科学哲学序説 石川史郎

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10.3. システム量─観測量の原型

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システム量─観測量の原型

古典力学において, 「観測量」という語は,通常は状態空間 Ω 上の実数値連続 関数 (すなわち,物理量) の意味で使われる.観測量は物理量 (測定理論では,シ ステム量と呼ぶ) の一般化である.以下に,このことを説明しよう. 例 10.10. [システム量] 基本代数 L∞ (Ω, ν) を考える.実数値連続関数 fe : Ω → R

( 一般には,実数値可測関数 fe : Ω → Rn でよい) を,Ω 上のシステム量と呼ぶ. 基本代数 L∞ (Ω, ν) 内の射影観測量 O = (R, BR , F ) を次のように定義する:  e−1   1 ω ∈ f (Ξ) のとき [F (Ξ)](ω) = (∀Ξ ∈ BR )   −1 e 0 ω∈ / f (Ξ) のとき ここで, N ∑ 2

fe(ω) = lim

N →∞

n=−N 2

[ ] ∫ ( n n+1 ) n λ[F (dλ)](ω) F [ , ) (ω) = N N N R

であることに注意して,次の同一視:

fe (Ω 上のシステム量)

←→

O = (R, BR , F ) (L∞ (Ω, ν) 内の射影観測量)

(10.2)

を得る.この O をシステム量 fe の観測量表示と呼ぶ.したがって,

(a) 同一視 (10.2) の下で,システム量を射影観測量と見なすことができる.す なわち,観測量は,実数値連続関数 ( すなわち,システム量) fe : Ω → R の一般化で,システム量の拡張概念である. また,同一視 (10.2) の量子力学版は,同一視 (3.2) であることを再確認せよ. 例 10.11. [位置観測量,運動量観測量,エネルギー観測量] 基本代数 L∞ (Ω, ν) 内で,ニュートン力学を考える.簡単のために,2 次元空間を考えて,

Ω = Rq × Rp ={(q, p) = (位置, 運動量) | q, p ∈ R}


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