州型 不明 十

50

14

十 十

十 1

( 1 ケ 所で東日本・四国混在)

2

1

(場所数) 河川 農業用溜池 公園池

十 十

1

合計

(採集場所数) 重複差引

13

12

20

20

36

36

69

68

(H i rai e t al. , 2 0 1 7 から作図)

メダカの水田も太陽光発電基地に!

27

3

6

参考: 瀬戸内型ヒメダカ(M07)

河川 農業用溜池公園池 十

1

水路

水路

1

(場所数) 河川 農業用溜池 公園池 十

0

十 十

十 十

十 十

4 12 3 3 (H i rai e t al. , 2 0 1 7 から作図)


28


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