ShimanoKasuya_portfolio

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PORTFOLIO
SHIMANO KASUYA
2019-2024

Skill

Archicad /2D,3D

Rhinoceros

粕谷しま乃

Profile

1999.11.15

2018.03

2018.04

Award 広島県広島市生まれ

広島県立廿日市高等学校 普通科       卒業

広島工業大学 環境学部 建築デザイン学科  入学

学部3年 〜 前田圭介研究室所属

2022.03

2022.04

広島工業大学 環境学部 建築デザイン学科  卒業

近畿大学大学院システム工学研究科建築コース 入学

意匠研究室 / 前田圭介・土井一秀 研究室 在籍

Illustrator Indesign

Photoshop

2年次設計課題 集合住宅 学内最優秀賞

3年次設計課題 小学校

3年次設計課題 美術館

建築新人戦 2020

学内最優秀賞

学内最優秀賞

100選

第47回 五三会設計競技 12選

Hiroshima Design Days

優秀賞

第48回 五三会設計競技 12選

特別建築デザイン実習1

特別建築デザイン実習2

広島平和祈念卒業設計展

JIA全国卒業設計コンクール

tonica北九州建築展

優秀賞

優秀賞

最優秀賞

選出

クリティーク賞

第9回POLUS 学生建築デザインコンペティション

2022年度 日本建築学会設計競技

広島建築学生チャレンジコンペ2022

2023年度 日本建築学会設計競技

第15回エイブル空間デザインコンペティション

広島建築学生チャレンジコンペ2023

佳作

優秀賞

全国支部入選

入選

優秀賞 優秀賞

2024 修士設計 校友会長賞

2020 2021 2022 2023

1 4

2 5

3 6 7

人が集まる建築のカタチ

修士設計

町の形状が与える住人の空間認識を活かした集合住宅の提案

生活を映す壁

第15回エイブル空間デザインコンペティション

止まり木から溜まり場へ

広島建築学生チャレンジコンペ2023

小さく開き大きく包む

広島建築学生チャレンジコンペ2022

生き続けるセツビ

第9回POLUS学生建築デザインコンペティション

あひるとこどもを包む基礎のカタチ

第6回未来こども園デザインコンペ U30部門

流されない時間を

特別建築デザイン実習 TheBreakingfastCafe

PROJECTS

人が集まる建築のカタチ

町の形状が与える住人の空間認識を活かした集合住宅の提案

賃貸住宅にて隣人の孤独死を経験したことから、 現在の集合住宅の形態に疑問を感じて始まった研究 町と分断されたような空間体験を促す単純な縦導線や、隣人の顔すら 知らない関係性を生み出す過度に重視されたプライバシー インターネットの普及により直接的な人との繋がりが薄れていく中、 今一度「人が集まって生きる建築のカタチ」について考えたい

本研究は、人が集まる場所の2つの調査と、対象地の住人35名に町 の地図を書いてもらう認知地図調査の3つの調査から成り立っている

認知地図調査から導き出された、「町の形状は住人の空間認知に影響 を与えている」という分析のもと、町の形状と住人の意識からくるパ ブリックイメージを建築の設計に応用することで、孤独死と向き合う ための建築のカタチを模索した

土地固有のパブリックイメージを手がかりに、建築にカタチを与えて いくという手法は、現代における多様な価値観が生み出す新たなバナ キュラー的建築と言えるのではないだろうか

1. 修士設計

02

研究背景

私は今年の3月に東京八王子市住宅街のとある賃貸住宅にて、 隣人の孤独死を経験した。

集合住宅でたくさんの人が集まって暮らしているのにも関わらず、

住人の異変に誰も気が付かなかった、東京での生活が始まって2週 間目に起きた衝撃的な体験である。

これは、個人空間を重要視しすぎた建築の形にも、周囲との直接的 な関係性を築かずに生きることが普通になっている現在の町の在り 方にも原因がある。

この経験を経て、

“町を知り、その町の中に適切な人と人との距離感を考えること” の重要性を感じた。

住宅地に 人を繋ぐ場を生む       集合住宅の提案

a.現状の地方の住宅街でも起きる問題

調査対象地である広島県広島市西区古江の町は、伝統的な集落でも、 いかにも都会的な風景でもなく、どこにでもあるありふれた風景の 広がる特徴の少ない町ではあるが、利便性がよく安全な住宅街が人 気でそこにはたくさんの人が生活している。

しかし、この町でも少しずつ少子高齢化が進行しており、小学生の 遊ぶ姿が減少し、心なしか公園で人が遊ぶ姿も減ったように思う。 子供が地元の小中学校を卒業した後、私の両親は地域の中での人と の関わりが大きく減り、家族が隣人や周囲の人と関係性を築くには、 子供の存在が大きいということを身をもって知った。

このままでは、この町で孤独死が身近な問題になる日もそう遠くな いのではないだろうか。

b.集合住宅の可能性

東京での経験や自身の生まれ育った町への不安から、現状孤独死の 問題が多発している集合住宅の在り方そのものを見直し、新しく集 まって生きるカタチを提案するための方法を模索していく。

住宅街の集合住宅は、街と建物の関係性、街と人との関係性、人と 人との関係性を見直す必要のある、孤独死の問題と直結した課題で あり、未だに建築的な解決策が導き出されていない。

公共施設とも戸建て住宅とも異なり、集合住宅は、見知らぬ人とす れ違い、廊下や玄関を共用するひとつの小さな社会を作り出してい る建築でもある。

たくさんの人が集まって生きる集合住宅の形を、町や人との関わり 方を交えながら考えることで、薄れている人と人との直接的な繋が りに影響を与える建築を提案することはできないだろうか。

この研究は"孤独死"というテーマに対し、人が集まる場所をつくるための条件を知る2つの調査と、町や住人を把握するための認知地図調査によって、町に合った集まって生きる形を提示する目的を持っている。

研究 提案 序論

01. はじめに

隣人の孤独死を経験したことによる考え方の変化

02. 住宅地に人を繋ぐ場を生む集合住宅の提案

直接的な人の繋がりが希薄化している現代、孤独死は都会の一部 分だけでの問題ではない。

再び、人が集まって生きることについて考えなければ、地方の小 さな町や自分の故郷、未来の町にさえも、ひとりで誰にも気づか れずに死ぬことが当たり前の光景が広がるだろう。

03. 人と町とカタチの関係性 -設計条件を見つけるための3つの調査-

調査① 人が集まる場所の平面的分析 広島市の人が集まる広場計12カ所を、利用者の位置や周辺建物との距離や高さ、周囲 の道などの平面構成を分析する調査。

調査② 人が集まる場所の利用者に着目した分析 人が集まる場所は、利用者を観察することによって分類分けすることができる。 どのような条件下で人の活動が生まれやすいかを明らかにすることで、計画する集合住 宅の設計条件とする。

調査③ 古江の町の認知地図 町の住人約40名に認知地図を書いてもらい、町の構成や全体像、住人の特徴を炙り出 す。書いてもらった地図を細かく見ていくと、共通点や相違点から、古江の町の形状か ら影響されている古江の町の住人の空間認知の特徴が見えてくる。 共通点からは、町の中で多くの人が認識している場所や、認識しやすい形状がわかり、 計画敷地の選定や集合住宅の形態を決定づける重要な調査となっている。

○ 研究対象となる町 広島県広島市西区古江

04. 人が集まる建築のカタチ -3つの調査から形態へ-

調査1,2からは、7つの共通点と3つの要素が揃うことで、人が集まり賑わい が生まれる場所となると知ることができた。 7つの条件である"広場周囲へ視界が抜けていること、高木が少なく影が少な いこと、雑音が聞こえること、多くの人が利用する施設に隣接していること、 無料で利用できるトイレが近くにあること、座れること"また3つの要素であ る"目的地、待合所、通過点"に関しては、敷地選定や集合住宅に加える機能 を決定する際に活用した。

また、調査3による認知地図調査によって、グリッド状の住宅街が広がる古江 の町では、"町の角に対する意識"が強くなり、"水平方向に広がる景色を記憶 する"傾向があることがわかった。このことから、集合住宅それぞれの住戸に 角を持たせ、住人の特徴が角や隙間に溢れ出るような設計とすることで、住人 同士の生活を記憶、認識しやすい、街と住人の特徴が活かされたプランとなっ ている。また、小さな住戸周囲に巻きつく大きな共用部(スロープ)は、緊急 時に車両が集合住宅の上階まで上がれるだけでなく、現在細かく分割され個人 だけの空間となってしまっているベランダを有効的にし、外観としては水平ラ インが印象的な周辺敷地に馴染みながらも記憶に残る、そんな集合住宅になっ ている。

01.広島市県広島市西区 広島市西区は人口約19万人、面 積約35.61平方キロメートル、区 の中央を太田川放水路が流れ、三 滝山から鈴が峰周辺に連なる山々 に囲まれた自然豊かな地域。

広島市の中では、安佐南区に継ぐ 人口が居住しており、面積と比較 して見ると人口密度の高い居住エ リアであることがわかる。

02.広島市県広島市西区古江

広島市西区古江の町は、人口約10,697人、世 帯数1,306世帯が住んでいる町である。

03.調査対象地

古江の中にも4つの街があり、バイパス以北と以南では環境が大きく異な るため、バイパス以南の古江西町、古江東町、古江新町の3つの町に調査 対象地を絞って調査を行う。

周囲にショッピングセンター、スポーツセンター などが充実している他、広島電鉄やJRの駅が近 いため便利な町である広島市中区の繁華街から は、電車で約30分の距離。

はじめに
○ 研究概要
01
西区 古江 広島 電鉄 新宮 神社 三輪 明神 古田 中学校 古田 公民館 古田 小学校 ファミマ バイパス アバンセ 古江駅 太光寺 JR線 高須台 古江上 古田台 古江西町 古江東町 古江新町 山田町 山田新町 高須 庚午北 庚午中 庚午南 扇 福島町 己斐上 己斐大迫 三滝山 三滝本町 竜王町 新庄町 大宮 三篠北町 三篠町 三滝町 打越町 横川新町 横川町 中広町 小河内町 上天満町 天満町 観音町 西観音町 南観音町 南観音 東観音町 観音本町 観音新町 楠木町 大芝 大芝公園 山手町 己斐東 己斐中 己斐西 己斐本町 己斐峠 田方 井口町 鈴が峰町 草津南 草津港 草津東 草津本町 草津新町 井口台 井口明神 商工センター 井口鈴が台 井口 JR西広島駅 古田中学校 古田小学校 新宮神社 古江駅 銀行 アバンセ 三角公園 古江歯科 ファミリーマート 古田公民館 ちどり公園 商工センター アルパーク マリーナホップ レクト JR横川駅 西区 中区 中区 東区 東区 南区 南区 佐伯区 佐伯区 安佐南区 安佐南区 246,824人 190,522人 144,068人 142,316人 138,334人 119,070人 77,482人 139,606人 安佐北区 安佐北区 安佐区 東広島市 廿日市市 安佐区 安佐区

人と町と カタチの関係性

-設計条件を見つけるための3つの調査-

街と集合住宅

古江の町に新しく人と人を繋ぐ集合住宅を計画するにあたって、町 の中に建つ集合住宅の姿がどうあるべきか考える必要がある。

まず1つ目に、人を繋ぐための場所を計画するため、人の集まる場 所の空間的な特性について知る。

2つ目に、人の集まっている場所の中で生まれる交流を観察調査し、

集合住宅の共用部分や町に接する部分に付加する要素を検討する。

3つ目に、古江の住人に認知地図を書いてもらうアンケート調査を 実施し、町の中の皆が認識している人が出会う場を探すことで、人

と人を繋ぐ場としての集合住宅の敷地と形態を検討する素材を収集 する。

a.人が集まる場所

町の中には、人が自然と集まる場所が存在する。

町の中の人の集まる場所は、目的地の経由地として、電車や人を待 つ目的、仲間と集まるためなど、様々な目的が重なって出来上がっ ているが、人が集まる場所には共通した条件があるのではないか。

人が集まる場所の条件を知り、提案する集合住宅と街との接点はど のような空間であるべきなのか検討する素材を収集する。

b.調査①結果 人の集まる場所の共通点

12カ所の広場の調査によって人が集まる場所の7つの共通点を確 認することができた。

空間の共通点は、広場周囲へ視界が抜けていること、高木が少なく 影が少ないこと、広場周囲が流動性のある道に接していること、雑 音が多く聴こえること、の4点である。

機能面の共通点は、多くの人が利用する施設に近接していること(目 的のついで利用ができる立地)、無料で利用できるトイレが近くに あること、座れること、の3点である。

袋町公園は、流動性のある道に囲まれているが高木に囲まれている

ため視界の抜けがなく、広場の全体像を見渡すことができない。同

じように広島市内に位置する新天地公園や三角公園は、同じように 流動性のある道に面しており、広場周囲を囲むものが高木ではなく 花壇になっているという特徴がある。

また、広場周囲の建物高さは人の集まりにさほど関連性がなく、周 囲の道の流動性、視線の抜け、雑音が入り混じっている場所である ことが、人が集まる場所の条件となっていることがわかった。

さらに、アリスガーデンや広島駅ローソン前広場のように、敷地内 でも地面の素材の扱いによって、人の集まる場所を敷地内に作った り、人の動きを誘導するような仕掛けを作ることができる。このこ とから、公共施設ではない集合住宅の敷地内にも人の交流が生まれ る場所を作ることが可能である。

調査① 人が集まる場所の平面的分析

“人が集まる場所”という言葉には、曖昧さや主観性が含まれている。たまたま自分の見た瞬間に人が集まっていただけで、普段はほとんど人が利用していないという可能性もあり、人が集まる場所のピックアップは、長期にわたる場所の観察が必要であると考える。 そのため今回の調査では、自分が生まれ育ち今も生活している広島県広島市で見られる人が集まる場所をピックアップする。主に自身の活動エリアである広島市中区の繁華街と広島市西区の住宅街から、人のために作られた広場や公園に着目して12カ所ピックアッ プし、①地理的配置、周囲の建物高さ関係、②平面構成、利用状況のプロット、歩行者の流れ、に着目して調査を行う。

広島駅南口ローソン前広場 : JR駅付近

パルコ前広場: 商業施設の前空間

アリスガーデン : 商業施設後方広場

袋町公園 周囲を中高層建物に囲まれた公園

新天地公園 人通りの多い道に面する広場

広島ゲートパーク : イベントのために作られた広場

新幹線、JR、広島電鉄、高速バスなど様々 な交通手段の駅となっている広島駅南口 付近の広場であり、広島駅地下通路入口 前の広場であるため、待ち時間の利用者 が多い印象。学生や、キャリーバッグを 持った方が多く見られる。

1500mm角の柱に纏うように花壇とデッ キが設けられており、大きな柱と花壇に よってひとつのベンチに3組のグループ が座っても程よい距離を保って利用する ことができる。

広島パルコというランドマークによって、 パルコ前の道や建物足元は人の待ち合わ せスポットとなっている。柱や壁に寄り 添うようにしてたくさんの人がスマート フォンを触りながら誰かを待っている。

広島中心部のランドマークとして、原爆 ドーム前よりも待ち合わせ場所として使 われることが多い。

待ち合わせで立っている人も多いが、飲 食店やキャバクラのキャッチが集客のた めに集まっていることの多い場所。

広島パルコ裏側の広場。 近年新しくなった階段広場では、常にた くさんの集団が座って談笑している様子 が見られる。フードトラックが止まって いたり、小さなステージで歌を歌ってい る時があったり、イベントのために作ら れた広場がイベント時以外にも多くの人 に利用されている。パルコからのびる道 からアリスガーデン敷地まで、同一素材 のタイルが使われているため買い物を済 ませた人が自然と流れ込む。

近隣を飲食店や衣料品店に囲まれた広島 市内では平和公園に次ぐ大きな公園。大 きな植栽やビルに囲まれ少し薄暗さがあ るためか、公園利用者が少ない印象。 大きな植栽によって公園全体を見通すこ とができず、入り口も小さいため人の往 来が多い道に面していながらも静かに公 園を利用することができる。座る場所は 多いが、喫煙者や若者の利用が多いため、 平和公園と異なりホームレスや高齢者の 様子は見られなかった。

周囲を飲食店に囲まれた流川の繁華街に 位置する広場。

大きな植栽が少なく花壇の花と煉瓦の色 味が際立つこの広場では、昼間でもたく さんの人がここで談笑したり休んでいる 様子が見られる。流動性の高い周囲の道 と、円形になった花壇に添えられたベン チ、適度な木陰と4面ある出入り口とい う要素があいまって、様々な集団が利用 していた。

旧広島市民球場跡地に近年新しくできた 施設と広場。

大きなイベントが開催されていることが 多く、広い敷地中央はイベントが行われ ていない時はほとんど人は利用していな い。平日のイベントがない時には写真の ように噴水が出ている。中央よりも、店 舗周囲の階段や建物周囲の椅子に腰掛け ている人が多く見られるが、集団よりも 誰かを待っているような個人の利用者が 多い。

コイプレイス

アバンセ: 商業施設の前空間

商工センター公園 商業施設後方広場

ちどり公園 : 周囲を中高層建物に囲まれた公園

三角公園 人通りの多い道に面する広場

コンビニの前 : 駐車場空間

JR西広島駅と、広電西広島駅を繋ぐ位置 につくられた仮設広場。現在再開発中の 西広島駅で、旧駅ビルが解体された後に できた人工芝の小さな広場。

通行の妨げとなっていた旧駅ビルが解体 され、コイプレイスは広場でありながら たくさんの鉄道利用者の通行する道と なっている。子供連れの家族や高齢者、 学生の利用が多く、椅子に座って電車や バスを待っていたり、電車を眺めて子供 と遊んでいる様子が多く見られる。

古江の町では大きなスーパー。 スーパー入口の大きな道に面した場所で 野菜や花を売っており、そこで立ち話を している様子が多く見られる。 また平日はATM前に長蛇の列ができ、 駐輪場付近で買い物のついでに立ち話を している高齢者や主婦の様子が見られる。 近隣スーパーと比較すると、駐車場の位 置とスーパーの入口位置、角地という立 地によって人の立ち話をしやすい溜まり ができているように見られる。

JR線、広島電鉄の通る大きな駅と、ショッ ピングセンターに囲まれた大きな公園。 周囲を木々で囲まれていながらも、公園 への入り口が多く、駅からショッピング センターを繋ぐ高架からも降りることが できるためたくさんの利用者が見られる。 見通しがよく、遊具も充実しているため 家族づれや犬の散歩、学生の動画撮影や 1人で休憩する人など多様な人が安心し て利用できる公園。

古田公民館、児童館、古田小学校が近く にある公園。

JRの線路に面した場所に位置し、公園周 囲を回遊できる道がないことから、子供 の施設が周囲にたくさんありながらも利 用者が比較的少ない。

また、公園周囲が高木で囲まれているた め公園の端は暗い空間が多い。近隣は閑 静な住宅郡とアパートの駐車場、道が続 いていないことからこの公園の存在を知 らない地域住民も多い。

大部分が道に面している公園。 公園周囲に植栽が植えられているが、大 きな木はなく地域の住民によって手入れ された花壇が公園を囲んでいる。道から の視界の抜けが良く、子どもクリニック や薬局、飲食店に囲まれ、車通りの多い 道に面していながらも多くの子ども連れ、 カップル、学生、高齢者が利用している。 この公園で遊ぶ子供のために目の前の飲 食店に掛け時計がかけられていたりと、 周囲に見守られる場所となっている。

セブンイレブンとローソンが国道2号線 を挟んで向かい合っている場所。 車の休憩スポットとなっている駐車場が 大きくとられたコンビニだが、セブンイ レブン前の看板の基礎に腰掛けて食べ物 を食べている地域の人をよく見かける。 看板の基礎や車止めに寄りかかって立ち 話をしたり、食べ物を食べたり、この場 所に限らずコンビニ前空間は、ゴミ箱と 喫煙所の設置の有無によって人が溜まる 場所になっていることが多い。

: JR駅付近 ○ 広島市中区 ○ 広島市西区
03
広島駅 JR西広島駅 wc wc wc wc wc wc 看板の土台 車止め 喫煙所 カフェ ATM 市場 商工センター入口 109シネマ アルパーク 飲食店 広電西広島駅 広電古江駅 広電古江駅 広電古江駅 古田小学校 古田保育園 古田公民館 ウォンツ セブンイレブン ローソン ウォンツ アバンセ アバンセ ファミリーマート バス停/電停 蔦屋家電 ビックカメラ 30m以上 20-30m 10-20m 5-10m 5m以下 利用者 2023/10/24/17:30 2023/10/24/15:45 2023/10/24/15:30 2023/10/24/15:30 2023/10/24/15:30 2023/10/24/15:30 2023/10/24/17:05 2023/10/24/16:00 2023/10/24/16:20 2023/10/24/16:50 2023/10/24/16:30 2023/10/24/15:30 通行 福屋 エキニシ 高速バス乗場 紙屋町東 紙屋町東 紙屋町東 紙屋町東 平和記念公園 本通商店街 サンモール 原爆ドーム 中央図書館 ファミリープール ひろしま美術館 そごう 紙屋町東 本通り商店街 本通り商店街 本通り商店街 本通り商店街 八丁堀 八丁堀 八丁堀 八丁堀 パルコ パルコ パルコ パルコ アリスガーデン 衣料品店 飲食店 飲食店 繁華街 流川町 飲食店 飲食店 袋町小学校 駐輪場 ドンキホーテ 立町 立町 立町 立町

調査①から、人が集まる場所の共通点を知ることができたが、12 カ所の広場の中でも人の交流が生まれている広場と、そうでない広 場があるという点が気になった。

この12カ所を平面的な分析だけでなく、広場利用者に着目してさ らに見ていくことで、人で賑わう場所の条件が見えてくるのではな いだろうか。イベントなどの求心力がなくとも、人がその場所に居 座りたくなる条件を見つけるため、イベントが行われていない平日 の昼間に調査を行った。

d. 調査②結果

人の集まる場所をつくるための条件

人が集まる場所の利用者に着目した研究によって、人が集まり交流 が生まれている場所には「目的地」「待合所」「通過点」という3つ の利用方法があることがわかった。

この3つの利用がなされている広場は、その他の広場よりも人の交 流が生まれ、視覚的に賑わっているように見える。

例えば、広島駅南口ローソン前広場は夕方に多くの利用者がベンチ に座っている光景が見られるが、多くの利用者が「待合所」「通過点」 として電車やバスや友人を待つ場所として利用するため滞在時間が 短く、即時的な人の集まりができているに過ぎない。

また、ちどり公園や三角公園のような駅が遠くにある小規模な公園 は、遊んだり休むための「目的地」や「通過点」にはなるが公園周 辺で生活している人以外の利用者は少なく、限定的な利用となる。

また、パルコ前広場やアバンセの前など、目的地となる場所に付随 した広場は単なる目的のついでの場にしかなっておらず、そこでの 新しいアクションや交流は見られなかった。

しかし、「目的地」「待合所」「通過点」という3つの要素の揃った 新天地公園では、飲食店が開店するのを待つ集団、友人を待つ人、 花壇のベンチで寝る人、公園を通行する人、大人数でお酒を飲みな がら楽しむ人、様々な目的を持った人が1つの場所に集まることで、 場所の賑わいが生まれていた。高い建物に囲まれた飲食店街に存在 する異色な公園だが、公園周囲のスロープや四方のどこからでも入 ることができ、どこに座ってもおかしくない椅子の配置と視界の抜 けの良さが、さまざまな活動を誘発している。

同じように西広島のコイプレイスも、花壇のふちに腰掛けて信号を 待つ人がいれば、人工芝の広場部分にてハンモックでくつろぐ人、 シャボン玉で遊ぶ家族がいたり、コーヒーを飲みながら電車を待つ 人、学生たちの道となっていたり、土曜日の昼間に、あまり広くな い広場にも関わらず30人近くの利用者がいた。

多様な目的が交差している場所では、人の交流や賑わいが多く見ら れることがこの調査から知ることができた。

このように、「目的地」「待合所」「通過点」という3つの利用が見 られる広場は、多くの人に認識される場所に存在し、様々な目的を もった利用者が見込めるため、多様なアクションが起こりやすい。

この3つの要素が揃う立地と、7つの人が集まる場所の共通点を兼 ね備えることとで、人で賑わう場所を住宅街にもつくることができ る。

「目的地」「待合所」「通過点」という3つの要素を立体的に集合住 宅と絡めることで、集合住宅と町との接し方として新しい形状を生 み出すことができるのではないだろうか。

調査①で挙げた12カ所の利用者に着目したところ、人の交流が生まれているように見える場所と、そうでない場所があることがわかった。そこで、利用者の滞在時間に着目して分析を行った。滞在時間が30分以上の場合「目的地」、5~30分間の場合「待合所」、 5分以下の場合「通過点」として広場を利用しているとみなして分析を行ったところ、12カ所の広場のうち5カ所の広場がこの3種類の利用者が存在する立地、平面構成をしていることがわかった。この「目的地」「待合所」「通過点」という3つの要素がある広 場はその他と違ってどのような特性を持っているか分析し、設計条件を抽出していきたい。

広島駅南口ローソン前広場 コイプレイス コイプレイス

電車や信号を待つ人、電車の乗り継ぎのために通行する人、芝生広場で家族で遊ぶ人、カフェを利用 する人が混在し、滞在時間や目的の異なる人が混在している。

また、コイプレイスを囲むように流動性の高い道が巡り、コイプレイス自体が人の通行を促すような 形になっていることで様々な目的を持った人が交差する場所になっている。

カフェ利用者

ウッドデッキに座って電車を待つ人

広電西広島駅

車道

信号が変わるのを花壇に座って待つ人

芝生でシャボン玉で遊ぶ家族 ハンモックでリラックスする人

JR西広島駅

JRと広電の乗り継ぎのために通る道

タイルの素材が周辺の道と同じものが使われていることによって、視覚的に通行しやすく人の動きの 妨げにならないデザインとなっていることに加え、人がたまりやすい段差が各所に計画されているこ とから人の溜まりができやすい広場となっている。

円形にめぐらされた花壇に人が腰掛け、それぞれの場所で飲酒したりタバコを吸ったり寝ていたりと、 様々な活動を許容する場所。更に、周囲にスロープや階段が巡っていることから誰でも入りやすく視 線の抜けが良い広場となっている。

ウッドデッキ トイレ パルコ パルコ

駐輪場

調査② 人の集まる場所の利用者に着目した分析  c. 人の交流が生まれる場所
アリスガーデン アリスガーデン 商工センター公園 パルコ前広場 アバンセ 新天地公園 新天地公園 三角公園 袋町公園 ちどり公園 広島ゲートパーク コンビニの前 広電線路
人口芝広場 交差点 トイレ トイレ
飲食店街
○ 広島市中区 ○ 広島市西区

e.町と人の特徴を知る

"町の住人に古江の地図を書いてもらう"という調査方法を 用いて、古江の町の中で歩行者が共通でよく利用し、認知 している道や場所を明らかにする。この調査によって、イ ンターネットでは得ることのできない人々の生活に根付い た古江の町を知ることができる。

この認知マップ調査から、人の集う場所をつくるにふさわ しい計画地を探していく。

また、計画敷地を決定する根拠だけでなく、住人に描いて

もらった地図を分析することで、町の形状と住人の認知の 相互関係についても知ることはできないだろうか。

そこから、町の形状が住人の認知に与える影響、カタチと 認識の関係性に着目し、提案する集合住宅の形態を決定づ けるテーマを見つけることがこの調査の目的である。

f. 認知地図 自由描写法

「建築・都市計画のための調査・分析方法」で紹介されてい る"認知マップ調査"と呼ばれる調査方法を用い、都市空間 のイメージの把握を行う。その中でも、自由描写法を用い て調査を行なっていく。

認知マップ調査の自由描写法とは、被験者に体験した空間 を白紙の紙に自由に描写してもらう方法である。これは、 スケッチマップと呼ばれる実験方法であり、古くから都市 の地域のイメージを把握するために用いられている。

g. 調査のルール

今回認知マップ調査を行うにあたり、より正確に古江の町 のイメージを把握するためのルールを設定し調査に取りか かった。

①調査範囲:

古江西町、古江東町、古江新町の3つの町で出会ったそれ ぞれの町約10名ずつ計35名の資料を収集する。居住地が 古江の町でなくても町のイメージの把握には支障がないた め、それぞれの町で出会った被験者に調査を行う。

②被験者:

被験者の年齢、職業、散歩コース、居住地などの属性調査 も共に行う。

被験者は、それぞれ3つの町で職業や年齢、男女比にばら つきが出るよう選ぶ。

③調査方法:

白紙のA3用紙に、町で出会った被験者に自由に古江の町 の配置図を描写してもらう。白紙ではなく距離のわかるグ リットの入った紙に描写してもらうことで、認知マップの 正確さが増し、被験者同士の描写の差異がなくなるという 方法もあるが、この研究は各々の認識している町の形と範 囲を知るために行うため、白紙に記入する方法でも問題が ないと考える。

また、調査の差異が出にくいよう、地図を書いてもらう時 間を15分以内と定め、その間にスマートフォンを見ずに地 図を書いてもらうこととした。

調査③ 古江の町の認知地図

調査対象範囲:古江西町、古江東町、古江新町

住宅地で目立つ大きなマンションが印象に残っていることがわかる認知地図 子供のための施設の記載が多い印象

○ 年齢     : 51歳

○ 性別     : 女

○ 職業     : 福祉施設職員

○ 出会った場所 : 駐車場

○ 居住地    : 古江新町線路沿いの一軒家

○ 外出の目的  : 仕事帰り

○ 備考     : 30年近く古江の町に住んでおり、3人の子供を育てたり パートをしたりしている。

○ 年齢     : 22歳

○ 性別     : 男

○ 職業     : フリーター

○ 出会った場所 : 線路沿い

○ 居住地    : 古江新町線路沿いの一軒家

古江駅や電停、線路の印象が強く表れている地図

○ 外出の目的  : 帰省

○ 備考     :

20年古江に住んでいたが、現在は東京で生活しており、 帰省のために帰ってきていた。

○ 年齢     : 24歳

古江駅から描き始め、自宅まで書くことができなかった 横に長く伸びる線路沿いの風景と、町の角地への認識が強く出ている地図

○ 性別     : 女

○ 職業     : 大学院生

○ 出会った場所 : ウォンツ

○ 居住地    : 古江新町線路沿いの一軒家

○ 外出の目的  : 買い物

○ 備考     : 20年以上古江に居住している。

研究者本人。

自宅から描き始め、線路沿いの畑や緑の景色、長い線路沿いの道が印象的な認知地図 道や街区よりも、建物の配置や大きさが町の印象となっていることがわかる

○ 年齢     : 52歳

○ 性別     : 男

○ 職業     : 児童養護施設職員 ○ 出会った場所 : 駐車場

○ 居住地    : 古江新町線路沿いの一軒家

○ 外出の目的  : 仕事帰り

○ 備考     : 自宅と会社との行き来には自家用車を用いているが、駐 車場は自宅から離れているためよく徒歩で街を歩く。

地図の中の配置に記入ミスが見られる。このことから、グリッド状の町の形状による 道や町に対する印象が薄く、角の印象的な建物をニッb式していることがわかる

○ 年齢     : 24歳

○ 性別     : 女

○ 職業     : 看護師 ○ 出会った場所 : 公園

○ 居住地    : 公園の前のマンション

○ 外出の目的  : 散歩

○ 備考     : 24年間古江に住んでおり、アルバイトも学校も全てこの 町で行ってきた。

○ 年齢     : 24歳

グリット状の町の形状と、線路沿いの緑の風景が印象強い認知地図 町の象徴となる施設と名称が記入されている

○ 性別     : 男

○ 職業     : 大学院生 ○ 出会った場所 : 広電古江駅 ○ 居住地    : 五日市 ○ 外出の目的  : 友人に会いに

○ 備考     : 五日市に居住している大学生で、友人との待ち合わせに 古江駅付近によく訪れる。

古江駅から描き始め、A3用紙サイズでは足りなかったためこの範囲までの地図で断念 駅付近はよく通行するため建物だけでなく、車や自転車、ゴミの位置までも把握している

○ 年齢     : 16歳

○ 性別     : 女

○ 職業     : 高校生 ○ 出会った場所 : 広電古江駅 ○ 居住地    : 古江新町線路沿いの一軒家

○ 外出の目的  : 部活帰り

○ 備考     : 学校の登下校や部活動に古江駅を使うため、週に10回 は訪れている。

古江駅を中心に、街区の角に位置する建物や公園を記憶している印象が強い地図

○ 年齢     : 24歳

○ 性別     : 女

○ 職業     : 歯科衛生士 ○ 出会った場所 : 広電古江駅

○ 居住地    : 高須

○ 外出の目的  : 仕事 ○ 備考     : 居住地は高須だが、古江駅前の歯科に仕事をしにきてい る。自転車移動。

10m 500m

○ 年齢     : 9歳

○ 性別     : 女

○ 職業     : 小学生

道の形状、地図の正確性はないが、角地の印象的な景色から町の中 の位置関係を把握していることがわかる地図

○ 出会った場所 : アパートの駐輪場

○ 居住地    : 古江新町線路沿いのアパート

○ 外出の目的  : 公園に遊びにいく途中

○ 備考     : 日中は親がいないため、遠くの大きな公園に年長の妹を 連れて自転車でお人形遊びをしに行っている。

古江駅踏切から縦に伸びるバイパスにん抜ける大通りが印象 的で、町の角や道に面する建物の景色を認識している

○ 年齢     : 16歳

○ 性別     : 男

○ 職業     : 高校生

○ 出会った場所 : 古江駅

○ 居住地    : 古江西町の一軒家

○ 外出の目的  : 部活帰り

○ 備考     : 生まれてから古江の町で16年間過ごしている。

サッカーをしている。

○ 年齢     : 24歳

古江新町からバイパスに抜ける2本の大通りと、線路が印象的な地図 道や町の形状関係なく、自身の利用したことのある施設を認識している

○ 性別     : 女

○ 職業     : 管理栄養士

○ 出会った場所 : 古江駅

○ 居住地    : 古江西町の一軒家

○ 外出の目的  : 仕事帰り

○ 備考     : 生まれてから24年間古江で生活している。

○ 年齢     : 6歳

線路から描き始め、線路の前の畑と草が生い茂っている様子が印象的な認 知地図。自宅と駐車場と線路の絵。

○ 性別     : 女

○ 職業     : 幼稚園年長 ○ 出会った場所 : アパートの駐輪場 ○ 居住地    : 古江新町線路沿いのアパート ○ 外出の目的  : 公園に遊びにいく途中

○ 備考     : 足元の植物や、駐車場の数字など、小さなものが町の中 の印象になっている。

古江の全体像を把握しているが、特に新町の施設の記入が多い

○ 年齢     : 54歳

○ 性別     : 女

○ 職業     : 主婦

○ 出会った場所 : ウォンツ

○ 居住地    : アバンセ付近の一軒家

○ 外出の目的  : 買い物

○ 備考     : 古江新町の大きなマンションに住んでいたが、数年前に 家を購入し、同じく古江新町に住んでいる。

シンプルな地図ではあるが、施設の記入以外に大きな道に面しているマン ションの記入があり、角地に面する大きな建築物の印象が強いことがわかる

○ 年齢     : 49歳

○ 性別     : 女

○ 職業     : 主婦 ○ 出会った場所 : 公民館前 ○ 居住地    : 古江西町の一軒家 ○ 外出の目的  : 買い物 ○ 備考     : 買い物は庚午のフジグランまで車で行く。

道に対して角度が異なる建物は、道に対する印象の変化を与えていることがわかる 自身の印象に残っている施設を一本の道で繋いだ地図

○ 年齢     : 56歳

○ 性別     : 男

○ 職業     : サラリーマン ○ 出会った場所 : ファミリーマート前

○ 居住地    : 古江東町

○ 外出の目的  : 仕事

○ 備考     :

○ 年齢     : 24歳

○ 性別     : 女

○ 職業     : 小学校教師 ○ 出会った場所 : 広電古江駅

○ 居住地    : 古江西町の一軒家

○ 外出の目的  : 仕事

○ 備考     : 24年間古江の町で暮らしている。

○ 年齢     : 22歳

○ 性別     : 女

○ 職業     : 主婦

○ 出会った場所 : 古田小学校前の道

自身の住んでいる周辺環境ではなく、古江駅を中心とした地図

○ 年齢     : 54歳 ○ 性別     : 女 ○ 職業     : 車屋さん ○ 出会った場所 : 広電古江駅 ○ 居住地    : 古江西町のアパート ○ 外出の目的  : 仕事 ○ 備考     : 古江新町の一軒家に住んでいたが、古江西町のアパート に引っ越しをした。

街を広い範囲で把握しており、自身の利用したことのある場所を記憶している 自宅周辺の狭い範囲を正確に認識している 古江新町居住者と異なり、駅や線路の地図記号の記載がない

○ 居住地    : 古江西町のマンション

○ 外出の目的  : 散歩

○ 備考     :

2人の息子と娘の母。

○ 年齢     : 28歳

○ 性別     : 男

○ 職業     : サラリーマン

○ 出会った場所 : 古田小学校前の道

○ 居住地    : 古江西町のマンション

○ 外出の目的  : 散歩

○ 備考     :

三人兄妹の長男。

○ 年齢     : 48歳

古江の全体像を把握しており、主に学校施設に関連する書き込みが多い

○ 性別     : 男

○ 職業     : サラリーマン

○ 出会った場所 : 郵便局前

○ 居住地    : 古江西町のマンション

○ 外出の目的  : 買い物

○ 備考     :

高校生と大学生の子供がいる。

通勤は電車。

○ 年齢     : 24歳

○ 性別     : 女

○ 職業     : 振袖屋さん

○ 出会った場所 : 踏切付近

○ 居住地    : 古江新町線路沿いの一軒家

○ 外出の目的  : 仕事帰り

○ 備考     :

古江新町と西町の境界となっている線路付近に10 年間 住んでいた。

古江駅南側の印象が強い地図 街区の角地の建物や施設が印象的

○ 年齢     : 25歳

○ 性別     : 男

○ 職業     : 大学院生

○ 出会った場所 : バイパス沿い

○ 居住地    : バイパス沿いのマンション

○ 外出の目的  : 散歩

○ 備考     :

バイパスを中心に町全体を広く認識している 施設名や建物よりも道の形状や配置を認知している

現在は東京で一人暮らしをしているため、古江に住んで いた期間は約18年間。

地図の正確さは薄いが、子供を中心とした施設と駅前の印象が残る地図

○ 年齢     : 41歳

○ 性別     : 女

○ 職業     : 主婦

○ 出会った場所 : JR踏切

○ 居住地    : 高須

○ 外出の目的  : 友人に会いに

○ 備考     :

古江に住んでいたが、引っ越しをして今は高須に住んで いる

○ 年齢     : 15歳

古田小学校から描き始め、それぞれの街区の象徴となる施設が記載してあ る。道の正確さにこだわって書いてくれた地図。

○ 性別     : 女

○ 職業     : 高校1年生 ○ 出会った場所 : 踏切

○ 居住地    : 古江新町のマンション

○ 外出の目的  : 友達と立ち話 ○ 備考     : ノートルダム清心高校に通っていて、友達と別れる踏切 でよく立ち話をしている。

○ 年齢     : 22歳

○ 性別     : 女

○ 職業     : 大学生

○ 出会った場所 : バイパス沿い

利用する施設、印象的な建物と道だけが記載されている

○ 居住地    : バイパス沿いのマンション

○ 外出の目的  : 買い物の帰り

○ 備考     :

4人家族で22年間バイパス付近の大きいマンションに住 んでいる。

○ 年齢     : 48歳

○ 性別     : 女

○ 職業     : 建築関係

○ 出会った場所 :

○ 居住地    : 名古屋市

○ 外出の目的  :

○ 備考     :

10年近く前に古江西町に住んでいたため、スケッチマッ プ調査に協力してもらった。

自身の住んでいる周辺環境ではなく、古江駅を中心に利用したことのある施設を記載した地図

○ 年齢     : 24歳

○ 性別     : 女

○ 職業     : 主婦

○ 出会った場所 : 公園付近

○ 居住地    : 古江西町のアパート

○ 外出の目的  : 犬の散歩

○ 備考     : 年長の子供と、小さな犬、母親と古江の町で生まれてか らずっと暮らしている。

バイパス北側の三輪明神から、南側庚午のウォンツまで位置をほぼ正確に認識している

○ 年齢     : 55歳

○ 性別     : 女

○ 職業     : 主婦

○ 出会った場所 : バイパス沿い

○ 居住地    : バイパス沿いのマンション

○ 外出の目的  : 買い物の帰り

○ 備考     : 4人家族で22年間バイパス付近の大きいマンションに住 んでいる。

道の形状や、主要道路の形状が比較的正確に捉えられている地図 道に面して角度の異なる建物の記載がある

○ 年齢     : 26歳 ○ 性別     : 男 ○ 職業     : サラリーマン ○ 出会った場所 : 古田小学校付近 ○ 居住地    : 西区の一軒家 ○ 外出の目的  : 散歩 ○ 備考     :

バイパス北側の三輪明神から、南側庚午のウォンツまで位置をほぼ正確に認識している 街区角地の施設を印象的に記憶している地図

○ 年齢     : 24歳 ○ 性別     : 女 ○ 職業     : スポーツトレーナー ○ 出会った場所 : バイパス沿い

○ 居住地    : バイパス沿いのマンション

○ 外出の目的  : 買い物の帰り ○ 備考     : 4人家族で22年間バイパス付近の大きいマンションに住 んでいる。

線路と古江駅周辺が印象深い地図 配置の正確さはないが、道に対する建物の形状の印象が 強く表れている認知地図 記入の少ない地図でも一目でどの部分かわかり、町の特徴を捉えているとも言える地図

○ 年齢     : 50歳

○ 性別     : 女

○ 職業     : 主婦

○ 出会った場所 : ファミリーマート

○ 居住地    : 新宮神社近くのマンション

○ 外出の目的  : 買い物

○ 備考     :

息子2人と娘がいる。

○ 年齢     : 56歳

○ 性別     : 男 ○ 職業     : サラリーマン ○ 出会った場所 : 新宮神社付近

○ 居住地    : バイパス沿いのマンション ○ 外出の目的  : 仕事の帰り ○ 備考     : 息子二人と娘がいる。

h. 調査③の分析結果

この認知地図調査を通して、 生まれた町の形状が、住人の 景色や町の認識の仕方に大きな影響を与えているのではな いかと考えるに至った。

グリット状の街区構成と、同じような建物の配置と景色が 広がる住宅街である古江の町では、町の中で行動する際に 街角の建物や景色を目印にしている場合が多いのではない だろうか。

例えば、右図の"街角の認識"で紹介している1枚目の地図 は、道の形状や街区の数、道の本数などの不正確さはある が、街区の角に位置する"ギャラリー、ファミリーマート、 駐車場、皮膚科、カフェ、クリーニング屋"などの誰でも 利用することのできる施設をはじめ、"大きなマンション" や"紫陽花の庭"といった一見利用したことがないのに記憶 に残っている施設や景色の記載がある。またその下の小学 3年生の女の子が書いた地図も同様に、街角の"大きなマン ション"や"森っぽいところ"という利用したことのある施 設ではなく、町の角に位置する印象的な景色が記載されて いる。

平行垂直で構成された道で、自宅への帰り方やスーパーへ の道を無意識に覚えていく際に、このマンションの角を曲 がると家だ、この庭が見える道を行くとたどり着く、とい うように角の施設や景色の違いによって道を認識している ということではないだろうか。

このように、認知地図を細かく分析していくことによって、 "町の形状"という環境が、住人の町の記憶の仕方や認識の 仕方に影響を与えていることがわかった。

また、「古江の町を10分間で何も見ず、どこから描きはじ めてもどこまで描いても良いのでかけるところまで書いて ください」という合図で地図を書いてもらったが、皆が共 通して比較的詳細に書き記したのが"古江駅を南北に横断 する道沿いの風景"であった。

駅から南北に伸び、直線で幅の広い道は、住宅の広がる一 見どこにいるのかわからなくなるような景色の中で、唯一 町の角の印象を記憶せずとも場所を認識することのできる 道である。古江の町の中で、広島電鉄とJR線を横断し、バ イパスに繋がる大きな道は2本あり、片方が古江駅とアバ ンセ、ファミリーマート沿いの道、もう片方は古田小学校 に続く登下校の道である。

ほとんどの地図にこの2本の道が記載されており、線路を 横断する広い2本の道と、道から見える水平に広がる町の 景色は、住宅街の中で皆の目印として大きな印象に残って いることがわかる。

3つの町の住民35名に認知地図を書いてもらうことによっ

て、それぞれの町の住人の町の見方や歩き方、認識には少 しずつ異なる点や共通点があることがわかった。相違点や 共通点などの小さな点だけでなく、町の形状と認識の関係 についても新たな視点を持つことができた。

グリット状の町の形状という環境で生きる古江の町の住民 は、" 角に対する認識が強く "、" 広く直線的で視界の抜け る道から水平に伸びた景色を記憶する "という傾向がある ことが強く感じられる。

以上のことから、集合住宅の計画の中に、"町の形状からく る空間認識の特徴"を計画的に組み込むことで、孤独死と いう問題に向き合うための動線や住戸配置について新たな 建築的な解決方法を見つけ出すことができると考える。

○ 古江新町

調査した3 つの町の中で最も範囲の狭い古江新町のマップは、自宅よりも線路や古江 駅を中心に描かれた地図が多く、線路沿いの横に伸びる景色が印象的である。

線路以北の記載が少ないことが特徴的で、線路を中心とした狭い範囲の細かな描写が 多く、グリッド状の街区や道の形状が見えてくる。

○ こどもの地図と大人の地図

施設名を記載する大人に対し、高校生以下のこどもは道の形状や施設名よりも景色を 印象的に捉えた地図が多く見られた。

また、見えている景色を印象として地図に記載したのは、古江新町の住人であること がほとんどであった。

○ 古江西町

古江新町とは異なり線路以北がほとんどの地図に記載されており、古江駅や線路以外 に古田小学校や中学校、公民館など西町の中心に位置する教育施設の記載がよく見ら れる。新町の地図よりも記載する範囲は広がったが、新町側のアバンセや公園が記載 されていることから、線路南側も活動範囲としている人が多いことがわかる。

○ 街角の認識

施設名だけでなく、詳細に記載されているものを見ると、街区の角に位置する建物を 印象的に認識している地図が多いことがわかる。 施設だけでなく大きなマンションなども町の角地に位置する建物を印象的に記憶して いることが多いことがわかる。

○ 古江東町

3つの町の中で最も古江駅から遠く範囲が広い町だが、古江駅や線路を中心に、バイ パス以北も記載されており、街を大きな範囲で把握している物が多い。ほとんどの地 図にバイパスの記載があり、バイパス以北の記載がほとんどない反面古江駅付近の記 載は詳細にあることから、駅付近が共通して活動の拠点となっていることがわかる。

○ 3つの町の共通点

収集した35枚の地図のうち30枚の地図に古江駅とファミリーマートが記載されてお り、古江駅から南北に伸びる道が最も正確に記載されていた。 このことから、3つの範囲の広い町の中でも皆が共通して認識し、利用している施設 と道があることがわかった。

人が集まる建築のカタチ

-3つの調査から形態へ-

人と集合住宅

3つの調査から、町と人、どちらのスケールにも合う集合住宅のカ タチを模索していく。

a.計画敷地

調査③から、右図の通り、認知地図に最も多く詳細に記載されてい た"古江駅を南北に横断する大通り"に面する敷地を選定する。

認知地図調査において、35人中30人の方が古江駅とファミリー マートを記載しており、3つの町で共通してバイパスに抜ける大通 りを記載している場合が多かった。グリッド状に広がる住宅街の中 で、水平に広がる景色が際立つ大通りに面した敷地は、様々な視線 や動きを誘導する場所である。

また、調査①②から得た人が集まる場所の共通点や要素等の面で見 ても、ファミリーマートや古江駅など目的地となる場所が周囲にあ る他、流動性が高く視界の抜けるこの敷地は、人が集まり賑わうポ テンシャルがある町の中心とも言える場所であることがわかる。

b.集合住宅のカタチ

調査③から町の形状と同様、計画する集合住宅も、角や隙間に生活 が溢れるようなプランニングにすることで、住人同士の存在が、意 識や記憶に残りやすいと考えた。

自宅へのアクセスを単純最短縦導線のエレベーターだけでなく、幅 広スロープによる歩行を促すアクセス方法を加えることによって、

古江の住宅街で自宅にアクセスする際に角を意識しながら行動する 空間体験と類似の空間を集合住宅内に計画する。またそれに併せて 密集する住戸の隙間に生活が溢れ出るようプランニングすること で、より住人の特性に合った(古江の町らしい)集合住宅を計画し ている。

角や隙間の景色を認識して目的地に辿り着く傾向のある古江の住人 の特性を活かすことで、孤独死を防ぐことができるような他人への 意識/目が育まれる、集合住宅のカタチ。

更に、計画地は町の中でも人の視線が抜ける大通りに面し、町を横 断する線路と並行に位置している。調査③において、視線が抜ける 大通りの記載と、線路沿いの水平な景色、ファミリーマートの記載 がほとんどの地図で確認できたことから、大通りの視界の抜けを遮 らず馴染みながらも人の意識に記憶されるカタチであることが重要 である。

そこで、住人のアクセス方法を歩行へ促す/緊急時に車両アクセス が可能な幅広スロープを住棟に巻き付けるように巡らせることで、 水平ラインが強調された形態となっている。また、3層にずれて上 階にいくに従って小さくなるスロープは、集合住宅を遠くから見る と印象的に、近くから見ると目立たない馴染んだ存在とし、人の目 線や町の形状に併せた集合住宅のカタチとなっている。

大きなボリュームに見える集合住宅だが、地上階の住戸の隙間から ちらちらと中庭や生活が垣間見えるプランになっている、水平ライ ンを強調し街並みに調和する大きなデザインと、角を認識する住人 の特性を活かした配置計画/ 平面計画によって、"古江の町"なら ではの孤独死と向き合う集合住宅のカタチを検討した。

古江駅 郵便局
計画地
古江歯科 ファミリーマート 古田公民館
04
交差点からの景色 水平ラインが強調されているが上に向かって小さくなるスロープによって道への圧迫感が少ない 地下駐車場へのスロープが角に位置するため、建物の高低差や住戸の様子がファサードとなっている

住宅内部が溢れる共用通路 住戸同士の隙間に行き止まりの共用通路を設けることで、住人の生活が垣間見える

見えるけど行けない住戸の位置関係

中庭から1Fのテラスが見える、スロープから住人の遊ぶ様子が見えても入り組んだ形態によって行けないことで住人同士の適度な距離感を保つ

階段の隙間から個人ベランダが見えることで個人の生活が垣間見える
配置図 S=1/300 N 34,300 33,700 35,500 26,600
軒高 2FL 3FL 3FL 2FL 1FL B1FL 最高高さ GL+11,030 GL 9,800 3,050 5,900 3,950 4,200 4,200 7,170 600 5,000 6,100 13,200 4,900 30,450 3,000 4,100 1,450 3,000 3,600 12,350 4,300 3,000 3,750 300 3,140 3,040 15,480 3,200 3,750 1,200 2,550 1,900 850 450 1,000 2,550 350 1,500 1,200 1,900 600 850 1,300 100 300 2,600 900 350 250 100 A-A'断面図 S=1/50
最高高さ 軒高 3FL 2FL GL B1FL 1,350 14,060 200 28.5 1 200 3,900 16,900 32,300 14,400 1,000 21,980 5,400 3,790 9,330 12,800 2,600 2,550 3,080 450 200 2,550 3,200 8,230 9,580 9,800 2,900 3,850 3,050 6 1 9.3 1 B-B'断面図 S=1/50

幅の狭い共用通路に生活が溢れる

見えるけど行けない個人ベランダ

住戸間の隙間から生活の断片や中庭が垣間見える

交差点

地下に光を届ける形状

地下銭湯への入口

高低差と緩やかなカーブが生み出す居場所

緩やかに湾曲したスロープやテラスによって、高低差のある一繋がりの共用部にできる個人の領域が緩く干渉し合う

±0 +400 住戸1 銭湯 住戸2 住戸3 住戸4 住戸5 住戸6 地下駐車場 EV
B1F(GL-3000)平面図 S=1/100 N 0 1 2 3 4 5 A B A' B'

集合住宅の内側に人の動きが現れるようなプランニング

幅の広いスロープにはじわじわとゆっくり生活が 溢れ出していく

面する3住戸の共有バルコニー 道から見える個人のベランダ

集合住宅の中央に位置するコインランドリー

様々な高さに見える生活

様々な高さに個人の生活空間が垣間見えることで、他者の存在が意識に残り互いを気にかけ合うような関係性が生まれる

住戸7 住戸8 住戸9 住戸10 住戸11 住戸12 住戸13 住戸14 EV -2600 -600 +750 ±0 ±0
1F(GL±0)平面図 S=1/100 N 0 1 2 3 4 5 A B A' B'

車両が通らないときは住人が自由に利用する広場

車両のためのロータリー

湾曲して伸び出たテラスが生活を外側に引き出す

生活の溢れさしやすさを考えたスケール

住戸に直接大きなスロープが面するのではなく、小さな共用スペースが間に入ることで生活が広がるような計画になっている

EV 住戸15 住戸16 コインランドリー 住戸17 住戸18 住戸19 住戸20 住戸21 住戸22 住戸23 住戸24 ±0 +800 +1600 +2500 +1600
2F(GL+1200)平面図 S=1/100 N 0 1 2 3 4 5 A B A' B'

屋上テラス

上階にいくに従ってプライバシー性の高い住戸も計画している

住戸25 住戸26 住戸27 住戸28 住戸29 住戸30 住戸31 住戸32 ロータリー EV ±0 +750 +1350 +2350 人の活動が集まる中央空間 テラスや住戸の玄関を集合住宅の内側に設けることで住人同士の動きが見渡せる計画 交差点
3F(GL+4850)平面図 S=1/100 N 0 1 2 3 4 5 A B A' B'
住戸33 住戸34 住戸35 住戸36 屋上庭園 住戸37 住戸38 EV ±0 +550 +1150 ファミリーマート兼集合住宅 駐車場 道への圧迫感の少ない形状 古い戸建て住宅郡 車通りの少ない道 車/人通りが多い道 4F(GL+7900)平面図 S=1/100 N 0 1 2 3 4 5 A B A' B'

生活を映す壁

2023/06~2023/07 修士2年生 審査員長 曽根大矢 谷尻誠 共同制作者

壁と会話するWALL ROOM テーマ

私たちは、3月に隣人が孤独死をしている場面に遭遇した。

隣の住人の顔すら知らず、自分が生きているということを誰も知らないかもしれないと

いう状況を作り出す現代の賃貸住宅。

そこで、住人の個性でもある生活雑貨や生活行為を映し出す湾曲した壁によって内外を 繋ぎ、住戸の外側に住人の「生きている証」を見せる壁の提案を行った。

壁が内外の仕切りになるのではなく、壁が外と内を緩やかに繋ぐ新しい境界となる提案。

住人のプライバシーを守りつつも、小さなワンルームの中で人が生きているということ

を示すことは、現代における人と人との関係性が希薄化している中で大切な視点ではな いだろうか。

2.第 15 回エイブル空間デザインコンペティション

トイレの前のフィッティングスペース/サンルーム。

トイレの扉には姿鏡を。

物干しの壁

服を保管するクローゼット、洗濯物を干す物干し竿 の役割を持つ壁。

春夏秋冬の衣替えにより壁面の様相が移り変わる。

外に開かれた土間の机とプライバシーが確保さ れた壁内側の机。

気分により使い分けることが可能。

壁に囲まれた中央リビング

生活を映す壁に囲まれた中央の土間空間は全ての生活雑貨を一望でき、必 要なモノにすぐ手が届く。個性が現れる生活雑貨、それらが一同に集まる 空間は住人の個性が最も現れる居場所となる。

生活雑貨の棚の壁

トイレットペーパーの補充や、洗剤、シャンプー、 水回りの備品を纏った壁。備品が目に見える場所に 出ていると、足りないものがすぐにわかる。

湯気が立ち込める壁

お風呂に入ると湯気が立ち込める ガラスの壁。

生活の断片を視覚的に隣人へ共有する。

壁を中央ですぼめるように湾曲させる事で、外から の視線を遮りつつ通す。

外と内を繋ぎつつ離すといった程よい内外の関係性 を作る。

廊下からこっそり隣人の今日の様子をうかがう。

手元だけ見える壁

料理に使う材料や、料理中の手元が見える壁。

30cmの低い開口は、視線を遮りつつ空間を遮 らない、部屋を跨いだモノの共有を可能にする。

湾曲した壁に囲まれた中心部の床は、共有部の廊 下と同じ素材。

外部との素材の連続が、ソトへの意識を変える。

湾曲した壁の80cmの隙間から家の中を見る 生活雑貨がここに暮らす人の個性や生きていることを証明している

トイレ ベッド 洗面所 キッチン ワークスペース 共用廊下 4,000 浴室 土間 6,000 +20 ±0 ±0 ±0 +250 +250 +500 0 0.5 1 2m 平面図 S=1:30 +20
家の中から外を見る 生活雑貨が外からの視線を遮り、プライベート空間からはほとんど外廊下からの視線を感じない 800 1,900 500 300 1,300 300 300 500

生活と湾曲した壁が外と内を緩やかに繋ぐ

止まり木から溜まり場へ

2023/04~2023/06 修士2年生 実施設計コンペ 審査員長 曽根大矢 武井誠 共同制作者 テーマ

自然に集える溜まり場 県営住宅の集会所

福山市水呑町の県営向ヶ丘住宅建替事業の一環として、県営向ヶ丘住宅集会所を設計す る。しかし、建替が行われる県営住宅は今後のプロポーザルにおいて選定されるため、 今回提案する集会所は今後提案される集会所との関係性を考えること、周辺敷地の特性 に囚われすぎず敷地のどこに配置されることになっても成立する提案であることが求め られた。

そんな中で私たちは、「止まり木」と「内土間」から構成された風車型の平面計画によっ て、団地の外側/集会所の内側に多様な居場所を生み、様々な使われ方に柔軟に対応す ることのできる集会所を提案した。

3. ひろしま建築学生チャレンジコンペ 2023 優秀賞

▪見える倉庫

外からも内からも、棚を介して防災備 品や道具を確認することができる、開 かれた安全な倉庫

落ち着く止まり木

▪維持管理面に配慮した植栽計画

壁と静かな倉庫に囲まれた落 ち着く空間であるため、大きな 集会が開かれている際でも個 人的に利用できる止まり木 維持管理面に配慮し、植栽スペースは小さく、

かつ人の動線を誘導するよう計画。

倉庫やトイレ、キッチンの外壁に人が近寄り、 外壁の破損や汚れを防ぐために植栽を配置。

+350

自然な交流を生む止まり木

入り口の近くにある、座ることや寝転がることもで きる大きな空間。集会所にやってくる時に住人同 士が自然に顔を合わせることになることで自然な 交流が生まれるきっかけとなる止まり木

集会スペース

読書スペース

多目的トイレ

男女兼用トイレ

掃除道具入れ

ミニキッチン

談話スペース

便利な止まり木

買い物帰りに荷物を置いた

り、友達との待ち合わせにち ょっと使える便利な止まり木

畳の小上がり

▪裏のない形 正方形に近い多角形が、集 会所の4面全てに裏を作ら ず人の居場所を生んでいる

変化する止まり木

建具を開けると大きな集会所の 一部に、閉じると大きな別の一 室に変化する、屋根下の大きな 止まり木 N

面積表

延床面積 102.68㎡

建築面積

集会室

倉庫

150.71㎡

79.49㎡

9.94㎡

9.94㎡

3.31㎡

11,830 1,820 1,305 2,730 2,335 1,820 2,730 11,830 1,820 1,820 2,730 3,640 1,820
倉庫 玄関
±0
+350 +350
平面図
玄関ホール
トイレ

屋根: ガルバリウム鋼板小波板 t=0.4

アスファルトルーフィング

構造用合板(耐水)t=12mm

通気胴縁 □=45mm 断熱材 t=30mm

構造用合板(耐水)t=9mm

最高高さ▽

上部外壁:

中空ポリカーボネート t=6mm

垂木: SPF208 @455

内壁: ラワン合板 t=9mm

外壁: 掻落とし仕上げ

止まり木スペース

ヒノキ板

倉庫側内壁: 中空ポリカーボネート t=6mm

倉庫 集会室

床: 基礎コンクリート直仕上げ 金ごて押さえ 表面強化剤塗布

倉庫側外壁: 中空ポリカーボネート t=6mm

横桟 40×40 @455

縦桟 40×40 @455

南側立面図

5,450 2,500 2,950 軒桁▽ GL▽ 11,830 2,730 9,100 7,280 1,820 350 h=700 h=2,000
断面図

止まり木スペースに座って土間での活動に参加することも、畳やソファでくつろぐことも許容する、大きく寛容的なひとつながりの空間

集会所での活動を一望できる佇まいが、誰のことも拒まない開かれた空間を作る 視線が抜け、止まり木でくつろいでいる人が垣間見える

施錠時でも止まり木が住民の居場所に 土間空間を囲う止まり木が集会の規模の変化に柔軟に対応する

小さく開き大きく包む

2022/06~2022/11 修士1年生 実施設計コンペ 審査員長

家成俊勝 共同制作者

建築用途 曽根大矢 消防屯所

三原市の5つの消防屯所が1つの屯所に合併するということで、三原市と広島市が共催コンペにて消防屯所の提案を選定。

消防団の存在自体を知らない人が増えている中で、今回提案する消防屯所は消防団の存在自体を町の人にまずは知ってもらうこと、

また消防屯所が町のシンボルとなること、消防団が親しみやすい存在となることが重要であると考えた。

そこで、人の視線や行動を引き込むスキマを配置することにより屯所内に入れなくても消防団の活動が見え、活動に参加している

ように感じられるということをコンセプトに、スキマを介して街と繋がる新しい形の消防屯所を計画した。

どんな人でも入りやすい街と人に開けたデザイン

室として閉じていない見える倉庫が備品の劣化を防ぎ防災意識を高める

4. ひろしま建築学生チャレンジコンペ 2022 優秀賞
大きな軒下空間が周辺住人の居場所となる

建具を閉じればそれぞれの分団が利用できる個室に、建具を開ければ全分団が一体利用できる大部屋に

スキマから見える向こう側と消防団の活動
スキマからの採光が室内を明るく照らし、大屋根が全体の一体感を生む

■記憶に残り象徴となる消防車

角度を振り、折り戸を透明性のあるものとし

小窓を設けることで敷地周辺を通過 する時に赤い消防車が自然と視界に入る

よう計画する。

消化用ホース

■裏がない消防屯所

普段使われない”裏の空間”である倉庫を待機 室と車庫を繋ぐ通路として計画することで全て の空間を有効活用することが可能となる。

■空間を広げる 間

20㎡の待機室は建具を開け放つことで 間 と繋がり解放的な活動が可能となる。

また、建具は軽い素材で作成することで開け 閉めを容易にする。

■視線の抜けを作る 間 一直線の 間は屯所の活動を一望することができる と共に中学校側への視線の抜けを作り出す。

■きっかけとなる公衆トイレ

トイレを外部に出し地域の人も利用できるようにす ることで、より多くの人に消防団と関わるきっかけ を与える。

■誘導する 間

塀や壁の傾き、セットバックした配置計画により人を屯所内へ 自然に引き込む。

■移り変わる自然

インターロッキングの 間から生える植物の量は 駐車される頻度により変化する。 年間を通して変化する豊かな風景。

建築面積 建ぺい率 容積率

中学校グラウンド

■中学校と繋がる 間

車庫の小窓、倉庫に開けられたスリットにより中学校の グラウンドから消防団の活動を垣間見ることができる。

■ 間を介した交流 各分団はそれぞれの部屋に居ながらも 間という緩衝空間 を介して他分団の動きや気配を感じることができる。

■基礎を延長したベンチ

消防団の活動が始まる前、終わった後、休憩中に大屋根の下 で外の空気を吸いながら寛ぐことができる。

■周辺環境と一体化する土系舗装

敷地一面に敷かれた土系舗装は屯所内にも続いており、中学 校のグラウンドとも素材が類似しているため周辺環境と連続 する風景を作りだす。

車庫 144㎡ ポンプ車 積載車 待機室① 20㎡ A ±0 +300 +500 +550 待機室② 20㎡ 待機室④ 20㎡ 倉庫 27.8㎡ 資機材収納庫 18.36㎡ 待機室⑤ 20㎡ 待機室③ 20㎡ 2,000 3,000 1,000 1,000 1,000 5,000 1,000 1,0001,000 7,000 7,000 9,000 16,000 9,000 17,0004,000 6,000 1,500 4,0001,5500 4,000 2,000 2,000 5,000 3,227 駐車場 29台 WWC 2㎡ トイレ看板 ミニキッチン 2㎡ MWC 4㎡ 更衣室① 2㎡ 更衣室② 2㎡
乾燥柱 前面道路 W=7m
A 積載車 積載車 積載車
平面図
1,571.75 ㎡ 356.80 ㎡(内半屋外空間39.19㎡)
㎡ 27.04 % 22.70 % 延床面積
敷地面積
424.95
面積表

実際のプロポーザルのプレゼンボードを参考にした話の流れ

文字に目立つ色の下線を入れて大切な部分は大きく スキマという誰もが想像できる言葉を使って提案の"気になる"を説明

図面は新建築データなどを参考にしながら作成 消防屯所の配置計画など図面情報が少なかったため、自分達で配置計画パ ターンを何通りも出して図面を作成していった

コスト計画は細かく 300m2で8000万円という低コストでのコンペ だったため、コストに関して詰めて計画した

レンダリングでも手書きパースでもない新しい表現 モデリングのレンダリングと、手書きパースを重ね ることで、リアルで温かみのあるパースを作成

生き続けるセツビ

2022/04~2022/05 修士1年生 審査員長

学生建築コンペティション

エネルギーと共にある住空間

停電時に街を照らす街の拠り所

西沢立衛 共同制作者

作品条件

曽根大矢

木造/7世帯程度の住宅 篠村悠人

ガスや電気などのエネルギーの存在が当たり前になっている現代の生活。

人々はどこから来ているのかもわからないエネルギーの供給を信じて悠々自適な生活を送っている。しかしエ

ネルギーの供給がもしも止まってしまった時、私たちの現代人としての生活は終わってしまうだろう。

そこで、敷地、建物、人の生活の三者が合わさることで快適な環境を提供し続けてくれる“現代人としての生

活が終わらない家”を提案する。

吹き抜ける風と大空間

5.第 9回 POLUS

エネルギーと現代人の生活

ガスや電気などのエネルギーが存在することがあたりまえになっている現代。人々はどこから来ているかも分からないエネルギーの供給を信じて

悠々自適な生活を送っている。しかしそのエネルギーの供給がもしも止まってしまった時、現代人としての生活は終わってしまうだろう。 そこで私たちは敷地、建物、人の三者が合わさることで快適な環境を提供し続けてくれる、「現代人としての生活が終わらない家」を提案する。

02 生き続けるセツビの3本の柱

エネルギーを過信する事で敷地、建物、人が分断されていた現代に対し、それら三者を一体化することで生き続けるセツビとなる建築を提案する。

「水やランドスケープを用いたエネルギーの再利用」、「人の生活行為によるエネルギーの有効活用」、「建築形態によるエネルギーの増強」の三つを生き続けるセツビを構成する三本柱として考え、 全体を計画する。敷地や建物、人やエネルギーが循環の一部となることで今まで個人として存在していた人々は一体感を覚え、身体から抜け落ちていたエネルギーに対する感受性が養われるだろう。

①エネルギーをつくる

Ⅰ Ⅱ

②エネルギーを共有する

エネルギーの可視化

貯水タンク

住戸1

住戸2

風力増強 住戸をまたぐ煙突効果

住戸2

Ⅰ 雨水によって貯水タンクに水を溜める

※直径3000mm,容量7,065L

Ⅱ 高所から水を落下させることで   位置エネルギーによる発電を行う

Ⅲ 落下した水は敷地いっぱいに広がる池に   溜まり、豊かなランドスケープを形成する

Ⅳ 池の水を風力ポンプを利用して貯水タン   クに移動させ、水の循環を生む

発電量と発電セツビの計算

直径3,000mmの貯水タンクに溜まった水7,065Lが 発電に利用された際、9.8×0.003925㎥/s(流量)× 8m(有効落差)×0.8(発電効率)=約0.25kw発電 することが可能。風力ポンプによる揚水を考慮し、敷 地に配置された4台の貯水タンクで0.25kwh×80回 =1日20kwh×365日=7,300kwを1年間に発電で きると仮定した。一世帯あたりの年間電力消費量は平 均4,000kwhであるため7世帯では28000kwh必要 だが「生き続けるセツビ」を計画することで消費電力 を抑えると仮定し、貯水タンクの数を決定した。

一つの貯水タンクからつくられる電力を 2〜3世帯で共有する。 アクリル素材の貯 水タンクは エネルギーの存在を可視化し、

循環する水を介して住人と繋がる。

③エネルギーを増強する

多様な場への送風

ガラス スリット 風力ポンプ スリット 室内 屋外

テラス

太陽光

住戸1

1階の住戸と2階の住戸の間にスリットを 設ける ことで太陽光により温められた暖か い空気が煙突効果により下から上へ流れ、 風が生まれる。

空気を介した住人同士の交流が生まれる。

明かりの共有- 住戸 - 明かりの共有 -街-

貯水タンク、 風力ポンプの構造体

メガホンのように大きく開いた住戸部分が風 をあつめて増強し、風力ポンプに風を送る。

1年を通して最も風が吹く北北西の方角にメ ガホンの口を7m開き、風力ポンプに向かっ て2mにすぼませることで風力を増強してエ ネルギーに変換する。

ドレスのような境界

増強した風は風力ポンプを過ぎた後、他の 住戸のテラスに届いたり住戸に設けられた スリットを通って1階の屋外に届いたりと 多様な居場所に風を届ける。

敷地を抜ける風により人々は一体感に包ま れる。

屋根による集水

貯水タンク

貯水池

貯水タンクを屋根の構造として組み込む。 雨が降ると雨水が流れてタンクに水が溜 まる。

貯水池による気温の安定化

ポリカーボネート

住戸から漏れる光が夜は街の灯りになる。ガ ラス張りの住空間からドレスのように配置さ れたポリカーボネートを介して、街にぼんや りと光が広がる。

住戸1

住戸2

貯水タンクや風車を介して隣接する住戸同士 が明かりを共有する。隣接するリビングに光 が灯ると、そこに面した部屋も同時に明るく なるような住戸配置を計画している。

ガラス壁とそれを覆うように配置されたポリ カーボネートの二重の境界は視線を気にする ことなく室内に柔らかい光を届け、明るい空 間を確保する。

夏 冬

水は熱容量が大きく温度変化が少ない。そのため敷地を覆う貯水池によって気温の急激 な変化が少なくなり、1年を通して温度変化の少ない快適な環境を形成する。

01
ガラス
ポリカーボネート

生き続けるセツビに絡まる豊かなシーン

部屋が貯水池を挟んで別れている ことで、電気を使いすぎた日は部 屋を行き来することができない

電気を多く使った日は広いテラス

が水に囲まれ独立した家族の憩い の空間になる

停電時や災害時でも電気を作るこ とができるため、街の人の灯火の ような建築になる

建物の向きは卓越風の向きを参考 にして決定し、より電力を作るの に適した建築を目指している

異なる住戸間で電力を共有し、節電 できるような設計を心がけている

電力の使用量によって水たまりが 変化するため、ランドスケープに 合わせて人の行動が変化する住宅

N 0 1 2 3 4m S = 1:250
03
room3 room2 room5 room4
room1 room1

循環するランドスケープと立体的な空間

水から距離を取るため高床になった住戸により、循環する水 と植物からなる豊かなランドスケープを一面望むことができ る。住人が外に飛び出し人の生活が溶け合う立体的な空間。

生活行為によるランドスケープの変化

雨の降った日やたくさん電気を使った時は、水が貯水タンクから池に移動し大きな池となり、あまり使わなかったときは住民や街の人の広場となる。 天気や住人の生活態度によって日々変化し続ける豊かなランドスケープ。

AM 6:00 PM 14:00

建築の形の特徴を捉えたプレゼンボードのレイアウトデザイン

提案を3つにわかりやすく分割 ダイアグラムデザインはわかりやすくキャッチーなものに

パースは3人で役割分担をして作成 ArchiCADでモデリングした後、iPadでデータを共有しながら皆で着彩、 なぞりや書き込みを行なった為、効率よく多くのパースを描くことができた

余白部分に提案の裏付けを挿入 生成エネルギー量の推定計算を入れることで、 非現実的な提案にならないことを意識した

環境に関する建築を事例調査し、模型による 検討なども行いながら設計を進めた

あひるとこどもを包む基礎のカタチ

2022/06~2022/07 修士1年生 建築用途 曽根大矢 こども園 共同制作者

子どもの安全を求めるため街に対して塀を立てたり危険なあそびを制限したりと、現在の子どもの学びを取り巻く環境はハード面、 ソフト面共に閉じすぎているのではないだろうか。

そこで、基礎のカタチを変化させ居場所を作ることで街に対して開いた空間を作り、その空間で子どもたちに多様な経験と学びを 与えてくれる「あひる」という他者と共に過ごすことのできる新しい境界線のあるこども園の提案。

6.第 6 回未来こども園デザインコンペ

01

開放的な学びと経験

子どもの安全を求めるため街に対して塀を立てたり危険な遊びを抑制したりと現在の子どもを取り巻く学びの環境はハード、ソフト面共に閉じすぎている。その結果、子 どもたちの経験と学びは、多様性のない単調な物になってしまっているのではないだろうか。

そこで基礎のカタチを変化させ居場所を作ることで街に対して開いた空間をつくり、その空間でこども達に多様な学びと経験を教えてくれる「アヒル」という他者と共に 過ごすことの出来る、ハード・ソフト面共に開放的なこども園を提案する。

開放することで新たに生まれる学びと経験の多様なシーンはこどもたちの原風景となり、自由な未来を切り拓くだろう。

02

基礎が生み出す新たな境界とあひるが育む生きた学び

ハード面の課題である、こども園の閉じた空間

性を解決するために 敷地いっぱいに大きな基

礎を広げ、あひるとこどもの生活が交わる園舎 と街とが緩やかな境界線によって繋がる提案。

あひると共に成長していくこどもの様子を開

けた境界線から暖かく見守る様子は、 街の中 心にこどもたちが溶け込み街を繋いでいるよ うだ。

03

あひるとこどもを包む基礎の成り立ち

①敷地目一杯に大きく低 い基礎を打設する

②基礎を掘り込むことで 居場所を作る

GL±0

ハード面 ソフト面

街 街 園舎

基礎を居場所とすることで、街の人との共用部と園舎を同じ高さで共存させる。 塀で囲わず水のお堀を作ることで緩やかな境界を作る。

食物連鎖

危険

③掘った穴に水の境界 (ビオトープ)を作る

④植栽計画と透明な壁の 配置で街にひらく

命の大切さ

細菌への意識

運動 愛着

危険や細菌からこどもを守りすぎるのではなく、あひると共に生活することで心 身ともに成長することのできる教育方法を提示する。

ハード面の課題である、こども園の閉じた空間 性を解決するために 敷地いっぱいに大きな基 礎を広げ、あひるとこどもの生活が交わる園舎 と街とが緩やかな境界線によって繋がる提案。 あひると共に成長していくこどもの様子を開 けた境界線から暖かく見守る様子は、 街の中 心にこどもたちが溶け込み街を繋いでいるよ うだ。

こどもの成長特性に合わせた平面計画

丘の終わりに背の高い水草を植える ことでアヒルの安全を守る

h=500のアヒル用扉

膨らんだビオト−プ部分は子どもたち にとって程よい高さのプールとなるよ うに掘り下げている

少し高く盛られた土により優しく守ら れている感覚が園舎内に生まれる

曲線と直線により生まれ る溜まり空間

アヒルが入ってくる遊び場

窓を超えてアヒルが潜って 入ってくることもある

伝い歩きをすることがで きる床レベルの設定

アヒルが出迎えてくれる エントランス

アヒル小屋

アヒルや水中生物が集まる 水のお堀の膨らみ 床の素材が異なる 小さな居場所

0歳児と4歳児の 共同屋外空間

街に向かって勉強を しているとアヒルや

街の人と交流が生ま れることも

盛られた土と水に囲まれた秘密基地 のような空間

お迎えを待つこどもが屋根 下でのんびりと待つ

メインアプローチ側に大きく伸びた 屋根の下の空間はお迎えに来た親同 士の交流の場ともなる

曲線を描く駐車場は周辺の道路を拡 張し園舎と街の距離を近づける

子どもたちから 丸見えな厨房

水の境界の外側には街の人も使える 食堂を配置している

引き戸を全開にすると 街の人の居場所となる

歳児 外に開く 歳児 感じる 歳児 見える 歳児 お世話する 歳児 触れる 歳児 我慢する 0 1 3 2 4

0歳の時の記憶はほとんど残らないと言われること から0歳児棟は他の年齢の園舎と離れて配置される のが一般的。しかしこの園では、0歳児の教室の周 囲に他の学年やアヒルの遊ぶ場所を設け、小さな時 からあひるや友達と触れ合えないけど囲まれた環境 を設けている。

1歳児はつかまり立ちをする年頃。0歳児 の時に声しか聞こえなかったあひるの姿を、 つかまり立ちができた時にやっと見ること ができる。

好奇心旺盛になる2歳児の時に、初めてあひるに触る ことができる。逃げるあひるを追いかけたり、抱っこ したり、命に初めて触れる場所。開口を開けるとあひ る小屋と繋がった丘からあひるが教室に入ってくる。

あひる小屋の目の前の開けた教室から、あひるが 逃げないか、猫に襲われないか、初めて何かを守 るという役割を得る。

園の外の人と教 室の中から初め ての交流をする 場所。

近くの老人ホー ムから遊びに来 るおばあちゃん たちとお話をし て少しずつ協調 性を育んでいく。 最年長の5歳児周辺には、5歳児が育てる花壇や畑 を配置している。時には育てた野菜や花をあひるが 食べてしまうこともあり、思い通りにならないこと を経験し我慢する事を学ぶ。

0歳児室 1歳児室 3歳児室 4歳児室 食堂 厨房 5歳児室 ⑤
2歳児室 倉庫 0 2 4 6 8 10m S=1:250 N
駐車場
職員室 園庭 園庭 GL±0 メインアプローチ GL±0 GL+200 GL+400 GL+400 GL+400 GL+400 GL+400 GL+400 GL−400 GL+200 GL+300 GL−100 GL+200 GL+1000 GL+800 GL+900 GL+900 GL+900 GL+1400 GL+1800 GL+800 GL-200 GL-100 GL+100 多目的室 MWC WC WC WWC GL-200 GL-200 GL-200
④ ③ ②
04

通行人から見た景色。屋根の下で休もうと近寄ると、ビオトープの内側のこどもと目が合 う。ガラスと軸組でできた園の内側で、あひるとこどもが自由に遊び回る姿を一望する。

○園内に対して

複数の屋根がバラバラな向きに伸びることで子どものスケール に近い場所や、大きな抜けのある空間が生まれ園内に多様なシー ンが展開する。

○街に対して

街に対して登るように伸びた屋根により近隣の 老人ホームの人 や歩行者に園内の賑わいが伝わる。

こどもの遊び相手として適したあひるの特性

○人に懐きやすい

あひるは人懐っこく、懐いた相 手の後ろをついて歩くことがあ る。あひるの人懐っこい姿が、 こどもに愛情を抱かせる。

○動き回る

園内を自由に動き回るあひるは 園児と様々な形で関わり合う。 走り回るあひるは園児と友達に なり、園児の身体能力を高める。

○こどもに合ったサイズ感

あひるは成長すると50㎝~80 ㎝程の大きさになる。こどもの 目線に近い大きさのアヒルはこ どもの新しい友達になる。

○寿命の長さ

あひるの寿命は 10~20年 と長 く、こどもが大きくなって卒園 した後もこどもはあひるを見て 園での思い出を思い出す。

○なんでも食べる ○頻繁な水浴び

虫や野菜、草の芽や花などなん でも食べる。こどもが頑張って 育てた花壇の花も、土を掘り起 こして食べてしまうことも。

あひるは1日1回は水浴びをす る。あひるの水浴びをみてこど もも水や自然に適応した遊び方 を体で学んで大きくなる。

屋根の掛け方

流されない時間を

2021/04~2021/05 学部4年生 審査員長

保坂猛

建築用途 カフェ

忙しい朝の時間に、授業前の10分間で、遅刻しちゃったけど食べていこう 流れるような道のカフェで、流されない時間を過ごそう 授業ぎりぎりに家を出てしまう人、一人暮らしの学生、朝ご飯を抜いてしまう人も 多い中で、登校時にさっと買える朝ごはんストリートを計画する ふたくちで食べてしまえる小さな朝ごはんで今日1日の小さな幸せを

カフェのチラシを作成してプレゼン

7. 特別建築デザイン実習 The Breakfast Cafe 優秀賞
end.

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