科学哲学序説 石川史郎

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6.4. 言語ルール 2 —「火の無いところに,煙は立たない」の正式表現

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を得る.したがって,

(b) 初期状態 ω0 は固定されているので,状態は変化しない. と言える.

♠ 注釈 6.5. 量子力学においても,因果作用素列は基本的で,その双対因果作用素列 はシュレーディンガー方程式 (注釈 10.2) から構成される.ただし,量子力学では, 実現因果観測量が存在しない─すなわち,注釈 3.3 で見たように,同時測定が存在 しない─場合が普通である.もちろん,量子力学における典型的な場合─ある時刻 t だけに実質的な観測量 Ot を考えて,それ以外の時刻は存在観測量 O存 だけを考 える (すなわち,何もしない) 場合─には,明らかなことであるが,実現因果観測 量は存在する.ただし,これは自明なことなので,量子力学では,わざわざ「実現 因果観測量」などという言葉は使わない.言語ルール 2 の (i) は基本であるが,(ii) は, 「(i) の使い方の説明」と見なして,コペンハーゲン解釈 (U4 )) (すなわち, 「測 定は一回だけ」) に含まれると考えてもよい.

注意 6.19. [連続・混合型の測定理論] 混合測定理論においても,言語ルール 2 は共通である.したがって,連続・混合型測定理論に対しても. [ 言語ルール 1 (混合型) ]

連続・混合型測定理論 :=

混合測定

(科学言語)

[確率解釈]

[言語ルール 2]

+

因果関係 [ハイゼンベルグ描像]

となる.すなわち,

b T , S[∗] (νt )) により得られる測定値 (xt )t∈T が Ξ(∈ b (c) 混合測定 MC(Ωt0 ) (O 0 ∫ b t∈T Ft ) に属する確率は, Ωt [Fbt0 (Ξ)](ω t0 )νt0 (dωt0 ) である. 0

となる.混合測定においても,初期混合状態 νt0 (∈ M+1 (Ωt0 )) は固定されている ので,状態は変化しない.

6.4.2

時間とは,何か?─ライプニッツの関係説

2.3.3 節で,この世界の空間 R3 を,状態空間の一種であると考えた.すなわち,


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