科学哲学序説 石川史郎

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第 11 章 言語ルール 2(有界型) ─因果関係

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たちはバカということになる.もちろん,大抵の哲学者は優秀なはずで,彼等が追 究し続けてきたことは, 問題 (B3 ) の (♯2 ) ─ (数学以外の) 形而上学を科学 (=形 而下学) の基盤として導入すること1 ─である.ゼノンは,

(♯1 ) なぜ実験検証できない旅人算 (上の (♯)) を信じて使うのか? (♯2 ) なぜ,(C5 ) を自信を持って発言しないのか? (♯3 ) 問題 (B3 ) の (♯2 ) を追究せよ 等を問うているのに,旅人算 (上の (♯)) を無限等比級数を使って解答しても答えに ならないからである.

因果作用素,前双対因果作用素,決定因果写像

11.2

第 10 章と同様に,状態空間 Ω ─局所コンパクト空間 Ω で,しかも,10.1 節 の条件 (a) を満たす測度空間 (Ω, BΩ , ν) ─を考える.

定義 11.2. [因果作用素,決定因果写像] 2 つの基本構造 [C(Ω1 ); L∞ (Ω1 , ν1 )] と

[C(Ω2 ); L∞ (Ω2 , ν2 )] を考える.連続線形作用素 Φ1,2 : L∞ (Ω2 , ν2 ) → L∞ (Ω1 , ν1 ) が因果作用素であるとは,次の (i)と(ii) を満たすことである:

(i) 任意の f2 (∈ C(Ω2 )) に対して,Φ1,2 f2 ∈ C(Ω1 ) が定まり,しかも,作用 素 Φ1,2 : C(Ω2 ) → C(Ω1 ) は,連続型測定理論の意味 ( 定義 6.2 ) で,因果 作用素である,

(ii) 次を満たす連続線形作用素 [Φ1,2 ]∗ : L1 (Ω1 , ν1 ) → L1 (Ω2 , ν2 ) が存在する: ∫

∫ [Φ1,2 f2 ](ω1 ) · ρ1 (ω1 ) ν1 (dω1 ) = Ω1

f2 (ω2 ) · ([Φ1,2 ]∗ ρ1 ) (ω2 ) ν2 (dω2 ) Ω2

(∀ρ1 ∈ L1 (Ω1 , ν1 ), ∀f2 ∈ L∞ (Ω2 , ν2 )) この [Φ1,2 ]∗ を前双対因果作用素 と呼ぶ.

1

これが,本書のテーマでもあった.


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